07/08/27 第2回がん検診事業の評価に関する委員会議事録 第2回がん検診事業の評価に関する委員会 議事録 第2回がん検診事業の評価に関する委員会議事次第              日時:平成19年8月27日(月)13:30〜16:00              場所:全国都市会館第1会議室 1.開  会 2.議  題  (1)より質の高いがん検診を広く普及させるための方策について    (1) オーストラリア、イギリスにおけるがん検診の現状について    (2) がん検診受診率向上に向けた取組方策について    (3) 市町村事業におけるがん検診対象者数の算定について    (4) 市町村事業におけるがん検診事業の評価指標について    (5) 国、県、市町村及び検診実施機関の役割について    (6) その他の論点について  (2)その他 3.閉  会 ○古元課長補佐 定刻となりましたので、第2回がん検診事業の評価に関する委員会を開 催させていただきます。本日の会議におきましては、より質の高いがん検診を広く普及さ せるための方策についてご議論を賜りたく存じております。  本日、プレゼンテーションをしていただく参考人を3名お招きしております。ご紹介さ せていただきます。国立がんセンターがん対策情報センターがん情報・統計部部長祖父江 参考人でございます。続きまして、日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノ ロジー株式会社代表取締役社長、また、対がん協会理事でもいらっしゃいます関原参考人 でございます。続きまして、朝日新聞社事業本部事業開発部新規事業グループ中西参考人 でいらっしゃいます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。  なお、吉田委員からは本日、都合によりご欠席とのご連絡をちょうだいしております。  それでは、垣添座長に本日の進行をよろしくお願い申し上げます。 ○垣添座長 皆さんこんにちは。大変お暑い中、またご多用中、当委員会にお集まりいた だきましてまことにありがとうございます。ただいまから第2回のがん検診事業の評価に 関する委員会を始めたいと思いますが、今ご紹介いただきました祖父江、関原、中西参考 人には、当委員会のためにわざわざお運びいただきましてまことにありがとうございます。 よろしくお願い申し上げます。  私は夏の暑い間、青いシャツだの黄色いシャツだの取っかえ引っかえ着ておりましたが、 きょうは順番が狂って、第2回なのに赤い勝負シャツを着てまいりまして、構図としては 日の丸みたいになりましたがお許しください。  まず事務局から資料の確認をお願い申し上げます。 ○古元課長補佐 お手元の資料につきましてご確認をさせていただきます。机上に配付い たしました委員会座席図がございまして、続きまして第2回がん検診事業評価に関する委 員会議事次第が1枚ございまして、委員会名簿、続きまして委員会資料一覧でございます。 本日は資料1から8までございます。これに沿った形で本日、議論を進めてまいりたいと 思いますので、不足等ございましたら事務局にご指摘いただければと存じます。  本日、それ以外の資料といたしまして、中西参考人からお配りいただきました、ピンク リボンフェスティバル運営委員会事務局の封筒に入りましたチラシ等を配付させていただ いております。加えて、「がん検診に関する検討会中間報告」という冊子、平成19年6月 のものを配付させていただいております。また、委員限りではございますが、前回第1回 委員会の議事録を配付させていただいておりますのでご参照いただければと存じます。以 上でございます。 ○垣添座長 よろしゅうございましょうか。それでは議事に移らせていただきますが、ま ず事務局から、委員の皆様から前回いただいたご意見を取りまとめてもらいましたので、 それについて説明をお願いします。 ○古元課長 資料1「第1回委員会の主な論点について」をお手元にご用意いただければと 存じます。  総論、がん対策推進基本計画に従い、がん検診を着実に進めていくことが必要。がん検 診は「有効なものを」「正確に」「多くの者を対象に」実施することが必要。  がん検診の受診率につきまして、地域間の比較を行うためには、検診対象者の算出方法 を統一することが必要。対象者をひとくくりにするだけではなく、年齢区分ごとに指標の 評価を行うなどめりはりをつけた取り組みが必要。はたちになったら2年に1回は子宮が ん検診、40歳になったらと、受診者側のライフステージに応じた受診勧奨をしてはどうか。 事業者検診や人間ドックにおけるがん検診も含めた検診率の把握が必要。受診率向上には 予算措置が必要。  事業評価・精度管理についてでございます。評価指標の数値目標を設定した上で、市町 村あるいは都道府県単位で事業評価を行うことが必要。対象者をひとくくりにするだけで はなく、年齢区分ごとに指標の評価を行うなどめりはりをつけた取り組みが必要。地域ご との実施状況を定期的に公表することが必要。検診の品質管理には「目標と標準の設定」「品 質と達成度のモニター・分析」「改善の手段を講じること」が必要。実施状況の集計結果を 市町村や地域の住民にフィードバックする仕組みが必要。データの分析・評価を行うには 市町村では限界があり、都道府県または国の関与が必要。がん発見率を向上させるために は初回受診者の掘り起こしが重要。がん罹患率の状況や動向を把握して、がん検診の寄与 状況や評価を行い、次の検診計画に生かすことが重要であるため、並行してがん登録の推 進が必要。がん検診による死亡率減少効果や医療費適正化等の評価を行うことが必要。  最後にその他でございますが、がん検診を独立して捉えるだけではなく、他の保健対策 との関連の中で位置づけを考えていく必要がある。以上でございます。 ○垣添座長 第1回の主な論点を事務局にまとめてもらいましたが、これで前回の議論の 内容を思い起こしていただけたかと思いますし、この検討会で取り扱うべき大事な話が全 部出ているのではないか。本日、その一部についてご議論いただく予定ですが、何かご発 言ありましょうか。よろしければ、本日の委員会では、第1回委員会において議論された ことにつき、できるだけ網羅的に、具体的に議論を進めてまいりたいと思います。 まずヒアリングとして、祖父江参考人から、オーストラリアとイギリスにおけるがん検 診の状況について、パワーポイントを使いながらご説明をいただきたいと思います。よろ しくお願いします。 ○祖父江参考人 国立がんセンターの祖父江です。本日の会議の目的でもあります死亡率 を減少させるためには、有効な検診を正しく行う。正しく行うという点で二つのポイント があり、一つは対象者をできるだけ多くする、受診率をできるだけ高くする、精度管理を 徹底するということであります。 この点については外国の方が現状では進んでいるようでありまして、8月初めにオースト ラリアの幾つかのところで、がん検診についての実施状況を視察する機会がありましたの で、それをご紹介します。 オーストラリアは2,000万人ぐらいの人口ですが、州が七つありまして、一番大きな州 がニューサウスウェールズです。もう一つビクトリアというのがありまして、その二つで 人口の半分ぐらいをカバーしているところです。600万、500万です。 今回、Cancer Institute,NSWとCancer Council,NSW、Cancer Council,Victoria、この 三つの機関を訪ねてきました。Cancer Instituteは州の組織です。Cancer Councilは民間 の団体です。伝統的にオーストラリアでは、Cancer Councilががん登録の事業そのものも やったり、あるいは研究をやったり、あるいはヘルプラインという電話サービスをしたり、 がん対策の研究もやり、さらにサービスも行うことを、本来、国とか州が担うようなこと まで民間の団体がやっているという事情があります。 Cancer Instituteは非常に新しい、2003年あるいは4年ぐらいにできたものでありまし て、オーストラリアで初めて、州の組織としてがん対策にコミットするということででき たものです。こういうものを置くかどうかは地元でもかなり議論があるようで、ほかの州 が、それに続いてこういうものをつくるかどうかはまだ定まっていないということのよう です。主には、きょうは乳がん検診のことをお話しします。 オーストラリアでは乳がん検診が、連邦政府と州が共同する形で行われています。 BreastScreen Australiaという名称で国のプログラムとして実施されていますが、50歳か ら69歳の女性に対して2年に1回の検診を提供することで30%の乳がん死亡減少を達成 することを目的として始められました。40歳以上の女性に関しては受診可能、無料で受け られる体制をとっていますが、対象年齢はあくまで50から69歳です。現在の科学的証拠 によれば、この年齢層が住民ベースの検診を行うことで最も大きな利益を受けることが証 明されていることがその理由であります。1991年からこの体制で実施してきて、現在、国 レベルで見直しが行われていますが、対象年齢を70歳代に広げるか、あるいは45歳まで に引き下げるかというところでの議論がされているということです。 精度管理ですが、国が定めた精度管理プログラムがありまして、Australian National Accreditation Standard(NAS)と呼ばれていますが、10領域173項目について基準が定め られています。この精度管理の対象として50から69歳を限定してやっています。ですか ら、40歳、70歳代以上の人たちは受けられはするんですが、厳密な精度管理のもとに行わ れているわけではないということになっています。10領域というのはこんな感じで、アセ スメントは精密検査のことです。発見率、継続して行うカウンセリングサポート、 Unnecessary recallというのは不必要な精密検査という意味です。こういう10領域に対し てそれぞれレベルがありまして、重要なもの、中くらいのもの、重要度の低いもので、項 目が14、127、32とあり、合計173項目が定められています。 レベル1について見てみますと、がんの発見率に関するものです。初回検診50歳から69 歳については1万人当たり50症例、検診発見率がそれ以上ないといけない。2回目以降だ と1万人当たり35人以上が設定されています。インターバルキャンサー、中間期がんに関 しての項目で、がん登録を業務としてルーチンに中間期がんの把握に使っている。幾つか の国を見てきましたが、こういうことをルーチン業務としてやっているのは初めてでした。 具体的には1万人当たり7.5人を超えることがないようにということですが、7.5とか50 とか35という値を見ますと、2年に1回の検診ですから、2年を期間として、その間に出 てくる中間期がんが、初回発見が1万人対50に対して中間期がん7.5、単純に考えて15% ぐらい見落としがあってもよかろうということにしている感じです。そういうことを仕組 みとしてやっている。 170幾つかの項目についてレベルごとにどれだけ満たしているかということを確認をし て、レベル1、レベル2、レベル3でこれぐらい満たしていれば4年間の認定を差し上げま すと。このレベルだと4年間の認定、これだと2年間、全部満たしていれば4年プラスご ほうびをあげる、満たしていなければ暫定的な認定にとどまったり、あるいは認定しない ということになっている。このことについては後でまた触れます。国レベルでのスタンダ ードが決められていて、乳がん、子宮頚がん、大腸がんの三つの検診に関してやられてい ます。大腸がんは去年から始めた新しい取り組みです。ウェブで見れます。170幾つの項目 についても全部ダウンロードできるということです。 ここからニューサウスウェールズの話ですが、かなり大きな州ですが、10地域に分けて 検診を進めています。5地域はルーラルエリア、対象者の25%がいまして、5地域はメトロ ポリタンで75%、50から69歳の受診率は60%弱ぐらいです。ちょっとずつふえている。 人口が増加しつつあるので、更新した人口を用いると受診率が低くなる。受診率で計算す るための人口を正確に把握するのも結構難しいものです。2年インターバルで計算していま すが、40歳以上の受診者が56万人、50歳から69歳が28万人です。対象年齢以外のとこ ろも結構受けています。デジタルマンモグラフィの導入が最近の課題である。セントラル エリアというか、シドニーのあたりがアーバンエリア、受診率が54から58%、人口の分母 を変えるとちょっと減ります。  州ごとに見た、ニューサウスウェールズ、ビクトリア、クィーンズランドの40歳以上の 全女性の受診者数、50から69歳の対象年齢を絞った場合の受診者数、58万人、28万人と いう数字です。40歳代、70歳代でも結構受けている。 個人通知のしくみ、受診率をどのように上げるかという点ですが、対象者個人への受診 勧奨がされておりまして、選挙人名簿に基づいて、50から69歳の人たちに対して送られま す。データは40歳以上の女性全員を6カ月ごとにいただいている。個人通知を出して6週 間以内に受診しなかった場合は催促、1回だけ催促の手紙を出すと言っていました。個人情 報保護の観点から、手紙以外でのコンタクトは禁じられている。電話をかけるのは、電話 帳で調べてかけられないことはないんですが、そういうことはしてはいけない。受診者が 受診時に電話番号を教えてくれた場合に限って、2年以内ならば電話でのコンタクトが許さ れる。精検を受けてないですよということを電話でコンタクトすることも、2年以内ならば できる。 受診勧奨通知の中には、どこそこでいつ受けなさいということが書いてあるわけではな くて、予約をとるための電話番号が書いてあるだけです。通知を受け取った人は、そこの 電話番号に電話をかけて、自分で予約をとってそこに行くというしくみになっています。 かけた電話から地域ごとの検診センターに割り振られるので、自動的に割り振られて、ニ ューサウスウェールズのある地区から電話をかけた場合は、その地区の地域コールセンタ ーに行くということが自動的にされるようになっています。受診は居住地じゃなくても、 都市部に勤務している人はそこでも受けられる。ニューサウスウェールズの場合は55の検 診センターがあって、15台、検診車があって、通常、検診センターは病院に併設されて、 マンモグラフィが検診専門のものが置いてあるというのが一般的な形態です。 検診のしくみは、マンモグラフィの読影が二人、独立して行われていて、結果が異なる 場合は3人目の読影が判定して決める。false negativeというのは、二人読影がいて、片方 がポジティブ、片方がネガティブと言った場合に、ネガティブと言った人が仮に見落とし であった場合、そのフィードバックを3カ月に1回ぐらいやるようにしている。ローカル の検診センターでやるようにしている。要精検率も、診断医別に並べたものを各診断医に 戻すようにしている。  結果が異常なしであれば、ご本人とGPに通知をされる。自己申告で、私のGPはこの人 ですと言った人のところに行くようです。異常所見があれば精検通知を出して、通常、検 診センターで精検を行う。いろんな検査をして、外科医の診察を受けて、ここまで検診シ ステムとして無料で提供される。治療に関しては保険医療の世界で見てカバーすることに なっているようです。  州側から見た精度管理としては、国が定めた基準に従って10地域センターがあるようで すが、これが精度管理指標を測定する。Cancer Institute,NSWは、10の地域センターをカ バーするコーディネーティングセンターとして機能している。10の地域センターから1カ 月に1回、個人レベルの受診レコードと集計、3カ月に1回、発見乳がんのリスト、6カ月 に1回、173項目中約45項目の精度管理指標、こんなインターバルで送られてくる。です から、年に1回だけやっているわけじゃなくて、ルーチンでこういうデータをやりとりし ているようです。  地域センターには、国からのチームが監査をしに来ます。レベルに応じて2年から4年 に1回ということになります。国からのチームは専属の人がいるわけではなくて、他の州 の同業者が構成するピアレビューシステムで、プログラムマネージャーとか監査専門官と か、専門のスタッフが6〜7人、州ごとのチームを組んで、ほかの地域センターに行くとい うことです。  精度管理指標を計算するに当たって、毎年の検査数に関しては下限を設けています。検 査センター当たり4,000件、田舎の場合は3,000件、放射線診断医一人当たり年間2,000 件という下限を設定していて、がん発見率も下限を下回る場合は、実測値だけではなくて、 信頼区間をつけて判断する。検診センターで下限を下回った場合どうするのかということ ですが、その場合はそのセンターを閉鎖して場所を変えることがそれほど稀ではない。診 断医については2,000件を下回ればかわっていただく。2,000件以下の件数だとがん発見率 が下がるという証拠がありますということでした。こういうことに関して専門家からのク レームがないのかということを聞いたところ、そういうことは一切ないと言っておられま した。  がん検診の導入に関しては国レベルで行う。費用に関しては50%国、50%州、受診者の 負担はゼロです。2年に1回以上受けたい人がいたらどうするかということですが、GPに 言ってもらって説得してもらう。ハイリスク、家族歴があるような人の場合には毎年受け ていただくこともあり得る。15から20%の人が毎年受けているという実態があるようです。 15%から20%ぐらいは検診でない、診断としてのマンモグラフィを受けている場合がある。 10%程度は選挙人名簿でも把握できていない人がいるかもしれない。  個人の受診勧奨以外にキャンペーン、メディアによるキャンペーンあるいはローカルな キャンペーンをやっていく。パンフレットをつくり、ビデオコマーシャルで流したんです が、予約の本数がふえたけれどもほとんど40歳代の女性でしたということもあるようです。 1.5億円という作成費を投じてやっている。  これがパンフレットですが、チェリー・アンド・ピーという言い方をしていて、触知可 能な直径2センチ、これが直径1センチで発見可能な大きさ、これが共通の電話番号で、 ここにかければ予約ができるという体制でやっている。子宮頚がん、大腸がんに関しては 全く別のしくみでやっています。イギリスでも別のしくみでやっていました。  これがイギリスのしくみですが、QAリファレンスセンターとコール・アンド・リコール センターがポイントです。コール・アンド・リコールセンターで受診勧奨をしている。個 人あての通知を送っているということと、全国に10カ所あるQAリファレンスセンターで、 先ほど言った規模を確保した上で年1回のstatistical return、3年に1回のsite visit、オ ーストラリアとイギリスは似ていますが、オーストラリアはイギリスのまねをしてやって いますと言っていましたから、当然似ているということです。  精度管理指標ですが、対象とするがんの死亡率の減少が目標なので常に念頭に置くのは いいんですが、これをきちんと測定するために規模をある程度確保しないといけないとい う点とタイミング、死亡率減少は一番最後に起こることなので、途中の段階の精度管理と してはちょっとおくれるというか、不適当かもしれません。そういうことを念頭に置いて いるんですが、基本的な考え方としては、乳がん検診なら乳がん検診の評価のために行わ れたRCTで実測された精度管理指標が再現されているかどうかということで目標値の設定 をするのが適当ではないかというのが基本的な考え方です。  そういう意味で、見落としの割合も決定が可能だし、発見率もある程度根拠づけが可能 ですが、受診率、要精検率に関しては文化的な色彩が濃くて、特に要精検率はアメリカで は10%を超えるようなところがありますし、イギリス、オーストラリアでは7〜8%から5%、 オランダですと1〜2%になっていますが、どれだけ見落としを許容するのかということの 国民性にもよるところがあると考えます。  私からの発表は以上です。 ○垣添座長 ありがとうございました。主にオーストラリアを中心にイギリス等、乳がん 検診に関してご報告いただきましたが、今のご説明に対してご質問等ありましたらお受け したいと思います。 オーストラリアのニューサウスウェールズでルーラルだと25%ぐらい、都市部だと75% ぐらいというのは。 ○祖父江参考人 人口の比です。面積比でルーラルはでかいんですが、人口は25%しかい ませんという意味です。 ○垣添座長 誤解しました。わかりました。よろしいでしょうか。ありがとうございまし た。かなり国家が関与して、先進的な検診をされていると思いますが、ご参考になったか と思います。 続きまして関原参考人から、がん患者のから、がん検診受診率向上に向けた取り組み方 策についてお願いいたします。 ○関原参考人 関原でございます。今日はこういう機会を与えていただきまして大変光栄 でございます。  がん検診の受診率をどうしたら向上させられるかというテーマは非常に難しい話です。 私自身はがんの手術を6回受けたこともありまして毎年、胃と大腸と肺と肝臓と、がんの 検診というより検査を20年やっていることと、垣添先生が会長である日本対がん協会の理 事をしており、この協会の大きな事業になっているがん検診が、なかなか伸びないという ことで、事業としてどうして伸ばしていったらいいのかという問題意識を持っているとい うこともあり、ビジネスマンの観点から、私の勝手な思いや考えを述べさせていただくこ とにします。簡単なメモをつくりましたので、これに沿ってご説明をしたいと思います。 2年前に大腸がん検診に関する検討会がございまして、垣添先生が座長でいらしたと思い ますが、そこで患者の立場からお話ししました。そのときに1に書いてあるようなことを 申し上げました。 なぜ大腸がんの検診率が低いかということで、大腸がんだけじゃなくてがん一般の要因 として、ここに六つぐらい挙げたわけでございます。 第1は、これが一番大きな問題だと思っておりますが、日本人は健康は自分で守るとい う自主性とか自己責任が非常に乏しい、他人依存型の国民性である。私は銀行に勤務して おりましたが、お金の運用とか投資についてもみんな同じなんですね。何かあると財務省 の責任とか、すぐそういう話になるんですね。自分の意思で決定して自分で責任を持つと いうことが非常に希薄な国民ということがベースにあると思いました。 次いで、検診が国策になっていないとか、精度管理の問題、もう一つは、医療にむだが 多いというのがかなり国民の間に定着している。お医者さんに行ったらやたらに薬を出す とか、レントゲンや血液検査を含めて、なぜ検査が本当に必要なのかという説明なしに検 査をするということで、医療に無駄が多いということになっているから、がん検診のよう な本当に大事な検査との差異がよくわかっていなくて、何となく検診を受けてもしょうが ないという、合理性を超えた考えが定着しているんじゃないかということを申し上げまし た。 がんの情報は溢れるほどありますが、それらはがんをわずらってからの情報です。がん になる前の健康人に対するがん予防や検診の情報やPRが非常に不足していると思います。 近藤誠さんのがん検診は無意味、有害のような有力な声がマスコミに取り上げられて、 がん検診は無駄ということが潜在的に定着しているんじゃないかと申し上げました。 受診率の向上策ということで、ここに書いてあるようなことを申し上げたんですが、国 として検診率を向上させるパワーが不足しているということで、国として、みんなが関心 を向けるにはどうしたらいいかということで、交通事故の撲滅運動というのがあって、交 通事故死が1万を越えたということで大騒ぎになって、何人とか減らそうということがあ って、警察が春と秋に全国一斉に交通安全週間を設けて、地域の自治会まで参加して、の ぼりを立てて撲滅運動をやっているわけですが、こういうことでもやらないと。がんで言 えば、保健所の人が自治会と一緒になって、相当のことを継続的にやっていかないと意識 が上がってこないんじゃないかという話をいたしました。 がんの検診率はなぜ低いかということについて、この検討会の第1回の資料をいただき 拝見しました。その中に胃がんの検診についての中間報告がありまして、検診率の向上に こういうことが有効であるというものが三つ挙がっていたわけです。名簿を整備して個別 の勧奨をしろとか、休日の検診、複数の検診を合わせてもっと効率的にやれということと 費用の問題が挙がっていまして、なるほどと思ったわけです。 もう一つは、小坂先生が中心になってやられた作業で、「がん検診の受診率向上に向けた 有効手段の開発に関する研究」というレポートを拝読したわけです。胃がんのところに挙 がっていたのと同じで、検診向上の取り組みについて評価がされているわけです。ちょっ と驚いたんですが、非常によくやっているという評価になっていますね。 パンフレットはこういうのをつくっています、ポスターなりテレビなりインターネット なりを使っていろいろなことをやっています、非常に高い実施率です、個別案内は70%や っています、よくやっていると書いてあるんですが、肝心の検診率は向上しているのか。 よくやっているというのは、検診で効果が上がっていて初めて評価できる話じゃないか。 大変失礼ですが、ビジネスの世界では効果があって初めて評価します。 受診率向上に向けた有効な手段の開発、有効な手段とは何なのか、これを見てもなかな か読み取れなかったわけです。アンケートをとって、それなりに評価されていますが、『受 診率向上が多くの自治体で課題となっていることがわかった』と、今さらこんな結論を出 されても困る。わかったからどうするのかが知りたい訳です。『有効な手段の開発』という 報告書のタイトルを見て何があるのかと思ったら、そういう結論になっていますから。 基本問題に移りますが、いろんな検診の向上策をそれなりに実施されていますが、肝心 の検診率はさっぱり上がっていないというのが、この実績が示している話だと思います。 ということは、なぜ検診率が本当に向上しないかの原因とか背景の調査・分析が全然でき ていない。原因とか背景を分析しなければ、有効な対策なんか打てっこないじゃないかと いうのが僕の基本的な考えです。 検診の議論は、精度管理の話と予算の話が非常に多いですね。確かに精度管理は大事だ し、精度管理をしてレベルを上げることの重要性はだれも否定をしないけれども、精度管 理に問題があるから検診率が低いということではありません。 検診に費用がかかる、一般財源化したから検診率が低いという議論があるんだけど、ど のグラフを見ても、一般財源化の前と後で検診率に大きな差がないわけです。小坂先生の レポートでも、自己負担と受診率は関係ないと書いてあるわけですね。ということは、原 因や背景をちゃんと究明して適切な策を打つという、ビジネスでは当たり前にやっている ようなフォローの仕方になっていないんじゃないかということが基本的な問題だと思いま す。 検診率の向上策を策定する責任者は一体だれなのかという問題に突き当たり、責任者は 低検診率の社会的背景を探ったり、欧米諸国の向上策を調査し抜本的な策を打ち出す責任 を果たしていないのではないか。 祖父江先生のオーストラリアの実例の中でどうしてもこれとこれは日本でやらなきゃい けないんです、やるためにはどういうことが必要かを検討することが本当は必要で、それ が政策上できるかできないか、できないなら、代替手段として何があるかということをや っていかないと現実的な向上策にならないと思ったわけです。 私は、日本人の国民性が非常に大きく、国民が自分の健康を守る自己責任の乏しさがあ ると考えています。さらに、がんの理解が、国と国民に非常に乏しいということだと思い ます。 私自身は素人の一患者ですが、講演会とかプライベートの勉強会に招かれたり、あるい はお金を集めるということでいろいろな企業を回っているわけですが、ほとんどの人はが んが国民にいかに身近な病かをわかっていない状態。厚労省のつくったがん統計という紙 を見せて、がんというのは、生涯に男性は二人は一人はかかるんです、女性は3人に1人 かかるんです、ということは、奥さんかあなたかどっちかがんなんですと説明すると、そ んなに多いんですか、また、検診率20%の資料を見せると、日本の検診率そんなに低いん ですかと。自分は検診をやってると言うんだけど、よく聞いてみると、がん検診と、健康 診断とか人間ドックとの区別が混乱しています。私がお目にかかっている人は、社会的に はそれなりの立場の人ですが、そういう人ですら十分理解されていないということです。 オーストラリアのニューサウスウェールズのことがありましたが、がんのサバイバーとか ボランティアとか、社会全体でそういう啓発活動ができていないと、検診率はなかなか向 上しないと思ったわけです。 医療関係者、経済人あるいは政治行政に携わる責任ある人たちの対応についても非常に 問題があると思います。 この間も日本の消化器学会のときお話をしましたが、欧米ではがん医療に携わっている お医者さんの奥さんはほとんど何か対がん活動をやっています、ボランティアを含めて。 またはご主人をがんで亡くしたとか、奥さんをがんで失った男性は、こういう悲しみとか 苦しみを他の人達には味わわせたくないから対がん活動をやろうということはかなり風土 としてできていると思います。そういう風土と様々な努力とで50%とか60%の受診率にな っているわけで、お金を注ぎ込んだらできるという話でもないだけに、国民や国の考え方、 価値観を変えないと検診率は上がらないというのが私の考えです。 今回、国としてがんの基本計画を策定し、検診率目標を50%と決めた以上は、がんの検 診を受けさせることは国の責任であり義務であるということです。20%の死亡率削減は、 50%と不可分だとした上で、国としての具体的な対策をつくる。検診は都道府県の責任だ からということにされて、本当の司令塔、責任部署が明確じゃないんじゃないかとは思っ ています。 責任部署が、低受診率の原因や背景を徹底的に調べる。都道府県で受診率には大きな差 があります。高検診率のところは何をやっていて、低検診率のところは何ができていない のかということを含めて、もっとブレークダウンして具体的なアクションに結びつけるこ とは大事であって、本委員会でそこを相当突っ込んでやるべきです。きょうの議論が終わ ったら次回は報告書をまとめるということでは、実効性のある計画ができるのかなという 率直な疑問を持ったわけです。 もう一つは、私の属する日本対がん協会にも共通しますが、日本の検診機関の対応だと 思います。検診とか検査は、診療や治療と異なって保険の対象でもないわけで、かなり自 由化されているわけです。健康商品がこれだけ売れている健康ブームですから、ちゃんと マーケティングをしてビジネスモデルを創れば受診者は増えるはず。検診事業をやる人が、 事業主体として、自分のビジネスとしてちゃんとやっていないんじゃないか。政府が悪い とか何とかかんとか、そういう話になっているんだけど、診療機関、医療機関が管理会計 をちゃんとやって、検診事業はどうなっている、売上を伸ばす、すなわち受診者を増やす ために何が必要なのか、あるいはコストを下げる。1検診当たりのコストを下げれば料金も 下げられるわけなので、そういうことも含めた、事業としてやるような基本ができていな いんじゃないかという気がします。検診をする人が主体になっていろいろなことを考えな いとうまくいかないと思いました。 次はPRの話で、家族のだれかはがんにかかるということと、検診は最大のがん予防とい うことを、だれもが一覧できるわかりやすい単純な資料を作成し、徹底することは不可欠 であるという思いで、別紙を作成しました。世間には、胃がんとか大腸がんとか臓器別に、 早期発見はこうです、手術はこうですと書いてある書籍やパンフレットはたくさんありま すが、がん検診という切り口で横串に刺して、だれが見てもわかるような一覧性のあるパ ンフレットがないということでつくってみたんですが、こういうポスターを作って医療機 関、個人のお医者さんの診療所とか歯医者さんでも掲示してもらう。歯医者さんはコンビ ニよりたくさんあるわけですから、いろんなところに貼って、がんの検診の啓蒙と理解を 図る。このポスターを見たら、自分はどの検査を受けているのか、受けていないかがわか ります。検診年齢を絞るなら、検査開始年齢を見ればすぐわかります。胃がんとか乳がん とか別々の本を読んで理解するということだと、なかなか読まないんじゃないかという気 がして、こういうのをつくってみました。 費用についても、早胃研のホームページとがん研のホームページのを書いてみたんです が、日本の検診は全部セットメニューになっているんですね。セットでやるとこれだけか かりますというんだけど、こういうのは会社でやっている、これだけはやっていないとい うことでアラカルトにするとえらく高いわけです。日赤のホームページでは、アラカルト は受けないとなっているわけです。検診のモデルのつくり方がお客本位になってないなと いう感じを受けるわけです。 がんの検診の週間をつくってやったらどうか。9月はがん制圧月間ということになってい ますが、医療関係者の言葉で国民の間にあまり浸透していません。がん制圧と言っても、 国民にとっては検診しかないわけです。したがって月間の中で検診週間を設けて、PRも含 めてもっと幅広くやることにした方がいいような気がいたします。そのためには、がんの サバイバーとか、非常に成功しているピンクリボンのような、患者団体とかいろいろな人 を入れて幅広に活動しないとなかなか浸透していかない。 当事者に検診のインセンティブも必要です。受診者にとっては、がんの検診をずっと受 けていれば、検診でがんが発見されたら治療費が安くなるとか、低所得者の場合には治療 費がただになるということも含めて、検診を受けたらいいことがあるというエコノミクス がないかなと。早期発見すれば医療費も下がるということで、マクロ的にもプラスになる ということとのセットで考えるべきだと思います。 検査を継続的に受けている人は生命保険やがん保険が安くなるとか、郵政が民営化され て、かんぽ生命株式会社になるわけですが、全国に1万5,000もあるような郵便局を通じ て一緒に商品を開発して、郵便局の窓口に検診のポスターを貼るとか幅広にやらないとな かなかうまくいかないと思います。 お医者さんにも一種のインセンティブということで、来た患者に、検診を受けています かと一言聞いて、受けてないと言えば、受けなきゃだめですよと推奨して、私が予約して あげますよというぐらいのことをお医者さんができないものか。目標管理じゃないけど、 10件検診予約をしたらメリットがあるとか。メリットは国じゃなくても日本医師会でイン センティブをつけてもらうとかを含めて、お医者さんにもそういうインセンティブをつけ ることを考えて良いのではと思います。 それから一種の規制的ということで、当局の問題と思いますが、メタボがいろいろ批判 はあったんですが、特定健診、特定保健指導の義務づけになっていました。65%と非常に 高い目標になっているわけです。特定健診とがん検診を一緒にすると検診率は必ず上がる と思います。受診者にとっても、両検診がセットで受けられるのは非常に便利だというこ とです。これは厚労省の問題でもあると思うので、両者を一体とする場合、検診の対象な り年齢の絞り込みが必要だと思いますが、そういうふうに規制の枠にはめていかないと検 診向上が国策ということにならないのではないかと思います。 自治体病院は経営が大変なわけですが、がん検診で病院の設備や人の稼働率をもっと上 げる。都道府県にはたくさん自治体病院がありますが、各都道府県の自治体病院の一つを がんの検診センターにするということを含めて、行政として検診に相当力が入っているこ とをアピールすることも大切です。 最後のところはいろいろ抵抗があるかと思いますが、50%という目標を決めた以上は、 都道府県別に年次別に、毎年ここまで数値目標を達成してくださいという目標を課して、1 年、2年できなかったら何らかのペナルティといいますか、何かマイナスをつけるというこ とをしないとなかなか検診率は上がってこないかなと思っております。  雑駁な話でしたが、私個人の意見ということでお聞きいただければと思います。以上で す。 ○垣添座長 ありがとうございました。大変率直な、かつ痛烈なご批判をいただきありが とうございました。ここにおられる委員の皆さんも、傍聴しておられる方も非常に共感を 持って聞かれたのではないかと思います。 最後に回そうと思っていたんですが、わずか3回ぐらいではしょうがないとか、費用の 問題とか、特定健診との一体運営とか、将来のことに関して、老健課長の鈴木さん、お話 しいただけますか。 ○鈴木老人保健課長 私、老健局におります。隣にお座りなのががん対策推進室というこ とで健康局になりますが、前回も申し上げたと思いますが、来年度から厚生労働省の中で の所掌がかわりまして、今、がん対策全体はこちらが、検診は私どもが所掌していますが、 検診も含めて、来年度以降、こちらの担当になりますので、そういう意味では一体的に対 応できるということになります。ご指摘がありましたように、受診率が高い方がいいとい うことはだれでもわかっている。問題は、なぜ低いのか、どうやったら高くなるのかとい うことで、実証的な、具体的な策がないというところが問題だと思いますので、私どもの 考えとしては、まず今年、実際的に高くするための施策を打つとすると、どういう材料を そろえなきゃいけないのか、これだけははっきりさせておいた方がいいと。 一つは低い原因、なぜ高くならないかというところを、総体的な議論ではなくて、具体 的に、例えば他国との比較とか、国内でも、よくやっている地域とそうでないところがあ りますから、そういう比較をした上で、どこをどういうふうに掘っていけば、具体策とし て低い原因がわかっていくのかというのが一つあると思います。 もう一つ、財源の話は、がんの検診の費用、医療費へのはね返りがあるかもしれません が、それに加えて、例えば稼得能力とか、社会経済的な影響も含めて、社会全体としてど ういうメリットがあるのかないのかというところも、日本国内における状況は把握をされ ているわけではありませんので、そういうところも含めて国民の方にも理解をしていただ ける、将来的にどういう形で財源を保障するにしろ、財源を保障する人に納得していただ ける材料は持っていなきゃいけないと思っています。 3回の検討会の中では、来年度以降、どういう材料を用意をしていかなきゃいけないかを 具体的にご議論いただき、書き込んだ上で、来年以降はその材料をなるべく早く集めて、 その次ぐらいには、具体的にどういう形で50%を目指してやっていくかというロードマッ プをしっかりするべきだと考えています。そうでないと、ここ10年ぐらい同じような議論 をしてきたけれども、結果として、検診受診率が上がっていないということになりますの で、それをぜひさせていただきたいと思います。 ○垣添座長 がん対策基本法が施行されて、がん対策基本計画がどんどん進んでいるとき に、このチャンスを生かして、関原参考人からご指摘いただいたような問題点を解決しな い限り永遠にチャンスは来ないということで、今きわめて重要な時期に差しかかっている と考えておりますが、ほかにご質問、ご発言ありましょうか。 ○斎藤委員 大変貴重なご意見ありがとうございました。「私の考え」に述べられているこ とを全部やれば効果は必ず出ると思います。鈴木課長が何ら達成されてこなかったという のは、こういったことに対する具体的な対策がなかったからだと思います。 私は個別の原因というより構造的な原因があると考えるわけで、先ほどのお話の中では 重視されていませんでしたが、網羅的な名簿をつくって個別に受診勧奨をするという組織 型検診の基本は重要です。個別勧奨をたくさんしても名簿がないので、網羅的にやれてい ないということがありまして、網羅的に個別勧奨をするやり方が必要であり、受診率向上 にはそれが重要な基本条件と思います。 ○垣添座長 自治体病院を全部検診センター化しろという過激なご発言もありましたが。 ○関原参考人 全部ではなくて、都道府県にある多くの自治体病院の一つぐらいは検診セ ンターに切り替えてもよいのでは。 ○垣添座長 オーストラリアの例を参考にして、オーストラリアにおける検診センターを 紹介された、あれはどういうふうにつくられているんですか。 ○祖父江参考人 ニューサウスウェールズで600万人ぐらいの規模なので、大きな県ぐら いの人口規模ですが、そこに55検診センターがあるということですから、それは固定され たもの、それからモービルユニット、検診車で15台、それぐらいの数の検診機関を、検診 センターを持つような形で指定をすれば、受診機関に関してはニューサウスウェールズと 同じようなことができるんじゃないですか。 ○垣添座長 オーストラリアがニューサウスウェールズの中で、こことこことここを検診 センターとして指定する、それぞれがそれに応じた努力をするということですか。 ○祖父江参考人 検診をやる箇所は州が指定しているみたいです。国は全然関与していな い。国の役割は、そこでやられている検診の精度に関して、こういう基準を満たすように という、その基準を決めているということです。 ○内田委員 公設公営とか公設民営とか。 ○祖父江参考人 それはいろいろあるみたいです。オーストラリアの場合はイギリスほど 公的なもので占められているわけじゃなくて、民間の病院もかなりあるようです。 ○垣添座長 よろしゅうございましょうか。時間の関係もありますので、先に参ります。 関原参考人、ありがとうございました。 続きまして中西参考人から、ピンクリボンによる乳がん検診普及活動のご経験から、が ん検診受診率の向上に向けた取り組み対策ということについてプレゼンテーションをお願 いいたします。よろしくお願いいたします。 ○中西参考人 朝日新聞社でピンクリボンフェスティバルという乳がんキャンペーンを6 年前に立ち上げまして、そのプロデューサーをさせていただいております。きょうはピン クリボンをどのように広げてきたかという具体的な話をさせていただきたいと思います。 どうぞよろしくお願いいたします。 お手元にお配りしている「ピンクリボンフェスティバル運営委員会事務局」という封筒 の中に各種チラシを入れております。  ピンクリボンフェスティバルは、街と人をコンセプトにしたキャンペーンです。建造物 のライトアップ、街のデコレーション、特にウオークイベントやシンポジウムなどイベン トを実施するなど、10月の乳がん月間に、さまざまな方法でキャンペーンを展開させてい ただいております。  私、7年前まではピンクリボンという単語も、マンモグラフィという単語も全く知りませ んでした。ピンクリボンと出会ったのは、会社の仕事で出会ったわけではなくて、個人的 な知人から、ピンクリボンという単語を聞きまして、そこで関心を持って立ち上げること になりました。  当時は30人に1人の女性が乳がんになると言われておりまして、知人から、こぶし大の しこりになってからようやく病院に行くような女性がたくさんいて、年々、死亡率も上が っている、無知から来る不幸がたくさんあるということを聞きまして、同じ女性として非 常にショックを受けました。新聞社におりますので、メッセージを伝えるキャンペーンも しくはイベントができないのかなと考えたのがきっかけでした。  そこで、ネットでピンクリボンを検索してみました。現在は32万件を越えるそうですが、 当時はほとんどヒットしませんでした。ネットで知った患者会の会長さんを訪ねたり、外 資系の企業さんで、ピンクリボン活動を実施されている企業さんを訪ねまして、ピンクリ ボンの実態とか乳がんの実態について直接お話を伺う機会を得ました。  アメリカはピンクリボン活動が非常に盛んです。日本では、2000年頃から外資系の企業 さんが、ピンクリボン活動を単独で活動を実施したり、専門医の熱意ある先生方も任意団 体、今はNPO法人になっていますが、を立ち上げられたり活動がスタートしていました。  いろんな企業さんにお話を聞きましたところ、1社で展開をしていてはなかなか限界があ る、1社で何千万というお金を投入しても一発花火で終わってしまいますし、場合によって はその会社のプロモーション活動として受けとめられてしまうのでなかなかメディアにも 取り上げてもらえない。当時、複数の化粧品会社さんがこの活動を応援していたんですが、 同業他社というとライバル会社でもありますし、一緒に手を組んでキャンペーンをするの が非常に難しいというような状況でした。各社の皆さんの意見を集約しまして、新聞社で ある事業本部の中で事務局ができないのかというような相談も受けておりました。  当時、私はスポーツイベントを運営する部署におりました。乳がんとは非常に離れたと ころではあったんですが、何とかこの活動をしたいということで、社内的なさまざまな手 続はあったんですが、2002年の9月に賛同企業、同業他社も含めた9社とシンポジウムを 実施することができました。  開催が実現したのは、賛同企業を集めてミーティングを行ったことがきっかけでした。 「私たちがこの活動をやっていかないと誰がやるの」、「同業他社関係なくみんなで手を組 んでやっていこう!」という熱い思いを持った女性が多くおられました。いろいろなキャ ンペーンがあると思いますが、同業他社が組むというのはなかなか実現しません。このキ ャンペーンの特徴は、1社ではなく複数社、しかも同業他社が入っているところです。その 当時の営業部門からは、同業他社が一緒に協賛するはずがないとも言われていましたから、 業界では驚かれました。  2002年にさまざまな企業様とお話をすることで信頼関係ができまして、結束が強くなり ました。2002年の取り組みが、今後のキャンペーンの大きな支えになっていっております。  シンポジウムを開催後、共通のビジョンを決めようということで10時間ほどの会議をし ましてビジョンを決めました。当時は検診率が非常に低くて、マンモだけの検診率が2.1% とか非常に低かったので、検診率を目標に入れることがあまりにも遠くて、まずは乳がん の早期発見、早期診断、早期治療の大切さを伝えることに特化した活動にしましょうと。  6年たちまして、このビジョンをそろそろ、検診率も入れ込んだようなものに変えなくて はならない時期に来ているようにも感じております。今年、賛同企業とともに新しい取り 組みを始めています。検診率をいかに上げていくかというような取り組みですが、後で時 間があれば少しお話ししたいと思います。  ビジョンを作った後、どうやれば女性に乳がん検診に、あるいは乳がんに興味を持って いただけるかというプロモーション活動中心のキャンペーンになっていきます。  病気のキャンペーンというと非常にネガティブなイメージがついてきます。例えば乳が んと聞くと、暗いとか、怖いとか、イコール死とか、女性が乳がんと聞くと耳を塞ぎたい というような非常にネガティブなイメージがあります。企業さんは、患者さんもかかわる デリケートな問題ですし、死のイメージが取り払えないので扱いたくありません。いろん な企業を巡ったんですが、2002年、2003年は、特に日本の企業さんの多くは、怖くてこん なことできないよ、イメージが低下するんじゃないかとおっしゃっていました。そうする と資金も集まりませんし、資金がないと啓発活動もできませんし、啓発活動ができないと、 人も無関心のままという、負のサイクルにはまってしまいます。  私たちは、まず、イメージを変えるための工夫をしていきました。ネガティブをポジテ ィブにというのがキーワードです。どうすれば女性が積極的にメッセージを受け取ってく ださるか、もう一つは、私もメディアの人間ですが、朝日新聞1紙だけに書いてもらうだ けでは、キャンペーンの成功とはいえません。ここもポイントですが、メディア露出を狙 うには、1社単独ではなく、公的なイメージを持っていただくことが大切です。そのために、 どういうふうにしたらいいかということを考えて具体的に行ったことがこちらです。  2003年にピンクリボンフェスティバルを立ち上げたのですが、03年には森ビルとか丸ビ ルが立ち上がりまして女性がすごく詰めかけていました。女性が憧れるような街からピン クリボンのメッセージを発信できないかということで、六本木ヒルズ、丸ビルを巻き込む ことで、華やかさを演出できるんじゃないかと考えました。  ピンクリボンというかわいらしいマークがありますので、それを活用し、啓発パンフレ ットを作りました。表紙には「ピンクリボンの意味をご存じですか ?」と記してあります。 乳がんと出てくると女性は開いてくれませんから。この冊子は化粧品のパンフレットのイ メージでつくりました。女性に受け取ってもらうために、女性らしさを意識したクリエー ティブに統一して、キャンペーンを展開いたしました。  また、エスティローダさんがあけぼの会さんと一緒になって東京タワーのライトアップ をされているんですが、一緒に、03年はちょうどテレビ朝日の社屋が新しくなりましたの で、それをピンクにライトアップできないかと。半年かけて、当時の久米さんのニュース ステーションで取り上げていただきたいと思って、同じ系列ですからいろいろと内部で調 整したりしました。  聞き慣れないと思いますが、音楽事業者協会、例えばホリプロさんとか渡辺プロさんと いったプロダクションさんでつくっている協会も巻き込みました。この協会の存在も知人 から教えてもらい、タレントさんがピンクリボンを応援してくれたらもう少しメッセージ が届くんじゃないかと、紹介してもらいました。  メディア露出のために朝日新聞社色を弱めることが大切でしたので、財団法人日本対が ん協会にももちろん入っていただいたんですが、自治体や公的な団体にも入っていただき まして運営委員会を構成しております。  ピンクリボンフェスティバルのメディア露出は、年々ふえていっています。朝日新聞1 紙ではなくて、読売、毎日、サンケイすべての一般紙も含めて、ピンクリボンフェスティ バルについて書いていただいています。朝日新聞の名前はどこにも出ないんですが、構わ ないし、そうあるべきだと思っています。  ヤフージャパンというネットとも提携しました。当時は今ほどは大きくなかったんです が、若い世代の方々にアプローチができましたし、若い世代の方たちはピンクリボンにつ いて悪いイメージは持っていないと思います。ヤフージャパンの巻き込みは非常に成功だ ったと思っています。  2003年の組織図ですが、現在はこのようにふえています。公共広告機構が乳がんをテー マにした広告を流してくれています。対がん協会さんが主体ですが、こちらの巻き込みも 一緒にやらせていただきました。メッセージを伝えるために効果的に活用できるものは何 でもと思っていました。ACは非常に費用対効果が高いものですので、ぜひ取り上げてもら いたいと思いました。実現に至るまで2年半ぐらいかかりましたが、現在も実施されてい ます。  2003年のお話をしましたが、実際に見ていただくとこのような感じです。著名な方々の 写真を無償で提供いただきまして、原宿のボードに2003年に掲げさせていただきました。 事情があって3年ほど貼りついておりました。  ヤフージャパンのトップページをピンクにしていただきました。今年も10月1日に、色 がついている部分がピンク色になります。初年度は、画面全体がピンク色になったので、 一種のウィルスと間違えられていろいろと問い合わせがあったと聞いています。  2003年の立ち上げの年は、非常に苦戦しました。「街」と「人」をコンセプトにしたキャ ンペーンをするといっても、いったいどんなものなのか、写真がないので企業さんもわか っていただけない。当時は、先ほど話したように負のイメージがついているので新規のク ライアントさんを見つけるのに非常に苦労しました。2002年に取り組んできました企業さ んの支えがありまして何とか開催することができました。  おかげさまでメディアにも大きく取り上げられまして、企業さんから、このイベントに 協賛したいとお声がかかるようになりました。2003年は乳がん、ピンクリボンのイメージ が非常に変わった年ではないかと思っております。  2003年度の成功によって、企業の立ち位置が変わりました。2002年までは外資系の企業 さんとか機械メーカーさん、製薬メーカーさん、ブラジャーの会社さんが多かったんです が、2003年を機に乳がんに無関係の日本の一般企業もつくようになってきました。  また、従来の企業の窓口も変わってきました。東芝メディカルシステムズという会社は、 マンモグラフィの機械をつくっているんですが、2002年まではその部門でご協賛いただい ていました。2004年からは東芝のブランド事業部や社会貢献室が入ってきました。この活 動をビジネスだからやっているのではなく、社会貢献活動として、東芝ブランドを上げる ための活動という立ち位置に変わられました。また、これまで1部門の担当だったものが、 CSR部門とか社会貢献室という部署に変わっていった企業もいます。  ピンクリボン商品もたくさん出てきております。サンリオさんのキティちゃんの人形な どは寄付金つきで販売されています。売上の一部が日本対がん協会さんに寄付されます。 いろいろな企業さんに応援していただいて、いろいろな方法でピンクリボンのメッセージ を発信していただければと思っています。商品を持っている企業さんには、ぜひこういう 商品をつくってくださいとお話をしています。私たちも、できるだけ、ピンクリボン商品 が注目されるように工夫をして、企業さんにとってもプラスになるようなしくみをつくる ことも大事だと思います。  心がけていることは、毎年同じことをしていないということです。人も企業も飽きます ので、いつも拡大路線を意識しています。  04年から自治体さんともスクラムを組ませていただいております。2004年には神戸に行 きまして、2006年から仙台でも開催させていただいております。  神戸市に最初、話に行ったときは半年くらいたらい回しにされまして、取り組みをなか なかしていただけなかったこともありました。いろいろなつてを使って、最終的には広報 部を窓口に関係各部とうまく調整していただくことができました。今では非常に良いパー トナーになっていただいています。  仙台に行ったきっかけは、仙台市の熱心な職員の方からラブコールでした。ぜひ一緒に やりたいというお話をいただいて2006年からキャンペーンをいたしました。  東京都とも、はじめは名義だけの関係だけだったんですが、一緒に組めないかと話をし に行ったところ、熱心な職員の方が出てこられて、一緒にもっと盛り上げていきたいと。 それがきっかけで、今では、都庁の点灯式や記者会見を一緒にやらせていただくまでにな りました。  今、104の企業と団体さんと、このキャンペーンを運営させていただいております。これ は東京都さんとのコラボの様子ですが、ポスターの交通広告を一緒にやらせていただいた り、都庁の点灯式とか記者会見を一緒にさせていただいております。  仙台は独特な活動を行っています。推進委員会をつくっていただいておりまして、仙台 ならではのキャンペーンづくりに、仙台市さんが中心になってやっていただいております。 弊社も初めて、同業他社である河北新報社さんと共催で、これも業界初です、一緒に手を 組んでキャンペーンをやらせていただいております。  ポイントとしては、こういう活動を立ち上げるときには、イメージをいかに変えるかと いうこと。ネガティブなイメージをいかにポジティブにしていくかということと、ウィン・ ウィンの関係といいまして、自治体さんにとっても企業にとっても、かかわる人すべてに とってハッピーなしくみをつくることが、当たり前のことですが、大事なことだと思いま す。どうもありがとうございました。 ○垣添座長 ありがとうございました。関原参考人からご指摘のことを、さらに具体的に 民間ベースで展開されているということだと思いますが、仙台の話も出ましたが、大内委 員、いかがですか。 ○大内委員 乳がん検診のピンクリボン運動は、もともとは1978年に亡くなられたスーザ ン・コーメンさんの件から始まっています。お姉さんの意思を引き継いで1982年にスーザ ン・コーメンファンデーションが米国でできて、毎年のようにアメリカでは「ファイト・ アゲンスト・ブレスト・キャンサー」というのをやっていまして、それが国民運動になっ ているということで、私は20年来、このような活動が日本でもできないかと考えていたの ですが、こういう形で実現したことに大変感謝しております。 仙台につきましては、仙台市の職員の方は乳がん検診に携わっておられる方で、10年程 前になりますが、マンモグラフィ検診が住民ベースでできるかという厚生省の特別事業を 実施したときに協力された方もおられます。現在は、国のがん対策のための戦略研究とい いまして、超音波による乳がん検診の有効性評価、すなわち、ランダム化比較試験を実施 しています。がん対策のための戦略研究でも仙台市から大変協力をいただいていまして、 この職員から、個別ランダム化比較試験を日本で実施しなければいけないんじゃないです かと、逆に私、言われました。そういうことをつくっていかなければ、いつまでたっても 日本から貴重なデータを出すことはできないということもありましたので、大変うれしい 誤算と言えば誤算ですが、ピンクリボン運動とも大いに連動するものと思っています。 仙台市のピンクリボン運動は去年から始めているのですが、市民も含めて、乳がんに対 する考え方も変わってきましたので、これからもこういう運動を展開していっていただき たいと思っています。 ○垣添座長 ありがとうございました。国がやるべきことと民間、あるいは対がん協会と か、そういうところが力を合わせてやるべきことがうまく力を合わせると、それぞれが補 完し合って、わが国のがん検診あるいはがん対策が推進されるんだろうと思います。  先に進ませていただきます。次の議題は市町村事業におけるがん検診対象者数の算定に ついて、小坂委員、お願いいたします。 ○小坂委員 前回の委員会のときに、自治体の調査について報告させていただきましたが、 どこの自治体が受診率が高いのかあるいは低いのかということ自体が本当のところがわか らないということで、それについて対策案を考えなきゃいけないということがございまし た。  市町村事業のがん検診対象者の算定は、一部の都道府県を除き、各市が独自の方法でや っているわけです。お隣の市が48%、こっちが50%、50%の方が本当に受診率が高いのか というと、今のままではわからないという状態でした。 もう一つは、全体の対象者数が出ているんですが、40代の受診率はどうなのか、年代別 のは出せない状態になっていたんです。そうすると対策をとっていく意味でも問題がある だろう。 さらに、本来は受診率向上のために労力を割くべき市町村担当者が、受診率を算定する ための調査とか推計に労力をとられていたということで、これは何とかするべきではない かということを考えました。 従来の老人保健事業に基づくがん検診であれば、こういう人は除くとか、ある程度の除 外をしていって、こういう人が対象者ですよということができるんですが、今回、健康増 進法に基づく事業に変わる中で、ある市にとっては住民全体を母数とする市が出てきても いいと思います。ただし、市町村の比較とか、従来の考え方から上がっているのか下がっ ているのかということを比較するために一定の基準を設けることが必要ではないかと考え ました。 従来のがん検診対象者の考え方では、大腸がんを例に挙げますと、40歳以上の男女で、 職域で検診の機会がある者は除く、医療の中で検診相当の行為を受けた者は除く、あるい は個人的に検診を受けた、人間ドック等を受けた者は除く、あるいは病気で入院している とかで検診を受けることが事実上不可能な者は除くということを考慮しながら対象者数を 考えている市町村があったんです。赤い部分、国保加入者と、政管健保等の保険者の被扶 養者などが対象になっているのかなという感じでした。 熊本市の場合、どういう算定の仕方をしていたかというと、人口から就業者数を引いて、 農林水産業事業従事者を足して、あるいは長期入院者とか施設入所者を引くというような 細かい作業を行っていたわけです。こういうことについて全国一律の基準を設けて、キチ ッとした比較ができる。本当の受診率が高い低いというのが比較できるようにするには、 どうしたらいいかということを考えてみました。 その際、どこの市町村でも利用ができるデータ、公開されているデータを用いないとだ めだろう。もう一つは、現状では何市でトータルで何人という算定の仕方しかできていな いんですが、年齢別とか男女別を出すことによって、うちの市は40代の女性の受診率が低 いんですという、自分のところの弱点とか強みを知る上でも、年齢階級別の対象者数の算 定をしていったらいいんじゃないだろうかと考えました。 できる限り、今あるデータの中でやっていこうということですが、人口に関してはある だろう。職域の検診がある者については、就業者人口があるだろう。医療の中で検診相当 行為を受けた者、あるいは個人的に検診を受けた者については算定はなかなか難しいだろ う。5番は、検診を受けることが事実上不可能な者、入院しているとか要介護者に相当する、 これは何とか数が出せるのかなと。6、その他当該疾患の治療中の者ということですが、例 えば乳がんで治療中の者ということになると、全体の数からすると1%に満たないような小 さい数であるということから、必ずしも出さなくていいかなということで、考慮する点と して1、2、5、人口と就業者人口、それから要介護者を考慮しました。 具体的に算定する場合に、40歳以上の市町村人口が国勢調査から出ています。5年に一 遍更新ということで一次資料ですね。もう一つは就業者人口、これも5歳刻みで第二次基 本資料の中にありますので、これは出ています。農林水産事業従事者が国勢調査の二次資 料に一部あるのですが、平成2年まで5歳刻みで全部出ていたんですが、現在は政令市を 除いて、15歳から64歳、65歳以上の2区分になっているんです。これを5歳刻みで出す のに若干計算が要るのですが、都道府県別では5歳刻みが出ていますので、これに人数を 合わせていただいて5歳刻みの推計をする。 もう一つは要介護度4、5の認定者ということで5歳刻みの人数を調べていただいて、全 体の人口から就業者を引いて、それに農林水産事業従事者を足して、要介護度4、5を引く ということで、ある程度現在の方法に近い部分で推計ができるのではないだろうかと考え ました。 青い部分ですが、就業者人口を引くというのはどういうことかというと、政管健保、組 合保険の被保険者の人たち、就業者人口は、ちょっとでも働いている人なども含めますの で、パートなどで就労している方とか国保加入者の中でも一部いますので、青い部分を引 いたことになります。最終的に要介護度4、5の人、農林水産事業従事者で調整するという のが、農林水産事業従事者の人たちを割り戻してあげて、要介護度4、5の方々を引くとい うような、これだったらどの市町村でも算定可能でありましょうし、現在のやり方と大き く変わるものではないだろうと思います。 市町村別の検証はできなかったんですが、都道府県別の計算してみて、現行の報告の数 値とどのくらい合っているかというと、相関係数0.91ということで比較的合っていますし、 ある基準をつくることによって今後、受診率向上のために正確な比較もできますし、それ を公表することによって自分のところの受診率を客観的に判断して、受診率向上に結びつ くことができるんじゃないだろうかいうことで考えました。以上です。 ○垣添座長 ありがとうございました。就業者の中で実際に検診を受けておられる方はど のくらいあるか把握されているんですか。 ○小坂委員 就業者の中でも、大きな企業ですと、本人あるいは家族などもかなり対象者 になっていますし、小さな企業だとそういうわけでもなくて、その辺はわかっていない状 態です。 ○垣添座長 それはバッサリやってしまうということですね。外国で受診率の算定はどう していますか。 ○小坂委員 イギリスでは、今回対象になった人の受診率を、アップテイクという言葉を 使って、それがまず一つの、今回の対象の受診率。住民でどのくらい40歳以上の人がカバ ーしているか、カバレッジという形にして、イギリスなどは自動的にまとめて出るように なっていますし、アメリカだとビヘイビアリスクのサーベイランスシステムがあって、30 万人ぐらいに電話調査を行って受診率を算定している。日本の国民生活基礎調査の3年に 一遍の大規模調査に相当するような調査で検証しているというようなことがあると思いま す。 ○澁谷委員 それぞれの市町村の絶対評価というよりは、ほかのところと比較をするため の相対的な基準と考えればいいのかということが一つと、農林水産関係者とか、検診を受 けることが不可能、例えば入院している患者さんとか、そういう問題が出てきていますが、 今すぐでなくても、今後レセプトが電算化されてきますね。今、レセプトの検討会を別の ところでやっていますが、そういうところのデータを将来的には勘案することができるの ではないか。その辺のお考えをお聞かせいただければと思います。 ○小坂委員 国保のデータがかなり入手できるようになってきていると思いますが、健康 増進法の中でどこまでカバーするかという場合に、それ以外の方も含めるという考え方も 多いと思うので、その辺のデータをどうやって入手するかということがあります。将来的 に違う体制になればもっといい方法をとっていくのが当然だろうと思いますし、隣との比 較できない、どの年代の受診率が低いのか高いのかもわからないという状況を改善する第 一歩として、こういう標準化が必要なのかなと思っております。 ○斎藤委員 澁谷委員のご指摘は将来的に非常に重要だと思います。現在はレセプトベー スで、検診として行われた、スクリーニングとして行われた診療行為と臨床上の行為とは 区別できません。検診の供給体制を変える、メタボと一緒にするとか、そういうことにな った場合にレセプトベースで把握できる。それが受診率の把握にもつながりますし、そう いった場合には分母は、小坂先生のプレゼンの中にあった、市民に対する割合ということ になっていくかと思います。 ○石原委員 市町村で現場をやっている者にとっては、就労者を本当にバッサリ切ってい いのか。 私どもで平成15年に市内の企業の検診状況を見たときに、体制をとっているところは 50%でした。体制といっても、保健事業の五つのがん検診を入れているところはほとんど なくて、胃だけだったり胃と大腸だったりという形です。企業でのがん検診の体制が整っ ていない中で、対象としないというのはどうなのかなというのが気になります。 この式でいうと、がん検診の機会がない職域の方が受けられると分母には入らないけど 分子には入るという形でいいのかなということがあります。また、広く対象を捉えるとい う面では、対象人口から、職域とか個人で検診を受けた者と受けられる状態にない人を引 くというのが本当の対象じゃないかと思います。しかし、地域間の比較という統計は、今 のところないわけです。そういうものが自治体においては必要という現状はあります。 一方職域の人が労働安全衛生法とか特定健診と一緒に検診を行う体制をしていくという 現状であればいいのですが、そういうものなくして、これでいいのかなという気がします。 対象を男女別、5歳階級別に出していけるのはすごくいいことだと思います。どこの年代 が受診率が低いということの分析ができますし、そういう統計は必要ですので、5歳階級性 別の対象者をあげて受診者数を出すのはとてもいいことだと思います。 ○小坂委員 石原委員のご指摘のとおりで、就業者人口を引くことに関して、この対象者 が本当の対象者ですよというような説明はまずくて、計算をして、市町村が算定するとき の算定方法としてはこうお示しします、ただし、就労者全員をバッサリ抜くのは、これで いいんですよ、これが対象者ですよということではないんだろうと思います。 就業者のどの程度ががん検診を受けられるのか、実際に受けているのか、細かいところ を言っていくと正解がだれもわからないという状態なので、ある程度エイヤッというとこ ろでやってみて、現状とあまりずれていないことがわかりましたので、あくまで算定をす るときの標準方法としてこういうものを用いるというところで、実際の対象者は、市町村 で全住民にしてもいいのかもしれないと思っております。 ○内田委員 非常に大きな問題だったところが、具体的な提案をいただいて興味深く聞か せていただきましたが、今回の特定健診保健指導がスタートするに当たって、事業主が、 特定健診をやればいいんだ、ほかの検診については少し引いたようなスタンスがうかがえ るんです。そこのところはこれから問題になってくるので、きょうのテーマである検診受 診率を上げ、精度管理を向上させるというところからいうと、将来的には予防保健制度と いったもので、今回は保険者の義務化という形で、特定健診に絞って実施されますが、が ん検診も含めた予防保健制度というものを立ち上げるのが一番制度的にはいいんだと考え ています。 ○中西参考人 乳がんに限ってですが、15〜6社の企業で乳がん検診率をどうすれば上げら れるかというプログラム検討会を立ち上げました。  実際の乳がん検診率が何%だろうというところがいつも議論に上がってきます。東京都 ですと働いている女性がたくさんいる。東京都の検診率はおそらくワースト2ですが、会 社で乳がん検診のサポートをしている企業もあって、もう少し高いんじゃないかというの が、我々東京にいる企業は思っています。100%の検診率が出ないものか、厚労省さんにも お問い合わせをしています。我々もキャンペーンをやっていますので、キャンペーンの評 価をはかるには検診率は非常に大事で、企業さんを抜いてしまうと正確な数値と言えるの か前々からの疑問でした。日本の検診率を上げるために企業の検診率を上げることで貢献 できたらという新しい取り組みのこともありますし、企業の数値を入れていただくよう考 慮いただけた方が我々にとっても非常にやりやすいんですが。 ○小坂委員 市町村事業におけるがん検診と、住民がどのくらい実際に受けているか、両 方考えなきゃいけないと思いますが、東京都でしたら全体の調査、医療で受けている、あ るいは職域で受けている、あるいは市町村事業で受けている、全部調査をやってはいて、 それによると、職域で受けている人たちもかなりいますし、人間ドックで受けている人た ちもいるということがわかっていますので、市町村事業におけるがん検診は一部ではある。 5〜6割をカバーするものなのかなと思っております。 都道府県によっては、「健康日本21」の評価のために住民調査をやっているところもある かと思いますので、それと国民生活基礎調査の3年に1度の大調査の資料などが参考にな るのかなと思っております。 ○大内委員 がん死亡率の20%減少を目標としています。これは国民全体ですよね。であ れば、就業人口を除いて計算するということはおかしいと思います。50%の受診率も国民 全体ですね。確かに所轄が違うとか、いろいろな問題があるかと思いますが、日本全体の がん死亡率を下げるということを前提にすれば、がん検診受診率はきわめて重要な要素で すので、50%を目標にした以上は、就業者を除くべきではないと思います。 もう一つは、メタボのように特定健診に入ってしまえば規制が効くでしょうけれども、 がん検診が特定健診に入っていないということを考えますと、企業の検診においてはキチ ッとした基準が守られない。がん検診の指針が厚労省から出ていますが、これを守ってい るのは自治体による検診のみです。企業についてはその縛りがないということで、国が定 めた対策型の検診の実施方法とか検診方法について守られていないということがあるかと 思います。そのことを徹底するためにも、それから、この委員会の議題である事業評価を しっかりするためにも、就業者も受診率の計算に入れて検討すべきだと思います。 ○鈴木老人保健課長 私どもの観点からすると、必要な数字は3種類、それぞれ目的が別 なものがあると思います。 最初は、市町村が検診を行われる際に必要な名簿、この場合の受診率ですね。石原委員 がおっしゃったように、企業によってもがん検診を実施していないこともありますので、 企業を全部外すのは不適切ということで、出し方なり努力の仕方は市町村によってかなり 違うと思います。 二つ目は小坂委員がご発表になった、市町村における受診率を比較するための目尺、こ の場合はあくまでも市町村検診ですので、いままでの反省点としては、市町村がそれぞれ 用いている分母が違う。それなら少なくともこれは統一をしましょうと。ただし、100%正 確なものはできませんので、ある程度正確性には目をつぶるとしても、比較ができる科学 性のあるものをやりましょうというのが二つ目です。  最後、大内委員がおっしゃったのは当然のことで、人口受診率、人口のうちで受診をし ている人はどのぐらいかを出す。これはぜひ必要だと思います。 国民生活基礎調査の中で、これは聞き取りなので、質を満たした検診を行っているかと いうところはこれから詰めていかなければいけないところですが、そういう人口受診率が 出てきますので、我々の観点からすると、3種類のデータをあまり混乱をしないように、目 的は、真ん中のものは市町村の受診率向上の努力をどうやって評価できるかということで すし、最後のところは、がんの死亡率を減らすために国民がどのぐらい受けているかとい うところですし、最初のところは検診の台帳を管理するためにどうかということですので、 それぞれ若干数字は違うかもしれませんが、それぞれの目的に応じた数値をキチッと科学 的に把握をしていくべきだと。それについて国としても、都道府県や市町村に対してこう いう3種類のデータがあって、こういうふうに用いて、こういうふうに比較をするんだと いうところはキチッと言っていかなければいけないと思います。 ○垣添座長 この検討会として、小坂委員から提案されたような形で、市町村のデータの 比較ができると取りまとめると、鈴木課長が言われたほかの二つのことが薄まってしまい ますよね。これでいいんだということになってしまいませんか。 ○鈴木老人保健課長 最終報告書、これから先生方、座長とご相談してまとめていかなけ ればいけませんが、真ん中のことについては小坂委員がおっしゃったようなことです。1番 目なり3番目で、こういうところを留意をすべきだというところを書き分けるということ で対処できると考えます。 ○垣添座長 1番目と3番目に関して言うと、途中でご質問した、3回検討会をやった後の 今後の計画の中でそれは出てまいりますか。それを想定しておられますか。 ○鈴木老人保健課長 3回目のときにまとめる中でそういうところがキチッと入っていれ ば、今年の残りなり来年なりで、どういうふうに進めるかということは、我々としてはキ チッと受けとめた上で対応しないといけないと思います。 ○垣添座長 わかりました。これはかなり大事なポイントではありますが、時間がありま せんので、ここで議論を打ち切りまして、小坂委員からもう一つ、市町村の事業評価につ いてお願いいたします。 ○小坂委員 がん検診の事業評価の指標の設定について説明させていただきます。 事業評価に関しては、市町村が実施するがん検診について、これまで事業評価の方法や、 国・都道府県及び市町村あるいは検診実施機関などの役割が示されてきました。具体的に いうと平成17年2月の乳がん検診及び子宮がん検診の事業評価の手法、19年6月に胃が ん・子宮がん・乳がん・大腸がんにおいて報告されております。  その中で国の役割として、がん検診受診率、要精検率、精検受診率、陽性反応適中度及 びがん発見率などの各指標に関して達成すべき目標値が示されていないことから、調査研 究事業などを通じてできる限り速やかに設定することになっておりまして、これらの数値 目標、自分のところはどうなんだろうという指標が必要だろうということです。諸外国の がん検診を見ていても、精度管理の徹底あるいは向上のために、がん検診受診率とかがん 発見率などの指標があって、それがクリアできているかどうかということで評価する手法 がとられております。EUでもそうですし、UKでもそうですし、祖父江先生が発表くださ ったオーストラリアあるいはカナダでもそうです。  例えばカナダであれば、乳がん検診受診、初回検診であれば、要検査率が10%未満、継 続実施中であれば5%未満であるということがうたわれておりますし、受診率は7割以上に してくださいということになっています。  UKの場合、日程が示されたはがきが来て、折り返し、受けます、受けませんと、返信用 のはがきで答えるようになっていますので、Acceptance rateが何%以上にするとか、要精 検率を10%以下にしてくださいというのがありまして、それを満たしているかどうかとい うことで、がん検診の指標を達成しているかどうか評価することになっています。  日本のがん検診の指標を設定するときにどうしたらいいかということをいろいろ考えて いきます。各年齢階級でやっていけばいいと思いますが、例えば40から45歳の乳がん検 診でやっていくと、市町村によってはがん発見者はほとんどいないとか、少ない場合があ ります。そういうことがありますので、ある程度集計したデータを利用しないといけない ということがございます。  年齢構成が異なるとがん発見率に影響を与えますから、多くのがんで、高齢になればな るほどがん罹患率が増加しますので、高齢の方が多い場合にはがん発見率が高くなるとい うことがあります。考慮しないといけないと思います。  諸外国では対象年齢を絞って精度管理をやっているということで、50歳から69歳までと いうオーストラリアの例もありましたが、カナダも同様で、死亡率減少効果などの観点も ありまして、対象年齢を絞って受診率などを出しているということです。  がん対策基本法の目標は75歳で死亡率20%減ということで、乳がんなど、5年生存率で いうと10年という言い方もありますが、それより前の段階でかなり受診率を上げないとい けないし、精度管理を徹底しないといけないだろうということから、5歳の各階級別じゃ なくて、40から69歳あるいは70歳以上という形で二つに区分して集計データを用いたら どうか。特に40歳から69歳をメインの対象として評価していったらどうかということを 提案しております。  指標で、諸外国だとサイコロジカルな、精神面がどうかとか、何週間以内に結果が出る とか時間の要素を取り入れている場合もありますが、現状では難しいということから、要 精検率、精検受診率、陽性反応適中度とがん発見率、この四つについて検討してみてはど うかということです。がん検診受診率に関しては、ある程度統一的な算定方法ができてか ら検討してはどうかと考えました。陽性反応適中度は本来だったら分母がBになるところ ですが、全部フォローアップできた例を分母に置けということが書いてありますので、精 検受診者の中で、がん発見率を陽性反応適中度としております。  指標を設定するとき、諸外国と同じようにできない制約として、初回受診者と継続受診 者は、要精検率、がん発見率でも異なるということがわかっているわけですが、その辺が わが国の詳細なデータがなかなか入手が難しいということがあります。  がん発見率などについて、住民の罹患率のデータ、ヨーロッパですと、初回受診者のが ん発見率は、住民の罹患率の3倍より多くなきゃいけませんよというようなことがありま す。住民の罹患率は、研究班等で2001年のものまで出ていますが、地域がん登録がもうち ょっと進んで細かいデータ、最近のデータも含めて、そういうものが得られないと、これ を使って指標を設定するのは難しいということもあります。  その中で、現在の市町村のがん検診の状況を、地域保健・老人事業報告をもとに分析し て範囲を設定していってはどうかということです。  老人事業報告の中では、未把握のものとか、がんであった者以外に、がんの疑いのある 者、一次検診でひっかかった者を全部入れている市もあって、この辺を除いて一応こうい う定義で範囲を分析してみました。  40歳から69歳の大腸がん検診の要精検率の分布です。平均値が7.95、全体より若い年 齢なので少し低くなっていますが、75パーセンタイルだと9.5になります。標準偏差を足 したものでやると11ぐらいの幅になります。英国で乳がん、10%より少ないという上限を 設定していますが、日本でどうやって設定していったらいいのかということです。  その場合に、最初は75パーセンタイルくらいを設定して、それ以下にすると、それをは み出た者は、全国の市町村の中で4分の1ですよということが言えるのかなと思ったんで すが、なかなか難しい問題があります。  がん発見がゼロの市町村も少なくないんです。しかも、受診者が200人以上の市町村デ ータだけを用いて、少し大きなところだけを用いているんですが、ゼロの市町村はすごく あります。こういったデータにかなり引きずられる可能性があります。  市町村データの中の小さな市町村はかなりばらつきが大きい。人口が大きくなればなる ほどある程度収束してくるんですが、大きな市町村だけを対象にするのか、数値を算定す るときに、何万人以上でやってみるとか、そこの設定をしなきゃいけないんですが、そこ は議論が出てきて難しいところであると考えました。  そこでどうしたかというと、母集団である都道府県のデータを用いて範囲を設定したら どうだろうということです。平均の±1.96SDにすると、正規分布の場合に、理論上95%が 存在することになっていますので、これを用いてある程度の範囲を設定してみたらどうか ということです。  精検受診率に関しては限りなく100%に近づくべきで、現象はすごく低いものですから、 都道府県データの平均値を基準として、目標値を上限という形に設定したらどうかという ことでございます。  大腸がんの場合、都道府県別で解析をしますと、青い四角のプロットにある範囲が± 1.96SDの中ということになります。  イギリスみたいに上限を求める、要精検率が絶対低くなきゃいけないですよということ は、ある程度がん検診の精度管理が進んでくればいいのですが、低ければ低いほどいいの かというと、見落としの例が出てきます。日本の場合、見落としをキチッと把握できてい ないシステムなので、上限だけ設けて見落としが多いということになるといけませんので、 95%の範囲を超えた市町村あるいは都道府県のデータに対しては、良いのか悪いのかは検 討しないといけないけど、あなたのところはちょっとほかと違いますよというような基準 を設けていくということです。  実際に計算して、40歳から69歳の例ですが、こういった要精検率、精検受診率、陽性反 応適中度、がん発見率という形で、黒く太くしたところが使われようとしている数値です。  残念ながら、標準偏差が大きなものは1.96SDがマイナスになるというところもあって、 これは0に置きかえています。  これをまとめますと、要精検率、陽性反応適中度、がん発見率の指標がこういったよう な数字が出てきます。大腸がんや胃がんなどは要精検率にかなり幅があります。これが受 診率の指標です。かなり幅が広いです。こういう指標をつくったとしても、この幅に入っ ていればいいんですよということではなくて、都道府県なり市町村で、自分の位置がどこ かということを、平均値とか、75パーセンタイルも含めて、どこにいるのかをきちんと把 握した上で、はずれていればもちろん、何がおかしいのか、あるいはよそよりすぐれてい るのかもしれないですね、それを探るきっかけにすべきでしょうし、その範囲にある場合 でも市町村の比較を行って、本当にいいのか悪いのかを判断していただく必要があるだろ うと思います。  このためには、要精検率など1つの指標だけではなくて、がん発見率と要精検率の組み 合わせとか陽性反応適中度、がん発見率の場合、精検受診率がかなり効いてきますから、 今みたいに精検受診率が低い場合に、陽性反応適中度みたいなものも組み合わせながら、 総合的な評価を行っていくことが必要だろうということです。  これに対しては今回、直近のデータを使って計算してみましたが、本当にそれでいいの か、あるいは精度管理がよくない市町村はこういうデータが出ている、いろいろそういう 事例をもとに評価を行っていく必要があるだろうと思います。  こういう指標を用いる場合に、初回受診者が多いというようなこととか、65歳以上の年 齢が多いというようなこととか、地域で罹患率が高いというものもあるでしょうし、受診 者の絶対数が少ない場合に、一人の発見で大きく振れたりしますから、こういうことも参 考にしながら評価をしていったらいいんじゃないかというようなことでございます。以上 です。 ○垣添座長 ありがとうございました。ご質問、ご発言ありましょうか。 ○石原委員 最後のページに、要精検率、がん発見率の指標に影響を与える因子として、 前回のときに斎藤委員がおっしゃったように、報告の時期によってがんの発見数が違うん です。対がん協会が11月、私の市では乳がんが3と思っていたのが、7月の統計が5名で あったということもあります。早期の人ほど経過をみていくということが、早期に発見さ れて、いい検診であったという捉え方ですが、そういうところが、がん発見率の指標には 影響してこないんですよね。 ○小坂委員 市町村の報告が、厚労省の通知とかなり違っているような市もあって、一次 が要精検ということになると、全部がん疑いに入れている市もあって、そういうことが今 後キチッと報告がなされた上で、市町村の状況が把握できて、それが報告されている上で 解析していかなといけないと思います。そちらの報告をきちんとしていただくのが最低限 の条件だと思っております。 ○斎藤委員 石原委員ご指摘のように、時期的な問題で、精検の最終結果が老健事業のデ ータには必ずしも反映されていません。大腸がんではわずか55〜6%しか反映されていない ということもあります。こういうデータを用いて解析することが果たして実態を反映する かどうかということが問題になります。 まずは最終結果がちゃんと得られるようなシステムをつくることが大事だと思います。 それでこういう指標を分析していくということでなければ正確な評価ができないというこ とが最も重要です。  次に、祖父江先生のプレゼンにもありましたが、目標値を設定するには、理想的には、 死亡率が下がった無作為化試験等の研究をもとに決めなくてはいけないということがあり ます。目標値設定が喫緊の課題だとしても、それを行うには長い道のりがあります。  無作為化試験があるのは乳がん、大腸がんだけでありまして、理想的な数値を求める根 拠は必ずしも潤沢にはありません。そこで、数値目標の設定は研究課題としてやっていか なくてはいけないわけです。小坂委員がプレゼンしましたような例は、基準を設定すると りあえずの方法でありまして、最終的な方法を確立するよう研究を進め、アップデートし ながら理想的な方向に近づけていくべきという認識の上で、とりあえずそのような方法で 目標値設定を行うということかと思います。 ○瀬戸山委員 要精検率のところで、年齢が高い者が多く受診している場合があるんです が、第1回で申し上げましたが、特に大腸がんでは、高齢者が多いと要精検率が高くなり ます。当センターの成績では、96のうち11の市町村で要精検率が11%ぐらい。これらの 市町村では年齢構成はほとんど年寄りです。ですから、市町村で比較する場合、市町村の 年齢構成が60歳代が多いと要精検率は11%ぐらいに跳ね上がります。要精検率に対する年 齢構成の影響も非常に大きい。それから、要精検率は陽性反応適中度にも影響します。陽 性反応的中度は精検を受けた方で、実際にがんが見つかった率を表しているわけですから。  精密検査受診率は市町村によって集計時期が違うんです。取り組みに熱心な市町村と私 どものセンターと共同で追跡をやりましたら、集計時期を一緒にすると20%ぐらい精検受 診率が上がるんですよ。市町村によって集計の時期が違うということも考慮に入れていた だきたいと思います。 ○垣添座長 ありがとうございました。いずれも大変重要なご指摘かと思います。 ○澁谷委員 最後に示された指標の活用のところでは、システムの評価と検診技術そのも のの評価と両方の指標があるように思います。精検受診率のようなものは、どれだけ勧奨 したかとか、システムにかかわる部分の評価の要素が強いわけですし、がんの発見率のよ うなものは検診技術そのものの評価に近いものだと思いますが、いろいろなレベルのもの が一緒になっているということが一つあります。死亡率の問題が出ていたわけですが、早 期に発見された者の割合が高いとか、そういうものは指標にならないんだろうかというこ ととか、95パーセンタイルから外れたものはその原因を考えた方がいいというご指摘だっ たと思いますが、いいか悪いかではなくて、考えてください、ということの問題提起だと いうお話だったと思いますが、自治体側にしてみるとわかりやすい数字がいいわけです。 精検受診率だったら100%に近いのが目標ですよと、これは非常にわかりやすいですね。し かし、60でも、この枠に入っていますよということだと、考えるきっかけといっても難し いような気がするのです。なるべくわかりやすい指標の方がいいのじゃないかと思います が、その辺はいかがでしょうか。 ○小坂委員 わかりやすい指標はもちろん大事です。市町村が自分のところの計算をして みて、いいのか悪いのかパッとわかるような指標が理想的だと思いますが、そのために、 もうちょっと精緻な、細かいデータを分析する必要があるでしょうし、例えば75パーセン タイルで切ってみました、9%未満でなきゃいけないということを設定しても根拠が明確で ないので、本当にいいのか悪いのか検証していかなきゃいけないということになると思い ます。そういう作業をしていく上で、エイヤッと数値を出すことはできると思いますが、 それをどのように検証していくのかは難しい問題かもしれません。 ○斎藤委員 今の点は、47都道府県が一律理想的なレベルにそろえるというのはなかなか 難しいんですね。例えばわかりやすい数値がイコール達成不可能ということになりかねな いんです。考え方としては、ワーストのところを底上げしてやる。それで全体のレベルが 上がる。つまり目標値を設定して少しずつ改善していくと、全体の目標値がだんだん上が っていくわけですね。それで全体がさらに底上げされていくということもありますので、 不完全でもそういう方法をある程度とらざるを得ないと思います。 ○垣添座長 市町村事業におけるがん検診対象者数の算定にしても、事業評価指標にして も、いろいろご指摘いただいたような限界とか問題点があるのは事実でありますが、そう いう基準がないと作業が進まないということで、この検討会としては、小坂委員ご指摘の ような指標で作業を進めることでよろしゅうございましょうか。ありがとうございました。 これに関して、今ご指摘いただいたご意見をどう取り入れていくか、事務局ともよく相談 しながら、指標としては、今あげた二つを取り上げていきたいと思います。 続いて事務局から、がん検診実施体制の強化モデル事業についてご説明をお願いいたし ます。 資料6、斎藤委員だ。失礼しました。 ○斎藤委員 がん検診の、国、都道府県、市町村、検診機関の役割ということで簡単にご 説明申し上げます。お手元の資料は、前回あるいはその前のがん検診検討会でもお示しし てあるものかと思います。 これまでのがん検診精度管理の流れですが、保健事業計画の中で、成人病検診管理指導 協議会が設定され、位置づけられておりまして、国、都道府県、市町村、検診機関の指針 づくり、通達、策定、データの回収、それに対して各都道府県の成人病検診管理指導協議 会がコントロールすることがうたわれていますが、保健事業計画が改定されるたびに協議 会の活性化が連呼されてきました。しかし市町村、検診機関との間の関係が破線で示して あるとおり、実際には成人病検診管理指導協議会はこれまでアクティブではなくてバーチ ャルな存在と言わざるを得ないことが問題でありました。 老人保健課でお調べいただいた昨年のデータでいきますと、大腸がん部会開催が全国で 年に平均0.6回か7回、つまり30%か40%の都道府県では開かれていないという実態もわ かっています。そういうわけで都道府県レベルでの精度管理がなされていなかったという のが実態であります。 こういった中で、国の役割、都道府県の役割、市町村の役割が、平成16年の乳がん、子 宮がんから、17年の大腸がんの検診管理の検討会にかけて議論されまして、報告書の中に このようにまとめられています。 これは要点の抜粋ですが、まず国の役割としましては、実際にはスーパーバイザーであ ります協議会の報告を受けて、国全体、都道府県別の事業評価、実施状況についての分析 及び評価を行うと書かれています。実際はここの部分がシステムとしてはありません。前 回、ご説明申し上げたとおりです。 国はがんセンター等の協力のもと、有効性評価や事業評価にかかわる科学的知見の収集 を行う。有効性に関しましてはガイドラインが四つ、その方法も含めまして上梓されてお りまして、軌道に乗りつつあります。がん検診検討会の資料としても有効活用されている ということで、こちらは実現されつつあります。 事業評価に関しては今、班レベルで研究が始まったばかりでありまして、この委員会も 始まったところでありまして、まさに緒についたところかと思います。マニュアル等を策 定する、指標、目標値の設定はこれからということであります。 都道府県の役割ですが、都道府県内の市町村あるいは検診機関の事業評価を行う。都道 府県全体あるいは市町村ごと、検診機関ごとの評価をやって、外れたところがないかを割 り出す。そのような問題があるところに関しましては、検診実施機関とは認めない措置を 講じるということもうたわれています。この結果を関係者に周知する。情報公開を、ホー ムページを介して住民に積極的に行うということが言われています。 国と同じように説明しますと、これはいまだどの項目もほとんど行われていません。わ ずかに一部の都道府県で、一部の検診についてこういった情報公開が始まっているという 実態だと思います。 市町村は、検診の結果を都道府県にきちんと報告する。これがすべての精度管理のもと でありまして、とりわけ精検結果がきちんと報告されなければなりません。実際には、検 診実施機関によって、精検結果の回収に関しましては非常に大きな差がありまして、例え ば対がん協会系の優良な機関ですと、都道府県内の医療機関すべてとパイプを持っていて、 定期的かつ系統的に精検結果を回収する、場合によっては病院にカルテ調査に行くという システムができているところもありますが、そういったチャンネルを持っていない、シス テムが欠如しているところもたくさんあります。一番根本のところができていないのが実 態です。  市町村の役割としては、受診者によく説明をして、がん検診についての理解を得るとい うことがあります。協議会における評価の結果を踏まえて改善していくということです。 適切な検診実施機関に委託することを市町村の役割として行う。しかしこれらいずれも絵 に描いたもちにとどまっているのが現状かと思われます。 それぞれのレベルで役割はすでに規定されていることが多いんですが、実現されている、 あるいはその方向に向かうめどが立っている項目はごくわずかでありまして、関原委員に 評論家的と言われるかもしれませんが、それぞれの役割を全うするようなシステムを構築 するのは今後の課題ということになるわけであります。 そういう状況で、いろいろな面が欠如しているわけですが、その中で特に、国のレベル で必要な役割として、前回、石原委員かと思いますが、事業評価は国でやってほしいとい うご意見も、冒頭の前回の論点にまとめられてありますが、データの評価やフィードバッ クの機能を構築するという観点からのプランをここにお示しします。 前回お示ししたのとは少し観点が違いますので若干図が改訂されていますが、厚生労働 省からデータを、評価を行える機関に提供しまして、ここで評価を行い、そこからのフィ ードバックを受けて、都道府県、市町村に反映する。それを経てデータの公表を市町村、 都道府県が行うというモデルです。さらに市町村は検診機関に委託するときに、優良な検 診機関を選ぶために、昨年、がん検診検討会報告書で出されました仕様書の基準を使うと いうプランです。 ほかにもいろいろ改善すべき点はあると思いますが、この、データの評価、フィードバ ックに関するプランですが、これまでの都道府県、市町村、検診機関の役割分担から一歩 進んで、それらに実効性を持たせるべく、データの評価、フィードバックを取り込んだシ ステムを考えて提示した次第です。以上です。 ○垣添座長 ありがとうございました。考え方はきれいに整理されていますが、実態は全 然動いていないということでありますが、事務局としてはどう考えておられるんですか。 ○鈴木老人保健課長 10年前に老人保健課にいましたが、当時と同じような問題が残って いて、遅きに失したかもしれませんが、具体的に前に出ないといけないと思いますし、対 策基本計画ができたわけですから、きれいに整理をしていただく中で、クリティカルなポ イントが幾つかあると思います。それを私たちは押さえていかなければいけないと思いま すが、先ほどのご報告とも総合して考えると、いろいろなデータを、市町村にかなりご負 担をかけてとっているにもかかわらず、そのデータが生かされていないというポイントが 一つ。 もう一つは、さまざまなデータをとっていただいているわけですが、必ずしもデータの とり方がそろっていないという点。この二つを合わせて考えますと、ある意味で、とって いただくデータは最小限にするミニマムという考え方が一つと、もう一つは、とり方につ いて学問的には100%じゃないけれども、整合性が必要だ、横の比較、年代的な比較ができ るためにはそういうものが必要だということ。三つ目は、データはとるだけでは意味がな いので、ご自分の評価と、もしくはフィードバックにかかってくる。  その三つの考え方をそろえた上で、3回目に先生方にご相談するときには、この委員会の 報告は三つのパートに分かれると思いますが、一つはテクニカルに、具体的に受診率の分 母をどうそろえていくべきかとか、精度管理を上げるために具体的に何をとって、何をと らなくてもいいことにするか、そういうテクニカルな今までいただいたご議論、もし足り ないのであれば、こういうところを詰めていくというところを考えていただくのが一つあ ると思います。  もう一つはシステミックに、例えば受診率の問題にしろ、2年に1回なのか、毎年なのか、 人口受診率なのか、老人保健法もしくは健康増進法による検診受診率なのかという違いが ありますが、特に乳がんなどにかんがみれば、欧米に比べて非常に受診率が低いというこ とは確かだと思いますので、受診率を抜本的に高くしていくために、関原参考人からご指 摘があったように、何が低くしている原因なのかというところがわかっていないのであれ ば、それをわかるべきですし、高くしていく上で、どうしても財源論は避けて通れないと 思いますが、財源論をする前に、だれがお金を出すにしろ、どういう社会的効果があるか を出していくべきではないかということだと思いますので、システミックな全体的な議論 がもう一つあると思います。  最後は、それ以外のところで、先生方さまざまなご意見がありましょうから、今回議論 されたところで、今後ともキチッと考え、結論を出していくことはどういうことがあるか、 その3点ぐらいを整理をしていただいて、宿題をいただきたいと思っています。 ○垣添座長 事業評価に関していうと全然動いていないというところは大変つらいところ ですね。 ○大内委員 斎藤委員の報告の中で確認していただきたいのは、言葉が成人病検診管理指 導協議会のままになっています。これは、きょう配付されています「がん検診の事業評価 の手法について」、平成19年6月の中間報告の中にもありますように、生活習慣病という 言葉に変わっていますので、変更していただきたいと思います。 垣添座長から厚労省へのご質問に関係するのですが、この委員会で議論すべきは国の役 割ということでしっかりと確認していただきたい。冊子になった報告書にも書いてあるの ですが、国の役割の中に、最初に、都道府県の生活習慣病検診管理指導協議会の活動につ いて具体的な報告を求めています。その上で分析評価を行うとあるのですが、これをキチ ッとした法整備の中に入れる可能性があるのかどうか。がん対策基本法の中には、がん検 診の事業評価を行うと書いてあります。それを拡大解釈すれば、非常に重要な項目につい てしっかりやるということを第1条的なところで書いておくべきかどうか。私はおくべき だと思いますが、そのことの確認をお願いしたいと思います。 ○垣添座長 私もおくべきだと思います。いくら繰り返していても動いてないということ は、大内委員ご指摘の一番根本の部分がきちんと押さえられていないからだということで、 国の責任として、協議会をきちんと動かすように指導するということが動き出さないと、 斎藤委員が今示されたことは全然意味をなさないということになりますから。 ○大内委員 厚生労働省から生活習慣病検診管理指導協議会へ点線の矢印になっています が、これを実線にしていただきたいということです。 ○垣添座長 それがないと全然事態が動かないということで、一歩前進というのは、点線 を実線にするところからとりあえずスタートしないと動かないということだと思います。 ぜひお願いをしたいと思います。 まだいろいろあるかと思いますが、時間の関係で、事務局から、がん検診実施体制の強 化モデル事業について説明をお願いします。 ○古元課長補佐 お手元の資料8をごらんいただきたいと存じます。  「がん検診実施体制強化モデル事業について」ということで、1枚おめくりいただきまし て、案と書いてありますが、本事業は今年度新規の事業でございます。詳細につきまして はもう1ページおめくりいただきまして、がん検診実施体制強化モデル事業実施要綱のご 案内をさせていただきたいと思います。  目的といたしましては、市町村が実施するがん検診の受診者数、要精検率、がん発見率 などのデータを収集、データベースを構築することにより他の市町村との比較を行い、精 度管理に資するとともに、データベースをホームページ上に公表することを目的とする。  これだけを読みますとよくわからないということですが、2番で、実施主体としては、本 事業は都道府県、10カ所の都道府県を予算上は想定しております。  4番、実施方法等でございます。都道府県がホームページを設置いたしまして、管内の市 町村及び検診実施機関、そういったところのデータを収集した上で、県のホームページに 掲載する。公にしていきましょうということで、斎藤委員のプレゼンテーションにありま した最後のスライドの部分に、データを収集したものをきちんと公表していくべきだとい う内容に資する事業だと考えております。こちらも可及的速やかに募集をかけた上で、10 都道府県で今年度実施する予定でございます。以上でございます。 ○垣添座長 ありがとうございました。斎藤委員、今の点について何かありますか。 ○斎藤委員 補助をする10都道府県に関してですが、アウトプットを評価するような仕掛 けを周到につくっていただいて、それをクリアするという条件をつけていただいて、後で 検討会なり委員会で発表していただくのがいいかと思います。 ○垣添座長 そうでしょうね。ほかにご意見ありましょうか。 ○関原参考人 お話を伺っていて、自分のときも話したんですが、精度管理の話が中心に なっているわけで、これは非常に大事な話ですが、今回の委員会の開催の趣旨は、がん検 診の受診率を5年以内に50%にするというのが最初に書いてあるわけです。ステークホル ダーの参画を得ることによってがん検診の受診率向上の取り組みや精度管理となっている わけですが、量が多くないと正確な精度管理はできないわけなので、いままでやってきた 検診率向上策では何がおかしくて、本当に何をすべきだったかということを究明しない限 りあまり意味がないということだ思います。 検診機関の役割が斎藤先生にスライドにあります。検診機関だって受診者をたくさん集 めなければ正確な検診はできないんだから、検診機関の役割は、まずたくさん検診をする というのが最大の目的だと思います。それをベースに精度管理をしていくということで、 それが集まらなかったら精度管理ができないと思うだけに、もっとここのところに突っ込 んで、具体的なものを、次回には討論されると思いますが、そこがなるほどというふうに なっていかないと、50%という目的はものすごく高いだけに、よほどのことをやらない限 り、5年間でやろうというのは難しいので、そこだけはよろしくお願いしたいということで す。 ○垣添座長 この検討会を開いた意味が全然ないような形のまとめにすると大変ぐあいが 悪いので、せっかくこれだけの時間と労力をかけて皆さんにご議論いただいているわけで ありますから、3回目にはそういうところまでつながる形にしたいと思っています。大変大 事なご指摘だと思います。 ○澁谷委員 受診率を上げることに成功した市町村や、精度管理の協議会で、いい事例を 実施している協議会が都道府県にあるとか、そういうものを収集し、皆さんにお知らせで きるようなものを事務局はお持ちでしたら、参考にしてみる必要があるのではないかと思 いますが、いかがでしょうか。 ○垣添座長 もしあれば、次回出していただければ幸いです。 ○内田委員 厚労省は、今回のがん対策の予算の概算要求はもう決まりましたか。 ○鈴木老人保健課長 きょうです。 ○内田委員 それを出していただいて、検診の評価と精度管理、検診受診率の向上のあた りにどれぐらい予算がついたのか、昨年比としてお出しいただければと思います。 ○鈴木老人保健課長 次回、予算を出させていただきますが、検診の費用は、市町村のも のは交付税として入っていますので、厚生労働省の予算に計上されていません。ごく一部 しかありません。すみません。 ○垣添座長 そこでもう一工夫しないと、関原参考人がご指摘のような飛躍的な、50%を 目標とするような達成は決してあり得ませんから、そこにつながるようなことを報告書の 中に盛り込むようにしないといけないと思います。 きょうはいろいろなデータを示していただきましたが、時間が参りましたので、これで 終了させていただきます。なお、時間の関係で、委員の皆様から必要なご意見を十分お伺 いできていないところがありますので、今後、報告書ができ上がるまでの間に、事務局の 方にご意見をお寄せいただければ最大限取り入れさせていただきたいと思います。 最後に事務局から何かありましょうか。 ○古元課長補佐 本日はありがとうございました。次回検討会の日時、場所等につきまし ては、委員の先生方の日程を改めてご調整させていただいた上で追ってご連絡をさせてい ただきたいと思います。本日は皆さんありがとうございました。 (終了)                    照会先:老健局老人保健課 連絡先:03-5253-1111 担当者:古元(内線3942) 大塚(内線3946)