07/07/26 平成19年7月26日薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所    平成19年7月26日(木) 14:00〜    厚生労働省講堂 2.出席委員(13名)五十音順    飯 沼 雅 朗、 五十嵐   隆、 川 西   徹、 澤 田 純 一、   ○首 藤 紘 一、 鈴 木 洋 史、◎永 井 良 三、 中 澤 憲 一、    西 澤   理、 長谷川 紘 司、 林   邦 彦、 村 勢 敏 郎、    本 橋 伸 高 (注) ◎部会長 ○部会長代理   欠席委員(2名)    千 葉   勉、 土 屋 文 人  3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、    中 垣 俊 郎(審査管理課長)    倉 持 憲 路(安全対策課安全使用推進室長)    森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、     望 月   靖(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第三部長)、    山 田 雅 信(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第四部長)、  田 中 克 平(独立行政法人医薬品医療機器総合機構生物系審査部長)他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻となりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催さ せていただきます。本日は、お忙しい中御参集いただきましてありがとうございます。当 部会委員数15名のうち現段階で12名の委員に御出席をいただいております。川西委員は 遅れて御出席いただけると聞いております。本日は千葉委員、土屋委員から御欠席という 御連絡をいただいておりますが、定足数に達していることを御報告申し上げます。  また、事務局に人事異動がございましたので紹介させていただきます。本日欠席させて いただきまして、補佐が出席させていただいておりますが、安全対策課長に松田課長が就 任しております。それから、本日出席させていただいておりますが、独立行政法人医薬品 医療機器総合機構の新薬審査第四部長に山田部長が就任しております。 ○審査第四部長 山田でございます。よろしくお願いいたします。 ○審査管理課長 それでは、永井先生、議事進行をよろしくお願い申し上げます。 ○永井部会長 それでは、まず、事務局から配付資料の確認、資料作成に関与された委員 及び利益相反に関する申出状況について御報告をお願いいたします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会 委員の名簿を配付しています。議事次第に記載されている資料1〜11はあらかじめお送 りさせていただいています。このほか、資料12「審議品目の薬事分科会における取扱い 等の案」、資料13「専門委員リスト」を配付しています。  平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づく、資料作成に関係された委員の確認で ありますが、関与された委員はいらっしゃいません。  次に、本年4月23日の薬事分科会申合せに基づく、利益相反に関する申出については、 以下のとおりです。議題1「プリモビスト注シリンジ」については、退室委員はなし、議 決には参加しない委員は永井部会長、西澤委員。議題2「クラリチン錠」等については、 退室委員、議決には参加しない委員、共になし。議題3「サラジェン錠」については、退 室委員は西澤委員、議決には参加しない委員はなし。議題4「レグパラ錠」については、 退室委員はなし、議決には参加しない委員は鈴木委員。議題5「ディナゲスト錠」につい ては、退室委員はなし、議決には参加しない委員は永井部会長。議題6「ケアロード錠及 びアイツー錠」については、退室委員はなし、議決には参加しない委員は林委員。議題7 「アリセプト錠及び同D錠」については、退室委員はなし、議決には参加しない委員は鈴 木委員です。  なお、議題1「プリモビスト注シリンジ」及び議題5「ディナゲスト錠」については、 座長を首藤部会長代理にお願いいたします。また、本日の審議事項議題7「アリセプト錠 10mg及び同D錠10mgの毒薬又は劇薬の指定の要否について」は、報告事項議題1「アリ セプト錠3mg等の製造販売承認事項一部変更承認及びアリセプト錠10mg等の製造販売承 認について」と関連するものですので、併せて報告をさせていただきたいと考えておりま す。以上です。 ○永井部会長 本日は、審議事項が6議題、報告事項が4議題です。早速、議題1に入り ますが、これについては、先ほどお話がありましたように、首藤部会長代理に進行をお願 いいたします。よろしくお願いいたします。 ○首藤部会長代理 それでは、議題1について、総合機構から概要を説明していただきま す。 ○機構 議題1、プリモビスト注シリンジにつきまして医薬品医療機器総合機構より説明 させていただきます。議題では、プリモビスト注シリンジとなっておりますが、EOB・ プリモビスト注シリンジに販売名を変更する予定でございます。  本剤は、ガドキセト酸ナトリウムを有効成分とする肝腫瘍診断用のMRI造影剤であ り、細胞外液性造影剤と肝特異性造影剤の両方の分布特性を併せ持つことから、1回のM RI検査で血流情報及び肝細胞機能情報が得られる造影剤として開発されまして、2007 年6月現在におきまして、イギリス、ドイツ、スウェーデン、スイス、韓国など35か国 で承認されています。  本品目の審査に関しまして、専門委員として、資料13に記載されております委員が指 名されました。  本品目の審査の概要について、説明させていただきます。品質及び非臨床については、 審査の過程において申請者から適切な対応がなされ、特に問題はないと判断しました。  臨床試験成績について説明させていただきます。国内第II相試験では、肝腫瘍患者を対 象に、本剤12.5、25又は50μmol/kgが静脈内投与され、MRI検査における有効性及び 安全性の評価により25μmol/kgが推奨用量として選択されております。  国内第III相試験では、肝腫瘍患者を対象として、本剤25μmol/kgは、主要評価項目で ある肝腫瘍の病巣検出の感度及び病巣鑑別の一致率において、対照として検査しました造 影らせん走査型コンピューター断層撮影(CT)検査と同程度の成績が得られ、肝腫瘍診断 におけるMRI造影剤としての本剤の有効性が示され、肝腫瘍診断における新たな選択肢 になり得るものと判断いたしました。  安全性に関しまして、178例中45例に有害事象が発現しましたが、重篤な有害事象の 発現はなく、特に問題となる症例は認められませんでした。  今般、ガドリウムを含有するMRI造影剤では、腎性全身性線維症(NSF)の発現が世 界的な問題となっておりますが、現時点において、本剤によるNSFの報告は海外も含め てございません。しかし、類薬においてNSFの発現が報告されている旨を添付文書にお いて情報提供するとともに、製造販売後に本剤の安全性情報の収集が行われる必要がある と判断しております。したがいまして、製造販売後には、再審査期間中に、2,000症例、 調査期間3年間の製造販売後調査を実施し、NSFに関する調査も含め、本剤の安全性が 確認される予定です。  以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品 第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は原体、製 剤共に毒薬、劇薬に該当せず、生物由来製品又は特定生物由来製品に該当しないと判断し、 再審査期間は8年とすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予 定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○首藤部会長代理 ありがとうございます。ただ今の御説明に対して、御意見あるいは疑 問などがございましたらお願いいたします。申請時の効能・効果は肝腫瘍の検出並びに鑑 別のための造影ということになっているようですが、審査の結果は肝腫瘍の造影というこ とで承認したらどうかということです。 ○五十嵐委員 マグネビストという同類の薬が既に売られていまして、その薬に関して は、原則禁忌の1番、2番は共通しているのですが、3番、4番として重篤な肝障害のあ る患者、重篤な腎障害のある患者も原則禁忌にしているのです。この薬はそこまで踏み込 む必要はないと現時点ではお考えなのでしょうか。  ○機構 総合機構より説明させていただきます。この薬については、マグネビストに脂溶 性側鎖であるエトキシベンジル基を持たせることによって、正常の肝細胞に取り込まれる という分布特性を有しており、その結果、排泄経路としては、通常の細胞外液性造影剤が ほぼ腎臓から排泄されるのに対し、双方の分布特性を持ちますので、腎臓に半分、肝排泄 が半分という特徴を有しています。それに加え、マグネビストと比較した場合、濃度が半 分であり、投与量については2分の1、あるいは4分の1となるので、ガドリニウム投与 量としては、比較的安全性が確保されているのではないかと考えています。海外において はスペシャルポピュレーションで腎障害、あるいは肝障害を持つ患者集団を対象にPK/ PDを評価するスタディが行われていまして、その結果をもちましても、肝障害、腎障害 については慎重投与とすることで差し支えないのではないかと現段階では考えています。 ── 川西委員着席 ── ○川西委員 遅れて来た挙げ句、大した質問ではなくて申し訳ありません。審査報告書の 5ページ、「審査の概略」という所で、「pHの規格値(6.8〜8.0)について再検討するよ う求め、申請者は、規格値を6.8〜8.0に改めた」となっているのですが、これはどこか に間違いがあるような気がします。申請書に間違いがなければ、それはそれでいいのであ ろうと思うのですが。 ○審議役 正誤表で訂正しておりますが、後ろに付けてあるものですから、分かりにくく て申し訳ございません。 ○首藤部会長代理 ほかにいかがでしょうか。よろしければ、議決に入りたいと思います。 本議題につきましては、永井部会長、西澤委員におかれましては、利益相反に関する申出 に基づきまして、議決への参加は御遠慮いただいております。特に御異議がありますでし ょうか。それでは、本件は承認可ということで進めたいと思います。これは薬事分科会に 報告ということになっております。  次に、議題2ということで、永井先生、お願いいたします。 ○永井部会長 それでは、議題2にまいります。議題2について、機構から概要の御説明 をお願いいたします。 ○機構 議題2、資料2、医薬品クラリチン錠10mg他の製造承認事項一部変更承認の可 否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。  本剤の有効成分であるロラタジンは、選択的ヒスタミンH1受容体拮抗薬であり、本邦 においては既に錠剤10mg及び口腔内速溶錠10mgが、「アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚 疾患に伴うそう痒」を効能・効果として、「成人に対して1日1回10mg」の用量でそれ ぞれ2002年7月及び2004年2月に承認されておりますが、今般の申請は、既承認の錠剤 及び口腔内速溶錠に7歳以上の小児の用量として「1日1回10mg」を追加し、更に新規 の剤型としてドライシロップ1%を、7歳以上の小児及び成人に対して「1日1回10mg」、 3歳以上7歳未満の小児に対しては「1日1回5mg」の用量で追加するものです。  本申請の専門委員としては、資料13に記載されております7名の委員を指名いたしま した。  審査の内容について簡単に説明させていただきます。本申請については、非臨床に関す る資料のうち、薬理及び薬物動態に関する資料は提出されておりません。新規の剤型であ るドライシロップ剤の規格に関しては、設定された基準について特に大きな問題はないと 判断しております。また、毒性に関しては、小児用量の追加ということで、新生児及び幼 若動物を用いた毒性試験等が実施されておりますが、臨床上で大きな問題となることはな いと判断しております。  臨床成績に関しては、3〜15歳の通年性アレルギー性鼻炎患児188例を対象とした国 内臨床試験、及び3〜15歳のアトピー性皮膚炎患児201例を対象とした国内臨床試験が いずれもフマル酸ケトチフェンを比較対照とする二重盲検並行群間比較試験として実施 されており、それぞれ主要評価項目である4鼻症状スコアの平均値及び主要そう痒スコア の観察期からの変化量について、ケトチフェンに対する非劣性が検証されております。ま た、各被験者について血漿中薬物濃度が測定されておりまして、3〜6歳の小児に本薬5 mg、7歳以上の小児に10mgを投与した際の血漿中薬物濃度は、成人に推奨用量である 10mgを投与した場合の濃度範囲とほぼ同様であることが確認されております。  安全性については、国内安全性解析対象例197例中16例に副作用が認められ、主なも のは傾眠7例、ALT、ASTの増加各2例等で、臨床上大きな問題となる事象は認めら れておりませんが、国内臨床試験では症例数が限られていることから、製造販売後の調査 においても引き続き検討するよう指示しております。  以上の審査を踏まえ、クラリチン錠10mg及びクラリチンレディタブ錠10mgの小児用量 の追加及びクラリチンドライシロップ1%の製造を承認して差し支えないとの結論に達 し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新用量医薬品 であることから、再審査期間は4年間、クラリチンドライシロップ1%は毒薬及び劇薬の いずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断 しております。薬事分科会には報告を予定しております。よろしく御審議のほどお願いい たします。  ○永井部会長 ありがとうございました。ただ今の御報告に対して御質問をお願いいたし ます。 ○五十嵐委員 小児の方に適応を拡大していただいて、大変有難いと思っておりますが、 その前の段階のことで伺いたいのです。この薬は、米国の添付文書を見ますと、肝不全あ るいは腎不全の成人及び6歳以上の小児には隔日投与から始めなさいと書いてあるので す。ところが、日本の添付文書には、慎重投与であるとしか書いていないのです。つまり、 薬を始めるときに2日に1回から投与して、これは半減期が非常に長い薬ですので、1日 1回でいいわけですが、そういう注意がきちんと書いてあるにもかかわらず、日本の成人 向けの添付文書にはそれがないので、そのまま子供用にも書いていないのだと思うのです が、その点はどのように解釈したらよろしいでしょうか。 ○機構 御指摘ありがとうございます。成人の肝・腎障害患者での薬物動態、有害事象の 発現状況等を確認して検討させていただきたいと思います。 ○五十嵐委員 米国の添付文書が資料に入っています。これは今そちらもお持ちですね。 every other dayからスタートしなさいと書いてありますので、検討をしていただきたい と思います。 ○永井部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○澤田委員 新用量なので詳しいデータがないせいだと思いますが、一つだけ確認させて いただきたいのは、メタボライトの活性が10倍くらい高いということで、血中濃度は未 変化体の方が非常に高いので、メタボライトの薬効は余り気にしなくていいという解釈で よろしいのでしょうか。 ○機構 活性本体は主要代謝物であるデスカルポエトキシロラタジンの方であると考え ています。 ○澤田委員 コントリビューションが低いから、未変化体だけを考えればいいということ でよろしいのですね。 ○機構 未変化体と主要代謝物の血中濃度と活性の関係からも、活性の中心は、未変化体 ではなくて主要代謝物の方であると考えています。 ○澤田委員 そちらの方は活性体であるという場合には、代謝物の代謝もきちんとやらな ければいけないということになるわけですか。 ○機構 主要代謝物の代謝過程を含めまして、本剤の代謝等の検討は行われているという 状況です。 ○澤田委員 デスカルボエトキシ体が活性がありまして、そちらの方が10倍くらい高い と書いてあったように思いまして、その血中濃度が未変化体よりも10倍高いのであれば、 それがアクティブということになるということですね。 ○審議役 添付文書を御覧いただきますと、御指摘のとおり、未変化体と活性代謝物の量 的関係と、活性比がどれくらいあるかということ、それはすべて記載していまして、この ものの作用の本体、主力は活性代謝物によって薬効が出ているということも書いてありま す。これは一応情報としては現場にきちんと伝わるようにはしてきています。 ○澤田委員 分かりました。それで少し気になったのは、もしそうであれば、添付文書の 書き方で、未変化体を中心に、代謝でしょうか、薬物相互作用の辺りに書いてあるような 気がして、少し違和感を覚えたのですが。 ○鈴木委員 今の件で、添付文書の1ページ、相互作用の所で、「本剤は、主に肝代謝酵 素CYP3A4、CYP2D6で代謝される」と書いてありまして、2ページに行きますと、薬物動 態の所で、活性代謝物(DCL)が作用しているというのが初めて出てくるのです。それで、 今、澤田先生が御指摘になったところが、私も違和感があったものですから、添付文書を 順に読んでいった時点で、活性代謝物が大事なのだということが分かるような表記になっ ていた方が読みやすいかと感じています。 ○機構 御指摘ありがとうございます。誤解の生じないような形で記載の仕方を検討させ ていただきたいと思います。 ○永井部会長 CYPのタイプによってかなり効き方が変わってくるということもあっ て、アメリカでは隔日投与から始めなさいという指導であったのでしょうか。それに対応 した日本の使用法についての指導というのはどうなのでしょうか。 ○審査管理課長 五十嵐先生から御指摘のあった隔日投与の件ですが、私の理解が間違い ないとすると、肝臓、腎臓に障害のある方について、隔日投与から開始しなさいという話 になっているかと思います。すなわち、それらの方々では、CmaxあるいはAUCが大 きくなるというデータが海外で得られていて、臨床試験もあるのかもしれませんが、その ような情報を基にここは設定されたのであろうと思います。国内で肝臓、腎臓に障害のあ る方々のデータがあるのか、それらの方々でどうであったのか、仮にそのようなデータが 国内ではいまだ得られていないとすると、海外のデータからどこまで言えるのかという点 について、元データにもう1回当たらせていただいて、その点は手を打たせていただけれ ばと考えているわけです。したがいまして、今は、相互作用との関係ではないのではない かと思っています。 ○永井部会長 ほかに御意見はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。もし御意見等が ございませんでしたら、議決に入りたいと思います。この件について承認可としてよろし いでしょうか。もし御異議がなければ、承認可ということで、薬事分科会に報告させてい ただきます。ありがとうございました。  続いて、議題3に入ります。西澤委員におかれましては、この議題につきまして関与さ れておりますので、審議の間、別室で御待機いただくことにいたします。 ── 西澤委員退室 ── ○永井部会長 それでは、議題3につきまして、機構から御説明をお願いいたします。 ○機構 議題3、資料3、医薬品サラジェン錠5mgの製造販売承認事項の一部変更承認の 可否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。  本剤の有効成分であるピロカルピン塩酸塩は、ムスカリン受容体刺激作用に基づく唾液 分泌促進作用が確認されており、既に本邦において平成17年7月に「頭頸部の放射線治 療に伴う口腔乾燥症状の改善」の効能・効果に対して承認されております。今般の申請は、 「シェーグレン症候群患者の口腔乾燥症状の改善」に対する効能・効果を追加するもので す。本剤は米国、英国等27か国で承認されており、そのうち、23か国で「シェーグレン 症候群患者の口腔乾燥症状の改善」に対する効能・効果が承認されております。  本申請の専門委員としては、資料13に記載されております4名の委員を指名いたしま した。  審査内容について、説明させていただきます。薬理については、主にムスカリンM3受 容体を介した作用であると考えられております。薬物動態についてですが、既承認効能で ある放射線治療に伴う口腔乾燥症患者と同様であり、疾患による差異はないと考えられま した。  次に臨床成績について説明させていただきます。国内第III相試験での主要評価項目であ る投与開始時から最終評価時、主に12週の口腔乾燥感重症度VASスコアの変化量は、 本剤15mg/日群22.7mm、プラセボ群17.0mmであり、プラセボ群と比較して本剤群で改善 する傾向が認められておりますが、統計学的に有意な差は認められませんでした。しかし ながら、投与開始後2、4及び8週の時点ではプラセボ群との間で有意差が認められてお り、副次評価項目である「口腔乾燥症全般改善度VASスコア」ではいずれの時点でもプ ラセボに対し有意差が示されております。また、国内第II相試験では本剤15mg/日のプラ セボに対する優越性が示され、長期投与試験では本剤の有効性の維持が確認されておりま す。これらを踏まえ機構としては、本剤の有効性は示されていると判断しております。  一方、安全性についてですが、既承認効能である放射線治療後の口腔乾燥症患者よりも シェーグレン症侯群患者で頭痛、悪心等の事象の発現率が高くなっておりますが、国内第 III相試験のみで比較すると両対象疾患で発現頻度、重症度に大きな差異はなく、また、放 射線治療後の口腔乾燥症患者における市販後安全性情報でも重篤な有害事象は認められ ておらず、現時点で特に安全性上問題はないと考えております。なお、製造販売後には、 長期使用に関する特別調査を実施し、本剤の安全性等について十分検討するよう求めてお ります。  以上の審査を踏まえ、本剤のシェーグレン症侯群患者における口腔乾燥症状の改善に対 する効能・効果を追加して承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議い ただくことが適当と判断いたしました。本申請は新効能医薬品であることから、再審査期 間は4年、薬事分科会には報告を予定しております。以上です。よろしく御審議のほどお 願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。平成17年に「頭頸部の放射線治療に伴う口腔 乾燥症状の改善」ということで承認されておりますが、今回は「シェーグレン症侯群患者 の口腔乾燥症状の改善」を目的としているということです。いかがでしょうか。 ○鈴木委員 相互作用の所で、2A6で代謝されるということで、テガフール製剤と併用 したときには、5-FUの作用が減弱される可能性があると書いてありまして、5-FUを 使っていらっしゃる患者さんは、非常に重篤な状態であると思うのです。それで、2A6 に対してどれくらいのKi値で阻害するのかとか、そのときの血中濃度から考えてどれく らい5-FUの生成量が変わるのかという情報が欲しいと思うのですが、その辺りはメー カーから提出されているのでしょうか。また、可能であればインタビューフォームその他 に含めていただければと思うのですが、いかがでしょうか。 ○機構 機構よりお答えさせていただきます。今回は効能追加ということで、前回の承認 の際にこの辺りのデータはきちんと提出されています。そこに関しては、今、確認ができ ないのですが、前回の承認資料の中には入っているかと思いますので、確認をさせていた だきます。 ○鈴木委員 ありがとうございます。 ○永井部会長 ほかにいかがでしょうか。御意見はございませんでしょうか。もし御意見 がございませんでしたら、議決に入りたいと思います。この件に関して承認可としてよろ しいでしょうか。異議がございませんでしたら、承認可ということで、薬事分科会報告と させていただきます。ありがとうございました。 ── 西澤委員入室 ── ○永井部会長 それでは、議題4にまいります。機構から概要の御説明をお願いいたしま す。 ○機構 それでは議題4、資料4、医薬品レグパラ錠25mg及び同75mgの生物由来製品又 は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒劇薬 の指定の要否について、機構より御説明申し上げます。  本品目は、「維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症」を効能・効果とする新有効成分 含有医薬品でございます。なお、本品目はカルセプター錠として申請されていましたが、 類似名称医薬品に配慮して、審査の過程で販売名がレグパラ錠に変更されています。  本品目の有効成分であるシナカルセト塩酸塩(以下、本薬)はCa受容体作動薬であり、 副甲状腺からの副甲状腺ホルモン(以下、PTH)分泌を調節しているCa受容体に作用す ることでPTH分泌を抑制する、新規作用機序を有する化合物です。  二次性副甲状腺機能亢進症とは、慢性腎不全患者において病態の進展に伴う腎臓のVD 活性化障害から、腸管からのCa吸収の低下による低Ca血症及びリンの排泄低下による 高P血症が発現し、二次的にPTHの分泌が亢進して発症する疾患であり、PTHの過剰 分泌により骨吸収が亢進されるため、線維性骨炎等の高代謝回転型骨障害を生じます。既 存の治療薬としては、活性型VD製剤が使用されていますが、活性型VD製剤では高Ca 血症の副作用が知られています。  本薬は、活性型VD製剤で問題とされる血清Ca濃度の上昇を招くことなくPTHの濃 度を抑制することが可能でありまして、既存の薬剤とは異なる作用機序により二次性副甲 状腺機能亢進症の治療を可能にすることが期待されています。  本薬は2004年に米国において承認を取得した後、2007年現在、カナダや欧州を始めと する世界34か国において適応を有しております。  本品目の専門協議では本日の配付資料13に示しますような先生方が専門委員として指 名されております。  では、審査の概要について説明させていただきます。規格及び試験方法、非臨床に関し て提出された資料の内容は妥当であると判断いたしましたので、臨床試験成績について述 べさせていただきます。  臨床試験成績としては、臨床薬理試験5試験、血液透析患者を対象とした用量反応性試 験2試験、第III相試験1試験、長期投与試験3試験並びに腹膜透析患者を対象とした一般 臨床試験1試験の計12試験が評価資料として提出されています。  まず、有効性に関してですが、血液透析施行中の二次性副甲状腺機能亢進症患者を対象 に、本薬25mgを開始用量とし、血清intactPTH濃度及び血清Ca濃度により適宜用量を 25mg単位で最大100mgまで調節しながら本薬又はプラセボを14週間投与した第III相二重 盲検比較試験では、投与終了時における血清intactPTH濃度250pg/mL以下達成率を主要 評価項目にしていますが、主要評価項目において、プラセボ群に比べて有意に高い有効率 が認められています。  また、1年間の長期投与試験において本薬の血清iPTH濃度低下効果は長期にわたっ て持続されていまして、投与量推移も安定していることから、本薬の効果は減弱すること なく、長期間の血清iPTH濃度のコントロールは可能であると判断しました。  さらに、腹膜透析施行中の二次性副甲状腺機能亢進症患者を対象とした試験においても 血清iPTH濃度低下傾向は認められているので、有効性は示されていると判断しており ます。  本薬の血清iPTH濃度低下作用は、活性型VD製剤とは異なり、速やかに発現するこ とから、投与開始後及び用量変更後3か月程度は月2回測定し、iPTH濃度がほぼ安定 してからは月1回の測定頻度で測定することを添付文書にて注意喚起しています。  安全性に関してですが、第III相試験において有害事象はプラセボ群、本薬群、どちらも ほぼ全例に認められていますが、プラセボ群よりも本薬群の方が、胃不快感、悪心、嘔吐 といった上部消化管障害の発現頻度が高いことが認められています。また本薬は既存の活 性型VD製剤とは逆に血清Ca濃度を低下させることが明らかとなっており、低Ca血症 が本薬群に多く認められております。心電図QT補正間隔延長も本薬群に多く発現してい ますが、こちらは血清Ca濃度の低下と関連するものと考察されております。  したがって、本薬の投与に際しては、血清iPTHのみならず、血清Ca濃度の推移を 観察しながら用量を調整することが必要であり、過度の血清Ca濃度低下を引き起こすこ とのないように、臨床試験で用いられた、血清Ca濃度を指標とした用量調整基準を添付 文書に記載し、注意喚起をしています。  以上のとおり、機構での審査の結果、本薬による血液及び腹膜透析施行中の二次性副甲 状腺機能亢進症患者における血清iPTH濃度低下効果が認められましたので、「維持透 析下の二次性副甲状腺機能亢進症」を効能・効果として承認して差し支えないと判断し、 医薬品第一部会で審議されることが妥当と判断しています。  なお、本薬は生物由来製品又は特定生物由来製品に該当せず、原体及び製剤は毒薬又は 劇薬に該当せず、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年とすることが 適当であると判断しています。薬事分科会では審議を予定しております。御審議のほどど うぞよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。Ca受容体に作用する新有効成分ということで すが、いかがでしょうか。 ○澤田委員 薬の効能とは関係なく、本質的ではないかもしれないのですが、副甲状腺に あるCaの受容体が、ただCa受容体と書いてありまして、特定する情報が余りないよう な気がするのですが、もうきちんと分かっている受容体なのでしょうか。 ○機構 機構より回答させていただきます。Ca受容体は体の中に分布していることが知 られていますが、機能が分かっているのは副甲状腺にあるCa受容体で、こちらに関して はしっかり存在が明らかになっております。 ○永井部会長 ほかの臓器、例えば心血管系などではかなり大きな役割を果たしている可 能性があると思うのですが、それについては何か分かっているのでしょうか。 ○機構 心臓についてはmRNAの発現自体がほとんど起こっていないことが分かって います。分かっているものとしては胃にあるCa受容体が胃酸分泌に関連しているのでは ないかと言われていることくらいで、あとの機能に関しては現状ではほとんど分かってい ない状態です。 ○永井部会長 それでも、これを使っているとQT時間が延長したりなどということが報 告されていますね。ですから、何か作用はしているのであろうとは思うのですが、そこは 大丈夫なのでしょうか。 ○機構 QTの延長した患者に関して、血清Ca濃度との関連を調べましたところ、血清 Ca濃度と負の相関が認められていることから、QT延長に関しては、血清Ca濃度の低 下が原因ではないかと考察されております。 ○中澤委員 負の相関と言われましたが、それは、Ca濃度が低下することによって、Q T延長が起こるということですか。 ○機構 はい。 ○中澤委員 Caに依存したK電流なりが影響を受けると。 ○機構 Caの濃度に依存したK電流への影響については調べられておりませんが、イヌ の試験においても、血清Ca濃度と心電図ST間隔の分布を見たところ、負の相関がある ことが認められております。 ○中澤委員 つまり、そのような相関関係が認められているということであって、そこに ついてのメカニズム等には、特別考察はなされていないということでしょうか。 ○機構 そのとおりでございます。 ○永井部会長 結局それは、血清中のCa濃度を見ていれば、ある程度重篤な副作用は防 止できるという意味であると、そのような理解でよろしいですね。 ○機構 はい。そのため、添付文書においても、血清Ca濃度を測定して、休薬・減量基 準など、その辺りを注意喚起しております。 ○永井部会長 恐らくこの薬剤は長期投与されると思うのですが、長期投与に対する副作 用等の考察はなされているのでしょうか。 ○機構 長期投与試験においても、長期によって起こるというような有害事象は特に認め られておりません。 ○永井部会長 いかがでしょうか。 ○鈴木委員 少し話題が変わって恐縮なのですが、相互作用の所を見ますと、デキストロ メトルファンのAUCが11倍上がったということで、これほどまでに強い2D6の阻害 剤は余り例を見ないと思うのです。併用注意で抗うつ剤など幾つか挙がっていますが、海 外でこの薬とここに書いてあるような薬を併用して有害作用が起こってきたなど、そうい う症例はそれほど多くは知られていないのでしょうか。 ○機構 国内の臨床試験においてデキストロメトルファンとの相互作用の試験が行われ ていまして、こちらでAUCの増加等が認められています。海外においてもアミトリプチ リンやノルトリプチリン等との相互作用の試験を行っており、AUCやCmaxの上昇が 認られていますが、有害事象に関しては特段大きなものは、その試験においてはなかった という報告がされております。実際に使われたときの有害事象の発現については、今のと ころ情報は得られていません。 ○鈴木委員 ありがとうございます。 ○永井部会長 そのほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、議決に入 りますが、鈴木委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への 参加を御遠慮いただくことになります。この件に関して承認してよろしいでしょうか。御 異議がなければ、承認可ということで、新規有効成分でございますので、薬事分科会に上 程し、審議することにさせていただきます。ありがとうございました。  続きまして、議題5ですが、この議題につきましては、首藤部会長代理に進行をお願い いたします。 ○首藤部会長代理 それでは、議題5、資料5について、総合機構から概要を説明してく ださい。 ○機構 資料5、医薬品ディナゲスト錠1mgについて、医薬品医療機器総合機構より御説 明いたします。本剤の有効成分ジエノゲストは、イエナファーム社で開発された19-ノル テストステロン誘導体で、プロゲステロン受容体に対する選択性が高く、経口投与が可能 な子宮内膜症治療薬です。  国内では、□□年より持田製薬株式会社が子宮内膜症治療薬として開発を行いました。 海外では、2002年に□□□□で子宮内膜症治療薬として申請がなされ、2007年6月現在、 □□□□□□を実施中です。また、欧州において、ジエノゲストとエチニルエストラジオ ールとの配合剤が経口避妊薬として、吉草酸エストラジオールとの配合剤が閉経後ホルモ ン補充療法に対して承認されています。  国内の同種同効薬としては、点鼻液として酢酸ブセレリン及び酢酸ナファレリン、注射 薬として酢酸リュープロレリン、経口剤としてダナゾール等が承認されています。なお、 これら同種同効薬については、骨塩量の低下等の安全性の問題から、いずれも投与期間に 4か月ないし6か月程度の制限が設けられています。  本品目の審査に関しまして、専門委員として、配付資料に記載されております委員が指 名されました。  次に、機構における審査の概略を御説明いたします。品質、毒性、薬理及び薬物動態に ついては、審査の過程において申請者から適切な対応がなされ、特に問題はないと判断い たしました。  臨床試験成績について説明させていただきます。国内後期第II相試験では、1日投与量 として1mg、2mg及び4mgの3群が設定され、推奨用量は1日量2mgと判断されました。 国内第III相比較試験では、子宮内膜症患者を対象に、本薬1回1mgを1日2回、1日投与 量として2mg、対照薬として酢酸ブセレリン1回300μgを1日3回点鼻投与、1日投与 量として900μgが24週間投与され、主要評価項目とした投与終了時における全般改善度 の成績について、本薬は、酢酸ブセレリンに対して非劣性が示されたことから、子宮内膜 症に伴う症状に対する本薬の有効性は示されたと判断いたしました。  安全性について、本薬は酢酸ブセレリンと比較して、不正子宮出血の頻度は高いものの、 低エストロゲン症状の発現が少なく、骨塩量の低下も軽度であり、長期投与試験において 投与期間の制限を必要とするような安全性上の問題はなく、他の安全性全般に関しては酢 酸ブセレリンと同様であると判断いたしました。しかしながら、類薬と異なる安全性プロ ファイルを踏まえ、治療経過や症状等を勘案した患者選択、他の疾患との鑑別、貧血の管 理、定期的な有効性及び安全性の確認並びに投与継続の判断を適切に行う必要があると判 断いたしました。  また、製造販売後の調査として、若年患者での有効性及び安全性、52週を超える長期 投与における骨塩量の変動、肝機能異常、低エストロゲン症状等の発現に関する情報収集、 本薬の投与終了・中止理由及び以降の治療方針並びに再燃・再発に関する情報収集、妊娠 例の経過及び出生児の情報収集、不正子宮出血に対する有効な止血方法の検討等が必要で あると判断いたしました。  以上のような検討を行った結果、本薬を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品 第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。なお、原体及び 製剤は、毒薬又は劇薬のいずれにも該当せず、製剤は生物由来製品及び特定生物由来製品 に該当しないと判断し、再審査期間は8年とすることが適当であると判断しております。 薬事分科会へは報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○首藤部会長代理 ありがとうございました。子宮内膜症の薬ということですが、投与期 間の限定が少し長くていいのではないかというもののようです。よろしいですか。開発に 大変長く掛かった薬ですので、うまく使えるといいかと思います。本件に関しては、永井 部会長が利益相反に関する申出をされておりまして、議決への参加を御遠慮いただいてお ります。そのようなわけでございますが、本件について承認して差し支えないかどうか、 いかがでしょうか。御異議がないようでございますので、本件は承認可といたしまして、 薬事分科会へ報告とさせていただきます。次は、先生、お願いいたします。 ○永井部会長 それでは、議題6にまいります。ケアロード錠です。議題6につきまして、 事務局から概要を御説明ください。 ○機構 議題6、資料6、医薬品ケアロード錠60μg、アイツー錠60μgでございます。 議題ではケアロード錠60μg、アイツー錠60μgとなっておりますが、それぞれケアロー ドLA錠60μg、ベラサスLA錠60μgに販売名を変更する予定でございます。  本剤の有効成分ベラプロストナトリウムは、経口投与可能なプロスタグランジンI2誘 導体で、抗血小板作用、血管拡張作用、平滑筋細胞増殖抑制作用等を有し、本邦では、ベ ラプロストナトリウムの速放錠が、「慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善」 と「原発性肺高血圧症」の効能・効果で承認されております。  本剤は、ベラプロストナトリウムを徐放化した製剤であり、今般、東レ株式会社及び科 研製薬株式会社により、国内臨床試験成績等に基づき、肺高血圧症の原因疾患を問わない 「肺動脈性肺高血圧症」を効能・効果として、製造販売承認申請がなされたものです。な お、「原発性肺高血圧症」の効能・効果に関しては、ベラプロストナトリウムの速放錠が、 韓国、タイ及びインドネシアにおいて承認されておりますが、本剤については、平成19 年6月現在、海外において承認された実績はございません。  本品目の審査に関しまして、専門委員として、資料13に記載されております委員の皆 様が指名されております。  本品目の審査の概略につきまして、国内臨床試験成績の評価を中心に説明させていただ きます。肺動脈性肺高血圧症は、様々な原因疾患に伴う予後不良の疾患で、国内患者数は 5万人以下と推定されますが、それらのうち、比較的症例数が多い原発性肺高血圧症及び 膠原病に伴う肺高血圧症の患者46例を対象として、1日120μgから開始し、1日 240又は360μgまでの任意漸増法により、本剤を1日2回85日間投与した非盲検の臨床 試験が実施されました。  有効性につきまして、主要評価項目とされた「6分間歩行距離の0週に対する12週(又 は中止時)の差」に、有意な増加が見られております。副次評価項目とされた「平均肺動 脈圧」及び「肺血管抵抗係数」の推移と、6分間歩行距離の変動とは、必ずしも相関して おりませんでしたが、個々の症例におけるこれらの有効性評価には、大きな齟齬はありま せんでした。  安全性に関しまして、46例全例に391件の有害事象が認められ、主なものは、「頭痛」、 「潮紅」、「ほてり」、「悪心」及び「下痢」で、これらはベラプロストナトリウムの速 放錠と同様でした。また、安全性情報の収集法が異なるため、厳密な比較はできませんで したが、重症度が高度と判定された副作用の発現状況等から、徐放化による安全性の向上 が期待できる可能性も示唆されております。  これらの成績に加えて、症例数は更に少ないものの、長期投与試験で大きな安全性上の 問題が認められなかったことも踏まえて、本剤は、「肺動脈性肺高血圧症」を効能・効果 とし、1日120μgの開始用量から、最大1日360μgまで、患者の状態を観察しながら漸 次増量する用法・用量で適用することが適切と判断しました。なお、本剤の用法・用量は、 ベラプロストナトリウムの速放錠と異なり、1日投与量では、本剤の方が多くなっており ますが、この点について、安全性上の懸念が生じないよう注意喚起を添付文書で行ってお り、適正に使用されれば、本剤の承認の可否に影響するような重大な問題はないと判断し、 製造販売後に適切な情報収集を行う必要があると考えられますが、本剤を承認して差し支 えないと判断いたしました。  製造販売後には、再審査期間中、本剤を使用した1,000例までの全症例を登録する全例 調査が実施され、登録症例に関しては、生命予後調査を含めた5年間の調査により、本剤 の有効性及び安全性が確認される予定です。  本剤は、新効能医薬品に該当することから、再審査期間は4年とすることが適当である と判断しております。また、本剤は劇薬に該当し、生物由来及び特定生物由来製品のいず れにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議 のほどよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは、御質問、御意見をお願いいたします。 徐放化することによって高用量投与が可能になったということですね。そして、副作用は 余り心配いらないと言ってよろしいのですね。 ○機構 副作用については、質的には余り変わらないと考えられますが、臨床試験成績等 によりますと、重篤化する例が少ないと考えられます。 ○永井部会長 審査報告(1)24ページの右心カテーテルの検査における平均肺動脈圧の 変化ですが、PPH(原発性肺高血圧症)の投与前は52.6mmHgですから、中等度くらいの 肺高血圧症です。投与終了後48.7mmHgに下がっていますが、これは統計的に有意差があ るのでしょうか。4mmHg程度の非常にわずかな低下で、たとえ統計的に有意差があって も、実感としてはそれほど下がらなかったという程度の数字なのですが、その辺はどうな のでしょうか。 ○機構 この差につきましては、御指摘のとおりと存じます。これらの患者についても、 6分間歩行距離で、PPHでは、やや効果が劣るのですが、有効性が見られていること、 また、6分間歩行距離の評価をすることの一般性を考えて、確かに右心カテーテルの検査 では4mmの改善しか見られておりませんが、患者の症状に関しては、一定の改善が見ら れるのではないかと考えています。また、審査報告書にも書かせていただきましたが、今 回組み入れられた患者のPPHとCPHを比べると、CPHが、膠原病等で若い時から病 院に掛かっておりますので、肺高血症が発見されるのが早く、投与開始前の値も少し異な り、ややPPHの方が重い患者であったということも考えられます。この点がPPHとC PHに対する効果の差に出てきているのかとも考えております。 ○首藤部会長代理 一つよろしいですか。概要書の29ページに書いてあるのですが、こ の化合物は4種類の混合物ですが、四つ混ざっている化合物であるということが、よく探 さないと分からないのです。添付文書の構造式も間違っているのではないかという感じが するので、記載を整理した方がいいのではないかと思います。 ○機構 添付文書の記載をもう少し整理した方がいいという御指摘でしょうか。 ○首藤部会長代理 ベラプロストナトリウムは4種類の全く異なる化合物の混合物であ るということが、まずどこかに示されている必要があるということと、添付文書の構造式 は、少なくともこれを書いたのでは適切ではないという気がします。 ○機構 ありがとうございます。その辺は検討させていただきたいと思います。 ○永井部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。よろしければ、議決に入 りたいと思います。なお、林委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまし て、議決への参加を御遠慮いただくことにいたします。この件に関しまして、承認可とし てよろしいでしょうか。御異議がなければ、承認可ということで、薬事分科会に報告とさ せていただきます。ありがとうございました。  続いて、議題7です。先ほど事務局から御説明がありましたが、この件は、報告事項1 に関連しますので、議題7及び報告事項議題1について、事務局から併せて概要の御説明 をお願いいたします。 ○機構 審議事項議題7と報告事項議題1について、併せて御説明させていただきます。 順番が逆になりますが、まずは報告事項議題1から御説明いたします。資料7、8の二つ の番号が振られている資料を御覧ください。  本薬は、コリンエステラーゼの阻害作用を有する「アルツハイマー型認知症」の治療薬 であり、現在は、「軽度及び中等度のアルツハイマー型痴呆症における痴呆症状の進行抑 制」の効能・効果で承認されております。今般、エーザイ株式会社から、「高度アルツハ イマー型認知症」に関する効能を追加し、「アルツハイマー型認知症における認知症症状 の進行抑制」を効能・効果とする製造販売承認及び承認事項一部変更承認申請が行われた ものです。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと 判断いたしました。  次に、審議事項議題7について御説明いたします。本薬が承認されますと、新たに剤型 追加されるアリセプト錠10mg及び同D錠10mgに係る毒薬、劇薬の指定の要否を判断する 必要があります。  本薬は、「軽度及び中等度のアルツハイマー型痴呆症における痴呆症状の進行抑制」の 効能・効果の取得時に、原薬を毒薬とし、5mgまで含有する製剤を劇薬として承認され ました。今般、「高度アルツハイマー型認知症」に関する効能追加に伴い、10mg製剤が 新たに追加されることになります。10mg製剤には、有効成分ドネペジルが1錠中に塩酸 ドネペジルとして10mg含有される経口錠ですが、毒薬・劇薬の指定基準がありまして、 経口投与での動物実験のLD50:300mg/kg以下の値を示すものを劇薬とすることにかん がみまして、既存製剤と同様に10mg製剤については劇薬とすることが適当であると考え ております。アリセプト錠10mg及び同D錠10mgの毒劇薬の指定の要否について、御審議 のほどよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問、御意見を お願いいたします。よろしいでしょうか。御異議がなければ、議決に入りたいと思います が、鈴木委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を 御遠慮いただくことにいたします。この件に関しまして毒薬・劇薬の指定案を可としてよ ろしいでしょうか。よろしければ、アリセプト錠10mg及び同D錠10mgの劇薬指定を可と するということで、薬事分科会報告とさせていただきます。ありがとうございました。  続きまして、報告事項に移りたいと思いますので、御説明をお願いいたします。 ○機構 議題2「医薬品ノボラピッド注300他4品目の製造販売承認事項承認について」 報告いたします。資料9を御覧ください。本剤は、「インスリン アスパルト(遺伝子組換 え)」を有効成分とするインスリンアナログ製剤であり、「インスリン療法が適応となる 糖尿病」の効能・効果で承認されております。今般、ノボ・ノルディスク・ファーマ株式 会社から、遺伝子発現構成体の変更を含む原薬の製造方法の変更を実施するための申請が 行われ、昭和59年3月薬審発第243号通知に基づき、この内容については1枚目の裏の 備考欄を見ていただきますと分かりますが、この医薬品については1-(1)新有効成分含 有医薬品として取り扱われるものです。審査の結果、申請製剤と現行製剤との同等性が確 認され、再審査期間の新たな設定等を要さないと判断されました。なお、製剤の処方及び 製造方法、効能・効果及び用法・用量等については現行製剤と全く同じとなります。医薬 品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしまし た。  続きまして、議題3「医薬品フェンタニル注射液0.1mg「三共」及び同0.25mg「三共」 の製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。資料10を御覧ください。 本剤は、ピペリジン系の麻薬性鎮痛剤であり、現在は、全身麻酔、全身麻酔における鎮痛、 局所麻酔における鎮痛の補助、激しい疼痛(術後疼痛、癌性疼痛など)に対する鎮痛の効能 ・効果で承認されているものです。今般、第一三共プロファーマ株式会社から、全身麻酔、 全身麻酔における鎮痛の効能について、小児の用法・用量を追加する製造販売承認事項一 部変更承認の申請がなされたものです。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本 剤を承認して差し支えないと判断いたしました。  続きまして、議題4「医療用医薬品の再審査結果について」報告いたします。資料11 を御覧ください。対象となっているものは、一般的名称として酢酸リュープロレリンで、 販売名はリュープリン注射用3.75他2剤です。今回の再審査の対象の効能としては、子 宮内膜症関係と中枢性思春期早発症関係です。9ページの総合評価を御覧いただきたいと 思いますが、この品目について、市販後の使用成績調査、特別調査の成績等に基づいて企 業から再審査申請が行われて、再審査をした結果としては、薬事法第14条第2項の中に ある承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の 現在の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定いたしました。以上で す。 ○永井部会長 ありがとうございました。三つ報告がございました。議題2が製造方法の 変更、議題3が小児への適応拡大で、これは医師主導治験が行われて、そのデータを基に した最初の申請であると伺っています。以上、三つの件について御質問、御意見はござい ますでしょうか。 ○澤田委員 参考までに教えていただきたいのですが、医師主導のデータが出た場合に、 会社の方で申請しないと正式には承認にならないという理解でよろしいのでしょうか。 ○審議役 データを作るところに関しては、臨床上、特に必要性の高いものについて、医 師の方々が自らデータ作りをなさります。その作られたデータを利用して、実際に個々の 品物の承認を取って販売をしているのはそれぞれの企業ですので、そちらの企業が申請を するという形をとっています。  小児適応のものに関しては、特に企業においては採算性の観点から自らが治験に取り組 むことがなかなかできにくいという事情もあって、これについては、厚生労働省で小児薬 物療法の検討会等で取り組んでいる中で医師主導の治験が実際に行われたケースがあり ましたので、今回、このような申請に至ったということです。  このような採算性の悪い所について、医師主導の取組みが行われて、それが企業の申請 につながるという形で、取り残されている適応がきちんと手当てをされるというところに 道が開かれたと考えております。 ○澤田委員 例えば、厚生労働省の検討会でオーケーと判断されても、最終的には、こう いう形が望ましいということですか。 ○審議役 検討会でオーケーと言われるものの中に幾つかあって、これまで得られている 医学的・科学的知見に基づいて既に十分データがある場合は、いわゆる二課長通知と言わ れている、医学薬学上公知であるということで、改めて資料を作ることなく、既存の公開 されている文献等で申請するやり方もあります。  ただ、今回のものは、小児における用量の実際の評価に、まだデータが足りない部分が あるということで、幾つかのケースについて、今回設定しようとしている小児用量につい ての臨床上の評価を実際に行って、問題がないことをデータとして加えて、それで申請に 至ったということです。個々のケースによって、必要に応じていろいろなオプションが使 い分けられることになっています。 ○永井部会長 今回の場合は、二課長通知では対応できなかった、まだデータが足りなか ったということですか。 ○審議役 そういうことになります。 ○永井部会長 今までは禁忌とされていたということもあるわけですね。よろしいでしょ うか。もしよろしければ、ただ今の三つの件につきましては御確認いただいたことにいた します。  議題は以上でございますが、事務局から連絡事項をお願いいたします。 ○事務局 次回の部会は、既に御案内のように、8月29日(水)午前10時から開催させて いただく予定ですので、よろしくお願いいたします。 ○審査管理課長 一点報告させていただきます。この第一部会の委員の拡充を考えており まして、できますれば、この秋にも委員を追加させていただきたいと思っております。先 生方の働きが悪いなど、そういう話では全くございませんで、より充実した審議を行って いただくための措置でございますので、御了解いただければ有難いと思います。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。それでは、本日はこれで終了させていただきます。 どうもありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 河野(内線2746)