07/08/31 平成19年8月31日薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所    平成19年 8月31日(金)  14:00〜 厚生労働省専用第21会議室 2.出席委員(13名)五十音順    新 井 洋 由、 飯 沼 雅 朗、◎池 田 康 夫、 庵 原 俊 昭、    上 原 至 雅、 竹 内 正 弘、 田 村 友 秀、 土 屋 文 人、    早 川 堯 夫、 前 崎 繁 文、 三 瀬 勝 利、 溝 口 昌 子、    山 口 一 成   (注)◎部会長 ○部会長代理 他 参考人1名    欠席委員(4名)   岡   慎 一、 守 殿 貞 夫、○堀 内 龍 也、  3.行政機関出席者 黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、 中 垣 俊 郎(審査管理課長)、 松 田   勉(安全対策課長)、    豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、 川 原   章(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)、 村 上 貴 久(独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)、 丸 山   浩(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター次長)、    森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)   他 4.備  考    本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻ですので、薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会を開催させてい ただきます。  本日は、お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。現在のところ、 当部会委員数16名のうち11名の委員に御出席をいただいています。御欠席という御連絡 をいただいたのが、岡委員、守殿委員、堀内委員です。土屋委員からは、遅れるという御 連絡をいただいています。田村委員からは御出席という御連絡をいただいていますので、 何らかの原因で遅れているのだろうと思います。いずれにしても定足数に達し、会議が成 立していることを御報告申し上げます。  また、本日の審議事項議題2及び3に関しまして、参考人として国立感染症研究所主任 研究官の板村繁之様に御参加いただいていますことを御報告申し上げます。  事務局の人事異動について併せて御報告申し上げます。新たに独立行政法人医薬品医療 機器総合機構の上席審議役に就任しました村上貴久、同機構の審査センター次長に就任し ました丸山浩です。よろしくお願い申し上げます。  それでは、座長の池田先生、議事進行をよろしくお願い申し上げます。 ○池田部会長 それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から配付資料の確認と資 料作成、並びに利益相反等に関する申出状況について報告をお願いします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会 委員の名簿を配付しています。議事次第に記載されている資料1〜6をあらかじめお送り しています。このほか、本日、資料7「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、 資料8「専門委員リスト」を配付しています。過不足等がありましたら、事務局までお申 し付けください。  続きまして、平成13年1月23日の薬事分科会申合せ、及び本年4月23日の薬事分科 会申合せに基づく、資料作成、利益相反等に関します申出については、次のとおりです。 議題1「アラノンG静注用」については、退室委員はなし、議決には参加しない委員は池 田委員、竹内委員。議題2「沈降インフルエンザワクチン「北研」」については、退室委 員は竹内委員、議決には参加しない委員はなし。議題3「沈降新型インフルエンザワクチ ン「ビケン」」については、退室委員、議決には参加しない委員、共になし。議題4「生 物学的製剤基準の一部改正」については、退室委員は竹内委員、議決には参加しない委員 はなし。したがいまして、議題1につきましては、薬事分科会規程第5条第1項において、 部会長及びその職務を代理する者のないときは、当該部会員のうちから選任された者が、 仮に議長として会議を開くことができるとされていますので、御選任をお願いします。 ○池田部会長 どなたか自薦あるいは他薦はありますか。特にありませんか。事務局とし ては何かありますか。 ○事務局 事務局としては、早川委員にお願いしたらどうかと考えていますが、いかがで しょうか。 ○池田部会長 委員の先生方、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、大変 申し訳ありませんが、早川委員には議題1の議事進行をお願いします。ほかにも事務局か ら何かありますか。 ○事務局 本日の議題2と3につきましては、委員の退室の関係から、議題順を入れ替え まして、議題1の後に、議題3「沈降新型インフルエンザワクチン「ビケン」」を先に御 審議いただけますと幸いです。また、議題4「生物学的製剤基準の一部改正」については、 議題2「沈降インフルエンザワクチン「北研」」、議題3「沈降新型インフルエンザワク チン「ビケン」」に関連するものでありますので、議題3の後に、議題2と併せて御審議 いただきたいと考えております。よろしくお願いします。 ○池田部会長 本日は、お手元の議事次第を御覧になって分かりますように、審議事項が 4議題、報告事項が2議題です。  それでは、議題1に入ります。議題1の審議は、先ほど申し上げましたように、早川委 員に進行をお願いします。 ○早川委員 それでは、御指名ですので、議事進行を務めさせていただきたいと思います。 議題1に入ります。総合機構から概要を御説明いただきたいと思います。 ○機構 議題1、資料番号1、アラノンジー静注用250mgの生物由来製品及び特定生物由 来製品の指定の要否、製造販売承認の可否等について、医薬品医療機器総合機構より説明 させていただきます。  アラノンジーの有効成分であるネララビンは、グアニンのアナログであり、代謝拮抗剤 に分類される抗悪性腫瘍剤です。本剤と同様の作用機序を有する抗悪性腫瘍剤として、シ トシンのアナログであるシタラビンが承認されています。  T細胞急性リンパ性白血病及びT細胞リンパ芽球性リンパ腫は、白血病及びリンパ腫の うち、T細胞の性質をもつ疾患の一つです。T細胞急性リンパ性白血病と、T細胞リンパ 芽球性リンパ腫は、本質的に同じ疾患であり、治療法も同じです。  本疾患の罹患者数は極めて少なく、推計では、国内の年間新規患者発症数は600人程度 とされております。  T細胞急性リンパ性白血病及びT細胞リンパ芽球性リンパ腫の患者には、治癒を目指し て多剤併用での強力な化学療法や同種造血幹細胞移植等が実施されますが、一度治療に反 応して完全寛解になった場合でもその多くが再発します。再発した患者又は初回治療への 反応が得られない難治性の患者においては、標準的な治療は確立されていない現状です。 本剤は、このような患者に使用した場合に、有効性を示す薬剤として申請されました。  本剤は希少疾病用医薬品に指定され、海外においては米国で2005年10月に承認されて います。  本品目の専門協議に御参加くださいました専門委員は、資料にございますとおり、7名 の委員です。  品質、毒性、薬理、ADMEについて大きな問題は認められませんでした。  主な臨床試験成績としては、海外で実施された二つの第II相試験が提出され、一方、国 内での臨床試験は現在実施中であります。  海外第II相試験は、小児患者を対象とした1試験と、成人患者を対象とした1試験です。 これらの臨床試験の結果、再発又は難治性のT細胞急性リンパ性白血病及びT細胞リンパ 芽球性リンパ腫患者に本剤を単剤で使用した場合に、一定の完全寛解率と寛解持続期間が 得られており、当該疾患が致死性の疾患で治療法が限られている状況であることを踏まえ ると、海外第II相試験の有効性の結果から、本薬の有効性が示されたと判断いたしました。  安全性については、神経毒性、低血圧、血液毒性等の副作用が生じており、これらの副 作用について十分に注意する必要があり、製造販売後においては専門医が慎重に使用する 必要があると判断しております。  また、機構は、現在実施中である国内臨床試験に登録された日本人患者での最新の情報 を確認した結果では、6例ではありますが、日本人に特有な有害事象の発現や、有害事象 が海外臨床試験と比較して重篤化する傾向はないことを確認しました。検討された症例数 は極めて限られているため、製造販売後には全例調査による重篤な有害事象の収集及び迅 速な情報提供が必要と判断し、申請者に指示を行っております。  以上の審査の結果、機構は、再発又は難治性のT細胞急性リンパ性白血病及びT細胞リ ンパ芽球性リンパ腫の適応について、本剤を承認することは可能と判断しました。  本剤は、希少疾病用医薬品に指定された新有効成分含有医薬品であり、再審査期間を 10年とすることが適当であり、原薬及び製剤は劇薬に該当すると判断しました。また、 生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しました。  なお、諮問書に記載された販売名は、アラノンジーのジーはローマ字で表記されており ますが、片仮名での表記になる予定です。  御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。 ○早川委員 ありがとうございました。ただ今アラノンジー静注用250mgの製造販売承認 の可否等についての総合機構の審査について説明をいただきました。先生方から御質問、 御意見をお願いいたしたいと思います。いかがでしょうか。 ○庵原委員 二点確認したいのですが、一点は、成人と小児の用法・用量が大分違ってい ると思うのですが、これはどこから出てきたかということです。もう一点は、何歳くらい から成人の投与量で投与すればいいかという点です。 ○機構 二点目の方からお答えさせていただきますが、審査報告書の57ページ以降に、 小児の対象年齢と用法・用量についての議論の内容を書いています。小児の用量が必要と なる年齢層と成人の用法・用量が適用される年齢層については議論を行っていますが、今 回の用法・用量は海外の一つずつの臨床試験の成績に基づいて設定したというところがあ ります。成人を対象とした試験と小児を対象とした試験は15歳〜21歳の部分が重複して しまっている状況ですが、この点についていずれの用量がいいかといった検討はありませ ん。機構の結論としては、この部分については両試験で重複して検討されているところで ありますが、先ほど申しましたT細胞急性リンパ性白血病やT細胞リンパ芽球性リンパ腫 の治療においては、低い用量を選択する理由はなく、可能な限りの高用量を投与する方が 適切であろうということで、最終的にこの年齢層に対しては成人の用法・用量を適用する 選択肢しかないという判断をしています。  一点目ですが、設定した理由は、海外の成人を対象とした1試験と小児を対象とした1 試験があって、小児を対象とした試験の方で設定しているのですが、先生の御質問はその 試験の用法・用量がどうして設定されたかというところですよね。 ○庵原委員 薬の用量というのは成人をまず決めて、成人の量を対照にして小児の量を決 めていくというのが一般的な流れかと思いますが、これからいきますと明らかに量が違い ますし、投与方法も片方は1、3、5の隔日投与で片方は連日投与とレジメも違います。 このような違いがどこから出てきたかということ。それから、量が年齢によって明らかに 違うというのでしたら、医療上の投与ミスが起こらないかという懸念もあります。このレ ジメの違いがどこから出てきたか教えてください。 ○機構 急性白血病の治療をしているときに小児と成人とで実際に治療のレジメンが違 ってくることはよくありますので、そこは推測なのですが、多分その点はそれほど混乱の ある領域ではないと思います。審査報告書の56ページの(1)小児の用法・用量について というところで、用法・用量の設定根拠が説明してあります。このような検討をした結果、 小児の試験ではこのように設定したという事実しかないといったところですが、よろしい でしょうか。 ○早川委員 よろしいですか。ほかにどなたかありますか。 ○庵原委員 もう一点だけ確認ですが、ヒト成人型のT細胞性白血病、いわゆるATLは 対象疾患に含まれるわけですか。それとも別になるわけですか。 ○機構 ATLは含まれないと判断しています。 ○早川委員 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。どうもありがとうございました。 それでは、議決に入りたいと思います。なお、池田委員、竹内委員におかれましては、利 益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことにいたします。 それでは、本剤の承認を可とし、薬事分科会に報告するということでいかがでしょうか。 よろしいですか。御賛同を得られたということで、薬事分科会に報告することにさせてい ただきたいと思います。どうもありがとうございました。 ○池田部会長 早川委員、どうもありがとうございました。  それでは、議題3に入ります。機構から概要を説明してください。 ○機構 議題3、資料番号3、沈降新型インフルエンザワクチン「ビケン」の製造販売承 認の可否等について、医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。  本剤は、ホルマリンで不活化したインフルエンザウイルス全粒子を有効成分とするワク チンでありまして、免疫増強剤アジュバントとして、水酸化アルミニウムゲルを含有する 懸濁性注射剤です。  新型インフルエンザとは、厚生労働省による「新型インフルエンザ対策報告書」におい て、「過去数十年間にヒトが経験したことがないHA又はNA亜型のウイルスがヒトの間 で伝播して、インフルエンザの流行を起こしたとき、これを新型インフルエンザと呼ぶ。」 と定義されております。すなわち、毎年、流行を繰り返していますH1N1型及びH3N 2型以外の亜型のA型インフルエンザウイルスが新型インフルエンザとなる可能性があ ります。  中でも、平成9年に香港でヒトへの感染が確認されたH5N1型インフルエンザは、そ の後、世界各地で感染事例が相次いでいることに加え、現時点での致死率も50%以上と いう、その症状の重篤性から、現在最も警戒されており、各国の協力の下、世界保健機構 WHOを中心に、国際的な取組が進められています。  これに対し、国内においても、平成13年〜14年度に掛けまして厚生労働科学研究にお いて、国立感染症研究所の田代らを中心にワクチンの開発の検討が進められました。しか しながら、H5N1型インフルエンザウイルスから製造したHAワクチン及び全粒子ワク チンの免疫原性は、全粒子ワクチンの方が高かったものの実用に頼るほどのものではな く、平成16年8月に厚生労働科学審議会感染症部会の小委員会により「新型インフルエ ンザ対策報告書」が作成されていますが、その中でアジュバントを添加する必要があるの ではないか、また、モックアップワクチンとしてモデルウイルスを用いて開発し承認を得 るべきではないかといった、新型インフルエンザワクチン開発の方向性が示されていま す。  本剤は、この「新型インフルエンザ対策報告書」を受けて開発が進められたものであり ます。  本剤の専門協議に御参加くださいました専門委員の先生方は、資料8にお示ししている 8名の委員でございます。  次に、審査の概略について御説明させていただきます。  品質、薬理、毒性については、本剤の臨床使用を困難とする問題は認められませんでし た。  有効性に関しましては、70.9%の被験者において、本剤接種により4倍以上の中和抗体 価の上昇が得られていることから、本剤の免疫原性は十分に示されていると考えておりま す。現時点で、本剤の新型インフルエンザに対する感染あるいは発症防御、重症化阻止、 これらの臨床上の有効性を、臨床試験において確認することはできませんが、本剤接種に よって、免疫学的にH5N1インフルエンザに対して全くナイーブではない状態になれ ば、重症化を防ぎ、致死率を低下させることができると判断しています。  安全性につきましては、局所反応発現頻度が高いものの、重篤な副反応は発現しておら ず、本剤の承認を困難とする問題は見られていないと判断しています。  次に、製造販売承認後の検討事項として、現在までのH5N1型インフルエンザ感染例 については小児及び青年層に感染者数が多く集中していまして、かつ10歳代の致死率が 最も高いことがWHOのホームページにも公開されています。したがいまして、本剤の臨 床開発は20歳以上から65歳までの年齢層で行われましたが、小児における免疫原性及び 安全性を製造販売承認後には可及的速やかに検討することとしております。また、本剤は、 モックアップワクチンとしてNIBRG-14株を用いて免疫原性及び安全性を検討しました が、今後、他の株で製造した際の免疫原性及び安全性を検討すること、製造に用いたウイ ルス株とは異なる株に対する中和抗体価(すなわち、交叉中和能)を検討すること、また、 低用量接種の有用性等を検討することが必要と判断しておりますが、具体的なこれらの検 討の実施方法については、新型インフルエンザワクチンに関する政策を踏まえて、厚生労 働省の関連部署あるいは国立感染症研究所等の関連機関と、今後、協議する必要があるの ではないかと考えています。  以上のとおり、機構での審査の結果、本剤はH5N1型新型インフルエンザウイルスに よる感染症の予防に対する有用性が期待できると判断し、承認して差し支えないと判断い たしました。また、本剤は新有効成分含有医薬品かつ希少疾病用医薬品にも指定されてい ることから、再審査期間は10年、劇薬及び生物由来製品に該当すると判断いたしました。  なお、本日準備させていただきました製剤サンプルにつきまして、バイアルのキャップ が薄い緑色となっております。こちらは試作品のため、実際に製造されるバイアルのキャ ップの色は、外箱に示しておりますラインと同じ水色になるということですので、ここで 御説明申し上げました。  以上でございます。御審議のほど、よろしくお願いします。 ○池田部会長 ありがとうございました。新型インフルエンザワクチンということで、H 5N1型のインフルエンザという非常に致命的なものですので、危機管理的な意味からも これを開発、製造するということで、今回この部会で御審議いただくことになっています。  参考人の板村先生から補足等がございましたら御説明願えますか。 ○板村参考人 先ほどの説明に重複するようなことがありますので、なるべく簡単に説明 させていただきます。御存じのように、新型インフルエンザワクチンでありますが、今、 実際に新型インフルエンザが流行しているわけではなく、1997年にH5N1型のインフ ルエンザウイルスが香港で初めて流行しました。その後、2004年に大きな流行が始まっ て、今に至るまで世界各地で高病原性のトリのインフルエンザが流行している。その中で、 トリからヒトへの感染がいまだに続いているという状況で、このウイルスが新型インフル エンザとして流行することが非常に危惧されている。そのための新型インフルエンザ対策 ということで非常に重要なわけですが、その新型インフルエンザ対策の中でツールとして 最も重要なものがワクチンということになりまして、当然使えるワクチンが必要であった わけです。しかし、現在使われているインフルエンザワクチンは、インフルエンザHAワ クチンと呼ばれていますが、これはスプリットワクチンで、今まで全く経験したことのな いようなウイルスが流行った場合には、今までの研究の限りでは非常に効果が期待できな いということで、この開発が行われた経緯があります。  今回の新型インフルエンザワクチンに関して、専門協議の中で、効果をどのように判定 するかということが大きな問題となりました。要するに、実際に流行していないわけです から、どの程度感染防御に効くのかを実際に臨床試験で確かめようがない。一つの指標と して抗体応答を見ているわけですが、抗体応答をどのレベルまで上げれば防御機能を果た すのかに関しても、明確な基準が必ずしもあるわけではありません。そういう意味でいろ いろな議論がありましたが、少なくともある一定の抗体価の上昇が見られ、免疫付与能と してはある一定の力を持っているということで、この新型インフルエンザに関して重症化 を防ぐ又は致死率を低下させるといった効果が期待でき、ワクチンとしては有用であろう という結論になったわけです。  もちろん、副反応に関しては、インフルエンザHAワクチンと比べれば、通常のものよ りは高いわけですが、これもそのときの新型インフルエンザのリスクとベネフィットの問 題であろう。仮に今想定しているH5N1型が流行りますと、現時点では致死率が 50%以上という極めて高いリスクなわけですが、このような状況に関して言えばベネフィ ットが上回るのではないかといったことがあります。必ずしもこれはどのような状況で流 行するかということで判断が変わってくるという議論もありましたが、非常に致死率の高 い新型インフルエンザということを考えれば、この中でも有用性が認められるであろうと いう議論があったと理解しています。簡単ですが、以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見を伺いたいと 思います。国民からも非常に注目をされているワクチンだという理解の下に、専門協議で も種々の議論が闘わされたと聞いていますが、是非この部会の委員の先生方もその点から 御議論いただきたいと思います。いかがでしょうか。 ○前崎委員 私も埼玉県で一類感染症を持っていますので、一刻も早くこのワクチンが承 認されて使えるようにと思っています。先ほどの有効性の判断のところで、恐らく抗体の 陽転率ということで判断されていると思いますが、残りの二つの指標については審査報告 書を見ると必ずしも満足した結果が出ていないということで、有効性の判断を本当にその 段階でしていいのかどうか。それから、トリのHI抗体価についての測定の問題点も少し 書いていますので、その辺は、例えばELISA法など、ほかの方法で測定したということは ないのでしょうか。 ○機構 まず、抗体価に対する有効性の評価ですが、EMEAの方で、新型インフルエン ザワクチンに関する有効性の評価の指標として、通常のHAワクチンに対する有効性の評 価を準用したガイドラインが出ています。審査報告書の28ページにお示ししています。 通年性のインフルエンザワクチンと同様に、抗体陽転率は40%を超える、抗体変化率は 2.5倍以上、抗体保有率は70%を超えるといった3項目が示されていまして、これを新型 インフルエンザワクチンについても超えることが望ましいとされています。ただし、こち らのガイドラインにおいても、この3項目を超えることが望ましいとは言いながら、この 基準によって新型インフルエンザの有効性を評価することが必ずしも適切かどうかにつ いては、まだ議論の余地があるという記載になっています。  そもそも、通年のインフルエンザHAワクチンの評価基準については、過去の臨床試験、 臨床研究から、いわゆるインフルエンザ様症状の発現を主要評価項目にして検討した結 果、HI抗体価が40以上であればインフルエンザの発症を50%低下させることができる といったところから、HI抗体価40というのがセロプロテクションレベルと一つ基準が 定められまして、その40というものをどれくらい超えるかという形で通年型インフルエ ンザHAワクチンの有効性の評価指標となっています。  しかしながら、通年型のHAワクチンというものは基礎的な免疫を持っているポピュレ ーションに対してワクチンを接種したときの有効性を評価する指標で、しかも、評価した ものというのはインフルエンザの発症率です。片やこの新型インフルエンザについては、 基本的に全くナイーブな状態のポピュレーションに対してワクチンを接種したときにど のような有効性が得られるか。これについては、確かに、全くナイーブな状態に対してワ クチンを接種したからといって、発症率の大幅な低下が期待できるというのは難しいと考 えています。ただし、季節性のインフルエンザが毎年流行しながらも死亡率がそれほど高 くないのは、基礎免疫を持っているからこそ、ある一定のレベルの体力が落ちている方に おいて死亡したりという状況になっていると理解していまして、本剤を接種することによ って約7、8割以上の方には何らかの免疫応答がしっかり起きていることが確認されてい ますので、それを考えますと、何らかの免疫を付与することで重症化を低減し、死亡率を 低減させることができるのではないかと判断しているところです。 ○前崎委員 薬の内容とまた話は別ですが、実際にパンデミックが起こるとかなり供給体 制に問題が出てくると思います。その辺の供給体制の確保というのは現実的にはどうなの でしょうか。 ○審査管理課長 既に御承知だろうと思いますが、厚生労働省において新型インフルエン ザの対策、行動計画というものを整備し、国家備蓄も既に始めています。もちろん、備蓄 だけではなくて、最終的にワクチンを使用するためにはそれを製造し、流通させ、また各 現場の先生方の御協力を得るという手続が必要になってまいりますが、そういうことも含 めて、厚生労働省関係部局一丸となって対策を今練っているところです。よろしくお願い します。 ○池田部会長 よろしいですか。実際に流行があったとき、あるいはこれを使用するとい うときには、厚生労働省が国を挙げて対策を立てるという理解でよろしいですね。そのほ かにいかがですか。 ○土屋委員 三点ほどあります。一つは、以前、微研が工程表のことでいろいろと問題が ありましたので、その点で今回は念のためにいろいろと見ていましたら、12、13ページ ですが、プレドニゾロンなどはあれですが、セフメタゾールやピペラシリンなど、WHO で使用しないよう推奨されているものが使われているので使わないようにというこの機 構のチェックというのは、普段そういうところは我々はチェックのしようのないという か、されないところなので、今後とも。こういうことを見ると、割と、プレドニゾロンの ことを聞いたらとか、そういうものの濃度を聞いたら、恒常的に添加しているのだといっ て、基の知識は持っていたのかということが心配になりますから、我々は余り普段はチェ ックしないところですが、製造工程での機構の今回の指摘などは極めて妥当だと思いま す。結果の正しさだけではなくて、プロセスの正しさというものも求められますので、是 非今後ともしっかりお願いしたいということが一つです。  もう一つは、小児への投与です。39ページにありますが、小児等については使用して いないので安全性が確立していないということは分かりますが、実際にこれが起きたとき には、タミフルその他ではなく、最初にワクチンをやるのが原則なのだよということが書 いてある以上、小児への投与は当然あり得ると思っています。その場合に、機構の方で、 適用対象から除外すべきではないという考えをお持ちで、十分な情報がないことを明確に 示すことが妥当だと言って、その結果、添付文書(案)が「小児への接種に関する安全性は 確立していない。(使用経験がない。)」というのは、いつものパターンの小児への使用を、 これがそういうことまでを言っていると読めというのか。むしろこの際は、妊婦のところ にあるように、「小児への接種に関しては使用経験がないので安全性は確立していない が、予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること」など、 要するにこれは使うことがあるのだということを書くことが、良いことかどうかという議 論はあると思いますが、普通と一緒にしておいていいのかなというのが気になるものです から、そこについて御意見を伺いたいのです。  それから、これは「北研」との比較ですが、添付文書の書き方で、6.の妊婦のところ は、「北研」は使用経験なしと書いてありますが、こちらには書いていない。また、小児 ということが、「北研」は低体重児など、もう少し詳しく書いてあるので、その辺の両者 のバランス、表現の統一をきちんと図っておいた方がいいのかなという気がしました。以 上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。二つほど御指摘がありましたが、機構の方から いかがでしょうか。 ○機構 先に、添付文書の両者の記載の話から回答させていただきます。全く同種同効薬 となりますので、確かに添付文書は実際には揃える必要があると考えています。ただし、 審査の過程においてはお互いの情報をそのまま公開することはできませんので、必要な情 報については反映させるように添付文書を作成してまいりました。通常、ワクチンの添付 文書は、細菌製剤協会の方で実際にすり合わせを行って記載を揃えている背景があります ので、先生方の御意見も踏まえて、今後適切に製造販売承認後にかけて整備していく必要 があるかと考えています。  小児に対する記載については、確かに先生のおっしゃるとおり非常に難しい表現になっ ていますが、審査報告書の49ページにお示ししていますように、基本的には小児を対象 とした試験について可及的速やかに実施することになっています。これもありまして、小 児における臨床試験を実施して安全性、有効性を早く確認するという意味も含めて、今の ところは情報がないという形の記載になっています。 ○審査管理課長 小児の取扱いは、委員の御指摘のとおり、非常に難しいところだろうと 思います。また、これを実際に投与する、投与しない、どういう順番で投与していくとい うことについては、先ほど申し上げました新型インフルエンザの対策本部の中で、流行が 予測されるH5N1の性質、特徴などを踏まえて議論されていくものだろうと思います。 したがいまして、現段階で例えば有益性と安全性のバランスと書いたところで、その有益 性が、H5N1のヒトでの流行と申しますか、ヒト-ヒト感染の強さであるとか年齢的な ものであるとかがなかなか分からない状況、あるいはデータがない、今は具体例がない状 況ですから、先ほど申し上げましたとおり、小児への投与も含めて、省内に設けられる予 定の対策本部あるいはその専門委員会で御議論を賜るということで、現段階は御了解いた だくしかないのかなと考えている次第です。 ○池田部会長 土屋委員、それでよろしいですか。そのほかにいかがですか。 ○溝口委員 小児の問題が出てきたところで一つお伺いしたいのですが、御存じのように 卵白及び卵黄に対する抗体を持っている小児が多いので、いろいろ問題が出てくる可能性 があるかと思います。従来のインフルエンザに対するワクチンに関しましては、親御さん から卵のアレルギーを持っているお子さんの接種をどうしたらいいかという相談をよく 受けたのですが、可能性としてはアレルギーを起こすことがあるとお話しますと、受けさ せないと言う親御さんも多かったのです。今度は致死率の高い新型インフルエンザとなり ますと、これが流行するとそのようなことは言っていられなくて、たくさんの方が恐らく 相談に見えると思います。  それで、従来のインフルエンザワクチンで結構ですので、卵アレルギーを持っている人 がどのくらいアナフィラキシーを起こしたか。アレルギーを起こしたかというのは無理か もしれませんが、アナフィラキシーショックを起こした人のうちどのくらい卵アレルギ ー、つまり抗卵白あるいは卵黄特異IgE抗体を持っていたかというデータが、日本では なくとも、外国でもしあったら、それをお教えいただくと、今後、臨床で相談を受けたと きに、ただおそれがあると言うより、このくらいのデータがあると言って、リスクとベネ フィットを、私どもも判断しますが、親御さんにも判断していただいた方が、問題が起こ りにくいように思いますが、いかがでしょうか。 ○池田部会長 それに対して、いかがですか。 ○機構 基本的には、小児における有効性、安全性を確認した後に、小児に対する接種が 始まると考えております。その際に、ワクチン接種後の副反応につきましては、現在、「新 型インフルエンザワクチン接種に関するガイドライン」というものが出されておりまし て、その中で、接種終了後に少なくとも30分間、アナフィラキシーショック等の重篤な 副反応について観察した後に帰宅していただくと。接種に関する具体的な方法が検討され ておりますので、そちらにおいて情報を提供した上で、同意を得られた対象の方に接種を していく。実際にはそういう形になると考えております。  また、卵アレルギーに関するものですが、WHOのワクチンのガイドライン等でも、卵 に含まれるオブアルブミン含量が、原材料として使用した卵から混入する蛋白質の精製の 指標として扱われている部分があります。これにつきましては、他国のオブアルブミン含 量はこれ以下にしましょうという値が示されておりまして、それよりはるかに低いところ まで精製されておりますので、現実的に問題となる可能性がどれくらいかというのは、確 かに具体的な数値として今のところデータがございませんので、慎重にやらざるを得ない と思うのですが、そこは情報提供していくしか、現時点では難しいと思います。 ○溝口委員 分かりました。従来のインフルエンザワクチンに関してもデータはないわけ ですね。卵でウイルスを培養するという過程は大体同じだと思うのですが。 ○池田部会長 従来のインフルエンザワクチンの報告で、アナフィラキシーを起こした患 者さんの中で明らかに卵アレルギーがある人はどのくらいいるのかというデータは、余り ないのですか。 ○機構 これは定期の予防接種の実施要領とも絡みますが、既存のHAワクチンの接種の 際には接種をしないという形になっておりまして、報告等もほとんど上がっていない状態 ですので、やはり情報は今のところ得られていないと言わざるを得ないということです。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。そのほかにいかがですか。 ○前崎委員 これはあり得ることかどうか分かりませんが、例えば、通年性のインフルエ ンザワクチンの接種をした患者さんに、この新型インフルエンザワクチンを接種するとい うことが、もしかしたら状況として出てくる可能性もあると思うのです。添付文書の中に は、不活化ワクチンの接種を受けた者は、6日間以上間隔を置けば、この新型インフルエ ンザワクチンも打っていいというように書いてございますが、これは、通年性のインフル エンザワクチンを打っていらっしゃる患者さんでも、同じように適用してよろしいのでし ょうか。 ○機構 添付文書の記載のところでございますね。これにつきましては、定期の予防接種 の実施要領に示されております接種間隔を、そのまま阪大微研の方で記載しているもので ございます。これについては、サイエンティフィックに考えますと、確かに他のワクチン を接種した後に一定間隔を空けた方がいいということはあるのですが、定期の予防接種の 実施要領では、こちらから申し上げるのは難しいのですが、安全性情報を判断することが 難しくなるので、そのために基本的に空けるというスタンスかと思います。ただ、今回の 新型インフルエンザワクチンにつきましては、どのような政策上で接種していくかは決ま っておりませんので、この記載につきましては、現時点では削除していく方向で検討を進 めております。 ○池田部会長 そのほかにいかがですか。 ○飯沼委員 通常のワクチンは2回打つのに6日置く、そのように書いてあるのですか。 2回打つ場合は何日間置くのですか。 ○生物系審査部長 このもので2回打つ場合は3週間です。 ○飯沼委員 古い方でも、インターフェアが起こるかどうかはきちんと調べてあるのです よね。古いものを打って新型を打つときは、インターフェアがあるかどうかなどのチェッ クはしてあるのですか。 ○機構 個々のワクチンについて、接種間隔によってインターフェアが起こるか起こらな いかというのは、基本的には情報が取られておりませんので、実際に干渉が起こるかどう かというのは、現時点ではデータがございません。ただし、生ワクチンですと、接種して、 体の中で一定期間ウイルスが増えますので、その間にいろいろな免疫反応が起こる、変化 している状況ですので、接種しないことが望ましいというのは、一般に言われていること でございます。不活化ワクチンにつきましては、同時(日)に接種、あるいは短い間隔を空 けて接種した際に、何かしら干渉が起こるという、大きな問題となるような報告はござい ません。ただ、ワクチン接種による副反応あるいは副作用といったものがそのワクチンに よるものか、それ以外の原因によるものかを判定するためにも、接種間隔を空けていると いう事情があるかと思います。 ○池田部会長 よろしいですか。そのほかにいかがですか。 ○溝口委員 新型インフルエンザワクチンは非常に大切ですので、それに比べると問題は 少ないかもしれませんが、添加物としてチメロサール(水銀化合物)が含まれています。こ れはほかのものには替えられないでしょうか。小さいときの予防接種でチメロサールに対 する抗体を生じた人が結構いまして、大人になってからいろいろな薬剤と交叉反応を起こ して、薬疹を起こすことがあります。ずっとチメロサールがこういうワクチンには使われ るのが普通なのでしょうか。 ○池田部会長 機構の方からどうぞ。 ○機構 本剤につきましては、集団接種の際に、基本的に10mLのバイアルを用いて接種 を行うことが想定されております。通常、現在日本で流通しているワクチンにつきまして は、基本的に単回包装で、使い切りですので、チメロサールという保存剤はすべて削除す る方向で進められております。ただし、本剤につきましては、10mL入っておりまして、 1バイアルを20回接種分使うということで、保存剤を入れざるを得ないだろうというこ とで、今まで実績が最もあるチメロサールを保存剤として低用量使用しております。  チメロサール自体の安全性につきましては、一時期非常に問題になりまして、自閉症に 関係あるのではないか、あるいはギラン・バレー症候群など、いろいろ懸念がございまし たが、現在のところFDAの方でもそれらとの関連性は否定されていますので、本剤につ きまして特に安全性上の懸念があるというようには考えておりません。 ○溝口委員 先ほど申しました交叉反応を生じる薬はNSAIDです。NSAIDの方が副作用が 強くて最近余り使われなくなってしまったのですが、オキシカム系のピロキシカムという ものを内服しますと、小さいときの予防注射に混入していたチメロサールに対する抗体が 残っていて、チメロサールとピロキシカムの交叉感作で、結構ひどい薬疹が出てきたので す。外国でもやはりずっと予防注射にチメロサールが使われているのでしょうか。他のも のに替えることができないかどうかということなのですが。 ○機構 先生のおっしゃることにつきましては、更に検討を進めまして、必要に応じて添 付文書等で情報は提供させていただきたいと思います。また、海外で現在承認されており ます新型インフルエンザワクチンにつきましては、今回部会で御審議いただいている「ビ ケン」のものに比べて、約10倍以上チメロサールが入っております。このような緊急時 に大量接種するようなワクチンについては、やはりチメロサールを入れるしかないという ところはあるかと思います。 ○池田部会長 よろしいですか。これは今までもずっとワクチンの製造のときに使われて いるものであるという理解ですね。そのほかに委員の先生方から御意見はございますか。 ○庵原委員 この申請はH5N1に限っているのですが、新型はH5N1とは限らず、H 2やH7やH9が出る危険性もあります。そのときには、この製法でその亜型のワクチン を作れるという解釈はできるのですか。それとも、やはりこれはH5N1だけでしか駄目 ですよという今回の議論なのでしょうか。この点はいかがですか。 ○審査管理課長 新型インフルエンザの問題点は委員の御指摘のとおりでございます。こ の点については内部的にも随分議論をしましたが、現実問題として調べられているものが H5N1。H5N1でもまたいろいろな株があるのだろうと思いますが、その範囲でしか 調べていなくて、まだ見たこともないものを含めて承認をするというのは、実証された範 囲で承認をしていくという大原則から見て難しいのではなかろうかと思います。また、諸 外国でも、H5N1という形で欧米で承認が下りたということでございますから、そうい う意味で申しますと、交叉反応というのはほんの少ししか見ていないわけでございます が、H5N1の範囲でどうだろうかというように考えている次第でございます。 ○池田部会長 よろしいですか。そのほかにいかがですか。 ○土屋委員 今の件に続くのですが、名称が新型と付けた方が分かりやすいだろうという ことで、当面は新型という話なのかもしれません。しかし、それこそ今の話ではないです が、もし次が出てくると、それは最新型などとなってしまうようなことがないとも限らな い。新型というのは、意味としては一番通りやすい名前だとは思うのですが、薬として未 来永劫使える名前なのかといったときに、少し疑問があります。「新型」を付けることに したという、その意味は分かりますし、重要性も十分分かるのですが、もう一工夫いるの かなとか、ほかで付記しておかないといけないのかなと思いました。 ○審査管理課長 新型というのがいつまでも新型ではないだろうというのは、おっしゃる とおりだろうと思います。ただ、感染症法の中でも新型という形でこのものについては議 論が進んで、ある面で申しますと、マスコミ等も通じて世の中にも周知している状況でご ざいますから、今の段階であえてこれと違うような名前を付けるというのはいかがかと思 っているわけでございます。将来的に最新型が出てきたときにどうするかというのは、ま た御相談させていただければと思っております。 ○池田部会長 よろしくお願いします。そのほかにいかがですか。ございませんでしょう か。板村先生、今までの議論を踏まえて、何か追加することはございますか。 ○板村参考人 ございません。 ○池田部会長 委員の先生方、よろしいでしょうか。もしございませんでしたら、議決に 入りたいと思います。この新型インフルエンザワクチン「ビケン」の製造販売承認につい て、お認めいただけますでしょうか。よろしいですか。それでは、この承認を可とさせて いただきまして、薬事分科会に報告することにさせていただきたいと思います。ありがと うございました。  それでは、議題2に戻りたいと思います。冒頭に事務局から説明がありましたように、 議題4「生物学的製剤基準の一部改正について」は、本議題に関係する議題でありますの で、併せて御審議をお願いしたいと思います。なお、竹内委員におかれましては、本議題 の審議の間、別室で御待機いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ── 竹内委員退室 ── ○池田部会長 それでは、議題2、議題4について、機構から概要を説明してください。 ○機構 議題2、資料番号2、沈降新型インフルエンザワクチン「北研」の製造販売承認 の可否について、医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。  基本的に、開発の経緯、審査の概略につきましては、先ほど御審議いただきました議題 3の沈降新型インフルエンザワクチン「ビケン」と同様でございますので、そこは割愛さ せていただきます。  有効性に関しましては、本品目は80.5%の被験者において、本剤接種により中和抗体 価の有意な上昇が得られていることから、本剤の免疫原性は十分に示されていると判断し ております。また、安全性についても、局所反応等の発現頻度は高いものの、重篤な副反 応は発現しておりませんで、本剤の承認を困難とする問題は見られていないと判断してお ります。  以上の機構での審査の結果、本剤はH5N1型新型インフルエンザウイルスによる感染 症の予防に対する有用性が期待できると判断し、承認して差し支えないと判断いたしまし た。本剤は新有効成分が含有医薬品かつ希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は 10年、劇薬及び生物由来製品に該当すると判断いたしております。  以上、御審議のほど、よろしくお願いいたします。  また、本剤及び議題3の沈降新型インフルエンザワクチン「ビケン」の承認に伴い、生 物学的製剤基準の医薬品各条に「沈降新型インフルエンザワクチン(H5N1株)」を追加 する必要がございますので、資料4に基準案をお示ししております。審議事項の議題4で ございますが、本剤の承認の可否と併せて御議論いただければ幸いと存じます。よろしく お願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。それでは、この件に関しましても、参考人の板 村先生から補足のほど、お願いいたします。 ○板村参考人 基本的には先ほどの「ビケン」のものとほぼ一緒ですので、開発の経緯な どに関しては省かせていただきます。「北研」のものについて、少し議論になった点を述 べさせていただきます。原液の作製段階で若干各ロット間の品質にばらつきがあるという 懸念が見られましたが、その後、機構とのやり取りの中で改善が見られて、市販後も調べ ていくということをいただいております。そのような意味で少し見ていく必要があろうか と思いますが、それ以外のことに関しましてはほぼ「ビケン」の製剤と同様の効果が期待 されるということであります。以上です。 ○池田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問をお願いしたいと思い ます。新型インフルエンザワクチンということで、先ほど「ビケン」のところで議論をい ただきましたが、「北研」ということで、比較あるいはこのものに対して何か御質問がご ざいましたら、是非、御議論いただきたいと思います。いかがでしょうか。 ○山口委員 先ほどから議論が出ていますので、この製剤についても私はよろしいかと思 います。ただ、インフルエンザワクチンに関しては、ずっと以前の全粒子ワクチンから、 やはり幾つかの問題があったのだろうと思います。例えば副反応の問題があって、抗原を ずっと精製していって、HAワクチンになって、非常に安全なものになった。そのことは よく理解はできますが、若干その効果という点で問題があって、今回また新型になって、 先祖返りと言いますか、全粒子にまた戻した。その経過はよく理解はできるのですが、更 にそこに今度はアジュバントを加えたという問題もあるのです。したがって、全体的なこ の安全性については、昔の問題がぶり返さないとも限らないということを念頭に置かない といけない。パンデミックだから非常に緊急、あるいは重篤だからすべてが許されるとい う形で、安全性についてはチェックをおろそかにすることがあってはならないだろうと思 います。私自身が感染研の中で安全性の試験の担当もしていますので、その点については 一言申し上げたいと思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。機構から、今の点で何か追加することはござい ますか。 ○機構 山口先生のおっしゃるとおり、安全性については慎重に確認していかないといけ ないと考えております。また、新型インフルエンザワクチン接種のガイドラインの中では、 接種前に副反応、得られる有効性、期待される効果などについて情報提供した上で、定期 の予防接種に準じた形で安全性情報を慎重に収集していくということが、現時点でも計画 されております。ですので、そちらの情報とリンクした形で、言わば国立感染症研究所の 安全性を見る所とリンクして、更に品質、安全性が良いワクチンに改良していければいい と考えております。 ○池田部会長 ありがとうございます。そのほかにいかがですか。 ○上原委員 今は安全性についての議論ですので、副反応についてお伺いします。二つの 製品を比較しますと、副反応の発現率がルートによって大分違っているということがあっ て、まるで正反対です。数字的に言うと、「北研」の筋肉注射が一番発現率が低い。果た してそれを真に受けていいのかどうか。特にこれが副反応が少ないので推奨する投与ルー トなのか、製品なのかについての比較、その辺の判断をどのようにしたらいいのか、もし 機構の方でサジェスチョンがあれば、お願いします。 ○池田部会長 特にこれは、今御指摘がありましたように、筋肉内若しくは皮下と書いて あって、実際にはどちらを取った方がいいのかという話が必ずくると思うのですが、その 辺も含めていかがですか。 ○機構 筋肉内接種及び皮下接種につきましては、まず一般的な話でいきますと、ワクチ ンを接種した場合に、皮下接種の方が体表面に近いということで、腫張あるいは発赤、硬 結といったものが筋注に比べて高頻度に観察されるということがあります。逆に筋注にし ますと、皮下注に比べて痛みが強いといった一般的な情報があります。  本剤の開発については、第I相の段階で、各社とも皮下注、筋注の両方を比較して臨床 試験を行いました。その際に、今回部会に上程した2品目ですが、それ以外の社も含めて、 副反応の強さについて、どちらが強い、弱いというのは判断しにくい状況でした。また、 免疫原性についても、こちらのものは皮下注の方が抗体価の上がりがよい、しかしながら こちらの会社のものは筋注の方がよいということで、そのような判断をしにくい状況でし た。大きな差ではありませんが、どちらかの方が傾向がよいといった状況で、それを踏ま え、各社とも接種経路を決定し、II、III相試験で確認したということです。  現時点では、確かに筋注の方が抗体価の上昇が若干良い傾向はあるかもしれませんが、 はっきりしたことを申せる情報もまだ得られていません。また、日本では基本的にワクチ ンは皮下接種されています。こうした状況を考えますと、現時点でどちらの接種が良いと 限定するのも非常に難しい状況で、そうした臨床試験の結果も添付文書に記載して情報提 供する中で、どちらの接種も可能とする形で対応させています。  緊急時に集団接種する際には、基本的に皮下接種、筋注、どちらも可能となるように、 両方の接種経路を設定しています。また、今後の検討でよりどちらの接種が好ましいとい うことがありましたら、そちらの方の接種に、集団接種する際にまた情報提供が加えられ ていくかと思います。 ○池田部会長 上原委員、それでよろしいですか。 ○上原委員 現時点では、どの製品のどのルートの投与が一番副反応が低いということは 断言できないと、そういう理解でよろしいですか。それで、どちらを使うか、どういうル ートで使うかというのは、医師の判断に任せるということですか。 ○機構 そのように考えております。 ○上原委員 基本的にはどちらでもいい、どちらも選べるということですね。 ○池田部会長 よろしいですか。これは国で備蓄するということですので、同量を備蓄さ れると考えていてよろしいのですか。 ○審査管理課長 今のところ、そのような形で進んでおります。 ○池田部会長 そのほかにいかがでしょうか。特に問題として指摘するものはございませ んか。あるいは生物学的製剤基準の一部改正のことも踏まえて何か御質問はございます か。よろしいですか。ありがとうございました。それでは、議決に入りたいと思います。 この新型インフルエンザワクチン「北研」の製造販売承認をお認めいただけますでしょう か。よろしいですか。ありがとうございました。また、基準の一部改正に関しても特に御 異議はございませんか。よろしいですか。ありがとうございました。それでは、いずれも 承認をしていただいたということで、この議題についても薬事分科会に報告ということで お願いをしたいと思います。それから、生物学的製剤基準の一部改正についても薬事分科 会に報告をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。 ── 竹内委員入室 ── ○池田部会長 続きまして、報告事項に移りたいと思います。報告事項について、機構か ら順次説明をお願いできますか。 ○機構 報告事項の議題1「医薬品クラバモックス小児用ドライシロップの製造販売承認 事項一部変更承認について」まず報告いたします。資料5を御覧ください。本剤は、β- ラクタマーゼ阻害剤のクラブラン酸カリウムとペニシリン系抗菌薬のアモキシシリン水 和物を1:14の比率で配合した抗菌薬であり、現在は、中耳炎の効能・効果で承認されて いるものでございます。今般、グラクソ・スミスクライン株式会社から、配合比1:2で あるオーグメンチン小児用顆粒のすべての効能・効果を本剤に追加する、すなわち、本剤 が引き継ぐことを目的として、製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものでご ざいます。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと 判断いたしました。  続きまして、議題2「医薬品バルトレックス錠500、バルトレックス顆粒50%の製造販 売承認事項一部変更承認について」報告いたします。資料6を御覧ください。本剤は、グ ラクソ・スミスクライン株式会社より開発された抗ウイルス薬でございます。先般、バル トレックス顆粒50%については、小児の水痘を対象とした開発がなされ、本年1月の当 第二部会において水痘の効能・効果の追加を御報告し、了承されました。今般、その際、 当第二部会より御指摘がありました、成人の水痘における用法・用量を追加する、製造販 売承認事項一部変更承認の申請がなされたものでございます。医薬品医療機器総合機構に おける審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。ただ今、クラバモックス小児用ドライシロップ、 そして、バルトレックス錠500、同顆粒50%、この二つについて、効能・効果の追加とい うことで、製造販売承認事項の一部変更の報告をいただいたわけでございますが、この報 告事項について何か御質問はございますか。特にバルトレックスの方は、溝口委員から御 発言をいただいたと思いますが、何か御意見はございますか。 ○溝口委員 このように非常に迅速に処理していただいて、どうもありがとうございまし た。成人の水痘にも適用できることになり、使いやすくなりました。  クラバモックス小児用ドライシロップの方ですが、表在性皮膚感染症で、しかも MR SAにもオーグメンチン顆粒に比べてずっと有効率が高いようなので、これも承認してい ただけると大変助かるので、喜んでおります。  ただ、少し気になるのは、細菌の分離年が非常に古いのです。MRSAは1992年で、 普通の黄色ブドウ球菌も1992年〜1998年です。最近、とびひと言われる表在性の皮膚感 染症はほとんどMRSAばかり分離されますので、この薬は期待できそうですが、なるべ くこういうデータは、最近の分離株でやっていただけると、より信頼できるのではないか と思います。よろしくお願いします。 ○池田部会長 ありがとうございました。よろしいですか。 ○機構 今、溝口先生から御指摘いただいたところは、ごもっともな点だと思います。私 どもといたしましても、最も新しいデータに基づいて審査を行いたいと思いまして、申請 者の方に資料、また私どもも検索をいたしましたが、小児から分離された臨床分離株でと いうと、ここに掲示したものが一番新しい報告でございました。しかしながら、私どもも 先生の御指摘の点は大変懸念しておりますので、製造販売後調査として、皮膚感染症から あがった株について、実際にどのような感受性を呈するのかを調査するように指示して、 実施する旨を申請者が了承している次第でございます。結果が出次第、現場にもフィード バックしていくように指示したいと思います。御指摘ありがとうございました。 ○池田部会長 ありがとうございました。そのほかにいかがですか。特にございませんか。 よろしいですか。もしないようでしたら、この報告事項については御確認をいただいたと いうことにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。  本日の議題は以上でございますが、事務局から何かございますか。 ○事務局 次回の部会ですが、既に御案内のように、10月24日(水)午後2時から開催さ せていただく予定でございますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。それでは、少し早いようですが、本日はこれで 終わりたいと思います。どうも先生方、御協力ありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 河野(内線2734)