07/07/30 第4回自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会議事録 第4回 自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会議事録 平成19年7月30日(月) 三番町共用会議所大会議室 ○上田座長 それでは、定刻となりましたので、まだ構成員でいらっしゃってない方が おられますが、ただいまより第4回自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会を 開催いたします。構成員の皆様方におかれましては大変お忙しい中御参加いただきまし て、誠にありがとうございます。なお、本日は五十子構成員と平安構成員につきまして は御欠席との御連絡をいただいております。また、前回から事務局に異動があったと聞 いておりますので、事務局の御紹介の後、本日の会議資料について確認をお願いしたい と思います。 ○名越課長補佐 異動のありました事務局の局員について御紹介させていただきます。  まず奥の方、得津室長でございます。  それから私、課長補佐の名越。横が森川でございます。  続きまして配付資料の確認をさせていただきます。  資料1、検討会構成員名簿。  資料2、自殺総合対策大綱。  資料3、伊藤構成員提出の、自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する研究の進捗に ついて。  資料4、川野構成員提出の、自殺で遺された方への支援のためのガイドラインについ て。  資料5−1〜5−3、資料番号がついておりませんけれども「教師と学校関係者のた めの手引」という冊子がついておりますが、河西参考人から提出のありました資料でご ざいます。  資料6、第3回自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会議事録。こちらにつ いては既に構成員の皆様方には御確認いただいておりまして、ホームページ上で公表さ せていただいているものでございます。  資料は以上でございますけれども、落丁等ございましたら事務局までよろしくお願い いたします。 ○上田座長 よろしいでしょうか。それでは、今日はガイドライン等について議題にし ますが、自殺総合対策大綱に関しての提言については、これまで皆様方からいろいろ御 意見をいただきながら、本年3月9日に開催されました前回の検討会の後、皆様とのや りとりの結果まとめました。構成員の皆様方の御協力に感謝申し上げます。  そこで、このガイドラインに入る前に、この6月に閣議決定されました自殺総合対策 大綱について事務局から御説明をお願いいたします。 ○名越課長補佐 自殺総合対策大綱について御説明させていただきます。資料2でござ います。この6月に閣議決定がなされております。  1枚開いていただきまして目次でございます。先生方におかれましては既に熟読され ていると思いますけれども、重ねての説明になるかと思いますが、全体の流れについて 御紹介させていただきます。  自殺対策の基本的考え方、世代別の自殺の特徴と自殺対策の方向、自殺を予防するた めの当面の重点施策、自殺対策の数値目標、推進体制等という6つの項目に分けて構成 されております。  まず1ページ以降、自殺をめぐる現状、自殺対策の基本認識、自殺は防ぐことができ るというアピールが示されております。  4ページからは、自殺対策の基本的考え方ということでございますけれども、社会的 要因を踏まえ、総合的に取り組むということで、社会的要因に対する働きかけ、疾患に 関してはうつ病の早期発見・治療、普及啓発という意味では、自殺や精神疾患に対する 偏見をなくす取り組み、国民の耳に届かせるという意味のマスメディアの自主的な取り 組みへの期待といったところが社会的要因ということが示されております。  5ページ、国民一人一人が自殺予防の主役となるよう取り組むということで、国民一 人一人の自覚について示しているほか、6ページには、この検討会と関連する項目とし て、自殺の事前予防、危機対応に加え、未遂者や遺族への事後対応への取り組みという 意味で、この検討会との関連が示されております。  4番目、自殺を考えている人を関係者が連携して包括的に支えるというところでござ いますけれども、ここにも本検討会との関連が一部示されておりまして、うつ病等、自 殺の危険性の高い人や、自殺未遂者の相談・治療に当たる保健医療機関の取り組みとし て、問題に対応した相談機関を紹介できるようにする必要があるといった記述がござい ます。  7ページは、自殺の実態解明とその成果に基づく施策の展開について。短期的なもの でなく、中長期的視点に立って継続的に進めるべきといった基本的な考え方が示されて おります。  8ページには、青少年期、中高年期、高齢者といった3つの世代に合わせた対策をと るべきということが示されているほか、9ページ以降が特に重要かと思われますけれど も、自殺を予防するための当面の重点施策9点が示されております。まず自殺の実態を 明らかにする。この中には(3)自殺未遂者・遺族等の実態及び支援方策についての調 査の推進といった、本検討会との関連項目がございます。  10ページでございますが、2つ目の取り組みとして、国民一人一人の気づきと見守り を促す。11ページには、早期対応の中心的役割を果たす人材を養成する。12ページには、 心の健康づくりを進める。13ページには、適切な精神科医療を受けられるようにすると いった項目が並んでいるほか、15ページでは社会的な取り組み、17ページでは再び検討 会との関連項目でございますが、自殺未遂者の再度の自殺を防ぐ、遺された人の苦痛を 和らげるといった、7番目、8番目の項目が示されております。  18ページに、民間団体との連携についての項目がございまして、合計9つの重点施策 ということで示されております。19ページには、自殺対策の数値目標として、平成28 年までに、平成17年の自殺死亡率を20%以上減少させるという具体的な数値目標を掲 げております。  今後の推進体制については20ページ以降、国・地域における推進体制、連携・協力の 確保のほか、施策の評価・管理、大綱の見直しについての記述がございます。  今後政府として取り組んでいく重点施策として9つが示されているわけでございます が、本検討会と関連した7番目、8番目の項目に関して、本検討会で特に提言を出して いただくということが今後の作業になろうかと思いますので、構成員の先生方にはどう かよろしくお願いしたいと思います。  なお、この検討会の目的というのは、検討会の発足当初、事務局の方から申し上げた ところでございますが、遺族と自殺未遂者へのケアを体系的に取りまとめて、今後の施 策や関係者の連携方策等について提言をいただくということになっておりますけれども、 このたび示された大綱の中身、全般的なものを踏まえる必要があろうと思います。今後 ガイドライン並びに提言の作成作業を進めていくことになろうかと思います。  その構成内容として重要な、ガイドラインの作成についてはこの後、研究班の先生方 から作業の進捗状況と今後の方向性についてお話をいただけるものと考えております。  事務局の方からの説明は以上でございます。 ○上田座長 ありがとうございました。ただいま、自殺総合対策大綱について御説明、 御紹介がございました。また、第1回の検討会で、5〜6月ごろに大綱が策定されます ので、それについての提案をこの検討会でも行ってほしいというお話があったと思いま す。あわせて、自殺未遂者・遺族に対するケアに関する提言をお願いしたいというお話 がありました。  まず、ガイドラインの議論に入る前に、この大綱について皆様方から何か御質問、御 意見がございましたら、よろしくお願いいたします。どうぞ。 ○清水(新)構成員 今の事務局の御説明、了解いたしました。ただ一つ、加えて、こ の検討会で議論の射程に含めるべきではないかなと思うのは、大綱の9の、民間団体と の連携を強化するという点です。もちろん事務局の今の御説明はこれを無視したわけで はないので、そういう意味では確認というくらいの意味なんですが、遺族の問題等に一 昨年あたりから急速にいろいろな取り組みが進みましたが、官よりも民の方がこの取り 組みが先行しておりましたよね。ですから、これを全体的に推進していくためには官民 の連携というのは重要な項目だと思うんです。ですから、7、8という2点を中心に御 説明いただいたような気もいたしますが、とりわけ9の(1)とか(4)は大きな検討 課題として射程に入れた議論、ガイドラインのつくりに資するべき項目かなと感じまし た。 ○上田座長 ありがとうございました。何かありますか。 ○名越課長補佐 清水構成員のおっしゃったとおりだと思います。今回、検討会のタイ トルとして、自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関する検討会ということで、議論の軸 としてこの2つが挙がるものでありますけれども、今後提言をいただくに当たりまして は、自殺大綱全般について関連項目を一つ一つチェックして、必要なところは書き加え ていくようにしたいと思います。 ○上田座長 ほかにございますか。どうぞ。 ○斎藤構成員 今の清水委員の御意見に補足する形で申し上げたいと思いますが、自死 遺族支援については既に随分実績があるということですね。前にメールで事務局には申 し上げたんですが、これはいろんな形のグループがあるかと思いますが、大別して、い わゆる治療的な自死遺族支援グループ、これはグループと言っていいかどうか、治療的 なミーティングというかグループというか。それからもう一つは、自助グループを立ち 上げるということです。これはどちらの場合も、そういう組織を構成するための基準づ くりを私ども民間の団体にまず委ねていただいて、立案してもらうというのが望ましい 形ではないかと思いますが。  河西先生のレジュメにもありますけども、ライフリンク、平山先生らの自死遺族ケア 団体全国ネット、あしなが育英会、西原さんの自殺防止センターでも、それこそ創立の 時代から自死遺族の支援ということをしていらっしゃるわけですよね。いのちの電話も 去年から全国で2つ立ち上げ、1つは準備中です。こういう組織に集まっていただいて マニュアルづくりをしていただきたい。  例えばどういう準備をすべきか。例えば臨床心理士、精神科のドクター、こういう人 たちには必ず加わっていただくとか、自助グループないしは治療的グループをつくるた めの大原則があると思いますから、この辺をぜひ御検討いただきたいと期待しておりま す。 ○上田座長 ありがとうございました。斎藤構成員、グループに対する支援について整 理をしていただいて、マニュアルづくりについては民間の皆様方に実績があるので、そ れを生かしていただきたいということですね。そうしますと、その大原則のマニュアル は、この検討会でまとめてほしいという御意見なのか、あるいは、自主的にそういうも のをつくられるのか、どのように考えたらよろしいでしょうか。 ○斎藤構成員 それぞれ独自に既に活動していらっしゃるわけですよね。ですから、ラ イフリンクの清水さんの意見からすれば、それは全部リンクして連携しなきゃいけない にもかかわらず、それぞれのグループが独自にやってるわけですね。独自にやられてる ことは結構なんですけどね、そこに一つの大原則があるべきだと私は思いますけども。 いいものをシェアしていくという作業が必要であろうかと思いますが。 ○上田座長 私の質問は、自主的にそれぞれの団体がつくられて取り組まれますが、基 本的なところを今回のガイドラインでつくった方がいいという御意見と理解していいの ですか。 ○斎藤構成員 私ども民間が合意したものを最終的にこの委員会に御報告申し上げて、 委員会はこれを各地におけるこの種の活動を拘束するものであってはいけないけども、 こういう構成が望ましいということを添えていただいて、あくまでも一つのモデルであ るということでいかがでしょうか。 ○上田座長 わかりました。どうもありがとうございました。 ○渡邉構成員 今の議論ですけど、私の理解では、この場では遺族・未遂者の支援、ど ういう内容の支援をするのかという大筋を議論するのではないかなと思います。その中 で、こういうような支援をするときにワーキンググループが必要になってくると思うん ですね。例えば全国に相談システムをつくるとか、そういうような場合に、相談のため の研修とか、そういうのにワーキンググループをつくっていただくとか、そういうふう なプロセスなのかなと思ったんですけど。 ○斎藤構成員 そういう認識で結構です。それと、そういうグループ以外に、具体的に 名前を申し上げると、ルーテル学院大学はもう10年前から、この種の治療的な目的を持 ったグループを何度も実施している実績があるんですね。いのちの電話の地方センター で、そこから派遣されたファシリテーターに委託をして自助グループをしたわけですけ ども、今のは千葉の組織なんですが、それぞれ実績のある方々ですけど、それぞれ認識 の違いがあるんですね。仙台の実施に関しては、清水康之さんのグループからちょっと 注意をされたり、千葉での試みに関しては平山先生のグループのスタッフから大変丁重 な問題の指摘をいただいたんです。ですから、組織や性格づけの上で、その辺をきちっ と検証していく必要があるだろうという理解を持っています。 ○上田座長 ありがとうございます。そのほかございますか。よろしいでしょうか。  そうしましたら、これから具体的にガイドラインについての議論を行いますので、自 殺総合対策大綱に対する質疑はここで閉じさせていただきます。  今日は自殺未遂者・遺族のケアに関する研究の進捗について、伊藤構成員に御説明し ていただき、自殺で遺された方への支援のためのガイドラインについて、川野構成員に 御説明していただき、最後に、自殺未遂者・自殺念慮を持つ人への援助のためのガイド ラインについて、横浜市立大学医学部精神医学教室の河西参考人に御出席いただいてお りますので、御説明をいただくこととしております。  まず初めに伊藤構成員、よろしくお願いいたします。 ○伊藤構成員 それでは御紹介いたします。資料3と4と続けて御説明させていただけ ればと思います。  私どもの研究班では、研修ツールの開発、情報提供の開発等、幾つか分担研究が走っ ておりますが、今回自殺総合対策大綱ができたということと、この検討会でガイドライ ンを作成していくということから、そこに焦点を当てて御説明申し上げたいと思います。  遺族等へのケアに関するガイドラインの開発については、この研究班全体のプロジェ クトリーダーである川野健治室長が進めています。川野室長は自殺予防総合対策センタ ーにおける自殺対策支援研究室で、特に遺族ケアに関する多くの蓄積を持っています。 また、自殺未遂者へのケアに関するガイドラインの開発のために、今年度から新たに横 浜市立大学の河西千秋先生に分担研究者になっていただき、御検討いただいております。 河西先生は、自殺対策のための戦略研究において、救急介入研究を中心的にお進めにな っていらっしゃいます。本日お二人から現在の経過を紹介していただき、構成員の皆様 の御意見をいただきながら、願わくば年末ごろには素案を御紹介できるように進めてま いる予定でございます。  それでは、まず川野室長から、自殺で遺された方への支援のためのガイドラインの検 討経過の紹介をお願いいたします。 ○川野構成員 かわりまして御説明申し上げます。資料4をごらんいただければと思い ます。自殺で遺された方への支援のためのガイドラインというタイトルでお手元にある かと思います。  ガイドラインということで、作成の目的をどこに置くかによってでき上がるものは多 様になるかと思いますけれども、今現在想定している枠組みを御説明申し上げて、御意 見をいただければと考えております。  今考えている枠組みといいますのは、まず一つは、自殺総合対策大綱の重点施策であ る、遺された人の苦痛を和らげるというところに挙げられている4点、つまり、自助グ ループの運営支援ということ、学校・職場での事後対応、緊急対応も含めたポストベン ションの問題、遺族のためのパンフレットというようなこと、最後に、遺児へのケア、 この4点が掲げられているわけですけれども、この4点に対応した、あるいは考慮に入 れたものができなければならないだろうということが一つです。  2つ目なんですけど、ここのところがどう考えていくかですけれども、私どもとして は、地域での遺族支援活動の指針となるものという位置づけにしたいと考えております。 その意味は、先ほど斎藤構成員からもお話がありましたように、民間団体もさまざまに 遺族支援にかかわっていますし、遺族支援にかかわる社会資源、職あるいは立場という のは多様にあるかと思いますけれども、そのすべてに向けた百科事典のようなものをつ くってしまうというのではなく、ここではまず、地域で遺族支援活動をする、そこへ向 けたガイドラインであるという位置づけの仕方ではどうかという案でございます。  もちろん、そこでは民間団体等の取り組みを生かすということが当然盛り込まれなけ ればいけないと考えております。  そして4つ目ですけれども、当事者の声を反映する。ここで当事者と書きましたのは 御遺族ということですけれども、我々だけが、あるいは専門家と称する人だけがつくる のではなくて、当事者の声、考え方というものがそこに何らかの形で反映される。  この4点を考慮しながらガイドラインを作成していくという方向性を提案したいと考 えております。  めくっていただきますと、誰のためのガイドラインかということで、地域で遺族支援 を担う者に向けてという文章にしてございます。具体的に言うと、1.精神保健福祉行 政担当者、2.地域の支援担当者、3.自殺対策連絡協議会のメンバーということで、 地域で遺族支援活動が進んでいくための中核に向けて、それはこの3つの立場と考えて、 ここへ向けたガイドラインということが御提案でございます。  ただ、自殺対策連絡協議会のメンバーというところには、各地域によって構成員は違 うかと思いますけれども、医療関係者、福祉関係者、あるいは心理職、教育、法律、民 間団体、警察や消防、宗教、さまざまな立場の方がかかわっていらっしゃるかと思いま すけれども、この中核の方たちが、これらのメンバーの方たちとうまく連携をとってい ただくために、どういう連携があるのか、どういう方向性があるのかということを謳う ガイドラインと考えております。  具体的には、多様な支援を生む連携ということで、多様な資源と連携するんだという ことが伝わることが重要ではないかと考えております。そこには、まず地域での専門的 な支援を担う者との連携ということで、精神医療関係者、プライマリーケア、心理職、 ソーシャルワーカー、その他たくさんあるかと思います。あるいは、ポストベンション のための緊急対応チームをつくっていらっしゃる地域もあるかと思います。例えば遺児 の場合には教育の問題があります。過労死の場合には法律の問題もあります。その他ま だここに挙げられてないものもあるかと思いますけれども、そういう多様な資源との連 携の中で支援というものが成立していくんだという方向性。  さらに、そういう専門的な支援に限らず、地域での生活支援、生活場面で接するさま ざまな方に向けても連携という考え方、協力し合うという考え方があってもよいのでは ないかということで、大綱にもありますけれども、警察・消防職員の皆さん、あるいは 宗教、あるいは民生委員等、官民さまざまな立場で接する方たちがいるかと思いますけ れども、そこへの視点。そして、民間団体との連携という形で、多様な連携の中で多様 な支援を生み出していく。その指針になるものという考え方でございます。  具体的にガイドラインの章立てという形で挙げました。ガイドラインのイメージにも よるかと思いますけれども、今の段階ではこれだけ考えるべきだという提案でもありな がら、しかし、これをそれぞれ細かく書き込んでしまうということではなくて、これら が相互に有機的に関連しながら支援というものが成り立っていくべきではないかという 形で、それぞれをきちんと漏れなく挙げていくということが大事なのかなと考えており ます。  読み上げさせていただきますと、1として、自殺の現状、自殺対策、遺族支援の経緯 が謳われていること。2つ目には、遺された者の受ける影響と支援の必要性ということ で、通常の悲嘆過程、いわゆる疾患と呼ばれるようなレベルの問題、社会生活上の経済・ 法律・教育、あるいは偏見等の問題、連鎖自殺と緊急対応の問題(職場・学校・地域で のポストベンション)、連鎖自殺の問題でいえば、メディアとの関係ということもあるの かもしれませんが。そして5つ目には、二次被害という項目を挙げてみました。  3番目に、実際の支援ということで、それぞれのかかわる方たちというのは多様にあ るわけですけれども、それを一つ一つについて書き込んでいくというよりは、できるだ け広くカバーしていくという考え方ですけれども、その連携の意義、重要性ということ をまずきちんと謳っていくということが最も大切なことになるかと考えております。地 域での連携ということで、情報提供、理解・連携の促進。(2)で、専門的な支援という ことで、医療・ソーシャルワーク・心理・法律・教育・緊急対応といったさまざまな点 があるということ。それから、通常悲嘆過程と呼ばれる専門的あるいは治療的な支援が 必要なのではないけれども、今の社会状況の中である種の支援が必要であるという方た ちに向けての問題もあります。自助グループのこと、遺族と接する職業としての警察、 消防、教師、宗教家。(c)のところでは、むしろ一般市民の隣にも御遺族がいらっしゃ るという意味で、身近な自死遺族を支えるという項目を一つ加えました。  この後の例に関しては、これから皆様と相談しながら加えていきたいと思っておりま すけれども、4の地域での取り組み例として、自死遺族支援が各地でどのように展開し ているのかということを挙げられればと思っております。  5の情報提供・研修というところでも、自殺予防総合対策センターと書きましたが、 それ以外にもさまざまな資源があると思います。民間団体のところでは、ライフリンク、 自死遺族ケア団体全国ネット、あしなが育英会と書かせていただきましたが、いのちの 電話、自殺防止センター、その他たくさんの団体があるだろうと思います。  ただ、ここでどこまでのことを書き込んでいくのかという問題については、ガイドラ インがどこまでを担って、報告書がどこまでを担ってという問題とは少し別になります けれども、このガイドラインの案としては、地域で自殺問題に中核的に取り組んでいる 人たちが知っておくべき情報として、ここにはできる限り挙げておくべきだろうと考え ております。  6番目に、大綱にもありましたように、研究の必要性ということで、いかに実態を把 握していくのかというようなことが必要であるということを挙げて、ガイドラインの章 立てとしてはどうかというのが御提案でございます。  今後の作業予定を最後につけておきました。一つは、既存のマニュアルと書きました けれども、マニュアルになっていなくても、さまざまな意味で既存の知識、知恵、How to があるかと思いますけれども、それとの比較検討、協力ということが不可欠だろうと思 います。前回までの検討会の中で、ライフリンクさんの方でマニュアルをつくっていら っしゃるというお話を伺っております。あるいはWHOでも、本日参考資料として配付 されているもの以外に、遺族支援グループの立ち上げのためのマニュアルというものも 出ておりますけれども、そういうことも含めて、できるだけ既にある知識、先行してい る知見を生かしながらまとめていければと考えております。今後さまざまな関係諸氏の 方と御相談できればと考えております。  遺族支援関係者へのヒアリングを進めると書きました。民間団体、警察、消防、宗教 等ということで、既にお話を伺ったところもありますし、これからお願いするところも ありますけれども、できるだけこの案の中では広く情報を集める中で、バランスのいい ものができればということでございます。  3点目に、自死遺族の支援ニーズについて調査を検討と書いてございます。これはま だ計画中でございますので、どういう形になるのかということも含めて研究班の方で整 理しているところでございますけれども、目的に掲げましたように、当事者の声、当事 者のお気持ちということをできるだけ反映させたものにしたいと考えております。  有識者検討会、研究班、こちらの検討会も含めたディスカッションを経て、改めて御 提案できればというのが現在の状況でございます。  以上です。 ○上田座長 ありがとうございました。ただいまの伊藤構成員、川野構成員からの御説 明に対して、皆様方の御質問、御意見を承りたいと思います。いかがでしょうか。どう ぞ。 ○渡邉構成員 このガイドラインというのが、絵にかいたもちというか、今ある既存の 支援組織・活動がただ記載されているだけでは物足りないと思うんですね。そうじゃな くて、多様なリソース、資源とおっしゃっていますけど、それぞれの資源がどのように 動いたらいいのかということが明らかになってくるような内容になってほしいなと思っ ています。例えば警察ということが出てますけれども、青森などでも、保健師さんが非 常に困るのは、御遺族にどうアプローチしたらいいのか、アクセスの問題なんですね。 ところがそれがなかなかできにくい。御遺族の方も、自分のことはほっといてほしいと か、今は何も話したくないとか、そういう気持ちもあったりして、どうかかわりを持っ たらいいのかと非常に悩むわけです。そういうときに例えば警察が、最初は事情聴取を するわけですけれども、そのときに、四十九日を過ぎたころに御遺族を保健師が訪問し ますのでよろしくお願いしますとか、一言言ってもらえるとすごくスムーズにアクセス できるんじゃないかとか、それぞれの資源の役割とフォローの流れがイメージできるよ うなガイドラインになってほしいなと思っています。 ○上田座長 いかがでしょうか。どうぞ。 ○平山構成員 細かいことですが、ガイドラインの章立てで、自死遺族の精神疾患とい うことが書いてございますけれども、身体疾患に影響を及ぼすような場合も悲嘆との関 連でありますので、そういう問題も加えておく必要があるのではないかということと、 本人の性格的問題というのがかなり大きい場合もあります。  それから、緊急対応の場合に、家族というのは入れなくていいのか。職場・学校・地 域、それから家族指導といいますか、そういうことはどうなのかということをちょっと 感じました。  それから、3の(2)の法律のことですけれども、盛んに多重債務のことが言われて いますが、臨床でしていますと、遺産相続などがこじれて、その後でそれが非常に大き な重荷になって、それがうつ病などを遷延化させているということがあります。ですか ら、むしろそういうようなことも相談できるツールといいますか、どういうふうにフォ ローできるかというところも御検討いただきたいと思います。 ○上田座長 ありがとうございます。伊藤構成員、川野構成員から、ガイドラインに関 して研究での取り組みについて説明がありました。、一般には研究班の取り組みは研究報 告書の提出となりますが、今回は、この検討会で並行的に取り組んでいくことになりま す。平山構成員、渡邉構成員から御指摘、御意見がございましたが、皆様方からの御意 見を研究班においてさらに検討していただいて、その報告をこの検討会に提出していた だいて作業を進めていくということでよろしいですね。そうしますと、スケジュール的 にどのように考えられているか、進め方を少し教えてください。そして、できるだけ効 果的に意見交換をしたいと思います。 ○伊藤構成員 わかりました。座長から御指摘いただいた点を我々も認識しております。 本日お示ししましたガイドラインの章立ては、まだフレキシブルなものだと考えていま す。遺族ケアと未遂者ケアのガイドラインの骨子を御紹介して、本日先生方に御意見を お伺いさせていただきます。また今後も随時お教えいただき、先生方に御意見をお伺い しながら、12月ごろに次回の検討会が開催されると伺っておりますので、その時に改め てお示しできればと思っております。そういう意味では、大事なスライドは、川野構成 員の資料の3枚目の上のガイドラインの章立てに関して、また、河西先生については2 ページの下のガイドラインのイメージです。これらについて御意見をお伺いできると大 変ありがたいと考えております。 ○上田座長 ありがとうございました。そうしますと、できるだけ今日いろいろ御意見 をいただき、また、12月のまとめまでに何らかの形で御意見をいただきながら、皆様方 の御意見をできるだけ反映するように、進めていきたいと思います。今お二人の方から 御質問、御指摘がございました。ほかの構成員の方からも、どうぞお願いいたします。 ○清水(新)構成員 ガイドラインを作成するというのは、この検討会の中核的な作業 課題なんだと思います。ただ、今日の検討会でこのガイドライン案が出されて、これに ついて意見を交換する、これは今日のアジェンダということなんでしょうが、検討会全 体のアジェンダとして考えますと、これが中核的な作業課題ではあるけれども、ガイド ラインをつくるだけがこの検討会の目的ではないですね、きっと。それが中核でベース なんだけども。そういう意味でいいますと、ガイドラインでさまざまなことが議論され るほかに、我が国における自死遺族の支援とか、自殺企図者や本人・家族への支援には どういう課題があるか、もう少し広い課題をこの検討会としてどう考えていき、どうい う示唆なり提案をしていくのか、その辺も一つあろうかと思うんですね。ですから、12 月の検討会のまとめに向けてという場合に、ガイドラインの検討プラス、今言ったもう 少し広い課題についてもこの検討会で何らかの成果を得るべきかと思いますので、今日 の検討会とこのガイドラインの位置づけをちょっと確認させていただきたく発言いたし ました。 ○上田座長 ありがとうございました。大変貴重な御意見をいただきました。清水構成 員の御意見は、このガイドラインについての質疑とあわせて、もう一つ、自死遺族に対 する支援の基本的な議論も行いながら進めていくということですが、私もそのとおりだ と思っております。  自殺対策について、これまで3回、ヒアリングなど議論を行ってきました。大綱につ いての提案をしようということで、第3回の検討会議の後にも皆様方に御意見をいただ きながら提案をまとめていただいて、大綱につながったわけです。清水構成員のお話は、 全体の自殺対策の中で遺族に対する対策をどう考えるのか、そしてその中でガイドライ ンをどう作成するかという御指摘だと思いますが、全体的な進め方について何か御意見 がございますでしょうか。あるいは事務局で、進め方について何かございますか。 ○名越課長補佐 当初、検討会発足の段階で、この検討会の成果物としては、自殺未遂 者・自殺者親族等のケアに関する今後の施策並びに関係者の連携等についての提言をい ただくということで、その大きな要素としてのガイドラインというものが含まれると思 いますけれども、そのガイドラインを包含する形での取りまとめ作業が必要と思われま すので、清水構成員がおっしゃったような、ガイドラインそのものとは別の部分の御議 論もいただくことになるのかなと思っております。 ○上田座長 今日はガイドラインについての質疑を予定していたんですが、全体的なと ころは例えば次回だとか、あるいはこの議論の中で並行的に議論しながら、いずれにし ても、整理する中でガイドラインの各論をしていきましょうということで、とりあえず 今日はガイドラインを中心にお話しするということにしましょうか。いいですかね。わ かりました。  そうしましたら、全体的なあり方については次回きちんと議論していくことにします。 また、今日の各論の中で全体的な話がありましたら、あわせて触れていただくというこ とで進めます。伊藤構成員、川野構成員に対して、ほかの方から御質問ございますでし ょうか。  川野構成員、今までの御質問に対して何かありましたら。 ○川野構成員 ありがとうございます。まず最後の点、清水構成員から御意見をいただ きましたことも当方としてはすごくありがたく思っております。つまり、ガイドライン は一つのツールですので、全体の中のどこに位置づけるのかということも含めて、最終 的にいいところに落ち着けばよいと思っております。ガイドラインにすべてのことを書 き込んで百科事典のようなものをつくってしまっても、だれも読んでくれないのは明ら かですので。その意味で、渡邉構成員に御指摘いただいたように、ただ単に事実を書く のではなく、どう使うのかということももう一段階考えてみたときに、こういう事態で こういうふうに使っていくんだというところがわかるガイドラインになるというのは、 貴重な御意見をいただいたかなと考えております。ぜひそういう具体的な使えるもの、 どう使うのかということを考えたガイドラインにしていくことが望ましいのだと理解し ております。  それから、平山構成員に御指摘いただきましたように、専門的な知識、あるいは法律 のところであれば、より具体的な問題状況ということがあるわけですから、こういうこ とに関しては私どもが短慮で書いてしまうのではなくて、専門の先生方に、例えば遺族 の身体疾患に及ぼす影響等についてはぜひ平山構成員に御意見をいただいて、御専門の 方たちの知識を生かしながら組み立てていければなと考えております。御意見大変あり がたく思っております。 ○上田座長 どうぞ、平山構成員。 ○平山構成員 もう一つ指摘したいんですが、3番目の支援の実際で、「してはいけな いこと」というふうに書いてございますが、守秘義務の問題ですとか、それにまつわる 倫理的な問題というのが必ず、特に遺族の場合は重要な意味を占めていると思うんです ね。この御指摘はそのとおりですが、この(1)、(2)、(3)の項目の中でそれはどう いうふうに位置づけられるのか、どこでそういう問題が挿入されるのかということをお 聞きしたいんですが。 ○川野構成員 そこのところは実は十分に詰めておりませんで、御指摘いただいたよう に、倫理的問題等という章を一つ立ててまとめて書くという考え方一つあるかと思いま す。ここでのお示しの仕方は、例えば専門的な支援というふうに少し具体化した中でど ういうことが望まれているのか、どういうことが望まれていないのかという、WHOの マニュアルが多少そのようなところがあるかと思いますけれども、例えばプライマリー ケアのところにある状況の方がいらっしゃったときに、こういう声かけをするときには この条件を考えてください、関係性ができる前から死の問題を簡単に取り上げていいか どうかというような、ごく具体的なこともありますので、ある具体のレベルでした方が よいことと、いけないことというふうな書き方をする方法もあるのかなというくらいで、 ここではこの書き方をしましたけれども、そうではなくて、一つ章を立ててきちんと書 き込むという考え方もあるかと思います。ここのところは曖昧なままで御提案しており ますので、もし御意見をいただければありがたく思っております。 ○上田座長 平山構成員、よろしいですか。 ○平山構成員 言ってもらいたくないような自死の場合のいろんな場合が、特に自助グ ループなんかの場合出てくるわけですね。それをどこで誰がどういうふうに担保するか という問題はかなり重要な意味があると思うんです。そういうことを法律の専門家の先 生にお聞きして、きちっとガイドラインを書いておく場合は記しておく必要があるんじ ゃないかということと、もう一つは、自助グループの場合のリーダーの資質といいます か、いろんな人が来るわけで、いろんな人が対応するわけで、いのちの電話の斎藤先生 なんかは物すごい厳しい審査をなさって、しかも研修を重ねていらっしゃるということ をお聞きしておりますが、対応する人の倫理的な問題を含めた資質の問題というのを考 えておく必要があるんじゃないかと思います。 ○清水(新)構成員 一つよろしいですか。今の平山先生のお話ですけれども、自死遺 族支援のとても大きな問題を御指摘されたと思うんですね。倫理的な問題。これは絶対 見逃せない、ある意味では自死遺族支援の問題を考える場合の中核的論点の性質を持っ ていると思います。ただ、平山先生がおっしゃったのは、このガイドラインというのは ターゲットをはっきりさせましたね。3つのコアを持っているんだという。そういうと ころからすると、少し議論の対象が違うのかなと感じました。もう少し広い、例えば民 間団体での相談員であるとか、ファシリテーターの資質とかいう問題、そこの場で議論 されるべき、決して見過ごされてはいけない論点のような気がいたしました。ですから、 今回のこのガイドラインに関していえば、今のような議論を無視したり看過してしまう という意味ではなくて、もう一つ別の土俵で議論していく課題かなというふうに思いま した。  ついでにもう一つだけ発言させていただきますと、今度のガイドライン、私個人とし ては大変よくできてるなと思いました。ターゲットがはっきりしているということ、こ れはすごく大事だと思うんですね。よくマニュアルとかありますが、誰を対象にしてい るかよくわからない。結果的に、一生懸命つくってもそれが有効に活用されないという ことがこれまでしばしばあったような気がいたします。そういう意味で、ターゲットを きちっと絞ったのはとても好感を持ちました。  さらに別な点でも好感を持ったことがあります。精神保健福祉相談なんかで自死遺族 の支援をやるときに、スタッフたちは一歩踏み出さなきゃいけないのはわかってるんで すが、二次被害のことなんかを含めて微妙に揺れ動くんですね。一歩進まなきゃいけな いんだけど、その一歩がなかなか踏み出せないということを、随分といろんな関係機関 とか厚生科学の研究で出かけたときに聞かされました。そういう意味で、一から石を積 み上げて一つのケルンみたいな山をつくるんじゃなくて、既に私たちはある程度ノウハ ウを持ってるんだと。その上に自死遺族支援というある種特殊な課題、既存の知識・ノ ウハウをどうやって生かしていくかという発想でいくと、割と入っていきやすいなと私 個人は感じたんですね。このガイドライン案では既存の資源を比較的網羅していて、既 存の資源をもっと使っていこうじゃないかという一つのメッセージ性を感じるんですね。 その点でも非常にいいかなという印象を持ちました。  そういう意味で、どうでしょうか、ガイドラインの章立てのことですが、割と具体的 でいいわけですが、そういうメッセージ性を出す、「はじめに」というんですか、精神じ ゃないけども、そういうものがどこかにあってもいいかなと思うんですね。これまで、 やらなきゃと思いながらどうも一歩踏み出せなかった人たちに、出てみようという元気 というか、勇気というか、無謀な一歩は戒めなきゃいかんですが、せっかくこうしたガ イドラインが出てきて、これを活用してもう一歩踏み出してみよう、その場合に、私た ちはゼロから出発するのではなくて、既に持っているものもあるんだ、それをうまく活 用しながら、そして新規の資源をそれに組み合わせつつやっていこうというようなメッ セージ性がどこかに欲しいなという感じがしました。「はじめに」であれ、「おわりに」 であれ、何かこのガイドラインを編集したときの編者の立場から、この点について強い メッセージを出していただければいいのかなという気がいたしました。  それともう一つ別のことを言って申しわけありませんが、ガイドラインとマニュアル ってそもそもどう違うのかなという感じもいたしました。マニュアルづくりを何回か見 てきたし、私もかかわらせていただきましたけど、マニュアルの功罪ってあるような気 がしますね。マニュアルをつくったはいいんだけども、そのマニュアルがあるのにどう して予防できなかったという事態になったときに、このマニュアルがとげになってくる ようなことがあると思うんですよ。  ですから、マニュアルをつくればいいというものじゃなくて、この手の問題は自責感 というんでしょうか、当事者もそうですが、それを防げなかった周囲のサポーターある いは専門家の人たちも自責感とすごく格闘してますよね。その自責感を持たないような 形のマニュアルってできないものかなと常々考えているんです。難しいところではある んですがね。だけど、今のマニュアルって、こうすればある程度いけますよという内容 で、それがうまくいかないと、マニュアルができてるのになぜできなかったんだろうか、 なぜ予防できなかったんだろうかということになりかねない。そういうトゲを抜いたよ うなマニュアルができないものかなと思ったりもしてまいりました。  そのときに、マニュアルというのはHow toですよね。こうしたらいいと。ガイドライ ンというのは、How toとはちょっと違うのかなという気がしました。そういう意味で、 先ほど言ったある種のメッセージ性の部分もあってもいいのかなと思ったりもしたんで すが、多少別々の論点をいきなり全部まとめて話してしまいましたが、そんな印象を持 ちました。 ○川野構成員 ありがとうございます。メッセージ性ということをどう打ち出していく のかということについてはぜひ考えてみたいと思いますし、先生方からいろいろ御意見 をいただければありがたいと思っております。スタッフの自責感を生まないマニュアル はとても理想的だと思いますし、どう実現させるのかという点はなかなか困難かとは思 いますけども、ぜひ考慮したいと受けとめました。ありがとうございます。 ○上田座長 先ほどの平山構成員の倫理の問題、非常に大事だというお話がございまし た。きちんと全体のところで議論して整理しましょうという御提案かと思いますので、 その形で引き続き議論していただくということでよろしいでしょうか。どうぞ。 ○西田構成員 ライフリンクの清水さんが今日まだ来てないんですけども、今まで経験 したものを少しまとめて持ってくるというようなことも言っていたので、それを期待し てちょっとやきもきしてるところがあるんですけど、第2回検討会の資料の中で、なか なか出てこられない個人に対する支援というのが一つありましたね。分かち合いのグル ープに対する支援。社会全体としてどんなふうにつながりをつくっていったらいいんだ ろうかという提案があったので、そういうところも盛り込んでいかないといけないんだ ろうなと。違う切り口でそういうものを出していくというのも必要だろうなと思います。  あと、ガイドラインあるいはマニュアルができたときに、それをどう使うんだという 意味での研修会が多分必要になるだろうなと。渡して終わりというよりは、それをどう 使ってやるんだという、1日なり2日なりの研修をどうやるかということが大事になる んじゃないかなと思うんですね。どう理解するかというのと、グループワークをやりな がら深めていくということもないといけないなと思いますし、実際に分かち合いの場と いうのをやってるときに、重い気持ちになりながらも、それを越えて実際にそういう場 をやってらっしゃる方たちがいらっしゃるわけですよね。その方たちがどういう実感を 持って、どういう痛みを持ちながら継続されていて、現場でどういう問題や課題を抱え ながら持続的にそれをやってらっしゃるか、その苦労話を取り入れていかないと、例え ば分かち合いの場をやるときにも、その大変さの実感、何とか力になれたときの喜びと いうんでしょうか、そういうものが伝わっていかないと難しいのかなとは思いますね。  ですから、言いたいのは、ガイドラインをつくる、マニュアル的なものをつくるとい うのは当然だと思いますが、それを実際に担い手になる人に、大変さも、力になれたと きの気持ちも含めて、実感できるような研修会というものをどうつくっていくのかとい うのも一つ課題になると思います。 ○上田座長 ありがとうございました。どうぞ。 ○斎藤構成員 先ほども申し上げたんですが、あしなが育英会の自死遺児支援というの は非常に先駆的な試みだと思いますけれども、現状ではライフリンク、あしなが育英会、 自殺予防センター、平山先生らの自死遺族ケア団体全国ネット、いのちの電話、それぞ れ独自にやってるんですよね。少しも方法論をめぐって話し合ったり、情報交換した経 緯もないわけで、ある意味で自分たちの縄張りをつくっているような印象を僕は受ける んですけど、ですから、一度何らかの機会に集まって、少なくとも情報を共有する。そ の上で何らかのマニュアルを立ち上げることが必要じゃないかなと私は思いますけど、 いかがでしょうか。 ○西田構成員 一つの提案として、今言ったとおりに少しまとめたんですね。それを持 ってきて今日皆さんにお渡しできればと思ってたんですけど、まだ来ないものですから やきもきしてるというのが正直なところですけど。 ○平田構成員 遅れてすいませんでした。途中から参入したので最初の方の流れが見え ないところがあるんですけど、このガイドラインをどのように活用するかということが 大事だと思うんですね。どういうフィールドで使うかということをイメージしてみたん ですけど、職場であれ、学校であれ、医療機関であれ、物すごい茫漠としてますよね。 非常に広い範囲をカバーしなきゃいけないと。私は職業柄、まずは精神科の医師の中に 自死問題のスペクトラムを系統的に情報伝達する、最新情報を常に更新していくという 研修の場が必要かなと思いました。  私は千葉では精神科の救急を専門にやってたんですけど、静岡では主にメンタルヘル ス的なことが自死とのかかわりになっているわけですけど、例えば県職員の精神保健相 談であるとか、警察職員のメンタルヘルスの相談、私はやっておりませんけど当院の医 師は教職員のメンタルヘルスの相談に乗る、あるいは学校保健の相談に乗っているとい うふうに、非常に幅広いフィールドでメンタルヘルスの嘱託に携わってるんですね。そ ういう医者はかなりたくさんいるのではないかと思います。ですから、産業医も含めた メンタルヘルス相談に乗っている精神科の医師のための研修システムがぜひ必要ではな いかと思います。  あとは、医師会を通じて精神科クリニックの先生方への情報提供及び研修の場もどう しても必要ではないかと思います。精神科の医師というのは案外、精神疾患の専門家で あるわけですけれども、自死問題というのはもっと医療を越えた広い分野をカバーしな くては解決できない問題ですし、御遺族のケアの実態などはほとんど情報を持ってない 人の方が多いですね。ですから、広いフィールドをカバーするような情報提供と、情報 の更新のための研修システムをぜひ構築していただきたい。そういうところにも役立て るようなガイドラインというものをつくっていただきたいと思います。 ○上田座長 ありがとうございました。どう活用するかとか、研修の問題などの御指摘 もございました。ほかにございますでしょうか。  そうしましたら、次のガイドラインとも関連があると思いますので、時間がありまし たら全体的に御質疑をいただきます。次に河西参考人から、次の自殺未遂者・自殺念慮 を持つ人への援助のためのガイドラインについてお話をお願いしたいと思います。 ○河西参考人 横浜市立大学の河西です。私は精神科の医者です。私の立場を簡単に説 明させていただくのがよろしいかと思いますが、横浜市立大学の精神医学教室では、自 殺予防研究・活動チームがございまして、主に救命救急センターにおける未遂者ケアを 中心として、救命センター、精神医学教室、医学部を拠点にして包括的な自殺予防活動 をやってまいりました。私はそのチームのマネジメントをしています。今回、伊藤先生 が主任をされております自殺未遂者・自死遺族のケアに関する研究班で、自殺未遂者ケ アについて主に分担しておりますので、その関係でこうして今日ここでお話しさせてい ただくことになりました。  早速ですが、PowerPointの資料をご覧ください。まず「ガイドライン作成の目的」の スライドです。自殺対策基本法と大綱ができ、自殺対策のバックボーンとアウトライン は整ったと思うのですが、しかし、具体的なプランとなるとまだまだこれからの問題で、 また、それができた後の運用の問題もありますので、自殺対策は実際にはまだ入り口に 立ったばっかりだと思います。現時点では、未遂者対策に関して我が国のスタンダード となるガイドラインやマニュアル、指針もありません。  次に、「ガイドライン...その前に」というスライドです。自殺は複雑事象であります から、ひとつの原因に絞ることや、ひとつの対策で済むというものではなく、自殺の危 険因子となるような社会的要因ないしは環境的、医学的な問題、職域、学校、その他さ まざまな領域の調整なくして自殺予防は達成できません。自殺企図者や自殺関連行動行 為への誤解や偏見というものもまだまだ大きなものがあります。私どものいろいろな活 動の中で、例えば日本の自殺問題に関する知識や自殺企図者への意識に関するアンケー トをやりましたところ、医学部の学生、看護学生、看護師、そして精神保健福祉士とい ったいろんな方々の自殺問題・自殺企図者に関するというものは知識というものは意外 に低いことが分かりました。医療に関わるものでもそういうことがありますので、例え ばマニュアルとかガイドラインをつくる際はより具体的にということもあるのですが、 まだまだ社会啓発とか教育の必要性というのがかなり大きいと思われます。この検討会 の構成員の先生方は非常に自殺問題に専門家で詳しいわけですが、社会全般は皆さんの レベルまでは全く追いついていません。ここがいつも難しいところなのですが、こうい う重要文書をつくるときに、啓発を優先させるのか、あるいは実務的なものをつくるの かというのは非常に悩ましいところであります。しかし、それでも第一歩としてのガイ ドラインは必要だと思っていまして、なぜなら、この瞬間にも1日90人くらいの方が亡 くなっていますし、その背景にはたくさん未遂者がいらっしゃるということがあります し、そういう方に対応する人たちも何をしていいかわからないというところが現実だと 思いますので、何かしらのものは必要だとは思っています。  そこで次のスライドの、ガイドラインのイメージなのですが、とりあえずこういう形 で組んでみました。「はじめに」というところでもって、この手引書が何で必要かという その意義とか精神というものを書き込む予定です。第2項として、自殺と自殺念慮、自 殺未遂は一連のものであること、ひとつのスペクトラムであることを述べさせていただ いて、第3項で、自殺企図者の実態ということで、自殺企図者の心理、自殺行動に関係 する危険因子、自殺と疾病の問題、医療の問題、各世代や性別ごとの特徴や、さまざま な組織・集団における問題というのを述べてみようと思っています。ここまでが、比較 的、啓発に寄った部分なのですが、第4項以降で多少なりとも具体的なところを盛り込 もうと思っていまして、自殺の危険性のある方の同定とか、評価法とか、対応の基本と か、自殺企図者をケアと資源につなげるというところで、社会資源へのつなげ方とか、 救急医療施設での対応ということを入れて、また、not to doとかto doとか、より具 体的なところを記載していきたいと思っています。  このように、まずは多少啓発に寄ったかたちで指針となるようなものをつくるという のが目標になっています。各論とか具体的なものは、ある地域とか、さまざまの組織と か、専門領域の実状に合わせて、さまざまな人がこのガイドラインをもとにしてさらに つくり込んでいくというのが私は一番よいのではないかと思っていまして、例えばこう いう検討会とか、あるいは私や伊藤先生の研究班でもって何でもかんでも作ってしまう のではなくて、冒頭に斎藤構成員がおっしゃったように、専門領域の方々が集まってい ただいたり、このような委員会の諮問として別のものをつくられてもいいと思います。 そのように、現場で実際にやってらっしゃる方が集まって、より具体的な部分に関して、 発展的なガイドラインをつくったり、マニュアルをつくったりということが私は望まし いんだと思っていますし、結局そういったことが自殺予防活動の裾野を広げるし、みん なが関わっていくという雰囲気にもっていくためにはよいのではないかと個人的には思 っています。  最後に今後の作業予定ですが、こういうものをつくるのは初めてですから、既存のマ ニュアルの調査と検討というのは必要だと思っています。今回、WHOのマニュアルを 添付させていただきました。資料5−2になっています。これはWHOの自殺予防に関 するホームページに載っている手引書で、全部で8種類あります。私どものところでW HOに連絡をし、翻訳権を得まして、8資料のうち3つまで刊行しています。残りも含 めて、10月までには全部でき上がると思いますが、その一部を持ってまいりました。こ の資料5−2が今回予定しているガイドラインに一番近いものだと思いまうす。これは プライマリーヘルスケア従事者のための手引で、一見教科書的という感じもするのです が、読んでみますと非常に内容はよいし、これはこれで実践的なマニュアルになってい ると思います。  もう一つお付けした資料なんですけれども、これは病院内における自殺予防というこ とで、財団法人日本医療機能評価機構の中にある認定病院患者安全推進協議会の下部の 検討会の委員をさせていただいていたのですが、アメリカの資料などを見ますと、病院 内の自殺事故はとても多いし、日本でもおそらくそのようなことが少なからず生じてい ると思うのですが、日本では総合病院でそれに関する調査がされていなかったものです から、調査をさせていただきました。その結果、予想どおりといいますか、かなりの自 殺が生じていることがわかったので、調査を踏まえた形で提言というのをつくりました。 前半は自殺に対する知識と啓発的なことがかなり書いてあります。最後の部分に、自殺 のリスク・アセスメントのためのチェックリストというのをつくったのですが、これは 具体的に使えるものではないかなと思います。  もう一つ、後から追加で配付させていただいたのは、これもWHOの自殺予防の手引 で、教師と学校関係者のための手引です。先ほどの議論に戻りますと、学校関係は学校 関係に取り組んでいる方が中心になってつくれば、同じような、あるいはこれ以上のも のがつくれるのではないかと思っていますし、ここで全部つくるのではなくて、なるべ くそういうふうにさまざまな領域にこういった作成する過程を広げていくということが よいのであって、この検討会の構成員方々の力でもってそういう形に世の中を動かして いかれたら素晴らしいのではないかなと思っております。  以上で私の説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。 ○上田座長 ありがとうございました。 ○斎藤構成員 質問をさせていただきます。2002年に最初に招集された、自殺対策有識 者懇談会がありましたね。その構成メンバーに日本医大の黒沢教授が加わっていらした んですが、黒沢教授は日本医大の救急救命センターの教授でいらしたんですね。自死遺 族と接触をするわけですけれども、そこできちっと自死遺族へのケアをすると後々まで 信頼関係の中でコミュニケーションができるという話をされていまして、どこの救急医 療センターでも非常に大切な、つまり黒沢教授は御自分の遺族対応の何らかのマニュア ルをお持ちでいらしたと思うんですけれども、その後、東京医大で、平山先生は覚えて いらっしゃるでしょうか、東京医大の救急救命センターの教授にいらしていただいて、 自殺問題について発題していただいたことがあったんですが、そのとき、自死遺族のた めのケアのグループをつくったとおっしゃいまして、ところがその後聞いてみますと、 必ずしも機能してないということなんですが、そういう新しい試みがあるんですね。  ですから、救急医療の現場はまさに、精神科のドクターを初め、専門家と自死遺族の 出会いの場というか、そこでのマニュアルというものは一般の地域社会にとっても大事 な資源だと思うんですが、この辺はぜひ救急医療の視点で、それは医師だけではなくて、 さっきおっしゃったように看護師であるとか、それ以前に消防士、警察官とか、自殺発 生直後の専門家へのマニュアルは非常に重要だと思います。米国では既に警察官のため、 看護師のため、そういうマニュアルがきちっとなされ、そういう研修まであるわけです。 その辺いかがでしょうか。 ○河西参考人 自死遺族のマニュアルに関しましては川野先生の部分で取り入れてい ただいたらいいと思うのですが、私たちのところも、救命センターで亡くなられてしま った方に対してはご遺族にリーフレットをお渡してケアの申し出をしております。しか し、配付しているリーフレットの数に比して、いただく電話はかなり少ないというのが 実状です。電話をかけられない方に対してどのようにしたらよいかということがありま して、最近、こちらからアウトリーチをかけるということも検討しているのですが、そ ういう難しさは非常に感じています。ただ、先生がおっしゃるように、救命センターが 自殺未遂者に対する対応とかケアの一つの窓口として重要なことは実感しておりますし、 同じように自死遺族の方のためにも一つの窓口として必要ではないかということも強く 感じております。ので、私と川野先生、伊藤先生の研究班の中ではいつも同じ議論をし ていますので、どちらにどういうものを書くかというのはお互いに連携しながらできる と思いますので、それは考えてまいりたいと思っております。  それから、医療の視点をぜひというのは非常にありがたいお話で、私たちも医療の現 場でできることはかなりあるなということを、この5年、6年で実感していて、実際の 活動を広げてまいったわけで、そういったことはできれば盛り込んでいきたいと思って います。ただ、一方では自殺対策は医療だけじゃないという御批判もありますので、そ の辺のバランスをきちんととらなければいけないのかなというのもあります。  あと、先ほど、実はガイドライン作成の最後の部分をまだ説明していなかったので簡 単に追加します。スライドの最後ですが、現場からのヒアリングで、このガイドライン に書き込むであろうことに関係する方たちの意見をお聞きしなければいけないと思って います。  あと、ガイドラインの周知という御意見が先ほど出たのですが、私はそれがとても大 事だと思っています。例えば、医学部の講義や地域のいろいろな方たちを対象にした講 演会や研修会でも、省とか国から出されたものに対して皆さんどれだけ知っているのだ ろうということで質問させていただいてるのですが、残念ながらほとんどの人がこうい ったものの存在を知りません。自殺予防に関しては、それが周知されなければ全く意味 をなさないので、この検討会から出されたガイドラインや提言などをどれだけ世の中に 伝えていくことができるのか、どうやって伝えられるかということも非常に重要じゃな いかなと思っています。 ○上田座長 ありがとうございました。今回の自殺未遂者・自殺者親族等で、大綱も大 きく7番とか8番とかこうありまして、まさに救急場面における総合的なそれぞれの視 点での取り組みというのがありますので、そこは伊藤さんの方で少し整理して、漏れる ことがないようにですとか、その辺は整理していただければありがたいと思います。 ○伊藤構成員 了解しました。今週2日にもまた会議を開催する予定にしております。 引き続き検討を続けたいと思います。 ○上田座長 ありがとうございました。ただいま事務局からお話がありまして、清水康 之構成員は当初御出席の予定でしたが、御欠席とのことです。と同時に、先ほど西田構 成員から御紹介のありました自死遺族支援のためのガイドラインの未定稿のダイジェス ト版が用意されておりますので、皆様方に配付したいと思っております。事務局、よろ しくお願いします。 ○渡邉構成員 今の河西参考人のお話に意見を言いたいんですけど、未遂者をどうフォ ローしていくかというのはとても大事だと思うし、河西先生のところでなさっている取 り組みというのはとても貴重だと思うんですけれども、まだまだ少数の医療機関でしか 行われていないという現状があるわけですけども、そのフォローの仕方もまだまだいろ いろ検討するべきところがあるんじゃないかなと思うんです。  私が大事だと思うのは、救命センターで身体的な処置を受けた後に、きちんとアフタ ーケアといいますか、例えば定期的にその人がどのような経過をたどっているのか、も ちろん精神科とかにつなぐことができれば問題ないかもしれませんけども、青森県など の場合はそれが3割くらいにすぎないので、あとの7割はただ帰されてしまうという現 状があるわけなんですけども、そうじゃなくて、きちんと定期的に経過を見るような、 例えば電話でとか、そういうようなことができるとか、あるいは、いつでもその人が相 談することができるような電話のシステムをつくるとか、無料ならさらにいいと思うん ですけども、そういうようなシステムづくりができないかなと思ってるんですね。  これはこの間の自殺予防総合対策センターの開所式でベルトルートが来たときも、2 群に分けて各国での未遂者のフォローの調査結果を、1群はただ身体的な処置をして何 もしない、もう1群はちゃんと家庭訪問してフォローしたというような、後の方が非常 に再発が少なかったという、実際に自分はケアされてるんだ、だれかが自分のことを心 配してくれてるんだという体験というのはとても大事だと思うので、一言意見を言わせ ていただきました。 ○河西参考人 まさにおっしゃるとおりです。私たちのところで実施していることは個 別性の高いケースマネージメントです。2003年からは自殺未遂の診察をほぼ全例で実施 しておりますが、医学的な面だけではなくて生活困難感なども特に評価させていただい て、ソーシャルワークを含めたマネージメントを実施しています。今、自殺対策のため の戦略研究が動いておりまして、その中の救急介入研究プロジェクトでは、私たちのと ころですとか岩手医大などでやってきたことをさらに規格化、システム化してやってお ります。これが、自殺未遂者の再企図防止に効果があるということでエビデンスとして しっかり出せるのであれば、政策化される可能性があるとおうかがいしていますので、 それに向かってやっております。そういうものが一つは動いています。  あと、私たちの実感でも、誰かとつながっている、というのはとても大きいポイント だと思います。また、それが診察とは別に、ソーシャルワークという枠の中ですとむし ろ医療よりもよかったり、医者と対すると何となく一方通行みたいになってしまうのが、 ソーシャルワークの枠だとスムーズにお互いにやりとりができたりということもありま すので、非常に有効ではないかと思っています。  あと、精神科にどうつなげるかというのは、地域によっては精神科のクリニックがな いとか、病院がないというところもありますので、そうなりますとそこのプライマリー ケア医の先生たちに御活躍いただくしかないので、そういう方たちをサポートする体制 をつくるということが必要かと思っています。  最後に、いつでも当事者が相談できるようにというところは、そういうサービスの存 在や可能性はまだほとんどの方が考えていらっしゃらないと思います。自殺者対策とか 自殺予防という言葉のイメージの中には、まだ自殺未遂者ケアというものがあまりイメ ージとして捉えられていないと感じておりますので、ガイドラインの中にはそういった ことも盛り込んで、自殺未遂者と自殺予防がどうつながっているのかということもわか りやすく書く必要があると思っています。ありがとうございました。 ○西原構成員 自殺防止センターには、死にたいという人を中心に電話がかかってくる わけですけど、未遂者が随分多いんですね。昨年の統計からしますと18%が電話の中で 未遂をしたというのがわかったわけですね。未遂者は今度は完全に死のうとするリスク の高い人たちだということを私たちは承知しておりますから、丁寧に話し合いをするわ けです。そういう意味で、未遂者へのケアということを、例えば電話の中で聞いてまし て、運ばれたと、そこには精神科がなかったから即帰ってきたということとか、そうい う方があったり、1週間ほど入院してたけど帰ってきたということで、どこの病院だっ たのかということは聞かないですけどね、その辺のところが何らかの形で、研究するつ もりは私は毛頭ないんですけど、救急医療センターに運ばれてきた人たちが民間の私た ちのところにかかってくるという、そういう中で何かお互いに接点を設けながら、何を どうできるかということを探ることはとても大切なことじゃないかと実は思っておりま すけれどもね。以上です。 ○平田構成員 今の話に関連するんですけど、厚生労働科学研究で昨年度から始まって いる精神科救急医療に関する研究がありますけど、その中で一般救急の現場から見た自 殺未遂問題というのがテーマになっている研究班があるんですね。1年目である程度の データが出てます。首都圏中心に8カ所くらいに救命救急センターに声をかけてプロス ペクティブなリサーチをやりました。そうしましたところ、自殺未遂者の3割近くが精 神科治療中の人たちなんですね。その中で深刻なリスクのあった人が3%くらいという データが出ております。救命救急センターで運ばれた人で精神科につながった比率とい うのは半分くらいだったというデータが出ておりますので、その辺の身体救急の専門家 と、精神科救急の専門家の対話が非常に大事であるという結論になってるんですけど、 その実践の第一歩として、今年の精神科救急医療学会というのが9月26・27日とさいた ま市で開かれまして、シンポジウムの中にその研究者が入っています。ですから、でき ればホームページからアクセスして調べていただきたいというのが一つです。これは宣 伝を兼ねますけど。  もう一つは、精神科、コンサルテーションを担うべき精神科医が、全体として自死の 問題にそんなに詳しくないと考えています。物すごいばらつきがあります。私自身この 会に出て非常に勉強になったこと、あるいは初めて耳にしたことがいっぱいあるんです よ。非常に啓発されました。まだまだ自死をめぐる問題の実態に疎い精神科医はたくさ んいると思います。ですから、例えば救命救急センターの医者から見ると、精神科の中 には非常に無責任な医者がいるわけです。治療責任のコンセプトがないような人がいて、 とても安心して頼めないという話も聞きます。ですから、精神科医の意識と水準を上げ ないとどうしようもないということで、一つの具体的な提案ですけど、例えば精神保健 指定医というのは国の認定医ということになるんですけど、その定期的な研修会あるい は新規の研修会の中に、ぜひこの自死問題を入れるべきだろうと思います。幾つか必修 のテーマがありますよね、あの中には。社会復帰の問題、人権擁護の問題、司法精神医 学の問題、その中にぜひ自死の問題を含めるべきだろうというのが一つです。精神保健 指定医の研修会の研修プログラムの中に組み込むべきだと。  もう一つは、日本精神神経学会の認定医制度が昨年度からスタートしています。さま ざまな専門医のための研修プログラムがあるんですけど、この中にもぜひ自死学という べき講座を設けて必修のプログラムにする。最新情報を常にそこでプレゼンテーション して、定期的にきちっと新しい情報を専門医として仕入れていくというプログラムをぜ ひつくるべき、あるいは国として学会なりに働きかけるべきではないかと考えます。 ○上田座長 ありがとうございました。ガイドラインについていろいろ議論しています が、平田構成員の御意見、ガイドラインと同時に対策、提言という形で議論をまとめて いく、また、そういう中で今の御指摘のような対応を働きかけることも一つの役割かも しれませんので、ガイドラインのまとめと同時に全体的な提言などについても議論する 中で、ただいまの御意見などをまとめたいと思っております。  そのほかございますでしょうか。 ○清水(新)構成員 今のお話、大変興味深く伺いました。たしか第2回の検討会で私 も簡単に触れさせていただきましたが、厚生科学研究の中で、全国の救命救急センター を自殺問題という観点から調査させていただきましたが、対象のすべてのセンターで遺 族へのケアなり配慮が大切だと考えてるんですね。ところがそれらのことが実際できて ますかという質問には、ほとんどできていないとの回答が圧倒的でした。ここには怠慢 とかそういうことじゃなくて、歯ぎしりしてる様子が浮き上がってくるんですね。ああ いう野戦病院みたいなところで、気にはなってるんだけど手が出ないという像が調査結 果から浮き上がってまいりました。  そういう中で、センターのドクターの方、ナースの方を含めて、そこでそうした自死 遺族のケアを期待するのがむしろ状況的に極めてハードルが高すぎる課題のような気が してならないんです。もちろんやっていただければいいんですが、なかなか難しい。か といって、精神科医との連携というのは極めてプアーでした、率直に言いまして。そう いう中で、先生のガイドラインの中にコーディネートという言葉が出てくるんですが、 センターの中に、自死遺族だけじゃないと思うんです、ほかの事故死なんかのことも含 めてでしょうけれども、遺族とのコーディネーターみたいな、そういう重要な役割を担 うポストというんでしょうか、人的配置というんでしょうか、これも大きな問題になっ ていくわけですが、そういうものはぜひ必要じゃないかというのが、あのときの厚生科 学研究で思った点なんですが、先生のおっしゃるコーディネートは、コーディネーター を機能させる人のことについても何か提言される予定なんでしょうか。 ○河西参考人 先生のおっしゃるようなイメージです。つまり、救命センターのような 生き死にに関わる状況の中では、自殺未遂の方も、ご遺族もそうですが、ここほどコー ディネートを必要とする現場はないくらいです。ですから、本来であればここに専任の 医療ソーシャルワーカーですとか、精神保健福祉士ですとか、そういう方がいてしかる べきだと思っています。しかし現実はそういうふうにはなかなかなっていないのです。  それから、私たちのところで自死遺族ケアをやってよかったのは、今までは亡くなっ た方たちに対して何もできないという無力感があったわけですが、ご遺族の支援をする ことができるということでやりがいを感じています。ですから、マンパワーとかいろい ろな面では状況は厳しいのですが、現場ではやりがいをかき立てられる仕事になってい ます。  あともう一つ、現場の状況の厳しさということに関しましては、昨年度の最後の検討 会で平安構成員からもお話がありました。あらためて申し上げますと、身体のことも診 て、自殺未遂者の方に対するケアもやって、コーディネートをしたり情報提供をすると いうことになると、それが一番できる場所というのはやはり総合病院だと思うのですが、 その総合病院の中で自殺予防活動の一端を担う精神科医療に難しい状況がありまして、 診療報酬が非常に低かったり、経済効率の面で精神科医はふ増やせない状況であります し、それどころか昨今は精神科病棟が総合病院から削減されたり、精神科を閉じたりと いう状況になっていますので、実際のところ自殺未遂者ケアを担保するような精神科医 とかメンタルヘルスは充足しておらず、非常に厳しい状況と言わざるを得ないのが現状 です。  ガイドラインに戻りますけども、先ほどの先生の御意見を踏まえて、コーディネータ ーが必要だということも書き込みたいと思います。今までやっていなかったこと、なか ったものをこれからこういうふうにしようというのがこの検討会の役割だと思っていま すので、そのようにさせていただければと思います。 ○上田座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。  先ほどガイドラインの未定稿のダイジェスト版が配付されていますが、西田構成員か ら何か補足説明がございましたら、お願いします。 ○西田構成員 先ほど斎藤先生から、今までの体験をまとめて出したらどうだというお 話があったんですけども、それを一つ形にして、今までの体験の中で積み重ねてきたも のをまとめてみたというところです。まだ未定稿ということでオープンにできるような 状態ではないんですけども、川野先生からもああいう提案もありましたし、それに加え て今までの体験を出させていただいて、今後に資するようなものとして御参考にしてい ただきたいなというところです。  まず、なぜ自死遺族支援なのかというところから入りまして、2ページに目次があり ます。最初に5つの柱を立てて、それから全体のフレームワークということで、第2回 検討会のときにも出したと思うんですけれども、個人のレベルというところでの支援、 グループを支える分かち合いの場を支援する、地域でどういうふうにつながっていくの かということ、自死遺族の痛み、自死遺児への支援もというふうに大綱でもきちんと押 さえてありますので、そこにも触れているということです。大きく割合を割いているの は4番目の分かち合いの場、自死遺族の集いの設立・運営についてというところです。 きっかけづくり、運営チームをつくった方がいいだろう、参加者募集の広報について、 分かち合いの場をどういうふうにつくっていたらいいんだろうか、受付、分かち合いの 実践、解散というところを詳しく出しております。ファシリテーター、司会進行、その 場をつくる人たちの役割、それをどういうふうに養成するのか。あとはルールですね。 分かち合いの場のゴールはどういうところにあるのか。継続のために注意しないといけ ないこと。あとは連携、スタッフ研修ですね。  先ほども触れましたけれども、ファシリテーターの養成ということでいうと、マニュ アルを渡すだけではなくて、2日間くらいの研修が必要だろうというところでプログラ ムを提案しています。集いの場に出てくる声を、今まで聞こえてない声がまだいっぱい あると思いますので、それを対策にどういうふうにつないでいるんだという視点も大事 だろうと思います。それから、遺族の集いは各地でやられていますので、どんな形でや られているのかを幾つか紹介しております。  最後に添付資料なんですが、例えば一番後ろの35ページくらい、集いの場でお願いし ている分かち合いのルールとか、受付でどんなアンケートをとったらいいんだろうかと か、連絡先を今後のつながりのためにどうしたらいいのか、そういう分かち合いの場が どんなふうに効果が出てくるのか、あるいは参加者がどんなふうに変わっていくのか、 気持ちの変化があるのか、当事者にお聞きするアンケートのようなものも参考例として 出しているというところです。  まだ未定稿でありますが、一度持ち帰ってごらんいただいて、今後の参考にしていた だければいいなというところであります。というふうに言ってくれというのでお伝えし ました。 ○上田座長 どうもありがとうございました。いつ完成版が出来上がる予定ですか。 ○西田構成員 そうですね、できるだけ早くとは思っています。ライフリンクの方では キャラバンと称して47都道府県を回って、自死遺族支援の場をつくっていきましょうと いうキャンペーンもやっています。そうすると、行政担当者の自殺対策あるいは遺族支 援の担当者の方については喫緊の問題だと思いますので、そういう担当者の方、あるい はそこにぜひ加わりたいと思っていらっしゃる民間の方、あるいは遺族の方で自分の体 験を生かしてそういう場に加わりたい、ただなかなかそれもやりづらい、そういう方た ちをイメージしながら、具体的にそういう場ができるようなイメージでこれをつくって いますので、できれば9月の頭くらいに一つの完成型になればいいなと思います。 ○上田座長 予定の時間に近づいてきましたが、伊藤構成員、川野構成員、河西参考人、 ただ今は西田構成員からお話がありました。全体的に何か、御発言がございましたら、 お願いしたいと思いますが。よろしいでしょうか。どうぞ。 ○斎藤構成員 平山先生の組織でもこういうものはおつくりになっていらっしゃるか と思いますが。 ○平山構成員 清水先生なんかと一緒に研修会をやりまして、今年3回目ですかね、少 しずつやってきております。それを皆様にお見せして御批判をいただいて、共通のもの をつくるということは可能だと思います。 ○斎藤構成員 それぞれ独自なものをおつくりになって、組織はこれがないとできませ んから、ただ、共有できる共通な基本的な点はきちっとまとめる必要があるかなという 思いもするんですけど、いかがでしょうか。 ○平山構成員 そのとおりだと思います。それは相互批判をして、足りないところは加 えるし、誤ったところは削除するという、組織というのはそういう謙虚な態度が必要だ と思っております。私もできるだけそれに協力したいと思います。 ○斎藤構成員 ありがとうございました。 ○上田座長 ありがとうございました。皆様方それぞれの自主的な活動と同時に、お互 いの意見交換をしながら、少しでもいいものができるように願っています。  それでは、特に御意見がないようでございますので、今日はガイドラインを中心に御 説明、質疑を進めてまいりましたが、ここで閉じたいと思います。  次回の検討会について事務局から御説明をお願いいたします。 ○名越課長補佐 本日の検討を踏まえまして、研究班の先生方にはガイドライン作成作 業を進めていただくことにしたいと思います。当初12月を目途にガイドラインの案を検 討会にお諮りするということを考えておりましたけれども、会議の途中で、ガイドライ ンとは別に総合的な取りまとめの部分も必要ではないかという話もございました。この 部分の検討を先にするかどうかというところは座長と別途御相談させていただきまして、 資料が準備できそうでありましたら場合によってはこの秋のうちに、12月になる前に皆 様方に再びお集まりいただくということも念頭に置いて作業を進めてまいりたいと思い ます。 ○上田座長 ありがとうございました。次回の開催については事務局と御相談させてい ただいて、皆様方に御案内したいと思います。  本日は大変お忙しい中、長時間にわたり御審議、御検討いただきましてありがとうご ざいました。これをもちまして第4回検討会を閉じさせていただきます。 (終了) 照会先:厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課障害保健係 03−5253−1111(内線3065)