07/09/10 平成19年度第2回雇用政策研究会議事録 平成19年度第2回雇用政策研究会                     日時 平成19年9月10日(月)                        10:00〜                     場所 厚生労働省共用第7会議室 ○樋口座長 ただいまから、雇用政策研究会を開会します。お忙しいところお集まりい ただきまして、ありがとうございます。お手元の研究会開催スケジュールにありますよ うに、本日および次回で、少子化対策にも資する働き方の見直し、といったテーマでご 議論いただきたいと考えています。まずは、第2回、第3回で議論していただく論点およ びワーク・ライフ・バランス関連資料について、事務局からご説明をお願いします。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 私から資料No.1に基づきましてご説明します。皆さんご存じ のとおり、ワーク・ライフ・バランス施策は厚生労働省内でも多部局にまたがる施策で すので、今日、各局から資料を出していただいていますので、私から論点ペーパーを説 明して、あとはそれぞれ基準局、雇・児局から資料説明ということでお願いしたいと思 っています。  資料No.1をご覧ください。資料No.1に、一応、今回、次回ご議論をお願いすることを予 定していますワーク・ライフ・バランスに関する論点ペーパーをまとめています。今日、 大きく2つに議論を分けてしていただこうと思っていまして、1つは施策編、前半部分で 対応策についてご議論いただいたあと、第3回で就業率の見通しという数字も準備しよう と思っていますので、第3回につなげる意味も含めまして、ワーク・ライフ・バランスが 図られたあとの就業率の見通し等について、若干ご説明したいと思います。  前半の施策の部分ですが、No.1の資料を見ていただきますと、1点目が、前回の論点ペ ーパーにも書いていましたが、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた企業の取組を どう促進、支援していくかです。いろいろな取組の方法があるわけですが、労使の取組 を促進、支援するというやり方とともに、国民全体でという意味もありますので、労働 者・企業双方の意識啓発を具体的にどうやったらうまくいくのかです。  2点目は、公正かつ多様な働き方を実現できる労働環境の整備等ということです。こ ちらは多様な働き方は現状でも様々あるわけですが、なかなか労働者のほうで主体的に 選べるという現状にないものですから、その部分をいかに労働者の側が主体的に選択で きて、かつライフスタイル、ライフステージに応じてそういった雇用形態の間を行き来 できる環境に向けてどういった整備が必要か、という部分についてご議論いただきたい と思います。 ○土屋労働基準局勤労者生活部企画課長 資料No.2-1に沿いまして、労働基準局からお 出しをしている資料についてご説明申し上げます。労働基準局からは、「勤労者の仕事 と生活に関する資料」という表題を付けまして、まず国民の皆さま方、労働者の方々の 実感がどうなっているかという点、労働時間や休暇制度の実態がどうなっているか、そ ういった資料をご用意しています。  1頁は、「仕事と個人生活のバランスの満足度」が書いてあります。これは内閣府が 行っている世論調査です。具体的な設問としては、「ご自身の仕事とご自身の趣味など の個人生活のバランスについて、満足していますか」とお聞きをしたものについての回 答です。「満足している」「やや満足している」を合わせて7割少し、「満足していな い」「あまり満足していない」を合わせますと23%という状況になっています。  2頁は、「ワーク・ライフ・バランスの希望と現実」と表題しています。下にありま すように、こちらは、少子化と男女共同参画に関する専門調査会の意識調査です。設問 としては、その下の※印に書いてありますように、優先度についてお伺いしますとした 上で、「あなたのお考えや現状に最も近いものを、1つずつお選びください」となって います。上のグラフは、左側が既婚の女性・男性、右側が独身の女性・男性となってい ます。いずれも上段が希望、下段が現実です。希望を見ますと、赤いマーク、仕事・家 事・プライベートの3者を両立させるのが希望という方が、どの分類でも多いのに対し て、現実の面では、既婚者を見ますと、既婚の女性では仕事と家事を優先している方が 最も多くなっており、また既婚の男性では仕事が優先になっている方が半数以上を占め るという状況になっています。  3頁は、仕事でのストレスの具体的な内容を聞いた調査です。3つまでの複数回答にな っていますが、最も多いのが職場の人間関係の問題となっていますが、続きまして仕事 の量の問題が3割少しの方が掲げている状況になっています。  4頁は、自己啓発の観点から自己啓発はどこに課題があるかを聞いたものです。いち ばん上に掲げていますように、仕事が忙しくて自己啓発の余裕がないと理由を立ててい る方が、正社員・非正社員ともいちばん多くなっている状況です。  5頁は、家事等の従事時間に着目した調査です。共働き世帯におきましては、妻に家 事時間が偏っている状況があります。  6頁は、週当たりの休養時間等々の自由時間がどうなっているかです。いちばん右側 は最新の平成13年(2001年)の数字ですが、有業者と無業者を比べますと、有業者の ほうが自由時間に当てている時間がかなり少ない状況があります。  7頁は、同様にボランティア活動、学習・研究活動に従事をしている方がどのぐらい の比率でいるかについても、有業者のほうが数字は低い状況になっています。  8頁は、少し観点は変わりまして、在宅勤務等々のテレワークについてどのぐらいの 状況になっているか。これは国土交通省の調査ですが、少し数字が上がっていまして、 2005年の調査では10%程度の数字が上がっている状況になっています。  9頁は、特別な休暇制度をどのぐらい導入しているかという企業調査です。平成17年 の数字を見ていただきますと、全体では61%となっていますが、その多くは夏季休暇、 病気休暇というところでして、リフレッシュ休暇、ボランティア休暇、教育訓練休暇と いった休暇の制度の導入は比較的低いレベルに止まっている状況です。  10頁、11頁は、留学などの自己啓発のために長期の休暇制度を導入している事例を掲 げています。これはわりと大きな規模の会社の事例です。いま申し上げましたように、 留学、ボランティア活動等々に参加するための休暇制度を設けたものです。いちばん長 い期間でも4年の休暇が取れる制度です。ただし、この制度につきましては、6に書いて ありますように、2006年10月をもってこの会社でも制度が終了している状況になってい ます。  12頁は、ここから労働時間関係です。12頁では総実労働時間の推移を掲げています。 左側のグラフにありますように少しずつ労働時間は短くなってきていまして、直近の平 成18年度では総実労働時間は1,842時間となっています。ただし、この現象については、 上の文章にもコメントしていますように、主にパートタイム労働者の比率が増えたこと が要因となっています。パートタイム労働者と一般労働者を仕分けて総実労働時間を見 ますと、右側のグラフにありますように、いずれも横ばいで、一般労働者の場合、2,024 時間となっています。13頁は、年間総労働時間の国際比較です。  14頁は、いまのような労働時間の実態の中で私どもが特に着目しているのは、いわゆ る二極分化という言い方をしていますが、先ほど申し上げましたように、パートの方が 増えている一方で、週60時間以上といった極めて長い時間の労働をしている方々も少な からずいて、高い水準にあるところです。平成18年の数字では、10.8%(約580万人) となっています。下段の表にありますように、特に30代の男性の場合には、この比率が 21.7%(188万人)と高い比率になっている状況があります。15頁は、週60時間以上の 雇用者数の推移です。16頁は、脳疾患・心臓疾患による労災請求・決定件数の推移です。  17頁は、完全週休2日制の導入割合、企業割合です。上の文章に書いてありますよう に、平成18年の時点での導入割合は、企業数割合で39.6%、労働者数の割合では60.2% となっています。  18頁は、休日労働がどうなっているかです。いちばん左側の欄が合計で、あと規模別 に掲げてあります。企業規模計の状況としては、平均的な方でも3.8日の休日労働があ り、最も長い人では5.4日となっている状況の中で、301人以上の規模の大きな企業で特 に長い時間の方がいて、8.9日という値になっています。  19頁は、年次有給休暇の取得状況です。上の折線グラフが取得率、下が付与日数と取 得日数です。ここ数年、取得率が落ちてきている状況にありまして、直近の平成17年の 調査で47.1%、取得日数にして8.4日となっています。これと併せまして20頁では、年 休の計画的付与制度がある企業の割合を示しています。直近の数字では16.3%で、計画 的付与制度は徐々に増えてきている状況があります。  21頁では、年次有給休暇の取得についての意識調査です。ためらいを感じる、ためら いを感じないということでいきますと、平成18年の数字では、ためらいを感じる、やや ためらいを感じるを合わせまして68.4%となっていまして、かなり高い割合になってい ます。ためらいを感じる理由につきましては、左下のグラフですが、いちばん多く掲げ られていますのは、みんなに迷惑がかかる、あとで多忙になるから、職場の雰囲気で取 得しづらいとなっています。逆にためらいを感じない方のためらいを感じない理由を見 ますと、当然の権利だからが高い割合にはなっていますが、先ほどの雰囲気の問題はこ ちらでも出てまいりまして、職場の雰囲気で取得しやすいが次になっています。  22頁は、別の調査で「有給休暇を取得しにくい理由」を調べたものです。左から2番目 の、休みの間仕事を引き継いでくれる人がいないため、3つ目の、仕事の量が多すぎて休 んでいる余裕がないためが、有休の取得をしにくい理由としてこの調査では高い水準に なっているところです。基準局関係の資料は以上です。 ○高倉雇用均等・児童家庭局総務課長 続きまして資料No.2-2、厚生労働省雇用均等・児 童家庭局の「女性の継続就業とワーク・ライフ・バランスについて」と表題を付けた冊 子でご説明します。まず基本で1頁は、女性の労働力率の年齢別の状況です。いちばん 下の青い線が1996年、赤い線が2006年です。M字カーブにつきましては、そのボトムアッ プは見られるところです。いちばん上の黒い×の付いた線が就業希望者を含めた潜在的 労働力率ですが、2006年で見ましても、なお労働力率と潜在的労働力率の差は大きい状 況になっています。  2頁は国際比較です。皆さまいつもご覧になっているかと思いますが、日本は赤の丸 の折線が顕著にM字型になって、他国と相当違う形状を示しています。  3頁は、日本の女性の労働力率の年齢別分布をさらに未婚か有配偶かで大別してみます と、大きく構造が違っています。未婚の女性につきましては、年次推移で見て40〜54歳 の各年齢層においては、10年前と比べますと高くなってきています。有配偶女性は、25 歳後半ぐらいで7ポイントほどの上昇は見られますが、他の年齢層ではそれほどまだ顕 著な上昇はありません。1頁で触れましたM字カーブの底が上がってきたということも、 要因として未婚率の変化と労働力率自体の変化を分解してみますと、おおむね未婚者が 増えたからM字の底が上がっているという要因のほうがまだ大きいという現状でして、 今後の課題としては、こういった有配偶の部分の労働力率をどのように上げていけるか ではないかと考えています。  4頁は、女性が雇用者に占める割合です。ずっと伸びてきていますが、右端の平成18 年で41.6%を占めるという大変大きな割合です。  5頁、活躍していただいている女性の雇用者の平均勤続年数の推移を見ますと、男女 ともに上昇はしてきていますが、なお男性と比べてかなり差がある状況です。  6頁は、女性管理職比率の推移です。左側のグラフはどの職階層で見ましても右上が りになってはいますが、右側の国際比較で見ていただきますと、他国と比べて日本、韓 国等はまだ非常に低いという状況です。  7頁は、女性の継続就業に関する意識の変化を見たものです。左側の女性で見まして も、右側の男性で見ましても、ちょうど真ん中辺りにある水色の細い両斜線のものです が、子どもができてもずっと職業を続けるほうがよいと、そういった意識自体は男女と もに増えてきているということです。  8頁は、女性の継続就業の状況です。育児休業の利用者は増えてはいるものの、第1子 出産前後の継続就業率で見ますと、過去20年を見ましても実は変化がないという状況に なっています。  9頁、それをまた別の切り口で見ますと、これは平成13年の21世紀出生児縦断調査 ですが、第1子出産を機に7割が離職という状況があるということです。特に右側、パー ト・アルバイトの継続率は低いという状況です。  10頁は、仕事と家庭の両立支援の関係の現状です。育児休業取得率自体は、平成11年 から17年にかけて女性では上がってはきていますが、男性はほぼ横ばい的です。目指す べき姿としては、左下に書いたような目標を掲げているというところです。右側に、い ろいろな規則で育休制度を規定している事業所の割合、勤務時間短縮の措置の普及率等 とその目標を定めているということのご紹介です。  11頁は、どうして出産後仕事を辞めるのかです。出産前後で仕事を辞める女性の約3 割の方は、両立の環境が整わないことを理由に挙げています。左側のグラフの左から3 つ目の24.2%が、続けたかったけれども両立が難しいと、あと5.6%にとっては、解雇 された、退職勧奨されたということで、合計3割の方々はそういった環境のため継続し たくてもしていないことが問題だと見て取れます。  12頁は、女性の継続就業を困難にしたり、その妨げになっていることとして、どうい ったことかと言いますと、左側にありますが、育児、介護、家事、こういった家族責任 の関係の部分が、女性に相当負担がかかっていることが背後にあるのが見て取れようか と思います。就業を継続するために変えていくための必要な事項としましては、右側の いちばん上に挙げられていますが、子育てしながらでも働き続けられる制度や職場環境、 1つ飛ばして、育児や介護のための労働時間での配慮、こういったことが課題として浮 き彫りになっているところです。  13頁は、両立の先進国ということで、フランス、スウェーデンとの対比を整理した表 です。ワーク・ライフ・バランス関係の状況を見ましても、いろいろな角度があります が、例えば夫の帰宅時間の所で見てもかなり違う状況があるわけです。また、中ほどの 家事・育児の分担の状況なども相当女性に偏っているのが日本の状況である、というこ とが見て取れます。いちばん下にある保育サービスの所を見ましても、保育所の利用率 は、日本は1〜2歳児でも2割強ということで、フランス、スウェーデンの40何パーセン ト、2歳児で80何パーセントと比べて、大きく差がある状況です。  14頁は、どういうことがあれば辞めずに働き続けられるかについての認識です。これ は、基本的には労働時間が短いほど辞めずに続けられると考える労働者が多いというこ とです。15頁は、先ほど一覧表で示した日本、フランス、スウェーデンに他の国も加え て国際比較したもので、日本の男性の家事、育児時間は非常に短いと記されています。  16頁は、制度的な法律の枠組みとしまして、このような環境を変えていくための1つ の大きな仕掛けとして、次世代育成支援対策推進法で自治体だけではなく企業にも行動 計画を策定していただく法制で動いている、その現状報告です。真ん中にありますが、 301人以上の企業においては、93.7パーセントの所で行動計画策定を届けていただいて いますが、300人以下の企業ではまだ大変比率的に少ないという状況があります。認定 マークの「くるみん」についても、利用いただいている所には大変好評ですが、さらに 普及を図っていくことが課題となっています。  17頁は、そういった育児休業制度などの両立支援、できれば継続就業について、会社 の人事担当と管理職と一般社員で見て意識にかなりずれがある、ということが見て取れ る意識調査です。上のほうで見ても、企業や管理職は結構周知していると思っていても、 一般社員は、いや、そうは思わないと、そういう意識がずれているというところが問題 だと考えています。  18頁からは、保育の関係、そういった両立を支える上で非常に重要なサービスである 保育の状況です。18頁にありますように、人数、保育所数は伸びてはいます。19頁は、 その場所の比重としまして年齢層ごとに当然違うわけですが、保育所の比重が、4歳児 以上で4割です。幼稚園は、3歳児、4歳以上児では一定の大きな役割を果たしています。  20頁は、女性の労働力率と認可保育サービスの利用割合を、先ほどのフランス、スウ ェーデンだけでなくドイツも加えて比べたものです。総括的な利用割合はいちばん下の 横の行にあるように、2割対4割、4割という対比ですが、有配偶の年齢別を見ましても、 日本とフランスを見ていただきますとかなり差がある。また、右端のドイツとスウェー デンを見ていただいても、日本とドイツはそのあたりの利用率は低いという状況は見て 取れます。  21頁からはパート労働の関係を紹介しています。21頁は、全体のパート労働者の近年 の著しい増加を示したものです。また、そのうち緑色の女性の比率が7割で高いという ことです。  22頁は、そういった「パート」としての働き方を選んだ理由です。いろいろ、都合の よい時間に、時間が短いからといったことも複数回答ですと○が付きますが、その他に ここで囲んだような、家事・育児の事情でといったところも、大きな理由となっていま す。  23頁の資料は、短時間正社員が少ないことについての状況を示唆するデータとして、 あまりストレートなものがなくて、こういった正規に占める35時間未満の割合といった データしかありませんでしたので、これを掲げました。このあとの参考資料は、法制等 の解説ですので、ご説明は省略します。 ○樋口座長 それではフリーディスカッションに移りたいと思いますが、まず、いまご 説明いただいた資料についてのご質問がありましたらお願いいたします。 ○佐藤委員 資料No.2-1の11頁で、長期休暇制度導入している事例で、やめるというの は、なぜやめるのか、もしわかれば。わからなければあとで結構です。  あと、5頁の労働時間の分析はほかの所でも出てきますが、男性の家事・育児時間へ の関わり方が短いのは間違いないのですが、この「社会生活基本調査」は、横に足して いただくと24時間になるのです。実際の人間の行動というのは、複数のことを同時にや っているのですが、社会生活基本調査は両方を調べていない。NHKの生活時間調査は足 すと24時間を超える。電車に乗りながら勉強するというのをNHK調査では両方をカウ ントするのですが、生活基本調査は片方しかカウントしていないので、例えば、自分が 子どもと一緒にお風呂に入ると、これは生活必要時間か、子育て時間かと言うと、両方 という機能も果たしているのだけれど、片方にしか計上されていないので、男性の場合 の家事・育児時間が幾分短くなっているということを、注意したほうがいいかなという ことだけです。短くないという意味ではないです。 ○樋口座長 前者のほう、第1点はいかがでしょうか。 ○土屋労働基準局勤労者生活部企画課長 会社のほうにお聞きしたところでは、もとも と有期限の制度として設定をしていたというお話がありまして、2003年ぐらいから2006 年までということでして、いまはどちらかというと会社自体はフル稼働状態なので、こ こまで手が回っていないということのようです。 ○加藤委員 前回は欠席しまして申し訳ありませんでした。1点お伺いします。先ほど資 料No.2-2の中に、M字型カーブの底が上がるという分析があって、その中で、未婚者の割 合が上昇したことが大きな要因だと伺ったのですが、例えば、未婚者と有配偶だけでは なくて、その中の正規・非正規なり、そういった要因分解みたいなものはあるのでしょ うか。ここら辺は結構大事なところではないか。自分でやればできるのかもしれません が、もしあれば教えてください。 ○高倉雇用均等・児童家庭局総務課長 いま手元にすぐお配りできる状態ではありませ んが、そういった分析もあるということですので、また報告させていただきたいと思い ます。 ○樋口座長 いまの点と関連しまして、私のほうからご質問します。先ほどのお話です と、労働力率が既婚者、有配偶者、あまり上がっていないということだったと思います。 これは別の機会にも申し上げたことがあるのですが、雇用就業に限定すると、必ずしも そうではないのではないか。自営とか家従が減って、雇用就業が増えて、それで相殺し た結果あまり変わっていないという形になっているように見えるのです。特に雇用就業 の中でも、圧倒的にパートが増えていて、フルタイマーはそれほど増えていないのにと いうところがあったので、ここでの認識として、労働力率は増えていないことが、女性 の職場への参加というのはそう増えていない、特に有配偶者では増えていないと考えた らいいのか、いや、そうではないと認識したらいいのか、その辺はどうなのでしょうか。 ○高倉雇用均等・児童家庭局総務課長 ただいまご指摘いただいた点は、おっしゃると おり雇用者の中身、労働力率の中身に入って見ていきませんと、確かに不十分だと考え ております。基本的な観察として、この未婚者の比率増加が、見た目のM字カーブの上 昇に寄与している部分は、全年齢で見ますと結構大きい要素でもありますので、基本的 な資料としてはこの3頁の部分を示しております。ただ、さらに踏み込んで労働力率の 中の雇用者と自営業、雇用の中の正規と非正規といったところも解析して、いろいろ細 かいデータがありますので、また必要に応じて報告させていただきたいと思います。 ○樋口座長 他にいかがでしょうか。よろしいですか。それでは政策的な議論をしてい ただきたいと思います。仕事と生活の調和が可能な社会、働き方ができる社会の実現に 向けて、その対応策について、前半部分でお話いただきたいと思います。どなたからで も結構ですので。 ○清家委員 今日いただいた資料No.1の、ワーク・ライフ・バランスについての論点につ いて、注文というか、こういうのはどうなのかということで2点あります。 1つは前回、 黒澤委員でしたか、現役の時代は忙しすぎて、年をとったらひますぎるという話をされ ていましたが、今日ご説明になったことなどはかなり、1人の個人の仕事と生活のバラ ンスあるいは男女の間のワーク・ライフ・バランスが、あるクロスセクションで見たと きに崩れているというお話が多かったと思います。やはりもう1つ大切なのは1人の個 人のライフ・サイクルで見たときに、その人生の中でのワーク・ライフ・バランスが崩 れているというか、30代や40代にはめちゃくちゃ労働時間が長くて、60代になったらフ ルタイムで働きたくてもパートの仕事しかない、あるいは最終的には、仕事をしたくて もなくなってしまって労働時間がゼロになってしまう。個人の生涯にわたるワーク・ラ イフ・バランスというのが同時に重要だと思いますので、こういうクロスセクション的 な捉え方に加えて、一人の生涯を見たときのワーク・ライフ・バランスという視点の議 論が必要かと思います。  もう1つは企業の取組、支援、あるいはその個人の意識の問題があるのですが、実は いちばん大きな、その外側にあるのは市場のあり方ですよね。つまり企業だって、好き で人を忙しく働かせているわけではなくて、そういうふうにしないと生き残っていけな いという市場の枠組みがあって、実はそれを動かしている1つの要因は消費者のニーズ でもあるわけです。例えば規制緩和というのが進むわけですが、規制緩和というのは、 消費者にとっては選択肢が広がったり、あるいは事業者間の競争が促進されて価格が下 がったりして良いことが多いのだけど、それは事業者あるいはそこで働く労働者にとっ ては、仕事がますます忙しくなったり、労働条件が上がらなかったりということでもあ るわけです。そういうのが端的に現れているのが、特に労働時間が長いと言われている 交通関係あるいは流通関係、そういう産業に象徴的に出てきているわけです。そうする と、一方でワーク・ライフ・バランスをもっと合わせたいとか言いながら、だけど自分 たちは一日24時間好きな所で物を買いたいとか、宅急便を頼んだら明日すぐ届かなけれ ばいやだとか、そういうのはどうなのでしょうかということを考えないと、いくらワー ク・ライフ・バランスなどと言っても、なかなか問題は解決しない部分があると思うの です。  あるいはもうちょっと言えば、実はいまワーク・ライフ・バランスは、国家公務員は 別として、結構合っているのは地方公務員とか教員の人なのですよね、産休などを取り ながら。ところがそういうのに対して住民というか有権者というか、そういう公務員の のんびりした働き方はけしからんとか、もっと働けとか、そういうことを言ったりして いるわけではないですか。そうすると一方で、公務員がワーク・ライフ・バランスを合 わせているのはけしからんと言いながら、自分たちは合わせたいとかいうのは、またこ れもおかしいわけですよね。  そうすると、雇用政策研究会でそこまで議論できるかどうかは別ですが、実は、いま 世の中でワーク・ライフ・バランスが合わさっていない、あるいはますますみんなが忙 しくなっている1つの要因は、消費者のそういう要望とか、あるいは有権者のそういう 動向というのがあって、そういうのを放っておいて、企業にもっと努力しましょうとか、 休暇を取れるような雰囲気づくりに努めましょうとか言っても、ちょっと困りますねと いう感じも一方で出てくると思うのです。その辺をここでどのくらい考えるか、あるい は議論をするかということも、もう1つ大切なのではないかなと思います。  以上、大きな論点について2点申し上げたいと思いました。 ○阿部委員 いま清家委員がおっしゃったことは一部そのとおりだと思うのですが、よ くよく考えるともう一方で、規制緩和されて仕事の量が増えたということがあったりと いうのは事実だろうと思います。しかしそれがただ、消費者に我慢しろという話だけで 済むのかというと、実はそうでもないのではないかと思うのです。それはどうしてかと 言うと、たぶんいま日本の社会ではある種、労働力を無駄遣いしている側面もまだまだ あって、例えば清家委員の専門の高齢者雇用だって、まだまだ、働きたいと思っている けれども、その機会が提供されていない人もいるでしょうし、女性のところについても、 働きたいけれども、ちゃんと機会が与えられていないというところがあると思うのです。  なぜそういう機会がないのかと言うと、それはたぶんワーク・ライフ・バランスとか 均衡処遇とか、そういったところに何か問題があるのではないかと思います。そのよう な目で見ていけば、単に消費者に問題を押し付けるとかいうのではなくて、そのあたり もしっかり議論していくべきではないかと思うのです。それで私が思うのは、やはりワ ーク・ライフ・バランスを進める上で重要なのは、それを進めることで生産性が落ちる とか、効率性が落ちるということがないようにしていくことが必要なのではないか。そ の意味では先ほどから言いましたが、ワーク・ライフ・バランスだけではなくて、一方 で均衡処遇とか、あるいは、すべての人々に教育機会や訓練機会を与えて、能力を発揮 してもらうような形にしていくべきではないかと思うのです。  ワーク・ライフ・バランスをワーク・ライフ・バランスだけで見るのではなくて、そ の一方で、育成とか均衡処遇とかいう視点を入れて、政策を考えるべきではないかと思 います。 ○森永委員 大きな話だけ最初にさせていただきます。いま示していただいた労働時間 のところですが、先進国というのは、すごく大ざっぱに分けると2つに分かれていると 思うのです。アメリカ、イギリス、日本という市場原理主義を取り入れた国々と、大陸 ヨーロッパのほうは、それと比べると大体400時間ぐらい年間の労働時間が少ないわけ です。イメージで言うと、大陸ヨーロッパというのは年休を完全消化して、夏休みを1 カ月取って、残業も休日出勤もしないというライフスタイルで、対して日米英はガンガ ン働いている。5年ぐらい前までの1人当たりGDPを見ると、日本、アメリカ、イギリス は大陸ヨーロッパの1.5倍ぐらい金を稼いでいる。ところがここのところの数字を見る と、日本だけが1人当たりGDPが急速に落ちてきている。要するに日本はアメリカ、イギ リス並みに働いているのに、給料はヨーロッパ並みに落ちてきている。だから私は、こ れはやはり戦略を間違えたのだと思うのです。給料がヨーロッパと同じだったら、ヨー ロッパ並みの働き方をすればいいし、それで暮らしたほうが国民は幸せだと思うのです。  だからワーク・ライフ・バランスを考えるときは、もうモデルをアメリカやイギリス におくのをやめて、大陸ヨーロッパを目指しましょう、例えば国民に、夏休みは1カ月 取れますよと言ったほうが、構造改革で痛みに耐えて金をふやすというよりも、みんな が幸せになれるのではないかという気がします。 ○樋口座長 戦略というのは、アメリカを追いかけるというのを間違ったということで すか。 ○森永委員 経済政策として。 ○鶴委員 やはりいちばん最初なので、ワーク・ライフ・バランスということを言うと きに、我々がこの言葉を使うと、みんな非常にいいことだというので、これは推進しな ければいけないと。中身もわかったように思う場合が多いのですが、実はここのワーク・ ライフ・バランスには非常に多様な意味が込められていると思います。  先ほど清家委員はクロスセクションかそれとも、もう少し個人の人生を見てというこ とをおっしゃいましたが、とにかくいまの労働時間が長すぎる、いろいろな層でそうい う問題があるので、それをなんとか、労働時間を減らさなければいけませんねという話 なのか、それとも阿部委員がおっしゃったように、むしろ、働きたいのだけれど働けな いという人がいるので、その人たちの、逆に言うと労働時間をもう少し増やさなければ いけないのかと。  3番目は、個人のいろいろなライフステージにおいて、例えばその労働時間というの は、どういう労働時間をやるのかということで、そこは随分、最終的には変化していく でしょうねと。そこは非常にフレキシブルにできないと。仕事を優先すべきときと、生 活、家事、プライベートを優先するとき、その時々によって違うと思うのです。自分が 優先したいときに、それにグーっと集中できるということも、ワーク・ライフ・バラン スの非常に大きな視点ではないのかと思います。労働時間の問題なら労働時間の問題で いいのですが、自分のライフサイクルでそうやって変化できるとか、これをいま優先し たいというときに、それがすんなりできるのかというところに、もう少し議論というの は集中しなければいけないのではないのかと。  オランダのケースというのは面白いと思います。ヨーロッパはご承知のようにEU指令 で、例えばパート、フルタイムとか有期とか期間はないとか、そういうところで均衡処 遇でやりましょうということでやっているのですが、オランダというのは一歩進んで、 フルタイムとパートというところは、自分のそれぞれのライフサイクルのところで、例 えばフルタイムの人が、同じ給与でパートをやりたいと言ったら、そういう希望を出せ ばそれはきちっと通る、その希望はちゃんと受け入れなければいけないという、非常に 厳しい制約があるのです。逆に、パートをやっていて今度フルタイムをやりたいという ことになると、企業はそういう希望を受け入れなければいけない。こういう非常に強い 制約があると、実は企業にとって両方、その格差があるような待遇に、どちらかが企業 にとって安くすませるということができなくなるので、こういう考え方はひとつ、ちょ っと見習うべき考え方ではないかと思います。 ○山川委員 いまのご意見とも関連することですが、ワーク・ライフ・バランス実現の ための政策的な対象事項の整理としては、1つはやはり労働時間というのがあるわけで す。それも労働時間の長さ、短さの問題と、それと別個に弾力性の問題があるように思 われます。フレックスタイム制がどれだけ有効かとか、どれだけ使われているかという データがありませんでしたが、長さの問題と弾力性の問題があって、休暇とか休業の問 題はちょっと次元が別だと思うのです。日常的なワーク・ライフ・バランスだったら時 間の長さとか弾力性の問題が有効ですが、あるキャリアブレイクを取るということだっ たら、その休業の問題になるということで、同じ労働時間でもいろいろなアスペクトが あるように思われます。  それと賃金政策という観点では公正処遇、短時間勤務になっても賃金は時間に比例し たものになるといった、賃金処遇の問題がもう1つ出てくると思います。  あと、休暇、休業に関しては復帰支援の問題で、継続就業率が低いということでは、 実際には、復帰しても短時間勤務があると使いやすいのかなと。フランスの例などは、 休業利用率はむしろ高くないのですが、短時間勤務の利用率が高いように見えますから、 そのあたりも考慮されるのかなと思います。もちろん雇用政策的に、一旦退職した場合 でも再就職しやすいといったこともあります。  最後は、これは法制度の問題ではないのですが、重要かなと思われますのが、例えば 資料No.2-2の12頁に就業継続のために必要な事項というのがありますが、意外に高かっ たので興味深かかったのが、「やりがいが感じられる仕事の内容」が重要というところ です。つまり、それだけ自分がやりたいことであれば、なんとかワーク・ライフ・バラ ンスの工夫をするということではないだろうか。パートの継続就業率が低いのは、実は ステークが少ないというか、辞めてもそれほど影響はないと思っているから、経済的に もそうだからということかと思います。年休の消化率でも結局、人に迷惑がかかるから というのは心理的な問題だけではなくて、そういう仕事の仕組み方をしているからそう 感じるのではないかと思われますので、どういう仕事をして、どういうふうに組織、仕 事の体制をつくっていくか、それが案外重要なのではなかろうかと思います。以上です。 ○佐藤委員 ワーク・ライフ・バランス社会を実現するための政策を考えるときには、 どういう政策が必要で有効かということを考える前に、やはりワーク・ライフ・バラン スが何かということについてある程度のコンセンサスがないと、政策の選択を間違える のではないかという気がしています。やはりワーク・ライフ・バランスについて、その とらえ方にまだかなりばらつきがあるのではないかと思います。人によっては、仕事だ けではなくて自己啓発も社会貢献活動も、バランスよくやらなければいけないというよ うなことを言う人もいますし、そういう意味では、ある時期、長時間働くのはけしから んというような見方もあるわけです。そうではなく、仕事優先で長時間しか働けない、 そういう人しか活用できないような働き方が問題なのであって、いろいろな働き方を選 びたいというライフスタイルの人を受け入れられる職場なり、働き方にしていくことが ワークライフバランス支援などだと思うのです。森永委員の働き方が悪いというわけで はないのでは、それが良くないという議論もあるわけです。  ですから、私はライフスタイルフレンドリーと言っているのですが、人によってライ フスタイルが多様化している。そういういろいろなライフスタイルの人たちが、生き生 き働けるような職場をつくる。ある時点で見れば労働時間を少し短くして、それ以外の 育児や家事をやりたいという人もいる。逆に、もっと働きたいという人もいるわけです ね。働いていない人が働きたいという時にそれが実現できるような働き方を用意する。 いろいろなライフスタイルに合った働き方を選択できるような環境づくりというのがす ごく大事で、そのことが女性の就業率を高めることになるかもしれないし、高齢者の就 業率を高めることになるかもしれない。また、いまの仕事だけという人の中で、別のラ イフスタイルを取りたいという人の自己啓発とか、地域や家庭への参加の時間を増やせ る。そうすると、例えば一定の労働時間の枠を一律に下げるのがいいのかというと、そ ういうことではないと思います。ワークライフバランスを実現するための政策も2種類 あると思うのです。1つはその両立支援をサポートする制度です。休業とか短時間勤務 とかフレックスなどの労働時間とか、そういう制度です。このメニューを増やしたりと か、法律で導入を支援するなどです。もう一つは、制度はもう十分で、制度はあるのだ けれど、それが使えないような働き方とか労働時間の現状を変えるものです。この両者 では政策がかなり違うと思うのです。  後者の場合では、制度的なところは法律上そんなに手当をしなくても、労働時間なり 働き方のところを変えていけば、両立支援を支える制度自体が活用できるようになる。 あるいは、労働時間がある程度短くなり、もちろん長く働くときはあってもいいと思う のですが、恒常的に毎日残業しなくてよくなって、例えば週に2日ぐらい定時で帰れれ ば、短時間勤務がいらなくなるかもしれない。実は働き方のところが大事で、そこを変 えれば両立支援の制度に関してはそれほど法律上の手当などは必要ないのかもしれない。 ですから、ワーク・ライフ・バランスというのは何かということと、それを進める上で どこがターゲットなのかということを、制度なのかその働き方のところなのかを分けて 考える必要があると思います。 ○白木委員 先ほど、労働時間と休暇等とは別の問題ではないかというご意見がありま したが、私は意外と根っこで結びついているのではないかと思うのです。資料No.2-1の 19頁の年次有休の取得率が、確かに労働需給バランスによって、景気のいいときには比 較的上がって、それが下がってきたというのには、非常にきれいに動いていると思うの ですが、ただ、いまになっても47.1%しか消化されていない。これはその休みを、自分 の権利を自由に行使できないという、職場の問題もあとで申し上げたいと思いますが、 1つは労働者側の権利意識の欠除と言いますか、それも非常に大きいのではないかと思 うのです。労働時間が長い場合に、残業をしたくないとかそういうことは言えないとい う、組合の問題にも関係するかもしれないですね。これが1つあると思います。  もう1つは会社側のほうで、先ほど佐藤委員がおっしゃったようにいろいろな、さま ざまな労働者の違いを認められない状況がある。要するにそういう意味ではダイバーシ ティが十分にいきわたっていない。これを違う面から言いますと、いま日本に留学生が 12〜13万人いるのでしょうか。3万人ぐらい卒業して何人ぐらいが日本の企業に就職し ているかと言いますと、5,000〜6,000人ということは、卒業生の2割しか日本の企業に 就職していない。本国に帰るのがほとんどです。もちろん海外で日系企業に勤めている 場合がありますから、それは捨象して考えますと、日本で育てた人の2割しか就職して くれないという状況がある。この理由は、いろいろあるわけですが、そのうちの1つの 理由は、日本の企業というのは、フルタイムでしかも長く働いてくれる、日本の大企業 のホワイトカラーと同じような人でないと採らないというスタンスが、もともと出てい るわけです。そういう意味では、留学生は数年働いて帰りたいとかいろいろな気持を持 っているわけですが、それを言うと採用されない。ほかにもいろいろな細かな理由はあ ると思うのですが、いずれにしても日本の企業側にそういういろいろな働き方とか、し ばらく働いて少し休んで、あるいはどこかに行くとか、そういう働き方は認めないとい う風土が関連していると思います。  いま言いましたのは、労働者側の意識の問題、考え方、組合の問題。それらと同時に、 企業側にその多様性を認めないという制度が、かなり硬直的であるという問題。したが って運用をうまくやれば、解決するところも結構あるのではないかと思うのですが、わ かっていてもなかなか実施面で、硬直的になっているという面があるのではないかと思 います。以上です。 ○加藤委員 2点ほどあります。1つは、例えば、ワーク・ライフ・バランスというのは なんなんだろうかというところで、そのワーク・ライフ・バランスを受けたことによっ て、個人がどれだけ満足するかということを考えると、非常にこれは難しい問題があり ます。例えば資料No.2-1の1頁で、これだけ見ていると、仕事と個人の生活で、バランス を持っていると答えた人が70%以上いる。これは1つの驚きのような気もするのですが、 じゃあ、個人にとって一体何が満足なのかというと、我々が考えているワーク・ライフ ・バランスそのものを実現することが満足なのかどうなのか、これはよくわからないと ころがあるような気がするのです。つまり、変な話ですが、個人の効用関数は全部違う わけですから、そういう意味では、みんなが統一的にこういった働き方がいいというよ うに決めるのは、なかなか難しいという点が必ずあるはずだということです。  そうするとどういうことが言えるかというと、先ほどあったように、消費者と企業と いう対立軸で考えるのではなくて、例えば、政策として何をやれるかといったら、個人 が仕事を行う中で、生活を行う中で、満足を得られるような場を提供するために何がで きるのかという、そういう方向性で考えるべきだと思うのです。企業と消費者の間の対 立軸ではなくて、実はその背景には、例えば、その130万円の壁があるから女性の就業 が抑制されるとか、高齢で働けば年金がカットされるとか、あるいは今回はうまくいき ませんでしたが、ホワイトカラーエグゼンプションみたいな形での、さまざまな制度の 政策的な導入によっていろいろなことができると思うのです。ですから場をつくるため に、消費者と企業だけの対立軸ではなくて、政策として何をやれるかということを考え ていくのが大事ではないかという気がします。 ○小杉委員 いま話題になった資料No.2-1の図について少し違和感を持っております。 この個人生活の定義が、ワーディングの中にも「趣味などの生活」というのを個人生活 に定義している、この調査そのものの限定性です。これをワーク・ライフ・バランスと 言ってはいけないのではないかと思います。ワーク・ライフ・バランスについてのある 程度の共通の認識が必要だというのは賛成なのですが、私はこのペーパーに書かれたこ とが、これは非常によくできていると思うのです。働き方を人々が主体的に選択できる ことと、個々人のライフスタイルやライフステージに応じて行き来ができるような社会 にする。このあたりが皆さんのお話の中でもいちばん、これはかなり的を射た表現では ないかと思います。  その中で「行き来」という問題について、佐藤委員は先ほど、いまある両立支援でか なりできることがあるのではないかと言われました。企業に採用された人が企業の中で、 この「行き来」ができるようにするということについては、うまくやればできるという 制度がかなりそろっていると思うのですが、もう一方、企業に入っていない人について は全然ないのではないか。つまり、市場を通じて行き来することができない。これをど のように保障していくかというのが大事なところで、今日最初に、話題になりませんで したが、若い30代男性の低賃金の人が全然結婚できないという状況がありますが、それ はやはり行き来の問題がかなりあるのではないか。それは企業の中でという、その制度 ばかりで保障できないところがあって、市場でその行き来をどうするか。そうするとや はり能力開発とか能力の評価とか、そういう違う側面が必要になってくるのではないか。  さらに、そこには人の意識というのがあって、人のキャリアというのは、現実にどう なっているかというだけではなく、その見通しがどうなっているか、それによってかな り影響されるもので、30代男性の結婚していない状態というのは、これは見通しとして、 将来、彼らが子どもを持って、家庭をつくるだけの賃金を得られそうな状況がないとい う見通しが問題で、その見通しをどう保障するか。それはやはり、社会がどれだけその 制度をちゃんとして、その市場を通じて能力開発ができてキャリアアップができる、そ ういう環境をどのようにつくっていくかということが大事ではないかと思います。 ○小塩委員 皆さんたくさんおっしゃったのであまり言うことがないのですが、私はワ ーク・ライフ・バランスというものについて、一定のモデルとか理想像というのは設定 すべきではないと思います。普通ワーク・ライフ・バランスというと、我々の頭に浮か ぶのは、奥さんと旦那さんが共稼ぎで働いて、2人とも育児・子育てに績極的に参加し て、土日はボランティアかなにかやっているという、非常に素晴らしいライフスタイル を想定するわけです。私などはそういうのはしんどくて耐えられないと思うのですが、 どのようなライフスタイルを選んでも満足できるというのが、ワーク・ライフ・バラン スの、それこそ理想像ではないのかなと思います。そういう場を企業も設定するという ことが重要であって、別に片稼ぎ、奥さんが働いて旦那さんが専業夫でもいいと思うの です。いろいろなライフスタイルを自由に選べる、しかもどんなライフスタイルを選ん でも、多少の差はあるでしょうが満足できるという、そういう世の中がいいのではない かと思うのです。  それで先ほど、質問しようかなと思ってちょっと躊躇したのですが、仕事と個人生活 のバランスの満足度を描いた絵が先ほど紹介されました。これは内閣府の調査なので、 厚労省の方に質問するのはちょっと酷かなと思って質問しなかったのですが、この「満 足度」も、例えば正規で働いている人と非正規の人ではガラッと違ってくるかもしれな い。男の人と女の人でも違ってくるかもしれない。こういうのを全部ひっくるめて、平 均像で満足度なんて出しても果たしてどれだけの意味があるのかなと思います。むしろ、 どのようなライフスタイルを選んでも、70%以上は満足しているということだったらい いなということは言えると思うのです。いろいろなライフスタイルを許容し、しかもみ んなハッピーになるというのがいいのではないかと思いました。 ○佐藤委員 このデータは内閣府のだから、たぶん上の高齢者も入っているし非労働力 の人も、全部込みのデータですね。60代の人なども入っていたと思う。 ○土屋労働基準局勤労者生活部企画課長 世論調査ですから、たぶん年齢とか就業状況 とか、そういうのを問わず調査をしていると思います。 ○樋口座長 ワーク・ライフ・バランスで労働時間の問題を考えるときに、皆さんおっ しゃっているように、労働時間の長さと柔軟性、選択性というようなことを分けて考え なくてはいけないと思うのです。例えばその長さの問題を考えたときに、先ほどいくつ か資料が出ていましたが、1つはメンタルヘルスの問題とか、あるいは過労の問題。こ れは生命を守るというような、憲法で保障されているような最低限のことに関するとこ ろについても、果たして現状がどうなっているのかというようなことを、やはり考えて いかなければいけないのだろう。これについては長さの問題という形で考えられるのに 対して、次の段階としてニーズが多様化してきている。ライフステージやライフスタイ ルによって、労働時間に求める長さも違っているでしょうし、あるいは仕事の中身も違 ってくる。前者の労働時間の長さであれば、例えば労働基準というところでの問題にな ってくるのでしょうが、多様化、柔軟性をどう担保するかということに関して、どのよ うな政策が考えられるのかということになると、そこが非常に難しいところになってく るのではないかと思います。  皆さんのお話を聞きますと、個別企業の中で解決するべき問題と、そうではなくて例 えば市場を通じて解決しなければならない問題があるのだというご指摘だったと思うの で、確かにそれぞれ企業でやればいいということはあると思うのですが、そうではない ところについて、政策としてどう考えていくのかが、重要なポイントになってくると思 います。特に柔軟性の担保、あるいは選択性の担保を考えたときに、政策としてどんな ことがあり得るのかなと考えると、どんなことがあるのですか。 ○森永委員 厳密に同一賃金、同一労働を担保してやれば、私はそれで大幅に落ちると 思うのです。いま正社員で働いている人は年収500〜600万もらっていますが、サービス 残業をやらされて毎日終電まで働かされて、もうこんなのは嫌だと思いながらも、では パートタイマーになろうと思うと、年収100万円ちょっとになってしまうのです。100万 円ちょっとでは絶対に飯が食えないので、だからやむなく働いているのです。  現実に1982年にオランダでワッセナー合意が行われた後にどうなったかというと、オ ランダの国民は主体的にパートタイマーを、ものすごい勢いで選んでいくのです。特に 男性のパートタイマー比率というのは劇的に上がっていくわけで、それはなぜかといっ たら、食えるからなのです。例えば労働時間8割にして年収8割だったら、みんなつらい から選ぶのです。でもいま選ぶと半分以下になってしまうから、それは無理だというこ とで追い詰められていると思うので、この間のパート労働法のようなものではなくて、 もっときっちりと同一労働、同一賃金を目指せば、私はかなり自由度も高まるし、平均 としての労働時間も落ちると思うのです。 ○樋口座長 いまは労働時間の長さと賃金というか、処遇がセットになってしまってい て。 ○森永委員 だからものすごく忙しいけれども高賃金というのと、ちょっと暇で超低賃 金という2つしか選択肢がなくて、真ん中が日本にはないのです。 ○樋口座長 均衡処遇をもっと強化しないと。 ○森永委員 やれば大丈夫だと思いますよ。企業がすごく嫌がると思いますが。 ○佐藤委員 均衡処遇すれば上がるというわけでもないからね。だから絶対水準を上げ るという議論と均衡処遇で上がる部分が一応両方あって、つまりいまの社員と同じよう な仕事、同一労働と同一賃金というものですが、給与の低い部分は上がる。そうではな くて、もともと仕事が違っている低い部分があるわけで、実はここが圧倒的に多いわけ です。これは均衡処遇で水準が上がるわけではないのです。だから上げる必要性がある のはすごくよくわかるのですが、また均衡処遇もすごく大事ですが、それで上がるかと いうと上がらない部分もたくさんあるので、そこはまた別の対応が必要で、最賃も1つ だと思います。あと社員については、いまのところ短時間勤務をすれば時間比例ですね。 ○森永委員 そこはそういう制度がある企業はですが。 ○佐藤委員 ただ、それは使いにくいというのは事実です。 ○黒澤委員 すみません、今のからずれてしまいますが、先ほどワーク・ライフ・バラ ンスは何かということで、人々の満足度を高めるという観点のお話があったのですが、 そういった観点以外のワーク・ライフ・バランスのメリットというのも、きちんと押さ えておく必要があると思うのです。先ほど山川先生が、資料No.2-2の12頁の女性が就業 継続のために必要な事項という中に、やりがいが感じられる仕事の内容というのが非常 に高いパーセンテージであるという話がありました。女性の場合、両立が困難であるこ とがどういった弊害をもたらすのかと考えた場合、女性の離職率がそれによって高くな るということがあります。そうすると企業がそういった人たちに投資をするインセンテ ィブは低くなりますから、能力開発を控える。そしてまた責任のある仕事を与えなくな るということがあります。そうすると、女性自身が本当にやる気をなくしてしまって、 結局離職率が本当に高くなってしまうという状況がある。しかも、それだけではないの です。  両立困難だからこうやってフルタイムで両立するのが難しいというと、女性自身が自 分の能力開発をしようという、自分の投資行動というものさえも控えていくような行動 を取っていく。そのうえ、企業が責任のある仕事を与えてくれないことになりますと、 これをますます控えるような状況になってしまうわけです。そうすると、そもそも女性 に統計的差別がなされていたとすれば、それがない場合よりも女性の能力投資がなされ なくなるし離職率はより高くなる。そういうものがなかったとしても女性の離職率が高 いままになってしまうという悪循環に陥る。それによって結局は企業から見た場合の女 性の有効活用がされず、また女性自身から見た場合でも能力発揮というものが妨げられ る、こういった問題があると思うのです。もちろんこれは1つの企業という観点から見 たもので、先ほどから議論に上がっている市場でということがもう少し可能であれば、 つまり再就職がもうちょっと容易な市場になれば、その辺りも十分に緩和される可能性 はあると思うのですが。以上のような議論も今後ワーク・ライフ・バランスの実現に向 けた政策的な観点を議論する場合には、きちんと押さえておく必要があるのではないか と思います。  もう1つ、資料として、先ほどからあった時間とか制度、実態という面からいろいろ 示さなければいけないと思うのですが、中でもフレキシビリティという観点から見ると、 何パーセントの人の労働時間はこのくらいだよということ以外に、もうちょっと分散の ようなものを見る必要があるのかなと思います。先ほど森永先生がおっしゃったように、 オールオアナッシングの状況があるわけですから、雇用形態が正社員であるという状況 の人で年齢階級別、男性・女性別というグループの中での労働時間の分散がどうなって いるのかを示していただけると、平均値でみれば米国・イギリスタイプに我々日本は確 かに入っているわけですが、そこの部分が米国、イギリスとちょっと違うというのが出 てくるかなと思うのですが。猫も杓子もみな長時間労働をしているというかやらされて いるというような、つまり主体的に労働時間の選択ができていないということを示す1 つの資料になるのではないかと思います。  最後に、これはちょっと余談になりますが、よくこういったところに出てくる満足度 調査に、日本のパートの女性に「あなたの状況は満足ですか」と聞いてみると、非常に 高い比率で「満足だ」と言うというのがありますが、それは選択可能な選択肢の中で、 自分がいまの選択肢を選んでいることについて満足であるということであって、それは つまりオールオアナッシングの状況で、いまの自分のパートの仕事でなければ、残業し てフルタイムで猛烈に働かなければいけないという選択肢しかないのであれば、それは 自分のいまの状況でも満足だと言わざるを得ないという人が多いことの現れの可能性も ありますので、そうした満足度の高さを政策を論じる上で利用するというのはどうかな と思います。以上です。 ○佐藤委員 ワーク・ライフ・バランスの実現と満足度の関係ですが、私はワーク・ラ イフ・バランスが実現できると満足度が上がると単純には言えないと思います。ただし、 ワーク・ライフ・バランスが実現できないと不満になるというのは事実だと思います。 私はワーク・ライフ・コンフリクトと言うのですが、それがあると仕事の面でも意欲的 に働けないし、仕事以外ではやりたいことができないため仕事の不満も高まるのです。  では、ワーク・ライフ・コンフリクトがなければ、満足できるかはまた別の話だと思 っています。2番目に、いま黒澤委員が言われたことですが、少子化にも資するワーク・ ライフ・バランスということですが、おそらく女性が結婚、子育てという大きなライフ イベントがあっても働き続けられるようにとなることにワーク・ライフ・バランスが貢 献できると思います。ただ難しいのは、現状の男性を想定した働き方が変わらないと、 つまり女性が結婚し子育てをしても働き続けやすいワーク・ライフ・バランスを強化し ろということになると、つまり女性は長く勤めるようになるかもしれないが、女性の活 躍の場の拡大が難しくなる。女性だけを想定したワーク・ライフ・バランスの支援は、 例えば管理職や責任のある仕事への女性の職域の拡大にはマイナスになると思います。 企業からすると、女性は使いにくいということになりかねないのです。女性からしても 責任ある仕事に就きにくいということになりかねないと思います。  ワーク・ライフ・バランスが女性だけを対象にし、かついまの男性の働き方に手を付 けないと、いわゆるマミー・トラックをつくることになる。女性が補助的な仕事で長く 勤めやすい、それを企業にやれということになりかねないと思うので、結果としては女 性の就業率は高くなるのですが、女性の管理職も増えないし、責任ある仕事に就く女性 が増えないことになりかねない。そこをどうするかが、とても大きな課題かなと思いま す。 ○樋口座長 今日出てくる議論を分けて考えると、1つは製造業の生産労働者のような 労働時間の管理の、わりと相対的にしやすいところと、ホワイトカラーのように労働時 間の管理が難しいところ。後者の議論というのがワーク・ライフ・バランスにかなり関 連して出てきているわけで、労働時間の管理がしにくい中における労働時間の選択とい うのをどう担保するのかが、とても重要な点です。ここのところはまた、そのうちに議 論していただきたいと思います。  もう1つ、いまは時間の話だけだったのですが、地理的な選択というか、転勤の問題 をどう考えていくのか。女性の継続就業は難しいという中にも、特にホワイトカラーに ついては転勤の問題が入ってきているわけです。転勤というのは、いままで法的に扱っ たことはないだろうと思うのですが、政策としても扱ったことはないのですか。 ○事務局 男女雇用機会均等法の間接差別の対象となる措置の1つに、合理的な理由の ない転勤条件を設定するということがあります。 ○土屋労働基準局勤労者生活部企画課長 労働時間の設定改善という中にも単身赴任の 方への配慮というものが入っています。 ○事務局 あと育児介護休業法に、転勤についての配慮義務、努力義務があります。 ○樋口座長 今日資料として出たのが労働時間関連だということで、転勤に関する問題 意識も持たれていくということなのですかね。このように考えてよろしいのでしょうか。 ○佐藤委員 これは地域間の違いで、皆さんがご存じのように、女性の就業雇用率が低 いと出生率が低いのは都市部なのです。地方に行くとそうでもなくて、東京というのは 女性の就業率が低くて、正社員比率も低いし出生率も低い。地方に行くと女性の就業率 が高くて、正社員比率も結構高いし出生率も高い。ですからこれをどう考えるかで、1 つは通勤問題が大きいのです。だから企業がやれる部分と雇用政策でやれる部分と、特 に首都圏を考えると通勤のところがネックで、いくら企業が労働時間を短くして短時間 勤務にしても、通勤で食われてしまう問題がある。もし通勤時間が地方と同じように30 分程度になってくると、相当状況が変わってくる。保育園の問題も変わってくるので、 都市部は特に通勤問題がワーク・ライフ・バランスで、いちばん大きな問題になってい るのではないかなと思います。 ○清家委員 樋口委員が言われた全般的な労働時間の長さとフレキシビリティを分けて 考えることはとても大切な視点だと思うのです。それを思うと同時に、両者の間にもし かしたらトレードオフの関係もあるかもしれないわけです。その辺をどう考えるかとい うことをちょっと申し上げたいのです。  1つは、よく労働時間の問題が転勤の問題等とも絡んで伝統的に議論されてきたのは、 雇用保障との関係です。つまり正社員の雇用を保障するためには、常に労働投入がフラ クチュエイトするわけだから、バッファーとして残業を持っていないと、雇用保障はで きません。同時に、ある事業所で仕事がなくなったときにも、雇用を保障するときには その人を別の仕事がある事業所に転勤させるという自由度がないといけません。そうい う意味で長期雇用というか、あるいは雇用保障と長時間労働、転勤の問題は常にペアで、 特に雇い主の人たちはこの問題を議論するときに話していて、それは全部雇い主の言い 分が正しいかは別として、それなりの相関はあり得るわけですから、そこのところをど う考えるか。これは先ほど森永委員が言った正社員の長時間労働と、雇用が不安定なパ ートの人たちの労働条件の話とも絡んできますが、その辺はトレードオフの問題として 議論する必要があると思います。  もう1つは、これはコンセンサスが私はできたと思いますが、ワーク・ライフ・バラ ンスというのは確かに全体の労働時間の短縮の問題もあるのですが、より重要なのは一 人ひとりが自分の好きなときに長時間労働し、好きなときに生活の充実を図れるような ことが大切だと。つまり個人の選択という点が重要だということです。  先ほどから議論が出ているように、オランダモデルにしろ何にしろ、多様な雇用形態、 あるいは小杉委員が言われたような市場を通じた調整ということになってきて、それは 結局のところ、例えば個人の賃金を決める基準において、より一人ひとりの仕事の成果、 あるいはやっている仕事の内容、あるいは個人の能力というものが重視される。つまり 勤続年数、あるいはこの人は男性の世帯主だからということではなくて、まさにパフォ ーマンスで人を評価するということにだんだんなってくると思うのです。  たしか以前に山川先生がおっしゃっていたと思うのですが、要するに男女差別や年齢 差別をなくすことは、究極的には能力、あるいはパフォーマンスで人を評価することに なるわけで、まさに森永委員が先ほど批判されたアメリカ型の世界かもしれませんが、 それは一面では非常に厳しい世界です。ここでちょっとパラドックスが出てくるかもし れないのは、確かに森永委員、あるいは鶴委員が言われたようにオランダ型モデルみた いになるかもしれないのですが、一方で能力や成果と賃金がすごくリンクしてくるよう になると、これはロバート・ライシュなどがよく言っていることですが、能力の高い人、 あるいはいまたまたま市場で高く評価されている人は、稼げる間にめいっぱい働こうと 思うから、ものすごく労働時間が長くなる。一方で評価されていない人は賃金がすごく 安くなるから、また同じような生活水準を維持するために、めいっぱい働く、あるいは もっと働かなければいけなくなるかもしれない。だから多様化や柔軟化というのは確か にオランダモデル的な素晴らしい世の中を実現させる可能性もあるし、徹頭徹尾、能力 主義、成果主義が透徹されると、あるクロスセクションで、能力の高い人も、あるいは 能力が低いと見なされた人も、両方忙しく働く可能性もあるのです。だから柔軟性と平 均の労働時間の長短というのは、もしかするとトレードオフの関係が出てくるかもしれ ない。それはそれでいいのだという考え方もあります。一人ひとりが自由に、あるいは 柔軟に能力に応じて働き方を選べるようになれば、平均労働時間、あるいは極端に過労 死するまで働くような人がもっと増えるかもしれないですが、それはそれで1つの社会 なのだという考え方もあるかもしれないですが、それはそうではないのではないかとい うことになると、一律に多様な働き方とか、あるいはパートと正社員を均衡にすればい いとか、そういう話だけでもなくなってくるのかなという感じがします。 ○樋口座長 労働時間の長さというときにも恒常的な長さの話と、それと例えば急に忙 しくてという話での残業の話がある。転勤についても、会社が倒産せざるを得ない過剰 雇用だと、だから緊急避難的にどこか別の工場に配置しますという話と、2〜3年経った ら恒常的に転勤が入ってきますという話では、ちょっと違うという気がします。果たし て最近の産業構造や職務構造を考えていったときに、企業の中でも義務を持って、これ ほど頻繁に転勤させる必要があるのか、あるいは転勤することによって、地域のニーズ も理解できないまま営業の人がまた次に移ってしまうという問題のところで、かなり疑 問の声が上がってきているところもあるわけで、必ずしも生産性、あるいは利益にとっ てマイナスとは限らないところでの問題点が、転勤にあるのではないかなと。 ○佐藤委員 転勤について議論することはいいと思いますが、転勤も2種類あって、居 住地変更を伴う転勤とそうではない転勤があって、また1社1事業所も結構多いのです。 僕たちが付き合っている人には、転勤する人が多いのですが、日本社会全体で見ると、 つまり勤務地変更を必要とする人事異動が適用されるのはそれほど多くはない。  あと大企業でも、例えば、研究所などでは異動はない。ですから、転勤は重要ですが、 転勤制度がない会社もたくさんあるということを頭に置いておかないといけないと思い ます。居住変更を必要とする転勤は、全体の雇用者の中で見るとそんなに大きくないの ではないかと思います。きちんとデータを見たほうがいいかなと思います。 ○樋口座長 難しいのは、まさに最低限を決めるなら一律的な基準は決められるわけで すが、個人のニーズが多様化している一方で、企業のほうも多様化して、いまの全国展 開の話もありますでしょうし、そこのところにどういう政策を当てはめていくのか。ま してや個人が自由に選んでいるのであれば、これは外部経済は働かないわけですから、 他の人には影響していかないということですから、勝手にどうぞということもあり得る のでしょうが、特に日本の場合でチームプレーでという話になってくると、ワーカホリ ックの上司がいると下のほうはどうにもならないというところもある。それはそのチー ムに入ったのが選択できるのであればそれはかまわないわけですが、往々にしてそうな っていないところがあって、という問題があるのでしょうね。だから外部性というもの をどう考えていくのかです。政策会議のあり方としては、このような問題になってくる のかなと。 ○山川委員 いまの話にまさに関連するかと思うのですが、ワーク・ライフ・バランス が本来的にはそれぞれの選択に委ねられる。その選択はなかなか難しいという、コスト が非常に大きくなっている部分を解消しようという点では、かなりご意見が一致するの ではなかろうかと思いますが、いまおっしゃられた、まさにそのことをするためにまた コストがいろいろ企業や、先ほどの清家先生のおっしゃられた雇用保障と時間外労働が 均衡を形成していると、そういう現在の均衡のようなものをひょっとしたら崩すための コストが必要になるかもしれないと。そのコストをかけるのは予算的な面も含めてかも しれませんが、社会が負担すると、政策的に外部性というのでしょうか、経済学的には、 別な意味で市場を機能させるということかもしれませんが、ワーク・ライフ・バランス の選択のコストを削減するために、新たなコストを社会的に負担するということについ てもコンセンサスが得られるかという問題があるのかなと思います。 ○鶴委員 労働者側から見てのフレキシビリティの問題と、もう1つは企業や雇い主側 からのフレキシビリティと。OECDの労働時間のフレキシビリティの議論をずっと見て いると、両方がフレキシブルにやる結果としてフレキシビリティに進んでいかなければ いけない、片方だけでは駄目だという話を非常にやっているのです。そういうことを考 えると、先ほどの転勤の問題も、これまでに景気等いろいろなレーバーアジャストメン トのために非常に必要だったかもしれない。ただ、それもいろいろな時代の変化といろ いろな中にいて行き過ぎた面もあって、もっとそんなにやらなくてもいろいろな調整が できるのではないでしょうかという問いかけも、たぶんあるのだと思うのです。だから どうも両面を少し考えて議論しないと、片方だけだと不十分だと思う。 ○樋口座長 時間がありますので、次のテーマに移りたいと思います。また戻ってくだ さってこの議論を続けてくださっても結構です。 ○諏訪委員 戻る前に、皆様の意見を聞いているうちに自分の意見を言う機会を失って しまいました。私はワーク・ライフ・バランスの議論は多義的であって、それをはっき りさせたほうがいいという考え方が本当にいいかどうかと思っています。なぜならば世 の中に少しずつキャンペーンをしていくときは、何でもそうなのですが、みんな多義的 な言葉を使ってやっているのです。それでそこへそれぞれの人々のその時々の思いとか ニーズが合うから動いていくのであって、ある1つのものにはっきりとさせると、例え ば先ほどから言っているような、個人の選択の可能性を広げる、あるいはダイバーシテ ィを広げるのだと言った瞬間に、何だそんなら私は関係ないとか、そんなものは絶対反 対だという声も出てくるかもしれないと思います。そういう意味ではワーク・ライフ・ バランスを少子化の問題と結び付けることはあまりよろしくないという声が一方であり ますが、他方で少子化問題と結び付くからワーク・ライフ・バランスに焦点が当たって いる部分もある。我々が政策的に考えるときは、そこら辺を現実的に考えたほうがいい のではないかというのが1点です。  同じように考えますと、政策を行うときはご存じのように、何かする必要があるから ということで世の中が動いているわけでは、必ずしもないのです。つまり政策が現実に 動いていくのは、緊急性を我々が感じたときなのです。優先度を前のほうに出したとき なのです。だから政治的にある状況の下で、一般的に見ると必要性があまり高くないよ うなことが、みんなが緊急だというと、そちらの方向にワーッとぶれることは、非常に よく起きます。そういうことがいいときもあるし悪いときもあるのですが、私はワーク・ ライフ・バランスに関して言えば、必要性は誰もが感じていますが、それがなかなか総 論から各論にいかないというのは、緊急性という側面をどう設計していくかという部分 で、なかなかこれまで成功をしてこなかったのかなと思っています。その意味では、い ま少なからぬ人が緊急性を感じているとしたならば、その緊急性を冷やさないようにワ ーク・ライフ・バランスに関する定義付けでも何でもしていったほうがいいのではない かという感じがしています。  皆様の議論の中に出ているように、ワーク・ライフ・バランスの中には制度・慣行の 問題と人々の意識の問題があります。それで制度・慣行をどう直すか、どうしたら先ほ どからきているような選択の可能性を高める、行き来ができる、制度を中立化すること ができるか、そういう議論が一方ではもちろん必要ですが、先ほどからいうように緊急 性のレベルにいま乗せているところであって、それを推進しようともし考えると、人々 の優先順位をいま前に上げてきているワーク・ライフ・バランスの意識をさらにもう一 歩先へ進めていくことが必要ではないか。そうなると、そういう意識の基本、基底にあ るものは一体何なのだろうか。それは、このままでおそらくサステイナブルなのだろう かという危機意識みたいなものなのだろうと思います。豊かさを本当に我々は実感でき ないようになってこれでよかったのだろうか、そんなような気持だろうと私は思ってい ます。  こうした制度も意識も、組織の側が持つ制度や意識の問題と、もう1つは個人が持つ 側の制度と意識の問題があって、この点はどちらをいま優先させるべきかということは 簡単に言えないと思いますし、おそらく結論から言えば政策的には両方だということに なるのだと思うのですが、皆様の議論を先ほどから聞いていますと、もう少し個人が働 きやすいようにそれぞれが充実した働き方、生活をと言っていると考えますと、個人の 側がそう考えてきているいちばん基底にあるものは何なのだろうかということを、もう 一度今後ワーク・ライフ・バランスを議論するときに、さらに考える必要があるのでは ないかと思います。  結論的に申し上げますと、私はワーク・ライフ・バランスには枠組みの問題とプロセ スの問題とコンテンツの問題があって、コンテンツの問題をあんまりガチガチやると、 かなりの人が離れていくのではないか、そういうコンテンツはいろいろなものが乗っか っていいのではないかと思っています。  フレームワークに関していうと、優先順位を前に上げてこれを基本哲学にしたとき、 これまであった制度や慣行のどこをどのようにいじらなければいけないのかという部分 に関して、詰める必要があるのではないか。そして最後に残るのはプロセスです。その プロセスの中で移行のコストが非常に大きいものですから、移行のコストが大きすぎる と、その先にあるメリットはたくさんあるといっても、それはいわば先ほどで言えば必 要性の議論に過ぎなくて、緊急性の行動のほうに移らないのです。ですから、その目の 前のコストを超えてでもという辺りを全体として見ていく必要があるのではないかなと いう感じがしました。どうも長くなりました。 ○樋口座長 ワーク・ライフ・バランスに向かってちょっと背中を押すような何か秘策 がということだろうと思います。  時間もありますので、就業率等に関する資料についてご説明をいただいて、それにつ いて議論したいと思います。事務局からお願いします。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 資料No.1をもう一度ご覧ください。だいぶ積極的に対策につ いて議論いただいたわけですが、後段ではそういった取組がなされてワーク・ライフ・ バランスがある程度実現したときの就業率がどうなっているかと。主に言えば女性の方 々、あるいは高齢者の方々が働きやすい環境整備が図られたときの就業率ということで すが、そういった部分についてご議論いただければと思います。  資料No.3を開いてください。まず目次の所に大きく分けて3つあります。1つは、年齢 別の就業率のこれまでの長期的な推移です。2番目は、労働市場改革専門調査会等で出 されている就業率の目標値、あるいは前回の雇用政策研究会で出した見通しの資料、3 番目は、先ほど女性の労働力率については資料No.2-2で説明がありましたので、残る高 齢者の部分についての資料を用意しています。1頁から簡単に説明します。  1頁に、男女計の就業率を1980年から2006年まで見たものです。基本的には高齢化の 進展等によって低下傾向にありますが、このところ足下は横ばい、性別によってはやや 上昇していることがあります。  2頁は、今度は主に若年層で15〜34歳層について見たものです。男女計で見ますと、 上がっているのが25〜29歳の層です。ここはやや晩婚化の影響、あるいはそういったこ ともあるのかと思います。20〜24歳は、逆にバブル崩壊後に進学率の上昇もありますが、 景気の要因もあって下がっているという部分があります。  3頁が、その若年の男性です。男性は1997年以降は20〜24歳層が就業率が下がっていま す。足下は、このところは上昇しています。4頁が女性です。女性は先ほど言いました晩 婚化の動きと相まって、25歳後半層の労働力率が上がっています。  5頁目からが中高年層というか、35〜59歳までのものです。6頁は、35〜59歳の5歳刻み で男性を取っていますが、大きく動いているのがブルーの線で、55〜59歳層の男性です。 こちらを見ていただきますと、1986年頃を境にグーッと上昇しておりまして、この部分 は60歳定年が努力義務化されたといった効果もあったのかなと思っています。 1997年以降は逆に景気後退の影響もあって、男性については就業率は下がっています。  7頁の中高年の女性ですが、少し水準は違うのですが、ブルーの線の55〜59歳の女性の 就業率は、こちらも1986年以降は定年制の努力義務化等に伴って上昇を続け、男性とは 違って女性のほうは、1997年以降も少しは下がっていますが、やや上り基調で推移して いるということです。  8頁以降は高齢層、60歳から見ていますが、大きな流れとしては、高齢者については 1990年代初頭から2000年初頭にかけて低下して、このところ上昇に転じているというと ころです。男女別も大体同様の動きです。  11頁は就業率の目標値で、今年の4月6日に労働市場改革専門調査会で出された「ワー ク・ライフ・バランス憲章の策定」という部分で、こういった目標値を立てたらどうか というものでして、提示されているものが大きく分けて就業率と労働時間があります。  就業率のほうは若年、女性、高齢者でそれぞれ分けてありまして、今後10年、2017年 までの目標値として、こういったものを掲げられていまして、特に高齢層の就業率につ きまして、前回の雇用政策研究会報告よりはだいぶ高い数字が見通されています。  12頁は、前回の雇用政策研究会で推計いただきました、2030年までの年齢階級別の就 業率の見通しです。前回推計した際には2004年が足下の数字でしたので、今回それに20 06年の実績を入れました。これは前回の研究会の推計そのものです。これを見ていただ きますと、高齢化の影響で徐々に全体の就業率は低下するわけですが、特に男性の60〜 64歳層の高齢層については、就業率が上がる見通しを出しています。  13頁は、高齢者の関係の資料です。高年齢者は、先ほども就業率の動きを見ましたよ うに、定年制の義務化が実際の就業率に大きく関わってきますので、これまでの定年制 の義務化の状況の資料を付けています。  14頁は、諸外国との比較です。50歳から65歳以上を5歳刻みで見た数字です。よく言わ れていますように、我が国は先進諸国の中でも高齢者の就業意欲は高い。ただ女性につ いて見ますと、例えば55〜59歳の部分は、諸外国のほうが高いという部分もあります。 以下15、16頁は、高齢者の方々の勤務形態はどういうものを希望するかという資料でし て、男女ともに普通の勤務形態よりは、短時間や任意就業等を望むようになっていくと いう資料です。  最後の17頁に付けてあるのが、先ほど言いました労働市場改革専門調査会で出された 高齢者の部分についての出し方を、少し細かく見たものです。例えば男性の60〜64歳で、 青い棒グラフが実際の労働力率71.4%でして、それに就業希望者を加えた潜在的労働力 率は74.0でそんなに違いはないわけです。黄色で書いてあるのが最大試算値ということ で、高年齢者就業実態調査を使いまして、現状においては就業を希望していない非労働 力人口のうち、注2にありますように、経済上の理由やいままでの技能、経験が通用し なくなった、あるいは適当な仕事が見つからなくなったなどの理由の方々は、男性につ いては4割、女性については2割ありますが、こういった方々が何らかのそういった障害 が除去されて労働市場に出てこれるようになったとして、最大どのぐらいが供給力とし て出てこれるかを見たものです。最大値を見ますと、男性は60〜64歳でいけば84.5%と いう数字が出ています。これは八代調査会の数字です。以上です。 ○樋口座長 それでは、ワーク・ライフ・バランス実現に向けた対応が図られたときに 限らず、一般的な話として就業率がどうなっているかということについてご議論をいた だけたらと思います。どなたからでも結構ですのでどうぞ。 ○佐藤委員 教えていただきたいのですが、13頁の高齢者雇用については、定年60歳義 務化でその後、雇用延長、雇用確保努力義務化でずっとやってきたのですが、女性の場 合ではパートなど有期契約が多いです。そうすると、雇止め年齢の上限というのは、ど ういう扱いなのか。つまり採用時の年齢設定については合理的なものでなくては駄目と なったわけですが、有期の契約を更新していくとき例えば55歳で更新しませんというこ とは、いま認められているかどうか。60歳の先、つまり有期契約の人はどうなるのか。 つまり女性はそれが多いですから、定年延長の対象にならない人たちの継続雇用サポー トはどうなっているのかを教えていただきたいのです。 ○樋口座長 これはどなたに聞けばよろしいですか。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 おそらく有期雇用と年齢との関わりというのは、い ままでには議論されたことはないのかなと思います。 ○佐藤委員 60歳を雇い止めにしているとか、55歳を雇い止めにしているとかの調査の データはないのですか。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 たぶんないのではないですか。 ○樋口座長 で、ご意見は。 ○佐藤委員 だからそういうことで、そこの部分で事実上私が聞いている限りでは、従 来は定年年齢等で、雇い止め年齢を設定している人が多かったのです。男性は55は55、 60は60なのですが、たぶんその後は、定年制の人は延びているのですが、有期契約の人 は60歳のままという会社は結構多いような気がするので、そこで何か手当が必要かなと。 つまり有期契約でほぼ更新していたのですが、60や55になってしまうと、雇い止め年齢 を就業規則で設定するところが結構あるのです。ただこれは定年なのか、何かそこをも う少し議論しないと、女性の場合は特に有期契約が多いので。つまり定年制の下にある 人だけをやってもなかなか難しいのではないかと思っていました。 ○清家委員 12頁の就業率の見通しは、たぶん何か労働供給関数を推計して変数を外挿 していると思うのですが、説明変数というのは何でしたか。賃金ですか。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 性、年齢別でさまざまあります。 ○清家委員 さまざまだと全部は大変ですね。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 ええ。例えば高齢者で言えば。 ○清家委員 年金が入っていますよね。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 年金も入っています。 ○清家委員 支給開始年齢が引き上げられていくと、当該年齢層のところでは年金がゼ ロになるとか、そういう外挿の仕方でやっているのか、それとも受給資格がゼロ・イチ みたいのでやっているのですか。あまり細かくなるからいいです。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 そこはいま推計準備をやっているので、次回に。 ○清家委員 では、次回にできましたら、どういう関数だったかお願いします。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 はい、わかりました。 ○加藤委員 就業率は、こういった推計というのは非常に大事なことだと思うのですが、 例えばこれはどのように何に使うかということで、個人的に例えば将来の経済成長とか に還元するときに、インプットとしてどのくらいあるのかというのはなかなか見えてこ ない気がします。例えば男性、女性の就業率がいま57.9%が、2030年には56.2%になり ますというのはわかるのですが、例えば労働時間を込めた場合、もちろんこれから女性 や高齢者に働いてもらって就業率を高めることがワーク・ライフ・バランスの大事な意 味だと思うのですが、その結果として、インプットとしてどの程度の労働力の投入にな るのか。要するに就業者数掛ける労働時間でもいいのだと思うのですが、それが見えな いとちょっとよくわからないところがあると思います。 ○阿部委員 もう1ついまのに追加して、労働の質というのが労働時間よりも大切にな るのではないかと思います。いまここで出てきた就業率は、たぶんパートも含めた就業 率だと思うので、先ほど佐藤先生もおっしゃいましたが、パートと正社員では業務が違 うと。つまり質というとちょっと違いますが、やっているアウトプットが全然違ってく るわけですから、それを同一に就業率だけで見るのはよくないと思います。  先ほどに関連すると、いま40歳以上で女性の就業率は上がっているように見えますが、 たぶん大部分はパートタイマーですので、そこのところをどう考えるかということだと 思うのです。多くの女性の場合には、たぶん先ほどの資料No.2-2の11頁辺りだと、結構 両立環境が整わないことを理由に辞めているので、その理由の中身も結構面白いのです が、それはあとでご覧いただくとして、多くの場合には勤め続けたいが辞めたという人 が3割近くいらっしゃるわけです。この人たちのまず正社員としての就業機会を奪って おいて、その後戻ってきたらパートタイマーしかなかったという社会現状ではちょっと おかしいというか、機会をどうつくっていくかが政策的には重要だろうと思うのです。 まず1つは、就業率の中身をどのように考えるかということと、その中身の内容を上げ ていくためには、どう政策対応すべきかということが、重要かなと思います。 ○鶴委員 過去のトレンドを見て、少し年齢別、男女別で動き方が相当違うのだと思う のです。私の興味は、当然循環的な影響を就業率も受けると。  日本の場合、過去20年ぐらいは大きな長いバブル発生と崩壊という中期的な循環が あって、ある程度山型になるのは、そういう影響を考えればなると思うのです。2頁の 20〜24歳という所と、6頁の男性の少し上の年齢の所で、少し山型がはっきりしている と。  ただ、先ほどの説明だと、若い人たちは大学や大学院に行くのでだんだん進学率が上 がっているから、ここの下がり方に影響が出ています。ただ高齢者の場合は60歳定年制 でさらに押し上げられたところがありますよというご説明でしたが、案外その後で下が っている。こういう構造的な要因と中長期的な循環的な要因を少し分けてそれぞれを調 整した上で、例えば延ばしていくとどういう形になるのか、何かそのようなイメージが わりとはっきりすると、さらにそれ以外に先ほど阿部委員がおっしゃったパートの話を 付け加えて、大体どのような動きになるのかとすると、何か議論がしやすいのかなと思 います。 ○清家委員 それも含めて、これは要するに就業率だから、識別の問題があるわけでし ょう。これは労働供給関数ではないわけです。だから鶴委員が言われたように需要側の 要因も反映しているし、おそらく自営業比率とか、雇用就業率だけではないわけだから、 就業構造の変化も反映してしまっています。だからそれも含めてどういう変数でやって いるかというのを、次回でなくてもいいのですが、説明してもらうと答えも少し出てく るのではないか。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 次回に推計の値を出すときに、そういった周りの資料も含め て準備したいと思います。 ○樋口座長 通常、労働力率は、労働供給サイドの影響を強く受けるという認識が国際 的にはあるわけです。日本の場合には必ずしもそうではなくて、需要サイドから景気の 良し悪しによってかなりこれが動く。だからそれが失業率を抑えたのだという議論があ るわけです。  その一方で、就業率のほうはまさに供給と需要の両方が影響するとなったときに、供 給サイドから考えると、例えば年金や税制といった社会保障制度の変更といったものが、 こういう就業意欲にどう影響を与えるかと。たぶんその中に労働時間の話があって、本 人が自由に労働時間を選択しているのであれば、供給サイドから見れば同時的に働くか 働かないのかと一緒に決めてくるのですが、通常日本では、むしろ労働時間は企業から というスタイルで、個人のほうは働くか働かないか、働くとすればパートかどうかとい う選択肢になっているわけです。少しそこら辺を分けて就業の動向を見通そうとなった ときに、まず社会保障制度はどうなっていくのか、税制でいう個人単位の議論というの はどうなるのかということによって、ケースが分かれてくるのではないかなと思うので すが、そこら辺は次回に出せるのですか。 ○小川雇用政策課長 構造要因と循環要因についてはモデルをやっていく上である程度 は識別できると思うのですが、次回には社会保障の影響についてはまだ手が回らないと 思います。 ○山川委員 すみません、門外漢なので教えてほしいのですが、先ほど阿部先生の言わ れたことが今回の研究会の主たるトピックとの関係では重要になるような気がします。 つまり就業率という中に、例えば労働時間の弾力性や休暇の取得率というものがうまく 反映できるかという点ですが、これは前回の研究会との継続性では就業率がメインのイ ンデックスになるとは思いますが、そういった労働力の質について、就業率とは別のイ ンデックスができるのか、あるいは就業率という中にうまく盛り込む方法があるのか、 その辺りの見通しがありましたら教えてください。 ○樋口座長 次回に込み入った話は宿題として受けとめて、もしいまあればですが。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 研究会のスケジュールとの関係もあるのですが、全体で6回 を予定していまして、ワーク・ライフ・バランスと就業率の関係を次回で1回区切りを つけたいと思っています。雇用の中身の部分は引き続き議論をしていきたいと思います。 ○白木委員 周辺的なところかもしれないですが、男性、女性の就業率の長期的推移に ついての図の3、4頁で、先ほどの説明では赤い線の20〜24歳の所は男女ともに1990年前 後から右下がりになっていると。これについては結構進学率が効いているのではないか というお話がありました。しかしこれは労働力調査ですから、短時間でも働けば労働力 になっているわけですので、進学率で説明するのはちょっときついかなと。1990年頃か ら下がっているのは、むしろ労働市場バランスを極端に若年層が受けたということを現 しているのではないかなと思います。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 進学率の影響と景気の両面だと思います。景気の面のほうが 強いかもしれない。 ○白木委員 特にここが受けているのが現れているのかなという印象を持っています。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 はい、山一証券が破綻した頃からグッと下がってきています ので。 ○佐藤委員 皆さんが言われたことと重なるのですが、就業率を高める政策をやってい くときに、同時にワーク・ライフ・バランスを進めながら就業率をアップする。そうす ると、たぶん職業生涯を考えると、65歳まで働くにしてもそのうち2、3年は例えば休業 を取ると。つまり統計上は就業にカウントされるが、労働力は供給していないとか、短 時間勤務になると思うので、労働供給量としてどうかというのは、相当いまと変わって くるだろうと。だからその辺を是非考えていただきたいと思います。 ○小塩委員 ワーク・ライフ・バランスと就業率の関係がよくわからないのですが、就 業率が高くなることがワーク・ライフ・バランスの実現の目標なのかは、ちょっと微妙 なところがあります。  先ほど冒頭で配っていただいた論点メモの最後のパラグラフを読んでいるのですが、 非常に微妙な言い回しがあって、ワーク・ライフ・バランス実現の目安として就業率を どのように見込むのかということなのですが、必ずしも目標ではないと思うのですが、 ちょっとどのように位置づけたらいいかがわからないなと。  先ほど社会保障の話は次回以降ということですが、特に年金、医療、介護等の財政の 見通しをする場合、ある程度女性と高齢者の就業率の上昇は織り込み済みなのです。そ れでまだ財政のバランスができないという話をしているのですが、そうなるとかなりワ ーク・ライフ・バランスの実現で就業率を上げないといけないというのが事後的な政策 目標になってしまうのかもしれませんが、どのようにワーク・ライフ・バランスの実現 と就業率の関係を考えたらいいのか、それが少し疑問です。 ○小川雇用政策課長 基本的には就業率は、施策や企業の取組、労働環境の整備等が図 られたときの結果として、就業率が出てくるのだろうと考えています。ですから、それ 自身をターゲットとして上げ下げするというよりも、いろいろな施策や企業、労使の努 力をやった上で、その結果として社会においてはこういう就業率になりますよというも のとしてお示ししていると考えています。 ○清家委員 その辺は少子化問題と並んで、先ほど諏訪委員が言われた緊急性のポイン トになっているのではないですか。つまりそれはワーク・ライフ・バランスを合わせる のは別として、就業率がこの辺まで高まらないと社会保障の財政が持たないというのは 少子化と同じように、かなり緊急性が高いテーマですね。だから事後的にというよりは 先見的に、あまり先見的にそんなものを予見されては困るというのもあるのですが、か なり社会保障財政を議論する際には、例えば従来の雇用政策研究会の推計も前提にして やっているわけだから、それよりも低くなるとか、あるいはもうちょっと高まらないと たぶん持たないのでしょう。先ほど諏訪先生が言われた、背後には少子化の問題があっ て、ワーク・ライフ・バランスというのはいままではあまり真剣ではなかった財界まで すごく乗り気になってきているのはあると思うのですが、財政、社会保障の問題も諏訪 委員が言われたドライビングフォースとしての緊急性の1つなのではないかという気が します。 ○小川雇用政策課長 どういうふうに見込んでいくかにもよるかと思うのですが、例え ば前回清家委員もおっしゃったように、高齢者についてはある程度の政策効果を見込ん だ上で、このようになるだろうというある意味では政策的効果を織り込んだもの、ある 意味でそれは目標値に近いのかもしれませんが、そういったことを置いた上で、たぶん 高齢者の就業はこのようになるだろうとしますというような感じでやっていくことは、 当然あり得るだろうと思っています。 ○樋口座長 社会的なニーズはいろいろなところで認識されるわけですが、それをどう 個別の企業が進めていくかというところでの政策の意義、有効性のようなものが議論さ れていくのかなと。諏訪先生、何かありますか。 ○諏訪委員 いいです。 ○樋口座長 そろそろ時間がきておりますので、本日の議論は資料No.1を基本として行 いましたが、次回の研究会でも再度議論していきたいと考えています。次回の議論では 今回の議論を踏まえまして、ワーク・ライフ・バランス実現のための施策が実施された ときの、将来の就業率の見通しについてを事務局から提示していただき、それを基に研 究会でも議論を進めて、内閣府におけるワーク・ライフ・バランス作業部会の参考にし ていきたいと考えています。次回の日程等につきまして、事務局からお願いします。 ○蒔苗雇用政策課長補佐 今日はどうもありがとうございました。次回は3回目ですが、 9月28日金曜日の16時から18時まで、場所は17階の21会議室です。いま座長からお話があ りましたように、引き続きワーク・ライフ・バランスの関係について、議題として議論 していただきたいと思っています。数値目標等の話を出しますので、需給推計に関する 議論ということで第1回にも公開の取扱いというお話がありましたが、予め座長と相談 しました結果、次回の第3回は非公開で議論していただきたいと思っています。 ○樋口座長 本日は、以上で終了します。どうもありがとうございました。 (照会窓口)    厚生労働省職業安定局雇用政策課雇用政策係    TEL:03-5253-1111(内線5732)