07/09/19 中央社会保険医療協議会薬価専門部会平成19年9月19日議事録 07/9/19 第40回中央医療社会保険協議会薬価専門部会議事録 1 日   時  平成19年9月19日(水)11:18〜12:03 2 場   所   厚生労働省 専用第18〜20会議室  3 出 席 者  遠藤久夫部会長 土田武史委員 白石小百合委員     室谷千英委員     対馬忠明委員 小島茂委員 丸山誠委員     松浦稔明委員          鈴木満委員 飯沼雅朗委員 渡辺三雄委員 山本信夫委員          向田孝義専門委員 長野明専門委員 渡辺自修専門委員          <事務局>          水田保険局長 木倉審議官 原医療課長 宇都宮医療課企画官           磯部薬剤管理官 他                   4 議   題   ○薬価基準制度の見直しを行うに当たって論点 ○遠藤部会長 それでは、ただいまより第40回中央社会保険医療協議会薬価専門部会を開 始いたします。  委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、全員の方が御出席されております。  それでは、議事に移りたいと思います。  前々回、6月27日になりますが、「薬価制度改革主要検討事項(案)」が提示されまし た。そこで、検討事項が多岐にわたりますので、本日は、提示されました項目のうち、「イ ノベーションの評価」と「市場拡大再算定のあり方」の2つの項目について議論をしていた だきまして、次回、残りの「採算性に乏しい医薬品の評価」、「後発医薬品の使用促進」、 「その他」の項目について議論をするということにしたいと思います。  前回の議論の中で、こういう項目だけではなくて、もう少し具体的なデータがあればとい うような御要望がありましたので、本日は、事務局が検討事項に関連する資料を準備してお ります。その説明をまず聞いた後、薬価基準制度の見直しを行うに当たっての論点について の御検討をお願いしたいと思います。  それでは、まず事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○事務局(磯部薬剤管理官) 薬剤管理官でございます。私の方から、今日御提出させてい ただきました資料について説明をさせていただきたいと思います。資料が、中医協薬−1と 薬−2でございます。横に置きながら見ていただければと思いますが、今回御提出させてい ただいた資料、6月に出した薬価部会の主要検討事項のうちどういう部分をお出ししている かということで、薬−1にちょっと書いてございますけれども、まず、「イノベーションの 評価」の中で、「画期性加算、有用性加算の加算率、加算要件をどのように考えるか。」と。 それに関連いたしまして、薬価算定組織意見で、有用性加算(II)の要件に対して「臨床上 有用な新規の作用機序を有すること。」を加えるなど検討してはどうかと。それに関連する 資料がございます。  それから、「原価計算方式における有用性の評価をどのように考えるか。」。  また、「市販後に薬事承認を既に受けている効能効果に関して、市販後臨床試験を行うな どして真の臨床的有用性を検証した場合の評価をどのように考えるか。」。  また、「競合品のない新薬であっても現行薬価制度の下では、総価取引などの影響で薬価 が循環的に下がっていくことをどのように考えるか。」。  薬−1の2ページ目に行きまして、「市場拡大再算定のあり方」に関しまして、「効能追 加に伴って市場拡大再算定の対象になることをどのように考えるか。」。  また、「市場拡大再算定類似品の範囲をどのように考えるか。類似した医薬品でも市場拡 大再算定の対象になるもの、ならないものがありうることどのように考えるか。」。  「その他、市場拡大再算定のあり方についてどのように考えるか。」ということで、特に ここの部分については、薬価算定組織の意見の関連部分といたしまして、市販後に真の臨床 的有用性が検証された場合の補正加算ということで、先ほど総会でもございましたけれども、 その関係の傾斜配分の問題を資料をお出しさせていただいております。この関係の資料を薬 −2におつけをしております。  薬−2をごらんいただきたいと思います。1枚おめくりいただきまして1ページを見てい ただきたいと思いますが、まず最初に、類似薬効比較方式で算定された新薬の比較というこ とで、一応前回の薬価制度改革からこの1年ちょっとの間の経過をおまとめしたものでござ いまして、どういうふうに比較するかということでございますが、外国の価格ぐらいしかな かなか比較するものがございませんので、事務局としては、外国平均価格と比べてどのよう な分布になっているかということをまとめさせていただいております。ちょうど外国平均価 格に対して高いものから順番に並べておりまして、ちょっとグラフの見方でございますが、 上に書いてございます、例えば外国平均価格調整で引き下げになったものは点線で、当初が その点線の上まで行きましたけれども、それが実線のところまで下がったという意味でござ います。また、黒の外国価格調整(引き上げ)というのは右側の方に多くございますけれど も、75%を切ったものについて黒塗りしている部分が外国価格調整で引き上げになった部 分、そのほか、キット加算、補正加算というものが、ちょうど斜め線が入ったようなものが 補正加算で上がった部分ということでございます。  それで、こういったものから分析いたしました成分でございますが、類似薬効比較方式で は全40成分ございましたけれども、そのうち、そもそも外国価格がないものは比較しよう がございませんので、外国価格のないものとして11成分、それから、外国価格はあります けれども、前回の薬価制度改革で、いわゆる1価格のみしか価格がないとか、価格の逆転現 象が規格によってあるとか、そういったことでなかなか外国価格との比較が難しいというよ うなものについては引き上げ対象外にしたものでございますけれども、それが4成分ござい ましたので、それを抜きまして、全部で25成分の分析を挙げさせていただいております。  ここから言えることにつきましては、平均値で申し上げますと、対外国価格92.8%と いう数字になってございます。全体的には、平均価格を下回るものが数的には多くなってい る。また、外国平均価格と比較して極端に低いものもあるということで、特にここの29番 というのが非常に低くなってございますが、これは統合失調症の薬でございます。実は、先 ほどの総会で、新薬をまた9成分ほど認めていただきましたけれども、これも加えて平均値 を出しますと、25成分が30成分になりまして、それの分析が92.8%が90.7%と いう数字になるようになってございます。  続きまして2ページ、グラフ2をお開きいただきたいと思います。それでは、これをどう いうように分析をしていくかということでございます。一応一つの分析として、前回のヒア リングの際にも製薬業界からは、類似薬効比較方式の場合の問題点の一つとして、非常に古 い薬を対象薬にすることがこういった原因の一つになっているのではないかと、こういう御 指摘もありました。実際に我々も、類似薬効比較方式を行う際の比較薬は、現行では昭和5 5年以降、薬事法がちょうど変わりまして、今の新薬制度になった以降の薬、大体30年前 の薬まで一応比較薬としてとっているという実情がございまして、そういったものの御指摘 を受けて、では、実際にどうなっているのかということを分析をさせていただいております。 この分析に当たりまして、いわゆる比較薬の価格がどうなっているかを外国平均価格と単純 に比較した表が2ページのグラフでございます。これを見ていただきますと、こういうよう な分布になってございますが、先ほどの点で申し上げますと、比較薬の収載から当該新薬の 収載までの期間が、ちょうど下に、この上の番号3番であれば、これは相手が7年前の薬で すよと、1番であれば23年前、2番であれば3年前と、こういうふうにずっと順番をつけ て、比較薬が収載から何年たっているかというデータを出させていただいております。  その上でもう1つ、比較薬について後発品があるかどうか。現行のルールでは、後発品が 出ますと、先発品は市場実勢価に加えて6〜8%引き下げるということでやってございます ので、後発品があるかどうかの情報も必要かと思い、つけております。「○」があるもの、 「×」がないものということでございます。これを単純に、外国平均価格を上回ったものの 成分の平均と、それ以下での平均をとりますと、ちょうど下段にございますけれども、上回 るもので、比較薬の収載の年数が平均8.9年、それから下回ったものの成分の平均が13. 3年ということで、これだけの差があるというのがデータとして見えているわけであります。  続きまして3ページでございます。今はグラフで各薬は番号で表示をしておりましたが、 3ページのこの別表がございます。類似薬効比較方式で算定された個々の個表でございます けれども、この成分のナンバーが先ほどの番号に呼応しております。ここに、どういう薬で、 その算定方式、その比較薬、加算率、加算の要件、収載時の薬価と外国平均価格の比率、そ れから外国平均価格ということで、米、英、独、仏が対象でございますので、米、英、独、 仏の具体的に価格も挙げさせていただいております。  それから、先ほど外国平均価格で、1価格のみで対象外とか、そういうものもございまし たので、ちょうど4ページに幾つか対象がございますけれども、なぜそれを対象外にしたか ということで、1価格のみのため対象外ですとか、5倍を上回るとか、幾つかのその適用し たルールを記載をさせていただいております。  ここでちょっと申し上げたいのが加算要件のところでございます。表の真ん中のあたりに ございますけれども、ここを見ていただきますと、有用性加算(II)の適用が多いわけでご ざいますが、どの要素で認められているかということを見ていきますと、圧倒的にこの3番 の治療方法の改善というところで認められているものが、この3〜4ページの表を見ていた だきますとおわかりいただけるかと思います。臨床上有用な新規の作用機序の部分と、高い 有効性・安全性は認められることが非常に少ないわけでございますが、特に臨床上有用な新 規の作用機序は2つということになってございます。  ここで申し上げたいのは、先ほどの資料でございますが、臨床上有用な新規の作用機序は、 この要件のみでは有用性加算(II)が現行では認められないという要件になってございまし て、非常にハードルの高い要件ではございますけれども、現実にはそこで認められていない という事実とこういう結果が出ているということでございます。  続きまして6ページをお開きいただきたいと思います。先ほど対象薬が古いということが 一つ要素ではないか。ほかにも薬効群の問題、いろいろあろうかと思いますけれども、加算 率について、実際に前回の改定におきまして、例えば有用性加算を見ていただきますと、5 〜10%が5〜20%の引き上げということで、下限は変わりませんが、上限を10から2 0、10%引き上げたわけでございます。この結果、実際についた加算率がどのくらい上が ったのかということで申し上げますと、Aが5.4%のものが、有用性加算(II)に限った 部分でいいますと10.4ということでございまして、ほぼ5ポイント上昇しているという ことで、10%程度上限を引き上げますと、現実には5%ぐらい引き上がるというのが実績 として上がっているということでございます。  続きまして7ページ、8ページでございます。今まで補正加算率というものは、ずっと昭 和57年当時から薬価改定のたびにいろいろ議論をしてまいりましたその経緯でございます が、8ページ、特に前回の改定で加算率を上げたということでございます。また、加算要件 につきましても、有用性加算(I)につきましては、画期性加算の3要件のうち2つの要件 を満たす場合ということでございます。ただ、有用性加算(II)につきましては、先ほど申 し上げたように、少し違いがございまして、平成14年のところに書いてございますけれど も、高い有効性・安全性、それから製剤工夫というのが入ってございまして、それから治療 法の改善、このうちのどれか1つということになってございまして、先ほど申し上げたよう に、新規の作用機序はこの中には入っていないということがございます。  続きまして9ページでございます。原価計算方式で算定されました新薬についての外国平 均価格との比較をあらわしたものでございます。これついても前回の改正以後、1年ちょっ との分をまとめさせていただいておりますが、これを見ますと、先ほどの類似薬効比較方式 よりは、大体外国平均価格に近づいているということで、対外国価格の平均値は97.1% ということになっています。それで、1番から12番までございますけれども、どれも大体 ばらつきは小さいというようなことが読み取れるのではないかということでございます。こ れも原価計算は全部で18成分ございましたけれども、外国価格のあるもの12成分の分析 でございます。  続きまして10ページをお開きいただきたいと思います。10ページ、11ページにまた がりますけれども、では原価計算でどのようなものがあったのかということでございます。 番号どおりずっと対外国価格が高いものから順々に並べておりますが、その中で、先ほどの 類似薬効の表とちょっと違いますのが、「既存治療との比較等」という項目を入れさせてい ただいておりまして、これは薬事承認の際に既存治療がどういうものがあるか大体書いてご ざいますので、その辺からピックアップをしてまとめさせていただいておりますけれども、 ここで見ていただきますと、例えば1番のポリドカスクレロールでございますが、成分名、 ポリドカノールというものでございますが、既存治療では、実は、もともと静脈瘤の部位に 使われるのですけれども、ほかの部位の静脈瘤に使われる濃度が違うものがございまして、 この濃度に合わせたものを従来は院内製剤をするとか適応外を使ったということが既存では あったというものがございます。  そのほか、いわゆる非常に革新性の高いものとして、例えば6番のベルケイドという薬が ございますけれども、これについては多発性骨髄腫、それも再発・難治の骨髄腫瘍薬でござ いますけれども、「既存治療との比較等」で書いてございますが、特にプロテアソーム阻害 作用というのが新規の作用機序で、これまでなかなか対象薬がなかった再発・難治性の多発 性骨髄腫の薬ということでございますが、ちょっとこれは例示で挙げさせていただいており ますが、私どもの理解では、あくまで類似薬がないというものが原価計算になるわけでござ いますけれども、既存治療に対する革新性のレベルというものはさまざまなものが実際には 入っている。ただ、そういったものでも実際にコストの積み上げをしていけば、大体外国平 均価格、欧米の平均価格ぐらいになっていくというような状況にあるということが読み取れ るのではないかということでございます。  続きまして12ページでございます。市販後の臨床的有用性の部分でございます。現在、 市場拡大再算定に当たりましては、真の臨床的有用性が検証された場合については市場拡大 再算定で引き下がるわけでございますが、引き下げ率の緩和を行っております。それで具体 的な事例が、過去に、前回18年改定のときの2例ございまして、アリセプトとリツキサン がございます。アリセプトについては、患者のコミュニケーション能力等のQOLの改善と いうことが市販後の臨床試験で認められた。また、リツキサンについては、市販後の臨床試 験で生存期間の延長が認められたということで、いわゆる真の臨床的有用性が検証されたと いうことでございます。アリセプトについては、補正加算適用前が11.25%の引き下げ 率のところが6.14%の引き下げ率に緩和をされた。リツキサンについては、15.5 7%の引き下げ率のところが13.07%に引き下げ率が緩和されたという実績がございま す。  続きまして13ページでございます。実は、論点に市販後臨床試験の結果で評価はでき得 るかどうかということを入れておりますが、実際にどんな試験が今国内で市販後臨床試験と して行われているのかということでございます。これについては日本医薬情報センター(J APIC)が、製薬企業が実際にこういう試験をやるものについて任意に登録する制度をつ くっておりまして、強制ではございませんのですべて載っているわけではございませんけれ ども、かなりの数が載ってございますので、公表されていることもございまして、これのリ ストを9月現在で登録されているものをおつけをしております。  例示で御説明いたしますと、13ページの1番、ハーセプチンでございます。これは転移 性の乳癌の薬でございますけれども、これにつきましては、もともと単剤で、このハーセプ チンの単独投与での有効性が認められまして承認されているわけでございますが、臨床の現 場では、実際ほかの化学療法剤と併用されることも多いということで、では併用された場合 にどのくらいの効果を示すのかということを市販後での臨床試験をやっているものがござい ます。  それから、例示といたしまして次の14ページをちょっとお開きいただきまして、10番、 これも抗癌剤でございます。胃癌の薬のティーエスワンという薬がございます。これが実は 胃癌の術後の補助化学療法としての比較試験を行っております。これについては、現在の癌 治療が、いわゆる手術療法、化学療法、それから放射線療法、いろいろ組み合わせをしなが ら実際に癌治療を行うことがだんだん普通になってきているわけでございますけれども、認 められたときには単独での効果が認められて胃癌という効能をとっているわけでございます が、実際に今臨床現場でいろいろ行われている、例えば手術の術後に化学療法を組み合わせ た場合に生存期間等の指標がどのくらい変わるのかということについて、実際に手術単独療 法と比べた検証の試験を行うというようなことをやっているわけであります。  続きまして20ページでございます。次は、いわゆる競合品のない新薬でもどのくらい下 がるのかということの実例でございます。「原価計算方式で算定された新薬の薬価推移の 例」ということで、3回程度引き下げたものが見やすいだろうということで、平成12〜1 4年の間に収載された、一応原価計算方式のものを挙げさせていただいています。これは類 似薬がないということでございますが、その基準で選んで挙げさせていただいております。 これを見ていただきますと、内用薬、注射薬、外用薬がございますけれども、例えば内用薬 を見ていただきますと、幾つもございますが、この原価計算方式で算定された内用薬の平均 引き下げ率、黒塗りしてございますけれども、これが2.59、2.39、それから3.2 1と、ちょっと市場拡大再算定が入ってございます、それを抜いた計算を18年はしてござ いますが、そのような分布になっています。それから注射薬でも2.31、1.95、2. 83。外用が2品目しかございませんで、ちょっと違う数字が出ておりますが、5.01、 2.69、4.04と、こういった数字が出ておりまして、大まかに言いまして、類似薬が ないものでも改定によりまして毎回2〜3%程度は引き下げられているということが読み取 れるかと思います。  続きまして21ページでございます。今の関係でございますが、これは業界の方の前回の ヒアリングのときにも、特許期間中については薬価の引き下げを猶予していただけないかと、 こういう御意見をいただいたところでございますけれども、それでは逆に、市場実勢価格以 外の要素で改定するルールというのはどういうものがあるのかということで、引き下げ・引 き上げ、両方あるというものがございます。これは最初にございますように、例えば後発品 が薬価収載された場合には、市場実勢価に加えてその先発品についてマイナス6〜8%加え て下げる。また、これから御説明する市場拡大再算定がある。また、引き上げについては、 不採算品ということで、非常に長く販売をしておりまして、採算がとれるレベルを割ってし まって、もうやめてしまうというようなものもございますけれども、臨床現場の御意見でや はり続けてほしいというものを、不採算品再算定をやるわけでございますけれども、こうい ったものは営業利益率ゼロで算定をしました新薬価というものを算定しております。そのほ か、効能変化、用法用量変化で、これは引き上げ・引き下げ、両方ございます。  続いて22ページで、市場拡大再算定も含めた再算定で、今まで平成8年以降のリストを 挙げさせていただいております。これまで非常に大型品のものが幾つも含まれていることを 読み取りができると思います。  続きまして23ページでございます。18年改定で行った市場拡大再算定のリストでござ います。  続いて24ページに参ります。市場拡大再算定で、これも今回議論をいただきたいという ことで事務局で挙げさせていただいておりますが、特に事務局の方で御議論いただきたい点 としまして、下線を引いた部分、特にまず対象品の扱い、対象をどう考えるかということで、 ここに書いてございますように、原価計算方式以外の方式、具体的には類似薬効比較方式等 でございますが、薬価収載後に使用方法の変化や対象患者の変化、その他変化により使用実 態が著しく変化した既収載品というものが対象になってございます。  それから、その再算定類似品とございまして、いわゆる「とも連れ」とか「親子で引き下 がる」とか、いろいろ言い方がありますけれども、あるものが引き下がりますと、それを比 較薬にして算定したものは、それも一緒に引き下がるというものでございます。それから、 先ほど言った真の臨床的有用性が検証された場合の補正加算率の、特に傾斜配分の問題の問 題意識ということでございます。  次に25ページをお開きいただきたいと思います。市場拡大再算定の御議論についての事 例を先ほど挙げましたけれども、事務局としてはどういうケースを気にしているのかという ことで、ここに表で、いろいろな事例があり得ると思いますけれども、こういった例もあり 得るであろうということで挙げさせていただいております。A、B、C、Dと新薬がござい まして、ここで見ていただきますと、一番右側に、市場拡大再算定の該当性があるかないか ということが出てまいります。Aの薬の場合は、効能追加がなしで、しかも要件上の予想の 2倍以上ではない、1.5倍ということでございます。それからBの薬は、効能追加もない のだけれども、拡大率は2倍を超えている、そういう意味では要件を満たしている。しかし、 市場拡大再算定の該当性はない。効能追加の変化をどう見ているかということでございます が、先ほど言ったように、使用実態が著しく変化したということを見る場合に、すべからく、 我々も1万4,000品目の薬価基準収載品目がある中で、いろいろなデータをキャッチす ることが非常に難しいことが多いわけでございますが、薬事承認で明確に追加されるという ことは、対象患者が増えるということは通常明らかでありますので、そういった要素をもと に著しく変化したということを運用上やらさせていただいております。そういう意味で効能 追加がないということで、市場拡大再算定の該当がないというような判断を現在の運用上は させていただいている。  それがCの薬になりますと、効能追加があって、市場拡大率も3.5倍というものは、こ れは再算定に該当する。Dの薬は市場規模の1.8倍ということで、2倍を超えておりませ ん。この薬単独では該当してございませんけれども、これは算定時の比較薬が、再算定の対 象品でありますCを対象にやったということもございまして、これは再算定類似品という扱 いで対象になるというものでございまして、こういうように、非常に市場的には類似のもの と見られているものでも、若干の発売時期ですとか、効能追加の有無ですとか、そういった 違いで対象になるもの、ならないものが出てくるということが我々としての問題意識でござ います。  続きまして27ページでございます。「市場拡大再算定における加算」ということでござ います。先ほどアリセプトとリツキサンについては、補正加算率を御説明しました。先ほど の総会でも傾斜配分のお話がありましたので御説明いたしました。ここで書いてございます ように、内服と外用でございますが、例えば補正加算率がAが10だという場合に、一番高 い場合で15%、一番低い場合で5%、この間をずっと曲線をとりまして徐々に移りかわる ということで、これは標準が500円程度だと思いますけれども、それを10%を境にして 上げるものと下げるもの、こういう分布になっております。  続きまして28ページをごらんいただきたいと思います。1日薬価は、言ってみれば単価 というふうに見ていただければいいと思いますが、特にこの市場拡大再算定は、市場規模の 拡大率で引き下げ率が変わってまいるものでございますけれども、その1日薬価と市場規模、 あくまで最初の算定のときのピーク時の予測市場規模ということでございますが、これにつ いては、一応5年分ぐらいとりましたところ、なかなか相関関係にはない。言ってみれば、 1日薬価が安くても非常に長期間使うような薬はどうしても市場規模が増えていくというこ とで、当たり前と言えば当たり前なのかもしれませんけれども、必ずしも1日薬価と予想市 場規模の間には相関関係がなく、安いものでも市場規模が大きいものもあるということが読 み取れるかと思います。これは注射についても同じような状況になってございまして、29 ページでございますけれども、そのような形になっているということでございます。  それと加えまして、薬−3で、説明はもう省略いたしますけれども、前回のヒアリングの 際にございました医薬品業界の意見も、事務局の方でポイントをまとめた資料をつけさせて いただいております。  資料の説明は、以上でございます。 ○遠藤部会長 長々とありがとうございました。  それでは、非常に細かなデータが出されたわけでありますが、ただいまの資料等に基づき まして、「イノベーションの評価」と「市場拡大再算定のあり方」について御自由に御議論 いただきたいと思います。あるいは、ただいまの御説明に対する御質問でも構いません。 ○向田専門委員 「イノベーションの評価」の方からなのですが、先ほど管理官の方からあ りました薬−3に、前回業界の方が主張したものが載っておりまして、その2ページに「イ ノベーションの評価と促進の方向性」ということで、日薬連、phRMA、EFPIAとい うことで案が出ておりまして、それでこの今日の薬−1を見ますと、この案についてのコメ ントはどこにもないわけでございますが、多分「イノベーションの評価」の(5)のところの 「その他、イノベーションの評価をどのように考えるか。」という、ここに入ってくるのだ と思いますけれども、手前どもというか、業界の方で言っていますイノベーションの評価の 中には、先ほどちょっと磯部さんからありましたけれども、特許期間中の薬価の除外という ような案もありまして、利益の獲得を早めにやって、それを研究開発投資に向けて新薬のサ イクルを早めるということでございますので、ドラッグラグの解消にもつながるということ で、ひいては患者さんに早く新薬が届くということにもなりますので、ぜひこの辺の御議論 も今後進めていただきたいというお願いでございます。 ○遠藤部会長 ありがとうございました。またそういうことも含めて議論を進めていきたい と思います。  なかなか膨大な資料でありますので、質問をまとめたり考えをまとめるのが時間がかかる かもしれませんが。  それでは、お考えいただいている間に、私が1つ確認をさせていただきたいと思います。 非常に短い期間にこれだけの資料を作成していただきまして、大変事務局は御努力をされた と敬意を表したいと思いますが、薬−2の1ページで、外国平均価格との比較をしていると いうところでありますけれども、あくまでもこれは前提条件ですけれども、外国平均価格と いうのはいわゆるリストプライスである、実勢価格ではないということを前提にしていると いうことでよろしゅうございますね。 ○事務局(磯部薬剤管理官) そういうことでございます。特にアメリカの価格については、 企業の方が届け出ました卸売価格の平均でございますので、そういう意味での、日本の薬価 とは少し違うところがあると理解をしております。 ○遠藤部会長 ありがとうございます。 ○飯沼委員 薬−2の12ページをごらんいただきたいと思いますが、新しい効能が追加さ れて、下げるべき値段、パーセントが減らされているということでございます。それはいい ことだと思いますが、上の薬2つで下げ率が違いますね、それはどういうようにして計算さ れるのですか。 ○事務局(磯部薬剤管理官) 12ページでございます。今の、確かにアリセプトの場合、 加算率がA=5、それからリツキサンについてもA=5でございますが、先ほどの傾斜配分 がございまして、1日薬価が、アリセプトが、言ってみれば非常に安い分野でございまして、 リツキサンは、薬価が非常に高いものでございますので、1日薬価ベースで見ても非常に差 がございましす。先ほどの傾斜配分がきいてまいりまして、同じA=5という科学的な評価 でございますが、実際のαということで、アリセプトについてはそれから少し上がりまして、 リツキサンは非常に下がったという結果になってございます。 ○飯沼委員 続けていいですか。 ○遠藤部会長 はい、どうぞ。 ○飯沼委員 この新しい有用性が検証されたと、これはメーカーがおやりになったのですか、 それとも何か別の治験を組まれたのですか。 ○事務局(磯部薬剤管理官) これは、前回でございましたが、たしか外国の試験でござい まして、実際に試験をやられた方は当然臨床家の方だという理解はしておりますが、企業の 方がどのくらいサポートしているかは、ちょっと今すぐ確認はできません。すべて外国のデ ータでございます。 ○飯沼委員 と申しますのは、行く行くジェネリック製品等が出てくるのだろうと思います けれども、その市販後の調査をジェネリックにもやっていただきたいというのが我々のたっ ての願いでございますので、こういうことがやはり実際にメーカー主導でやられれば非常に いいことだと思いますので、念のため御質問させていただきました。 ○遠藤部会長 ありがとうございます。今後のまた議論にしたいと思います。  ほかにございますでしょうか。 ○山本委員 前回ヒアリングのときに幾つか議論があって申し上げたのですけれども、価格 を決めるときに比較薬効方式をお使いになるということで、ないものは原価計算でいくのだ、 これは従来の決まりですから、そのことは決して悪いとは思わないのですが、薬−2の2ペ ージあたりを拝見しますと、総じて古い薬と比較すると下がってしまって新しい薬と比較す ると高くなるという、もしこのような傾向があるとすれば、確かに、価格が下がる前に比較 をしたということなのだろうと思うのですが、ただ、中には35年も前の薬と比較してとい うことになると、これは極めて現実性がないのではないか。あるいは反対に言えば、35年 間も使っているいい薬があったということになるのかもしませんし、それまで何も開発でき なかったということになるかもしませんが、総じてそういう傾向があるとすれば、やはりど の程度が一番いい比較対象なのか。先ほど丸山委員がおっしゃったように、2年間が早いか 短いか、2カ月間ということになると、30年も前の薬と比べるのはどうなのだろうかとい う議論が出てまいります。  そういった中で言えば、今の薬価のつけ方が、どんなによい薬であっても改定のたびに下 がっていってしまうということでありますから、古くなれば古くなるほど、いくら効果があ って、臨床上、あるいは患者さんにとっていい薬であっても下がってしまう。それと比較を されるというのはちょっとかわいそうな気がしますので、本当にイノベーションを含めたも のを議論するのであれば、もうちょっと比較薬効の相手の時期を早めるといいましょうか、 あまり古いものを使わないような決まりみたいなものをつくった方がよいのではないかなと いう気がいたします。  それからもう1点、有用性加算の部分で、臨床上、つまり治療上の効果というのが挙げら れていて、そこはともに臨床的なものだと思うのですが、薬を扱う者からしますと、あらわ れてくるアウトカムは確かに大切でありますけれども、その物が持っている作用機序という ことも大変大きな議論でありますので、そうした部分が、先ほど管理官のお話ではあまり評 価の対象にはなっていないということであるとすれば、結果として新しい作用機序は新しい 効果を生んで、治療上に反映されるということになりますので、そうした意味からすれば、 有用性加算の中にそうしたファクターも加えるのも悪いことではないなという気がいたしま した。  もう1点、メーカーさんに大変評判が悪い市場拡大再算定でありますけれども、ここに、 今日お示しになったものは、先ほどのリツキサンあるいはアリレセプトと同じように、具体 的にある一定のエビデンスがあれば、ただめちゃくちゃに下げるわけではないということで あれば、そうした市場拡大再算定のようなものが多少機能としてあってもやむを得ないのか なという気がします。ただ、それは反対に特定のものを何か下げてしまおうというような、 そちらの方に働くということについては問題でありますけれども、全体の評価として、今使 われている薬が一体どういう評価がされていて、臨床上どういう効果があって、それがどれ ほど治療上あるいは費用上影響するのかということも十分に検討した上で下げ率をおまけを してあげるというのであれば、これは極めて合理的だと思いますので、そうした方法も含め てお願いしたい。  一番最後に管理官が言われたように、1日薬価の比べ方というのは、物によっては長い間 使わなくてはいけない薬もあるという気がいたします。短期で使うお薬であれば、1日薬価 のピークのとり方というのは正しいと思いますけれども、医薬品の性格上、疾病の性格上、 あるいは治療の特性上を考えてみて、かなり長期間にわたって薬を飲まなくてはならないと なれば、それは瞬間的なピークで見るのか全体の面積で見るのかということも、当然物によ っては評価しなくてはいけませんので、できればそうしたきめの細かなというか、業務的に は大変なことだと思うのですが、そうした視点も今後の議論の中で要るのではないかなと思 います。そうしたことを踏まえた上で、実際、本当にイノベーションに係るようないい薬を どう評価するかというのが今後の在り方であろうと思いますので、ぜひそうしたことも何か 検討いただければと思います。 ○遠藤部会長 ありがとうございます。ただいま、今後の議論のポイントということをお話 しになったということでよろしゅうございますね。 ○長野専門委員 専門委員の長野でございます。意見を申し上げます。事務局から多角的な 分析資料の御説明をいただきまして、感謝申し上げます。その分析資料の22ページに、い わゆる市場拡大再算定関連の平成7年中医協建議以降の実施された品目、理由がまとまって おります。市場拡大再算定といいましても、先ほど事務局から御説明がありましたように、 限定的な理由をつけて対象を決めていくというのが原則だと思いますし、その結果がこの平 成8年以降の実績として一覧されているものだと思います。  原価計算による新薬の算定薬価、その上で、当初の数量予定よりも大幅に数量が伸びたと いうことは、当初の原価そのものが、数量が伸びたことによってコストが変わってまいりま すから、そこは再算定するというのは、専門委員の立場としてもよく理解をいたしておりま す。  一方で、難しいのは多分類似薬効比較方式で、類似薬の最類似薬、今のルールですと、最 類似薬を決めて、その1日薬価との比較、有効性・安全性、いわゆる有用性の比較をして、 必要な加算をつける・つけないというのを決めて、当初の新薬の薬価が算定されるわけです。  そのとき、今のルールですと、25ページにございますように、現行ルールのところがま とめて1に書かれていると思います。(1)の丸で、後段2行目以降なのですが、「当該既 収載品の使用方法の変化、適用対象患者の変化その他の変化により、当該既収載品の使用実 態が著しく変化した既収載品」が対象であると。このいわゆる「著しく変化した」使用実態 というものを客観的に説明するのが非常に重要なポイントになろうと思います。  一方で、5月30日でしたか、本会で、イノベーションを評価しよう、薬価面でも適正な 評価をしようと、こういうことで来年の4月に向けた御議論が今スタートしているところだ と思います。言うならば、最初の新薬の値づけについては、イノベーションを適正に評価し ようということで、現行のルールよりもより上がる場合もあるだろうと思います。一方で、 売れ過ぎたら下げるというところは、平成8年以降、22ページのように実施されているわ けですけれども、この「イノベーションの評価」という状況下で、かなりその適用によって は、製薬企業のいわゆる研究開発意欲をそぐことにならないように、今後の御議論をこの場 でもぜひしていただきたいというのが専門委員としての意見でございます。長々と申し訳ご ざいません。 ○遠藤部会長 ありがとうございます。そのような御意見も含めまして議論を進めていきた いと思います。  ほかにございますでしょうか。  本日はかなり具体的な詳細なデータが出ておりますので、今後これらを議論するわけであ りますから、その上では非常に参考になる資料が提出されたと、そのように思います。また、 今後何か特別なデータが必要だということであれば、でき得る範囲で事務局にお願いしたい と思いますので、御遠慮なくおっしゃっていただければと思います。  それでは、予定した時刻になりましたので、特に御意見ないということであれば、これを もちまして本日の審議は終了したいと思います。  次回以降、今日残りましたものについての御審議をお願いしたいと思います。  次回の日時及び場所につきましては、追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお 願いいたします。  それでは、本日はこれにて閉会いたします。ありがとうございました。                  【照会先】 厚生労働省保険局医療課企画法令第二係 代表 03−5253−1111(内線3276)