07/06/22 平成19年6月22日薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会議事録 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会議事録 ○日  時:平成19年6月22日(金) 15:30〜17:30 ○場  所:ホテルフロラシオン青山 クレール(3階) ○出席者: 委 員  大野委員(部会長)、尾崎委員、加藤委員、斉藤委員、佐々木委員、      志賀委員、豊田委員、山内委員、山添委員、吉池委員、鰐淵委員 事務局  松田基準審査課長、加藤課長補佐、河村課長補佐、吉田課長補佐、近藤専門 官 関係省庁 農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬対策室 鈴木室長      農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬対策室 渡辺専門官      農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課 水野係長      環境省水・大気環境局土壌環境課農薬環境管理室 大友室長      環境省水・大気環境局土壌環境課農薬環境管理室 小出室長補佐       1.開  会 2.議  題  (1) 食品中の残留農薬等に係る残留基準設定について     ・フルニキシン(動物用医薬品)     ・前回部会からの継続審議事項(暴露評価)     ・シニドンエチル(農薬)     ・トルトラズリル(動物用医薬品)  (2) 魚介類に残留する農薬の残留基準設定について 3.閉  会 ○事務局 ただいま定刻の5分前でございますが、各委員はおそろいのようでございま すので、そろそろ始めさせていただければと思います。 ○大野部会長 それでは、皆さんお集まりですので始めてくださるようお願いします。 ○事務局 それでは、若干定刻よりも早いようでございますが、ただいまから薬事・食 品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会を開催させていただきます。  本日は、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。どうぞよろしくお願い いたします。  本日は、青木委員、井上委員、米谷委員より欠席する旨の御連絡をいただいておりま すが、既に農薬・動物用医薬品部会の委員14名中11名の御出席をいただいております。 部会委員総数の過半数に達しておりますので、本日の部会が成立しておりますことを御 報告申し上げます。  なお、斉藤委員、吉池委員におかれましては、所要がございまして5時以降に中座さ れる予定になっておりますので、あらかじめその旨お伝え申し上げます。  それでは、大野部会長に審議の進行をお願いしたいと思います。今後の御審議につき ましてよろしくお願い申し上げます。 ○大野部会長 それでは、雨の中、皆さん集まっていただきましてどうもありがとうご ざいます。早速、議事に入らせていただきたいと思います。  初めに、事務局から配布資料の確認をよろしくお願いいたします。 ○事務局 配布資料の確認をさせていただきます。  まずお手持ちの資料でございますが、議事次第がございます。  続きまして、資料の1−1が動物用医薬品でございますフルニキシンの資料でござい ます。25ページ目以降からが資料1−2となっております。総合ページ数では36ペー ジの資料でございます。  続きまして、資料2も動物用医薬品のセフチオフルの資料でございます。こちらは資 料の2のみとなっておりまして、総ページ数は16ページでございます、  次に、資料3は農薬でございますフェンブコナゾールの資料でございます。こちらも 資料3のみとなっておりまして、総ページ数は17ページでございます。  続きまして、資料4−1が農薬のシニドンエチルの資料でございます。15ページ目以 降が資料4−2となっております。総ページ数では23ページの資料でございます。  次に、資料5−1が動物用医薬品トルトラズリルの資料でございます。27ページ目以 降からが資料5−2となっております。総ページ数では41ページの資料でございます。  次に、資料6が「魚介類への残留基準の設定法に係る研究報告書でございます。表紙 が2枚ございまして、3ページ目からページ数が振ってございます。ページ数の振って ある総ページ数で言いますと8ページの資料となっているものでございます。  最後に参考資料といたしまして、参考資料1が食品等の摂取量、5ページ目以降が資 料2となっておりまして食品安全委員会への意見聴取等の状況をお示ししているもので ございます。落丁等がございましたら、事務局の方までお願いいたします。  あとは、お手持ちの資料でございますが、紙ファイルのものを参考資料といたしまし て各委員に御配布しておりますので、配布漏れがないか御確認をお願いいたします。 ○大野部会長 よろしいでしょうか。過不足ございませんか。  ありがとうございます。それでは、審議に入りたいと思います。本日、前回の会議の ときに御指摘をいただいたものについて確認をしていただいて、それに基づいて審議を していただきます。その後に、農薬についての一薬剤、動物用医薬品トルトラズリルに ついて御審議していただいて、最後に農薬の魚介類への残留基準の設定について御審議 していただくことにしております。  それでは、まず継続審議となっております動物用医薬品のフルニキシンについて事務 局から説明をお願いいたします。 ○事務局 ただいま御案内のありました動物用医薬品のフルニキシンにつきまして、資 料1を用いまして御説明申し上げます。  資料1−2をごらんください。ページ数で言いますと25ページでございます。前回御 審議をいただきました際に山内委員の方から、乳に関しまして、諸外国においては5− ヒドロキシ体で管理がなされているという御指摘がございました。この御指摘を踏まえ まして事務局の方で改めて確認を行いまして、1ページおめくりいただきまして27ペー ジ以降をごらんいただければと思います。  27ページの2番といたしまして、「対象動物における分布、代謝」という部分がござ います。また、(1)番からが「ウシにおける分布、代謝」という形になっておりまして、 この2パラ目でございますが、こちらから泌乳牛に関する分布代謝試験の詳細を記して いるものでございます。こちらにおきましては、2.2mg/kg体重/日を3日間投与すると いう試験方法が規定されておりまして、こちらの規定された投与日数、最終投与から0.5 日及び1.5日後のフルニキシン及び代謝物の放射活性が調べられているという報告でご ざいます。  この報告におきましては、1ページおめくりいただきますと0.5日後におきまして代 謝物でございます5−ヒドロキシフルニキシンが46%、親物質であるフルニキシンが 18%という記載がございます。この5−ヒドロキシフルニキシンというものにつきまし て、後に出てまいりますが、EU等ではこれをマーカー物質として残留基準を設定して いるというものでございます。  その理由につきましては、代謝物の方が量的に多いという部分がございまして、こち らをマーカーにしている。そこで、その旨をその後に書いてございます。なお書きでご ざいますが、EU及び米国におきましては比較的残留量が多いヒドロキシフルニキシン をマーカー残留物といたしまして、それぞれ0.04ppm、0.002ppmとして基準値を設定し ているという旨を追記させていただいております。  この代謝残留等の記載を踏まえまして、34ページをごらんいただききますと諸外国等 の残留基準の設定状況等を別紙1としてお示しをしております。こちらの中で最後のカ ラムでございますが、こちらに乳というものがございまして、EU、米国につきまして はそれぞれ0.04、0.002という数字が*3で記載してございますが、5−ヒドロキシフ ルニキシンとして設定されているという旨を明記いたしました。  また、当方が御提案申し上げております基準値の案でございますが、これは前回の部 会で御案内をいたしました乳の0.04という数字と変更はございません。その理由につき ましては、ページをお戻りいただいて恐縮でございますが、30ページをごらんいただけ ればと思います。30ページの一番頭の部分に、泌乳牛にフルニキシンを投与した場合の 乳中のフルニキシン濃度というものがございます。これは、EU等におきましてはマー カー物質を規制対象としているわけでございますが、実際の残留値を測定する際にはヒ ドロキシフルニキシンに加えまして、その親物質であるフルニキシン濃度も測っており ます。  こちらはその結果を取りまとめたものでございまして、EUの中でも例えばフランス でございますが、休薬日数がゼロ日となっております。ですので、最も投与後早い時間 でのサンプルということになりますと、この試験日の欄におきます12時間という部分が 該当してまいります。この12時間における親物質であるフルニキシンの濃度というもの は、0.012±0.006という形になっております。ですので、この残留値のデータを踏まえ まして、ある程度のばらつきというものも勘案いたしました場合に、0.04という数字を 今回事務局としては提案させていただければと考えているところでございます。  また、もう一点御指摘の点がございます。これは、35ページのTMDI評価をごらん いただければと思います。別紙2といたしましてフルニキシンの推定摂取量というもの、 そしてADI比というものを計算してございます。この中で御指摘をいただいた部分は、 まず妊婦の摂取量データがない部分があったというところでございます。これにつきま しては、今回妊婦の欄の*マークの4番を付して記載をしておりますが、ここのデータ がないという部分について国民の平均の摂取量を挿入しております。これは、妊婦とい うのがもちろん大人であるということを踏まえての値の挿入という形になっているわけ でございます。ですので、前回には入っておりませんでしたウシの肝臓でありますとか、 ブタの肝臓でありますとか、このような部分につきまして暴露量のデータが入ってくる という形になっております。  また、幼小児につきましてもブタの腎臓のデータがゼロという形で、こちらについて も何らかの措置が必要ではないのかという御意見でございました。こちらのゼロにつき ましては確認を当方で行わせていただいたわけでございますが、国民健康栄養調査の結 果におきましても幼小児におけるブタ腎臓のデータがないということもございます。で すので、基本的に摂食される可能性が非常に低いという観点の下、今回におきましては その値はゼロという形で置かせていただいております。  この妊婦と幼小児の御指摘を踏まえて、改めて暴露量の計算を行っておりますが、最 も高い幼小児におきましても8.7%という暴露量となっております。これは、当然なが ら80%よりも低いという形になっておりまして、暴露量的にも問題がないものというこ とが御確認いただけると思います。  フルニキシンにつきまして、前回の審議の中で御指摘をいただいておりました代謝物 に係る件、またはその暴露評価に係る件についての説明は以上でございます。 ○大野部会長 ありがとうございました。EUで5−ヒドロキシフルニキシンを測った というのは、特に毒性学的に問題があったからそれを基準にしたということではない。 多く存在していて、いいマーカーになるだろうということでやったということですね。  ただいまの御説明についていかがでしょうか。特にございませんでしょうか。  ありがとうございます。それでは、この修正をした報告書を御了解いただいたという ことで、この報告案をもって当部会の報告とさせていただきたいと思います。よろしい でしょうか。  ありがとうございます。それでは、次にいきたいと思います。次も確認することが必 要になったものですけれども、セフチオフルについての説明をよろしくお願いいたしま す。 ○事務局 続きまして、動物用医薬品でございますセフチオフルにつきまして、前 回の部会で御指摘いただいている点について御説明申し上げたいと思います。  このセフチオフルにつきましても、先ほどのフルニキシンの説明にございましたとお り暴露評価の部分の妊婦と幼小児の摂食量のデータの取扱いがどうであるのかという点 の御指摘を受けたわけでございます。ですので、結論といたしましては先ほどのフルニ キシンと同様な形になるわけでございますが、資料では15ページをごらんいただければ と思います。こちらに別紙2といたしまして、セフチオフルの推定摂取量というものを お示ししております。こちらにも先ほどのフルニキシンと同様に、妊婦につきまして、 この表の場合には*5になるわけでございますが、肝臓のデータでありますとか、この ようなデータを国民平均を基に概想をし、新たに暴露量を試算しているものでございま す。また、幼小児のブタの腎臓という部分につきましても、先ほどと同様にゼロという 数字を入れて再度計算を行っております。  結論といたしましては、セフチオフルの推定摂取量が最も高い幼小児におきましても 11.5%という数字となっておりまして、80%を十分下回るものとなっていることがおわ かりいただけると思います。ですので、前回いただきました宿題といたしましても改め ての暴露評価の結果はこのような形になるということを御報告申し上げます。セフチオ フルについては以上でございます。 ○大野部会長 セフチオフルについての修正ということですけれども、いかがでしょう か。摂取量の修正を行ったということです。よろしいですか。  それでは、これを基に報告書とさせていただきたいと思います。  フェンブコナゾールも同様ですね。では、それについての説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは、農薬のフェンブコナゾールについて御説明申し上げます。資料3 でございまして、該当ページは16ページでございます。推定摂取量のところでございま して、畜産物の摂取量のところで高齢者の摂取量について国民平均を用いているにもか かわらず値がちょっと違っている部分がございまして、佐々木委員の方から御指摘がご ざいました点でございます。  結果的には国民平均と同じような形に修正してございますが、前回は体重当たりで計 算した形で値が入ったものですから、値が違ったということもございまして、そこは修 正させていただきました。  もう一点、これは全体の表の枠なのでございますけれども、従前ですと国民平均、高 齢者というような形で並んでいた部分がございました。そこのところもちょっと御指摘 がございまして、9ページの暴露評価の結果表ですね。まとめの表でございますが、国 民平均、幼小児、妊婦、高齢者という順番でございますので、ここの詳細な表について もこういうような形の順番に並べ換えて整理させていただきました。  また、脚注のところでございますが、妊婦の方についても一部国民平均の摂取量を参 考にする部分もございますので、そこも明記するような形で脚注を書き直させていただ いております。以上でございます。 ○大野部会長 修正したのは9ページと、あとは何ページになりますか。 ○事務局 修正は、16ページの表の部分だけでございます。 ○大野部会長 16ページの高齢者のところですか。 ○事務局 高齢者の方の畜産物の摂取量のところです。具体的には陸棲哺乳類の乳類の ところで、同じ量から計算しているのに数字が違っていた部分がございまして、そこを きちんと整理し直してございます。 ○大野部会長 ありがとうございました。いかがでしょうか。御指摘をいただいて修正 したということでございます。よろしいですか。  それでは、事務局の修正を了承したということにさせていただきます。ありがとうご ざいます。  次に、農薬のシニドンエチルの審議に入りたいと思います。事務局からそれについて の説明をよろしくお願いいたします。 ○事務局 それでは、資料4−1、4−2に従いまして農薬シニドンエチルの説明に入 りたいと思います。  資料4−1を1枚めくっていただきまして3ページでございますが、この農薬の「審 議の経緯」ということで書いてございます。「2005年11月29日 残留農薬基準告示」 と書いてございますが、これはポジティブリスト制度導入に当たって、いわゆる残留基 準という形で告示したということでございます。それで、暫定基準を置いたものについ ては施行後、速やかに食品安全委員会の方に食品健康影響評価を依頼するという整理が ついてございまして、その後、資料が集まりましたので2006年12月18日に当方から食 品安全委員会の方に評価を依頼したということでございます。その後、安全委員会の方 で評価をいただきまして、今般ADIの設定について報告があったというものでござい ます。  評価の結果につきましては、10ページの方に「総合評価」としてまとめてございます。 今回、この剤につきましてはEUの評価書に基づいて安全委員会の方で評価をいただい たものでございます。「III 総合評価」というところでございますけれども、動物体内運 命試験の結果、本剤は動物体内で速やかに代謝、排出された。植物体内運命試験の結果、 代謝物はここに書いてございます3つの異性体があったということでございます。  毒性試験の結果でございますが、投与による影響は肝、腎、上皮小体に見られた。催 奇形性及び生体において問題となる遺伝毒性は認められなかったということでございま す。 発がん性試験でございますけれども、ラットで肝と上皮小体の腫瘍の発生が認め られたということでございますが、発生機序は非遺伝毒性メカニズムであるということ で、本剤の評価に当たり閾値を設定することは可能ということで、今般ADIの設定が なされたということでございます。  表2のところに各試験の無毒性量というものが挙げてございますけれども、11ページ のイヌの1年間慢性毒性試験の結果を踏まえてADIが設定されてございます。それで、 安全係数を100といたしまして、0.01mg/kg 体重/ 日というADIが評価されてござい ます。 これに基づきまして、当方で基準案の検討をするに当たりまして報告書案を作 成させていただきました。それが15ページからの資料4−2でございます。この剤は品 目名シニドンエチルというものでございまして、用途は除草剤でございます。ポルフィ リンの合成阻害ということで、光合成を阻害するということが作用機序と考えられてご ざいます。化学式、構造式についてはここのとおりでございます。  この剤につきましては5番のところに書いてございますけれども、我が国では農薬の 登録についてはございません。海外で使用されるということで基準を置いているもので ございます。この剤の海外における使用方法は以下のとおりでございまして、小麦につ いての情報を得てございます。冬小麦、またはライ麦という形で、この表に書いてある 使用方法で用いられるということでございます。  1枚めくっていただきまして「作物残留試験」ということで、海外でやられた作残試 験の結果を入手してございます。  分析の対象につきましては、シニドンエチル本体と、ここに書いてございますE体と いうものの2つを分析対象として試験をやってございます。  試験の結果につきましては、別紙の1ということで資料18ページに一覧表で掲載させ ていただいてございます。小麦、大麦、ライ麦、またはオート麦等につきまして、これ はドイツで試験が行われた結果というふうに承知してございます。それぞれでございま すけれども、最大残留量といたしまして本体/E体という形で記載してございます。こ れは定量限界が0.05ppmということで、すべて定量限界以下ということでございます。  また戻っていただきまして16ページでございますが、7番で「ADIの評価」でござ います。これは先ほど食品安全委員会の評価書のとおり、ADIは0.01mg/kg体重/ 日 ということでございます。  「諸外国における状況」でございますが、JMPRの方で毒性評価はまだなされてご ざいませんので、コーデックスの基準もないということでございます。米国、カナダ、 EU、オーストラリア、ニュージーランドについて調査しましたが、これらの国、また は地域において残留基準は設定されていないということでございますが、EUの方では 今のところ暫定的な基準の設定があるということでございます。また、ドイツは穀類等 に基準が設定されているということでございます。  「基準値案」でございますが、「残留の規制対象」といたしましては今回シニドンエチ ル本体ということにしてございます。それで、先ほどの作残のデータをごらんいただい たとおりでございますが、作残の試験についてはE体についても分析されてございます けれども、いずれも定量下限未満ということで、E体については分析対象に含めないと いう考え方で記載してございます。  「基準値案」については、19ページから別紙の2ということでお示ししてございます。 基準値の現行といたしましては、EUのいわゆる暫定的な基準を参考に設定してござい ます。これについては調べたところ、すべて定量下限値をはめているということでござ います。今般、ドイツの方から出てきた作残データというものに基づきまして、ドイツ 等の基準を参考に基準値を置くということを行いました。ただ、とはいえ作残データが ないものについては基準値を設定しないということできております。  小麦類については、先ほどの作残データに基づきましてドイツの0.10ppmという基準 から基準値案0.1ppmという値を設定してございます。  また、ずっとめくっていきまして21ページでございますけれども、ドイツの方でホッ プの基準がございます。これも同じ穀類の作残試験からホップを推定したところでござ いまして、その基準の0.1ppmというものをそのまま当ててございます。そのほかについ ては作残データがないということで、今後は一律基準で規制するというような考え方で 基準値案をお示ししてございます。  この基準値案に基づきまして暴露評価でございますが、次のページをめくっていただ きまして22ページでございます。非常に少のうございますけれども、国民平均、幼小児、 妊婦の方、高齢者の方でそれぞれで2.4%、5.6%、2.3%、1.7%ということで、0.0と 書いてございますのはゼロというわけではなくて、下の方にずっと0.00幾つと続くとい うことで、けた数を1に合わせているのでこういう記載になってございますけれども、 合計すればそれぞれのADI比ということで、80%以下に収まっているのでこの基準値 でいかがかというところで御提示したいと思っております。以上でございます。 ○大野部会長 御説明ありがとうございました。ただいまの説明について御意見ござい ますか。シニドンエチルのみを測るということですね。特に御意見ございませんでしょ うか。 御意見がないようでしたら、本報告案をもちまして当部会の報告ということに させていただきますけれども、よろしいでしょうか。  ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。  次に、動物用医薬品のトルトラズリルについての御審議に入りたいと思います。この 関係の資料は、あらかじめ先生方に追って御検討いただいているところでございます。 それでは、事務局から説明をよろしくお願いいたします。 ○事務局 続きまして、動物用医薬品のトルトラズリルについて御説明申し上げます。 資料は、5−1となります。  5−1の1ページ目でございますが、こちらが本年5月10日に食品安全委員会から当 方大臣あてに通知がなされております食品健康影響評価の結果でございます。結論とい たしましては、記以降にございますとおり、トルトラズリルの1日許容摂取量を 0.01mg/kg 体重/ 日とするというものでございます。  「審議の経過」につきましては4ページ目のちょうど中段ぐらいになるわけでござい ますが、平成18年10月23日に当方大臣から食品健康影響評価を依頼したというもので ございます。そして、1ページ目にありましたとおり、平成19年5月10日に大臣あて に通知がなされたというものでございます。  評価の内容ですけれども、6ページ目をごらんいただきますと、この評価書の「要約」 がまとめられてございます。まずトルトラズリルというものにつきましては抗コクシジ ウム剤であるということが記載されております。また、主要対象動物も大変広うござい まして、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、シチメンチョウというような幅広い動物に使 われているということでございます。そしてまた、急性毒性、亜急性、慢性毒性、発が ん性、繁殖試験等々が行われているというものでございます。  また、代謝残留に関しましては第2パラからになりますけれども、トルトラズリルは 動物体内で代謝をなされまして、通常トルトラズリルスルホンという形で存在している ことがわかっております。ですので、このスルホン体につきましても急性毒性であり、 または亜急性であり、発生毒性でありというものが実施されております。結果といたし ましては、いずれもトルトラズリルと比較しまして弱い毒性影響が示されたというもの でございます。 また、腫瘍等に関する知見といたしましてはその下にございますが、 トルトラズリルにつきましてはメスのラットにおきまして子宮内膜の腫瘍発生頻度の増 加があるということが認められています。  ただ、この腫瘍発生の明らかな作用機序は不明であるわけでございますが、内分泌系 への影響に関する試験の結果から遺伝毒性というものではなく、ホルモンバランスの偏 重が関与している可能性が示唆されているというものでございます。  なお、繁殖への影響や催奇形性は認められないという結果でございます。  許容1日摂取量につきましては、ラットを用いました30か月慢性毒性/発がん性の併 合試験、またはラットを用いました催奇形性の試験の結果から得られておりますNOAEL、 1mg/kg 体重/ 日というものに種差の10、個体差の10の安全係数100を用いまして、 0.01mg/kg 体重/ 日という値が設定されているものでございます。  続きまして、27ページをごらんいただければと思います。27ページ目以降からが資料 5−2の当部会の報告案というものでございます。  1に「概要」といたしまして、品目名はトルトラズリルというものでございます。  また、(2)といたしましてこの主要目的でございますが、ウシやブタ、ニワトリとい った家畜のコクシジウム病の予防、そして治療という目的で使われているものでござい ます。  また、この下にもございますけれども、我が国においては薬事法上の承認がございま せんので国内においての使用はございません。ただ、欧州等幅広い国で使われていると いうものでございます。  今回の残留基準の設定につきましては、括弧書きで書いてございますが、国外で使用 される農薬等に係る残留基準の設定及び改正に関する指針、いわゆるインポートトレラ ンスでございますけれども、この指針に基づきまして残留基準設定の要望が提出された ということを踏まえて食品健康影響評価が行われ、残留基準の設定を検討するというも のでございます。  「化学名」、「構造式及び物性」につきましては、27ページの(3)、(4)にお示しを するとおりでございます。  また、1ページおめくりいただきますと、5番といたしまして「適用方法及び用量」 がございます。本製品につきましては、商品名がバイコックスと言われておりますが、 これの主要な国におきます用法・用量、そして休薬期間というものを取りまとめており ます。上から順番に、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、シチメンチョウ等々と続いてお ります。また、使用されている国もEUからオセアニアの国々と、幅広い国で使われて いるということがおわかりいただけると思います。また、休薬期間の設定というものに つきましては、各動物、各主要国において各々に設定がなされているというものでござ います。  28ページ目の末尾でございますけれども、2番といたしまして「対象動物における分 布、代謝」というものがございます。  まず(1)でございますが、「ウシにおける分布、代謝試験」でございます。こちらに つきましては、投与試験としましては15mgというものを単回経口投与した結果が報告さ れております。  29ページの上から4行目に書いてございますとおり、血漿や排泄物、そして組織にお ける標識物は未変化体から経時的に代謝されているということ。そしてまた、7日目以 降で血漿や尿、そして糞というものにつきましてはスルホン体が主要となっているとい うことでございます。  また、投与後28日における各組織におきましては、雄雌ともに放射活性が非常に強い ということと、そのほとんどがスルホン体であったということが御報告されています。  また、その他の治験でございますけれども、2、3週齢のウシへの投与試験が報告さ れております。こちらでは、主要な代謝物でございますスルホン体、それに加えまして スルホキシドというものの濃度が測定されております。  この試験期間を通じた結論といたしましては、やはりスルホン体が主要な残留物であ るということ。残留する臓器という観点で見た場合には、肝臓が最も高いということ。 そして、70日までにはスルホン体を除いて定量下限になったということが報告されてお ります。ですので、投与された後、長期間にわたって残留があるということがおわかり いただけると思います。  また、(2)番につきましてはブタの代謝試験の報告がございます。こちらでは20mg/kg の単回経口投与の試験が報告されております。それにつきましても4行目以降でござい ますが、投与後72時間までは未変化体が最も多い。そして、その後はトルトラズリルの スルホンが主要となり、28日目でほぼ100%スルホン体になってしまうということが報 告されております。  また、1パラの最後でございますが、70日を経過した時点ですべての組織で定量限界 以下になるということが報告されております。  また、その他の試験におきましてもトルトラズリル、スルホン体、スルホキシド、こ の代謝物を含めた濃度が測定されております。試験期間を通じまして、スルホン体がや はり主要な残留物であったということが報告されております。そして、91日までには定 量限界未満になったということでございます。ですので、ブタにおきましても非常に残 留期間が長いということがおわかりいただけると思います。  また、(3)につきましてはヒツジでございます。それにつきましても、ウシ、ブタ同 様にやはりスルホン体の濃度が高いということが報告されているものでございます。  また(4)、(5)番でございますが、こちらにつきましては鳥類の代謝試験の報告で ございます。  (4)のニワトリにつきましては、ウシ、ブタ等とは逆に最終投与の4.5日までに投 与量の72%、そして15.4日までには94%が排出されているということが報告されてお ります。 また、(5)のシチメンチョウにおきましては、未変化体やスルホキシドの濃 度の報告がございます。投与直後がやはり未変化体とスルホキシドの濃度が高いという ことがございますが、それ以降につきましてはスルホン体が主要な残留となっていると いうことが報告されております。  30ページの3以降でございますけれども、これらの代謝残留の報告を踏まえまして、 その残留性試験の結果が取りまとめてございます。  まず(1)でございますが、「分析の概要」でございます。分析対象化合物は親物質で ありますトルトラズリル、そして代謝物でありますスルホン体、またはスルホキシド体、 これを測定してございます。分析法につきましては、UV検出器が付きましたHPLC もしくは質量分析計の付いたHPLCが用いられております。  (2)以降につきましては、まずウシの残留性試験が報告されております。  31ページをごらんいただきますと、表1としてウシの残留試験、また表2も同様にウ シの残留試験がございますが、この試験日の中で最も世界的に見て休薬期間の短い日に ちがニュージーランドの56日ということになります。ですので、56日のデータを基に 残留基準を検討するというものでございます。  また、同様に32ページをごらんいただきますと、こちらはブタに関する残留性試験の 結果でございます。ブタにつきましては、やはりニュージーランドで最も短い休薬期間 は49日というものが報告されておりまして、この49日というものを基に残留基準の検 討を行っております。  33ページのブタの残留性試験結果についても同様でございます。  また、34ページではヒツジの残留性試験の結果をお示ししております。こちらではノ ルウェーで42日というものが最も短い休薬期間となっておりますので、この42日を参 考といたしております。  ただ、ヒツジにつきましてはその下のカラムの44日の欄をごらんいただきますと、42 日と比較して高い残留を示している結果があるという部分がございまして、ヒツジにつ きましては42日及び44日のデータの一部を参考といたしまして残留基準の検討を行っ たというものでございます。  また、35ページからは鳥類でございます。  35ページの表1はニワトリでございます。ニワトリにつきましては、中国で8日とい うのが最も短い休薬期間となっております。ですので、この8日を参考といたしまして 残留基準の設定を行うということでございます。  また、36ページをごらんいただきますと、(5)といたしましてシチメンチョウの残留性 試験の結果が報告されております。こちらにつきましても、中国の8日が最も短い休薬 期間となってございますので、この8日を参考といたしまして、その他の家禽という食 品群について残留基準の設定をするというものでございます。  37ページをごらんいただきますと、4番といたしましてADIの評価でございますが、 これは冒頭に御説明申し上げたとおりでございます。トルトラズリルとしましては 0.01mg/kg体重/ 日という結論でございます。  また、5番は「諸外国における使用状況」というものでございます。これは、2ペー ジ目に書いてありました各国の使用基準等々を取りまとめて整理をしたものでございま す。 なお、安全性の評価についてでございますが、(1)の3行目にございますとおり JECFAにおいては評価がなされていないというものでございます。  37ページの末尾でございますが、6番以降といたしまして「基準値案」をお示しして おります。  具体的な基準値の案につきましては、39ページの別紙1をごらんいただければと思い ます。39ページに、先ほどごらんをいただきました各畜種の休薬期間に従いました残留 量というものを勘案いたしまして、一番左側のカラムでございますが、基準値の案とい う形で上から筋肉、脂肪、肝臓、腎臓、そして食用部分、そしてまた鳥類の筋肉、脂肪、 肝臓、腎臓、食用部分というものについて基準値の案をお示ししているものでございま す。  この表を見ていただきますと、基準値の現行の欄でございますが、その末尾にニワト リの卵、そしてその他の家禽の卵という部分に、現在では0.05ppmという基準値が設定 されております。この基準値につきまして、参考となる残留性試験の成績を当方として 求めたわけでございますが、それがないということが御報告されております。  また、豪州等におきましてはこの0.05ppmという数字が定量限界を参考として設定さ れているという御報告でございます。ですので、今回の基準の設定につきましてはニワ トリの卵というものと、その他の家禽の卵という部分については残留基準の設定は行わ ないという形で考えております。本品につきましては寄生虫用剤でございますので、こ の場合に0.01ppm、一律基準で管理がなされるという形になってまいります。  最後に暴露評価でございますが、次の40ページをごらんいただければと思います。暴 露評価につきましては、別紙2にお示ししているとおりでございます。こちらも本日の 審議の最初にお話申し上げましたが、妊婦における摂食量の国民平均の外挿というもの、 また幼小児におけるブタの腎臓の外挿等、これは既に行っているものでございます。こ の暴露評価の結果でございますが、最も高いものが幼小児となってございます。その値 は35.9%でございまして、80%を十分下回る形になってございます。  最後でございますが、38ページをごらんいただきますと(4)番でございますけれど も、本剤につきましては現行暫定基準という形で基準値を設定しているものでございま すが、今回の御審議を踏まえまして、この暫定基準からいわゆる本基準と言われるもの に置き直しをしていきたいというものでございます。説明については、以上でございま す。 ○大野部会長 ありがとうございました。ただいまの説明についての御質問、御意見が ございますか。  では、山添先生お願いします。 ○山添委員 27ページで、これの化合物の名前の確認なのですが、和文、英文とも最後 のところに2,4,6-トリオンとなっていますね。構造式を見ますと、一番右端の窒素が3 つ入ったカンなのですが、そこのところは1つが炭素になっているんです。  それだけだったらいいんですが、分子式を見ますと、そこのところがCのまま計算さ れているんです。それで、酸素が3個になっているのですが、本来4個にならなければ いけない。ということは、分子量が変わってくる。 ○大野部会長 そうですね。食品安全委員会の報告も間違っているんですね。 ○山添委員 食品安全委員会から間違っているんです。 ○事務局 御指摘を踏まえまして修正させていただきます。 ○大野部会長 修正をお願いいたします。  では、加藤先生お願いします。 ○加藤委員 食品安全委員会の評価書に関することと、それから部会の案の両方の絡み なのですが、まず最初に37ページの「諸外国における使用状況」のところでちょっと気 になる点がありましたので確認をさせていただきたいのですが、家禽の御説明の中で中 国の8日のデータも引用されて、それで決められたようなお話に受けたのですが、これ からもこういう中国、東南アジアも含めた形で、実際に日本に輸入されている国の実情 を勘案して、そこまで広げた格好で評価していくという意味になるのでしょうか。その 点についての確認が1つです。今まではなかったように思いますので。 ○大野部会長 いかがでしょうか。 ○事務局 このトルトラズリルに限った話ではないんですが、各動物用医薬品等の御審 議をいただくときにはその剤が承認をされていて使用がなされているという国のデータ をなるべく幅広く集めようというふうに努力しているところでございます。それで、今 回のものにつきましては中国のデータが確認できたということでございまして、それを 参考としたというものでございます。  ただ、残留性試験の結果をこの資料の中でお示しをしておりますが、この残留性試験 の結果につきましては特に中国のものではございませんで、これは我が国で行われまし た投与試験の結果を踏まえております。例えば35ページの表でございますけれども、こ ちらにニワトリの残留性試験の結果が各代謝物を含めてお示ししてありますが、これは 我が国で行われた試験成績というものでございます。ですので、休薬期間についてはな るべく幅広く諸外国の状況も確認しながら対応していきたい。それは、ひとえに我が国 が非常に輸入食品を広く取り扱っているという部分も含めてでございます。  ですので、用いているデータにつきましては今、御説明申し上げたとおりきちんとし た先進国のデータを使って基準値は設定しているというものでございます。 ○加藤委員 わかりました。  次に、食品安全委員会の評価書と部会との絡みなのですが、部会の方のデータではニ ワトリについて評価書のデータといいますか、記述を引用されているところもあるので すが、肝心の評価書の方のラットの代謝試験、ニワトリの代謝試験のところに書いてあ る数字がヨーロッパでの評価書に書いてある数値と大分違っている点がありますので、 ちょっと御確認いただいた方がいいのではないかと思います。  それはどこかを申し上げますと、評価書の5ページ目のニワトリの代謝試験の方です と上から3行目で、最終投与後4.5日までに投与量の約72%が排泄されるとなっている のですが、ここはEUの報告書を見ますと72ではなくて50%という数字で、ちょっと 差が大き過ぎますので確認いただいた方がいいと思います。  それからもう一点、最後に、これは評価とは全然関係ないところなのですが、評価書 の4ページにわざわざカナダでは2005年に承認が取り消されているということが書い てあって、毒性のデータを見るとちょっと気になるような点もありますので、このカナ ダで取り消された理由がわかっておられたら教えていただきたいのですが。 ○大野部会長 いかがでしょうか。その情報は入っていますか。 ○事務局 安全委員会の評価書の件につきましては、また安全委員会の方にも確認をと りたいと思います。  それで、カナダの件でございますが、こちらにつきまして当方でもやはりちょっと懸 念があったので申請者、いわゆる開発メーカーの方に確認をさせていただいております。 それで、結論といたしましては、これも安全委員会の書きぶりに響いてしまうのですが、 承認の取消しではなくて承認申請を取り消したというものでございます。ですので、ま だ承認を得る前の段階でございまして、その承認申請を行っているプロセスを取り上げ たというものでございます。  これにつきましては、理由がカナダの保健当局の方からトルトラズリルにつきまして がん原性があるのではないかという御指摘を受けまして、そのがん原性に関して試験結 果、またはその原性データを提出してほしいという依頼がありました。そのようなカナ ダの保健当局の方からの要請があったわけでございますが、そのデータが足りないとい うところをもってその申請プロセスが止まってしまって承認申請が取消しになっている という状況でございます。  ただ、承認申請の取消しになった段階におきまして、逆にEUの方では幅広い家畜等々 にこの使用が認められるというような状況もございまして、カナダの件につきましては 評価途中という段階で止まっているというものでございます。 ○大野部会長 発がん性試験をラットとマウスでやっていますけれども、それで食品安 全委員会の方では多分十分と判断していると思うんですが、EUの評価と若干違うとこ ろはありますけれども、加藤先生いかがでしょう。申請を取り消したということですが。 ○加藤委員 私は今の御説明で了解をいたしました。 ○大野部会長 ほかに御意見ございますでしょうか。  では、佐々木先生お願いします。 ○佐々木委員 この基準値の数字そのものは、スルホン体、スルホキシド、トルトラズ リルに換算した値の和ということでよろしいのですか。単純な和ということではなくて、 換算値の和という意味でしょうか。 ○事務局 現時点におきましては、諸外国の基準の設定状況にもあるわけでございます けれども、39ページをごらんいただきますと豪州がございまして、豪州が我が国と似た 考え方で基準を設定しております。*1を見ていただきますとトルトラズリル、スルホ ン、そしてスルホキシドの和としてという形になっておりまして、現時点ではこれらを そのまま足し上げた形のものを考えております。  というのは、残留性試験の結果もその物質、代謝物ごとの濃度で示されておりますの で、そのものを足し上げたものという形で考えております。単純にそのものを足したも のということでございます。 ○大野部会長 換算しないでということですね。 ○事務局 はい。 ○佐々木委員 スルホキシンの難しいかと思うのですが、通常は通知でこれまで何々を 何々に換算したものの和という形で出されているものが多いと思うんです。これは、別々 に測って別々に足すということでしょうか。 ○事務局 基本的に試験方法の中では一度に物事を測定できるだろうと言われておりま す。というのも、現時点で報告されているホキシド等のデータが全部ございまして、測 定は明らかにできるということがわかっておりますので、その方法に従い、基準値の方 も設定していきたいと考えております。 ○大野部会長 場合によって違うわけですね。代謝物を含めた場合に、原体に換算して 数値を決める場合と、代謝物の重量を合わせて規制する場合と、いろいろ状況によって 違うということですね。 ○加藤委員 構造式を見て、これは分子量が425ですね。スルホンになって32がくっ付 いて450、460で、比率が1.05辺りのところなんです。そうすると、なくてもいいのか なという気もするのですが、その辺はいかがでしょうか。 ○大野部会長 実質的にはほとんど同じだと思うんですけれども、何となく気持ちが悪 いということですね。 ○加藤委員 通常はやりますけどね。 ○佐々木委員 今までは通知でそこはきっちり書いてありますよね。実際にそれぞれを 別に測るのであれば別々に測るという方法ですし、普通スルホン体になるものですとス ルホン体に一本化して測るというような分析法でやられている場合もあるので、そこは はっきりして、しかも基準値と比べるときにどうするかということになると思うので、 今までは通知の中に書いてあったと思うんです。ですから、どちらかはっきり書いてい ただければそれでよろしいとは思いますが。 ○大野部会長 では、この場合は別々に測定して。 ○加藤委員 従来どおりにやると。 ○大野部会長 従来どおりというのは、スルホン原体に換算してということですか。  いかがですか。技術的に可能ですか。実際の作残データは、ほとんどスルホン以外は 0.000と検知以下だったと思うんですけれども、そのほかに原体が入っている部分もあ りますね。試験法としては、スルホンに変えて測定するという方法は今のところないわ けですね。このものに関しては、分離して測定するという方法になっているわけですね。  これについての工程法はもうできているんですね。それはどうなっているんでしょう か。分析の方法です。 ○事務局 分析法につきましては先ほど御説明申し上げたとおりで、UV検出器を用い た液体クロマトグラフとマスを使った方法で測っております。 ○基準審査課長 今までは、今の通知で出しているものは原体だけでやられているんだ そうです。  すみません。この剤は通知はまだしていないんだそうです。 ○事務局 今、いろいろ換算した方がよろしいという御指摘もあって、今、事務局の方 では単純な和で基準値を案で出しておりますので、換算したときに基準値が変わるよう であればまたお諮りするということがありますので、今回その辺は検討させていただい て、座長の先生とも御相談させていただいて進めるということでいかがでしょうか。 ○大野部会長 いかがでしょうか。そういうことでよろしいですか。私に一任させてい ただいて、トータルとして数値を決めるか、トルトラズリルとして換算して決めるか、 単純な和で決めるかということですけれども、お任せしていただいてよろしいでしょう か。  それでは、そのようにさせていただきます。ほかに御意見ございますでしょうか。  山添先生、どうぞ。 ○山添委員 29ページのウシにおける分布、代謝の試験のところをちょっと見ていると、 29ページの3行目で最高血漿中濃度到達時間が120時間、5日になっているんです。普 通単回投与をして5日目に最高血中濃度になるというのは非常に遅いと思うのですが、 この記述は間違いがないということですね。  例えば、この時点を調べた中では最初の時点であったがために、そこで最高血漿中濃 度というふうに記載をしている可能性もあるので、それの確認ということです。  ただ、そうかもしれないと思いますのは、ラットのデータで食品安全委員会のデータ の記載があります。それは8ページで、食品安全委員会の方では5ページですが、「ラッ トにおける投与実験」とありまして、そこの上から3行目のところにTmaxが雌雄でそ れぞれ24時間、8時間というふうに、これも非常にラットでも遅いんです。ですから、 もともと遅いのは確かなのですが、それにしても5日目というのはどうなのかというこ とで、そこの確認をお願いしたいと思います。 ○加藤委員 今おっしゃったことをEUの評価書で該当するところを探しましたが、サ マリーレポートの4の第2項に入っていました。そこを見ますと、化学の試験ですので ウシだと思いますか、最高血漿中濃度120時間という記載になっています。 ○山添委員 多分、最高血中濃度は記載はそうだと思うんですが、調べた時点における 最高血中濃度なのか、本当のカーブを取った最高血中濃度なのか。そこのところがちょ っと取れないんですね。そこをどうしておくかなのですが、このままだと多分最高血中 濃度は5日目だというふうに取られてしまうかもしれない。 ○事務局 今の点につきましては、実際にどこまで確認できるかという点もあるのでご ざいますが、念のためにもう一度その点は確認をしてみます。 ○山添委員 よろしくお願いいたします。 ○大野部会長 では、確認をよろしくお願いいたします。ほかにございますでしょうか。  これは、食品安全委員会にいろいろ意見を申し上げなくてはいけないわけですね。申し 上げて、直すか直さないかはあちらの考え方ですけれども、いずれにしても申し上げる ということで、うちの方の報告書に関しては今、御指摘があったところを修正して、ト ータルの分析の対象物質の結果の表現の仕方については私にお任せいただくということ で、この報告書をこの委員会の報告としてよろしいでしょうか。  それでは、そのようにさせていただきます。どうもありがとうございました。  それでは、次の2番の議題でございます「農薬の魚介類への残留基準の設定について」 ということに入りたいと思います。  その前に、今後の手続について御説明願えますでしょうか。 ○事務局 これらにつきまして、前回からの宿題が出ておりました、農薬でいけばフェ ンブコナゾール、シニドンエチル、動物用医薬品についてはフルニキシンとセフチオフ ルと今、御審議いただきましたトリトラズリルにつきましては、食品安全局からも評価 書の報告を受けてございますので、修正の部分はいろいろございますけれども、そこを 確認しつつ、本案をもって分科会の報告書とさせていただきたいと思います。  今後の手続につきましては、分科会の方にお諮りするとともに、この5剤につきまし てパブリックコメント、WTO通報の手続を進めるということにしたいと思います。 ○大野部会長 ありがとうございます。  それでは、引き続き議題の2に入りたいと思います。事務局から資料の説明をお願い いたします。 ○事務局 議題2といたしまして、農薬の魚介類への基準の設定ということで挙げさせ ていただいております。  これにつきましては、まず背景の方を事務局から御説明させていただきたいと思いま す。後ほど、これにつきましていろいろ御検討いただきました加藤委員の方から御説明 いただくのですが、資料6でございます。厚生科学研究の報告書という中に、背景事情 につきましても取りまとめていただいておりますので、それに従いまして事務局から御 説明申し上げたいと思います。  資料6の1ページ目に「1.背景」ということで書いてございます。ポジティブリス トが昨年の5月29日から施行されてございますけれども、先生方御存じのとおり、これ につきましてはすべての農薬、すべての食品について網を掛けるという制度でございま す。それで、個々の基準が設定されているものについてはその基準で規制するのでござ いますけれども、基準がないものにつきましてはいわゆる一律基準、0.01ppmで管理を するという考え方で制度が成り立っているものでございます。  それで、この制度の導入時におきまして、多くのものについて残留基準というものは 設定されなかったということでございまして、農薬についてコーデックス基準があるも のについてはその基準を参考にする。また、国内に登録保留基準等があるものにつきま してはその基準を参考にする。また、海外で使用されているものについては海外の基準、 すなわちEU、米国等の基準を参考にしたという経緯がございます。  いずれにしましても、農薬というのは通常、農作物にいろいろな用途、病害虫の防除 というような用途があって使用されるということでございます。直接農薬が使用される ことがないという部分で、畜水産物のうちウシ、ブタ、家禽等、畜産食品につきまして は、それぞれ飼料経由で農薬が入るということがございますので、それらについては残 留の可能性があるということで、残留試験があるものについては個々の基準を定めてい るものがあるということでございます。  ただし、魚介類についてはそもそも魚介類に農薬を使うことはないということでござ いますし、飼料由来で入ることも非常に少ないということもございまして、ほとんどの ものでは基準を定めていない。諸外国を見ましても、ごく一部アメリカの方で基準が設 定されているということがあって、我々の方も基準を置いているものはございますけれ ども、それは本当にごく一部でございましてほとんどのものには設定されていないとい うことで、いわゆる一律基準で規制するという状況に今はございます。  そういうような状況の中で、昨年、滋賀、島根、鳥取県というところで、ここはシジ ミ、特に島根県の方はシジミガイが非常に有名な県の特産物ということで、全国の40% から50%近いものが宍道湖の方で生産されるという県でございます。この3県の方で県 産のシジミについて残留農薬検査をしたところ、いわゆる一律基準を超えて農薬が検出 されたということでございました。  これにつきましては、このファイルの中の資料ナンバー1というところで各県で検出 されたというプレス資料を付けさせていただいてございます。1ページ目からが島根県 でございます。13ページからが滋賀県、これは琵琶湖でのシジミの貝の関係、18ページ は鳥取県でございますが、東郷池というところのシジミに関するプレス資料でございま す。  滋賀県と島根県の方では、今は値も下がって自粛も解除になって今は漁獲されている ということでございますけれども、鳥取県の方はまだ値が高いままでいまだに自粛され ている状況があるということでございます。  今回の事例につきましていろいろと原因を調査されているところでございますけれど も、まだ明確になっていないところはございますが、いずれにしましても水田等で使用 した農薬が何らかの形で河川に流出して、それが河口とか湖沼にいるシジミ等に残留し たと考えられているものでございます。  厚生労働省としましては、こういった事例について一義的にはそういった河川に農薬 が流出しないような環境にする。適切に農薬を使用していただいて、適切に止水管理を 行っていただくということが第一義的に重要ではないかと考えているところでございま すけれども、幾らきっちり止水管理をされ、農薬を適切な量をまいたとしても、どうし ても例えばあぜを浸透して河川に流出するとか、または雨が降って漏水してしまうとか、 そういうことが起こってしまうことがあるということでございます。  こういったような状況があれば、非意図的に河川に流出することがあるということで、 それを通じて魚介に残留するという可能性が否定できない状況にあるということでござ いますので、こういった場合に何らかの基準値というものが策定できれば、科学的な根 拠に基づいて策定できないかというようなことを考えていったわけでございます。  そこで、世界的なところを見渡しますと、コーデックスの方でもこういったようなも のについての基準の設定の仕方がないということでございまして、参考になるものが今 のところないという状況にございます。  そこで、平成18年度から本部会の委員でもいらっしゃいます加藤先生の方で、食品中 に残留する農薬等におけるリスク管理手法の精密化に関する研究ということで、厚生労 働科学研究費の方で研究事業をやっていただきました。今回の魚介類の残留基準値の設 定手法に関しましても、この研究班の中で何とか緊急的に検討をいただけないかという ようなことで実施していただいたものでございます。  今般、この資料6の形で取りまとめていただきまして、今回御報告させていただくと いうところでございます。後ほど設定の手法につきましては加藤先生の方から御説明い ただくことにしておりますけれども、この手法がこの部会で御了解いただければ、今後 必要なものについて、魚介類についての農薬の残留基準を定めるに当たってはこの手法 で検討していきたいと考えているところでございます。背景事情はこういうところでご ざいますけれども、設定の手法につきまして加藤先生の方から御説明いただければと思 います。 ○大野部会長 それでは、すみませんが、加藤先生から説明をお願いいたします。 ○加藤委員 それでは、御説明させていただきます。  最初に、この報告書ですが、表書きの次のページをごらんいただきたいと思います。 ここに名前を挙げさせていただきました各分野の専門の6名の先生方の御協力を仰いで、 4月から6月にかけて、私が座長を務めさせていただいて班会議で検討してまとめさせ ていただいたものです。お忙しい中、いろいろな先生方に御検討いただいたことにまず お礼を申し上げたいのと、その際に農水省、環境省さんの方からもいろいろな情報、資 料の提供を受けました。それについてもお礼を申し上げたいと思います。  まず本題に入る前に、こういうシジミだとか魚介になぜ基準をつくらなければいけな いのか。それと、作物への残留基準の設定の仕方とどういう点が違うんだろうかという 辺りの基礎的な部分についてやはり御了解いただいておかないとまずいだろうと思う点 が2つほどございますので、中身の細かい点に入る前ですのでひとつお話をさせていた だこうと思います。  第1点目というのは、魚介類中の一律基準、0.01ppmがございまして、現在そうなっ ているわけですが、それに相当する環境中の濃度というのは一体どれぐらいのレベルの ことを問題にしなければいけないのか。それからもう一点は、先ほど事務局からお話が あった点の補足にもなりますが、公共水域への農薬の流入経路についてです。  最初の環境水と魚介類の濃度の関係ですが、御存じのように魚介類はエラを使って大 量の水をろ過しています。お話によりますと、シジミは宍道湖の全湖水を3日間で循環 しているそうですが、そのように非常に大量の水をろ過しています。それに伴って脂溶 性の高い物質というものは体内に吸収されて、代謝活性だとか、化合物の特性だとか、 脂肪の含量、エラの表面積、いろいろな要因がありますが、そういったものに応じて体 内に濃縮されていくということがあります。  濃縮の程度、これは濃縮率とか蓄積率、濃蓄係数でいいますが、水田に使われている 農薬の場合ですと、その多くは500程度以下のものが多いのですが、幅としては1以下、 つまり環境水の濃度まで達しないというレベルのものから、化合物によっては2,000程 度のものがあるというのが実態です。これは具体的に言いますと、水中の農薬濃度が 0.1ppbの場合、0.1ppbといいますのは、環境水の分析をする際の通常の分析ですと検出 限界に相当するくらいの低い濃度になりますが、そういう状態であっても、もし濃縮率 が500という場合ですと魚中の濃度は簡単に一律基準を超えてしまって0.05ppmになっ てしまうという関係があります。ですから、問題にしなければならない、管理をしなけ ればならない水中のレベルというのは非常に低いレベルのことを言っているんだという、 非常に難しいものだということをまず御理解いただければと思います。  第2番目の水系への流入の経路なのですが、水田は御存じのように公共水域に直接つ ながっていますので一番その水系への農薬の混入という点ではリスクが高いものになり ますが、水田で使われる農薬で一番多いのは除草剤です。農薬の半分ぐらいを占めてい るわけですが、除草剤の多くのものにつきましては先ほどもちょっとお話がありました ように、農薬をまいてすぐ公共水域に流し込んでいいというものではなくて、現在は7 日間の止水期間が設定されております。7日間は外へ流してはいけなくて止めておく。 その間に、農薬は土壌なり水中の微生物等によって分解されたり、土壌に吸着されたり して濃度が下がっていきます。下がったところで初めて外に出していいというシステム です。  ただ、これは十分おわかりのようにコントロールできるものです。コントロールが非 常に難しいものもあります。それが畦畔、あぜですね。土で水田というのはあぜをつく って、そこで水田を区画しているわけですけれども、そこから水が染み込んで、その横 の排水路に流れ込む、流出していくという部分があります。これが非常に小さいのであ れば大したことはないんですが、そうではなくては水尻から水を管理して流す。そこの 水の量の実際には3分の2だとか、半分以上を占めるようなかなり大きな流出経路にな っているわけです。これは、そう簡単に人が制御できるものではありません。これが第 2番目です。  それからもう一つ、そのほかに水田に関してですと、ポジティブリストをつくるとき に問題になりましたような飛散、ドリフトですね。農薬が風が吹いた段階では水田のす ぐ横を走っている排水路、クリークに入り得る。それから、もっと遠くまで仮に飛んだ 場合ですと、一部は河川に入り込むこともあり得ることがあります。  それから、水田ではなくて非水田、畑とか果樹園等でもやはり制御は非常に難しいも のがあります。大雨が降ったとき、例えば雷が鳴ったとき等に降る雨は短期的に1時間 当たり30ミリ以上の集中的な降雨になるわけですけれども、それくらいになりますと土 壌の表面に水が染み込むよりも早く雨がたまりますので、表面を水が流れるという現象 が起きます。それに伴って、土と同時に土壌表面に残っている農薬を外部に流出させて しまう。これもあります。これは、人が天候をコントロールできれば別ですけれども、 なかなか流出をゼロにするということは難しい部分があります。これは、いろいろな要 因で起きる頻度というものは支配されているのですが、年間平均11回くらい起きている と言われています。これもゼロにはできないようなものです。  自然の中で営まれる農業環境には、こういう人間で完全にコントロール制御できる枠 を超えた部分というものがありまして、微量でも混入すれば魚介類には検出可能なレベ ルで残留することがあるということは現実にございますので、まずそのような使用基準 とか、止水管理を十分に行っても農薬が水系に混入することはあって魚介類に残留する ということであれば、それは魚介類への残留基準を設定することは必要であるという認 識に立ちまして、この案を検討することになったといいますか、そういう認識に立ちま して我々は検討をさせていただいたところでございます。  2ページ目をごらんいただきたいと思います。「残留基準の設定の基本的な考え方」で す。ここは、これまで食品中、農作物での残留基準の設定の仕方が最初のパラグラフで 書かれておりまして、その次に海外では例えば魚介類への基準の設定の仕方等について どんなふうにされているんだろうかということが書いてございます。先ほども御紹介が ありましたように、JMPR等では非意図的に残留する外因性の残留農薬についての基 準というものがございますが、これは基本的には過去に使われていた農薬、現在使われ ていない農薬についてのものでありまして、今回問題になっている魚介類については設 定されておりません。  国際的に確立された方式というのは、魚介類への残留基準、特に直接魚介類に処理す る農薬以外のもの、非意図的に入り込むものについての基準のつくり方というものは確 立された方法はありませんが、米国ではわずかにあり、ごく一部のものに設定されてい るということがございます。  そういう中で、先ほど申し上げたように、使用基準とか止水管理を適切に行ってもど うしても魚介類に残留するものが出てくるんだという認識に立った場合、そしてその濃 度等については非常に環境中のいろいろな複雑な要因を受けて変動するものだというこ とを考えた場合、どういう設定の仕方をしていけば問題ないものがつくれるかというこ とで考えたのが3ページ目の3以降のところでございます。  基準値のつくり方の方法としては、JMPRで考えられたものと似たような方式を仮 に取ろうとしますと大規模な実態調査が必要なわけですが、そういうことではなくて既 存のデータなりをうまく利用してつくっていくという合理的な方法を考えたわけであり ます。 推定残留量の算出の仕方としては、農薬の魚介類中の残留濃度といいますのは 魚介類が生息する環境中の農薬濃度と、それを取り込む魚介類の体内での濃縮率によっ て基本的には決まってまいります。そこで、環境中の農薬濃度を推定する方式があれば いいことになります。これにつきましては、既に環境省で3ページ目に書いてございま すように、公共用水域の水中における環境中予測濃度、PECという手法を作成されて おります。また、その算定の方式につきましても農薬取締法で資料の添付を求めており ます。  一方の生物への濃縮性に関しましては生物濃縮係数、BCFと呼びますが、これとし て求める試験法のガイドラインが農水省でも出されておりまして、こちらも評価方法が 確立しております。これは2種類の濃度で、農薬を含む薬液を水槽に流して試験生物、 これはコイとかキンメダカが推奨生物にされているわけですが、そこに通常ですと28 日以上、最大60日間、飼育して魚介中の濃度が平行に達した後、清水に戻して95%以 上排泄されるまで個体と水中の濃度を測定して、水中の濃度に対する魚体中の濃度の比 率を求めて生物濃縮係数とする試験がございます。  そこで、魚体中の濃度、魚介類中の残留量につきましてはPEC、それからBCFの 値から魚介中の推定残留量を算定して、その濃度から残留基準値を設定していくという 基本的なスキームを取ることにいたしました。  そのPECの算定方式ですが、環境省で設定されておられるPECには2種類ありま す。水質汚濁に関する水濁PECと水産PECと略称される2種類であります。水濁P ECと申しますのは、水質汚濁による人畜への慢性的な毒性評価を評価するためのPE Cでありまして、公共水域での年間平均の予測濃度を求めるものです。もう一方の水産 PECといいますのは、水産動植物への被害防止のため、農薬使用時の短期的な最高濃 度、残留濃度を求めるものでありまして、資料6の34ページ辺りをごらんいただきたい のですが、日本の河川流域を圧縮したような一定の環境モデル、10キロ掛ける10キロ、 山手線の内側に相当するくらいのサイズの環境モデルです。水田が含まれており、畑も 含まれており、また河川の本線と支線が含まれているという環境モデルが設定され、こ の下で農薬を5日間にばらけて単回散布して、公共用水域に流出なり飛散した場合の公 共用水域中での農薬の環境中予測濃度を算定するというモデルであります。  そういうことで、今回の目的にかなっているのは水濁PECではなくて今、申し上げ た水産PECの方ということになります。この水産PECを使いまして、農取法で定め られている算出方法に準拠するのが適当と判断しております。  このPECの算定につきましては、4ページ目に枠で囲ってございますように、使用 の場面、水田使用か、それともそれ以外の非水田使用の農薬であるか、その使用場面ご とに最大で3段階までの段階性になっています。水田使用農薬に対するものと非水田使 用農薬い対するものとがありますが、いずれの場合も地表流出とドリフトによる河川へ の推定流入量を河川流量で割って算出したと、単純に言えばそういうことになりますが、 実際には多数のパラメータを使った非常に複雑な計算になります。  地表流出は、水田使用農薬では水尻からの排水と、先ほど申し上げたような畦畔から の浸透、それから非水田使用農薬では降雨による漂表流水の発生による流入が考慮され ています。また、ドリフトの場合は排水路と河川へのドリフトが考慮されたものになっ ています。  水田使用農薬ではこの枠の中に書いてございますように、tierの第1段階から第3段 階まで、非水田使用農薬ではtier3はなくて第2段階までですが、非水田使用農薬用の 第1段階、第2段階といいますのは、水田使用農薬の第2段階、第3段階にそれぞれ対 応するレベルのものであります。段階が進むほど実環境の濃度に近い算定値が得られる というものですが、当然のことながら必要な試験の種類、規模も大きくなってまいりま す。  これらのうちどれを使うかですが、水田使用農薬に関しましては、まず算定に必要な データ、パラメータが既登録剤では全部整っているということ。それから、魚介類中の 推定残留量の検討に必要な精密で実濃度に近い水中濃度推定値を与える。この2つの条 件を満たすかどうかということから、水田につきましては第2段階、止水を考慮した状 態での水田PECtier2を採用することが最適だろうと判断いたしました。  また、非水田使用農薬のPECに関しましても同じ理由から非水田PECtier1を採 用することが望ましいと考えました。  なお、この報告書には記載しておりませんが、水田PECのtier3のデータ、最高次 元のデータですが、それがあって、それに基づいたPECが申請されるのであれば、tier 3を採用することまでを我々は否定するものではないということだけ申し上げておきた いと思います。非水田PECのtier2についても同じ扱いで妥当だろうと思います。  ただ、第1段階の水田PECtier1につきましては、データはそろっているものの実 際の実環境での濃度との格差はtier2、第2段階のものと比べて精度が下がることにな りますので、こちらの方の採用は認められないという見解でございます。  なお、細かい点になりますが、水田PECtier2、第2段階のtier2の算定には水質 汚濁性試験、これは野外に設置した模擬水田で使用基準に従って農薬の製剤を処理して、 その後、田面水中濃度の推移をずっと測定していく試験でございますが、この試験は土 や土壌の特性が異なる複数の試験区で試験をしてまいります。ですから、複数のデータ が得られるわけです。これに関しましては、どちらの値を取るかという点では高い方の 値、残留基準の設定に必要な水田PECtier2の算定はその試験区ごとに行いまして、 高い方の濃度を取ることにするのが適当と考えます。  また、水田のみで使われるもの、それから畑のみで使われるもの、両方で使われるも のがございますが、その両方の場面で使われるような農薬につきましては水田PECの tier2、それから非水田PECtier1、その両方のうちの大きい方のPEC値を採用す るのが適当であると判断しております。  次に、PECの評価期間でございます。5ページ目の上の第1カラムのところですが、 これは農薬処理後何日間までの濃度を魚介類への推定残留量の算出に使うか、採用する かという点でございます。これは単純にずっと経時的に落ちるというものではなくて、 先ほど申し上げたように一定の環境モデルをつくって、しかも5日間にばらけて農薬を 散布するというシナリオの下での算定値になりますので、必ずしも経時的に落ちるとい う単純なものではございません。これは、魚介類中の農薬濃度が定常状態に達するまで にどれぐらいの時間がかかるかということと関連した問題ですが、定常状態に達するま での時間というのは生物種によって、また農薬ごとによって違っております。 一方で、 水産PEC自体、いろいろな要因によって支配されている複雑な数値になります。実際 のPECの算定値を見ましても、薬剤ごとに水中濃度の推移はさまざまでありまして、 一概に下がる、フラットである、または簡単に上がっていくということを言える状態の ものではございません。概してばらつくわけですが、その差は割合小さいものです。そ ういうことがございますのが1つです。   それからもう一つ、農薬登録の申請に際して実際にどういう期間のデータを申請する ことになっているかという点では、2日、3日、4日間という評価期間、これは水産生 物の毒性試験の評価期間に対応した期間でございますが、それを算定して出すことにな っておりますもので、この3つの中で一番大きい値を採用するということが適当であろ うと判断いたしました。PECについては以上でございます。  そして、もう一方のBCFの蓄積率についてですが、これは実際に試験をして測定し たデータで、何らかの水中生物で得られた実測データを採用するというのが原則でござ います。  ただ、BCFとlog10Pow、オクタノール・水分配係数との関係については一定の相関 関係が報告されております。ですから、BCFの実測データがない場合、これはlog10Pow の値から計算によって求めたBCFを採用することをしてもよろしいであろうという結 論でございます。  そのときに使う計算式ですが、5ページ目のちょうど真ん中に書いてございます数式、 これはIsnardによって一般化学物質も含んだ107化合物について数種の魚種で測定され た関係式でございます。log10BCF=0.80・log10Pow−0.52という関係式です。これを使 うことでよろしいのではないかという判断です。  ただ、BCFにつきましては同じ農薬であってもやはり生物種、魚種間で相当な差が あるということが報告されておりますので、何らかの補正係数が必要であるというよう に判断しております。これについてはどこまで取るか、非常にさまざまな生物種や魚種 がある中でどこまで取ればいいのかという問題が常につきまとうわけですので、これに つきましてはIsnardの報告にあります関係式についての95%信頼限界を検討した結果 と、それから水田使用農薬のlog10Powが5を超えるものが非常に少ない。5以下のもの が大部分であるということから、それを基にしましてlog10Powが5の場合の95%信頼限 界上限値から補正値は5とするのが適当であるという判断をいたしました。  それから、5ページ目の一番下の方にいきますが、「推定残留量を考慮した残留基準の 設定の考え方」です。BCL、PECが決まりまして基準値へどうやって持ち込むかと いう点です。その際、まず問題になるのは魚と貝ですが、これにつきましては生態等は 全然異なっておりますので、本来であれば当然区別して残留基準を設定するべきものだ ということでは認識はしております。  ただ、貝類におけるBCFの算出については試験法も今のところまだまとまったもの はございませんし、知見も非常に乏しいという状況がございます。それから、魚と貝類 との間でのBCFの相関関係も、明確ではなく、使えるようなデータの集積はまだない という状況でございます。そういう状況の中でありますので、当面コイなど魚類のBC Fを使って算出した推定残留量を基に貝類の基準値を設定するのが現実的であるという 結論を下しました。  ただ、その場合、今後貝類でのBCF等に関する知見が蓄積されれば、必要に応じて それらの知見を踏まえて基準を設定することも検討すべきであるというただし書き付き でございます。この点につきましては、現在農水省さんの方で貝類のBCF測定の研究 が進められているところでございます。  それから、全体的な不確実係数の問題ですが、魚介類の残留基準の設定の基礎となり ます推定残留量の設定に使っている水産PECにつきましては、先ほどまで御説明して いますように最大値をベースにして採用していっております。  それから、BCFにつきましては魚種間の差も完全ではございませんが、一応考慮し た形での補正を行っておりますので、これ以上の不確実係数を考慮する必要はないであ ろうという判断をしております。以上が個別の問題であります。  最後にまとめですが、以上の結果を踏まえまして環境由来で非意図的に魚介類に残留 する農薬の残留基準というものは、推定残留量を6ページ目の真ん中辺りに書いてござ います式、水産動植物被害予測濃度(水産PEC)に生物濃縮係数(BCF)を掛けて、 それに補正係数5を掛けるという式で出した推定残留量より設定するのが適当であると 考え、結論いたしました。このBCFにつきましては、先ほどから申し上げているよう に原則実測値を採用、実測値がない場合は計算式で算出ということであります。  なお、暴露評価の点につきましては、基本的には農作物等と同様に基準値を使いまし た理論最大摂取量、TMDIによる評価が適切であるということは言うまでもございま せん。ただ、水中の農薬の濃度は内水面、これは河川とか池とか湖沼ということになり ますが、内水面とそれ以外、内海とか内湾、遠洋沖合で約5倍ないしそれ以上という差 があるという報告、これは環境省の調査でそういうデータがございます。ですから、必 要に応じてこの状況を考慮した暴露試算も可能であろうと判断しております。  なお、この際にどの魚介類がこの内水面の漁業の産物であり、内海、内湾の産物であ り、遠洋沖合のものであるか。その分類につきましては、既に食料品中のPCBの暫定 的規制値が設定された際に、出されております参考資料に含まれておりまして、今回の 参考資料17の37ページのところにその分類が出ております。  それから、38ページ以降は環境省さんでの登録保留基準における暴露評価の際の魚介 類の算出ということで、これは直接関わるものではございませんけれども、登録保留基 準の際の内水面、魚の分け方が参考に出ております。カツオやアジの生息地というのは 遠洋沖合ですが、そこでの希釈率というのは先ほど申し上げた内湾、内海での希釈率よ り当然はるかに大きなものになると思いますので、これについての暴露評価のときには その点も考慮されることは適切であろうというふうに、座長役を務めた者としては考え ております。  最後に、この報告書に従って基準値等を検討させていただく場合に、我々ができたこ と、できないことが幾つかございます。  まず、手に入れた資料というのは現時点では非常に限られたものでしかないというこ とでございまして、今後魚介類での蓄積性なり濃縮性のデータ、実態調査のデータ、そ れからできれば摂取量に関するデータ等、新たな知見があればそういうものを集積して、 必要に応じてこの手法については見直しの検討を進めていくべきであるということが附 帯条項の1つです。それから、引き続き関係の3省が連携してこの分野での研究調査を 進めていっていただいて、データを集積していただきたいということが第2点目でござ います。  以上、はしょった説明になりましたが、御説明に代えさせていただきます。 ○大野部会長 丁寧に説明していただいてありがとうございます。今の説明についてい ろいろ御意見はあるかと思いますけれどもいかがでしょうか。  この方法に従って、シミュレーションか何かをやってみたんですか。 ○加藤委員 農水省さんに幾つかの剤、特に水田用の剤を主体にして幾つかの計算をし ていただきました。その中で、かなりのものにつきましては0.01ppm、一律基準でもク リアできるんですが、どうしても一律基準を超え、かなりの濃度の基準値を考えざるを 得ないというものもやはり出てきております。 ○大野部会長 それを、今までの摂取量ですね。今までの残留基準に従って計算すると、 トータルとしてADIを超えてしまうとか、そういうことも考えられますか。 ○加藤委員 TMDIではADIを超えるもの、先ほども申し上げましたように暴露量 をどう評価するか。TMDIのときに内湾、内海での魚をどう扱うか。それから、更に 遠洋沖合での魚をどう扱うか、これによっても決まりますが、それを無視した場合には TMDIを超えるものがかなりといいますか、何剤かは出ております。 ○大野部会長 何剤という程度で、それほどは……。 ○加藤委員 半分以上とか、そんなレベルまではいっていなかったと思います。 ○大野部会長 何とかコントロールできる程度ですね。 ○加藤委員 非常に難しいものがやはり出てくるということは確かです。 ○大野部会長 ほかに御意見をどうぞ。  では、山添先生お願いします。 ○山添委員 例えば、化合物の構造でクラス分けをして、あるものは非常に濃縮性は高 いけれども分解しやすいとか、そういうようなクラス分けというのは可能なんでしょう か。 ○加藤委員 例えば水田用の農薬で、当然これは基準値をつくっていく場合もそうです けれども、どれから優先してそういうデータを集積していく努力をしないといけないか という判断が当然求められると思うのですが、その際に今、先生がおっしゃったような ことをやっております。  ただ、それはあくまでも非常に大きなラフなクラスター分けしかできなくて、実際に 例えばBCFに関しては代謝の速度も問題になるわけですね。ところが、魚に関しての 代謝の速度のデータというのはない。それから、もちろん魚種間での差も全くわからな い状態で、何倍くらいあるかもよくわからないというので、現時点では非常に難しいと いうことです。 ○大野部会長 ほかに御意見はございませんか。  では、山内先生どうぞ。 ○山内委員 私も最初にシミュレーションのお話が出ましたけれども、その辺りが感覚 的にわからないものですから、例えば本日いただいているファイルの資料1の3ページ で、島根県さんのところに除草剤のチオベンカルブというものがございまして、これに ついては残留基準値がもう既に決定されていて、米だと0.2ppmとかいろいろございます けれども、こんなものについてはどのようなシミュレーションになったかということを 教えていただけないでしょうか。  それと、当面はやはり身近にシジミの問題があったと思いますけれども、遠洋でとれ るようなお魚なども対象にしていくというより、優先順位をお決めになって必要な農薬、 必要な基準値をつくっていかれると思いますが、それを想定されたときにシミュレーシ ョンも多分なさっているのではないかと思いますが、そのときに水田で使う農薬で想定 されるもので、今わかっているものでどれぐらいの量がこんなような農作物と同様の値 なのか、それよりもっと高いものを設定しなければならないのか、その辺りの出具合で、 もし教えていただけるものがあれば教えていただきたいと思います。 ○加藤委員 最後に申し上げましたように、その出具合で農作物よりも高い基準値が出 るものがあるかどうかですが、農作物の中の一般的な基準値よりは低いものがほとんど で、水稲は全体的に非常に低い基準値になっておりますので、これを超える基準値にな る可能性があるものは少しはあったように記憶しています。ただ、全体としてはそんな に高い数字にならなくても、今の基準値といいますか、基準値はまだはっきりわかりま せんので、推定濃度になりそうな感じです。 ○事務局 今、先生から御説明がありましたが、いろいろシミュレーションは研究班の 中でもやっていただいたところなんですけれども、実際のデータはどれを使って基準値 に相当するような推定残留量を算定するかというのは、これからまた個々の薬剤で詰め ていって、農水省さんからもデータをいただきながら計算なり算出をして検討してまい ります。それで、個別にこの場でいろいろ御意見をいただきながら、基準値の策定につ いては御検討いただくというふうな形を考えてございますので。 ○大野部会長 全体としては、かなりオーバーエスティメイトするような可能性のある 計算ということですね。これで大きく超えてしまったら、かなり不適切に使っていたと いうことになるんですね。適切でない使い方をしていたと。 ○加藤委員 基準値の性格として、そういう判断をするためのものという側面もありま すので、そういう判断に当然なろうかと思います。 ○大野部会長 いかがですか。全体としてこういった考え方でこれから当面、検討をし ていくという提案ですけれども、こういった考え方でやっていってよろしいでしょうか。  では、大体皆さんこれでよろしいのではないかという御意見だったと思いますので、 しばらくこれでやってみて、問題が起きたらまた手直しになると思うんですけれども、 それでやっていきたいと思います。どうもありがとうございました。  これで2番目の議題を終えたということですけれども、それ以外に議題がございます でしょうか。 ○事務局 特に事務局から新しい議題はないのですが、次回は7月3日を予定してござ います。詰まっているんですけれども、その次は7月18日を予定してございますので、 先生方におかれましてはよろしくお願いしたいと思っております。  来週につきましては、三田の共用会議所の方が会場になりますので、また御案内させ ていただきます。  8月につきましては、8月29日を予定してございます。それにつきましては、また改 めて御案内申し上げます。 ○大野部会長 ありがとうございます。  そのほかにございますでしょうか。よろしいですか。  それでは、今日の議事は全部終わったということでございます。どうもありがとうご ざいました。 照会先:医薬食品局食品安全部基準審査課残留農薬係、乳肉水産基準係 (03−5253−1111 内線2487、2489)