07/09/27 診療報酬調査専門組織平成19年度DPC評価分科会 第4回議事録 平成19年度第4回診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会議事録 (1)日時  平成19年9月27日(木)14:00〜16:25 (2)場所  全国都市会館 ホールA(2階) (3)出席者 委員:西岡清分科会長、原正道分科会長代理、伊藤澄信委員、        熊本一朗委員、小山信彌委員、齋藤壽一委員、酒巻哲夫委員、        佐藤博委員、嶋森好子委員、武澤純委員、難波貞夫委員、        松田晋哉委員、山口俊晴委員、吉田英機委員、        石井暎禧(オブザーバー)        事務局:原医療課長、宇都宮企画官 他        参考人:井原裕宣 (4)議題  1.診断群分類の決定方法の在り方に関する医療機関へのヒアリング         について        2.その他 (5)議事内容 ○西岡分科会長  ただいまから、平成19年度第4回診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会を開催さ せていただきます。  本日の委員の出欠状況でございますが、池上委員、木下委員及び山口直人委員から御 欠席との連絡をいただいております。  委員の方でまだお見えになっていらっしゃらない方もおられますが、間もなくお着き になることと思います。  本日は、オブザーバーといたしまして、中医協委員でございます石井委員に御出席い ただいております。  また、本日は、参考人といたしまして、東京都社会保険診療報酬支払基金の井原裕宣 副審査委員長にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。  次に、本日御出席をいただいております8病院の各代表の方の御紹介をお願いいたし ます。 ○中田補佐  それでは、御紹介させていただきます。  松下記念病院院長の山根哲郎さんです。  国立病院機構埼玉病院副院長の関塚永一さんです。  東京女子医科大学病院副院長の久保長生さんです。  聖路加国際病院循環器内科医長の西裕太郎さんです。  松波総合病院副院長の松波和寿さんです。  社会保険横浜中央病院院長の宮川正秀さんです。  高知大学医学部附属病院院長の倉本秋さんです。  社会保険久留米第一病院院長の津田英照さんです。 ○西岡分科会長  お忙しい中、当分科会に御出席いただきまして、ありがとうございます。  本日の会議時間は、14時より16時半までの2時間半を予定しております。長時間とな りますが、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、まず、資料の確認を事務局からお願いいたします。 ○中田補佐  資料の確認をさせていただきます。  資料D−1「平成19年度DPC評価分科会における特別調査について」と資料D−2 「平成19年度DPC評価分科会における特別調査について(診断群分類の決定方法)概 要」がございます。  また、各委員の机上には、参考資料1「各ヒアリング医療機関から提出された調査 票」及び参考資料2としてそれに関連するデータを置かせていただいております。  今回は、参考資料1と参考資料2につきましては個人が特定される恐れのある情報な どを含んでいるため、各委員の机上のみに配付させていただいております。  そのほかに、本日お越しいただきました井原参考人提出資料1及び提出資料2がござ います。以上でございます。 ○西岡分科会長  ありがとうございました。資料についてはよろしいでしょうか。  それでは、議事に移りたいと思います。  まず、事務局から資料の御説明をお願いいたします。 ○中田補佐  資料の御説明をいたします。  資料D−1「平成19年度DPC評価分科会における特別調査について」でございます。 こちらは前回も提出させていただきました資料でございますが、今回は、2ページ目に ある適切な算定ルールの構築のため、正しく診断群分類が決定されているのかについて、 ヒアリングを通じて検証するために当分科会を開催させていただいている次第でござい ます。  資料D−2「平成19年度DPC評価分科会における特別調査について(診断群分類の 決定方法)」の概要でございます。平成18年度DPC調査データより該当する医療機関 94件に対しましてアンケート調査を実施しております。また、その医療機関から合計8 医療機関をヒアリング対象として選出させていただいております。  同資料の4ページをごらんください。別紙1といたしまして、アンケート調査票の流 れについてこの表でまとめさせていただいております。  概要を申し上げますと、1番目でございますが、1日当たりの包括範囲出来高点数が 全体の平均に比べて著しく低い医療機関の中で、脳梗塞(JCS30未満)の症例におい て、1日当たりの出来高換算点数との差が15,000点以上の医療機関、及び化学療法あり の1日当たり薬剤点数の平均が全国に比べて1,000点以上低い医療機関につきまして、 それぞれ13、15医療機関に調査票を配付させていただいております。  2番目でございますが、平均在院日数が全体の平均より著しく低いものの中で、その うち、心筋梗塞(手術あり)の症例において平均在院日数が12日以下の10医療機関につ きまして調査票を配付させていただいております。  3番目でございますが、特定の診断群分類における症例数の変化が大きい医療機関の 中で、敗血症についてDPC導入前に比べて1%増加したもの、播種性血管内凝固症候 群(DIC)についてDPC導入前の年度に比べて 0.5%以上増加した医療機関、それ ぞれ15、20医療機関に調査票を配付させていただいております。 また、4番目でございますが、こちらは手術の診療科と最も医療資源を投入した傷病 名の診療科が異なる症例の中で処置料であるものを手術料としてDPCツリーで「手術 あり」とコーディングした症例が3%以上かつ20例以上の医療機関、及び「水晶体再建 術」を施行した症例のうち、MDC02(眼科系疾患)以外の診断群分類でコーディング された症例が10%以上の医療機関につきまして、それぞれ6医療機関、15医療機関に調 査票を配付させていただいておりまして、合計94医療機関にアンケート票を配布させて いただいております。  1ページの「3調査結果」でございますが、事前に資料を配らせていただいておりま すので、概要のみを説明させていただきたいと思います。  94医療機関からの調査結果として概要をまとめたものです。  (1)脳梗塞の症例で包括点数と出来高換算点数との差が大きい理由でございます。  脳梗塞症例のうち、エダラボン投与後早期に症状が改善し、短期間でエダラボン投与 を中止できた症例が多いため。  高い点数を算定できる入院期間I以内で退院できるような軽症例が多いため。  入院期間IIを超える例では、包括部分で投入する医療資源は少なく、包括対象外とな るリハビリテーションが治療の主体となるため。  外来で経過観察可能な症例でも家族の希望等で入院しているため。  (2)化学療法の症例で包括点数と出来高換算点数との差が大きい理由でございます。  肝細胞癌に対しまして肝動脈塞栓術施行と同時に抗がん剤を投与したため、それらの 費用が包括外となるため。  前立腺癌に対しましてホルモン剤のみ投与する症例や経口薬による抗がん剤治療の症 例が多いため。  少量の抗がん剤の使用や単剤による抗がん剤医療が多く、新薬や多剤併用療法を行っ ていないため。  抗がん剤を後発医薬品に切りかえているため。  価格の高い抗がん剤を使用する症例は外来で行うため。抗がん剤治療とあわせて使用 することの多いG−CSF製剤、抗真菌薬などの薬の使用を控えたため。  外来で行える価格の安い抗がん剤治療を合併症があるため入院で行っているため。  (3)心筋梗塞の症例で平均在院日数が短い理由でございます。  エビデンスに基づき早期退院を推進しているため。発症後早期に経皮的冠動脈ステン ト留置術等の実施、術後早期からのリハビリテーションを実施しているものがございま した。  クリティカルパスの導入により効率化が進んだため。  冠動脈ステント留置術等のカテーテル治療のみ実施しており、外科手術である冠動脈 バイパス移植手術を行っていないため。  (4)敗血症の症例が増加した理由でございます。  診断群分類の決定を間違ったため。具体的には、DPC導入前は最も医療資源を投入 した病名ではなく、入院契機病名等で分類の決定を行っていたものがございました。  地域中核病院であり、他病院から敗血症の紹介患者が増加したため。  重症の肺炎と思われる症例を敗血症として分類を決定したため。  不明熱があるだけの症例など、確定診断がつかない症例を敗血症として分類を決定し たため。  高齢者や重症の患者が増加し、IVHや人工呼吸器管理の患者も増加したため敗血症 の患者が増加した。  (5)播種性血管内凝固症候群(DIC)の症例が増加した理由でございます。  診断群分類の決定を間違ったため。具体的には、DPC導入前は最も医療資源を投入 した病名ではなく、入院契機病名等で分類の決定を行っていた。肝不全や死亡前にDI Cとなった症例を医療資源の導入量と関係なくDICであると診断群分類の決定を行っ ていた。DICの診断基準を学会で定められた新たな基準に合わせたため、従来用いて いた基準との違いにより該当患者数が増加したものがございました。  当該地域の救急の拠点病院で重症患者の受け入れが増加したため。  (6)処置料(創傷処置)を手術料(創傷処理)とした理由でございます。  手術料(創傷処理)の決定を間違ったため。具体的には、胃瘻カテーテル交換を創傷 処理として算定したため。抗がん剤治療後のIVポートの抜去を創傷処理で算定したた め。術後の創部に対する処理を創傷処理で算定したため。CAPDカテーテル抜去術を 創傷処理で算定したためというものがございました。  (7)水晶体再建術を施行した症例のうち、MDC02以外の診断群分類でコーディン グした理由でございます。  ICDのコーディングの間違いにより糖尿病性の眼合併症をすべて眼科の診断群分類 ではなく、糖尿病の診断群分類で決定していたため。  主に糖尿病に対する入院治療と同時に白内障の手術を行ったため。  他疾患の入院治療中に患者の希望により白内障の手術を実施したため。  (8)それに係る参考データを6ページ以降の別紙3にまとめさせていただいており ますが、内容の説明は省略させていただきます。  資料の説明は以上でございます。 ○西岡分科会長  ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、何か御質問はございます でしょうか。よろしいでしょうか。  それでは、初めに、参考人としてお越しいただきました東京都社会保険診療報酬支払 基金の井原先生より、資料に基づいて御説明をよろしくお願いいたします。 ○井原参考人  御紹介いただきました東京都社会保険診療報酬支払基金副審査委員長の井原でござい ます。どうぞよろしくお願いいたします。  平成15年4月よりスタートいたしましたDPCのレセプトにつきましては、その審査 を同年5月より4年5カ月にわたって行ってまいりました。現在、東京都のDPC対象 病院は31病院ございまして、DPCレセプトの請求件数は合計で月平均1万8,000程度 でございます。東京都支払基金はひと月に平均して約450万件ほどのレセプトの審査支 払いを行っております。そのうちの2%弱に相当いたします8万5,000件ほどが入院レ セプトであります。そのうちの入院分の約4分の1弱がDPCのレセプトであるという ことになります。  DPCレセプトの審査につきましては、審査委員が243名おるわけでございますが、 そのうち80名ほどの審査委員がそれぞれ診療科別に担当委員が審査を行うという形をと っております。今回のプレゼンテーションのお話がございましたので、やはり直近のデ ータがふさわしいと考えまして、今月、つまり平成19年9月の診療分をもとに基本的に はお話をさせていただきたいと思います。  審査委員会の会期中に私自身がそのDPCレセプトの審査を行ったもの、それから、 担当の審査委員からどのように判断したらよいかという相談を受けたレセプトは、今月、 約 1,000件ほどございました。 審査委員会は、先生方御存じのように合議制ということでございますので、相談され たレセプトにつきましては複数の審査委員で合議をして検討をするということになりま す。しかし、DPCレセプトにつきましては多くの診療行為が包括されておりますので、 そうした席でいろいろな委員からいろいろな解釈が出てまいります。したがいまして、 その適否を判断するのに必要な診療情報を十分に把握することはできないというのが現 状だと思っております。  したがいまして、レセプト上で診断群分類の選定に疑問が生じたケースにつきまして は、やはり当該医療機関あてにレセプトを返戻させていただいて、そして照会を行って いるというのが実情でございます。  こうしたケースは、先ほど申し上げた私がかかわった1,000件ほどの中に今月は30数 件ございました。また、東京都支払基金ではDPCのレセプトにつきましては平成15年 の審査開始当初より返戻レセプト及び査定されたレセプトを中心に審査委員会の終了後 に特別に再度点検や確認の作業を実施しております。  それでは、お手元の資料に基づきまして、返戻の取り扱いとなりましたレセプトの具 体例をお示しします。  これから6例の事例について説明をいたしますけれど、これはすべて異なる病院から のものでございます。また、レセプトは第一級の個人情報であると考えておりますので、 この点に十分配慮いたしまして、レセプトフォーマットにこちらの方で転記して作成を してございます。そして、御理解をいただくのに不要と思われる情報はすべて削除して おるか、あるいは○×のような記号を使って置きかえております。  さらに、病院の特定を避けるために、調整係数はすべて1.0としておりますので、実 際の点数は請求のものとは異なっております。 また、合計の一番下の点数欄でございますが、点数にしますと100点、つまり金額で は 1,000円以下の部分はすべて×印にして、詳細は1万の桁までで表記しております。  以上の点に御留意いただいて資料をごらんいただきたいと思います。  資料は1と2に分かれております。資料1は、今申し上げましたレセプトのフォーマ ットに作成したものでございまして、資料2では、その事例に関するツリー図が示され ております。見にくいかもしれませんが、その右側、私がお話しする該当のツリー図に ○印がついておりますので、この部分について話しているのだということで、2つの資 料を見比べることになりますが、よろしく御了解をお願いしたいと思います。  それでは、事例1について御説明いたします。  事例1は、典型的な内科的に困る、つまり手術が行われていない内科的なレセプトで、 我々が判断に困る例として提示してございます。  傷病名は播種性血管内凝固、これからDICと言われていただきますが、このDIC で分類区分を決定しておりして、入院が5月1日でございまして、これは19年6月請求 分でございますので、5月31日とあわせますと、実に61日間入院している症例というこ とになります。今月の請求分は、調整係数を1.0にしてございますが、実は調整係数は もう少し高い数字でございますので、総金額は18万点を超えていると。つまり、19万 2,000点、金額にしますと192万円、200万円近いレセプトでございますが、そのうちの 180万円ほどの分は中身は、ごらんになっておわかりのように、審査上、一切何も書か れておりませんので、何も判断ができないということになります。  専門の審査委員で協議をいたしましても、こういったレセプトはまず傷病名を通覧し ましてDICの原因となった基礎疾患がいまひとつわかりにくいなという点、あるいは てんかん重積状態でノックス・ガストー症候群ということでございますので、一般的に 内科小児科医が考えますと、この方はてんかんあるいは呼吸不全の状態でずっと人工呼 吸の状態に置かれているのだろうと、そのような可能性がはるかに高いという認識で審 査委員の意見は一致するわけでございます。  したがいまして、やはりDICでずっと分類区分を決めておりますが、病状説明をし ていただいて内容を少し知らせていただいた方がよろしいだろうという判断で返戻にな ったということでございます。  事例1のツリー図で、1ページは、○印のついた7,000点以上の金額で請求している という意味でございます。  2ページですが、もしこれが仮にてんかんのような分類区分ですと、右側に○印のつ いた3,000点ぐらいからスタートする分類区分になる。  3ページを見ていただきますと、呼吸不全ということになりますと、一番下の分類区 分の、○印のやはり3,000点台の、4,000点弱の点数からスタートすると。 こういうことになりますので、合計点数は随分違ったものになってしまうということ になります。 次に、事例2でございます。  事例2につきましては、慢性腎不全ということで請求がなされておりまして、ツリー 図のこの説明では4ページです。実日数は2日間でございます。慢性腎不全でございま すので、4ページのツリー図上に○印のつきましたこの分類区分で病院側は請求してき ているわけでございますが、診療内容をごらんになっていただくとおわかりのように、 総合計の請求点が2万1,000点、21万円ほどでございまして、その出来高部分を通覧し ますと、DIC以外はもうほぼ100%この水晶体の再建術。  傷病名でいうと入院のきっかけになった右加齢性白内障ということで、実際の診療内 容は白内障以外に確かに慢性腎不全で何か医療資源をお使いになったのかもしれないし、 入院後の発症に腎移植拒否反応の疑いとありますが、こういったものであれば2日間の 入院で白内障手術がどのように行われるのか、そのあたりのところが審査委員で疑問が 生じまして、これも返戻をして、資料2の5ページをごらんいただきますと、白内障の 場合ですと○印のつきましたこの分類区分になりますので、本症例で1日当たり2,900 点ということで請求がなされておりますが、白内障の分類区分ですと2,418点というこ とになりますので、点数的には低い点になってしまいます。審査委員としてはこれはい かがかなというところで、返戻になった事例でございます。  次に、事例3でございます。ツリー図は6ページと7ページでございます。  事例3は、傷病名が大腸癌となっております。入院期間は3日間でございます。この 場合、主病名も入院の契機となった傷病名もいずれも大腸癌でございますので、入院以 前に大腸癌という診断はついていたと考えられる事例でございます。  そこで、手術を拝見いたしますと、手術は良性の内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術、 K7212で請求されて、実際に出来高でもそれが行われております。  もしも大腸癌であるということでありますと、通常、一般的に手術はK7211、早期悪 性腫瘍粘膜切除術などになろうかと思います。その場合には、6ページのツリー図上、 本症例では上の方の1日当たり2,931点の分類区分でとっておりますが、もし仮にこれ が悪性腫瘍手術ということになりますと、下の方の○印、2,797点が2日間と2,189点が 1日ということになりますので、本請求の8,793点は7,783点ということになってしまい ます。  もし仮にこれが良性の手術で、病理の結果、悪性腫瘍とわかった場合には、入院のき っかけになった病名は大腸癌ではないのだろうと考えられます。 そして、もし仮にこれが大腸ポリープの傷病名ということになりますと、次の7ペー ジの○印のついたツリー図になりますので、同じように大腸ポリープという病名で本手 術を行いますと、この2,838点が1日、2,283点が2日、これもやはり7,404点と、いず れも請求よりかなり下回る点数になってしまうということになりますので、これは手術 か入院のきっかけになった病名か分類区分か、いずれかはおかしいのだろうと。相互の 関連性としては合わないということで、これも返戻になったということでございます。 次に、事例4でございます。ツリー図の表では8ページと9ページでございます。  これは傷病名は、分類区分がイレウスということで請求されておりまして、入院の日 数は4日間でございます。ここで出来高部分の、あるいは関連情報の手術を拝見いたし ますと、腹腔鏡下の虫垂切除術となっております。  絶対とは申しませんが、一般的にイレウスを起こした患者さんに対して腹腔鏡下の手 術というのは、どこの外科医でもなさることはまずないだろうということでありますの で、ここでまず第1の疑問が生じてまいります。そして、小腸切除術もあわせて行って おります。4日間の入院。手術法と傷病名。  そうしますと、8ページの○印のツリー図ですが、これがイレウスの分類区分でござ いますので、最初の入院Iは3,105点でレセプトは請求されておりますが、もしこれが 急性虫垂炎で分類区分ということになりますと、次の9ページになりまして、○印のツ リー図ですが、3,226点が3日間で、残りの1日は2,490点になりますので、請求の 12,420点よりも下回るということになります。 この場合も、イレウスの状態でなぜ腹腔鏡下の手術が行われたか、また、もしそうだ とすれば小腸の切除を行った理由もわかりかねますので、あわせてこれも返戻して説明 をいただこうとなった事例でございます。  事例4−2はその詳細でございますが、麻酔その他を考えますと、手術とこういった 出来高部分だけ見ると整合性はとれていますが、分類区分とはちょっと違和感があると いうことでございます。  次に、事例5について説明をいたします。  10ページにツリー図がございますが、先に12ページの診断分類を行うに際しての国か ら出ております通知をごらんいただきたいと思います。これは18年4月に加わった部分 で、下線のついた部分でありますが、主に下から5行目から2行目あたりでございます。 これは入院中に複数の手術行為――例えば手術が2つ行われるとか、あるいは輸血も手 術に該当いたしますので、複数の手術行為等が行われまして、診断分類区分は当然1つ に決まるわけでございますが、その中で複数選択する可能性がある場合につきましては、 下から2行目に書いてございますが、「ツリー図上、下に掲げられた診断群分類を優先 して選択すること」と通知できちんと定められております。  そして、その前の11ページには、この症例の定義テーブルが記載してございます。こ こで手術欄の下から6番目をごらんいただきますと、K7402直腸切除・切断術、低位前 方切除術というものが対応コード01でございます。このことをちょっとお気にとめられ て、ツリー図に戻ります。  そうしますと、事例5のレセプトを見ていただきますと、病名は直腸S状結腸癌で、 17日間の入院ということで分類区分の決定がなされております。  ここで関連情報を拝見いたしますと、この病院は保存血輸血、つまり輸血をしたとい うことでツリー図を決定したということでありますので、上の分類区分を見ましても、 分類区分の手術コードのところが97となっております。そして、右側にもその他手術と いうことで、輸血等をあらわすものになっております。  しかし、先ほど通知と定義テーブルで御説明しましたように、出来高部分をごらんい ただきますと、51と書いてある右側に直腸切除・切断術2、低位前方切除術――先ほど 私が申し上げましたK7402という手術をこの病院は当月実施しております。  となりますと、10ページのツリー図に戻りますと、この病院は○印のついたその他手 術、つまり輸血の方でコーディングをしておりますが、これは01カテゴリー、つまり一 番下にありますK645等、先ほどの01カテゴリーにこのK7402は入っておりますので、 こちらの通知からいって下の分類区分が優先するのだということが書かれておりますの で、○印のついているここの分類区分を選定していただかなければ通知に違反をしてい るということになります。  そうしますと、請求点数が2,995点の分類区分で5万915点でございますが、この正し い手術のツリー図で算定いたしますと、1日当たりが2,989点、5万813点と、少し下回 る点数になってしまうということになりますので、これは通知に従い、分類区分の選定 法が間違っておりますということで、返戻をしたものでございます。 次に、事例6に参ります。ツリー図は13ページと14ページでございます。  この例は、どなたでもごらんいただくとわかりやすいのでございますが、分類区分は、 傷病名のところをごらんいただきますと、ICD10コードはI48で、一過性心房細動と いうことで傷病名を決定しておりますが、この分類番号を見ますと、最初が010060、つ まり01という神経系疾患ということになっております。右を見ますと、当然のように脳 梗塞であるということになりますので、これは傷病名に書いていただいた心房細動とい う循環器疾患であれば、最初からMDC自体も違っているということになります。DP Cで決定された傷病名と分類区分が一致していないということでございます。  関連情報を拝見しますと、経皮的カテーテル心筋焼灼術を行っておりますので、やは りこれは一過性心房細動で何らかの理由で分類の決定が誤ってしまったのだろうという ことになります。  御参考までに、13ページで脳梗塞、その○印のついております1日当たり3,584点が 15日間。  5万3,760点ということで請求をしておりますが、もし仮にこれが正しく一過性心房 細動でこの経皮的カテーテル心筋焼灼術を行ったということになりますと、ツリー図で は14ページ、○印のついておりますこの分類区分になりますので、最初の3日間が 3,024点、以下14日までDPCが設定されておりまして、この患者さんは15日間入院し ておりますので、14日間のDPCと1日分は特定入院期間超過で出来高になると。本来 そういう請求にならなければいけない。  ちなみに点数を申し上げますと、この分類区分ですと合計は3万2,296点、30万円 少々でございますが、実際の請求は53万円をはるかに超えておりまして、明らかに分類 区分と傷病名が異なっているということで、これも返戻をしてレセプトをつくり直して いただくということになります。  今月いろいろありました中から、比較的典型的かなと思うものを6例ほどお示しいた しました。以上でございます。どうもありがとうございました。 ○西岡分科会長  ありがとうございました。個々の事例につきまして詳しく御説明いただきました。  ただいまの御説明に対して、御質問がございましたらどうぞ。 ○齋藤委員  社会保険中央総合病院の齋藤と申します。大変詳細な御説明をありがとうございまし た。返戻に至ったケースを見ますと、1つは、ツリーの読み方が非常に不適切であると 思われるものがあって、これは今後の課題でありますが、DPC参入病院の条件として、 ツリーをきちんと読むことができることは病院に最低必要な能力だと思います。それが 担保されない病院は、やはりDPCには不適切な病院ということになるかなと。ちょっ とジャンプして申しわけございません。  もう一つは、第1例目にあるようなDICの症例です。こういう症例は病院側として はもう少し詳細なDICであるという証拠をつけたいのだけれど、その手だてが必ずし も準備されていないかなと。私は数年前まで栃木県で審査しておりましたが、症状詳記 をできるだけ推奨して、紛らわしいものについては体温表などもつけて、またDICに ついては例えばFOYをどのように使ったかとか、FDPの上昇があったかとか、そう いうことまで求めて判断してきていたのですが、そういう仕組みがこういう病院から審 査機関への請求レセプトに添付するものとして、何か用意されているのでしょうか。 ○井原参考人  ルール上、それを添付しなければいけないという決まりはございません。したがいま して、照会をして、私どもでは、DICスコアが幾つであったかとか、そういうことを お聞きしないと。 ○齋藤委員  そうですね。返戻をできるだけ減らすという意味では、指導としては、読み切れない ものについては早期から診療情報を添付することが望ましいという指導が何らかの形で あってもいいのかなという気もします。確かにこれからDICを読み取るというのはか なり厳しい話ですが、逆にDICを否定できるかというと、それもできないので、情報 のないところで審査委員の方々が苦労なさっている姿が見えるので、むしろそういう読 み取れないものと思われるものについては、診療情報を添付することを勧めるという指 導が何らかのレベルであってもいいのかなと私としては感じますが。 ○井原参考人  齊藤先生の御指摘のとおりで、私どももそうしていただければ大変ありがたいと思い ます。 ○西岡分科会長  ありがとうございました。ほかに御質問はございませんでしょうか。 ○松田委員  審査をされる際に、なぜこの分類になったのかという根拠がやはりレセプト上から見 えた方がいいと思うのです。今のところ、出来高部分についてはそれが記載されるわけ ですが、その分類の根拠となった手術処置等1、2につきましても、この患者基礎情報 のところにしっかりと書いていただくという、そういう形式にしていただくと、審査・ 支払いのところでそれを担当されている先生方の御負担も軽減されると思いますし、確 実な審査ができるようになるのではないかと思います。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。 ○酒巻委員  審査のお立場として、もしこのレセプトを何か改良するなりということができるとし たら、どのような御提案があるでしょうか。 ○井原参考人  それは私個人としてはいろいろ思いはございますが、支払基金全体としてこのレセプ トの様式を変更するというのは、関係各方面とかなり調整をしなければいけないことな のだろうという気がいたしますので、今この場でこういうふうなことがわかったらとい うことはちょっと申し上げにくいのでありますが、齊藤先生、松田先生から御指摘があ りましたように、その要点となるところ、審査のポイントといったらよろしいでしょう か、そこのところは何らかの形でわかるようしていただければ、今よりも審査精度は向 上するということは申し上げられるかと思います。  それから、1つだけ、もし許されるのであれば、このレセプトをごらんになっておわ かりのように、診療関連情報のところでは、Kコードとか、Jコードとか、こういった コードと行った行為を必ず書くようになっております。ところが、出来高部分になりま すと、事例5などでおわかりのように、出来高では直腸切除・切断術のところにK7402 とかというKJコードが書かれておらないんです。ここにコードも決まっているものは 必ず書くようにという一つの記載要領上の注意がありますと、点検する側ではコード同 士で正しいかどうか判断することがきると。これだけでも手術に関しての点検精度は随 分高まると考えられます。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。  それでは、井原先生、どうもありがとうございました。  それでは、本日御出席いただきました各病院に対するヒアリングを行いたいと思いま す。今回の開催に当たりまして、事前に事務局より各委員へ資料が送付されており、既 にお目通しいただいているかと思います。時間も限られておりますので、まず、各病院 に3分以内で御説明をいただきまして、その後、委員の方々から御質問をお受けしたい と思います。どうぞよろしくお願いいたします。  初めに、松下記念病院から御説明をお願いいたします。山根先生、よろしくお願いし ます。 ○松下記念病院(山根)  時間がありませんので、早速、始めさせていただきます。  我々の病院は、松下電器の健康保険組合立の公法人の急性期病院であります。病床数 が 359床、2006年度の平均在院日数が13.7、病床稼働率が81.7%、DPCに関しまして は2004年7月よりDPC試行病院としてスタートしており、医療機関別係数は1.1514、 出来高との比較のDPC効果は全体で9.55%でした。  次いで、当院において脳梗塞疾患での包括報酬額が出来高報酬額を大きく上回ってい たということの要因について検討させていただきました。調査期間中の脳梗塞症例は60 件あり、そのすべてがJCS30未満の軽症の梗塞症例でありました。  当院では、調査期間中、医師不足から脳神経外科が閉診状態にあったため、重症症例 の受け入れができなく、このような結果になったと考えております。すなわち、エダラ ボン使用例の投与期間が軽症であったため平均で4.8日と比較的短期間であり、この注 射薬の短期投与が主たる増収要因であると推測されます。  3日以内の短期投与に関しましては、短期間で症状改善を認め中止したケース、脳梗 塞の疑いでエダラボンを投与しましたが、精査の結果、梗塞病変を認めないため投与を 中止したケース、発症後24時間以上経過していることが後に判明したため、投与を即座 に中止したケースなどであり、臨床的に合理性があり、不適当なコーディングと指摘す ることはできませんでした。  DPC制度の目的は、むだな検査や治療を極力排除して効率的な医療を実施すること により、入院期間の短縮と医療費の削減を目指すことと理解しており、その旨を日ごろ から指導しております。  今回、御指摘のありました脳梗塞症例に関して改めて調査検討いたしましたが、いず れも適切でむだのない治療内容や入院期間を心がけた結果として、包括報酬額が出来高 報酬額を上回ったと思われ、明らかに不適切な治療やコーディングは見当たりませんで した。  強いて言わせていただきますと、エダラボンには投与期間や中止理由についての明確 なコンセンサスやガイドラインがなく、病院間での投与基準にばらつきがあり、高額な 医薬品を包括評価していることに問題があり、包括範囲から出来高算定にかえていくか、 またはコーディングを症状の程度に応じてもう少し細かく分けるべきではないかと考え ております。  以上でございます。 ○西岡分科会長  ありがとうございました。どうぞ御質問をお願いします。 ○熊本委員  今、御説明いただきましたように、エダラボン投与の中でラクナ梗塞が多かったとい うことのようで、その割合がどのぐらいだったかお教えいただきたいのと、このような ラクナ梗塞のクリニカルパスがエダラボン4日ということで指定されているようですが、 入院期間が何日ぐらいで、ほとんどがバイアスなしでそういうことになられているのか どうか。それから、ラクナ梗塞以外の例で、先ほど御指摘がありましたように、投与中 止というのがどのぐらいあったのか、教えていただければと思います。 ○松下記念病院(山根)  まず、入院期間ですけれど、平均的に16.9日であります。ただし、胃瘻を増設したり して非常に長い症例もありますので、原則的には非常に短いものも含まれておりますの で、一概には言えませんけれど、5〜10日ぐらいと思っております。これもいろいろば らつきがありますので、一概には言えないと思います。  それから、割合ですが、もうほとんどがラクナ梗塞と言っていいかと思います。重症 症例は、脳外科医が不在でしたのでとれないというお約束でとっております。ですから、 ほとんど梗塞と診断をしたものに関してはラクナ梗塞でありますが、先ほどもお話しし ましたように、中には24時間以内というエダラボンの適用がありますものが、後で詳し く聞きますと24時間以上たっていたということで、即刻、適用外として途中でやめてし まった例でありますとか、梗塞という診断で治療をスタートしたのですが、どう考えて みても梗塞ではないという、そういう症例が数ある症例の中には出てきますので、そう いうものも即刻中止したというケースがあります。 ○齊藤委員  エダラボンにつきましては、当初、包括に入っていたのが、非常に高額であるために これが病院の赤字の原因になるということで、平成17年に緊急外出しになったという経 緯があるわけですね。緊急外出しを経て、18年度の診療報酬改定で特別な診断群分類と して設定したわけですが、そういう状況下で逆にほんの短期間使ったものとか、そうす ると出来高とのギャップが大きくなってきますね。これに類したことは恐らくこれから 出てくると思うのですが、先生のお立場から、こういう非常に高額なもので、一たんそ れを使ったものの、包括分類をつくるというときの注意事項とか、あるいはそういうも のは常に外出しするのがDPCの健全な発展に必要なのか、御意見を伺いたいのですが。 ○松下記念病院(山根)  脳梗塞に対する重症度の判定とか、エダラボンそのものの適用のことについても、ま だ十分なコンセンサスが私自身は得られていると思いません。今このような状況で、エ ダラボンに関して「脳梗塞ならこれだけ使いなさい」と一括してやるには、まだ非常に バラエティがあって、まだ十分なコンセンサスが得られていない疾患ではないかなと思 います。  ですから、できることなら包括にしていただいて、もう少し詳しいデータをとってい ただいた中で、原因も全く違う疾患が含まれておりますので、私どもでも心原性のもの ですと2週間パスでは使うと決めておりますので、その辺のところをもう少し……。 ○齊藤委員  包括には入れるけれども、例えば、幾日以上使ったものをエダラボン使用の診断群分 類をするのが妥当であるとか、そういうスタンダードを設けるべきだと、そういうお考 えですね。 ○松下記念病院(山根)  そうですね。それと、できれば、重症度を、例えばオリジンによって、ラクナ梗塞で あるのか、アテロームであるのか、心原性であるのかといったあたりで、少し投与期間 を分けて使うというようなことで。 ○齊藤委員  1日だけ使ったけれどやめたというのが全部エダラボン使用の包括になってしまうと、 これは保険財政はもたなくなりますので。 ○松下記念病院(山根)  ただ、そうするとほかにどこへ入れるのだということになりますと、やはり1日でも 使った以上はそこへ入れざるを得ないという問題点があるかと思います。 ○齊藤委員  そうですね。だから、はっきりしない場合は、逆に外出しのままにしておいた方がい いのかもしれないし、その辺は難しいところですね。ありがとうございました。 ○西岡分科会長  これは診断群分類そのものにかかわる大きな問題だと思います。ほかに御質問はござ いませんでしょうか。 ○宇都宮企画官  今回、ちょうど調査期間中に脳神経外科の先生がいらっしゃらなくて、神経内科の単 独になってしまったために軽症例が多かったということですが、最初、15年度のデータ をとって16年度から対象病院になられたと思うのですが、そのときには脳外科はいらっ しゃったということですか。  それから、現在は脳外科がまた復帰しておられるようですが……。 ○松下記念病院(山根)  15年度も実は脳外科はいたのですが、脳外科の体制が1人しかおりませんでしたので、 シビアな脳梗塞はできるだけ他院に行っていただくという体制をとっておりました。今 年からは脳神経外科医が2名、きっちりとした体制で勤務しておりますので、今はそう いう長期間に使っているような症例もありますので、このデータをお示ししましたよう なわけにはいかないので、少し下がってきております。 ○松田委員  参考資料を見せていただきますと、全体でのエダラボン使用割合が38%ぐらいで、今 日いらっしゃっている埼玉病院が5%ぐらいで、その中で松下記念病院が63%というの は、患者増だけで説明できるのかと、データをずっといろいろ見させていただいて、こ のエダラボン使用に関する院内の基準みたいなものがほかの施設とちょっと違うのかな という印象を持っているのですが、その辺はいかがでしょうか。 ○松下記念病院(山根)  特に違うことは私自身はないと思っております。私どもの地域がこういう疾患の多い 地域でありますので、軽症の人から重症の人までまざってくるということはありますの で、今回の期間に関しては、軽症の人しか我々は受け入れませんということを地域にも 言っておりますので、そういう症例にばかりなってしまったということであります。  それから、エダラボンの使用に関しては、適用ということで、脳梗塞という診断をつ ければ、24時間という縛りがありますので、やはりできるだけ早く使いたいということ で使っておりますので、症例的に多いか少ないかと言われると私も判断に困るのですが、 院内ではクライテリアにエダラボンの適用というものを見てちゃんと使っております。 ですから、中には後で24時間以上たったという症例も2例ほどありますし、そういうと ころは少しは出てくることに関しては仕方がないのかなという気はしておりますけれど も。 ○西岡分科会長  松田先生、よろしいですか。 ○松田委員  在院日数と投与日数の日を見たときに、使用患者数と割合との比較をしてみると、若 干ずれが大きいのかなという印象がありますので。でも、これは多分クリニカルなこと だと思いますので、これ以上は結構です。 ○西岡分科会長  また別の施設でエダラボンの適用基準みたいなもののお話を伺って、先生のところと どう違うのか、今回のDPCというのは他施設と比べていくということがものすごく重 要なポイントになりますので、今までですと、自分のところで正しいといってやってい ても本当は違っていたということがあるというのを先生方は御経験されていると思いま すので、そういうことが浮き彫りにされればと思っています。 ○原分科会長代理  エダラボンの脳梗塞の中の使用の話が出ましたけれど、私は、横浜市にございます脳 卒中センターでちょっと調べますと、先生がおっしゃられたように、これは施設によっ てかなり違うようでございます。クライテリアが発揮しないとおっしゃったのですけれ ど、ちなみに御参考までに申し上げますと、これは9月の使用例だけなのですが、18人 の患者さんに対して、この施設ではエダラボンを14人に使っていると。そういうことが ございますから、必ずしも先生方のところが多いとか少ないという比較にはならないの かなと思います。これから心原性に使うなら使う、そこがまだはっきりしないのではな いかと私も思います。 ○西岡分科会長  それでは、時間の関係もございますので、山根先生、どうもありがとうございました。 また御発言いただくと思います。よろしくお願いします。  では、続きまして、国立病院機構埼玉病院の関塚先生、よろしくお願いいたします。 ○国立病院機構埼玉病院(関塚)  当院も、エダラボンの使用に関しての問題が、最終的には問い合わせをさせていただ きまして、その問題点だということで、調べさせていただきました。  脳梗塞(JCS30未満)の症例は、この調査中94例で、そのうちエダラボンの使用が 5例でした。そのエダラボンの使用に関して、エダラボンの発症24時間以内に投与開始 し、1日30mgを朝夕2回点滴、投与期間は14日以内と規定されております。この規定に 遵守されました14日間まで使用した症例は、うちの症例としてはありませんで、3〜9 日でありました。  中止理由は、2症例が重篤になりまして、中止後死亡しました。3日間と4日間、エ ダラボンを使用して中止しております。  症状消失例が1例で、3日間でエダラボンを中止しております。副作用で中止したの が1例でありまして、CPKが1,819まで上昇したために9日間でエダラボンを中止し ております。5例目は感染症の併発とその増悪のために6日間で中止しております。こ のようなことが丸14日間使用していない理由でございます。  そのエダラボン使用の5例中の再入院は1例でありますが、これは他科の心不全で再 入院してしおります。また、全体の再入院に関しましては、94例中、19例ありますが、 脳梗塞再発に関しては5例であり、脳梗塞(JCS30未満)の症例において再入院率が 高くないと思われます。  当院の脳梗塞(JCS30未満)の症例に関する治療方針に問題はないと思っておりま す。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。今の御説明も加えまして、どうぞ御質問をお願いします。  こちらの手元のデータで見させていただきますと、先ほどの松下記念病院の場合はJ CS30未満の件数60例に対してエダラボン使用者が38名で、先生のところは110例の患 者さんに対して6例と。ですから、かなり投与されているものが違ってきていると思わ れますが、この違いみたいなものは、先生、推測としてお話しいただけますでしょうか。 ○国立病院機構埼玉病院(関塚)  私は神経内科医ではありませんが、まずは、エダラボンというのはt−PAのような 血栓溶解剤のような根本的な治療とは考えられなくて、どちらかというと脳梗塞の回復 を図るための補助的治療だと考えております。また、活性酸素のスカベンジャーの意味 からいきますと、早期に使わないとその効果が出てこないことだと思っております。  また、このエダラボンに関しては、私の病院も臨床試験に参加しておりまして、その ころから他施設で腎不全死亡例の報告がたくさんありますので、これに関して我々も慎 重に投与するということで、少し少なくなっている可能性はあると思います。 ○西岡分科会長  先生のところはむしろ適用基準が少し厳しくなっているということになるでしょうか。 ○国立病院機構埼玉病院(関塚)  厳しいというか、患者さんを見て、特に御高齢で何か合併症を持っている患者さんば かりですから、そういうことで症例が少なくなっていて、使わないでやっていこうとい う考え方ではないと思います。 ○西岡分科会長  はい。どなたか御質問はございますでしょうか。 ○松田委員  埼玉病院の場合には、オペなし、処置なしの医療資源を最も投入した傷病名というの は、椎骨脳底動脈循環不全というのが非常に多いという印象を受けるのですけれど、ほ かのデータは見ていないのですが、脳梗塞の中にこのくらいこういうものが出てくるも のなのでございましょうか。 ○国立病院機構埼玉病院(関塚)  はっきりしませんが、目まいで入った患者さんに関しての病名の把握の仕方だと思っ ておりますけれども。そうお答えするだけで、私はそれ以外はできないと思っています。 ○松田委員  私自身が知りたいなと思っているのは、この椎骨脳底動脈循環不全で入られた方が、 退院時にそれは脳梗塞疑いであったのか、それとも通常の目まいであったのかという、 その確定診断がどうだったかということが一番気になるのですけれど。 ○国立病院機構埼玉病院(関塚)  その中には、何回かMRをとったりして実際に見ている症例がありますけれど、全部 がMRで確定できた症例ばかりではないと思います。臨床診断と画像診断とをあわせて 判断しているのだと思っております。 ○松田委員  熊本先生が脳神経内科医ですので、いかがでしょうか。 ○熊本委員  最終診断にどういうものが使われてどうされたかというところが、コーディングの中 でどう生かされるかということが重要になってくると思いますので、そういう情報がど う返ってくるかということが肝心かと思います。 ○西岡分科会長  ほかにはよろしいでしょうか。  それでは、関塚先生、ありがとうございました。  続きまして、東京女子医科大学病院の久保先生、お願いいたします。 ○東京女子医科大学病院(久保)  東京女子医科大学病院の久保でございます。今回、私どものところは化学療法を施行 した症例における包括範囲の点数のことについてのヒアリングでございます。  当大学は、現在、実稼働数は1,261床でございまして、外来者診察は平均4,000人ぐら いでございます。平均在院日数は16日ぐらいで、稼働率は85%ぐらいを保つようにして おります。  今回、化学療法の症例でございますが、私たちの病院は非常に多岐にわたっておりま して、16診療科で化学療法を行っておりまして、今回のこの化学療法の症例に関して言 いますと、消化器病センター、これは外科と内科を含めたセンターでございますが、そ こが約42%を占めておりまして、そのほかに、一般外科が12%、呼吸器内科・呼吸外科 系として化学療法を施行しております。  先に事務的に提示しました内容の一部がちょっと現場とかけ離れた形になっておりま したので、御訂正させていただきます。  (1)は、私どものところの症例の中で消化器病センターの肝疾患が非常に多くて、その ためのTAEを行い、そのときに化学療法も併用するということがございます。  それから、患者さんの内容でございますが、パフォーマンス定数のKPSとか状態の 悪い患者さんがおられまして、消化器系、呼吸器もそうでございますが、そのためにフ ァーストラインという化学療法が使えない、セカンドライン、サードラインとなってし まうと、こういう結果に出るのかなということでございます。  それから、ジェネリックを使用していると記載いたしましたが、これはちょうど昨年 の暮れあたりからどんどん導入していましたので、この統計のところにはまだ入ってお りません。これは御訂正させていただきます。  それから、消化器癌のTS-I+CDDPも今クリティカルパスをやっと導入したとこ ろでございます。今、大学で必死になって導入しているものですから、これも導入して いるものと、その当時の導入されていたものとして、形としては患者さん情報のパスは 導入しておりましたが、現在の新しいパスシステムとしては導入しておりません。これ も御訂正させていただきます。  このように、現在、私たちの御指摘を受けましたところは、先ほどもお述べいたしま したような消化器系のがんにおきましてのTAEの症例が非常に多いこと、そして、患 者さんのパフォーマンス定数が非常に悪いことで、化学療法の量の問題が一つ関与して くるということでございます。  もう一つは、データを見ますと、血液内科とか最初から標準治療をどんどんやるとこ ろに関して言いますと、全国的なものとそう差はないということがございましたので、 その分、御報告させていただきます。ありがとうございます。 ○西岡分科会長  ありがとうございました。では、どうぞ御質問をお願いします。 ○山口(俊)委員  いろいろな病院で問題になっている可能性がありますけれど、先生のところはTAE を非常にたくさんやっておられるということで、スポンゼルとか塞栓剤を使わずに、リ ピオドールを使った場合にはどういう取り扱いをされていますか。 ○東京女子医科大学病院(久保)  済みません、私は脳神経外科医なので、後ろに消化器の大学院の教授が来ておりまし て、今聞きまして、それは化学療法なしでやっております。 ○東京女子医科大学病院(随行者)  抗がん剤を使わない限りは化学療法なしということにしております。塞栓でゼリで詰 めているときにも抗がん剤の請求はしていません。 ○山口(俊)委員  つまり、リピオドールを使ったものをTAEとするかTIAとするかということなん ですけれど。 ○東京女子医科大学病院(随行者)  TAEを使っています。 ○山口(俊)委員  それについては、リピオドールには確かに塞栓作用はありますが、強度としては弱く て、一般的にはエンボライゼーションという感じではないと思うのですけれど、実際に は確かに広くそういう解釈もされていると思いますが、そのあたりはやはりエンボライ ゼーションだという御理解で使われているわけですか。 ○東京女子医科大学病院(随行者)  基本的にリビオドール単独で使っているのはほんの数例だと思います。アドリアマイ シンなどの薬剤と包括して使うことがほとんどですので、TAEの中のほとんどは抗が ん剤、化学療法ありの方についていると思いますが、血管がうまく使えない方に関して リピオドールだけでやるという症例はあると思います。 ○山口(俊)委員  抗がん剤を使うとか使わないとかではなくて、リピオドールを使えばそれが直ちに塞 栓療法になるのかという質問なんですけれど。 ○東京女子医科大学病院(随行者)  そのようしています。塞栓療法としています。 ○山口(俊)委員  このあたりについては、国際的にはそういうものが塞栓療法として認められるかどう かわかりませんが、ただ、現場の意見を聞いてみますと、昔は非常に巨大なツモールば かりで、スポンゼルとかを詰めなければ塞栓療法にならなかったのですけれど、最近は 非常に小さいのが見つかって、そういうものはもうリピオドールだけで詰まってしまっ て、塞栓効果があるのだということで、最近は必ずしもそういうものを使わなくても、 そういう取り扱いをしてもいいんじゃないかという意見を専門家の先生がおっしゃった ので、そのあたりをお聞きしたかったのです。ありがとうございました。 ○酒巻委員  TAEを行った症例の平均在院日数というものと、その中で抗がん剤全体をどの程度 お使いになったかということの割合について、お教えいただければと思います。それが この数値を説明できるものだと思うのですが。 ○東京女子医科大学病院(久保)  TAEを行った症例は208例ございました。在院日数が11日でございます。この症例 が全体のTAEで化学療法なしのデータをとってこなかったので済みません、今回の 857例のTAEの症例では在院日数が11日でございました。 ○酒巻委員  つまり、結果的にはTAE以外の日に抗がん剤をどの程度お使いになっているかとい うことが知りたかったのですが、普通は使わないということでいいわけですか。 ○東京女子医科大学病院(久保)  はい、普通は使わないです。 ○佐藤委員  今の抗がん剤のジェネリック医薬品についてお聞きしたいのですが、今回の算定では ジェネリック医薬品が入っていないということですが、現在お使いになっている段階で のお話でよろしいのですけれど、何を使っておられるかということと、今、有効性とか 安全性についていろいろ問題点があるのですが、先発医薬品とはどの程度差がないかと か、その辺でもし御意見がありましたらお願いしたいと思います。 ○東京女子医科大学病院(久保)  これは私もその委員の1人でございまして、病院全体で後発薬品の導入をどうするか、 大学の薬事委員会でまず先発が承認されておりますので、後発をどうするかというとこ ろで非常に議論が多くて、基本的に抗がん剤になりますと、現在、外来加療がふえてま いりますので、わざわざ後発にしなくてもいいんじゃないかということになりますが、 薬品名が非常に紛らわしい。特に後発は逆に言うと薬品名で出てくることがあるので、 これはリスクを回避するには非常にいいだろうということで議論しております。  現在、シスプラチンなどを導入していますが、これは病院首脳といろいろな薬事の委 員の中では、かえるということで、今、5種類ぐらいやり始めています。例えば、カル ボプラチンとかシスプラチンとか、いろいろな大学がどれぐらい利用しているか、特に 独立法人はかなりよく利用しておりますので、そこの情報を集めながら利用していこう と。それは昨年の8月ぐらいから検討を始めまして、かなりいろいろな臨床家からのク レームがつきまして、難しいところです。でも、これはやらなければいけないことの一 つだと思っております。お答えになっておりますか。 ○佐藤委員  ジェネリック医薬品が、名前が紛らわしいとかそういうことはわかったのですが、使 っているときに従来の先発医薬品のアドリアマイシンでもよろしいのですが、そういう ものとジェネリック医薬品のあるものとの有効性が同じであるかということ、重篤な副 作用の頻度などがどの程度かなど、症例数は少ないとは思いますけれど、もしおわかり になればお教え下さい。 ○東京女子医科大学病院(久保)  今のところ、薬事などのところには、使った症例に対する問題点は出ておりません。 出たのは造影剤だけでした。 ○佐藤委員  ありがとうございました。 ○西岡分科会長  ほかに御質問はございますでしょうか。 ○伊藤委員  制度上のことがわかっていなくて申しわけないのですが、これの記載されている理由 で、TAEの抗がん剤が包括の外に出てしまうということであると、今後はTAEをや ったりということでほかの化学療法を併用していないものに関しては、化学療法なしの コーディングをつくらなければいけないという理解でよろしいでございましょうか。 ○東京女子医科大学病院(久保)  これは処置の手術ありで、化学療法ありになるコーディングだと思っております。 ○伊藤委員  ただ、実際に化学療法に相当する抗がん剤に関しては外出しになってしまっているの で、中ではないということなので、こういうケースに関してはコーディングを特殊に考 えないといけないと、そういう理解でよろしいでございましょうか。 ○東京女子医科大学病院(久保)  これは制度上とは違うことをおっしゃっているわけですね。手術中に化学療法を使っ ているので、それは包括になってしまうので、それまで化学療法ありとするのはどうか ということでございますね。それはぜひ御議論する対象の処置だと思います。これはこ れから多分ふえるかと思います。1回の手術のときに局所投与するとか、ふえてくると 思いますので。  けれど、今の制度上は、放射線あり、化学療法なしというところの制度はありまして、 放射線があって化学療法をやっても、放射線ありしかできないというコードもあります ので、それと今回のこちらの胆道などのときにはTAEの処置のところで化学療法をし たから、それは手術だけのコーディングで化学療法ありとしてはいけないということは ありませんので、これは今のところ、もし考えるならば考えるところかもしれません。 それは私が言うことではありませんけれど。 ○西岡分科会長  では、これは事務局の方から言える範囲でお願いします。 ○中田補佐  事務局からの補足説明でございますが、術中に化学療法を実施した場合にも、化学療 法ありのコーディングは可能です。 ○山口委員  細かいことかもしれませんが、この(3)の「薬価の高い新薬や分子標的薬による化学療 法の多くは外来治療で行っていること」というのは、外来の治療の多くがむしろ薬価の 高いものでたまたまあったということなのでしょうか。それとも、高いから(笑)……。 このまま読むと、高いから外に出すというふうになってしまうので、多分そうではない のだろうとは思うのですが、もしこういうことがあると、極めてDPCの今の制度が悪 いということになりますので、文章がちょっとよくないんじゃないかと思って、質問し ました。 ○東京女子医科大学病院(久保)  済みません、この文章はどちらにも理解できそうなので。私もこの文章を見てちょっ と愕然としたんですけれど、患者さんの環境とかいろいろな問題で薬は選んでいると思 いますので。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。なかなか答えるのが難しい質問ではないかと思いますが。ほ かによろしいでしょうか。  それでは、久保先生、どうもありがとうございました。またコメントをいただくと思 います。  続きまして、聖路加国際病院の西先生、お願いいたします。 ○聖路加国際病院(西)  聖路加国際病院のハートセンターの西と申します。聖路加国際病院は、約500床の救 命救急センターを併設しております急性期病院でございます。私は、心筋梗塞の患者様 の治療に携わっておりまして、今回は心筋梗塞手術ありの症例において、全国平均 16.99日のところ、当院の在院日数平均が7.49日ということで、それについての御報告 をさせていただきたいと思います。  心筋梗塞の治療は、現在、経皮的冠動脈形成術、あるいはステント留置術が行われて おりまして、院内死亡率もほぼ全国的にも5%前後まで低下しておりますが、退院まで の時間を決める因子としましては、心筋梗塞サイズによる心機能の低下の程度が重要と 考えられております。  当院では、救命センターとハートセンターとの連携ということで、ST上昇型で診断 されれば、そこから治療までにかかる時間は30分以内と、比較的短くできるようになっ ておりまして、また、治療上のステントの使用などによって合併症の低下、成功率の上 昇で、ほぼ100%の成功率が得られております。これらの結果によって、梗塞サイズの 減少、心機能の保持が可能となって、その後、1週間のリハビリテーションを終了して 退院できるという状況になっております。昨年の7月から12月までのデータを見まして も、約44%が平均在院日数7〜9日で退院できております。  当院の特徴としては、ST低下型あるいは非ST上昇型と言われる比較的酵素の逸脱 は軽症なのですが、ハイリスク群をどうするかという状況で、こういう急性肝症候群と 言われているグループの心筋梗塞に関しては、入院後、保存的に診る治療法と早期に侵 襲的治療に入る選択肢がございまして、退院と比べての特徴といいますと、当院は早期 に侵襲的な治療、いわゆる経皮的血管形成術を行うという選択をしておりまして、それ によって在院日数期間が2〜4日で退院までもっていけるというグループがそれに当た っていますが、今回の半年のデータでは26%がそれに含まれており、これが全体の在院 日数を短縮化させているのではないかと考えております。  重症度の高い患者さんも含まれておりますが、全体の在院日数が短いのは、多くの患 者さんが比較的早い段階で退院できるようになったことと、早期の侵襲的治療に入るこ とで全体の在院日数が低下していること、この2つが当院においては特徴かと考えてお ります。以上でございます。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。御質問をどうぞ。 ○齊藤委員  在院日数が非常に短いというのは幾つかの要因があって、例えば、先生のところに来 る患者さんの質が全国平均から違っているのか、行っている医療の中身が非常に違うの か。それから、退院してもかなり高度ないわゆるケアができる環境の患者さん群という のもあると思うのです。欧米などはそういうことで、早く帰って、しかも訪問看護など を受けながら在宅でやっているというのが結構ありますから、そういう考え方もありま すが、先生方は、患者の質なのか、提供する医療なのか、退院後のケアがいいのか、ど ういうところに理由がありますか。 ○聖路加国際病院(西)  今回のことでいろいろ過去も振り返ってみたのですが、2001年に当院の現在の院長の 福井が京都大学におりましたときに、日本の心筋梗塞の在院日数の比較ということで、 当院を含めた4病院、小倉記念、渓仁会手稲病院、九州総合医療センターというところ のデータの比較というものを出しておりまして、当時から病院間による在院日数の差の 大きさは、多いところでは40日、短いところでは13日というのがございまして、医療の 質そのもの、あるいは治療の内容が大きく施設間で異なっているということは決してな いのですが、診断から治療に至るまでの時間に関しては、どの施設も心筋梗塞の治療に おいては差はないと思うのですが、治療から退院までの間の期間に関しては、その施設 の病棟の状況とかスタッフの状況などによって差があった、しかしその差は縮まってき ているのではないかというのが最近の傾向かと思います。 ○齊藤委員  そうすると、病院のポリシーなんですか。つまり、無理して帰すのではなくても、僕 などは、受け皿がいいために早く在宅でもケアできると、先生のところの患者さんなど はそういうハイクラスの方が多いのかなんて思うのですが(笑)、その辺はどうなので すか。 ○聖路加国際病院(西)  例えば救命センターですと、おひとり暮らしの方などもたくさんいらっしゃいますの で、決して患者さんによって違うということはないのではないかと思います。 ○齊藤委員  なるほど。むしろ病院のポリシーなんだ。あり方というか。 ○聖路加国際病院(西)  そうですね。当院の平均在院日数自体が、私が10年前に来たときから12日前後と非常 に短い病院で、私自身はその前は10年間虎の門病院にいたのですが、それと比較しても、 最初から短くて、これでもみんな元気になって帰れるのだというふうな感覚は私も持た されたのは本音でございます。 ○齊藤委員  わかりました。ありがとうございました。 ○武澤委員  治療内容がいいのだとちゃんとおっしゃったらいいと思うのですけれど(笑)。ただ、 この議論のときにいつも出てくるのは、重症度はどうだったのかと、アウトカムはどう だったのかと。ここで重症度の分類はされていないですね。ですから、重症度分類をさ れれば誰も文句は言えないことになります。  それから、アウトカムですけれど、再狭窄による再入院率が何例か、ここでは1週間 以内と書かれていましたけれど、例えば28日以内にどのくらい再入院したかとか、そう いうデータも一緒にお示しいただければ、これは明らかに聖路加の心筋梗塞の治療が、 どんなときでもすぐステントを使うというのはちょっと問題はあるかもしれませんけれ ど、そういうことも含めて、ステントを使ったって最終的にアウトカムがよければいい ので、そういうデータも一緒にお示しいただけると良いと思います。齊藤先生は優しい からじんわりとおっしゃいましたけれど(笑)、どんなところでも重症度でリスク調整 していないという批判はあるわけですから、それを一緒にお出しいただけると、だれも 文句を言わないで、これは聖路加の心臓センターは非常にすばらしい治療成績を示して いると評価できると思うのです。  しかも、在院日数は短いわけですし、いい治療をすれば医療費も下がるということの 非常に典型的な例だと思いますので、そのデータも一緒に出されると、皆さん納得され ると思います。 ○聖路加国際病院(西)  特別調査につけさせていただいたのでは、昨年の7月から12月までのリストを出しま すと、死亡例が1、大動脈内バルブパンピング施行例が5、経皮的心肺補助施行例が1、 心肺停止後蘇生例が2、この2例は在院日数が43日と46日ということで、いわゆる低体 温療法なども含まれております。その比率が15.8%ということになっておりまして、心 筋梗塞という病気でくくりますと、大体2割前後が重症例で、それはすごく伸びている、 あるいはものすごく早く亡くなってしまうという形で、大半が1週間前後で帰れるグル ープに今なっているということではないかと思っております。 ○武澤委員  ですから初診時の重症度が大切で、その後でIABPやPCPSを使いましたとかい う話になると、治療が方法が悪かったから重症化したという可能性だってあるわけでし ょう。ですから、最初に入ったときの重症度と、再梗塞や再狭窄がどのくらいあったか とか、そういうデータも本当は示していただけるとすごくいいと思います。 ○聖路加国際病院(西)  1週間以内での再入院だけこのデータはとりまして、昨年の半年間では1例というこ とになっております。 ○武澤委員  もうちょっと長期間でとっていただけるといいと思います。 ○聖路加国際病院(西)  はい。 ○佐藤委員  今回、パス学会の理事長が福井先生になられたので、やや質問しにくいのですが、ク オリティーインディケーターを、福井先生は実践されておられて、私もその第1版をい ただいております。その中には既に治療手技などが、例えば、胸部外科における72時間 以内の再手術率が57人中0とか、いろいろ出ております。最近その第2版が出されたと いうことを福井先生がおっしゃっていました。そういうものをもっと皆さんに開示して いけば、よりわかるのではないかなと思いますので、コメントだけさせていただきまし た。 ○聖路加国際病院(西)  はい、ありがとうございました。 ○齊藤委員  日本の病院医療の大きな課題は、やはりまだ在院日数が国際的に見て長過ぎるという ことで、いわゆる社会的入院みたいなものが多いので、まだまだ削って短縮していける だろうというのは、各方面から指摘されていることで、そういう点から言うと、先生方 の心筋梗塞の在院はむしろ模範的な姿かもしれないんですね。  そういうことから言うと、このDPCのときに全体のシグマから外れたものが案外突 出したすぐれた医療の見本かもしれないという読み方は、ぜひ慎重に採用していかない といけない。外れているからだめなんだ、みんなで一緒にいれば大丈夫なんだと、そう いう安心感にとらわれていると、変なところに長期入院が収れんしてしまう可能性もあ りますので、気をつけて見たいなと自戒しております。 ○嶋森委員  治療のことは余りよくわかりませんが、先ほどの福井先生の調査で、治療する前の時 間は余り変わらないが、治療の後の時間が非常に短いとおっしゃっていました。検査開 始まで30分以内というのは非常に早いと思います。アメリカでも胸痛がある人に30分以 内に処置をした場合、効果が高いという調査結果賀あるようですね。それと比べてみて も、こういう仕組みがあるということが回復を非常に早めるということになるのではな いかと思うます。  そういう意味で、ハートセンターという仕組みが効果を上げているのではないかと思 います。そう考えると、胸痛のある患者さんについては、そういう仕組みがあるところ で見ていくということを提案できるのかなと思いますが、その辺はいかがでしょうか。 ○聖路加国際病院(西)  もちろん1分でも早くという気持ちで日常臨床に携わっておりますが、東京ですと、 東京消防庁と東京CCU連絡協議会というのがございまして、今、62施設入っています が、そういう施設間でのいろいろなデータがございますけれど、その30分という時間は、 早い方だとは思いますが、どの施設も最低でも1時間以内にはカテーテルまで到達でき るような、医者としての方向づけはできていると思っております。決してほかの施設が 遅いという意味ではないと思っております。 ○嶋森委員  先生は遠慮なさっておっしゃっているのかわかりませんけれど、日本の今の仕組みの 中で、30分以内にそういう患者さんがきちっと検査や治療を受けられるという施設は、 そんなに多くはないのではないかと私自身は認識しています。 ○小山委員  大変すばらしい成績なんですけれど、一つお伺いしたいことは、この57例はすべて急 性心筋梗塞の救急入院ですか。 ○聖路加国際病院(西)  はい、そう判断して、手術ありでございまして、みんな緊急の細管リロ血管形成術に 回っているグループでございます。 ○小山委員  では、心筋梗塞の診断はどのレベルでなさるのですか。 ○聖路加国際病院(西)  来たときの心電図とか、そういう意味でございますか。 ○小山委員  はい。あるいは、これはCPKという、酵素がいろいろ書いてありましたけれど、そ の辺はいかがなんですか。 ○聖路加国際病院(西)  現在でも、心筋梗塞というには、酵素の上昇、要するに逸脱梗塞が上昇しているとい うことを根拠にしておりますので、最終的に酵素が上がれば心筋梗塞という診断なので すが、患者さんがいらっしゃった段階でST上昇で既に治療には入ってまいりますが、 実際は酵素が上がらない場合とか、上がっても軽度な場合というのは含まれております。 それを非ST上昇型の心筋梗塞、あるいは不安定狭心症という言い方もしますし、最近 はそれを急性肝症候群という形でひっくるめていますが、治療に入ろうとする意思決定 をする段階では、それが大きな心筋梗塞になるかどうかはまだわかっていないという状 況でございます。 ○小山委員  わかりました。今、皆さん大変お褒めの言葉をたくさんいただいたのですが、私は心 臓外科でやっている関係で、狭心症と心筋梗塞がこの中に入ってしまって、先生の資料 を見させていただきますと、緊急で入院して2日で退院している患者さんが何人かいま すよね。心筋梗塞という診断がついて2日で退院させられてしまうと、ほかの心筋梗塞 の患者のバランスが崩れてくるんですよね。  ですから、これは分類とすれば、もし酵素が動いていないのだとしたら、これは狭心 症の診断分類の中で動いていただかないと、何が一番違うかというと、1の入院期間が 全然違うわけです。そうすると、心筋梗塞の患者さんを3日で帰すことがもし正しいの だということになると大変な問題になるので、そこら辺のところはよく考えていかない と、これは齊藤先生もよくおっしゃっていますが、余りここを効率よくしてしまうと、 自分たちで自分たちの首を締めてしまうことになるんですよね。  ですので、もしこの2日とか3日で退院される方で酵素が全然動いていないのだとし たら、たとえ緊急入院であっても、狭心症の方の分類にした方が、このDPCのこれか らの運用の中では正しいのではないかという考え方も出てくるのですが。 ○聖路加国際病院(西)  おっしゃるとおりかと思っております。ただ、結果的に酵素がちょっと上昇するケー スは多いんです。それと、最近はトロポニンとか、それをマーカーにして診断と治療に 進んでいくという方向になっておりまして、もし酵素がこのぐらいまでだったらそれは 不安定狭心症にしてくださいということであれば、そのように対応できますし、いわゆ る心筋梗塞のイメージからすれば、うちでしたら7〜9日前後で退院している人がいわ ゆる心筋梗塞でございまして、この早いグループというのは不安定狭心症と言われてい るグループに含めていただいても構わないと思います。 ○小山委員  いや、構わないじゃなくて、含めてしまうと僕らの裁量権がなくなってしまうので、 やはりこのところの診断は慎重に、急性心筋梗塞にするのか狭心症にするのかというの はよく考えてやらないといけないんじゃないかなと思います。点数的にはそんなに大き な差はないわけですので、これを全部心筋梗塞でやってしまって2日とか3日になって しまうと、本当の心筋梗塞で7日がどんどん短くなってしまうという結果になってしま うと思うのです。  ですから、心筋梗塞の診断基準ということになってしまうのかもしれませんが、確か に緊急入院で来ても狭心症だけで全く心筋ダメージがなければ、あるいは次の日に退院 するということは幾らでもあり得るのですけれど、心筋梗塞という診断が下って、酵素 がある程度上がって、心筋ダメージを受けた場合に2日とか3日で本当に帰していいの かなという思いがちょっとしましたので、質問させていただきました。 ○熊本委員  同じようなことなのですけれど、たしか昨年度のDPC調査資料の聖路加国際病院を 見させていただきましたら、狭心症の診断群分類050050、手術ありが多くあったのです けれど、やはりステントを留置する症例なのでしょうか。今議論がありましたように、 狭心症と心筋梗塞の診断基準の差が難しいところかと思うのですが、酵素が上がったも のを心筋梗塞と、今のこのコーディング上ではされているのでしょうか。 ○聖路加国際病院(西)  はい、そう思っていただいて結構でございます。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。まだいろいろお伺いしたいことはあるのですが、時間の関係 もございますので、次に移らせていただきます。  それでは、次に、松波総合病院の松波先生、よろしくお願いします。 ○松波総合病院(松波)  松波総合病院の松波でございます。よろしくお願いいたします。当院は436床の急性 期病院で、岐阜の田舎でやっておりますが、まず、当院のコーディングの方法の流れを 簡単に御説明させていただきます。  電子カルテにはなっておりませんが、可能な限りの医療情報を電子化する工夫をして おりまして、病名に関しましては、入院時に主治医がICD10コード病名をパソコンに 入力しまして、それをもとにカルテを発行すると。そして、退院時におましては、入院 中に発生した合併症等を追加してサマリーを記載すると。それと同時に、DPCコーデ ィングも行うわけですが、そのときはその一覧の病名の中から、主治医が最も医療資源 を投入したと判断した病名でコーディングをしております。  そして、そのデータは瞬時に医事課の方のシステムに飛びまして、医事課の方はまた 別のシステムを持っておりまして、医事課はレセプトのデータ等を参考に、その主治医 が決めたコーディングが適切かどうかを判定してくれます。そして、??があった場合 はそれを主治医にフィードバックし、主治医と協議して最終的なコーディングを決める。 そういうシステムをやっております。  ですから、往々にして主治医の決めるコーディングというのは主観的要素が含まれて おりまして、それに対して医事課が構築してくれるデータというのはあくまで客観的な データでできております。その2つをもって協議すれば最も適切なコーディングができ ると思って、そういうシステムをつくっております。  ところが、今回、敗血症が非常にふえてしまったという御指摘を受けまして、その原 因をいろいろ調べたのですが、平成17年に5例あったのが、平成18年は73例にふえてし まいました。この中身はほとんどが実は小児科のごく一部の医者のコーディングが原因 でございまして、その流れを簡単に説明させていただきます。  その小児科のドクターの見解としましては、血培は出していないのですが、重症肺炎 でやって、抗生剤をたくさん投与していくと。敗血症を想定して治療していると非常に 頑固に言い張る人でございまして、うちのシステム上、医事課が「このコーディングは おかしいんじゃないか」とその主治医のところに持っていきますと、どうもなかなか人 の言うことを聞かないものですから、医事課の方も何回も協議してもなかなか折れない ということで、コーディングは医師が決めるものでございますから、事務が勝手に変え るわけにはいかないということで、それを結局通してしまっていたというのが続いてい たわけです。  そして、次の月ぐらいにデータがわかってきますが、それを見てみますと、これはひ どいんじゃないかということで、医事課から私と院長の方にそういう情報が参りまして、 その小児科の某部長なのですが、懇切丁寧に説明いたしまして、見解としては、敗血症 を選択するにはやはり血培が必要ではないかということを申し上げまして、ただ、そこ でも彼は、小児科はなかなか採血も大変だから、感覚的に敗血症でやっているのだから とかさんざん言いまして、でも、これはだめということで、半ば強制的に私がそのコー ディングは今後しないというふうに、もちろん本当の敗血症で培養している場合は別で すけれど、重症肺炎で敗血症をコーディングするのはやめました。  なものですから、月別で見ますと、奇妙なことに7〜10月という調査期間が異様にふ えておりまして、これは決して意図的なものではございませんで、データがフィードバ ックされて説得するまでに1カ月半ちょっとかかっておりまして、その後はぱったりと 姿形を消してしまったという、まことにお恥ずかしい話ではございます。  なぜこういうことになったかというその1つの要因としては、その小児科のドクター というのは異端児と申しますか、決して個人の責任にするわけではございませんが、臨 床はできるのですけれど、経営やマネジメントになかなか協力しないタイプの方でござ いまして、医師は80人おりまして、80分の1なんですけれど、当初、コーディングは全 く関心はなかったんです。肺炎なら肺炎で形どおりコーディングしてしまう。ところが、 だんだんDPCになれてくると、中をのぞき始めるんです。「敗血症があるじゃないか。 資源病名を選ぶんだろう。これじゃないか」と。そして、彼は彼なりに考えてやってし まったんです。そこで、こういったことが起きてしまったのではないかと思っておりま す。  ですから、今後もこういったうがった解釈をする医師が出てくる可能性もございます ので、今後は、医事課と、私は診療局長という立場でございますから権限を発動して、 こういったことは極力減らす所存でございます。  もう一つ、DICも非常にふえたということでして、平成17年が4件が18年は22件に ふえたと。これはいろいろなデータを見てみますと、実際にDICの治療をしてござい ます。原疾患はばらばらで、肺炎あり、悪性腫瘍あり、脱水症とかいろいろあるのです が、すべてDICの治療をしておりまして、医療資源を投入した病名は何かと言われれ ば、DICを選ばざるを得ないということだと思います。  特にATC製剤、1本9万円をどんどん使ってしまいますと、主病名が肺炎であって も、やはりそちらに資源病名はいってしまうという傾向があるなということを痛感いた しました。ですから、私の個人的な考えとしては、例えばDICですが、ほとんどの疾 患の最終段階はこういうことになるのかもしれませんが、DICを資源病名にするとい うのは非常に危険ではないかと。DPCは今支払いのシステムとして使われていますが、 本来は医療の質の評価ですとかベンチマークに使われるべきですから、こういった病名 が資源病名になってしまうと、主病名が隠れてしまうのではないかと、そういったこと をいろいろ分析しているうちに感じた次第でございます。  私の方からは以上でございます。 ○西岡分科会長  ありがとうございました。いろいろな事情があったようでございますが、あってはい けないことが堂々と起こっていたということですけれど。 ○齊藤委員  院内の人事にも絡む御苦労はわかるのですが、社会保険医療において適切な診断をエ ビデンスに基づいて請求するというのは、これは出来高であろうとDPCであろうと、 最低の基本条件ですね。そうしますと、敗血症の診断を血液培養なしに、ただ肺炎があ ったから多分敗血症があっただろうとか、そういう論理は、医師の国家試験の委員長を 長くやりましたけれど、医師の資格にももとる状況だと思います。  ですから、例えば診療科別の収益を病院として非常に重視し過ぎると、この小児科部 長の先生なども焦ってそういうふうになさる可能性もあるので、病院のあり方そのもの をしっかり考えていただかざるを得ないのかなと。  DICについても、先ほど井原先生のお話のときにもありましたが、やはりきちんと したエビデンスを求めれれば即出せるという状況でなければ、ただ何となく血沈が余り 速くないからこれはDICなのだろうとか、そういうアバウトな話で物事をやると、医 療そのものの状況が崩壊いたしますので、これは厳に注意していただいて、厚生労働省 としても、保険医療機関の認定とか、DPC参入の条件とか、そういうことについては きちんとしたエビデンスに基づいた診断を提出できるというのは最低の条件だと思いま す。それが崩れると、もう日本の社会保険医療そのものが崩壊してくるという可能性が ありますので、厳に御注意願いたいと思います。 ○松波総合病院(松波)  DICに関してはすべての検査をやっておりまして、FDP、DDラインまで、すべ て基準をクリアしたものを使っておりますので、それは問題ないんです。 ○齊藤委員  敗血症が問題ですね。 ○松波総合病院(松波)  敗血症のその一部の……。 ○齊藤委員  そういうのが横行すると、一部であっても到底容認できないですね。 ○吉田委員  失礼ですけれど、病院の県は何県ですか。 ○松波総合病院(松波)  岐阜県です。 ○吉田委員  これは東京でしたら、一発でもって返戻が行きますよね。というのは、こういう非常 に傾向的なものが出ますと、これは一番目を光らせるんです。しかも、この一覧を見ま すと、急性胃腸炎ですべてもう敗血症になってしまうと。これは東京だったらもう即指 導を受けていますよね。そう思います。 ○武澤委員  敗血症の診断基準というのはちゃんとあるんですか、小児科全体で。その診断基準に のっとって診断されているのでしょうか。 ○松波総合病院(松波)  小児科のその医師は逸脱しておりますね、現実には。 ○武澤委員  小児科の中で使われている診断基準を逸脱して、当人が重症肺炎にすべて敗血症の診 断をつけたということですか。 ○松波総合病院(松波)  まあ、そういうことです。 ○武澤委員  では、そういうふうにつけざるを得ない背景というのは何ですか。先ほど齊藤委員が おっしゃったように、例えば経済的な評価を診療科ごとにやっているから、アップコー ディングせざるを得ないという状況に彼が追い詰められているのか、小児科全体の診療 機能が破綻しているのか。 ○松波総合病院(松波)  いえ、そういうことには余り興味のないドクターでして、コーディングソフトを使っ ていますと中に敗血症という分類が出てきますよね。肺炎の副傷病で。それを選ぶんで すよ。コーディングのソフトの後の選んだ道筋を後で見ることができるので、それを見 てみますと、敗血症を選んでいるんです。ですから、もともと敗血症の診断に問題があ ります。ただし、コーディングが敗血症になった背景には、副傷病の敗血症を選んだ段 階で、頭の中には資源病名というのがあるわけです。というのは、DICコーディング するのに、主病名ではない資源病名ですよというのは僕もいつも言っておりますので、 そういうことで彼は資源病名は敗血症であると転換してしまったと。そう理解しており ます。決してプレッシャーをかけてどうのこうのということではございません。 ○武澤委員  ということは、診断群分類の扱い方をよく御存じではなかったということですか。 ○松波総合病院(松波)  彼はそうですね。 ○武澤委員  それから、先ほどチラッとおっしゃいましたけれど、重症肺炎の患者さんに対して、 「私は敗血症を前提として治療をしているのだ」というのは、どういうことですか。こ の患者さんは重症肺炎なのに敗血症を想定して治療をするということは、実際は、敗血 症の治療をするわけでしょう。ということは、肺炎への適用外の薬もたくさん使ってい る可能性はありますよね。 ○松波総合病院(松波)  いえ、彼が申しますには、多剤併用の抗生剤を主に使っていて、マクライド系抗生剤 を使用しており、細菌性肺炎、敗血症でかからない治療をしているので、敗血症をつけ ているとヒアリングでは申しておりますね。 ○武澤委員  ATIIIとか、グロブリンとか、そういうものは敗血症のときは適用になりますよね。 それも重症肺炎でも使っているということなんですか。 ○松波総合病院(松波)  関与しておりません。 ○武澤委員  そういうことはないですか。 ○松波総合病院(松波)  ないです。 ○武澤委員  じゃあ、「敗血症を想定している」というのはどういう意味なんですか。重症肺炎か ら敗血症になるかもしれないとただ思っているということですか。 ○松波総合病院(松波)  軽症には全く使っておりません。軽症は普通の肺炎でコーディングしておりますね。 例えば、1剤で抗生を投与して解熱しない、CRPが減らないということになったら多 剤を併用すると。そして、敗血症を疑うと。彼の頭の中ではそうなるわけですね。 ○武澤委員  疑うのはいいんですけれど、敗血症を前提として治療をしているとおっしゃるときに は……。 ○松波総合病院(松波)  それは多剤抗生剤治療が彼の言う敗血症という……。 ○武澤委員  抗生物質だけだということですが。敗血症に対する補助療法は使っていないんですか。 ○松波総合病院(松波)  使っていないです。 ○酒巻委員  小児科とおっしゃいましたけれど、これは構成年齢がこの資料からは読めないのです が、どのような構成年齢でしたでしょうか。 ○松波総合病院(松波)  小児科のデータは、ごめんなさい、詳細なデータはございませんけれど、ほとんどが 10歳以下の症例であったと記憶しておりますが、平均年齢などはわからないです。 ○酒巻委員  10歳以下だと今のお話がなかなか通りにくいと思いますので、もう少し小さい子供が 多いのかどうかということが非常に重大な問題になるのですけれど。 ○松波総合病院(松波)  年齢は、今、データとして持っておりません。申しわけありません。 ○西岡分科会長  医師が少なくて、医師の売り手市場になっていると思うのですが、そういう方は保険 医をやめていただく方がいいんじゃないでしょうか。医者としておられる分にはいいの ですけれど、これは日本の医療を破壊する方でございますので、先生方のところできっ ちり教育していただくなりしていただかないと、ほかの方たちに対して余りにも影響が 大き過ぎるのではないかなと思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。 ○松田委員  まず、小児医療を非常にやられていることには敬意を表したいと思います。これは私 たちは分類を開発してきた人間の方の問題も少しあると思っています。それは何かとい うと、小児の重症肺炎というものをきちんと分類できていないんですよね。これはその 話し合いのところで、MDC別の検討班というのをもっているのですが、小児科の先生 方とここのところを詳しく検討できておりませんので、そういう背景の中で起こったこ とだと思いますので、小児の分類等について、私は研究班としても少し検討させていた だきたいと考えております。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。では、先生、どうもありがとうございました。  続きまして、社会保険横浜中央病院の宮川先生、お願いいたします。 ○社会保険横浜中央病院(宮川)  私たちも敗血症ということで、まず最初におわびをしなければいけないのですが、平 成15年度の敗血症の件数5、平成18年度の敗血症の件数44ということになっておりまし た。これは後で述べますけれど、私たちの病院としては5というのは大変少ないという ことで、調べ直しまして、分類の方をもう一度やっていただきましたら、そちらに届け た分としては15年度は0でございます。それがどういうことで発生してしまったかとい うのは、15年度はDPC参加以前で、いわゆる事前調査の段階だったもので、それに参 加していたもので、まだちゃんとコーディングソフトなどがそろっていませんでしたの で、このことに関してはおわびします。  ただ、私たち社会保険病院は全国で定点観測をやっておりまして、全国社会保険連合 会に届けていますので、そのデータから敗血症を調べまして、平成15年度が22、平成16 年度が17、平成17年度が14、平成18年度が44となっております。このことに関しては、 病院背景、患者背景がございまして、感染症委員会の名誉のために申し上げるのではな いのですが、決して衛生レベルが低いわけではございませんで、私どもの地区は全国で も結核有病率は4位でございまして、横浜市は対10万人が20.3人でございますけれど、 私どもの病院の地区は567人と30倍強の地区がございます。そこで私たちは、いろいろ な病院として各科がそれぞれ特化するという意味で、呼吸器科としては専門医3人を常 勤といたしまして、そこに取り込もうということで、横浜市の呼吸器のハイリスク検診 も委託されております。  また、横浜市自体が人口がふえている中でも、私どもの地区は人口減少区でございま して、大変高齢者が多いと。また、内科としては糖尿病に特化しているということで、 糖尿病の免疫機能の低い患者さんが多いということで、敗血症としては非常にふえてい るというのが現状でございます。  病棟としては、発熱をしたときに自動的に血液培養するようになっておりますし、こ れは献血上ほとんどちゃんと認めておりますので、その意味では、アップコーディング をしたということは私どもとしてはございません。  なおかつ、支払基金の先生方からも返戻は受けておりませんので、むしろ数は逆に私 どもは全国で一番多くてもよろしいかと思います。 ○西岡分科会長  ありがとうございました。どうぞ御質問をお願いします。 ○伊藤委員  敗血症で起こっている菌種は、何が菌として出ているでしょうか。それから、これは 病名として明らかに菌が検出されたものを敗血症と定義されているかどうか、教えてい ただけますでしょうか。 ○社会保険横浜中央病院(宮川)  ごめんなさい、菌種については今統計がはっきりしていない部分がございまして、今、 一番多いものが何かということは私としては今ちょっと申し上げられません。  敗血症は認めているものがほとんどでございますが、ないものも当然ございますけれ ど。 ○原分科会長代理  提出された資料を見ますと、17年度と18年度を比べて倍以上になっていますが、何か 大きな要点があったのでしょうか。 ○社会保険横浜中央病院(宮川)  17年度から呼吸器科の専門医3人を常勤といたしましたので、横浜市からもハイリス ク呼吸器の検診を請け負っておりますので、むしろそういう意味での患者様は4割以上 になっております。 ○原分科会長代理  先生の病院の背景が結核が多いというのは承知しておりますけれど、ここで菌種がお わかりにならないということだったのですが、これは俗に言う結核が多いという意味で はなくて、結核に合併したほかの菌の敗血症という意味でしょうか。 ○社会保険横浜中央病院(宮川)  結核患者さんに関しては入院はとっておりませんで、すべて横浜市で決まっている病 院に紹介しておりますので、結核に付随したいわゆる敗血症ではございません。いわゆ る低栄養ですとか、かなり経済的に貧困な地域の方々ですから。 ○原分科会長代理  でも、結核と判明した時点で……、先生の病院には結核病床がございますか。 ○社会保険横浜中央病院(宮川)  ございません。 ○原分科会長代理  そうすると、ここの先生の御説明では、結核患者がいるのだけれど、来て判明した時 点でもういなくなるわけですよね。 ○社会保険横浜中央病院(宮川)  ごめんなさい、この結核の有病率については、経済的ですとか、ホームレスですとか、 そういう意味の地域としての貧困性をあらわしたものでございまして、結核そのものが 病気として私どもの病院に来ているということではございません。 ○原分科会長代理  わかりました。 ○齊藤委員  それと同じように、糖尿病の非常に集中している病院でも、決して敗血症はそんなに ないんですよね。先生のこの御説明だと、結核の有病率も高いし糖尿病も多いから敗血 症が多いのだと読めるのですが、その論理展開はにわかにはうなずけないのですけれど。 糖尿病をたくさん診ているところで敗血症が全然ないところは幾らでもありますからね。 ○社会保険横浜中央病院(宮川)  ほとんどが呼吸器科でございまして、糖尿病も合併しているということなので、どう して敗血症が多くなっているということに関して、その意味では確かに免疫の云々とい ってもエビデンスとしては余り強くはないと思います。ただ、決してアップコーディン グしているつもりはございませんので。 ○武澤委員  先ほどと同じ質問ですが、敗血症の診断基準はお持ちですか。病院の中でちゃんと持 っていらっしゃるのですか。それはどういう基準ですか。5つぐらいあると思うのです けれど、今、わかりますか。 ○社会保険横浜中央病院(宮川)  ごめんなさい、私は呼吸器ではないので全部は言えないのですが……。 ○武澤委員  私どもはICUで患者を診ていますが、呼吸器内科でもちろん重症化した患者はIC Uに入ってくるわけです。特に肺炎が多いと思うのですけれど、その患者がその後敗血 症に移行するという症例は極めて少ないんです。だから、それはもしかしたら患者のポ ピュレーションが違うのかもしれませんけれど、呼吸器内科の医者がふえたからといっ て敗血症がふえるというのは、論理的に飛躍があると思うのです。  それは患者のポピュレーションが変わったのか、先ほど重症度の高い患者が地域から 来るとか糖尿病とかと言われましたけれど、地域から来る重症の患者がふえたというデ ータがあり、入院したときからもう敗血症でしたという患者がふえたということであれ ば、それはそれで理解できるのですが、呼吸器内科の医者がふえたから敗血症がふえる ということは到底あり得ないと思うのですけれど。 ○社会保険横浜中央病院(宮川)  そこの患者様、いろいろ散らばっていたのを集約したということは一つはありますけ れど。 ○坂巻委員  これも資料としては出ていないのですけれど、平均在院日数について、今だったら肺 炎と敗血症との平均在院日数の違いとか、あるいは、18年度になってからの敗血症の平 均在院日数とそれ以前の敗血症の平均在院日数との間にどういう違いがあるのか、ない のか、教えていただきたいと思います。 ○社会保険横浜中央病院(宮川)  申しわけございませんが、精査していませんので、帰って必ずやって御報告いたしま す。 ○酒巻委員  これは治療全体を診ることですので、資料として指摘された部分だけをもって説明資 料とされるのは、ある意味ではまだ不十分な説明であると私たちとしては思わざるを得 ないので、ぜひとも御協力をお願いしたいと思います。 ○山口(俊)委員  さっきの呼吸器の先生がふえたのでということと関連するかもしれませんが、35ペー ジの循環器の患者さんがむしろ敗血症が随分ふえているというのは、どういうことでし ょうか。呼吸器のところは余り関係なくて、主に循環器が急にふえているように見える のですけれど。 ○社会保険横浜中央病院(宮川)  これは入院患者でございますから。呼吸器の資料5ですか。 ○西岡分科会長  このグラフですが、これは各科の敗血症患者数ですね。 ○社会保険横浜中央病院(宮川)  7のことですね。入った病名に当然病気によって書いてまいりますが、こういう地区 からの循環器疾患で入ったときに、また敗血症を併発したということもございます。 ○松田委員  もしおわかりになれば教えていただきたいのですが、一番最初のところの理由記入欄 のところに、平成18年度のデータについては「コーディングソフトを導入、医師と医事 担当者が協議し」とありますが、これは副傷病のところに敗血症みたいなものが出てき て、主傷病にすると幾らになるという、そういうシミュレーション機能つきのソフトで ございますか。 ○社会保険横浜中央病院(宮川)  そうです。 ○松田委員  なるほど、わかりました(笑)。 ○西岡分科会長  今の御質問で大体流れを御理解いただけたのではないかと思っておりますが、ほかに ございますでしょうか。  それでは、ありがとうございました。  次に、高知大学医学部の倉本先生、よろしくお願いいたします。 ○高知大学医学部附属病院(倉本)  高知大学の倉本です。先ほど、特別調査票の方が記載が不十分ですので、フリップを 使っていいかと中田課長補佐にお伺いしたところなのですが、このようなものを出しな がらで構いませんでしょうか。 ○西岡分科会長  はい。 ○高知大学医学部附属病院(倉本)  私たちのところのDICにつきましては、46例中、27例が消火器外科の診療科から出 ております。  まず、消化器外科の中身ですが、15年からは肝切除症例20例だったのですが、18年度 は74までふえております。それから、74の中の58が肝細胞癌、肝硬変つきという状態に なっております。そのように肝臓の専門医のところにたくさん症例を送っていただける ようになったということが一つございます。  それから、高知県の場合、肝硬変による肝細胞癌というのが70〜86%ぐらいを占めて おります。このことは、ほかの地域と違いまして、転移性肝癌などが半分ぐらいを占め る地域に比べますと術後の管理は難渋しているということです。  アンチトロンビンIIIとかFDPとかDダイマーなどを見ましても、こうした肝硬変肝 癌症例は随分厳しい状態で管理をしてくれているのだろうと思います。  もう一つは、同じような領域で膵頭十二指腸切除がふえております。同じ理由になり ますが、その中で、5例ほどは術中放射線照射も行っておりまして、これは術後、リン パ球数がドンと落ちたり、DICの準備状態ということになろうかと思います。  先ほどお話ししました58例の肝硬変つきの肝癌の中の17例が、そして膵癌の中の5例 がDICという分類になっております。  それから、それ以外のものが19例ございますが、これも15年度と比べて大分ふえてお ります。こちらにつきましては高知県の事情がございまして、ある中核病院があるので すが、こちらの方が他県の大学の事情で、例えば血液の内科医が1人しかいなくなって、 そこに私たちの方から手伝いに行っているという状況が18年の4月から起きております。 そのことが18年の4月から起きているがために、白血病の増加もございます。これによ ってふえておりますし、それ以外の診療科につきましても、その中核病院等の方から私 たちの方に治療途中で流れてきたりします。さまざまな事情で各診療科は頑張ってやっ てくれていると思います。  そうした個々の基礎疾患を持つ方たちについても検討しておりますが、いろいろ調べ ましても、治療とか薬剤、そして検査等、すべて基準を満たしているとなっております。  それから、外科症例の方たちの死亡率は42%になると判断しております。  そんな状態で、肝切除を中心にしまして、58例ある肝切除のうち、その58例は全部L Cですが、それを肝機能に合わせまして精いっぱいやっていて、その中の17例について は基準を満たしてDICと分類をしたということがあります。  それから、外科手術以外でふえていることにつきましては、地域特性もあるのかなと 判断をしております。  以上です。 ○西岡分科会長  ありがとうございました。どうぞ御質問をお願いします。 ○武澤委員  平成18年にDIC件数が46例に一挙にふえていらっしゃいますね。これの中身で、外 科は何例で、非外科――例えば白血病とかお産のDICとかいろいろあると思いますが、 その中身をちょっと教えていただけますか。外科系が17例ですか。 ○高知大学医学部附属病院(倉本)  外科系は27です。その中の17が肝切除です。 ○武澤委員  それで、診断基準を満たしているとおっしゃいましたけれど、これはどこの診断基準 ですか。外科系のDICでは。 ○高知大学医学部附属病院(倉本)  先ほどお示ししましたようなFDP等の検査を全部足していって、臨床症状とあわせ てということで、学会基準でやってくれていると思います。 ○武澤委員  どこの学会ですか。 ○高知大学医学部附属病院(随行人)  ちょっと詳しくはわかりませんが、集中治療学会などで出されていますが。 ○武澤委員  じゃあ、それは私もよく知っていますけれど、肝臓が悪いときには、例えば肝硬変が ありますね。肝硬変合併のときのDICの診断というのは極めて難しいと思うのですが、 それはどうされていますか。 ○高知大学医学部附属病院(随行人)  それも適用ではPTが40%未満と、私どももそれで……。 ○武澤委員  それは肝障害ですよね。肝障害とDICとは違いますから、その辺の診断は極めて難 しいところがあって、実はICU学会の診断基準は私は不十分だと思うのですが(笑)、 特に外科系のDICですね。内科系のDIC、プロミエロの白血病とか産科のDICは わかりやすいのですけれど、外科系のDICの診断基準というのは非常にいい加減です。 これは薬を投与するための基準としてつくられているので、じゃあ、FOYとかフサン とか本当に効くのかというデータ数はないんですよ。対照としてヘパリンと比べている わけで、実を言うとヘパリンもDICに効くかどうかというデータは本当はないんです。  そういう中でできている診断基準なので、別にこれは先生に言ってもしょうがないと は思うのですけれど、そもそもの診断基準のつくり方に問題があるので、それに乗っか って、例えば46まで一挙にふえたというのが、外科系の疾患が中心となっているところ があるとすると、問題をはらんでいると言えます。  先生方の診断基準に従ってつけたというのは、いいかもしれませんけれど、もともと の根拠が危ういということを理解していただきたいので、そういう意味でも、安易にD ICという診断基準をつけるということに関しては、慎重になっていただきたいと思い ます。 ○高知大学医学部附属病院(倉本)  そこは理解いたしました。 ○熊本委員  今、診断基準のことが議論されましたけれど、15年と18年で診断基準の使い方が診療 科で大分違ってきたとか、そういうことがあったのかということ、もう一つ、40ページ の資料ですけれど、胆管癌・急性、これも肝胆道系ですけれど、これは肝手術のグルー プとは違った診療科でのDICの診断になっているのでしょうか。 ○高知大学医学部附属病院(倉本)  今言っていただいた後半部分につきましては、主に内科系が扱っている胆道系疾患で、 8例になっております。この中につきましては、例えば、同じ入院中に食道静脈瘤の硬 化療法をやっている人たちとか、化膿性胆管炎でステントを入れている人たちとか、閉 塞性黄疸とか、そんな方たちの8例になっております。  それから、15年と18年につきまして違うかどうかということにつきましては、むしろ 15年度に診ておりました15例の肝硬変肝癌ですが、どこまで切除するかというのがかな り違っておりまして、18年度の方はかなり拡大して切除するようになっておりまして、 術後の状態が全然違っているということかなと思います。 ○原医療課長  社会保険横浜中央病院さんと今の高知大学医学部のデータを見せていただきましたが、 例えば先ほどの敗血症のお話ですけれど、敗血症で重症で、全国で敗血症の分類にされ た人の死亡割合は大体25%前後です。社会保険横浜中央病院の場合は、平成16年度、17 年度は35〜38%ぐらいで、ちょっと高目にやっている。ところが、18年度、症例がドッ とふえたのに対して、死亡率は半減して18%まで下がっている。  それから、今の高知大学のDICにしましても、全国平均で死亡率が大体40%台にな っているのに対して、平成16年度、17年度とも高知大学では50%の死亡率。ところが、 ドッとふえた18年度では19.5%、約20%の死亡率に下がっているわけです。  ということは、治療がうまくなったのか、あるいは中身が薄まったのか、そこはわか りませんけれど、従来、DICなり敗血症なりで診断していたものが、それが軽症とい うのかそうでないものというのかわかりませんが、今までのものとは違ったものが入っ てきているのではないかとどうしても考えざるを得ないのですけれど、ここは審査の場 ではありませんので、それを事細かく聞こうとは思いませんけれど、そういう状況から 言うと、従来と違うような形になってきているのではないか。それは必ずしも医師の専 門性が変わってきたとか、そういうだけでは説明できない気がしますので、そのあたり は十分分析をしていただきたいと思います。 ○高知大学医学部附属病院(倉本)  簡単によろしいでしょうか。 ○西岡分科会長  どうぞ。 ○高知大学医学部附属病院(倉本)  こちらの外科関連以外の死亡率につきましては、15、16、17年と同じように、42%の 死亡率になっております。こちらの方は症例数もふえて、死亡率もほぼ同じということ で、先ほど武澤委員さんの方から御指摘がありましたように、消化器外科におけるDI Cの診断基準というものの扱いが難しいのだろうと理解しております。 ○西岡分科会長  ほかによろしいでしょうか。  それでは、どうもありがとうございました。  それでは、社会保険久留米第一病院の津田先生、よろしくお願いします。 ○社会保険久留米第一病院(津田)  社会保険久留米第一病院は、200床の急性期病院でございます。手術例が約1,200症例 ぐらい、平均在院日数がただいまのところ14〜15ぐらいで推移をしております。  私は平成14年から当医院の院長を仰せつかっていますが、そこから病院機能を大きく 進化させようということで、女性外来であるとか女性医療であるとか、そういうものを 非常に取り入れてまいりました。その結果、前からもその素地はあったのですが、乳腺 疾患が非常にふえてまいりました。現在のところ、総手術数の30%、乳腺の手術だけで はなくて、現在行っております化学療法のためのポート挿入であるとか、ポート抜去ま で入れますと、これを手術に計算しますと35%ぐらいが乳腺関係の手術ということにな ります。  御指摘を受けました創傷処理が手術に対して多いのではないかということですが、ポ ートを入れるのは全例が16年から、セントラルアクセスと申しまして、内径静脈から心 臓のちょっと手前までカテーテルを持ってきて、そしてポートを前胸部に埋め込んでい るという格好にしております。  したがいまして、入れて、それから化学療法を最低6カ月いたしますので、抜去する のには6カ月以上、ひどい人では1年もしくは2年後に抜去するということになります ので、そのときの処理が創傷処理に当たるかと。最初、創傷処理ということでしていた のですが、平成19年1月に福岡県の社会保険診療報酬支払基金から、1回手術したもの をとるわけですから、ある一定の時間がたっているとはいえ、それはやはり創傷処理で はなくて処置ではないかということの御指摘を受けまして、それ以降は、創傷処置とい うことでさせていただいております。  ちなみに、現在、私どものところではこのポートによる化学療法は非常に力を入れて やっておりますので、現在、ポートを抜去している直近の4カ月が37例ございます。今、 直近の4カ月で行っている手術総例数が422ありますので、パーセントに直すと8.7。も しこれを、今はとっておりませんが、創傷処理でとっておれば8.7%ということになっ て、御指摘の全国平均0.8に比べてはるかに高いということにはなると思います。 それから、お答えした理由の中のもう一つに、乳癌の患者様で乳癌の手術をした後の、 特に血腫形成ですが、これが24時間後に起こった場合に、再手術をして血腫を除去した り、少し色の悪い組織があったらとるということをいたしますので、創傷処理というこ とで算定いたしておりますが、これは1カ月に1例あるかないかぐらいですので、年に しても12〜13ということになります。  もう一つ理由に上げておりますのが、腎不全患者さんのCAPD、腹膜灌流から人工 透析に変更された方をCAPDカテーテルを抜去するということですが、これも一応腹 膜をあけますので、私どもとしてはきちんとした外科処置をなさなければならないとい うことで、処理ということで算定いたしております。その結果がこの大きな数になって 出ていると思います。  以上です。 ○西岡分科会長  ありがとうございました。どうぞ御質問をお願いいたします。  お手元の診調組D−2という資料の3ページに、今、問題になっております創傷処理 と創傷処置の違いの定義が出ておりますので、先生の御説明にありましたように、処置 に入る部分が処理に入っていたということでございますね。 ○社会保険久留米第一病院(津田)  言いわけをするようでございますが、6カ月で5センチ以上の傷が残って、その中に ポートがあるわけですね。それを取り出すということなので、私が感じた創傷処置とい う点数のつけ方は、なぜか手術創の後に消毒をしたり処置をしたりする算定と思えたも のですから、最初はこちらが適当ではないかと感じておりました。しかしながら、御指 摘がございましたので、こちらの方にまた戻しております。 ○西岡分科会長  ほかに御質問はよろしいでしょうか。 ○山口(俊)委員  具体的には、切開してポートを取り出して縫合する処置ですよね。 ○社会保険久留米第一病院(津田)  そうです。 ○山口(俊)委員  むしろこれは手術でいいんじゃないかと私も思いますけれど。 ○社会保険久留米第一病院(津田)  思うのですが、ディスカッションしていただければありがたいと思います。 ○山口(俊)委員  むしろ術後の消毒をすることと同じ扱いを受けることの方が不当に思いますけれど。 ○西岡分科会長  吉田委員、コメントがあると思いますので。 ○吉田委員  確かにこれは想定していますけれど、保険点数の手技としては載っていないんですよ。 ですから、これはあくまで手術料ではなくて、処置になってしまうんです。しょうがな いんです。ですから、もし希望があれば、学会を通じて厚労省に申し出ていただいて (笑)。 ○社会保険久留米第一病院(津田)  該当するものがないんですね。だからとらざるを得ないので、これまたきちっとこう いうものということをつくっていただければ、それはそれで……。 ○吉田委員  ですから、記載がないからこれでいいのだということはだめなんですね。ないことは やってはいけないんですよ(笑)。だから、保険を請求してはいけないということがル ールなんですね。それが原則です。 ○社会保険久留米第一病院(津田)  それはそうですけれど、新しい方法とか、想定していないものが、だからこその分科 会があるのでしょうけれど、できた場合にはやはり考えられるわけでしょう。 ○吉田委員  それはここではなくて、あくまでも医療技術評価分科会です。そこへ提出するわけで す。 ○社会保険久留米第一病院(津田)  どこか知りませんけれど。 ○西岡分科会長  現時点では認められないということですので、これは御了解いただかなければいけな いかなと思います。ほかに御意見はございませんでしょうか。  それでは、津田先生、どうもありがとうございました。  全体を通じまして、何かコメントがございましたら、きょうおいでの先生方、どうぞ。 ○社会保険久留米第一病院(津田)  何でもいいですか。 ○西岡分科会長  余り議題と外れたことを言われますと、我々はちんぷんかんぷんになりますので、関 連したことでお願いしたいと思いますが。 ○社会保険久留米第一病院(津田)  それでは、現場の意見としまして、私どもは乳癌をやっていますので、化学療法につ いて、今はほとんど外来でやっていますけれど、化学療法が入院でしなければならない となったときに、非常に高い薬価のものがたくさんございますので、なかなかペイでき ないという状況がやはりあると思います。各病院、おありになると思います。ですから、 DPCに化学療法の入院というのはなかなかなじんでいないんじゃないかなという印象 を私は持っております。ただ印象だけですけれど。 ○西岡分科会長  これは松田先生、何かコメントできますか。 ○松田委員  以前、MDC別の班会議のときに、化学療法につきましてはレジュメを少し整理して いただけないかというお話をさせていただきましたが、そのレジュメが出てきて、例え ばワンクール1週間の化学療法であれば、それを繰り返し行うのであれば、そのワンク ールを1つの単位として点数設定というのはできると思いますので、今、非常に大きな 問題になっているのは、諸外国に比べて日本の化学療法の定義というのが少しあいまい であるというのが問題だろうと思っています。  そういう意味では、これはもう臨床の先生方にお願いするしかないわけでございます が、レジュメの明確化というものを少しやっていただけますと、それに合わせていろい ろな分析もできますので、ぜひお願いしたいと思います。 ○西岡分科会長  ほかにいかがでしょうか。 ○松下記念病院(山根)  今回のテーマになりましたことは、割と一般的に見ますと、DPC効果といいますか、 出来高と包括の差が大きかったものが取り上げられたわけですが、私たちが一般にこの DPCをやっています中で、全体的にどう考えてみてもすべての症例がマイナスになっ てしまう、出来高よりも包括の方が低いという症例が続いてあったりとか、非常にばら つきがあって、マイナスからプラスの非常に大きい疾患などがあるので、この辺のとこ ろもこれからこの分科会で検討していただいて、余り上下にいきますと我々としてもコ ーディングする段階で非常に困ってしまうということが起こりますので、その辺のとこ ろも御検討いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○西岡分科会長  それはDPCの精緻化という部分で、これはずっとDPCがスタートしたときから続 いております。全体のデータをとって、それをプロットしていただいて、そこからの外 れ値、あるいは特別な治療法をした場合の外れ群といったものがあるとそれを枝分かれ するといったことで、順番にやってきております。  これは齊藤先生がいてくださるとお答えを出せると思うのですが、松田先生、いかが でしょうか。 ○松田委員  基本的にはDPCというのは後追いの仕組みですので、施設からお出しいただいてい るデータに基づいて、一定のまとまりのいいところでつくってくるわけでございます。 もし先生の施設でほとんどの症例が赤字になってしまうということであれば、それは全 国の平均から先生の施設が資源をたくさん使う方向に少し偏っているということなのだ ろうと思います。  ですから、基本的にはDPCは、現在、日本の医療の現場で各傷病群に対して行われ ている標準的な治療を後追いする形で点数設定がされていきますの、そういう意味では、 そういうデータが公開されていくことによって、例えば診療内容を見直していただいて、 もしそれが標準化できるものであればそちらにしていただくということが、多分、一つ の解決策なのだろうと思います。それが難しいものにつきましては、それは分類で精緻 化していく。そういうやり方になろうかと思います。 ○原医療課長  これは言わずもがなのことなのですが、公開の場ですので、きょうお話しいただいた 中で、幾つか診療報酬の請求上問題がある点もございました。これについては放ってお くわけにもいきませんので、それぞれの社会保険事務局には私どもの方から情報提供し たいと思います。もし先生方のそれぞれの病院のところで御疑問があれば、それぞれの 社会保険事務局にお問い合わせをお願いしたいと思います。 ○西岡分科会長  ありがとうございます。ほかに御意見はございませんでしょうか。全体を通しての御 意見もこれでよろしいでしょうか。  それでは、予定していた時間が参りましたので、本日の議論は以上としたいと思いま す。  事務局から連絡事項等をお願いいたします。 ○中田補佐  事務局から連絡事項がございます。  次回の開催につきましては未定でございますので、正式に日時等が決まり次第、追っ て事務局から御連絡させていただきます。  また、事前に郵送させていただいた参考資料1・2及び本日机上に配付させていただ きました参考資料1・2につきましては、今回、会議終了後に回収させていただきたい と思いますので、机上にそのまま残しておいてください。  以上でございます。 ○西岡分科会長  それでは、平成19年度第4回診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会を終了させて いただきます。本日はお忙しい中をどうもありがとうございました。                                    −了−  【照会先】         厚生労働省保険局医療課包括医療推進係         代表 03−5253−1111(内線3278)