07/08/23 第2回義肢等補装具専門家会議議事録 第2回義肢等補装具専門家会議 日時 平成19年8月23日(木) 15:00〜 場所 中央合同庁舎5号館共用第9会議室 ○中村医事係長 ただいまから「第2回義肢等補装具専門家会議」を開催します。なお、 赤居先生におかれましては、本日ご欠席です。まず、資料の確認をいたします。  本日の資料は、資料1「第1回義肢等補装具専門家会議の検討概要」、資料2「義肢等 補装具支給制度の法的整理」、資料3「重度障害者用意思伝達装置について」、資料4 「車いす及び電動車いすの付属品について」、資料5「障害等級認定基準との整合性に 係る検討」、資料6「意見書」、参考資料となっております。資料に不足のある方はい らっしゃいませんでしょうか。それでは、盛合座長、進行をお願いします。 ○盛合座長 議事に入る前に、まず、前回の会議において検討した内容を確認したいと 思います。事務局から第1回義肢等補装具専門家会議の検討概要の説明をお願いします。 ○中村医療専門官 それでは、資料1「第1回義肢等補装具専門家会議の検討概要」を ご覧ください。1つ目は、障害保健福祉施策の補装具及び日常生活用具の整理について です。この点については、大きく2つの検討をいたしました。1つが、補装具から日常 生活用具に整理された「点字器」、「人工喉頭」、「収尿器」、「ストマ用装具」及び 「歩行補助つえ(1本つえのみ)」を今後も義肢等補装具支給制度の支給対象とするか です。この議題については、資料の1の2ページの(3)検討概要にあるように、1番目と して、「「点字器」ほか4種目については、身体の欠損又は損なわれた身体機能を補完、 代替するものでその効果が確実であること」、2番目として、「対象の被災労働者にと って日常生活や就労に当たって必要不可欠なものであること」、3番目として、「した がって、点字器等の5種目については、労働災害等により障害を受けた労働者の社会復 帰のためには必要なものであることから、今後も支給対象種目とするべきである」、と いう検討結果となりました。  次に、日常生活用具から補装具に整理された「重度障害者用意思伝達装置」について は、新たに義肢等補装具支給制度の支給対象とするか検討をしました。その結果、1番 目として、「「重度障害者用意思伝達装置」については、両上下肢の機能全廃及び言語 機能を喪失した者に対して、損なわれた身体機能を補完、代替するものであり、体のど こかが動く方に対してはその効果が確実であること」、2番目として、「重度障害者用 意思伝達装置を必要とする被災労働者はおり、その方の日常生活の自立のためには重度 障害者用意思伝達装置が必要であることから、義肢等補装具支給制度の支給対象種目に 追加すべきであること」、3番目として、「研究品ではなく、一般的に売られている重 度障害者用意思伝達装置を前提とすべきであり、また、意識に障害のある方については 対象とならないこと」、4番目として、「支給対象者については、「両上下肢の全廃又 は喪失し、かつ、言語機能を廃したことにより、障害(補償)給付の支給を受けた者又 は受けると見込まれる者で、重度障害者用意思伝達装置によらなければ、意思の伝達が 困難な者」という考え方で問題ないこと」、5番目として、「重度障害者用意思伝達装 置の技術は日進月歩の技術であり、5年経ったら同じものが非常に安価で提供できるよ うになる。高いものを支給すればよいというものではなく、価格を規定することは非常 に困難ではないか。価格を規定するのであれば、将来検討するような提言を入れるべき であること」、したがって、支給対象とすることはよいが、支給基準については、再度 検討することとすることとなりました。  大きな2点目は、障害者自立支援法において新たに追加された車いす、電動車いすの 付属品を義肢等補装具支給制度の車いす、電動車いすの付属品に追加するかです。検討 結果は、資料1の3ページの(3)検討概要にあるように、1番目として、「「ステッキホ ルダー」ほか12品目については、これら付属品を必要とする被災労働者にとって、安 全に安定して使用するために必要な付属品であることから、付属品を必要とする被災労 働者に対しては、支給対象の付属品として認めるべきであること」、2番目として、「「携 帯用会話補助装置搭載台」については、車いすの付属品として包括的に支給対象とする ことが適当でないことから支給対象外とするべきである。事案に応じ真に支給する必要 があれば、基準外として支給を認めることでよいこと」、3番目として、「付属品の支 給要件については、可能な限り医師が判断できるようなものを定めるべきであること」、 したがって、13の付属品については支給対象とする一方で、支給対象とする付属品の 支給要件については、再度検討することとすることとされました。  また、第1回会議の議題ではないのですが、今後の議事の進行に必要があるというこ とから、1番目として、「法律の専門家から、法律的な観点から義肢等補装具制度の意 義・役割について意見を取り、労災保険としての義肢等補装具の定義をまとめるべきで あること」、2番目として、「第2回会議で議論する浣腸器付排便剤、ストマ用装具に 係る検討事項について、事前に消化器外科の専門医から意見を取るべきであること」と され、可能な限り次回会議までに意見を取ることが決定しました。以上です。 ○盛合座長 前回の会議において検討した2項目と、その他として専門家からの意見を 求めることについて、事務局から説明がありました。まず、最初に、資料1の3の(1) の法律の専門家から、法律的な観点から義肢等補装具制度の意義・役割について意見を 求め、労災保険としての義肢等補装具の定義をまとめることについて、事務局において、 現在の状況がどのようになっているか説明をお願いします。 ○中村医療専門官 義肢等補装具支給制度の意義・役割については、上智大学の山口浩 一郎名誉教授、京都大学法科大学院の西村健一郎教授にご意見の提出をお願いしており ます。現在までに、山口先生からご意見をいただいておりますので、紹介させていただ きます。資料2をご覧ください。  山口先生のご意見では、義肢等補装具支給制度の意義・役割について、3つの論点で まとめられています。1番目に、「労災保険給付と義肢等補装具支給制度の比較法的観 点」、2番目に、「労災保険法と障害者自立支援法の特徴」、3番目に、「利用者の費 用負担」の3点でまとめられています。  資料3ページにまとめとして記載されていますが、3つの論点を踏まえると、義肢等 補装具支給制度を労災保険として実施する意義については、1つ目は、義肢等補装具支 給制度を労災保険給付の治ゆや障害等級の判断を行う制度の中で実施して、療養の要否 や障害等級を判断することにより、請求人の実情を踏まえた機動的な対応を可能とし、 それが社会復帰の促進という法の目的に資するものであること。また、ILO121号 条約や主要国の状況をみても、義肢等補装具の支給を労災保険の制度の中で一体的に行 うことが当然とされていることです。2つ目は、障害者自立支援法とは別に労災保険法 に基づき実施することにより、形式的には障害者自立支援法は一般障害者全体を対象と しており、産業災害や職業病の実情に応じた新たな支給種目等については迅速に対応し にくいが、労災保険の義肢等補装具支給制度であれば、被災労働者の社会復帰を促進す るために必要があれば、障害者自立支援法に先行し、機動的に支給することが可能であ ることです。3つ目は、障害者自立支援法の補装具費支給制度は、原則として利用者に 1割の負担を求めていますが、労災保険の義肢等補装具支給制度においては、被災労働 者に費用負担をさせず、全国統一的な支給制度を運用できることです。このようにまと めています。  さらに、義肢等補装具支給制度の役割は、意義を踏まえ、「労働災害又は通勤災害に より被災した労働者に対し、傷病の治ゆに当たって、全国統一的な制度として、被災労 働者が費用負担をすることなく、身体の欠損又は損なわれた身体機能を補完、代替する などの義肢その他の補装具を支給することにより、日常生活における自立を促進し、又 は、効果的に社会活動、職業活動への回帰を図り、もって社会復帰の促進に資するもの である」としています。  また、義肢等補装具支給制度は、創設された昭和22年から現在に至るまで、障害者 保健福祉施策ではなく、労災保険独自の制度として運用しており、被災労働者の社会復 帰を促進するという労災保険法の目的を達成するためには、産業災害及び職業病の実情 に対応すべく、制度の運営に当たって、障害者自立支援法の補装具費支給制度を参考し つつも、今後も労災保険独自の制度として運用していく必要があるという、提言的なこ とばでまとめられています。  山口先生から、法的な観点から、参考となる意見が出されていますので、今後の議論 にあたって参考にしていただければ幸いです。  次に、2の義肢等補装具の定義についてですが、基本的に障害者自立支援法の補装具 を支給対象にしていることから、障害者自立支援法の補装具の定義とほぼ同じものであ ってよいこと。さらに、被災労働者の社会復帰を促進するという観点から、労災保険独 自のもの、あるいは、障害者自立支援法の日常生活用具の一部を支給対象としているこ とから、補装具の定義に独自性のある部分を付加する規定を設ける必要があるとしてい ます。  以上が山口先生のご意見ですが、西村先生にご意見をいただいた後、お2人のご意見 を踏まえながら、義肢等補装具支給制度の定義について、ご検討いただければと考えて います。以上です。 ○盛合座長 ただいまの上智大学の山口名誉教授のご意見に関して、何かご質問、ご意 見等はございますでしょうか。 ○徳弘先生 義肢等補装具支給制度の意義・役割については、私から言い出したことで すので、山口先生がまとめていただいた意見に関し感想を言わせていただきます。日常、 労災病院において、政策医療である労災医療を行っている我々は、特に、リハビリテー ション医療を中心に行っているわけですが、非常にそれを裏付けていただいているとい う実感があります。例えば、もちろん障害者自立支援法でも車いすは支給されますが、 せき髄損傷者の方を早く社会復帰させるために、労災保険法において車いすが支給され ます。(財)労災年金福祉協会で行っている義肢の巡回サービスの結果を見ても、労災 保険の制度では、1切断部位について、2つ支給しているのです。それをここに書いて ありますように機動的にやることによって、切断した後でも職業に復帰して、職業生活 を全うして退職したという方がたくさんおられます。そういう意味からいうと、この山 口先生の意見というのはまさにそれを裏付けていると思って、非常に実感ができる理論 になっているという印象を持ちました。 ○盛合座長 どうもありがとうございます。山口先生の意見書の2の義肢等補装具の定 義において、「独自性のある部分を付加する規定を設ける必要がある」ということは、 非常に当を得た内容だと思います。というのは、補装具が障害者自立支援法と労災保険 の義肢等補装具では、内容が少し変わってくる場合です。そこのところを何か違いがわ かるようにする必要があるのではないかという意味では、付加する規定を設ける必要が あるという文面をいただいて、我が意を得たりと思っていますが、木村先生、何かご意 見がありますか。 ○木村先生 先生方のおっしゃるとおりです。 ○盛合座長 事務局からの説明にもありましたが、もう一人の西村先生のご意見をいた だいた後、2人のご意見を踏まえながら、次回、定義について議論することとしますが よろしいでしょうか。 (了承) ○盛合座長 それでは、本日の議事に入ります。まず、議事1「重度障害者用意思伝達 装置等の支給基準について」です。資料1の1の(3)のイにおいて、重度障害者用意思 伝達装置の支給基準については、再度検討するよう事務局にお願いしていたところです。 事務局から検討状況の説明をお願いします。 ○中村医療専門官 前回の会議での議論を踏まえ、重度障害者意思伝達装置の支給基準 について中島先生にご意見をお聞きしながら、取りまとめました。  資料3「重度障害者用意思伝達装置について」をご覧ください。1の支給対象者は、 「両上下肢の用を全廃又は両上下肢を亡失し、かつ、言語機能を廃したことにより、障 害(補償)給付の支給を受けた者又は受けると見込まれる者で、重度障害者用意思伝達 装置によらなければ、意思の伝達が困難な者」としていますが、接点式入力装置、帯電 式入力装置、筋電式入力装置、光電式入力装置、呼気式(吸気式)入力装置、圧電素子 式入力装置又は画像処理による眼球注視点検出式入力装置のいずれかにより意思を入力 することができる者に限るとしています。 また、重度障害者用意思伝達装置を支給す るに当たっては、医師による意見に基づき決定する必要があると付記しています。  3の支給に当たって留意すべき事項については、機種及びセンサーの選定に当たって は、被災労働者の症状に応じた医師の診断に基づき行うことが必要であるとしています。 4の型式及び価格等については、ソフトウェアが組み込まれた専用機器及びプリンタで 構成されたもので、ごく小さな身体の動き(まばたき、呼気等)等を利用して「はい・ いいえ」を判定するものが適当であることとし、日常生活における自立を図る観点から、 必要に応じ、呼鈴装置等電気器具の電源の入力及び切断を可能とする付加機能を有した ものが適当であることとしています。  基準価格は、市場の機器の価格、機能を踏まえると、450,000円以下を基準価格とす ることが適当であるが、近年の技術進歩が顕著であることを踏まえると、3年程度を目 途に見直しを行うことが適当であるとしています。なお、入力装置については、入力方 式により価格が大きく異なるため、機器の基準価格には入力装置を含まずに、障害に応 じた入力装置を加算することが適当であり、また、固定台、呼鈴についても、全ての支 給対象者が必要なものではなく、必要な場合に加算することが適当であるとしています。 以上です。 ○盛合座長 どうもありがとうございます。資料3「重度障害者用意思伝達装置につい て」について、何かご質問、ご意見等はありますかでしょうか。中島先生、何かありま すか。 ○中島先生 実は、もう少し早めに私から事務局に申しておけばよかったのですが、資 料3の1の支給対象者の本文の1行目に「両上下肢の用を全廃又は両上下肢を亡失し」 という一文があります。このままでも適切に運用されるとは思うのですが、説明をもう 少し加える必要があるという観点からすると、「重度障害者用意思伝達装置によらなけ れば」の前に、例えば「意思決定能力をもちながら」という1句を入れて、「意思決定 能力をもちながら重度障害者用意思伝達装置によらなければ意思の伝達が困難な者」と いうように変更した方がよいと考えます。あるいは、冒頭にそれをもってきて、「意思 決定能力をもちながら両上下肢の用を全廃又は両上下肢を亡失し、かつ言語機能を廃し たことにより」というような文章も可能と思います。この文書の最初は、障害(補償) 給付の支給を受けた理由を謳っていますので、この場では「重度障害者用意思伝達装置 によらなければ」の前に、「意思決定能力をもちながら」という1句を入れることもあ ってもいいのかなと思います。ただし、文章としてはかなりくどくなり、あまりすっき りしないのですが、先ほどの山口先生の意見書の最後に「定義の解釈による支給種目の 拡大を防ぐ意味で、社会復帰の促進に資する必要な義肢等補装具の支給を行うために適 切に判断すべきことを明記すべきである」と文言を踏まえ、適切な利用ということを考 えますと、先般の意識障害のある方にこれを適用することができるかという疑義解釈を 予め避けるという意味では、そのようなこともいいのかなと思いました。議論の俎上に 載せていただければということです。 ○盛合座長 ごもっともなご意見だと思います。そのほかにご意見、ご質問はあります でしょうか。 ○川村先生 支給に当たって留意すべき事項の中に、医師の診断に基づきとありますが、 実際に支給を見ていますと、主治医の方が重度障害者用意思伝達装置が必要であるかを 判断する能力を持っているとは限らないのですよね。そのような窓口というか、そうい うことを判定する人の条件というか資格は、規定しなくてもいいのですかね。 ○中島先生 これは、私の極めて個人的な考え方で、ほかの障害保健福祉分野でも、随 分これが問題になりました。やはり、医師というものはそれができる専門家であるとい うステータスを保持している職分ですので、川村先生が言われることはとてもよく理解 できるのですが、この1文をはずすわけにはいかないのではないかという思います。 ○盛合座長 ごもっともな意見です。 ○川村先生 現実的には、義肢等補装具の判断はチームでやっていて、医師だけでやる ということは少なくなっていますよね。この重度障害者用意思伝達装置の場合ですと、 STやOT、それからケースワーカーなどいろいろな人が関与しています。いまの段階で はこの表現でいいですが、将来段々とチームが判断するという考えになっていくんでし ょうね。 ○中島先生 しかし、OTもPTも看護師もSTも、法によって定められている専門職の 業務は、すべて医師の監督下においてという1文があります。 ○盛合座長 補装具の診断そのものも、一応、医師の処方によってとなっていますが、 内容はチームリーダーとしての立場で医者は判断すべきだと、医師が個人的にやるとい うことではないと理解しています。木村先生いかがでしょうか。 ○木村先生 処方ですから、医師ということになると思います。あと、川村先生が言わ れたことで、医師の資質のことも言われているのかもしれませんが、基本的には処方で すから医師ということになるのではないでしょうか。文章となるとこのような文章で書 かざるを得ないのではないかと思います。 ○盛合座長 やはり医師は責任を持ってもらいたいという気はしますね。すべてPT、 OTにお任せというのは、やはりそれはまずいのではないかと思います。特にこのよう な文面が入るとすれば、医師は、やはり責任をもってチェックするという姿勢は絶対に もっていただきたいと思います。川村先生がおっしゃる意味もわかりますが、しかし、 この文章は絶対入れておかないと、むしろ医師も入らなくていいとなったら、もう歯止 めが無くなってしまうのではないでしょうか。そういう意味でも医者は責任をもって処 方してほしいという気がします。完全に任せて機械的にやるのではなくて、もう少し真 面目に処方やチェックをしてほしいという気はします。川村先生、よろしいでしょうか。 ○川村先生 結構です。 ○木村先生 先ほど中島先生のおっしゃられた意思決定能力については、そのとおりだ と思います。文章が回りくどくなるので、もしもそういう内容を入れるのであれば、場 合によってはただし書きのところで「そのいずれかにより自己の明確な意思を入力する ことができる者に限る」というようなことを書けば良いのではないのでしょうか。ただ し書きのところを工夫すれば、もう少し簡素な文章にできるのではないかと思いました。 ○中島先生 あとは、事務局で整理いしていただければ、よろしいかと思います。 ○盛合座長 この議題に関して、他に、ご質問、ご意見等は、よろしいでしょうか。 ○神保課長補佐 先ほど川村先生から提起があったこととも若干関連するのですが、障 害等級認定基準プラスアルファで、まず支給対象者を規定して、それで重度障害者用意 思伝達装置を支給するかどうかということについて、対象者になるのかどうかを主治医 からお聞きする。併せて、どんな機種や入力装置が必要なのかということを、医師の意 見を聞いて支給させていただくということなのですが、主治医の先生からどのような情 報を取ったら、きちんと支給対象者なのか、あるいは、どのような機種を支給したらい いのか判断できるのでしょうか。もしそれを取りまとめることができれば、事務的にも 非常に円滑に進むかなと思います。もしよろしければ、中島先生と相談させていただき たいと思います。 ○川村先生 そのことでもう1つ大きな問題は、障害者自立支援法の場合は、何か問題 がある患者に関しては、更生相談所に相談しろという文言が入っています。ですから、 そのような特殊なというか難しい症例は、個々の医者が全部の責任でやるのではなくて、 ある程度の窓口というかチームというか、そういうところへ頼めということです。しか し労災を見ていますと、そのようなことがあまり書かれていません。労災保険において も、難しい症例を解決するルートをある程度制度上の中で作っておくべきではないかと、 昔から私は思っています。 ○神保課長補佐 ある障害については、提出していただくと、大体何級ということが判 断できる意見書のひな形をつくっています。難しい事例については、更にご意見を聞い たうえで、地方労災医員にご相談させていただくというようなことをしています。今回 も、あまり時間をかけずに円滑に支給できるようどういった点について、どのようなこ とをお聞きすれば、これは支給していい、これはもう少し調査する必要があるというこ とが、わかるものを作りたいと考えております。 ○盛合座長 いろいろな問題点がありますが、こういう問題点があることを知っていた だいたうえで、一応現実的には処理していかないと駄目なわけですから、いかに理想に 近い形にもっていくかということです。  それでは、資料3の「重度障害者用意思伝達装置について」は、1の支給対象者につ いて、事務局において文章の整理をすることでよろしいでしょうか。 (了承) ○盛合座長 では、次に進みます。資料1の2の(3)において、車いす及び電動車い すの付属品の支給要件については、再度、検討するよう事務局にお願いしていたところ です。事務局から検討状況の説明をお願いします。 ○中村医療専門官 資料4「車いす及び電動車いすの付属品について」をご覧ください。 前回会議の議論を踏まえ、かつ、前回資料を参考にしながら、住田先生、徳弘先生に車 いす及び電動車いすの付属品の支給の考え方について意見をお聞きし、取りまとめまし た。その結果、前回資料と変わったところだけ説明します。  上から3つ目の屋外用キャスターについてですが、「屋外、不整地、段差の多い場所 などで車いすを使用することが多い被災労働者、又は、腰痛等の症状があり、車いす又 は電動車いすの振動により当該症状が悪化するおそれがある被災労働者で、屋外用キャ スターに取り替える必要がある場合」を支給要件としています。その他の付属品につい ては、支給要件として前回資料のとおりで問題ないと意見をもらっています。以上です。 ○盛合座長 資料4「車いす及び電動車いすの付属品について」について、何か質問、 意見等はございますでしょうか。 ○徳弘先生 屋外用キャスターは、本来、不整地というか路面の悪い所、それから大き な径のキャスターによって段差を乗り越えやすくしてあるということで、その最初の2 行を付け加えさせていただきました。 ○盛合座長 資料4「車いす及び電動車いすの付属品について」の支給の考え方を支給 基準とすることでよろしいでしょうか。 (了承) ○盛合座長 それでは、次の議事に進めさせていただきます。議事2「障害等級認定期 準との整合性に係る検討について」です。3項目ありますので、まず、1項目の「浣腸 器付排便剤の支給対象者を拡大すべきか」について、事務局から説明をお願いします。 併せて、消化器外科の専門医からの意見についても説明をお願いします。 ○中村医療専門官 資料5の1ページをご覧ください。現行制度では、浣腸器付排便剤 の支給対象者をせき髄損傷者に限定しています。しかしながら、障害等級認定基準では、 胸腹部臓器の障害等級の算定に当たって、用便の程度を考慮しており、排便障害は、せ き髄損傷者に限定されるものではありません。  さらに、せき髄損傷者であっても、障害等級第3級以上を支給対象者にしていますが、 排便障害は障害等級第3級以上に限定されるものではありません。検討の視点として記 載していますが、排便障害は、せき髄損傷者に限定されるものではないことから、せき 髄損傷者以外の排便障害を有する者を支給対象者とすべきか、また、せき髄損傷者であ っても、現行制度は障害等級第3級以上を支給対象者にしていますが、排便障害は障害 等級第3級以上に限定されるものではないことから、せき髄損傷者の支給対象を拡大す べきか検討をしていただきたいと考えています。  この検討事項については、防衛医科大学病院の望月先生にご意見をいただきました。 資料6をご覧ください。排便反射を支配する神経の損傷による排便障害、つまり、用手 摘便を要する場合又は排便が週2回以下の便秘を有する者に対する浣腸器付排便剤の必 要性をお聞きしています。資料6の1ページの下から2行目からが結論になっています。 脊髄損傷者に限定せず、排便反射を支配する神経の損傷による排便障害を有する者等に 対しても、用手摘便を要する状態、一週間に排便が2回以下の高度な便秘に関しては、 浣腸器付排便剤の使用が望ましいとする医師の意見を以って、浣腸器付排便剤を支給す る制度の制定が望ましいとしています。  また、配付の割合については、一週間に2回以上の排便があることが好ましいという 医学的見地からして、浣腸器付排便剤支給の範囲としては、1人につき3日に1個の割 合とすることが妥当であるとしています。さらに、浣腸器付排便剤は、常用している間 に効力が多少低下することが一般的であることから、その容量や形式、例えば、グリセ リン浣腸薬を例に挙げれば、30〜40ml、60ml、110〜120mlの製剤がありますが、この容 量や形式に関しては、医師の意見をもって支給することが望ましいとしています。以上 の意見をいただいています。  また、資料6の2ページの2のとおり、麻痺の程度が軽い脊髄損傷者に対する浣腸付 排便剤の必要性についてもお聞きしています。身のまわりの処理の動作に関しては障害 が軽度で麻痺の程度が軽いと算定されても、「用手摘便を要する状態あるいは一週間に 排便が2回以下の高度な便秘」といった排便障害を呈する者があれば、それらの障害者 に対しても浣腸器付排便剤の支給が必要であるとの意見をいただいています。 これら の意見書を踏まえ、資料5の1ページの(3)検討の方向性(案)を作成しました。浣腸器 付排便剤の支給対象者については、せき髄損傷に限定せず、せき髄損傷又は排便反射を 支配する神経の損傷により、用手摘便を要する状態又は恒常的に1週間に排便が2回以 下の高度な便秘を残すことにより、障害(補償)給付の支給決定を受けた者又は受ける と見込まれる者であって、医師が浣腸器付排便剤の使用の必要があると認めた者とすべ きではないかとしています。検討をお願いします。 ○盛合座長 どうもありがとうございました。浣腸器付排便剤の支給対象者を拡大すべ きかについて、何か質問、意見等はございますでしょうか。  よく我々は、せき損の患者に対し、浣腸器付排便剤の処方をたくさん書きましたが、 いちばん困っていることなのですよね。せき損の患者の処方というと、グリセリン浣腸 などばかりなんですよね。見た目はどこも悪くないのに、排便障害にある患者にとって は大変なことなのですから、よく気がついてこのようにしていただいたという気はしま す。資料5の1の(3)の検討の方向性(案)のとおりでよろしいのではないかと思い ますが、ご意見はありますか。  それでは、障害(補償)給付の支給決定を受けた者又は受けると見込まれる者であっ て、医師が浣腸器付排便剤の使用の必要があると認めた者に支給することでよろしいで しょうか。 (了承) ○盛合座長 よろしいということなので、次に進みます、2項目の「ストマ用装具の支 給対象者を拡大すべきか」について、事務局から説明をお願いします。併せて、消化器 外科の専門医からの意見についても説明をお願いします。 ○中村医療専門官 資料5の2ページをご覧ください。現行制度では、ストマ用装具の 支給対象者を直腸摘出者に限定しています。しかしながら、人工肛門の造設は、直腸の 障害に限定されるものではなく、また、参考資料の9ページ「ストマ用装具に関連する 障害等級認定基準」のとおり、障害等級認定基準においては、人工肛門の造設は、小腸 の障害、大腸の障害に規定されています。  したがって、支給対象者を直腸摘出者に限定しているが、人工肛門の造設は、小腸の 障害、大腸の障害において行われることから、支給対象者を拡大すべきか検討をお願い します。  この検討事項についても、防衛医科大学病院の望月先生からご意見をいただいていま す。資料6の2ページの3をご覧ください。大腸又は小腸に人工肛門を造設している者 に対するストマ用装具の必要性について意見をお聞きしています。ストマ用装具は、直 腸摘出者のみならず、労災によって大腸に人工肛門を造設された者、小腸に人工肛門を 造設された者にも必須のものであることから、ストマ用装具の支給が必要であること。 さらに、人工肛門を造設していなくとも、労災の結果、大腸にできた瘻孔(大腸皮膚瘻) や小腸にできた瘻孔(小腸皮膚瘻)から腸内容が漏出する者の中には、ストマ用装具が 必要な者がいることから、皮膚瘻から腸内容がおおむね100ml/日以上漏出する者には ストマ用装具を支給する必要性があること。また、100ml/日未満の者にあっても、医師 の意見をもって支給することが望ましいこととの意見をいただいています。  この意見書を踏まえ、資料5の2ページの(3)検討の方向性(案)を作成しました。ス トマ用装具の支給対象者については、大腸及び小腸に人工肛門を造設したことにより、 障害(補償)給付の支給決定を受けた者又は受けると見込まれる者も支給対象者として はどうか。さらに、大腸又は小腸に皮膚瘻を残し、腸内容の全部又は大部分が漏出する 者並びにおおむね1日に100ミリリットル以上の漏出のあることにより、障害(補償) 給付の支給決定を受けた者又は受けると見込まれる者も支給対象者としてはどうか。ま た、大腸又は小腸に皮膚瘻を残し、腸内容が1日に100ミリリットル未満の漏出のある ことにより、障害(補償)給付の支給決定を受けた者であっても、特に医師がストマ用 装具の使用の必要があると認める者については、支給対象者としてはどうかとしていま す。検討をお願いします。 ○盛合座長 ストマ用装具の支給対象者を拡大すべきかについて、何か質問、意見等は ございますでしょうか。  それでは、大腸及び小腸に人工肛門を造設したことにより、障害(補償)給付の支給 決定を受けた者又は受けると見込まれる者、大腸又は小腸に皮膚瘻を残し、腸内容の全 部又は大部分が漏出する者並びに概ね1日に100ml以上の漏出のあることにより、障害 (補償)給付の支給決定を受けた者又は受けると見込まれる者、大腸又は小腸に皮膚瘻 を残し、腸内容が1日に100ml未満の漏出のあることにより、障害(補償)給付の支給 決定を受けた者であっても、特に医師がストマ用装具の使用の必要があると認める者に 支給するということで、よろしいでしようか。 (了承) ○盛合座長 よろしいということなので、次に進みます。3項目の「体幹装具の支給を 金属枠及び硬性に限定すべきか」という問題点について、事務局から説明してください。 ○中村医療専門官 資料5の2ページの3をご覧ください。現行制度では、体幹装具に ついては、「せき柱に常に体幹装具の装着を必要とする程度の荷重障害を残すことによ り、障害等級第8級以上の障害(補償)給付の支給決定を受けた者又は受けると見込ま れる者」に支給することとしており、金属枠、硬性、軟性及び骨盤帯の支給を認めてい ます。  一方、障害等級認定基準では、「荷重機能の障害については、頸部又は腰部のいずれ かの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするものを第8級に準ずる運動障害と して取り扱う。」としています。  支給基準の支給対象者の「せき柱に常に体幹装具の装着を必要とする程度の荷重障害 を残すことにより、障害等級第8級以上」と障害等級認定基準の「常に硬性補装具を必 要とするものを第8級」となっている一方で、支給基準の型式では、金属枠、硬性の外、 軟性及び骨盤帯の支給を認めており、障害等級認定基準の「常に硬性補装具を必要とす る者を第8級」を考慮すると、支給される型式において、障害等級認定基準と義肢等補 装具の支給基準との整合性がとれていません。  したがって、検討の視点にありますように、「せき柱に常に体幹装具の装着を必要と する程度の荷重障害を残すことにより、障害等級第8級以上」の被災労働者に対し、軟 性装具や骨盤帯を必要とするのか、つまり、現行の支給基準に基づく、体幹装具の支給 は、金属枠、硬性装具だけでよいのではないか、さらに、軟性装具や骨盤帯については、 せき髄損傷者が社会復帰する上で必要なものなのかを検討していただきたいと考えてい ます。検討に当たっての参考となるように、(3)に検討の方向性(案)を作成しています。  以上です。 ○盛合座長 いまの事務局の説明に関して、ご質問、ご意見はございますか。 ○川村先生 軟性装具というのは、支給実績として多いのですか。金額的にも多いので すか。 ○中村医療専門官 金額的に多いのではなく、障害等級認定基準において常に硬性補装 具を必要とする者を第8級としています。一方、義肢等補装具の支給基準では8級以上 としています。障害等級認定基準は軟性装具の装着が8級という考え方ではないので、 軟性装具を支給対象とすることがよいのかということです。 ○神保課長補佐 いままで軟性装具も支給していた。それは、以前の障害等級認定基準 というのが、硬性装具を要件としていなかったことが背景にあります。ところが数年前 に、せき柱及びその他の体幹骨の障害等級認定基準が変わりまして、6級については、 頸部及び腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの、8級につ いては、頸部又は腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするも の、となりました。常に軟性ではなくて硬性装具でないと、体幹を支えられないような 障害を残した方だけが障害に認定されることとなりました。逆に言うと、軟性装具でい い方というのは障害等級認定基準には該当しないことに変わったところです。本来硬性 装具が必要だという方について、何で軟性装具を支給できるのだという疑問があるとい うことです。  もう1つは、現実に支給されている方、これはせき髄損傷につきましては総合的にす るということで、麻痺の程度と、あとは体幹骨の障害の程度とか、先ほど話に出た排便 障害を含む、さまざまな胸腹部臓器の障害の程度を踏まえてしているので、荷重障害が どの程度かというのはよくわからないのですが、例えば6級とか、5級とかで認定され ている方に、軟性装具を支給していることがあります。  2つ提案させていただいているのですが、せき損の方で、場合によっては荷重障害は それほどでもないのですけれども、軟性装具を着けないといけないような障害、あるい は症状により、着けることによって、そういった症状の発現が、多少とも緩和できるの かということ。見方を変えると、体幹骨だけがやられているという方については、なか なか難しいけれども、せき損の方で、一定以上の症状のあった方で、何らかの、ここに は「起立性低血圧の防止」と書いてありますが、こういったことができるようであれば、 せき髄損傷の方で、中枢神経系の機能が落ちている方について、支給が必要であればそ の部分は拡大してはどうかと。一方で、荷重障害しかないような方については、整合性 がとれないので、ここは支給は難しいのではないか。障害に当たることを前提にして支 給をするという仕組みになっているものですから、障害に当たらないと支給対象にはな らないということです。そうすると、硬性装具を着ける必要がないのであれば、荷重障 害だけを見ると、障害等級には該当しないという形になるので、1点目は、荷重障害し かない方については、軟性装具の支給は難しいのではないかということと、2番目に、 見方を変えて、せき損の方の場合には、軟性装具も必要な場合もあると言えるのかご審 議いただきたいと思います。 ○徳弘先生 具体的には我々のところで経験することなのですが、頸髄損傷の方に、起 立性低血圧があるときに、いろいろな方法はやりますが、腹帯だけでは足りない。その ようなコルセットを締めてみたら、ある程度は克服されると。  リハビリテーションの入院期間のときには、治療用装具を使いますが、退院されてか らでも、補装具としてこれがあるといいと言って、使い続ける方もいらっしゃるわけで す。それをどのように解釈すればいいのか。 ○盛合座長 一般的に治療では、硬性装具よりは軟性装具が非常に使われています。実 際問題として、硬性装具のように硬いものはまず着けられないでしょう。しかし、腰痛 とか、いろいろな訴えの人はたくさんいます。黙って、説明だけで何とかするものでは ないし、痛がっていることは間違いないので、軟性装具というのは非常に使われます。  そういう意味では、いま硬性装具、コルセットの他に軟性装具も支給しているのです から、軟性装具は支給の対象外として言い切ってしまうのは、ちょっと酷だという気は するのです。座長であまり発言はできないのですが、先生方の忌憚のない、ざっくばら んな意見をいただきたいと思います。  それから、体幹装具というのは、非常に難しいのです。エビデンスがあるわけではな いけれども、一般的には効果はあるし、市民権は得ています。ご意見を聞きたいと思い ます。 ○川村先生 硬性装具は値段も高いし、患者に無用な苦痛を与えることにもなる。住田 先生や徳弘先生のような、いま現実に患者に接触されている方の意見をいただいた方が がよいのではないでしょうか。 ○住田先生 日常診療では硬性装具のガッチリとしたものを処方するのは、頸などを含 めてでもめったにないです。むしろもっと可動性のある、軟らかい、動きに馴染むよう なものをつくるというのが基本という感じです。  もう1つは、訴えが非常に多い人の場合に使われることが多くて、手術などを含めて 考えると、手術以外の治療に最近だったら優先されて、それの付随的なものとして、装 具が一時的に使われると。恒久的にガッチリとした補装具が使われることは少なくなっ ているという感じもあるのです。  ですから、そのような傾向を考えると、改めて硬性装具と決めて使いましょう、8級 以上の人に関しては処方しましょうというのは、実態にそぐわないような感じもするの です。ただ、法律的には合うように見えるかもしれませんが、具体的な訴えからいった ら、むしろダイナミックな動きの適応できるようなものを使うほうが多いと思います。 なおかつ、支持性があってというもののほうが多いと思うのです。 ○徳弘先生 硬性装具は、住田先生が言われたように、永久装具として使うことはあま りなくなったというのが実情ではないかと思います。いわゆるテンポラリーに使うこと が多いです。硬性装具をずっと着けなくてはいけないような場合には、せき椎の固定術 をして、荷重障害を克服するという流れが多くなってきたのではないかと思います。  具体的には、確かに硬性装具の適用であっても、実物を見たら、とてもこれは着けら れないという方が多いので、軟性装具を処方して、それで対応することが非常に多くな っています。  軟性装具は、どうして効くかよくわからないということです。軟性装具の効果の中に は、腹圧とかいろいろありますが、「心理的効果」と書いてありますが、それの部分も かなり多いような印象を受けます。これは測りようがないですから、印象でしかありま せん。現在の流れからいうと、硬性装具というよりは、手術プラス軟性装具のほうへ移 ってきているのではないかという印象です。 ○神保課長補佐 8級の障害等級が予定しているような、硬性装具を着けなくてはいけ ないような荷重障害を残したままで、治ゆにするというのは、ほとんどないのですか。 先生方がおっしゃるように、プレートなどを埋め込んでいくということであれば、逆に 重ければ一種の運動障害のようなものが若干残るような方ぐらいしか、残らないのです か。プレートを入れたような方で、やはりまだ軟性装具はほしいという方はいらっしゃ るのですか。 ○徳弘先生 具体的には、手術をしても、軟性装具に頼る方はいらっしゃいます。 ○盛合座長 そうですね、それが多いですね。手術をしたからといって、痛みなどが止 まるわけではないです。 ○神保課長補佐 私どもは、軟性装具で済む方について、硬性装具を処方しろと言って いるのではなくて、もともと硬性装具を処方する人しか障害に当たらないので、支給は 難しいですと申し上げているのです。 ○川村先生 質問ですが、ここで言われている「荷重障害」というのは、どういうこと なのですか、座っていられない、立っていられないということですか。 ○盛合座長 そうですね、「荷重障害」という言葉が非常に不思議ですね。 ○徳弘先生 せき柱の不安定性によって、起立位とか、座位が障害されると理解してい ます。 ○盛合座長 そうなるのでしょうね。 ○木村先生 現実問題としては、この問掛けは、体幹装具の支給を、金属枠及び硬性に 限定すべきかという問題であって、結論的には限定すべきではなく、軟性コルセットも 当然認めるべき必要があると思います。  もう1つは、第8級以上というのもおかしな話で、第11級の変形であっても腰痛を残 しているものについては、軟性装具などが必要なわけですから、等級に限らず、第11 級のものに対しても、必要に応じて支給を拡大すべきだと思います。 ○盛合座長 等級に関して、等級をいじることはできないと思うのですが、等級の意味 を、我々は確認する必要があると思います。特に、労災病院にいる医者としてはですね。 事務局としては、等級との整合性は非常に重要なわけです。それは無視することはでき ません。果たして等級がいろいろな疾病と一致しているかというのは疑問に感じる点が ありますから。 ○木村先生 2、3年前に改定しましたよね。 ○神保課長補佐 そうです、ここの部分は。 ○木村先生 あの理由は何だったのですか。 ○神保課長補佐 せき柱の基準については、基準として非常にわかりにくい基準だった ということがありまして、それで、当時の先生方から、わかりにくいものとして、どの 部位が障害されているのかというのがよくわからないということと、障害の程度につい てもよくわからないということで、部位と、障害の程度については補装具で規定すれば、 よりわかりやすい基準になるのではないでしょうかという観点から決めたと伺っていま す。 ○西井課長補佐 せき柱の変形についてですが、固定術を行った結果、関節可動域が2 分の1以下に制限されているものにつきましては、第8級という評価ができますので、 いまここで申し上げている第8級と同じ評価となります。したがいまして、そのような ことを踏まえ、補装具の支給の中で軟性というものが出てくれば、それはそれという形 で評価することができるだろうと。  単に荷重障害ということのみをもって見た場合の障害等級の考え方が、ここに書いて あるとおりですので、先ほど来先生方が言われております固定術、なおかつ、その結果 2分の1以下に制限されているというものであれば、同じ8級という評価となっていま すが、それも含めてご検討いただければと考えております。 ○住田先生 参考資料10頁のところには、「荷重機能の障害についてはその原因が明ら かに認められる場合」と限定はされているのですよね。 ○西井課長補佐 はい。というのは、現行の体幹補装具支給対象者につきましては、「せ き柱に常に体幹装具の装着を必要とする程度の荷重障害を残すことにより」ということ しか書いておりませんので、これは荷重障害ということに限定した障害等級の評価の部 分を抜き出しているということです。 ○盛合座長 それでは、体幹装具の支給を金属枠及び硬性に限定にすべきかについては、 ただ今の議論を踏まえて、事務局において、副座長の住田先生と相談した上で、再度、 まとめていただということでよろしいでしょうか。 (了承) ○盛合座長 今回の議事は、すべて終了しましたが、最後に、何かご質問、ご意見はご ざいますか。 ○川村先生 次回の会議において、筋電義手のことが議論されるということですので、 兵庫県立総合リハビリテーションセンター整形外科部長兼リハビリテーション科部長で ある陳先生をお呼びしてはどうでしょうか。陳先生は、兵庫県立総合リハビリテーショ ンセンターにおいて、筋電義手の総合的適合チームのリーダーをされており、筋電義手 の症例の経験が多い医師です。また、「筋電義手訓練マニュアル」という本の著書でも あり、その豊富な臨床経験に基づいて、「上肢切断者の実際の生活における筋電義手が 果たせる役割、またその限界、さらに職業への復帰状況」について、適切な意見を聞く ことができると思います。  この専門家会議では、国立リハの赤居先生も多くの症例の経験があり、工学センター におられた高見先生も、筋電義手に詳しいのですが、労災保健において支給するかどう か検討するのであれば、より多くの症例に基づいて検討したほうがよいではないでしょ うか。また、筋電義手の装着機関の考え方を議論するのにも、多くの症例に基づいた検 討が必要だと思います。 ○盛合座長 川村先生のご提案にご意見などはございませんか。 ○住田先生 筋電義手が議題に挙がるということで、いろいろと資料も見てみたのです が、厚労省は2回ぐらい大きな報告が上がっているのです。たしか高見先生が加わった 平成11年度ぐらいの報告と、平成16年度か、平成15年度か、平成14年度かの、澤村 先生のときの報告と、陳先生の入ったときの報告です。  それで、大体意見は一緒なのです。パラウトスタディではないですが、きちんとメン テナンスができて、きちんとできるような施設をつくって、2、3年でもやって、実績を つくって、壊れたらすぐに対応できるような施設対応も含めてできるようなサービスが 確立することが望ましいということです。しかしながら、現実には筋電義手のメンテナ ンス等ができなくなっているような施設があるのです。ほぼ問題は、当時とそんなに違 っていないのではないかという感じはしているのです。  ですから、前腕義手で、片手で前腕でも出すかどうか、それをどこでどうやって、ど うするのか、本当にその決定をするのかというところに、煮詰まっているような気がす るのです。実際には議論が進んでいないというのが現状だと思うので、改めて陳先生に ご足労いただいて、ここで議論するというよりは、むしろ、単に身障のほうで、検討さ れてきているのか、それとも労災のほうで、それ以降どのような検討が進められてきて いるのか、その辺のところが整理されないと、話を聞いても、また同じような形で終わ ってしまうのではないかという感じがするのです。  ですから、陳先生は、来てくれといったら、すぐに来てくれると思うのですが、具体 的なお金の問題とか、全国的にどのようなフォローができているのかというところは、 もう少し詳しくはできると思うのですが、現状は北海道などは全然できない状況ですし、 東北も厳しいという状況です。ただ、中部は再建されているとか、東京も縮小したり、 拡大したりという現状もあるので、そういうところを、ある意味で労災のスタンスとし てどう把握しているのか、機は煮詰まっているのかとか、そういうところを、ネガティ ブなのか、ポジティブなのか、そういうところのスタンスをはっきりしないで話をして も、おそらく同じことの蒸し返しではないかという感じがするのです。 ○徳弘先生 私は昔、義肢装具学会誌の編集委員をしているときに、川村先生と、武智 先生の、相反する意見を書いていただいて、誌上バトルをやっていただくという企画を やらせていただいたのですが、そのときとあまり状況は変わっていないです。  それから、もう2年ぐらい経ったときに、編集委員をしているときに、義手の現在と いうことで、筋電義手のことを陳先生に書いていただいたのですが、それも網羅してい ると思います。  私が特に思うのは、いま筋電義手に関してどうするかというレベルは、今日の議題の ようなレベルを超えていると思うのです。したがって、先ほど住田先生が言われたよう に、どうするのかというのは、もっと大きな問題だと思いますので、今回のことには直 接つながらないように思います。もっと議題を掘り下げて、全体の流れの中で議論すべ き問題ではないかと思います。 ○川村先生 私は陳先生の書かれたものをよく見たのですが、実際の症例を見ますと、 実際には労災で切断しているのに、現実は障害者自立支援法で筋電義手を支給している のです。そのようなことを知っているのは、陳先生がいちばんよく知っているわけです。  労災で切断したのですが、障害者自立支援法でわざわざ支給しているのです。そのよ うなことがあっていいのかと私は思うのです。労災の意味がないではないですか。その ような現場をよく知っているのは陳先生だと思ったのですが、皆さん、そんなことはわ かっているとおっしゃるのなら、わざわざ陳先生を呼ばなくても、これ以上情報を集め なくていいという専門家会議の皆さんのご意見であったら、そこは省略して、我々で結 論を出せばいいわけです。 ○住田先生 筋電義手は今年の学会のワークショップでも、確かに人気は悪かったので すが、トピックスではあるのです。機械も改良されてきていますから、そういう意味で は、基本的には筋電義手をなるべく早く導入できればいいなという形では、立場として は思っているのです。ただ、今回の流れの中である程度の結論が出るような話ではない ように思います。 ○川村先生 先ほどの労災補装具の支給の意義についてありましたね。もっと独自のも のでいいのではないかと。だから、独自の意見をまとめたらいいのではないですか。外 部の意見も聞いて、我が意を得たりと思いましたが、労災独自で決めたらいいではない かと。もう何度も言いましたけど、特に労災の場合は、上肢切断の8割ぐらいが労災な のです。まさに労災が独自性を発揮する絶好の所で、しかも上肢切断というのはそんな に数がないのですよね。だから経済的にも可能なことをやったほうがいい。 ○住田先生 それに関しては、前回厚労省に出されている報告書では、1つの施設で年 間に10本ぐらいで、そんなにたくさん、100本も200本も出るわけではないと、むしろ 数は減っているという問題があるわけですね。もう1つは、先生が言われたように、い ままでの義足の関係といっても、モジュラーを含めてですけど、労災の役割が福祉のも のを少し、一歩先を行ったということもあるので、そういう意味では筋電義手がそうい うことを整備する1つのきっかけになる可能性はあります。ただ一方で、さっき言われ たように、医師の処方によるところでの医師の内容に関して言ったら、非常にクエスチ ョンマークが多い。例えば設備投資にしても、使わない物をたくさん持っていなければ いけないとか、そういうことを考えれば、それだけの割の合わないものをやれるだけの 施設を指定できるかどうか、指定機関とかの問題は議論されるべきだと思います。 ○川村先生 設備に関しては、実際には業者が負担してくれるのですね。日本に輸入し ている会社は在庫を全部抱えて、全部やってくれるそうです。ですから、そういう意味 では費用的には問題はなく、実質的には体制ということではやっていけるようです。た だ、チームですよね。どこでやるか。結局、それができるのは、実質的には労災リハ工 学センターと兵庫リハぐらいですね。あと、サービス体制が全国でできるか。それはや りたくないから言うだけで、やろうと思えばいままででも日本中であちらこちら、散発 的にでも筋電義手を作っているわけですから、作ろうと思えば、メーカーとか関連の会 社がある程度支援してくれれば、出来ているのですね。 ○住田先生 どうでしょうか。議論をするとして、おそらく陳先生に来てもらっても、 具体的な例を挙げていただいて、話をされるとしても、基本的に我々の会議のスタンス として、どういう形にしていくのかを討論することになってくると思うので、問題は出 尽くしていると思います。そういう意味では、いままでの経過を含めて、筋電について はどういう形で検討を進めていくのか、いま一歩出そうとしているかどうか、そういう 所を出していただかないとおそらく議論はかみ合わないと思います。やはりいま一歩進 んで、特例という形だけでなく値段のことも含めて筋電義手をきちんと検討しようとい う形で出してもらう。既に、パーツを含めてやると例外措置で120万円ぐらい掛かると いう話になっています。それだったら、いまの規定からいったら処方できないですね。 そういうパーツなどの問題を含めて、具体的に話を煮詰めないと、おそらく、いまの程 度の話に終わってしまうのではないかと思います。 ○盛合座長 私と副座長の住田先生、あと事務局と相談して、次回の対応を決めたいと 思いますが、川村先生、よろしいでしょうか。 ○川村先生 結構です。陳先生を引っ張り出すのが目的ではなく、筋電義手が労災保険 の補装具で支給することが希望ですから、それについて次回会議のときに議論していた だいたら、あまり問題を先延ばしにするのではなく、大体結論を出していただきたいと 思います。 ○盛合座長 それでは、川村先生のご要望について、私と副座長の住田先生、あと事務 局と相談して、次回の対応を決めたいと思います。よろしいでしょうか。 (了承) ○盛合座長 あと、事務局で何かございますでしょうか。 ○神保課長補佐 本日、長時間にわたってご熱心なご議論をいただき、ありがとうござ いました。本日の議題2の障害等級認定基準との整合性に係る検討の体幹装具の支給を 金属枠及び硬性に限定すべきかについては、先生方とご相談をしながら事務局の案をと りまとめて、次回、再度お諮りをさせていただきたいと思います。各先生いろいろご意 見をお持ちのようですので、よくご相談をしてとりまとめをさせていただきたいと思い ますので、ご協力のほどをよろしくお願いしたいと思います。また、川村先生のご要望 についても、座長の盛合先生、副座長の住田先生とよくご相談させていただき、どのよ うに対応するのか決めたいと思います。本日はどうもありがとうございました。 ○中村医事係長 次回の日程は、来月の9月28日金曜日3時からです。場所は5階とな ります。よろしくお願いいたします。本日は誠にありがとうございました。 (照会先)                     厚生労働省労働基準局労災補償部補償課医事係     TEL 03−5253−1111(代) 内線5565 FAX 03−3502−6488          - 1 -