07/07/13 第1回介護予防の推進に向けた運動器疾患対策に関する検討会議事録 第 1 回 介護予防の推進に向けた運動器疾患対策に関する検討会 厚生労働省老健局老人保健課 第 1 回 介護予防の推進に向けた運動器疾患対策に関する検討会 議事次第   日  時  平成19年7月13日(金) 13:00〜14:55     場  所  全国都市会館第3・4会議室 1.開  会 2.議  題   (1)介護予防の推進に向けた運動器疾患対策に関する検討会について   (2)介護予防の推進に向けた調査研究の在り方について   (3)その他 3.閉  会 ○古元課長補佐 本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。定刻となりましたので、第1回介護予防の推進に向けた運動器疾患に関する検討会を開催させていただきます。  座長が選出されるまでの間、事務局がしばらく進行を務めさせていただきたく存じます。  まず、初めに、鈴木老人保健課長からごあいさつ申し上げます。 ○鈴木老人保健課長 老人保健課長の鈴木でございます。  本日は、委員をお引き受けいただきまして、また、お忙しい中お運びをいただきまして、大変ありがとうございます。  今日の会議は介護予防ということでございますが、これは平成18年4月に介護制度を改正いたしましたときにも、軽度の方が増えているということ、また、軽度の方の中には廃用症候群を初めとして、要介護状態を予防できる方が増えているということで、介護予防を一つの改正の柱にさせていただいたものですが、後ほど資料でも御説明いたしますけれども、当時、高齢者の中で介護を要する方が7人に1人ということでしたけれども、それを放っておくと6人に1人になってしまうということで、介護予防で8人に1人に持っていくということでしたが、今日の会議の主題は8人に1人を更に少なくして10人に1人にしたいということで、その柱は一つは今日の議題ではありませんけれども、認知症の対策。もう一つが、介護予防についてより一層推進するということでございまして、一つは研究等で今わかっていないことをどうやってわかっていったらいいのかということ。もう一つは、膝痛・腰痛、骨折等について今わかっているけれども広がっていないこと、しっかり行われていないことを市町村の介護予防事業の中でどう位置付けてどう行ったらいいかという2点を特に御議論いただければと思っています。  お忙しい中恐縮でございますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○古元課長補佐 続きまして、委員の方々の御紹介をさせていただきます。50音順に申し上げます。  天本先生、社団法人日本医師会常任理事でいらっしゃいます。  荒井先生、国立長寿医療センター研究所長寿政策科学研究部部長でいらっしゃいます。  岩谷先生、国立身体障害者リハビリテーションセンター総長でいらっしゃいます。  大渕先生、東京都介護予防緊急対策室室長でいらっしゃいます。  鈴木先生、東京都老人総合研究所副所長でいらっしゃいます。  戸山先生、慶應義塾大学整形外科学教授でいらっしゃいます。  中村先生、産業医科大学整形外科学教授でいらっしゃいます。  水間先生、昭和大学医学部リハビリテーション医学診療科教授でいらっしゃいます。  どうぞよろしくお願いいたします。  本日は、委員全員に御出席をいただいて会を開催させていただいております。  それでは、座長の選出に移りたいと思います。本検討会開催要項によりまして、委員方々の互選により決定することとなっておりますが、どなたか御推薦いただければ幸いでございます。 ○岩谷委員 慶應大学の戸山教授を推薦いたします。 ○古元課長補佐 ありがとうございます。岩谷委員より戸山委員の御推薦がございましたが、御賛同いただけますでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○古元課長補佐 ありがとうございます。  それでは、戸山委員に座長をお願いいたします。戸山委員、座長席に御移動をお願いいたします。 ○戸山座長 御指名いただきました慶應の戸山です。非常に大役ですけれども、本委員会の座長を務めさせていただきます。どうぞ各委員の先生方、よろしくお願いしたいと思います。  時間が2時間ほどと限られておりますので、早速議題に入りたいと思いますけれども、その前に、まず事務局から資料の御確認をお願いいたします。 ○古元課長補佐 お手元の資料につきまして、御確認をさせていただきます。机上配付しました資料が大きく6種類、資料1〜6までございます。資料6につきましては、資料6−1及び6−2。6−2はA3の大きな資料となっております。不足等がございましたら後ほど御指摘いただければと存じます。  あと、委員の先生方につきましては、参考資料1として「新健康フロンティア戦略」というものをおつけてしておりますが、こちらは委員限りの配付とさせていただいております。  資料の不足・落丁等ございましたら、随時で結構でございますので事務局まで御連絡をいただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。 ○戸山座長 ありがとうございました。御確認いただいてよろしいでしょうか。  それでは、早速議題に移りたいと思いますけれども、お手元の資料の議題2、介護予防の推進に向けた調査研究の在り方、この点に関しまして十分時間を割きたいと思っておりますので、是非よろしくお願いしたいと思います。  まず、議題1、介護予防の推進に向けた運動器疾患対策に関する検討会について、本検討会の設置の趣旨につきまして、事務局より御説明いただきます。よろしくお願いします。 ○古元課長補佐 それでは、議題1につきまして、資料1から資料4に従いまして御説明をさせていただきたいと存じます。  まず、資料1を御用意いただければと存じます。1ページでございます。「介護予防の推進に向けた運動器疾患対策に関する検討会について」、本検討会の目的は新健康フロンティア戦略において、介護予防対策の一層の推進の観点から、介護予防及び膝痛・腰痛対策といった運動器疾患対策の推進が必要であるとの方向性が示されたことを受け、今後の介護予防の一層の推進に向けた運動器疾患対策の在り方について検討を行うことでございます。  この新健康フロンティア戦略につきましては後ほど御説明させていただきますが、平成19年4月18日に取りまとめられたものでございます。  本検討会における検討内容を下段に書かせていただいております。本検討会におきましては、介護予防の一層の推進に向けた運動器疾患対策を推進するため、今後の調査研究の在り方についての検討を行うとともに、市町村などにおける骨折予防及び膝痛・腰痛対策を中心とした運動器疾患対策の在り方などに関する検討を行う。先ほど鈴木課長より申し上げましたとおり、調査研究の在り方及び市町村において実際にどういった取り組みが必要なのか、こういった大きな2点につきまして御検討をいただければと考えております。  2ページ、スケジュール案でございます。今回、第1回検討会といたしまして7月13日に開催させていただいております。今回は調査研究につきまして各委員から意見を述べていただき、議論をさせていただきたい。  第2回は予定でございますが、7月26日を予定しておりまして、こちらで調査研究の在り方について、一定程度の取りまとめをお願いしたいと考えております。  第3回、第4回は今年度中に行いたいと考えておりますが、そちらの中では市町村等における実際の運動器疾患対策の在り方について御議論をいただければと考えています。  こちらはスケジュールの案ということで、たたき台をお示ししたものでございます。  これが本検討会の概略でございまして、続きまして、資料2をごらんいただきたいと思います。「新健康フロンティア戦略について」ということでございまして、今回の検討会が開催するきっかけとなりましたものでございます。  1ページ、木のような絵が描いてある紙でございますが、こちらが概要でございます。内閣官房長官主催の新健康フロンティア戦略賢人会議において、新健康フロンティア戦略が平成19年4月18日に取りまとめられております。この中では、幾つかの国民の健康の向上に向けた軸が示されておりまして、2ページに戦略のポイントといたしまして、(1)の(6)介護予防対策の一層の推進、介護予防力の向上というものがうたわれております。今回の検討会はこちらの戦略を強力に推し進めるために、皆様から御意見・御検討いただきたいという位置付けでございます。  3ページ以降は参考でございまして、新健康フロンティア戦略賢人会議のメンバーといたしましては、座長に黒川先生を置いて、以下メンバーを記載させていただいております。  また、4ページ、5ページは、賢人会議の下に各分科会というものが置かれておりまして、5ページの(3)働き盛りと高齢者の健康安心分科会、こちらの分科会の中で介護予防についての議論がなされました。また、その中で戸山座長によりますプレゼンテーションもなされまして、運動器疾患の重要性について意見が述べられたところでございます。  続きまして6ページ、新健康フロンティア戦略の全文はホームページでもダウンロードできます。本日委員の先生方には参考資料でおつけさせていただきましたが、その中で介護予防対策部分の抜粋を掲載いたしております。(2)で、運動器疾患対策の推進、骨、関節、脊椎の痛みによる身体活動低下、閉じこもりの防止ということで、こういったことを鋭意進めていく必要があるということが戦略にうたわれております。  7ページは参考でございまして、8ページをごらんいただきたいと思います。実際に数値といたしまして、介護が必要となった主な原因ということが書かれております。これは国民生活基礎調査の結果でございますが、斜線が入っております部分、関節疾患等、もしくは骨折・転倒が主な原因として介護を要する状態となった方の割合でございます。上段が女性でございますが、年齢層を問わず女性は2〜3割程度を占めるという状況でございます。男性でも1〜2割程度を占めると、こういった状況がありまして、ここを予防することによって要介護の方を減らすことができるのではないかといった考え方でございます。  9ページは、先ほど鈴木課長より御説明させていただきました要介護者を今後どういった形で減らしていくのか、基本的な考え方のスキームの図でございます。健康フロンティア戦略というものが平成16年に取りまとめられておりまして、この戦略の目標として要介護者を7人に1人から10人に1人に減らそうと。その目標の時期としては平成26年までに10人に1人に減らそうということが健康フロンティア戦略の中で述べられております。  図の一番左側でございますが、要介護者は高齢者の約7人に1人というのが現状でございます。こちらにつきまして、これまで例えば平成18年度介護予防サービスの導入等によりまして、高齢者8人に1人までは持っていけるのではないかといった取り組みを行っているところでございますが、今後、更に運動器疾患の対策及び認知症対策といったものを進めることによりまして、平成26年には要介護者の割合を高齢者の10人に1人にしようと。今回の検討会では8人に1人を10人に1人にする部分の具体的なさまざまな取り組みについて御検討いただければと考えております。これが全体の考え方でございます。  次に、資料3でございます。こちらは御参考までに御説明させていただきます。政府全体としての研究事業の考え方、方向性についてのスライドでございます。  内閣府に総合科学技術会議が置かれておりまして、我が国の科学技術についての基本的な施策が検討されている会議でございます。  2ページの上のスライドに技術会議のメンバー、安倍内閣総理大臣を筆頭に、こういったメンバーでされております。  3ページをごらんいただきまして、現在、科学技術政策の中では第3期科学技術基本計画の途上におります。こちらは平成18〜22年度でございまして、その中に6つの大目標が掲げられております。その中の1つが、上のスライドの右下に書いてございます、生涯はつらつ生活ということでございまして、ライフサイエンスの分野の中で生涯にわたって元気で健康な日本を実現していこうといった大きな軸に介護予防の研究は乗っていく必要があるだろうと考えております。  5ページをごらんいただきたいと思います。もう一つの大きな政府全体の流れといたしまして、イノベーション25というものがございます。こちらは平成19年6月1日に閣議決定されたものでございますが、その中でイノベーションで拓く2025年の社会、下のスライドでございますが、生涯健康な社会をつくっていこうではないかということが打ち出されております。  6ページをごらんください。この中で特に強く打ち出されておりますのは、上のスライドでございますが、社会還元加速プロジェクトということでございます。こちらは、技術としては確立されつつあるけれども、それらの技術をなかなか国民が享受できていないという現実があるのではないかという問題意識から、積極的にそういった社会還元を加速していくような取り組みに重点を置いていこうということでございます。6ページの下のスライドに詳細が書かれておりますので、後ほどごらんいただければと存じます。  最後に、8ページをごらんいただきたいと思います。平成20年度、来年度の研究費用、どのような予算配分にしていくかといったときの基本的な考え方を書いたものでございまして、まず基本姿勢でございます。第3期科学技術基本計画に掲げられた取り組みの加速。20年度に重点的に実施するべきものとしては、イノベーション25に基づき、早急に具体化すべき施策であるとか、第3期基本計画の着実な実行に向けて必要な取り組みといった全体の枠の中でどういった調査研究を進めていく必要があるのか、特に社会還元にいかに加速していくのかといったところに重きを置かれているということでございますので、その点御理解いただいた上で本日御議論いただればありがたく、資料を用意させていただきました。  資料3につきましては、以上でございます。  続きまして、資料4をごらんいただきたいと思います。 ○田中課長補佐 代わりまして、老人保健課、田中が説明させていただきます。  資料4、運動器疾患に関する現在の調査研究事業をごらんください。構成といたしましては、最初の6ページが厚生労働科学研究補助金事業による運動器疾患を取り扱ったものを一覧化してございます。その後半、7〜10ページは文部科学省の科学研究費補助金で運動器疾患を取り扱ったものを一覧化してございます。  最初の1〜2ページが骨折、骨粗鬆症に関する課題、3ページが膝痛、4ページが腰、5ページが介護予防などを扱ったテーマをその他としてまとめさせていただきました。  運動器疾患につきましては、長寿科学研究以外にも他の厚生労働科学研究補助金事業で数課題取り扱われております。一覧の研究課題名におきまして、両括弧の数字が付されております課題については、他事業で扱っておる課題でありまして、その他事業の一覧が6ページにお示ししております。  課題の検索方法でございますが、老健局が所管しております長寿科学総合研究事業に関しましては、平成17〜19年に採択されたものの中から運動器疾患に関する研究及び廃用症候群、介護予防を研究テーマにしていると考えるものをタイトルから判断して一覧化しております。  更に、厚生労働科学研究に関する情報が検索可能な厚生労働科学研究成果データベースより、骨折、骨粗鬆症、腰痛、腰椎症、膝痛、関節症などをキーワードとして検索した結果から、平成17〜19年に採択された運動器疾患に関する研究課題を加えてございます。  同様に、文部科学省のデータベース、科学研究補助金採択課題成果概要データベースより、骨折、腰痛、膝痛、膝痛、関節症をキーワードとして、基礎医学的な研究、加齢変化を伴わない病態、例えば顎骨折であったり、悪性腫瘍の骨転移等を除外したものを一覧化してございます。  委員の皆様のみになっておりますが、お手元の参考資料としてクリップどめのものがあると思いますが、タイトルが「最近の運動器疾患に関する主な研究課題」となっておりまして、こちらは厚生労働科学研究のデータベース、あるいは文部科学省の研究補助金採択課題成果概要データベースより概要部分をプリントアウトさせていただいたものです。一部データベース化されておりません厚生労働科学研究につきましては、研究の申請書の概要部分をワード文書にて打ち出したものを添えてございます。  私からの説明は以上です。 ○戸山座長 ありがとうございました。  ただいまの事務局からの御説明に対しまして、何か御質問等ございましょうか。よろしいですか。もし、ありましたら、後ほどでも結構ですので御確認いただいて、御質問いただければと思います。  それでは、続きまして、議題2に移らせていただきます。介護予防推進の観点から取り組むべき研究課題についてに移りたいと思います。まず、事務局から議題の趣旨について御説明いただきます。よろしくお願いいたします。 ○古元課長補佐 それでは、手短に趣旨を御説明させていただきます。  冒頭で申し上げましたとおり、今回の検討会及び第2回におきまして、今後の調査研究の在り方について集中的に議論をさせていただきたいと考えております。つきましては、委員の先生方には事前に様式を送らせていただきまして、今後どういった調査研究を行うべきかといったことを事前に登録いただいておりますので、後ほど御発表いただければと考えております。  その際にでございますが、社会還元が強く求められているということもございますので、例えば、その研究をすることによって5年後には要介護者をどの程度減らすだけのインパクトがあるでありますとか、例えば、研究に掛かるコストがどの程度であるといったことも可能な範囲で結構でございますので、交えながら御発表いただければと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。  以上でございます。 ○戸山座長 ありがとうございました。この趣旨に関して、何か御質問ございますか。 ○大渕委員 調査研究というのは、どのような範囲の調査研究なんでしょうか。 ○古元課長補佐 具体的なイメージとしては、例えば、厚生労働科学研究の中で取り扱える範囲のものといったことでございますので、当然いろいろな切り口があると思います。ただ、申し上げましたとおり、社会還元に割と近しいようなイメージがつくようなものを中心に、介護予防の観点から御発表いただけるのが本検討会としてはありがたいなと考えております。 ○大渕委員 ある程度介入もあり得るわけですよね。全然介入なしの調査研究は、この場合には不適当じゃないかと思うんですけれども、それはいいんですよね。ある程度の介入ということはよろしいんですね。 ○戸山座長 私は座長なんですけれども、トップバッターとして新健康フロンティア戦略にこの運動器の重要性が入ったということから、この検討会が立ち上がったという経緯について少し御説明させていただきたいと思います。  先ほど事務局からお話がありましたように、第3分科会というところで働き盛り高齢者に対応するということで、私が参考人として呼ばれまして、5〜10分少しお話をさせていただきました。そのときのスライドを資料5にあります。これとは若干異なって用意してきたので、まず初めに、その辺のところで各委員の先生方に御説明申し上げたいと思います。  それでは、座って御説明させていただきます。介護予防の推進に向けた運動器疾患対策、骨折、膝痛・腰痛に対する総合戦略ということでお話をしたいと思います。  これが新健康フロンティア戦略のときのファーストスライドでありますが、働き盛りと高齢者の健康課題ということで、国が求めております健康寿命延伸に向けた重点対策、健全な運動機能というものが必要だということことで、運動器の重要性ということを述べてまいりました。その中でも特に骨折、骨・関節障害、脊椎障害への対応ということでお話をさせていただいております。  御存じのように健康日本21というものが2000年からスタートしまして、昨年中間評価がございました。その中に運動器としましては安全に歩行可能な高齢者の増加というものが入りました。もう一つ、たしかメタボリックシンドローム、たばこも入ったかと思いますけれども、また、昨年、健康づくりのための運動指針2006というものがつくられました。その中では一日1万歩、1週間に23エクササイズの運動をしましょう、また、御存じだと思いますが「1に運動、2に食事、3に禁煙、最後に薬」という文言で、運動というものは非常に重要であるということが文言として出たわけであります。  ただ、これには条件がございまして、健康な健全な運動器があってこれに向かうということでありますので、骨折があったり、膝痛・腰痛があると、こういう運動器疾患を合併していますと歩けない、運動できないということになります。その結果、下肢機能が低下する、体重が増加する、閉じこもりになる、そして、精神面が悪化して、いわゆる生活習慣病も増加につながりますし、この主であります要介護、寝たきり高齢者の増加につながるということになります。  これも御存じだと思いますが、厚生労働省が3年に1回やっております国民生活基礎調査の中では、自覚症状としての運動器が1、2位、また女性でも腰痛、肩こり、関節炎等々ということで上位3つ、また実際に受診する病名も高血圧の次について腰痛やその他肩こりや関節痛が多いというのが事実でございます。  また、これを詳細に見ますと、1位が高血圧ですけれども、青が生活習慣病であります。赤が運動器の疾患でありますが、ベスト10の中の多くは青と赤が目立つということで、生活習慣病と機能病の対応が迫られているということでございます。  その中で、特に変形性関節症、脊椎症、いわゆる膝痛・腰痛というものは年齢でどうかとなりますと、これから高齢化に向かいまして、ピンクが脊椎、黄色が関節症でありますが、年齢とともに非常に多くの原因を占めるという形になって、非常に増えるというものが事実としてございます。  実際の数ということになりますと、青の生活習慣病は非常に検診制度が行き渡っておりますので、高血圧3,500万、糖尿病740万、裏では1,000万、2,000万という数字も出ておりますけれども、メタボリックも940万等々の数字が出ておりますが、今日ここで御議論いただきます運動器に関しましては、推定ですが変形性腰椎症が3,000万強、変形性膝痛も3,000万、また、リウマチが70〜80万、頚部骨折が年間現在14万人ぐらいとも言われております。  これも厚生労働省の資料でございますけれども、高齢者の機能低下には特徴があるという一つの方向が出されております。つまり、転倒や骨折、関節症等の筋骨格系の疾患によって下肢機能や基礎体力の低下が引き金となって、だんだんと要介護が重症度になるという事実でございます。  これは御存じだと思いますが、2000年4月にスタートした介護保険制度ということで、当初218万人、3兆6,000億円というのが、昨年2006年3月には実に倍に膨れ上がって、予算も6兆5,000億円になったという事実であります。このうちの特に要支援・要介護1、2と軽いところに運動器疾患というものがたくさん含まれていると。ですから、ここのところの対応が非常に重要になるということでございます。  また、これも御存じだと思いますけれども、40〜65歳ということになりますと、ここに書いてあるような疾患群というものがあって、しかも、要支援・要介護の認定を受けると介護保険という形になります。その中では膝、股関節の変形性関節症、リウマチ、OPLLというのは後縦靱帯骨化症です。そして、脊柱管狭窄症や骨折を伴う骨粗鬆症というものが疾患群として明記されています。  国は健康寿命を延伸しよう、そして、できるだけ元気な体でいようという国民健康づくりが進められておりますけれども、要支援の第2位が関節症、第4位が骨折・転倒という原因がございますし、要介護では4位が骨折・転倒、5位が関節症ということからもわかりますように、骨折、膝痛・腰痛、骨粗鬆症の克服ということが、この要支援・要介護からの脱却の中では非常に重要なポイントになってくるということであります。  その中でもう少し詳しく御説明しますと、まず、骨折ということでありますが、これは2004年に新潟大学がある新潟県の地域で出したものでありますけれども、ピンクが女性でありますが、高齢とともに特に女性を中心にして非常に大腿骨頚部骨折が増えるという事実がございます。当然、骨粗鬆症というものとパラレルではありませんけれども、骨粗鬆症がかなり主要な因子であることは間違いなさそうであります。  その発生ですけれども、これもある報告では2000年で10万人、それが現在大体14万人ぐらい。それから、10年ぐらい経ちますと20万人を超えるという予測がされております。非常にこれも大きな問題ではないかと思います。  ということで、私の方としましてプレゼンテーションしたのは、この大腿骨頚部骨折に対しては、骨粗鬆症、骨強度、下肢運動機能の検診体制の構築や骨粗鬆症の病態解明、基礎研究、また、骨強度等々の診断法の確立、若いころからの運動習慣の普及・推進、そして、生活指導、運動療法、骨粗鬆症治療薬による骨折発生の予防、更には転倒予防教室等々によってこれを予防したり、それから、ヒッププロテクターによって予防するというもの、ないしは低侵襲の手術法までも含めた総合的な戦略が必要であろうということをお話ししました。これらによって、頚部骨折というものは可能な限り半減ということを少し大きく話しましたが、そのような目標ということでお話ししました。  次に、骨・関節障害でございます。これは、なかなか我が国においてどの程度の実数というのは出ていなかったんですけれども、東京大学の吉村先生がある地域で患者さん以外に地域住民を対象にしてやりました。それによりますと、レントゲンで分類があるんですけれども、ある程度の分類上、すなわちKellgrenの2度以上ということになりますと、50歳以上が男性で約半分以上、女性が75%、その患者数は実に合わせて3,080万人と非常に大きな数が出されたわけでございます。  こちらが膝のレントゲンですけれども、このように変形性関節症が進みますと、ほとんど関節面がなくなって日常生活動作、歩くことも非常に困難ということで、当然要支援から要介護の中に完全に入っているという状況になるわけであります。  このレントゲンは、こちらが正常、だんだんとこれが変化してきて、シビアな関節症になると。  こうなりますと、最終的には人工関節以外なくなってしまうということでありますし、進めば進むほど治療コストは増大するということも事実でございます。実際これは2004年なんですが、このような人工膝関節というものは年間4万件です。それが2005年には4万5,000件と5,000件増えております。そして、インプラント、人工関節だけでなんと250億円が投資されているということで、入院費からリハビリからすべてを含めると莫大な医療費ということになるのではないかと思います。  そこで、どうしたらいいかということになりますけれども、このようなレントゲンの分類で言いますと、非常に初期の段階で検診体制ないし早期診断法を確立して、患者さんないしは一般住民の方からこの人たちをピックアップする。そして、関節破壊進行度、関節運動の機能というのはどんどん落ちてきて、要介護に行く手前のところで関節の重症化というものを防止するというのが一つ施策として考えられるわけであります。そうしますと、どういうことかと言いますと、一つは低侵襲かつ早期診断システムの構築ということが大事になってくるかと思います。この中では、いろいろな整形外科を中心にして研究がなされておりますが、関節ないし代謝マーカーというものを生み出すということ、また更に、レントゲン以外で非常によくわかるコンピュータによるX線の自動解析装置を用いる、ないしはMRIを用いた早期診断システムということが重要かと思います。  これは、東大グループが動いておりまして、コンピュータによる膝OAのX線自動解析装置であります。レントゲンでの見た目ではなくて、コンピュータのソフトによってこれを点数化して、ある程度重症度というものがばらつきなくわかるということが一つございます。  これはMRIでございます。レントゲンというものは骨の診断でありますけれども軟骨の診断が薄さがどうか、どれくらい薄くなっているかというものは、ある程度MRIでこのように早期診断も可能になってまいります。  もう一つ、関節マーカーというものがございます。これは破壊された関節、マトリックスというものが血液ないし尿中に出るものをチェックするということでありまして、ちょっと難しい説明になりますが、COMPとかアグリカン由来のフラグメントというものを血中や尿中でピックアップするということであります。例えば、COMPというものがありますが、これは初診時に血清COMPの高いものほど関節裂隙が狭小化、いわゆる狭くなって軟骨破壊が進行するスピードが速いというデータが国内外からも幾つか散見されております。  次に、予防プログラムではどうしようかという形になります。それには、運動療法とヒアルロン酸等々の注射ないしは内服ということも可能性があるかと思います。私どもの中でも今日は岩谷先生が出席されておられますけれども、運動器リハビリということで幾つかのエビデンスが実際に出始めております。また、海外からも膝OAに対するRCTによる運動療法が有効であるよというものも幾つかエビデンスが出てございます。ただし、患者数が少ない等々で大規模なものが必要かと思いますが、このようなものも出始めております。  幾つかいいですよというのがありますけれども、やはり至適運動プロトコルというものがまだ確立されていないという事実がございますので、この辺のところを今後検討していくことが必要ではないかと思います。  もう一つ、関節内ヒアルロン酸でございますが、これは関節液の主要構成成分であるヒアルロン酸というものが、変形性関節症に深く関係しているということであります。関節液の粘度が年齢とともにだんだん下がっていきます。特に、変形性関節症、リウマチ患者さんではこのヒアルロン酸というのは非常に低いということでありますので、これを関節内に注入してあげるということかと思います。  これは、幾つかのデータがありますけれども、その膝の関節が軽度ないし中等度にこれを行うとかなり有効である。しかし、シビアになってしまうと、なかなか有効性がない。この回数を重ねると、また改善率がいいというデータも実際示されております。  また、本当はどうかというものも今後は確かめる必要があるかと思いますが、内服でグルコサミンとかサプリメント等々になるということがあるかもしれませんが、『ビッグジャーナル』にもこれがいいというのと、いや、そうでもないという2つの意見が出ておりまして、この辺に関する効果というものも見極めて、場合によっては変形性の治療の有効なものになる可能性もあるかかなと思います。  更に、変形性関節症ですと膝関節の荷重軸が変形していきます。日本人では特にO脚になります。そうしますと、荷重軸で余計に内側が痛みますので、いろいろな装具というものが今つくられております。その装具をもって三次元動作解析で実際どの程度いいか、または新たな日本人に適した装具であるとか、また、こういう三次元動作解析によりまして、日常生活動作で膝にどのくらい負荷が掛かるかという科学的な検証もするべきではないかと思っています。  これを総括しますと、膝に関しましては早期発見、まず、基礎研究で病態解明をする、それから、診断・治療法の確立ということで、客観的で正確な診断法というものを開発する、また、有効性のある治療法を開発するということであります。  先ほど示したようなことをここに述べまして、関節症の重症化を防ぎ、膝痛の高齢者を30%程度減少させるような方向で動きたい。現在3,000万人ぐらいいますが、そのうちの700〜1,000万人ぐらいが膝が痛いということで病院にかかっているということでございますので、それを30%ぐらい減らすということが一つの方向かと思います。  最後に、脊椎障害でございます。このような腰の変形ということで、腰が痛くて外出できない、ないしは日常生活も非常に損なわれているという方が非常に多うございますし、これからは高齢化ですので、これも一つ大きな問題になるかと思います。  その中で骨粗鬆症がピンクで、椎体骨折、これは背骨ですが、高齢化になるとその椎体骨折も場合によっては女性ですと骨粗鬆症の半分ぐらいが骨折を有しているという事実があります。女性ですと7割ぐらいが骨粗鬆症になっているという報告もございます。  これは正常な脊椎であります。こちらが椎体でありますが、脊椎の圧迫骨折となりますと、崩れてこのような状態になります。これが骨粗鬆症の椎骨でございます。  これはレントゲンで見ますが、側面で見ますとこれが正常な椎体でありますけれども、つぶれるとくさび形にこのようにへこみます。このレントゲン1枚見ても痛かろうと。日常生活動作がかなり損なわれているということが御理解いただけるのではないかと思います。  この中で幾つか海外からのデータがございまして、50歳以上の女性が一生のうち圧迫骨折を起こす確率は40%、有病率は60代で8〜13%、70代で30〜40%というデータもございます。  これが、日常生活動作にどの程度影響するかというものもはじき出されておりまして、骨折のない人、痛みのない骨折も実際あるんですけれども、痛みのある骨折でありますと、日常生活動作が制限された日数は骨折で非常に多い。また、腰痛のために寝てしまう臥床した日数も、ない患者に比べると圧倒的に多いということで、これも解決なくして要支援・要介護を減らすということは難しいかなと思います。  また、1つ一度折れると、2つ目が折れるのが非常に多いということも言われておりまして、そのリスクが2倍ないしは既存の椎体骨折がある患者が新たな椎体骨折のリスクは約4倍になるというような報告もございます。  1つ起こると2つ目、3つ目が起こるということが事実でありますし、これが随時1個、2個、3個となりますと、身体機能もだんだん落ちていきます。それから、健康不安感や転倒の不安なども出てきますし、背中の痛みや疲労感というものも増してくるということになるわけであります。  また、これも非常に重要ですけれども、この脊椎の骨折が生命予後、すなわちそこからの予後、死亡にも関係するというデータも国内ないし国外から出ております。実際これは『Osteoporos Int』に載った2004年のデータですが、大体1,000例ずつでありますが、椎体の骨折が赤、大腿骨頚部骨折が青ですけれども、骨折が起こってから5年でかなりの患者さんは、ここで亡くなるわけではございませんが、いろいろな合併症ということで、このようにかなりのパーセントで死亡にも結びつくということでありますし、これをとめるということが非常に急務ではないかと考えております。  その一つとしましては、骨粗鬆症も若いうちに運動習慣を定着させて、できる限り骨量、骨密度を上げておくということが必然的に、女性ですとどうして閉経後になりましたら下がってきますので、できるだけこれを上げておくという運動も当然大事になってくると思います。  また、閉経後でも運動によって骨密度をある程度維持できますよという報告も幾つか出てきております。  それから、高齢者になっても運動を持続することによって、エビデンスはないよという×もありますけれども、○も幾つかあるし、わからないというのは△ですが、幾つか高齢者でも運動というものがいいよという報告も出ております。  また、最近は非常に強力な骨粗鬆症の治療薬が出ておりまして、リセドロネートを5年間プラセボで投与しますと、投与しない群に比べまして非常に腰椎の骨密度が上がるという報告もございます。それから、もう一つ、ビスフォスフォネートを投与しますと、複数椎体骨折が非常に抑えられるというすごいデータも実際に出ております。  また、どうしても背骨がつぶれまして、そのためには何か治療法、手術法というものもやらなければいかんと。そうしますと、非常に高齢者が多いので、これがいいということではありませんけれども、非常に侵襲の少ない安全で正確な、患者さんにとってすぐ退院できるような何か新たな治療法をつくり出す必要があるのではないかと思います。  総括しますと、骨粗鬆症の脊椎圧迫骨折については、このような骨粗鬆症、骨強度の検診体制、それから、骨粗鬆症の病態解明ないしは代謝マーカーなど、それから、若いころからの運動、生活指導、食事療法、骨粗鬆症治療薬によって発生を抑えるということが何よりも大切ではないかと考えておりますし、更に、再骨折予防診療マニュアル、これは一般にできておりますけれども、それを更に普及させる必要があるのではないかと思います。  もう一つ、腰部脊柱管狭窄症というものがございます。この主症状は間欠跛行と言いまして、座っていたり寝ているといいんですけれども、立ったり歩いたりすると足から腰がしびれてきて歩けなくなるという病気で、非常に高齢者に多く、QOLを大きく障害します。場合によっては排尿障害というものにも影響するということで、これも非常に増えてきております。  これは2005年のスパイナルシンポジウムで東京の218施設で4,000例からピックアップしたものですけれども、腰痛を主訴とする患者さんの実に40%が脊柱管狭窄症であったというデータがございます。  また、これは東北大学から借りたんですけれども、東北大学と関連施設で最近の手術例を見ますと、圧倒的に脊椎手術の中では腰部脊柱管狭窄症というものがますます増えているということでありますので、こうなる手前で何か抑えられる手段というものを講じなければいけないと思います。  この中で一つ2004年のデータですけれども、SF−36でやったんですが、赤が腰部脊柱管狭窄症、青が同一年齢のコントロールでありますが、明らかに身体的健康度、精神的健康度を見ましても、腰部脊柱管狭窄症の方が健康関連QOLではるかに落ちるというデータがございますし、先ほどのスパイナルシンポジウムでのデータでもありますが、1,665例の腰部脊柱管狭窄症の患者さんでは、実に9割が歩行がつらい、ないしは階段が半分ぐらいつらい、室内でもADL障害がある、外でもかなりな障害が出ているというデータが出ております。  その中で介入試験ではプロスタグランジンというものが間欠跛行というものをかなりよくさせるという方向も一つ出ております。  総括ですが、腰痛に対する検診体制というものを構築する、脊柱管狭窄症の病態解明、基礎研究、それから、診断サポート、早期診断法を確立して、生活指導、運動療法ないしは治療薬によってこの症状の出現を抑えるということが何より必要ですし、一般ないし医師向けの診療マニュアル、ガイドラインの作成ということと低侵襲手術かと思います。  最後になりますけれども、先ほど事務局からお話がありましたように、2050年ぐらいには非常な高齢化になって、10人に4人が65歳以上というデータも出されております。そうしますと、今現在は20%ですけれども、これが25%になりますし、要介護者が増えてくる。その中で現在7人に1人を10人に1人にするためのものでは、やはり運動器というものに注意し、運動器の改善、運動器に対する対策というものが急務ではないかと考えております。  その中でも特に骨粗鬆症という基盤において腰痛と膝痛と骨折、この3つを抑える対策というものが何よりも介護予防の推進に向けて必要な課題ではないかと考えております。  更に最後に書きましたけれども、それと並行してかなうのであれば、やはりそれに伴う基礎研究というものの充実も必要かと思いますので、骨粗鬆症であるとか関節症のこのような病態解明、代謝の研究、痛み、しびれないしは運動器の高精度の画像診断法の開発・研究、ないしは運動器の生体理学的研究や抗加齢医学研究等々、これらの基礎研究も同時に推進していく必要があると考えております。  どうもありがとうございました。  これは新健康フロンティアが立ち上がる前に、参考人として私が内閣府で御説明させていただいたことであります。行政の方も運動器というものが大切だということで、この対策なくして要支援・要介護を減少させる目的には届かないということで、本委員会の趣旨ではないかと理解しております。  私だけちょっと時間をいただいて恐縮なんですけれども、何か御質問等ございましたらお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。  それでは、早速、各委員から先生方の企画案について御説明願いたいと思います。私は大分時間をとってしまったんですが、先もありますので、できれば5分程度で企画案を御説明いただけるとありがたいと思います。  初めに、荒井委員からお願いしたいと思いますが、可能であれば介護でこのぐらい減らせる可能性がある、ないしは費用等々も含めて一言最後にお付け加えいただけるとありがたいと思いますが、もしなかったら結構です。よろしくお願いいたします。 ○荒井委員 では、提出させていただきました資料6−1をごらんいただければと思います。  私はもともと精神科でございまして、その後公衆衛生に転向して、今の国立長寿医療センターに在職しております。研究企画案を作成するようにとの御指示をいただきましたときに、私自身が研究の企画に関しては、個々の運動器疾患予防手法を詳細にということは、自分のバックグラウンドからも考えましてなかなかできないと思いましたので、そうではなくて、公衆衛生のバックグラウンドを生かしまして、むしろ今回の検討会の検討内容でもあります、例えば、市町村における骨折予防等の運動器疾患対策の在り方などに資する研究を考えようといたしました。もう一つは、一般人口に対してどういうふうにしたら先生方がおつくりくださる予防手法が浸透するのか、そういった観点から4つほど考えてみました。  まず、研究テーマ1というところは何かと言いますと、題が「市町村等の自治体における運動器疾患予防政策に関する研究」ということで、目的のところにも書かせていただいたんですが、ある運動器疾患予防対策を一般人口に広めるときに、当然市町村の規模ですとか住民の数、例えば、3,000人の方々を1人の保健師さんでケアしているところもあれば、そうでないところもございます。したがいまして、各市町村が持つリソースをきちんと把握することが必要だと考えました。把握した上で、どう活用していったら良いのかということについては、いまだ調査研究等が行われておりませんので、まずはリソース把握をすべきであると考えまして、このようなものを企画いたしました。  2点目ですが、こちらは「予防に関する研究」ということで、現在の運動器疾患予防については、特定の場所で行うものとそうでない日常生活中で行うものの2つがあると目的のところで書かせていただきました。ところが、日常生活の延長上で行われるものに対しては、達成感が低い場合も多く、長期間継続することが困難である場合も多いと考えております。こうしたことを、例えば、IT技術等を携帯等の端末を活用して、何とか運動器疾患予防療法を続けていけるような手法が開発できればと考えました。  これに関しましては、現在、高齢者である方に関してはITの技術を使うということについては若干難しいとは思いましたが、介護予防というのは、現在、高齢者でなくても高齢者になる前から予防を行うという観点からすれば、むしろ高齢者になる前の世代からこういったことを進めることも有効であると考えました。さらに、期待される成果としては一般人口における運動器疾患予防の促進が期待されると考えました。  続きまして、研究テーマ3といたしまして、高齢者に対して運動器疾患の予防法をどのように普及していったら良いのかということについては、この検討会に入れていただくに際しまして調べてみましたが、特に先行研究がなかったので、どういった伝達手段があり得るのか、また、それによってどういう効果が得られるのかということについて検討することが必要ではないかと考え、このようなテーマを提案させていただきました。  研究テーマ4というのは、「予防に関する研究」に分類されますが、「行動変容ステージに基づいた運動器疾患予防カリキュラムの開発」というタイトルで書かせていただきました。これは何かといいますと、高齢者における運動器疾患の予防を効果的に実践するためには、御本人の運動能力だけではなくて、その方の運動に対する意識というか態度に着目して予防カリキュラムを組むことが必要であると考えました。つまり、全く運動に無関心な人もいれば、少しだけ関心がある方、あるいはやるつもりではいるが、まだ実行に移していらっしゃらない方、そういった方をステージに分けるというモデルが提唱されておりますので、こういったモデルにつきましては、禁煙の予防につきましては既に効果があるという報告はありますけれども、介護予防に関して応用された研究報告例が私が文献検索をした範囲内では見られなかったので、こういった研究が有効ではないかと考えました。  これによる効果は何かと言いますと、それぞれのステージに合わせてカリキュラムをつくることで運動器疾患予防を効果的・効率的に実践する高齢者の方が増加し、予防を推進することができると考えました。  私が考えましたのは以上の4点、つまり、予防に関してが2つと、いわゆるその他、普及を中心とした研究テーマ2つです。  以上です。 ○戸山座長 ありがとうございました。  4つのテーマを御説明いただきましたけれども、このテーマ、企画に関しまして、各委員の方々から御意見・御質問をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。予防政策に関するテーマ、それから、普及啓発のテーマ、もう一つも予防ですね。いかがでしょうか。よろしいですか。  何かございましたら、また振り返って後ほどでも結構ですし、意見をお寄せいただければと思います。5分という大変失礼な時間を申して済みませんでした。テーマがたくさん出ている先生もいらっしゃますので、5〜10分程度でお願いしたいということにいたしたいと思いますので、よろしくお願いします。  それでは、続きまして、岩谷委員から御説明をお願いしたいと思います。 ○岩谷委員 私は4つ考えました。1つは、膝が痛い人と腰が痛い人は重なるんですね。住民調査を通して、どうして重なるのか、どちらが主なのかということを検討しましたが、両方が重なっていることが多くて、どっちが問題なのかが明確になっていません。また、医療機関への受診率も違います。膝の痛みと腰の痛みがどのくらい重なって、どちらがどれくらい生活上の不自由さに関係するのかを調べたらどうかと考えました。これをやることによって運動プログラムの最適化に役立つものと考えております。  2番目が、介護予防でいろいろな運動を処方しても、コンプライアンス(運動プログラムに参加しないまたは脱落する人が多いこと)がいつも問題になります。どうして脱落するのかということ、脱落する原因は何かということを調べる必要があると思います。経験的な発表ですけれども、認知症がかなり関係しているのではないかという御指摘がございます。  もう一つは、整形外科医からよく指摘されることですけれども、メディカルチェックをしたらリスクが高い人に運動を負荷したために脱落するのだと言われます。その脱落例をしっかり調査して、それに対する対策を、多分メディカルな対策になるだろうと思いますけれども、それをすることによって予防効果は上げられるのではないかと考えます。  それから、メディカルチェックを行い、さらに痛みなどをコントロールすることによって、運動療法への参加者数が増えて、効果が上がるのではないかと考えます。私は仮に、この予防事業への参加者を20%増やして、それから、ドロップアウトを半分くらいにできれば大変効果が上がるのではないかと考えたわけであります。  3番目ですが、これはちょっと外れるかもしれませんが、介護予防という視点から考えますと、整形外科疾患の中で頚髄症はもっと介護度は高くなる危険性が高い疾患です。膝・腰などに比べますと頚髄症の患者さんの要介護度は絶対に高いわけです。ですから、その頚髄症がどれくらい問題なのか、介護度を軽減する手法があるかを検討し、重症化を予防するような運動療法を開発するということが重要なことであろうと考えました。  4番目ですが、実際に腰痛や膝痛の有訴者の方々が長期的にどういう経過をたどるのかわからない。例えば、変形性膝関節症に対してある医療的な介入をした場合に、医療保険での診療報酬が150日に制限されたとき、その後どうなるのかがわからないんですね。慢性疾患患者では長期的にみると機能が低下していくと考えられます。それについて私が考えたのは健康手帳ではありませんけれども、運動器健康手帳というようなものを持っていただいて、年に1回とかの頻度で、長期的に診断と心身機能の評価を繰り返して行い、データを集積することによって、機能がどのようにして低下していくのかということがつかめるのではないかとしております。  こういうことをすれば、医療と介護の区分けということについて、多分何かが出てくるのではないかと考えております。  以上です。 ○戸山座長 ありがとうございました。  岩谷委員からは4つのテーマを御呈示いただきました。1つは、膝痛・腰痛の合併頻度と、それが生活活動上どの程度影響しているかということでございましたし、もう一つは、運動器リハビリテーションのコンプライアンスに関すること、それから、もう一つは、私は脊柱管狭窄症を述べましたけれども、頚髄症がより重要だぞというようなことをお示しいただきました。最後に、長期的に膝痛・腰痛の人がどういう経過をたどるのかということで、健康手帳というお話もいただきました。4つのテーマに関しまして、各委員の方々から御質問等ございますでしょうか。よろしいですか。また、岩谷委員の4つのテーマに関しましても、後ほどで結構ですので、何かございましたら御指示をいただければと思います。  それでは、続きまして、大渕委員からテーマについての御発表をお願いしたいと思います。 ○大渕委員 一部だけスライドで御説明したいと思います。  緊急的な課題というよりは少し長期的な課題なんですが、このように運動器の問題が非常に大事なのにもかかわらず、今まで議論されなかったというところが一つ問題ではないかと思っています。  その原因としまして、予防の歴史で見たときに、感染症から生活習慣病に移っていって、今は元気で長生きというところが必要になっているわけですけれども、その基本的な統計がそろえられていないというのが課題ではないかと思っています。  具体的には、こういうことです。予防の話をするときには大体、年齢調整死亡率ということになります。この死亡率というものを頭に持ってきますと、出てくるのは脳血管疾患ですとか、その前にありますもともとの問題だった結核の感染症の部分ですね。その後で出てきた脳卒中、現在の悪性新生物とか心疾患というところが課題になるわけですけれども、この中では運動器の疾患というのは全く出てこないわけです。  ですから、私が考えているのは、元気で長生きという国民が単に長生きではなくて、次に元気というところを求めておりますので、縦軸を生活の自立というものを持った統計を整備していく必要があるのではないかと思っています。今現在、元気というものを示すのは要介護の原因だけです。また、この原因の挙げられているものについても、系統的に調べられたものではないので、これらに対する疾患の影響ですとか、あるいは老年症候群の影響というものを長期的に見ていくようなことをしていかなければ、運動器の重要性というものがしっかりと認識されないのではないかと思っています。それがまず、私の第1のテーマです。「長期的な統計整備のために」ということで挙げております。  全体的な今までの研究を見ていきますと、ナチュラルヒストリーが弱いように感じています。画像の診断から、それが症状として現れるまでに本当に関連があるのかどうか、そういった研究が足りないように思います。そのうちの一つとして具体的に挙げましたのは、先生のプレゼンテーションにもありましたように、足部の変形と膝の痛みですとか、腰痛症が関係しているかということを調べたらどうかというのがあります。  骨粗鬆症の運動療法については、かなりエビデンスができているわけですけれども、ただ、日本国では特に大規模無作為化試験が足りません。これに対する骨の荷重などを見た介入方法をつくって、それに対する介入効果というものを見ていく必要があると思います。  ここで一つ提案したいのは、こうした介入研究が日本国で少ない理由の一つは、やはり運動器の疾患については特に介入に手間が掛かるからだと思っています。お薬であれば外来に呼んでお薬を処方することによって介入研究ができるんですが、例えば、運動処方をする場合は3か月なら3か月集まっていただいて、それに対して週2回とか週3回とか介入を加えていくとか、そういった研究が必要になってきます。これらが私たちも一生懸命やっておりますけれども、なかなか機関では受け切れないところがありまして、介入研究センターみたいなものがございまして、テーマによって対象者のコーディネート、介入の準備ということをしますと、研究費も効率的に使えますし、実際的に本当に大規模なものができるのではないかと思います。  実際に見てみますと、想定していた対象像と違う人を集めて、本来はすごく虚弱な人を集めたいんですけれども、実際片手間といいますか、そういう中でやっていますから、ぴったりした対象者が集められなかったりとか、あるいはきちんとした体制をつくれなくて脱落したりというような研究も多いと思いますので、そういう意味では大規模無作為化比較対象試験の推進に向けた一つの仕組みづくりというものが課題かなと考えております。  テーマ4でございますが、今まで出されたものにつきましては、割と医療専門職ですとか、あるいは自治体の職員が介入するというところが主でございましたが、セルフケアという観点から少し研究を立ち上げていったらどうかなと思っています。一つの取りかかりとして、膝関節症のセルフケアの検討です。  それから、ちょっとネガティブな指摘になりますけれども、膝痛・腰痛につきましては、多数の民間療法がございます。これらの民間療法に対しての被害等もございますし、これらに関する民間療法の効果を検討するような、これも一つの機関になりますけれども、そういった場所を利用しながら評価していくような仕組みづくりが必要かなと思っています。  大枠で申し上げると、この範囲でございます。  以上です。 ○戸山座長 ありがとうございました。  6題テーマを御提示いただきました大渕委員に関しまして、何か御質問・御意見等ございますか。よろしいですか。  それでは、続きまして、鈴木委員から御提示いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○鈴木委員 私の方は2題、いずれも高齢者の転倒ということに焦点を合わせたものを研究テーマとして提出させていただきました。  転倒の予防の重要性ということは非常によく知られていると思います。しかし、実際にこの10年、20年で本当に高齢者の転倒が減って骨折が減っているのかというと、残念ながら、それを科学的に示されているものがございません。一つは、やはり転倒の実態と日本人高齢者における危険因子の解明に向けた大規模調査が非常に大事なのではないかと思っています。  それに引き続き、転倒予防のための科学的な方策の検討ということです。先ほど戸山座長からのプレゼンテーションにもございましたけれども、転倒というのは非常に多いわけですし、これが大腿骨頚部骨折に直接結びつく原因であるということです。ざっとした試算ですけれども、転倒の発生というのは65歳以上ですと1年間にほぼ20%ぐらいの方々が転ぶと報じられております。これはかなり世界各国共通で、日本でもそうだろうということは十数年前に行われた調査でも確認されております。  10回転倒しますと、大体1回骨折が発生するということになりますし、その骨折10件のうちの1件が大腿骨頚部骨折とざっと考えられております。実際に大腿骨頚部骨折は厚生労働省の長寿科学研究でも明らかなように、大体年間で12〜14万件ぐらい、先ほどの戸山座長のスライドでもございました。恐らくその9割以上は転倒がかかわっているわけですので、簡単に言うと転倒を半減すれば大腿骨頚部骨折を半減することができる。もし、転倒を3分の1にまで減ずることができれば、大腿骨頚部骨折もそれに応じて減っていくということになりますので、非常に数値目標としては明確化できるだろうことで、ありとあらゆる手段を得て、この転倒発症とその予防は緊急のそして必須の課題と言えるのではないかと考えております。  それから、もう一つは、転倒予防のための取り組みというのは日本全国で行われております。自治体の約7割が何らかの形で転倒予防教室を持っていると言われます。しかし、残念ながら、そこで行われている転倒予防の実態というのは極めてお寒い状況でございまして、実際にそういうことで転倒が防がれたり、骨折が防がれたという報告は上がっていない。ですから、こういったことを通じて、科学的エビデンスを基にした標準的な転倒予防のプログラムをきちんと作成する。それを全国的に一律にやっていくという手法をとらない限り、真の転倒及びそれに基づく骨折は減らないだろうと思われますので、そのことに少し焦点を合わせた形でテーマを設定させていただきました。  以上です。 ○戸山座長 ありがとうございました。  鈴木委員からは2つ出ましたけれども、大腿骨頚部骨折も主に転倒ということでありますので、転倒に主眼を置いて危険因子や転倒をいかに予防し、少なくするかということを主眼に置かれた研究テーマかと思います。この2つの研究テーマに関しまして、どなたか御質問・御意見等ございましょうか。非常に数値を明確に示されまして、9割が骨折は転倒によるというお示しもありましたし、この転倒を抑えれば頚部骨折もかなり抑えられるという御指摘かと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。  それでは、続きまして、中村委員からテーマについて御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○中村委員 ちょっと狭い部屋をイメージしてまいりましたので、スライドが見苦しいところがありますが。  まず、骨折予防につきましては、やはり大腿骨頚部骨折の基本的なデータの集積が必要であるということであります。既に整形外科学会では1987年から、言わば学会のボランティアとして骨折発生数の調査を行ってきております。ここ4年前から厚生労働省の科研費をいただいて補助をいただいているわけですが、そのデータを見ますと、やはり傾向がある程度見えてまいります。したがって、こういうことに今後も是非お金を使っていただいて、世界の調査を助けていただければというプロジェクトは一つお願いしたいと思っております。  その内容を見ますと、確かに14〜15万人に掛けての発生数が予測されておりまして、まだわずかに増えております。しかし、1980〜2005年の発生数を見ていただきますと、1998年前後から2000年ぐらいまでは確かに上がってまいりました。しかし、2000〜2001年に掛けて70〜80代前半ぐらいまでは横ばいになってきているように見えます。60代後半は既にある程度減少傾向が見えてきているわけであります。しかし、最も大腿骨頚部骨折の発生数を増やしているのは85〜90歳でありまして、爆発的に今増えておりまして、この7年間で発生数は約2倍になっております。全体を合わせて実数発生調査数は約1万人前後でありますが、50%サンプリングですので、2万例ぐらいがここに来ている。この爆発的とも言える増加を抑制することがまず急務だろうと思います。  それが何によって可能かということを考えますと、一つは、薬物療法の進歩がありますので、これを何とか85歳以上の高齢者、コホートでもいいので、やはり本当に効果があるかどうか、エビデンスがまだない領域に踏み込むわけでありますので、そういった意味ではEBMがまだ証明できていない部分ではありますが、こういったことはやはり国家的な仕事として必要なのではないかと思います。  ここにつきましては、もう一つビスフォスフォネートに頼るということ以外の別のキーワードがあります。それはビタミンDです。私どもの1,000例以上の7年のコホート調査によりますと、結局1,000例前後、7年で骨折を起こしてインモビリゼーションになって死亡に至るという経過の中で何が一番効いてくるかというと、骨密度と25ビタミンDであります。そういう意味で、ビタミンDというもう一つのキーワードは非常に重要だろうと考えております。  NIHでは、3年前から変形性膝関節症の予防的な大規模臨床介入試験を既にスタートしていることがインターネットでも掲載されております。変形性膝関節症にいわゆる栄養素としてのビタミンDの有効性の有無を検討しようという状況ですので、一緒に大腿骨頚部骨折防止効果もそれで検討できるということも考えられますので、膝に関連して介入のプランをエヌセイドとグルコサミンというものを挙げておりますが、これは戸山座長が既に幾つかお出しになったものと一致しておりますので、これはこれとしてビタミンDといういわゆる栄養素をもう一度考え直す必要があるかと思います。  腰痛につきましては、大腿骨頚部骨折と同様に、やはり脊椎の圧迫骨折の重要性が非常に高いと思いますが、最近、身長低下そのものがインモビリゼーションから死亡率の増加に直接影響するというデータが日本でも世界でも出てまいりました。そういった意味で、この椎体骨折による背中の曲がりの防止がやはり急務ではあると思いますが、その効果をどのように判定するか、まず疫学研究が必要だろうと。更に、背中の曲がりによって起こる精神的な抑うつ状態も、QOL、ADLを障害する大きな問題点になるのだろうと思いますので、こういった評価とそれに対する介入を考えていく必要があるだろうということで、基本はビタミンD、ビスフォスフォネートというものを念頭に置いて、メーンターゲットは85歳以上の高齢者の大腿骨頚部骨折防止、まずここに置くのがいいだろうと。そして、経年的な大腿骨頚部骨折発生数については、是非このまま整形外科学会が行っている事業については、国家的な支援を続けるということをお願いしたいというか、そういう計画がいいんじゃないかということでプランをつくらせていただきました。  以上です。 ○戸山座長 ありがとうございました。  お手元の資料には9つのテーマを御提示いただきましたが、特に中村委員が強調した一つは、大腿骨頚部骨折のデータをお示しいただきまして、特に85歳、90歳代の方が非常に増えているということでありますので、それへの対応がまず急務だろうということをお示しいただきましたし、世界的にもそれに対する介入試験等々のEBMも出ていないので、これは取り組むべき課題ということをお示しいただきました。また、脊椎の圧迫骨折もそれ関して非常に重要ですし、それ以外にも腰部脊柱管狭窄症や圧迫骨折が精神的なところにも影響するので、その辺を見る研究も必要だろうという9つのテーマをいただきました。各委員の方々でどなたか御質問等がございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。  それでは、最後になりますけれども、水間委員から企画案等について御説明をいただきたいと思います。 ○水間委員 私は、リハビリテーションの立場から3つのテーマを出させていただきました。  提出いたしました資料には腰痛・膝痛対策両方書かれていますが、こちらのプレゼンテーションでは膝痛とさせていただいておりますが、私たちは従来障害を持った方々に対して対応しているわけで、そういう方々に幾つかの調査をしております。そうしますと、日常生活の活動性ということが患者さんの状態の維持等に影響を与えている、それは加速度センサーを用いて検討したり、ふだんの起居動作の調査からもうまく使っているという要素があるのかなと感じています。痛みがあると生活機能が低下するというのは当然だろうと思いますが、維持されているという方もいるのではないかと。実際にそういうことを経験するわけです。  そういうことで、日常生活の暮らし方、過ごし方という視点を見ておく必要があるのではないかと感じております。  1つは、和式生活、洋式生活という生活様式。和式生活であれば当然布団の上げ下ろしという動作も入るわけですけれども、これは新潟の古賀先生の疫学調査で正座習慣がある方というのが、膝OAの進行が少ないという報告を拝見して考えたことでございます。  もう一つ、日常生活パターンという、私どもが障害を持った方に対して調べた加速度センサなどの検査によりますと、例えば、日常の生活でかなり午前中に活動性が高い、午後になってくるとそれが低くなってくる。これはひょっとするとうまく使っているのかもしれない。これが痛みがある疾患に関してもそういうことが言えるのかどうか、その辺を調べてみたいと考えております。  パイロット調査と書きましたが、一定の地域で高齢者を対象に直接検診をするということで、そういうことを調べることはできないだろうかと思っております。  生活様式と過ごし方というのは、生活様式は当然姿勢とかそういう動作に影響を与える。過ごし方というのは、活動量が主かもしれませんが、どういう動作をすることがどのくらいの時間帯で多いだろうかと。それと、疼痛の関係、もしくは日常生活にそういう痛みがどれだけ影響を与えるかということを一つテーマにして調べてみようと思いました。  1−2という形にしましたが、これもアプローチのことなんですけれども、一つ新たな手法というのが何かできないかということです。これは当然、早期の診断システムというものがあってのアプローチということになりますが、一つは介護にかかわる方々が比較的どなたでもできるという方法が開発できないかということであります。先ほど大渕先生からもお話がありましたけれども、その方法を開発するということですが、ヒントになるものとしては、東洋医学的なアプローチの一つにそういう方法があるという報告もございます。  もう一つは、これも理学療法士の方がいろいろ行っている方法で、先ほど来お話もありますが、膝関節であっても体幹のコントロール、例えば、姿勢を改善することで症状が改善できるかどうかということも含めて、一つ新たな手法ということの介入、非介入という検討も意義があるのではないかと思っております。  3番目ですが、要介護状態と要支援、痛みがどれだけ本当に関係しているだろうかということです。これは、運動器疾患の記載というようなことで書いてしまいましたけれども、実際に調査での主訴という、患者さん側の訴えということでの介護度の関係性が調べられているわけですが、実際に認定審査会などでチェックをしていきますと、主治医病名がないという方はたくさんいるわけですね。実際の調査では痛みを訴えている方というのが多いわけです。それから、特記事項などでもそういうことがある、たくさん書かれていることが多いわけです。  ですから、実際には、要介護支援の要因というのが、患者さんの訴えもそうですけれども、要因としての重要性というものをもう一回調べる必要があるのではないかと感じております。本人の訴えが本当に介護の要因と関係しているかどうか。そうなりますと、ケアプランということが本当にそれに沿ったもので行われているのかどうか、つまり、進行させないためのプランというのが、そこに介入されているかどうかということをもう少し調べる必要があるだろうとは思っています。これは予防というところからは少し外れるかもしれませんが、こういうところを3つのテーマにさせていただきました。  以上です。 ○戸山座長 ありがとうございました。  水間委員からは、主にリハビリテーションの立場からかと思いますけれども、3つの研究課題について御提示いただきました。この御発表のテーマに関しまして、どなたか御質問・御意見等ございましょうか。よろしいですか。  本日、介護予防の推進に向けた運動器疾患対策ということで、私のものも含めまして各委員から40題弱でしょうか、取り組まなければいけない運動器疾患対策の研究課題を御提示いただきました。40課題すべてをここで取り組むというわけにもいきませんし、冒頭で事務局からも御提示いただきましたけれども、国側がイノベーション25という中で社会還元加速プロジェクトというものが実は掲げられております。その中で政府の方針としましては、できるだけ研究成果を早く社会に還元する方向であってほしいというものが示されております。よって、ここの検討会におきましても、今いただいた40題弱の課題の中から、やはり優先順位といいますか、ある程度一定の方向を持って、少しピックアップして運動器疾患対策に関して重要なもののランク付けをして御提示したいと考えております。そのような方向でよければ、そのように進めたいと思います。 ○天本委員 私だけ少し専門医とは違った立場から場違いかもわかりませんけれども、今日お話をお伺いした中で、運動器というから当然骨のことが中心で、筋肉というかそういう視点での予防、転倒などは筋力、バランス感覚の視点が重要だろうと思いますけれども、形態、機能、病理という中で、病理的なことから多分痛みということで、まず医療機関にかかられると思うんですけれども、いろいろな意味で一次、二次、三次予防という際に、二次予防において現在治療の現状がかかりつけの医師あるいは専門医との役割分担がどうなっているのだろうかと。多くの方々がほとんど疼痛管理といったことでとどまってはいないだろうかということを私は危惧します。きちんとした根本的な予防という形態的変化が微妙なところからの予防というのが非常に重要だろうと思うんですけれども、私がふだん診る限りはほとんど疼痛なので、勿論、専門医の先生方はいろいろ取り組んでいらっしゃるのだろうと思うんですけれども、多くの方はやはりかかりつけ医の機能という面においての予防という面でかかわることの重要性というものは、ほかの認知症においても軽度認知症とか自殺の面においてもかかりつけ医、精神科医以外の人たちのかかわり方の重要性と言われておりますので、その辺の実態がどうなのかということから、いろいろなことで考えられることはないだろうかと。  それから、介護予防の中で生活機能チェックというのがあると思うんですけれども、チェックの場合に採血とともに、生活の視点に立つと、やはり運動機能、筋力という視点を大きく向けていくことでの一次予防という視点というのが重要ではないだろうかと。それを形態的に骨の変化が出るもの、微妙なもの、多分専門医学でいろいろな意味で開発されているだろうと思うんですが、そういうことからの橋渡しというシステム、かかりつけ医の前の段階でのいろいろなチェック機構の中からのそういう点も実態がどうなっているのかという方向性においての実態調査というものも私は必要ではないかと思いますので、今日突然ですけれども、発言させていただきました。 ○戸山座長 ありがとうございました。非常に貴重な御意見だと思います。今、治療の現状が運動器に関してどうなっているのだろうかと。特に、疼痛の管理だけに目を向けているのではないかということで、非常に貴重な御意見だったと思いますし、運動器そのもの、骨どうのこうのというものと、やはり筋力、特に下肢の筋力というものは目を向けて対策に組み入れるべきであろうという、本当に貴重な御意見だと思います。ありがとうございました。  総合的で結構ですので、どうぞ。 ○中村委員 私も骨だけではなくて総合的なといいますか、筋力の重要性は非常に高齢者の脆弱性にとって大きな問題だと本当に思います。  先ほど鈴木先生もお話しになりました転倒などにつきましても、最近はいわゆるビタミンDとの関係が明らかになってきて、これは骨だけに効いているのではなくて、生理的に筋肉と非常に関係があると。そういった中で、実際に我々日本人の高齢者のビタミンD摂取の状況についての具体的なデータは、私は余り知らないんですね。ホスピタルデータだけです。ホスピタルデータで見る限り、85歳以上になった方の30%以上が血清25ビタミンDレベルで、いわゆる低ビタミンD状態だということもありますので、非常にスペイシフィックなことを言うようで恐縮ですけれども、やはり運動器の基本的な維持にとって、月並みですけれども、もう一度ビタミンDの高齢者の摂取状態というものを明らかにするとともに、ビタミンD摂取を進めることによって、今のような状況から少しでも改善するかどうかという見方が必要かなとは思うんですが、余り特異的な話になってしまって、非常に狭い話で恐縮ですけれども、筋肉との関連でそのように思いました。 ○戸山座長 ありがとうございました。今、中村委員からは、やはりビタミンDが非常に重要であるということと、転倒して結果が出るのは骨折であるけれども、その手前の段階によく目を向けて、特に骨折予防ということに関しては、その辺も踏まえて検討すべきであろうという御意見が出ました。  総合討論という形になりましたけれども、どうぞフリーで結構ですので、どなたか今日の企画の中で。 ○鈴木委員 今の天本先生あるいは中村先生から御指摘があったことで、私も高齢期の介護予防という視点に立って見ますと、運動器を構成する要素はすべて勿論大事だと思っております。けれども、御指摘があったように、筋力というのは極めて当人にとってもわかりやすい指標になると思います。勿論痛みというのは本人の痛みですから、誰もが痛切に改善したいと思うことですけれども、それと同様、高齢期になって本当に生活の体力がちゃんと残っているのかということも心配の大きな部分でございます。生活体力に関しては筋力がかなり大きい部分を占めておりまして、やはり介護予防をする視点から、例えば、検診でも筋力あるいは高齢期にサルコペニアと言って、筋力がなくなってしまう、そういったことがやはりスクリーニングとしてされるべきなのかなという点が一つ。  もう一つは、ただいま中村先生から御指摘があったように、ビタミンDがかなり下がっている方々が多く、そういう方々は明らかに転倒に結びついているというデータが出てきております。  ですから、私の提案にもビタミンDも含めて薬物療法の可能性ということで御提案させていただいているんですけれども、欧米人ではそういうデータがよく出ているんですが、日本人で本当に投与をしたときに効いてくるかというようなことも、今後非常に大事な研究課題になるのかなと思っております。  以上、2点付け加えさせていただきました。 ○戸山座長 ありがとうございました。筋力、それからビタミンDの意見を聞かせていただきました。  ほかの委員の方で、どなたか御意見をお持ちの方、総合討論で結構ですので、40題弱の課題の中で、ないしはもうちょっとこういうものを付け加えるべきとかございましたら、御意見をお聞きしたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。 ○岩谷委員 これは老健局のお話ですよね。現実的に高齢者の健康を増進するというときに、一つはコミュニティベースで行われる問題と、医療機関で行われる問題が出てきます。例えば、先ほど痛みの話をいただきましたけれども、痛みをコントロールすれば機能が上がるという状態は確かにあるわけですし、全体の計画としてその辺りのバランスをとって考えていく必要があるのではないかと思っています。ですから、一つは同じようなことをコホートで追い掛けると同時に、医療機関レベルで長期間に定点観測をするとか、そういうことを考えるのがよいのではないかと思っております。 ○戸山座長 ありがとうございました。時間も限られておりますので、いかがでしょうか。もう少しこの点は強調しておきたい等々ございましたら。 ○中村委員 ビタミンDのことで恐縮なんですが、私は本当に最近、日本の高齢者におけるビタミンDの欠乏状態が非常に重篤ではないかという気がして、データに基づくとそうなっております。それが実は活性型ビタミンDが医療機関において薬物で使用されることが非常に多くなったために、通常の栄養素としてのビタミンDに目が向けられなくなってきた。それで、実際のところ薬物としてのホルモン製剤である活性型ビタミンDと、いわゆるプレーンの栄養素としてのビタミンDは違う可能性がむしろある。そういったときに、岩谷先生がおっしゃったホスピタルでできるかというと、私はこういうビタミンDの補充の有無のチェックやその効果を見るには、コミュニティベースの方がむしろいいのではないかという気がします。  先生の今の御意見で、ホスピタルと両方いければという話だったものですから、ホスピタルでは恐らくビタミンDはいかないだろうと思いましたので、発言させていただきました。 ○戸山座長 ありがとうございました。  ほかにございますか。 ○大渕委員 私もコミュニティベースでビタミンの件、それから、介護予防の課題でまだ残っているのが運動機能の定期的な評価ということが全国に普及するというところまで至っておりませんので、そこをビタミンとともに運動器の機能を天本先生がおっしゃった筋力もそうですし、それから、バランス機能、代表的な歩行速度とかああいう機能的な面を全国的にデータを整備していくべきだろうと思います。  それから、もう一つは、先ほども申し上げましたけれども、運動器の問題ですから運動介入するのがプライマリー、一番直接的な介入だと思うんですが、運動器の介入は本当に手間が掛かるので、なかなか進まないというところがあります。特に、日本の場合は高齢期の方々が多くなってきて、運動器が課題になってきますので、運動に関する介入研究を進めるという視点を持って進めていくべきだと私は思います。  以上でございます。 ○戸山座長 ありがとうございました。 ○水間委員 私、先ほど生活の調査というところで話したんですけれども、筋力のことで思い出したんですが、私はポリオの方なども診ているんですが、筋力が非常に弱いような方でも、日常の生活のパターンを見てみますと非常に上手に使われていて、それは動くとときと休息を上手に使い分けている。ですから、やはり高齢者の方が痛みだけではなくて疲労なり何なりそういうことが起きないように上手に使われている方と、かなりトレーニングを一生懸命やるような方で、逆にマイナスになるようなこともあるのではないかという気もして、ああいう調査も必要かと思っております。  筋力ということで追加させていただきました。 ○戸山座長 ありがとうございました。  健康日本21のところで安全に歩行可能な高齢者の増加というのは、そういう筋力とかバランスも含めて実はそういうところに入っているので、当然その流れとしてはこういう形で対応するということは本当に必要かと思います。大体よろしいでしょうか。  第1回目ということで、先生方から多くの研究課題を出していただき、また、総合討論でも貴重な御意見をいただきました。ただ、先ほど私からお話ししましたように、政府の方針としましても、10年、20年、30年ということで社会へ還元というよりは、可能な限りある機関においてその成果というものを社会に還元してほしいということがございますので、かなうのであれば比較的5年ぐらいをめどで、ここの研究テーマの中で社会に還元できるような、そういう成果が望めるようなものを優先という形、また、実際に要介護を減らそうということでございますので、それに一定の根拠が示せるような研究課題ということを優先的に取り上げる方向でいかがかと思いますが、その点はよろしいでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○戸山座長 ありがとうございます。では、そういう方向で進めさせていただきたいと思います。  次回ですけれども、今日四十数題、それから、総合討論でもビタミンD、筋力を含めて非常に貴重な御意見が出ました。それらを含め、もしよろしければ、今いただいた課題のところで優先、その方向に沿って取りまとめ案というものをつくらせていただいて、その案をたたき台として、次回にまた各委員の方々から御意見をいただいて、運動器対策に関する5年をめどとした結果が出るような対策がつくれればと考えております。そういう方向でよろしいでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○戸山座長 ありがとうございます。  時間も間もなくとなってまいりましたけれども、各委員の中で最後に意見を一言ということがありましたら述べていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。 ○天本委員 ちょっと質問なんですが、大腿骨頚部骨折は90歳ぐらいでダーッと増えているんですね。膝関節は80歳ぐらいになると横になっていたような気がするんですけれども、そうなんでしょうか。 ○中村委員 大腿骨頚部骨折につきましては、お示ししたように2001年前後から横ばいになっているのは、やはり何らかの介入が掛かって、これはビスフォスフォネートだろうと思いますが、その対象となった方々がある程度効果を発揮されている、それが出ているんじゃないかと思われます。したがって、それがなければ変形性膝関節症と同じ状況になっているということだろうと思います。これは解釈でしかありませんけれども。 ○岩谷委員 お聞きしていいかどうか迷っていたんですけれども、実際は医療保険で運動器リハビリテーションの日数制限が問題となって、医療課ではその後の受け皿は介護保険ということが言われていますが、それとこれとの関係について何かお考えなんでしょうか。それから全く切り離してのお話でしょうか。 ○鈴木老人保健課長 御指摘のように、リハビリテーションの中で急性期と回復期は医療保険で、維持期は介護保険でということになっていますが、実際上なかなか今の介護保険下のリハビリテーションがすべての維持期のリハビリテーションを見られるわけではないということで、今年4月、若干医療保険にも対応していただいたわけですが、将来的には介護保険の中でのリハビリテーションも是非維持期のリハビリテーション、少なくとも運動器関係のリハビリテーションは対応できるようにしたいと思っております。  ただ、直接そのこととこの介護予防がすぐリンクするかというと、なかなか難しいと思いますが、ただ、無関係かというと必ずしもそういうわけではなくて、勿論リハビリテーションをきちんとやっていくということが、ある意味で言うと一旦ADLが下がっても、また再発しないとか、そういうことを予防する、悪くなるのを予防するという意味では関係があると思いますけれども、直接的なリンクではもしかしたらないかもしれません。 ○戸山座長 ありがとうございました。  本当に今日は貴重といいますか、運動器疾患対策に関して多くの研究課題をいただきまして、ありがとうございました。  それでは、私の方で、今日の研究課題で優先的なものを含めてたたき台つくり、この次に御提示させていただきたいと思います。引き続き、委員の皆様方におかれましては、よろしく御協力のほどお願いしたいと思います。ありがとうございました。  では、最後に事務局から何かございましたら、よろしくお願いします。 ○古元課長補佐 どうもありがとうございました。次回の検討会でございますが、既に委員の先生方にはお伝えさせていただいておりますとおり、7月26日木曜日、同じ時間の13時から、本日と同じ建物の3階にて開催させていただく予定とさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。  本日はお忙しい中、誠にありがとうございました。 (終了)                     照会先:老健局老人保健課 連絡先:03-5253-1111 担当者:課長補佐 天本(内線3963)   保健指導係 大塚(内線3946)