07/07/09 第14回予防接種に関する検討会議事録                         健康局結核感染症課予防接種係                                内線 2383                                  第14回予防接種に関する検討会 日時 平成19年7月9日(月) 17:30〜 場所 厚生労働省9階省議室 ○山田課長補佐 定刻になりましたので、これより第14回予防接種に関する検討会を開 催いたします。  本日は、御多用のところ予防接種に関する検討会に御出席いただき、誠にありがとう ございます。  最初に、出席者の紹介をさせていただきます。まず、委員の方々より御紹介いたしま す。  岩本愛吉様。  岡部信彦様。  加藤達夫様、座長でございます。  澤節子様。  竹本桂一様。  廣田良夫様。  宮崎千明様。  飯沼雅朗様及び蒲生真美様は、少し遅れての参加と聞いております。  今回、参考人として岡田賢司様、脇口宏様にも御出席いただいております。  続きまして、意見聴取人といたしまして御参加いただいております方々を御紹介させ ていただきます。  糸数公様。  知念正雄様。  吉川弘明様。  井上様。  纐纈美千世様。  畑秀二様。  内田康策様。  大橋俊二様。  井澤秀雄様。  山下貢様でございます。  また、本日もオブザーバーといたしまして、総務省、文部科学省、国土交通省、厚生 労働省内の関係部局より参加いただいておりますことをお知らせいたします。  開会に当たり、本来であれば外口健康局長がごあいさつを申し上げるところでござい ますが、所用により出席することができませんので、その旨御報告させていただきま す。  これ以後の議事の進行につきましては、加藤座長にお願いしたいと存じます。加藤座 長、よろしくお願いいたします。 ○加藤座長 それでは、本日の議事を進めさせていただきます。まず、事務局から資料 の確認をお願いいたします。 ○山田課長補佐 資料を確認させていただきます。お手元に配付いたしました資料をご らんください。  資料1「予防接種に関する検討会委員名簿」。  資料2、本検討会の意見聴取人の一覧。  資料3「麻しん(はしか)排除に向けたたたき台(案)」。  資料4「麻しんの排除に向けた今後の取り組みについて」。  資料5「金沢大学における感染症対策」。  資料6「ある親たちの疑問???part2〜予防接種と次世代の健康と〜」。  資料7「麻しん(はしか)排除に向けた提言に対する意見等」。  資料8『「麻しんの排除に向けた今後の取り組みについて」亜急性硬化性全脳炎の子 供を持つ親の会からの意見』。  資料9「麻しん排除に向けて」。  資料10「予防接種に関する私見〜小児科医・市長の経験から〜」。  資料11「麻疹(はしか)流行に対する小学校における対応等について(中野区立谷戸 小学校)」。  資料12「東京都立井草高等学校麻疹集団発生について」。  後で配付させていただいております資料4の補足資料といたしまして、沖縄はしか “0”プロジェクト委員会委員長、知念先生の意見をつけさせていただいております。  資料8の補足資料といたしまして、『SSPEの子どもたち』という冊子を1部つけさせ ていただいております。  資料11の補足といたしまして、「谷戸小の麻疹対策」という1枚もののペーパーを配 付させていただいております。  参考資料1といたしまして、予防接種法施行令及び予防接種実施規則の抜粋でござい ます。  参考資料2といたしまして、定期の予防接種という資料をつけさせていただいており ます。  以上でございます。不足等がございましたら、事務局までお知らせください。 ○加藤座長 ありがとうございました。資料はよろしゅうございますか。  それでは、先に進めさせていただきます。本日の議題でございますが、前回の検討会 におきまして、今般の麻しんの流行における現状と今後の方策に関しまして、感染症 また予防接種の専門家の方々により御報告・御提言をいただいたところでございます。 今回は、これらの内容を含めまして、はしかの対策等について関係各方面の方々より 御意見・御要望をいただくものでございまして、これらを踏まえまして、はしかの排 除に向けた有効な施策へと反映していくために、委員の方々に御議論いただきたいと 考えております。そのために、事務局と御相談しまして、前回の提言を踏まえて御意 見・御要望をいただくためのたたき台を岡部委員に用意していただきました。簡単に そのたたき台を御説明していただきたいと思います。また、このたたき台は既に御意 見いただく方には事前に送付していただいております。  それでは、岡部先生、よろしくお願いいたします。 ○岡部委員 お手元の資料3−1ですけれども、前回の議論でもたたき台がありました が、それに少し言葉を加えたり、入れ替えをしたりして、この麻しん排除に向けたた たき台というものを案として作成しております。  「I 大方針」「II 対策の柱」「III 各論」となっていますけれども、すべてにつ いて議論が進んでいるわけではないので、今日の各方面の方々の御意見等々を踏まえ て、委員会としての議論を進め、そして、最終的な結論に向かっていくものと考えて いただければよろしいかと思います。これですべてまとめができたということではな いと思います。  「I 大方針」ですけれども、どうしてはしかの対策をしなければいけないかという ことですが、予防接種に関する検討会においては2012年、WHO西太平洋地域事務局 が排除の目標として設定している年ですので、この2012年までの5年間に我が国にお けるはしかの排除を目標として、その排除計画を策定する。排除というのは、免疫保 有率が95%以上で、感受性者の蓄積がなく、患者が入国しても流行を起こさない、外 から持込みがあってもそれからの広がりがないということが前提になります。麻しん 排除の定義というのは明確に書いてございませんけれども、上のことを参考にすれば、 麻しん保有率が95%以上で、トランスミッションが断ち切れた段階ということになる と思います。  「II 対策の柱」というのが5つ挙げてありますけれども、できるだけ接種機会を確 保する。それから、接種率向上のための取り組み、それから、はしかの患者さんが発 生したときの迅速な対応、それに加えて計画を立てたのであれば、どこかで評価をし なければいけないということで、評価体制の確立というのがあります。しかし、それ にしても使うのはワクチンという製品でありますので、この供給体制のバランスの上 に考えなくてはいけないので、これも考慮して全体の対策の柱を掛けるということが あります。  それから、この中には書いてございませんけれども、定期接種としての取扱いは従来 どおりだと思います。一部から私に「これは強制接種になるのか」との質問がありま したが、これは強制接種であるかと。これはそうではなくて従来型の定期接種の連続 であるとお考えいただければいいのではないかと思います。  「III 各論」ですけれども、接種機会をできるだけ確保するというためには、定期予 防接種対象者の拡大が必要であります。これは現行の2回接種をきちんとやるという ことに加えて、前回の改正によって予防接種機会を逃した方がどうしてもおられます。 これは例えば1歳から2歳までの間にやることになったためとか、あるいは90か月が 小学校入学1年前ということになったため、これらの方に対する経過措置というのは 設けられたときもあったわけですけれども、接種機会を逃している方に対してもでき るだけ免疫を受ける機会を持っていただくという意味です。  それから、接種機会がこれまでに1回のみであって、結局そのまま大きくなっていく 子が、例えば中学、例えば高校、例えば大学に入ったときに、いわゆるsecondary  vaccine failureあるいはprimary vaccine failureとして感染を起こしたり、ある いは感染源となったりする可能性があるので、できるだけこの年齢層にも2回目とし ての免疫を受けていただくというような形でキャッチアップというのがあります。  しかし、これはこの間の会のときには一例として例示をいたしましたけれども、委員 の中にはもっと短い期間でやるべきであるというような意見があり、それは早過ぎる のではないかというような意見もまだ十分まとまっていませんので、これについては 各論の各論として5年間でやるにはどうしたらいいか、4年間でやるにはどうしたら いいか、3年間の場合はどうだという幾つかのオプションがあると思われますので、 これについてできれば議論をした上で、どういう方法が現実的にとれるかということ を考えていただければと思います。大学生以上の感受性者というのも同様であります。  それから、接種率向上のためには、定期接種がどういうものだということについて啓 発を行うのと同時に、受けやすいような状況、受けたいと思われる方が行ってみたら 受けられないということではいけないので、できるだけそういうものに対する受けや すさの工夫として4点挙げてあります。接種場所、それから、保護者の同伴要件、こ れはどうでもいいということではなくて、きちんと了解を得た上でということが勿論 前提になります。あるいは環境の整備、接種対象者に対して複数回の勧奨の機会を示 すといったものがあります。  それから、いろいろなところで感受性者に対して、多くの場合は受け損ねていたとい うような方あるいは受けることができなかった、チャンスがなかったという方ですか ら、そういうような方に対してスクリーニングを掛けるために、入学時健診等でチェ ックを行うといったことが必要になりますが、これは文部科学省等の協力が不可欠で あるということが書いてあります。  それから、特に医療関係者、教育関係者、小児に接する機会の多い教育機関というの は、これまでの例でもこういうような方が初発となって集団感染を起こしているとい うことがありますので、特にこういう方々の場合は通常の方々よりも十分な注意が必 要であるということが書いてあります。  修学旅行も実際に海外に迷惑を掛けたという例もいくつかありますので、そういった ような機会、それから、医療機関への初診時等を通じて、できるだけの機会を提供す るというようなことも書いてあります。  予防接種の啓発も同様であります。  それから、(4)に接種証明というのがありますけれども、これはこの予防接種検討会あ るいはその前の検討委員会のときからの懸案事項で、母子手帳という非常にプライバ  シーに関するものと別に、予防接種をしたかしないかという個人の記録というものを  配慮すべきではないかというのがありました。そういったようなものを今回整備して  いただければ、予防接種歴が早くわかるので対策もとりやすいというような意味があ  ります。  また、そのまますぐになくなるわけではないので、恐らくはしかの患者さんの発生は  今後もあるわけですから、そういったときにできるだけ迅速な対応をとっていただい  て、それ以上の広がりを防ぐと。余り大事に至らないうちにというのがこの迅速な対  応についてであります。  4番目は評価をするわけですけれども、1つは、はしかの排除委員会、どういうよう  な状態になっているかということについての検討を、これは地区ごとにできればやっ  ていただくというようなことも含めて、こういう計画を立ててはどうかという案にな  ります。  それから、発生動向については、現在の状況では定点ですのでトレンドしか把握でき  ないので、もう少し緻密な形ではしかの動向を追うべきであるということがあります。  また、風しんについては麻しんと同様の方法で対策がとれる疾患であることと、先天  性風しん症候群に対する取り組みがWHOでも重要な位置づけになって来ていることもあ  るので、併せてきちんとしたデータを得て、そして、それに対策をとるという意味で  の風しんが入っています。世界の中で途上国はまだ取り組めないでいるところも多く  ありますが、日本は取り組むべく国の中に入っているべきであると思います。  この全数報告、休校の把握とか予防接種率の把握ということについてはほかの省庁等  との協力もいただきながら得ていく必要があります。勿論、現行の流行予測調査につ  いては継続、更に強化をする必要があります。  ワクチンというのは残念ながらまれではありますけれども、やはり副反応という現象  が起きることがありますので、それに対する報告システムを一層充実して、できれば  起きない方がいいわけですけれども、重篤な副反応が起きた場合の対策という仕組み  についてもさらに検討するべきではないか、ということも、この案に書かれておりま  す。  使用するワクチンに対して供給体制を確立する。現実的なところも考えなければいけ  ないわけですが、しかし、肝心の使うものがないということでは、この間の一瞬の騒  ぎの中の状況もありますので、そういうようなことがないように必要なワクチン及び  必要な試薬については、接種時期の検討、ワクチン生産計画といったことについても  メーカー等の御協力をいただきながら確立していかなければいけないだろうと思いま  す。  その他として2つまとめてありますけれども、使用するワクチンは先ほど途中で申し  上げましたが、基本的には麻しんの対策、麻しんのeliminationでありますけれども、  風しんという対策上類似した疾患であり、また、先天性風しん症候群というものをで  きれば我々の世代の後にそういう禍根を残さないということも含めて、風しん対策は  同時に行いますので、これも各国がやっているようにMとRをできれば同時に行う必  要があるという意味であります。  それから、副反応のところでもちょっと申し上げましたけれども、健康被害事故とい  うものに対して、更に迅速、できるだけ幅広い救済ということでの迅速化も、この中  に含めてまとめとしておいた方がいいということで加えたものであります。  以上です。 ○加藤座長 どうもありがとうございました。  前回の報告または今までのこの検討会で検討なされた内容につきまして、一応たたき  台という形でまとめていただいたわけでございますけれども、この件に関しましては、  また後ほど最後のところで各委員の先生方に御意見をいただきたいと思います。  続きまして、2番目の議題に入らせていただきますが、麻しん排除に向けた先進的な  取り組みについてでございます。ここでは、麻しん対策にかかわる先進的な取り組み  を2例ほど御紹介していただきたいと思いますが、今日は多数の皆さんにお話を伺い  ますので、発言の進め方について事務局から御説明をいただきたいと思います。 ○山田課長補佐 議事の進行についてお願いがございます。本日は9名の方より御意見・  御要望をいただこうと考えております。御意見・御要望をいただいた後、十分な議論  の時間を確保するため、各人の説明時間を10分とさせていただいております。終了2  分前になりましたら、ベルを1回鳴らしてお知らせいたします。また、予定時間にな  りましたら、再度ベルを2回鳴らしましてお知らせいたしますので、議事進行に御協  力のほどをよろしくお願い申し上げます。  以上でございます。 ○加藤座長 ありがとうございました。  貴重な御意見を伺うところですけれども、お時間のこともございますので、大変失礼  ではございますが、各参考人の方々にはお時間をお守りいただきたいことをお願いい  たします。  それでは、行政の現場として沖縄県健康増進課より、また次に、大学の現場といたし  まして、金沢大学保健管理センターからお話を伺いたいと存じます。今回、意見聴取  人として出席いただいております沖縄県健康増進課結核感染症班長の糸数先生より、  まず御説明をお願いいたします。知念先生も補足する点がございましたら、時間の許  す限りの中でお願いいたしたいと存じます。  それでは、よろしくお願いいたします。 ○糸数氏 皆さんこんばんは。沖縄県の糸数と申します。今日は、このような機会を与  えていただきまして感謝いたします。これから沖縄県の取り組みを発表させていただ  きます。  沖縄県の取り組みは、沖縄県はしか“0”プロジェクトを中核に行われているもので、  その委員会の活動を中心に報告し、今年の発生状況、課題について御説明したいと思  います。私の発表の後に、はしか“0”プロジェクト委員長の知念先生からも御発言  がございますので御了承ください。  それから、お手元の資料と本日のスライドは、一部データの紹介が違う部分がありま  すけれども、御了承ください。 (PP)  沖縄県では、平成10〜13年に掛けまして、2度のアウトブレイクを経験し、9名の乳  幼児が死亡するということを経験しました。9名の死亡例のうち4名が1歳未満、9  名全員がワクチン未接種ということでした。当時の1歳のワクチン接種率は65.9%と  いう状態で、このような悲劇を繰り返したくないという思いから、小児科医を中心に  2001年に沖縄県はしか“0”プロジェクト委員会を発足し、2005年までの1歳児のワ  クチン接種率を95%に引き上げるという目標設定いたしました。 (PP)  そのときの図ですけれども、定点報告だけで流行期の患者数が2,000名を超えるという  流行が長期間継続してしまったために、9名の犠牲が出てしまったということを経験  しております。 (PP)  はしか“0”プロジェクト委員会の主な活動ですけれども、接種キャンペーンという  ものがございます。はしかの予防接種率を上げるための取り組みとして、12〜15か月  の時期にワクチン接種が必要であるというキャンペーンを行い、「1歳のお誕生日に  はバースデーケーキとバースデー接種を」というようなポスターなどで住民に啓発を  いたしております。そのほかにも年に一度予防接種キャンペーン週間を展開し、シン  ポジウムや日曜一斉接種などを実施しております。  今後はMR2期の接種も勧奨するために、就学時健診のチェックが必要と考え、関係  者に調整を進めているところでございます。 (PP)  これらの取り組みの結果、ワクチンの接種状況の推移ですけれども、スライドに示し  ているのは3歳児健診における問診票から見た接種率です。平成9年83.5%が平成17  年では95.9%まで上がりましたが、3歳児健診受診率は約75%であります。  累積曲線を描いて平成11年から4年間3歳児健診のデータを比較しております。12か  月からの立ち上がりが徐々に急峻になっていく。平成14年になると非常に立ち上がり  が早くなります。12〜15か月の間に接種を受けるお子さんが増えていっているという  のも、この効果であると考えております。 (PP)  沖縄県では、平成15年から麻しん発生全数把握実施要領に基づいて、定点医療機関以  外からの協力も得まして、全数把握を実施しております。疑い例の段階から1例でも  発生しますと、速やかに対応して、その周辺の感受性者に対して接種を勧奨し、感受  性者を減少させるための取り組みを行っております。  これらを支えているのが迅速な遺伝子診断のシステムでございます。 (PP)  遺伝子レベルの診断というものは、沖縄県の衛生環境研究所が実施しております。  RT−PCRを実施して病院の方から検体が出ますと、おおむね翌日にはその結果が陽性か  陰性かわかるというようなシステムになっております。保健所では疑い例が出た段階  から、結果を待たずに接触者健診の準備を始め、そのPCRの結果を基に調査を継続  するか否かを判断しております。勿論、最終診断は臨床の主治医が総合的に判断を行  います。今年は既に68例の疑い例が報告され、そのほとんどでPCR検査を実施して  おりますけれども、やはり数が多くなっておりますので、何らかの絞り込みが必要だ  と考えております。 (PP)  患者さんが発生したときの対応については、ガイドラインにまず流行の状況によって  接種勧奨を強化していくということが記載されております。例えば、レベル1の散発  例が出ている段階では定期接種を強化するということ、そして、流行が広がってレベ  ル3になりますと6〜12か月の乳児への予防接種の勧奨、公費負担を検討するという  ことが記載されております。また、流行の初期段階におきましては、保健所による積  極的疫学調査も行われております。その一例を紹介いたします。 (PP)  これは昨年、沖縄県内の北部で経験した症例です。1例目は、8月末に東京専門学校  のオープンキャンパスに参加した高校生でした。彼は同居していた小学生に感染させ、  発熱・発疹で病院を受診し、その半日後に個室に隔離されたんですけれども、その半  日の間に次々と5名の患者に感染させたということが後に判明いたしました。その後  も、それぞれの患者から二次感染、三次感染が広がって、このような形で12名の患者  さんが発生いたしました。  保健所の調査等により、この12例の感染のつながりが疫学的にも遺伝子学的にも証明  され、遺伝子タイプは関東地方で流行しているものとほぼ同じということが証明され、  D5が検出されております。  医療機関を受診したときの感染が7例、家庭での感染が4例、初発は東京からの持込  みと考えております。 (PP)  そのときの保健所の対応ですけれども、ガイドラインに基づきまして、検体搬送、そ  れから、関係機関との連携をして接種勧奨を行いました。接触者の追跡を行ったんで  すけれども、感染する期間を推計しまして、その期間に接触した人たちのリストを作  成し、その中の感受性者に対して予防接種を勧奨したり、あるいは健康調査を行いま  した。健康調査の対象は29歳以下に限定して行いましたが、先ほどの12名の患者さん  の接触者の合計は1,077名に対して行われました。 (PP)  沖縄県のはしか対策を推進する体制ですけれども、はしか“0”プロジェクト委員会  というものは、はしか対策の中心的な母体です。関連するいろいろな分野のメンバー  で構成し、保健所、衛研との協力体制も確立されています。特に、発生時の対応につ  きましては、新型インフルエンザ対策とほかの感染症対策にも適用できる部分が多く、  感染症対策の強化につながっていると感じております。 (PP)  今年の状況ですけれども、これまでに10例の患者が報告され、全数把握ですから10例  発生し、68例の疑い例が報告されています。成人に多く、既接種者にも多いというの  が関東地方の流行と一致していると思います。10例中8例は県外での感染があったと  思われております。修学旅行中の発症も2例ありました。残りの2例についても、上  記の8例の二次感染、家族だったり、修学旅行生が立ち寄ったコンビニエンスストア  の店員だったりということで、保健所で接触者リストに載っておりますので、早期に  診断がついております。 (PP)  以上の沖縄県の取り組みを通じて見えてきた課題ですけれども、やはり接種率がまだ  低い状態にありますので、それを向上させる必要があるかと思います。接種を更に強  化するためにいろいろな工夫が必要だと思います。  全数把握の体制は、はしかの排除をしていく上で必要だと考えております。診断につ  きましても、臨床診断以外にもPCR等の検査を充実することで迅速な対応が可能に  なると思います。保健所における接触者調査も、特に流行の初期においては有効で、  感染拡大防止につながっております。  また、医療機関における受診時に感染が広がることもありますので、トリアージとい  う考え方も重要であると思われます。  麻しんをゼロにするという強いメッセージを国民・県民に示して、目標を設定してみ  んなで取り組んでいくことも、対策推進のためには必要であるということを私たち沖  縄県の経験を通じて申し上げたいと思います。 ○知念氏 ただいまの糸数氏の報告に追加させていただきます。沖縄県はしか“0”プ  ロジェクト委員会の知念と申します。  私たちは過去における心痛む経験を契機に、はしか“0”プロジェクトを立ち上げ、  県内1歳児のワクチン接種率を95%以上にすることを目標に活動して6年が経過しま  した。しかしながら、接種率はいまだ80%台にとどまり、繰り返される輸入麻しんの  対応に苦慮しております。その感染拡大阻止に費やされる現場関係者のエネルギーは  並大抵のものではありません。  そこで、私は2つの課題を申し上げます。  「1.発生時の対応について」、人口136万人の沖縄県で現在69例の疑い例と11例の確  定例が報告されております。発生時接触者追跡を何歳から何歳までを対象にするか、  更にワクチン接種勧奨と行動制限をどこまで実施するかなど、具体的な問題がありま  す。県内での修学旅行生における麻しん発生を経験して、その対応は観光関連産業と  のかかわりが多く、県内単独で解決できない問題があることもわかりました。  「2.ワクチン接種を受ける側の目的意識を高める方策」としまして、接種を勧奨す  る立場からの運動だけでは接種率向上に限界があります。接種を受ける側の目的意識  が高まる必要があります。それには麻しん排除を達成したアメリカなどを見習い、ス  クールロー的なものを設定して、定期の1期・2期のワクチン接種を受けることか小  学校入学の必要条件であることを明確に示し、受ける側のモチベーションを高める必  要があります。受けても受けなくても同じ条件で経過する我が国の現状では、95%の  接種率達成は容易ではありません。  地域の現場でワクチン接種を勧める私たちは、はしかでお子さんを亡くされた保護者  のお気持ちに深く思いやり、更に、これから生まれてくる子どもさんたちの代弁者的  立場に立って、今後ともはしかゼロ活動を推進してまいります。  以上でございます。 ○加藤座長 ありがとうございました。  それでは、続きまして、金沢大学保健管理センター、吉川教授からお願いいたします。 ○吉川氏 本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。  では、早速私たちがやっております対策について御説明させていただきます。ただ、  申し上げておきたいのは、私は決して感染症の専門家ではなく、もともと神経内科医  であります。 (PP)  私たちは保健管理センターの行動規範というものを設けておりまして、このようなこ  とを考えております。自分に対しても社会に対しても幸せをもたらすような人材の育  成を目指す。そして、卒業生には長い人生を無事に送っていける生活の知恵、これは  健康についてのいろいろな知恵を身につけて、本来の自分の勉強とは別に、更にこう  いうものを身につけて卒業していってほしいと思っております。  そのために、健康教育等もやっておりますが、予防可能な疾患や状態に関しては、積  極的に介入するという方針で臨んでまいりました。生活習慣病や頭痛などのフィジカ  ルな問題、うつ病や不登校などのメンタルな問題、感染症などの環境要因による問題  ということで、今回の取り組みになったわけです。 (PP)  昨年度から私たちは対策を始めたわけですが、まず、そのとき考えていたこととしま  して、麻しん、風しん、流行性耳下腺炎、水痘の4疾患に対する対策を講じるという  ことです。このとき学部新入生を対象にして、4年間やればすべての学年に行き渡る  ということで計画を考えました。まず、予防接種歴、罹患歴の調査を行いまして、血  液抗体価の検査を行う、この費用は本人負担です。それから、抗体価低値の者に対し  ては予防接種の勧奨と機会を提供する、これも費用は本人負担です。ただ、学内にこ  のような接種の機会を設けました。 (PP)  予防接種勧奨の基準というものは、国立感染症研究所の多屋先生の御指導をいただき  まして設定したものです。それぞれこのようになっていますが、特に風しんに関しま  しては女性の場合は大分高めに設定してあるということが一つの特徴かと思います。 (PP)  ちょっと字が小さくて申し訳ないんですけれども、タイムスケジュールをこのような  形で組みました。まず、私たちは健診を入学式前にやってしまいます。というのは、  1年生の場合、健康診断書を大学入学時に義務付けられておりません。どのような健  康状態の人たちが入ってくるかというのはわかりませんので、内科医が一人一人に会  って健康状態をチェックします。そのときに血液検査を一緒にやりまして、それから、  先ほどの基準に従って5月中旬には対象者を決定しました。下旬には本人に通知して、  生ワクチンですのでそれぞれ28日間間を開けて予防接種を行いました。昨年は1年掛  かりで計画を昨年は進めていったということです。 (PP)  本年の対策ですが、これは昨年非常に皆さんよく受診してくれまして、是非大学を挙  げてやる必要があるということで、抗体検査の費用は金沢大学学生健康保険組合の余  剰金から出費しまして、学生からは徴収しませんでした。それから、本年度の麻しん  の流行を受けて、1年生に対する麻しん予防接種を約1か月予定より早めまして、5  月中に完了しました。  昨年の経験から、4種類の予防接種が必要な学生というのは本当に少ないわけですの  で、ほとんどの学生は予防接種が夏休み前に終わるようにスケジュールを立てました。 (PP)  これは新入生の抗体検査になっております。まず、上からに平成18年の男子・女子と  分けておりますが、1,840名いたわけですけれども、そのうち健康診断を受けたのが  99.7%でした。更に、そのうち抗体検査を受けたのが92.1%でしたが、麻しんは  10.8%、風しん15.1%と予防接種の対象となる学生が非常に多いということに気がつ  きました。  それから、平成19年度ですが、健康診断の受診率が99.8%、このうち抗体検査は  99.7%で費用はこちらで出すということで、更に受診率向上につながったわけです。  これを見ますと、やはり麻しん7.9%、風しん21.7%今年は流行性耳下腺炎17.7%と非  常に予防接種の対象者となる者が多かったと思います。 (PP)  実際に予防接種の申込み人数をお示ししていますが、平成18年度では大体50数パー  セントの学生が予防接種を自ら受けてくれました。  一方、平成19年は、麻しんに関して非常に今年流行しているというニュース等いろい  ろありまして、90%が予防接種を受けております。更に、MRワクチンが使用できる  ということで、これを使いまして一緒に風しんも対策をしております。 (PP)  これはお手元の資料を見ていただいた方がよろしいかと思いますが、まず、罹患歴を  調べてまとめたものです。これはアンケートというか、入学する約1か月以上前です  けれども、健康調査票を配りまして母子手帳を参考に、両親と相談して書いてくるよ  うにということでこういう調査をしたわけです。麻しんの罹患歴ありが11%で、罹患  歴なしが82%、不明は7%ということでした。これは風しん、流行性耳下腺炎、水痘  といくにしたがいましてだんだんと罹患歴ありが増えてきて、罹患歴なしが減ってい  くということになっております。  一方、このときまた予防接種歴を確認するということもやっております。このとき麻  しんの予防接種をやっているという人は75%にどとまっております。しかし、更に風  しん、流行性耳下腺炎、水痘といくにしたがいまして予防接種をやっていないという  人は非常に数も増えてくるというのがわかりました。 (PP)  これは昨年の対策後の罹患歴がなくて予防接種も受けていない今の2年生に、感受性  者ということになると思いますけれども、この人たちが今何パーセントになっている  かということをまとめたものですが、大体どれも5%内外ということになっておりま  す。対策としては有効なのではないかと考えました。 (PP)  更に、平成19年度の新規対策としまして、麻しんの流行を受けまして、全学生に対す  る抗体検査を実施しました。これまで抗体検査は1年生、2年生とやっているわけで  すが、3〜4年生と大学院生を対象に1週間期間を設けまして、対象は6,327人いたわ  けですけれども、それに対する抗体検査をやりました。  それから、職員に対する麻しん罹患歴、予防接種歴の調査を行って集計しているとこ  ろです。  12月には麻しんとは関係ありませんけれども、インフルエンザワクチンの接種の機会  も全学的に提供することを決定しております。 (PP)  ここで、5月末に1週間やりました、学部3〜4年生、大学院生に対する抗体検査の  まとめですが、対象者のうち55.2%が受けております。年齢的には、大体30歳くらい  までで90%ぐらいの割合になると思うんですけれども、やはりこの年齢においても麻  しん、風しん等は非常に予防接種の対象者が多いということがわかります。 (PP)  現時点におきます対策状況ですが、在学生のうち66.3%に対しては抗体検査が終わっ  ております。それから、感受性者について見ていきますと、昨年予防接種を受けた人  は対策済みということでその中には入っておりませんが、下に示すように感受性者は  まだ残っているということがわかります。 (PP)  考察ですが、この4疾患に対してこのような抗体検査、予防接種を勧奨するというの  は重要な大学における保健活動であると私は思っております。この方法によりますと、  抗体価が基準値以下で予防接種を受けていないという学生は5%内外に抑えることが  できるということで、有効な方法ではないかと思います。  この計画遂行に当たって、十分なインフォームド・コンセントを心がけるということ  は非常に重要なことだと思います。これは学内に対しても学外に対してもそうです。  それから、情報を迅速に提供する。メールで問い合わせがあればすぐ返事をするし、  それをホームページに反映させていくということは非常に重要です。ホームページは  私が更新しているので、そういうことが早くできています。ポータルサイト、掲示等  で情報を常に最新のものを提供するということで、安心感を与えるということが大事  だと思います。  それから、学生健康保険の余剰金を有効な形で学生に還元することができたというの  は大変よかったと思っております。 (PP)  最後になりますが、大学の入学時の健康診断における4疾患の抗体検査、予防接種勧  奨は、感染症対策として有効で、かつ、実践できるものであるということを実感して  おります。  どうもありがとうございました。 ○加藤座長 どうもありがとうございました。沖縄と金沢大学に貴重な御意見をいただ  きました。  委員の方で何か御意見・御質問がございましたらどうぞ。 ○廣田委員 吉川先生にお尋ねしたいと思います。この4疾患の特定というのは、どう  いう根拠でなさったんでしょうか。 ○吉川氏 先ほども申し上げましたように、やはり麻しんというのはいろいろ流行の事  例がありまして、それを何とかしなければいけないというのは前から思っておりまし  た。この4疾患をやる理由につきましては、それぞれに罹患するとよくないことがあ  りますし、例えば、水痘などに関しましても、もっと年齢が高くなってから帯状疱疹  になっても神経痛が出たりとかいろいろなことがあるわけで、卒業するまでにこの4  疾患については抗体検査も予防接種もできるわけですから、金沢大学を卒業した人は  すべて心配しなくてもいいというような状態で卒業させてあげたいというのが私たち  の気持ちで、このような計画になりました。 ○加藤座長 これは、この4疾患のためだけに採血をされたんですか。それとも、ほか  の全体的な、例えば末梢血とか肝機能とか、いわゆる今のメタボリックシンドローム  と言われるような検査も兼ねた上で、その余剰の血液でやったのか、それともこれに  特化してやっておられるのですか。 ○吉川氏 以前からそういう血液生化学とか血算等は採血しておりましたので、そのと  き1本スピッツを多くとりまして、その検体を使って検査をいたしました。 ○加藤座長 ほかにございますか。 ○竹本委員 今、私立学校に入学するとき身体検査表というのはなくなったんですけれ  ども、身体検査というのは特に入学してからでも構わないですが、集団生活をするに  当たって、やはりこういう検査をきちんとしておいて対応しなければ、小学生でも対  外試合や何かありますし、ほかのところにも疾病をうつしていくということもあるの  で、できれば入学のときにきちんとアレルギー調査をするのと同じような形で、あら  かじめ調査をしておく必要があるのではないかと私は思います。 ○加藤座長 先生の大学以外で、全国の大学でこのような制度をおとりになっていると  ころをお調べになったことはございますか。 ○吉川氏 ございません。お問い合わせがありまして、こちらの資料を提供したという  ことは何回かございます。 ○加藤座長 ありがとうございました。  ほかにもう一方ぐらい御質問いかがでしょうか。よろしいでしょうか。  沖縄の方は、最初のスライドでは、たしか3歳児健診だと接種率が高いんでしょうか。  実際には接種率が八十数パーセントということでしたけれども、3歳児健診の接種率  が91%でしょうか。 ○糸数氏 3歳児健診は受診率が75%前後ですので、いろいろな取り組みによって1歳、  2歳、3歳という間に受けている可能性はあるんですけれども、やはり全体的には  80%前半と、健診を受けにくる人たちはだんだん上がってきているということをお示  ししたということになります。 ○加藤座長 健診を受けた方に限って見ると、高くなっているという理解でよろしゅう  ございますね。  そうすると、かなり沖縄は精力的に麻しん対策をおやりになっていると聞き及んでお  りますけれども、やはり接種率についてはもう少し上げたいという状況にあるという  ことでございますか。 ○糸数氏 そういうことです。 ○知念氏 私たちは1歳児の接種率を上げることを大前提として活動しております。 ○加藤座長 ありがとうございました。それでは、また後ほど時間がございましたら議  論をさせていただきたいと存じます。  続きまして、第3番目の議題でございます、はしか排除に向けた提言に対する御意見・  御要望についてに移ります。ここでは、先ほど岡部委員より御説明いただいた麻しん  排除に向けたたたき台について、保護者の立場、ワクチン製造の立場、実施主体の長  の立場、教育の現場等、関係各方面より御意見・御要望をいただきたいと存じます。  質疑応答につきましては、皆様の御意見・御要望をいただいた後にお願いいたしたい  と考えております。  それでは、まず最初に、カンガエルーネットの井上様、よろしくお願いいたします。 ○井上氏 カンガエルーネット、井上と申します。今回「ある親たちの疑問???part2」  ということで、当サイト管理者と協力しながら本資料を作成しました。  Part2と申しますのは、2005年4月に行われました第8回の本検討会におきまして、  20分お時間をいただくことができ、話題提供させていただく機会がありました。今回  10分お時間をいただきますので、早速始めさせていただきたいと思います。 (PP)  まず最初に、当サイトの自己紹介をさせていただきます。当サイトは2003年にオープ  ンし、数名のパパママ管理者、いわゆる素人ですけれども、ボランティアベースで運  営しており、私もその中の一人です。予防接種や病気、薬などの話題を中心に育児に  まつわる情報交換の場として、良識のある登録者の投稿をベースにする掲示板がメイ  ンの機能です。そのほか、情報源ですとか、副作用、看病記録、アンケート等などの  機能を活用しまして、日ごろ保健所や小児科の育児相談ではなかなか手に入らない体  験者の声や知恵を共有しています。これらの生の情報を蓄積することは、我々現役親  世代のためだけではなくて、将来自分たちの子どもたちが親になって迷ったときなど  に貴重な情報になると考え、長く運営することを目指しています。  一般ユーザーからのページビューは、一日当たり約1万〜1万5,000回ありまして、  時に話題性のある出来事などがありますと2万回、3万回と倍増します。例えば、こ  の2月末にある最大のピークは、タミフルの話題の時期でした。 (PP)  皆さんがどんなキーワードで私たちのサイトへたどり着かれるかということについて  御紹介します。今年の3〜6月に掛けての傾向を示しております。黄色い線がはしか  をキーワードに当サイトにいらっしゃった方々の割合を示しております。 (PP)  こちらは、月別に一日当たりの検索回数で、上位10位までをまとめたものです。例年  水疱瘡がトップを占めておりますが、今年5月ははしかというキーワードで一日約  300回以上の検索がありました。 (PP)  当サイトの機能を使いまして、今回大学や高校などではしか流行による休校のニュー  スを知って、率直に感じた意見についてアンケートをとりました。本検討会で報告す  る可能性があることをお断りした上でアンケートを設置させていただきましたが、皆  さんありのまま率直な御意見をくださっていますので、御紹介させていただきます。  ちょうど我々現役子育て世代は、自然罹患組と予防接種プラスブースター効果あり組  が主体になっています。各個人の生活環境も志向も十人十色ですから、回答も一様で  はなくさまざまであることがわかります。また、ユーザーのニーズに合った政策を考  えられるならば、多様な選択肢、メニューが必要であることも生の声からわかってい  ただけるかと思います。 (PP)  自由記入欄のコメント欄にさまざまな生の声をいただいていまして、真剣に悩んだ末  の判断であるとか、報道に対する疑問であるとか、政策方針に関する不安、実際に接  種できる体調になかなかならないお子さんもいる、副反応や罹患経験など御自身の実  体験に基づく考えなど、ユーザーはそれぞれさまざまな考えを持っているという事実、  当事者の声を御認識いただければと思います。 (PP)  事前に厚生労働省の御担当様より先ほど御説明のありました資料をいただきまして、  参考としてはしか排除のためには免疫保有率を95%以上で感受性者の蓄積なし、患者  が入国しても流行を起こさないとありました。この概念図はあくまでもイメージでご  ざいます。これまでは、これら示すような多数派のニーズを最低限満足していれば、  何とかなったという状況だったと考えられます。しかし、今後5年で免疫保有率95%  以上を目指すならば、これからこれまで置き去りにされてきた少数派ユーザーの多様  なニーズをかなえることのできるきめ細やかな対応策が必要であると御理解いただけ  るかと思います。 (PP)  2005年までは保健所でも病院でも、はしかワクチンの効果は一生ものと言われており、  私自身8年前抗体検査を受けたとき、はしかワクチンは優秀だから1回打てば一生も  の、だからあなたは今抗体があるんですよと医師に説明を受けていました。注射1本  でそんなことができるのだろうかと、素人ながらずっと疑問に思っていました。です  から、たまたま傍聴させていただいた2004年11月の第2回検討会にて、中山参考人の  御発表を拝聴し、ブースターが掛からなければsecondary vaccine failureになる可  能性があると初めて知ったときには、びっくりすると同時に、妙に納得できたことを  鮮明に記憶しております。  その後、2005年春の検討会の先生方の中間報告等を踏まえて、予防接種関係では初の  パブリックコメントの手順の中で、2005年夏の法改正が行われたと記憶しております。 (PP)  しかし、一ユーザーとしてはふたを開けてみてびっくりしたというのが正直な感想で  す。接種期間は標準スケジュールの提示ではなく、定期接種の期間を限定するもので  した。通算で改正前の4分の1に減少してしまったことになります。また、MRと併  せてDTPまでも単独ワクチンの定期接種から外されてしまいました。一ユーザーと  しては門戸が広がるどころか狭まったことがわかりまして、とてもがっかりしました。  また、自治体などの現場やユーザーに近い方々の混乱は相当なもので、準備、周知期  間がとても短く、大変御苦労されている様子が感じられました。 (PP)  末端まで情報が伝わるには、それなりの期間と準備と予告が必要になろうかと思いま  す。大方針では2012年まで5か年計画と主題されていますが、子どもたちの人生は  2012年以降も続きます。2012年だけで終わりではありません。今生まれる子どもが成  人して出産、子育て世代になる2030年、彼らが高齢者に差し掛かる2060年ぐらいは想  定して、複数ケースの想定シナリオが必要であると考えます。  予防接種のみに頼ると仮定して、secondary vaccine failureの対策を継続するなら、  一生のうちに複数回接種する以外の方法は今のところ考えられないと思います。接種  回数が増えることによるアナフィラキシーショックなどの被害発生の確率が上がるか  もしれないという不安もありますし、自然罹患歴のない高齢者等の接種に耐えられそ  うにない方も増大することになると想定されます。  これまでワクチンにより撲滅されたと言われる感染症対策を行った際、どのような問  題点があったのかなどの検証を行って、その反省を踏まえ、現在の時代背景や今後の  展望をかんがみて、今後のシナリオをつくる必要があると考えます。その長期的視野  のアクションプランがあった上で、今後どうするかという視点を持てば、更にどのよ  うな調査・研究が重要になるという展望、方向性、優先度等も明確になっていくと考  えます。 (PP)  そもそも予防接種のみに頼る以外の方法は本当にないのでしょうか。ウイルスとの共  存という観点から含めて、もっと広い視点での検証が必要なのではないでしょうか。  第13回の資料中にも臍帯血中の年代別はしか抗体が1985年から下がり続けているグラ  フをお示しいただいておりますが、では、今後日本ではしか、母子移行免疫の低下、  高齢者はしか、修飾麻しんに関する調査・研究が具体的にどのようにされていくので  しょうか。実際に十数年前のアメリカの流行のときのデータ報告をされている、ある  医療施設の産科部長さんの報告文を拝見したことがありますが、妊婦では免疫機能低  下のために、妊婦自体の症状も重症化しやすい。また、3割が早流産となったと記載  されていました。このほかにも修飾麻しんは一般に症状が軽く、家にこもらなくても  済んでしまう人が出るという、次の感染源となる可能性も高いと考えられます。  予防接種を推進される際に不安ばかりあおりますと、ゼロリスク症候群により親が納  得して判断することが難しくなります。適切なリスクコミュニケーションがなされる  環境が整備されることについても、大変期待しております。 (PP)  ここで、なぜ現代の日本においてゼロリスク症候群を不安をあおることなく適切なリ スクコミュニケーションを必要としているかについて、2枚にわたりイメージ図で御  理解いただけたらと思います。仮に、日本が江戸時代の医療水準であったり、途上国  のような貧困状態であったり、自然感染によるリスクが2割程度あったとすれば、予  防接種のリスクがたとえ1%あったとしても、予防接種が有効な手段だと判断する人  は多いでしょう。しかし、既に皆様お気付きのように、secondary vaccine failure  が注目されている今の日本の状況とは大きくかけ離れています。今の実情に合った日  本オリジナルの考え方が必要だと考えています。 (PP)  自然感染にも予防接種にもある程度リスクは存在します。10人に1人から100万人に  1人までイメージを図にしてみました。縦10マス、横10マスに10のリスクと1のリス  クを比較したもの。縦横100×100と縦横1,000×1,000になります。同じ数字だけを見  ますと同じ10分の1の差です。私自身、医学の素人ですので、数字だけを見て何分の  1になる、何倍になると数字に翻弄された時期もありました。しかし、一番小さい100  万分の1でも、我が子に起こってしまえば、それがすべてになってしまうということ  があります。だから、どのような手段なら親が腹をくくって納得して判断できるかと  いうのは、先ほど示しました個人の考え方、価値観に依存しますので、選択肢が広く   提供されるべきであり、また、判断する側の生活者としてのバランス感覚がとても大  切だと痛感しております。リスクコミュニケーションの視点なしに、そのバランス感  覚を失わせるようなゼロリスク症候群をあおる行為は、決して得策ではないというこ  とが御理解いただけるかと思います。 (PP)  今後、ユーザー側にとって具体的にどのようなことが必要と考えられるか、事例を列  挙し、5点に集約させていただきました。接種機会の拡大、多様なニーズに対応とい  うことで、こちらは個人防衛を最も必要としているハイリスクの方々にも定期接種で  対応するべきだと考えています。皮内テストや分割接種など、安全に極力定期接種が  受けられる場所を提供していただきたいと考えています。また、混合ワクチンに統合  して間口を狭めるのではなく、すべての単独接種の希望者も定期接種の対象として、  複数の手段を考慮すべきだと考えています。  このほか長期的対応策の明示、副作用被害に対する補償の拡充、中立で正確な情報を  提供していただき、実施側の研修の強化、これは自治体や医療関係者の方々は、より  ユーザーに近い立場にいらっしゃいます。被害者への情報の橋渡し役として重要なポ  ジションであることを重視してください。実施側の研修時などに接種勧奨の考え方の  再確認、これは親の判断を尊重し、差別はしない。リスクコミュニケーションの知識  を持つファシリテータ育成のためのプログラムなどを研修内容に盛り込んで、被接種  者にとって頼もしい存在になっていただきたいと思います。 (PP)  最後に、本当に人類のためになる、問題を先送りするだけでない次の世代の子どもた  ちの健康に寄与する日本版のきめ細やかな予防接種制度の実現を期待しております。  以上で終わらせていただきます。 ○加藤座長 どうもありがとうございました。  続きまして、日本消費者連盟ワクチントーク担当の纐纈様、よろしくお願いいたしま  す。 ○纐纈氏 御紹介いただきました日本消費者連盟ワクチントーク担当の纐纈と申します。  よろしくお願いいたします。  まず最初に申し上げておきたいのは、これまで日本消費者連盟のワクチン担当として  は私ではないほかの者がずっと出させていただいておりました。今回内部の事情なん  ですけれども、私が新たに担当することになったということで、かなり今回の麻しん  の提言等に向けたものを読ませていただいた感想等は、素人のような感想、意見にな  るかと思うんですけれども、今回は一般の保護者の立場として出席させていただいて  おりますが、あくまでも一般の方はこう考える可能性があるということでお聞きいた  だけたらと思います。  まず最初に、日本消費者連盟の団体の紹介につきましては、別紙ということで3枚目  にございますけれども、これは消費者という立場を主にした紹介になっております。  ただ、予防接種とかワクチンに関しましては、私たちの5つの目標と方針の中で、生  命の安全と健康を第一に考える、私たちのさまざまな権利が守られる制度をつくると  いうところにおきまして、ワクチン等もこちらの分野として十分深く関わっていると  思いまして、私たちはそういう活動をしております。  現在の活動状況についてですけれども、2006年度だけに特化しますと、2007年2月に  「ワクチントークin名古屋」に参加しまして、こちらの意見を述べさせていただいて  おります。また、同じ2月に、インフルエンザ治療薬タミフル服用後死亡事故につい  て、厚生労働省に対し申入れを行っております。これに関しましては、薬害タミフル  脳症被害者の会、ワクチントーク全国、日本消費者連盟の連名で申入れをしておりま  す。  今年3月には、インフルエンザ治療薬タミフルの安全対策について要望書を、これも  ワクチントーク全国と連名で出しております。  今年度の活動方針につきましては、長い間日本消費者連盟の活動方針の中に入ってい  たものですけれども、予防接種問題について行政やワクチンメーカーに対する申入れ  を引き続き行っていく、あとワクチントーク全国とともに集会や学習会を開催して、  広く皆様方の意見や不安を可能な限り解消できるような場にしたいと考えております。  3番目に、麻しん排除に向けた提言、先日こちらの方からいただきました資料5と資  料6に対する意見を出してくださいと事前に御連絡いただいておりましたので、資料  を拝見させていただいて率直に感じたことを述べさせていただきます。  まず、1)ですけれども、いずれの提言も去年4月に導入されましたMRワクチンの  2回接種が前提となっているようですが、現在までに副反応等の報告はきちんとされ  ているのかというのを素朴な疑問として思いました。と言いますのは、過去のこちら  の検討会等でも副反応の情報公開については、広く周知する必要があると確認されて  いるようですが、まだ耳にしておりません。勿論それに関しましては拙速な情報公開  ではなく、きちんと考えた上でのということですけれども、やはり消費者、一般の市  民といたしましては、きちんとした副反応に関する調査や報告を示していただきたい  というのを改めて感じました。  2)といたしまして、資料5でアウトブレイク対応として、1例でも発生したら感受  性者対策として、即ワクチン接種というような形になっているように見受けられまし  たけれども、2回接種の安全性の調査が十分でないと感じている身からしますと、そ  れは拙速な対策ではないのかと感じました。先ほどもありましたけれども、不安をあ  おって接種を促すのではなくて、きちんとした分析をして情報提供を広く知らしめる  ような形で行っていただいて、やはり納得した人が接種を受ける形にしていただきた  いというのが、私たちの立場です。  3)としまして、資料5の中・長期対策にある、医療関係、教育関係等、子どもに接す  る機会の多い教育関係機関及び職業従事者では、別格として強く必要とするについて  です、これにつきましては、冒頭での御説明の中にもあったかと思いますが、これら  の対象者が実際に麻しんを拡大させているという実態の調査等はされているのかなと  いうのが素朴な疑問として感じました。  今回こちらの提言、御意見等をホームページ等でも拝見させていただいて感じたこと  は、今回3月辺りから麻しんの一連の騒動が起こっておりますけれども、やはりちょ  っと情報に振り回されている印象がどうしてもぬぐえません。ですから、繰り返しに  なりますけれども、拙速な麻しん対策というのは、私たち一般の消費者からしますと  余計な混乱を招くという可能性がありますので、控えていただいて、やはり正確な情  報をきちんと適切に流していただきたいなというのが私たちの意見であります。  以上です。ありがとうございました。 ○加藤座長 どうもありがとうございました。  続きまして、SSPE青空の会代表の畑様からお願いいたします。 ○畑氏 SSPE青空の会の畑でございます。 (PP)  SSPE青空の会というのは、麻しんが原因となって起きる遅発性ウイルス感染症・亜急  性硬化性全脳炎の子どもを持つ親の会でございます。現在、全国に約100名の会員がお  りまして、会員同士がメーリングリスト等によって情報交換をしたり、サマーキャン  プだとか総会などでお互いに励まし合う活動をしている会でございます。 (PP)  会員の現状ですけれども、SSPEという患児がどのような状態になっているかといいま  すと、まず、年齢分布ですけれども、平成16年が青で書いてある棒グラフですが、非  常に広範囲の年齢に分布しております。平均をとりますと現在約20歳、SSPEを発症す  る年齢は大体10歳前後辺りにピークがございます。この子どもたちが麻しんに罹患し  た年齢というのは2歳未満が80%、ほとんどが2歳未満に罹患しております。 (PP)  SSPEの会員数の推移ですけれども、青いラインが現在の会員数の推移ですが、徐々に  増加しております。ここで注目いただきたいのが赤い線で、これは新たに入会する会  員数の推移です。縦軸を10倍しておりますのでフルスケールでは9人ですけれども、  全体的には減少傾向にあります。ただ、ここ最近3年ぐらい残念ながら減少傾向が止  まってしまって、横ばい状態になっているという状態に現在あるということです。 (PP)  このSSPEという病気の深刻さについて申し上げます。発症までは普通の子どもとして  育ち、突然の発症で非常にショックが大きいという特徴がございます。あるときに、  それまでは全く異常に気付かずに、小さいころに麻しんにはかかっていますけれども、  10歳前後、早い場合は6歳ぐらいで起きますが、突然発症してみるみるうちに進行し  て、人としての能力や人格までも壊れていく、そういった状況です。そして、発症し  てしまうと延命はできても効果的な治療がないのが現状でして、ほとんどが寝たきり  の重度の身体障害者になり、家族は非常に大きな負担を背負い込むことになります。  そして、最終的には平均15年程度で、これは平成17年の調査時ですけれども、死亡し  てしまうというのが実情です。  このような状況の中で、親としてはこの病気の根本原因である麻しんにさえかかって  いなければと、かからせなければこのようなことにはならなかったと、そういう後悔  の思いが非常に強いのが実情です。多くは予防接種に行かねばと思いながらも、何ら  かの理由で行けずに、いつの間にか麻しんにかからせてしまったということで、非常  に大きな後悔をしております。 (PP)  ここから、子どもたちの具体的な実情について写真で御紹介したいと思います。  この子はアッちゃんという子どもですけれども、6歳のときに発症して21歳まで15年  間頑張ってくれました。病気になっても元気なお父さん、お母さんと一緒にどこにで  も出掛けて、ほかのSSPEの家族に「どんな状態になっても前向きに頑張るんだ」とい  う見本を家族と一緒に示してくれました。 (PP)  こちらはリョウ君と言いますけれども、今日傍聴にも来ておりますが、当会の事務局  長である方の息子さんです。上に2人お姉さんがいて、お父さんにとっては非常に期  待していた男の子で、やんちゃに育っていました。しかし、7歳で発症して16歳で亡  くなりました。発症後もいつまでも美少年で養護学校でも先生方の人気者でした。お  父さんの無念さはどんなにか大きいものでしょうか。 (PP)  こちらはヨウコちゃんと言いますけれども、5歳で発症して、2歳違いの優しいお姉  さんの懸命の看護を受けながら、昨年9歳で亡くなりました。まだ少女期のお姉さん  にとって、小さいころに一緒に遊んだ妹が亡くなったというショックは計り知れない  ものがあると思います。しかし、気丈に受け止めてくれて、今でも会の活動を手伝っ  てくれています。 (PP)  こちらはアヤさんと言いますけれども、高校2年で発症するまで仲間とともに明るく  楽しい学校生活を送っていました。発症して1年後には人工呼吸器が必要な状態にま  でなりましたけれども、今でもサマーキャンプでは大勢のボランティアさんに支えら  れて、温泉に入るなどして頑張ってくれています。体温調整も呼吸も自力ではできな  い状態に早くからなってしまっていますけれども、持ち前の粘り強さで、もうすぐ27  歳になります。元気なら既に花嫁姿を親に見せていたかもしれません。 (PP)  これは私の息子のユウキです。発症する14歳までは家族とアウトドアライフを楽しみ、  中学では体操部で活躍する活発な子でした。今24歳になりますけれども、175cmの大  きな身体でいつも筋緊張で力が入っておりまして、動かすのが非常に大変な状況です。  だけれども、お風呂に入ると非常にリラックスしてくれます。今元気なら、筋緊張な  どするのではなくて、筋肉をうまく使っていいスポーツ選手になっていたかもしれな  いと思っております。  以上、どの子どもの場合にも発症前後での格差の大きさ、この病気の悲劇性がおわか  りいただけたのではないかと思います。お配りしているピンクの雑誌があろうかと思  いますけれども、「SSPEの子どもたち」と書いております雑誌、実態報告書の中のア  ンケートにある親の言葉を幾つか拾ってみます。「年々弱っていく我が子を見ている  と、とてもつらく悲しい。」「何をしても変わらないので希望とかはない。」「少し  でも生きてくれて現状維持してほしいだけ。」このような悲劇的な病気にかかってし   まった子どもには、効果的な治療法もなく、絶望的な状況です。 (PP)  しかし、この病気自体は撲滅できる可能性が非常に大きいのです。なぜかといいます  と、海外の例を見てみますと、米国では1971年にワクチン接種が義務化されて、1974  年以降SSPEの発症はほぼゼロになっています。オランダでも1976年ワクチン接種が徹  底されて、年に1例程度に抑えられています。イギリスでも同様の結果となっており  ます。つまり、クチンの接種が徹底され、麻しんの流行が抑えられれば、SSPEは撲滅  できると予想されます。 (PP)  SSPE青空の会の意見として、この病気の実態と悲劇の大きさをまず認識していただき  たい。麻しんによってこんな重篤な病気も起きているんだということをもっと皆さん  に知っていただきたい、ということが第一点でございます。  そして、我々は同じ苦しみ・悲しみをほかの家族には決して味わってほしくない、と  考えています。しかし、麻しんウイルスが存在する限りは、この悲劇は確実に繰り返  されると思います。ウイルスの根絶には弊害があるとの意見もありますけれども、麻  しんウイルスが存在し、流行すれば、確実にSSPEの悲劇は発生します。そうであるな  らば、当然麻しんウイルスは排除されるべきです。そのために排除に向けた施策を躊  躇なく実施いただき、どんなに遅くとも2012年には麻しん排除を達成していただきた  いと思います。  調査報告書のアンケートでも、「病気を真剣に根絶できるようアピールする機会をつ  くってほしい」、「急いで予防接種の時期を改善してほしい」、「何しろ麻しんにか  からないように」などといった切実な声が上がっております。予防接種という社会的  な決まりごとをつくることは、個人の自由を奪うのではなく、このような子どもたち  の生きる自由という、人間にとって一番大切な権利を奪う、そういうことをなくす、  という人間の知恵による自然な行動だと思います。いつまでも予防接種の徹底が図ら  れず、現在も続く新規入会者の存在に非常に歯がゆい思いをしてまいりました。一日  も早く排除が達成されて、青空の会の会員が激減しまして、2015年には我々の会が解  散せざるを得なくなっているということを切に願っております。  どうもありがとうございました。 ○加藤座長 ありがとうございました。  続きまして、社団法人細菌製剤協会の内田様、よろしくお願いいたします。 ○内田氏 細菌製剤協会の内田でございます。本日は、こういう場で発言の機会を与え  ていただきまして、どうもありがとうございました。なお、細菌製剤協会の名前です  けれども、細菌製剤協会はワクチンなどをつくっているメーカー、輸入している会社、  それを売っている会社の団体でございます。 (PP)  細菌製剤協会から麻しん排除に向けてということで御報告をさせていただきます。 (PP)  まず、最初製剤協会から麻疹排除に向けてということで御報告をさいていただきます。 (PP)  まず、最初の設問ですが、これにつきましては前回も多分前回の多屋先生を初め、  primary vaccine failureとかsecondary vaccine failureいろいろお話がござい  ましたので、詳細な説明は省略させていただきます。  なぜ感受性者がいるのかというところでございますが、罹患して初めてその怖さがわ  かるようでは、感染症対策が万全とは言えないと思っております。麻しんや風しんは  ワクチンで予防することのできる感染症です。感染症対策がなぜ必要かというような  こと、その接種意義、個人レベルの予防と集団レベルでの予防の意義を十分伝える必  要があると思っております。  それから、ワクチンの接種を受けに子どもさんたちを病院に連れていかれるお母さん  たちのどれだけ多くが、有効性だけではなく安全性、特に副作用についても十分理解  していただけるでしょうか。10年前までは安定剤として使用されていたゼラチンも、  日本で開発されたワクチンでは完全に使用されなくなっていて、ゼラチンに由来する  アレルギー反応はなくなっています。  一方で、年間1例程度しか報告されていなかった先天性風しん症候群児が2004年には  10例報告され、風しん予防接種率の低さが問題視されています。  今回の麻しんの排除の施策に併せて風しん対策も必要であると考えますが、これらの  施策を実施するときに必要になるのが、ワクチンの確保です。  なぜ緊急増産ができないのかということですが、ワクチンは製造に時間が掛かります。  原液から出荷まで最短で16か月、製剤化も4か月掛かります。詳細は次で説明します  が、ワクチンは健康な人が体調のいいときに受けることが前提とされています。治療  薬とは異なり、発病力を弱めた生きているウイルスを使用していますので、より有効  性や安全性を確保する必要があります。このため、製造者が自ら行う自家試験のほか、  国の定めた基準に適合しているかどうかを国の機関において確認する必要があります。  これが国家検定制度ですが、仮に国内で承認を受けている外国製品を緊急輸入すると  しても、国家試験は受けなければならないのです。 (PP)  次は、なぜ製造に時間が掛かるかということを模式的に示していますが、原液の製造、  それから、つくられた原液を製剤する過程でおのおの自家試験とか国家検定を受けな  けならないということでございます。  それから、このスライドには示していませんが、麻しんを製造するためには細胞が必  要ですが、この細胞はSpecific Pathogen FreeというSPF卵から調整されますが、  この卵の準備にハンデンが必要です。原液の準備が整っていたとしても、ワクチンを  供給できるのは最短でも4か月掛かることになります。しかも、有効期間が1年とな  ると、つくりだめもできません。要は、感染症ははやってから対策を行うのではなく、  予防することが重要ということになります。 (PP)  今回の麻しん流行時にワクチン不足が取り上げられましたが、単抗原を製造した時期  と昨年2回接種が導入された時期の供給量に加えて、今年の緊急時の供給量をグラフ  に示しています。下がMRの混合ワクチンになりますが、下のグラフの緑色の部分で  すけれども、昨年度1年間で供給した量の約4割を、今年度はわずか2か月で供給し  たことになります。これはメーカーだけの努力ではなくて、厚労省、感染研などの御  努力により可能になったものでございます。 (PP)  この部分につきましては、2012年までに麻しんを排除するに当たって、供給側から大  きく2点要望をいたします。  まず1点目ですけれども、麻しんの感受性者に接種の機会を与えていただきたいとい  うことでございます。今年の流行で一番問題となった年代、中学生、高校生、大学生  に対する2回目の接種を行っていただきたい。これらの年代は集団生活をしており、  感染の機会が多いと考えています。流行をコントロールするには、この年代の子ども  たちにまず接種を始める必要があると思います。しかし、この年代は学費等何かとお  金が掛かる年代でもあり、自己負担で接種となると、なかなか接種につながらないも  のと考えられます。全員が受けられるよう定期接種として法の整備と予算措置をとっ  ていただきたいと思います。  また、勉強とか遊びもあるかもしませんけれども、とにかく忙しい年代で、接種の情  報さえ目にとまらないかもしれません。自らが接種に向かうことを求めるのも少々無  理があるかもしれません。定期接種のDTの2期や日脳ワクチン2期の接種率を見る  と、この傾向がよく現れていると思います。学校での教育や指導、テレビ、新聞など  のメディアを通じて、対象者に漏れなく伝えていただく方策を講じていただきたい。  更に、これらの年代層が接種を受けやすい環境、例えば、授業中に近医で接種するな  どの集団的かつ個別接種を提案したいと思います。  2番目ですが、ワクチンの供給体制の確保でございます。ワクチンの生産には一定の  期間が掛かることは先ほど申し上げたとおりです。生産しても有効期間が1年間と短  く、検定合格後、先生方の手元に届くまでに時間が掛かります。増産時、接種を受け  る人の数がはっきりわからなければ在庫が超過し、期限切れとなります。メーカー、  卸、利用機関とそれぞれの在庫が過剰になり、廃棄につながってまいります。メーカ  ー各社は毎年供給量をベースに生産量を決定しています。麻しん排除という感染症対  策を行う上で、ワクチンの有効期限が切れることなく有効に使用される施策を講じて  いただきたい。生産量を決めるには、いつどれくらい接種されるかの見通しが必要に  なります。通年ずっと平均して接種されるのか、あるいはキャンペーン時期を決めて  集中的に接種を進められるのかを決めていただきたい。これに併せて、生産量の決定  をしていきたいと考えています。  また、集中してキャンペーンを予定されるのであれば、検定提出量が集中し、急増す  るケースも考えられます。感染研の試験処理能力を確保していただきますようお願い  いたします。更に、効率よく生産するためにも、検定期間をより短縮していただけま  すよう、お願いいたします。  ワクチンが余らず、対象者への接種が履行されれば、感染症対策の成功と効率的なワ  クチンの利用率が図られると信じています。  どうもありがとうございました。 ○加藤座長 ありがとうございました。  続きまして、全国市長会副会長の静岡県裾野市の市長、大橋様からお話を伺います。  よろしくお願いいたします。 ○大橋氏 小児科をしている大橋でございます。私は小児科医は、長年の経験により培  われた感覚が重要であると思っております。今、市長をやっているのですけれども、  今でも市役所登庁前、朝7時半から8時まで5人から10人ぐらいの診療と、月に2  回から3回の当直を行って、患者と接するようにしております。  そこで、2012年までに麻しんをゼロに近づけるという議題で今まで討議されてきたよ  うでありますし、いかに予防接種率を向上させるかということで、ヒアリングを見せ  てもらったんですけれども、この検討会はすごいなと感じましたよ。私は臨床医です  からね。この問題は、現在小学校2年から高校2年に対する2回接種と。皆さんのお  手元へ差し替えで行っていると思うんですけれども、沖縄の方も言っていましたが、  いかに予防接種率を向上させるかということが大事かということだと思います。それ  は1歳時でやるのが一番いいんですけれども、その後が問題だということで、小学校  2年から高校2年までと。また、SSPE青空の会さんのお話を聞いて胸がジーンと詰ま  って、はしかをゼロにしなければいけないなと強く感じました。  そこで、(1)ですけれども、幼稚園、小学校、中学校、高校の各入学時に、予防接種実  施の有無についての確認を制度化する必要があるのではないかと。極端に言えば、予  防接種していなければ入学できないよと。また、それは無理だというのであれば、入  学のときにその場でドクターが行って予防接種をする。  そして、予防接種週間が3月にあるけれども、これを年に1回じゃなくて2か月に1  回ぐらいにするべきではないかと。  また、麻しん予防接種を年齢を問わず無料にすると。3ページに書いてありますけれ  ども、これは裾野市の場合で5万5,000人弱の市ですけれども、1学年600人だと10学  年になりますから6,000人、MRワクチンが1万4,070円だと8,442万円掛かるわけです  ね。日本脳炎は今やっていないということで問題になっていて、これも一緒にやると  1億2,000万円以上掛かると。私のところはトヨタさんや関東さんがあって財政力が  1.5もあるので、静岡県で一番財政力がいいものですから、ほかの市町村から、0歳か  ら中学3年まで無料化とかそういうのは市長が医者だからできるんじゃないかと言わ  れておりますけれども、財政力がないところでやはり無料にしてくれと、なるべく今  までどおりがいいんですけれども、新たにやるとき年齢を問わず無料化にしてほしい  という声が多いですね。  (3)ですが、夜間・休日診療が必要ではないかと。うちは例えば24時間やっています。  近年、仕事に就いている母親も多いので、夜間及び休日診療の予防接種が可能になる  ように医療機関への協力を仰ぐ必要があるのではないか。また、この際、夜間・休日  予防接種を行っても、時間外で夜は診ない先生がいるから、副作用への対応もできな  い場合があるので、夜間救急病院へこういうことを頼むよと言っておくことが必要だ  と思います。  それから、情報伝達が大事ではないかと。予防接種の場合、しっかりした情報を流す  ことが大事であります。例えば、マスコミを通して宣伝するのはいいことなんですが、  ポイントはやはり麻しんに罹患した場合、脳炎が起こる確率は1,000人に1人あるよと。  ワクチンを接種したときは100万〜150万人に1人の低率であるよと、ここがポイント  だということで、例えば、我々のところに外来で来たときに、医者や看護師が説明し  やすいんですね。そうすると、その人は受けると思うんです。  それから、うちは88区あります。そこに保健委員を置いていますので、未実施者を把  握するのはしやすいんですね。ですから、88区に行って勧めるということもできます。  予防接種週間などを年3回つくって、先ほど年1回を2か月に1回と言いましたけれ  ども、それは近くの医院でやればいいのであって、例えば5万5,000人が大きく5区に  分かれているものですから、その中で集会所に医師が赴いて予防接種をするというこ  とと、近くの医院でふだんは2か月に一遍は受けるということが大事ではないかと思  います。  それから、(2)の麻しん及び風しん患者の全数把握についてという問題をいただいたん  ですけれども、私、国保連合会に行って聞いたら、今のところは不可能であるという  ことで、例えば自分の市役所では、個々だけはレセプトできます、人を置けば専門に  やるのはできるけれども、これはやはり時間と手間が掛かって現実には無理だという  ことであります。そこで、5年間の時限的措置として、患者発生時に医師が保健所へ  報告することを義務付けるように法制化したらいかがなものでしょうか。厚生労働省  のリーダーシップによって実現可能であると思います。  それから、2年後にはレセプトの提出が電算化される予定ですので、その段階ではレ  セプトの病名から患者数の把握が可能ではないかと思います。数値で出てきますから、  この数字は、はしかだなと。  ただ、ここで感じるのが、どれだけ正しい把握ができるかということだと思います。  そこで、ドクターが診断ができないのは無理ない。うちには小児科医が2人いるんで  すけれども、国立こども病院から来た方と、もう一人は県立医大ですけれども、45歳  と56歳の方がいるんですが、10年前に診たときに、予防接種が進んでしまっていては  しかを診たことがないからわからない。自分たちのところに入院させたら、婦長は65  歳を過ぎていて始終見ているから、婦長がはしかだと思いますけど、私に言ってくだ  さいと、こういうことが2例もありました。私は、昭和38年に卒業して医者になって  いますけれども、はしかは当時はすごかったですよ。そういうときにはしかというも  のは、これは重症になるものもあるけれども、ほとんど治ってしまうという感じを持  ったんですけれども、それはγグロブリンをばかばか打ったからかなとも思っていま  す。はしかが重症になるということはよく認識していたけれども、内科の先生は余り  認識していないように、そんなことを言っては怒られてしまうかもしれませんけれど  も。  それから、このたび首都圏で大流行して、この絵を見ていただければわかるんですけ  れども、裾野市というのはなかなかわからないもので、富士山の裾野にある裾野市で  ありまして、箱根山と富士山の間にあります。三島から御殿場の間にある裾野市であ  りまして、風は、ほとんどが南から北へ吹き、病を運んできますから、裾野市外の病  院等にどのような病気が発生しているかを聞いておけば、はしか等は1週間から10  日ほど前に状況を把握できるわけです。  尚、加藤先生等は、外来も診て研究もなさっている。ここにいる先生はみんなそうだ  と思いますが、中には教授で、外来は診ていないので、何もわからない人もいるかも  しれません。  時間がなくて言えなかったですけれども、東京中心に大流行したはしかも、箱根山と  いう地理的条件により隔離され、幸いにも裾野市の当院では、成人3例、小児はあり  ませんでした。  また、現在、各医院では病室もはしか等分けて伝染病室を設けておりますが、予防接  種をみんながやってくれれば、はしかの病室等を減らすことができると思っておりま  す。  以上です。 ○加藤座長 どうもありがとうございました。  続きまして、中野区立谷戸小学校の校長先生、井澤様からお願いいたします。 ○井澤氏 中野区立谷戸小学校の校長の井澤でございます。私は、教員なものですので  座って話をするのが苦手でございます。立って話をさせていただければと思います。  本校の対応について、学校現場のはしかに対する認識の度合い、それから、お願いと  いうことでお話をさせていただきたいと思っております。  実は、この後発表なさいます井草高校の方ではしかが起こったというときの私の感想  は「ああ、春になったんだな」。そして「高校生、子どもじゃないから大変だろうな  」、これだけの認識しかありませんでした。私は本当に無知でした。これは中学校、  高校はわかりませんが、一般の小学校の校長の認識とほぼ同様であると思います。そ  れが、春休み中の4月2日月曜日、1本の保護者からの電話で認識が変わらざるを得  なくなりました。お手元に資料を用意しましたので、一番最後のページと今日お配り  させていただいたものを見ながらお話を聞いていただければと思います。  実はその電話と言いますのは、2日の月曜日に2年1組の担任に、春休み中なんだけ  れども出席停止の措置をしなければならないのだろうかという電話がありました。そ  の保護者は何回かお医者さんを回ったんですが、アトピーのひどいものである、薬害  であると診断されました。それがB児童です。ところが、もう一人のC児童の症状と  全く同じである、これははしかに間違いないということで連絡があったことから、本  校の活動が始まりました。この時点ではA児童、C児童の保護者からは連絡がありま  せんでした。もし、このB児童の親からなかったら、本校は本当にどうなっていたか  わからないというのが状況だったのではないかと思います。  そして、3日に養護教諭の井上が本校の学校医であり、中野区の教育委員長も務めて  いらっしゃいます山田先生に連絡をいたしました。その日は全員出勤日でしたので、  即情報を共有しようということで職員にプリントを配付いたしました。そして、山田  先生の方から教育委員会、保健所等々に報告をしていただきました。そのときに、担  任が偉かったなと思っております。実は本校は平成14〜17年度までの3年間、文部科  学省のエイズ教育・性教育の地域推進事業研究発表校を担当いたしました。その経験  が生きたなと思っております。そのときに担任が養護教諭に、ほかにうつっている子  はいないだろうか、連絡網で調べてみましょうかというお話をしました。それが実際  に動いた最初でございます。  その中で、麻しんの発生の有無の確認とか、全児童の健康状態のチェックをいたしま  した。その結果、D児童が4月3日に発熱、既にA児童が3月21日に発疹していると  いうことが明らかになりました。そして、その時、私どもは近くの中学校で既に発生  しているという情報は一切手元にありませんでした。これもこれから大きな課題にな  るのではないかと思っております。  そして、4月4日、養護教諭の方から聞き取りをいたしました。翌日の5日に2年生  の子が発症していますので、入学式の1年生を迎えるための音楽をプレゼントをする  というのがありましたので、とにかく2年生に手を打たなければならないということ  で、副校長にプリントを作成させました。そして、5日に2年生にのみプリントを配  付させていただきました。そして、緊急対策会議を入学式後に行いました。その日に  は、全児童にプリントを配付いたしました。  そこでうちがよかったかなと思うのは、対策会議が開かれる前日の段階でほとんど手  が打てていたかなというのが、エイズ教育の経験が生かされたのではないかと思いま  した。  その後、E児童が発症いたしました。これは非常に軽度でして、本当は医者からもう  出ていってもいいと言われたんですが、我々はもう一日ぐらい何とか休んでほしいと  いうような要請をいたしましたが、そこのところはうまくいきませんでした。そして、  この休み中に私の学校に都の校長たちが集まってくる機会がありました。ほとんどの  学校は37.5℃以上ですけれども、うちの学校は低体温の子もいるということで、平熱  よりも1℃高い子は登校を取りやめてほしいということで家庭にプリントを配布しま  した。そして、そのお話を都内の校長にしましたら、「井澤さんのところはいいよな、  俺のところだったら生活権はどうなるんだ、その間子どもを1人にして行けないじゃ  ないかと必ずクレームが来るよ」と言われました。ひょっとしたら、これも親の一つ  の認識の現状ではないかと思いました。  そして、本校でやりましたのは他機関との連携です。中野区では1年生の児童の6歳  6か月までにはワクチンを特別に打つということを言いましたけれども、4月の後半  にプリントを出すという話だったものですから、それでは間に合いません。そんな時  期に渡しても親は全然聞く耳はありません。保護者会に間に合うようにお願いをいた  しました。そして、1年生の児童には入学式が終わったときに写真撮影で残っている  段階で、親には今風しんがはやっております、プリントが近々行くと思いますので、  是非ワクチンを接種していない方は接種してほしいというお話をいたしました。  時間がないようですので、結論にまいりたいと思います。エイズ教育の中で、「エイ  ズの最高のワクチンは教育である」ということを学びました。そして、前回の多屋先  生の御報告の中で、予防に勝る治療はないということをおっしゃっていました。それ  が非常に私の心の支えになったかなと思います。  そして、先ほど大橋先生からもありましたけれども、一般ピープル、私もその代表だ  と思って今日はお話しさせていただいておりますが、怖さがわかっておりません。新  聞報道ではワクチンがないとか、はやっているというお話はしておりますが、怖さが  わかっておりません。ましてSSPEの問題については、ほとんどの校長は知りません。  ある学校の養護教諭の話ですが、「1名位はしかが発生したからって、そんなに騒ぐ  な」と怒られたというようなこともありました。そこで、是非お願いです。学校は無  知です、一般の人たちも恐らくそうだと思います。是非、関係諸機関の皆様、学校の  方に情報をいただければと思います。そして、具体策としては家庭教育学級などもご  ざいます。そんな中で校医の先生との連携の中で、はしかの怖さ等々を訴えていくの  も一つの策ではないかと考えております。ありがとうございました。 ○加藤座長 どうもありがとうございました。  引き続きまして、東京都立井草高校の学校長であります山下先生からお願いいたしま  す。 ○山下氏 私は同じ教員ですけれども、座ってお話しさせていただきます。 (PP)  まず、井草高校は練馬区にある学校です。 (PP)  これが本校の生徒・職員数でして、平成19年度新入生とありますが、実は本校の集団  発生した時期が年度末から年度当初に掛けたものですから、新入生も我々としてはと  らえなければいけないということで新入生の数も示しております。 (PP)  本校は3月9日に2年生の男子が麻しんの診断を受けまして、保護者からは翌週の月  曜日に連絡が入っております。我々はすぐ校医に連絡をしまして、お手元にホッチキ  スどめの資料の麻しん注意文書を3月12日に保護者に渡しております。  13日に、同じクラスですが男子生徒1名が麻しんだという報告が保護者からありまし  た。2年生には、資料1の裏側にありますような「麻しん(はしか)に関する調査の  お願い」というものを全員に行っています。同時に2名、今、都教委は1名からです  が、この時点ではたしか複数であったと思いますが、都教委に報告しましたし、練馬  保健所、学校医にも連絡しています。また、国立感染症研究所にも連絡をしまして、  翌日からの対策についての指示を受けております。 (PP)  14日は、発症者ゼロ、報告がありませんでした。15〜18日とずっと感染の報告はあり  ませんでした。 (PP)  19日、20日もなくて、週末に保健所や都教委の話で、16日まで何もなければこれで終  わるでしょうと。それで私も楽観視していたんです。ところが、22日からごらんのよ  うに累計で4名、また疑いはこれだけの数になってしまいました。これはやはりちょ  っと大変ではないかと、本当に申し訳ないんですけれども、ここからいよいよという  ことになるんですが、その日進路ガイダンスあるいはその他学校行事があったんです  が、午前10時半の段階で中止し、翌日の平成18年度の修了式については都教委と協議  をしまして、行わないことにして臨時休業の措置をとるとともに、一般生徒に春季休  業中の登校禁止、また、部活動についても登校禁止を決定しました。 (PP)  そういうことをやりながら26日、27日と増えていっているんです。26日は2年生全7  クラスですが、全クラスに及びました。  27日の夕刻に都教委の方等に来ていただきまして、本校の麻しんに関する対策会議を  28日に開くことを決定しました。 (PP)  28日もまだこのように増えていますが、対策会議では4月6日の始業式は延期。春季  休業中のすべての部活動を禁止・公式戦を含む。実はこれ以前の段階で私たちは、公  式戦については生徒に十分体調に留意してやってもいいということで公式戦を行って  いまして、その結果、野球部なんですが、何人かの生徒のはしかが後でわかりまして、  関係した対戦校には4月に入って状況の経過と対応方についてお願いの電話をしてお  ります。  28日の対策会議で、学校なりにやってきた対策がやはり不十分である、先ほどの谷戸  小学校の校長先生の話ではないですが、私を含めてはしかに対する認識のばらつきが  ありまして、生徒へのはしかに関する調査も担任の回収が不十分でありました。そう  いうことで、28日の夕刻からFETPの先生方の協力を得まして、全生徒千何十名に対し  て、はしかに関する調査と健康調査票を作成いただきまして、29日から保護者の方に  送付し、回収する。それは4月3日の対策会議で、当然4月9日に予定されておりま  した入学式を行うかどうかということもありましたので、私たちはFAX等で返事を  もらって、その分析はFETPの先生方にやっていただいたんですが、何とか4月9日の  入学式は資料をそろえて実施という線が出てほしいというのがこの時点の認識でした。 (PP)  これが4月3日に対策会議でお示しした数です。最終的には28名、1年生5名、2年  生21名、3年生2名。ワクチンの接種歴も、ありなしはこのような数字になっており  ます。  教員につきましては、はしかについて罹患歴があるのが20名、抗体検査を受けていた  だいた教員は52名、抗体検査を受けた教員は全員抗体があるということでした。その  中で、全数調査をやる中で、私どもはFETPの指導のもとにワクチンについての未接種  者、またはしかにかかっていない者を回答を見ながらリストアップしまして、4月3  日まで、もう一つは9日までにできるだけ電話をして、そういう方たちにワクチンの  接種を呼び掛けたことがあります。 (PP)  保健所等にも勿論協力していただきました。あと、学校外における二次感染というの  は、野球部の話がそこで出てきます。 (PP)  この数字が100%になっているのは、4月3日の対策会議でここまで行かなかったんで  すが、ほぼそれに近い数字はあったんですけれども、そういう意味では、よく保護者  の方が協力してくださったなと思います。 (PP)  練馬区の学校ですから、練馬区で18名、杉並区で4名でした。 (PP)  ここで、国立感染症研究所感染症情報センターにFETPのドクターの方がおられて、3  月28日以降連日のように学校に詰めていただきまして、4月6日に本校のはしかにつ  いてブリーフィングを受けました。そこで、一番最初の発症者が2月中旬だったとい  うのがわかったんです。この生徒が実は先ほどありましたように、医者の診断を受け  たんですがアトピー性皮膚炎があったために、ドクターの方ではしかと診断できなか  った。この生徒は一番感染力の強い時期に登校しています。それが3月9日、12日、  13日の発症になっています。12日、13日にはしかと報告のあった生徒は、その数日前  が学年末試験であったので一番感染率の高いときに登校していたということがありま  した。本校としては対策をとったんですが、結果的には手遅れで28名発症したという  ことです。 (PP)  3年生は4月この時期にも発生しているという報告です。 (PP)  その結果、3月28日の対策会議で全数調査を行う中で、未接種、未罹患の生徒に対し  てどういう状況かというと、合計で90名の生徒が学校の対策と私たちの電話の勧奨に  よってワクチンを打っています。 (PP)  終息は最終的には4月28日です。 (PP)  この資料はFETPの資料をそのまま借用したものです。 (PP)  ワクチン1回接種の限界とか、1回接種も割といたわけですが、こういうことになっ  ております。 (PP)  結局、本校は仮にFETPの助言とか協力がなければ、何もしなかったらひょっとしたら  これくらいの数が発生したかもしれない。それが28名に終わったというところです。 (PP)  最後に、現在の都立高校の状況ですが、まず、生徒のワクチン接種歴あるいははしか  に関する履歴の台帳を完全につくる、これは全都立高校でやっております。その次は、  新入生あるいは教員の4月の異動ごとにワクチンの接種歴あるいは、はしかの罹患歴  を調べる。それから、未接種・未罹患者をできるだけ減らし、該当する者は確実に予  防接種を実施したかどうかを確認する。これが本校では4月9日に掛けて一生懸命や  ったんですが、4〜5回電話しなければいけない保護者もおりました。  最後は、私たちもやったんですが、欠席の理由をきちんと把握して、麻しん患者を早  期に発見する。現在、都教委の作成した麻しん発生に関するマニュアルがありまして、  それと同時に7月3日現在で学校感染症情報というもので第15号まで出ております。  そういうもので都立の場合は学校感染症情報により、どこの学校で何があったかすぐ  わかるようになっております。  以上で終わります。 ○加藤座長 どうもありがとうございました。たくさんの御意見・御要望をいただきま  してありがとうございます。議題1に出ましたたたき台、皆さんの御意見・御要望を  いただきました。各委員の方々から御意見をいただきたいと思いますが、いかがでし  ょうか。 ○宮崎委員 風しんのことが途中出てきましたが、今日沖縄からも来られていますけれ  ども、かつて沖縄では先天性風しん症候群児の多数の出生があって、私たちも難聴児  と長く付き合うことになったわけですが、風しんワクチンが幼児期に定期接種に入っ  て十数年経ちますが、どうしてもはしかほどの皆さんの認識がなくて、はしか予防接  種率より大体マイナス10%からマイナス15%ぐらいで推移していて、若い人の中には  はしか以上に感受性者が残っているというのが事実ですので、是非今回キャッチアッ  プを予防接種法の中でやっていただく中で、やはり風しん対策も併せてやっていただ  きたいと思います。 ○加藤座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。委員の方々何か御意見  ございませんか。 ○廣田委員 井澤先生と山下先生にお伺いしたいと思います。この学校内の流行に際し  て、予防接種をするように勧奨とありますけれども、それに対して御父兄の方から何  で学校がそのような勧奨をするかというような批判的な意見というのはなかったでし  ょうか。 ○井澤氏 それはうちはなかったですね。先ほど申し上げましたように、1回目に私が  1年生の親に言ったのは入学式でした。でも、写真撮影があるから、私が一生懸命お  話ししたんですが、ほとんどの親は聞いていませんでした。すぐ保護者会で担任から  更にお話をさせました。何人行ったかはわかりませんけれども、本校の1年生は全員  1回は受けておりました。でも、教頭が何回かまとめて持っていっていましたので、  2回目を何回か受けた子がいると思います。数は把握しておりません。 ○山下氏 井草高校の場合は、先ほど申し上げましたように、4〜5回受けていますか  という確認の電話をせざるを得ない保護者がいました。副校長にやってもらったんで  すが、なぜとかそういうことは私たちは言わなかったんですが、ただ、こういう状況  ですのでお願いしますということでやりました。 ○井澤氏 そのときにやはり、私だけが言うよりも、校医の先生がこうおっしゃってい  ます、それから、保健所の専門の方がこう言っていますというのが非常に落としどこ  ろだと思いました。その辺での連携、教育現場と携わっている関係諸機関との連携が  これから非常に有効になってくるのではないかと思います。 ○加藤座長 ほかにいかがでしょうか。 ○岡田参考人 細菌製剤協会にお伺いします。ワクチンをつくるまでには20か月掛かる  ということですが、今年の5月現在で50万ドーズぐらいしかつくられていません。も  し具体的にキャッチアップするようになったときに、十分なワクチンの供給体制がで  きますか? ○内田氏 非常に難しい質問なんですけれども、今の段階でははっきりお答えできない  というのが答えです。このスライドの一番最後から5枚目に、増産時における試験処  理能力の確保ということを言ってほしいというのがありますので、コミットはできな  いとしても想定した場合にこういう問題があるから何とかしてくださいというお願い  をしている以上、メーカーとして何らかの対応はとらざるを得ないのだろうと思いま  すが、私が今この機会を利用して申し上げたいのは、是非この検討会、厚生労働省の  方でも95%をずっと維持して、なおかつキャッチアップを維持するという、そのキャ  ンペーンだけではなくて、それを実際に達成するための具体的な仕掛けを是非いろい  ろ考えていただきたい。メーカーは後ろで一生懸命先生方の御議論を聞いていると思  うんですね。だから、これが本当にキャッチアップできるような行政的な仕組み、い  ろいろなことをやっていただけると考えれば、それに伴うだけのことはやらなければ  いけないだろうと思いますので、ちょっと差し出がましいようですが、そう感じてい  ますので、よろしくお願いします。 ○加藤座長 先ほど井上さんの方からも5年という制限だけでよろしいのでしょうか、  もうちょっと将来的には高齢者もはしかにかかる時代が来るのではないでしょうかと  いうような御意見もあったとお聞きいたしましたが、細菌製剤協会としては確かにお  っしゃるとおりですけれども、やはり国民をはしかという病気から守るという基本に  立ち戻って、一致協力して頑張っていただきたいというのが私の意見です。  ほかに何か御意見ございますか。 ○竹本委員 中野区、練馬区は本当に教育先進区ですので、こういうことがうまくいっ  たのだと思いますけれども、これと同じように文部科学省は早急にこういう制度をつ  くるよなう形にしていただきたいと思います。実際に自分が校医をやっているところ  から一言もそういうことは言ってきませんし、周りに聞きましても、父兄から一言は  しかについて話してもらえないかというようなことを言ってきた校医はいないと聞き  ますし、現在私が校医をやっているところは実数把握をやってもらえないか、ワクチ  ンをやっているかどうか調べてもらえないかと言ったら、これは個人保護条例にかか  わるから、そういうことは一切調べませんということが教頭から返ってきたりしてい  ますので、そういうことではなくて、もう少し社会的な見地からやっていかなければ  いけないのではないかと思いますので、今話を聞いていて2つの学校を非常にうらや  ましく思いました。 ○加藤座長 両校長とも公立の学校長だというところが、私もそれならできるのではな  いかと思いましたが、ほかの公立の高校または学校ではどのような感じでございまし   ょうか。ちょっと言いにくいとは思いますが。というのは、聴衆の方もおられるので、  成功した方だけお呼びしたような感じになってしまいますが、皆さんこのように見事  にやっているのでしょうか。それとも、今、竹本さんがおっしゃったように、文部科  学省と一致協力して両校のように素早い対応をするような方法をとってほしいとお思  いでしょうか、教えていただけますか。 ○井澤氏 先ほど申し上げましたように、私と同じような認識でありまして、一般の校  長は私も含めて無知だと思います。私は団塊の世代なんですけれども、私はかかった  ことすら知らないですが、かかっているんです。でも、それは当然子どものうち、は  しかのときというのが一般の認識ではないでしょうか。それを恐ろしい病気なんだよ  ということを盛んにうちの校医の先生がおっしゃってくださいました。死ぬことだっ  てあるんだということを。それがやはり親を説得していくというか、これは恐らく保  健所で言っても余り聞いてくれない。学校の教員のよさは、その辺があるのではない  かと思いました。 ○山下氏 本校は一番成功したというか、結果的に28名出しているわけですが、私たち  としては最初の原発者がわからなかったという言い訳があるんですが、それはともか  くとして、4月1日に緊急の新入生の保護者を含めて保護者会を開きました。そのと  きに多屋先生に講演していただいたんですが、多屋先生が学校の教職員が全員同じ目  線でないといけないということで、私の方で4月1日、日曜日だったんですけれども、  可能な限り徴集を掛けてやっております。  ほかの都立高校に関しましては、学校健康推進課が井草高校が発端だったんですが、  その後は学校感染症情報というものを逐次出すようになりましたので、そういう意味  では情報の共有ができていますし、ほかの都立高校でも対外試合、公式戦を中止して  いるということもありました。  ただ、私自身で言えば、実はこの学校感染症情報も2月くらいにはしかについてあっ  たんですが、済みません、そのときはまだ認識がなく見逃していたということがあり  ました。  以上です。 ○加藤座長 そういったことで公立の学校の校長会のような機会はございますか。 ○山下氏 校長会は月に1回あるんですが、井草は4月、5月の校長連絡会で私が少し  話をさせていただいております。 ○井澤氏 私どものところでも校長会がありまして、私がうちの学校の対応、それから、  プリントを全部校長に配付いたしました。中野区については、今日皆様方のお手元に  配付したものを使ってやっているのではないかと思います。特に、よかったなと思う  のは、はしか発生情報報告書、これは共通理解が必要ですので、聞き取りの仕方で状  況が違ってくるとまずいということで、必ずしも養護が聞くというわけにはいかない  ものですので、これに沿って必ず聞く、そして、窓口は養護教諭という形で対処をさ  せていただきました。 ○岩本委員 ワクチンの話は定期接種、任意接種という話が出てくるんですけれども、  専門家意外には非常にわかりにくい部分もあると思うんですね。やはり日本で今排除  しなければいけない病気は何なのかということをもう少しわかりやすく、排除を次に  目標とする感染症は何なのかということをはっきり言っていただいて、これはやはり  麻しん、風しんというのはその最たるものでしょうから、それに関して非常にわかり  やすい今日も出ましたSSPEの話であるとか、学校教育におけるインパクトの問題であ  るとか、先天性風しんの問題ということを厚生労働省からわかりやすく皆さんに伝え  るような努力をしていただきながら、ワクチンというのは基本的には日本の中で次の  目標はこれだと、なくしていく病気はこれだということをもう少し出した方が、何と  なく麻しんがはやったから、場当たり的な対策をやっているんじゃないかというよう  なことを避けるためにも、そういう方向性を示すことは非常に大事ではないかと思い  ます。  そのためには、感染症法と予防接種法というのは車の両輪だと思いますので、対策を  しようと思う病気に関しては全数把握をして日本の中で、例えば、2回接種を推進し  ていったら麻しんが本当にきちんと減ったんだというエビデンスを日本の中に残すこ  とが非常に大事だと思いますので、やはり感染症法と予防接種法の対応関係もその中  でやっていただきたいと思います。 ○飯沼委員 岩本先生のお話に続くような話になりますが、結局ワクチンを国民がどう  理解しているかということが一番問題になると思うんです。義務的接種にしろ、自分  の自由意思でやるにせよ、例えばSSPEはワクチンをやっても100万人から200万人に1  人は出ると。ワイルドだと1,000〜2,000人に1人出るんだという話に対して、国民が  1,000人に1人なら許容ができるかどうかということの判断をどこかでしないと、ワク  チンを打てば全部が救われるという意識でものを考えていくと必ず問題になると思い  ますので、国民がどの辺までのサイドエフェクトを許容できるかということも考えな  がら行政をやっていただく。それは国民がどう考えるかということが一番大事なので、  そういう声は私は聞いたことがないので、ひとつお聞かせ願えればと思いますけれど  も。 ○加藤座長 いかがですか。要するに、病気の怖さということと、ワクチンの効果とい  うことと、ワクチンを接種することによって生じるかもしれない副作用、その3つが  絡んでくるということになりますけれども、総体的に今ここで簡単に出る結論ではあ  りませんが、そういうことを論じるのもこの検討会の一つの大きな意義ですから、委  員の方で何か御意見はございませんか。 ○岡部委員 やはりデータとしてそういうものがあることはあるんですけれども、なか   なか発表するタイミングが遅かったりすることも一つあります。それから、ワクチン  の接種が一体現実にどのくらい行われているんだろうということがなかなか把握しに  くくて、それが速やかに出てこないといったこともあります。これは決してさぼって  いるのではなくて、システムとしてなかなか動きにくいところであったり、あるいは  報告の仕組みがうまくできていないといったようなこともあるのではないかと思いま  す。したがって、病気の把握をするというのは全数ということできちんと把握はでき  ているんですけれども、やはり予防接種をやった後の副反応の把握が評価も含めてき  ちんとしたことで議論される場が必要だろうと思います。というのは、ちょっと回り  くどい言い方をしましたけれども、確かに副反応の報告ということは上がってくるん  ですが、それは必ずしも評価されたものではなくて、あるワクチンを接種した後で、  ある症状が起きたものがすべて報告されてきたりする仕組みがあります。ですから、  それはそれで警告すべき事象として、そして数字として当然いいんですけれども、そ  の中でどのくらいが本物らしかった、あるいは本物らしからぬといった区別での評価  と発表が必要だろうと思います。  ただ、前回も申し上げたんですけれども、そこは余り徹底的に議論をし過ぎると、そ  うかもしれない、いや、そうじゃないというようなことを言いながら、結局ワクチン  接種後に被害に遭ったかもしれない方がすべていつの間にかわからなくなってしまう  というようなこともあるので、その辺が救済にというものに対する考え方、救済と法  の責任と賠償といったことは切り離したような形でワクチンの政策がうまくいくよう  な工夫が必要だろうと思います。 ○加藤座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○脇口参考人 今日のお話を伺っていろいろ感じたことが多いんですが、予防接種とい  うものが勧奨接種であっても基本的に個人の責任でやるという意識が非常に一般の社  会では強いのだと思うんですね。その中で副作用を伴う危険があるということが非常  に強くおそれられているという印象を今日は受けました。これは残念ながら薬もワク  チンも全く副作用がないというものは現在のところないわけでありまして、特に感染  症の予防というものは、集団的な予防と個人予防の両方がうまく重ならない限り感染  症の抑制というものはできないということであると思うんです。我が国におきまして  は、はしかは随分抑制されてきつつあるのかもしれませんが、欧米諸国と比べると比  較するのも恥ずかしいぐらいに発生しているというのが現実であります。死亡率も少  ないと言えば確かに少ないんですけれども、全世界に目を広げると麻しんによってど  れほど多くの人が亡くなっているかということを考えますと、可能な国からどんどん  予防接種の意識というものを広げていって全世界に伝えていくという姿勢も必要だろ  うと私は感じます。  もう一つ、日ごろから学校の先生に何かお願いするときには、校長先生にお願いする  のが一番いいなとずっと思っていたんですが、今日ほどそういうことを強く印象付け  られた日はございませんでした。これから直接教育委員会よりも校長先生にお願いし  ようと感じました。ありがとうございました。 ○加藤座長 どうもありがとうございました。ほかに御意見ございますか。 ○蒲生委員 先ほどから報告とか発表という言葉が何度か出てきておりまして、どのよ  うな形が本当に報告であり、発表であるのか、考えなければいけないのではないかと  思っております。今までもさまざまな状況でこの検討会で検討したことも、それから、  厚生労働省が考えたことも発表・報告をされてはいるんですけれども、それが一般的  に広く知られていないという事実、それから、わかりにくいという御意見も多々いた  だいております。発表・報告というのをどういう形にすれば本当に普通のお母さんだ  ったり、普通の先生に届くのかということを是非検討したいなと思っております。  その中で、今日来ていただいた井上さんと纐纈さんのお二人のお話の中で、中立な報  告とか正確な情報というお言葉が何度か出ていたんですが、それぞれがお考えになる  中立な報告というのはどういうものだと中立だとお感じになるのか、正確というのは  どこからどのような形で発信されていると正確だなとお感じになるのかということを  是非お聞かせ願えないでしょうか。 ○加藤座長 それでは、特例として簡単・明瞭にひとつお答えをいただきたいと思いま  す。 ○井上氏 私ども最初に御説明したとおり、割と一般よりはコアな情報を求めている人  たちと接することが多いんですけれども、今、副反応報告書でも、予防接種の副反応  の健康状態の調査検討会のネット公表されているのは平成16年までなんです。それ以  降のものというのはネット上で今見られない状態になっています。例えば、公平とい  うのはそういうものを明確に示して、もっとわかりやすい形でグラフにしたり表にし  たりするのはいいんですけれども、数字をまず示すということが大事だと思います。  あとは、例えば、もともと1度上がったら学校に来ないという話をしたら、基礎的な  ウイルスの対策を知らないお母さんたちは、では、解熱剤を飲ませてでも行かせよう  かしらと思ってしまうお母さんだっていると思うんです。でも、それはウイルス感染  しているときのはとても危険な行為ですから、そういったことも基礎的な情報として  流す。要するに、一般的に予防接種を打ったってかかる可能性もあるわけですし、今  後修飾麻しんの話もありますし、そういった打てばいいんだよという情報だけではな  くて、万一かかったときはこうするんだよといったベースの知識を広く皆さんに触れ  る機会を設けていただければなと。義務教育の中でもいいですし、それが妊婦の健診  のときでもいいですし、そういったようなときにかかるのが怖いということだけでは  なくて、かかったときはこうする。でも、もしかかりたくなくて、これだけのリスク  を許容できる人は、こういうふうに接種する方法もあります。それは、例えば、麻し  んであれば、1978年以降定期接種1回の方というのは、それだけのリスクがあるわけ  です。secondary vaccine failureになる可能性もあるわけです。でから、そういっ  た人たちに門戸が広がるのか広がらないのか、そういったことも求めている親もいま  すので、そういった情報も明確に今後提供していっていただけたらと思います。  あと、一般的なお話については蒲生委員の方が一般的なお母さんといっぱい触れてい  らっしゃると思いますので、なるべくそういうわかりやすいというものもやっていた  だけたらなと思っています。 ○加藤座長 ありがとうございました。纐纈さん、何かお話はありますか。 ○纐纈氏 今の御質問に正確に答えられるようなものではないんですけれども、ただ、  今回はちょっと外の方から聞きましたのは、麻しんに罹ったということを言えない、  言ってしまったがゆえに誰々くんのせいで周囲の人に言われ困っているという話です。  麻しんの今回のような騒動は厚生労働省さんがつくったわけでは当然なくて、マスコ  ミとかそちらの方の問題でもあるとは思うんですけれども、何か危険だ、危ないとい  うだけの情報がどうも独り歩きしているような感じが一般の人間からするとどうして  も否めません。そういう意味では、現在はこういった状況なので、こういった対策が  とれます、もしくはこういった選択の余地があります、あなたはこういう状態であれ  ばこういった対策がとれますというような、もうちょっときめ細かな情報は必要では  ないかと、ちょっと具体的でなくて申し訳ないんですけれども、それは感じたところ  です。  以上です。 ○加藤座長 ありがとうございました。  時間がだんだんと少なくなってまいりましたので、簡単でございますが、中間でまと  めさせていただきます。いろいろと難しい、いろいろな御議論がありましたので、座  長としてまとめにくいんですけれども、結論は正しい情報の発信をどうするかという  ことに尽きるかと思います。その情報発信の中には、やはり病気というものの存在が  あるということ、その病気はどういう病気であるかということに対する正しい情報発  信、それから、ワクチンというものに対する正しい情報発信、そのワクチンが効果が  あるか否かということに対する正しい情報発信、そして、そのワクチンに対してはど  のような副反応があるか、副作用があるかということに対する正しい情報発信、そう  いう情報発信を正しくした上で、個々の方々が対策を講じていくんだということに尽  きるかとして、これはまとめにはなりませんけれども、皆さんの御意見を拝見して簡  単に一言でまとめますと、正しい情報発信を是非するような方向で努力したいと考え  たところでございます。  お時間がございませんので、申し訳ございませんが、先に進ませていただきます。4  番目の議題でございまして、今までの御意見・御要望及び議論を踏まえまして、同じ  ようなお話になるかもしれませんけれども、はしかの排除計画の素案というものをつ  くるわけでございますが、それに向けた議論をしていただきたいと存じます。事務局  の方からたたき台の案の中にございましたけれども、予防接種法改正に伴う経過措置  というものについて整理をしていただきたいと思いますので、御説明をお願いいたし  ます。 ○三宅課長補佐 事務局でございます。資料3−2の「MRワクチンの経過措置につい  て」という真ん中に表がついている紙を出していただきたいと思います。たたき台で  岡部先生に示していただいたところで、制度改正に伴う経過措置というところがござ  います。その背景を御説明させていただきます。  「1.麻しん及び風しんワクチンの定期接種対象期間」ということでございますが、  平成18年4月1日に制度改正をいたしました。それまでは(1)生後12月から90月まで  が対象となりました。そこが定期予防接種の対象範囲でございましたが、標準の接種  期間としましては、その中でも生後12〜15月、風しんは生後12〜36月までとしていま  した。平成18年4月1日以降に制度改正いたしまして、2回接種に伴いまして第1回  目は生後12〜24月、第2期目は小学校入学直前の1年間と制度変更をさせていただい  たわけでございます。その際には標準接種期間は特に設定しておりません。  また、(3)で現在たたき台中に時限措置といたしまして、中学校1年生と高校3年生  を対象に5年間更に2回目の接種機会を与えてはどうかということがうたわれている  ところでございます。  それらを踏まえまして、平成18年4月1日の制度変更時の年齢区分による接種の状況  がどうなっているかを整理したものが2でございます。その当時0〜2歳につきまし  ては、現制度の対象者と同等の接種期間の機会を受けているものでございます。7歳  半以上の方々につきましては、旧制度での対象者でございまして、特に12〜90月まで  という対象期間は短縮されておりません。この2〜7歳半という方々が旧制度で「▲」  となっておりますが、生後12〜90月の一部分の対象期間が短くなってしまった方々で  ございます。ただし、標準接種期間よりは十分長い期間受けることができたわけでご  ざいまして、平成18年4月1日以降の対象期間の1年ずつとは同等かそれ以上の期間  を受けている方々です。  また、2〜6歳につきましては、新しい制度で第2回のMRワクチンを受ける機会は  確保されております。また6〜7歳半の方々につきましては、今回の時限措置がもし  措置されるのであれば、2回目のMRワクチンの接種機会が確保されることになり、  もし今回更に経過措置を2〜6歳、また6〜7歳半の方々につけることになりますと、  3回目の接種機会が確保されることとなってしまうわけでございます。  また、経過措置として4月1日に我々厚生労働省がどんなことをして周知を図ってい  ただくかということが3番でございまして、メディアやいろいろな通知等で制度が変  更されてしまうということを周知していたところでございます。  以上が経過措置の背景でございます。 ○加藤座長 ありがとうございました。若干おわかりにくいところもあるかもしれませ  んけれども、その表に書かれているとおり、これが事実でございまして、これを見て  すぐにわかる方は余りいない。ですが、おうちに帰ってゆっくり考えていただくとわ  かる仕組みになってございます。私もさっきから指折り数えていたんですけれども、  ちょっとわかりにくいけれども、何となくわかったかなというところです。  それでは、残された時間は余りございませんが、はしかの排除の計画素案の作成に向  けまして、先ほどのたたき台のところを委員の方々にもう一回振り返っていただきま  して、御意見を少しいただいておいた方が次回の委員会までに間に合うこともあると  思いますから、少し御議論いただけますか。  先ほど岡部先生からお話がございましたが、柱が幾つかあるということで、とにかく  方針は今日各委員からいろいろな御意見がございました。2012年までで本当に終わる  のかどうか、先が不安だという声もございましたが、とにかく大方針としては2012年  までに排除したい、それが大きな方針の柱であると。そのためにどうするかというこ  とになりまして、接種機会を確保しなければ意味がないであろう。そういうことによ  って接種率が向上するであろうと。  先ほどいろいろ沖縄等からも御意見が出ましたが、また、大橋先生からも出ましたけ  れども、発生したときにすぐ診断しなければいけない、そして、早急な対策をとらな  ければいけませんよと。それには診断も必要ですよということであろうかと思います。  それから、細菌製剤協会からお話が出ましたとおり、ダブルの検定があるということ  もあって、非常に認可されるまでに時間が掛かる。それから、せっかくつくっても有  効期間が1年であるので、有効期間を過ぎてしまったものは廃棄しなければならない  というデメリットもある。そういう中で、端的に言えばつくったものだけは担保して  ほしいという裏があるのだと思いますけれども、そういうような問題もあるというよ  うなことがここに書かれてある。それが供給体制の確立だと読めます。  それから各論に入りましては、先ほど岡部先生がお話になった、また、三宅補佐がお  話しになったような意味合いで、接種時期をいつにすればよろしいかというようなこ  とがここに書かれてございます。  更に、これから問題になろうと思われることは、中学生または高校生に接種する場合  に、現在の規則ですと保護者同伴である、それから、学校の会場は一般的には使えな  い可能性があるということから、接種を受けやすい環境の整備が十分にできるかどう  かが不安であるというようなことが書かれてございます。これらを総合いたしまして、  各委員の御意見を伺います。いかがでしょうか。 ○澤委員 先ほど2つの学校の先生からお話しいただいて、保健所としましてはかなり  今回の麻しんの大流行で問題が大きかったのは、やはり学校との連携ということだっ  たと聞いております。なおかつ、今回こういう接種の枠を広げて、接種率の向上に取  り組むには、先ほど金沢大学の発表にもありましたけれども、受けやすい環境という  のが非常に大事だと思いますので、この歳、学校という現場を何とかうまく利用する  ことができたらと思っておりますので、竹本先生がおっしゃいましたように、文部科  学省との連携を強化して、そういう接種を受けやすい環境づくりというところをかな  り強化してやっていただきたいと思います。  以上です。 ○加藤座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。 ○蒲生委員 学校でしていただくのは賛成です。それと、保護者への費用的なものの補  助をしていただきたいと思っています。 ○加藤座長 学校でやっていただくことについては賛成であると。ただし、その費用に  関してはこれは負担にならないようにしていただきたいということでございます。 ○竹本委員 まず、制度変更時の年齢区分ですけれども、これは第1回が決まってから  7月29日に決まって3月31日まで半年しかありませんでしたし、また、今年もちょう  ど来年度の新一年生に対しては麻しんの流行と重なってしまったために、地方自治体  からの接種を勧告するのが遅れて発生されているので、期間が短くなっているという   ことから、やはり7歳半ぐらい、昔の90か月の制度を少し時限措置として残してもらい  たいなということが一つ。  それから、もう一つ、はしかがこれだけ大きな問題になってきている中で、もう少し  国の方で麻しん制圧の国家委員会であるとか、麻しん排除委員会とか大きな意味の委  員会をつくって、排除するための経済的に援助をしてもらいたいと思います。各地方  自治体は非常に疲弊しておりますので、また3回接種することによってワクチンに対  する補正予算を組まなければならないとすれば、今と同じような有料の地域も出るん  じゃないかと思いますし、少子化対策もありますし、健やか親子21もあります。いろ  いろな意味のところからお金を集めて無料化してあげるのが国家として必要なのでは  ないかという感じがいたします。  以上です。 ○加藤座長 竹本先生、今の予防接種法でやられているはしかまたはMRワクチンに関  して、小児科医会でも結構ですが、持っているデータとして有料化している地域とい  うのは日本で大体何パーセントぐらいございますか。 ○竹本委員 10%は切っていますけれども、ただ、接種率を調べたところ二十四・何パ  ーセントというのが一番低い確率で、そうすると住民の4分の1しかワクチンをやっ  ていない市町村があるということを考えると、やはりそういうところは有料なのかな  と。どこの地域かはわからないけれども、そういうことも現実にあります。大都市は  大体95%達しているところもあるんですが、全体的な把握をしてみると、低いところ  は経済援助が必要なのではないかという感じがいたします。 ○加藤座長 ありがとうございます。ほかにございますか。 ○岩本委員 キャッチアップのことなんですけれども、キャッチアップというのはアメ  リカがやっていることで非常に勧奨ということとよく合うと思うんですが、日本は今  まで法律でやらなければいけないというのがワクチンのイメージでしたけれども、や  らないのは遅れているんだよみたいな感じが出て非常にいいと思うんですが、ただ、  今回のさっき岡部先生が言われたキャッチアップの中に2項目あったんですが、その  うちの片一方の5年間の時限措置で中学1年生と高校3年というのが取り上げられた  みたいなんですけれども、その辺が5年時限で、しかも2学年だけというのはちょっ  とキャッチアップと呼ぶにはあまりにも弱い気はしないでもないので、その辺が予算  の問題なのか、もう少し数字的に出していただけるとありがたいと思います。それを  やるにはこのぐらい金が掛かるとか。 ○加藤座長 先生がおっしゃっているのは、例えば韓国がやったようにズバッと言った  らどうかという御意見ですか。 ○岩本委員 私は余り韓国のことは知らないんですけれども。 ○加藤座長 失礼しました。こういう悠長なことを言っていないで、この間、蒲生さん  が言ったように、もうちょっと素早くやれないかと。 ○岩本委員 そこまでワクチンのことはよく知らないのでわからないですけれども、も  うちょっと余裕があっていいんじゃないかと。年齢枠とかそういうところが2回目に  ついては、もう少し余裕をつくる期間をつくってあげた方がいいんじゃないかと思い  ます。 ○加藤座長 これに対して御意見はどうでしょうか。 ○岡田参考人 もし今のままだと、ワクチンが足りないんじゃないでしょうか。 ○岩本委員 だから、その辺のことをはっきり出したした方がいいんじゃないかと思い  ます。能力とか予算とか。 ○加藤座長 ワクチンが足りないということはまた別に置いておいて、ここで議論する  ことは、何が国民にとって正しいことかということを決めていただければ、つくる方  はきっとつくりますよ。だから、足りないからやらないというのではなくて、こうい  う方針を立てるのでつくってくださいと言えばいいわけで、この検討会はそういう検  討会で前向きに検討していただきたいんですが、宮崎さん、どうですか。 ○宮崎委員 まさに今の話は理想と現実があって、日本脳炎ワクチン問題も今回のはし  かの問題も、大方針がないところでワクチン不足が起こっていますよね。それで後追  いでつくれ、つくれと言われても間に合わないという、状況でここ数年やってこられ  ているわけです。本当は今の議論は2年前の7月にMRの2回接種を導入するんだと  いうときに、キャッチアップも含めて議論をすべきだったことを2年間やらなかった  というツケが回ってきているわけです。だから、なるべく国民にわかりやすくするた  めに、国際協調のもと2012年までに麻しんを排除するという、WHOの方針に従って  日本もやるんだという基本的なメッセージが国民に伝わっていかないといけないとい  うことと、もう一つは、実は私は早ければ早いほどいいと思っているんですが、現実  的にはワクチンが少しでも足りなくなると、非常にむだなストレスが掛かるというの  もまた事実なので、ワクチンは余裕があるぐらいつくっていただきたい。その範囲の  中で最善の施策ができるように、これはここ数か月、あるいは1〜2か月の勝負かも  しれませんが、早く国が議論を詰めていただくことが大事かなと思います。  もう一つ、ワクチン供給量の問題として、来年、再来年、接種対象にあたらない年齢  層で流行が起こってしまうかもしれないですね。今回、小学校も中学校も高校でも大  学でも起こっているので、そういう緊急のキャッチアップというのが必要なときには、  先ほど言われましたけれども、なるべくただでやれるような体制というのも、予算的  なことも含めてできればいいのかなと思っています。  大学生以上をどうするかというもう一つの問題がありますが、もしも法で難しいので  あれば、やはりここは強力に学校当局の理解を得ながら強く勧奨するということをや  っていかないと、なかなか埋まりにくいと思います。 ○加藤座長 ありがとうございます。  ほかにいかがでしょうか。 ○岡部委員 幾つか方法はあると思うんですね。私の方は前回のときに、例として2年  対象ということをやって5年間というのを一つの例として出していますけれども、方  法論としては短期間である、蒲生委員がおっしゃった5年なんて待っていられないと   いうような意見であったり、しかし、それは現実的にどのくらいの人的なキャパシテ  ィがあるのか、あるいは日本といえども資金的なキャパシティがあるのか、それから、  どんなに頑張ってもワクチンメーカーが本当に工場を建てなくてはいけないぐらい要  求するのではやはりできないので、私としては幾つかたたき台をつくっておいて、そ  れについて次回でも議論していただければいいなと思っています。  ちょっと長くなりますけれども、今までのワクチンの対策というのはどうも往々にし  て突然出てきて、突然変わってということがこの2年間非常に不信感に結びついたり、  あるいは不安になったり、方針がわからなくなってしまったりして、私は今回のキャ  ッチアップも含めてeliminationということになったときは、余り時間を掛け過ぎても  しようがないけれども、しかし、方針についてある程度の議論をやった上で結論を出  していくというふうにした方がよろしいのではないかと思います。したがって、今日  は8時を過ぎているんですが、今日で結論を全部出すということは焦らずに、できれ  ば余裕日もあるので、そういった日に議論をしていただければいいんじゃないかと思  います。 ○加藤座長 ありがとうございます。そういう意味で、いろいろな御意見をお伺いした  いと思います。 ○井澤氏 無知な私がまた何もわからないことを質問するかもしれません。基本的なワ  クチンに対する方向性ですが、確かに以前は学校でほとんどすべてのワクチン接種を  行っておりました。しかしながら、今ワクチン接種というのは、やらなくなりました  よね。そういう経過を得てきたのに、もう一回学校でやるのが一番いいんじゃないか  と言われた場合に、学校現場ははっきり言って混乱を起こすことは事実です。その辺  もしっかりとお考えいただきたいと。国民、学校が協力することはやぶさかではない  と思います。しかし、単に学校でやるのが一番簡単だからというようなニュアンスで  はないと思いますが、そういうふうにもし国民に伝わったとしたら、これはどうなの  かなという素朴な質問です、無知ですので済みません。 ○加藤座長 ありがとうございました。貴重な御意見でございまして、これは誰も答え  られませんので、御意見として承っておきます。 ○山下氏 都立高校は、この井草を発端とした集団発生で、現在全日制で124校、定時制  で22校、高専で3校、合計都立高校は結構な数があります。都立高校の昼間だけでも  433人で、これで学校がどういうことをやったかといいますと、先ほどのワクチン接種  ですが、本校の場合は学校医さんのところでやってくださいと言いました。だけれど  も、それ以降のところは都立高校で一定のいろいろな条件をつけて保護者の同意とか  つけて、学校でやっていると思います。ですから、これは起きてからの話ですけれど  も、先ほどの話は入る前とかいろいろなことだと思いますが、ただ、都立高校はこれ  からは入学時に麻しんの罹患歴と接種の有無については調べるということになってお  ります。  以上です。 ○加藤座長 ありがとうございました。  ほかにございますか。 ○脇口参考人 先ほどの中1と高3だけでいいのかというような話ですけれども、先ほ   ど校長先生がおっしゃいましたように、学校ですることができるならば今の考えでも  いいのだろうと思いますが、やはり個別でいくということになりますと、必ず漏れと  いうのが出てきますので、できる間隔というのは狭くしておいた方がいいのだろうと  思います。ただ、先ほどからワクチン生産の問題とかいろいろな問題がありますので、  そのとおりいくかどうかというのは別ですけれども、できるだけ早く2012年を目標に  するならば、キャッチアップキャンペーンでやれるのは2年ごとぐらいに接種できる   時期を確保しておかないと、漏れ、漏れでずっといって、結局半分もできなかったと  いうような結論になりそうな気がいたします。 ○加藤座長 ありがとうございます。  ほかにいかがでしょうか。 ○岡田参考人 脇口先生が言われたように、次の議論の中でキャッチアップとして2学  年ずつやっていくのか、3学年ずつやっていくのか、一気にやっていくのかなど、あ  る程度の流れを議論していただくと、次に結びつくかなと思います。結局、供給の問  題も含めてですけれども、キャッチアップキャンペーンで5年間の経過措置の間、一  気にやれるのか、2学年ずつあるいは3学年ずつしかできないのか、そこはまだ結論  が出ていないから、次になかなか進めないのかなとも感じました。 ○三宅課長補佐 事務局でございます。次回に、先生方の今回の御議論を踏まえまして、  麻しん排除計画の素案というものをたたき台として感染研の方々やワクチンメーカー  の方々の現実と理想を踏まえて何案か出させていただきまして、それで検討いただく  ということができればよろしいでしょうか。次回は8月1日を予定しておりますが、  その前までに委員の方々に発送させていただいて見ていただくということで、とりあ  えず最終結論としてはどれか一案にはしていただきたいと思っておりますが、併論を  何案か出していただくということでやらせていただきたいと思います。 ○加藤座長 ありがとうございました。  いずれにいたしましても、今回大学を含めて高学年で麻しんが出たということは大変  異例でございまして、こういう会に学校の校長先生が出てきてお話をされるというこ  とも非常に日本では異例であったと考えております。どのような素案ができるにせよ、  接種方法を決めても先ほどからお話が出ておりますように、接種率がきちんと確保さ  れない限りにおいては、2012年における目標は達成できないということですので、そ  ういうことを十分に勘案して、すべてを考えて、荒波を越えなければならないことは  たくさんあると思いますけれども、目標は決まっていると思われますので、英知を集  めて素案をつくり、そして、各委員の先生方も慎重に御配慮いただいて、素案をたた  き上げていただきたいと存じます。議論は尽きませんけれども、今日は各方面の方々  より御意見・御要望をいただきまして、誠にありがとうございました。  先ほど三宅課長補佐からもありましたが、今回の検討会の内容につきましては、事務  局で取りまとめていただきまして、はしか排除に向けて素案を作成させていただきま  す。後日、委員の皆様には素案を事務局より送付させていただきまして、次回に委員  会として議論を深めてまいりたいと思います。  それでは、最後に、事務局からよろしくお願いいたします。 ○山田課長補佐 先ほども御案内申し上げましたが、次回の開催でございます。第15回  の予防接種検討会は8月1日、15時30分からを予定させていただいております。詳し  いことにつきましては、また厚生労働省のホームページ等でアップさせていただきた  いと思いますのでよろしくお願いいたします。  本日は、長時間にわたり御議論いただき誠にありがとうございました。これをもちま  して終了させていただきます。