07/06/28 平成19年6月28日医道審議会医師分科会医師臨床研修部会議事録 医道審議会医師分科会医師臨床研修部会 日時 平成19年6月28日(木) 10:00〜 場所 東海大学校友会館朝日・東海の間 ○医師臨床研修専門官 定刻になりましたので、ただいまより「医道審議会医師分科会 医師臨床研修部会」を開催いたします。本日は、先生方にはご多忙のところご出席いた だきまして誠にありがとうございます。本日の議事に関しましては、「医師臨床研修制 度に係る検討について」ということでお願いいたします。以後の議事進行は齋藤部会長 にお願いいたします。 ○部会長(齋藤) 今まで、この部会は新医師臨床研修制度の見直しを議論してきたわ けですが、大変重要な課題であるということで、幅広く多くの方から参考意見を伺って まいりました。いままでに15名の方のご意見を伺ってまいりましたけれども、本日は 16人目として、国際医療福祉大学医学教育研修センター長、そして日本医学教育学会の 会長である齋藤宣彦先生からご意見を伺うことを予定しております。その後、いままで ご議論いただいたことを整理しました論点整理を中心に議論を行います。議事の進め方、 あるいは資料について事務局から説明をお願いいたします。 ○医師臨床研修専門官 本日の議事についてと、進行方法について簡単にご説明いたし ます。本日の冒頭は、齋藤宣彦参考人から30分間、医師臨床研修制度についての現状と 意見ということでお話をいただきました後、各委員からのご質問ということでご討議を お願いいたします。その後、臨床研修制度に関する論点整理ということで、いままでの ヒアリング等で出ました意見を事務局でまとめましたので、その説明を20分ほどさせて いただき、その後各委員でご議論いただければと考えております。最後に、これも事務 局でまとめさせていただきました、研修医の募集定員のところを10分程度説明させてい ただき、これに関してもご議論をいただきたいと思っております。  今ご説明させていただきましたことを進めるための資料として本日用意しております のが、議事次第、座席表、委員名簿、参考人名簿、資料1「医師臨床研修制度の見直し に向けて」ということで齋藤宣彦先生の資料、資料2「臨床研修制度に関する論点整理」、 資料3「研修医の募集定員について」です。参考資料として「前回議事録(案)」があり ます。議事録に関しては、持ち帰って見ていただきまして、訂正等をいただけましたら と思います。以上です。 ○部会長 ただいまの説明につきまして、ご意見、ご質問はございますか。 (特に発言なし) ○部会長 それでは、早速齋藤宣彦参考人からお願いいたします。 ○齋藤参考人 本日は、こういう高い席に私のような者をお呼びいただきましてありが とうございます。愚見を申し上げるチャンスに感激しております。  皆様方の資料には入れていないのですが、齋藤宣彦というのは一体どんな輩であろう かと思っている方もいらっしゃると思います。私の本職は内科医で、糖尿病や高脂血症 をやっております。昭和42年の卒業ですから、まさに国家試験ボイコット組です。イン ターン闘争と自主研修の世代です。  卒業した大学の内科学の教室に入り、そこで講師までしました。その後、もう1つの 私立医科大学に移り内科の教授をしました。カリキュラム関係の仕事なども当然やりま した。それから、分院の院長などもいたしましたが、昭和40年代から医学教育学会に関 わるようになりました。  いま、は日本医学教育学会の責任者をしておりますが、34年前から始まった医学教育 者のためのワークショップ(富士研)の責任者もしております。それから、各地で臨床 研修指導医の養成の講習会が盛んに行われていますので、それのお手伝いもさせていた だいております。    新医師臨床研修制度については、いくつかの会議で私はその歴史についてを申し上げ てまいりました。インターン制度はなぜ崩壊してしまったのか。カリキュラムがない、 指導体制がない、生活保障がない、この辺は先生方もよくご存知のことと思います。昭 和6年に東京大学を卒業された塚本憲甫先生が、第1回の臨床研修についての委員会の 座長を務められたように記憶しております。その後が日野原先生になります。残念なこ とに各大学、あるいは各臨床研修指導医講習会に伺いまして、「この30有余年の歴史に ついてご存じでしょうか」と伺ってみると、ご存じでない方が非常に多いです。  つまり、そこまでのステップというのが私は非常に重要であったと思っています。総 合診療方式にしたほうがよろしいというお話があり、その間に処遇はどうするのだろう か、あるいはプログラムはどうするのだろうか、随分いろいろな議論があって現在に至 ったことだと認識しております。  もう1つは、昭和62年に文部省の「医学教育の改善に関する調査研究協力者会議」の ほうで「期待される医師像」として12項目が文章になっております。これが画期的なこ とだと思うのは、医師としての到達目標がはじめて文字で示されたということです。貴 重なものであったと思っています。  今の臨床研修制度はそのものは良い方向に向かいつつあるが、、卒前のクリニカル・ クラークシップとの継続性が課題である、というのは皆さんおっしゃることです。クリ ニカル・クラークシップを充実させれば、臨床研修の内容にも自ずと調整が必要ではな いかという考え方です。  「必修化」したことそのものについては、私たちの周りでは特にそれを変更する必要 は全くない、問題があるのであればその運用を考えることでよい、というのが統一見解 と言っては変ですけれども、ノーという意見のないところです。それから、「必修化」 を診療科でもって捉えるきらいがあります。ところが、研修目標のほうは、診療科別に は分けておりませんので、これは掲げてある目標をクリアするという考えをもっと前に 出してもいいのではないかということです。  研修目標がしっかり明示されているということは極めて大切なことであります。それ が早くからあってしかるべきであった。ただし、いまの卒前から卒後に至る医学教育の 目標集というのは3つあります。1番目は臨床実習まで、あるいは医学部卒業までの目 標を示したところの「モデル・コア・カリキュラム」というのがあります。2番目は、 国家試験の「出題基準」です。3番目は、「研修目標」です。つまり3つの段階になって いると考えますが、1番と2番の整合性があまりきちんとしておりませんでしたので、 平成17年の富士研の医学教育者のワークショップでは、これについての整合性について 検討いたしました。1番から2番をやったのですが、3番までの整合性というのは、まだ 検討が不十分です。  いまの研修目標を時代に合わせて見直していかなければならないのではないかと考え ます。例えば、国家試験のガイドラインについては、4年に一度の改定があります。モ デル・コア・カリキュラムについては、改訂のための恒常的なワーキンググループが立 ち上がると承っております。そういうことから考えますと、臨床研修の目標もそれに合 わせて見直していくための、恒常的な組織が必要であろうと考えます。  そういうことをすることにより、その3つの目標のずれがなくなる、あるいは重複が なくなる、欠落がなくなるであろうと考えます。ですから、「医学教育の到達目標の一 貫性」という部分の議論を十分にしていただきたいと思っています。実際にこれは某国 立大学病院で研修している研修医の話を聞くと、地域保健で保健所へ行った、しかし保 健所側もどうしていいか困っていて見学のみであった。そうなると学生時代の実習で保 健所を回ったときと何ら変わるところはない。血液センターに行った、学生時代には行 ったことはなかったけれども、行ってみたら見学だけで終わった。「こういうものは、 卒前に下ろしていいのではないか」という現場の声があります。  研修の場所ですが、研修指定病院の評価についてはご承知のとおり、岩崎榮先生がご 苦労されました「臨床研修評価の研究会」のサーベイヤーの項目はかなり細かい項目ま でサーベイすることになっております。あそこの機能を充実させることによって病院そ のものの、いわゆる日本医療機能評価機構と同じような評価が可能であろうと思います。  さて、研修医の偏在が問題になっております。研修医が偏在しているというのは、大 学が人事権を持って研修医を回していた。また、研修病院のほうも大学に依存しすぎて いたという傾向があったという反省があるように思います。私も大学を定年になってか らは、逆に研修病院で研修医を受け取る立場になりましたけれども、確かに大学に依存 していると研修病院としては楽です。しかしながら、もう少し研修病院のほうもそれな りに成長していかなければならないだろうと思います。  地域ごとの研修指定病院については、東北厚生局のお手伝いをさせていただきました し、岩手県の研修指定病院の研修指導医講習会にも何回か伺いました。それはどうして かといいますと、1つは岩手医大の教授で、そういう指導に熱心な先生がいらしたこと。 それから県立中央病院の臨床研修の責任者のドクターが非常に熱心な方であったこと。 さらに加えて、県もそれについて熱心であったし、岩手県は県立病院が27もある所です。 そこに伺って現場の声を随分伺いました。  そういたしますと、病院群としてそこを捉えていけば、つい最近報道されたような大 船渡の病院、あるいは宮古の病院に応援を出すというようなこともうまく持っていけた のではないかと思っています。宮古の場合は、市長さんが弘前大学医学部を出たドクタ ーですから、そういう面での理解も十分できるのではないか。1つのモデル地区になり うるのではないかと私は考えています。  もう1つは研修の定員です。平成18年12月に富士の教育研修所において5泊6日で ワークショップをしたときに、参加者にテーマを投げかけました。その参加者というの は、半数が大学教員、半数が病院のドクターでした。そこでこの見直しについての提言 を考えてもらいました。これは『医学教育』誌に載せましたからお目に止まった方もい ると思います。どうやら、バタバタでもって臨床研修病院がたくさんできてしまった、 という意見を言う参加者がいました。自分の所も手を挙げなければいけないだろうと思 って手を挙げた。だけど実際にやってみると大変であるというわけです。その結果どう なったかといいますと、医学部の卒業生に比べて、研修医の定員のほうが大幅に多くな っている。まず、これをアジャストする必要があるのではないかというわけです。それ をすることによって、地域の偏在はもう少し是正できるだろうということが1つです。 それから、参加者の中には、地方の国立大学病院の方、あるいは地方の臨床研修指定病 院の方がたくさんいました。その方々のセリフであって私が申し上げているのではない のですが、首都圏あるいは大都市圏にある大学病院が、自分の大学の卒業生数の何倍も の数の研修医を採用するということを言っていました。そのために、地方の先生方は苦 労をしているというわけです。  実はその裏には、関東圏の例で申しますと、有名な進学高校の3年生で、首都圏の医 学部に行けなかった人は、地方の国立大学等に行く。その方々が卒業すると実家に近い 所にドッと戻ってくる、ということもあるらしいです。それについては詳しい数値があ るわけではありません。少なくとも1年次の研修定員は、自分の大学の卒業生程度の数 に、あるいはそれ以下ぐらいに抑えておいてくれないか、というのが富士研の参加者諸 君の意見でした。それがないと、たくさんの研修医を抱える東京の医科大学の病院とい うのは、相変わらずその関連病院を支配する立場になってしまうだろうというわけです。  それから、地域医療研修の方法については、いろいろな研修病院がそれぞれに苦労し ている。ですから、何かいい案はないだろうかということがそこでもディスカッション されました。つまり、推奨案としていろいろなモデルプログラムを出していただけると、 その中から自分たちもセレクトできる。保健所や血液センターの「見学」だけというの は、すでに医師免許を持っている研修医なのだからやめたほうがいいのではないか。  そういうことを伺って、実はこれも東北地方のかなり過疎地域の県立病院の研修医に お目にかかりました。そこで彼らは何をしたかというと、「住民健康講座」でベーシッ ク・ライフ・サポートのレクチャーを研修医がしたということでした。その方々に、AE Dの使い方を実演してもらったら、そこにいた副院長クラス以上の先生方よりよほど上手 に教えたのです。教えることは教わることであり、彼らが非常に立派にやるという成功 例です。こういうことも広く国内の皆様方に知っておいていただいたほうがいいだろう と思います。  現行の必修科目の矛盾点を洗い出して、運用を弾力的にしていいのではないか。必修 科目そのものは現行でいいという意見が多くあります。例えば、精神科の先生は、「1カ 月じゃどうもね」などと言います。「ゼロでいいんですか」と聞くと、「ゼロじゃ困る。 3カ月にしたい」と言うのですけれども、この2年間のプログラムの中で3カ月組むこと ができますかというと、実際にはできないと言います。それぞれ自分の診療科を背中に 背負っているという感じがいたします。  救急と麻酔が一つになっていることについては随分抵抗があります。もう1つ救急と いう言葉について、プライマリ・ケアと言うよりも、イメージとしては三次救急を頭の 中に描いているドクターがたくさんいるというのも現実です。私たちは、決してそうで はないのですと申し上げても、「重症の救急をやらなければならないのではないか。」 みたいに考えている方もいます。  研修の方法のうちの人的資源ですが、これは研修医に接触する可能性のある臨床歴5 年から7年以上が指導医としては一番いいかもしれませんが、この方々は全員指導医と してのトレーニングを受けていただきたいと思っています。指導医の養成の重要性は、 優秀な指導医の下にはやる気のある研修医が集まってくることからも明白です。しかし ながら、いまだにスパルタの熱血指導医が良い指導医だと考えている方も多くいます。 現行の指導医養成講習会は16時間ですけれども、あれでは十分とは言えないのではない かというのが私どもの考え方です。  では、指導医候補を集めて講義をするということですが、双方向性の講義ができれば いいのですけれども、大人数を集めて講義をするダイダクティク・ティーチング、つま りチョーク・アンド・トークの勉強会ではあまり意味がないだろうと思います。  そういうふうにして養成した指導医を大切にしていただきたい。指導医のほうが労働 超過になってしまって、研修医のメンタルケアもかなり大切ではありますけれども、指 導医のメンタルケアが必要な事例が随分出てまいりました。それはどうしてかといいま すと、指導医は臨床もやらなければならないし、医療関係の経営業務までしなければな らない、あるいは研究もしなければならないし、学会もある。そこへ持ってきて研修医 の教育もしなければならない。それで、指導医のほうがラプチャーしてしまうというわ けです。しかし、これは、指導医がやっているかなりの部分をコメディカルへの業務移 譲でうまく持っていけるのではないかと現場では思っています。  それから、指導医の教育歴・指導歴をちゃんと正当に評価していただきたいと思いま す。私が大学の医学部の教員をしておりましたときの教授の採用に当たっては、実際に 教育ワークショップでタスクフォースをしたとか、富士の教育研修所に来たとか、自分 が主催者になって指導医講習会をしたとか、そういうことまで履歴に書いてもらいまし た。実際に研修医を呼んできて、研修医に症例提示をしてもらう。その教授候補者にそ れを現場で指導してもらうということもいたしました。つまり、そういう指導医の指導 歴を正しく評価しなければいけないと思っています。  研修医のほうは、必修研修を修了しなければ医業ができない、責任ある立場になれな いということになっています。指導医のほうはどうかというと、ちゃんとした指導歴・ 教育歴がなければ、研修指定病院の役職、あるいは臨床系の大学の教員に就任できない ようにする。このぐらいの考え方を持ってもよろしいのではないかと思います。そうい たしますと、自ずと指導医の処遇の改善にもつながるのではなかろうかと存じます。も ちろん、そうなると指導医のモチベーションも向上するはずです。  それから、医師以外の人的資源の問題があります。つまり事務方です。特に総合大学 の医学部の事務方というのは、大学の中での異動があります。いままで医学部とは全く 関係のなかった方が来ます。その方は4月1日に異動してきても、いまの臨床研修シス テムなどは全く知らない。それで、チーム医療に事務方も加われというのは気の毒な話 です。  私が申し上げたいのは、スタッフ・ディベロップメント(SD)、ファカティブ・ディ ベロップメントのうちですが、スタッフ・ディベロップメントで臨床研修のサポートの 講習会、これは薬剤師、看護師、管理栄養士、検査技師、理学療法士から事務に至るま での方々に、いまの臨床研修制度をよくわかっていただいて、自分たちも研修医を育て るスタッフであるのだ、ということをご理解いただかなければならないと思っています。 臨床研修病院には、そういったSDを義務づけるのも1つの案かと思います。  それから物的資源です。これは、わかりやすいように例を示します。鎖骨下静脈の穿 刺用の人形の模型は安いのでも26万円します。臨床研修指定病院が全部これを買うわけ にはいきません。そういたしますと、限られた研修指定病院にスキルス・ラボを設置す る、あるいは国立大学では文科省が2,000万円だったと思いますけれども、お金を出し てスキルス・ラボを設置しました。  そういうものがあるわけですから、それを相互利用する。例えば、研修のオリエンテ ーションのときに、その地域の研修医を集めて一緒にトレーニングをする。そこで発行 された修了証を持って、自分の研修病院に帰っていく、というようなシステムを設けれ ば、そんなにお金もかけないでできるのではないか。そういう共用施設があれば、研修 中にも、医療安全講習会などで利用することが可能であろうと思います。  私は、お金の問題はあまり得意ではありませんけれども、研修医の手当は格段に良く なりました。以前の臨床研修研究会で、私は私立医科大学の臨床研修医の平均手当はい くらであろうかということも発表いたしました。それに比べたら格段の差です。いまの 研修医はなんと幸せなことかと思いますけれども、指導医への手当、それから研修セン ターの事務方への手当というものも考えていかなければならない。教育というのはお金 のかかるものです。  先ほどのシミュレーターの例のように研修のための物的資源というのは随分お金がか かります。買えばいいというだけではなくて、ランニングコストがかかります。それも 十分視野に入れて考えていかなければならないと思います。  それから、現在の研修制度が、地域住民の方々にどのぐらい知られているだろうか。 先ほど申しましたように、2年目の研修医が、地域の健康教育でレクチャーする。それ は、地域の人々にとってはすごくインパクトのあることです。「いやー、彼らは研修医 なんだって」と思います。それが、コミュニティ・ベイスト・ホスピタルといわれる病 院にはもっともっと必要ではないかと思います。  研修医の評価については、今いろいろな評価の制度があります。エポックという素晴 らしい制度がありますが、エポックは現場の指導医の方々に言わせると、「あれ面倒く さいね」などという声もあります。面倒くさいけれども、慣れてしまうとわりに良いシ ステムだろうと思います。研修病院の評価は先ほど申し上げました。  それから、評価法の評価、指導医の評価、研修医の評価の問題はいまはやりのプロフ ェッショナリズムで申し上げますと、それぞれのオートノミーを重視するべき問題であ ろうと思います。  大学における臨床研修は、私がおりました大学も残念なことに研修医が1学年30数名 しかいなくなってしまいました。その前までは60数名いたのですけれどもみんな出てい ってしまいました。その1つとして、大学は特定機能病院である。でも臨床研修ではプ ライマリ・ケアの目標がある。そうすると、外へ行ってみようという心が生じるわけで す。ですから、特定機能病院との整合性を考えていかなければならないだろうと思いま す。また、大学が近くのプライマリ・ケア施設と肩を組んでいくという方法も考えられ ると思います。  もう1つは、大学病院が魅力的な臨床研修病院に変貌していったかどうかという問題 ですが、これはたいそう難しい問題であります。なぜかというと、大学間に随分差があ ります。概して私立の医科大学の場合は、成績の良い人がどんどん外の病院へ出ていっ てしまうということがあります。  そのほかの問題としては地域医療です。例えば、交通が不便であっても、良い研修病 院には研修医が集まります。宮城征四郎先生の所などがその例だろうと思っています。 熱心な指導医がいます。ただ、その指導医の方々がほとんどサービスでもって一生懸命 なさっている。いまの学生たちの間には、ITで情報がサッと流れます。「あそこはいい ぞ」という噂が広がりますと、ますます集まってきます。その結果どうなるかというと、 今度は指導医のほうが疲れてしまって辞めてしまうということがあります。ですから、 地域の病院のドクター、今いるドクターを優れた指導医に育てる。それが、研修医を地 域に配置するためのよい方法ではないかと思います。それをしないで、研修医だけを地 域に持っていくというのは論外に近いと思います。  基礎医学研究は疎かになるだろうか。大橋先生はたいそうご心配のことだろうと思い ます。私どもが、入学者選抜のときに面接をしたときのことは反省しています。「あな たは、どんな臨床医になりたいですか」と尋ねていました。そのときには、「どんな医 師になりたいですか」と聞くべきだったと思っています。入学をしてから、卒前の医学 教育で、研究の面白さをどんどん学生に伝えるべきではなかったかと反省しています。 実は、その反省がCBTの試験の中で、ベーシックサイエンスの問題をもっと増やしていこ うと考えるきっかけになったと思っています。  もう1つは、医学部の医師による研究というのは、やはりベッドサイドで抱いた研究 問題からスタートする、といった考え方があってもいいと思います。現実問題として、 現在基礎医学に籍を置いているドクターの中で、昔、臨床をかなり一生懸命やっていた という先生方がたくさんいるということも事実です。  私がいま関係している施設にも、研修医が20数名おりますけれども、その人たちに「君 は2年間終わったら、ここの病院に残るか」と聞いてみましたら、残るのは20数名のう ち1人か2人しかいませんでした。「どうするのか」と聞くと、「いや、大学へ戻ります」 と言うのです。3年目には大学へ戻ろうという研修医が今年はどのぐらい出るのかと思 っています。大変いいことです。彼らが大学で何をするのか、専門医の資格を大学で取 ろうとしているのか、あるいは研究をしたいと思っているのか。もしそうであれば大変 素晴らしい方向に向かっていると思っています。  ただ、そのときに自分が卒業した大学へ戻る、というのがどのぐらい出るのかわかり ません。そこでもう一回マッチングというかシャッフルができればそれでいいだろうと 思います。自分が志しているテーマを研究している大学、あるいは大学院に向かえばい いことです。専門医の資格をどこで取るかというのは、専門医制度についてまだ専任協 のほうで一生懸命やっていますのでここは略します。  今申し上げたことの趣旨は、35年前に牛場先生、舘先生、日野原先生、吉岡昭正先生 方が始めた、当時の文部省と厚生省が唯一の共同主催でやった、医学教育者のためのワ ークショップです。これは、富士山の麓でやったわけですけれども、唯一の両省共同主 催で続けていただければいいなと思っていましたが、去年からは日本医学教育学会主催 で、両省にご後援をいただいてやっております。 先生方の中には、両省が背中合わせ であったという感想を言う方もいます。過去はそうであったかもしれませんけれども、 最近は人的交流が行われましたので、ますます医学教育の継続性という点から両省が協 力してやっていただくことをご期待申し上げたいと思っています。どうもありがとうご ざいました。 ○部会長 齋藤先生ありがとうございました。大変貴重な、また具体的なお話をわかり やすくしていただきました。それでは、ご質問、ご意見がありましたらお願いいたしま す。 ○山下委員 2つお伺いします。最後に先生がおっしゃったことは非常に印象的でした。 最初にカリキュラムで、卒前と卒後の教育のカリキュラムを見直さなければいけないと。 それが別々の縦割行政の中に入っていると。先生はいちばんそういうお立場にあると思 うのですが、どういう枠組みでそのカリキュラムを統一的にやるのかという場所をつく っておかないと、いつまで経っても進まないと思うのです。みんながやらなければいけ ないと思っていても今のままでは進まないということがあると思います。先生は、どう いう枠組みをお考えかということが1つです。  もう1つは、現場の研修医に聞くと、カリキュラムの内容はいいのだけれども、あま りにもカリキュラムが細かすぎて、変わりすぎてついていけない。人間関係などでつい ていけないということがあって、それをカリキュラムとの整合性、到達目標というのを つくっていかなければいけないと思うのです。研修医が研修しやすいようなシステムと いうのを、全体に整合性よく作っていかなければいけないと思うのです。私は、項目が 多すぎるという感覚を持っているのですが、先生はいかがでしょうか。 ○齋藤参考人 最初の3つの目標をどうやって整えていくかという問題については、モ デル・コア・カリキュラムと国家試験のガイドラインのメンバーに、私たちがしょっち ゅう顔を合わせている仲間が随分入ってきました。これは、ありがたいことだと思って います。  ある意味、そういう人事交流ができれば、別に一堂に会してやることもないだろう。 ただし、場合によってはそこで合同委員会のようなものをやって調整をしていく。言葉 一つにしても、同じ言葉にするというのは極めて大変です。学会によって用語辞典の言 葉は違います。そういうことで、学生や研修医を悩ませるわけにはいかないだろうと思 います。それは、物理的にいくらでも可能であるだろうと思っています。  2番目の研修カリキュラムの問題ですけれども、あれはもう少し練っていただいたほ うがいいのではないかと思っています。つまり、目標集はあるのですが、それを研修す るための理想的な方略集みたいなものがあってくれると、もっともっと研修医は楽に進 んでいける。自分が移動した先でカルチャーショックを受けて、デプレッシブになると いうことがなくなっていくのではないかと思っています。 ○部会長 先ほど、地域保健とか血液センターのお話が出ましたが、その辺でもう少し 実のあるような保健所の研修とかやり方があるでしょうか。 ○篠崎委員 保健所のプログラムというのは非常に重要だというので当初入れたのです けれども、この2年間実際にやってみて、それに全国保健所長会等がまとめていると思 いますが、もし1週間とか、2週間の見学なら、それは先生がおっしゃるように卒前の カリキュラムの中でやっていただいたらいいのではないかと思います。ただ先生もご指 摘のように、目的は地域保健の到達目標のところが大事なのであって、何科を回ると同 じように、保健所を回らなければいけないという意味ではないと思います。  先生が挙げられたのはいちばん悪い例かと思うのです。保健所ではもうちょっと一生 懸命やっていて、期間も長くやっている良い所もあるのではないかと期待しております。 また、そういう事例があれば報告して、それに倣った形のも取り入れてほしいと思いま す。 ○齋藤参考人 保健所長会には、かなり熱心な保健所長の先生方がいます。そういう先 生がいる所はいいのです。だから、そういう事例をもっともっと広く流していただくと いいと思うのです。それから、先ほどちょっと申し上げましたが、地域の健康教育、健 康講座の講師として研修医の諸君が行くというのは素晴らしいことだと思うのです。保 健所が主催してやったりするわけです。  いくつかの保健所の中では、「研修医が来たけれども、私たちは何をしたらいいの」と いう声が出てきています。それが現実だろうと思っています。もう1つは難しいのです が、保健師の仕事とバッティングするところが出てくるかもしれないということを伺い ました。それは、保健師が地域の住民の健康教育をやるわけです。そこは、保健師が黒 子になって後見役として来ていただいて、研修医がそこでレクチャーをすればいいこと だろうと思っていますが、そのようにいかなかったケースがあります。 ○相川委員 齋藤先生からいくつかのことをお示しいただいて、総論的にも大変重要な ことをお示しいただいたと思います。一連の3つのプログラムというのでしょうか、モ デル・コア・カリキュラム、医師国家試験の出題基準、これは目標を定めたものではな いですけれども、大体この辺のところから出るというブループリントも含めての基準が ある。また臨床研修の到達目標というのがあります。  ご指摘いただいたように、平成21年度版の医師国家試験の出題基準を準備していると ころですが先般会議がありました。これは、本年3月にまとめた医師国家試験改善検討 委員会の意見、あるいは全国の医学部長・病院長会議の意見など多くの意見を参考に検 討を始めているところです。いまは平成17年度版が生きています。  今回の出題基準に関しては、たまたま今回私が改善検討委員会の部会長をさせていた だいて、それをまとめる機会を得ました。そこでも、一連の医師の養成の過程というと ころが非常に強調されていて、モデル・コア・カリキュラム、それから国家試験、さら には臨床研修目標という一連の中で、国家試験は真ん中に位置するわけですが、そのよ うなところが強調されているので、いまよりは少し良くなると私は期待しております。  特に、先ほどもお話がありましたけれども、モデル・コア・カリキュラムに関しても レビューされております。医師国家試験とモデル・コア・カリキュラムとの医学用語の 整合性については今回かなり検討されております。先生も委員であったからご存じかと 思います。福田先生が改善検討委員会の委員に、私もモデル・コア・カリキュラム改定 の委員に入ったということで、方向性としては少し良くなっています。3番目の臨床研 修の到達目標とのすり合わせというのは、これからやるべきことかと思っております。  各論ですけれども、たまたま私の専門分野のご指摘がありました。「救急(麻酔を含 む)」というのが現在で、まさにご指摘どおり救急と麻酔とはかなり違う分野なのです。 ですから、麻酔の研修を受ければ救急をやらなくてもいいのかというようなことにもな ります。これは、前の制度を作るときに、最後のほうでこの「麻酔を含む」というのが 追加されてきたということですが、私は個人的には不満だったのです。  ご存じのようにいろいろな救急患者がいますが、救急患者にすぐ気管挿管をして、呼 吸を確保し、全身管理ができる必要があるということで、麻酔のトレーニングを受けれ ばそのような処置もできるのではないかというのも、麻酔を含むということを入れた理 由の1つであったとも理解しております。  しかしながら、多くの麻酔のトレーニングにおける挿管は、中央手術室で前投薬をさ れた患者が、循環動態が非常に安定した状況で手術台の上に乗って非常に環境のいい状 況です。筋弛緩剤を投与されて、そこで挿管するという状況と、実際には救急現場で処 置をする状況とは全く違うということです。やはり、これは区別するべきかと思ってお ります。  もう1つは、救急のトレーニングはどこで行われているかというご指摘がありました。 本来臨床研修においては三次救急ではなく、一般の救急現場のトレーニングが重要だと いうことです。時には、「救命救急センターでトレーニングするのが最も適しているので はないか」という考え方を持っている方もいると思いますが、私は反対です。  しかしながら、そのような救急をトレーニングする指導医がいる施設がどのぐらいあ るのかというと、専任の指導医がいるというのはまだまだ少ない。専任の指導医は救命 救急センターにいるのだというところでいくつかの問題があります。  また、そのトレーニングが夜間の当直という形でトレーニングされている所もありま す。救急医療と夜間の当直、即ち時間外診療ですが、時間外診療と救急医療とは似て非 なるものであります。時間外診療の場合には、多くの病院では救急の専門の医師が時間 外診療をしているわけではなくて、それぞれの内科、外科、整形外科などの医師が当直 をして診ているということですから、その指導の質に関しては時間外診療、当直での診 療というのは、確かにそのような患者を診る能力を付けることが大事ですけれども、指 導力という面では問題があるのではないかということです。  これから救急専門医、あるいは救急科ということもかなり整備が進んできた場合には このようなところも含めて、これからは研修プログラムを作っていく必要があると思っ ています。 ○矢崎委員 2点あります。プログラムの定員の検討と、卒前教育の件についてコメン トさせていただきます。臨床研修の定員が前回は多かったので検討すべきではないか、 ということを提言させていただきました。現在1.5倍もあるということは、多くの臨床 研修病院でプログラムを整備し、プライマリ・ケアの研修ができるという大きなプラス の点はあったと思います。しかし、いま現在を見ますとマイナスの部分が否めない。  1つは先ほどご指摘のあった、研修医の偏在の点です。私が前回申し上げたのは、1.5 倍もあるということで研修医のモチベーションが下がってしまったのではないか。多く の臨床病院は、研修医に来てくださいというお願いのところに非常に熱心で、研修医が 殺到するプラスの面もありますが、広く見ますと大学病院にあってもモチベーションが 少し下がっているのではないか。いままでの卒前教育がそのまま卒後の臨床の勉強とい う感じが否めない。本当は、医師免許証を持ったので、一人立ちして自分でどんどん問 題解決型の研修をしなければいけないのに、今はなんとなくマスで動いて、みんなと一 緒にいれば安心だと。自分が無理だと思えば、もう少し待遇のいい楽な所という選択肢 があまりにも大きくなっている。そういう意味で、私はプログラムの定員を見直したほ うがいいのではないかと思っています。  もちろん偏在もありますが、モチベーション、モラルが少し下がっているのではない か。こういう人たちが10年後に一人前の医師になったときに、日本の医療は本当にプラ イマリ・ケアではいいのですけれども、若いときに勉強するという生涯教育の理念が薄 れてしまう可能性があるのではないかという心配が1つあります。  2点目は、研究と関連するのですが、最初のときには大学の先生方に、2年の臨床研修 でリサーチマインドは失われるのではないかと。それはそうではないでしょう、卒前の 6年間でしっかり教育するのが大学の先生の務めでしょうと申し上げてきました。臨床 研究の分野はそうなのですが、我が国で基礎医学的な研究というのは、我が国では生命 科学の発展にものすごく大きな貢献をしてきた部分があります。これはオフレコですが、 その部分は理学部出身の人にPhDに任せればいいのではないかという議論があるかと思 います。我が国では、極めてMDの方が、優秀な方が基礎研究を推進してきた部分が大き くあるわけです。  その部分をどうするかということで、いまの臨床研修で良き医師を育てるためという のは大事なことです。このままいきますと、アメリカの医学教育と同じように、卒業し たときにスキルの十分な医師は育成しますが、今度は本当の基礎研究をする人をどう育 てるか、というのはちょっと問題があるのではないかと思います。  医学部長会議の先生方は、ともかく臨床研修制度はやめろと言うのですが、いままで は臨床の教室に入った人が基礎の教室へ行って、PTアルバイトをやっていたという環境 がずっと続いていたのです。今後はそういうのは望めないとなると、独自で基礎医学の 研究者を育てないといけないということです。これは文科省にお願いなのですが、医学 教育が画一的なものではなく、地域の医師を育てるような教育をしっかりすると同時に、 基礎的な医学研究が進めるようなシステムも卒前教育のチョイスとして考えていいので はないかということです。  例えば、アメリカの例では臨床が非常に大事だということで卒前教育をしているため に、MDの基礎研究者というのはものすごく少なくて、PhDでほとんどやられている。ア メリカでもそれは大きな問題だということで、例えばデューク大学では4年のうち1年 間は基礎教室に配属する。そのために、3年間で臨床を含めて医学教育をやってしまう。 それから、クリーブランドクリニックが今度新しく大学をつくったのですが、これは5 年制の大学です。4年間でみっちり臨床教育をするけれども、1年間は基礎教室に配属し て研究をやらせる。  そういうことで時代はどんどん動きますので、日本でも大橋先生が心配されているの ですけれども、この大きな流れに逆らって、社会が求めている医師というのは確保しな ければいけないので、これは是非やっていただきたい。しかし、自前で基礎的な研究を できる後継者をなんとか医学部の中で育てるような仕組みをこれから議論していただい て、繰り返しになりますが画一的な教育ではなくて、大学によっていろいろなバラエテ ィがあるような、医学教育のチョイスを今後も卒前教育で、文科省で是非お願いしたい と思います。これは、ここでする話ではないのかもしれませんが。それから、学部長会 議で、臨床研修はなんとか反対で、研究を妨げるというムードは払拭していただければ と思います。 ○部会長 確かに基礎の将来の研究教育者の育成と、新臨床医師研修制度との整合性と いうのは今まで随分議論されていると思います。今のお話のように、これだけの問題で はないわけでもっといろいろな問題が絡んできています。 ○大橋委員 齋藤先生ありがとうございました。地方の医科大学の現実を先生は非常に いろいろなFDで見てこられて、よくまとめられて現実をお話いただいたのではないかと 思って感謝しております。1つ、先生の見識をお聞かせいただきたい点があります。  それは、今回の研修制度の問題を評価する時に、日本の医師育成というグランドデザ インといいますか、キャリアデザインの中で、初期研修は非常に評価すべき点はあろう かと思います。ここへある程度手を入れると、グランドデザインの中で、名前は後期研 修という名前を使ってはいけないかもしれませんので、意味で言うとその後のデザイン を個人に任せていいのか、あるいはそれに引き続いた分について国が手を入れるべきな のか、ここは大変重要なポイントではないかと思っております。  1つ今日お話いただけなかった中に、初期研修から一人前で、帰学傾向ではなく、あ る程度医師を配置する派遣会社やNPO法人を作って、自分で研鑽していくことで医師に なったと、今、矢崎先生も言われたように、医師はこれで終わりだと。逆に言うと、そ れでモチベーションが下がってしまうと、結果的にはいままでにはないタイプの医師が 生み出されてしまうのではないかという点について、先生はどういう考えをお持ちかを お聞かせいただきたいと思います。 ○齋藤参考人 ありがとうございます。私も先生と同じように、極めて危惧していると いうのが本当だと思います。たった2年間の初期臨床研修で、一人前の医師になってし まったような錯覚を持つ人がいてはならない。そのためには、私はそのあとのいわゆる 後期研修あるいは専門医制まで踏み込まなければ、医学教育は成り立たないだろうと思 っています。ですから、今日私はわざとそこを避けたのですが、専門医制度のほうがま だ固まってきていません。また、今までの専門医は学会主導でやっていました。それは よく考えてみると、学会主導で本当にいいのだろうかと。医療を受ける方々が何人いる から、専門医を何人、どこに配置しなければならないのではないかと、そのような考え 方から話が始まってもいいのではないかと思っています。  そうすると、そのためにはおそらく専門医のペイの問題にも踏み込まなければならな くなるはずだと思っています。これは、今日の初期臨床研修の話とは少し違うので、申 し上げるのを控えたのが本当のところです。 ○部会長 それでは、いろいろなご意見を伺いましたが、少し先へ進めます。事務局か ら、いままでご議論いただいた論点整理の説明をお願いします。 ○医師臨床研修専門官 資料2「臨床研修制度に関する論点整理」で、ざっとご説明し ます。この資料は、今までのヒアリングを基にいろいろ課題を挙げていただき、それを それぞれの項目ごとにまとめたものです。これを基に、またご議論いただければと思っ ております。  1「基本的考え方」ですが、本制度について、そもそも論を書いているものです。  2「研修プログラムについて」ですが、(1)「現在の状況」ということで(1)内科、外科 及び救急部門(麻酔科を含む。)、小児科、産婦人科、精神科及び地域保健・医療につい ては必ず研修を行うこととし、研修期間はそれぞれの科目について少なくとも1月以上 となっていること。さらに、(2)で原則として当初の12月は内科、外科及び救急部門(麻 酔科を含む)において研修すること、となっております。  (2)は、「臨床研修における科目と期間について」で、いただいている課題もしくは 論点で2つ挙げております。必修科目、基本科目とその研修期間取扱いで、内科、外科、 救急(麻酔科を含む)、産婦人科、小児科、精神科、地域保健・医療について、今後どの ように取り扱うべきなのかというところで、1つ論点があるのかと思っております。も う1つ、ローテーションにおける診療科順について、原則として当初の12月は内科、外 科及び救急部門(麻酔科を含む)において研修することとなっておりますが、1年目に 他の科目を行えるようにすべきではないかとのお話をヒアリングでいただいておりまし たので、論点として挙げております。研修プログラムについては以上です。  3「臨床研修の到達目標について」です。これは本日もいろいろご議論いただいており ますが、到達目標についていただいたお話を論点としてまとめております。(1)が「臨 床研修必修化後3年経過した現時点における見直しは必要か」との観点から、経験が必 要な項目及びレポートが必要な項目と到達目標は分かれておりますが、その内容を見直 す必要があるのではないかというご指摘をいただきました。さらに、到達目標の中で、 すべての医師が実施すべき内容と、将来の目標として実施しておくことが望ましいとさ れる目標が、2段階あるのではないかと、そういった切分けはできないかとのご指摘も いただいております。  (2)「臨床研修と卒前教育及び国家試験との一貫性を、より重視すべきではないか」 という観点から、卒前教育、国家試験、臨床研修のそれぞれの役割分担を明確化し、一 貫したシステムを考えるべきではないかとのご指摘を、本日もいただきましたが、以前 のヒアリングでもいただいております。参考として、現在文部科学省、厚生労働省医政 局医事科試験免許室でやっている卒前教育及び国家試験の検討を挙げております。  (3)「到達目標及び指導ガイドラインより詳細な基準は必要なのか」という観点から、 現在、修了認定は病院の判断において行っているが、現在の到達目標以上に詳細な基準 を国が示す必要があるのか。さらに、指導ガイドラインより詳細な基準は必要かとのご 指摘もいただいております。  お手元に積んであるのが、「臨床研修の到達目標」と「医学教育モデル・コア・カリキ ュラム」と「医師国家試験の出題基準」です。ブルーの本が指導ガイドラインなのです が、部数が足りないので全員の所に置けていないのですが、参考までに置いております。  (4)「今後恒常的に必要となることが予想される検討についての対応はいかにすべき か」ということで、新たな医学的知見に基づき、到達目標や指導ガイドラインにおいて 変更しなければならない事項が発した場合、どのように対応するのか。新たな知見に従 い、内容について、定期的に見直す仕組みを検討するべきかとのご指摘もいただいてお ります。臨床研修の到達目標関係について挙げられたご指摘を、この頁でまとめており ます。  次の頁ですが、4「臨床研修病院の体制等について」です。これは、臨床研修病院のあ り方についていただいたご指摘をまとめたものです。(1)「現在の状況」ですが、これは 現在の臨床研修病院がどのような基準で動いているかを書いたものです。  (2)からが、臨床研修病院の体制についていただいたご指摘です。「臨床研修病院の 指定基準の見直しについて」の観点から、指導医講習会を受講したことを指導医の要件 とするべきではないかとのご指摘をいただいております。また、研修の質の維持の観点 から、長期間研修医がいない病院は臨床研修病院としては問題があるのではないかとい うご指摘もいただいております。  (3)「病院内の指導体制のあり方について」本日もお話いただいておりますが、過重 の負担がかかっている指導医の負担が軽減されるための指導体制とはどうあるべきなの か、指導体制に関するガイドライン等の基準(もしくはモデルの提示)は必要ではない のか、屋根瓦法式・チーム主治医制の導入はどのように進めていけばいいのかなどのご 指摘をいただいておりました。  (4)「臨床研修病院と地域医療について」ですが、地域における必要な医師の養成を 行う際、臨床研修制度の活用を行うべきではないかというご指摘もいただいております。  (5)「臨床研修病院の評価のあり方」として、この観点からは自己評価と、その公表 は進められるべきではないか、第3者評価は進められるべきではないか、どのような内 容を評価するべきか、プログラムなのか指導体制、指導方法なのかということです。評 価方法、評価基準はいかにあるべきなのか、質の担保のために、国においても何らかの 仕組みを設けるべきではないかとのご指摘をいただいております。  (6)「募集定員について」ですが、実際の研修医数は7,500人程度ですが、募集定員 数は1万1,000人以上ある現状については、募集定員数過多であり、バランスが悪いの ではないか、研修医の都市部への集中を是正し、地域バランスの考え方を導入すべきで はないかというご指摘をいただいております。  次の頁ですが、5「手続き等について」ということで、臨床研修制度の手続き一般のと ころでご指摘をいただいております。(1)「現在の状況」ですが、表に新規申請・病院群 変更とあります。これは、年に1回6月30日締切りで1度受け付けるもので、内容に関 しては新たに研修病院となる場合に6月30日に出していただくと。さらに、病院群、協 力病院等の構成を変える場合にも、新規申請・病院群変更を6月30日締切りでしており ます。  次のプログラム変更(病院群変更なし)ですが、病院群の変更がないもので、4月30 日に締め切っております。内容は、プログラムの目標、研修分野、分野毎研修期間、研 修を行う病院または施設の変更等について、プログラム変更を年に1度受け付けている ものです。さらに、研修協力施設の追加・削除等もここに該当しております。  これに関して、(2)「新規申請、病院群変更申請、プログラム変更申請の簡素化につい て」この研修プログラムの変更、協力施設の変更等が年に1度しかないということで、 運用上かなり硬直度が高くなっているので、この辺りを弾力化できないかとのご指摘を いただいております。  以上が、事務局でまとめた臨床研修制度の論点整理で、今までのヒアリング、ご議論 を中心にいただいた主なもので、課題、今後の変更すべき議題として挙げました。もち ろん、まだまだ拾い切れていない部分等がありますので、そういった面も含めてご指摘 いただければありがたいと考えております。よろしくお願いします。 ○部会長 ありがとうございました。いま挙げられた中には、かなり議論して結論に近 いところもあると思いますから、時間の関係で定員のほうまで一気に説明していただけ ますか。 ○医師臨床研修専門官 資料3を続けてご説明します。「研修医の募集定員について」は、 別立てで資料を作成しました。基本的な考え方として、研修医の募集定員について今ま でご議論いただいておりましたが、それを受けた形です。これの是否についても、少し ご議論いただければと思っております。  現在、医学部卒業生数に対し過剰ではないかと指摘されている研修医の募集定員数に ついて、研修体制の質を確保する観点から、その総数を調整する。なお、調整に当たっ ては、研修医の地域毎のバランスが図られるよう配置するということです。  具体的な調整の進め方ですが、次の3要件のすべてに該当する都道府県の医療機関に 対し、募集定員を減ずることを要請するものです。1)平成19年度の募集定員数及び採 用実績が、当該都道府県人口に比し著しく多い。2)人口10万人対医師数が全国値平均 を上回る。3)面積100k平方メートル当たり医師数が全国平均を上回っている。なお、個別の医療 機関の研修医募集定員の調整に当たっては、地域の医療提供体制の混乱を招かないよう、 大学病院をはじめ当該医療機関の医療機能や医師派遣機能に十分配慮しながら、関係省 庁との連携のもと、段階的に進めていく必要がある。さらに、対象地域においては、研 修病院の新規指定及び募集定員の増員を留保すると考えております。  3つ目ですが、この一連の調整の中での留意事項として、対象地域の医療機関が、医 師の派遣や研修医のいわゆる「たすきがけプログラム」などを通じ、対象地域周辺の医 療提供体制を補完していると考えられる点について、十分配慮しながら進める必要があ る、としております。  次の頁は、各都道府県のデータ集が載っております。いちばん左が都道府県で、その 次が臨床研修の平成19年の募集定員、採用実績、人口10万人対募集定員としたときの 人数、同じく人口10万人対採用実績としたときの人数が挙げられております。黄色が付 いている所が高い所です。次に、人口10万人対従事医師数という所で挙げております。 薄くブルーが付いている所が高い所で、いちばん下に全国平均が載っております。次は、 100k平方メートル当たり医師数で、それぞれの面積当たりの医師数を挙げております。すべて該当 するものが、いちばん右に◎が付いています。資料3については以上です。 ○部会長 ありがとうございました。医師数の具体的なものも含めて論点整理を出して いただきました。時間がある限り、論点整理に沿って順番に進めます。  基本的な考え方は、いま指摘があったように、新しい制度で研修に専念できるとか、 処遇が改善された、あるいはプライマリ・ケアについては研修医の調査もほぼ良好だと いうことがあります。一方、診療科地域の偏在が表面化したこと、ここには書いてあり ませんが、基礎医学の将来の教育研究者の育成に影響するのではないかと、危惧されて いるということかと思います。  次の頁の下半分で、研修プログラムについてですが、現在ある科目を増やすとか減ら すという議論は今までありませんでしたし、たぶんこれはそう簡単にできることではな いと思うのです。したがって、今のような科目でもう少しフレキシブルにすると、1年 目から小児科や産婦人科を回ってもいいとか、救急を1年目に回るのは無理なのではな いかとの意見もあって、それは各施設にお任せして、フレキシビリティを入れたらいい のではないかということがあります。さらに、フレキシビリティの上限としては、選択 のときに1カ月か2カ月基礎の教室に行ってもいいのではないかとのご意見もあったか と思います。大橋委員、いかがでしょうか。 ○大橋委員 科目自体替えるのは非常に難しいというのは、部会長のおっしゃるとおり だと思うのですが、選択科目の運用等について、特に大学等で大学院とのあり方、矢崎 委員がおっしゃったように、日本の今までの経過としてMD、医学部出身者が非常にベー シックな教育研究者をやっている事実等を踏まえると、全部とはいかないと思いますが、 非常に例外事項として、選択科目の運用について、別枠として入れていただけないかと 思います。それを先ほど言われた形の運用の仕方で対応できるのではないかと思います。  ただ、今まで議論の中で、基礎医学については最初から大学に入って、これはあとで やればいいのだという議論も一方であったと思うのですが、日本の現状として経済的な 支援ということを踏まえると、それは机上の空論だと思うのです。ですから、2年目あ るいは大学等の限られた場所での選択科目の運用について対応させていただければ、大 変ありがたいと思っております。 ○部会長 この頁について、何かご意見はありますか。言葉の問題なのですが、「必修科 目」「基本科目」と2つ言葉があるのです。 ○大橋委員 提案として、○をもう1つ付けて、選択科目の運用等について入れていた だけないかと思うのです。それを大学の基礎研究者、基礎科学の運用の部分として、例 外として使えるかどうかということで対応させていただけないかと思います。 ○部会長 ただ、それを認められたとしても、期間としては短いですね。 ○大橋委員 期間自体は短いと思いますが、内科、外科、救急は必修だと思うのです。 ですから、運用2年目にイギリスのアカデミックメディスンのような形で、そのあと大 学院という形で運用することによって、早く基礎研究を始めることができる。そのよう な形の運用の仕方もあるのではないかということです。 ○西澤委員 臨床研修の中に入っていることがどのように見えるかと、実際行った場合、 短期間でどのような研修ができるのか、そのときの指導医はどうなるのか、その辺りを 明確にしたほうがいいのではないかと思います。 ○大橋委員 ご指摘のとおり、2カ月や3カ月研修したから基礎医学ができるというも のではなくて、おそらく先ほどの例外事項として、そのあと大学院に入るとか、ポスト ークのポジションに組み込むとか、病理学を専攻した場合には科目の中でそういうこと ができるのではないかと思うのです。指導医の立場の場合には、臨床ではなく、ある大 学の中の認定された方を指導医として認めていただくとか、そのような運用の極めて例 外事項としてご議論いただきたいと思います。今日結論が出るわけではなく、ご議論し ていただくので結構だと思います。 ○山下委員 今の話と少し違うのですが、基本理念との兼ね合いにもなるので、デリケ ートな問題だと思うのです。臨床研修医に聞くと、将来何かをするときの目標を、ある 程度はっきりさせて臨床研修に臨みたい人もかなりいるのです。その場合に、いちばん 最後の将来専攻予定の科目を最初にやりたいと。それを精読としてプルーブしてもらい たいという考え方があると思うのです。それを検討していただきたいのです。  そのときに、基本理念の中に一般的な診療、将来の専攻分野にかかわらずこういうこ とをやりたいというのは結構なのですが、それにプラスして自分の将来にわたって必要 なことを含めて研修するということをどこかに入れていただくと、全体の整合性が取れ てくるのではないかと思うのです。この基本理念を見ると、ファンダメンタルなところ だけをまずやると読めてしまうので、将来にわたっての計画を持って、それがモラルや モチベーションになると思うので、それをご検討いただければと思います。 ○部会長 プログラムをあまりフレキシブルにすると、本来の精神が失われてしまうと、 今の基礎医学の話や最初から行きたいという話でなかなか難しいと思うのですが、十分 検討する必要はあると思います。 ○飯沼委員 医学部は、理学部などに比べると、詰め込んで知識の塊になって卒業する 傾向がどうしても否めないわけですが、いっそ2年間のうちの1年ぐらいは基礎へ行っ て勉強すると。学位を取る勉強をすることを、最近の子どもたちは嫌がって専門医、専 門医という話になって、自然科学的にものを考える習慣がますます薄れてくることを非 常に心配しております。話が違うとおっしゃるなら別ですが、そういうことも含めて、 ある期間を基礎に送り込むという考え方もいいのではないかと思ったので発言しました。 ○冨永委員 確認ですが、基本研修科目として内科、外科とあります。これは先ほどか ら出ている運用ということで、例えば外科系のプライマリ−ケア研修は消化器外科、整 形外科、脳外科等の研修があります。それは各研修病院の裁量によってカリキュラムを 作っていけばいいということだったと思うのです。それを確認していただきたいのです。 外科は、消化器外科だけではないということです。 ○相川委員 もう1点、確認なのですが、研修プログラムの現在の状況に書かれている ことで、「内科、外科及び救急部門(麻酔科を含む)、小児科、」となっています。日本 語の問題なのかもしれませんが、外科及び救急部門(麻酔科を含む)とは、1つとして考 えられる表現もあるのです。  次の所ですが、(2)の3行目で、(例えば、当初の12月を内科6か月、外科及び救急部 門で6か月研修し)という表現があります。外科及び救急部門(麻酔科を含む)が1つ の科目だという誤解を生じるのです。私の考えでは、本来これは外科、救急部門(麻酔 科を含む)と解釈しておりますが、それでよろしいですね。  それから、麻酔科を含むというのは外科にもかかるのかどうかも、この表現は非常に 難しいのです。プログラムを作るときに非常に迷ったところがありますので、この辺り をはっきりさせることと、先ほど言いましたが、救急と麻酔科とはかなり違う部門なの で、麻酔科をやれば救急をやらなくてもいいのかとか、含むということは救急部門に行 っている間に麻酔科もやらなければいけないのかとか、その辺りも含めてここではっき りさせておくべきだと思います。  先ほど部会長が言いましたが、(2)で必修科目、基本科目と書いてありますが、現在 私どもの考えは、内科、外科、救急部門(麻酔科を含む)の3つが必修科目で、基礎科 目は小児科、産婦人科、精神科、地域保健・医療の4つと解釈しているのですが、それ でよろしいでしょうか。 ○冨永委員 基本研修科目は内科、外科、救急部門です。だから、この書き方は基本研 修科目、必修科目となるのが適当です。 ○相川委員 そうですね。「基礎研修科目」という言葉が使われていましたね。ここでは 「基本科目」と。そこは訂正しますが、基礎研修科目というのが内科、外科、救急部門 (麻酔科を含む)でよろしいのですか。 ○矢崎委員 そうだと思います。 ○相川委員 そうすると、ここで救急部門(麻酔科を含む)も研修プログラムについて、 これは到達目標にも関係しますので、是非検討して、麻酔科の扱いを議論するべきだと 思います。 ○部会長 それは、いずれにしても到達目標をもっと詳しく見直すとことだと思うので す。そこで問題になると思います。  次の頁ですが、到達目標です。この頁は、いちばん上の(1)の3年経過したところで 見直しが必要かということで、必要だから今やっているのだと思います。その下の○で、 すべてやる必要があるのか将来の目標とするかですが、これも実際見直しを検討すると きに議論すべきことではないかと思います。  (2)の卒前・卒後、国家試験との一貫性は、今まで何度もいろいろな所で言われてい て、やるつもりになればすぐできることです。要するに、誰がどこでいつまでにやるか だけを、厚生労働省と文部科学省とで決めていただければ済むことで、別に難しいこと ではないと考えます。  (3)到達目標・指導ガイドラインなのですが、確かに指導ガイドラインは非常に詳し くよくできていて、これに比べて到達目標は目次のようになっているので、少しこれに 肉付けしたものができればいいのではないかというのが1つの考えですが、いかがでし ょうか。指導用のものを研修医に渡してもなかなか大変ですし。もちろん、手技の習得 に関しては病院にお任せするというか、病院の責任で判断して評価して認定していただ くことになると思いますが、いかがでしょうか。  当然、今後どんどん変わりますので、その都度見直しをするために、ある程度見直し をするワーキンググループを作る必要があるというのも、先ほどからいろいろな方のご 意見でも示唆されているかと思いますが、よろしいでしょうか。  次に、研修病院の体制です。この頁は、上のほうはほとんど現況で、下はかなり重要 なことだと思いますが、指定基準の見直しが論点に挙がっています。その1つが、指導 医講習会を受講したことを要件とすべきではないかということと、先ほどから数が足ら ないとか偏在することが強調されておりますが、数だけ合わせるために質が低下しては 困るわけです。質を担保するために、長期間行かない所は本当に相応しいのかどうかが 論点として挙がっていますが、いかがでしょうか。これは、あまり厳しくやって大都会 の病院しか指定基準をクリアしないというのも困るのです。山下委員、何かご意見あり ますか。 ○山下委員 1つお願いしたいのですが、1つ上に臨床研修病院の評価があります。こう いうものと連動させていただいて、1つの県の単位で動く研修プログラムを考えた場合 には、ランクによってネットワークを作っていくことがこれから必要になってくると思 うのです。そういうことが可能になるような、また、各病院が自分の所がどういうクオ リティを持って、どういう役割をするのが適切かをわかってもらうことが第1だと思い ます。ですから、ここに1つの基準は書いてあると思いますが、1つはマスタープラン をある程度出していただいて、それをたたき台にして、こういうネットワーク、こうい うランキングが必要であること、実績を見て示していただいたほうがいいと思います。 あなたは不適格ですよという病院も、言わざるを得ない時期になってきているのではな いかと思います。 ○部会長 次の頁ですが、指導体制のあり方があります。これは、繰返し指導医の処遇 あるいはケアが必要だということです。この中には、おそらく指導医及び研修医のメン タルケアの体制が必要だということも入ると思います。  (4)の臨床研修病院と地域医療については、いま山下委員がおっしゃったことですね。 各地域でシステムが必要なのではないかということです。  (5)評価のあり方ですが、いちばんわかりやすい病院の評価は、研修医の集まる病院 が評価されていることだと思うのですが、第三者の医師臨床研修評価に関する研究会な どが将来進むかと思います。評価基準や方法は、今ないわけですから、どこかで検討し ていただく必要があるのでしょうか。吉田委員、今までのところでご意見はありますか。 ○吉田委員 先ほどの齋藤先生のお話をお聞きして思ったことは、SD(スタッフ・ディ ベロップメント)のお話をされましたね。医師以外の人たちのスタッフ・ディベロップ メントを入れる必要があるのではないでしょうか。研修医のアンケート調査等によって も、指導医等は確かによく指導してくれるけれど、それ以外のスタッフは知らん顔だと いう声も聞きますので、入れる必要があるのではないかと思うのです。 ○部会長 病院内の指導体制のところですね。 ○吉田委員 はい。また、全般に今までのご議論の中で、研究に対して基礎医学も確か に非常に重要なのですが、この2年間の臨床研修全体を通じて、一般のいわゆる研究、 クリティカル・シンキングをどのようにするか。その間2年間空白があるではないかと いうお話もありましたが、その辺りを考慮してみる必要があるのではないでしょうか。  例えば、1つの症例を見るにしても報告するにしても、研修が始まる以前と比べると 他の人たちの論文を読む習慣、それにクリティカル・シンキング・アンド・リサーチと、 例のIIMEのグローバルスタンダードに書いてある6つのドメインの1つが、2年間で少 し空白になっているのではないかと。したがって、全体を通じて広い意味での医師に必 要なリサーチ、それに対する基本的な姿勢をどこかで検討してみる必要があるのではな いかと思います。2つ申し上げましたが、後のほうは全般のことですから、議論で申し 上げることがあると思います。 ○部会長 山口委員、いかがでしょうか。 ○山口委員 先ほど、地域偏在を補正しようと、いろいろ指標が出ましたが、基本的な 視点が人口に対して医師の数を研修医の数で補正しようという形に見えるのですが、研 修医はまだ教えてもらっている立場なので、募集人員が多くてそれが偏在に関わってい るのであれば、その地域で教えるべき病院は残して、偏在で多く集まっている病院を減 らす方向を考えるべきで、ただ単に地域当たりの人数という発想では、少し違うのでは ないかと思います。それでは、研修の質の話は全く飛んでしまって、ただ人数合わせだ けの話になるので、より質の高い病院をセレクトし、ある程度地域の研修医の数のバラ ンスを取ることが必要なのではないかと強く思います。 ○部会長 最後に残ったのが(6)募集定員なのですが、これが今日出たうちで大きいデ ィスカッションのテーマだと思いますので、これについて少しご意見を伺いたいと思い ます。 ○篠崎委員 このことに限らず、全体的な話も含めて。論点整理の5項目は、私はこれ でいいと思うのですが、できれば「その他」を入れておいたほうが、議論の中でその他 に入るものも出てくるのではないかと思います。手続きは手続きとしてその他が要るの ではないかと思います。  冒頭に齋藤宣彦先生のお話がありましたが、私も99.9%同感です。それと併せて、5 点ほど今の問題も含めてコメントします。必修科については大体議論が終わったようで すが、到達目標と連動して考えるべきで、この間決めた科目についてはフレキシビリテ ィのところはいいのでしょうが、それ以外は触るとパンドラのフタを開けることになる のではないかと思います。  到達目標を恒常的に見直すことですが、齋藤先生がおっしゃったように組織を作って おく、卒前のコアプログラムと連動しながら動かす組織を作ることが必要なのではない かと思っております。この見直しの機会にそういう組織を作ることは、非常に大事なの ではないかと思います。  マッチングの数の問題ですが、これも医師の地域偏在をなくす上でいくらか貢献でき るところがあるのではないかと思うので、是非必要だと思います。特に大事なのは、大 学病院の単独型、多い所を減らすのは文科省のご協力がないとできないので、そこをお 願いしたいと思います。  もう1つ数のところで、二次医療圏単位で考えないと解決しないのではないかと思い ます。都道府県単位だと、地域偏在問題は解決しづらいのではないかと思います。  指導医の問題についてはおっしゃるとおりで、16時間は若干短いから、もう少し延ば したほうがいいし、ある程度資格的なものも必要かもしれないし、齋藤先生もおっしゃ ったように指導医にしかるべき手当が必要なのではないかと思っております。研修医に は補助金や診療報酬で立派な手当がほぼ達成されましたので、次は指導医に対する手当 が必要なのではないかと思っております。来年は改定のある時期ですから、是非、中医 協の先生にも理解してもらえるようにお願いしたいと思います。研修医より、指導医の 診療報酬の手当のほうが理解してもらいやすいと思います。  5番目は、先ほど大橋委員がおっしゃった医学研究の話です。医師免許証を持った基 礎医学者をどうやって育てるかは、大変大事な問題です。ただ、この制度とは別にきち んと考える必要があるのではないかと思います。この制度は、あくまでも臨床医のため のものと考えており、またそのように設計されているので、医学部を卒業して本当の基 礎医学者を目指す人は、この研修を受けなくても行けるようにもできているわけです。 しかし、これがないと、こちらへ行ってしまうのは、別の意味があるとすればその手当 を考えるべきであって、この中でやっても抜本的な改革にはならないのではないかと思 うのです。  医師免許証を持った医者の基礎医学といえば、どんなものがあるかイメージが湧きま せんが、ノーベル医学生理学賞を調べてみたら、1900年から2000年までに172人の受 賞者がいるのです。25年ずつ切ってみると、1901年から1924年の間、医学部出身者と 思われるものは83%なのです。ところが、直近の1975年から2000年になると、51%に なっているのです。つまり、PhDが半分ぐらいいっているのです。だから、先ほど矢崎 委員がおっしゃったように、世界の流れで見ると、今ご心配のような懸念があるのでは ないかと思います。そういう中で、今の新医師臨床研修制度の中だけで対応しても、抜 本的なものにはならないのではないかと思います。 ○長尾委員 募集定員の問題なのですが、確かに非常に多くなっているのは事実でしょ うし、先ほどおっしゃったように多く抱え込んでいる大学があることも、ある程度是正 すべきだとは思うのです。しかし、募集定員と国家試験を通った数がほぼ同数というよ りは、ある程度余裕を持って取っておかないと、逆にあまりギチギチにしてしまうと、 新たに研修病院として入りたい場合に規制がかかってしまうことにもなりかねないと思 います。地方のほうで、ある程度体制が整って、募集をきちんとかけてもなかなか来な い場合もあるかもしれませんが、それを担保できるようにしておかないと、あまりカツ カツでマッチングをしてしまうのはいかがなものかと思いますので、その辺りはもう少 しフレキシブルに考えたほうがいいかなと思っております。 ○部会長 ここにあるのは1つの案なのですが、具体的にどのようにするかはまだ決め ていないわけですね。 ○西澤委員 いま最後の頁を初めて見てびっくりしているのですが、いくつかの指標を 基にやって◎の所は減らすということですね。前回の資料で見たのですが、始まったの は平成16年ですが、平成15年は東京辺りは非常に多いのです。実際は減っているので す。大阪、京都も減っているのです。それで、今回のこれはどうなのかなと思います。  ◎は付いていないけれど、今回の募集定員がかなり多いということで沖縄等とありま すが、こういう所は増えているわけですね。募集定員が多いということを(1)(2)で無理や りくっつけて、片方は救っているし、片方は減ずるというようにも見えますし、もう少 し説明の利く根拠でやり直してほしいと思います。  県でするのはすごく乱暴で、北海道を見ても札幌市内と市外と全く違うのです。極端 に言うと、北海道全体では札幌にすごく集中していて、北海道の中で見ると札幌を減ら して他に行かなければならないことがあるかもしれません。そのように各県ごとに事情 があると。もう少しきめ細かくしないと、これだけで出してしまうのはいささか乱暴か なというイメージを持ちました。 ○部会長 確かに、平成15年に比べると東京や大阪は減っているのです。したがって、 研修医の数の問題と医師の問題とは関係ないのですが、それを世の中的に現況だと言わ れているので、無理に結びつけるとこうなるのです。 ○山下委員 先ほどの私の話の蒸返しになってしまうのですが、本旨から言うといい臨 床医のためのいいプログラムを提供するのがこの制度ですから、今おっしゃったように この県に少ないから研修医をというのは、おっしゃるとおりだと思います。要員の質を きちんとコントロールして、一時期だけでも地域医療として行ったほうがいい病院はあ るわけですから、それはネットワーク化すればいいので、管理型にはなれないけれど、 いま管理型として申請しても無理ですよと、クオリティ・コントロールする中で減らし ていくのが本当ではないかと思うのです。  ただ、どこかに数値目標を置いておかないと、みんなが今のまま合格という話になる と全然減っていかないのですが、病院のクオリティ・コントロールをして、かなり厳し くランキングをして、研修医に提供できる病院のセットを作って、それで定員が減って いくという自然の流れにするのがいいのではないかと思っております。方法論として非 常に難しいと思いますが、いま管理型として申請している所でも、全然来ていない所や、 行っても勉強にならなかった所、あまり相手にしてもらえなかった病院があるのです。 そういう所は切っていかないと、将来にわたって禍根を残すと思います。 ○部会長 先ほど齋藤宣彦先生のスライドにあったように、一部の大学では150人とか 200人も採用しているので、卒業生の最大限同じ数、あるいは何割かにすればかなり分 散すると思うのです。 ○相川委員 定員のことですが、先ほどお話があったかもしれませんが、7,500の採用 実績に対して1万1,000が多いか少ないか、これを7,500にするのか。ある程度、1、2 割はフレキシビリティをもって多くしておかないと、不幸な人はマッチングで最悪のプ ログラムの所に無理やり押し込まれることもあります。ある程度競争原理もあって、1 万1,000がいいのかどうかというのはありますが、少しは多くしておくべきだと思いま す。  もう1つは何度も出ておりますが、大学病院の定員についてある程度規制をかけない と、都道府県別に割りがいいかどうかはわかりませんが、いろいろなことをやっても、 結局そこのところがざるになってしまうのです。私は、たまたま指定の審査をした経緯 もあって、すべての病院、単独型あるいは管理型を見たところ、結局某大学病院では卒 業生の数倍、あるいは病床数を8で除したり、指標がありますがそれを全く無視した数 が定員として出てきています。  ところが、現時点では厚労省としては基準を大学病院に対しては指定をするしない、 厚労省はしないと、大学病院が出してきたものはほぼそのままで受け入れられていると いうことになると、そこに抜け道があるといけないのではないかと思います。これは、 ある程度はご理解いただいて、大学病院の定員の抜け道がないようにしていただかなけ ればいけないのではないかと思います。  ちなみに、自分の病院のことを言うのは恐縮ですが、うちは約100人卒業で、定員が 60人でやっています。ほかの大学病院長などと話をすると、慶應はどうしてそんなに少 ないのかと言われますが、感覚的に卒業生の6割ぐらいが大学病院で研修し、4割はほ かの病院で研修すると思っていたので、そうすると定員は60人ぐらいかなと減らして、 現時点では60人でやっております。 ○医師臨床研修推進室長 7,500という数字が出ていますが、いま総枠を設けるかどう か、それをいくつにするかはまだ先の話になると思いますが、ご参考までに申し上げる と、国家試験を受ける人数やマッチングに参加する人数でいくと、8,500〜8,600ぐらい になりますので、国家試験を落ちるのが前提の数字ではなく、最低でもそこですし、さ らに上乗せしていくつか余裕を見るくらいの規模の数字になることはご理解いただきた いと思います。  この関係で、折角齋藤先生が来ているので、1つだけご質問したいと思います。事務 局として、研修の質を維持していくことと研修医も含めてバランスを取っていくことは、 大変難しい課題だと考えております。現状を中心に、ある程度質も見ながら考えていく と、支部や地域でも県庁所在地に偏ってしまうリスクも抱えながら考えなければいけな いので、二次医療圏ごとに考えなければいけないというのは、大変貴重なご指摘をいた だいたと思います。  それに関連した齋藤先生のスライドで、地域の病院の医師を優れた指導医に育てずし て、研修医を地域に配置するのは論外というのは、大変意味の重い言葉だと受け止めま した。逆に言えば、地域で指導医を育てたり、地域で研修病院を育てる仕組みで、地域 の偏在を解消していくことができる可能性があるのではないかと思います。岩手県のご 経験も含めて、何かお考えがあれば教えていただきたいと思います。 ○齋藤参考人 私は、先ほどから病院の評価とおっしゃっていますが、その中の指導医 の評価、良い指導医がいるかいないかが、かなりのポイントになるだろうと思います。 距離的に地方であっても、良い指導医がいれば研修医は来ます。そういう現実があると 思いますから、私は指導医を育てるほうが先ではないかと思っています。 ○部会長 そろそろ時間になりましたので、今日はこれで終わりたいと思います。論点 整理について、まだ十分議論できなかった点もあると思いますので、是非ご意見を事務 局のほうにお寄せいただき、それを取り込んで整理をしていただきたいと思います。事 務局から何かありますか。 ○医師臨床研修専門官 本日いただいたご意見等を整理して、いただいたご意見も併せ て整理したいと思っております。大体1週間ぐらいでいただければありがたいと思いま す。 ○部会長 それでは、どうもありがとうございました。 (照会先)                   厚生労働省医政局医事課                      医師臨床研修推進室                    (代表)03−5253−1111                   (内線4123)