07/07/10 第31回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会議事録 第31回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会       日時 平成19年7月10日(火)       13:00〜       場所 厚生労働省職業安定局第1会議室(13階) ○大橋部会長 ただいまから「第31回雇用対策基本問題部会」を開催いたします。本日 の委員の出欠状況を報告いたします。まず欠席委員は公益委員の白木委員、宮本委員、 労働側代表は野村委員、使用者代表は成宮委員です。樋渡委員については輪島さんが代 理出席されております。また、橋本委員は少々遅れるとの連絡がありました。市瀬委員 からの連絡はありませんが、始めさせていただきたいと思います。  これより議事に入ります。本日の議題は前回に引き続き、改正雇用対策法及び地域雇 用開発促進法に係る省令等の検討についてです。初めに事務局から資料についてまとめ て説明していただき、その後前回議論の多かった外国人雇用対策、年齢制限の順に議論 を進めていきたいと思います。なお、2つの議題とも引き続き議論が必要な場合は、今 月18日に予定されている次回の当部会で議論したいと思います。地域雇用対策をはじめ、 その他の議題については時間に余裕があれば本日議論し、そうでなければ次回の議論と させていただきます。それでは事務局より説明をお願いいたします。 ○生田総務課長 資料はNo.1からNo.15まであり、最初の1枚紙に一覧表が載っております。 資料No.1〜7は当労働政策審議会に対する諮問案件ですので、これを諮問事項として議論 していただきます。それ以外は参考資料という整理で付けられております。諮問案件の 資料から順番に説明していきますが、1頁は雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を 改正する法律の施行期日を定める政令案要綱(案)で、以前から法律の施行期日につい ては10月1日の部分と公布日から3カ月以内の政令で定める日として8月1日を想定してお りました。この施行日については、7月27日の閣議を前提に8月1日施行の予定でいたの ですが、参議院選挙等の影響でこの閣議が7月27日に行われなくなり、7月31日に開かれ ることになりました。この閣議を前提に施行日を見込むと8月4日となりますので、今回 政令で定める日については8月4日という整理をさせていただいているのが資料No.1です。  資料No.2の2頁ですが、政令事項として定めるものとして外国人雇用状況等の届出があ り、これについては民間事業主が届け出る場合は届出という整理になっていますが、国 又は地方公共団体が外国人を雇った場合、あるいは離職した場合については雇用状況の 通知という制度となっており、法律第28条の第3項に出てきます。これについては政令 で具体的な手続を定めることになっており、その内容をここに整理しております。第一 に書いてあるように「外国人雇用状況の通知は、新たに外国人を雇い入れた場合にあっ ては当該事実のあった日の属する月の翌月10日までに、その雇用する外国人が離職した 場合にあっては当該事実のあった日の翌日から起算して10日以内に、厚生労働大臣が定 める様式により行うものとすること」とされており、その他所要の規定の整理等が書か れております。施行日は原則8月4日からですが、外国人雇用状況の通知の部分について は外国人雇用状況の届出と同じく、10月1日施行となります。  資料No.3は雇用対策法、地域雇用開発促進法の施行規則についての要綱です。第一では 雇用対策法施行規則の改正について整理しており、冒頭の一「基本方針の策定」は、い わゆる中期ビジョンについて定める根拠規定です。法第4条第1項各号に掲げる事項を具 体化するものとして、中期ビジョンを定める根拠となる規定がこちらです。順番が前後 しますが、これに関連して、9頁の四に「国と地方公共団体との連携」という部分があ ります。これについては、都道府県労働局長が都道府県知事の意見を聞いて定める雇用 施策実施方針について(一)で定めております。10頁の(二)では、雇用施策実施方針 の前提となる厚生労働大臣が策定する指針についての根拠を設けており、こういった内 容で雇用対策法の施行について計画的に対応していくということです。  4頁に戻り、次の大きなテーマである二の「外国人雇用状況の届出」については、省 令事項として定めるべきものが順次整理されております。(一)は外国人の範囲で、対 象範囲から除くものについて書いており、外交、公用の在留資格を持って在留する者と 特別永住者を除くということになります。再就職の支援を事業主が行うケースとして、 厚生労働省令で定めることになっているものについては、解雇、その他事業主の都合と なっております。  5頁の「外国人雇用状況の届出事項」についても、前回当部会で説明した内容と全く 同じ内容を縦書きで整理しておりまして、イの法第二十八条第一項の厚生労働省令で定 める事項は、新たに外国人を雇い入れた場合にあっては次の(ホ)を除く(イ)から (ト)に掲げる事項、外国人が離職した場合にあっては(イ)から(ハ)まで、(ホ) 及び(ヘ)に掲げる事項という整理をしております。5頁の最後のロについて、雇用保 険の被保険者となる場合は今のイなのですが、次頁に書かれてある雇用保険の被保険者 とならない場合については、雇入れに係る届出にあってはイの(イ)から(ニ)までに 掲げる事項、離職に係る届出にあってはイの(イ)から(ハ)までに掲げる事項となっ ております。  6頁の(三)の「外国人雇用状況の届出事項の確認方法等」については、このような 書類で確認することがイに書かれてあります。(イ)にあるように、外国人登録証明書 又は旅券(パスポート)で確認すること、(ロ)には資格外活動の許可を得ている場合 は資格外活動許可書又は就労資格証明書で確認するといっった内容が掲げられておりま す。ロの「届出時期等」については、外国人雇用状況の届出時期で以前から御説明して いる内容ですが、7頁の冒頭の(イ)にあるように、雇用保険の被保険者である場合に ついては雇入れの翌月の10日まで、離職した場合についてはその翌日から起算して10日 以内に、雇用保険の得喪届と併せて届け出ることとなっております。(ロ)の外国人が 雇用保険の被保険者でない場合については、雇入れ又は離職日の翌月の月末までという 整理をしております。  7頁は次の大きなテーマである三の「募集及び採用における年齢にかかわりない均等 な機会の確保」についてで、年齢差別の禁止の義務に係る除外事由、例外事由について は厚生労働省令で定めることとなっており、7頁の(一)に列挙されております。前回 の部会で説明した資料と少し順番が変わっておりますが、イ、ロに当然除外されるべき ものが整理してあります。イは期間の定めのない雇用に限り、定年年齢を下回ることを 条件として労働者の募集・採用を行うということです。ロは労働基準法等の規定により、 特定の年齢層の就業等が禁止又は制限される業務について、その年齢層の労働者以外の 労働者の募集及び採用を行うときとなっており、当然のことが書かれてあります。  ハは必要最小限のものとしてどのようなものを合理的と考えるかということで整理を しており、8頁の(イ)から(ニ)までの4つの事項が列挙されております。(イ)は長 期間の継続勤務による能力の開発形成を目的とした長期勤続雇用を実現する観点からの もので、青少年、その他特定の年齢を下回る労働者の募集及び採用を行うときとありま す。ただ、括弧内に書いてあるように、期間の定めのない労働契約の締結に限りますし、 職業に従事した経験があることを求人の条件としない場合に限ります。また最後にある ように、新たに卒業しようとする者と同等の処遇で募集及び採用を行う場合に限るとい った限定をすることを前提に(イ)を掲げております。  (ロ)は特定の年齢階層について労働者が少ないケースについてで、当該事業主が雇 用する特定の年齢層の特定の職種の労働者の数が相当程度少ないものとして、厚生労働 大臣が定める条件に適合する場合において、当該職種の業務の遂行に必要な技能及びこ れに関する知識の継承を図ることを目的として、特定労働者の募集及び採用を行うとき となっております。前回の資料に詳細が書いてありますが、そのうちの重要なものにつ いて、厚生労働大臣が定める条件として大臣告示に落として定めることにしております。 これについては20頁の資料No.5に書かれております。一にあるように、厚生労働大臣が 定める条件は、当該事業主が雇用する特定の職種に従事する労働者の年齢についてで、 特定の職種に従事する労働者の年齢は30歳から49歳までの範囲内において、5歳から10 歳までの任意の幅で一定の範囲を特定した場合、当該特定範囲の年齢層の労働者数が当 該特定範囲の幅と同一の幅で、その両側に設定したそれぞれの範囲の年齢に属する労働 者数のそれぞれ2分の1未満であることとするとなっており、定められた年齢の両方にあ る年齢よりも2分の1未満であることを条件にしております。  8頁に戻り、その他の事項として(ハ)は芸術又は芸能の分野における表現の真実性 等を確保するために、年齢限定を行う場合、(ニ)にあるように、高齢者の雇用の促進 を目的として60歳以上の高齢者の募集・採用を行うとき、又は特定の年齢層の労働者の 雇用を促進するために、特定の年齢層の労働者の募集・採用を行うときということで、 これについては雇用の促進に関する国の施策を活用する場合に限るとして限定を付けて おります。以上のような除外事由の整理をしております。  9頁の(二)は前回の資料のとおりですが、募集・採用を行うに当たっての手続事項 の整理をしております。9頁の四はいま説明しましたので省略いたします。10頁の五は 「その他」として、権限委任の根拠規定として外国人雇用状況の届出等については、都 道府県労働基準局長等に委任すると書いてありますが、最終的には公共職業安定所長に 委任するといった内容も含まれております。その他、所要の規定の整備を行うというも のです。  10頁の第二は「地域雇用開発促進法施行規則の一部改正」で、一の「雇用開発促進地 域及び自発雇用創造地域の要件」として、それぞれの地域要件が書かれてあります。こ れも前回の資料どおりで、(一)に雇用開発促進地域の要件、(二)に自発雇用創造地 域の要件が書いてあります。11頁の二は「同意雇用開発促進地域における支援措置」で、 雇用が特に厳しい地域における支援措置の内容が書いてありますが、これも前回の資料 の内容を縦に書き直しただけですので説明は省略いたします。  12頁の(二)はいま述べた措置について、例えば大規模な雇用開発等のケースについ ては、特別の措置を講ずることとして整理されておりますが、これについても前回の資 料で説明した内容を縦に書き直しただけですので説明は省略いたします。12頁の最後は 同意自発雇用創造地域における支援措置で、市町村等が自発的に雇用のプランを作り、 雇用開発をしていくような地域のための支援措置です。これについても13頁に支援措置 の内容が書いてあり、前回の資料と同じ内容ですので説明は省略いたします。  14頁のその他は、(一)で中小企業事業主の団体に対し、中小企業者が労働者の募集 の委託を行う場合について書いてあります。これは前回の資料に詳細が書いてあります が、要綱としてこのような記述に整理いたしました。(二)は地域雇用創造計画の同意 等に係る厚生労働大臣の権限については、都道府県労働局長に委任するといった内容を 盛り込むこととしております。その他、所要の規定の整備を行うこととしております。 14頁の第三の「雇用保険法施行規則の一部改正」については、地域雇用開発促進法の改 正、それに伴う施行規則の改正の財源上の根拠を設けるということで、雇用保険法施行 規則も改正が必要とされる部分です。一の「地域雇用開発助成金制度の改正」、15頁の 二の「キャリア形成促進助成金制度の改正」の内容についても、前回の資料の内容をそ のまま書いてあるので説明は省略いたします。  16頁の第四は「その他」ですが、施行期日として法律の施行日が8月4日と書いてあ り、その下に「ただし」ということで10月1日施行の分が書いてあります。第一の二が 外国人雇用状況の届出、三は年齢差別の禁止の関係、五の一部の外国人雇用状況届出の 権限委任の関係といったものについては10月1日施行となります。18頁から19頁にかけ ては、若者の雇用機会の確保のための指針です。これについては前回説明した資料で掲 げている内容を文章形式で整理いたしました。基本的には内容が同じですので、説明は 省略いたします。20頁の資料No.5は先ほど説明したので飛ばします。  21頁からは資料No.6で、外国人の雇用管理改善等の指針が載っております。これにつ いても前回の資料と基本的には同じですが、若干付け加えられている点と膨らませてい る点がありますので、そこにポイントを絞って説明いたします。まず21頁の第一の趣旨 の内容を新しく書き加えておりますが、第二については労働関係法令について具体的な 法令名を列挙しております。第三は外国人労働者の定義はもともと書いてあったのです が、なお書きの所に注意的に技能実習制度についても対象になることを整理しておりま す。第四の一は外国人労働者の募集・採用の適正化として募集以下が並んでおりますが、 この内容については前回の資料に盛り込まれており、それを文章形式にして若干膨らま せております。  22頁の二の「適正な労働条件の確保」については、基本的には前回の資料と同じです し、23頁の三の安全衛生の確保も、基本的に前回資料と同様です。23頁のいちばん下の 四に「雇用保険、労災保険、健康保険及び厚生年金保険の適用」とありますが、これに ついても基本的に同じ内容が盛り込まれております。24頁の五は「適切な人事管理、教 育訓練、福利厚生等」ですが、1の「適切な人事管理」の部分については、文章が相当 膨らんでおりますので読み上げます。「事業主は、その雇用する外国人労働者が円滑に 職場に適応し、当該職場での評価や処遇に納得しつつ就労することができるよう、職場 で求められる資質、能力等の社員像の明確化、職場における円滑なコミュニケーション の前提となる条件の整備、評価・賃金決定、配置等の人事管理に関する運用の透明化等、 多様な人材が能力発揮しやすい環境の整備に努めること。その際、公共職業安定所の行 う雇用管理に係る助言・指導を踏まえ、適切に対応すること」といった内容を盛り込ん でおります。それ以外の点については、基本的に前回の資料と同じです。  25頁の6の「労働者派遣又は請負を行う事業主に係る留意事項」については、前段部 分は労働者派遣法を遵守すること、あるいは偽装請負をしないといった内容が書いてあ るだけですが、また書きに、雇用管理について注意することが具体的に書いてあります ので読み上げます。「また、請負を行う事業主は、自ら雇用する外国人労働者の就業場 所が注文主である他の事業主の事業所内である場合に、当該事業所内において、第六で 選任する雇用労務責任者等に人事管理、生活指導等の職務を行わせること」といった内 容を整理しております。25頁の六の「解雇の予防及び再就職の援助」については、前回 の内容を膨らませたものです。  25頁の第五の「外国人労働者の雇用状況の届出」については、基本的には先ほどの施 行規則で説明した内容と重複していますが、指針で特別に出てきている内容としては、 26頁の四の「確認に当たっての留意事項」の部分がありますので読み上げます。「事業 主は、雇い入れようとする者(平成19年10月1日時点で現に雇い入れられている者を含む) について、通常の注意力をもって当該者が外国人であると判断できる場合に、当該者に 係る一の事項を確認すること。ここで通常の注意力をもって当該者が外国人であると判 断できる場合とは、特別な調査等を伴うものではなく、氏名や言語などから、当該者が 外国人であることが一般的に明らかである場合を言うこと。このため、例えば、通称と して日本名を用いており、かつ日本語の堪能な者など、通常の注意力をもっては、当該 者が外国人であると判断できない場合にまで、確認を求めるものではないこと。なお、 一に掲げる事項以外の事項の確認・届出は必要のないものであり、外国人労働者のプラ イバシー保護の観点からも、この点に十分留意すること」とし、留意事項を明確化して おります。これ以降の点については前回の資料と基本的に同じですので説明は省略いた します。  28頁以下は地域の雇用開発等に係る指針で、基本的に先ほど施行規則で説明した部分 とほとんどがダブっておりますが、1点注意していただきたいことは、先ほどの地域指 定の基準として有効求人倍率を全国とその地域で比較するというのがあって、これにつ いては一般有効求人倍率と常用有効求人倍率の両方を使って判断することが盛り込まれ ております。具体的な場所は28頁の(ロ)の(i)と(ii)ですが、(i)に最近3年間 及び最近1年間におけるその地域の一般有効求人倍率の月平均値を比較するとあって、 29頁の冒頭にある、最近3年間及び最近1年間におけるその地域の常用有効求人倍率の月 平均値を全国と比較するということのどちらでも構わないという整理をしております。 29頁の(2)の自発雇用創造地域についても全く同じで、29頁のロの(イ)(ロ)に同 様の記述があります。  30頁の2と3は、前回の資料にはない新しい項目です。それ以外は前回資料に入って おりました。2は、地域の産業政策等との連携について、当然の事項を文章として盛り 込んだ内容となっております。3は、国、地方公共団体及び地域の関係者の連携につい てで、これも当然の事項を盛り込んでおりますが、いちばん下の段落だけ読み上げます。 「このため法においては、計画を策定するに当たっては、都道府県知事は関係市町村長 の意見を、市町村長は関係都道府県知事の意見を聴くものとしており、また、当該計画 に同意するに当たっては、厚生労働大臣が関係行政機関の長に協議するとともに、厚生 労働大臣又は都道府県労働局長は地方労働審議会の意見を聴かなければならないとして いるところである。さらに、市町村が計画を策定するに当たっては地域雇用創造協議会 の議を経ることとなっているが、都道府県においても、労使等地域における関係者との 意思疎通を図り、地域雇用開発の確実な実施に資することが望ましい」として整理して おります。とにかく地域の関係者と十分話をしながら整理していくようにということで す。30頁の以下の内容、31頁、32頁、33頁、34頁に至るまで、前回の資料で項目を起こ した内容ですし、省令事項とダブっている部分が相当含まれておりますので説明は省略 いたします。  35頁以下は諮問事項ではありませんが、前回宿題として出ていた点を参考資料にして 整理したものです。35頁の資料No.8は雇用対策法、男女雇用機会均等法の募集・採用に ついての年齢差別、性差別の禁止について、どのような法的効果があるかを整理したも のです。いちばん下の(1)にあるように、事業主に義務を課すものであり、これに違反し た事業主に対して厚生労働大臣が指導、勧告等を行う根拠になるものです。(2)にあるよ うに、この条文を根拠として、個人に採用しろと言う請求の権利が与えられることはな い。(3)として、この条文に違反する行為が民法上の不法行為に該当するか、あるいは無 効とされるかどうかについては、個別に裁判所等で判断されるという整理をしておりま す。  38頁は資料No.9で諸外国の制度を紹介しております。日本は募集・採用のみについて 年齢差別の禁止をしておりますが、アメリカは雇用のあらゆる問題について年齢差別の 禁止をしており、募集・採用以外の点についても言及しているという特徴があります。 20人以上、企業規模を限定していたり、あるいは40歳以上の労働者に規定を限定して いたりという特徴があります。また、募集・採用については(1)が関係があると思います が、年齢が特定の職業に真正かつ決定的な要素となる場合については例外にしておりま す。EUについては雇用についてのあらゆる分野であることと、年齢だけではなく宗教、 信条、障害、性別などといったものを含めたEU指令があります。ただ、アメリカと同 様、年齢が特定の職業に真正かつ決定的な要素となる場合というのが例外としてあり、 解説書等を見ると、具体例として俳優の募集・採用といった内容が例示されております。 また定年年齢の設定、3番目にあるように、合法的な雇用政策等の目的によって合理的 に正当化されるような内容としてポジティブ・アクションに該当するようなもの、ある いは年齢、職業経験、年功の最低条件を設けるといったようなこと、訓練、退職前の合 理的な雇用期間の必要性を理由とした最高年齢を設けるといったことが例外としてあり 得るのではないかといった整理になっております。  39頁から41頁まではいま述べた内容について、より詳細に整理しております。42頁は 外国人の法務省に対する情報提供についての内容を整理したものです。42頁の真ん中辺 りに、提供の根拠となるものを整理しております。雇用対策法第4条第3項ですが、外国 人の不法就労の防止については雇用対策の観点からも非常に重要であり、適切な対応を 取らなければならないことを整理しております。第29条は具体的に情報提供するケース について限定した条文で、厚生労働大臣や法務大臣から出入国管理及び難民認定法又は 外国人登録法に定める事務の処理に関してということで、入管法、外国人登録法に定め る事務の処理に関して、外国人の在留に関する事項の確認のため、このような要件が整 ったときに情報の提供をするということです。それを表したのが下の双方矢印の部分で、 上に書いてあるように、情報提供を求める際には、提供を求める情報と、必要性・理由 を明らかにした上で求めることになります。それを使って必要性等を判断した上で、必 要なものについては厚生労働省から法務省に提供されます。下の枠に「第29条の範囲内 の提供であることを法務省から示される必要性・理由に照らして判断」すると書いてあ ります。私からの説明は以上です。 ○大橋部会長 議論に移りたいと思います。ただいまの説明のうち、外国人雇用対策に ついてご意見、ご質問等があればお願いいたします。 ○原委員 個人名を含めて報告を義務づけるとのことですが、非常に抵抗感が強いこと は以前から申し上げております。除外対象として特別永住者と在留資格「外交」・「公 用」の者を除くとあり、これのみだけなわけですが、就労活動に制限のない者まで含め る必要があるのかといった意見もかなり強いので、そういったことについて改めて見解 を伺いたいというのが1点。また、プライバシーの問題や、最近ある筋では自己情報コ ントロール権といったものも言われているように思うのですが、自分の知らないところ で経営者が厚生労働省に報告し、場合によっては法務省にまで行ってしまうようですが、 どのような情報が情報として厚生労働省に報告されているかについて、本人に知らせる というか、そのような仕組みを考えないのかどうかが2点目に伺いたいことです。  また、法務省が厚生労働省に対して提供を求める情報とその必要性、理由を明らかに してとありますが、どのようなやり取りになるのか。法務省がどのような情報提供を求 めてきて、必要性、理由はどのような確かめ方をするのか、イメージがわからないので 3点目の質問といたします。  これについても日ごろの労働相談から実態を報告し、これまでの審議会の中で問題提 起させていただいております。合法であれ非合法であれ、経営者が労働者を雇って働か せると、当然賃金を払うことになるわけですが、往々にして突然解雇し、1カ月分の予 告手当を払わない、これまで働いた分の賃金を払わないなどといった労働相談が結構あ ります。JAMの場合、外国人労働者の労働相談をボランティアで行っておりますが、そ れまで経営者は資格がない労働者を働かせているにもかかわらず、いざというときは非 合法である、入管に知れたらどうなるかわかっているだろうな、言えるなら言ってみろ と言って、経営者がそのようなものを悪用し、労働者を泣き寝入りさせるといったこと が往々にしてあります。そのような意味で、働いた賃金は賃金としてきちっと払うと。 捕まって強制退去、本国送還となるわけですが、賃金は賃金として払うようにする何ら かの措置を取る、ただ働きはさせないといった担保が必要ではないかと思うのが4点目 です。以上のことについて、厚生労働省の考え方をお聞きし、場合によっては指針の中 にそういったものを織り込んでいただきたいというのが私の意見です。 ○久保委員 外国人の指針について質問いたします。対象となるところとして、指針に 該当するのは現在雇い入れている人も全部対象となるのでしょうか。また現実問題とし て、25頁にある第五の所の雇用状況の届出には、新たな雇入れをした場合は届出をしな さいということと、平成19年10月1日時点で現に外国人労働者を雇い入れている場合に はということですから、現行雇い入れている人についても全部10月1日時点で精査し、 届け出ることが必要になるのか、確認させていただきたいと思います。 ○大橋部会長 その他に何かあればお願いいたします。 ○長谷川委員 4頁の省令案要綱の第一の二のロに、法第8条の厚生労働省令で定める理 由は解雇、その他事業主の都合とすることとありますが、「その他事業主の都合とする こと」というのは具体的にはどのようなことか教えていただきたいと思います。また6 頁の(三)のイの確認方法のところに、(イ)の確認しなければならないこととして外 国人登録証明書又は旅券によってとありますが、これらを確認すればいいということか、 確認したことで例えば事業主がそれらをコピーするということがあり得るかどうかをお 聞きしたいと思います。 ○尾形外国人雇用対策課長 ご意見、ご質問をいただいた順にお答えいたします。たぶ ん永住者を想定されたと思いますが、対象者の中に就労制限のない者が含まれているが なぜかという点については、これまでもお話しているとおり、最近永住者という資格で 在留する人が非常に増えております。こういった方々の実態として、社会保険等の未加 入の問題が顕著であり、そのような方々が永住資格を持って老後を日本で暮らすことに なったときの問題点がさまざまなところで強く指摘されております。そういったことも 踏まえて今回法改正を行ったわけでして、そのような方々に保険加入の指導といったこ とも含めた雇用管理の改善という要請が極めて強いということがあります。そのような ことにきめ細かく対応するために、このような方々についても最低限の情報を取らせて いただくというのが今回の趣旨です。  プライバシーに関連して、経営者がこのような情報を取って官公署に流すことについ て、外国人の立場はどうかということですが、例えば情報を提供することを知らせる仕 組みという話でしたが、そもそもこのような制度があるということを、まず外国人の方 に知っていただくことをもって当然雇い入れる、あるいは離職する場面でハローワーク にこのような情報がいくことは周知活動を通じて理解していただくことになると思いま す。さらに、法務省にも情報が提供される場合があり得るということについては、何度 も申し上げているように、個人情報保護に関する行政機関に求められているいろいろな 責務、義務を果たした上で適用することになっておりますし、関係法令に基づいて対応 することでやっていきたいと思っております。  なお、法務省への具体的な提供に当たっては紙1枚で説明いたしましたが、必要性、 理由といったものをどう判断するか。この仕組みについては、基本的には第4条第3項に 明記してあるように、不法就労は労働行政としても問題であり、入管行政にも関わる話 ですから、不法就労対策ということがあって、このような連携条文のようなものが設け られているわけです。イメージ的に申し上げますと、不法就労対策として入管行政にお いて必要だということが想定され、この雇用状況報告の中でも、基本的にはその人を特 定するために必要な情報が求められるのだろうと思っております。詳細を法務省入管局 と詰めている段階ではありませんが、基本的にはそのようなコンセプトだということで す。したがって、ここで求められる情報は、あくまでもこの報告制度で外国人の方から 取ってほしいと言われた情報に限られているわけで、例えば家族に関わること、婚姻、 既婚・離婚の別などといったものまで含めてどうこうということは全くないのです。そ れはここで取るものでもなければ、この機会に乗じて取ってもらうものでもないという ことです。  合法不法を問わず、労働関係法令といった話について、例えば賃金不払いなどについ ての泣き寝入りのようなことが、非合法を理由に事実上横行しているのではないかとい う話でしたが、その観点はそういった問題を担当している労働基準行政のほうでも非常 に強く持っております。去年の秋にも同じことを述べたと思いますが、入管局と基準行 政との連携というのがあって、その連携の中で退去強制をかける前に、まずは労働者の 保護を図ることを優先したい旨を、法務省入管局に基準局から申し入れ、理解が得られ ていると聞いております。そのような意味では、労働基準行政は賃金不払いをはじめと した事案に対する救済という観点を強く持っており、現にそのような運用をしていると 理解しております。  こういったことについて指針の中でどう配慮しているかについては、例えば確認方法 については、先ほど総務課長から説明したように、余計なものは取るなということを今 回明記したところです。26頁の下から5、6行目ですが、確認に当たっても特別な調査な どを行うものではないといったことが書かれております。またこれ以外の、そもそも雇 用状況報告で求めていない事項まで、この際ということで取ることは厳に慎むべきとの 趣旨を盛り込んでおりますし、プライバシー保護ということも書き込んでおります。  現在雇い入れている人についてはどうかという質問については、これはまさにそのよ うな方も対象としてやっていただくということです。改正法の付則に規定を設けたと思 いますが、現在雇い入れている人についても届出をしていただくことになっております。 また、4頁の省令案要綱の最後の事業主の都合とはどのような場合か、具体的にはどの ようなことかという質問でしたが、これは雇用保険の世界の類推というかアナロジーで して、特定受給資格者と言うのでしょうか、それと同じようなことを考えております。 例えば賃金不払い事案で、とてもそんな会社にはいられないとか、労働条件が明示され たものと大きく異なっているなどといったものがここでは想定されております。その他 諸々たくさんあるわけですが、代表例としてはそのようなところだということです。  次に省令案要綱の確認方法の6頁について、外登証又は旅券により確認ということに ついては、確認すればコピーまで取れということではないのかという質問でしたが、こ の法律ではコピーを取ることまで要請するものではありません。やはり個人情報ですの で、そういったことについては謙抑的にやっていただき、必要最小限の対応をするとい うことだろうと思っております。 ○大橋部会長 何かご意見があればお願いいたします。 ○長谷川委員 厚生労働省と法務省の関係について、資料42頁にあるように、法務省が 必要性と理由を明らかにした上で情報提供を求めるとなっていますが、必要性と理由と いうのが非常に抽象的なので、もう少し具体的にならなければいけないということと、 そもそも外国人労働者がいて、事業主がパスポートなどで確認するわけですし、合法的 でなければ届け出ているはずがないから、不法就労などあり得るはずがないのです。そ うすると、法務省は何の情報が必要なのかということになるわけです。この辺は非常に 矛盾があるのです。例えば第4条の第3項は、要するに不法就労活動を防止するとなって いますが、確認した時点で不法就労かそうでないかが明らかになっているわけで、合法 でなければハローワークに絶対届けるはずがない。私の所では不法就労者を雇っていま すなどということは言うはずがないのです。  そうすると、法務省は何の情報が必要なのかということになり、ここは非常に矛盾し ていると言えます。法案を出すときに、ここはあまりきっちり議論しなかったし、国会 の審議などをしながら明らかになってきたことだと思います。外国人労働者のプライバ シーまで侵害してくるということは、非情に見える世界で、ここを私たちに理解してく れと言われても、いまの私の能力ではなかなか理解できない。不法就労だとわかった段 階で、あなたは日本にいることができないと普通の事業主は言うはずですし、それでハ ローワークに届けるというのは常識的に考えられないです。 ○原委員 ハローワークの段階で外国人労働者に周知徹底すると言われましたが、届出 報告用紙というかマニュアルのようなものがあるわけですね。このようなものを厚生労 働省に提出したということで、報告する、報告すると言うのではなく、実際にハローワ ークに提出したものを本人に提示することは可能だと思いますが、そのような仕組みを つくるという発想はないのですか。長谷川委員も言われたように、何を求められて何を 報告するのかというイメージがはっきりしない。報告対象も納得できませんが、報告内 容についても求められる報告、必要性と理由を吟味すると言われますが、吟味のしよう がないのではないかと思います。入口の段階から明々白々です。もう少し具体的に、わ かりやすくお願いしたいと思います。もっと言うと、やはり不信感があるわけです。こ れまでは人数だけでよかったのが、固有名詞を出すこと、ターゲットも広くなり、ほぼ 全員の外国人労働者を捕捉する、一体何なのだろうかという不信があるわけです。日弁 連などが意識しているということは、やはり重く受け止めるべきだと思います。 ○尾形外国人雇用対策課長 長谷川委員が指摘されたとおり、ハローワークに確認して 届出するというところで、そもそも不法就労を防止することが非常に大きな目的である ことは間違いありませんし、強く期待しております。我々は遵法精神のある事業主とい うのを多く見てきておりますし、それはそうだと思います。ただ他方で、これはあくま でも新聞等で見聞きすることですが、社会面には相変わらず偽造パスポート、偽造外登 証といった事案の摘発というのが非常に多い。つい最近もありましたし、ほとんど毎月 のように報道されており、法務省などによれば、それは氷山の一角とのことですので、 そういった実態はかなりあることが推測されます。事業主が信じてしまって届出をした ことについて雇用対策法上はいいのですが、そういった場面についても本当に合法的か どうかのチェックをしたいということが、もしかしたら法務省のほうにあるかもしれな いと思っております。  周知徹底については、審議会でも建議に書かれていることですし、重点的にやること を肝に銘じて準備したいと思っておりますから、単に事業主だけでなく、どういったこ とを情報として取るかということが、外国人の方についても広く周知されるようにする ことではないかと思っております。そういったことを通じて、必要最小限のことや在留 資格の範囲内で働くというルールを守る中で、より良い労働環境、職場環境をつくって いくということではないかと思っておりますから、ご理解いただきたいと思います。 ○大橋部会長 外国人雇用対策についてはいろいろな観点から議論できると思いますが、 現在は人権などといったミクロのところが重点的に議論されております。ただ人権とい うのは、人によって随分考え方が違って、アメリカ人の人権もあるし、日本人の考える 人権などいろいろあると思うのです。そのような中で、基本的には最大公約数的な人権 というのは憲法などの法律に基づいて考えるしかないと思っております。ただ、いちば ん恐れるのは、例えば日本には偽造旅券で簡単に入国できて、仕事も探せるといった噂 が外国人に伝わると、千里を走るぐらいのスピードで情報が伝わり、日本にどんどん入 ってくるといったマクロ的な心配をせざるを得ないのではないかということです。 人権的な観点から議論するというのもあると思いますが、日本国民として少しマクロ的 な心配もすべきではないかと思うのです。 ○原委員 このような情報を集めますよというのは周知徹底したらいいと思います。し かし、実際に自分の会社が当局に対して、私に関するこのような報告を出したというこ とについて本人に知らせるというのは簡単なことではないでしょうか。そのようなこと を検討する用意はないのかと伺っているのです。やはり、このようなことは我々日本人 にはわからない。外国人がどのように受け止めるかということで、私にもそのような実 感はないですが、いろいろな本を読んでいると、ここまで真剣に考えているのか、それ ならば審議会で代弁しなければいけないと思ったから言っているのです。我々日本人に は侵害されている、されていないだとか、そんなものはないですが、鋭い弁護士などは、 国際条約や憲法から見ても問題があるのではないかと言っております。そのような意味 では、我々日本人としても責任があるわけです。報告制度ができた以上、自分の情報が どのように報告されているのか、せめてそれぐらいはやるべきではないか、それだけの 話で難しいことではないと思います。 ○大橋部会長 いまのご意見は、ここに書かれている情報は報告するが、厚生労働省が 法務省に対してどのような情報を提供したかということを本人に言いなさいということ ですか。 ○原委員 そうです。本人に知らしめるということです。自分の知らないところで会社 が当局に報告している、それを知らしめる制度は今回の指針の中にはないですよね。 ○大橋部会長 しかし、本人は情報を提供していますよね。 ○高橋職業安定局長 国会の審議の際の答弁でも申し上げたのですが、先ほどの説明に もあったように、この報告制度自体は行政機関が保有する個人情報の保護に関する法律 の適用があるものです。行政機関が保有する個人情報の保護に関する法律の中には、自 己の情報の開示請求権、並びに自己の開示された情報に関わって誤りがあった場合の訂 正請求権が認められているわけです。そのような仕組みの中で、いま言われたような問 題点は十分クリアできると思います。改めてどのような情報提供を行ったかということ を、個人個人の外国人の方に報告するというか、知らせるということまでは必要ないと 受け止め、そのように解釈しております。 ○大橋部会長 その他何かご意見があればお願いいたします。 ○長谷川委員 今回の外国人雇用対策について、例えば第4条第3項や、64、65頁の第8条 などで、労働省に情報提供の依頼があって、その情報を提供するときのやり方について、 その必要性とか理由というふうにしか説明がされていませんが、それでは不十分ではな いですかといっています。おそらくこれは、これから入管行政をどうするかという議論 と並行して進められると思いますが、外国人の情報は法務省と、それと今回、厚生労働 省も持つことになるわけですね。あともう1つは地方自治体も持つわけですよ、毎年1月 に外国人はちゃんと報告しますからね。  すると、そういう行政間の報告を行うときに、外国人のプライバシーに配慮しながら、 どういう形でするのかというのは、もっと議論が必要だと私は思うのです。私たちは労 働問題をある意味ではずっとやっている人たちなわけです。研究者も有識者も労使もで すね。国会などでも、人権団体とか、人権弁護士だとかいう人たちが、この問題を指摘 されているわけですから、もっと人権という視点からの情報のあり方について、もう少 し議論をしないと、法務省と厚生労働省の情報提供のやり方について、理由がある場合 とか必要性だけでは、ちょっと納得できませんねと言っているだけです。だから、それ はもう少し慎重な扱いをしてほしい。だから、ある意味では、もう少し法務省と厚生労 働省の情報提供のあり方について、もう少しきちんとした視点といいますか、人権団体 の意見を聞くとか、人権弁護士だとかをやっている人たちに意見を聞きながら、プライ バシーを尊重しながらどうやってするのかをしていただかないと、私どもでは手に余る と私は言っているのです。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 外国人のさまざまな情報について、どういう形で行 政機関が把握するか。それはなぜ把握するか、そしてそれをどう使うかということと一 体の話だろうと思います。これにつきまして、私の理解では2つのステージがあります。 いま長谷川委員がおっしゃったような意味で、全体としての法務省の持っている在留資 格制度の話、それから地方自治体の持っている外国人登録制度の話、それから今回私ど もが取ることになった企業における外国人の情報。これら3つをより総合的に、よりき ちんとした形で、ある意味では突き合わせを含めてきちんとした情報を把握して、必要 な管理と必要な行政サービスを提供するようにすべきではないか。その際には、現行の いろいろな諸外国で起きますテロの問題等々、さまざまな視点を含めると、より管理を きちんとできるようなという意見も一方にありますし、一方ではいま言われましたよう な人権の問題という話もあります。  そういう中で国全体として、外国人に対するどういう情報管理制度にするか。これは 現在、政府全体ではありますが、法務省と総務省等を含めて、入国管理、在留資格制度、 それから外国人登録制度全体をいま見直そうとしている。これについては、現在の政府 の予定では再来年の通常国会に法律を出そうとしている。したがいまして、その段階に なった場合に、今回の制度で取る情報を、より全体の総合的な中でどうしていくかとい うのが、そのステージの中で私どもは考えていくべきだろうと思っています。その中で は法務省、総務省と共同しながらやりますが、いろいろな意見も聞きながら新たな制度 を作っていくということになろうかと思います。  現在はそういう検討が別途ある中で、外国人の労働問題、これはさまざまな問題があ りますが、もちろん不法就労への対応が1つありますが、一方では先ほど外国人対策課 長から言いましたように、例えば社会保険の未加入者が多いとか、さまざまな問題も一 方ではあるのも、これまた事実です。そういったものに適切に対応するためには、その 全体の制度とは少し別にというか、現在の段階で対応する必要があるだろうということ で、制度を作った。したがって現在は、現行の法務省等の持っている制度との関わりの 中で、今回、法務省ともどういう連携をしていくかということになるだろうと思います。 ですから、そういう中で全体的に私どものシステムと法務省のシステムをつなぐとか、 全部を突合するというような手法はとっていない。ただ、必要な場合もあるだろうとい うことで、28条の条文を作って法務省が管理施策のために必要な範囲内で情報の提供を するということにしたということです。  必要性、理由が抽象的だといいますが、これはまだ法務省が必要性、理由を示して我 々に言ってこないので、どういう必要性だというのはないからです。私どもとしては法 務省がそこを明らかにして、私どもに要求をしてくれば、法律に則って適切に対応しま す。ですから、必要性をいま示せと言われても、必要性を示すのはある意味では法務省 なので、法務省から適切な必要性、理由が示されれば、我々はそれできちんと対応して いきたいということです。 ○原委員 未解決の問題はあるのですが、話をちょっと変えます。これまでも議論をさ れていますように、研修制度と技能実習制度、非常に大きな弊害といいますか、本来の 趣旨どおりに行われていないといいますか、この制度を悪用する経営者が跡を絶たない という問題が、かなり世間でも報道されています。それについて研修制度による研修生 は労働者と断定されていないのですが、少なくとも技能実習制度の技能実習生は労働者 ということで、法律の保護の下で行われなければいけないのですが、その辺どのように 保護されるのかが非常に大きな関心事です。そういったことについて、どこかに別に書 いてあったらそれはそれでいいのですが。  以前の指針の中には、いわゆる悪徳ブローカーというのですか、そういった者を排除 するために、国外からあっせんを受ける場合には、職業紹介事業の許可を受けているも のから受け入れるものとする、という一文が入っていたと聞いていますが、こういった ものについては、今回の指針なり、どこかに注意書きといいますか、そういうものは配 慮されているのですか。 ○尾形外国人雇用対策課長 これはお諮りしている新たな指針においても引き継いでい ます。21頁の下から2番目の行ですが、国外に居住する外国人労働者のあっせんを受け る場合には、職業安定法の定めるところにより、職業紹介事業の許可を受けている者、 又は届出を行っている者から受けるものとし、安定法又は派遣法に違反する者からはあ っせんを受けないというものです。ブローカーというのはやや肯定的、あまりこなれて いない表現なので落としただけでして、趣旨は全く変わっていない。むしろはっきり法 律上の表現に即してきちんと書いたということです。 ○原委員 わかりました。そもそも、この研修制度を1年、技能実習制度を2年というこ とについて、本当に機能しているのかという問題があるわけです。この場の議論ではな いかもしれませんが、厚生労働省としてのこれについての、そもそもの見解というのを、 この際教えていただきたいのですが、どういうふうにしようと検討されるのか、どうも 機能をしていないのではないか。 ○尾形外国人雇用対策課長 これは簡単に申し上げますと、去る5月にこの問題につい て厚生労働省に設けた研究会から、中間報告を出させていただいて、いま原委員からご 指摘があったような問題意識もふまえて対応、対策の案を提示したという経緯がありま す。その研修中の問題が特に大きいということでしたので、その報告書においては、そ の研修の期間にも労働関係法令が適用できるように、これも労働者として扱うというよ うな内容を、まず盛り込みました。その他、諸々の弊害とか濫用とか言われている事案 にどう効果的に対処するかという点については、連合、使用者団体、日本経団連等々か らもヒアリングをして、いろいろなご意見を聞きながらとりまとめたと理解しています。  世の中にはこの点についてはいろいろご議論があるようですが、厚生労働省としては 一定の案を出した、その案の1つには、いま原委員がおっしゃられたような観点も盛り 込まれているということです。 ○長谷川委員 指針で聞きたいのですが、指針でやむを得ず解雇等を行った場合は、関 連企業等へのあっせん、教育訓練等の実施云々、必要な援助を行うように努めることと あるのですが、例えば外国人が入って来るときは在留資格、例えば教育だと教育ですよ ね。教育で入って来て失業してしまうと、教育で入って来てほかのことはできないと思 うのだけれど、そういうときのハローワークでの就職のあっせんというのは、結局教育 で入って来た人は教育ですね、工業で入って来た人は工業だと思うのですが、その確認 がまず1つ。それと、そういう人を関連企業等へのあっせんだとか、求人情報の提供、 それはそれでいいのだけれど、ここをもし少し丁寧に書くとすれば、個々の在留資格に 応じた再就職支援とかと書いていただけると、少し注意が喚起されるのではないかなと 思ったのです。 ○尾形外国人雇用対策課長 まさにご指摘のとおりです。当然、在留資格の範囲内で転 職していただくのが法の枠組みです。ご指摘の点は確かにそのとおりであろうかと思い ますので、この点は考えたいと思います。 ○大橋部会長 外国人雇用対策について予定していました時間がほぼきていますが、対 法務省との問題については、現状では安定局長と高齢・障害者雇用対策部長とがまとめ られた、これがまあ精一杯ではないかなと思うのです。そういう点では一応ここのとこ ろは、確かにいろいろなご議論がまだまだあると思いますが、現状ではこれぐらいのま とめかなと私は思います。それで、次の議題の募集・採用に係わる年齢制限に移りたい と思います。これにつきましてご意見があればお願いしたいと思います。 ○森戸委員 まず1つはちょっと技術的な話ですが、35頁にこの間質問させていただい たこともあって、たぶん雇用対策法と均等法の比較の表を作って説明をいただいたので す。No.8の(3)の5条に違反する行為が民法上の不法行為に該当するか、無効とされるかと いう件なのですが、上に上がっているのは募集・採用の規定だけなので、募集・採用の ときの行為というのはいろいろあるでしょうけれども、基本的には法律行為ではなくて、 採用拒否も含めて事実行為だと思うのです。採用自体は法律行為ですが、採用をしない ことが、たぶん均等な機会を与えないことなので、だとすると、たぶん(3)のところの無 効とされるかどうかについては、というのは要らないのかなという、ほかに何か無効に なる行為が想定されているのかもしれませんが、これは直接省令の話ではないのですが、 それを1つだけ指摘しておきます。  もう1点はもう少し大きな話なのですが、まず、基本的に今回の議論は強行規定にな ることが決まって、それで省令を考えるという話なので、その枠内での話ですよね。で すから、その範囲内での原案に関して、私は自分の意見はあるのですが、それは置いて おいて、限られた範囲で決めなければいけないことがありますので、最終的には座長の ご意見というか、この会の全体の意見には従うつもりですが、他方で私は、公益代表と していろいろ学識と言うのもおこがましいですが、一応自分の意見もありますので、少 しだけそれを話させていただきます。  37頁、これは私がお願いして、高年法の規定も参照で載せていただいたのです。私は、 そもそも定年制とかがある現状で、年齢差別という言葉を使わないにせよ、やはり募集 ・採用における年齢制限の話は、最終的には日本の雇用慣行なり定年のあり方と係わる ので、慎重に考えなければいけない問題だとは思っていて、高年法の18条の2、つまり 募集・採用で年齢制限をつけていいけれども、理由を説明しろと。私は本当はこちらが 出発点になるべきだと思っていて、この趣旨は年齢制限をするならしてもいいけれども、 では、なんでそれが必要なのか、ちゃんともう1回ゼロから企業であるいは労使で考え て、それを説明するように考えてみてくださいということを義務づける規定なわけで、 それは非常にいい規定だと思うのです。  問題は、ただそれが雇用対策法にいくと、ちなみにその理由はこういうことを書けば いいのだよという、何か答が書いてあるような感じになっていて、そこが本当はよくな いと個人的には思っているのです。ただ、それをよくないと言い出すと全部雇用対策法 の議論に入れないので、それを主張するつもりはありませんが、今後の議論に向けては その辺り全体を考えていかなければいけないだろうと思っています。  では、現在の原案というか、それに関しての現在の枠組みに関しての議論に関しては どう思うかといいますと、これは前回も出ていたように、結局7頁、8頁の辺りですか。 日本的な雇用慣行の長期雇用を前提とする雇用管理には基本的には、それは駄目とは言 わないということで、そこでハの中で(イ)(ロ)などは認めることにしたわけです。 それ自体も議論はあると思いますし、もっと深く議論をしなければいけないのでしょう が、そういう方針であると。つまり、いままでの指針よりはぐっと絞ると。絞るときの 基準は、そういう長期雇用制は一応維持する方向をとりあえず認めようということなの で、そこは残すというのは、現状ではしようがないのかなと。  それでいくと私は、これはまた皆さん異論があるかもしれませんが、8頁のハ、芸能 ・芸術の真実性のための特定の年齢層の募集・採用は本当は要らないのだろうと思って います。それは日本の長期雇用とは関係がないということが1つ。もう1つは均等法には 確かにあるのですが、男女と年齢は違うだろうと思うことが1つです。これは個人的な 意見です。8頁、例の一定の年齢層の幅を5歳ぐらいで区切って、その前後で半分以上へ こんでいたら、そこを募集してもいいよという、資料5の20頁がありました。これはや はり一定の数字を示さないと基準がなくてわかりづらいというのは、よくわかるのです が、やはり個人的には何か枠をはめて5歳で切って半分以下だったら駄目で、それ以上 だったらよくてという、何か数字で線を引くということには、非常に疑問があるのです。 ただ、それを突き詰めていくと、結局、私の最初の意見に戻るわけで、その当該 労使関係でどういうものが合理的かということは、企業によっても事情が違うだろうか らと。だから何で年齢制限が必要か考えてみてねという意見につながっていってしまう ので、現在の日本の長期雇用は維持させる、そして年齢層でへこんでいるところは募集 してもいいという前提をとるなら、まあ、こういう基準もしようがないのかなと思うの ですが、本当は数字で区切ってやるものではないと個人的には思っています。  余計なことを言うと怒られるかもしれませんが、法律の作り方として果たして美しい のかどうかということも、ちょっと思います。  もう1点は、今回いちばんインパクトが大きいというか変わるのは、年寄りだから重 い物を持てない、柔軟な考え方ができないとかいう理由で募集しないというのは駄目だ と。それは前の指針ではよかったのですが、今度、駄目になったというか、それはもう 書いてないわけです。あとは渋谷で服売るから若い子だけ募集してというのも駄目だと いうことで、実際上はこの辺りのインパクトが大きいのかなと思っていて、それは年齢 差別禁止の方向にいくのだからそういうのは駄目なのだというのも1つの説明でしょう。 ただ、先ほども申し上げたように、うちはこういう仕事で、こういう商品を売っていて、 こういうことをするためには、こういう若い層の人がビジネス上必要なのですというこ とを、合理的に説明させる機会も奪うことになるわけです。それでいいのかとい うことを本当はきちんと議論しなければいけないのかなと思います。前回の繰り返しみ たいになり、いろいろ申し上げましたが個人的な意見もだいぶ入っていますので、これ が通らないと議論しないというつもりはなくて、先ほど申し上げたように、座長にお任 せしますが、今後のためにいろいろ広いことも言わせていただきました。以上です。 ○宮野企画課長 森戸先生から主として5点、ご意見、ご質問をいただいたと思います が、いちばん最初の資料35頁の部分です。これは募集であると事実行為なのでそもそも 無効ということがあるのかどうかということです。ここの部分は募集それから採用行為 も含めていろいろなケースがあり得るということで、一般論としてこういったことも可 能性として考えられるということで記述をしているものです。  2点目ですが、これは先生からご指摘がありましたように、あくまでも今回の雇用対 策法の改正については、募集・採用についての年齢制限を禁止するということでして、 資料の諸外国の制度のように、年齢制限全体を禁止する、あるいは年齢以外のものも含 めて雇用に関するさまざまな差別を禁止するという仕組みのものではないということで、 また、ここは先生ご指摘のように、全体をどう考えるかは、今後の検討課題であろうと いうふうにそこは考えています。  具体的なご意見、ご質問を3点いただいています。1点目は芸術・芸能、これは日本的 雇用慣行と直接関わるものではないので、必要がないのではないかというご意見です。 ご指摘のとおり芸術・芸能については、この例外規定として入れていますのは、確かに 前後の項目とは考え方がやや違った部分があると思います。これはこの例外を認めない と事実上非常に困るというよりも、まさに芸術・芸能のような表現の真実性というもの は尊重すべきではないかということで、例外として認めているものです。これは先生か らもご指摘がありましたように、男女の場合は日本の均等法でも認められています。  それから、本日資料を出していますが、諸外国の制度を見ましても38頁に、例えばEU、 イギリスで、年齢が特定の職業に真正かつ決定的な要素となる場合というのが、それぞ れ例外で定められています。これは、ここの部分について具体的などういうものが該当 するのかについて、それぞれEU、イギリスの事務局あるいは政府が発行しているリーフ レット等で確認をしてみましたが、いずれにしても、この項目については雇入れについ てはかなり限定的に解釈をされていますが、それぞれ俳優の募集採用の点については例 外として明示されています。そうした諸外国の例も踏まえまして今回、この例外事項の 中に入れさせていただいているというものです。  ご意見、ご質問の残りの2点ですが、例えば項目で言いますとハの(ロ)の部分です。 あるいはそれ以外、今回むしろ例外事項としては除いてしまった年齢指針の部分につい て、事業主から合理的にその説明をさせる仕組みが考えられないのかというご指摘です。 これについては確かに考え方としては例外事項として、その他という形で規定をすると いう考え方も一方であると思いますし、これも先生からご指摘がありましたように、全 体として高齢法の規定のような形で例外を定めるという考え方もあろうかと考えていま す。  ただ、一方で今回の雇対法に関する例外事項については、国会の附帯決議で抜本的に 見直して、必要最小限にという附帯決議も踏まえて、必要最小限、やむを得ないと考え られるものを個別具体的に列挙する形で規定をさせていただいています。これは求人に ついては日々、事業主の方、あるいはその求人を受け取るハローワークだとか、求人情 報誌の担当者等々が、それぞれ例外事項に当たるのか当らないのかということについて、 やはり個別に明確に判断できるという必要が、実際の運用としては非常に重要であろう と考えています。そうした観点から個別具体的に列挙をさせていただいている形で、今 回お示ししています。逆にその他ということで何か、それ以外に考えられるというもの があれば、またご意見をいただいてそこは検討することもあり得ると思いますが、これ はその他という形で個別に判断ということになると、マルバツの基準をどう考えるのか というところも非常に大きな問題になってくるだろうと考えています。とりあえず以上 です。 ○樋渡委員代理(輪島氏) いまのに関連したところですが、8頁のいまご指摘の(ロ) の所の読み方ですが、「当該事業主が雇用する特定の年齢層の特定の職種の労働者の数 が相当程度少ない」というところですが、第1点目は「当該事業主」と書かれるときの 読み方をどうするのかということですが、事業所単位は含まずになんとなく企業単位と いうようなニュアンスを感じるのですが、その点がどうなのか。基本的に私どもは、例 えば勤務地限定で、その支店とかそのエリアでの採用ということも含んでいますから、 企業単位での異動ということを原則にすると、そこのところで引っかかってきて、むし ろ事業所単位のところは異動ができないということも含むと、雇用管理の実態としては やりにくいのではないかと思います。  2点目は森戸先生がご指摘の点で、2分の1、これは20頁の告示の所にも書いてあるので すが、2分の1と限定をしてやることが、義務化なので白か黒かというところですが、本 当に2分の1の運用が可能なのかどうかという点になると、数字でおかなくてはいけない のであれば、例えば3分の2だとか、5分の4だとか、そういうような別の数字も含めてご 検討いただく必要があるのではないかと思います。以上です。 ○宮野企画課長 2点ご質問をいただきましたが、まず最初の8頁の「当該事業主が」の ところの事業主の意味です。これは20頁の告示でも「当該事業主が」という形で同じ書 き方をしていますが、当該事業主という場合には、基本的にはそれぞれの企業単位とい うことで考えています。ただ、これについてはご指摘のとおり基本的な人事管理は一般 的には全社単位で募集・採用から退職までがなされていると考えていますが、いまご指 摘がありましたような形で、事業所単位で採用から退職までということで人事管理がな されているというケースも一方であるということは認識をしています。そうした状況も 踏まえて、これは原則はやはり企業単位ということになると思いますが、一定の場合に ついてはその事業所単位で2分の1なら2分の1を計算するということについては、ある程 度、幅をもった対応ができるという方向では検討をさせていただきたいと思います。  2点目の2分の1の問題ですが、これは先ほど森戸先生のところでもお答えしましたと おり、やはり運用面を考えますと、何らかの一定の基準で線を引いて判断をすることは 必要であると考えています。ただ、そこは正直言って2分の1なのかどうなのかという部 分については、私どももこれは統計的なデータを取って、2分の1が最適であると考えて いるわけではありませんで、あくまでも(ロ)の趣旨は技能とかノウハウの継承という 観点から考えますと、前後の年齢層と比べて半分以下の従業員の層だと、そこはそうい った伝承という点で問題があるのではないかということで、2分の1という数字を置いて いるものです。したがいまして、ここは例えば労務管理上、むしろ実態からしてこれは 2分の1ではなくて、何か別の、このぐらいの数字がないと困るのだという明確な根拠の ようなものをいただければ、そこはこの数字については検討し得るのではないかとは考 えています。 ○長谷川委員 通し番号で8頁の(イ)です。前回の資料でも12頁で説明されましたが、 長期継続やキャリア形成に係る観点から、若年者等を募集・採用する場合のところで、 例えば35歳未満の方を募集というふうになるのですが、これやはり何で35なのかとか、 いまでも結構40歳だとかという募集があって、そういうところから女性が排除されてい くということがよく言われるわけです。この事例の35歳未満の方を募集という前回のも のは、またそういうものを認めるのかというような感じを受けるのですが、どうなので しょうか。 ○宮野企画課長 冒頭ご説明しました、特に35歳を境にして、この項目で何らか取扱い が変わるというものではありません。今回の8頁の要綱の所をご覧いただければわかり ますとおり、あくまでも省令の書き方としては、青少年、その他、特定の年齢を下回る 労働者の募集及び採用を行うときという形で、以下括弧にあるような期間の定めがない だとか、あるいは職業に従事した経験は問わない、あるいは新規学卒者と同様の条件で 募集をするというような条件で募集をする場合に関しては、一定の募集・採用の年齢の 上限を設けることができるというのがこの規定です。中心に念頭に置いているのは、当 然ながら若年者なのです。大体、私どもが若年者対策と言うときには、35歳前後を主と して想定していますので、例示としては35歳というものを挙げていますが、実際上(イ) の条文に関しては、いま申し上げたような条件の中で、それぞれの企業の人事労務管理 制度に合わせて、例えば40歳以下、あるいは45歳以下という形で募集・採用をしていた だけるというものです。繰り返しになりますが、特段35というところに何らかの意味が あるというものではありません。以上です。 ○長谷川委員 まあ時間も短かかったことと、それと議論をする期間も非常に限られて いたので、この問題はなかなか難しい問題なのですが、今回はしようがないかなと思い つつも、次に向けて法文の作り方をもう少し工夫することが必要なのではないかと思い ます。例えば解雇は基準法の18条の2項で、社会通念上相当であると認められない、合 理的な理由のない解雇はできないとしていて、立証責任は使用者が大体負うということ なのですね。年齢差別について、雇用対策法も高齢者雇用安定法も、今日の報告にある ように、どういう法的効果があるのかというと、指導勧告となっているのですが、将来 に向けてこの年齢の問題というのはどういうふうに扱っていくのかということについて 調査をしたり研究したり、検討することが必要だろうし、私どもも検討しなければいけ ないのですが、やはり民事的効果のあるような法律を作っていくことを視野に入れなが ら、引き続き検討をしていくことが必要なのではないかと思います。 ○大橋部会長 欧米の仕組みと比較していただきますと、ずいぶん違うなというか、そ の違いというのが美しいか美しくないかは別にして、日本の雇用慣行をある程度踏まえ ながら法案要綱を作ろうということで、こういう形になったと思うのです。ただ、日本 の雇用システム自体もこれから変化していきますので、いま長谷川委員がおっしゃった ように、今後の少し長い将来を見据えて考えていくのは非常に大事かなと思うのです。 そういう点では現状ではその辺、少し日本の状況を前提にして法案されたという気がし ますけどね。 ○橋本委員 意見になるかもしれないですが、この年齢制限を廃止するという趣旨はよ く理解できます。これはもちろん採用に当たってということだと思うのですが、実務的 に取り扱いますと、例えば全く限定的な部分を除いてやると、要するに意に添わない人 が来て採用をしないという形になります。そうしますと、一定の条件を示していれば別 なのですが、無駄足を踏むというかミスマッチが起こるというのか、求人者も求職者も、 両方そういう問題が起きる可能性があるので、あまり限定するのもシビアにやり過ぎる というのはどうかなという感じがしないでもないのですが、この辺のお考えをお聞きし たいのです。 ○宮野企画課長 実際の運用においては、いままさに言われたような問題も発生する可 能性はあるだろうと考えています。実際、現在でも男女の求人について無駄足だったと いうお話があって、後からハローワークなりにそういったお叱りの電話があるというケ ースは、正直なところ現在でもございます。ですから逆にそういったようなことがない ように、それぞれの職務の内容を具体的に明示をしていただくというのが、今回の頁数 で言いますと9頁の(二)の部分です。実際の求人に当たっては職務の内容だとか必要 とされる労働者の適性・能力のようなものをはっきり書いていただくことが、まずお願 いをすべきことなのだろうと思っています。  ただ、一方でそうした中でもご指摘のような点も生ずる可能性もありますが、然はさ りながら、これはまた別に、いままで単に年齢だけで門前払いをされていた方が、採用 の機会を与えられたことによって実際、応募して面接をしたら非常にいい方だったとい うケースも、それ以上の確率で発生する可能性もあると思います。今回のはあくまでも 募集・採用の年齢制限禁止に関しては、とにかく門戸は広げていただきたいということ で、こうした措置が設けられたものであるということでご理解いただければと考えてい ます。 ○大橋部会長 ほかにいかがでしょうか。それでは少し時間の余裕がありますので、若 者指針及び地域雇用対策について、ご意見、ご質問等があればお願いいたします。 ○山川委員 18頁の「事業主が定着促進のために講ずべき措置」の一の「雇用管理の改 善に係る指針」。実際には19頁の(二)になります。ここにありますように、期間を定 めて雇用されている労働者、青少年が希望した場合は正社員への登用の可能性が与えら れる仕組みを検討するということがありますが、この間の資料を見ると少しトーンダウ ンかなというふうにも思います。努力義務ではありますが、ここは仕組みを導入すると いうようにしたほうが、より現実味があるのではないかと思います。なかなか正社員の 機会が得られない人たちにとっては、そういう制度は非常に重要ですから、そういう意 味では新たな支援措置等がとれないのかなと、考えていないのかなということも併せて お聞かせいただきたいと思います。 ○原委員 正社員を重視するということに関しては厚生労働省もそうだということを一 貫して答弁されていますので、大変心強いかと思うのですが、先ほども委員が言われま したように、より正社員化を誘導するという意味において、障害者雇用の問題もあるの ですが、何らかの数値目標を設置されたいと思います。要するに有期社員をかなり多く 採用している所については、それとのバランスで正社員に登用する格好でするようにと いうような数値目標などを今後、検討する考えはないのかどうかお聞かせください。 ○長谷川委員 この青少年の指針なのですが、いま能開局が第8次の能力開発計画を作 ったりとか、円卓会議がジョブカードをいま検討しているみたいなのですが、何かそう いうのを活用して、企業も積極的に若者の能力を評価しながら採用していくというもの がちょっとあってもいいなと感じました。入れられないというのであったらいいのです が、そういうのがちょっと見えないなと思ったのです。 ○阿部若年者雇用対策室長 最初に期間を定めて雇用されている若者に対して正社員と かの仕組みの導入の検討ということですが、これは若者だけではなく、パート労働者の 形であっても、非正社員から正社員への転換について、いろいろな形で企業に努力をい ただいているところです。そういう中でこれはお気持としては確かに導入なりをしっか りやってもらうようにということでのご趣旨だと思いますが、それぞれの企業の中で労 務管理をしている中で、制度を導入していただいている企業も既にある中、いろいろな 形での普及啓発もやってきているところですが、なかなかそれ自体難しい企業もないわ けではないと思います。まず各企業の中でそういった仕組みが導入できるかどうかにつ いての検討について、まず取り組んでいただいて、その中で導入できる所については導 入していただくということで、まずは、とにかく取り組んでもらいたいという趣旨で書 かせていただきました。 新たな支援措置ですが、若者につきましては、これまでもフ リーターであった若者についても、正社員になれるようにということで、いろいろな体 系を作って取り組んできたところです。その中では正社員に向けた取組みは各企業でも 取り組んでいただくということと、政府側としてもいろいろな形での支援措置に取り組 んできたところです。今回この指針自体は事業主の方々にお願いするということなので、 この中に盛り込んでいるわけではありませんが、フリーター25万人常用雇用化プランな どにつきましても、また見直しをしながら取り組んでいこうと考えていますので、ご理 解いただければと思います。  また、正社員化に向けての数値目標ですが、それぞれ企業の中での取組みとして、正 社員を中心として、いわゆる企業活動を行っている業種・業態、それから逆に例えばパ ートなどの非正規という形の従業員の勤務形態、また違う形で取り組んでいったほうが 効率的な業態・業種もあるということもありますので、一律的な数値目標なりを入れて 取り組むのは非常に難しいのではないかということです。そういう意味ではいますぐ何 らかの形での目標を入れてということは難しいのかなと思っているところですが、そう いったご意見も含めて、いろいろ承知していますので、私どももいろいろ勉強をさせて いただいて、何らかのことを考えていく必要があるかもしれないと思っているところで す。  能力開発基本計画、ジョブカードの関係ですが、能力開発計画自体、基本的には政府 の方針として能力開発について、どういうふうに取り組んでいくかという計画というこ ともありますので、今回の指針の中では、取り込んでいくことがなかなか難しい部分が あろうかと思います。今回の指針の中でも最後のほうに能力開発に関する措置というこ とで、事業主側にお願いすべきことについては、簡単ではありますが、書き込む所は書 き込ませていただいたということなので、そこはご理解をいただければと思っています。  ジョブカード制度については、まだ検討が進められているという状況なので、現時点 ではまだ中身のほうもわからない状況であり、いわゆる大枠をいま検討しているところ です。中身がわかれば、私どもでもハローワークでどのように活用させていただくのか どうか、その上で企業側にどういうふうにお願いしていくのか、ということはもしかし たら出てくるのだろうと思いますが、現時点では書き込めるような情報までは至ってい ないというところなので、案の中では記載するまでには至らなかったということでご理 解いただければと思っております。 ○生田総務課長 そこなのですが、この若者支援については、現段階の政府の政策など を前提として整理していますが、今後は先ほどお答えしましたように、ジョブカードが どう動くかもよくわかりませんし、あるいは有期雇用労働者について、正社員にしてい くということの支援政策をこれから取っていこうと思いますが、その進展状況なども見 る必要があります。あとは企業の中で労働者の実態として正社員として働くことを希望 する人がどれぐらい、どういう分野でいるのかということについても詳細にデータが取 れたりするかもしれませんので、その動きに応じてこの内容を見直していくということ は十分あり得るということを前提に、ご議論をいただければと思います。当部会でまた 動きに応じてご提案いただくこともかまわないと思っていますので、これは現段階での 状況を踏まえた案ということでご理解いただければと思います。 ○荻野委員 指針のほうで、我々が実際採用しているのと若干実態に合わないなという ところがちょっとあります。第二のいちばん最後の所に「なお」というのがあって、「 青少年の募集に当たっては採用基準を明示、いわゆるフリーター等についても」とある のですが、この採用基準を明示するというのは実務的には大変難しいなというのがあり ます。例えば営業職5名募集ということで、営業ですから運転免許証が必要だとかいう 要件を書くことはできるのですが、その5人の求人に対して求職者が例えば10人来られ たということになると、いろいろな角度から考えて総合的に判断して、こういう人がい いだろうということで採用することになります。では、基準は何なのだと言われると、 これは示しようがないという部分がかなりあると思います。あるいはいまの例でいきま すと、5人のところに例えば4人しか来なかったと、1人は免許証を持っていない人が来 ましたと、でもどうしても5人必要だから4人とも採ってしまおうかということも当然行 われるわけです。そういう意味でここのところの「採用基準を明示し」ということを書 かれると、大変実態と違って、対処が不可能だなと思います。その上の第二の一の所に、 募集・採用について業務内容、勤務条件、職場で求められる能力・資質、キャリア形成 等を含めて、それについての情報を明記すること、これは非常に大事なことだと思いま す。これを見てどういう仕事でというところの判断が、求職者の方にもできて、非常に 参考になると思うのですが、採用基準を明示とまで言われると、これは無理な注文とい うのが正直なところです。 ○阿部若年者雇用対策室長 ただいまの点でございますが、「採用基準を明示し」とい うところですが、いわゆる若者の側に立ったときに、どういう形で採用されるかという ことについて、わかりにくい、わからないので明らかにしてもらいたいという声は実は ございます。企業側の方々にいろいろ伺ったところ、そうでした。いま委員からご指摘 があったように、それを文書なりという形できっちり明示するのは非常に難しいと、い ま言われたような例もあると思いますが、なかなか難しいということはあります。ただ、 実際、何人来るかどうかは別として、募集の時点で、こういう観点で採用させていただ きたいということを明らかにしていただくことは、若者側としても自分がそれに適応す るのかしないのかを、ある程度考えを持ってから応募することもできるという観点で、 採用基準については、できる限り明らかにしてほしいということで、最終的にはここの 文章のなお書きの最後のところは「望ましい」ということで閉めさせていただいている と考えています。  審議会の建議では、採用基準や職場で求められる能力・資質の明確化について、指針 で明示するようにということで報告いただいていたところなので、そういう意味では、 採用基準を明示してほしいということについては、指針の中でこのような形で示させて いただきました。 ○荻野委員 第二の一にあるような、これをなお書きになることはごもっともだとは思 うのです。ただ、採用基準と言われると、何か検定試験のようなイメージなのです。そ れで、この試験で80点取ったら合格ですよと、その基準に達すれば何人でも合格します よというイメージがあるのですが、企業の採用というのはそういうものではないですか ら、5人採るときはいいほうから5人採るわけですから、採用基準ということでは非常に 不適切な表現ではないかなと思っているのです。 ○大橋部会長 これ読み方、文脈の中で読まないといけないと思うのです。だから、絶 対的に採用基準を明示しなさいという話になると、どこまで明示したらいいのかとか、 ここまで、こんなにはできないとか、いろいろな議論が出てくるのですが、その後を読 むと、フリーター等について排除されないような採用基準を明示しなさい、というよう な読み方をすればわかりやすいと思う。だから本来ならば青少年の募集に当たっては、 いわゆる フリーター等についてずっときて、というので、採用基準を明示することが望ましいと いう文章のような気もするのですが、そういうふうには読めませんか。 ○樋渡委員代理(輪島氏) 採用基準という言葉の「基準」のところが多少引っかかる のではないかなと思うので、どのような人材が必要なのかということを明示してくださ いという趣旨であれば、そういうことで修文ができればいいのかなと思うのです。 ○長谷川委員 採用基準と言われると、企業は自分のところの基準を用意することにな るのだろうなと思いますが、もう少し工夫すればいいのではないですか。 ○生田総務課長 この採用基準という表現につきましては、ちょっと固いという感じも しますので、どういう表現がいいかというのを再検討させていただきます。いずれにし ても労働者を募集をするときは、募集時点での思いと、実際に求職者の方が来られたと きの状況が変化するのは当然でして、これはハローワークに求人を出していただくとき も、まったく同じです。そのとおりの人が必ず行くわけでもないですし、そういう人を 必ず採るわけでもないです。実際に面接をした結果の労働条件が変わることも当然ある わけで、必ずしも求人にならないということもあります。ですから、ここで書いている のは、あくまで募集時点でこういう人が欲しいということを簡単に書いていただくとい う趣旨ですが、いずれにしても、ちょっと固い言葉ということがありますので、再検討 はいたします。 ○大橋部会長 採用が上に付いていますから余計に、何かきちんとしたものを考えてし まう。それでは時間も押してきましたので、本日はこの程度にさせていただきたいと思 いますが、次回、更に議論を深めてまいりたいと思います。その他、全般を通して何か ご意見ございますでしょうか。ないようでしたら本日の議題はこれで終了します。次回 は政省令の周知期間等の関係もあり、またこれまでの議論により論点も明らかになって きたことから、次回部会として取りまとめを行いたいと思います。よろしくお願いしま す。次回の会議は7月18日(水)午後5時から、場所は職業安定局第1会議室で開催いた します。本日の会議の議事録の署名委員につきましては、長谷川委員及び荻野委員にお 願いいたします。本日の会議は以上で終了いたします。どうもありがとうございました。 (照会窓口)   厚生労働省雇用政策課雇用政策係   TEL:03-5253-1111(内線5732)