07/07/02 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会第26回議事録 第26回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会 日時:平成19年7月2日(月)18:30〜 場所:航空会館703会議室 ○労災管理課長(勝田)  定刻になりましたので、ただいまから第26回労災保険部会を開催いたします。本日は お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございました。私、労災管理課長の 勝田でございます。今回は委員改選後初めての部会ですので、部会長選出手続まで私が議 事進行を務めさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。議事に入ります前に、 新しく本部会の委員に就任されました皆様をご紹介させていただきます。参考資料1とし て委員名簿を席上に配付しておりますのでご参照ください。新任の委員の方だけでござい ます。順にご紹介申し上げます。公益代表の中窪裕也委員、野寺康幸委員、平野敏右委員、 労働者側代表の齊藤惠子委員、使用者側代表の小手川正憲委員、佐野弘明委員、田中恭代 委員です。佐野弘明委員は所用のためご欠席でいらっしゃいます。以上、7名の方が新し く本部会のメンバーに加わっていただきました。委員の皆様の辞令につきましては席上配 付という形で恐縮でございますが、皆様のお手元にあらかじめお配りさせていただきまし た。なお、平野委員につきましては労働政策審議会の委員を兼ねておられますので辞令は すでにお渡しさせていただいております。齊藤委員、長谷川委員、松井委員、田中委員、 平山委員についてもそれぞれ他の分科会の委員を兼ねておられますので、辞令は各分科会 からお渡しさせていただくこととしております。また、本日は公益代表の稲葉委員、那須 委員、労働者代表の高松委員、寺田委員、使用者代表の佐野委員、平山委員がご欠席でご ざいます。  続きまして、事務局側に異動がありましたので紹介申し上げます。職業病認定対策室長 のほうからご挨拶申し上げます。 ○職業病認定対策室長(絹谷)  7月1日付で職業病認定対策室長として着任いたしました絹谷でございます。各委員の 先生方にはいろいろとまたご指導いただくこととなると思いますが、よろしくお願い申し 上げます。 ○労災管理課長  続きまして、部会長の選出についてご説明申し上げます。部会長は労働政策審議会令第 7条第6項に基づきまして、公益を代表する労働政策審議会の委員のうちから選挙するこ ととされております。本部会におきまして公益を代表する労働政策審議会本審の委員は平 野委員のみでございます。このため、部会長は無投票で平野委員ということになりますの で、よろしくお願い申し上げます。それでは、この後の議事進行につきましては平野部会 長にお願い申し上げます。 ○部会長(平野)  挨拶ということですが、何か、無競争当選というのは政治の世界ではときどきあるみた いですが、競争相手を抑えたりしないとなかなか無競争にならない。今日もたぶんそうい うことになるのかなと思っておりましたが、何か、ほかのことの影響で「部会長はあなた だ」と言われて「じゃあ、やりましょう」ということなのですが、考えてみますと、この 労災保険部会というのは厚生労働省のいろいろな分野で審議された事項、もしかしたらそ れの最終的に判断を必要とするところがかなり集まってくるのではないかと思っており ます。例えば、今日出る議題を説明していただきましたが、何か、ほかの所ですでに議論 をして、だいぶこれは大荒れに荒れたなという記憶のあるものもあります。そういうこと で、ここにご出席の皆様は、先ほど課長からお話がありましたように、それぞれほかの部 会に所属しておられて、そういう所で議論のあったものの関連の事項がかなり出てくるの ではないかと。私自身、それで世の中が良くなればいいやということでいろいろ提案させ ていただいたり、もしかしたらそんな乱暴なことをと言われることを言うかもしれません が、ひとつご容赦いただきまして、そういうようなお気づきの点があれば議論をして、良 いところに落ち着けていこうと。それの舵取りの作業ということで、実は、少し残念なこ とは私自身が発言する機会がたぶん減るのではないかと。それだけ心配なのですが、皆様 よろしくお願いいたします。  部会長の最初の仕事は部会長代理を指名するということで、これは私の自由ということ なのですが、野寺委員にお願いしたいのですが、よろしくお願いいたします。それでは、 本日の議題に入りたいと思います。第1の議題は「労働者災害補償保険法施行規則の一部 を改正する省令案要綱」についてです。事務局からご説明をお願いしたいと思います。 ○監督課調査官(岸本)  それでは、第1の議題につきましてご説明いたします。労働基準局監督課でございます。 よろしくお願いいたします。第1の議題は労働者災害補償保険法施行規則の一部改正省令 でありまして、資料としては、諮問ですのでその諮問の省令案要綱を書いた資料1-1、内 容の概要をまとめました資料1-2と2点です。この2点に沿いましてご説明いたします。 資料1-1は省令案要綱ですので、慣例に従いまして最初に要綱を読み上げさせていただき ます。  労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱。第1、中小企業労働時間 適正化促進助成金の創設。労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第29条の社 会復帰促進等事業として、中小企業労働時間適正化促進助成金を創設し、次のいずれにも 該当する中小事業主(その資本金の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を 主たる事業とする事業主については5,000万円、卸売業を主たる事業とする事業主につい ては1億円)以下である事業主及びその常時使用する労働者の数が300人(小売業を主た る事業とする事業主については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主 については100人)以下である事業主をいう。以下同じ。)に対して支給するものとする こと。第1号。2の認定の日において、労働基準法(昭和22年法律第49号)第36条第2 項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準に規定するところにより、当該基準に規定す る労働時間の延長の限度を超えて労働時間を延長することができる旨を定めた同条第1 項の協定を締結している中小事業主又はこれに準ずる中小事業主であること。第2号。労 働時間の適正化のための措置を定める計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた中 小事業主であって、当該計画に基づく措置として、時間外労働の削減その他の労働時間の 適正化のための措置及び300万円以上の省力化投資等又は労働者の雇入れを実施したも のであること。第3号。2の措置の実施の状況を明らかにする書類を整備している中小事 業主であること。第2、施行期日。この省令は、公布の日から施行するものとすること。  以上が諮問申し上げます省令案要綱です。この内容ですが、資料1-2をご覧いただけれ ばと存じます。本助成金、これは助成金の支給根拠となる労働者災害補償保険法施行規則 の一部改正ですが、本助成金は平成19年度予算における社会復帰促進等事業の一部とし てすでに予算としては成立させていただいたものです。その支給根拠を今回整備して助成 制度を発足させようということです。この趣旨といたしましては、昨年来、労働時間の問 題につきまして本審議会の関係の分科会でいろいろご議論を頂戴したところですが、その 中で、労働時間について、特に健康の面あるいは少子化への影響などの面から、特に長時 間労働について是正を図っていくことが必要であるという議論がなされました。これを受 けまして、平成19年度予算におきまして、特に中小企業に対する労働時間の短縮を進め るための援助措置を予算化しようということで創設したのがこの趣旨でございます。  助成金の内容はIIの概要の所にまとめております。最初に、対象の事業主ですが、これ は先ほどの省令案要綱にも出てまいりましたが、IIの最初の行にある、特別条項付き時間 外労働協定を締結している中小事業主が支給対象となる事業主のいちばん基本的な枠組 みです。特別条項付き時間外労働協定というのは、ご案内のことと存じますが、時間外労 働を行わせるために労働基準法上時間外労働協定と言っている労使協定を締結する必要 がありますが、さらにその労使協定の中に一定の限度時間を超える時間外労働を行わせる ことを根拠づける場合には、特別条項という特別の根拠を設けてくださいということをお 願いしているものです。この限度時間が月にいたしますと45時間が限度時間になってい ますので、45時間を超える時間外労働を行わせる場合には、特別条項付きの時間外労働 協定を結んでいただくのが今の労基法と関係告示の姿です。  今回は労働時間の問題のうち特に長い時間外労働について抑制を図っていこうという 観点から、この特別条項付きの時間外労働協定を締結している所を対象としたところです。 どのような取組みに対して助成を行うかですが、ここではIIのイロハと3つに分けて書い ております。少しややこしいのですが、イロハというメニューからそれぞれ1つずつ取り 組んでいただくという仕組みとしておりまして、そのうち最も中心的な要件を定めている のはイの要件です。イの要件では(1)(2)と2つ並べてありまして、このどちらか一方に取り 組んでいただくとしておりますが、(1)は特別条項付き時間外労働協定の対象労働者を半分 以上減少させることとしております。これは、時間外労働協定を労基署に届けていただく ことに労基法上なっていますが、その届出書の中に時間外労働の対象となる業務の種類や 対象労働者数を書く欄があります。これを、その協定を改定していただいて対象労働者数 を半分以上減じていただくのが取組みの第1です。また、(2)としては、そういった特に長 い時間外労働に対する抑制効果を期待いたしまして、割増賃金率を自主的に引き上げるこ ととしております。具体的には2つのパターンを想定しておりまして、限度時間を超える 時間外労働に係る、つまりこれは45時間を超えることになりますが、割増賃金率を35% 以上に上げる、または月80時間というより長い節目の時間に対しまして割増賃金率を 50%以上に引き上げるという2つのパターンを想定しております。  それから、ロは補助的な要件と申したらよろしいかと思いますが、イのほかに年次有給 休暇の取得促進などに取り組んでいただくことも要件としております。ハの要件は、具体 的にその助成措置の根拠となる対象の経費がどのようなところで生ずるのかということ に着目した要件でありまして、時間外労働の抑制をしていただくための会社としての取組 みとして、業務の省力化に資する設備投資、あるいは新たな常用労働者の雇入れによって 既存の従業員の負荷を軽減していただき、時間外労働を減少させていただくということで す。このイロハからそれぞれ1つずつ選んでいただいて1つのプランをつくっていただい て、それを実施していただいた場合に助成額としては100万円を支給するというものです。 助成金の概要は以上でございます。よろしくご審議のほどお願いいたします。 ○部会長  ただいまの事務局の説明につきましてご意見、ご質問がありましたら伺いたいと思いま す。 ○佐藤委員  基本的には常用労働者を対象にしていく。イロハで、簡単に言ってしまえば、非正規の 労働者を入れることによって一定のその数字を下げることも可能であると思われること もあり得るのではないか。ハの所に常用労働者の新たな雇入れ、あるいは注の項目にすべ て「常用労働者」という言葉がありますが、その前提になる問題としての労働者の数え方 の問題はどのようにして押さえられるのですか。 ○監督課調査官  助成金の要件としているハの(2)の常用労働者につきましては、これは省令についてお認 めいただけましたならば、通達で具体的な細目を示したいと思っておりますが、その中で 予定しているのは週の労働時間30時間という節目、30時間以上を常用労働者というよう にとらえようと考えております。これは、厚生労働省全体として事業主に対するさまざま な助成措置を設けておりますが、その中で常用労働者の雇入れを対象とする助成措置のい くつかの例に倣ったものです。また、ご指摘のとおり、確かに、個々のケースとしては、 非正規といいますか、非常用の労働者を雇い入れることによって既存の従業員の負担を軽 減するというケースもあり得ると思いますし、労働時間の適正化という観点からはそうい う取組みを進めていただくことも大変ありがたいことなわけですが、助成措置の対象とし て考えるときに、事業主の側にある程度まとまった費用がかかる取組みであるものに対し て一定の割合を助成するという考え方を、予算の効率的使用という観点からもとらざるを 得ないところでありまして、必ずしも非常用か常用かで賃金の高低に完全にリンクするも のではありませんが、助成措置の対象としましては、ある程度まとまった費用を要するこ とが想定されるケースとして常用労働者の雇入れを助成対象としているものでありまし て、この辺の割り切りは厚生労働省の他の助成金の例なども倣って判断をしているところ です。 ○佐藤委員  わかりましたが、いま非正規の労働者を入れることが良いことだというような内容の発 言をなさったのですが、労働者なり世間一般の理解はそうではないのではないでしょうか。 ○監督課調査官  いま私が申しましたのは、非正規といわれる労働者を入れることによって既存の従業員 の負担が軽減できれば、それは労働時間短縮という観点からはありがたいことであると申 し上げたつもりです。非正規雇用のあり方全体をどう考えるかというのはいろいろな議論 があることは承知しておりますし、また、厚生労働省全体としてもいろいろな取組みをし ておりますが、本助成金との関係で申せば、専らそのまとまった費用を要する取組みを助 成対象とするという考え方から常用労働者の雇入れを要件としているということで、それ 以上でもそれ以下でもございません。 ○部会長  よろしいですか。 ○佐藤委員  はい。 ○部会長  では、松井委員。 ○松井委員  まず、常用労働者の定義を改めて教えていただきたい。先ほど週30時間以上というお 話がありましたが、プラスどのくらい雇い入れるようなことになっているのか。そうした 定義を改めて教えていただきたい。それから、仮に短時間労働者で、後ほどご説明のある ような形の要件が合致していてさらに30時間以上になれば、新たに雇い入れたというこ とになり得るのかどうかということを教えていただきたいというのが1点です。  また、特別条項というのは必ずしも月45時間という締結をしていなくてもあり得ると 思います。その場合、ここでは月45時間という限定がなされた形で運用されているのか どうか。それと、もう1点は、イの(1)の対象労働者を半分以上減少させるというのは、そ の届出時において対象となる労働者が何人ということであり、実際、特別条項が発動され て、その特別条項の下で時間外労働が行われる人数が半減するということではないという 理解でよろしいのかどうかお伺いしたい。 ○監督課調査官  4点ご質問いただいたかと思います。1つは、この助成金における常用労働者の定義で すが、週30時間以上を定義としておりまして、例えば雇用保険制度などで一定期間の勤 続が見込まれることという要件を付加しているケースもありますが、本助成金につきまし ては常用労働者の定義として勤続年数あるいは勤続見込み年数を求める形ではありませ んが、雇入れを要件とする助成金の他の例に倣いまして、雇い入れた後に一定期間の雇用 継続が果たされたことというのは助成の要件としたいと考えております。雇い入れてすぐ 辞めさせたということだと何に助成をするかわからなくなってしまいます。他の助成金の 例がおおむね雇用継続期間を6カ月見ておりますので、6カ月の雇用継続を見ることはこ の助成金の細目においては必要ではないかと思っております。  2点目ですが、例えば短時間の労働者をフルタイムの労働者に転換することによって既 存の従業員の負担軽減、労働時間適正化を実現するということは、先ほど佐藤委員からの ご指摘とも似たようなタイプだと思いますが、実際にはあると思います。ただ、これも、 そのことによって追加的に事業所において必要となる費用が、短時間労働者だった時代の 賃金とフルタイムになったときの賃金の差額ということになろうかと思います。したがっ て、ある程度まとまった費用を要するような労働時間適正化のための措置に対して助成す るという考え方からすると、助成対象としては平均的に見ればそれほどの費用を要さない という評価になってしまうのではないか。そういう考え方から、平成19年度に発足した いと考えております助成金におきましては、常用労働者を新たに雇い入れた場合というも のを対象にしたところです。  3点目ですが、限度基準告示の限度時間は45時間を想定していますので、45時間を超 えるところについて割増賃金をどう設定するかというのがイの(2)の要件との関係では判 断することになります。  4点目ですが、特別条項付きの時間外労働協定を締結して、おそらく松井委員がおっし ゃっているのは、例えば協定を見ると10人対象だと書いているけれども実績は10人まで は行っていない。それを今度5人に減らすときに、10人が限度時間を超える時間外労働 をやっていた会社が5人に減らすのと苦労が違うのではないかということだと思います。 この助成金の立案の考え方としてはこういう考え方ができるのではないかと思っており まして、時間外労働協定、それからその45時間を超える場合には特別条項がないとそう いう時間外労働を命ずる根拠を使用者が持たないということになりますので、仮に、ある 年度、たまたま助成金の申請の直前において、時間外労働協定に書いてある人数がフルに は時間外労働をそこまでしていないとしても、枠を減らすことによって長時間の時間外労 働の抑制効果、予防的な効果は働くと思っています。したがって、そのような場合も助成 対象として差し支えないのではないかというのが今回の案の考え方でとっているところ です。 ○松井委員  最後の点の確認だけさせていただきますが、届出の対象労働者数が半減するということ がこの要件であって、実績においてどうかということではないということですよね。特に 零細企業の場合、この部分は非常に難しいのではないか。それなりの規模の企業であれば、 どこそこ部門は時間外労働の特別条項付きの協定の対象としないということができると 思いますが、零細企業になればなるほど非常に難しいという気がいたします。零細企業で あるとイの(2)のほうでないと対応ができず、こういうものはより零細企業になると難しす ぎるのではないか、ハードルが高すぎるのではないかという気がいたします。それに対し、 本当に対応するとしたら何ができて、何かできないか。というのは、特に零細企業であれ ばあるほどハの要件もハードルが高く、短時間の人をフルタイムに換えるというだけであ ってもそれで対応できる可能性はあるような気がいたします。これは予算措置としては大 体どのくらいの事業所数を考えておられるのでしょうか、その点をお伺いしたいと思いま す。 ○監督課調査官  最初に確認でおっしゃっていただいたことはそのとおりでありまして、実績として45 時間を超える時間外労働を何人していたかではなくて、時間外労働協定に書いてある人数、 枠が何人あったか、それを何人にするか、ということで判断をしたいと思っております。 それから、順序が入れ替わりますが、予算上は約2億2,000万円をこの助成金に計上して おりまして、対象の事業者数としましては約400を見込んでおります。  それから、中小零細企業にとってハードルとしてどうかというご指摘がありました。こ れは十分なお答えになるかどうかはわかりませんが、一方でイの(1)や(2)のような形で、い わば目に見える形で特に長い時間外労働の抑制措置をとっていただくことは、本助成金の 趣旨から言うとどうしても必要ではないかと思っております。一方で、例えば短時間労働 者をフルタイムに転換した場合というのはハに該当しないわけですが、そういうものも措 置として助成施策として評価できないかということについてご指摘いただいております が、助成金の単価が100万円ということと対象措置に要する平均的な費用がいくらかとい うことをセットで予算要求上の説明もして査定も受けているものですから、そこを変える のはなかなか難しいところです。中小零細企業にとってハードルが高すぎるかどうか。も しこの助成金をスタートさせていただけましたならば、その実績も見て今後少し考えたい と思います。 ○部会長  ほかにご意見ありますか。 ○中窪委員  質問ですが、これの前提となる特別条項付き時間外協定については、改正労基法との関 係で労働条件分科会などで議論されたのではないかと思いますが、そもそも36協定の中 でこういう条項が付いているものはどのぐらいあって、何時間ぐらいを定めているものな のでしょうか。 ○監督課調査官  時間外労働協定を締結しているうち、特別条項を持っているのは約3割です。特別条項 に定めている時間の数値も取っておりますが、いま手元にありませんので後ほどご報告い たします。 ○中窪委員  そのときに時間を減らすというところについて、何か助成金で誘導する必要はないもの なのでしょうか。人数ではなくて。 ○監督課調査官  そういった助成措置も確かに考え得るとは思います。ただ、この助成金の検討をしてお りました私どもの考え方としましては、特別条項が臨時的なものというように限度基準に おいて位置づけられておりまして、例えば60時間という特別条項を持っているところを 50時間にするというよりは、助成対象とするにはもう少し高いというと語弊があります が、長時間労働の抑制に資するハードルを超えていただいた所を助成対象としたいと思っ ております。その60を50にするのではなくて、60を45以下にするというのが対象労働 者を減らすという意味ですので、そのように思ったところですが。こういった時間外労働 に限らず、その助成措置につきましては実施状況を見ながら、その費用対効果なども考え て、よりニーズに合ったものに見直していくことは、一般的に私どもも心掛けなければい けないと思っておりますので、そういうご指摘があったことをきちんと踏まえて実績を見 ていきたいと思います。 ○松井委員  ロの取組みの中で年休の取得促進、休日労働の削減、ノー残業デーの設定と書いてあり ますが、ここは現実に年休の取得促進が進んだという、実績で全部見るのでしょうか。ノ ー残業デーをつくっても役所が典型のように守られていない場合もあります。どのように して取組みをしたことと判断するのでしょうか。 ○監督課調査官  イロハと要件を並列で書いておりますが、中心的な要件はイであって、ロは補助的な要 件というふうに考えておりまして、年次有給休暇の取得促進とか休日労働の削減、ノー残 業デーの設定についても、これによって年休の取得率が上がったかどうかとか、休日労働 が実際にどれだけ減ったか、ノー残業デーが遵守されたかどうかまでは要件としては見な いという設計を考えております。ただ、助成金ですので、支給申請の審査の中で書面で確 認できる何らかの措置は取っていただかないといけないだろうと。例えば朝礼でノー残業 デーを呼びかけたというだけだと助成対象とするのは難しいと思っています。一方で、不 正受給に対する配慮も必要ですので、最後は個別案件ごとの総合判断ということになりま すが、助成金の受給のために、労使ともが実際にそれに従ってやるつもりのない取組書を 書いて出してきたということが個別事案の中で総合判断で明らかになれば、それはきちん と回収をさせていただきたいと思いますが、ロについては実績を見て支給するのではなく て、取組み内容を出していただいたところで支給の判断をしたいと思っています。 ○筧委員  簡単な質問をさせていただきたいと思います。ハのいずれかの取組みの中で、(1)の業務 の省力化に資する設備投資等の実施というのがありますが、「設備投資等」という「等」 に何か意味があるのですか。 ○監督課調査官  申し訳ございません。細目は通達に定めますが、通達では通例の施設または設備の設置 または整備という文言になろうかと思いますので、「等」には特に意味はありません。こ ういった助成関係の法令で設備と施設を書き分けるものですから、設備だけだと少し尽く されていないかなというだけの意味です。 ○部会長  ほかにいかがですか。 ○小手川委員  対象事業所を400事業所と見ておられるということでしたが、それは申請する事業所の ことですか。 ○監督課調査官  おっしゃるとおりです。 ○小手川委員  ですから、予算的に2億2,200万円ということは、大体半分程度の認定を予想している ということでよろしいのですか。 ○監督課調査官  そこは説明が不足しておりまして申し訳ございません。IIの概要の所でも単価100万円 と書いてありますが、これは実際には1年間の計画期間をとっていることもありまして、 50万円は最初の認定の時点で支給して、計画が実施されたことを確認して残額の50万円 を支給する仕組みとしております。そして、予算の技術的には平成19年度予算に計上す るのはこの第1回の支給分に限られてしまうものですから、平成19年度予算におきまし ては400社掛ける50万円で、あとは施行事務費などを含めて2億2,000万円と。400ピ ッタリではなかったのかもしれませんが、そういう計算でありまして、私どもは平年度化 と言っていますが、第1回、第2回支給の両方が出てくる年度になると予算額はもう少し 増えることになります。 ○小手川委員  わかりました。 ○部会長  それでは、特にほかにご意見がないようでしたら、諮問のあった案件について当部会と しての態度を示すことになります。いまのご質疑の中で内容について特にこれは反対だと いうご意見も出ませんでしたので、当部会ではとりあえず妥当であるということで分科会 のほうへ報告したいと考えますが、いかがでしょうか。 (了承) ○部会長  ありがとうございました。それではそうさせていただきます。 ○監督課調査官  ありがとうございました。 ○部会長  ご苦労様でした。報告については私にご一任いただければありがたいのですが、よろし いでしょうか。 (了承) ○部会長  それでは、そのようにさせていただきます。ここで長谷川委員が所用で退席されるとい うことなのですが、代理の漆原肇さん、日本労働組合総連合会雇用法制対策局の部長がご 出席されるということです。これは部会長の許可がないといけないということですので、 許可をいたします。 ○長谷川委員  申し訳ございません。 ○部会長  それでは、漆原さん、代理ですのでいくらでも意見を言うことができます。第2の議題 は「平成18年度労働福祉事業の実績評価及び平成19年度社会復帰促進等事業の成果目標 の設定について」です。事務局からご説明をお願いいたします。 ○労災管理課長  私のほうから資料2で、労働福祉事業に関する平成18年度成果目標に対する実績評価 及び社会復帰促進等事業に関する平成19年度成果目標について説明いたします。労働福 祉事業につきましては平成17年度から成果目標を設定し、目標管理を実施しております。 平成19年度からは事業名が社会復帰促進等事業に変わっておりますが、引き続き効率性 を高める等の観点から実績評価、目標設定を行っていくこととしております。目標の設定 方法の1点目ですが、保険給付と類似の事業あるいは調査研究事業など、目標設定自体が 困難と考えられる事業を除き目標設定の対象とすることを基本としております。また、例 えば社会復帰率が何%以上とするなど、その事業がどれだけ役に立っているかという視点 に立った具体的、定量的なアウトカム目標とするように努めております。また、いわゆる 満足度指標を設定する際にも、できるだけ何に役立ったか等の具体的な成果を反映できる ものとするよう努めているところです。  評価概要につきましては、平成18年度の評価対象事業は63事業でした。次の頁ですが、 評価概要の2をご覧いただきたいと思います。この中で見ていただくと、目標を達成した 事業は30事業、47.6%でした。そのうち、引き続き適切に実施する必要があるものが15 事業、見直しを行った事業が6事業、廃止することとした事業が9事業となっております。 目標を一部達成した事業は8事業、12.7%ありました。内訳は、目標達成のための手法の 検討が必要であるが引き続き適切に実施する事業が5、見直しを行った事業が1、廃止す ることとした事業が2です。さらに、目標が達成できなかった事業が2つあります。これ につきましては、今後、事業の廃止を含め見直す必要があるのではないかと考えておりま す。また、実績を集計中であるもの、あるいは独立行政法人が行っていて、独立行政法人 評価委員会において評価を行うため今後評価を行うものが23あります。これらにつきま しては評価は今後でありますが、目標について一部実績が出ているものもあり、資料の中 に書き込んでいるものもありますので、このような事業についても忌憚のない意見があり ましたら頂戴したいと思っています。  こうした実績、また、昨年度来の労働福祉事業の見直しの議論等を踏まえながら、平成 19年度の成果目標を新たに設定いたしました。満足度指標だけでの評価はしない、設定 目標のさらなるアウトカム指標化にも努めているところです。いちばん下の「目標の見直 し」のとおり、平成18年度目標を改善し新たな目標を定めた事業が10事業であり、平成 19年度新規6事業につきましても目標を設定しております。以下、個別の事業について、 すべてではありませんが、若干ご説明申し上げたいと思います。  最初の1番から4番まで、3頁から5頁にかけてですが、これらは医療リハビリテーシ ョンセンターの運営から労災病院の運営まで、独立行政法人労働者健康福祉機構で行って いる事業です。平成18年度成果目標と実績のそれぞれを見比べていただくと、いずれも 目標は達成しております。評価は独立行政法人評価委員会の評価をもって評価することと しておりますが、皆様方からもご意見を賜りたいと考えております。なお、独立行政法人 労働者健康福祉機構の中期目標期間は平成16年4月から平成21年3月までとなっており ますが、政府のいわゆる「骨太の方針」に基づきまして、本年、1年前倒しで全体の評価 を行うこととしております。  説明の順序が逆になって恐縮ですが、実は、この全体の並べ方自体は社会復帰促進等事 業を掲げております法律の項目等の順番に並べてありますが、なぜこんな順番なのだろう かというご疑問をお持ちの方がいらっしゃるかもしれませんが、そういうことでご理解い ただければと思います。引き続き個別の事業のご説明を継続いたします。7頁の6番です。 労災年金相談等支援事業につきましては、昨年のご議論でも効率化等の見直しを行う必要 性を指摘いただきましたことから、平成19年度からは在宅介護支援を統合することとし ています。なお、いずれも平成18年度実績は目標を達成しているところです。  10頁まで飛ばせていただきますが、12番の働き方改革トータルプロジェクトの推進事 業以下4事業は平成19年度の新事業です。本事業により具体的に長時間労働の是正が図 られているとする事業主の割合等、いずれもできる限りアウトカム目標とするように努め ております。また、労働時間等相談センター事業の推進は昨年までは労働条件全般を広く 扱うこととしておりましたが、労働福祉事業の見直しにより、労働条件確保事業が廃止さ れたことに伴い、安全衛生の確保等に特化する形で事業内容を見直して新たに実施するこ ととしているものです。11頁ですが、16番の産業保健推進センターの利用促進事業以下、 再び独立行政法人の事業ですが、いずれも安全衛生確保事業として行っているもので、数 値目標はいずれも達成しております。  この後、独立行政法人関係のものが続いて、17頁まで飛ばさせていただきます。17頁 ですが、26番のC型肝炎、28番の労働衛生関係機関の統一精度管理事業はいずれも昨年 度の見直しの議論等を踏まえ、平成18年度限りで廃止しております。27番の小規模事業 場の産業保健活動推進事業につきましては目標を達成できなかった事業です。21頁に飛 びますが、32番の過重労働・メンタルヘルス対策の推進事業及び33番の中小規模事業場 健康づくり事業はいずれも昨年度の見直し作業において見直しをするとされたことを踏 まえ統合することとし、平成19年度もそれぞれに対応した目標を設定しております。な お、平成18年度実績を踏まえて設定しているところです。24頁ですが、37番の危険有害 な特定化学物質対策の推進事業は、特に石綿対策も入っておりまして、事業の緊急性、重 大性に鑑み平成19年度目標は90%以上という成果を目標とする等、高めの設定としてお ります。  26頁ですが、42番の国際安全衛生センター運営事業は昨年の議論を踏まえ平成19年度 においても事業内容を見直し、また、平成20年度の廃止、整理に向けて作業を進めるこ ととしております。32頁に飛びますが、49番の勤労者マルチライフ支援事業以下3事業 につきましては、労働条件確保事業の廃止に伴い、平成18年度限りで廃止した事業です。 ただ、いずれも平成18年度の成果目標は達成しているところです。34頁ですが、53番の 家内労働者の安全衛生対策事業です。こちらは目標を達成できなかった事業です。36頁 の57番ですが、労働福祉事業の見直しの際にも議論がありました未払賃金の立替払事業 はこちらのほうで書いております。37頁ですが、58番の労働条件等自主的改善対策推進 事業以下は平成18年度限りの事業ですが、目標はいずれもおおむね達成しているところ です。42頁にまいりますが、66番の個別労働紛争処理対策事業は事業名を変更いたしま した。また、平成19年度目標も、平成18年度実績を踏まえ、それを上回ることを目標と しております。以上、多数の事業があり全部触れることはできませんでしたが、このよう な昨年度の見直し議論等を踏まえ、見直しあるいは廃止いたしました事業、目標を見直し た事業等のご紹介とさせていただきます。皆様方のご意見をお願いしたいと思います。よ ろしくお願いします。 ○部会長  ただいまのご説明につきましてご意見、ご質問があれば伺いたいと思います。どこでも 結構です。 ○漆原氏(長谷川委員代理)  何点か聞きたいことがありますが、最初に、説明にもありました労災病院の運営につい て4頁から6頁にわたって書いてある所ですが、確かに、その変革に基づいて労災病院の 再編が進んでいることは私どもも認識しております。そうはいっても、労災病院というの は、ここに書いてありますように、労災特有の疾病に対する知見が集約される場でもある と思っておりますし、職場復帰についてのいろいろなノウハウもそこでありますので、地 域の医療が後退するという懸念もさることながら、今後はアスベストの検討もありまして、 アスベスト外来がつくられているということもあるので、改廃というよりも拡充をするべ き点もあるのではないかと思っております。そういう意味で特段の配慮をお願いできれば なというのが最初の1点です。  次の点は、少し飛びまして17頁なのですが、ここの所に自律的安全衛生管理活動普及 促進事業があります。これは2006年の法改正で入ったリスクアセスメントと労働安全衛 生マネジメントシステムについてのところであると思います。私どもの理解では、法改正 で入ったとはいえ、中小企業において導入があまり進展していないのではないかという認 識に立っております。平成18年度の達成目標と平成19年度の成果目標を見てみるとほぼ 同じような内容になっていますが、平成19年度の予算額が若干減らされているというと ころを見ると、予算が減額されていることには気になりますが、目標を達成できるように 一層の努力をお願いしたいということと、ここはもう少し拡充すべきではないかなと感じ ております。  次は29頁なのですが、ここのアスベストの所で石綿業務に従事した離職者の特別健康 診断事業がありまして、これは平成18年度限りで廃止事業と。単年度であったのかなと は思っておりますが、そうは言いましても、この実績の所にもあるように、胸部エックス 線等で1,655人のうち616人の方が所見があったと。ヘリカルCT等、その2次健診とし ての実施をしている。ご存じのとおり、アスベストによる疾患というのは一過性のもので はありませんので、ばく露から発生までの間はかなり長い時間がかかるものですから、単 年度というよりはある程度長期的にやるべきものではないかと考えております。  最後に、36頁の未払賃金の立替払制度なのですが、これについては引き続き検討が行 われていると聞いておりますが、こういった制度は必要不可欠であって、事業者の負担に よっていずれかの形で残るべきものだと考えておりますので、是非、そういったところの 対応もお願いしたいと考えております。 ○佐藤委員  いまおっしゃったアスベストの問題ですが、アスベストが病名として診断されるように 発症してくるまでには相当な期間を要する。そういうことは厚生労働省のいくつかの文書 の中でも明らかになっている。そして、そういう労働者はいろいろな事業所を転々として いるという経過もあって、その実態がなかなかつかみにくい。本人の自覚も非常に弱い。 そういうことからすると、このアスベスト問題が、あのクボタショック以来大きくなった ときには世を挙げてアスベスト対策だと言われたのですが、いまのこのような評価でもっ て廃止をしてしまうというのはあまりにも性急すぎないか。もう少し言えば、そのように 今年は予算措置がないのだとしても、何らかの方法でこの制度はもう少し目処がつくまで は、要するに日本が1,000万トンも輸入して、完全に下り坂になって工業製品として出な くなったとか、そういうときから数えてどれぐらいだったらというような、そういう判断 の仕方が必要ではないか。そのように思いますので、この項についてはちょっと賛成しか ねます。  それから、労災病院の問題については、これもアスベストと関係してそうなのですが、 当時、アスベスト問題が大きく報道されたときに、厚生労働省の皆さんがアスベストに詳 しい先生、岡山の労災病院の先生とか、そういう人たちを中心にして2,000、3,000とい う単位でそういう先生方を養成しているのだということを言ってきた。主に労災病院を拠 点にしながらやっていくのだということをおっしゃっていたことから考えると、アスベス トを吸引した、あるいはばく露を受けた労働者は地域的に偏重しているということもある かもしれませんが、時代の中で多く転々としているということもありますから、労災病院 はそういう役割から考えても、もう少し残すように努力したらどうかと強く訴えをしたい と思います。  それから、これはもう約束されていることですからあまり念を押すことはないと思いま すが、未払賃金の立替払事業の問題で非常に危惧するのは、使用者側と当局とがいろいろ 話し合ってきている、検討する項目に入っている、というように聞いておりますので、こ の報告では後退的に読めるものもあまりないと思われますが、セーフティーネットという 言葉が使われておりますが、これは明確に残すと。労働者福祉事業の主要な問題でもあっ たと私は思っておりまして、その名前が変わったことに反対はしなかったのですが、そう いう意味合いからいっても、是非とも必要不可欠という観点で明言をしていただきたい。 その3点を申し上げておきたいと思います。 ○労災管理課長  私のほうから労災病院関係の問題について一言お話した後、担当課からアスベスト関係 の話とリスクマネジメントについてお答えしたいと思います。それから、未払いの問題も、 いまの段階ぐらいであれば私のほうからまとめてお話させていただきます。  まず、労災病院の問題ですが、労災病院につきましては今年度を最終年とする再編整理 の計画が定められておりまして、それに基づいて、いまのところその計画に沿った形での 再編整理が行われているというのが現実です。ですから、昨年度において岩手の労災病院 を廃止いたしました。今年度以降、廃止または統合等の対象になっているのは、北から美 唄、門司、筑豊の各3病院です。これらにつきましても地域医療との関係等を配慮しなが ら、それぞれにおいて統合または廃止というか、廃止といいましてもやめてしまうのでは なくてほかの所に譲渡する等ですが、そういう手続を進めているところです。今後どうす るのかということについて申し上げると、これ自身は独立行政法人労働者健康福祉機構の 中期目標に係る見直し等が1年前倒しで今年行われることになっておりますので、これら における議論を踏まえた形ということになろうかと思っております。佐藤委員がおっしゃ ったように、確かに、アスベスト対策のかなりの部分は労災病院が担ってきた。特に、ア スベストの診断方法の普及のための研修会等を、いまほどお話に出た岡山労災病院の副院 長をはじめとする関係者の皆さんの大変なご協力をいただくことによって相当回数の研 修会等も行ってきたところです。それから、アスベスト対策の関係のいろいろなセンター ができ、あるいはそれの中皮腫の治療ができるということで、いくつかの病院につきまし てはがん対策の拠点病院のご指定等もいただいているところではあります。私どもとして、 一方で、いかにこの労災勘定のお金を効率的に使って成果をあげていくかという観点と、 もう一方で勤労者の健康や労災の予防等の成果をどうあげていくかという2つをうまく 調和させながらやっていきたいと思っておりますので、病院につきましても単に全部なく してしまえばいいということではなくて、残し充実すべき部分と、もっと効率化を図るべ き部分と、合わせて考えながら今後も対応してまいりたいと思っております。  未払賃金の立替払事業についてご意見がありましたが、ご質問というよりも今の状況だ けを少しお話しておきますと、もっと詳しくという話であれば担当課のほうからさせます が、基本的に、昨年度は、一昨年度よりも我々のほうにおっしゃってくる件数等も増えた ようです。最終の集計ではありませんが、途中で出ている段階では支払い等が増えており ます。全般の経済の状況から言いましても、必ずしも倒産の件数は減っていないというの が全国的な状況だろうと思っております。特に、地方の建設関係等、なかなか厳しい部分 もあろうかと思っております。そういった中で、現時点におきましても百数十億円の未払 賃金の立替払いを行っており、この事業は一定の必要性と成果をあげているのではないか と私どもとしては考えているところです。アスベストの健康管理手帳の話と、リスクマネ ジメントの話と、2つについてそれぞれ担当課からご報告させます。 ○労働衛生課  ご指摘がありました45番の石綿業務に従事した離職者の特別健康診断事業に関しまし て、ご指摘の点につきましてご説明いたします。この45番という事業ですが、事業概要 にも書いてありますとおり、これはアスベスト問題に対応すべく臨時的に行ったものです。 単年度限りということでありまして、今回は廃止とありますが、これは当初予定から平成 18年度限りという形で実施してきたものです。なお、アスベストの健康管理につきまし ては、ご覧の資料の中で19頁の29番をご覧いただきたいと思います。こちらには特定有 害業務従事者の離職後特殊健康診断事業というものがあります。これは、健康管理手帳所 持者に対します特殊健康診断の事業です。この健康管理手帳の対象でありますが、これに アスベストが入っておりまして、今まさにこのアスベストに係る健康管理手帳の交付の要 件等の拡大、見直しなどにつきましても検討しているところでありまして、今後のアスベ ストに係る離職者の健康管理につきましては、この29番の事業をもちまして継続的に実 施をしていきたいと考えております。 ○安全課  私のほうから自律的安全衛生管理活動普及促進事業についてご説明いたします。この事 業ですが、額は若干減少しておりますが、平成19年度におきましては活動の中核である リスクアセスメントを重点にいたしまして事業展開を図っていきたいと考えております。 ○佐藤委員  いまのアスベストの問題は29番で継続的にやっていくのだということですが、この中 で書かれている特別健康診断という言葉と、この29頁で書かれている特殊健康診断はど のような違いがあるのですか。 ○労働衛生課  違いと申しますか、健康診断自体は同じように1次健診、2次健診と行っていくわけで すが、あくまでも、申し上げましたとおり45番というのはアスベスト問題に即応するた めに臨時的に緊急に平成18年度に計画して行ってきたものでありまして、これも離職者 を対象にしております。それで、いまアスベストに関しましては、肺に所見のある方を対 象に離職後健康管理手帳を交付いたしまして、この29番の事業として、これも同じよう に離職後健康診断を国の予算で実施していく事業ですが、健康管理手帳をお持ちの方に対 しまして継続的に健康管理を実施していく、健康診断を実施していくというものです。先 ほど申し上げましたとおり、石綿によります健康管理手帳の要件につきましても拡大の検 討もしておりまして、今後こちらの29番の事業をもちまして継続的に健康診断を離職後 の労働者の方々にも、一定の要件の方々に実施をさせていただいてフォローをしていきた いということです。 ○佐藤委員  そのように聞くと、そのようにやってくれるのかなと思いますが、45番でこういう特 別の健診制度を始めて、その社会的意義というか、政府というか、行政としての責任感も あってやられたことだと思うのです。そういうことから考えたら、アスベスト問題は終わ っていないと私たちは考えているのですが、そのもう一方のほうで継続するにしても、か なり周知されたのではないかとここに書かれているように、私はとてもそんなふうに思っ ていないのです。実際に生きていられる方と言うと失礼ですが、離職された方でそういう 重い病気を持っている人、そして亡くなって剖検しないことにはわからない人はたくさん いるわけです。そういう人たちのことを考えるのであれば、はっきり言って、政府も石綿 対策については世界的に見ても遅れていたということを認めていたわけですし、特別の新 法もつくられたわけだし、そういうことから考えたら、何も、たくさんやって悪いことは ないわけで、これからももっとこの事業を通じながら、ここに「テレビ、新聞」云々と書 かれているように、大きく呼びかけていく事業があってしかるべきではないか。若干、金 額を減らすにしても、これは私の不勉強だったかわかりませんし、管理課長からもあまり 説明を聞かなかったように思うのですが、平成18年度で終わりだとは思ってもいなかっ たこともあって、それは認識不足なのかもしれませんが、いくらでも補正は組めるわけで すし、もう一度考え直されてそれなりの周知をやっていただきたいと思うのです。現実に、 アスベストを診断する医療機関というのは、労災病院からたくさん広まったと言っていま すが、実際はまだ少ないのです。本当にそのことを読影できる先生は非常に少ない。CT をやればいいとおっしゃるけれども、私は、ある意味ではCTをたくさんやること自身は 非常に危険なことだと。直接撮影をやって、またCTをやってというようなことをやって いくことは決して被災者にとってプラスにならないと。そういう意味合いから申し上げて も、この制度については、このように断定的に書かれてしまうともう終わりのように見え てしまいますが、何とか継続のためのご努力というものはないものでしょうか。 ○労働衛生課  ご指摘でございますが、1つは、周知に関しましては、今後この健康管理手帳制度にな りましてもしっかりと周知をしていきたいと考えております。それから、ご覧いただきま すとおり、29番の健康管理手帳の事業ですが、平成18年度予算額が5億2,100万円、平 成19年度の予算額が7億9,700万円ということでかなり増額しております。これはいま 申し上げましたとおり、今年度中に石綿の健康管理手帳の交付要件を拡大、見直しいたし まして、こちらのほうで継続的な健康管理を進めていこうということで、29番の予算を 増額して対応していくことを考えているところでありまして、私どももこの健康管理手帳 制度がより円滑に進みますよう周知に努めてまいりたいと考えております。 ○松井委員  部会長、時間も限られておりますので使用者側委員も発言できるようご配慮賜りたいと 思います。 ○佐藤委員  別に、意見を抑えているわけではありませんから。 ○労災管理課長  この問題についてはまた個別に佐藤委員にご説明に上がるように考えます。 ○部会長  言質としてはここで意見を出してもらうことです。いま松井委員が言われたように、時 間が限られているので、皆さんの意見をひととおり伺いたいのです。佐藤委員、申し訳な いですが少し我慢していただきまして、田中委員のご意見を伺うことにしたいと思います。 ○田中委員  私も新任ですので教えていただきたいことがあるのです。いまアウトカム目標をなるべ く立てられて、実際目標値を立てられて、それに対する実績がどうだった、次の目標はど うだというご説明を頂戴したのですが、予算対予算のご説明はいただいているのですが、 その予算が実績はどうだったかというところがあって、コストパフォーマンス的にもこう いうアウトカムにこれだけの予算を使ったということではなくて、例えば給付金とか支援 金とかのデコボコも出てくるでしょうし、最後の実績をどこかでご紹介いただいて、それ を以て予算の段階で立てた次の年の予算をもう一度見直す、あるいは議論をさせていただ くということはあまりないのでしょうか。これは非常に素朴な疑問で申し訳ないのですが、 予算対予算という議論よりも実際に使った実績額との比較というのが一般的かなという のが正直な感想の1点です。  もう1つは、10頁の新規事業を拝見していたのですが、新規と廃止についてはいまま での部会でご議論いただいていたところだと思いますので私が不勉強なのですが、例えば 事業番号14番と15番について言うと、38頁の59番と60番と文言が一言、二言変わっ てはいるのですがほとんど同じ内容のように見えまして、予算金額もあまり変わらないの ですが、これをあえて新規としてリセットされている趣旨というか、いろいろなご趣旨が あると思うのですが、何か新規性があるのかないのか、その辺りを教えていただきたい。 それから、新規事業の中のいちばん上の「働き方改革トータルプロジェクト」というのは、 働き方を見直すというのは中小企業に限らず大企業も含めて非常に大きな議論だと思う のですが、2億の予算を新規に取られていますが、この辺りを具体的にどういう形で実施 される予算になられているのか教えていただきたい。3点お願いします。 ○労災管理課長  まとめて私のほうからお答えさせていただきます。予算に対して決算額なり実績がどう なっているかと。先ほど未払賃金のところで実績の話に少し触れましたが、実は、国の会 計制度上まだ前年度決算が出ません。まだ集計中でありまして、概算ならば別ですが、そ れで出ないものですから、とりあえず昨年度予算に対してどれだけ使っているか、どのぐ らいの効果をあげたかという形で整理させていただいています。おっしゃるとおり、助成 金等が多い特別会計ですと、助成金は使用者の皆さんないし使われる方の状況によって随 分差があるものですから非常に差があるのですが、逆に、事業でやる場合はあまり大きな 差はない状況が普通ですので、この中ではあまり助成金は多くありませんので、かなりの 部分、予算額に近いものとご覧いただいていいのではないかとは思っております。ただ、 決算額、実績についてはそういう形でまだ出ておりませんので、また出ました際に状況に 応じてお知らせしてご意見を賜りたいと思います。  2点目ですが、14番とか15番と違うのかというお話です。ここがまさに昨年度ご議論 いただきまして、いま開かれております通常国会において法改正を行った部分でありまし て、旧労働福祉事業で行われている事業、安全衛生、社会復帰促進、援護、労働条件確保 という4つの事業がありましたが、このうち、給付の削減あるいは被災者の社会復帰等に できるだけ直接役立つものに限定しましょうという趣旨で、単に労働条件の確保を目指し たものはできる限りやめましょうという趣旨の意見をこの部会を含めて賜ったところで す。そのために、例えば労働時間等とか新規事業場の問題につきましても、今までは、労 働条件について何でも相談を受けます、新規事業の起業の場合の相談を何でも受けます、 就業規則のつくり方から何から全部受けます、という話をやっていたのですが、今後はそ ういうのは除きますよと。完全に過労死にならないような時間の問題とか安全衛生の問題 とか、そこに集中したものにしますよということで、それを明らかにするために、かつて のものは一旦すべて廃止して出直したという形です。  3点目の、この働き方トータルプロジェクト、名前で大きいのでこれは一体何かという お話ですが、実は、これは先ほどご議論いただいた助成金そのものでありまして、これを 通じて中小企業のほうを見直そうということになっています。本来は、これと法改正と併 せて両輪で全体の働き方ということになろうかと思いますが、特会の事業として出てくる 部分はこの部分だけですので、この名前の特会部分がこういう形になっているとご理解い ただければと思います。 ○田中委員  いまのところで、先ほどの議題の最初のところで議論させていただいた内容とこの働き 方の目標の立て方が、正直申し上げて、何となくピンとこなかったのです。先ほどは400 件中200事業所ぐらいを念頭に置いていますと言って、こちらだと是正が図られていると する事業主の割合が80%という目標を立てられていてすんなりフィットしなかったので、 先ほどのだけなのかというところが少し疑問があってお尋ねしました。それから、法改正 でというのはわかるのですが、中小企業側からしたら、特にこの14番、15番の所を例え ば周知するときに、就業規則等はもう要らないよ、ここには来ないでね、という周知をさ れていかれるのか。何か、ユーザー側から見たら、今まで受けてきたのに今度は名前が変 わったからそこは相談範囲ではないですよ、というような形にとらえられそうな気もしま して、事情はよくわかるのですが、実質的に使う側からしたらどういうものが有意義なの かなという視点で、いろいろな財政がありますから横の連携をとってご議論されていると 思うのですが、その辺りの視点がユーザーフレンドリーな視点になられているのかどうか というところが少し気になりまして、あえてお尋ねした次第です。ありがとうございまし た。 ○内藤委員  この数値目標的な目標を立てて達成度を測るという方法は、それで評価をするという意 味ではこれで2回目なのですが、目標の立て方についてもそろそろ考え方を少し整理した ほうがいいと思うのです。例えば、この資料の8頁の9番の目標ですが、中身はともかく として、ここでは平成18年度目標を前年度実績の8.59%以下とするとして、それを達成 して8.34%になりましたと。したがって、次の目標はこの8.34%以下ですという目標の 立て方をしているのです。これは、一般的には、この誤請求率というのは何%以下である べきかというのが最初にあって、そこを目標に頑張るというのが通常の考え方です。もっ と別なことを言いますと、次の9頁の11番を見ると、平成18年度目標は回答を80%以 上得る。それが実績は94.2%得ました。しかし、次の目標はやはり80%以上を得るとい う目標にしますと。この立て方そのものは、何回か繰り返しているうちにもう少しきちん と論理が通った目標の立て方にしていかないといけないのではないか。例えば11番は 94.2%だったのだから次は95%を目指すとか、そういうのがごく普通なのですが、こう いうふうにはなっていかないのでしょうか。意見として申し上げました。 ○労災管理課長  時間も迫っていますので簡単にお答えだけ申し上げます。1つは、9番のようなタイプ のものですと、確かに、おっしゃるとおり、将来的には5%が目標とか、そういうことが あり得るかもしれません。ただ、一遍に5%を目標にして、それを達成できるかというこ とになるとなかなか難しいものがあります。特に厳しすぎる目標を設定すると、これは実 際に現場の事業をしている人間がおりますので、それを達成できないことになったときに 何が起こるかというと、実は、我々としていちばん気にしているのは、厳しすぎる目標を 立てることによって、現場が実際の業務の水準向上ではなくて、数字のほうをごまかして しまうようなことになることだけは絶対に避けないといけないということです。その点も 含めて、私どもとしては、本来は前年度の目標にある程度プラスですが、1つ目標を立て ると、大体、それ以下、みんな各々その細分化された単位で目指してくれますので、それ 以上をやる中でやっていくというようにご理解いただければと思います。いちばんひどい ものだと、間違いがなかったというふうに見過ごしてしまう、目標を達成してしまうとい う可能性さえあるということです。それから、11番の特定分野ですが、これだったかど うかはわかりませんが、前年度の実績が高い実績を達成しているのに前年度と同じ目標を 立てているものがいくつかあります。その中のパターンの1つは、実は、全体の実態調査 をしたときに相手方が求めてくるとか問題があるというふうに事業主の皆さんが思って いるのは大体8割ぐらいなのだと。そういうことがあるので、やって本当に達成できるの が8割なのだというのを前提にした目標の立て方になっているというケースがいくつか あります。それ以外のものとしては、ただ単にできたのに前年度と同じ目標を毎年立てて いるというものについては今回はないといいますか、私どもはそれはすべて直しているつ もりです。 ○内藤委員  あまり無理な目標を立てろとは言いませんが、目標を達成できなくなったら意欲が損な われるからということでは、目標の立て方が少し間違っていると思います。その点だけ申 し上げておきたいと思います。 ○松井委員  目標設定については、いま内藤委員がおっしゃられたとおりだと思います。是非、立て 方についての工夫をさらにしていただきたいというのが1点目です。また、いわゆるアウ トカムという形での目標設定ということで言うならば、1番の医療リハビリテーションセ ンターの運営などについても、退院患者の割合が8割ということではなくて、今の医療の 観点からすると入院期間の短縮や退院患者プラス入院期間の短縮という違う目標設定も あり得るのではないか。そうしたさらなる工夫をしていただきたいというのが2点目です。  それから、未払賃金の立替払事業については、長谷川委員がもうご退席ですのであえて 議論はいたしません。ただ、昨年末の建議のときにも、「なお書」ということで検討すべ きということでの事項が明記されていますので、どのような形で検討していくのか考えて いただきたいと思います。これは、特に前回の改正においては、緊急雇用対策措置という 観点から拡充が図られてきたところですが、雇用保険の基本手当の日額も削られたりとか、 周りのほかのものはいろいろな形で相当スリム化されている点もあります。使用者側とし ては、そうしたことも含めて議論をしていただかないと、ここだけが一旦決まるとずっと 同じだということだけは納得できない。それだけは申し上げておきたいと思います。 ○労災管理課長  松井委員のお話のように、確かに、目標の立て方については工夫できるところがないと は申せませんので、今後とも改善には努めさせていただきたいと思っております。ただ、 内藤委員のお話のように、やる気をなくすからということではなくて、私どもも、これは 現場を見ないでやるわけにはいきませんので、現場と本省とやる間の人間の対話が目標管 理だと思っていますので、そういう観点で対話ができるような形のものをやっていきたい ということだけです。決してサボるとかいうことではなくて、どうやったらいちばんうま くいくかということを考える。それから、松井委員のお話は、ただ退院ではなくて、あく までもこれは自宅復帰とか職場復帰ができるようになった人の数だけということで、転院 したりほかの施設へ行く患者さんはこの退院の80%という目標の中には数えていないと いうことを申し上げておきたいと思います。それから、実際の労災病院の在院日数は下が ってきております。それは診療報酬改定の影響もありまして、私どもとしても下げていく 努力もしなくてはいけないし、下げざるを得ないと思っております。ただ、実は、ここら 辺の話は、独立行政法人の評価・目標等がほかの独立行政法人の評価委員会等の場で行わ れる等の関係もありまして、現時点におきましては評価等も十分に行われていないという こともありますので、ご意見があったことは承った上でまた考えさせていただきたいと思 います。 ○松井委員  独法の評価の部分がこの事業の中で3割くらいあると思います。まだ評価ができないか ら十分に議論ができないということではなくて、期の途中であっても、独法の評価が出て きたものも踏まえて議論ができるような、そうした体制も整えていただきたいと思います。 ○労災管理課長  1つには、いま現在ある数値については隠すことなく皆様の前に提示させていただいて いるつもりです。それから、独立行政法人の評価委員会等の評価を経た上で、また皆様方 のご意見等も承るようにしたいと思います。 ○部会長  それでは、本当はもう少しご意見を伺いたいのですが、どうしてもいまここでという話 がありましたらお願いします。私も1つだけ言いたいのですが、独立行政法人の評価とい うのは総務省がやっているのです。ですが、本来は、本当の意味での専門家がやってはじ めてそれが行政に反映されるということで、そこら辺りにこの厚生労働省からどれだけ影 響力があるかということが少し心配なのです。 ○労災管理課長  実は、独立行政法人の評価は総務省が全体としてやるもののほかに、各省においてそれ ぞれ評価委員会を持っておりまして、厚生労働省についても厚生労働省所管の独立行政法 人の評価委員会を持っております。その中で、この労働関係の法人について、直にそれを いちばん見る方を含めたご意見も賜って、省の評価委員会としての評価を経た上で行って おりますので、そこは部会長のおっしゃるとおりだと思いますが、そういう形でさせてい ただきたいと思います。 ○部会長  よろしくお願いいたします。それでは、皆さんいろいろ不消化なところがあって、もう 少し言わせてくれというのもあるかもしれません。進行があまり上手ではないものですか ら、この次はもっと上手にやります。それで、あと2つほど議題がありますので、次に移 りたいと思います。定期健康診断等の項目の変更についてと、介護を行う労働者に係る通 勤災害に関する裁判の判決についてですが、事務局から説明をお願いいたします。 ○労災管理課長  資料は3つございます。資料3-1と資料3-2が定期健康診断等の項目の変更についての 資料ですので、最初に資料3-1と資料3-2についてご説明いたします。資料3-1ですが、 労働安全衛生法に基づきまして、事業者の方に定期健康診断等の実施を義務づける項目が ありますが、その定期健康診断の項目の見直しが行われました。雇入時の健康診断及び定 期健康診断の項目について、腹囲の検査、血清総コレステロール、いわゆる血中脂質検査 については、総コレステロール量に代わりまして低比重リポ蛋白コレステロール(LDLコ レステロール)、いわゆる悪玉コレステロールの検査に変わっております。それらの所要 の規定の整備が行われまして、来年の4月から施行されることとされています。これがな ぜ労災保険部会にかかわるかと申しますと、資料3-2をご覧いただきたいと思いますが、 労災保険法の本体給付の1つとして2次健康診断があります。2次健康診断は安全衛生法 の健康診断直近のものにおいて、脳・心疾患に関連する一定項目の異常があると診断され た方について2次健康診断あるいは特定保健指導を行うことになっております。その対象 者は、(1)血圧検査、(2)血中脂質検査、(3)血糖検査、(4)BMIの測定という4項目のいずれに も異常がある方ということになっております。ところが、この(2)と(4)につきまして安全衛 生法の健康診断の項目のほうが変更となった関係上、労災保険法の施行規則につきまして も一定の措置を講ずる必要があります。これにつきましては来年の4月に安全衛生法が施 行になりますので、それまでに改正を行うということですので、この秋以降、関連の資料 等も取りそろえた上でご議論いただきたいと思っております。そういう意味で本日は予告 編でございます。  それから、資料4でございます。介護を行う労働者に係る通勤災害に関する裁判の判決 についてです。これは、通勤災害において、通勤の途上に介護を行った場合に、逸脱中断 して復帰した後の者が通勤災害として認められるかどうかということです。実は、労災保 険法では逸脱中断していい中身の内容を省令で定めておりまして、今回の判決は、「日用 品の購入その他これに準ずる行為」の中に介護が含まれるという判決が大阪地裁及び高裁 において行われたものです。私ども、正直申しまして、解釈としてはいかがなものかとも 思いますが、現時点の世の中の一般的な考え方として、少なくとも、立法政策上はこれら の方について救済する必要があるというご意見が強いことも踏まえ、今後、この省令の中 身についての議論を行いたいと思っております。なお、この通勤災害の関係で介護を行っ た後の逸脱中断で私どもへの申し出があるかということについて、全労働基準監督署に確 認いたしましたところ、現時点では1件もありません。それを踏まえて、この問題は論点 も多いかと思いますので、もう少し時間をとりながらご議論をいただきたいと思っており まして、秋以降、これにつきましてもご議論をお願いしたいと思っております。以上2つ、 いわば予告編でございます。 ○部会長  ということで、この2つの議題は予告編だそうですが、その前に何かご意見があればお 願いします。 ○松井委員  最初にご説明のありました定期健康診断の項目の変更についてであります。安全衛生分 科会でも指摘いたしましたが、BMIの代替指標として腹囲を入れるということについて、 アメリカからは腹囲における診断基準が日本のものはおかしいということまで言われて おります。そこについて本当にどのような形でやっていくのか、厚生労働省としてどうす るのかということを労働衛生課にも健康局のほうにも申し上げているのですが、いまだに 回答がありません。このままずっとやっていくような感じがするのですが、それは今回の これをやるときには十分慎重に議論してほしい。それだけお願い申し上げておきたいと思 います。 ○漆原氏(長谷川委員代理)  いま発言がありました定期健康診断のところなのですが、私どものほうの考え方として は、労働者にとっては職場が1日の3分の1、8時間以上過ごす場でもありますので、そ ういう意味で、生活習慣に大きな影響を与えるのが今の職場の環境であって、また、その 現行の法律でも成人病の予防や脳・心臓疾患の対策のための健康診断項目を追加していき ながら現在に至っている。そういうことに鑑みれば、今回の追加項目は合理性があるので はないかと思っております。ただし、今後は、いろいろな問題点も指摘されておりますが、 受診しやすい実施方法になっているか。それから、これは腹囲だけではないですが、判定 方法の精度改善が常に行われているか。あるいは、個人情報保護が適切であるか。そうい うことを配慮しながら適切に運営するようお願いしたいと思っております。 ○部会長  争点の予告編も出たようです。もう1つの介護を行う労働者に係る通勤災害に対する裁 判の判決についてのほうで皆さんからご意見、あるいはご注意いただく点があれば承りた いと思います。よろしいでしょうか。これも普通の常識で考えたらそんなことがあるのか なという、そういうところですので、時間をかけて議論しなければいけないところですが、 秋以降、たぶん9月ごろから盛んに火花を散らすことになるのではないかと思います。そ れでは、議論はこれまでにして、事務局から報告をお願いいたします。 ○職業病認定対策室長  それでは、私から資料5、資料6、併せまして一括して報告させていただきます。資料 5が脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況(平成18年度)です。資料6が石 綿による健康被害に係る給付の請求・決定状況、これも平成18年度分です。概略ご説明 いたします。資料5の2頁ですが、平成18年度の脳・心臓疾患に係る労災請求件数は938 件となっております。平成17年度に比べて69件、7.9%の増加になっております。支給 決定件数も355件と、25件増加している状況です。この結果ですが、請求件数、支給決 定件数ともに過去最高の状況ということです。3頁ですが、これは業種別に請求・支給決 定の状況を見たものです。製造業、建設業、運輸業、卸売・小売業がいずれも100件を超 える請求という状況です。支給決定件数は運輸業が依然として最も多くなっておりまして、 前年度比12件の増で97件、全体の27.3%を占めているという状況です。4頁ですが、こ れは職種別に見たものです。技能職、運輸・通信従事の請求が多く出ております。次いで 専門技術職となっている状況です。この3つの職種で全体の50.2%、半分を占めている 状況です。5頁ですが、これは脳・心臓疾患の年齢別の請求並びに支給決定状況を見たも のです。年齢階層別では脳・心臓疾患の好発年齢と言われております50歳代の請求が377 件、同じく好発年代と言われている40歳代の請求が242件、この2つの階層で全体の3 分の2を占めている状況です。支給決定も、同じような40歳代、50歳代で多く出ている 状況です。6頁ですが、これは時間外労働時間数別にどのような認定状況にあるかを見た 表です。平成18年度の支給決定件数355件のうち、長期間の過重労働により支給決定し た323件につきまして、時間外労働時間数別に集計したものです。1カ月平均の時間外労 働時間数で最も多いのは80時間から100時間の116件、次いで100時間から120時間の 101件となっている状況です。7頁ですが、都道府県別の状況です。これは一目していた だきますとわかりますように、大都市での請求、支給決定が多いという状況です。  続きまして、精神障害等についてご説明いたします。8頁ですが、精神障害等に係る労 災請求件数は819件、平成17年度に比べて163件の増加となっております。併せまして、 支給決定件数も205件ということで、78件増加したという状況で累増傾向が見られる状 況です。ちなみに、自殺案件ですが、労災請求件数が176件でありまして、平成17年度 に比べると29件、19.7%の増加となっております。支給決定件数も66件ということで 24件の増、57.1%の増加でした。これはいずれも先ほどと同じく過去最高の水準という ことです。9頁ですが、これは精神障害につきまして業種別に見たものです。業種別では 製造業と卸売・小売業の2業種の請求が多いという状況です。ともに150件近い請求が出 ている状況です。支給決定を見ましても、最も多いのが製造業になっております。10頁 ですが、これは職種別に精神障害について見たものです。多いものでは専門技術職、事務 職の2職種が多いという状況です。ともに200件近い状況です。次いで技能職という順に なっております。支給決定件数を見ますと、専門技術職が最も多いという状況です。11 頁ですが、これは年齢階層別に精神障害を見たものです。年齢階層では、先ほどは脳・心 臓疾患では40歳代あるいは50歳代と申し上げましたが、別に好発年齢というものがあり ませんで、いちばん多いのが30歳代の請求が283件という状況です。支給決定の状況を 見ましても、30歳代が増加している状況が見てとれるかと思います。12頁は都道府県別 に見たものです。これは脳・心臓疾患と同じような大都市圏で多いという状況です。  続きまして、資料6の石綿による健康被害に係る給付の請求・決定状況についてご説明 いたします。1点目は、特別遺族給付金の関係です。2枚目ですが、ご承知のとおり、平 成18年3月に「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づきます特別遺族給付金 の請求、それ以降の決定状況ということです。したがって、時効によって労災補償を受け る権利が消滅した遺族の方々に対する救済措置ということになります。法律施行日である 平成18年3月27日から平成19年3月末までの1年度間より少し多いという状況で集計 をさせていただいております。請求件数が1,453件ありました。このうち、1,364件の決 定を行っております。支給決定の疾病別の内訳といたしましては、中皮腫が569件、肺が ん272件、石綿肺が41件という状況でした。2点目が労災保険給付、これは本体給付の ものですが、請求・決定状況です。2枚目の2ですが、これは平成18年度1年間におけ る肺がん、中皮腫に係るものを見たものです。請求件数が1,715件。同じく、平成18年 度1年間の支給または不支給の決定状況が2,207件。そのうち、業務上とした1,796件に ついて見ますと、業務上と決定した肺がんが790件、中皮腫が1,006件という状況です。 なお、決定状況が請求件数よりも多くなっておりますが、これは前年度からの繰越しが出 ているということです。3枚目ですが、これは特別遺族給付金に係る都道府県別の状況で す。4枚目ですが、これは労災保険給付に係る都道府県別の状況です。5枚目ですが、こ れは労災保険給付の石綿による肺がん及び中皮腫の請求・決定状況を過去10年間時系列 的に見たものです。平成17年度以降急増ということが見てとれると思います。平成17年 度、平成18年度ともに1,700件台にあります。6枚目ですが、これは業種別の支給決定 状況を労災保険法及び石綿救済法それぞれについて見たものです。業種別は最終ばく露事 業場の業種で分類させていただいております。製造業、建設業が多数を占めている状況が 見てとれるかと思います。以上、平成18年度の脳・心臓疾患、精神障害並びに石綿につ きましてご報告させていただきました。 ○部会長  ありがとうございました。いまのご報告で何か疑問点、わからない点がありましたらご 質問を受けますが、いかがでしょうか。統計的な数値ですので、もし何かありましたらこ の会以降でもお問い合わせいただければお答えすることができると思います。  本日用意した議事と報告事項は以上です。今日はこれで閉会にいたします。本日の議事 録の署名委員は労働者代表の齊藤委員、使用者代表の田中委員にお願いしたいと思います。 皆様、お忙しいところをありがとうございました。