07/08/17 厚生科学審議会科学技術部会臨床研究の倫理指針に関する専門委員会の議事録について 厚生科学審議会科学技術部会 第1回臨床研究の倫理指針に関する専門委員会 議事次第 ○ 日時 平成19年8月17日(金)15:00〜17:00 ○ 場所 経済産業省別館10階1014会議室 ○ 出席者 【委 員】 金澤委員長 廣橋委員長代理       飯沼委員 伊賀委員 井部委員 江里口委員 川上委員 北村委員       倉田委員 河野委員 小林委員 佐藤委員  寺野委員 藤原委員       本田委員 前原委員 丸山委員 谷内委員 【事務局】 松谷医政局長 新木研究開発振興課長 林治験推進室長 佐藤課長補佐 ○ 議事 1.パブリックコメントで寄せられた意見について  2.外国の臨床研究関連法制について  3.「臨床研究に関する倫理指針」の対象範囲と研究の類型について  4.今後の臨床研究の在り方について  5.その他 ○ 議事次第   座席表   委員名簿   資 料 1 臨床研究の在り方に関する検討について   資 料 2 「臨床研究の見直しに向けての意見の募集」のパブリックコメント意見書 (写) 資料3-(1) 臨床研究(治験以外)の倫理に関する規制の各国状況(概要版)   資料3-(2) 臨床研究の倫理に関する規制の各国状況(佐藤構成員提出)   資 料 4 臨床研究の類型について(案)   資 料 5 各委員からの意見   参考資料1 臨床研究に関連する指針等   参考資料2 平成18年度臨床研究の倫理等に関する特別研究報告書   参考資料3 ヘルシンキ宣言   参考資料4 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令   参考資料5 臨床研究に関する倫理指針とICH−GCP比較   参考資料6 臨床研究倫理指針の遵守状況チェックシート案   参考資料7 疫学研究に関する倫理指針(見直し案)       ○事務局 定刻となりましたので、第1回の厚生科学審議会科学技術部会臨床研究の倫 理指針に関する専門委員会をはじめさせていただきます。本日は先生方におかれまして は、お暑い中、そしてお盆明けでご多用の中、お集りいただきましてありがとうござい ます。この建物は一応温暖化防止ということで、冷房を少し高めに設定してございます。 政府の役所はクールビズということですので、クールビズにご協力をいただければと思 っております。よろしくお願いいたします。  まずはじめに事務局から委員のご紹介をさせていただきます。お手元の配付資料の3 枚目に本委員会の委員名簿をお配りしています。本委員会は19名の専門家の先生に委員 をお願いしております。本日ご出席の委員の先生方におきましては、この名簿に五十音 順にお名前が記載されてございます。お時間の関係で、この名簿の紹介をもって各委員 のご紹介に替えさせていただければと存じます。  本日は委員19名のうち、18名の委員にご出席をいただいております。本会議は成立 していることをご報告申し上げます。なお、本日の会議は公開としておりますので、ご 了承いただきたいと存じます。開会に当たりまして、厚生労働省医政局長の松谷よりご 挨拶をさせていただきます。 ○松谷医政局長 先生方には大変お暑い中、またお忙しい中お集りいただきまして、本 当にありがとうございます。クールビズということでございますので、よろしくご協力 をお願いしたいと思います。クールビスを推奨しているのは環境省ですので、環境省と 同居しております厚生労働省の建物も非常に暑いのです。ここは経済産業省の建物でご ざいますが、実はクールビズは経済産業省の資源エネルギー庁というところも一緒にな ってやっておりますので、こちらの建物も大変暑いことをお詫び申し上げます。ご協力 方お願い申し上げます。  本日の会議は第1回の厚生科学審議会科学技術部会の中の臨床研究の倫理指針に関す る専門委員会でございます。開催に際しまして、一言ご挨拶を申し上げたいと思います。  本当にお忙しいところ委員のご承諾を賜りまして御礼を申し上げます。  この臨床研究に関する倫理指針は、ご存じのとおり平成15年に策定をされたところで ございますが、平成20年7月30日を目途に見直しを行うこととされていまして、ちょ うど来年ですが、その期日が迫っているということから、本委員会にお集りをいただい た次第でございます。  臨床研究を取り巻く環境は、この4年間大きく変化をしまして、臨床研究のための環 境整備の必要性はますます高まっておりますが、また、同時にその倫理性、安全性や科 学的妥当性の確保を求める声も大きくなっているわけでございます。また、平成19年か ら開始されました「新たな治験活性化5ケ年計画」におきましても、臨床研究を推進す ることは、我が国の重要な課題とされているところでございます。臨床研究の推進につ きましては、いままでの研究者、あるいは関係者のみの関心ではなくて、国家政策の上 でも大変大きな関心を呼ぶ事項に今はなってきているということでございます。  一方、この指針と関係の深い疫学に関する倫理指針につきましては、先月に見直しの 検討を終えたところです。そうした新たな状況を踏まえまして、本指針について議論す べき時期が参っているということでございます。この指針は我が国の臨床研究を円滑に 進めるための根幹となるものと認識していまして、このため、研究推進をするという観 点、一方で倫理性の確保の観点、両者のバランスに配慮しながら、他の国々の制度も参 考に見直しを進めることが必要と考える次第でございます。  平成20年の見直しということで、期限が切られている中でのご検討になるわけですが、 私どもといたしましても、先生方のさまざまなご指摘を踏まえまして準備をして参りた いと考えておりますので、是非、それぞれのお立場から十分な議論を尽くしていただき まして、より良い指針としていただけるようお願い申し上げます。冒頭に当たってのご 挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○事務局 本専門委員会の進め方ですが、最初に本専門委員会の委員長でございますが、 厚生科学審議会科学技術部会運営細則第3条に基づきまして、垣添部会長のご指名によ りまして、金澤一郎委員にお願いをしております。 ○金澤委員長 やむを得ないようでございますので、お引き受けいたします。 ○事務局 当専門委員会におきましては、委員長代理を廣橋説雄委員にお願いすること としています。 ○廣橋委員 国立がんセンターの廣橋です。この会、大変重要だと思っておりまして、 委員長代理の役割をしっかりと果たしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたしま す。 ○事務局 それでは、以後の議事進行は委員長の金澤先生にお願いいたします。 ○金澤委員長 先ほども申しましたがやむを得ず委員長を引き受けさせていただきます。 いま廣橋先生からもお話がございましたように、この会は大変大事な会だと理解をして おります。私はたまたま日本学術会議の会長ということで、総合科学技術会議にも属し ていまして、そこでも臨床研究の大事さ重要さに関しては、かなり真剣に議論がなされ ております。そういう意味で臨床研究の倫理指針に関する見直しの方向性は日本の方向 を占う上でも、極めて大事なものだと理解をしております。おそらく皆さんもそういう 思いを抱いてくださっているのだろうと思いますが、大変暑い中で、たぶん熱いディス カッションになるのではないかと理解をしております。もうここまできたらやるしかな いという思いでおります。どうぞご協力のほどお願いしたいと思います。  議事に移らせていただきますが、はじめに配付資料の確認をお願いいたします。 ○事務局 本日の配付資料につきまして確認をさせていただきます。お手元の資料です が、まず議事次第、座席表、委員名簿、資料番号の1から資料番号の5まであります。 このうち資料5番につきましては各委員から寄せられた意見でして、本日は川上委員、 倉田委員、佐藤委員、藤原委員のご意見が出されております。そのほかに委員の先生方 には参考資料として1番から7番までをハードファイルに納めて机上に配付させていた だいています。このハードファイルは毎回会議で使用するものなので本日お持ち帰りに ならないようにお願いいたします。以上ですが、何か資料に過不足等がございましたら 事務局までお知らせいただければと存じます。 ○金澤委員長 何か問題はございませんでしょうか。それでは進めることにいたします。 まず、この委員会をはじめるに当たりまして、この委員会の趣旨等について、一部ご説 明がありましたが、事務局から改めてご説明をお願いいたします。 ○事務局 皆さまお手持ちの資料1「臨床研究の在り方に関する検討について」という ことで、平成19年8月のものです。先ほど松谷局長から本委員会の開催についての趣旨 を申し上げておりますが、改めて資料の背景の部分で、臨床研究倫理指針を策定して、 平成20年度で制定後5年を迎えると、その見直しを迎える時期の中で社会情勢、そして また臨床研究の置かれている実情等も踏まえて、見直しの検討を行うという背景が書い てあります。  臨床研究の在り方に関する議論ということで、本日は厚生科学審議会の科学技術部会 の下でこの専門委員会を立ち上げたわけですが、この会の運営に当たりましては、臨床 研究を実際に実施しておられる国立大学病院等を所管しています文部科学省の協力も得 ながら進めることとしています。  本専門委員会でご検討をいただく部分については、この5年間、制定後の4年間のい ろいろな情勢を視野に入れつつ、3.専門委員会で検討すべき論点のところで少し頭出し をしています。そういった検討会ということですが、この資料1のスケジュールのとこ ろですが、この専門委員会は本年6月に設置が了承されているわけです。一応、平成20 年の3月か4月、大体平成19年度の終わりぐらいを目処にご議論をいただければと考え ています。このスケジュールでいきますと、この冬に入る前ぐらいのところで一度、中 間的なとりまとめをいただきたいと事務局では考えていますが、最終的には平成20年度 に入るぐらいのタイミングで指針の改定をできるような形でご議論をお願いしたいと思 っております。この機会にご活発なご審議をお願いいたします。 ○金澤委員長 ただいまはこの委員会の趣旨のご説明をしていただいたわけですが、何 かこの内容について背景とか、こういうところを議論すべきだという箇条書きがありま すが、今の時点で何かご意見がございますか。ご遠慮なく思いつかれたときに手を挙げ ていただけませんでしょうか。とりあえずは先へ進ませていただきます。  議題に移ります。1枚目にあるように、本日はその他を入れて5つの議題があります。 最初がパブリックコメントで寄せられたご意見について、2番目が外国の臨床研究関連 の法制について、3番目が指針の対象範囲、いうならば臨床研究の定義みたいなもので すが、それと研究の類型です。4番目が今後の臨床研究の在り方についてという、かな り重い議題です。  これからパブリックコメントについて入っていくわけですが、一言だけお話をしたい と思います。パブリックコメントを最初にとるということは、あまりご経験がないので はないかと思うのですが、実はこの話を聞きましたときに、私は5年間、正確にいうと 4年ですね。4年間現場で実際にやってこられた方々からどういう問題点があるかという ことをご指摘いただいてから議論をしたほうが、たぶん実のある議論ができるのではな いかと思いまして、事務局にお願いをして検討をしていただいたところ、やりましょう ということになって、非常に貴重なご意見を頂戴したように思います。それをこれから ご披露いただこうと思います。大事なことはそういうご意見をいただいた上で、皆様方 の生のご意見を頂戴するということなので、まずはパブリックコメントからはじめて、 少なくとも1、2、3まで、つまり指針の対象範囲と研究の類型辺りまで資料の説明をし ていただいて、それから総括討議をするというスタイルにしたいと思います。まずはパ ブリックコメントの辺りから説明をお願いします。 ○事務局 議題の1番、パブリックコメントに寄せられた意見について、資料の説明を させていただきます。資料番号2を簡単にご紹介させていただきます。資料2番につい ては平成19年6月25日から7月9日まで、厚生労働省のホームページを通じまして「臨 床研究の見直しに向けての意見の募集」ということで、一般の方からの意見募集を行っ たものです。この期間内に14件のご意見を頂戴しています。資料2番については最初か ら3頁目までは意見の要約ということで書いていますが、4頁以降に各意見を寄せられ た方の意見の本文そのものを、いろいろ個人情報等はマスクしてありますが、ご紹介を させていただいています。全部で35頁の資料になっています。事務局からは最初の意見 要約に基づいて、大体のご意見をはじめにご紹介させていただこうと思っています。  意見番号1番の方ですが、現在と同様に診断・治療のみを目的とした医療行為につい ては、指針の対象から外してほしいというご意見が1つあります。No.2の部分ですが、 臨床(医学)教育に関する倫理指針を何らか設けてほしいという部分とか、探索研究に おいては、そのプロトコルが途中で変更されるような部分があるわけですが、そういう 部分をできるだけ倫理審査委員会の負担にならない形で、研究が進むような形で、一部 手続等を省略してほしいという、これは現場の方からのご意見です。  意見3ですが、具体的な細かい中身については、ここでのご紹介は省略させていただ きますが、現在の指針において、前文から基本的考え方、各章ごとに用語の再整理が必 要なのではないかというご意見が寄せられています。最後の部分でインフォームドコン セントについて、説明時に研究者複数人で説明をして、研究者以外の人間が立ち会いを するとか、そういうインフォームドコンセントに対する細心の注意を払うべきというご 意見をいただいています。  4番目はマスコミの関係者の方からのご意見で、関連する新聞記事が14頁、15頁に付 いていますので、こちらもご参考にしていただければと思います。4番目のご意見は、 まず、基本的に臨床研究の質的な向上を図るために、こういった指針を法制化するべき ではないかといった部分、また、厚生労働省で臨床研究、ヒト幹指針だとか、遺伝子指 針とか、さまざまな研究指針がありますが、そういったものはできるだけ共通部分を共 通にして、網がかからない世界をなくすべきなのではないかというご意見。  2頁に「未確立の医療行為」、実験的な医療行為についても何らか縛るべきではないか というご意見。あと倫理審査委員会の機能の強化とか、研究対象者の保護、またその利 益相反の部分、またその財政的な倫理審査委員会に対する支援とか、保険外併用医療に ついてどうするかといったご意見が書かれています。特にこの新聞記事については、倫 理審査委員会を、特定機能病院等に調査をされて、その倫理審査委員会の構成メンバー について必ずしも指針を守られていないようなケースがあるという記事が中心に紹介さ れています。  5番目ですが、疫学指針との統一化という部分、適用範囲が不明確で、両方これを一 緒に論じたほうがいいのではないかといったご意見が5番目です。6番目としては同様 ですが、ヘルシンキ宣言等をもう少しきちんと理解するべきではないかという部分と、 法制化を行うべきではないか。7番も被験者保護の観点から研究対象となる方々を保護 するための法制化を図るべきというご意見。8番目は法制化とか、医薬品の薬事法に基 づくGCPを準用すべきといった意見とか、対象範囲をもう少し明確化をするべきではと いった部分。倫理審査委員会についての機能などについての状況把握をする。また諸外 国の状況等を反映させるべきといったご意見と、また利益相反に関する部分についても ご意見をいただいています。  3頁目ですが、9番、10番、11番については、ほぼ共通した意見ですが、やはり臨床 研究をされる際に被験者の方に不利益が発生した場合に対する補償の問題、これに対し て何らかの措置を講ずるべきではないかといった部分とか、臨床研究を届出制、登録制 にするといった観点、また第三者の機関等を設置するべきといったご意見が9番、10番、 11番のところで共通して書いています。  12番については未承認薬等が臨床研究で入手しやすいようにしてほしいというご意 見、13番は先ほどと共通しますが、疫学指針との統一化。14番については臨床研究を考 える経済性についても考慮すべきと、主にそういった意見をいただいています。事務局 からは以上です。 ○金澤委員長 ご質問ご意見はあとでまとめて伺うことにして、2番目の議題です。外 国の臨床研究関連法制についての資料の説明をいただいて、そのあと厚生労働省の特別 研究班で調査を行いました佐藤先生のお話を伺うことにしています。続けて聞いてくだ さい。よろしくお願いいたします。 ○事務局 外国の臨床研究の関連法制、制度についてのご紹介です。こちらで用意して おります資料3の(1)は事務局で諸外国の臨床研究倫理に関する各国の状況等を整理した もので、資料3の(2)については佐藤委員から研究班の報告書の中で整理していただいて いるものです。  それと、佐藤委員からご提出いただいている資料が、資料5という1つの括りの中で の、このプレゼンテーション用のA4のものです。資料5佐藤と右方に書いてありますが、 ここに諸外国における臨床研究の規制の現状が出ています。  まず佐藤委員からこちらのプレゼンテーション資料のほうでごいろいろとご説明をい ただいて、それに事務局で資料の補足をさせていただければと思います。 ○佐藤委員 資料3の(2)は、ただ単に一覧表になっているだけのものなので、論点をも う少しはっきりさせた資料5を中心に説明をさせていただきます。  この研究班は昨年度の厚生労働科学研究の特別研究で研究費をいただいて研究をした もので、資料5の最後に構成が書いてあります。それぞれの国について研究班員に調査 をしていただきまして、それを私の責任でまとめたものです。  資料5を1枚めくっていただきますと、これは各国における臨床研究の規制の枠組、 規制根拠を簡単にまとめたものです。いくつかのパターンがあるのですが、いちばん包 括的に規制をしているのはフランス型で、これは人あるいは人体の保護を法律で規制す るというものです。人については1988年の法律でやっていますし、人体については1994 年の生命倫理法という法律の下で保護をする。言い換えると臨床研究を**規制すると いうスキームです。あとから述べますように被験者の被害に対する補償も法律で定めて います。  2番目のやり方としては、これはいろいろな領域ごとに、この領域については資料3 の(2)に細かく書いてありますが、例えば治験とか、医療機器とかというような、いろい ろな領域ごとに、それぞれ法律に基づく規則になりますが、あるいは規則がない部分に ついては、医師会が強制加入の場合には、医師会の規則で規制をかけるやり方がありま す。この典型例としてドイツが挙げられるかと思います。この亜流と言いますか、少し 形の変わったものとして、イギリスが挙げられます。イギリスはもともと全く法律がな かった、臨床研究に対して全く保護がなかったのですが、NHSの中で行われる臨床研究 だけは通達で規制をかけてまいりました。その後、あとから述べますEUの指令ディレク ティブができたので、現在はNHSの中での臨床研究と、それからクリニカルトライアル が規制対象となっています。  3点目としてはアメリカ合衆国における対応で、これもご承知のとおりと思いますが、 連邦の研究費を受け取った研究機関は、すべて連邦の厚生省に対して保証、アシュアラ ンスをしなければいけない、その中でIRBを設置して倫理審査をしてということが定め られています。  もう1つアメリカの特色と思われるのは、連邦政府が直接に規制に乗り出す、あるい は調査をするということではなくて、各研究機関で、それぞれがコモン・ルールと言わ れる指針をきちんと守っているかどうかを、それぞれの大学や研究機関に委ねるという のが特色であろうかと思います。  ここで最近の動きとして疫学の指針の見直し案、これは参考資料7に書いてあります が、疫学研究指針の見直し案の第2の6の(4)の所、アンダーラインが付けられていまし て、おそらく今回の見直しで新しく入ったところと思われます。「研究機関の長は必要に 応じ、研究機関における研究の指針への適合性について、自ら点検及び評価を実施する ものとする」として、研究機関ごとに指針の適合性の確保を求めているようです。臨床 研究指針でもこのような対応が果たして必要になるのかどうかが、もし、今後の議論の 課題としていただけましたらと思います。  資料の次頁、これも今日の議論のテーマの第1点目に関わることですが、研究の定義 ということです。これはアメリカのコモン・ルールの定義でいきますと、一般化可能な 知識の獲得のために行うもの、システィマティックなものが研究でしたし、それからフ ランスの公衆衛生法典の中では、医学の発展のために行う研究とされていました。  ここではもっぱら被験者を手段として使ってしまうことの問題があったわけです。と ころが近年のEUの動きを見ていきますと、この研究の定義が少し変わっているのかもし れないという気がいたします。申し訳ありません、資料は2004年のEU指令となってい ますが、これは2001年の誤りです、ご訂正をお願いいたします。2001年のEU指令が一 定のクリニカルトライアルについては、ノン・インターベンショナルなものについては、 この指針の対象から外すということを言っています。この細かい定義は資料5の8頁、 参考資料に付けてあります。英語がダラダラと並んでいるものです。  簡単にこれをまとめますと、この3つの要件を満たしている場合には、どうやら規制 対象から外れるというように扱っているようです。1点目は販売・製造承認どおりの使 用法であること。2点目はプロトコルによる無作為の割付をしないこと。3点目は研究の ために新たに診断あるいは観察を加えない。この3つを満たす場合には、このEU指令で いうクリニカルトライアルには当たらない。つまり、このEU指令の規制対象からは外れ ることになっているようです。ただ、このEU指令は各国ごとに法律でまた具体的な規制 は定められるもので、2004年にイギリスは規則で、フランスは法律でこのEU指令を国 内法にしていますが、若干のバリエーションはあるようです。  4頁、そうしますと臨床研究にはどうやら2つの性質があるのではないかと考えられ ます。1点目は先ほど少し結論を先取りしましたが、人を手段として用いるということ でした。2点目はEU指令が外した部分を除く、つまり外した部分を除くということは、 EU指令がもっぱら念頭に置いていたことになるのですが、通常では存在しないリスクが 伴いうることが臨床研究のもう1つの特色だろう。  そこで現在の臨床研究の指針を見てまいりますと、もっぱら(1)、つまり人を手段と して用いるということからの規定が多いように私には見受けられました。リスクの有無、 あるいはリスクの大きさ小ささに関して、規制のやり方を変えるという考え方は、基本 的に臨床指針はご存じのとおり、一般的にとか、あるいは細則でいろいろなことを定め ているので、もちろんいろいろなバリエーションは研究現場でとりうるのですが、しか し、そこをあまりきちんと書いていないために、どちらかというと厳しめ厳しめの対応 が各現場でとられているのではないかと私は危惧するのです。(2)リスクの有無、リス クの大きさ小ささに関して、例えば規制の枠組とか重さ軽さを変えていくことがあって もよいのではないかと思いました。  各論の(1)としては、倫理審査委員会で、資料3の(2)の2頁です。各国とも、これは 日本もそうですが、非科学者あるいは外部委員を一定以上入れるようになっています。 例えばイギリスでは3分の1となっており、フランスでは14人のうち何人という書き方 になっています。我が国においてはゲノムの指針が外部委員が半数以上が望ましいとい う言い方をしている一方で、その他の指針、疫学と臨床研究は、そこまでの厳しさは課 していないということを、どう考えるかということが1つあります。  特に外部委員ですが、委員への教育であるとか、外部委員のリクルート方法、どうや って選ぶかも問題になるかと思います。イギリスでは新聞に広告を打って外部委員を選 んでいるという話を、前に聞いたことがあります。  もう1つはアメリカでcontinuing reviewといわれるものですが、IRBの審査は事前 に1回通るだけではなくて、少なくとも年に1回、継続的に審査をすることがコモン・ ルール上求められているものです。これをきちんとしなかったらどうなるかといいます と、実は継続的な審査をきちんとしていれば被害は防げたのに、それをきちんとしてい なかったから被害が生じてしまったということを理由とする被験者からの損害賠償請求 がアメリカで少なくとも2件あって、カナダで1件ありました。そういたしますと、IRB の委員個人に損害賠償請求がなされる可能性がある。その場合にその損害賠償を求めら れたIRBの委員に対して施設がどういう対応をとるかも必要になるのかもしれません。 イギリスでは委員に故意又は重過失がなければ、施設は委員が払った損害賠償の額を填 補することが定められています。  各論の(2)として、被験者の被害に対する賠償や補償の制度です。2つの軸を立てて あります。1つ目の軸はどういう制度で被害の賠償あるいは補償を行うか。もう1つは 研究者、あるいは研究機関に対してどういう義務を課すかです。1点目としては通常の 訴訟の枠組でやる。つまり、もし被害を受けたということを主張する被験者が賠償を求 めるためには、訴訟を起こさないといけないという見方です。アングロサクソン系のア メリカやイギリス、オーストラリアがこの考え方をとっていますし、そしておそらく日 本もここに位置づけられるのだろうと思います。  一方でフランスにおいては臨床研究用の特別の保険があります。これは過失が推定さ れる、被験者としては臨床研究で被害を被ったと言えば、その保険からお金が出る。も し、これは自分には責任がないのだということを研究者が言うためには、研究者の側が 自分に過失がないということを積極的に証明しなければいけないという制度になってい るようです。もう1点フランスの特色としては、もしここで無過失が立証されたとして も、医療事故の無過失の補償制度が動くということです。ですからフランスは二段構え になっています。一段目は臨床研究の過失が推定される枠組。ここから仮に落ちてしま ったとしても、これは医療事故に関する包括的な無過失の補償制度が動くことになりま して、必ずどちらかで被験者が保護されることになっています。  もう1点目の位置づけですが、フランスやドイツにおいては、研究者あるいは研究機 関が、臨床研究で被験者に生じた被害を補償するための保険に入ることが義務づけられ ているその一方で、イギリスやアメリカにおいては、保険に入っているか、あるいはど ういう補償制度があるかということは、被験者に対する説明事項になっています。1点 目に関して先ほどフランスの話を少し長くしましたが、外国の制度は医療事故に対する 救済制度全般の中で理解すべきだろうかと思われます。イギリスの場合にはNHSという 国営医療の中で行われる。ですから、もし被害があればNHSの賠償あるいは補償のスキ ームが動く形になりますし、フランスはそもそも全国民を対象として、無過失の補償制 度がある。日本にはそういう制度がないことをどう考えるかも、この制度設計の上では 考慮していかなければいけないものかと思います。以上です。 ○金澤委員長 それでは続けてお願いします。 ○事務局 少し補足をさせていただきます。資料3の(1)の部分です。いま佐藤委員から ご発表がありました部分で、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、豪州について、 いわゆる臨床研究に関する規制の根拠がどういったものであるのか。また、その中で対 象とされている範囲がどういうものであるのかという部分の概要表を用意していますの で、今後の議論の中で参考にしていただきたいと思います。  ここをご覧いただきますと、フランスなどで倫理審査委員会、計画の届出・申請とい う部分が義務づけられていたり、同意取得義務のようなものがあって、罰則があったり と、また補償についても佐藤委員からご説明いただいたようなシステムがあるという部 分があったりということが、1枚でわかるような形にしています。 次頁に佐藤委員の最後のプレゼンテーションにありました、補償・賠償の制度、保険の システムということで、一応、日本の現状の部分をいちばん左側に書きました。いちば ん上が医薬品・医療機器とかいったものに起因する何かがあった場合の話。2番目が医 師の行為による過失等に起因する場合。3番目がどちらも否定される場合ということで、 補償・賠償という部分です。日本の制度でいえば物にかかわる部分だと副作用被害救済 制度とか、治験においては民間保険がありますが、臨床研究については、ここは今のと ころは空欄になっているというのが現状です。医師の過失に起因する部分については民 事上の損害賠償、民間保険でいえば医師賠償責任保険といった形のシステムがあります。 また、黄色い部分については、どちらも否定される部分ですが、産科医療等における医 療事故の補償という議論が進められているのが日本の現状です。  これに対する形で、アメリカ、英国、フランス、ドイツ、豪州の形で並べたものです。 この資料はまだ調査中の情報も含まれていて、今後の情報収集の状況により変更される 部分がありますが、一応、民事的な部分のシステムについてまとめていますので、ご参 考にしていただければと考えています。以上です。 ○金澤委員長 法律的な問題をかなり詳しく説明されたわけですが、この資料はあらか じめ皆様方にお配りしたのですか。 ○事務局 資料3の(2)についてはお配りしてございます。3の(1)はこれのちょっと前段 階のものをお送りさせていただいていますので、本日版はやや変わっている部分がある かと思います。 ○金澤委員長 折角、法律の方がお見えになっていますので、追加のような形でも結構 ですが、いまの時点でご意見を賜ればということで、法学者の丸山先生いかがでしょう か。 ○丸山委員 先ほどの資料の5、佐藤委員の使われたEU指令なのですが、この資料のど こかで、その名称が含まれていますか。 ○事務局 正式名称はこの中には入っておりません。 ○丸山委員 指針の性格によって適用対象も、それに応じて変化しますので、その辺り ちょっと気になったところがございます。次回にでも入れていただければと思います。 以上です。 ○金澤委員長 ほかに法律の方がおられるかもしれませんがご意見ございますでしょう か。法律でなくてもいいですが。ご意見は改めていただくことにしまして、3番の議題3 まで説明をしてしまってからご意見をいただきたいと思います。  3番目の議題は指針の対象範囲とその研究の類型についてです。言い方を変えれば、 臨床研究とは一体どこまで言うのかということです。実はこれかなり大事なことでして、 下手をしますと治験のことばかり言うのかと言われてしまう危険性もありまして、この 辺りはかなりきちっとご議論をいただきたいと思っていますが、その辺の整理を事務局 からしていただきましょう。 ○事務局 資料4番です。ここに臨床研究の類型という資料がありますが、臨床研究の 現行の倫理指針においては、臨床研究の定義として、「医療における疾病の予防方法、診 断方法及び治療方法の改善、疾病原因及び病態の理解並びに患者の生活の質の向上を目 的として実施される医学系研究であって、人を対象とするもの。(個人を特定できるヒト 由来の材料及びデータに関する研究を含む)を言う」というのが現行の定義です。とり あえず定義の是非について、ここでは特段議論をしていませんが、現行の定義に従った 上で、どういった範囲が現在臨床研究の対象となってきたのか、また、その辺りを具体 的にどういったものなのかを、これからの議論をする上での整理ということでまとめた ものが資料4です。  この資料を3枚めくりまして、いちばん最後にイメージの図があります。最初に簡単 にこれを説明いただいて、全体像をお話してからのほうがよいかと思っています。先ほ ど来出てきていますが、この絵の中で左側が疫学研究の範囲、右側がその臨床研究の範 囲になっています。いちばん右上にある「薬事法上の治験」の部分、ここは薬事法の中 で対応しているもので、主として医薬品・医療機器、未承認のもの等に対して行われる ものです。ここはまず明確に今ご議論いただこうとしている臨床研究倫理指針の対象範 囲の外にあるというところを、まずクリアにしていただければと思っています。  その周辺の部分、A1と書いてある領域ですが、この辺りは治験以外の医薬品・医療機 器、主として適用外使用をしている物を用いた臨床研究などが入ってくるわけですが、 これは治験外の部分での臨床研究ということで、物を使っている部分であっても、これ はこの指針の対象の範囲に入ってくる部分でございます。  A2と書いてある部分、委員の先生方の資料では黄色になっている部分ですが、物を使 わない手術等の手術方法の比較などを行う研究の部分です。この黄色い部分までが治 療・予防の介入を行う研究ということで、臨床研究の範囲に入ってくるものという整理 をしています。  真ん中のブロックのA3、A4の部分ですが、今度は診断、看護等による介入研究。介入 研究には変わりませんが、そういう形の前向きな研究と捉えていただけると思いますが、 治療に伴う患者や検体の研究、診断を伴うようなものとか、診断技術に関する部分。あ とは治療に伴う看護とか栄養指導等による患者の病態、予後、QOL等に関する研究の部 分がこのエリアに入ってまいりまして、医学研究であって人を対象とするもの。医療に おける疾病の予防方法、診断方法、治療方法の改善、その他の範囲ということで、これ が臨床研究の範囲になってこようかと。  左側の疫学研究の範囲は、B1からB2、A5、A6と書いてありますが、基本的には手術、 投薬等の医療行為を伴う介入研究を除く範囲ということで、ここでは例えば健康人に対 する健康食品などを使った研究などが入ってくるところまでのイメージで書いています。  これを表にまとめて少し具体的な事例を付けたものが1頁目からになります。この「介 入研究」の形態の中で、区分としてA0から付いていますが、介入の程度に応じた類型と いうことでいちばん上に書いてあります。これは薬事法の治験で対象外と書いてはあり ます。A1にかかる部分は、ものを対象とした治療的・予防的な医療上の介入を伴うよう なもので、例示としてはここに書いてあるようなものです。  A2は手技等による治療的な介入・予防的な介入を行われるもの。A3の部分は、特に診 断的な介入ということで、いろいろ前向きに割付を行ったり、そういうことを伴う形で のいろいろなヒト由来試料・情報とか、診断という部分での研究が書かれています。  2頁にA4で看護・カウンセリング、いろいろな服薬指導なども書いていますが、そう いう指導の形での医療上の介入を行うものの例示が書いてあります。できるだけ例示は 現状の厚生科学研究等から拾ってきていますが、また、こういった例示の中で、こうい うものは違うではないかとか、もっとこういうものを考えたほうがいいのではないかと いうご指摘があれば、この後のご議論でご指摘をいただければと考えています。  A5より下の部分、同じ介入研究でも現行の疫学指針、臨床研究指針の切り分けの部分 は、疫学指針のほうでQ&A等に書いていますが、A5の部分とか、A6の部分、3頁目の B1、B2等の部分については、疫学指針としての対象の範囲内という形で整理をしていま す。基本的にこの類型については、介入の程度、介入リスクの高さに応じてAの0から 順番に並べてきていて、Aの4までの部分が臨床研究倫理指針の対象として、例示とし て考える部分という形で整理をしたものなので、この後のご議論の参考にしていただけ ればと考えています。事務局からは以上です。 ○金澤委員長 なかなか難しい部分もあるようですが、以上で事務局からの説明は一旦 終わるわけです。これから皆様方からご意見をいただくのですが、あらかじめいただい ているご意見が佐藤先生を含めて4人の方になりますが、資料5に川上さんと倉田さん、 5にはなっていませんが藤原さんというお三方がいらっしゃいます。なるべく短く、し かし、インフォーマティブに皆様方にご意見を頂戴したいと思います。まず川上さんか ら説明してください。 ○川上委員 私の用意させていただいた資料が右上に資料5川上と書いてあるものです。 私は、薬品や生物製剤、あるいは医療機器の安全性や有効性の評価等を仕事としている ものですから、そういったことを中心に臨床研究についてお話させていただきます。  1枚目、医薬品を開発していくとき、安全性の評価がいろいろな段階で行われるもの でして、皆さんよくご存じだと思うのですが、基礎研究の中で細胞に医薬品を暴露して どのようなことが起こるかという前臨床研究、動物を用いた非臨床動物試験、この中に 安全性薬理試験や、毒性試験と言われるものがあります。そのあと臨床試験、更に承認 後の市販後調査、俗にフェーズ4と言われますが、こういった各段階で安全性評価が行 われています。  2頁目、アメリカ合衆国では、FDA、食品医薬品局が医薬品の安全性の審査や認可を行 っています。私もここに奉職していたのですが、IND制度という制度があります。この 制度が医薬品行政にかかる根幹をなす制度で、Investigational New Drug applications というものです。この制度は行政としてFDAがまだ認めていない、いかなる医薬品を患 者あるいは人間に投与する場合であっても、INDパッケージと言われる申請資料があり まして、この申請資料をFDAに提出して、科学的な審査を行ってもらう。科学的という のは即ち倫理的に安全性を患者に担保できるかどうかという、動物試験等のデータに基 づく科学的試験になるわけです。これがIND制度です。  これに基づいて臨床試験が行われるのですが、3頁、GXPと言われるのですが、大きく 分けて3つの規制があります。左上にGMPと書いてありますが、このGMPが医薬品等の 候補品を作成・製造する場合にかかる安全性の確認ということでGMPで作られた医薬品 を用いて臨床試験を行うということが決まっています。下のGLPというのが非臨床安全 性試験、しっかりとした動物試験のデータがちゃんと取れているかどうか。GLPという 規制に基づいた動物試験が臨床試験を行うため、あるいは医薬品の承認のために必要に なるわけです。  右上のGCP、これは日本のGCPとは若干違うのですが、ICHという、日本、アメリカ、 ヨーロッパの合意に基づいている会議があります、そのうちE6というドキュメントで、 臨床試験を行う医療機関における科学的な妥当性、あるいは倫理審査がきちんと行われ ているかどうか、きちんと訓練がされているかどうか、コメディカルがしっかりと配置 されているか、こういったことに対する規制ということで、GCPが制定されています。 この3つの基準で臨床試験が動いているとお考えください。  4頁目です。PreーINDというものがありまして、FDAや行政当局は臨床試験と言われ るものの中で、先ほど事務局からご説明がありましたようなA0、A1についてきちんとし た対応をしています。A0、A1はアメリカの場合にはほとんど同じものとしてINDの中で 考えられているのですが、特に先端的な大学の研究成果を用いたような試験物で臨床試 験を行う、臨床研究を行う場合には、行政当局にあらかじめ事前に相談をしてディスカ ッションをする。科学的なサジェスチョンを受けることが、無料で行われています。こ れをPreーIND Processと言います。こういったことも踏まえてアメリカでは臨床研究が 行われていることになります。  5頁ですが、これは日本の臨床試験と言われるものの現状を図式化したものです。い ちばん下の真ん中辺りに研究シーズ、医薬品の候補品物質と書いてありますが、開発の 仕方が大きく分けて2つ日本にはありまして、左側の道筋が「治験」と言われるもので す。これは薬事法上で、医薬品医療機器総合機構で審査と治験の認可を受けて、最終的 には医薬品としての承認を厚生労働省で受けるといわれるもの。これは左側の緑色の部 分の「治験」です。  右側ですが、これは今日の話題の1つ、まだ認められていない新規の医薬品侯補物質 を用いた「臨床研究」と言われるものです。現在日本では研究機関や大学病院等で科研 費などの公的資金を用いて臨床試験を行う場合には、これは医療行為として薬事法とは 違うところで、つまり、今回の臨床研究の指針等に基づいて行われることになります。 これはあえてゴールを設定するならば、先進医療等の特定療養制度に基づいた混合診療 として認められることですが、全国に日本で新しい医薬品として使用されるということ はゴールとしてはあり得ません。もし、開発を続けたい場合には、臨床研究として医師 がスタートしたものであっても、開発を進行する場合にはスポンサーによる事業化、あ るいは医師主導型治験と言われるもので、左側の道に1から戻って臨床試験を行う。こ れが日本の臨床試験の道筋と考えられています。  6頁です。まとめますと、日本の臨床試験の問題点あるいは特徴として5つの問題点 を認識しています。(1)は、臨床研究、治験というトラックで、日本の医学部教育、あ るいは医療機関で、こういうことをしっかりと教育したり、相談する窓口がないもので すから手続が混乱しています。大学の研究者もどちらでやればいいのかを正確に理解し ている方は少ないかもしれません。  (2)は被験者保護で、今日の論点の1つですが、同じような試験物、いわゆる薬品の 候補物質があった場合にも、治験で行う場合にはGCPで患者が保護されますが、臨床研 究という道筋で行きますと、同じように新しい治療法をチャレンジしたいという患者が いても、被験者保護は明確にはされていません。ですから、これが本当に正しい臨床試 験のあり方なのかどうかが論点として生じています。  (3)は医薬品医療機器総合機構ですが、臨床研究は審査せず、治験だけを審査する所 ですから、特に新しく先端的な、大学で行われるようなバイオテクノロジー製剤、再生 医療などは、医薬品機構は最初は審査しないで臨床研究を行って、ある程度当たりがつ いたものを治験として企業が引き継いで、そこではじめて審査するということになりま すので、開発の経緯やどういう経緯で大学の先生が研究、評価してきたかを理解しない まま、審査を行うということで、審査が迅速化されません。経験値が少ないということ が問題点として考えられます。  (4)は、国内データベースの問題です。これもアメリカの場合にはIND制度に基づい て、人に使われるすべての医薬品の候補物質や、試験のデータが管理されています。で すから、科学的な水準が国家として担保されます。日本の場合には治験と臨床研究でバ ラバラに動いていますので、一元的に完備されていないという問題があります。  (5)は、国策の問題ですが、国際特許は20年間保護されるわけですが、医薬品の候 補物質が見つかってから、薬として最終的にゴールにたどり着くまでに臨床研究で始め てしまいますと数年無駄にして、また治験として一から実施することになりますので、 製薬会社が新しくこの薬を引き継いで開発をするインセンティブが減っている可能性が あります。あるいはその間に国際間の情報伝達も現在は早いですから、他の国が同じよ うな医薬品を作って先に承認を取ることも起き得ますので、国として薬を実現化するチ ャンスを失っているのかもしれません。  7頁です。アメリカで医療機器の開発を例にとりますと、ミネソタ州にメイヨー大学 という大きな大学があります。ここは医療機器の開発が非常に盛んで、大学で医療機器 の部品というか要素技術を作って、それをチャレンジしていこうという気風があるよう です。大学で何か要素技術があった場合、スピン・オフしたベンチャー企業ができます。 ここが医療機器の部品を試作して、実際に臨床試験をするものもあれば、例えば、メド トロニックやジョンソン&ジョンソンなどの大きな医療機器のメーカーに部材提供をす ることになります。  医療機器のメーカーは何をするかというと、試作されたベンチャーの技術を買って集 めて、アセンブルして、製造、販売をします。ですから、うまく連携することによって 医療機器あるいは医薬品、医薬品の応用が実現に向かっていることになります。  これが実際に行政あるいは臨床研究の科学的な審査とどのように関連しているかと言 いますと、左上にIND/IDE制度と書いてありますが、まず企業はFDAに対して審査をす るときに20万ドルぐらいの審査手数料を払って臨床試験を始めることができます。ベン チャー企業は産業振興、あるいは小さい産業を興してあげようという政策があって、ベ ンチャーからFDAに対して払う審査手数料は、およそ90%以上ディスカウントされます。 ですから、非常に安い申請料で審査が受けられることになります。  大学はいちばん先端的な部分を担っていることが多く、申請の数も多いのですが、IND の申請手数料は、基本的には無料になっています。ですから、科学的な審査にはディス カウントというのはあり得ないのですが、同じ科学的審査を受けるに当たっても企業は 20万ドル、ベンチャーは大幅なディスカウント、大学は無料ということで差が付けられ ています。FDAは特別会計で動いていますので、FDAの審査官が1年間に何人必要かとい うのが臨床試験の件数によって算定され、大学、企業に対する審査の手数料、つまり人 員の確保を企業から出た申請手数料で賄っているという側面もあります。これを全体的 モデルとしてFDAあるいは医薬品行政側と産業界あるいは社会が連携しているという様 相が見られます。  8頁です。私は先月中国に行ってきました。中国は、臨床研究の整備が大変なスピー ドで進められています。関係者が非常に情熱的で、政府も製薬・バイオベンチャー、ベ ンチャーキャピタル、医者がみな臨床研究を進めていくと、医療の質を上げること、科 学技術の進歩のため、あるいは医師の地位の向上のため、いろいろな意味で意味がある ということを謳っています。アメリカと同じIND制度の下で、大学も製薬企業も同様に SFDAに申請をかけて、ここでアドバイスを受けて臨床研究、臨床試験を進めることにな っています。  3つ目ですが、GCP専門医が設定されており、臨床研究を行いたい医師は、必ずGCP 専門医の講習を受けなければいけないことになっています。これは2週間の講習で、SFDA から北京、上海、南京に委託されております。この2週間で疫学や統計、薬事、倫理等 を学ばない限り、臨床研究をしてはいけないことになっています。これによって臨床研 究をする医師が、ほかの医師に比べてしっかりと理解をしていること、高いレベルの医 師であることが担保されているようです。  最後の頁です。今日の論点と少し関係しているところと、していないところがありま すが、人材育成、特に臨床研究を進めていく中で疫学、薬事、統計、倫理、ヘルスリテ ラシーなどをしっかりと教えることは非常に重要ですが、ここを強化しないと臨床研究 を推進するための倫理審査の委員会等の委員も教育できませんし、研修制度も作れない のではないかと思っております。  研究開発の重点領域ですが、特に2つ目の・を見ますとTR1、TR2という言葉がアメリ カで言われ出しているようです。TR1というのはトランスレーショナル研究と日本でも 言われている橋渡し研究で、TR2というのは、実際に医療の現場で疫学的にEBMリサー チ(臨床疫学研究)を行い、この医療が正しい医療なのか(エビデンスー診療ギャップ)、 本当に必要な医療には何があるのかを見極めた上で、では、こういう薬を作ろうとTR1 に働き掛けをする。こういったことがTR1とTR2の連携ということになっており、臨床 研究を進めていくためには、しっかり理解していかなければいけないことです。あるい は臨床研究というのは、そもそもTR2であって、TR1はIND制度によって担保されてい るというのがアメリカなどでは行われていることではないかと考えています。以上です。 ○金澤委員長 ありがとうございました。スペシフィックのご質問があれば伺います。 よろしいですか。それでは倉田さん、お願いします。  ○倉田委員 いまの川上委員の資料の下に1枚だけあります。「納得して医療を選ぶ会」 という医療市民団体からまいりました。医療の受け手という立場でこの委員会に参加さ せていただきます。この1枚は「被験者の立場から臨床研究を見ると、このように見え ているのです」ということで書いてみました。  日本において臨床研究というのは、治験とその他の臨床研究に分かれると聞いていま すが、患者や被験者にとっては、どちらも同じ臨床研究だと捉えています。いま治験は 1歩先を行く感じで整備が整えられていると思いますが、臨床研究も同じレベルの補償 であり、倫理審査委員会であり、情報公開であることを望みます。  次に私どもの会でよく話題になることの1つですが、既承認薬で適応拡大を目指した ものは治療なのでしょうか、それとも臨床研究なのでしょうかということです。もし医 師の裁量で、これが治療だということになりますと、インフォームドコンセントはどの ようにされているのでしょうか。既承認と言っても適応外使用ですから、もし有害事象 が起きた場合に、医薬品副作用被害救済制度の対象にはもちろんなりません。それはイ ンフォームドコンセントでどのように説明されているのでしょうか。もちろん説明され なければなりませんが、それを患者はどのように受け止めているのでしょうか。もしこ れが臨床研究でなされているとしますと、そのときにもまたインフォームドコンセント はどのようにしているのでしょうか。  補償については、「有」「無」を記すと聞いています。これがもし有りということです と、重篤な有害事象の対象になった場合、特定機能病院のような大きい病院ですと、そ の副作用の対処は、多くの科がありますから、どこかで患者を診てもらえるかもしれま せん。でも小さい病院で臨床研究が行われていて、副作用が現れた場合、その小さな病 院に該当する科がなかったときは、どのようにされるのでしょうか。これでは被験者に とって悲惨なことになってしまいますので、整備が必要だと思います。  このような治療か臨床研究かというのは、医療現場ではどのように扱われているので しょうか。適応外使用の問題もどのように扱われているのでしょうか。その実態を把握 する必要があると思います。パブリックコメントの中にも、対応がまちまちであると書 かれていますが、統一が必要ではないかと思います。  このように治療か臨床研究かと迷っているようなことは、ほかにはないのでしょうか。 臨床研究機関のお互いの交流も大切だと思います。研究のデータやその蓄積は、今後に 活かされることが大切だと思います。もし仮に望みどおりの研究結果が得られなかった 場合、それこそ情報公開をしてほしいと思います。それというのは、被験者にとっての リスクを最大限減らしてほしいと思うからです。  3番目ですが、倫理審査委員会の実態調査を是非してほしいと思います。特定機能病 院のみならず、ほかの中小の病院で臨床研究がされていると思いますが、その医療機関 で治験でいう共同IRBの対象になっているような小さな病院でも、どのように臨床研究 がされているかの実態を、是非調べていただきたいと思います。  倫理審査委員会がうまく機能していない所があると、パブリックコメントの中にも指 摘がありましたが、その委員会のメンバーや事務局側のスタッフからも問題点を聞いて、 その聞き取りの中から改善点を探してほしいと思います。以上です。 ○金澤委員長 いろいろご指摘がありましたが、今の時点でわかりにくかった、もう少 し説明してということはありませんか。  それでは、藤原先生からコンパクトにお願いいたします。 ○藤原委員 国立がんセンター病院の藤原でございます。専門は腫瘍内科学、がんの化 学療法です。たくさんの適応外使用もやっておりますし、臨床試験も治験もやっている 観点から、少し意見を作ってみました。  次の頁です。私もヒアリングに呼ばれたのですが、総合科学技術会議の基本政策推進 専門調査会で、治験を含む臨床研究の総合的推進という問題点が議論された中でまとま ったペーパーです。  改革事項には2点あり、「臨床研究に関する倫理指針」を改定し、臨床研究の準拠すべ き実施基準を策定しなさいということと、被験者の臨床研究への参加を促進するために、 保険診療と研究に付随する診療が併用可能な保険制度を確立しましょう、ということが 総合科学技術会議から提言されており、この辺りが今回のこの会の1つのミッションで はないかと私は理解して資料を作ってまいりました。  次の頁です。今日は臨床研究倫理指針で、倫理というと、すぐ被験者保護と思いがち ですが、これからお話する欧州、アメリカを例にとりますと、被験者保護だけではブレ ーキばかり進んでしまい、肝心な患者を最終的に救うというところの研究のゴールが実 現できないことが非常に歴史的に知られており、被験者保護と臨床研究振興というブレ ーキとアクセルの両方をうまく用意しないと、倫理指針がいくら整備されても何も変わ らないという現状になることを少し紹介したいと思います。  次の頁です。これはアメリカの国家研究法の実際の英語の文章を、少しコピーしたも のです。佐藤先生が先ほどおっしゃっていたので、アメリカではこういう国家研究法を 基にコモン・ルールと呼ばれる連邦規則が作られて、被験者の保護が、特に公的研究費 をもらった臨床研究についてはしっかりなされています。そういうブレーキのほかに、 アクセルとして2000年に臨床研究振興法としてアメリカで出されたものですが、公的研 究費に基づく臨床研究環境をきちんと整備しようという法律も、片やできています。つ まり、ブレーキとアクセルが存在するということです。  7頁です。これはCMSというアメリカの社会保険庁のホームページからコピーしたも のです。さらにアクセルの中で、いま日本ではあまり議論されていない所、しかし総合 科学技術会議では指摘されているところで、研究的診療というものがあります。日本で は、臨床研究、臨床研究とおっしゃっていますが、普通に皆さんがやっている診療の中 で、そういう臨床研究を本来、法令上はやってはいけないのです。それにもかかわらず、 皆さんはたくさんやっているという現状があって、非常におかしな現状です。それが是 正されなければいけないという見本として示しました。  アメリカでは、そういう研究的診療であっても、民間保険優位であっても、ライフサ イエンスの振興のために、国のCMSがきちんと臨床研究を保健診療下で実施できる仕組 みを用意しているのです。これがそのホームページです。  その次は、どのような臨床試験が対象になるかとか、どういうサービスが研究的診療 であっても保険診療としてできるかということが記載してあります。  10頁には、それだけでは不十分で、アメリカはさらに国の財政を支出して、がん登録 のような登録事業や有望な新規医薬品や医療技術の臨床試験に対してももっとお金を注 ぎ込もうとしています。CEDという制度です。つまり、民間保険優位のアメリカとい えども、ライフサイエンスの根幹にかかわる臨床試験、臨床研究の部分については、公 的資金をかなり導入しているという事実を知っていただきたいと思います。  11頁は欧州の実情です。先ほど丸山委員が「少し本文を見たい」とおっしゃっていま したが、これがEU臨床試験指令の本文の鑑の所です。2001年4月に臨床研究全般をGCP の対象にしましょうという原則が出てきました。これはブレーキに近いものです。実際 にブレーキになっている事実が次の頁にあり、今年の2月の「nature medicine」に EDITORIALとして出たコメントですが、規制のやりすぎに注意ということが書いてあっ て、右下のほうに、このEU臨床試験指令が出たあとに、EUではほとんど臨床研究が進 まなくなったのです。その原因はコストが200%、75%、70%と書いてありますが、研 究にかかるコストが2倍とか、かなり多くなってしまったために、誰も全然できなくな ったのです。これがアメリカの一人勝ちの1つ大きな要因になっています。日本はこう いう状態にしてはいけないだろうと思います。  次の頁は、平成15年、16年に厚労省の黒川清先生の特別科学研究で欧州調査に行っ たときの結果で、フランスやイギリスでは、EU臨床試験の指令が出たあとに、非常に苦 労しながら、いかにアクセルのところの整備をするかということをやっている実情を紹 介した2枚のペーパーです。  最後の3頁は、これらを踏まえると、欧米では臨床試験にかかる研究的診療経費の一 部を医療保険でカバーしている。一方、アクセルの1つの手段としてそういうことをし ている。しかし、日本では適応外使用が良い例であるように、通常は適応外使用を診療 の中でやっていると、保険の査定でうまく目をつぶっていただける所が多いので、やれ ることが多いのです。がんなどの場合は、適応外使用をしないときちんとした世界標準 の治療ができないことが多くて、これはいま重宝しています。しかしきちんと患者の被 験者保護を考えて臨床試験という計画書に基づいてそれを行おうとすると、倫理審査委 員会は、添付文書にそういう記載がないし、保険の査定も受けるリスクもあるしという ことで、研究の実施を認めない、できないという非常に捻れた状況にあります。その捻 れた現象のいちばん大きな要因は、厚労省が出している研究的保険診療の禁止を謳った 療養担当規則です。実際にはこれをきつく運用すると日本では何もできないという実態 があります。  最後の頁です。したがって、臨床研究倫理指針の見直しの中で、欧米と同じように被 験者保護の観点からブレーキをしっかり整備した上で、アクセルの環境整備を。これは 今日、この専門委員会で検討すべき論点の中に、臨床研究の環境整備にかかわる他制度 との関連というのが書いてありましたが、まさにそこをしておかないとブレーキばかり 踏まれて、誰も臨床研究をやらない、患者の診療レベルの向上にもつながらない事態に なりますので、是非、17頁目と、最後の18頁の提言を臨床研究倫理指針を基に、ちゃ んとした臨床試験あるいは適応外使用ができるような環境整備を、我々は考えていった ほうがいいのではないかと思います。以上です。 ○金澤委員長 どうもありがとうございました。かなり具体的なイメージが持てる話を いただきました。 ○丸山委員 先ほど見たいと言ったのを11頁で示していただいたのですが、これを見ま すと、表題の2001年4月4日から3行下あるいは2〜3行目の「good clinical practice in the conduct of clinical trials on medicinal products for human use」ですから 医薬品です。広くとっても医療機器まで入るかどうか、たぶん入らないのでしょう。で すから、先ほど佐藤さんのほうで、この指針から適用範囲が云々と言われましたが、こ の指針の本来の適用範囲をにらみながら、規定の内容を紹介していただければと思いま す。場所を弁えないというか、前後の脈絡を外した発言ですが、一言申しました。 ○佐藤委員 先ほどの報告では時間の関係でそこを端折ってしまいました。EUの指令そ のものというよりは、EUの指令が出たことからフランスの法律が改正になりました。フ ランスの法律は、それまでは臨床研究一般について法律の対象にしていたのを、このEU 指令を受けて非介入のものは外すという形にしましたので、フランスの動きが、むしろ EU指令ができたことから、薬を使った臨床研究だけを規制対象にするというやり方に変 わったというのを、私の頭の中に置きながら、先ほど話を考えていました。 ○金澤委員長 ご質問ございますか。それでは、1回目ですから、できるだけ皆さん方 に自由にご発言いただこうと思っております。いまの調子でいきますと明日になります ので、長くても2分ぐらいでご発言いただけたらと思いますが、いかがでしょうか。先 ほどの続きという感じで伺いましょう。 ○丸山委員 委員として予め意見を提出しなかった宿題を少し遅れて提出したいと思い ます。資料2のパブリックコメントで出された意見の中の26頁の最後の行から次の頁に かけてですが、今回のパブリックコメントを読んで、非常に有益なコメントが多くて有 難いとは思っていますが、ここは補償の問題で、これからもいろいろな議論がなされて いくところだと思います。  それ自体はいいのですが、このコメントを書かれた方は、前回の指針作成のとき、2003 年5月の第14回厚生科学審議会科学技術部会でのパブリックコメントに対する厚労省側 の対応に言及されているようです。その際に補償の問題について、いろいろな指摘をパ ブリックコメントとしてなされたが、厚労省側は「本指針では対応できませんでした。 今後の見直しの際には、ご指摘の点を踏まえ、必要に応じて検討してまいります」と書 かれたのです。今回は補償の問題については、かなり力を入れて対応される見通しだと 思うのですが、前回の指針作成の際のパブリックコメントでは、いろいろな意見が出さ れて15カ所にわたって「今後の見直しの際に対応します」という回答をなさっています。 以前からずっと臨床研究倫理指針のことに注目してくださっている方からすると、新た に今回指針を作るのではなく、平成15年にできたプロセスも踏まえて改定するというこ とになりますので、個人情報保護法の成立を踏まえる改定の以前の本来の臨床研究倫理 指針が制定されたときのパブリックコメントに対する対応が、時間がなかったこともあ って、必ずしも十分にできておらず、15カ所にわたって、今後の検討に回すと厚労省側 は回答されていますから、その辺りをそれぞれ潰していくというか、検討することも大 事ではないかと思いましたので、一言発言させていただきました。 ○金澤委員長 ありがとうございました。非常に大事なご指摘だと思います。 ○飯沼委員 折角の機会ですので、思い出したことを申し述べたいと思います。最後の 藤原委員のお話に関係して、55年と記憶していますが、当時の橋本厚生大臣と武見太郎 日医会長との間に、薬理薬効で薬が使えるという話があって、随分長らくいろいろな裁 判等でもその話が出てきました。  ここ5、6年だと思いますが、追っかけ通知で55年通達は生きているという話が、課 長通達か局長通達で出たという記憶があります。そのことが臨床研究のいろいろな制約 のとき、臨床研究、治験をやるときに、かなりの許容範囲を広げていると私自身は理解 をしています。  薬事法上、ある薬効で薬が承認されているものに関して、違うものには薬理作用があ れば使っても差し支えないと。たぶん追っかけ通知では抗がん剤の話が出た記憶があり ます。そこをうまく使うというのは悪い表現かもしれませんが、そういうものの考え方 をしていくと、もう少し自由にというかフリーハンドを持って臨床研究ができるような 気がしないでもないのですが、私の考え方は間違いでしょうか。 ○金澤委員長 あまり深くいってしまうとあれなのですが、いまの時点で事実関係とし て何か事務局からありますか。 ○事務局 飯沼委員にご指摘いただいた部分で、平成16年だったかと思いますが、抗が ん剤の適応拡大についていろいろ社会問題になり、そこを広げていこうという検討をし ている中で、55年通知、いわゆる症状詳記等を提出することによって薬理作用があるも のについては、保険上、認めていくという通知についての解釈を示したものが出ていた というのは事実かと思います。  そこでは基本的には薬理作用という部分を言われる際に、それなりのいろいろな有効 性・安全性に関するエビデンスがあるものということで、厚生労働省の当時の検討会で、 適応外のものであっても、有効性・安全性等が外国の臨床試験や信頼できるジャーナル などで認められたものに対して、そういう通知の適用をしていくという形で、抗がん剤 について、かなり限定的に対応していたものかと記憶しております。今のご指摘につい ては、我々のほうで少し勉強させていただこうと思っております。 ○金澤委員長 それでは伊賀委員、お願いいたします。 ○伊賀委員 私は前回のこの検討会に本当は加わっていたのですが、指針というのは、 きちんとしたものができることは大変必要です。先ほど藤原委員も指摘されたように、 ブレーキの部分がどうしても強調されてくる。もちろん患者の立場からは補償の問題な どは、当然きちんとならなければいけないのです。日本でなかなかうまくいかない部分 は、アクセルの部分で、これは特にいまお話いただいたように保険適用の問題があって、 既承認薬であれば、何らかの形で保険上で認められるような形にしないと適応拡大等の 臨床試験を日常の診療の中でやっていく上では、大変大きなブレーキになってくるので はないかということで、指針に盛り込めることとは別かと思いますが、その辺りを是非、 今回ご検討をいただければ、より進むのではないかというのが私の意見です。 ○金澤委員長 スペシフィックなご質問はよろしいですね。 ○井部委員 この暑い中でたくさんの資料を送っていただいて、大変勉強になりました。 特にパブリックコメントでは多くのことを学ぶことができました。私はこれらの資料を 読んで3つのことを思いました。1つは、日本の臨床研究と言われているものが「ヘル シンキ宣言」と比較して、いくつか漏れがあるのではないかという感覚を持ったことで す。  もう1つは、医療に関係した指針が6つあるわけですが、この6つの指針をそれぞれ これまでのように手直ししながら進んでいくべきかどうかについて、多少疑問を持ちま した。今回の臨床研究の見直しも、臨床研究の倫理指針が、6つの指針の包括的な根源 的な指針にならないのかどうか。あるいはもっと言うと、生命倫理に関する基本的な法 律のようなもの、あるいは指針と言ったほうがいいのかもしれませんが、そのようなも のが必要ではないかというのは、臨床の立場から考えたことです。  3つ目は、法制化の問題をどうするかということです。今までのように指針という形 で進めていって良いのかどうかです。この3つのことについて考えました。 ○金澤委員長 これから議論をしていく問題点をご指摘いただいたと思います。 ○江里口委員 私は初めて参加させていただきました。歯科の場合は臨床研究というの は、大学や大きな病院が中心になって行われて、特に私は口腔外科出身ですが、口腔外 科が医薬品に関しても大きな研究をしています。  歯科の場合は未承認薬が非常に多く、一般医科ではかなり有効性が認められていても、 歯科の場合は非常に少ない量しか使わないということで、一般医科で承認されていても 歯科で使えない薬はたくさんあります。開業医でも治験というか、臨床的な治療による 研究をしていることで、足枷がかかっている所がかなりあります。口の中、咽頭から喉 頭の辺りに効く薬でも、口腔内だけでは使えないものがかなりありますので、その辺で 最先端の医療が歯科では大変遅れている感じがあります。  それから補償の問題で、いま歯科ではデンタルインプラントと骨の再生医療というこ とで、10年とか20年とか、ほかの分野よりも長期に結果が出てくるものが多いのです。 その補償の問題などは、この倫理規定の中で、どのように捉えていったらいいのか。確 かにそこの場で手術したときには見せかけ上、良くなっている。あるいはそこでは1つ の終止符を打って治癒という形をとれるのかもしれませんが、実際に20年、30年経っ て、結果が出てくるものが、我々の分野では非常に多いので、そのことも少し勉強させ ていただきたいと思っています。 ○金澤委員長 これまた難しい問題ですね。それでは、北村委員にお願いします。 ○北村委員 資料1にこの委員会で検討すべき論点が挙がっており、その他を入れます と1〜6になるのではないかと思います。例えば、いちばん初めに、どこまで指針を置く か明確化しようというのがありますが、今までの委員の方々のお話や、事務局のお話を 伺っていますと、資料4でも大体その対象範囲は明確になっているのではないかと思い ます。  パブリック・オピニオンでもしばしば出ていた疫学研究と臨床指針を同一にしてはど うかというのは、私は無理があると思います。というのは、臨床研究は我々の所のよう な、あるいは大学もそうでしょうが、新しい医療の開発を1つの使命にしている施設に おいては、どうしても強いリスクを伴う介入がありうることからして、やはりこの指針 はこれで、そして2番目の被験者の保護も含めて、リスク別の補償制度が要るのかどう か。あるいは民間保険もあると聞いておりますが、何らかのそういったものを進めるべ きなのか。そうすると、臨床研究の中でも臨床試験のリスク別に見た補償制度をどう考 えていくのかということが1つ大事なのではないかと思います。  それから、3番目の信頼性と公平性の確保ですが、これは多くの臨床研究、医薬品等 を用いた介入を併用することによって生存率が上がるのかとか、そういったものが多く の民間の製薬企業のお金で動いているのがたくさんあります。そうすると、ここで利益 相反の問題を明確にし、従来の臨床指針よりも突っ込んだ形にする必要があるのではな いかと感じました。  4番目に公的研究費による臨床研究との関係というのがありますが、厚生労働省の科 学研究費は民間研究費との併用においての臨床研究の推進を現在禁じています。しかし、 これは何らかのルールづくりをして、民間からのお金と厚生科学の研究の連続性を保つ という意味からもルールが必要でしょうが、併用型あるいは連続型の承認をするかどう かは、医政局だけではなく、厚生科学課など他局も関係すると思いますが、検討をお願 いしたいと思っています。  5番目の臨床研究の環境整備ですが、これは藤原委員からも述べられたとおりで、療 担規則というのが、病院の医師においては課せられています。保険医の使命ですが、こ れは昭和32年にできており、実に50年前の制度です。例えば再生医療というトランス レーショナルリサーチをたくさんの所でやっていますが、これを明確にしていないと多 くのトランスレーショナルリサーチが療担規則違反ということにもなりかねません。こ こに何らかのルールを作って申請制度にしてはどうか。あるいは公的研究費に基づくも のには評価療養を併用してはどうかといったことを、保険局の問題にもなりますが、私 としては厚生労働省が医政局だけではなく、この機会に厚生科学課あるいは保険局と連 携した形でやってもらいたいと思います。  その背景には、倫理指針という倫理の問題を中心にした指針が平成15年にできている のですが、同じころ、同じ医政局からは医薬品の産業ビジョン、あるいは医療機器の産 業ビジョンという推進が出されています。ですから、そういったものに含めて、推進の ほうもやるためには環境整備が大変重要ではないかと思います。50年前の療担規則から 一歩進めるべきではないかと私も藤原委員と同じような気持を持っています。 ○金澤委員長 倉田委員は先ほどのお話でとりあえずはよろしいですね。それでは、次 に河野委員、よろしくお願いします。 ○河野委員 今回初めて参加させていただき、勉強しているようなレベルですが、大学 病院におりますので、現場での感覚で申しますと、臨床研究の環境整備が十分ではない のが、一番の問題だろうと思います。と申しますのは、臨床研究というレベルにおいて も大小あるわけです。小さな臨床研究も含めて、現在、ある程度大事にしていかないと、 大きな公的資金でやられている臨床研究だけに絞っていくと、今後、臨床研究を担って いく若手の方々の育成につながらないのではないか。ですから、是非とも臨床研究の環 境を資金の面で整備していただくことが重要ではないかと思います。  私の専門は小児科です。小児科は適応外使用の医薬品が非常に多く、厳密に臨床研究 という仕切りでやられてしまうと、適応外の医薬品が使えなくなり、現場は非常に混乱 をしてしまいます。この適応をとるための経費は保険制度でちゃんと補償していただく のが1つのやり方だろうと思います。  もう1点は、先ほどの育成のことに絡むのですが、医学の卒前と卒後教育の中に、ど のように臨床研究のキーワードを織り込んでいくのかということは重要ではないかと思 います。倫理委員会や治験委員会がありますが、現状をよく理解して実際に担っていく エクスパートの人たちが、少ないように思います。そういった人たちをしっかり教育し ていく。その他の人達に対しても、こういった倫理という問題の教育を徹底していく。 臨床研究の方向づけを理解していくことのためには、単に委員会があるというだけでは 済まない。やはり全体の医学教育の中に位置づけて臨床研究を見直していく必要がある のではないかと思います。 ○小林委員 聖マリアンナ医大の小林です。現在、日本臨床薬理学会の理事長もしてお ります。もともと医療というのは、非常に不確実性のあるもので、最近は結果責任を問 われて非常に困っていることもあると思います。その中で、さらに臨床研究になると、 不確実なものがあるので研究をするわけですが、不確実なものに対してどう対応するか というのは非常に問題だと思います。そういうことから考えると、被験者の保護は絶対 重要で、それを考えなければいけないと思います。  ところが臨床研究と言っても、人の血液サンプルを使うだけなら、血液を採ればいい だけのものもありますし、遺伝子を調べる場合は個人情報の問題もあります。また本当 に介入しなければいけない試験もあって、いろいろな臨床研究があります。そういうも のを全部十把一絡げで考えられても困ります。  今日、いろいろお聞きしていると、まだ言葉や事項にたいする定義がはっきりしてい ないところも随分あって、皆さん方のイメージの中にあるものもバラバラのような気も しますので、ある程度定義をはっきりしなければ適切なディスカッションはできません。  また倫理的なディスカッションで考えるべきことは絶えず多様性をもって考えるとい うことであろうと思います。現在、既に稼働している倫理委員会も多様な考え方が必要 なことから委員として、一般人を含めいろいろな人を入れなさい、女性も入れなさい、 いろいろなバックグラウンドの方から多様な意見を出して審査しなさいとなっていると 思います。しかし、多様な意見がバラバラになったら、全く意味がないわけですから、 そういう面では本委員会が示す「倫理指針」は、最終的には基本的なことで、こういう ことだけは絶対に押さえなければいけないということだけを決めていきたいと思います。 細かい所まで決めてしまう必要はないと思います。  また最終的に被験者の保護は医師個人ではできないものもあります。先ほどから出て いる法制化の問題については、まず我が国において臨床研究を促進するための法律をつ くり、そのバックアップとして被験者保護のための法律が必要と考えます。現時点では そんなところです。 ○谷内委員 東北大の谷内と申します。今回、初めて参加させていただきました。先ほ ど利益相反の問題がありましたが、厚生労働省の厚生科学課で今年から利益相反のマネ ージメントに関する委員会が立ち上がっており、その中で今年度中に答申を出すことに なっておりますので、そのことを付け加えさせていただきます。  私はその中でも発言をさせていただいていますが、厚生科学研究費を受け取っている 機関が責任を持って利益相反マネージメントをしなさい、という方向で発言させていた だいております。  そういうことを考えますと、佐藤委員から指摘のあった「疫学指針への適合性を機関 が保証する」点に関して、もし可能性があるのだったら、厚生科学研究費が主導して、 臨床研究の倫理指針の遵守を組織に保証させるような方向が、いちばん現実的なのかと 私は考えております。  ただ、私の聞いているところによると、文科省とも共同でおこなっているということ ですが、JSTで臨床研究基本法を提案されているように聞いております。これはどうい う法律なのか、私は全くわからないし、内容も聞いていません。ただ、JSTの公式文書 に臨床研究基本法というのが出ていて、ここは今いちばん問題になっている補償の問題 等に対して、あるいは国が先導して、補償・賠償の保険制度を作っていただけるのかど うかが重要と思います。たぶん医師で臨床研究をする人は全員、医賠責に入るように、 東大でも、東北大学でも、すべての国立大学で指導していると思います。ただ、それは あくまでも医師に過失があったときにだけ補償する制度ですので、何とか今回の委員会 で、ある程度の方針を出していただく、あるいは法律化しないと保険会社はそういうも のを作ってくれないのかもしれませんが、パブリックコメントの中に、ちゃんとした所 であれば検討してもいいという会社が1つありましたので、少し先が見えているのかな と思っています。 ○金澤委員長 いまのお話で、総合科学技術会議云々で、JSTというのがありましたが、 コメントをお願いします。 ○新木課長 JSTのお話で、その作成に携わられた藤原先生、川上先生もいらっしゃっ ていますが、簡単に申し上げますと、基本法の骨子と呼んでいいようなものがその中で 提言されており、その中の1つとして補償制度のことにも言及がなされているという状 況です。 ○金澤委員長 まだ確定していないわけでは、もちろんないわけですよね。 ○新木課長 JSTとして、「こういう法律が必要ではないか」という提言で、この場でそ ういうことも含めてご議論をいただいて、厚生労働省として対応すべきものは対応して いきたいと考えております。 ○前原委員 九州大学の前原でございます。私は臨床医として発言させていただきます。 私どもが行っている日々の外科臨床において、多くの治療、処置は経験に基づくもので あり、エビデンスに基づいたものは少ないというのが実情です。その中から、例えば、 手術をして皮膚切開をして患部にあてるガーゼは、私の30年前の研修医のころは、毎日 包交しておりましたが、滲出液の中には組織の修復に有用ないろいろなサイトカインが 浸出してきているのだということがわかって、組織修復のためには局所に留めておいた 方がよいと。よって現在は頻回のガーゼ付け替えは行っておりません。過去の経験に基 づいた常識は正しいとは限らないということです。今後、実際に臨床試験を実践して、 サイエンスに基づくエビデンスを構築していくことは、日々の外科臨床の質の向上に大 きく寄与するものと思っています。そういう観点からも実地臨床と臨床研究の境界は非 常に曖昧で、ここでこうだという線引きはなかなか難しいと考えられます。  平成15年に作成された「臨床研究に対する指針」を見せていただきますと、私がどう しても引っ掛かるのは、文章の中で「何々をしなければならない」「何々をしてはならな い」という言葉で多くの項目が規定されている、そして今回送っていただいた資料の中 でも、新聞記事で「違反」とか。私どもは患者のために質の高い医療を目指して臨床試 験を行っているということではなくて、実は臨床試験は非常に悪いことを恐る恐るして いるのだという思いに陥ってしまいます。  先ほどの藤原委員のお話の中でも出ました話で、ブレーキという観点からは、人権保 護、個人情報の保護は非常に重要だとは思いますが、私どもが臨床試験を行うことの理 由は、患者さんへ質の高い医療を提供してゆくことが大きな目的であることを、再確認 しておきたいと思います。臨床試験というのは、推奨されることであって、アクセルと して積極的に推進すべきであるということを、認識できるような指針であってほしいと 思います。  そのためには、国あるいは民間からの多額の財政支援も是非とも必要だと思います。 さらに、臨床試験を推進するために指摘しておきたいことがあります。臨床試験で得ら れた成果が実際に論文となってパブリッシュされるまでには、何年もかかり、また多く の研究者がかかわり、そしてやっと1つの論文が出来上がる。一方で培養細胞や動物を 使った基礎研究は、ある程度短期間で成果が出る。大学などにおける研究者の評価は First authorの論文や論文数でなされてしまい、そうすると、臨床試験を一生懸命や っているだけでは、なかなか評価される対象になり得ないということになります。臨床 試験をして、質の高いエビデンスを創出してゆくことがどれだけ重要であるか、研究者 にインセンティブを与え高い評価をしてゆくことが大きな推進力となるのではないかと 思っています。ブレーキ以上にアクセルという面からの指針であってほしいと思います し、そこで人材が育成されるような指針であってほしいと考えます。 ○本田委員 私は読売新聞の社会保障部の記者ですが、記者という視点でというよりは、 私自身が乳がん患者ですので、臨床試験、臨床研究となると、どうしてもがんの薬のイ メージで話してしまう、考えてしまうことをご了承ください。私自身は全然専門家では ありませんので、こうした問題をどう伝えていけば社会に理解されるか、もっと理解が 広まるのかを、臨床研究自体を勉強しながら考えるということで参加させていただいて いると理解しています。  その中で思うのは、まず、先ほど先生方の中にもご意見がありましたが、ここで扱う 臨床研究というのは一体何なのかがわからない。いろいろなものがあります。いろいろ なグループで大規模に臨床試験をされているというイメージがすごく強いのですが、そ この病院の中だけの、その先生だけがやっている臨床研究というのもあり、それらを十 把一絡げに議論するのは、なかなか難しいのかと感じて、一体臨床研究というのは何な のかということを明確にしないと議論が難しいのかなと思いました。  それと同じように指針の対象範囲の明確化ということもありますが、私自身もがん患 者であり、患者仲間の実態を見ていると、先ほど藤原委員らがお話になった適応外使用 とか、未承認薬の使用とか、そういうもので実際の診療で救われている部分も多いわけ です。何を、どう明確にできるのかというのは、私には答えがないのですが、そうした 診療を臨床研究だとしてぎちぎちに指針の対象にするのか。患者にとってはとても不利 益になることもありますので、そうした点の考慮も必要かと思います。きっちりした明 確な被験者保護はもちろん必要だと感じていますが、現在そういう中で治療を受けてい る人間もいっぱいいますので、そういう部分も考えながら議論をしていただきたいと感 じました。  もう1つは、臨床研究とは何ぞやという話と一緒に、いろいろなものがある中で公的 研究費を使っての臨床研究となると、経済的な視点も必要だと思います。似たような研 究があちこちで個人の先生が繰り返している可能性もありますし、その辺が全然明確に なっていない。そういう情報をきっちり出していっていただきたいし、また、今後、ど ういう臨床研究を認めていくのかという視点も必要ではないかと感じました。  先ほどご意見がありましたが、思わしくない研究結果が出た場合も、きっちり結果を 公表していただかないと意味がないと感じています。ブレーキとアクセルという話では、 私も本当に重要な点だと感じているのですが、被験者保護、情報公開などをきっちり守 っていただくという規制、ブレーキみたいに思われる部分を逆に明確にすることが、国 民に対して、きちんと保護されているのだという理解につながるという、国民の理解と いう部分ではアクセルにもなるのではないかと思いますので、その辺の議論も必要と感 じました。  リスク別の補償制度とか、そういうものを是非この際、議論していただきたくて、臨 床研究を進めていくという国の方針であるならば、そういう補償制度も作っていく覚悟 があるのかという議論もしてほしいと感じました。 ○寺野委員 正直言って、どういうことをやるのかなと思って、初めて参加させていた だいて、非常に勉強させていただきました。これは臨床研究に関する指針の見直しとい うことですよね。その辺の目的がよくわからないままに参加しました。  見直しということは先ほど言われましたが、法制化するのか、ガイドラインのままで 行くのか、その辺の基本的な方針は、ここでいくら議論しても厚生労働省から一定の方 針を出してもらわないと困るのかと、初めに戸惑いを感じました。見直しなら見直しで、 パブリックコメントはあるのですが、どこが前のものが悪くて、どこを直すべきかとい うことを具体的に出していけば、議論はきちんといくわけですし、それ以来、この5年 間にどういうことが起こったので困るという具体的な例が出てこないと、抽象的な話ば かりしてもしょうがないということを無責任に指摘します。  経験したことなどを話している暇はないので、時間のあるときに話しますが、例えば、 私はカプセル内視鏡をずっとやってきたのですが、あれを認めるのに実に4、5年かかっ ているのです。ですから、治験だけではなく、医薬品機構などの問題もどのようにする のか。国民のためにどのようにやっていくかというのは、前原委員が言われたとおりだ し、藤原委員がアクセルの問題を話しましたが、その辺を背景としては考えていく必要 があるのかと思いました。時間がないのでそれだけです。  もう1つは、驚くべきことには11月に中間とりまとめをして、平成20年2月に指針 をとりまとめる。この半年の間でそれをやるのは、いまの議論の出発点からすれば不可 能に近いと思います。ということは、大体できているのですか。何かあるものを出して おいてもらわないと議論がしにくいのではないかと思います。こういう委員会は、そう いう傾向があるので、パブリックコメントが出てきたのはすごく素晴らしいことですが、 ちょっと嫌みっぽいのですが、私の感想です。 ○金澤委員長 ありがとうございました。いつもより柔らかいですから。特に案ができ ているわけではありませんので、皆さん方のこういうご意見を基に積み上げていくので、 そこはご自由にお考えください。 ○廣橋委員 本当に短く申し上げます。今回のパブリックコメントの中にも、あるいは 委員のご意見の中にもありましたが、今はいろいろな指針があります。臨床研究のため の倫理指針もあるし、疫学研究のための倫理指針もありますし、遺伝子解析研究に関す る倫理指針もあります。これらの指針の間には、基盤としては共通している部分がある はずで、本来なら、そういうものをまず始めにまとめて、それぞれの特徴のある部分に 対する指針ができて然るべきだと思います。そういう意見もたくさんありました。  ただ、現実には疫学研究の倫理指針は、既に改定がほぼ終っているのだそうです。委 員の方から聞きますと、適用範囲についてはだいぶ議論があって、整理もされたと聞い ています。今回、資料4という形でいろいろな研究の類型が示されて、どこまでが臨床 研究指針の適用範囲で、どこからが疫学研究の適用範囲だという図が示されたのですが、 こういうものを本当に疫学研究指針を作られた方、あるいは改定された方々と、こちら で共有しているのかどうかが問題です。そういうところをきちんと出発点を整理してお かないと、折角のあとの議論が無駄になる点もありますので、次回にでも疫学指針がど のように改定されたのか、その対象はどのように整理されたのかを、こちらの委員会で 共有をする機会を作っていただければ有難いと思います。 ○金澤委員長 ありがとうございました。時間もだいぶ過ぎておりますので、今日はこ のぐらいにさせていただきますが、いまお話の中に補償の問題、保険でどうかとか、診 療報酬、その他の問題が出ておりましたし、またそれについてのサポートのご意見もか なりあったと思います。そういうものを全部含めて、次回までに事務局で少し調整をし て、案の案の案ぐらいのところを出してくれるのかと。いずれにしてもまたご意見をい ただくことがあるかと思います。  今日は言い足りなかったというのがたくさんあったに違いありません。これについて は事務局で大歓迎をいたしますので、どうぞメールでもお電話でも結構ですので、ご意 見を頂戴したいと思います。 ○事務局 どうもありがとうございます。本日は大変貴重なご意見をいただきました。 また本日いただきました意見を、こちらでも整理をさせていただきまして、次回以降、 参考人の方々をお呼びするとか、ご関心の領域について、少し議論を深めるような機会 を作っていくことも検討していこうと思っております。いま委員長からご紹介がありま したように、本日は大変短い時間で、ご意見を出し足りない部分がありましたら、事務 局へ奮ってお寄せいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。  本日はお忙しい中、また遠方よりご参加いただきまして、大変ありがとうございまし た。本日、いろいろご指摘をいただいた中で参考資料にも入っていますが、事務局でも この議論を続けていく上で、例えば、倫理指針の遵守状況のチェックやそういった部分 も実地に進めていったり、議論の参考になるものを次回以降も提供していきたいと思っ ておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  次回は9月13日の開催予定です。別途ご案内をさせていただこうと思いますので、よ ろしくお願いいたします。 ○金澤委員長 私だけが言えなくなってしまい、腹膨るる思いをしております。第1回 目の専門委員会は、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。 照会先 医政局研究開発振興課 03-5253-1111 内線2590 2