07/09/13 厚生科学審議会科学技術部会第2回臨床研究の倫理指針に関する専門委員会議事録 厚生科学審議会科学技術部会 第2回臨床研究の倫理指針に関する専門委員会 議事次第 ○ 日時 平成19年9月13日(木)17:00〜19:00 ○ 場所 合同庁舎5号館 6階 共用第8会議室 ○ 出席者 【委 員】 金澤委員長 廣橋委員長代理       飯沼委員 伊賀委員 川上委員 北村委員 倉田委員 河野委員  小林委員 佐藤委員 永井委員 藤原委員 本田委員 前原委員 丸山委員 谷内委員 【参考人】 光石弁護士 【事務局】 新木研究開発振興課長 林治験推進室長 佐藤課長補佐 【大臣官房厚生科学課】 石井課長補佐 ○ 議 事:1.参考人からの意見聴取 ( 1 )光石 忠敬 参考人 ( 2 )谷内 一彦 委 員 ( 3 )川上 浩司 委 員 2.倫理審査委員会(IEC)について   3. 臨床研究による健康被害に係る補償について 4.「疫学研究に関する倫理指針」の対象範囲について 5. その他 ○ 配付資料   議事次第 座席表 委員名簿 資 料 1 第1回臨床研究の倫理指針に関する専門委員会の主な意見 資料2-(1) 医師主導治験に係る各種賠償保険の関係について 資料2-(2) 医法研補償ガイドライン(平成10年) 資料2-(3) 現行の健康被害救済制度の比較 資 料 3 臨床研究について補償、対象範囲等(前回資料) 資料 4  疫学研究指針の対象範囲について 資料 5  委員提出資料(光石参考人、谷内委員、川上委員) 参考資料1 臨床研究に関連する指針等 参考資料2 平成18年度臨床研究の倫理等に関する特別研究報告書 参考資料3 ヘルシンキ宣言 参考資料4 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令 参考資料5 臨床研究に関する倫理指針とICH−GCP比較 参考資料6 臨床研究倫理指針の遵守状況チェックシート案 参考資料7 疫学研究に関する倫理指針(平成19年改正後) 参考資料8 各補償制度の概要に関する資料・約款等 ○事務局 ただいまから、第2回の専門委員会を始めさせていただきます。本日は、 先生方におかれましては、お暑い中、そしてご多用中、遅い時間にかかわらずお集まりを いただきまして、ありがとうございます。本日も、まだ中央省庁の建物はクールビズとい うことで、少し冷房の温度を高めにしておりますので、クールビズにご協力をお願いでき ればと思います。よろしくお願いいたします。  本日は、委員19名のうち15名の委員にご出席をいただいております。井部委員、江 里口委員におかれましては欠席、その他2人の委員が遅刻でお見えになるというご連絡を いただいております。本会議は成立していることを最初にご報告申し上げます。なお、本 日の会議は公開としておりますので、ご了承いただきたいと思います。また、本日はこれ までいただきましたパブリックコメントの中で、被験者の健康被害の救済に関する議論に 資するために、光石法律特許事務所の光石忠敬参考人にご出席をいただいておりますので、 始めにご紹介させていただきます。それでは、議事の進行を金澤委員長にお願いいたしま す。 ○金澤委員長 第2回目になります。一国の首相は辞めてしまうそうですが、この会は粛 々と進めたいと思いますので、ご協力のほどお願いいたします。まずは、配付資料の確認 ですが、簡潔にお願いします。 ○事務局 事務局でございます。本日の配付資料について、説明させていただきます。ま ず、議事次第、座席表、構成員名簿があり、そのあとに資料番号が振ってあるものが1か ら5まであります。その他、参考資料については、先生方の座席に1冊ハードファイルに 収めて、配付しております。参考資料の番号は、1から8までです。そのほか、本日、追 加資料として、光石忠敬先生から「ヒアリングスピーチのレジュメ」というものを1枚、 ご提出いただいております。それと「ライフサイエンス・サミットの大会宣言」という1 枚のペーパーを追加で配付しております。このハードファイルについては、毎回会議で使 用しますので、お持ち帰りにならないようお願いいたします。以上、過不足等ありました ら、事務局にお知らせください。 ○金澤委員長 いまの「ライフサイエンス・サミット」の紙も、光石先生からですか。 ○事務局 これは3枚一緒です。 ○金澤委員長 3枚一緒にですね。それでは、議題1に入りたいと思いますが、本日は 関係の方からご意見を頂戴いたします。資料1に前回の議論の主な意見がまとめてあり ますが、被験者になられる方々の保護、あるいは倫理審査の推進ということで、倫理審 査を中心に少し議論をしていただきたいと考えております。  今日はお三方にお出でいただいておりますが、最初に先ほどからご紹介がありますよ うに、光石弁護士のご意見を伺いたいと思います。その後、また皆さんからいろいろご意 見を伺いますが、予定になっておりますように、谷内委員と川上委員からお話を追加して いただいて、そして皆さんでご議論いただくというスタイルを考えております。よろしく お願いします。 ○光石参考人 参考人の光石忠敬と申します。今日は、ぬで島次郎さんと栗原千絵子さん と私と3人で出させていただいたパブリックコメントについて、こういう発言をする機会 を与えていただきまして、大変ありがたく存じます。まず、レジュメに資料として(1)から (5)とありますが、お手元の資料でいうと、B、E、A、D、Cと、ちょっと順序が違っており ます。申し訳ありません。つまり、(1)は5B、(2)が5E、(3)が5A、(4)が5D、(5)が5Cです。  まず、最初に倫理指針の水準ということについて申し上げます。つまり、倫理指針とい うのは、本来はヘルシンキ宣言レベルの、高度の規範を、まずプロフェッショナルが作る。 プロフェッショナルが作って、プロフェッショナルの専門組織がサンクションを含めて自 己統治する。そういうものが当然、倫理指針のあるべき姿です。ところが、日本には臨床 研究に関する専門組織はありません。それから、そういうわけで自己統治はありません。 本来は専門組織を構築し倫理指針を創り、倫理指針について自己統治能力を獲得していく ということが一番大事なことだと、まず思います。  現行の臨床研究倫理指針を見ると、ヘルシンキ宣言の27条以下、全部抜け落ちている のです。27条というのは、大事なネガティブ結果を公表する義務があるということも謳っ ておりますが、そうなるとヘルシンキ宣言の水準を下げてしまっている。それはよく見る と、ヘルシンキ宣言の9条に反しているのです。つまり、9条というのは、ヘルシンキ宣 言が示す被験者に対する保護を、弱めたり無視したりすることが許されてはならないとい うことを、はっきり言っているのです。日本医師会は世界医師会の中に入っていますから、 これから考えると、現行の倫理指針というのは何か直さなくてはいけないのだろうと思い ます。  2番目ですが、現行指針は告示なのです。これがどういう法的位置づけになるのだろう か。最初は行政立法かなと思いましたが、ご存じのように国際人権自由権規約7条を見る と、「何人も、その自由な同意なしに医学的または科学的実験を受けない」。これは条約と いうレベルで、そういうのが日本の法体系の中にあるのですが、現行指針は行政立法とは 言えないと思います。なぜかと言えば、憲法上、行政立法は執行命令または委任命令なの ですが、そういう根拠となる法律は存在しないのです。国会が本来、法律をもって定める べき国民の権利義務にかかわる事項を無限定に行政立法に委ねるとすると、立法機関とし ての国会の責務放棄になるだけではなくて、行政府の権限を過大にして、三権分立に反す ると。  では何だということになるのですが、これは法定外の行政指導の告示だろうと私は理解 しています。行政指導に規制的指導というのがありますが、その中の法律の根拠を欠く法 定外の指導、それの告示だろうと思います。行政指導のうち、少なくとも相手方の権利・ 自由を実質的に制限するような規制的指導をするには、法律の根拠を必要とするというの が有力説です。仮にこの説に立たないとしても、法定外指導の許容の限界を考えると、所 掌事務の範囲内でなくてはならないとか、法の一般原則に抵触する指導は許されないとい うことになっております。そのようなことを考えると、現行の告示指針があるだけでは、 どうも法的位置づけにも問題があるように思います。  そこで、倫理指針の限界ということについて入りたいと思いますが、倫理指針があると いうのは大事なことなのですが、車の両輪のように、やはり法制化というのがどうしても 必要なのだと。それは特に臨床研究の審査システム、その実情というものを私も(2)、Eと いう資料で、私が実際に治験審査委員会などで経験してきた現場での問題点を詳しく書い ておきました。そういう実情がある、はっきり言うと、日本は研究審査システムが非常に 劣っています。そもそもそういう審査システムが独立性を持っていなければいけないとか、 あるいは中立性がなくてはいけない、あるいは地位や権限を明確にしなければいけない、 私はそういったことがいちばん大事なことだと思っています。  それから、臨床研究について、公的資金をどんどん活用していくことも必要になります。 それから、臨床研究のスポンサーと研究者との経済関係、非常に重要な利益相反の問題な ど、いろいろあります。それから、被験者への参加誘因という問題があります。例えば協 力費などを被験者に支払う、いったいそれは自由な同意と言えるのだろうかというような 限界もあります。それから、よく問題になっている補償制度。法制化がないと、これはち ょっと倫理指針のレベルではできないということを今、申し上げているのですが、補償制 度と並んで、もう1つ大事なのが研究情報の登録や公開という問題です。例えばパブリケ ーションバイアスということで、データがネガティヴだと公表しないというのが実際には 多いわけですが、そういう研究結果を研究実施者などが公表するには、メーカーの同意が なくてはいけませんというのが、ほとんどの臨床研究委託契約に規定されております。そ ういったものは本当にそのままでいいのだろうかということを考えると、こういった点を、 規範として何とか働くようにしようとすれば、やはり倫理指針のみでは無理だということ が言えると思います。  もう1つは、ほかの法律との関係を考えていかなくてはいけないわけです。例えば医療 保険制度などを見ると、保険診療と保険外診療の併用は、原則として駄目ということにな っています。混合診療の禁止と言っていますね。治験や先進医療などに併用が認められて いるのですが、臨床研究についての法的な位置づけがないので、臨床研究と保険診療の併 用は難しいですね。こういう健康保険法や療担規則と言われるようなものとの関係がある 臨床研究について、やはり法制化がないと、そういう問題にも近付いていけないのです。 また、ほかの例として薬事法などを見ると、治験でない限りは製薬企業が医療現場に研究 的な製造物の授与や販売ができないですね。そうすると、このように薬事法と関係するよ うな場合は、やはり臨床研究について法制化がないと駄目だということになります。  4番目に、今度は補償制度を被験者保護の柱とすることの問題について述べます。無過 失補償制度は非常に大事な制度だと思いますが、その無過失補償制度に必要不可欠な要素 をお話したいと思います。それは、無過失補償制度が重要ですが、よく考えてみると事故 原因の究明、あるいは再発防止策を策定して、現場に還元するという仕組みがない限り、 問題が大きいですね。なぜかと言えば、事故が起きたときに、事後的に金銭的な補償のみ で満足させると、原因の究明や再発防止は疎かになるのです。そういうことで、この臨床 研究はいいのだろうかということを考えなくてはいけないと思います。  2番目に、事後的に金銭で賄うシステムのみでいいのだろうか。やはり欠けるのがある だろう。それは事後的な規範のみならず、事前の行為規範というのはやはり必要だと思い ます。これは重要だと思います。特に人間の身体や健康の害の中には、事後的に金銭をも らったからといって、賄うことのできない不可逆的な害が当然あります。そういうことを 考えると、公的な第三者システムによる審査は不可欠になりますが、それらについて、先 ほど申し上げたように、独立性などを維持しないといけないという意味では、法制化がど うしても必要になってまいります。  5番目に、いまお手元にある自民党のライフサイエンス・サミットの宣言などもご覧い ただきたいのですが、こういう決議などを見てみると、幾つか特徴があります。先ず、こ のライフサイエンス決議に限らないのですが、健康被害が生じた場合の被験者保護という ことで、みんなに共通しています。これはどういう問題があるのかということを申し上げ ると、先ほど申し上げた事後的に金銭で賄うシステム、そのことだけを被験者保護と考え るのは、やはり片手落ちであるだろう。それはもちろん大事なのですよ。無過失補償は大 事なのですが、それが被験者保護、被験者の人権の問題なのだというように狭く言うのは、 私は公正でないと思います。そういう意味では、CRDSのICRの推進であるとか、文部科学 省、厚生労働省、経済産業省による「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」 などといったものを全部見ても、大体そのように健康被害が生じた場合の被験者保護とい うことをみんな言っています。もう1つは、いずれも新法を制定しようということを示唆 しています。  さらにもう1つ言うと、臨床研究は国民の健康を守るために重要だということを言って います。この「国民」という概念が大事なのですが、これは大体多数の患者たちというマ ジョリティを意味しています。マイノリティとしての被験者、研究対象者については、あ まり意識していないように思うのです。この「国民」という言葉が非常に飛び交っていま すが、これを考えるときに被験者というのが一体どういうことになるのか、ということを 考えなくてはいけないのだろう。そこで、示唆されている臨床研究法制化ということを考 えてみると、パブリックコメントに書いたように、いずれも研究者や産業界の利害得失、 あるいは臨床研究における混合診療を何とか解禁していきたい、あるいは研究データを薬 事承認申請データとして、薬事法の治験のように活用したい。それからまた、被験者補償 制度というものを何とか作りたい。こういうことであって、研究対象となる被験者、患者 の人権保護を主たる目的とするものではないというのがこの政策の問題点だろうと思いま す。  一方で、臨床研究基本法を作る、基本法制定の必要性がCRDSなどには出てまいりますね。 よく考えると、基本法というのは国政の重要分野について、国の政策や制度の基本方針を 明示する法律であって、プログラム規定で構成されるものが多いわけで、基本法というの は憲法と個別法の間をつなぐものなのです。したがって、基本法にあっては、普通、直接 に国民の権利義務に影響を及ぼすような規定は設けないのです。そうすると、通常、基本 法の大半は訓示規定であるとか、あるいはプログラム規定で全部終わってしまう。そうな ると、先ほどから申し上げているような点について、法制化できない。そういう意味で、 法制化が必要だという以上は、もちろん基本法はあってもいいのですが、それだったら個 別法もなくてはいけない、個別法をちゃんと作らなくてはいけない、こういうことを申し 上げたい。  結局、パブリックコメントで申し上げたように、医学研究についての歴史認識を共有化 するべきだというのは、日本などの歴史を見ると、(4)のDの資料にも書きましたが、例え ば、もともと人間の尊厳という言葉が初めて世界の中で登場してきたのは、ナチスドイツ の医師らが実施した生体実験に対するニュルンベルグ医師裁判での反省からきているので す。戦後の世界人権宣言、それから国際人権自由権規約です。  これらの宣言、条約は、やはりナチスの人体実験への反省があって出来ていったのです が、日本では731部隊の人体実験について、裁判も行われませんでしたし、結局、日本で は石井中将の731部隊だけではなくて、日本の多くの国立大学がかかわっていたというこ とも全部、歴史認識としては伏されてしまった。それらのことがあったものですから、こ ういった点については、本当はちゃんと歴史認識をはっきりさせることが、法制度を作る 場合の前提として必要なのだろう。  そういうことを考えると、やはり臨床研究というのは1つの省庁だけで、その特定部局 などの所掌事務などの範囲にとらわれているということになると、これは駄目なのだなと。 もっともっと広い範囲でやっていかなくてはいけない。だから、そういう意味では、人間 の尊厳と、これに由来する人権を擁護して、研究の公正さを確保するための法律として、 社会的合意の形成に基づいて、国会審議を経て立法するべきなのだということが、私ども のパブリックコメントの結論です。  その場合に、立法はどうしたほうがいいかということで、資料(1)に掲げた2003年の試案 と(5)に掲げた2007年の試案は2つとも提案したものですが、特にどこが違うかというと、 2007年の試案は浅野先生、福島先生という医師の方々にも加わっていただいた。加わって いただけた成果の1つは、現行の研究審査委員会を、なるべく実情を重視した上で公的な 研究審査システムとすることを提案しています。それに対して、2003年のほうの試案では、 これは主としてフランス等のもう少し公的なパブリックな研究審査システムを提案してい ます。本当は、おそらくそちらのほうがいいのだろうと思うのですが、日本の現実を考え ると、この2007年の試案のほうが実際的かなということで、医学者の方々にも加わってい ただけたということです。したがって、私どもは(1)と(5)、BとCの試案を参考にしていた だければありがたいと思っております。長くなりましたが以上です。 ○金澤委員長 ご意見はあとで皆さん方からいただくことにして、スペシフィックな質問 があったら、いまどうぞ。よろしければ、次のプレゼンテーターにお願いすることにしま しょう。お二方です。最初は谷内委員からお願いします。 ○ 谷内委員 私は東北大学大学院医学系研究科・医学部の薬理学に所属して、学生の教 育、薬理学と臨床薬理学の教育をして、また自分自身でも基礎研究と臨床研究をおこなっ ています。さらに、大学の中で治験および臨床研究の審査をする立場、あるいは利益相反 も最近始めましたので、そういう3つの立場から、私どもの大学の例ですが、倫理委員会 の現状と、そこから導き出される将来展望、あるいはお願いということでお話させていた だければということで、資料5を作ってまいりました。  これはすべて臨床試験の当面する問題ということで既に前回にお話はされていると思い ます。補償と賠償の問題、臨床研究の仕組みに関しては、指針はありますが、米国のよう な政府機関、OHRP(Office for Human Research Protection)が日本にはありませんので、 臨床研究を監視はしておりません。IRBの運営方法に関しても十分なコンセンサスがあり ませんし、私どものような総合大学ではいくつかの倫理委員会があって、一元化されてお りません。倫理委員会の一元化は何とかしていただきたい、あるいは自分自身ですべきだ ということで対応しているところです。それから、法人化後の対応ですが、やはり国立大 学の法人化というのは結構大きなインパクトを与えていて、組織の権限が総長サイドに移 っています。組織の長の責任が不明確だというのが、いま私自身、臨床研究の倫理指針を 含めた倫理指針を読んでいて思うところです。  そういうことも関連して、スタッフが十分に配置していない場合もあります。最近、間 接経費が増えてきましたが、こういう間接経費が倫理審査システムの改善に十分使われて いないという現状があります。利益相反に関しては、この委員会とは別に厚生科学課のほ うで利益相反に関するガイドラインを作っておりますので、そちらから今年度中にパブリ ックコメントに出ることになっています。  3枚目ですが、「基礎研究と臨床研究の関係」ということで、治験は厚生労働省の省令に より規制されておりますし、我々の大学では、治験審査委員会というところで審査してい ます。治験は比較的、均一なものですから、こういう法的な根拠で対処できるのですが、 臨床研究に関しては、多様なプロトコールが出てまいります。治験レベルのもの、あるい はアンケート調査、あるいは動物実験と臨床研究を重ね合わせたようなものもあります。 例えばヒトのサンプルを取ってきて、ネズミに打つなどというのもあります。倫理委員会 は多様なプロトコールを審査しているというのが私たちの大学、あるいはたぶん他大学で も同等ではないでしょうか。そういうことで、非常に難しい対応を迫られているというこ とです。  次の頁ですが、我々自身もよく参考にしている「IRBハンドブック」を示しています。 栗原先生が訳されたもので、たぶん多くの大学はこれを参照しているのではないかと思い ます。IRB審査は、治験審査委員会でも倫理委員会でも基本的には事前準備が重要で、IRB は判断をする場所であるということで、情報収集の場所ではないというのが基本的な考え 方です。通常はレビューアーを数人置いて、プロトコールごとに割り当てる、それから全 員で審議するという形になると思います。米国では、倫理審査の質は大学の品格として評 価されるということで、特にOHRPが監視していますので、常に大学のいわゆるインテグリ ティを含めて、非常に注意して対応しているようです。我々自身も最大限注意しています が、あくまでも研究者として大学の公正性を保つために行っているということで、そこは 我々の自発的な努力です。  5頁に、倫理委員会の運営の問題点を簡単に指摘しました。数多い申請書の中から、重 要な問題点を素早く見つける、優秀で熱意のある委員を見つけるのが難しい。被験者への 危険性と研究の意義を正しく評価するには、事前の準備に時間がかかります。私も、自分 の研究とは別に、他人の研究の審査に対して、時間を非常に多く使っております。治験に 関しては、審査手数料を徴収できるのですが、通常の倫理審査に関してはすべて無料です。 ですから専門・専任スタッフを置いている所もあると思いますが、かなりの所で専任のス タッフがいない。だから、全部、兼任で行っているということです。次の問題点として、 組織や機関の長、あるいは研究者が倫理委員会の問題点や重要性を十分に認識していない 場合が稀にあると思います。先ほど言いましたように、プロトコールが多彩で、すべてに 治験と同じレベルを要求することができないと考えています。例えば、TR(特に First-in-Human)と疫学のアンケート調査等では、対応が異なると考えております。  重篤な有害事象の報告の仕方について、指針に基準がないため研究者の任意です。3 月13日の読売新聞で私の大学は×が付いておりましたが、これはあくまでもないという ことではなくて、研究者が自主的にIRBに報告するものであると私自身は思っております。 ですから全くないわけではないということで、多くは運用していると考えています。特許 が絡む場合の情報開示の仕方に関しては、最近問題が出てきている点です。  それから、倫理委員会の委員個人の責任が不明確ということで、これはどこまで倫理 委員会の委員が個人責任を負うのかということが不明確ということです。この点は私た ちの関連する病院の倫理委員会でも、委員の方々が非常に困っております。  「被験者保護への改善方法」ということで、私見です。この前も指摘された適応外使 用の研究についてですが、これは良いか悪いかわからないのですが、結構数が多いのが 実情です。その後に治験まで進んだ事例もありますので、私は一律に禁止というわけに はいかないのではないかと、これはいろいろな考え方がありますが、私たちは一律に禁 止できないと考えています。補償については、今日も資料が出ている医薬品副作用被害 者救済制度のQ&Aを見ていると、事例ごとに対応するということが書いてあるので、救 済制度のほうで対応してくれるのかという期待もあります。たぶん無理なのではないかと 思っておりますが、またそういう事例があるかどうか、私は知りません。  情報公開に関しても、読売新聞では多くの大学で×と付いておりましたが、通常、多く の研究者、特に介入試験をやっている研究者は、オタワ声明というのがあって、臨床試験 登録制を情報公開に用いているのが多いのではないでしょうか。だから、情報公開に関し ては一律に倫理委員会で聞いても、たぶんわからないと思います。研究者のほうで自発的 にUMINや医師会などのいくつかの公的なサイトがあって、そこに情報は公開していると 我々は考えております。  次の問題点としては、臨床研究を開始する研究者や倫理委員会の委員に講習会出席を義 務付けるということで、例えば私たちが動物実験をするときやアイソトープの実験すると きは必ず講習会を受けるのですが、臨床研究を開始するときには、私たちの大学ではまだ 義務付けされておりません。義務付けているところもあるように聞いております。これは どうするかというのは、なかなか判断が難しいところです。ボトムから義務付けるのを進 めるのは、非常に難しいですね。大学と中小病院の共同研究による倫理審査はかなり多い です。そういう面で、地域における大学のIRBの役割は極めて大きいと考えております。  有害事象報告制度を治験と同じレベルで厳しく運用するには、専任のスタッフの充実が 必須です。治験レベルの有害事象報告を受けると、ものすごく莫大な量の事務作業量が出 てくる。これはたぶん治験をやっている方は全部おわかりになっていると思います。そう いうことであれば、倫理委員会の審査手数料を取って専任のスタッフを雇う必要がありま す。最近、研究費の間接経費が増えてまいりましたので、それを充てることを厚生労働省、 あるいは文部科学省、あるいはその他の省庁のほうで勧告していただきたいと考えていま す。  今回の会議のいちばんの重要なポイントである「倫理指針改訂へのお願い」、これも私の 考え方です。組織代表者、総長ですが、指針では医学部長などの機関の長と組織の長を分 けているのですが、総長の責務の明確化をしていただきたい。組織内一元化をお願いした い。例えば今年の10月からだと思いますが、文部科学省の非常に強い指導で、動物実験に 関しては総合大学では一律化されてきている。だから、すべて総長が認可する制度に変更 されています。これは臨床研究に関しても、できたらこういうことをしていただけないか と考えています。公的な研究費を受給している機関の責務としての倫理指針の遵守を、ど こかで記述していただけないかということです。それから、研究者の責務として抜けてい るところですが、先ほど光石先生の発言にもありましたが、実際に審査を行っている立場 としては、効果安全性評価委員会の設置は非常に重要なポイントになるのではないかと思 います。原資料の保存義務、それから臨床試験登録制の追加も必要です。  私の希望としては、倫理指針の遵守の徹底のあとに法制化を考えていただかないと、 現場が非常に混乱します。これは治験のときにそうだったのです。他省庁との連携による 専任スタッフの充実や教育義務化、間接経費の利用に関する勧告等の検討が必要です。  そういうことで私の発表は終わりにして、参考資料として、うちの大学がどうやって しているかなど示していますので、これはあとで見ていただければありがたく思います。 ○金澤委員長 かなり具体的なお話をいただきました。何かスペシフィックなご質問は ありますか。よろしければ、川上委員から5分ぐらいでお願いします。 ○ 川上委員 いまほとんど谷内先生からお話がありましたので、私のほうとして は京大の取組みと、実際に私自身が委員としてどういうところを感じているかというこ とについてだけ、お話させていただきます。  1枚目ですが、京大の場合には医学研究科に「医の倫理委員会」という、いわゆる親 委員会があって、ここで医学以外の外部有識者や男女等もしっかり入れた形で、委員会 が構成されています。いちばん大事なのは、親委員会、あるいは専門小委員会がその下 にぶら下がっているのですが、ここを運営する事務局で、先ほど谷内先生からお話があ ったように、間接経費などから努力して雇用しているということです。実際に間接経費 で雇用された方も、熱意があり、かつ知識がないと事務はできませんので、来た案件を どの委員に審査依頼すればいいのか、あるいはどういう先生に相談すればいいのか等も 含めて、非常に努力をして勉強されている方々が揃っております。  親委員会の下に専門小委員会というのがあるのですが、現在は、疫学、臨床研究、再 生医療等の小委員会があり、治験や医薬品等の臨床研究をふくんだ臨床試験は、後ほど お話する京大病院のIRBのほうで審査するという形になっています。  専門小委員会は、それぞれ学内の専門家が7人、8人といるのですが、このうち各案 件について複数名の委員が付いて、Eメールベースのやり取りで審査をして、再生医療 は私が委員長をしているのですが、委員長が取りまとめをして、委員長意見として親委 員会に上申するということです。親委員会は、親委員会委員長の判断で委員会を開催す るという形をとっています。  治験あるいは医師主導治験、あるいは医薬品等の臨床研究に関しては、京大病院の IRBが存在しています。これも同様の外部有識者を揃えた形になっており、かなり活発 な委員会で、薬剤部や看護部、CRCの方なども常時20人以上の方々が傍聴しますし、プ レゼンテーションも実際の治験医師の方に来ていただいて行われることになっています。  京大病院のIRBと医学研究科の「医の倫理委員会」が適宜連携することによって、お 互いを補うような形になっています。いずれも親委員会の調整に関しては、日程調整が 大変で、皆さんお忙しい方ばかりなので、熱意のある方がいて、なにより有能な事務局 がないとなかなか委員が揃わないという問題点も抱えています。  「治験IRBにおける審査の実際」なのですが、一通り、当たり前のことに感じる方も 多いかもしれないのですが、実際に審査をどのようにするのか、あるいはそもそも治験 のIRB委員が何を審査するべきなのかということを理解されているとは限らないことが あります。これはもう少し研修、あるいは教育が必要なのかと思うところがあります。 基本的には、治験薬概要書、臨床試験の計画書、インフォームド・コンセントに、それ ぞれ齟齬がないかどうかということを、科学的、および倫理的な妥当性をもって判断す ることが必要になります。  医薬品の安全性はいろいろな部分で判断が必要ですから、医薬品そのものの性質や動 物実験での安全性が確認されているかも記載が必要ですし、計画書においては、治療後 の観察項目、あるいは副作用報告等が妥当かどうかということも必要になります。イン フォームド・コンセントの審査に関しては、日本語が平易でわかりやすいか、標準治療 を説明しているか、予想される副作用の記載、同意の撤回についての記載といったもので 、チェックリストのような形でポイントを埋めていく形がいちばんわかりやすい審査の 仕方なのかと思います。  特に日本の治験の場合には、海外で認められているものがドラッグラグを経て日本に 入ってくるということもありますので、海外で既承認のもの、あるいは承認準備中のもの に関しては、海外での治験結果や臨床経験がきちんと説明されていることが非常に大事と 考えています。医師主導治験の場合には、研究主体、治験責任医師が大学の中でも分かれ てきますから、ここが明確に書かれているかどうかも必要になります。  以上ですが、全体としては、本当は特に研修や教育制度というマニュアルを各自作れば いいのですが、そこまで実際大学で取り組むことができるとも限りません。先月8月29 日の『日刊薬業』新聞に、IRBの研修を厚生労働省が行うということが書いてありました。 これを実際にちゃんと行っていただき、また、「東京で行うから東京に来なさい」ではなく、 全国で治験とその審査をやっているわけですから、フレキシブルに全国規模で研修を開催 し、研修の義務化も盛り込まない限りは、質が担保できないのではないかと考えています。 ○金澤委員長 川上先生に何かご質問はありませんか。それでは、皆さん方からのご意見 を頂戴したいと思いますが、本日の予定の議題にありますように、いろいろなファクター が絡んでおります。特に倫理審査委員会のことについては、いまお話があったとおりです し、また前にもお話がありましたように、臨床研究による健康被害に係る補償ということ についても、同時に絡んでくる問題です。この2つの問題について、いまプレゼンいただ いたわけですが、切り離すことは難しいかもしれませんが、とりあえずは倫理審査委員会 のことからにしましょう。それで、あとで全体の話をしましょう。まずは倫理審査委員会 についてのご意見などから、お話いただきましょう。あるいは、事務局から何か追加して からにしますか。 ○事務局 結構です。 ○金澤委員長 いかがでしょうね。倫理審査委員会について、皆さん随分苦労なさってい ることは耳にはしておりますが、あるいは読売新聞などで精力的に調査をされたようです が。ちょっと感想みたいなことで恐縮なのですが、この間、本田委員にちょっとお話した のです。読売新聞で非常に熱心にお調べになって、不合格のところが多いというお話はわ かるのですが、どういう点で不合格だったのかというか、「違反」という言葉を使ってあっ たかと思います。そこがわかると、非常に大事なポイントになるのだろうと思うのですが、 わかりますか。どうでしょう。 ○本田委員 大変申し訳ないのですが、実は科学部がメインで担当した記事であり、担当 記者が大阪におりまして、調査の詳細や背景にあるものを何かしらご紹介できないかと聞 いているのですが、今回間に合いませんでした。また、私がいい加減なことを言うのはち ょっと憚られるので、申し訳ありません。 ○金澤委員長 口火を切りますが、先ほど東北大学の谷内先生のお話にありましたが、大 学で人を雇ってきちんとしたことをやるには、お金が必要なわけです。京都大学はいいよ うですが、必ずしも皆さんそういうお金をちゃんと用意できないようなところも、ないわ けでもないみたいですし、具体的なことを少し問題点を挙げていかないと、机上の空論に なるとあまり意味がないと思いますので、その辺を今後の問題にさせていただきたいと思 います。その辺を切り口にしてどうですか。どなたかご意見はありませんか。 ○北村委員 本省の意見もですが、この倫理指針の見直しについての専門委員会というこ とで、集まっているわけですね。法制化という意見もありましたし、まず指針を充実して から法制化をという意見もあったように思うのですが、この会は法制化ということは考え ていないと理解していいのですね。いまの指針の見直しであるという位置づけですよね。 ○研究開発振興課課長(新木) ご議論をしていただいて、それを参考に判断していかな ければならないとは思っておりますが、基本的には、この倫理指針の見直しということで 考えております。もちろん、もしどうしても倫理指針の見直しで不十分ということになる と、また別途検討しなければならないと思っておりますが、現時点では倫理指針の見直し をしていただくということで、ご議論をいただくのかと思っております。ただ、もちろん いろいろなご意見を封じようという趣旨で申し上げているのではありません。 ○金澤委員長 倫理審査委員会については、かなり問題点も明らかになってきているよう ではありますが。 ○丸山委員 谷内先生のお話に共感するところが非常に多くて、やはり多くの問題点とい うのは、人の問題だろうと思うのです。委員で多様な研究のポイントを把握できるような、 優秀で、かつ熱意のある委員を確保するのは難しいということ。それから、大学の管理的 な立場にある研究科長などは、必ずしも倫理委員会の制度についてよく理解されていると は限らず、そういう人が構成を決め、倫理委員の任命権者であるというところにも問題が ある。日本産科婦人科学会のように、理事長になるにはその前に倫理委員長を務めなけれ ばならないというようなあり方も望ましいものとして考えられるかと思うのです。いずれ にせよ予算が必要です。文部科学省のほうでは以前から、間接経費を使えばいいというこ とがいわれているのですが、間接経費は研究のために不可欠なところに使われるべきはず なのですが、予算の足らないところの補いに使われてしまっているようなところがあり、 そういうところを改めて何とかしないといけない。それから、委員の質を向上させるため に、研修・講習を義務化することも必要なのですが、こういうことを実現するためには、 先ほどの谷内先生の、いまも言及されました、指針の遵守の徹底を図ったあとに法制化を することが、やり方としてよろしいのか、それとも光石先生のおっしゃった、法制化で枠 組みを整備してからやるほうが望ましいのかという辺り、もう少しご意見を伺えればと思 います。この問題点、それから改善方法というところは、私も同じようなことを考えてお り、何とかしなければ倫理委員会が良くならない。現在の指針の中核をなすのが倫理委員 会ですので、その改善は不可欠なのですが、それをどのようにして達成するのが望ましい 可能な方法なのかという辺りを、もう少し教えていただければと思いますが。 ○金澤委員長 いまの丸山委員のお話は、具体的にもうちょっと意見をほしいというご意 見なのですが。谷内委員にあえて伺いますが、問題点は問題点として確かに理解できます し、私も関係しておりましたからわかるのですが、具体的にこういうことがあったという ことはありませんか。つまり、非常に熱心な方がおられなくて、残念ながら会が開けなか ったとか、そういう具体的なことをおっしゃっていただいたほうが、たぶんいいのだろう と思うのです。 ○谷内委員 それはちょっと、非常にナイーブな問題です。確かに先生がおっしゃるよう に、私も最近多忙なことが多いので、もう数名熱意のある人がいるのですが、私が休むと、 その先生方に迷惑がかかるとか、困ることがあります。そういうことで、毎回倫理委員会 の運営には非常に苦労しています。昨日も教授会があったのですが、学部長から委員は万 難を排して出席と言われて、そうもいかない場合もあります。そういうことで、倫理委員 会に出席する立場としては、非常につらいものがあります。すべての委員会が重なってき ますので、非常に大変です。特に外部委員と私たちの内部委員の予定を合わせるのが非常 に難しいし、そうしないと委員会自体も成立しない場合もあります。そういうことで、実 際に定員数を満たさない場合に関しては、その月に関しては委員会が流れますので、研究 もちょっと遅れる形になります。それは困る事例です。  それから、私のところの場合ではありますが、倫理委員会は2時から始まって、終わる のが、大体早くて8時か9時なのです。その間、お茶とビスケットだけなのです。休みは 10分間、これは翌日の業務まで結構響きますね。申請件数が多いのと、やはり問題のある 事例、あるいは倫理委員会はいろいろなものが出てきます。プロトコールの審査だけでは なくて、もっといろいろな一般診療に伴うもの、あるいは移植に伴うものも、一応、原則 を論議しているということで、時間がかかります。外部委員の方も熱心なので、一生懸命 やっていただけるのですが、外部委員の方にも非常にご迷惑をおかけしているのが実情で す。大体時間としては6時間とか8時間、あるいは場合によっては12時ぐらいまでかかっ た場合もあります。そのぐらい結構負担がかかっています。それを全部、兼任でやってい るという現実があります。  プロトコールが非常に難しい場合に関しては、あまり最初からリジェクトというと研究 者が傷つきますので、再提出にして、難しいものに関しては何回も提出させる形にする。 あるいは、これは専門の委員会に掛けなさいということで、そういう形で指導的な要素を 入れております。読売新聞で採択率85%を承認しているとありましたが、あれはどこまで を承認というかにかかってくると思うのです。必ずしも倫理委員会はそんなに簡単に通る ものではないと思います。最近どこの倫理委員会でも厳しくしている方向にあります。そ ういう面で、みんなボトムからちゃんと対応しようということで、努力していることをご 理解いただきたいと私は思っております。 ○金澤委員長 何時間もおやりいただく委員の方は、外からお見えになる方も無料なので すか。 ○谷内委員 外部委員は安いですが、一応、たぶん謝金を払っています。ただ、大学の基 準での謝金ですので。 ○金澤委員長 無料と書いてあるから。 ○谷内委員 ただ、内部の委員は全部無料です。外部は、弁護士の方は少し高めになっ ていますが、やはり安めに大学の基準です。 ○小林委員 谷内先生が言われたことは非常によくわかるのですが、倫理委員会の審査 を7時間も8時間もやったら、多くの委員は嫌になってしまうのではないかと思います。 我々の大学は長くても2時間以内で終わるように、何とか苦労しています。つまりある 一定以上の数は審査しない。次会に回しますよと受け付け時に説明します。状況が許せば 、委員会をもう1つ増やさなければいけないのではないかとも考えています。いずれに しても東北大学の現状は大体どこの大学でも同じだと思いますので、その状況は非常に よくわかります。その改善策は、現状では医療機関、大学のトップをはじめ指導的立場の 先生が、倫理委員会はすごく大切なものであるという認識を一般教職員に啓発し協力的 な姿勢を示すよう働きかける必要があります。  我々教授からいえば、教授会は絶対出ようということになるのですが、倫理委員会も それぐらいの対応をするものであるという認識を広く与えないといけない。一般的に見 ても医療機関等で倫理委員会が軽く見られているというのは、何かうまくないのではな いかと思います。たしか去年、新たな治験の5カ年計画を前にして実施した医療機関に たいするアンケート調査の結果にもあったと思いますが、「医療機関等の施設の上層部の 理解が少ない」とうのがありました。これは上層部が「治験を知らない」といことでは なく、「治験に係わる人を評価できていない」という意味で、そういう現実では倫理委員 会もうまくいかないのではないかと思うのです。そこをきちんとやれば、委員になった 人の考え方、また委員に対する考え方も変わってくると思います。残念ながら現状の多く の委員は「できたらそんなことやらないほうがいいよ。そんなことやらないで、何かほか をやっているほうがいいよ」では非常にまずいと思いますね。  外部委員の謝金については、我々の大学も、例えば講義に対するわずかな講義謝金程 度のものは出していると思います。IRBとか倫理委員会には外部委員の方がいらっしゃ っていますが、謝金が安いと言っているかどうかは知りませんが、それが問題でやめら れるということはないですから、謝金以上の意義を認めて来て下さっているという感じ はしますけれども。 ○川上委員 お聞きしている限り、我々は京都大学は非常にうまくいっていると思って いて、親委員会も2時間程度と、大体決まっています。ただ、小委員会は通常Eメール ベースでやり取りをしていて、日程の期限を区切って、各委員がメールで自分の見解を 伝えるのですが、皆さん熱意があって、「良いと思います」で済む人は全くいません。大 体「こういったところに問題があるのではないか」、「こういったところを直すべきでは ないか」ということが委員長に送られてきて、取りまとめをすると。実際にフェース・ トゥー・フェースで集まって審査する前には、皆さん読んできていることは前提になっ ていると思います。  私の個人的な見解ですが、2点、特に強調したいのは1点目が教育研修制度です。こ れがない限りは全くIRBの審査の質を普遍化することはできません。誰がするかと言うと 、私個人的には医薬品医療機器総合機構が治験の審査をするわけですから、ここでIRBの スタンダードについて研修開催、あるいは出張して教えてくれるなどということをしてい ただくのがいいのではないかと思っています。これを受けることに意味づけをしていただ く必要があると思っています。  2点目が、これも谷内委員がお話をされた間接経費等の問題です。事務局がいくら雇い たくても、熱意がある人、学生を使ってやるわけにもいかないことですから、実際にこれ をしっかり運営するための間接経費等をつけるような枠組みあるいは指示を、臨床研究に かかる研究費に項目を設けるとか、何らかの方向づけが必要なのではないかと思います。 この2点を、特に強調したいと思います。 ○河野委員 いままでのお話とも重複しますが、私は病院長をやっていて、病院長として しっかり対応しないとまずいなと伺っておりました。しかし、施設の病院長だけではなく、 教授の委員になる方へのインセンティブが、いまの状況だとあまりないのが実情ではない かと思います。ですから、委員になる方の教育というのは先ほどからお話が出ていますが、 そのほかに、例えば研究費を取るときに倫理委員をやっている方に何らかの付加点数だと か、何か社会的にわかる形でインセンティブをつけるという認識がないと、単にリーダー シップだけでは、そこまで全体の意識レベルがなかなか統一できない気がするので、その 点よろしくお願いします。 ○金澤委員長 ありがとうございました。倫理審査委員会に関してはかなりご意見をいた だきましたが、健康被害に係る補償についてもご意見をいただければと思います。 ○事務局 事務局から、先に資料を簡単にご説明します。資料2に、本日は医師主導治 験に関する各種賠償責任保険の関係の資料や、委員の皆様には資料2-(3)の「現行の健康 被害救済制度の比較」をお配りしております。  資料2-(1)ですが、この専門委員会の議論は、特に医師が行う臨床研究ということなの で、いま現行の保険商品があるものの中では、おそらく日本医師会と保険会社で提供さ れている医師主導治験に関するものがいちばん近いのではないかということで、この資 料をご紹介します。  2頁に、「医師主導治験に関する保険の概要」があります。医師主導治験においてはど のような形でやっているかというのがこの図ですが、医師主導治験に起因して被験者に 身体の障害が発生した場合に、法律上の賠償責任の有無があって、ある場合はこちらに 書いてあるような原因を見ていきます。その中で、医療行為が原因の場合は、現行の医 師賠償責任保険が適用される形になりますが、原因によってこのようなパターンがある ということです。また、法律上の賠償責任がない場合については、「医師主導の治験保 険」と枠で囲ってありますが、現在そういった保険の商品があります。治験業務による 過失責任に基づく法律上の賠償を担保する保険商品があり、また無過失の損害賠償を担 保する保険があるということで、これが資料の5〜6頁に記載しております。  5頁は、医師主導治験の保険の賠償責任部分で、治験の実施者が医師主導治験の治験 業務を遂行するに当たって、他人の身体の障害が発生したときに被る損害賠償を賠償す るものです。治験の実施者が被験者に支払う損害賠償金等が入ってきております。医療 行為に基づく法律上の損害賠償の部分等は、先ほどの医師賠償責任保険というものがあ って、そちらで担保しますが、治験のデザインなどの過失に基づく部分については、5 頁のような担保する保険があるということです。  6頁は、補償責任部分です。「医法研ガイドライン」と書いてありますが、これは本日 の資料の2-(2)にあります。これは国が出しているガイドラインではありませんが、医薬 品企業法務研究会が作っているもので、これがいまデファクト的に使われています。こ のガイドラインに基づいて、治験の中で発生する損害等について、補償金の支払責任を 負担することによって被る損害に対して保険金が支払われるということです。GCP省令 及びそのガイドラインに基づく、法律上の賠償責任の有無で、「なし」の場合の支払いの 補償部分です。  7頁に留意点がありますが、治験業務のうち医療行為に起因する賠償責任について は、医師賠償責任保険の適用があるとか、医師主導治験の保険は医療行為に起因するリ スクのほか、薬剤の瑕疵による製造物責任を対象としていないとか、そういった部分で の運用があります。これは医師主導治験に係るものですが、これを含んで、現状いろい ろな医療に係る健康被害の救済の部分が一目瞭然でわかるようにまとめた表が、資料2- (3)です。  委員の皆様のものは大きなA3版の表ですが、ただいま紹介したのが「治験における被 験者の保護」、この表の上の1、2段目に記載しております。基本的に、企業治験であれ ば治験依頼者が支払い、医師主導治験であれば治験の責任医師、医療機関等が保険料を 支払って動かしている保険です。  2つ目は、「PMDA無過失補償」と書いてありますが、これはご紹介にもあった医薬品副 作用救済制度です。これは、製薬企業の方が基金の形で拠出金を払って、国が事務費を 2分の1補助している格好ですが、医薬品で起こった副作用の被害の迅速な救済という ことでやっている保険に近い制度です。生物由来の感染被害についても、この副作用と 同様の制度がいまはあります。  献血者の保護ですが、これは日本赤十字社がやっているもので、献血のときに、採血 をされた方に針を刺したあとに起こった事故等の保険です。また、骨髄バンク、予防接 種と、現在議論が進んでおりますが産科医療の事故の補償で、これも基本的には保険制 度、いわゆる民間保険等での検討が進められております。  2枚目ですが、これらの健康被害の補償のシステムにおける給付の状況です。医薬品 副作用被害救済制度や治験保険(例)にもあるような形で、ここに書いてある給付額が 治験保険等において支払われる形になっており、その金額面での比較をしたものです。 このようなことで、事務局から、情報提供ということでこれまでの各種補償制度につい てご紹介しました。 ○金澤委員長 ありがとうございました。この国の中では、こういう現状があるという ことです。何かご意見、ご質問がありましたらお願いします。 ○谷内委員 私も先ほどプレゼンで話したのですが、医薬品副作用救済制度で、例えば 適応外使用で研究したときは、PMDAの医薬品副作用救済制度については、事前に配付さ れた資料の中に、参考資料8-1というものが前に配られていると思うのです。その9の 2ですが、持っていない方もいらっしゃると思うので読みますと、「適正な使用」とは、 具体的にどのようなものをいうのかということですが、「適正な使用とは、原則的には医 薬品の容器あるいは添付文書に記載されている用法・用量及び使用上の注意に従って使 用されることが基本となりますが、個別の事例については、現在の医学・薬学の学問水 準に照らして総合的な見地から判断されます」とあるのです。これをどのように理解し ていいのか、研究まで扱ってもらえるのかどうかも私自身ずっと悩んでいて、たぶん無 理だろうとは思っていたのですが。  というのは、プロトコールの中に適応外使用で医薬品副作用救済制度を記述する場合 があるのです。私たちはプロトコールに書いても全部削除しているのですが、これは実 際に研究までカバーするかどうか、あるいはそういう事例があったかどうか、事務局あ るいは知っておられる方はいらっしゃいますか。 ○事務局 適応外使用をされた医薬品に対して、この医薬品の副作用被害救済制度が適 用になるかというご質問かと思います。いまの幅の部分、添付文書に書いてある用法・ 用量以外のところについては、いろいろな幅があるのではないかとのご指摘だろうと思 いますが、事前に医薬品総合機構にこういった事例についてはどのように扱うのかを聞 いてみたところ、個別に判断をするという答えでした。そこは医学的に見てその治療法 が妥当なものなのかどうかとか、そういったものを見ながら個別に判断をされているよ うです。そこは一定の方程式で、こういうものだったら適応外でもOKということは必ず しもないとのことです。 ○藤原委員 4つほど質問がありまして、1つは英米法にお詳しい丸山委員にお聞きした いのと、事務局に3つほどお聞きしたいと思います。先ほどから、光石先生も臨床研究 に係る補償の話をされていますが、新薬の先進国あるいはライフサイエンスの先進国で あるアメリカでは、臨床研究に対しては補償は一切していないと私は理解しております 。研究者には無過失責任を全然課しておらず、臨床研究に参加する時点で、インフォー ムド・コンセントの中に、病院にも医師に対しても無過失責任の追求はしないという文 言が大体入っているように理解しているのです。ヨーロッパは補償に関する記載は結構 あると思うのですが、アメリカのようなライフサイエンスの先進国、皆が目標にしてい る国で補償の制度がなぜ導入されておらず、いまになってもやられていないかを丸山委 員にお聞きしたいというのが1つです。 ○丸山委員 その点に焦点を定めた研究をしたことはないのですが、いまご発言があっ た点に関する認識は私も同じで、アメリカでも広く社会のために行われる研究で有害事 象が発生した場合、社会あるいは国、研究機関が補償の責めを担うべきだという議論は ありながら、ほとんど実現されておらず、研究機関が医療を提供している場合に、現物 の医療を提供するだけにとどまっています。  その背景についてもお尋ねなのですが、よく把握できているわけではありません。あ ちらで書かれたものを見たときの記憶では、研究者には資金が潤沢な者もいますが、そ うでない者もいます。他方、有害事象が発生した場合の被害は莫大なものになり得ると ころがあり、アメリカ法の責任の課し方は加害者に非常に厳しい責任を課すので、現実 に支払いができないことを研究者にその責任として課すことはしないというところか ら、なかなか無過失責任が制度化されていないという説明を読んだことがあります。も う少し具体的にお答えができればいいのですが、よくわかっておりません。むしろ、佐 藤委員などは最近の状況を調査されていると思いますので、補足いただければと思います。 ○金澤委員長 ありがとうございました。これは、あとで調べてお答えいただくことに しましょう。しかし、たぶん被験者が研究に協力したことによる報酬も、かなり違うの だろうと思うのです。そういうことも含めて、これはスペシフィックな話ですから後に して、次の質問を。 ○藤原委員 事務局のほうにお聞きすることは3つあります。これを読むと、医師主導 治験の治験保険の話が漠然と出ているのですが、これは日医の治験促進センターでやっ ている治験保険なのか、日医の治験保険促進センターの傘下以外の医師主導治験につい ても、このような医師対象の保険商品があるかどうか、私の頭で整理できなかったので 教えていただきたいと思います。  医師主導治験の補償保険の場合、医療機器や遺伝子治療、細胞医療という、ここに来 られている大学の先生がいちばんやりたいトランスレーショナル・リサーチのようなと ころに関して、今日は医薬品の話しか出ていなかったので、どう対応されているのか。 また、昔、厚生科学研究費でも保険商品が出れば研究費で保険料が出せるという話を聞 いたことがありますが、企業の治験保険の話を聞いていると、保険料はものすごく高い と聞くので、実際問題このような保険商品に医師が加入したときに、どういうお金の出 し方を想定したらいいのか、この3点を教えていただきたいと思います。 ○事務局 先ほどの資料2-(1)の医師主導治験に係る保険ですが、これはもともと日本医 師会の治験促進センターと保険会社のご協力をいただいて出来上がった保険商品です。 私が保険会社の方から伺っている範囲では、必ずしも日本医師会の計画で医師主導治験 をやっている方だけではなく、それ以外のところにも使っているものだということです。 必ずしもそこに限定されたものではないということかと思います。  この保険は、実際に日本医師会でコーディネートをしてやっている医師主導治験の場 合、厚生労働科学研究費の中から保険料を全額支払う格好になっております。保険料の 水準ですが、現状の医師主導治験の保険商品については、私どもが聞いている範囲で は、大体医療機関当り100万から数100万ぐらいのオーダーの額を支払っていただいて いるということです。 ○藤原委員 医療機器や細胞医療についてはいかがですか。 ○事務局 そこについては、あくまで医師主導治験ということなので、ここにも「治験 薬等」と書いてありますが、実際にどこまで運用されているかは調べてみる必要があり ます。我々の解釈では、治験という形の中に入っていくものであればカバーされるだろ うと思っておりますが、実際どういう形で先ほどおっしゃった細胞治療や先進医療のも のについてカバーするかは、また研究をしたいと思います。 ○金澤委員長 ありがとうございました。ほかにいかがですか。  ご意見がないようですので、先ほど光石先生からお話があった無過失補償制度におけ る問題点、必要な要素について委員の皆様が誰もおっしゃらないので、たぶんこれは皆 さん共通のご意見なのだろうと思ってあえて申します。無過失補償制度が単独であり得 るとは、おそらくどなたも思っていないと思うのです。つまり、原因を突き止めて再発 を防止することは、当然両輪なのだろうと理解しておりますが、そこはよろしいですね 。単独でとは、おそらく誰も考えていないのではないかということを一言申し上げてお きます。 ○光石参考人 単独ということは、絶対どなたも考えません。私が申し上げたかったの は、被験者保護を事後的な金銭による補償のことしか強調しない考え方が、そもそもお かしいのではないかということです。 ○北村委員 厚生労働省に申請が求められている臨床研究、あるいは試験の遺伝子治療 の部分や再生医療の部分の申請が来た場合、その項目に被害者の補償制度のことを明記 しなさいとか、どういう研究費でそれを行うのかという項目はありましたか。審査して 許認可される厚生労働省としては、そこの判断を含めて認可しているのかどうか、不勉 強で申し訳ないのですが教えていただきたいと思います。 ○事務局 当研究開発振興課でヒト幹細胞の指針の実際の審査の事務局をしておりますが、 基本的に、指針の上では補償の有無ということが書いてあり、補償がない場合も絶対的に 駄目かというと必ずしもそうではなくて、きちんと同意説明文書等で説明がされているか、 またそれが施設の倫理審査委員会できちんと議論されているかがポイントになってくるだ ろうと思っております。ただ、全般的に見ると、実際に被害が起こった場合は、医療機関 の中で治療上のコンペンセーションを行うとか、医療における提供を行うとか、そういっ た形で実際の補償対応をされている所が多いように思います。 ○北村委員 身体的な副作用等の場合、それに対する医療は当然行うと書いてあると思う のですが、金銭的な補償についてはそれが明確でなくても認可はされているようですが、 そこの問題が発生した場合は病院で対応しなさいと、その部分はどうするかわからない状 態が残っているわけです。先ほど治験の場合でも医薬品医療機器総合機構も個別に判断す るとおっしゃいましたが、事前にそういう研究テーマを持っていったとき、無過失の場合 の補償ができるのかどうかは、機構のほうから回答は得られるのですか。 ○事務局 先ほど、既承認薬の副作用被害救済の適応外使用の問題を谷内委員からご質問 いただいて、ケースバイケースというお答えをしたわけですが、治験等の場合は、もちろ んGCPにおいて補償を行う、適切な保険等に入って対処するべしということがGCPに書か れています。 ○北村委員 それはわかっているのですが、ここで問題になっている臨床研究については、 機構は本質的にはタッチしていませんね。ですから、機構のほうでの救済は、たとえそれ が未承認薬でも、医師主導の臨床研究をやったら、おそらく機構は取り合わないのではな いかと思うのです。それでよろしいですか。 ○事務局 そこについては、私どもは救済において判断しているわけではないので、この 場ではお答えはできません。 ○金澤委員長 懸案事項にして、いずれお答えをいただくことにしましょう。ほかにいか がですか。 ○藤原委員 抗がん剤だけ少し特殊かもしれないのですが、抗がん剤は機構の補償の対象 にもなっていないので、私どもが通常うちのがんセンターでやる場合は、医師主導治験の 場合もそうだったのですが、治験保険の対象になるような補償はしないということをあら かじめICの文書に書いているのです。その場合、私どもはインフォームド・コンセントに 明記するのは、何かあったら全力で医療の提供をいたしますという対応にして、これは薬 事法のGCP省令運用通知の中にそのような記載でいいと書いてあるので、それに準じてい るのです。  実際に、他施設で抗がん剤の医師主導治験をやった場合に、ある倫理委員会から医療の 提供はどのような予算でやるのですかと、発生するかどうかもわからないものを病院の予 算として年度初めに計上するのは無理ですと、うちの病院ではそんなことをしてはおかし いのではないですか、という指摘を弁護士さんからいただいたことがありました。今日の この補償の場合は、抗がん剤以外の場合は治験でやれば問題ないと思ったのですが、抗が ん剤を受ける方々の医師主導治験については、永遠に補償は蚊帳の外に置かれるのかなと、 あるいは医療の提供について制度として何らかの国からの医療の提供を担保するお金がく るとか、医療機関の中で準備することが明文化されていないと、ずっとファジーなまま引 きずってしまって、非常に臨床研究がやりにくい環境が続く感じがします。 ○谷内委員 いまの事例に関して補償なしということですが、私のところも補償がないと いうことで、なるべく全力を尽しますとICに書くようにしているのですが、弁護士にそれ は抜いたほうがいいと言われます。全力を尽くすのは当たり前だと、補償なしということ だけ記述しなさいと指導されています。全力を尽くすのが原則なのでしょうから、公的な 研究費で行うとか、余計なことは書かないほうがいいと指導されております。 ○小林委員 無過失責任に対する補償の話ですが、私たちの理解としては、臨床試験の場 合プロトコールは必ずあるわけですから、そのプロトコールどおりやって何か起きた場合 は無過失として考えているわけです。そのプロトコールが適正であるかどうかの審査は倫 理委員会やIRBでやるわけですね。治験などは現状でもある程度のクオリティはあると思 うのですが、ある大学で研究者がプロトコールを作ってその大学の倫理委員会で承認され 研究も完結するようなものがあります。その場合、倫理委員会を通ったプロトコールで、 そのとおりやったら無過失と考えるということでよろしいのでしょうか。 ○金澤委員長 外国の例でありますね。いかがでしょうか、お答えいただけますか。 ○佐藤委員 カナダの例では1件あって、プロトコールを作成するに当たって被験者保護 が不十分だったということでした。先ほどの藤原委員のご質問に対する丸山委員のお答え についてですが、おそらく法的には過失がなければ賠償責任がないというのが建前で、こ れは大陸でも英米でもたぶん同じだと思うのです。この建前を崩すためには制度を作るし かないのですが、アメリカはそういう制度を作りたがらないので、基本的に建前としては 無過失の賠償はないだろうと思います。  ただ、事実として、もしかしたら任意でお金を払っていることはあるかもしれません。 というのは、イギリスがex gratiaといって、無過失であっても任意の補償をするように という形で製薬業界のガイドラインができているので、アメリカでもあるかもしれません。  もう1つは金澤委員長がおっしゃったことで、アメリカの場合は、特に無保険の人が自 分の医療を受けるためにも臨床研究に参加する側面がありますから、これは被験者にとっ て治療の側面があるか全くないかということで、分けて考えてよいのではないかと思いま す。アメリカでも、そのようなことで無過失の場合は賠償なしと、補償は必要ないと考え ているのではないかと思います。  3点目はいまお話したとおりで、実際には無過失の内容、過失を何にするかで、例えば IRBのプロトコール審査が不十分であったとか、きちんと同意をしていない、あるいは説 明を受けていないことを過失として持ってくると、これは過失があるので、賠償責任を持 ってくることはアメリカでもいくつか事例があるように思います。 ○光石参考人 いまの小林委員の質問で思ったのですが、プロトコールレベルの問題と 個々の被験者レベルの問題と、両方あると思うのです。ですから、プロトコールを承認し ようとしまいと、承認したとしても、個々の被験者レベルで、この症状の方にどうだった ということの過失、無過失の問題が当然あるだろうと思います。ですから、両方のレベル を考えなくてはいけないのではないかと思います。 ○金澤委員長 ありがとうございました。法律の見方と現場の見方と、少しすれ違いがな いわけではないのですが、30年ほど前にはこんな議論はこれっぽっちもなかったことを考 えると、この30年間で日本がよくここまで来たなという感じはあります。しかしながら根 っこがまだ十分根付いていないので、肝腎のマナーができていない。先ほど、上の方があ まり理解されていないとおっしゃいましたが、しかるべき年齢の方々でしょうから、それ もたぶんそうなのだろうと思います。しかし、そういう上の人というのは現実を見る必要 があるわけで、いまちょうどインキュベーション・タイムにあるのではないかという気が します。現実にどういう問題が起こっていて、それをどう解決すれば多くの人たちがマナ ーとして身に付けられるかを考えるべきであって、これは私の個人的意見ですが、ルール をバシッと作ったからと行って、みんながそれに従うかというと、どうもそうではなさそ うな印象です。  皆様方には、これからいろいろな問題を討議していただくわけです。今日のところはあ と1つ問題を残すだけになりましたが、この倫理審査委員会のあり方、しかるべき形で機 能を果たしていくにはどうしたらいいか、あるいは臨床研究に参加してくださった方々の 健康被害に係る補償についても、どのような形があり得るのか、あるのか、などを事務局 でももう1回論点を整理して、この次のときにもう1度きちんとした形で出していただけ ればと思います。特に国内外の制度運営の実態が必要なようですから、そこをよろしくお 願いします。  それでは、議題4の「疫学研究に関する倫理指針」の対象範囲について、ご議論をいた だきたいと思います。先行している疫学指針ですが、今回、疫学指針の対象範囲とこの指 針の対象範囲が問題になっております。疫学指針の担当課が厚生科学課だそうですので、 説明をお願いします。 ○厚生科学課課長補佐 資料4をお開きください。「疫学研究指針の対象範囲について」、 まず定義からご説明します。疫学研究に関する倫理指針は、8月16日に改正されておりま すが、この定義そのものについては特段の改正はありませんでした。「第5 用語の定義」 として、疫学研究とは、「明確に特定された人間集団の中で出現する健康に関する様々な事 象の頻度及び分布並びにそれらに影響を与える要因を明らかにする科学研究をいう。」とな っておりますが、「人間集団の中で」ということで、一定程度の数の検体あるいは情報等の 資料を必要とすることをここで明確にしております。また、「事象の頻度及び分布」という ことで、大体がデータを収集・集計する研究であることはご承知のとおりです。  今回改正されたのは、さらにこの考え方をわかりやすくお示しするように課長通知のレ ベルで細則を定めておりますが、この細則についてです。従来の規定を改正し、疫学研究 指針の対象となる研究の最低限の要件を2点明記しております。1点目が、有効性や予後 等の知見が未知であるか、又は既知の知見の検証。2点目が、対象者本人のみが受益を受 けるよりも、広く社会に貢献することに比重をおく。この細則を含め、用語の定義として 疫学研究を明確にし、さらに具体的にこういうものが疫学研究指針の対象になるというこ とを補足しております。  次に適用範囲ですが、四角囲みの部分が疫学研究指針の対象としないとされている疫学 研究です。ご承知のように、疫学研究とは研究の手法であり、臨床の場においてもよく使 われる研究手法です。ただ、その中で疫学研究指針の対象とするものということでは、四 角囲みの部分の4つの疫学研究については除外されております。この部分についての改正 はありませんでした。(1)が法律の規定に基づき実施される調査です。これは、例えば感染 症法に基づく感染症発生動向調査など、法律で具体的に調査権限が付与された調査が該当 します。  (2)として、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に基づき実施されている研究 です。平成16年に全面改正されておりますが、これは一連の医学研究に関する倫理指針の 中で最も早く策定された指針です。また、インフォームド・コンセントなどの規定につい て最も内容が厳しくなっております。この指針は、遺伝子解析情報は被験者本人だけでは なく、その方の家族あるいはその方の属する集団の性質等を特徴づける可能性がある情報 であることから、厳密に取扱う必要があるということで、厳しくなっております。このよ うなわけで、ヒトゲノム・遺伝子解析研究をするものについては、疫学研究指針の対象か らは外れてきます。  (3)として、資料としてすでに連結不可能匿名化されている情報のみを用いる研究です。 既に連結不可能匿名化された資料というのは、例えば、資料を収集した時点で番号だけを 付けて保管しており、研究計画書を作成した時点では個人情報を一切保管していない場合、 このようなものが連結不可能匿名化された資料となりますが、これらに関しては個人情報 が含まれておらず、疫学研究指針の対象からは外れてきます。  (4)として、まさに今回ご検討いただくことになるかと思いますが、手術、投薬等の医療 行為を伴う介入研究が、疫学研究指針の対象から外れております。  資料4では3点目として、今回改正された点をお示ししています。内容を変更したとい うより、いままでの取扱いを明確にするために改正したことになるかと思います。従来、 臨床の場において行われる研究で、なおかつヒト由来の試料を使うものについては、すべ て臨床研究の指針の対象とされ、あるいは自施設内で行われる大規模な疫学的調査につい ては、細則を根拠に疫学研究指針の対象ではないと混乱が見られた事例もあります。今回 明確にしたのは、臨床の場において行われる研究のうち、治療・診断・予防等に係る既存 資料、既存資料については資料の後段で定義をしておりますが、研究計画書作成時までに すでに存在する資料や、研究計画書の作成時以降に収集した資料であって収集の時点にお いては当該疫学研究に用いることを目的としていなかったものが含まれますが、これらの 資料を利用して、すでに存在する資料を使って実施する観察研究であって、疫学研究に該 当するものについては、疫学研究指針の対象とすることを改めて明確にし、細則で規定し ました。  次の頁の改正部分ですが、これは「第1 基本的考え方」の適用範囲の研究事例につい て付け加えた部分です。研究事例として、指針の対象、対象外とする事例は、これに限ら ず、例えば地域がん登録は疫学研究指針の対象ではないとか、産業医、学校医が行う法令 の範囲内での調査・研究については疫学研究指針の対象としない等と明記されていますが、 これは臨床の場における疫学研究ということで抜粋したものです。また、ご参考までに、 定義の「既存資料等」というのを資料4の最後にお付けしております。 ○金澤委員長 ありがとうございました。ただいまの説明でおわかりいただけましたでし ょうか。いずれにしても、この臨床研究の指針と疫学研究の指針はできるだけわかりやす くしたいと、それぞれがどのような範囲を持っているかを明確にすべきであろうというご 意見がありました。それに対するお答えなのですが、ご意見をお願いします。 ○廣橋委員 この指針の対象をきちんと整理し、両方の指針で同じようなことがはっきり 読み取れるようにしていただきたいと思います。それを超えて、本来ならば全体が一つの 指針であって、整理されて、それぞれの部分についての記載があるという形にするかどう かも次の検討になるかもしれません。  臨床研究の指針のほうでは、医療の場で介入がある臨床研究が主な対象で、それはリス クがあるわけですから、しっかりとした検討が倫理審査委員会でなされることを、これか ら考えていかなくてはいけないと思うのです。それに対して、医療の場であっても、そこ で行われる疫学研究、観察的な研究を明確にして、それは疫学の指針で扱うことにしてい るということで、それは非常に結構だと思うのですが、先ほど「既存資料等」という表現 がありました。例えば、研究の目的ではなく医療の目的で、手術をした標本が集められた と。そういったものを対象とした解析的な研究は、疫学的な研究であると。しかし、こう いったものを含め前向きに集めていくものも、同じように観察的な研究なので、別に介入 するわけではありませんから、それも疫学的な指針の対象と考えていいのか。研究のため にサンプルを集めるものでも、それによって層別化して介入して研究していくわけではな くて、やはり観察的な研究の範囲なので、採血してサンプルを集めていくような研究も疫 学的な研究と理解していいのかを確認しておきたいと思います。 ○厚生科学課課長補佐 お答えをする前に、資料の2頁(参考)の既存資料等の定義につ いて、修正をお願いします。(2)の「疫学研究の研究計画書の作成時までに」という所の「ま で」を消して、「作成時以降に収集した資料であって」と修正をお願いします。  これは、いま廣橋先生からご指摘いただいた点を含むのですが、研究計画書を作成して これから研究する段階であっても、先ほどの既存資料等の定義に該当する資料として、血 液については疫学研究指針でカバーされると考えております。疫学研究指針中、インフォ ームド・コンセントの規定の中に、人体から採取された試料を用いる場合として採血が例 示として出てくるので、それが入ってきます。  例えば、採血を超えるような侵襲性を有する試料の採取方法となると、それは疫学研究 指針の対象ではなくなると思いますが、研究の目的でなく診療の中で採取されたもの、例 えば手術で切り取られた臓器などをあとから研究に使いたいということで、研究対象者か らインフォームド・コンセントを受けることによって、既存資料等として扱うことも可能 になります。ですから、疫学研究指針の範囲については、後ろ向きだけではなく、前向き に資料を集めることもあり得るということです。 ○永井委員 ややこしい議論なのですが、私自身いちばん関心があったのは、診療と研究 というところです。診療には研究的な要素もあるわけです。診断するというのは、その患 者の病気を探るということで研究的な要素があるので、何もかもがIRBを通すことになる と、いろいろ弊害が起こってきます。例えば、公衆衛生的に非常に急いで調べなければい けないことがあります。しかも、管理者が自分で診ていない患者の資料を、カルテを見て 調べなければいけないこともあります。例えば、鳥インフルエンザが発生したらしい、う ちでも起こっているのではないかということで、至急調べなければいけない場合がありま す。その場合は研究なのか診療なのか、ボーダーが曖昧なところがあります。  これは実際にときどきあるのですが、私たちが行っている診療、治療行為について、妥 当かどうかと質問されることがあります。我々は急いで成績を調べて、そんなに問題ない ですよ、と回答しなければいけないわけですが、それも研究なのか診療なのかというボー ダレスなところがあって、その辺りの整理を今回疫学研究ガイドラインの中で、ある程度 整理をしていただきました。Q&Aの中で、かなりいろいろなシチュエーションに応じた回 答をしてもらっています。その辺りは、研究と診療、あるいは疫学研究ガイドラインの中 で、これからまだまだ議論が出てくるところではないかと思います。 ○金澤委員長 永井委員も、基本的には一緒にしたほうがいいという考えですか。 ○永井委員 本来であれば、臨床研究ガイドラインが最初にあって、その中で疫学研究ガ イドラインをどうしようかと、全体の体系を作るべきだと思うのですが、おそらく前回ガ イドラインができた時間的な経緯で、どちらが先にできたかということがあって、まだそ こが統合されていないのではないかと思います。疫学研究ガイドラインの議論の中でも、 次回はうまくこれを一緒に議論できるような話合いがされるべきではないかと、最後に言 われていました。 ○廣橋委員 いまご指摘の点は同感です。今回1つ考えておかなくてはいけないのは、今 回の臨床研究の指針で扱うものの中には、介入的な臨床試験のようなものが中心にあるわ けですが、それ以外にかなりの数、マスを扱う疫学的な研究は疫学だけれども、数の少な い症例を対象とした研究、例えば症例研究などは臨床研究指針の対象になるといったこと も記憶しておいて、全体の指針がそれにも適合するように考えていかなければいけないの ではないかと思います。それは臨床研究の倫理指針の対象になるわけですね。 ○丸山委員 薮蛇になるかもしれないのですが、廣橋委員のご質問の最後のところで、臨 床医療で得られた資料、データもサンプルも両方ですが、それを目的外利用することにつ いては、疫学研究では既存資料というように性格づけて、数量的、統計的な研究は疫学研 究としているのですが、その場合、診療をする人と研究をする人が分かれている場合は、 前者は診療行為で後者は疫学研究でわかりやすいのですが、先生が最後におっしゃった微 妙なケース、同じ人が頭の片隅で、そのサンプルを研究でも使うかもしれないと考えられ ているときには、目的外になるのか。この辺りがかなり微妙なことになっていくかと思う のですが、その場合は、やはり疫学研究ではなくて臨床研究の扱いということになるので はないかと思いますが、先生のご趣旨も大体そのようなことでよろしいのでしょうか。 ○廣橋委員 私の言ったことと同じかどうかわからないのですが、最後に言いましたのは、 疫学研究はかなりの数のデータ、あるいはサンプルを扱うものであるのに対して、1例、 つまり患者さんが特定されるようなもの、もちろん、それを匿名化して研究あるいは発表 するのでしょうが、そういったものを扱う研究は疫学研究とは言えないというような定義 がありましたので、臨床で症例について検討するようなもの、それを報告するようなもの は臨床指針研究の対象になるのではないかということです。そういうこともこの指針の対 象になっているということを考えて、これからの指針の改訂というものを検討しなくては いけないと思うと申し上げました。 ○藤原委員 厚生科学課の方にお聞きします。今回は課長通知とかQ&Aが全然付いていな いので、疫学指針の全体像がよく把握できないので、それを見てみたいと思います。資料 4の1の「定義」の破線のいちばん下に「一定程度の検体数が必要であることを定義中」 云々と書いてあります。いまの廣橋委員のご質問とも関連するのですが、例えば20例とか 15例ぐらいの研究ならいいのか。非常に少ないサンプルサイズで検討するものだと臨床研 究の倫理指針に入って、5,000例とか3,000例とかやれば疫学指針に入るということにす ると、同じような趣旨の研究がばらばらな指針の対象になってしまうおそれがある。この 「一定程度の検体数」というのは、大体どのぐらいを想定されているのですか。 ○厚生科学課課長補佐 それにつきましては、「一定程度」という以上の検討、何らかの見 解は出されておりません。例えば、1,000件ならどうか、100件ならどうか、50件ならど うか、49件ならどうかということになってしまいますので、そういったところについては、 やはり研究計画の全体像を見ながら、それぞれ各倫理審査委員会等でご判断をいただくと いうことになろうかと思っています。  指針の部分については、お手元のハードファイルの参考資料の7のAに、疫学研究に関 する倫理指針の、8月16日に全面改定したものをお付けしてあります。さらに、次の頁に、 告示部分と細則部分が一緒になったものをお付けしていますので、そちらをご参照いただ ければと思います。Q&Aについては、疫学研究の見直しの専門委員の先生方にご協力をい ただきながら鋭意作成していまして、9月中旬以降はQ&Aとしてホームページに載せる予 定で作業を進めているところです。 ○金澤委員長 ありがとうございました。かつては、臨床研究というか、患者さんを対象 とした研究というのは、密かに自分の教室の中だけでやっていたのだと思います。それが、 公の場で討議をしてもらって、そのクオリティと倫理性を評価してもらってからやるのだ と、やっと根付きつつある時期なのだと思います。ですから、大事なのは、現場の人たち が迷ってしまったり、わかりにくかったり、もういいやなどと思わないような形にしなけ ればいけないのです。そのためには、先ほどQ&Aというお話が出ましたが、そういうもの も含めて、間に落ちてしまうような、迷ってしまってどうにもならないようなものがない ようにしないようにしなければいけない。それは、どこかへ問いかければわかるのかもし れませんが、できるだけわかりやすいものにする必要があるのだろうと思います。いま、 そのための議論をしているわけですから、議論を進めるためにも、もう少し整理をしてほ しいと思います。  先ほど2、3の方からもお話をいただきましたが、臨床の場面で研究をするという立場か らいくと、あまりたくさん指針がないほうがいいのではないかというのは、おそらく皆さ ん共通の思いだろうと思います。残念ながら我々のガイドラインの見直しが最後になって しまったので、元に戻りませんが、次の機会には是非そういうことを考えてもらいたいと 思っています。今日はいろいろ貴重なご意見をたくさんいただきましたが、それがすぐま とめにはならないわけで、これからまた何度か議論していただくことになろうかと思いま す。先回も言いましたが、お帰りになって、ああ、これも言いたかった、あれも言いたか ったということが、たぶんあるだろうと思いますので、事務局のほうにご遠慮なくご意見 を寄せていただきたいと思います。今日は私もちょっと意見を言わせていただきました。 それでは、事務局からまとめをお願いします。 ○事務局 委員長、ありがとうございました。また、本日はお忙しい中、また遠方よりご 参加をいただきまして、ありがとうございました。次回の開催予定は11月1日とさせてい ただいています。会場等については追ってご連絡させていただきます。次回は、少し外国 の実態調査などもというご指摘もありましたので、そういったところも合わせてご報告で きるような形で開催させていただければと思っています。 ○金澤委員長 光石先生、今日はどうもありがとうございました。おいでいただきまして、 助かりました。それでは、これで今日の第2回目の会を終わらせていただきます。皆さん、 ありがとうございました。