登録販売者は、医薬品の販売の最前線で実際に購入者等に対して情報提供及び相談対応を行うものであり、確認すべき知識は実務的な内容のものとすることが必要である。
出題内容に関し、具体的に留意すべき事項は以下のとおりである。
平成19年6月26日
平成18年第164回国会において、薬事法の一部を改正する法律(平成18年法律第69号)が成立した。
この薬事法改正は、一般用医薬品の販売に関し、リスクの程度に応じて専門家が関与し、適切な情報提供等がなされる実効性ある制度を構築することを主眼としている。このような観点から、改正薬事法においては、一般用医薬品の販売にふさわしい、薬剤師以外の専門家として、登録販売者が位置づけられており、その資質を確保することは、一般用医薬品の販売制度の実効性を担保する重要な要素の一つとなっている。
そのため、都道府県において試験を行い、一般用医薬品の販売又は授与に従事しようとする者がそれに必要な資質を有することを確認することとしているが、その試験制度に関する共通の細則は政省令で規定することとされており、また、本法律案に関する参議院厚生労働委員会における審議では、「国の関与の下に、都道府県によって難易度等に格差が生じないようにするとともに、その内容についても一定の水準が保たれるよう指導を行うこと」との附帯決議がされたところである。
このような背景の下、厚生労働省は、本検討会を設置し、登録販売者試験に関し、試験の出題範囲、試験の実施方法、受験資格等について、各検討項目ごとに、医薬品の販売に関係する団体から意見を聴取しつつ精力的に検討を重ねてきた。
今般、その結果を取りまとめたので、以下のとおり報告する。
試験方法については、筆記試験で行うこととし、実地試験や面接等は求めないことが適当である。
また、筆記試験については、正誤が客観的に判別できるものとし、かつ、多数の受験者に対応したものとして、真偽式や多肢選択式などの方法により行うことが適当である。なお、一般用医薬品の販売等に必要な知識を適切に理解していることを確認するため、単に知識の有無を確認するのみでなく、事例形式により知識の活用を求めるなどの出題方法等を工夫することが望ましい。
試験の実施回数・時期については、持続可能な制度とすることや受験希望者の受験機会の確保及び均等化を図る観点から、原則として年1回以上、定期的に実施することが適当である。
なお、登録販売者試験の円滑な運用が確認されるまでの間(特に初年度)は、受験機会の確保を図る観点から、以下の点に留意した上で、年複数回の実施が望ましい。
[1] 各都道府県により試験回数が異なると、受験機会の均等化が図られないことから、都道府県間で試験実施回数及び時期を調整すること
[2] 試験の複数回の実施による各都道府県の事務負担の増加を考慮し、複数回の実施を可能とするため、試験問題の作成等について事務量軽減の工夫が必要であること
試験項目としては、以下のものが必要である。
[1] 医薬品に共通する特性と基本的な知識
[2] 人体の働きと医薬品
[3] 主な医薬品とその作用
[4] 薬事関連法規・制度
[5] 医薬品の適正使用・安全対策
試験項目ごとの試験の出題範囲については、別紙1の範囲とすることが適当である。
また、当該出題範囲において、都道府県ごとや試験実施回ごとに試験問題の難易度等に格差が生じないようにするため、国が、さらに具体的な出題範囲を示した試験問題の作成に関する手引き(以下「試験問題作成の手引き」という。)を作成するとともに、都道府県が試験問題の作成に当たり参考となるよう、試験問題作成の手引きに準拠した例題を作成することが望ましい。
なお、試験問題作成の手引きは、薬事法に基づき登録販売者が行う業務に関し、最低限必要な知識を試験項目ごとに整理した内容とし、医薬品に関する新たな情報や制度改正が行われた場合には、適宜改正することが求められる。
出題に当たっては、試験問題作成の手引きに基づき、例題を参考にしつつ、次の事項に留意することが望ましい。
登録販売者は、医薬品の販売の最前線で実際に購入者等に対して情報提供及び相談対応を行うものであり、確認すべき知識は実務的な内容のものとすることが必要である。
出題内容に関し、具体的に留意すべき事項は以下のとおりである。
[1] 販売時に購入者に適切な情報を提供するために必要な知識
情報提供等を行うために必要な具体的な知識の範囲としては、以下のアからウに掲げるものが必要であり、これらの知識を問うような試験問題とすることが適当である。
ア 一般用医薬品の種類ごとに、主要な成分について、効能・効果、副作用などの大まかな内容
i 主要な成分については、第二類医薬品及び第三類医薬品に分類される医薬品の販売実態に照らし、主な薬効群としてみれば、ほとんどのものが含まれる範囲とする。
なお、この範囲外の第二類医薬品及び第三類医薬品に含まれる成分については、当該医薬品を販売する薬局開設者又は販売業者において、効能・効果、副作用などに関し、製造販売業者等から必要な情報を入手した場合、それを登録販売者が理解し、必要な準備を行うことにより、購入者等に対する情報提供がなされるべきである。
ii 副作用の発生及び重篤化を避けるため、まず、医薬品の効き目や安全性に影響を与える要因(不適正な使用と有害事象、他の医薬品や食品との相互作用、小児や高齢者などにおける留意点等)について理解していることが必要である。
iii 有効成分以外の添加物についても、望ましくない作用が生じるおそれに関して、使用上の注意に記載されているものに対する知識は必要である。
iv 第一類医薬品については、登録販売者が販売又は授与するものではないことから、副作用の発生及び重篤化を避けるために留意すべき事項(以下イ)において、第二類医薬品又は第三類医薬品との併用を避ける必要がある場合等、その適正な使用のための必要な知識や理解を確認することが適当である。
イ 副作用の発生及び重篤化を避けるために留意すべき事項(服用に注意が必要な人や服用してはいけない人(年齢、妊娠の有無等)、服用方法、併用してはいけない薬剤、副作用の初期症状など)
i 副作用の発生を避けるために留意すべき事項としては、添付文書等に記載されている内容を基本とする。
ii 第二類医薬品又は第三類医薬品の使用に際し、第二類医薬品及び第三類医薬品以外の医薬品(医療用医薬品及び第一類医薬品を含む。)や食品との相互作用を含め、望ましくない作用が生じるおそれに関して、使用上の注意に記載されていることに対する知識が必要である。
ウ 一定期間服用しても症状が改善しない場合の処置方法
i 一般用医薬品は、軽度の体調不良又は健康保持のため、需要者の選択により、使用されるものであることを理解していることが必要である。
ii 一定期間服用しても改善しないことを知った場合には、引き続き服用を続けることにより、適切な医療の提供を受ける機会が損なわれることにつながることについて理解していることが必要である。
また、添付文書や外箱表示等の内容を理解し、メーカー等から提供される適正使用情報を活用して、購入者等に対して個々の状態等に応じて適切に説明することができる知識が必要である。
さらに、情報提供や相談対応の実効性を高める観点から、コミュニケーションの重要性を理解するとともに、以下のような対応における具体的なポイントを理解していることが必要である。
ア 医薬品の適正な使用方法を情報提供や相談対応するために、購入者から聞き出すことが求められる情報(購入者が使用者本人か否か、治療中か否か、アレルギー歴など)
イ 購入者等が十分にリスクを理解して医薬品を適正に使用することができるよう、分かりやすい表現などを用いて情報提供や相談対応を行うこと
加えて、医薬品の適正使用を図る観点から、乱用されるおそれが指摘されている医薬品とその特性、販売に際しての留意点について理解していることも必要である。
[2] 副作用等に適切に対処するために必要な知識
購入者等から副作用等によると思われる有害事象の訴えがあったときには、その医薬品の使用の中止を促し、医療機関への受診勧奨を行うこと等の対処方法を理解していることが必要である。
また、副作用による重篤な健康被害を生じた場合は、購入者等に対して、医薬品副作用被害救済制度について制度の仕組み(救済給付の対象範囲や種類、必要となる書類、手続き等)や申請窓口等につき説明できる基本的な知識が必要である。
さらに、医薬品の副作用と疑われる情報を入手したときに、薬事法に基づく厚生労働大臣への報告を行うための知識も必要である。
[3] 薬事関連法規を遵守して医薬品を販売等するために必要な知識
登録販売者は、一般用医薬品の販売又は授与に従事する者であることから、登録販売者の義務や、医薬品の販売に関し遵守すべき薬事関連法規について理解していることが必要である。
このような知識の具体的な範囲としては、
は必要である。
[4] 上記[1]から[3]までの知識を身につけるために必要な基礎的な知識
上記のような知識を的確に身につけるため、医薬品に関する基礎知識や、人体の構造と仕組み、医薬品が働く仕組み、医薬品の安全対策等の基本的事項について理解していることが必要である。
医薬品に関する基礎知識としては、医薬品が効能効果を有する一方で、副作用等のリスクを有すること、食品(いわゆる健康食品を含む。)等の医薬品以外の物との性質の違いやその違いに基づき取扱いに注意が必要であることなどについて理解していることが必要である。
また、薬害の歴史などに関する知識や、医薬品を販売等する専門家として倫理的側面から求められる販売方法などについて理解していることも必要である。
試験問題数については、各試験項目に関し網羅的に知識を有することを確認するため、各試験項目において必要となる知識の分量に応じて、偏りが生じることがないよう、問題数を割り当てることが適当である。また、試験時間については、原則として試験問題数に応じたものとする。
各試験項目の試験問題数や試験時間については、以下のような配分が考えられる。
試験項目 | 出題数 | 時間 |
医薬品に共通する特性と基本的な知識 | 20 | 40分 |
人体の働きと医薬品 | 20 | 40分 |
主な医薬品とその作用 | 40 | 80分 |
薬事関係法規・制度 | 20 | 40分 |
医薬品の適正使用・安全対策 | 20 | 40分 |
合 計 | 120 | 240分 |
登録販売者に最低限必要な知識として、出題範囲があらかじめ具体的に示され、その中から出題されることとなれば、7割程度の正答率を求めることが適当である。
また、登録販売者の業務に必要となる知識を網羅的に出題する各試験項目ごとに一定割合以上の正答率がなければ、他の試験項目が一定割合以上の正答率があったとしても不合格とすることが望ましい。
さらに、医薬品の不適正な使用による薬物乱用に関する試験問題など、確実に理解していなければ特に公衆衛生上危害を生じるおそれがあるものについては、全体の合格基準とは別に、正答しなければ不合格とすることも検討することが望ましい。その場合、具体的にどのような内容であれば、正答しなければ不合格とすることとするのかなどを慎重に検討し、都道府県ごとの差異等が生じないようにすることが必要である。
試験問題は、都道府県間で難易度等に格差が生じないようにし、その内容についても一定の水準が保たれるようにするため、各都道府県は、国が作成する「試験問題作成の手引き」・「例題」に準拠して作成することが適当である。
また、試験問題の作成に当たっては、一般用医薬品の販売に即した実務的な内容とするため、各試験項目について専門的知識を有し、薬局及び医薬品の販売業の許可業務、薬事監視業務に関する経験や知識を有する職員等を活用するとともに、学識経験者の協力を得ることなどにより、客観的なものとすることが望ましい。
さらに、都道府県によって難易度等に格差が生じないようにするとともに、その内容についても一定の水準が保たれるようにするため、また、複数回の試験実施に伴う都道府県の事務負担を軽減するため、登録販売者試験制度の円滑な運用が確認されるまでの間は、国が、都道府県が試験問題を作成する際に協力、助言を行うことが適当である。
具体的には、都道府県が協力して、その代表と有識者からなる検討組織を設け、それに国が参加することもひとつの方法であり、その検討組織において、各都道府県が共同して試験問題を作成することも考えられる。
[1] 実務経験
登録販売者は、購入者等の状況を観察し、又は聞き出し、その状況を踏まえて、必要な情報提供又は相談対応を行うことにより、購入者等の適切な医薬品の選択を支援する役割を担っており、その役割を適切に果たすことを通じて、医薬品の販売等に関し保健衛生上の問題が生じることを防止するものである。
登録販売者は、試験に合格し都道府県に登録後、すぐに一人でも、店舗販売業又は配置販売業の許可を受けた店舗等で医薬品を販売等することができる。そのような場合にも、その役割をしっかりと果たすことができるようにするためには、あらかじめ、専門家である薬剤師又は登録販売者の管理・指導の下、受験資格として実務経験を積むことを通じて実践的な資質を身につけている必要がある。具体的には、医薬品の販売等の現場において、医薬品の取扱いを知ることや、購入者等からの要望を聞きそれを専門家に伝えて応答の仕方を知ることなどを通じて座学では習得しにくい知識を身につけ、かつ、習得した知識の実践への生かし方を学ぶことなどが考えられる。
他方、受験資格には、新たに医薬品の販売等に携わろうとする者の参入を制約する効果もあり、実務経験要件を課す場合には、その期間は必要最低限のものとすることが必要である。
このため、受験資格として、1年間の実務経験を求めることが適当である。
ただし、今回の薬事法改正の趣旨にかんがみ、医薬品の販売等は薬剤師又は登録販売者により行われることが基本であり、それ以外の者が行う業務は、薬剤師又は登録販売者の管理・指導の下で、医薬品の購入者等に対して、薬剤師又は登録販売者が行う一般用医薬品を販売又は授与する業務に関し、その補助として行うものに限られることに留意が必要である。この点を明らかにするために、着衣の有無や色、名札等において、購入者が非専門家であることを容易に認識できるように工夫することが求められる。
また、制度の実効性を担保するため、上記の実務経験の確認は、受験資格として求める内容を伴ったものであることを客観的に証明できる方法によることが必要である。
[2] 学歴
一回の筆記試験だけでは、知識を具体的に活用して必要な情報を購入者に伝える能力、試験に合格するための基礎知識、社会性等の基礎的な素養を担保することが困難である。
このため、受験資格として、高校卒業程度を求めることが適当である。なお、高校卒業程度の要件を満たさない場合には、高校卒業程度の代わりに3年間の医薬品の販売に関する実務経験を有していることを求めることが適当である。
薬学教育における6年制課程の卒業者については、4年制から6年制への薬学教育年限の延長に伴い、病院・薬局における実務実習をはじめ、教育課程の充実が図られており、その教育課程には登録販売者に求められる知識の習得が含まれていると考えられるが、登録販売者にふさわしい資質を厳正に確認するという原点に立てば、例外を設けることなく都道府県が実施する試験により資質を確認することが適当である。このため、登録販売者試験を免除する者に該当するものは設けないこととすることが適当である。
なお、薬学教育における6年制課程の卒業者については、その教育内容に実務実習が含まれていることから、当該者に対しては、実務経験を求めないこととすることが適当である。
本検討会では、登録販売者試験制度において確認すべき資質として、どのようなものが必要であるかといった観点から検討をしてきた。
その検討の中では、この試験制度の中で確認するものではないものの、一般用医薬品の販売等に従事する者の全般に対して、国民の保健衛生の向上の観点から、一般用医薬品の適正な使用を支援するために、必要となる倫理観やあるべき姿勢を求める意見も出された。
本検討会としては、登録販売者試験制度の施行により、購入者等の適正な医薬品の選択を支援するため、適切な情報提供又は相談対応を行うのに必要な資質を有していることが十分に確認されるとともに、登録販売者になろうとする者に対しては、生命関連商品である医薬品を扱う者にふさわしい倫理観やあるべき姿勢を身に付けた上で、医薬品の販売等に携わるよう期待する。
最後に、当検討会は、その設置の趣旨にかんがみ、登録販売者試験を実施する都道府県において、この報告書の趣旨を踏まえた対応がなされることにより、また、国がそれに必要な協力、助言を行うことにより、都道府県ごとの格差なく適切な情報提供及び相談対応がなされる基盤が整備され、国民の保健衛生の向上が図られることを期待する。
別紙1
I 医薬品の本質
II 医薬品の効き目や安全性に影響を与える要因
III 適切な医薬品選択と受診勧奨
IV 薬害の歴史
I 人体の構造と働き
II 薬の働く仕組み
III 症状からみた主な副作用
I 精神神経に作用する薬
II 呼吸器官に作用する薬
III 胃腸に作用する薬
IV 心臓などの器官や血液に作用する薬
V 排泄に関わる部位に作用する薬
VI 婦人薬
VII アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む)
VIII 鼻に用いる薬
IX 眼科用薬
X 皮膚に用いる薬
XI 歯や口中に用いる薬
XII 禁煙補助剤
XIII 滋養強壮保健薬
XIV 漢方処方製剤・生薬製剤
XV 公衆衛生用薬
XVI 一般用検査薬
I 医薬品の販売業の許可
II 医薬品の取扱い
III 医薬品販売に関する法令遵守
I 医薬品の適正使用情報
II 医薬品の安全対策
III 医薬品の副作用等による健康被害の救済
IV 一般用医薬品に関する主な安全対策
V 医薬品の適正使用のための啓発活動
別紙2
議題1.検討会座長選出及び座長代理指名
2.登録販売者試験の概要
3.ヒアリング
4.試験の出題範囲
議題1.ヒアリング
2.試験の出題範囲
3.試験の実施方法及び受験資格
議題1.ヒアリング
2.試験の実施方法及び受験資格
議題1.論点の整理
議題1.ヒアリング
2.「登録販売者試験実施ガイドライン作成検討会
報告書(素案)」について
3.「試験問題の作成に関する手引き(未定稿)」
について
議題1.「試験問題の作成に関する手引き(未定稿)」
と「例題」について
2.「登録販売者試験実施ガイドライン作成検討会
報告書(案)」について
別紙3
芦野 研治 | 東京都福祉保健局健康安全室薬務課長 (平成19年3月まで) |
|
◎ | 井村 伸正 | 北里大学名誉教授 |
神田 敏子 | 全国消費者団体連絡会事務局長 | |
倉田 雅子 | 納得して医療を選ぶ会 | |
下村 壽一 | 東京都福祉保健局健康安全室薬務課長 (19年4月から) |
|
田頭 和恵 | 愛媛県今治地方局健康福祉環境部企画課長 | |
増山 ゆかり | 全国薬害被害者団体連絡協議会 | |
○ | 松本 恒雄 | 一橋大学大学院法学研究科教授 |
望月 眞弓 | 共立薬科大学教授 | |
山添 康 | 東北大学薬学部教授 | |
(◎:座長、○:座長代理) | ||
(敬称略、五十音順) |