07/06/25 第39回厚生科学審議会科学技術部会議事録 第39回厚生科学審議会科学技術部会 議 事 録    ○ 日  時 平成19年6月25日(月)16:30〜18:30    ○ 場  所 厚生労働省 省議室(9階)    ○ 出 席 者   【委  員】  垣添部会長           石井委員 今井委員 金澤委員 川越委員 北村委員           木下委員 笹月委員 末松委員 西島委員 松本委員           宮田委員 宮村委員             【議 題】  1.平成18年度の厚生労働科学研究費補助金の成果の評価について   2.厚生労働科学研究費補助金の不正経理への対応について   3.厚生労働科学研究費補助金配分機能の移管のあり方について   4.臨床研究に関する倫理指針の見直しに関する専門委員会の設置について   5.その他   【配布資料】  1−1.厚生労働科学研究費補助金の成果に関する評価(平成18年度報告書)(案)                                        1−1別紙.厚生労働科学研究費補助金の成果表(平成18年度)   1−2.厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要   1−2別紙.平成18年度採択課題一覧   2.  厚生労働科学研究費補助金の不正経理への対応について(案)   3−1.研究機関と配分機関を包含する機関における競争的資金の配分について   3−2.競争的資金の配分機関のあり方   4.  臨床研究に関する倫理指針の見直しに関する専門委員会の設置について   5−1.戦略研究について   5−2.厚生労働科学研究費のあらまし   5−3.平成20年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針   5−4.競争的資金の拡充と制度改革の推進について   5−5.長期戦略指針「イノベーション25」のポイント  参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿   参考資料2.公的研究費の不正使用等の防止に関する取組について(共通的な指針)   参考資料3.研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準) ○坂本研究企画官 定刻となりましたので、ただいまから第39回厚生科学審議会科学技 術部会を開催いたします。委員の皆様にはご多忙の折お集りいただき御礼を申し上げま す。本日は岩谷力委員、佐藤洋委員、竹中登一委員、永井良三委員、福井次矢委員、南 裕子委員、南砂委員、望月正隆委員からご欠席の連絡をいただいています。また、今井 委員から少し遅れるとの御連絡をいただいています。委員21名のうち出席委員は過半数 を超えていますので、会議が成立することをご報告します。  続きまして本日の会議資料の確認をお願いします。資料の欠落等ありましたらご指摘 ください。議事次第に配付資料の一覧があります。1−1は厚生労働科学研究費補助金の 成果に関する評価(平成18年度報告書)(案)です。こちらについては、申し訳ありま せんが、事前送付したものに修正がありますので、事前送付したものではなく、本日お 配りしたものをご覧ください。1−1の別紙、厚生労働科学研究費補助金の成果表(平成 18年度)、1−2.厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要、1−2の別紙、平成18年度 採択課題一覧。2として厚生労働科学研究費補助金の不正経理への対応について(案)。 3−1.研究機関と配分機関を包含する機関における競争的資金の配分について、3−2.競 争的資金の配分機関のあり方。4.臨床研究に関する倫理指針の見直しに関する専門委員 会の設置について、5−1.戦略研究について、5−2.厚生労働科学研究費のあらまし、5-3. 平成20年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針、5−4.競争的資金の拡充と制 度改革の推進について、5−5.長期戦略指針「イノベーション25」のポイントとなって います。また、参考資料として3点資料をお配りさせていただいています。よろしいで しょうか。それでは部会長、議事の進行をよろしくお願いいたします。 ○垣添部会長 皆さんこんにちは。大変お暑い中、外よりも暑いと言われる9階の省議 室にお集まりいただき、まことにありがとうございます。これから第39回厚生科学審議 会科学技術部会を始めます。  まず議題1、平成18年度の厚生労働科学研究費補助金の成果の評価について、事務局 から説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官 それではご説明いたします。平成18年度の厚生労働科学研究費補助 金の成果の評価に関する資料は、資料1−1及び1−2です。また、資料以外に厚生労働 科学研究費の成果の評価に関する御意見を記入する用紙をお手元にお配りしています。 資料1−1の本体以外の資料の概略を先にご説明します。資料1−1の別紙、こちらは各 課題で報告された成果の一覧です。右側に発表論文数なども記載されています。  資料1−2は事業の概要です。6頁を開けていただきますと、研究課題の平均研究費の 額などが載っています。図にあるように、平均研究費の額は、分野によって相当異なっ ていますが、1課題あたりの研究費額の平均は、約24百万円です。9頁から評価の観点、 10頁に事後評価のポイントが記載してあります。12頁に申請と採択の状況がありまし て、新規課題については、採択率は応募が2,002件で25.4%、継続課題の採択率は応募 が974件で96.2%です。14頁に評価対象4分野17研究事業の予算額があります。17頁以 降に、各課題ごとの評価があります。資料1−2の別紙は平成18年度採択課題の一覧です。  資料1−1をご覧ください。こちらが報告書(案)です。昨年度よりもコンパクトにま とめてあります。4頁、「はじめに」で背景等が記載してあります。5頁に「評価目的」 とありまして、6頁の上のほうに、今回の評価においても、「行政への貢献」に重点を 置いて評価をすると記載しています。9頁の評価方法の1)評価の対象と実施方法で、評 価の対象を記載しています。評価の対象は、厚生労働科学研究の各研究事業(4研究分 野の17研究事業)と、平成18年度終了課題の成果で、後者については、厚生労働科学 研究成果データベース報告システムの6月14日時点の行政効果報告のデータを基に評 価しております。なお、平成17年度の成果報告から継続的な評価を行えるよう、研究終 了年度から3年間は研究者が随時WEB上でデータ更新ができるようになっております。 今回の調査項目等につきましては10頁の表1に示されています。  それでは17研究事業の各事業ごとに、資料1−2の各研究成果の概要をベースにした ものですが、資料1-1の記述的評価をご説明いたします。13頁をお開きください。Iの 行政政策研究分野の(1−1)政策科学推進総合研究事業ですが、こちらは平成18年度か ら従来の統計情報高度利用総合研究事業を組み込んでいます。男性の育児休暇取得阻害 要因や、保育士養成における課題を明らかにする等、行政ニーズを反映した施策づくり の基盤となっており、また、統計調査自体の充実や分析手法の開発、国際比較可能性の 向上等に関する研究もあり、社会的に重要な役割を果たしていると評価されています。  14頁の(1−2)(a)(社会保障国際協力推進研究分野)では、WHOやUNICEF等を通 じた多国間協力事業について、モニタリング・評価を行い、我が国独自の評価システム の構築について提言をまとめるなど、国際協力の推進に貢献しているという評価です。  次の(b)(国際医学協力研究事業)は、日米医学協力計画のもと、アジアにおける感 染症等の幅広い諸課題の改善・克服に取り組んでおり、アジア地域の人々の健康維持・ 増進への寄与が期待され、国際協力貢献の観点からも意義があるものと評価されており ます。  (1−3)国際危機管理ネットワーク強化研究事業では、国際健康危機発生時に、途上 国からの情報収集を進めるための研究を実施し、健康危機が発生した場合の効果的・効 率的な対策を推進するのに必要な諸資料の収集と分析が図られたという評価です。  (2)の厚生労働科学特別研究事業、これはいわゆる特研です。国民の健康生活をおび やかす突発的な問題や社会的要請の強い諸課題について、緊急に効果的な行政施策を必 要な際に行う研究で、今後とも緊急性が高く、行政的に重要な研究課題を適宜実施する 体制が必要という評価です。  16頁のII.厚生科学基盤研究分野です。(3−1)ヒトゲノム・再生医療等研究事業で は、(a)(ヒトゲノム・遺伝子治療研究分野)については、骨粗鬆症・変形性関節症 疾患関連遺伝子の研究などが行われ、新しい医療技術の創生に資する研究成果を輩出し ているという評価です。  (b)(再生医療分野)ですが、基盤的技術から、臨床応用を含め実用化段階にある技 術まで、国際的にも評価できる成果を上げており、移植医療の改良・高度化に関連した 研究も実施され、医療現場で活用される成果もあるという評価です。  (3−2)萌芽的先端医療技術推進研究事業の(a)(ナノメディシン分野)では、18 頁の上のほうにありますように、超早期微小がんの低侵襲性治療機器の開発、生体内ナ ノ・イメージング装置の開発などの成果が得られたとされています。(b)(ファーマコ ゲノミスク分野)では、ミューオピオイド受容体遺伝子多型とモルヒネ等の術後鎮痛薬 必要量との相関の解明やベッドサイドでも利用できる唾液を用いた遺伝子診断法を確立 するなどの成果が得られたということです。  (3−3)身体機能解析・補助・代替機器開発研究事業は、新しい発想による機器開発 の推進を目的としており、引き続き一層推進すべき分野であるという評価です。  (3−4)創薬基盤総合研究の(a)(トキシコゲノミクス分野)では医薬品等150化合 物について、肝臓を中心に遺伝子発現データと関連する毒性データ約7億3,000万件を 取得し、大規模データベース及び連動する解析システム等を構築したこと。またストレ ス遺伝子チップを用いた医薬品の副作用機構の解明等の成果があるとのことです。  20頁の(b)疾患関連たんぱく質解析研究事業では、質量分析を中心として、網羅的 に100−150種類のたんぱく質の解析を行い、更に疾患関連たんぱく質の探索・同定結果 に基づくデータベースの構築等、研究が順調に進んでおり評価できるとされています。  (c)政策創薬総合研究事業では、画期的・独創的な医薬品の研究開発等においては、 原著論文の発表、特許取得等大きな成果があり、エイズ医薬品等の研究開発等について は、今後ともより精力的に取り組むべき課題と評価されております。  21頁の(4−1)基礎研究成果の臨床応用推進研究事業では、アルツハイマー病診断プ ローブの臨床試験による有用性の確認等、概ね一定の成果を上げつつあるという評価で す。  (4−2)医療技術実用化総合研究事業の(a)小児疾患臨床研究事業では、我が国にお ける小児腎移植の現状とミコフェノール酸モフェチエルの実態調査などが行われ、一定 の成果が得られているという評価です。  22頁の(b)治験推進研究事業では、12成分(13試験)の医師主導型試験が計画・実 施されており、4成分が治験を終了し、3課題が承認申請に至ったということです。また、 12のネットワークの体制構築を進めており、着実に推進すべきという評価です。  (c)臨床研究基盤整備推進研究事業では、採択された機関において、臨床研究に携わ る人材の雇用や研修等が順調に進み、この事業で整備を進めている施設は、今後、「新 たな治験活性化5カ年計画」において中核病院として活用される予定です。  24頁からはIII.疾病・障害対策研究分野です。(5)長寿科学総合研究事業は、健康寿 命の延伸等「新健康フロンティア戦略」の推進や介護保険制度改革の円滑な実施と評価 に寄与することが期待され、特に介護予防の研究に関しては、技術的基盤等を整備する ことによる経済的な効果が期待されるという評価です。  25頁(6)子ども家庭総合研究事業では、子どもの心身の健康確保、周産期医療体制 の充実等、多様な社会的課題等に対応する実証的な基盤研究を行い、母子保健医療行政 の推進に大きく貢献しているとの評価です。  26頁の(7−1)第3次対がん総合戦略研究事業では、基礎研究の成果を積極的に応用 することで、より大きな成果を上げつつあり、今後発がんの分子基盤に関する研究、効 果的かつ効率的で実践的な予防方法の構築、緩和ケア技術の開発・普及等に取り組んで いく必要があるとされております。  (7−2)がん臨床研究事業の政策分野に関する研究では、緩和ケアや精神的ケア、が ん患者の家族に対する効果的な支援等に資する研究成果があり、「分野2 診断・治療分 野に関する研究」では、延命効果のある効果的治療法の開発等の臨床研究を実施してお り、今後も着実に取り組む必要があるということになっています。  27頁の(8)循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業は、糖尿病、脳卒中、心疾患 などの生活習慣病の研究を進めるもので、高脂血症が脳卒中の危険因子となる可能性な どの知見も得られ、生活習慣病予防のための身体活動量、運動量、体力の基準を定量的 に明らかとし、予防を重視した生活習慣病対策への活用がなされているという評価です。  28頁の(9−1)障害保健福祉総合研究事業では、障害の正しい理解と社会参加の促進 方策など、障害者の総合的な保険福祉施策に関する研究を実施して、政策への提言等の 成果を上げているとの評価です。  (9−2)感覚器障害研究事業は、内耳有毛細胞の再生による難聴の治療、人工内耳の 客観的評価法の開発等着実に成果を上げているということです。  29頁(10−1)新興・再興感染症研究事業は、SARSなどの安全で迅速な抗体検出系の 開発や結核のハイリスク集団に対するツ反よりも効果的なスクリーニング法の開発等の 研究が推進されており、国民の健康の安心・安全のために重要との評価です。  (10−2)エイズ対策研究事業は、予防対策と治療法、及びエイズ医療の体制確立につ いて着実な結果を示しており、行政施策の推進に大きく貢献しているとの評価です。  (10−3)肝炎等克服緊急対策研究事業では、ペプチドワクチンの開発や、ガイドライ ンの妥当性検証等の成果があり、国民の健康の安心・安全のために重要との評価です。  (11)免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業では、アレルゲンの同定のための食物 負荷試験を確立するなどの成果があったということです。  31頁の(12)こころの健康科学研究事業では、「自殺対策のための戦略研究」におい て、介入のための研究プロトコールがとりまとめられ、また思春期保健関連、司法精神 医学に係る研究など、行政施策に直接的に反映された研究も多く、神経・筋疾患分野で も、成果の還元、活用が進み、論文、特許等でも成果があると評価されています。  32頁(13)難治性疾患克服研究事業は、特定疾患の医療に役立てる目的で積極的に研 究を推進しており、治療法の開発等において成果を得ていると評価されております。  33頁から、IV.健康安全確保総合研究分野です。(14)医薬安全・医療技術評価総合 研究事業の成果は、良質な医療提供を推進する具体的なマニュアルや基準の作成等を通 じて、着実に医療政策に反映されているとの評価です。  34頁の(15)労働安全衛生総合研究事業では、職域メンタルヘルス・マニュアルを作 成するなど行政施策に必要とされる成果があったという評価です。  (16−1)食品の安心・安全確保推進研究事業は、総合科学技術会議の連携施策群の一 環として関係府省との連携のもとに実施され、その成果が食品安全行政に適切に反映さ れていると評価されています。  35頁の(16−2)医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業では、 平成18年度からレギュラトリーサイエンスに焦点を絞って、研究課題を整理しており、 評価手法の整備等の成果があると評価されています。  (16−3)化学物質リスク研究事業では、有害性評価手法の迅速・高度化に関する研究 や、ナノマテリアル等の新規物質の安全確保のための研究もあり、化学物質の安全性確 保に向けた評価手法の開発等、着実な成果を上げていると評価されています。  36頁の(17−1)地域健康危機管理に関する基盤形成に関する研究分野では、災害発 生時における個人情報の取扱いや、時間的・空間的な地域分析等の開発等の成果があり、 自治体や関係者において活用されているということです。  37頁の(17−2)水安全対策研究分野の研究成果は、病原生物対策や水道水質基準の 逐次見直し等の検討、浄水技術や貯水槽管理における最適な手法の提案等に資すること ができたという評価です。  (17-3)生活環境安全対策研究分野は、シックハウス症候群やレジオネラ属菌対策な どで、具体的な対応策につながっているという評価があります。以上が記述的評価です。  38頁から終了課題について、評価の定量的な指標の一つとして、原著論文等の集計結 果を示しています。今回数値が得られた502課題について、原著論文は16,144件、その 他の論文が6,867件、口頭発表等総計22,316件ということです。また、通知やガイドラ インに反映あるいは予定されている件数は245件ということです。  39頁の表では、右端に普及・啓発活動が978件ということです。40頁は各分野ごとに 示した表です。  41頁から「おわりに」ということで、厚生労働科学研究は厚労省の施策の根拠を形成 する基盤となるもので、行政的意義が極めて大きいこと、また、それぞれの領域で行政 的に必要な研究課題の公募がなされていると考えられること、1研究課題あたりの金額 は多くはないが、効率的に実施されていること、また評価方法も適切に整備されて、研 究費が配分されており、研究課題の目標の達成度は高く、政策の形成、推進の観点から も有効性が高いと考えられ、成果は国際的な学術誌にも多数報告され、研究成果をWEB 上で公開するシステムも構築され、特に成果が出るまでに時間のかかる研究へのこのシ ステムの活用を今後の評価における課題として指摘しております。また、その性格上、 学術的な成果が多く見られる分野がある一方、原著論文や特許は少ないが、施策の形成 への反映において効果が高い分野もあることを指摘しており、今後とも行政的な貢献及 び学術的成果の二つの観点からの評価が必要である点に十分留意する必要があるという ことを記載しています。  駆け足でしたが、18年度研究課題の成果の評価の説明は以上です。ご審議のほどよろ しくお願いいたします。 ○垣添部会長 ありがとうございました。大変広範な研究課題の内容を非常に駆け足で 触れていただきましたが、科学的側面と行政的側面と両方あり、たくさんの研究課題が あります。おおむね順調に進捗しているという評価をいただいたということだと思いま すが、何かご発言がありましたらお受けしたいと思いますが。 ○宮田委員 表7、39頁の施策への反映件数、たぶん特に厚生労働科学研究費は行政的 な意味が強いと思うので、この件数の数え方をまず教えていただいて、件数の数字に対 する重みづけみたいなものを教えていただきたいのですが。 ○坂本研究企画官 こちらは先ほど説明しましたように、ガイドラインとか通知への反 映があったものを登録していただいているところです。重みづけにつきましては、この システム自体も立ち上げて間もないところですし、逆にガイドライン等の重みという議 論にもなるかと思うのですが、そういうところまではまだ手は回ってないのが現状だと 思います。 ○宮田委員 将来、単なる口頭発表とか論文とは違う重みづけが当然予想されると考え てよろしいのですか。 ○坂本研究企画官 当然、行政施策の反映ということで、その辺を検討する必要はある という考えはあります。 ○宮田委員 最終的にそういう整合性の取れる評価と評価点数、点数配分はいちばん重 要になってくると思うので、そこら辺は是非ご努力をなさっていただきたいと思います。  ちなみに、インパクトファクターですが、インパクトファクターは一時日本でブーム になりましたが、あれは雑誌がいいということを示しているわけで、掲載された論文は、 イパクトファクターを作っている出版社、トムソンという会社が明言していますが、75 %は1回も引用されません。そういう意味では、載ったからといって科学論文がいいと いう1対1関係にない、ということを是非ご理解いただきたいと思います。 ○末松委員 厚生労働科学研究費の特徴をこれから作っていくために、これは前回の会 議でも違った切り口でお話してしつこくなるのですが、成果をこのようにある程度数値 化して出していったときに、厚労科研は、国民の保健医療とか福祉に資するものを成果 として出していくのが目的ですから、そういうところできちっと成果の上がった機関で、 例えば人に役立つものに直結した評価を得たところに対して、しっかりと間接経費を当 てていく。つまり、人に関するスタディで機関対応をしているIRBのコストは、かなり 馬鹿にならない。そこをしっかり整備しないといけないということを、また私はここで 強調したいと思います。つまり、このように数値化する努力をされているところは非常 にいいと思うのですが、それが次の研究とか、あるいはそこの研究機関の次の施策に何 らかの形でこの成果がフィードバックされることは、研究者のモチベーションを上げる 上でも非常に重要なことですので、少しでもそういう人に役立つ部分というところで成 果として出てきたものが、そこの機関のIRBの整備等に使える費用の拡充等に反映でき る形をつくっていただけると、ほかの競争的研究資金とは明確な区別化ができて、厚生 労働省だなという感じは出るのではないかと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。 ○垣添部会長 大変重要なご指摘で、末松委員は前回も間接経費のことをお触れになり ましたが、そのことの発展ということになろうかと思いますが、何か事務局からありま すか。 ○藤井厚生科学課長 確かに厚生労働科学研究費補助金は、厚生労働行政に非常に関係 する研究を主にやっていただいているということですので、成果をどう評価していくか については大変重要なことだと認識をしています。先ほど宮田委員からもご指摘があり ましたが、ここでは「施策への反映」の観点から評価しています。単純に件数でいまの ところは集計をしていますが、それも先ほどの説明の中にありましたように、施策への 反映をガイドラインとか通知の中に研究成果が盛り込まれたかということについて、単 純に件数として挙げているということです。それの重みづけをどうできるかということ についてはなかなか難しい面もありますので、我々も少しいろいろな面で研究をさせて いただきたいと思いますが、是非、委員の方からもこういう考え方があるのではないか ということがありましたら、ご示唆をいただければありがたいと思います。  末松委員から、研究成果を踏まえて、間接経費にそれを反映させる仕組みをつくった らどうかということですが、それにつきましても、この研究自体は、個人の研究者また はグループの研究者の方がある課題について研究をされた成果という形ですから、それ がすぐに施設の間接経費という形で成果を反映させることが、なかなか現実難しいとい う面もあります。間接経費については何回もご指摘があり、お答えをしていますように、 我々としても、できるだけその必要性を認識して確保するために努力をしていきたいと 思いますので、その段階で、どういうふうに、一律に配るのか、それとも少し重みづけ をするのかというときには、何らかの形でこういう研究成果、または研究者が所属する 機関でのいろいろ審査をされるときの役割、そういったものを考慮する必要があろうか と思います。それについても少し今後の検討課題としたいと思います。 ○垣添部会長 直ちに間接経費が充当されるとは皆さんは思っておられないと思います が、その中でも行政的な側面からも大きな成果を上げた研究に関しては、研究者あるい は研究グループに対するインセンティブという観点からも、何かそういう重みづけがで きる工夫をしていただければ大変ありがたいと思います。 ○松本委員 この成果に関する評価書の性格についてですが、個々の研究者、個々の研 究グループの業績に対する評価というよりは、厚労省の科学研究費補助金全体に対する マスの評価だというふうに理解をしているのですが、そうしますと、いま議論されてい る個々の研究の成果が行政に反映したという個々の研究者レベルの評価自体は、ここの 主たる課題ではないわけですよね。そして、いまのような頑張ればご褒美を上げるとい う制度は、例えば次の研究プロジェクトに応募した場合に、過去のそのグループがきち んとした成果を出していたかどうかというところを反映する形で、次のプロジェクトの 採択が行われているのかどうかといった点はいかがでしょうか。 ○垣添部会長 これは新しいものですから十分答えられないかもしれませんが、いまの 段階でもしお答えできることがありましたら。 ○藤井厚生科学課長 確かにここにお示しをしている成果、集計表は、個々の課題の積 み上げを分野ごとにまとめてしまったものということですから、性格としては個々の課 題の成果というよりも、その分野の成果という性格になっていようかと思います。個々 の研究課題について成果を反映する仕組みは、同じ主任研究者の方が違う課題でアプラ イをされてきたときには、関連の課題ということで書いていただくことにもなっていま すので、そういう成果を全く無視するというのではなくて、個々の事業の課題の選定委 員会、事前評価委員会と言っていますが、その場では参考にされながら評価、選定がさ れているということです。 ○垣添部会長 ほかにありますか。これだけ広範な話ですからまだまだいろいろご意見 はあるかとは存じますが、時間の関係がありますので本日の議論はここまでにします。 お気づきの点や追加のご意見等は、お手元に配られている別紙で1週間後の7月2日(月) までに事務局宛に連絡いただけましたら、本日いただきましたご意見と共に取りまとめ て、再度の会議は開かないで、科学技術部会としての最終的なバージョンを作りたいと 思いますが、その作成に関しては部会長と事務局に一任いただけますか。 (承認) ○垣添部会長 ありがとうございます。それではご異存ないと思いますので、そのよう に進めますのでよろしくお願い申し上げます。  続きまして議事の2、「厚生労働科学研究費補助金の不正経理への対応について」、 お願いします。 ○藤井厚生科学課長 お手元の資料2に基づきましてご説明をします。資料2のいちば ん上の四角の中にありますように、昨年8月に総合科学技術会議から出された指針と、 残念ながら最近ありました研究費の不適正な使用問題等を踏まえまして対応を検討した というものです。  資料2をご説明する前に、資料2の別添1、別添2をお付けしていますが、そちらのご説 明を先にします。この別添1は表題にもありますように、総合科学技術会議が昨年8月に 出しました共通的な指針に対応して、現在、厚生労働省がどういう対応をしたか、考え ているか、というものを整理した表になっています。  研究費の配分機関についての項目を1頁目に整理しています。左側の欄をご覧いただ きますと、(1)ルールの整備・明確化についての指摘がありまして、それに対しては右側 をご覧いただきますと、厚生労働省の対応として、ホームページに事務手続き等を掲載 しているほか、必要なハンドブックを作成中であることが書いてあります。  (2)効果的・効率的な検査の仕組みにつきましては、現在、省内で対応済みになってい ます。(3)の機関経理の徹底につきましては、来年度の研究費公募から研究費の管理体制 を各機関で充実してもらう方向で検討しているところです。(4)不正使用等を行った研究 者に対する応募資格制限措置につきましては、すでに全省庁横断的に実施はされている ところです。  (5)研究機関のルールの明確化については、現在、事務的に検討を行っているところで す。(6)研究機関で管理が不十分な場合のその機関に対する改善措置についても、同じよ うに検討をしているところです。  (7)研究費の不合理な重複・過度の集中排除につきましては、「対応」にありますよう に、来年度から文部科学省が主体になって開発をしている「研究開発管理システム」に より、省庁横断的な対応が図られる予定になっていまして、厚生労働省についてもそれ を活用する予定になっています。  次の頁をご覧いただきますと、これが研究機関についての項目になっています。(1)機 関経理の徹底、研究費の使用ルールの整備、(2)研究費の管理、鑑査体制の整備、(3)不正 事案の調査報告、処理体制の整備、これはいずれも右側にあるような観点から検討を進 めているところです。(4)単年度で研究費を使用できなかった場合の翌年に繰り越すため の措置等につきましては、すでに文部科学省の対応を参考にしつつ、整合性をとった形 で研究者の方に周知しているところです。  次に資料2別添2をご覧いただきたいと思います。今回問題になりました研究費の詐取 の事件について、現時点で私どもが把握をしていることを踏まえての対応です。事件の 概要ですが、1件目は、自分の部下を分担研究者として研究事業に参加させ、2件目につ きましては、自らが研究協力者として参加をして、3件目は、主任研究者に働きかけて、 いずれも消耗品を購入した事実がないにもかかわらず、架空の請求書等をもって研究費 の返還を免れたというのが概要です。  これらにつきましては、研究機関において機関経理が徹底をされ、消耗品の納入につ きましてきちんと確認をされる体制になっていれば、いずれも防げた事例ではないかと 考えています。そのため考えられる対応案のところでは、機関における研究費管理の徹 底をまず挙げています。その他、ここにはお示しをしていませんが、分担研究者等の選 定に関して研究費の担当者が関与をしてということも、この事件の経過の中ではありま した。これは研究費の不正経理には間接的に関係はしていると思いますし、それよりも 研究課題を公平・透明性をもって選定するという観点から、何らかの対応の検討が別途 必要ではないかと考えています。  これらを合わせたものが先ほどご覧いただきました資料2です。重複しますので簡単 に申し上げますと、制度の周知徹底という中ではハンドブック等の作成をしているとこ ろです。効果的・効率的な検査というところでは、研究機関に研究費の管理・監査体制 の確立をしてもらう方向で検討をしています。研究機関の責任の明確化につきましては、 同じように機関経理の徹底について具体的な内容の検討をしています。不正を行った研 究者に対する措置は、省庁横断的に措置済みです。不合理な重複および過度の集中の排 除についても、省庁横断的なシステムの稼働に合わせて厚生労働省もその活用を図って いく予定です。研究費の管理に問題がある研究機関への措置については、そこにありま すように、問題が是正されるまでは研究費の支給を見合わせるなどの措置の検討をして いるところです。  いま検討中のこれらの事項につきましては、お手元の参考資料3に、文部科学省が総 合科学技術会議の共同指針を踏まえまして、今年定めました「研究機関における公的研 究費の管理・監査のガイドライン」を参考にしながら、それと整合性もとりつつ検討を 進めたいと考えています。以上です。 ○垣添部会長 ありがとうございました。現在の時点でわかっている不正、詐取の内容 も含めて、厚生労働省としての対応をご説明いただきました。何かご発言ありますか。 ○末松委員 資料2ですが、「不正経理への対応について(案)」があります。そこの 下から2つ目の「不合理な重複及び過度の集中の排除について」という項目があります。 私が是非お願いしたいのは、文部科学省等の研究費で、特に科学研究費ですが、重複の 定義は非常に明確に定義をされています。したがいまして、ここでも「他の競争的資金 等」と書いてありますが、ここに「等」と書いてあるのはしかたないと思うのですが、 そこの定義づけをしっかりと厚労科研のレギュレーションの中に入れていただくことを 是非お願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○北村委員 いまの末松委員の意見と重複するところがあるかもしれませんが、厚生労 働科学研究費の同一テーマに関して民間の研究費を導入している場合に、それを重ね合 わせての研究費の使用を、特に厚生労働省は避けるようにという指示があると思います が、そのような項目はどこに書いてあるのですか。いまの所に入るのでしょうか。今後、 民間研究資金との合わせ技でもって研究を推進するということは、費用が足りないこと があっての上なのですが、そういうのは今後どう対応されるのか、どこに記入されてい るのか、教えてください。 ○垣添部会長 事務局、お願いします。 ○藤井厚生科学課長 現時点では厚生労働科学研究費補助金につきましては、他省庁の 研究費だけではなく民間法人からの研究助成につきましても、全くの同一研究課題の場 合には、重複に当たるので避けていただきたいというお願いをしています。それはいく つかの理由がありまして、一つは、例えば国の研究費の場合ですと、いろいろな省庁か ら同一課題で研究費をもらっていただくことは、あまり好ましくないのではないかとい うことがあります。  それに加えて同一研究テーマで研究費を、例えば民間からもらっておられることにな りますと、非常に経理をきちんとしていただかないと経理が不明確になるということも ありまして、厚生労働省では、従来、民間からのものについても、同一研究課題の場合 には避けてくださいというお願いをしてきたところです。  他省庁の研究費の取扱いをいくつか見てみますと、他省庁では自分の省庁以外からの 国の研究費と独立行政法人からの研究助成について、重複が好ましくないという整理を されています。私どもはその違いを改めて認識しましたので、そこをどうしていくかは 検討しなければならないと思っています。その一つの外的な要請といいますのは、総合 科学技術会議で、各省庁の研究費のいろいろな決まりごとがかなり違っている部分があ る、それは研究者にとって不親切ではないか、できるだけ基本的な部分については統一 をしたほうがいいのではないか、というご指摘があります。そういうことも十分念頭に 入れなければならないと思っています。また、この部会での各委員のご意見も踏まえな がら、そこは検討をさせていただきたいと思っています。 ○垣添部会長 いまの北村委員のご指摘は、実際に研究を推進していく上で、公的研究 費だけで足りない部分を民間の研究費と重ね合わせてというのは、いい研究成果を得る 上である程度やむを得ない部分もあると思いますので、その部分が公正に行える仕組み も是非検討いただければと思います。 ○松本委員 いまの部分をもう少し明らかにしていただきたいのですが、重複の意味は、 いまおっしゃった10必要な経費のうち厚労科研から8出たからあと2を民間とか、別の行 政から頂くのも、重複という定義ですか。私は10でいいものを10、10合わせて20もらう のを重複だと理解していたのですが、そのあたりはいかがですか。 ○藤井厚生科学課長 そこは大変難しいところです。厚労科研の場合は基本的には10分 の10の補助金的な扱いをしていますので、厚生労働省から助成をした研究費でできる範 囲のものを、当然、研究計画書には書いていただいて、その範囲でやっていただくのが 原則になっています。  しかし、研究はいろいろと拡張性もあるでしょうし、やっていく中で考えていなかっ た、当初想定をしていなかった費用が必要になるという場合もあると思います。そうい うものをどうにか研究者の方が苦労をして、確保しながら研究をしておられるというの が一般的かなと思っています。先ほど松本委員がご指摘をされたように、10と10で20で という形で最初から想定をされる場合は、あまり多くないかと思っています。 ○北村委員 実際、私も民間の財団のこういう研究資金の審査をしているのですが、そ して厚生科学の研究のほうも審査をしているものですから、その中には1人の研究者が 大体同じテーマで本当に10年、15年とやっている人がいます。そういう人が民間財団の 研究資金も取っておられるし、厚生科学も取っておられるというのは、わりかた目にす るのです。ところが、厚生労働省としては民間資金からの重複も避けろということにな っていますので、民間の財団そのものもどうしたらいいのだと困っている現状はあるみ たいです。ですから、いまのような7と3を足して10にしてやっているものと、10+10で 10を超えているものとは、区別ができるのかどうかわかりませんが、いまの産官学連携 ということを謳っている時代ですので、何とか7+3で10でやっている人たちの支援がで きる方向性も考えていただくといいのではないかと思います。 ○末松委員 北村委員のご意見に関連してですが、是非お願いしたいことは、何ができ ないと書くのではなくて、何ができるのかということを明確に書いていただきたい。い まのままのレギュレーションですと、北村委員のご指摘になったことが起きて非常に難 しいことになる。これは7+3とか10+10の問題で禅問答のようなことをするのではなく て、こういう一定のレギュレーションのもとで何ができるというルールを明確にしない と、我が国のEBMのデータ取りは壊滅的な打撃を受ける可能性があると私は考えていま すので、是非それはそのようにお考えいただきたいと思います。 ○宮田委員 いま言ったことは非常に基本的ですが、資料2の「別添2」で詐取事件とい うと、何かみんなすごい悪いことをしたような印象を受けます。私が知っている限り1 例は確信犯で、たぶん自分の利益のために動いたのですが、この事例を見ていると、科 学は予測不能で、当初の予算執行とずれてきたために、その科学研究費を何とか継続し たいために工夫しているのだと思うので、先ほどの末松委員のご意見に付け加えさせて いただくと、もっと柔軟に科学の進展に合わせた形で、一部やっていると、この(2) 研究機関の(4)で指摘していますが、もっと使いやすい、結果的に研究者が詐欺にならざ るを得ない仕組みに追い込むことのないように、もっと弾力化を進めていただきたいと 思っています。 ○垣添部会長 ありがとうございました。まだ当然ご意見はあるかと思いますが、申し 訳ありません、先に進みます。いまの議論と少し重なりますが、議事の3「厚生労働科 学研究費補助金配分機能の機関の移管のあり方について」ということでお願いします。 ○藤井厚生科学課長 お手元の資料3-1、3-2についてご説明を申し上げたいと思います。 前回、科学技術部会でご指摘がありました配分機関の関連で、NIHの状況と、我が国に おいて研究費を配分している他省庁の機関が自ら研究機能を併せ持つ場合に、どのよう に利益相反の管理をしているのかということについて、今回調べた範囲でご説明をした いと思います。  資料3-1です。観点としては課題にありますように、研究機能を持つ機関が配分機能 を合わせ持つ場合の利益相反のマネジメントの観点です。前回もご質問はありましたが、 所内研究と所外研究について、改めて定義をお示ししています。所内研究はその機関で 実施することを目的にした研究費で行われる研究でして、所外研究については、その機 関が配分をする研究費により通常外部の機関で実施される研究のことです。NIHにつき ましてはよくご存じの委員の方が多いかと思いますが、1頁の下半分にありますように、 アメリカの健康福祉省、いわゆるアメリカの厚生労働省の1つの機関です。  2頁です。2頁の上にはNIHの組織をお示ししています。NIH自体は27の研究所等の集合 体です。後ほどご説明をしますが、いちばん右下のほうに大きくCenter for Scientific Reviewと書いてありますが、ここで研究費の1次審査をして、その上の24のInstitutes、 またはCenterで、2次審査をするということが行われています。下のほうですが、各々の InstitutesとCenterにはNational Advisory CouncilとBoard of Scientific Counselors がありまして、競争的資金をNational Advisory Councilで行い、所内研究の評価を Board of Scientific Counselorsで行っているということです。  次に3頁です。予算についてです。予算は円換算にして3兆円余り、日本のライフサイ エンス関係予算の約10倍になっています。所内研究についてはその約1割になっています。  下のほうが申請をされた研究費の審査方法です。基本的には2段階審査ですが、細かく は4頁になります。第1段階審査につきましては、特別な研究費を除きまして、ほとんど の申請書がCenter for Scientific Review、通称CSRという所で審査が行われます。評 価に対応する分野が220ありまして、そのどの分野に申請された研究費を割り振るかと いうのは、CSRの担当者が行なっています。各々のstudy sectionには12名から24名の評 価者、専門家が確保されており、そのうちの3人に申請書の評価の依頼をするということ です。第1段階審査における評価は純粋に科学的な観点から実施され、総合評価で上位50 %のものが第2次審査へ回されます。先ほど述べたように、第2段階審査は各Institute Centerで実施されます。メンバーとしては、科学者の他に一般の方、オブザーバーとし て政府関係者が出席しております。この段階では、政策的な観点からも含めた審査が実 施されているということです。  次に、所内研究と所外研究に関する規定です。所内の研究者は原則所外研究費へ応募 ができないことになっております。5頁をご覧いただくと、国内において、研究機能と 研究費配分機能を併せ持つ機関がどのように対応しているかが出ております。関係の省 庁に問い合わせましたが、対応が若干違う部分もありますので、ここではその対応例と いう形で4点にまとめております。1点目は所内研究費と所外研究費の経理をきっちり 分けている。2点目は配分機能を担う組織を別に設置している。3点目として、選定にお いては外部有識者からなる独立性の高い委員会において厳格な評価をしている。4点目 は所外研究者の応募の制限をしているということです。資料3-1の別添は欧米諸国の主 な研究助成機関の概要ですが、詳細についての説明は省略いたします。  資料3-2をご覧ください。前回の部会においても、国レベルでの配分機関のあり方に ついての動きを説明いたしましたが、ここにまとめたのは前回の部会以降、きちんとし た形で報告等がなされたものの中で、配分機関のあり方について触れられているものの 抜粋です。最初は「イノベーション25」の関係です。1.の(1)2)の下に「競争的資金 の拡充・見直し」とありますが、下から3行目をご覧いただくと、競争的資金の配分機 能を原則として独立行政法人に移行させることにより、研究費の複数年契約を拡大する 等、年度を越えた使用の円滑化の推進をすることが謳われております。  2.は、総合科学技術会議で研究費制度についてまとめられたレポートです。第3章具 体的方策(1)の基礎研究の多様性・継続性の確保と出口につなぐシームレスな仕組みの 構築という中で、具体的な方策として、2行目の終わりにあるように「一つの制度は、 一つの配分機関に集約されることが望ましい」としております。一つの制度とはどのよ うなことかということを総合科学技術会議とやり取りした結果、厚生労働省で言います と厚生労働科学研究費補助金、文部科学省で言いますと文部科学省科学研究費補助金と いう一つの大きな塊についてを一つの制度と言っているということです。1頁の下の(5) の公正・透明で効率的な配分・使用システムの確立の現状としては、政府全体では6割 の制度が本省で執行されているが、下から2行目にあるように、独立行政法人で執行す るのではなく、国の機関に一部移管している制度もあるということが書かれております。  2頁の具体的方策の中では、最初の印の所にあるように、競争的資金の評価・配分機 能を、本省各課から、原則として独立行政法人に移行する、また5行目の括弧書きにあ るように、研究機関と配分機関の両方を併せ持つ機関に移管する場合は、利益相反のマ ネージメントが必要であるといったことが指摘されております。なお書き以下の所です が、その前提として、独立行政法人がその機能を発揮しやすい環境の整備が必要とあり、 次の印の所の前段に具体的なことが書かれておりまして、積立金の中期目標期間を越え た繰越しによって、研究費の複数年契約の拡大ということが可能になるということです。  2段落目の「また」以下にあるように、本省で持っている制度についても、次年度に 研究費を繰越す制度(繰越明許費制度)の要件の明確化、周知を行い、年度を越えた研 究資金の使用の円滑化を推進する。なお書きの所では、米国の制度にあるように、一定 の範囲であれば年度をまたいで使用できる仕組み、研究期間の始期を資金の交付時点か らにするということで、日本で言うと3月までに研究費を使い切らなければならないと いった弊害を是正するような工夫が、中長期的課題として必要だろうとの指摘がありま した。 ○垣添部会長 前回の科学技術部会で、アメリカのNIHの資金配分の中身をもう少し詳 しくした資料を提供してほしいとの要請があったのですが、それに応えていただいたの と関連して今の説明がありましたが、何かご発言があればお願いいたします。 ○宮田委員 資料をありがとうございました。もう少し知りたかったのは、どれぐらい の費用と人数をかけて研究費を配分しているかということです。研究をより公正に配分 し、なおかつ国民の健康に資するような形で配分するためには、たぶんそれほど機械的 にはできないだろうというのが一つあるので、その辺のエフォートにどれぐらいのコス トがかかるか。前回の会議で言われていたように、各疾患別のナショナルセンターに分 けて、その費用負担あるいは人材も含めてタレントが十分いるのかといったことを議論 するためにも、その資料がほしいというのが1点あります。  もう一つは、NIHの場合、ExtramuralとIntramuralに関しては、たぶん10%ルール といった外形的な枠があるはずです。この間も指摘されましたが、要するにNIHのよう に潤沢な予算のない所で、一方、ナショナルセンターは国民のために研究機能を保存し つつ外部にも配るといった矛盾がある所ですから、その場合の金額はNIHのように機械 的にやっていいものかということについては非常に疑問に思っているので、本当はその 辺のルールを知りたかったのです。今回仕組みはよくわかったのですが、実際の運営の コスト、タレントの問題、ExtramuralとIntramuralの比の問題、その比を誰がどう定 めているのかといったことは今後の議論で非常に重要になると思います。 ○垣添部会長 たぶん、いまは答えられないことだと思いますので、また折を見て答え ていただこうと思います。他にご意見があればお願いいたします。 ○宮村委員 NIHのシステムで非常に大きな特徴は、Intramural ResearchとExtramural Researchをはっきりと分けていることで、全体の研究機関と配分機関を集中させること の大原則になっていると思います。いま日本で、特に厚生科研費の使途について少し批 判があるのは承知しておりますが、日本の場合、IntramuralとExtramuralの研究費の 使い方がそうはっきりできない行政的なミッションワークといったものが非常に多くあ るのです。それは今日の資料1-1の最後のまとめにもありましたが、厚生科学研究費の いちばんの特徴は、行政的な貢献を学問的な競争的資金に基づいて評価することだけで はない、そういった大きな二面性があることを考える必要があると思います。  日本の場合はIntramuralとExtramuralの境界のようなプロジェクトが随分たくさん あります。がん研究もそうだと思いますし、感染症研究などは非常にスペシフィックな 領域ですが、それらを班形成するときにはどうしてもオールジャパンの、全てががんセ ンターでできるわけではないし、全てが感染症研究所でできるわけではないのです。い ろいろなexpertiseを持ったアメリカの底力と日本の底力とではまだ相当な違いがある わけですから、一人二役、一人三役をしながら厚生行政にコントリビュートしていかな ければいけないとすると、日本は日本なりの工夫をする必要があると思います。一つの 配分機関に、研究機関も持たずに集中させることができれば可能かもしれませんが、そ れを作っていくには相当な工夫が必要だと思います。 ○垣添部会長 大変重要な指摘だと思います。 ○末松委員 資料3-2に出てくるのですが、総合科学技術会議からの抜粋で2の競争的資 金の拡充と制度改革の推進について、競争的研究資金全般にわたって、2頁の最後に、 「米国の制度にあるような、特段の手続きなしに一定範囲内であれば年度をまたいで使 用できる仕組み」が中長期的な課題として検討することが望まれるとあり、これは非常 に踏み込んだポジティブなものだと思います。特に厚労科研の場合は臨床研究など、1 年では結果が出ないもの、継続的なフォローアップがスムースにいかないと、患者への いろいろな対応で非常に問題が生じるなどといったことを考えると、ちょっと言葉が過 ぎるかもしれませんが、すべて文部科学省がいままで作ってきたレギュレーションに沿 った形で厚生労働省がやっていくのではなく、むしろそのようなところにこそ厚生労働 省のイニシアティブで、特定の手続きなしに年度をまたいで使用していくための最低限 のルールといったものを作り、特定の課題に対しては適用していくという踏込み方もあ るのではないかと思います。つまり、限られたバジェッドで効果的に研究を進めるため には、そういった部分が必要になるのではないかと思います。これも是非ご検討いただ ければと思います。 ○垣添部会長 これも大変貴重なご指摘だと思います。 ○金澤委員 私は総合科学技術会議の一員なのでちょっと言いにくいのですが、日本で はアメリカのような形ではない形で研究している部分がありますから、宮村委員が言わ れたことは極めて大事なことだと思います。特に、全国レベルで研究者を集めての班研 究というのは日本独特のものですし、それによっての成果が極めて大きい国だと思いま すから、それを失うことがないような形で考えてほしいと思います。アメリカのものを そのまま持ってくるようなことをしては厚労科研は駄目になる危険性があると思います。  特にIntramural、Extramuralといった考え方については、ちょっと言いにくいのです が、下手をすると日本では固定しますし、それが恐いのです。しかも、みんな平等にし ようとします。例えばがん研究に関するもの、精神神経関係のものは同じ数字であろう はずがないのです。しかし、たぶん同じ数字になるでしょうし、それが恐いのです。私 は当面避けてほしいと思っております。 ○木下委員 例えば資料3-1のように、アメリカのNIHの仕組みそのものについてはよく わかりました。このような調査の際は通常よいことが書いてあります。いまの皆様の意 見のとおり、我が国特有の仕組みもありますが、実は運用の点ではこのような問題があ るということが必ずあるはずです。そのようなネガティブなことも含めて、問題点を明 らかにした上で、我が国独特の、我が国に合ったような仕組みでいかないと、諸外国の 真似事では機能しないことがあると思います。従って、悪いことと、いいことばかりで はないことを是非調査願いたいと思います。 ○垣添部会長 しばしばアメリカではとか、あるいは欧米ではということで、予算規模 などといったことを無視してシステムだけが語られるというポイントを突かれたのでは ないかと思います。大変短時間でしたが、極めて貴重なご意見を多数いただきました。 ありがとうございました。頂戴した意見は今後に活かしていきたいと思います。先に進 めます。議事4の「臨床研究に関する倫理指針の見直しに関する専門委員会の設置につ いて」、事務局より説明をお願いいたします。 ○新木研究開発振興課長 資料4に基づき説明いたします。平成15年7月30日に臨床研究 に関する倫理指針を当厚生科学審議会科学技術部会で定めていただきました。その中の 第6に見直しの規定がありますのでお読みいたします。「この指針は必要に応じ、また は平成20年7月30日を目処として、その全般に関して検討を加えた上で見直しを行うも のとする」となっております。このような見直し規定を踏まえ、また資料4に書いてあ るとおり、その後臨床研究の必要性、必要にもかかわらず非常に難しい状況にあるとい った振興の必要性など、更にさまざまな問題が指摘されておりますので、それらを合わ せ、社会情勢の変化等も踏まえながら見直しを行う必要があると考えております。この ため、見直しの規定にある来年7月までにでき上がるように検討を行っていただければ と考えておりまして、当部会に専門委員会の設置をお願いする次第です。  検討課題等については、臨床研究の倫理指針が平成15年にできて以降、先ほど述べた ようなさまざまな検討課題について、幅広く専門的な見地から検討していただければと 思っております。構成については、実際に臨床研究をされている方、医療に関係する更 に幅広い方々、また法学や倫理学等の専門家の方を含む検討会をお願いできればと思っ ておりまして、指名については本部会の運営要綱に基づき、部会長から指名していただ ければと思っております。4.のその他ですが、臨床研究は当然厚生労働省関係のナショ ナルセンター、国立病院機構だけでなく、大学、一般の医療機関でも広く実施されてい ることから、事務局としても関係する文部科学省と十分な連携を取り、進めていくよう な運営を心掛ける必要があるのではないかと思っております。 ○垣添部会長 臨床研究に関する倫理指針の見直しですが、ただいま説明があったよう に、科学技術部会長がお願いする形で委員会を立ち上げ、課題、構成、その他に関して 検討していただくということですが、よろしいでしょうか。 (了承) ○垣添部会長 ご了解いただいたということで、先に進めていきたいと思います。次に、 5.のその他に入りますが、(1)の戦略研究について説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官 今年度より実施される戦略研究の2課題、腎疾患対策のための戦略 研究、及び感覚疾患戦略研究について、資料5-1に基づいて担当課より説明いたします。 ○疾病対策課 まず、腎疾患のための戦略研究について説明いたします。研究班におい て、腎臓病重症化予防のために現在どのような問題があるかということについて、第一 線の臨床研究者及び関係団体から意見聴取を行いました。今年度の戦略研究としては「か かりつけ医/非腎臓専門医と腎臓専門医の協力を促進する慢性腎臓病患者の重症化予防 のための診療システムの有用性を検討する研究」という課題名で行います。本研究が目 標とするアウトカムは、5年後の透析導入患者を、予測される透析導入患者数から15% 減少させることです。  研究方法は、かかりつけ医あるいは非腎臓専門医に通院中の慢性腎臓病患者を対象に 調査研究を行います。地区基幹病院あるいは地区医師会を中心としたかかりつけ医と専 門医間の診療連携ネットワークを募集いたします。「慢性腎疾患診療支援システム群(介 入群)」と「通常診療連携群(対象群)」との2群に割り付ける比較試験を実施し、そ の効果を比較することとしております。全ての参加患者とかかりつけ医には、「慢性腎 疾患診療指針」を明示し、その遵守率と達成度を作成いたします。この指針の中には受 診頻度、食事、血圧、尿蛋白の測定、腎機能測定などの項目と、その目標値を含む管理 目標をあらかじめ設定いたします。その上で、「慢性腎疾患診療支援システム群(介入 群)」ではかかりつけ医と腎臓病専門医間での患者情報の共有化、及び診療の役割分担 の協力、かかりつけ医への栄養療法支援、受診状況調査を介する受診促進支援などの機 能を含むシステムを構築して利用していくこととしております。本研究で必要な事項と しては介入群のシステムの具体的な内容、診療連携ネットワークに参加するかかりつけ 医/非腎臓専門医、腎臓病専門医の数とネットワークの運営方法、対象となる患者数と いったところがあります。本研究を実施する機関は財団法人日本腎臓財団です。 ○障害保健福祉部企画課 引き続き、感覚器障害戦略研究について障害保健福祉部より 説明いたします。資料3頁をご覧ください。感覚器障害戦略研究については聴覚領域、 視覚領域についての2課題の実施を考えております。聴覚領域の状況としては聴覚障害 児、特に重症の聴覚障害児についてはその一部に言語発達の遅れが見られることが認識 されております。そのような場合、その後の学習に困難を生じ、十全な能力の発達、発 揮が妨げられるおそれがあると認識されております。関連する要因としては療育の開始 時期や内容、障害の発見、人工内耳の実施時期、その他療育などのさまざまな要因が指 摘されておりますが、十分に解明されている状況ではありません。  研究としては、0〜15歳の聴覚障害児を対象に広く言語発達の研究を実施することと しております。併せて保健・医療・福祉・教育その他の状況を把握し、言語発達との関 連を分析することによって明らかとなった介入項目について介入研究を実施いたしま す。それによって長期的に聴覚障害児の言語能力の向上を図ることを目指していきます。  二つ目の視覚障害については、高齢化の進展等に伴い、視覚障害をきたす眼科疾患が 増加しております。一方、視覚障害の発生と重症化を予防する手法については一部関連 が指摘されているものの、十分に解明されていないという状況があります。研究課題と しては、「視覚障害の発生と重症化を予防する手法に関する介入研究」を実施いたしま す。具体的には、地域住民の眼科的状況を把握するという研究を実施いたします。併せ て眼科以外の医学情報、生活習慣、受診動向などを集積し、眼科的状況との関連を分析 し、明らかとなった介入項目によって、介入研究を実施するというものです。また、過 去において眼科的状況を既に調査した地域において、これらの研究を実施することを想 定しております。これによって明らかとなった結果から、視覚障害の発生と重症化の減 少を目指し、併せて感覚器障害の克服と発生、重症化の減少を目指していきたいと考え ております。実施機関については財団法人テクノエイド協会を予定しております。 ○垣添部会長 腎疾患対策のための戦略研究については疾病対策課から、感覚器障害の 戦略研究に関しては障害保健福祉部から説明がありましたが、平成19年度の戦略研究の 内容について何かご意見があればお願いいたします。 ○宮田委員 事情がわからないのでお尋ねします。これらの課題はいずれも重要だと思 いますが、腎臓疾患重症化予防のための戦略研究のアウトカムとして、5年後、透析導 入患者の数を予想される数より15%減少させることとしています。要するに、これは患 者の管理を適正に行えば十分に超えられる目標と考えてのことですか。 ○疾病対策課 専門家会議で臨床研究者から提示され、検討の結果、適切に管理すると この程度の数字が出るということから、これを目標といたしました。 ○垣添部会長 他に何かあればお願いいたします。 ○笹月委員 この戦略研究はアウトカムも非常に明確ですし、プロトコールもきちんと 決められていて成果が期待できる非常にいい仕組みだと思うのですが、プロトコールが どこまで詳細に決められていて、どこまで遵守しなければいけないのかということも非 常に大事なポイントだと思います。その点はどのようになっていますか。 ○障害保健福祉部企画課 確かに、戦略研究の詳細についてはまだ決まっていない点が あります。研究の実施については、その可能性と言いますか、種々の状況等を勘案しな ければ、実施そのものが困難と考えておりますので、主任研究者、研究リーダーの確定 と並行して実際の研究計画を詰めていきたいと考えております。 ○笹月委員 そこは大変大事なところです。最初に企画する人たちは、言葉は悪いです が、現実に則さないこととなってしまい、応募して、いざスタートさせようとすると、 実状になかなか合わないためにプロトコールを詳細に作り直さなければいけないという ことがあります。そのために仕事のスタートが非常に遅れたり、効率が悪くなることが あるので、プランニングのところは詳細にやることが非常に大事だと思います。 ○垣添部会長 これまでの2カ年の経験から、いま言われたように、プロトコールを作 るのに相当時間がかかり、臨床研究そのものに使える時間が限られてくるといった問題 がありましたので、ただいまの発言は活かしていただけると思います。 ○藤井厚生科学課長 前回の厚生科学審議会科学技術部会において、戦略研究について は若干触れましたが、いま笹月委員から指摘があったように、研究のためにプロトコー ルを作っても、研究をしている間に微修正どころか、かなり修正するケースも現在出て きております。そこで、戦略研究のスキーム自体をもう少し効率的、効果的に進めるた めには少し変更したほうがいいのではないかという観点から、事務局としてもいろいろ 検討しておりますので、その検討結果を踏まえて当部会にご相談させていただきたいと 考えております。 ○宮田委員 要するに、プロトコールなるものができているのかというのと等価の質問 なのですよね。そのような意味ではアウトカムをこれだけ明確に国民に約束してしまう わけです。本当にできるかどうかということは、笹月委員のご指摘を待つまでもなく最 初から提案されているもので、例えばその仮説が15%から12%になりましたといった程 度の話ならばまだ納得できるのですが、今回の腎臓に関して言えば、まだその段階では ないということですか。 ○疾病対策課 今回出された適切にやると15%というプロトコールは、研究者が実際に 指針やスキームを作った結果からということです。 ○今井委員 感覚器障害の聴覚障害については地域住民が対象ということで、いわゆる 患者ではない人々から見始める形になっていますが、腎疾患に関しては慢性腎疾患の患 者に限定して透析導入にならないようにするという形を考えているようですし、感覚器 障害の中でも、視覚障害児に固定して始めるようになっております。私は泌尿器科医を しているのですが、慢性腎疾患の内容もたくさんあって、慢性腎疾患の患者に固定せず、 腎後性腎疾患のようなものをきちっと洗い出していくと、治療法がありますから15%は 確実にOKになると思うのです。ただ、慢性腎疾患がすべて腎炎のようなものに限られて しまうと、ちょっと難しいのではないかということがあります。  また、聴覚障害児に関して、現場では小児科が忙しく、聴覚障害児を早い時期に見つ ける術がなく、小学校入学のころになってから「あれっ」という話などをかなり聞くわ けです。ですから、できればもうこの時点から、単に決められている疾患のある人間を 対象とするのではなく、洗い出しの部分から、要は地域住民を対象として情報を取るよ うなところから始めれば、かなり綿密な調査がきちっとできると思います。特に、聴覚 障害児などに関しては子どもですから、見つけるところから始めれば、社会的な恩恵も 大きいと思います。 ○垣添部会長 事務局から何かあればお答えください。 ○障害保健福祉部企画課 感覚器障害についての質問ですが、まず聴覚障害児の研究に ついての状況を少しお話させていただきます。聴覚障害児の発生は、軽度の方も含めて 全国で1年当たり1,000人ぐらいで、全国にかなり散らばった形で発生しております。 発見の方法の一つは、新生児聴覚スクリーニングという検査法があって、それによって 発見される方も増えていますが、一方で指摘があったように、発見が遅れる方もいるこ とを認識しております。そういった発見時期もありますし、医療的な操作として人工内 耳の埋込みといったことも、手法としては確立しておりますが、まだ限られた状況です。 その他、療育についても難聴幼児通園施設と聾学校といった形で地域によって対応が分 かれております。そのように種々の状況があり、それによる影響というか効果といった ものを判定する一方、最終的には全国で均一のサービスを提供していくような方向づけ を目指していきたいと思っております。  視覚障害の研究については、想定しているところが研究のスタイルとしてあり、それ は地域住民の健康状況を把握することによって因果関係を確認していくというコホート 研究と呼ばれるものです。我が国においても、その中で一部眼科的な状況を調べている ものがあって、このようなものを活用していけば、比較的限られた地域の中で眼科的な データを得ていくことができるのではないか、そのデータを活かして次のステップに進 めるのではないかといった検討を行い、現実的に実施し得る研究ということでこのよう な課題を選んだわけです。 ○疾病対策課 腎疾患戦略研究について説明いたします。課題の選定に当たっては専門 家の方とよくよくお話させていただき、対象となるのは慢性腎臓病の中で、透析導入の 原因としていちばん多い糖尿病と高血圧ということでした。糸球体濾過率が60以下のも のを慢性腎臓病と定義しておりますが、これ以下になってから実際に透析が導入される までに、開業医によるフォローアップがあまりされていないという現状が、専門家会議 で指摘されております。十分に治療された場合、どれぐらい透析導入を遅らせることが できるかという試算に基づき、15%であれば可能ではないかという結論を得まして、こ れをアウトカムの指標といたしました。 ○垣添部会長 時間の関係もありますので、戦略研究に関してはここまでとさせていた だきます。大変貴重なご指摘をいくつかいただきましたので、今後の研究計画に活かし ていただければと思います。次に、厚生労働科学研究費のあらましについて事務局より 説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官 資料5-2、「厚生労働科学研究費のあらまし」について報告いたし ます。このパンフレットは広く一般の方々に、厚生労働科学研究費がどのようなもので あるかということがわかりやすいように作っておりまして、毎年改訂したものを出して おります。厚生労働科学研究費の概要、3頁からは各研究事業の担当課・室や連絡先な ども示しており、厚生労働科学研究の具体例を紹介しております。適宜、関係者等に配 付する資料であり、今後はいろいろな機会に活用していく予定のものです。 ○垣添部会長 引き続き、平成20年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針、競 争的資金の拡充と制度改革の推進、長期戦略「イノベーション25」についての報告をお 願いいたします。 ○坂本研究企画官 資料5-3を説明いたします。こちらは先ほども議論がありましたが、 平成20年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針で、6月14日に総合科学技術 会議において取りまとめられたものです。1頁のI、基本姿勢の2段落目のところで、 平成20年度においては特に「イノベーション25」に基づき、早急に施策の具体化を図 る必要があること、「イノベーション25」では総合科学技術会議において検討した結果 が数多く反映されているといったことが記載されております。  2頁の上から4行目から、第3期科学技術基本計画に示された中・長期的な戦略に基 づき、優れた研究の継続的支援、資金制度間の連携の強化、年度を越えた研究費使用の 円滑化、研究費の公正・透明で効率的な使用のための運用改善、独法の研究開発力の強 化などに積極的に取り組むといったことが書かれております。この段落の最後には、研 究費配分における無駄の排除の徹底、不正使用等の防止に向けた取組の徹底を図ること も書かれております。次の段落には、科学技術の直接的な振興施策のみならず、科学技 術の社会での実証、普及・展開などイノベーション創出に向けた取組の推進などについ ては科学技術関連施策として位置付け、積極的かつ優れた取組については予算順位付け 等で配慮するという記載もあります。  II.平成20年度において優先すべき先駆的な取組では、(1)次世代を担う人材への 投資、(2)研究開発の成果の社会還元を加速する取組、(3)環境・エネルギー等日本 の科学技術力を活かした科学技術外交が示されています。(2)の研究開発の成果の社会 還元を加速する取組では「イノベーション25」に基づき、六つの「社会還元加速プロジ ェクト」が示されており、当省と関係の深いものとしては、失われた人体機能を補助・ 再生する医療の実現や、高齢者・有病者・障害者への先進的な在宅医療・介護の実現が あります。  III.継続して重点的に推進すべき取組の中には、分野別推進戦略に基づき、戦略重点 科学技術への一層の重点化の推進などがあります。IV.総合科学技術会議における取組 の強化として、5頁に3.研究開発評価の更なる充実という項目もあり、研究開発評価に 関する現状、課題等を把握し、課題解決の方策について検討を進め、研究開発評価シス テムの改革を一層推進する等の方針も示されております。  次に、資料5-4の説明をいたします。こちらは総合科学技術会議の基本政策推進専門 調査会で取りまとめられたものです。4頁の競争的資金制度の課題では、細切れな研究 費制度と継続性の不足といったことが、課題として指摘されております。6頁は競争的 資金制度改革の基本的な方向性という項目で、環境の整備、制度間の連携の強化、若手 研究者の育成を含んだ制度設計、女性研究者の活躍促進の環境整備、ハイリスクでイン パクトのある研究や独創的な研究への支援の強化、若手の採択率を高める、新たな視点 で裾野を広げる制度設計の検討を進めること、評価の水準と信頼度を高めるため、各制 度の特性に応じ、審査・マネージメントシステムの改革と体制強化を進めること、先ほ どの議論で少し出ましたが、ルールの統一化等の制度改革を積極的に進めること等の記 載があります。  第3章の具体的方策では、イノベーションの種となる基礎研究の多様性・継続性の確 保と出口につなぐシームレスな仕組みの構築として、8頁から具体的方策が出ておりま す。(1)では必要に応じ、制度を整理・統合した上で制度間の連携を強化するとしており ます。先ほども少し議論で出ましたが、「一つの制度の企画・運営が複数機関にまたが る場合は」云々ということで、「一つの制度は、一つの配分機関に集約されることが望 ましい」という記載もあります。  以下、9頁から、若手・女性研究者に魅力的な環境づくり、11頁にはハイリスクでイ ンパクトのある研究や独創的な研究の強化という項目があって、現状と具体的方策の記 載があります。11頁からの評価体制の強化では、12頁の中ごろに審査基準等は画一的で はなく、各制度や分野の特性等に応じて適切なものとする等の指摘があります。13頁か ら研究資金の効果が最大になる公正・透明で効率的な配分・使用システムの確立という 項があり、先ほど議論があった6割の制度が本省で執行といった記載があります。厚生 労働省関係については、下の※に「厚生労働科学研究費補助金等では、人件費に使用で きる研究課題や外国旅費の対象が限られている」という記載があり、さらにその下には 「各制度において研究資金の交付時期の早期化に努めており、例えば従来遅いとの指摘 の多かった厚生労働科学研究費補助金でも平成19年度は相当程度の改善が図られてい る」という記載もあります。  14頁からの具体的方策では、審査における利害関係者の排除の徹底を推進、15頁には 研究費交付時期の早期化を更に徹底、先ほども話があった電子申請システムである府省 共通研究開発管理システム(平成20年1月目途)の供用開始という記載があります。  17頁からはまとめで、研究資金制度の改革を行うことが必要なものとして、若手研究 者の支援の充実・強化等、新しい制度設計が必要なものとして、ハイリスク研究・新領 域開拓研究の強化等、既存の制度の運用の改善によって可能なものとして、各競争的資 金の制度目的の明示と位置付けの明確化、年度を越えた研究費使用の円滑化、研究資金 配分業務を原則として独立配分機関に移行、各競争的資金制度間でのルールの統一化、 研究費の公正・透明で効率的な使用確保のための運用改善といったものがあります。若 手研究者への支援、意欲的・挑戦的研究の推進を達成することが喫緊の課題であるとし、 優れた人材を伸ばすことが「イノベーション25」の具体化に極めて重要との記載もあり ます。  資料5-5は長期戦略指針「イノベーション25」のポイントのペーパーです。「イノベ ーション25」は本年6月1日に閣議決定された長期戦略指針です。特徴はこちらにある ように、2025年までを見据えた長期戦略であり、「社会システム」と「科学技術」の一 体的戦略であり、人口減少下でも、技術革新、新しいアイデア、ビジネスなどによるイ ノベーションで持続的成長と豊かな社会を実現しようということです。生活者の観点か ら2025年の日本の姿として、1頁の下にあるような生涯健康な社会、安全・安心な社会、 多様な人生を送れる社会、世界的課題解決に貢献する社会、世界に開かれた社会が示さ れております。  次頁は政策ロードマップの重点という図です。社会システムの改革戦略と技術革新戦 略ロードマップを一体的に推進するという戦略で、新健康フロンティア戦略や革新的医 薬品、医療機器創出のための5カ年戦略等の検討状況を踏まえて策定した社会システム の改革戦略と、技術革新戦略ロードマップからなる政策ロードマップで政策を推進する ということになっております。早急に取り組むべき課題と中長期に取り組むべき課題が 示され、例えば早急に取り組む課題としては、ワーク・ライフ・バランス実現のための 環境整備、中長期的に取り組むべき課題では、生涯健康な社会形成として、治療重点の 医療から予防・健康増進を重視する保健医療体系への転換が示されております。社会還 元を加速するプロジェクトとしては、異分野融合、官民協力、システム改革、規制改革 といった実証研究が開始されるということです。資料5-3にも社会還元プロジェクトと いう言葉がありましたが、ここでは在宅での医療・介護などが示されております。  分野別の戦略的な研究開発の推進としては、ライフサイエンス、ナノテクノロジーな どの分野別に研究開発ロードマップが示されており、技術動向、社会環境の変化等をも 考慮してPlan・Do・Check・Action(PDCA)サイクルのもとで必要に応じて柔軟に修正を行 っていくこととされています。また、臨床研究等の体制整備の指摘もあります。推進体 制としては、政府内に閣僚級のイノベーション推進本部を設置することになっておりま す。駆け足でしたが説明は以上です。 ○垣添部会長 「イノベーション25」を中心とした話と、総合科学技術会議の競争的資 金の拡充と制度改革の推進におけるまとめについて報告していただきましたが、何か質 問等があればお願いいたします。 ○金澤委員 イノベーションなどではないのですが、パンフレットについて思うことが あるので述べたいと思います。3頁、4頁辺りに厚労科研費の各研究事業の概要というの があります。ちょっと関係している者として、実際の研究者として考えた場合の話です が、例えば4頁の上のピンクの(8)こころの健康科学研究事業を見ると、二つの担当が あるのです。一つの事業の中のさらに一つの細かいものにも、なお、このように二つの セクションが担当していることは非常に問題です。もともとここは二つの資金が一緒に なったものですからやむを得ないとは言え、今後はできるだけこのような方向ではない 方向で、担当を一つにしていただきたい。そのような目で見ると、他にもそのようなと ころが随分あるのです。このようなところは是非中で考えて、いい方向へ持っていって いただきたいと思います。 ○垣添部会長 大事な指摘だと思います。パンフレット、「イノベーション25」あるい は総合科学技術会議における取りまとめについて、よろしいでしょうか。  ありがとうございます。以上で予定された議事はすべて終了ですが、西山審議官から 何かあればお願いいたします。 ○西山技術総括審議官 本当にむし暑い中でのご議論をありがとうございました。いま 聞いていただいたように、私ども事務方の説明もありましたが、一つは金澤委員、垣添 部会長が関与されている総合科学技術会議からの、このような報告書を受けて厚生労働 省はこれからどうするのだということがあります。私どもも非常に忙しく、これは言い 切りになるかもしれませんが、その辺のところを少し考えて、委員の方々にアドバイス をいただきたいというのが一つの本音です。前回APECヘ行ってきて、要するに、アジア の諸国は日本のことをいろいろな意味で見ていますが、動きが非常に速くなってきてお ります。研究の情報、あるいはいろいろな制度の情報などですが、その中で生意気のよ うですが一言だけ申し上げますと、やはり国際共同研究というものが増えてくると思い ます。シンガポール、ベトナム、タイ、中国、韓国は感染研のほうとも共同研究をいた しておりますし、日中でがんセンターとも研究をやりますし、糖尿病でも中国とやらな ければいけないといったことがいろいろとありますので、共同研究も踏まえた、いわゆ るグランドデザインのようなものも厚生労働科学研究で作り上げていければいいなと思 う次第です。今日は本当にありがとうございました。 ○垣添部会長 いまの指摘は大変重要な今後のポイントではないかと思います。事務局 から連絡事項があればお願いいたします。 ○坂本研究企画官 次回の開催については既に日程調整をさせていただきましたとおり、 7月30日(月)15時からを予定しております。正式なご案内については、詳細が決まり 次第またご連絡いたしますのでよろしくお願いいたします。 ○垣添部会長 以上で第39回を終了いたします。どうもありがとうございました。    ―了―    【問い合わせ先】  厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:情報企画係(内線3808)  電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171 - 1 -