07/08/23 平成19年8月23日薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録 1.日時及び場所    平成19年 8月23日(木) 14:00〜    霞が関東京會舘「シルバースタールーム」 2.出席委員(15名)  五十音順    荒 井 保 明、 飯 沼 雅 朗、 石 山 陽 事、 小 田   豊、   ◎笠 貫   宏、 北 村 惣一郎、 倉 根 一 郎、 澤     充、    勝 呂   徹、 武 谷 雄 二、 土 屋 利 江、○中 原 一 彦、    長谷川 紘 司、 松 谷 雅 生、 山 口 照 英  (注) ◎部会長 ○部会長代理 他 参考人2名     欠席委員(2名)五十音順    小 俣 政 男、 富 田 基 朗 3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、    中 垣 俊 郎(審査管理課長)    俵 木 登美子(医療機器審査管理室長)、   豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、    丸 山   浩(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター次長)、他 4.備考    この会議は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○医療機器審査管理室長 定刻になりましたので、ただ今より医療機器・体外診断薬部会 を開催させていただきます。委員の先生方におかれましては御多忙の中、御出席いただき まして大変ありがとうございます。本日は17名の先生方のうち、現在13名の先生方に御 出席いただいており、審議会令に基づく定足数に達しておりますことを御報告いたしま す。澤委員と武谷委員は本日、遅れて御出席いただく予定になっております。小俣委員と 富田委員は御欠席とのことです。  本日の議題は、個別の品目に関するもののみですので、審議会決議に基づき、会議は非 公開とさせていただきます。それでは笠貫部会長、議事進行をよろしくお願いいたします。 ○笠貫部会長 では最初に事務局より、資料の確認をお願いいたします。 ○事務局 本日はすべて非公開案件です。まず資料1-1は、医療機器「ジェイス」の生物 由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造承認の可否及び再審査期間の指定につ いてです。資料1-2はジェイスの審査報告で、本日配付させていただいた資料です。資料 2-1は、医療機器「頸動脈用プリサイス」の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医 療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品 の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定についてです。資料2-2は、医 療機器「アンジオガードXP」の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指 定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要 否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定についてです。いずれも分厚い資料となっ ております。資料2-3も本日配付させていただいたもので、頸動脈用プリサイス及びアン ジオガードXPの審査報告です。資料3-1は、医療機器「血管内OCTイメージワイヤー」 の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間 の指定についてです。資料3-2は、医療機器「血管内OCTイメージングシステム」の生 物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指 定についてです。資料3-3も本日配付したもので、血管内OCTイメージワイヤー及び血 管内OCTイメージングシステムの審査報告です。資料4-1は、「医療機器・体外診断薬 部会報告品目」です。  引き続き参考資料の関係です。参考資料2-1として、「関連12学会承認 頸動脈ステン ト留置術実施基準」、参考資料2-2として、「医療機器のクラス分類ルール」があります。 今の2点は本日配付した資料です。最後に参考資料5-1として、「薬事・食品衛生審議会 薬事分科会における利益相反問題への対応について」があります。資料は以上です。もし 足りない委員がいらっしゃいましたら、事務局までお知らせいただければと思います。 ○笠貫部会長 続いて、本日の審議事項に関与された委員と、利益相反に関する申出状況 について、事務局から御報告をお願いいたします。 ○事務局 本日、審議対象となっている品目について、いずれも関与された委員はいらっ しゃいません。また、参考資料5-1の別紙2としてお配りしておりますが、本年4月23 日の薬事分科会申合せに基づき、利益相反に関する申出状況を確認させていただきまし た。本日参加された委員のうち、長谷川委員におかれましては、議題2の審議品目の申請 者であるジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社より、500万円以下の寄附金を受け取 っていらっしゃるとのことでした。申合せ事項の2.に従って、御意見をいただくことは 可能ですが、議題2の議決へは御参加いただけませんので、御容赦いただけますようお願 いいたします。このほかに退室いただく委員、議決に参加いただけない委員はいらっしゃ いません。 ○笠貫部会長 それでは議題1、医療機器「ジェイス」の生物由来製品又は特定生物由来 製品の指定の要否、製造承認の可否及び再審査期間の指定について、御審議をお願いした いと思います。  本品目の審議に当たりましては、参考人として、京都大学形成外科学分野教授の鈴木茂 彦先生、東北大学救急医学分野教授の篠澤洋太郎先生に御出席いただいております。よろ しくお願い申し上げます。それでは審議品目の概要について、事務局から説明をお願いし ます。 ○事務局 資料1-1を御覧ください。医療機器「ジェイス」について御説明申し上げます。 申請者は、株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングです。本品目は、患者自身 の皮膚組織から分離した表皮細胞を、マウスの胎児由来細胞をフィーダーとして培養する ことにより、表皮細胞を□〜□層程度に重層化してシート状にしたGreen型の自家培養表 皮です。重症熱傷患者の深達性II度熱傷又はIII度熱傷に対し、同種皮膚等により真皮組織 を再生させた上で本品を移植し、生着・上皮化することにより創を閉鎖することを目的と しております。本品の審査の概要等については、本品目の審査を行った独立行政法人医薬 品医療機器総合機構から、御説明申し上げます。 ○機構 それでは医薬品医療機器総合機構より、「ジェイス」の審査報告について御説明 申し上げます。資料1-2を御覧ください。本品は総合機構での審査に当たり、御覧の専門 委員の方々の御意見をいただきました。本品は患者自身の皮膚組織から分離した表皮細胞 を、マウス胎児由来の3T3-J2細胞をフィーダーとして培養することにより、表皮細胞が □〜□層程度に重層化してシート状になったGreen型自家培養表皮です。熱傷は傷害が達 している深さにより、I度、浅達性II度、深達性II度、III度熱傷に分類されますが、深達 性II度では上皮化に3〜4週間程度を要し、III度熱傷においては上皮化は起こらないとさ れております。本品は重篤な広範囲熱傷患者のIII度熱傷部位に対し、創を同種皮膚等で処 置した後に移植し、生着・上皮化により創を閉鎖することを目的としております。  本申請品目の外観写真をお示しします。左は自家培養表皮を「キャリア」と呼ばれる支 持体に懸架した状態で、右側は左の写真の培養表皮とキャリアをカバーシートで包んで、 さらに一次包装した状態です。本日は一次包装及び二次包装をした状態のサンプルを御用 意いたしました。ただ、本日のサンプルには培養表皮は含まれておりません。  重篤な広範囲熱傷の既存の治療方法は、自家植皮です。III度熱傷では上皮化が起こらな いため、また深達性II度熱傷では上皮化に時間を要するため、自家植皮による創の閉鎖が 行われます。自家植皮によって閉鎖できない熱傷創が存在すると、細菌感染等により全身 状体が悪化する可能性が高くなるため、早期に創を閉鎖することが重要です。しかし広範 囲の熱傷においては、自家植皮のための恵皮面積が不足すること、恵皮部位は新たな創と なること、自家植皮を繰り返す必要があることも多く、侵襲が多いこと等の問題がありま す。そこで本品は、恵皮面積が確保できない広範囲熱傷に対し、少量の皮膚組織から自家 培養表皮シートを作製して、創に移植することにより、早期の創閉鎖を図ることを目的と しております。  次に、国内外における状況です。現在のところ、国内で製品化されている自家培養表皮 はありません。海外においても本品の使用実績はありません。本品と類似するGreen型の 自家培養表皮では、本邦の臨床研究として80例以上の報告があります。また、海外にお いては米国で「Epicel」という製品が市場導入されております。「Epicel」は人道使用医 療機器(Humanitarian Use Device)に指定されておりますが、現在までに承認を受けたと の情報はありません。韓国においては、「Holoderm」という製品が承認されております。  本品の製造においては、こちらに示すヒト又は動物由来の原料が使用されております。 動物由来原料については、ウイルス否定試験やウイルス不活化/除去処理による安全対策 が講じられていますが、感染症の危険性を完全に排除できないことを、添付文書等におい て情報提供し、本品の治療上の有用性を検討の上、必要最小限の使用にとどめることにつ いても注意喚起されます。  次に、本品の製造方法の概略について、御説明いたします。まず医療機関で採取された 患者の皮膚組織を受け入れ、表皮細胞を分離培養します。表皮細胞の培養にはフィーダー 細胞が必要なため、マウス由来の3T3-J2細胞をあらかじめ培養し、増殖能を剥奪するた め、X線を照射してフィーダー細胞を作製します。表皮細胞をフィーダー細胞とともに培 養し、移植スケジュールの調節等のため、必要に応じて表皮細胞の凍結保存が行われます。 得られた表皮細胞を培養表皮シート作製用のフラスコに播種して、□〜□日間培養し、表 皮細胞を重層化させます。そして培養表皮シートを、酵素によってフラスコから剥離して 包装し、患者を特定するための表示や製造日時等の必要事項の表示を行った後で出荷され ます。本品の物理的・化学的性質に関しては、こちらに示す試験が実施されました。  次に、製造方法の変更についてです。本品は治験で使用された製品と承認申請された製 品とで、これらの点において製造方法が変更されています。製造方法の変更については、 規格及び試験方法に設定された試験及びその他の物理的化学的性質に関する試験が実施 され、変更前後における品質の比較が行われており、問題はないと考えます。  次に、規格及び試験方法等品質管理についてです。本品の品質管理は原料、製造工程、 そして最終製品まで、各ステップにおいて試験が設定されます。皮膚組織の受入検査とし ては、これらの試験が設定されております。製造工程における工程検査としては、こちら の項目が設定されており、さらに本品の出荷検査としては、こちらに示す項目が設定され ております。出荷検査の中の生菌数試験及びマイコプラズマ否定試験は、試験の結果を得 るまでにそれぞれ□日間、□日間を要することから、出荷検査においては直近の使用済み の培地を検体として、試験が実施されます。  次に、確認検査についてです。最終製品の培地及び洗浄液を検体とするマイコプラズマ 否定試験、無菌試験が確認検査として実施されます。試験結果はそれぞれ出荷の□日後、 □日後に得られますが、本品の有効期限は56時間と短いため、患者への移植後に試験結 果が判明することとなります。そこで、あらかじめ医療機関及び患者にはその旨と、汚染 が確認された場合の対処法についての情報提供をするとともに、汚染が確認された場合に は、速やかに医療機関に連絡することとされております。  次に、安定性についてです。本品の安定性は規格及び試験方法に設定されている試験項 目で確認され、貯蔵方法は10〜25℃、有効期限は本品が一次包装されてから56時間と設 定されております。  次に、生物学的安全性試験についてです。本品は細胞・組織加工医薬品医療機器に関す る指針に基づく検討がなされ、遺伝学的安定性及び造腫瘍性については、これらの試験が 実施され、異常は認められませんでした。また、本品には製造工程由来の物質が残存する ことから、ウシ血清アルブミン、マウス由来フィーダー細胞、抗生物質等の残存量が測定 されました。  安全性に関するこれらの試験結果を踏まえ、遺伝学的安定性及び腫瘍化に関する試験で は異常が認められず、重大な懸念はないと考えられますが、その可能性は完全には否定で きないため、添付文書等において、長期的な安全性については確認されていないことが注 意喚起されます。製品に残留する物質に関して、ウシ血清は規格として残留量が管理され ます。また、国内外で臨床使用された培養皮膚や培養表皮での残存量との比較から、安全 性上の問題の発生する可能性は低いと考えられますが、アナフィラキシー等の発生の可能 性は否定はできません。抗生物質、コレラトキシン等の残留量についても問題はないと考 えますが、同様にアナフィラキシー等が発生する可能性は否定できません。そこで添付文 書において、これらの物質に対する過敏症の既往歴がある患者には使用しないこと、移植 後の状態を慎重に観察することが注意喚起されます。  次に、性能についてです。本品は自家培養表皮という特性上、性能に関する試験は実施 されておらず、ヒトへの培養表皮移植後の組織学的経過に関する文献報告を引用して、考 察が行われております。  次に、臨床試験についてです。本品の有効性、安全性を確認するために、重症熱傷を対 象とし、国内2施設において全2症例で臨床試験が実施されました。本品の使用方法はIII 度熱傷創に対して同種皮膚を移植し、その2〜3週間後に同種皮膚を除去し、本品を移植 するという方法です。有効性は、本品移植4週間後の移植部位における表皮形成率により 評価され、安全性は本品移植4週間後、あるいは上皮化完了までのどちらか長い方の期間 に発生した有害事象に基づき評価されました。  こちらは臨床試験の2症例における臨床試験成績です。Burn Index(BI)が、30.0及 び60.5の症例において、本品がそれぞれ450cm2、602cm2が移植されました。表皮形成率 はそれぞれ50%及び100%との結果でした。有害事象については2症例に発現し、症例A では感染、急性肝機能障害等が発生しましたが、重篤ではなく、軽快、消失しました。症 例Bの方は重症度が高く、本品移植部位の表皮形成率は100%であったものの、本品移植 62日後に急性腎不全により死亡されました。本有害事象については重症熱傷と感染治療 薬に起因するもので、本品との因果関係がある可能性は低いと、申請者は説明しています。 長期的な有効性、安全性については、症例Aで移植14日後に創の状態が観察され、移植 部位には瘢痕・拘縮・潰瘍が見受けられました。しかし本症例については退院後、十分な 治療が行えなかったことから有害事象の原因の一つと、申請者は説明しております。  以上の臨床結果について、機構は次のように考えます。有効性については、適用部位に おける表皮形成が確認され、安全性については本品との因果関係が強く示唆される重篤な 有害事象は認められていないと評価しています。  本品の臨床上の位置付けは、標準治療が確立されておらず、自家植皮のための恵皮面積 が確保できない重篤な広範囲熱傷を対象とすることが妥当であり、そのような対象におい ては本品を新たな治療の選択肢として位置付けることができると考えます。  本品を移植する創の熱傷深度ですが、臨床試験の結果を踏まえ、原則としてIII度熱傷創 とし、深達性II度熱傷への使用は、III度熱傷創に深達性II度熱傷が混在し、両者を分けて 治療することが困難な場合に限ることが妥当と判断いたしました。ただし、深達性II度熱 傷創への臨床使用経験はないことを情報提供し、製造販売後には深達性II度熱傷創へ適用 した場合について、情報収集をすることが必要と考えます。  次に、本品移植前の処置方法についてです。臨床試験の結果を踏まえ、真皮の再構築は、 原則として同種皮膚移植とすることが妥当と考えます。しかし、本邦における同種皮膚の 供給状況を考慮し、同種皮膚移植が実施できない状況も予想されることから、それ以外の 処置による真皮の再構築も否定しないことが現実的と考えます。ただし、同種皮膚移植以 外の前処置についての臨床経験がないことを情報提供し、製造販売後に同種皮膚移植以外 の前処置がなされた場合について、情報収集することが必要と考えます。  本品を使用する医療機関及び医師の条件としては、重症熱傷の治療が可能な医療機関で あること、重症熱傷の治療に習熟した医師が所属することが必要と考えます。また本品の 適正使用のため、使用される医療機関の追加は慎重に検討することが必要と考え、今後実 施される製造販売後臨床試験により、有効性及び安全性を評価した上で、適切な情報提供 とともに、本品が使用される医療機関を追加することが妥当と考えます。さらに、現時点 で得られている情報は、極めて限られているということを踏まえ、製造販売後臨床試験及 び使用成績調査を実施して、早急に情報収集をし、その結果を適切に情報提供することが 必要と考えます。  製造販売後臨床試験の計画としては、国内13施設において、30症例を対象とした試験 計画とされております。迅速に情報収集するため、試験は遅くとも本品の市場への提供と 同時に開始されるという計画になっております。また、使用成績調査については原則とし て再審査期間中、全症例が調査される計画となっております。  総合評価ですが、以上を踏まえ、本品は適切な医療機関及び十分な知識・経験を持つ医 師のもとで適正使用され、十分な情報提供が行われるとともに、製造販売後に安全性及び 有効性に関する情報が早急に収集され、必要に応じて適切な対応が取られるのであれば、 次のような承認条件を付した上で、以下のような性能、使用目的、効能又は効果のもとで 承認しても差し支えないと、機構は判断いたしました。本品の性能、使用目的、効能、効 果については、こちらにに示します記載で承認することが妥当であると総合機構は判断い たしました。  承認条件の一つ目は、本品の適応対象を適切に治療できる医療機関において、重症熱傷 症例の治療に十分な知識・経験のある医師により、本品の有効性及び安全性を理解した上 で用いられるよう、適切な措置を講じること。二つ目は、治験症例が極めて限られている ことから、本品の有効性及び安全性を確認するための製造販売後臨床試験を実施し、その 結果を速やかに報告すること。三つ目は、治験症例が極めて限られていることから、原則 として再審査期間が終了するまでの間、全症例を対象とした使用成績調査を実施し、本品 の有効性及び安全性に関する情報を早期に収集し、その結果については定期的に報告する こと。四つ目は、製造販売後臨床試験及び使用成績調査の結果については、迅速に公開す るとともに、使用する医師、医療機関に対し適切に情報提供をし、患者に対する情報提供 資料にも適切に反映すること。このようにすることが妥当と考えております。  本品は新構造医療機器に該当し、本品の特性及び対象患者数を考慮し、再審査期間は7 年とすることが適当と考えます。また、本品は自己由来の細胞を加工した製品ですが、製 造工程で使用される原料等を考慮して、特定生物由来製品に該当すると考えます。以上、 「ジェイス」の審査報告について御説明いたしました。  ここで、先生方からいただいた事前コメントを御紹介いたします。東邦大学医学部整形 外科教授の勝呂先生より、御意見をいただきました。一つ目として「最大の問題は、熱傷 に感染が合併しているときには、生着率の低下が考えられます。何か対策はありますか」 ということ。二つ目として、「臨床的には有用と考えます」という御意見をいただきまし た。一つ目の感染については御指摘のとおり、移植部位における感染又は自家培養表皮の 感染は、培養表皮の生着に大きく影響を与えると考えます。そのため添付文書において、 「移植創に明らかな感染がないことを確認の上、適用すること」と記載することにいたし ました。また、本品の生着には移植部位の感染コントロールも含めて、良好な真皮の存在 が重要と考えております。具体的な対策としては全身状態の管理、抗生物質の使用等によ るものと考えております。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○笠貫部会長 どうもありがとうございました。それでは参考人の先生方にも、お話を伺 いたいと思います。まず東北大学救急医学分野教授の篠澤先生に、熱傷治療の現状と言い ますか、それについての本品の位置付け等について、コメントをいただけたらと思います。 ○篠澤参考人 今の御説明にもありましたように、熱傷にはI度、II度、III度とあります が、「ジェイス」の適用となるのがIII度熱傷で、それも広範囲ということになります。現 在の治療は、こういう患者にはIII度の所を全部取って、30%くらいであれば同時に正常な 皮膚から恵皮部を取って、それをメッシュあるいはシートで植えて治療をするということ をやっております。しかし、より広くなると取る場所がなくなってしまうので、重症な場 合は一遍にIII度熱傷を取り切ることができず、残したまま新たな恵皮部が回復するまで待 って、それを取ってまた使うことを繰り返してやるということになるかと思うのです。こ の培養表皮があれば、何回も繰り返す必要がないということと、初めに取るのが1cm2、 あるいは3cm2という非常に小さいものですので、正常な皮膚を大きく傷つけなくても済 むという利点もあると思います。こういう点で要請は非常にあるかと思います。 ○笠貫部会長 引き続き京都大学の鈴木先生のお話を聞いた上で、委員の先生方から御質 問を受けることにしたいと思いますので、熱傷についての説明、あるいは使用上の注意点 等も含めて、コメントをいただけたらと思います。 ○鈴木参考人 今、篠澤先生がおっしゃいましたように、III度の熱傷は、広範囲の場合は 自然には治りませんので、必ず自家の皮膚移植が必要ですが、採皮部、恵皮部には限りが あります。また少し取れる所があっても、採皮部から皮膚を取ると、そこもまたある意味 でII度の熱傷と同じような創面になってしまいます。もともと50%の熱傷の人から20% ないし30%取ると、80%もの熱傷になってしまい生命に影響があります。そういう意味 で少しずつしかできません。それで採皮部を少しでも減らすことができましたら、生命を 助けるという意味では、非常に貢献度が大きいと考えられます。  ただしネックは、培養表皮はIII度の熱傷には生着しないのです。そこがジレンマなので す。III度の熱傷に生着させようと思ったら、真皮構造を作らなければいけない。そのため には北村委員が理事長をされている日本組織移植学会の下部機関、組織移植ネットワーク の中の下部機関、スキンネットワークから皮膚をもらってきて、他人からの皮膚を植えて それが一旦生着したところへ培養表皮を植えると、非常に付きやすいのです。そうします と、III度の熱傷を放っておくのとは違って感染もコントロールでき、培養表皮を作るまで の2、3週間、待っていれるという状況になります。そのように前もって同種皮膚を移植 した上で、培養表皮を使うような使い方をしますと、かなり価値が高いと思います。  深達性II度の熱傷の場合も、通常は2、3週間、あるいは3、4週間で上皮化します。 小範囲の場合はそれでいいのですが、広範囲のIII度と混在したようなケースは、多くの場 合、深達性II度熱傷はIII度に移行します。したがって、深達性II度熱傷も含めて考えるの が妥当だと考えます。 ○笠貫部会長 それでは両先生への御質問も含めて、ただ今、事務局から御説明いただい た品目について、委員の先生方から御質問をお受けしたいと思います。何か御質問はござ いませんか。 ○北村委員 臨床の経験が挙げられているのが、わずかに2例というのは、何か明確なも のがあるのですか。こういうものの審査の数から見ると、非常に限られているように思う のです。何か背景があるのでしょうか。もちろん各施設の医師主導の形で、何例か行われ ていたのだとは思いますが、なぜ、この2例で承認申請をするに至ったのですか。 ○医療機器審査管理室長 症例数については2例ということで、評価をさせていただいて おります。この対象疾患が重症の熱傷患者で、どこでいつ、どう発生するかというのも、 なかなか難しい対象でもありますし、臨床試験に当たっては、何を評価するかということ で、専門家の意見も聞いて、これまでの同様のGreen皮膚の臨床成績なども考慮の上、生 着性をきちんと確認することが最も基本的で重要だということでした。それに最低限必要 な症例ということで、実施が行われたものと理解しております。 ○北村委員 今後、皮膚にしろ、角膜にしろ、眼球の結膜にしろ、こういった再生医療関 係の製品がいろいろ出てきた場合も、臨床経験2例で申請可能というように通例化される ということでよろしいのですか。ある製品には60例を要求されたら、それは大変不公平 な形になりますよね。これは重症熱傷だから、これでよいとおっしゃるのか、それ以外の 生命に直接関係のない部門であれば、そうではないとおっしゃるのか、それは研究者たち の関心があると思うのです。是非、その辺を明確にしておいていただいた方がいいのでは ないかと思います。 ○医療機器審査管理室長 再生医療品について、例えば一律に2例でいいのかというの は、難しいと考えております。例えばこの製品については生着性ということで、臨床的な 評価のポイントも明確でしたので、その点も考慮されたと思いますし、今後出てくる製品 が何をエンドポイントと言いますか、評価ポイントにできるのか、又は対象疾患の症例数 がどのくらいあるのか、実施の可能性も含めて症例を評価せざるを得ないのではないかと 思っております。ですから一律2例で十分なのかというのは、それは難しいのではないか と思っております。 ○生物系審査部長 実は、総合機構では治験相談という制度があります。今、俵木室長か ら説明がありましたように、それぞれの疾病、対象効能ごとに何例必要かは異なります。 その領域で他の治療法があるか、メカニズムはどうかなどいろいろなことも勘案しなが ら、この品目であればこのくらいの例数が必要でしょう、というような治験計画などを相 談する制度がありますので、利用していただけましたら、と思っています。 ○北村委員 ある意味で研究者は喜ぶと思うのです。想像もしなかったくらいの少ない数 で申請が可能であったということは、研究者側に立てば、大変ありがたいとも言えますが、 これが広く適用されていくというように、みんなは理解すると思うのです。今いろいろな 部門の再生をやっていますが、心臓の筋肉の再生も2例で効果がありましたと、それでよ いのかということになります。事前相談にも行きますが、そのときは「いやいや、それは 30例やってください」と言われると、研究者には非常に理屈が成り立たないのではない かということになるでしょうね。ですから2例で認める場合があるというのが、皆さん方 の御意見として広がるということは、御記憶願いたいと思います。 ○審査管理課長 ある面で申し上げますと、これは非常に特殊なケースではないかと思っ ております。と申しますのも、一つには培養皮膚でエンドポイントがはっきりしているし、 外から明確に判断ができます。さらにはGreen型の培養皮膚というのは、臨床研究も国内 外を問わず、たくさん報告されています。また、異所性のものでもないということ、さら には対象疾患がすぐにでも生き死ににかかわっているということから考えますと、非常に 特殊なケースではなかろうかと考えております。  一方において、例えば「再生医療」と言っても、ある面で申しますと免疫学的な作用で、 抗癌剤としての作用を示すとか、いろいろなものが考えられるわけです。そういうもので すと、おそらくは延命効果を調べてくださいというような、いわゆる抗癌剤としての試験 をお願いすることになるでしょう。 ○北村委員 抗癌剤は別だろうけれども、再生医療のところです。 ○審査管理課長 再生医療としても、白血球をとって、何らかの免疫活性を出していくと いうことも考えられますから、その疾患、またさらにはどういう効果を狙っているのか、 その効果が測定しやすいのか測定が難しいのか、さらには今まで国内外で、どれくらいの 知見を蓄積しているのか等々、おそらく総合的に判断していかざるを得ないだろうと。一 律に、この疾患だから何例という話ではなくて、それは今の普通の医薬品の試験をやると きもそうですが、アプリオリにこの疾患は何例というものがあるわけではありませんか ら、そこはまた先生方の御指導も願いながら考えていく必要があるのだろうと考えていま す。 ○土屋委員 専門協議の中でも、臨床試験の数が2例でしたが、これまでもいろいろ使わ れているということと、この製造に当たっては、販売後臨床試験という制度を、おそらく 初めてこの制度が導入されたと思うのです。この制度を新しく導入して、こういう先端の ものをきちんとした臨床計画の中で評価していこうということも合わせて、承認の方向に 持っていってもいいのではないかという結論になったと思います。本治療は人の命にもか かわることであり、諸々の先ほど来のお話で、今回は2例の臨床試験だったということで、 私も特殊な例ではないかというように思っています。 ○笠貫部会長 山口委員も専門協議の方から、御意見をいただけたらと思います。 ○山口委員 事務局からも言っていただき、土屋委員からも言っていただきましたことと 同様の意見です。もう一つは、例えばEMEA等海外のガイドラインでも、細胞治療でど こまでエンドポイントを取らないといけないかが重要なポイントとして指摘されていま す。すなわち非常に長いエンドポイント、長期の生着といったときに、もっと早いエンド ポイントできちんと見られる系があるかどうか、そういうことまで考慮して症例数などを 判断していくということだと思います。今回はそのような意味でも特殊な例であったと御 理解いただければと思います。 ○笠貫部会長 こういった再生医療では何例かということは、非常に関心の高いところで すので、非常に大事なポイントを御指摘いただいたと思います。 ○北村委員 ある意味では大変ありがたいと思うのです。 ○笠貫部会長 どういった客観性を持たすかというのが、今後の課題だとは思いますが、 これは特殊例ですということで、委員の先生方に御納得いただけたでしょうか。問題点と して七つ八つの条件を出して御説明いただいたと思うのですが、さらに御専門の立場から 鈴木先生と篠澤先生から、III度の重症で広範な熱傷の方に対し、今まで日本には自家培養 表皮がなかった、そのことによってどの程度死に至っていたのか、これによってどの程度 死が救命できるのでしょうか、あるいは先ほどもう一度先生のお話の中でもあったと思う のですが、真皮層のネットワークもつくらなくてはいけないというお話が出ました。今度 は生着率のエンドポイントだけですが、そういったことを含めて実際に本品目が出たとき に、救命ということで考えたときに、専門家のお立場からどういうようにお考えになって いらっしゃるかをお聞きしたいと思います。 ○鈴木参考人 先ほどスキンネットワークのことをお話しましたが、既に日本には東日本 と西日本に、日本スキンネットワークというのがあり、亡くなった方から皮膚を提供いた だいて凍結保存しておいたものを作るというシステムがあります。大火傷の患者がいまし たら、そのネットワークに連絡をして皮膚をもらい、もらった皮膚を移植して、それが生 着した段階で、その間に培養表皮を作って待っているというような使い方をしますと、う まくいけば救命率が上がる可能性はあると思います。  ただし、現状では皮膚の提供が十分ではありません。皮膚がほしいと思っても、使えな いことが多いのです。ですから、これが承認されるとすれば、それと同時にスキンネット ワークのことをもっと日本全国に知らしめて、どんどん使えるようにしないとけないとい うのが、一つの前提だと思います。臨床試験の症例が少なかったというのは、私の心の中 では他人の皮膚を提供する皮膚が足りなくて、それを使うことが前提での臨床試験でした ので、それも対象症例が少なかった一因ではないかという気もしております。したがって、 日本の重症熱傷の治療に関して、せっかくこの培養表皮の臨床応用が認められたら、亡く なった方からの皮膚の提供は、脳死でなくても心臓停止後の皮膚でも十分ですから、そう いうことを広く周知して、たくさんの同種皮膚が使えるようにすることも必要だと思って おります。 ○北村委員 鈴木先生がいいことを言ってくださったので、少し言っておきますけれど も、この培養表皮は真皮層を確保してからこれを使うためにも、同種のものが必要です。 同種の皮膚移植というのは、日本組織移植学会がネットワークをつくってやっている仕事 なのです。もちろん製品ではありませんので、臓器に近い組織の提供という形で行われて います。我が国には法律のないところを、日本組織移植学会が責任を持ってやらせてほし いという形で、先進医療にはなってきています。  同種皮膚移植の保険の点数は、皮膚についてだけ認められているのですが、極めて安い のです。この後の培養表皮の値段がいくらになるかが、今後の問題でしょうけれども、そ れを使ってかなりけたが違うということになれば、基盤になる同種皮膚移植はやればやる ほど赤字となる、大学や施設の努力でやっているというのが現状なのです。そういう所が あるのでこういったものが製品として出ていく基盤となる部分の整備もお願いしたい。い ずれも厚生労働省の仕事ですが、医薬食品局ではないかもしれません。そういう問題はた くさんあるので、鈴木先生の意見に付け加えたいと思います。  もう一つは、これが製品としてGMP基準にのったやり方として承認する。マウスのフ ィーダーセルを使う、あるいはオーストラリアやニュージーランドの、BSEがないと言 われている国からのウシの血清を使うことになりますと、多くの再生医療の所で、ヒトへ の応用をやってる所は、これでいけるというように判断してよろしいのですね。例えば、 私どもの所でやっている心臓の再生部門でも、今はウシの血清を使いたいのですが、やめ て自分自身の血液から血清部分だけを取り除いて、血球を戻して、自分自身の血清でやっ ているのです。しかしウシの胎児血清というのは、そこをはっきり研究でさせるよう言っ ているのですが、細胞を増やす力を持っています。そうしますと、このような後々のテス トを繰り返していけば、すべての再生医療のヒトへの応用部門で、ニュージーランド製の ウシ血清を利用してもよいということで、研究者は認識すると思うのです。それはそれで よろしいのですね。 ○山口委員 例えばニュージーランド産であればOKとなります。今まで確認申請も含め て医薬品の傘のかかる中において、ウシ血清はいけないと言ったことはありません。もち ろんガイドライン上、血清を使わないで済むものについては、使わない方が望ましいとい うことは明確に書かれていますが。 ○北村委員 使う方がいいですね。 ○山口委員 リスク・ベネフィットを考慮してベネフィットが生まれる場合には、それを 使うことを否定してはおりません。ただ私が驚いているのは、幹細胞の臨床研究の中では、 皆さん自己由来の血清を使っておられるのです。委員会でも私は、例えば70歳を超えた 患者から400ccも血清を採るのは、少しまずいのではないかという意見を述べてはいるの ですが、あの議論とこちらの議論がマッチしていないところに、少し問題点があるのかと いう気がいたします。 ○北村委員 これがGMP対応であるというように、ほかの研究者からは理解されます。 ですから、こういう過程を踏めばウシの血清を使用してもよい、マウスのフィーダー細胞 を使用してもよいという形で広がると思うので、そういうように理解してよろしいかとい うことです。 ○山口委員 はい。我が国だけではなくてヨーロッパのガイドライン上でも、もちろんヒ トの血清を使うということが書いてあるのです。 ○北村委員 輸血用のヒト血清を使うと、やはり目的外使用で駄目なのです。自分の血清 でないと。 ○山口委員 EMEAのガイドラインでもウシ血清を使う場合の要件も、書かれており、 ウシ血清を否定するものでは全くありません。ですから幹細胞臨床研究の中で、どうして あんなにヒト血清にこだわられるのか、逆に私の方で理解のできないところです。 ○北村委員 是非言ってください。その方も。 ○土屋委員 今の科学のレベルはスピーディに進んでいます。先生も御存じだと思います が、ウシ血清に劣らない無血清培地が今、ヒトの間葉系幹細胞の場合ですが、開発されて 近々販売されようとしています。  もう一つは、フィーダー細胞も安全性等について、Xeno由来のものを使いますと、 後々トラッキングとか、上乗せ規制がありお金もかかります。きちんと患者にリスクをお 話しないといけないし、製造販売後のいろいろな報告制度も厳しくなるわけです。この製 品では、特定生物由来製品になっています。そうすると、それはやはり費用にかかわって きます。フィーダー細胞の安全性ということでは今、角膜においては脂肪由来のヒト間葉 系幹細胞、しかも自分の脂肪由来のヒト間葉系幹細胞でフィーダー細胞ができました。1 年経ちますと、新たな技術が開発されておりますので、異種由来のものはおそらく徐々に 置き換わっていくのではないかと思います。今のレベルだとこれが使われているというこ とで、事故が起きていないというのが前提になっていますが、費用やリスクの観点から考 えますと、開発された安全・安心な技術を導入していくことが、やはり私はこれからの再 生医療企業には重要ではないかと思います。 ○生物系審査部長 添付文書(案)の冒頭にも書かせていただいておりますが、本品は生物 由来原料、ウシ血清、マウス云々を用いて製造している、安全性確保のためにウイルス試 験等を実施し、ヒトへの感染の恐れがないことを確認している、しかしながら、これら生 物由来原料を使用していることに起因する感染症の危険性を完全に排除できないことか ら、本品は疾病の治療上の必要性を検討の上、必要最小限の使用にとどめることにさせて いただいております。そういう意味では、確かにリスクは非常に低くなるように製法等も 検討されておりますし、原料もオーストラリア、ニュージーランド等の認められている国 のものを使っておりますが、一応は生物由来の原料が使用されているということで、それ はやはり個々のリスク・ベネフィットを考えて、使用いただかねばならないという大原則 は申し上げたいと思います。 ○北村委員 ほとんどがアメリカの製剤であったせいもあるかもしれませんが、BSEの 問題以来、多くの所は、ウシの胎児血清はもう使わないという形でおります。例えば皮膚 組織の保存の場合、凍結保存をするのですが、凍結保存液の中にも仔ウシの血清を入れて おく方がよいという研究論文と、なくても構わないというものと両方あるので、我々も今 は血清を使うことをやめてはいるのです。しかし、構わないというのであれば、多くの体 外的に細胞を増やすメディウムの中では、現時点では使う方がありがたいという研究者が 多いように思います。また新しいものが出てきて、それでリプレイスされていくのは、そ れなりにいいと思いますが、これが認められてGMPの基準に入ったということであれ ば、それを利用するという研究者もやはり少なくないと思うのです。例えば私が研究者に、 「使っていい」と申し上げてよろしいかということを確認したわけです。 ○生物系審査部長 結局、薬事法での承認の場合は、リスク・ベネフィットを個別に判断 して、御審議いただいてということになります。今、先生がおっしゃったことは、臨床研 究の方なのか、薬事法下での治験なのか私には分かりませんが、いずれにしても疾患なり、 その患者ごとの議論で、たぶん一律にこれで認められたから、自動的にほかのものに演繹 していいようなものではないような感じがいたします。使用経験により安全性情報は蓄積 されるという面もあるとは思いますが。 ○北村委員 前歴が出来た、凡例をつくったというところで尊重したいと申し上げている わけです。 ○土屋委員 いま学界では、日本の先生方は優秀なので、危ないと言われるものはなるべ く除くように、物や技術が開発されています。そういうものには国レベルで予算も出して いますので非常に大切に育てて、将来的にそういったものに徐々に置き換えていただきた い、私はそう思います。 ○倉根委員 これを使う年齢は非常に若い子どもから老人まで出てくると思うのです。今 使っている3T3細胞の中にウイルスが入っていないということで、今の段階でできるこ とは全部調べてあるのだと思うのですが、今の技術でつかまらないウイルスのようなも の、ウイルスかもしれないし、そうでないかもしれないというもののフォローアップはか なり長期に。何をフォローアップしたらよいのかということは困るかもしれませんが。1 年というのはあくまでも皮膚移植の効果であって、その後のフォローアップについてはど のようになっているのでしょうか。長時間かけて初めて姿を現すような病原体もないでは ないということなのですが。 ○生物系審査部長 これから御審議いただくわけですが、もし、これが特定生物由来製品 に指定されますと、患者の使用記録が20年間保存されます。20年という根拠は、要する にスローウイルス等が何年か経って発症したときに、実際にどの患者がどのロットのもの を使っていたかを遡って調べられるようにということで、20年間の長期にわたって医療 機関で患者の使用記録を保存していただくわけです。したがって、いま委員から指摘があ った、将来起こった場合に遡れるような制度は設けられております。 ○勝呂委員 私は熱傷のことはあまり詳しくはないのですが、治験、臨床例が非常に少な い。この技術が良いものであるならば、今後もっと発展させるためには、それなりの臨床 的なニードがないと伸びないのではないかと思うのです。例えば、これを認可しても年間 1〜2例だったら、この技術はそのまま死滅するわけですね。ですから、その辺を予測し ているのかどうかを知りたいと思います。 ○生物系審査部長 申請者の資料で、ある程度重症の患者は年間3,000例くらいというこ とですが、これが適応できる患者ははるかに少なかったと思います。 ○機構 本品の対象患者は、年間約200〜450名ではないかという見積りがありまして、 重症熱傷全体で2,000〜3,000人かと。ただ、重症熱傷の中には、熱傷の面積ではなくて、 気道の熱傷や骨折を伴う等別の要因で重症になるというものもあり、そういうものも含め て年間2,000〜3,000人患者がいると考えられますが、本品の適応対象になると、220〜450 人程度という見積りになっています。 ○勝呂委員 ある意味で広範囲皮膚欠熱傷、裏を返せば広範囲皮膚欠損症と考えた場合 に、この参考資料の中では口腔外科の領域その他で使っていますが、あくまでも、認可は 熱傷が対象です。広く考えて、広範囲皮膚欠損症のようなものにまで将来対象を広げるこ とを考えているかということになりますと、感染症とか、いろいろなベースを十分認識し て承認しておいたほうがよい。我々の世界でも、広範囲皮膚欠損症というのはハイエネル ギー損傷に伴って非常にたくさんあり、そういったものも苦労して植皮をしていますが、 ある意味で、そういったほうに応用できれば技術的なものとしては更に範囲を広げられる と思っています。これがそちらへ行くときにはまた審査するのでしょうが、そういうこと もあるのではないかということで聞いてみたいのです。 ○鈴木参考人 今のお話で広範囲の欠損症とおっしゃいましたが、この培養表皮は皮膚で はなく、単なる表皮なのです。ですから、真皮がなかったら付かないので、本当の皮膚欠 損症でも付かないのです。あくまでも、この表皮は皮膚ではないということは認識してい ただきたいのです。 ○勝呂委員 真皮をつくる何らかの技術を加えれば更に、ということはありませんか。 ○鈴木参考人 本当の真皮はまだ出来ていませんので、本当の意味の皮膚の再生は今後の 課題だと私は思っています。これはあくまでも救命のための第1段階としての培養表皮に すぎないと思っています。 ○事務局 BSEのリスクとの関係で委員の先生方に確認をお願いしたい点が1点ござ います。その関連資料は資料1-1の中の「添付文書(案)」の4/5ページの左側の「患者へ の説明」の(6)です。この製品の培養工程の中にはヒトインスリン(遺伝子組換えのもの) が添加されています。インスリン自体は問題ないと思うのですけれども、ヒトインスリン のマスターセルバンクの製造においてペプトンが使われているわけですが、このペプトン がオーストラリア、ニュージーランド産のウシではなく、米国又はカナダ産のウシ由来原 料になっています。厳密に今の生物由来原料基準に当てはめますと、適合しないことにな ってしまうわけですが、もともと使われているペプトンもヒトインスリンをつくる際のマ スターセルバンクの製造のときに使われているもので、実際にヒトインスリンがつくられ る工程において、残っている可能性は非常に少ないと考えられます。そうは言いつつも、 このような原料であるということを患者に十分説明するという前提で、本品の総合的なベ ネフィットの方が米国産、カナダ産のウシ原料に由来するものが一部入っているというリ スクを上回るかどうかという点で確認をお願いいただければと思います。 ○笠貫部会長 確認というのは、各委員の先生方の御意見をということですか。 ○事務局 この部会として、ベネフィットがリスクを上回るということで、生物由来原料 基準に合わないものが使われているとしても承認して問題ないのかどうかという点の御 判断をお願いします。 ○医療機器審査管理室長 総合機構の審査におきましても、本品のリスクについては、こ こではマスターセルバンクのものを使っておりますが、実際のインスリンの製造に当たっ て、希釈もされますし、これまでのリスク評価の手法に従って極めて低いリスクになると いうことでは評価をしております。総合機構の承認に当たっての判断の中には、そのリス ク評価も踏まえて本品のベネフィットが上回るということで評価をして、本日御審議をお 願いしているものです。 ○山口委員 全く同じような話なのですが、今アメリカ産ウシを使ってマスターセルバン クの製造をする、いわゆる蛋白製造用の細胞のマスターセルバンクを使ったときにアメリ カ産のウシ血清を使っていると、製法を変更してくださいという要求はしているわけです が、これをどこまで遡る必要があるかという問題に突き当たるのだと思うのです。実際に、 製造のときのインスリンに関しては、精製工程もありますし、いわゆるBSEのリスクを やったとしたら-2から-3くらいになってしまう。希釈も含めれば非常に低い危険度にな ってしまうと。それはセルバンクの実験室でアメリカ産ウシ血清を使っていたところまで 遡らないといけないかという議論と同じだと思うのです。ある時点以降あるいは工程であ る程度低減されていれば、そこからはある程度安全、とは言えないのですが、リスクが非 常に低いと見なさないと。いくらでも遡るのは、少し行き過ぎのような気がいたします。 ○笠貫部会長 生物学的安全性の問題に関してということで、今のことも含めましてリス ク・ベネフィットの御判断、事務局での御説明を委員の先生方に御理解いただいたという こと、また、そのことについては情報を十分患者サイドにも伝えるということも先ほどの 添付文書の中にもあったように思いますので、それでお認めいただけたらと思います。  時間が大分進んでまいりましたが、最後に、先ほど土屋委員から、2症例で認めること に当たっての市販後の臨床試験のというものの御指摘がありました。これは大変新しい一 つの考え方といいますか、大事なことになるかと思いますが、この点についてはどこまで 議論されて、あるいはこれについての一つの指針のようなものもおありなのでしょうか。 あるいは市販後臨床試験がどのように行われるかということについての専門協議での議 論はあったのでしょうか。 ○医療機器審査管理室長 市販後の臨床試験も含めた使用成績調査、市販後の調査です が、先ほど機構から説明があったように、27枚目のスライドが市販後の臨床試験で、国 内13施設で30症例について実施をする予定で考えております。  この市販後の調査ですが、実際に使用されますと、受傷面積のバラエティーや感染症の 状態、患者の全身状態又は同種皮膚の利用可能性といったいろいろな条件が入ってくると 思われますので、いろいろな条件の症例について本品の性能といいますか、効果を確認し、 更に有効性、安全性の確認をしておこうということです。ただ、市販後の臨床試験は、概 念としてはこれまでありまして、医療機器については初めてのケースかもしれませんが、 市販後に全症例について情報を集めることを条件として承認になったものはこれまでに もいくつもあります。承認後に更に重ねて情報を集めることを条件に今回も承認していく ということで、その大きな流れの中では、同じようなコンセプトで承認していくのだと理 解しています。ただ、今回臨床試験という形でやるのは、かなり詳細なデータについて細 かく情報収集をしていく予定にしておりますし、全症例で臨床試験ということですので、 納入施設も限って、きちんとフォローアップをしつつ情報を集め、それを拡大していくに 当たっては、その情報の評価をして拡大したいと考えております。ですから、市販後にこ ういった情報をさらに集めるということでのコンセプト自体はこれまでもあって、今回は それをもう少しきつめの、詳細にわたった情報を集めるということを条件にしていきたい と思っております。 ○笠貫部会長 全症例の市販後の調査と臨床試験とは意味合いの違うものとして捉える べきだろうと思いますし、そういったものを詳細にというより、きちんとしたプロトコー ルを立てたもの、そして、後で評価ができるような形でのエンドポイントを含めて是非御 検討いただけたらと感じましたので、是非お願いしたいと思います。ほかにはございませ んか。 ○荒井委員 今のお話にあった市販後の臨床試験に関してです。先ほど他の先生から意見 がありましたが、入口を小さくして、非常に重要なものを少ない症例数のデータで承認し て市販後に臨床試験を行うことは、方向性としてはとても賛同できる形なのです。ただ、 少し奇異に感じましたのが、この臨床試験のページを拝見すると、国内施設数、対象症例 数が決まっている。対象症例数を臨床試験で決める。本来は、かなり明確にエンドポイン トと、それに関するいくつかの設定があって症例数が出てくるはずなので、これが出てく る以上は相当詰めたデザインが出来上がっているのかと感じたのですが、その辺は実際に 詰められたのか。それとも、2例では少なくて、今度は臨床試験でアバウト30例という ことなのか。実際のところは、いかがでしょうか。かなり詰めたものの概要をここでお示 しになっているのか、それとも、市販後の臨床試験について、あまり細かなことに関して は詰められていないというのが現状なのか、いかがでしょうか。 ○機構 製造販売後臨床試験につきましてはまだ骨子の段階です。症例数や実施施設の数 については、年間の患者数や、一医療機関に年間どのくらいの患者数が想定されるかとい うようなことから、実施がどの程度可能かということで見積った数字でありまして、詳細 なデザインについては今後詰めるという段階でございます。 ○笠貫部会長 時間が大分押してまいりましたので、医療機器「ジェイス」につきまして は、日本で製品化された自家培養表皮はない。一方では、緊急避難的に重症な患者がいる ということの背景において、2症例でこの有効性を認めていくということについて、いろ いろ議論されたと思います。その特殊性についても御説明いただいて、委員の先生方には 御理解いただけたと思います。しかし、2症例ということに当たっては、市販後の臨床試 験について、もっとプロトコールとか、試験デザインをきちんと詰めていただきたいと思 います。また、市販後の有効性について評価ができるようなシステム、あるいは先ほど話 が出たような、本品投入に当たってのスキンネットワークの確立も含めて更に日本で進め られたらという感じを受けました。ほかに意見がなければ、医療機器「ジェイス」につい て、本部会の審議結果として製造承認を与えて差し支えのないこと、また、特定生物由来 製品として指定し、再審査期間は7年間とすることとしたいと思います。なお、この品目 は新構造医療用具に該当しますので、薬事分科会に上程し、審議することとさせていただ きます。 ○事務局 参考人の先生方におかれましては、ここで御退席いただけますようお願いしま す。貴重な御意見をいただきまして、どうもありがとうございました。 ── 参考人退席 ── ○笠貫部会長 続いて議題2、医療機器「頸動脈用プリサイス」及び「アンジオガードX P」の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器 の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及 び再審査期間の指定について審議をお願いいたします。事務局から説明をお願いいたしま す。 ○事務局 本品目についての資料は2-1と資料2-2、医療機器「頸動脈用プリサイス」及 び「アンジオガードXP」です。申請者はいずれもジョンソン・エンド・ジョンソン株式 会社です。「頸動脈用プリサイス」は、経皮的に頸部頸動脈の狭窄部位に挿入・留置する ことにより血管内腔を拡張・維持するために用いる頸動脈用のステントです。ニチノール 製自己拡張型ステントと、狭窄部位にステントを送達するデリバリーシステムから構成さ れています。ステントにはストレートタイプとテーパータイプという二つのタイプがあ り、装着するステント径により2種類のデリバリーシステムが存在します。  「アンジオガードXP」は、頸動脈へのステント留置術中に飛散する血栓等の塞栓物質 を捕捉・除去するために使用する、ポリウレタン製のフィルターを持つ遠位塞栓防止用デ バイスです。経皮的に血管内に挿入し、病変部位の遠位側に一時的に留置して用います。 なお、頸動脈用ステントにつきましては「医療ニーズの高い医療機器の早期導入に関する 検討会」において、「疾病の重篤性が高く、当該医療機器等の医療上の有用性が高い」と いうことで「我が国での医療ニーズが高く、優先して導入すべき医療機器」と選定されて おり、優先審査の対象品目となっています。本品目の審査概要等については、医薬品医療 機器総合機構から説明いたします。 ○機構 資料2-3を御覧ください。医薬品医療機器総合機構での審査に当たり、御覧の専 門委員の先生方の御意見をいただきました。  開発の経緯をお示しいたします。頸動脈狭窄症は、総頸動脈分岐部に血栓や粥腫が沈着 し、血管内腔が狭窄する疾患です。これにより、狭窄部の血栓等が剥れることによる脳梗 塞のリスクや脳血流低下による脳虚血症状を引き起こすリスクが上がるため、予防的な観 点から、治療は重要な意味を持ちます。  頸動脈狭窄症には保存療法や投薬による内科的治療が行われますが、高度狭窄に対して は、頸動脈内膜剥離術(CEA)による外科的治療が推奨されております。しかし、麻酔の リスクの高い患者や切開が困難な高位病変を持つ患者等、外科的治療の適用が困難とされ る患者も少なからず存在します。これらの患者に対する治療として、頸動脈ステント留置 術(CAS)が期待されており、そのためのステントとして頸動脈用プリサイスが開発され ました。  また、ステント留置手技中に塞栓物質が飛散することによる二次的な遠位塞栓性合併症 のリスク低減のため、遠位塞栓防止用デバイスを併用する方法が考えられアンジオガード XPが開発されました。頸動脈留置術のイメージ図を御覧ください。  アンジオガードXPはガイドワイヤーの先端にフィルターを備えた構造をしておりま す。まず、病変の遠位まで運び、フィルター部分を広げます。アンジオガードのワイヤー を伝って市販品のバルーンカテーテルをデリバリーし、狭窄部位でのバルーンを拡張さ せ、前拡張します。バルーンカテーテルを抜去し、頸動脈用プリサイスを病変部に送達し、 開放します。このステントは自己拡張型ですので、血管走行に合わせて拡張します。ステ ント留置時などに発生した血栓や粥腫は遠位部に留置したフィルターで捕捉し、捕捉した 血栓等はキャプチャーシースを使用して回収します。  品目の概要をお示しいたします。頸動脈用プリサイスはニチノール製の自己拡張型ステ ントであり、ステント形状はストレートタイプとテーパータイプの2種類があります。ア ンジオガードXPは頸動脈ステント留置術中に飛散する塞栓物質を捕捉するフィルター を持ったガイドワイヤーで、フィルター部分はポリウレタン製となっています。本日は見 本をお回ししておりますので御覧いただければと思います。  海外における承認状況と不具合についてお示しいたします。両品目とも、欧州では2001 年12月にCEマークを取得し、米国では2006年9月にPMA承認を取得しています。2007 年7月までに、頸動脈用プリサイスが約□□本、アンジオガードXPは約□□本の販売実 績があります。これまでに報告された不具合は御覧のようになっています。  両品目に関して提出された臨床試験以外の資料については、アンジオガードXPの血栓 捕捉試験を除いて特段の問題は認められませんでした。  アンジオガードXPの血栓捕捉試験については、イヌ冠動脈において血栓捕捉率が13 〜87%と不安定であったことから、申請者の見解を求めました。イヌ冠動脈モデルでは不 安定な成績でありましたが、in vitroの血管モデルでは安定した血栓捕捉能が確認され ており、また、ヒト頸動脈に類似した屈曲の少ない部位を用いた試験では血栓捕捉率が安 定していたことから、屈曲部に使用することにより性能にばらつきが出た可能性が示唆さ れました。さらに、臨床試験での脳卒中の発生頻度が外科手術群と同等であったことも踏 まえ、総合機構は、アンジオガードXPの血栓捕捉能については概ね了承できると判断い たしました。しかしながら、安定した血栓捕捉能を得るためには留置部位の選択を慎重に 行うことが必要であることから、展開の妨げとなる屈曲を有さない部位を選択して留置す るよう、添付文書にて注意喚起することといたしました。  米国臨床試験の概要をお示しいたします。米国で行われたピボタル試験はSAPPHIRE試 験と呼ばれておりますが、これは無作為化比較試験とオープン試験からなっています。無 作為化比較試験は米国の29施設において、CEAの適用がハイリスクで、頸動脈に50% 以上の狭窄を有する症候性患者、又は80%以上の狭窄を有する無症候性患者を対象とし てCAS群、CEA群それぞれ167例ずつ、合計334例の患者に対して実施されました。 オープン試験は、患者選択基準を満たすが、外科医によりCEAの施行が不可能と判断さ れた患者をステントレジストリ群として406例、ステント留置の困難な患者としてCEA レジストリ群7例について行いました。なお、主要評価項目は治療から30日後、及び31 日後から12か月後におけるMAE発現率とし、RCTについてはCEA群に対する非劣 性を検証する目的で、オープン試験については、CEAの文献値から設定したOPCに対 する非劣性を検証する目的で行われました。  このスライドは、臨床試験成績を主要評価項目及び安全性評価項目について示したもの です。主要評価項目においては、無作為化比較試験におけるCAS群とCEA群の間に非 劣性が確認されました。主な有害事象については、CAS群のいずれの観察期間において も、重度の低血圧について有意に高値を示し、徐脈/不全収縮においては有意ではないも のの、高値を示しました。これらの事象は、留置ステントによる頸部圧迫に伴う頸動脈洞 反射として知られており、必要に応じて硫酸アトロピンの投与やペースメーカーの一時的 使用による適切な対処が必要であることから、添付文書に注意喚起がなされております。 有効性評価項目の結果については、こちらのスライドに示すとおりで、特段の問題は認め られませんでした。  国内臨床試験の概要をお示しいたします。国内臨床試験では、本邦の医療環境への適合 性を確認することを目的に、こちらにお示しした10施設、76例の対象患者について実施 されました。評価項目は、安全性評価項目として2項目、有効性評価項目として2項目、 それぞれの項目について4段階で評価いたしました。なお、国内臨床試験では遠位塞栓防 止用デバイスは使用されておりません。国内臨床試験の結果をお示ししておりますが、問 題となる事項は特に認められませんでした。  頸動脈用プリサイスの臨床試験における主な論点をお示しいたします。頸動脈狭窄症治 療は、脳虚血や脳梗塞の予防的な位置付けにある治療法であり、CEAが標準的な治療法 としてすでに確立していることから、CAS治療の対象患者を適切に選択することが重要 であるため、添付文書において注意喚起するとともに、十分な教育を受けた医師によって 使用されるよう適切な措置を講ずる必要があると考え、承認条件1を課すことといたしま した。また、予防的治療であることも踏まえ、合併症を極力低減する必要があることから、 頸動脈狭窄症に精通した医師を含めた集学的なチーム及び施設において合併症対策を行 うことが重要と考えました。直径5mmのステントは海外臨床試験でほとんど使用されて おらず、臨床使用上の有効性及び安全性を確認することが困難であることから、申請には 含めないとの申請者の見解を了承いたしました。  続いて、アンジオガードXPの臨床試験における主な論点をお示しいたします。国内臨 床試験において遠位塞栓防止用デバイスが使用されていなかったため、アンジオガードX Pの日本人における有効性及び安全性について申請者に見解を求めました。その結果、頸 動脈狭窄症に関しては、CASにおける遠位塞栓防止用デバイス併用の有用性はすでにパ イロットスタディ等で確認されていること、血管径や病態に人種差の影響は少ないと考え られることから、国内臨床試験を省略することは妥当と考えました。しかしながら、本邦 ではアンジオガードXPの使用経験がないことを踏まえますと、安全使用のためには、教 育・講習等による十分な知識・経験を有する医師に使用されることが必要と判断いたしま した。また、合併症低減は本治療の主たる課題であることから、従来から頸動脈狭窄症の 治療に携わっていた医師と、脳神経系の合併症に精通した医師とが協力して合併症対策を 行うことが可能な施設において使用されることが必要と考えました。直径4mmのフィル タデバイスについては、海外の臨床試験及び市販後臨床試験で使用されていないことか ら、申請には含めないとする申請者の見解を了承いたしました。  適合性調査結果に関しまして、問題となる事項は認められませんでした。  頸動脈用プリサイスの総合評価をお示しいたします。本品のピボタル試験においてはC EAハイリスク症例に対して無作為化比較臨床試験が行われ、CEAに対する非劣性が検 証されています。しかしCASがCEAに比較して低侵襲であることを除くと潜在的リス クが多く、CEAが確立した標準治療であることを踏まえると、CEAを含む他の治療法 がない患者において本品が適応となると考えます。したがって、本品を使用する医師が頸 動脈狭窄症の治療について熟知し、本品による治療が医学的に妥当と判断される場合にの み使用されるよう必要な措置を講ずることが妥当と考え、承認条件1を課すことといたし ました。  本品の使用に伴う合併症としては低血圧、徐脈/収縮不全、過灌流症候群等が挙げられ ます。これらの合併症を防止するためには、術前の検査により合併症の発症リスクの高い 患者を抽出し、周術期において外科医、神経専門医及び血管内治療医等で構成されるチー ムによる集学的な治療により慎重に管理することが必要と考えます。また、頸動脈狭窄症 の治療について十分な経験を有する医師が治療の適応を判断し、合併症に対する体制が整 った医療機関で使用されることにより頸動脈狭窄症の治療リスクを低減化することが可 能と考え、承認条件2を課すことといたしました。  続いて、アンジオガードXPの総合評価をお示しいたします。CASに関する日米の医 療環境の差は大きくないと考えますが、本品を用いた国内臨床試験は行われていないこと から、本品を有効かつ安全に使用するためには、本品の適応や留置位置の妥当性について 慎重に判断する必要があります。よって承認条件1を課すことが妥当と判断いたしまし た。  また、動物モデルでの血栓捕捉能試験では血栓捕捉率にばらつきが発生し、本品の性能 が担保できるとするには不十分であると考えました。しかし、臨床試験においては無作為 化ステント群において同側性脳卒中が重度1例、軽度4例に見られているものの、無作為 化CEA群との差が認められなかったことから、本品の性能は臨床上許容できると判断い たしました。ただし、血栓の捕捉が不十分で合併症が生じた場合、重症化させないために は、早急に対応することが必要です。よって承認条件2を課すことは妥当と判断いたしま した。  総合機構は、以上の審査を踏まえた承認条件をお示しいたします。承認条件1として、 頸動脈狭窄症に対する本品を用いた血管内治療に関する講習の受講等により、本品の有効 性及び安全性を十分に理解し、手技及び当該治療に伴う合併症等に関する十分な知識・経 験を有する医師が適応を遵守して用いられるように必要な措置を講じること。承認条件2 として、頸動脈狭窄症の治療に関する十分な経験のある医師を有し、本品を用いた治療に 伴う合併症への対応を含めた十分な体制が整った医療機関で、本品が使用されるように必 要な措置を講じること、この二つを課すことが妥当と判断いたしました。その上で、この 使用目的で承認することが妥当であると総合機構は判断しました。  頸動脈用プリサイスは新効能医療機器であることから、再審査期間は3年が適当である と考えます。生物由来製品又は特定生物由来製品の該当性につきましては、非該当と考え ております。アンジオガードXPにつきましては、新性能医療機器であることから、再審 査期間は3年が適当であると考えます。生物由来製品又は特定生物由来製品の該当性につ きましては、こちらも非該当と考えております。  続いて、委員の先生方からいただいたコメントを紹介いたします。まず、頸動脈用プリ サイスについての御意見です。笠貫先生から三つ御意見をいただいております。一つ目は、 「すでに議論されているとおり、頸動脈ステント治療が、将来起こりうる脳梗塞に対する 予防的治療の側面を持っていることを考慮すると、手技リスクが自然歴における脳梗塞リ スクを大きく凌駕することは避けなければならない。その点、確立した治療であるCEA のハイリスク症例にステント治療の適用を限定することは妥当な判断と思われる。一方、 心臓外科のない施設で多くのカテーテル治療が行われている本邦の現状を鑑みると、CE Aハイリスクの基準は、必ずしも外科医を含めた厳格な判断に準拠しないで、CAS手技 者によりなされる危惧がある。治療法選択の決定に患者自身が正確な情報を得るために も、また、手術ハイリスクの判断が独断的なものにならないためにも、良好なCEA手術 成績を有する外科チームがある施設に限定する等の施設基準を策定する必要があるので はないかと考える。」という御意見です。  これについて、総合機構の考えを申し上げます。本治療の位置付けを考慮しますと、審 査報告にもありますように、手術ハイリスクの患者を適切に判断することが重要であると 考え、適応を遵守して用いること、また、教育プログラムで適応に対する教育を十分に行 うことを承認条件に盛り込んでおります。御指摘の、施設の手術成績についてですが、C EAの成績を公表している所は少ないこと等の理由から、ガイドラインに手術成績に関す る要件は記載されておりません。しかしながら、先生の御意見のとおり、適応を手技者の みの独断的な判断ではなく適切に選ぶことは大変重要と考えますので、添付文書の警告欄 に「院内の外科治療及び内科治療を施行するスタッフと共に、患者のリスク因子を十分に 評価し、他の治療方法を含めて総合的に適応を判断し、外科手術を比較的安全に行うこと が可能な患者に対しては、外科手術を第一選択とし、治療方法を選択すること」と記載す ることといたします。本日改訂した添付文書(案)を配付いたしましたので、御確認くださ い。  笠貫先生からいただいたコメントの二つ目を御紹介いたします。使用前ステント展開の 不具合についてです。「使用前ステント展開の不具合は0.012%としながら、改良前0.44 %、改良後0.071%とあり、前後合わせて0.012%より明らかに高く矛盾した数値である。 また、インナーシャフト・ワイヤールーメンの断裂は、ハイポチューブ改良前は0.061%、 改良後は以前からの累積で0.057%とわずかに低下しているのみであり、改良により不具 合が減少していることが必ずしも明らかでない。」という不具合の部分についてコメント をいただいております。  これについて総合機構の考えを申し上げます。まず、使用前ステント展開の不具合が 0.012%という数値についてですが、販売数全体のうち、人体に影響があった不具合とし て報告された件数の割合を示しております。一方、不具合発生率が0.44%から0.071%に 低下した事象については、人体へ影響のないものも含めた、製品不良として報告された例 を含めた件数となっております。また、デリバリーカテーテルの分断の不具合について精 査したところ、頸動脈以外の部位で使用したことが原因で生じた可能性が示唆されたた め、製品改良の効果は数字にはそれほど表れておりません。なお、改良後の製品を頸動脈 に使用した場合、本不具合の発生率は0.007%と低率になっていることから、臨床使用上 十分な性能を有すると判断しております。  同じく笠貫先生から、耐久性に関する意見もいただいております。「疲労試験に関して、 体外試験により10年相当の動脈拍動による変形負荷に耐え得るとの記述があるが、実臨 床上慢性期のステント断裂、変形の頻度がどの程度であったか明らかにする必要がある。 同じステントに長期の体内での耐久性に関するデータがない場合、類似ステントであるス マートステントの長期臨床でのステント断裂の頻度、成績を開示することが必要である。」 との意見をいただきました。  これについて総合機構の考えを申し上げます。類似ステントであるスマートステント は、末梢血管及び胆管を適応として2002年から全世界で使用されております。類似ステ ントにおいても長期の耐久性を担保するデータは得られておりませんが、5年間の使用実 績において、耐久性に関する不具合は今のところ報告されておりません。  頸動脈用プリサイスについては石山先生からも質問をいただいております。「基本的に は問題ないとのことであるが、主な有害事象で、ステント群で重度の低血圧、徐脈/不全 収縮の割合がCEA群より高いのは基本的には一過性であり、適切な処置により回復する とあるが、30日後と360日後で有害事象の割合が全く変化していないのはなぜか。30日 以後では有害事象がなかったと考えてよいか。」との質問をいただいておりますので、そ れについて御説明いたします。30日後については、手技当日から30日までの有害事象を 集計したもの、360日後は手技当日から360日までの有害事象を集計したものです。主な 有害事象は手技後30日以内に発現しておりますので、御指摘のとおり、30日後及び360 日後の有害事象の発生件数はあまり変化が見られないものとなっております。  次に、アンジオガードXPに関していただいた御意見を紹介いたします。まず石山先生 よりいただいた御意見を紹介いたします。「本品の国外試験、動物試験を通じて、安全性 と有効性については評価できます。しかし、本品の国内適応に関して、国内試験は十分で はないが、頸動脈血管径について日米人種間による影響は少ないとする機構側への回答は 若干気になるが、施行に当たって十分な教育・講習を受けた医師が行うとの条件付きで承 認してよいと考えます。」との御意見をいただきました。頸動脈の血管径について、人種 差に関して総合機構でも検討いたしましたが、日米の総頸動脈血管径について、文献から 差が認められないこと及び差があるとの文献がないことから判断いたしました。  次は笠貫先生からいただいた御意見です。「同時申請されている頸動脈ステントプリサ イスの承認をCASが広範に行われることを考慮すると、塞栓予防の本デバイスを同時承 認する必要はあると考える。ただし、申請から4mm径の製品を削除したことの妥当性に ついては疑問が残る。今回主にSAPPHIRE試験におけるCASとフィルター型遠位塞栓防 止デバイスの併用の有効性から、国内臨床試験を施行せずに承認するという流れに基本的 に反対はしないが、米国で4mm径の規格が臨床試験において使用されなかったことをも って本邦でより小径の4mm径を申請から除くことが妥当なのか、もう一度考える必要が ある。」という御意見をいただきました。  これについて、総合機構の考えを申し上げます。先生の御意見のとおり、総合機構もア ンジオガードXPがプロテクションデバイスであるという特性を踏まえて、臨床試験で使 用されていない直径5mmと4mmのフィルターの承認について慎重に検討いたしました。 その結果、直径5mmについては市販後臨床試験で使用されていてニーズがあり、有効性、 安全性上の問題も認められないことから、申請者の主張を受け入れ、承認することが妥当 であると判断いたしました。一方、4mmの直径を持つフィルターについては、市販後臨 床試験において1例も使用されていないこと。直径4mmのフィルターは直径2.5〜3.5mm の血管に使用することが推奨され、今回申請されている頸動脈ステントの最小径が6mm であることを踏まえると、直径4mmのフィルターの必要性は低いと考えられること。ま た、本品の専門協議における専門の先生方の御意見により、頸動脈病変において4mmの フィルターが必要となる場面はほとんどなく、むしろ頸動脈以外への適応外使用が危惧さ れるという御意見をいただいていること。また、頸動脈径に日米での人種差が文献調査に おいて確認されていないこと。このようなことから、今回直径4mmのフィルターを削除 するとの申請者の意見は妥当であると判断いたしました。いただいたコメントは以上で す。御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○事務局 事務局から補足をさせていただきます。頸動脈ステント留置術に関して、日本 循環器学会をはじめとする12の学会の御協力によりまして「頸動脈ステント留置術実施 基準」が定められていますので紹介いたします。参考資料2-1を御覧ください。まず適応 については高度頸動脈狭窄症です。それから、CASの実施施設基準や実施医基準、指導 医の基準、付帯事項等を12の学会からおまとめいただきました。  もう1点。頸動脈用プリサイスとアンジオガードXPは新しい医療機器であり、現時点 では相当する一般的名称が定められておりませんので、今回、品目の審議に合わせて一般 的名称についても御審議いただければと考えております。資料2-1の上から3番目「区分 の指定」というタグの付いたページを開いていただくと、頸動脈プリサイスについての一 般的名称等について記述がございます。実は、すでに冠動脈のステントというものがござ いまして、これと同じように、一般的名称として頸動脈ステントを位置付け、クラス分類 について同じようなものを指定したいと考えています。  あと、もう1点だけですけれども、資料2-2のアンジオガードXPについても、同じよ うに区分の指定の所に、一般的名称として中心循環系塞栓捕捉用カテーテルというものが あります。こちらも同じような位置付けとして取り扱わさせていただきたいと思っており ますので、御審議、よろしくお願いいたします。 ○笠貫部会長 事務局の説明に対して御質問はありますか。初めに、事務局の方から最後 に指摘のありました名称について、もし御意見がありましたらお伺いしたいと思います。 頸動脈用プリサイスの名称について、事務局の意見に、特に御意見はありませんか。アン ジオガードXPの名称についても、特に御意見はありませんか。 ○北村委員 一つ、二つ確認だけさせていただきたいのは、国内臨床試験、10施設76例 と書いたこれは、「治験」と書かずに「臨床試験」と書いてあるのですが、企業の治験と 理解してよろしいのですか。 ○機構 これは企業主導で行った治験です。 ○北村委員 次は、承認条件で、「必要な措置を講じること」と書いてあるのですが、こ れはいったい誰が施設なり使用する施設に対して命じるという形になるか。その中で、教 育や講習などというのがありましたが、それに伴う経費は企業負担でやりなさいというこ とを含めて、措置を講じることとされているのですか。つまり、企業はこの「必要な措置 を講じること」という承認条件に対して、何らかの経済的負担を医療施設や医師たちにし なさいということを命じておられるのか、医師は勝手に「財源はどんなことか知らない。 ただ、これをやりなさい」という、機構の方あるいは厚生労働省の方から命じている条件 なのか、明確にしていただけたらと思います。 ○医療機器審査管理室長 承認条件は申請者に対して課されるものですので、申請者が必 要な講習、説明会等を実施して、医師において適切な使用が遵守されるよう措置をとると いうことで、その説明会等を実施するのは企業に課せられているところです。 ○北村委員 ところが、先ほどあった12学会の講習、医師たちのガイドラインといった ものの作成には、例えば循環器の委託研究費を是非欲しい、公的研究費でこれをやりたい というのがたくさんありまして、実際に企業が必要な措置を講じることに対して、あとで 説明があった関連12学会の案などを作成するに当たっての経費は、実際負担しているの ですか。 ○医療機器審査管理室長 特に技術的に難しい医療機器については、ニーズの検討会でも 御検討いただきましたように、学会等の御協力を得て主要条件、要件を定めていこうとい うことですが、これについては医政局とも協力して学会にお願いをして、これ以外につい ても策定を進めていただいているところです。そのガイドラインの作成の費用に当たって は、医政局でも何らかの財政的な支援ができるように、検討を進めていただいているとこ ろです。 ○北村委員 企業は、それに対しての費用は負担しなくてよい、公的な研究費を取りなさ いという形で、よろしいですか。「必要な措置を講じること」という命令文は、企業に言 っているわけでしょう。 ○医療機器審査管理室長 これは個々に承認を受けて、このガイドライン自体は特定製品 というよりも、いわゆる頸動脈ステント術に対してのガイドラインですが、今回承認を受 ける個々のこの製品の講習といいますか、トレーニングについては、医師に対して企業が きちんと実施をすることを求めていく、これが承認条件になっています。 ○北村委員 1枚紙にあるように、デバイストレーニングとかSimulatorなどと書いてあ りますよね。これは、企業がそれをちゃんとしなくてはいけないということになるわけで すよね。 ○医療機器審査管理室長 研修義務になっている使用するステントシステムについて、今 回はジョンソン・エンド・ジョンソンの製品ですが、違う製品が出てくれば、その製品の トレーニングを受けていただく必要がありますので、その製品ごとのトレーニングについ ては企業が実施するということです。 ○北村委員 実際、厚生科学の研究費にも、こういった頸動脈ステントの適正な使用にお けるガイドライン作成というのがくるのです。あるいは、委託研究費にもそういう申請が くるのです。学会がそういうガイドラインを作ろうというものにかかる経費の部分と、こ こにありました承認条件の、企業に対して必要な措置を講じなさいという所とがどうなっ ているのか、私は少し分からなかったのです。 ○審査管理課長 確かに今、最初に承認になるのはここの会社のものかもしれませんが、 先生がおっしゃっているような頸動脈ステントという一般的なものを使うための学会と しての基準を作るのを、企業が負担するかどうかは、企業の好意的な申出があれば別です が、それを我々から企業が負担をしなければならないというようなものではなかろうかと 考えております。すなわち、この必要な措置をとるようにというのは、端的に言うとそう いう医療機関がなかったら売らなくてもいいわけです。  もちろん売りたいということですと、ボランタリーに先ほど申し上げたような研修プロ グラムを作るなどということをやっておりますが、それを企業負担でやらなければならな いというのを、特に負担のところを衛生法規である薬事法で言うのも、また無理なことで す。したがって、先ほど申し上げましたように、売る、売らないも含めて、そういった人 たちが使うような環境の中に、あなたたちが販売していきなさいと。その環境を自分たち の負担でボランタリーにやっていくというのも、もちろんそういう視野に入っているとい うこと。 ○北村委員 そうではなくて、学会が決めるべきガイドラインというものと、ここに承認 条件と書いてある「必要な措置を講じること」という、機構からの企業に対する問題の部 分とを、どう使い分けるのかということを聞いているわけです。 ○審査管理課長 学会が自主的に決められるもの、これはできるだけ我々としては尊重す るものだろうと考えております。先ほど申し上げましたように、承認条件で言っているの は、適切な医療機関において、適切な医師によって用いられるようですから、そういった 環境の中で、これを販売していくのだと。その環境の一つとして、学会が自主的にこうい った基準を作られるのであれば、それは環境の一つとしてウェルカムなことだろうと考え るわけです。学会が仮にやらなければどうするかということですが、学会が仮にやらなく て、企業が売りたいということですと、今度は企業がボランタリーに何人かの先生方ある いは学会に頼んで、そういう同じことをやるかもしれません。それはどちらがやらなけれ ばならないということではないのだろうと考えております。 ○北村委員 「必要な措置を講じること」の中には、もし学会がやらなければ企業がやら なければならないという命令ではないのですね。 ○審査管理課長 そういう命令ではありません。そういう環境ができる、その環境の中で 売っていくのだと。だから、そういう環境ができなければ、先ほど極端なことを申し上げ たわけですが、売らないという選択肢も当然、適切な措置の中にあるわけです。 ○北村委員 それが緩いからこそ、オフラベルの使用が8割にもなるということも起こり 得るわけですね。 ○笠貫部会長 私の理解では、このデバイスを扱っている会社は、やはり技術に関しては きちんと教育する。ここにSimulatorも書いていますが、ほとんど用意していますよね。 そういう意味では、お金のかかる部分のことについては、デバイスを売る側としてきちん と教育をするということの義務付けをつけて、承認条件でいいと思います。そのことと学 会での施設基準と、このようなドクターがやってほしいという学会のものとは少し意味合 いが違うので、学会と会社側とのコラボレーションが必要ではないかと思っています。そ うしないと、一方で売る側だけの教育プログラムになってしまうと困ります。内容の質的 なものについては学会が担保をする。しかし、こういったSimulatorという特殊なお金の かかるものについては、会社側が責任を持つという形で、承認条件というものは両者の責 任ということで、それぞれの持ち分で責任を持ってやると理解していたのですが、この辺 についてはいかがでしょうか。 ○審査管理課長 一般論的に申し上げますと、部会長のおっしゃるとおりだろうと思いま す。すなわち、使う側あるいは科学的な議論をされていく学会という集まりと、これを製 造販売する企業が密接な連携をとって、できるだけ安全に、かつ有効に医療機器を使って いくということなのだろうと思います。ただ、法的なことを申し上げますと、承認条件と いうのはあくまで企業に課すものであって、その企業が製造販売していく上で、こういう ことを守っていきなさいということでしかありません。先ほど北村委員の御質問にしつこ いくらい言ってしまったわけですが、その上で誰が経済的な負担をしていくかというの は、薬事法の世界の中では言えることではないというのが、また一つあるのだろうと思い ます。また、例えばアメリカと我が国で私が見聞している範囲でも、こういった研修の費 用負担の違いというのもあるやに聞いているわけです。いずれにしても、申し上げておか なければならないのは、申し訳ないのですが、部会長のおっしゃったとおり連携をやって いく。ただ、薬事法の中で、費用負担の問題まで申し上げられることではありませんとい うことです。 ○北村委員 しつこいようですが、承認条件ですよね。そこに「十分な知識・経験を有す る医師が適応を遵守して用いられるように必要な措置を講じること」と書いた場合に、ど のようにそのような人たちを育て、あるいは適応を遵守しているという監視体制があるの かということも含めてガイドラインそのものの気がします。承認する条件に対する罰則は あるのですか。 ○審査管理課長 これが遵守されなければ承認を取り消す、ということが最大のものにな ると思います。 ○北村委員 いろいろな問題がありますね。どこまでそれが厳しいかは、難しい問題だと 思います。一番患者にメリットのあるようなという考え方もあろうけれども、この承認条 件を実行するに当たってのお金の問題は薬事法の範囲ではないということですけれども、 実際これを守らせて行っていくということを条件にするならば、それを受ける医師側と企 業側は、やはりそれを考えないといけないと思いますね。今、部会長が申されましたが、 何らかの形のコラボレーションをしないと、この承認条件を遵守している医師側も病院側 も企業側にとっても、形骸条件化すると感じますね。 ○医療機器審査管理室長 医療機器については、これまでもこのような形で条件をつけて きたものもあるのですが、医療機器については医療技術と、それに伴って使われる道具と しての医療機器という立場があるので、医療機器単独の有効性、安全性だけでは確保でき ないことがあります。これまでも学会の御協力をいただきながら、どういう技術レベルを 持った先生に使っていただくのがいいのか、どういう患者を対象に、どういう施設で使う のがいいのかという、医療技術そのものの使い方のガイドラインのようなものをこのよう な形で作っていただきつつ、一方で機械そのものは各社ごとに柔らかさとか曲がり具合な どが違いますので、その製品特有のトレーニングはどうしても必要な部分で、そちらは企 業が積極的にできることであって、そこはもちろん企業の責任で、トレーニングをしっか りやった医師にだけ使っていただくと。  一方、技術の部分については、企業が口出しが難しい部分もありますので、学会の御協 力もいただいて、医療技術をどのように担保していくのかというところは、学会に御協力 をお願いし、まさに部会長がおっしゃったように、両者が協力して安全確保を図っていく ということしかないのです。確かに先生がおっしゃるように、切り分けのところが誰にど れだけの責任というか、義務がかかっているのかというところは非常に難しいかもしれま せんが、承認条件自体は企業に課すしかありませんので、企業に対してそういった学会の 状況も踏まえつつ、学会が確保していただける医療技術のレベルの施設を選びながら、か つ企業の責任において個々の機器についての十分なトレーニングをやって、そういう範囲 で物を納入していくといいますか、使っていただくように、企業としては最大限の努力を する。そのときに、誰が見張っているのかは非常に難しい問題ですが、条件として付ける ことで、そこは可能な限り確保していただけるよう、行政としても指導をしていきたいと 考えています。 ○北村委員 わかりました。 ○笠貫部会長 私も先ほどの薬事法の限界というのはよく理解しているつもりなのです が、こうした高度の医療技術を伴わなければいけない医療機器の開発がどんどん起こって きたときに、施設基準というものが非常に重要になってきた場合に、どういう枠組みを作 るか考えていくと、先ほど経済的な問題も入ってまいりました。それを含めてこれからの 御検討をいただくという大きな課題を指摘していただき、これからの問題として御理解い ただくことにしたいと思います。今回の本品についての御意見はありませんでしょうか。 もしなければ、本製品の承認の可否について議決に入りたいと思いますが、長谷川委員に おかれましては議決への参加を御遠慮いただきたいというようにお願いします。本品につ いて、御意見はありますか。 ○石山委員 頸動脈用プリサイスの添付文書のページ4/5の「4.その他の注意」、要す るにステントのMRIの磁場強度に関する項です。これを見ると、1.5テスラ以下の静磁 場でのMRIでの安全性は示されたとした上で一番下に「本ステントは、1.5テスラより 大きい静磁場でMRIシステムにおける安全性が評価されていない」というだけで、説明 が尻切れトンボのような形の文章です。現実には最近は1.5テスラ以上の2テスラ、ある いはそれ以上のものも出ております。ですから、1.5テスラより大きい静磁場で、MRI システムにおける安全性が評価されていないからどうなのだ、ということを少し付け加え たほうが親切ではないかという気がします。例えば評価されていないので、十分にフォロ ーアップしなさいとか、注意して使いなさいとか、それ以上の磁場に関しては、そういう 注意が必要なのではないかと思います。 ○医療機器審査管理室長 表現は検討させていただきたいと思います。 ○笠貫部会長 事務局の方で御検討いただきたいと思います。 ○澤委員 私も添付文書の件ですが、アンジオガードの臨床成績の不具合のところを見る と、187ページとか、数症例にわたって、かなり眼症状としての不具合が記載されており ます。一方で、どういう具体的な不具合が起きているのかということが、添付文書を見ま しても、塞栓が起きるなどという形では出ているのですが、具体的に患者が一番気が付く ような眼症状とか半盲などということも、どこかで情報提供ができるような記載をしてい ただくほうがよろしいのではないかと思います。添付文書をあまり膨らますことはできな いでしょうが、きちんとした情報提供をお願いしたい。臨床報告の概要を見ても、どうい う不具合があったのだということは、一覧表にあまり出ていないのです。ですから、そう いう情報提供ができるようなシステム、今まで見られた不具合をきちんと箇条書きにまと めて、すぐに分かるような提供をしていただく書き方をお願いいたします。 ○機構 貴重な御指摘ありがとうございます。やはり市販後に出てきている不具合有害事 象と臨床試験の中で見られているものは詳細に見れていますので、そういったところを整 理して、患者に対してまた医師に対して適切な情報になるように、これはもう一度精査し 直し整理をして、添付文書改訂をしたいと思います。 ○武谷委員 同じく添付文書に関してですが、最後の所で、おそらくこれだけで情報とし て十分な、一義的理解ができるように皆さんにお伝えしなければいけないものと理解して いるのですが、5/5の左下のテーブルがありますね。これは米国試験で、無作為化群とス テントレジストリ群がありますが、ここで死亡率と脳卒中、同側や重症・軽症という項目 がありますが、死亡と脳卒中というのは重複しているのか、あるいは脳卒中以外の理由で 死亡されているのか。実際もし担当医の立場になりますと、少なくともこの辺りは患者に 御説明しなければいけないのですが、そもそも死亡率10%前後というのは、私だったら 怖くて、なかなか患者に言い出しにくいのですが、脳卒中とまた違った、重複していない ということになると、これはまた5人に1人くらい脳卒中、あるいは1年以内には死にま すという話になってしまうので、少なくともその辺りはきちんとしておいていただいたほ うがよろしいのではないかと思うのです。実際どうなのですか。重複しているのですか。 ○機構 実際に脳卒中と死亡とはかなり重複している部分があります。ですので、脳卒中 でカウントされて、死亡でカウントされている、もしくはMAEでもカウントされている とか、同側性脳卒中と死亡でダブルカウントされているという例はここに入っています。 これを平たく言うと、全部すべて足した症例が起こっているというよりは、MAEで大体 入りますので、ステント群の無作為化群の360日後であれば、大体20症例くらいの重要 な有害事象が起こって、その中のうち大体12例が死亡に至っているというのが現状です。 そこのところの重複しているか否かとか、ここのところをもう少し分かりやすく、という ところが先生の御指摘の部分ではないかと理解いたしましたので、その点についても今さ っきから添付文書について御指摘いただいている部分と合わせて対応させていただけれ ばと思います。 ○笠貫部会長 このアンジオガードXPは、日本ではまだ治験がされていないということ もありますので、できるだけ海外のデータについて詳しく書き、検討いただくようにした いと思います。 ○倉根委員 細かいことで、今の数値の問題なのですが、例えば三けたでパーセントを示 しているのがありますね。それから、患者数が二けたしかないのに、三けたまで出してい るのもありますよね。数学的には、おそらく二けたしかないと有効数字は二けたしか有効 でないと思うのですが、その辺も少し御検討いただいたらいいのではないかと思います。 ○機構 了解いたしました。ありがとうございます。 ○笠貫部会長 ほかにないようでしたら、この医療機器「頸動脈用プリサイス」及び「ア ンジオガードXP」について、本部会として製造販売承認を与えて差し支えないものとし て、再審査期間は3年間といたします。また、高度管理医療機器に指定し、特定保守管理 医療機器、生物由来製品の指定は不要といたします。この審議結果については、10月3 日に開催される薬事分科会において報告させていただきます。 ○小田委員 先ほどの区分の名称について、いわゆる頸動脈用ステントという区分なので すが、これはGMDNにそのままあるのでしょうか、ないのでしょうかということです。 それと、ステントの区分なのですが、冠動脈など部位ごとにステントを置いていくのか、 自己拡張型でいくのか、バルーン型でいくのか、あるいは材質でいくなど、いろいろ分け 方はあるかと思うのです。ですから、そういうときに部位ごとにやっていったほうがいい のか、ある程度その辺りの方針を決めておいて一般名称を決めていったほうがいいのでは ないかという思いがあるものですから、その辺を教えていただきたい。 ○機構 GMDNでは、主に部位ごとに区分されていることが多くて、やはりこちらも「頸 動脈ステント」というGMDNのコードがあって、そちらからこちらに引用しているとこ ろがあります。例えば腸骨動脈だったら、バルーン拡張型もありますし、このような自己 拡張型もあります。それは両方とも同じ一般的名称の区分に入っているのが現状ですの で、今のGMDNの分け方から見ると、拡張様式などではなく、部位ごとに分かれている のが現状だと理解しております。 ○笠貫部会長 続きまして、議題3の医療機器「血管内OCTイメージワイヤー」及び「血 管内OCTイメージングシステム」の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、 製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について、審議を行いたいと思います。審議品 目の概要については、事務局の方から御説明をお願いいたします。 ○事務局 医療機器「血管内OCTイメージワイヤー」及び「血管内OCTイメージング システム」について説明申し上げます。申請者は、株式会社グッドマンです。この製品は、 近赤外線を用いて、冠動脈における血管内腔及び血管壁表層を画像化する検査を目的とし ているものです。この「血管内OCTイメージワイヤー」は、血管内超音波法、IVUS と呼ばれているものと同様に、血管内の断層画像の取得を目的としたカテーテルで、専用 の画像診断装置に接続して使用することができます。イメージワイヤーの内部の光ファイ バーの先端から近赤外線、大体1,300nmくらいを血管壁に照射しながら画像を取得するも のです。概要等については、機構の方から御説明させていただきます。 ○機構 医薬品医療機器総合機構より説明申し上げます。資料3-3です。総合機構での本 品の審査に当たり、御覧の専門委員の先生方の御意見をいただきました。「血管内OCT イメージワイヤー」は、血管内に挿入するカテーテルであり、専用の画像診断装置である 「血管内OCTイメージングシステム」に接続して使用します。光源に近赤外線を使用し、 光の干渉作用を利用して、血管内の断層画像を取得することができます。  本品の外観写真をお示しいたします。本品1の先端イメージング部には、光ファイバー やレンズが配置されております。現在、既存の血管内観察法として、IVUSと血管内視 鏡があります。IVUSは超音波を利用して血管断層画像を取得するもので、血管造影法 では分かりにくい病変や病態の情報を得るために広く用いられておりますが、血管断面を 詳細に観察するには解像度が十分ではありません。また、血管内視鏡は血管内腔表面を直 接観察することはできますが、断層画像を取得することはできません。そこで、高解像度 の断層画像が得られる技術であるOCTを利用し、より詳細な血管断層画像情報を提供で きるシステムとして本品が開発されました。  本品の海外における承認・使用状況をお示しします。平成15年にCEマークを取得し ており、平成19年1月までに海外で本品1が約□□本、本品2が約□台販売されており ます。また、平成19年3月までに報告された本品に関する不具合について、こちらにお 示しいたしました。患者への健康被害を伴う不具合は報告されておりません。  本品1では、2年間の実時間保存検体を用いた安定性試験が実施され、試験結果を基に 本品の有効期間が2年と設定されております。また、安全性を裏付ける試験として、こち らにお示しする試験が実施されました。いずれも問題がないとする試験成績が提出され、 これを了承しております。  性能を裏付ける試験として、本品の模擬使用試験及び光伝達性試験、本品2の性能確認 試験が実施され、いずれにおいても問題がないとする成績が提出されました。使用方法を 裏付ける試験としては、ブタを用いた安全性確認試験が実施され、オクルージョンによる 軽度の急性心筋虚血が示されたほかは、特段の問題は認められませんでした。  その他の資料についてはこちらにお示しする資料が提出され、その妥当性を確認し、了 承しております。  本品の使用上の有効性・安全性を担保するため、血管造影患者又はインターベンション 治療患者に対し、IVUSを対照機器として患者内比較臨床試験が実施されました。  血管内の観察画像例をお示しします。上が本品、下が対照機器のIVUSの画像で、そ れぞれ同一部位を観察した画像となっております。ステント内に増殖した内膜の様子な ど、本品では血管壁表層付近の鮮明な画像が得られていることが分かります。  こちらは有効性の定性的評価の結果をお示ししております。冠動脈では、血管内腔観察 における本品の有効率が90.3%となり、IVUSの有効率79.3%よりも有意に高くなり ました。一方で、血管壁内部2.0mmまでの内膜浅部や粥腫の観察など、血管壁深部の観察 の有効率については、IVUSと比較して劣る結果となりました。下肢動脈では、すべて の観察項目においてIVUSと比較して劣る結果となっております。血管壁深部の観察に おいて、IVUSより劣る結果となったことから、血管壁表層で高解像度であるという本 品の特性を評価するために追加解析が行われました。血管内膜表層の有所見の検出率を評 価したところ、冠動脈では、血栓、解離、プロラプス、下肢動脈では、血栓について本品 での検出率がIVUSと比べて有意に高いという結果が得られました。  こちらに、有効性の定量的評価の結果をお示しします。冠動脈における最小内腔径の測 定値を本品、IVUS、血管造影で比較したところ、それぞれの測定方法で正の相関を示 しました。下肢動脈でも、同様に正の相関を示しております。  安全性評価については、本品の使用との因果関係が否定しきれない不具合が2例発生し ました。下肢動脈解離はインジェクター内圧の設定を誤ったためと報告されています。R INDは、通常の造影検査やインターベンション治療でも起こり得るものであり、本品と の因果関係はないとは言えないと判断されております。なお、重篤な合併症の発生はなく、 その他認められた5例の合併症は本品の使用時ではなく、インターベンション治療中に発 生した事例などの理由から、本品固有に発生する事象ではないと判断されました。  以上をまとめると、非臨床試験として、性能試験、動物実験等の成績が提出されており、 特段の問題は認められておりません。観察頻度や解像度の観点から、本品はIVUSに代 わる観察装置ではないものの、冠動脈では血管内腔及び血管壁表層の微細な構造の観察に 優れていることが示されており、不安定プラークなどの血管内膜表層の病態やステント留 置後の内膜の観察などにおいては臨床的有用性があると考えております。なお、安全性に ついては、使用方法や併用機器に関して十分に情報提供を行い、適切なトレーニングを実 施することにより、リスク低減を図ることは可能であると考えております。  以上より、本品が診断用機器であることを考慮しても、本品の冠動脈におけるリスクは 臨床上、許容できる範囲であると判断いたしました。下肢動脈については、有効性・安全 性に関する十分なデータが示されていないことから、末梢血管への適用を使用目的から外 した上で、こちらにお示しする使用目的で承認することが妥当であると総合機構は判断し ました。本品は新性能医療機器であることから、再審査期間は3年が適当であると考えま す。なお、生物由来製品又は特定生物由来製品の該当性については、非該当と考えており ます。  ここで部会委員の先生方からいただいた事前のコメントについて説明させていただき ます。コメントをいただいた順に、笠貫部会長からのコメントを要約して御紹介いたしま す。「本血管内光断層撮影用カテーテルによる血管内イメージは、従来の血管内超音波I VUSと比べて解像度が10倍高いという利点があるものの、OCTによる血管内面ない しステントの高解像度の観察がMACEの予防やカテーテル治療合併症低減等の真の臨 床上の有用性を明確に示した臨床試験は存在しない。本カテーテルを用いることの臨床的 有用性の評価は、市販後に自主研究の形で行われることになろうが、そのような順序を許 容すべきか否かが本デバイスの認可における争点であると考える。」とのコメントをいた だいております。  こちらについて、総合機構の考えを申し上げます。本品は、不安定プラークなど、血管 内膜表層の病態やステント留置後の内膜の観察などにおいては、IVUSよりも診断能力 に優れていると考えております。先生が御指摘されているように、こういった症例に特化 して臨床試験が実施されたわけではありませんが、IVUSと比較した際に、血管壁表層 を高解像度で観察できること、これまでIVUSでは観察不可能だったものが観察できる ことが利点であり、観察用機器としてIVUSと差別化されるもので、臨床試験で検証さ れてはおりませんが、臨床上の有用性はあると考えております。  次に、石山先生からのコメントを要約して御紹介いたします。「基本的には、IVUS 及び本品で、それぞれ有用な面を持っており、安全性という点でも問題はないと考えます。 ただ、本品は赤外光の使用により、血管壁の深さ方向の情報が得られるという点で、IV USと比較が主であるが、むしろ血管内視鏡との有用性の比較について知りたい。本品が IVUSと血管内視鏡の中間的位置付けなのであれば、血管内視鏡との比較データがほし い。」とのコメントをいただいております。  こちらについて、総合機構の考えを申し上げます。本品と血管内視鏡との直接の比較デ ータはありませんが、各デバイスの特徴から考えますと、血管内視鏡ではプラークの色調 についても観察できることに対し、本品では色調を判別することはできません。ただし、 プラークの色調は皮膜の厚さと相関しているとも言われており、本品では皮膜の厚みが測 定できるという特徴を備えていることから、別の形での情報を得ることが可能であると考 えております。このように、本品はIVUSや血管内視鏡に代わる観察装置ではなく、観 察目的に応じて使い分けすべきものと考えております。いただいたコメントは以上になり ます。御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○笠貫部会長 御質問はありますか。 ○中原部会長代理 これは近赤外線を照射するのだと思うのですが、おそらく熱が発生す るのだと思うのです。だから、熱の発生による血管に対するダメージというか、安全性の 検討はされているのでしょうか。 ○機構 資料3-2の通し番号114ページからになりますが、レーザー製品の安全性に関す る基準規格というものがあります。こちらはレーザー製品の安全性の規格に則り、本品の 赤外線の安全性についても検討が行われており、一番厳しい条件においても安全であると いう検討結果が示されております。 ○中原部会長代理 資料3-2の通し番号114ページですか。「放射性に関する安全性」と いう所でしょうか。 ○機構 はい。 ○中原部会長代理 これは放射して、目や組織などに対して特にダメージがないというこ と、この中に熱も含んでいると考えていいわけなのですね。 ○機構 そうです。 ○中原部会長代理 分かりました。 ○笠貫部会長 私が意見として書かせていただきましたのは、これは冠動脈が80症例で、 まだ欧米でのきちんとしたデータがない、また臨床試験としてはなされていないというこ とと、そういった場合に、先ほどの不安定プラークの評価というものについては、必ずし も読み方は確立されていないのではないかと思うのです。専門家で議論をしたら、意見が 分かれるかもしれないということを少し危惧しております。ある意味では研究目的に近い 医療機器で、欧米ではまだ累積の出荷本数が□□本しかない。日本の100症例、しかも冠 動脈80症例で解像度の高いものの読み方について、まだ完全に確立されていないものは、 先ほど私が言いましたように、真の臨床的な意味としての予後まで見たものがまだ何もな いわけです。そうすると、そこでこれを評価をし得るのかどうかというのが疑問として出 させていただきました。ほかの委員の先生方からいかがでしょうか。  ほかに欧米にきちんとした評価の仕方、長期の臨床データがあって、日本で症例数が少 なくて認可するという場合はまた別だと思うのです。この場合には、アメリカでもまだ十 分な臨床試験はないと。ある意味では日本が先んじて認めることになるのですが、それが 冠動脈疾患の80症例でいくのだろうかというのと、先ほど熱の問題も出ましたが、これ はオクルージョンバルーンを使いますから、そのトラブルもまた起こり得るかもしれな い。80症例でそこまで安全性もすべて言えるのかというのが、少し疑問が残るのですけ れども、世界で最先端の新しい機器を認めていくかという考え方だと思うのですがいかが でしょうか、という問題を私は提起させていただいたのです。このデータそのものからど うお考えになるかという御意見をいただきたいと思うのです。 ○医療機器審査管理室長 本品はIVUS、内視鏡と、それぞれの特徴を活かしながら、 画像診断に使われる機器の一つという位置付けだと理解しているのです。IVUS又は内 視鏡で得られる情報の臨床上の意義についても、先生が御指摘のような、それでどのくら いの疾患が防げるのか、又は治療効果があるのかについての正確な臨床的な評価というの が、もしかしたら必ずしも確立していないのではないかと思います。本品については、先 ほどの機構の説明にありましたように、画像の解像度から、これまでの既存のIVUS、 それから内視鏡と代わるものではないけれども、見る対象に合わせて選べるワン・オブ・ ゼムということで位置付けができるのかということだと理解しているのですけれども。 ○笠貫部会長 多分これの場合でも、血管内膜の観察という非常に限られた患者になりま す。そうすると、適応とする技術と画像の判断というものでいくと、この場合も施設基準 というものは作るのですか。あまり考えないですか。IVUSも、研究というわけではな いのですが、ある意味では新しい一つの医療技術が出てきて、IVUSに代わるかどうか というものが、まだ世界的にも立証はされていない。日本で100症例でやりました、不安 定プラークがよく見えましたという、そのことだけで有用性を言う場合に、研究的医療機 器という段階のものも、保険のことはここで議論されないのかもしれないのですが、例え ばこれを保険で認めるときに、少なくともIVUSより高かったら駄目ですという問題と いうのは、言い方がまずかったかもしれません。 ○荒井委員 大変デリケートです。診断用機器でよく見える、診断能が上がると言っても、 何を基準に診断能が上がっているというのかということです。いわゆるクリニカルアウト カム、最終的に臨床的にどういった有効性があるのか、これはものすごくデリケートな部 分だと思うのです。よく見えるからいいか、よく見えても結果は何も変わらないという診 断機器はたくさんあるものですから、これは今までの治療関係のものとはかなり一線を画 する部分があって、まず基本的なスタンスを明確にしていただいたほうがいいと思うので す。要するに、診断機器に関してはクリニカルアウトカムとの関係は明確なものを求める わけではないけれども、安全性である程度担保。従来のものと同等であれば、一応ともか く認めて、本当にクリニカルアウトカムがどのくらい有効かということが示されるという のは、膨大な数が出てこないと結果が出てこない領域だと思いますので、そういうスタン スでいかれるのであれば、それはそれでもいいかと思います。たぶんそこのところを明確 に決めておかないと、治療用の機器と同じようなステップを踏んでから認める、認めない の議論をやっても、不毛の結果に終わるような気がしますがいかがでしょうか。 ○笠貫部会長 ほかの委員の先生方、御意見はいかがでしょうか。今日は三つともそれぞ れ特殊性があって、それぞれ問題を含んでいるケースだと思うのですが、今回は今も御指 摘があったように、診断機器として画像をより解像度の高いものというので、世界に先が けてこの臨床試験で評価できるだろうかということですが。 ○石山委員 そもそも私も先ほど一応書いておいたのですが、IVUSと比較するという のは、超音波の画像と比較しても、超音波の画像は当然悪いわけです。そういう意味では、 血管内視鏡との比較のほうがむしろ良いのではないかと思っていたわけです。この特徴 は、浅いですが、超音波と同じように、赤外線で深部情報が得られるという、新しいコヒ ーレンス、光学干渉断層映像法に赤外線を新しく採用したということで、手技・手法に関 しては、ただ血管内視鏡の可視光か赤外光かだけであって、いわゆる今まで従来使われて いる血管内視鏡と同じようなリスクがあるというわけです。そういう意味では、本装置が 浅いところの深さ情報がどのくらい得られるかというのが、たぶんこの機械の新しい点だ と思います。これはもう有効性に関してはこれからどんどんやっていかないと分からな い。そういう意味では、安全性がきちんと担保されているわけですから、OKとしてもい いのではないかということを言ったわけです。ただ、問題としては新しい情報がどこまで 得られるかということで、血管内視鏡と比べてデータがあれば、より分かりやすいのでは ないかということで、少し意見を申し上げたわけです。 ○笠貫部会長 そういう意味では、市販後調査というか、臨床試験というのも、こういう ものでもあってもいいのかもしれませんが、これは検討事項として、ほかに御意見はあり ませんか。 ○医療機器審査管理室長 画像を見るような機器について、これまでもいわゆるアウトカ ムとしての臨床効果を必ずしも評価をして承認してきてはおりません。もちろん安全性に ついては担保しつつ、どのくらい鮮明なといいますか、解像度のものが見えるのかという ことで評価をされてきているのがこれまでの評価でした。技術的には新しいは新しいので すが、世界的にはEUではもう既に2002年から使用されてきて、普及していないのはど ういう理由なのか分かりませんが、確かに□□本を使用されてきている。アメリカでは、 今、日本と同じようなIVUSとの比較をした臨床データで、画像の写り具合についての 試験をして、既存の画像と同等なのかということの確認のための臨床データを付けた 510(k)の申請として、審査が進められているところです。その申請自体は受理されてお りますので、新しいPMA、臨床評価の必要なPMAということで、評価をされていない というように承知しているところです。 ○石山委員 たぶん使っているうちに淘汰されますし、有効性というのはたくさん使って みないと分からないですね。 ○医療機器審査管理室長 そういう意味では、血管内視鏡も、もちろんもう既に承認にな っているものですが、それなりに使われているといいますか、IVUSも同様ということ かと思われます。 ○笠貫部会長 そのほかには御意見はありませんか。ほかに御意見がないようでしたら、 医療機器「血管内OCTイメージワイヤー」及び「血管内OCTイメージングシステム」 については、本部会として製造販売承認を与えて差し支えないものとして、再審査期間は 3年間といたします。生物由来製品の指定は不要といたします。この審議結果については、 10月3日に開催される薬事分科会において報告させていただきます。これで新医療機器 の審議は終了いたしましたので、報告事項に入りたいと思います。議題4「部会報告品目」 について、事務局の方から御説明をお願いいたします。 ○事務局 平成19年5月1日から6月30日までの2か月の間に承認された品目のうち、 報告対象となっているものについて、報告させていただきます。医療機器が22品目、体 外診断用医薬品が5品目あります。これらについては資料4-1の中に記述しており、先生 方には事前にお送りさせていただいているところです。時間の関係もありますので、この 場での詳細な説明は割愛させていただきます。 ○笠貫部会長 委員の先生方から、この報告品目について御質問はありますか。 ○北村委員 前にも聞いたことがあるような気がして申し訳ないのですが、「輸入」と「製 造販売」と「外国製造」のデフィニションというか定義を、もう一遍教えていただけます か。 ○医療機器審査管理室長 「製造」、「輸入」というのは古い改正前の薬事法の言葉です が、「製造」というのは国内で製造しているものです。「輸入」は外国で製造されて、輸 入されてくるというものです。「外国製造」というのは、外国で製造されて、もちろん輸 入という形態で入ってくるのですが、外国の製造業者自身が申請を出せる制度になってお り、外国製造業者が直接申請する場合には、外国製造という枠組みになっております。輸 入業者が申請をすることも法律的にできましたので、その場合は輸入承認という形にな る。ただ、現在では、国内マーケットに乗せることの責任者を製造販売業者として、輸入 であろうと、国内製造であろうと、法律上、同一に位置付けますので、「製造販売」とい う分類もここに出てきておりますが、平成17年から施行になった新しい法律では、製造 販売という言葉に統一されているというように理解いただければと思います。 ○北村委員 国内で製造していなくてもいいのでしょう。 ○医療機器審査管理室長 製造販売という言葉を使います。 ○北村委員 会社としてというか、「日本メドトロニック」と書いてありますが、日本に 工場がなくても、製造販売になるわけですね。なってしまうのですね。 ○医療機器審査管理室長 新しい法律ではそのような言葉になっております。改正薬事法 です。薬事法が改正されました。 ○北村委員 改正されたもので、アメリカで作って実際は輸入しているのだけれども、製 造という言葉が付いてしまう。改正なのか、改悪なのかよく分からないけれども。 ○笠貫部会長 ほかに御意見がありませんでしたら、本日の議題はこれで終了させていた だきます。事務局の方から連絡事項等ありますか。 ○事務局 次回の部会については既に御連絡申し上げているところですが、9月27日 (木)の午後2時から開催の予定となっております。議題、会場等については、決定次第改 めて御連絡申し上げます。さらにその次の部会については12月ごろの開催を予定してお りますが、これについては別途、日程調整等させていただきます。 ○医療機器審査管理室長 以上で、本日の医療機器・体外診断薬部会はすべて終了させて いただきます。長時間にわたりまして、御審議、大変ありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先:医薬食品局 医療機器審査管理室 室長補佐 広瀬(内線 2912)