07/06/22 第30回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会議事録 第30回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会 日時 平成19年6月22日(金) 13:00〜 場所 厚生労働省職業安定局第1会議室(13階) ○生田総務課長 ただいまから、第30回の雇用対策基本問題部会を開催いたします。 部会長については、労働政策審議会令第7条第6号において、公益委員の中から選出され ることとなっており、大橋委員が選出されております。部会長代理については、労働政 策審議会令第7条第8項において、公益委員から部会長が指名することとされており、 白木委員が指名されております。それでは、大橋部会長に進行をお願いします。 ○大橋部会長 部会長を仰せつかりました、一橋大学の大橋でございます。大変拙い進 行役になりそうですので、ご協力をよろしくお願いいたします。  最初に、委員の交代がありましたのでご紹介いたします。公益委員として征矢委員、 森戸委員、労側委員として久保委員、使側委員として市瀬委員、木本委員、橋本委員の 各委員が新たに就任されています。  本日の委員の出欠状況を確認させていただきます。公益代表は白木委員、宮本委員、 労働者代表は野村委員、使用者代表は荻野委員、成宮委員は欠席となっております。な お、公益の北村委員は、追ってご出席ということですので、よろしくお願いいたします。  議事に入ります。本日の議題は、「改正雇用対策法及び地域雇用開発促進法に係る省 令等の検討について」です。初めに事務局から資料についてご説明いただき、その後議 論を進めていきたいと思います。 ○高橋職業安定局長 資料の説明に入る前に、ご挨拶を申し上げさせていただきます。 ただいまご紹介がありましたように、今回、委員の改選がありました。新たにご就任を いただきました委員の皆様方には、大変お忙しい中お引き受けを賜りまして、厚くお礼 を申し上げる次第です。また、従前よりご就任をいただいております委員の皆様方には、 引き続きよろしくお願い申し上げたいと思います。各委員の皆様方には、今後も雇用対 策の推進に関して、幅広くご意見を賜ればと祈念をいたしている次第です。  本日については、昨年のこの部会でもご議論をいただき、また建議としておまとめい ただいた改正雇用対策法、並びに改正地域雇用開発促進法、それぞれ法案が6月1日の参 議院本会議で可決、成立をしたわけです。この改正法の施行に向けて、政省令、告示等 について、これからご議論をいただきたいということで、本日お集まりをお願いした次 第です。これから大変暑い時期を迎えることになるわけですが、この改正法については、 公布後3カ月を超えない範囲内で、政令で定める日から施行するという部分と、義務規 定にかかわる部分については、10月1日を施行日とします。2本立てになっているわけで すが、10月1日施行分については、やはり相当の周知を図っていかなければならないこ ともあります。そういうことで、この改正に伴う政省令等の検討についても、相当集中 的にご参集をお願いしながら、ご議論をいただくこととしているところです。その点、 何とぞご理解を賜り、ご協力のほどよろしくお願いを申し上げる次第です。  多くの事項については、いま申し上げたように昨年取りまとめていただいた建議にお いて、基本的な考え方については一応の整理がなされているところです。ただ、それと は別に、法案化をするプロセスの中で、与党審査等々もあり、その中で与党の指示で盛 り込まれた事項として、募集・採用にかかわる年齢制限禁止の義務化が、建議のときと は異なるものとして盛り込まれているわけです。これにかかわり、一定の合理的理由の あるケースについての例外的な義務規定の除外と申しますか、そういう事由をこれから 省令で定めることになっているわけで、この点について、新たにご議論をいただかなけ ればならないという意見があります。  ご案内のとおり、既に我が国社会は人口減少社会に立ち至っているわけです。そうい う中で、年齢にかかわりなく働ける社会の実現という観点から、募集・採用にかかわる 年齢制限の禁止の義務化は大変重要な意義を持つ事項です。また、国会審議の際におい て、例外的な事由を定めるに当たっては、必要最小限のものに限定をすべきというご指 摘、ご決議もいただいているわけです。この点について、各委員におかれましては実効 あるものとなるような形で定めていただくべくご意見を賜りたいと考えている次第です。 詳細はこれから説明させていただきますが、以上の点をよろしくご理解賜り、ご協力の ほどお願いを申し上げて、簡単ですが、私の挨拶に代えさせていただきます。どうぞよ ろしくお願いいたします。 ○生田総務課長 資料に基づいて説明させていただきます。資料No.1から資料No.13まで、 50頁まであります。1頁ですが、これは基本的に昨年末の建議でご指摘いただいた内容 に従って、国会で成立した法律の中身です。今回ご議論いただく政省令指針で触れる内 容を中心に説明すると、まず改正内容の雇用対策の基本的方向の中で、「雇用対策基本 計画を廃止」と書いてありますが、これに関連して都道府県の雇用施策実施方針、ある いはその前提となる全国指針、国会の議論の過程で出てきた中期的なビジョンなどにつ いて、省令上の根拠をつくるといった点があります。  2の青少年の応募機会の拡大等については、大臣指針の中で具体的に事業主の方にど んなことをお願いするのかを定めることになっており、この指針についてのご議論をお 願いする形になります。  3は、いま局長が申し上げましたが、募集・採用に係る年齢制限禁止の義務化という ことです。これについては、従来雇用対策法で努力義務になっていた年齢制限の禁止に ついて義務化するということですが、この義務化については例外事項があり、その例外 事項を省令で定めることになっており、その省令のご議論をいただくことになります。  4の外国人の適正な雇用管理については、今回、外国人労働者の雇用管理改善、ある いは再就職の支援について、事業主の方に一定のお願いをするということです。そのお 願いの具体的な中身については大臣指針で定めるということがありますので、その大臣 指針についてのご議論です。もう1つは、今回、外国人雇用状況報告が義務化されまし たが、外国人雇用状況報告の具体的手続等について、省令で定めることになりますので、 そういったご議論をいただくというものです。  5の地域雇用開発促進法の改正については、指定地域の要件、あるいは具体的な支援 策について、省令あるいは指針で定めていただくことになりますので、そういった点に ついてのご議論をいただくことになります。施行日については、先ほど説明した雇用対 策法の2から4の点については10月1日施行なのですが、公布の日から3カ月以内の政令に 定める日ということで、いちばん下の枠外に書いてあります。政令で8月1日と決めるこ とにしており、この政令も当部会で議論いただくことになります。以上が今回ご議論い ただく内容の紹介です。  その上で3頁ですが、これまでの法律の経緯です。今年1月22日に審議会より妥当とい うことでご答申をいただき、2月13日に国会に改正法案を提出しました。しかし、この 間に、先ほど局長が申しました与党手続の過程で、年齢差別禁止の努力義務を義務化す べきであるというご指摘をいただきました。具体的には1月24日に自民党の雇用生活調 査会という与党審査の場があり、そこでとにかく年齢差別規定を義務化すべきであると いうことで、厚生労働省に対して申入れがありました。そのあと、与党実務者協議とい って、公明党と自民党で議論する場があり、そこでも同じような合意が出来上がり、厚 生労働省に対して申入れがあったということです。その後、1月26日に私どもの大臣以下 が決断して、雇用対策法の中に年齢差別禁止の義務化規定を盛り込むことを表明させて いただきました。その後、2月13日閣議決定、国会提出して、4月26日には衆議院の可決、 6月1日には参議院で可決、成立をしました。6月1日の前に、参議院の厚生労働委員会で 採決の際に附帯決議が付いております。これはいまから説明いたします。それから、6 月8日に公布をするという形になっております。  続きまして、いまの附帯決議を先に説明します。41頁に今年5月31日付の参議院の厚 生労働委員会の附帯決議を付けております。今後ご議論いただく点にかかわり合いのあ るものを抜き出して説明いたします。一ですが、「人口減少下における経済社会情勢の 変化、雇用情勢の変化、雇用・就業形態の多様化等に的確に対応するため、若者、女性、 高齢者、障害者等、働く希望を持つすべての者の就業参加の実現、良質な雇用の創出、 セーフティネットの整備等に向け、積極的雇用政策の推進に取り組むこと」ということ で、雇用対策法の施行に当たり、こういう姿勢で臨むということが指摘されております。  三ですが、「青少年の雇用機会の確保については、これを事業主の努力義務とするに 当たり、年長フリーターの正規雇用化が着実に進むよう、実効性のある大臣指針を策定 するとともに、当該指針に基づき、都道府県労働局及びハローワークが関係企業に対し て強力な指導を行うこと」となっており、年長フリーターの雇用化を進める観点を十分 踏まえて指針を作るようにというご指摘をいただいております。  42頁の四は、「いわゆるネットカフェ難民を含め常用雇用化を望む日雇い派遣労働者 等の雇用の安定を図ることは喫緊の政策課題であることにかんがみ、適切な対策を講ず ること」となっております。いわゆるネットカフェ難民の中に年長フリーター等も含む 若者対策が非常に重要ですので、こういった視点も含めた議論が必要であるということ です。  五ですが、「労働者の募集及び採用に係る年齢制限の禁止の義務化に当たり、事業主 等への周知徹底に努めるとともに、真に実効性のあるものとなるよう、従来、例外的に 年齢制限が認められる場合として指針に定められてきた事項を抜本的に見直し、必要最 小限に限定すること」と指摘されております。  六の外国人についてですが、「不安定な雇用環境の下で就労する外国人労働者の雇用 環境の改善に向けて具体的対策を推進すること。また、外国人雇用状況報告は、外国人 労働者の雇用管理の改善、円滑な再就職の促進等に確実に役立てるようにするとともに、 厚生労働大臣は、法務大臣からの情報提供の求めに対しては、その目的等に照らし、必 要な範囲で、適正に対応すること」と指摘されております。  その上で、43頁の1行目に、「指針に職業安定法第三条及び労働基準法第三条の趣旨 を明示するなど、適切な対策を講ずること」ということで、外国人について、職業安定 法第三条、労働基準法第三条の趣旨を具体化していくようにということを指摘されてお ります。  八の地域ですが、「地域間で雇用情勢に大きな格差が見られる中で、雇用対策は、地 域の実情に応じ、国と地方公共団体との密接な連携により機動的かつ効果的に実施する ことが重要であることにかんがみ、産業政策をはじめ地域再生に向けた取組と一体とな って、実効ある雇用創出の取組の推進に努めること。また、引き続き、雇用情勢の特に 厳しい地域に対する雇用対策の強化に努めること」とされております。  九は、「雇用対策基本計画の廃止によっても、雇用に関する施策を総合的かつ計画的 に推進することが重要であることから、別途、雇用に関する施策についての基本的な方 針を定めること。その際、労働政策審議会において労使の意見を十分踏まえるよう努め ること。また、都道府県労働局長が雇用施策の実施に関する方針を定めるに当たっては、 都道府県知事の意見を聞くとともに、地方労働審議会において地域の労使の意見を十分 踏まえるよう努めること」ということで、先ほど申した都道府県方針、全国指針、中期 ビジョンといったものについて、こういう対応をするようにというご指摘です。以上が 今後ご議論いただくものに関連するものです。  続きまして、ご議論いただくいちばん最初のメニューです。4頁は雇用対策法施行規 則等の改正内容についてです。大きく3つに分かれていますが、1つが、募集・採用にお ける年齢にかかわりない均等な機会の確保ということで、年齢差別の禁止の努力義務を 義務化する規定にかかわる部分です。これについては、先ほど申しましたように、例外 事項を厚生労働省令で定めることと、採用に当たっての事業主に対する留意事項を省令 で定めることになっております。  まず、例外事項ですが、17頁に年齢制限禁止の例外事由ということで、横に現行の年 齢指針、省令案と書いてあります。例外事項については、現在年齢制限禁止が努力義務 になっているのですが、大臣指針の年齢指針の中で、10項目の例外事由を掲げられてお ります。それを今回の叩き台としては、右側の省令案のような事項にしていくことが考 えられるのではないかということです。  省令案でなくなってしまっているものなのですが、4、5、7、8です。4の「就業規則 の変更を要する場合」、他の労働者の賃金額に変更を生じさせることになる就業規則の 変更をする場合については、こういったケースで就業規則の変更が必ず必要になるケー スはあまりないのではないかということもあり、なくすという考え方です。  5の「商品やサービスの特性により顧客等との関係から業務を円滑に遂行する要請が ある場合」は、例えば若者向けの衣料を売る場合に、以前は若い人に年齢を限定するこ とを認めていたわけですが、こういった点についても個人差もあるということもあって、 年齢制限には適さないのではないかということです。7、8についても、それぞれ個人差 があって、能力のある方についてはそういう問題が起きないのではないかということも ありますので、こういった点については外すという考え方です。  その上で、3の「定年年齢等との関係から雇用期間が短期に限定される場合」は当然 のことで、※で書いてあるとおりです。10の「労働基準法等法令の規定により年齢制限 が設けられている場合」も法律に従うということですので、当然のことということで、 ※で示してあります。  9の「行政の施策を踏まえて中高年齢者の募集及び採用を行う場合」については、行 政の施策方向で一定の年齢制限をしていただかざるを得ないケースもありますので、そ ういったケースについて新しい4として認めることで整理しております。従来の6の「芸 術・芸能の分野における表現の真実性等の要請がある場合」は、諸外国でもこういった ものについては認められているケースが多いわけですが、これについては残すという考 え方です。  1と2は右側で省令案と書いてありますが、それぞれ単純に移しただけではありません ので、具体的な内容を別の場所で説明したいと思います。11頁の項目(1)が、いま申した キャリア形成を図る観点から、若年者等を募集・採用する場合です。項目(2)が技能・ノ ウハウ等の継承の観点から、年齢層の限定を行う場合です。それぞれこういう考え方で 整理していこうというものです。(1)ですが、「長期勤続によるキャリア形成を図る観点 から、新規学卒者等の若年者等を期間の定めのない雇用契約の対象として募集・採用す る場合」です。これについて限定があり、経験不問という形で求人を募集していただく ことになります。もう1つ後段ですが、「新規学卒者以外の者にあっては、新規学卒者 と同様の条件により募集・採用する場合に限る」ということで、単純な転職者といった タイプの方を年齢限定を加えて募集することは駄目であると、これで明らかにしており ます。こういった要件が考えられるのではないかということです。  (2)についても、「特定の職種において労働者数が相当程度少ない年齢層(*)の求職 者を期間の定めのない雇用契約の対象として募集・採用する場合」ということで、「相 当程度少ない年齢層」の押さえ方については、*に書いてありますが、「30歳から49歳 のうちの特定の5歳から10歳幅の年齢層であって、同じ年齢幅の上下の年齢層と比較し て労働者数が2分の1未満である場合」ということで、2分の1未満という数字を要件に出 しております。こういった点について、また今後ご議論いただければと思っております。  4頁に戻って、最初の○はこういったことです。2つ目の○は「法第10条の厚生労働省 令で定めるところ」ということで、事業主にお願いすることは、「労働者の募集・採用 に当たっては、募集・採用に係る職務の内容、当該職務を遂行するために必要とされる 労働者の適性、能力、経験、技能等の程度をできる限り明らかにすること」ということ です。漢字が間違っておりますので、「労働者の適性」に直してください。この○につ いては、現在の雇用対策法の努力義務の中でも指針の中で書かれている内容で、それを 省令という形で整理したものです。  続きまして、外国人雇用状況報告等についてです。これについては、対象となる外国 人の範囲について、当部会でもご議論いただいている内容を整理しているだけですが、 特別永住者を除くということと、公務員になりますので、「外交」及び「公用」の在留 資格をもって在留する者を除くということで、この2つを除外するものです。2つ目の○ ですが、事業主に再就職支援のお願いをするケースについては、解雇、その他の事業主 の都合ということで、その他の事業主の都合は退職勧奨等ということです。  続きまして、5頁の外国人雇用状況報告の届出事項です。これについては、厚生労働 省令で定める事項を届け出ていただくことになっておりますが、そこに書いてある(1)か ら(7)の事項が省令で定める事項です。このうち(1)、(2)、(5)、(6)、(7)については、雇用保 険の被保険者取得・喪失届に既に書いてあり、付け加えて書いていただく必要はないも のです。取得届以外としては国籍と資格外活動許可がある者にあっては、当該許可を得 ていることということで、この2つを書いていただくということです。これは省令事項 ですが、法律で既に在留資格と在留期間は届け出ていただくことが書いてあります。も う一度整理すると、被保険者取得届以外で書いていただくのは、法律に書いてある在留 資格、在留期間と省令で書いてある国籍と資格外活動許可があるものに当たっては、当 該許可を得ていることということです。  (2)の被保険者でない場合については、雇入時については(1)の(1)〜(4)、離職時に ついては(1)の(1)〜(3)です。  (3)経過措置ですが、改正法施行の際、今年の10月1日現在に既に雇い入れている外 国人については、届出事項については(1)の(1)〜(3)でいいということです。(4)です が、厚生労働省令で定めるところにより届け出ることになっているのですが、確認方法 については(1)のアにあるように、氏名、在留資格、在留期間、(1)の(1)〜(3)について、 外国人登録証明書又は旅券(パスポート)によって確認することとしております。イの 資格外活動については、資格外活動許可書又は就労資格証明書で確認することになりま す。  (2)の届出方法ですが、雇用保険の被保険者については、雇用保険の得喪届と全く同じ で、雇入れの場合は翌月の10日まで、離職の場合は離職の翌日から起算して10日以内で 届け出ることになります。イの被保険者でない場合については、雇入れ・離職日の翌月 の月末までに届け出ることになります。  (5)は国・地方公共団体が通知するケースです。同じようなやり方で通知するとい うことですが、説明は省略します。  6頁の全国指針、地方方針等です。地方方針について、上の○ですが、「都道府県労 働局長は、都道府県労働局及び公共職業安定所における雇用に関する施策を講ずるに際 しては、毎年度、その基本となる事項を都道府県知事の意見を聞いて定めることにより、 当該施策と都道府県の講ずる雇用に関する施策とが密接な関連の下に円滑かつ効果的に 実施されるよう努めること」ということです。この地方方針の前提となる全国指針は、 その○のように、「厚生労働大臣は、毎年度、その策定に資するため、指針を定める」 ということになります。国会の議論の中で、毎年度改める行政施策の運営方針的なもの とは別に、中期的なビジョンを定めるべきではないかという議論がありました。これに ついても、雇用対策法施行規則の中に根拠規定を作るということです。それがいちばん 下の○で、「厚生労働大臣は、その講ずべき雇用対策法第4条第1号各項の施策に関し、 基本的な方向性を定めること」ということで、今回、雇用対策法の改正で整理した第4 条の国の講ずべき施策に従って、基本的な方向性を決めていくという規定を設けるとい うことです。  7頁の施行日です。これについては冒頭に申したように、基本的には8月1日ですが、 雇用対策法の中の若者の指針の関係、あるいは年齢差別禁止の関係、外国人の関係につ いては10月1日ということです。  8頁は青少年の応募機会の拡大に関する指針ということで、大臣告示で定める事項で す。これについては、昨年末当部会でご議論いただいた内容を整理したもので、基本的 に変わらない内容が盛り込まれております。1の趣旨は、雇用対策法第7条に基づいて指 針を定めるということを書いてあるだけです。2は労働者の募集・採用に当たって事業 主が講ずべき措置ということで、3の定着促進のために事業主が講ずべき措置と書き分 けるようにしました。年末の建議・報告ではまとめて書いてあったのですが、書き分け るというやり方にしております。その上で、募集・採用に当たって事業主が講ずべき措 置としては、冒頭に「青少年について、人物本位(就業等を通じて培われた能力、経験 についての、過去の就業形態、離職状況にとらわれない正当な評価)による採用が行わ れるよう、次に掲げる措置を講ずるよう努めること」ということで、建議でご指摘いた だいた内容を書いております。その上で、4つぐらい・があり、業務内容、採用基準や 職場で求められる能力・資質等の明確化、求人の応募可能年齢の引上げ、応募資格の既 卒者への開放、通年採用の導入、トライアル雇用の活用といったことを書いております。 それから、若者の能力評価については、将来性も含めた判断が望ましいこと。採用内定 に当たって、仮に卒業を採用の条件にする場合には、その旨を明らかにすることといっ たことも、併せて書いてあります。  定着促進のために事業主が講ずべき措置については、(1)の雇用管理の改善に係る措 置として、「青少年について、採用されても、その後の離職率が高いことを踏まえ、そ の職場・職業への定着を図る観点から、次に掲げる措置を講ずるよう努めること」とい うことです。1つ目の・は、上のほうの最初の・と趣旨は同じなのですが、「募集・採 用段階において、業務内容、採用基準や職場で求められる能力・資質等を明確化するこ とにより、入社前後のギャップをできるだけ少なくすること」。「有期雇用から正社員 への登用制度の導入等、青少年の意欲・能力に応じた処遇等が図られるようにすること」 ということです。  定着促進のためということで、(2)で実践的な職業能力の開発及び向上に係る措置と いうことです。これについては、最初の・で、計画的なOJT及びOFF-JTの実施、「実践型 人材養成システム」の実施等といったことを書くということです。こういった内容をベ ースに指針を作るということです。  10頁以下は、先ほど説明した年齢制限禁止の義務化についての具体的内容で、先ほど 説明しましたので省略します。12頁から例外事由についての具体的事例が掲げられてお ります。先ほど説明した基準を適用する際に、こういった具体的な判断を行うことを12 頁以下の例で示しております。項目(1)と(2)だけ紹介しますと、(1)については○に書いて あるように「35歳未満の方を募集(職務経験不問)」といった方法ならいいのですが、 何とか業務の経験ということで、一定の業務経験を要求する、あるいは下限を定めるこ とは駄目であるといったことを書いてあります。13頁の項目(2)については、最初の上の ○に書いてあるような形で定めるのだということで、2分の1基準についてはこういう形 でクリアすると書いてあります。その上で、対象職業の範囲、職種の範囲については、 単純に技術者という形では駄目で、電気・電子技術者といった範囲での特定が必要であ るといったこと、あるいは2分の1以下を考える場合に、企業単位で考えるのか、事業所 単位で考えるのかといったことについて整理をしているのがこの頁です。あとは説明を 省略しますが、あとで参考にご覧いただければと考えております。  20頁ですが、年齢制限の禁止については、アメリカあるいはEU指令でも禁止をしてい るわけですが、やはり例外措置を設けております。例えばアメリカについては、例外と して「年齢が特定の職業に真正かつ決定的な要素になる場合」ということで、抽象的な のですが、こういった例外を設けているということです。EU指令については、「年齢が 特定の職業に真正かつ決定的な要素となる場合」以外に、特出しで「若年者、高齢者等 に対する特別な措置(ポジティブアクション)」を講じる場合、政策的にこういう層に ついて特別に対策をとる場合、あるいは「退職前の合理的な雇用機会の必要性等を理由 として最高年齢を設ける場合」などが書かれておりますので、紹介しておきます。  21頁の外国人について大臣指針の内容についてです。これについては、現在俗に三局 長通達と呼んでおりますが、職業安定局長、労働基準局長、職業能力開発局長が通達ベ ースで外国人指針を定めております。今回のこの内容は、その通達ベースの内容をベー スに拡充を図るという考え方で整理をしたものです。通達ベースの内容から、膨らんで いる部分を中心に説明します。第1の趣旨については、8条で定める事項について指針を 定めるということですので、説明は省略します。その上で、基本的な考え方については、 労働関係法令、社会保険関係を遵守するということ、あるいは外国人労働者が能力を有 効発揮できるように就労環境を整備していくといったことを中心に、基本的な考え方を 整理しております。  第4の1の(1)募集の最初の・ですが、従来「募集に当たり、業務内容や労働条件等 を明示すること」はありませんでしたが、これが付け加わっております。3番目の・で すが、国会の附帯決議も踏まえて、「職業紹介について、国籍を理由とした差別的取扱 いは禁止されており」ということを盛り込んでおります。(2)の採用の3番目の・です が、「新規学卒者等の採用において、留学生であることを理由として、対象から除外し ないようにすること」といったことを盛り込んでおります。2の適正な労働条件の確保 の(1)均等待遇の部分も、国会の附帯決議を踏まえて、労働基準法3条にかかわる部分、 「国籍を理由として、労働条件について、差別的取扱いをしないこと」を盛り込んでお ります。  22頁の3の安全衛生の確保の(6)「労働安全衛生法等関係法令の周知」は、既に労働 基準関係法令の周知が盛り込まれているのですが、安全衛生法関係がなかったので、盛 り込むことにしたということです。5の適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等の(1) 「適切な人事管理」については、従来盛り込まれていませんでしたが、若者の雇用とい う観点からもこういった切り口からの対応は必要で、それに準ずる形で盛り込んでおり ます。「職場で求められる資質、能力等の明確化や、評価、配置等の人事管理に関する 運用の透明化等、多様な人材が能力発揮しやすい環境の整備に努めること」ということ です。(3)の教育訓練の実施等のうち、教育訓練は従来から盛り込まれていたのですが、 「苦情・相談体制の整備、母国語での導入研修の実施」が盛り込まれていませんでした ので、これを盛り込んでおります。(6)「労働者派遣・請負事業主に係る留意事項」の うち、請負事業主については幾分か盛り込まれていたのですが、労働者派遣に関しては 盛り込まれておりませんでしたので、当然のことではありますが、「派遣就業の具体的 内容の明示等、労働者派遣法に従い、適正な事業運営を行うこと。また、請負事業主は 請負契約の名目で実質的に労働者供給事業又は労働者派遣事業を行うことのないよう、 関係法令を遵守すること」といった内容を盛り込んでおります。  第5、外国人労働者の雇用状況の届出は新しい事項で、すべて新規です。このうち、 省令で既に書かれているものと重複しているものがあり、1の確認し、届け出るべき事 項については、先ほどの省令の説明の際に説明した内容そのままです。ただ、氏名、あ るいは法律に書いてあって在留資格などが入っておりますので、番号がずれております が、基本的に内容は同じですので、説明は省略します。  2の確認すべき場合については、外国人であることをどうやって判定するのかという ことで、非常に重要な点です。最初の・にあるように、「事業主は、雇い入れようとす る者について、通常の注意力をもって、当該者が外国人であると判断できる場合に、当 該者に係る1の事項を確認すること」ということになっております。この「通常の注意 力」の具体的内容は次の・です。「特別な調査等を伴うものではなく、氏名や言葉など から、当該者が外国人であることが一般的に判断できる場合をいうこと」としておりま す。確認方法については省令事項で説明したように、パスポートや外国人登録証明書で 確認する。資格外活動の場合については、資格外活動許可書、就労資格証明書で確認す るといったことを書いております。23頁の4の届出の方法・期限は省令で説明したとお りです。  第7、技能実習生に関する事項についても、従来から盛り込まれていたのですが、2つ 目の・で「技能実習制度推進事業運営基本方針」と書いてあります。これは大臣が定 めているものなのですが、これを明記してこれに留意して対応していただくということ を整理しております。  26頁の地域法の関係ですが、地域雇用開発促進法施行規則の改正です。これについて は、省令レベルで決める内容として地域要件があります。雇用開発促進地域という非常 に雇用情勢が悪い地域についての要件ですが、(1)にあるように「最近3年間におけるそ の地域の労働力人口に対する地域求職者数の割合の月平均値が、同期間における全国の 労働力人口に対する求職者数の割合の月平均値以上であること」という要件です。もう 1つ、こちらが非常に注目される要件なのですが、「最近3年間及び最近1年間における 当該地域の有効求人倍率の月平均値が、それぞれ同期間における全国の有効求人倍率の 月平均値の3分の2(当該値が1倍を超える場合にあっては、1倍)以下であること」とし ております。当部会で、この要件のうち、有効求人倍率は一般的な有効求人倍率か、そ れとも正規雇用、あるいは常用雇用の有効求人倍率かというご指摘があり、これは省令 ではなくて、後ほど説明する大臣指針で明確化しております。  これについては、31頁の第1、地域要件の1、「雇用開発促進地域の要件は、次のいず れにも該当することとする」と書いてあるうちのハの部分です。「最近3年間及び最近1 年間におけるその地域の一般有効求人倍率又は常用有効求人倍率の月平均値が3分の2以 下」としており、どちらかが悪ければ地域指定の対象になるという形になります。 そういう整理をしております。  27頁の自発雇用創造地域の地域指定の要件です。これについては、最近3年間、最近 1年間の有効求人倍率の月平均値が全国の有効求人倍率の月平均値以下であること。全 国の有効求人倍率が1倍を超えているときは1倍以下であることとしております。これに ついても、大臣指針で有効求人倍率については一般あるいは常用、どちらでもいいとい う考え方です。  同じ頁の雇用開発促進地域における支援対象事業主ということで、支援対象となるも の、事業を書いております。これは当部会でご議論いただいた内容をそのまま整理して おりますが、事業所の設置/整備と労働者の雇入れ、中核人材の受入れと労働者の雇入 れ、能力開発といったことを盛り込むことにしております。  27頁の下の特別の措置は、これだけではわかりにくいので、34頁に今回支援策として 設ける地域雇用開発助成金の内容が書いてあります。基本的部分がこれになるのですが、 その中に特別措置について書いてあります。最初の雇用開発助成金の2つ目の・の所に、 支援期間は3年間と書いてあります。ただし、括弧書きで自発雇用創造地域にも該当す る場合において、一定要件を満たせば5年間支援をするということで、これは特例措置 です。もう1つが大規模雇用開発計画の認定を受けた事業主への特別助成ということで、 これも特例措置で、50億円以上の事業所の設置をして、雇入人数が100人以上という場 合については、1億円から2億円、3年間支援するということで、これが特別措置です。 もう1つの特別措置は、その下の中核人材活用奨励金の中のいちばん下の部分、自発雇用 創造地域にも該当する地域における重点分野に係る特例、1人につき150万円ということ で、通常ベースは100万円なのですが、特例として150万円といったことを定めておりま す。先ほどの27頁から28頁についての記述は、その内容を整理したものです。  28頁の地域雇用創造推進事業ということで、地域雇用創造推進事業の具体的なメニュ ーを整理し直したものです。これも当部会でご議論いただいた内容で、雇用創出メニュ ー、人材育成メニュー、就職促進メニュー、その他自発雇用創造地域の雇用の創造に資 するため認められる事業といったものが含まれております。支援の直接の対象は、法律 に地域雇用創造協議会が出てくるのですが、その地域雇用創造協議会以外には、厚生労 働省令で定めることになっており、地域雇用創造協議会の構成員であって法人であると。 その場合には必要な体制が整備されているといったことを要件とするということで考え ております。  29頁は、法律の中で委託募集の特例規定を設けており、中小企業団体が団体に属する 企業のために募集することについて、特例規定で軽易な手続で行えるようにするという ことになったわけですが、この対象になる法人について、一から六ということで掲げら れております。これはほかの委託募集の特例でも大体同じような内容で設けられている ことが多く、それに倣ったものです。それから、「厚生労働省令で定める要件」という ことで、当該社団法人の構成員のうち、3分の2以上が中小企業者であるということを要 件として、省令で定めることにしております。  31頁以下に、地域に関する大臣指針が定められております。このうちの地域要件につ いては、先ほど説明したような内容ですので、説明を省略します。32頁ですが、地域雇 用開発計画に盛り込むべき事項ということで、これが雇用が特に厳しい地域である地域 雇用開発促進地域の計画に盛り込むべき事項です。これは同じ地域法に以前、雇用機会 増大促進地域でも同じような計画を作る際に盛り込むべき事項として整理された事項に 倣って整理したものです。  第3の地域雇用創造計画に盛り込むべき事項については、現在パッケージ事業という 形で先行事業としてやっている事業がありますが、その事業で計画に盛り込んでいただ ける事項を参考に整理し直したものです。こういった事項を中心に、計画を作っていた だくことになります。  33頁の雇用保険法施行規則の改正内容については、地域雇用開発促進法施行規則の中 で、さまざまな支援策について書くわけですが、財政的には雇用保険法のお金、雇用保 険制度の財源を活用するということもあって、雇用保険法施行規則の中に具体的な支援 施策の内容、助成金の内容を書くということがあるので、それをここに整理しておりま す。ここに掲げられている内容は、当部会でご議論いただいた内容そのままです。あと は以前ご議論いただいた内容も含めて、関係の資料が付けてあるだけです。  最後に参考までに、43頁以下には昨年末いただいた当部会の報告、建議の内容を付け ております。私のほうからは以上です。 ○大橋部会長 議論に移りたいと思います。資料の分量もたくさんありますので、雇用 対策法関連と地域雇用開発促進法関連に分けて、議論をしたいと思います。最初に雇用 対策関連法について、資料3から資料7までについて、ご意見・ご質問等あればお願いし ます。 ○原委員 12月までの審議会の部会でも申し上げてきたことですが、特に外国人労働者 の問題に関して、かなり具体的なことになってきています。法案が国会に提出されてか ら、さまざまな団体から、さまざまな問題点について危惧する意見が表明されてきてい ますね。これは既にご案内のとおりかと思いますが、日弁連や労働組合関係の弁護士の 集まりである日本労働弁護団、それから外国人労働者とかかわりをもっている民間団体 といったところから、いかがなものかというかなりの疑問点、心配な点も提起がされて いるのではないかと思います。厚生労働省が意図した外国人労働者の雇用管理の改善と いった目的から外れるといいますか、そのようなことになってしまうのではないかとい う問題の指摘がなされているのではないかと思います。具体的には外国人指針について の骨子の中で、第3の外国人労働者の定義の問題について、あまりにも広すぎると。こ こでは特別永住者と在留資格、外交・公用の者を除くということになっておりますが、 日弁連等も定住者で在留資格を有する方、永住者で在留資格を有する方、日本人の配偶 者などの在留資格を有する方等については、就労制限云々、問題ないのではないかとい うことで、そういった人たちを対象にする必要がないのではないかということを言って います。同時に、そういったことをすること自身がプライバシーの侵害になるのではな いか、という鋭い問題提起もされているわけです。これは外国人の当事者でなかったら、 感覚的になかなかわからない、日本人の我々にはわからないことかもしれませんが、経 営者が当局に対して報告をされるという点において、これがプライバシーの侵害になる のではないかということで、具体的には憲法の第13条、国際条約第17条に抵触するので はないかといったことがかなり問題提起されているわけです。たぶん厚生労働省に対し ても申し出等々があったと思いますが、それらについてどういう認識を持っておられる のか、どのように対応されたのか。また、そういった心配に対してどのように答えるの かということについて、お伺いしたいと思います。 ○尾形外国人雇用対策課長 ご指摘いただいた点については、建議をまとめる際にもそ の点は配慮して、文書に反映させていただいた部分があります。例えば49頁の建議の4 番目、「外国人労働者の適正な雇用管理の推進等」の(1)基本的な考え方のいちばん 最後の所ですが、関係省庁間で活用することの件の最後に、「個人情報の取扱いに十分 留意すべきである」ということを明記しており、これはまさに審議会でのご議論を踏ま えて、このように書かれたわけです。この時点において、我が方は人権といいますか、 プライバシーの問題は意識していたということです。実際上、法案を策定する、条文を 立案する過程においても、法制局審査等を踏まえて、憲法との関係、当然今回いただく 情報についても対象となる行政機関における個人情報保護法との関係等も留意して立案 したと。例えば法律の第29条などで、入管行政との情報提供の規定を設けてあるわけで すが、こういった規定を設けている背景には、まさにこの個人情報保護法との関係も十 分留意してという配慮があったところです。私どもとしては、そういった外国人の方々 の個人情報の保護という観点に十分配慮してやってきたという気持です。  実際に報告をいただく、あるいは確認をいただくときの問題についても、まさにこの 審議会の中でご指摘があり、その点についても十分配慮した形でやるべきだということ が、50頁のいちばん最後の建議の中に書かれている、「なお、この指針には、外国人雇 用状況報告を行うべき場合、外国人労働者であることの確認の程度等について、明確に、 わかりやすく盛り込むべきである」。要するにここはこういう書き方ではありますが、 そういった非常にセンシティビティーがある問題だということをご指摘いただいた上で、 こういうことはきちんと今回お諮りする指針の中で対応します、ということを書かせて いただいたわけで、そういった趣旨は国会審議の中でも答弁申し上げているところです。 ○原委員 憲法第13条、国際条約の第17条には抵触しないということですか。 ○尾形外国人雇用対策課長 そういった問題も含めて、クリアされていると理解してお ります。しかし、プライバシーとの関係は非常に重要ですので、法律に仮にそういう問 題がないとしても、運用に当たってそういったことは十分配慮すべきであるということ は、今後ご議論の中でもまたご判断いただければと思っています。 ○原委員 そういうことをおっしゃっても、衆議院の国会審議の中で細川議員は質問を しているわけです。「法務大臣の求めに応じて情報を提供するとはどういう場合に情報 を提供するのですか。すべての情報を提供する場合もあるのですか」と。厚生労働省が 良かれと思ってやっていることについて、法務省がそれなりの目的をもって何かを考え た場合に、全部情報をよこせと言って、全部提供した場合にいったいどうなるかという 問題があるわけでしょう。そういうときに、どういう場合に情報を提供するのかという ことについてはこの場で詰めるなどと言って、そういう議論になっていますが、その点 いかがでしょうか。どういう考えをもっているわけですか。 ○尾形外国人雇用対策課長 国会の審議の中で、先ほど私が申し上げた法の第29条、「 法務大臣が求めた場合に、情報提供できる」という規定について、いろいろご議論があ ったことはそのとおりです。しかし、あの条文の規定を読んでいただくとおわかりのと おり、これは入管法、外国人登録法に定める事務の処理に関し、外国人の在留に関する 事項の確認のために法務大臣が求めた場合に、厚生労働省のほうで改めてそこで示され る必要性や理由を十分判断した上で対応するという形で、一義的に何でもスポッと抜け ていってしまうことにはなっていないということです。  ただ、そもそもこの規定が何であるかということにもなるわけですが、これは皆さん かなり誤解があると思うのですが、不法就労対策を入管オンリーの問題だとお考えにな られていた部分もあったかと思うのです。そうではなくて、これは労働市場との関係で、 労働政策を預かるもの、雇用政策を預かるものとしても、この問題には的確に対処する 必要があると。そういうことも踏まえて、今回こういうきちんとした在留資格があるこ とを確認して届け出ていただくということを位置づけるものであって、今回の法改正の 趣旨はこういったことを踏まえた上で、結局、不法就労対策については入管行政を担う 法務省というものの立場もあることから、そこで一定の情報の提供があるのだろうと。 そういったことは、そういった改正趣旨にかなうであろうということから、こういう規 定が設けられたということがありますので、その点はひとつご理解をいただきたいと思 っているところです。 ○原委員 はっきり言って、これは日本人の我々はあまり深刻に考えないと思うのです。 しかし、何でもかんでも差別などをされた場合は、当事者でないとなかなか気づかない 点は、当事者がいちばん気にするわけです。そういった問題に思いを致すべきではない かと思うわけです。だから、特別永住者は除きますよと。これはなかなか難しくて、定 住者とか永住者とか特別永住者とか、どんな人かと。いろいろ難しいのですが、日弁連 などは、定住者とか永住者とか、そんなのは必要ないのではないかと言っているわけで す。それに対しては、どうやって反論するわけですか。要するに、厚生労働省がこの法 律でああしよう、こうしようという場合に必要ないのではないですか。 ○尾形外国人雇用対策課長 この審議会の中でもご議論いただいた結果をもって、法案 を提出したわけなのですが、確認的なことになりますが、再度申し上げれば、特別永住 者ではない永住者は、最近ものすごい勢いで急増しているわけです。それは日本の永住 権の与え方のシステムから、すべての在留資格を持っている者が、一定期間経つと永住 権を申請できて、かなりの割合で永住に移行される方がいることに伴うものだと思って いるのです。永住者が非常に大きなボリュームになってきていて、労働という目で見た ときに、そういった方々が非常にハッピーな状況になっているかというと、例えば日系 人の方を中心に社会保険の問題であるとか、将来永住した時に未加入では、今後の年金 はどうなるのかというような問題が、非常に潜在してしまっています。こういったこと について的確に対応していくということを考えた場合に、この方々だけを別にするとい うのは、どうだろうかという判断があって、今回、永住者も入れていくという判断をし たわけです。他方、特別永住者というのは、戦前から日本にずっといらっしゃる方で、 ある意味、もう日本の労働市場の中に取り込まれて、完全に溶け込んでしまっている方 々ですから、これはちょっと別だろうということで判断いたしました。 ○原委員 それはよく分かりました。ですから厚生労働省が意図したことはいいわけで す。厚生労働省に届いた情報を、厚生労働省がこの法律の目的のために行政指導を強化 するというようなことは、それはそれでもう大歓迎です。それで賛成したわけですから。 しかし、それを法務大臣の求めに応じて情報提供するというのは、どういう場合に情報 提供するのでしょうか。法務大臣が求めたらすべて出すのかというのは、国会でもすご く議論になったでしょう。そこを言っているのです。  厚生労働省が目的とすることについては、我々にも審議の責任があるわけですから、 それはそれでいいわけです。問題はその次です。厚生労働省が目的としたこと以外、意 図したことが違った方向に行ってしまう可能性があるのではないかということを、やは り当事者は心配するわけです。そんなことは知られたくないと。そこで衆議院の厚生労 働委員会で細川委員と当局との間で、かなりギリギリした議論があったのです。厚生労 働委員会の審議の中では、十分な答弁にはなっていないと思うのです。それは議事録を 見たらわかると思います。その点に関しては、やはりこの場で明らかにしなければいけ ないと思います。どういう場合に法務大臣の求めに応じて、厚生労働省が情報提供する のかということについては、省令等で定めることになっているわけでしょう。それをは っきりしてもらいたいと思います。 ○尾形外国人雇用対策課長 それでは先ほど来議論になっている条文の第29条を、もう 一遍正確に読ませていただきます。「厚生労働大臣は、法務大臣から出入国管理及び難 民認定法又は外国人登録法に定める事務の処理に関し、外国人の在留に関する事項の確 認のための求めがあったときは、前条第1項(外国人雇用状況報告)の規定による届出 及び同条第3項の規定による通知に係る情報を提供するものとする」ということで、第 29条に関しては、省令事項というのはありません。まず、その点はご理解いただきたい と思っております。  この点については国会でも、細川先生をはじめとして、いろいろとご質問をいただき、 厚生労働省のみならず法務省当局の方々もご答弁申し上げたことは、記憶に新しいわけ です。そのときも申し上げているように、そもそも入管施策と厚生労働行政との間には、 不法就労というのがあります。この不法就労対策というのは、雇用政策としてもやはり 重要です。在留資格を確認して届け出るという今回の基本的な仕組みも、要は在留資格 の範囲内できちんと働いてください、そういう方々については労働行政としても労働環 境の整備、就労環境の整備を図っていきます、そこの法令遵守は事業主にもきちんと守 っていただきますというわけです。  法令遵守という意味で言えば、労働行政の労働関係法令の遵守もそうですが、在留資 格という入管法令の遵守も同じことです。そこをきちんとやっていただくことが大事だ からこそ、こういう確認届出という制度があるのです。そういったところでまずはある 程度、不法就労問題の予防的な解決が図られてくることを期待しているのです。  しかし最終的に不法就労対策は、労働行政だけでは完結しないのではないかというの は、まさにここの審議会でもご議論のあったところです。最終的にそういう情報はどう やって担保されるのか、そういう情報を基に、不法就労を一体どうやって担保するのか ということになると、最後に退去強制といった強制手段を持つのは入管行政ですので、 そこは入管行政との連携が必要だろうということから、第29条があるわけです。  この第29条というのは、あくまでも今回の雇用対策法の趣旨に沿って作られているも のですから、逆に言うとこの条文に基づいて入管行政を担う法務省に提供される情報と いうのは、改正の趣旨に適うものということになるでしょう。そういう意味では必ずし も無限定だとか、何でもかんでもということではないと思っておりますし、そういう趣 旨のことを国会でも答弁申し上げてきたのではないかと理解しております。ただ現時点 で法務省との間でどういう形で、どういう議論をしていくのかというのは、これからの ことですので、今この場でこれ以上細かいことを申し上げることはできません。 ○長谷川委員 私はわからないのです。入管の関係で法務省が厚生労働省に情報提供を 申し入れてくるというのは、どういう場合なのですか。私は、むしろ法務省の入管をそ んなに必要としないというか。なぜかというと、おそらく企業が出してくる報告書は、 在留資格、就労資格のある人しか報告されないからです。もし、企業が資格のない人を やったら、一発で不法就労だとわかるわけですから、そんなものをハローワークに報告 してくるはずがない。ハローワークに届け出られているのは、全部合法性のあるものし かないわけです。今日、法務省のヒアリングもあったのですが、請負や派遣、一人親方 みたいな所で働いているような人は、全部ここから漏れてしまって、結果的に法務省が ほしい情報は取れないのではないかと思っています。ですから法務省がほしいものとい うのは、どういうときに何がほしいのかというのを聞かせてほしいのです。  もう1つ、厚生労働省がやらなければいけないのは、例えば私が事業主で原委員のこ とを、この人は外国人なのか日本人なのかという場合です。最近は日本人でも日本語が うまくいかない人もいるわけですから、どちらなのかと思って聞くときの聞き方のほう が、すごく重要だと思うのです。例えば「あなたはどこの国の人ですか」とか、「あな たは日本人ですか」と聞くときのほうが、ある意味でプライバシーの侵害や人権侵害に なってしまうことがあります。厚生労働省は専門家ですから、私は事業主が聞くときの 聞き方のほうに、もう少しやり方や方法を取得しないと、ということを心配しているの です。それで余計なことまで聞いてしまうと。  例えば、厚生労働省は5頁の(1)から(7)までですから、生年月日、性別、国籍、あとは せいぜい住んでいる所の話なのです。しかし入管がほしい情報は、もっと別な情報で、 家族がいるかとか、結婚しているかというのがほしいわけです。厚生労働省の場合、そ こはないけれど、もしかしたらそういう余計なことを聞くこともあり得るわけです。そ ういう意味では事業主がハローワークに届けるために、労働者に聞くときの方法を、も う少し開発しないといけないのではないか、私はそれを少し心配するのです。  あと、法務省はどういう形でどういう時にどういう方法で厚生労働省に求めてくるの か、その時に厚生労働省はどういう判断で、そういう情報を提供するのかということを、 やはり少し見えるようにしておかないと、先ほど原委員が言われたようなところが問題 になってくるのではないかと思います。いずれにしても不法就労の関係で言えば、厚生 労働省のシステムと、入管がもともと持っているものと、各市町村が持っている1月の 届け出の3つの方法ですから、その連携というのは、きっともっと何らかの形で進むと 思うのです。ただ私たちの所では、法務省が言ってくる時というのはどういう時で、そ の時に厚生労働省はどういう方法で、どういう情報を出すのか、また、その判断基準と なるものは何なのかというのは、オープンにしておく必要があるのではないかと思いま す。 ○尾形外国人雇用対策課長 いまご整理いただいた2つの論点ですが、まず法務省はど ういうときに求めてきて、それにどう応えて、どういう情報を流すのかというお話につ いては、国会の審議の中においても、法務省が十分具体的詳細なことを答弁していたわ けではありません。ただ1つだけはっきりしているのは、単なる個別照会だけではなく て、ある程度まとまって照会をかけることがあるというお話です。そういった、いわば 包括的な照会もあり得るという前提なのです。  いずれにしても私どもにそういう求めが出る際は、なぜ、それらの各事項について法 務行政、入管行政として雇用状況報告の情報が必要なのかという必要性と理由を出して いただくということだろうと思います。その必要性と理由が合理的であるかどうかとい う判断にかかってきているわけです。現時点では我々のほうとしても、不法就労対策と いうのが今回の法改正の中で盛り込まれたという趣旨も踏まえて、適切に判断したいと いうことです。  もう1点の、実際に確認される際の人権問題との兼合いで、厚生労働省は公正な採用 選考の問題についても専門家であるから、工夫があってもいいのではないかというご指 摘は、全くそうだと思っております。これも国会で答弁申し上げていることですが、私 どもとしては深掘りして、根掘り葉掘り特別な身元調査のようなことをしろということ ではありません。まずは氏名や言語能力といったところから、外国人であることがわか った方については、日本では外国人を雇うときのルールとして、在留資格というものが あるので、在留資格を中心とした一定の事項について、確認させてくださいという仕掛 けにしているわけです。  公正な採用選考との関係で言いますと、他方で在留資格の範囲内で就労していただく という、国家としての別の重要な要請もあるわけですから、そこはやはり一定程度はご 理解いただきたいと思います。そうはいっても根掘り葉掘りということになるわけでも なく、それをきっかけとして、不必要なことにまで立ち入ることのないようにというこ とは、この指針の中でも書かせていただいていると思っております。 ○長谷川委員 なぜ、それにこだわるかというと、いま法務省の在留管理の専門部会の 中間報告の中で何を言っているかというと、在留管理制度のあり方の検討課題の中では、 外国人の在留情報把握の制度の一元化。法務大臣が正確に把握すべき情報の範囲の中で は、まず身分事項で国籍、氏名、生年月日、性別のほか、婚姻・離婚の事実、在日親族、 居住地、世帯主の氏名、続柄、所属機関の名称、所在地、所属機関における職種、地位、 報酬等の労働条件、外国人子弟の就学状況なども把握するかというのが検討になってい るのです。  これを見ていて、おそらく法務省はこういうことをやりたいのかと思うと、厚生労働 省のほうは本当は国籍、氏名、生年月日、性別だけなのに、離婚や婚姻、在日親族など、 それこそ根掘り葉掘りにまでなっていくのではないかと。ですから厚生労働省が報告す るものは、これとこれとこれで、それ以上はプライバシーの侵害になるし、人権侵害に なるということを明確にやらないと、こことこことを合わせてきたときに、原委員が言 っているような重大な問題を惹起させてしまうのではないかということを心配して、私 たちは言っているのです。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 この問題については、いくつかの観点から検討が進 められていると思っております。政府全体としてはおおむね次々回の通常国会を想定し ながら、入国管理制度あるいは外国人登録制度そのものについて、ある程度抜本的な部 分も含めて見直しを検討します。そういう中で、いま長谷川委員が言われたようなこと も含めて、そういうことを聞くことの是非についても、法務省はいろいろな所から意見 を聞いているというように理解しております。  それはそれで在留資格、外国人登録制度そのものの議論が進んでいく中で、またいろ いろな議論があると思いますが、今回はそういうものを意識して制度化したわけではあ りません。これは秋以来、この場でもご議論いただきながら進めてきたものです。あく までも外国人について企業における雇用という観点から、必要な支援なりをきちんとや っていくということです。もう一方では、在留資格制度に則った形での雇用にしていく ところから、必要な範囲内でしたものです。したがって、いま言われたように外国人だ からといって、家族の関係などが企業の雇用という観点から必要かと言えば、我々も必 要ではないと思っておりますし、そういったところに踏み込んだものは、全く意図して おりません。そこら辺の危惧があるとすれば、それをどこまでというか、そういうこと を聞いたり意図しているものではないということを、ある程度この指針の中で明確にす るということは、検討していく必要はあるかというように思っております。 ○大橋部会長 外国人に議論が集中しておりますが、その他、応募機会の拡大や全国指 針、地方指針、年齢制限等々、今日は盛りだくさんの議論が用意されております。ご意 見があればどうぞ。 ○森戸委員 年齢制限の話で、最初に前置きを1つ、それから質問を2つさせていただき ます。まず、17頁を見ながらがいいと思います。この改正は、非常に大きなことです。 先ほど生田総務課長のご説明で、「年齢差別」と何度かおっしゃったのですが、日本的 な雇用のあり方と年齢差別禁止というのは、実は根本的には相反するものなのです。年 功制や定年というのは、結局は年齢を基準としていますから。そこにある意味、雇用は これからどういう方向になっていくのか、どういう規制をかけていくのかということに かかわる、非常に重要なことをここで議論しなければならないのだろうと思います。そ うすると時間がないなりに、非常に慎重に考えて議論をする必要がある問題だろうと思 います。  それを踏まえて、1つ目の質問です。17頁は結局、現行は努力義務の指針ですが、左 側がこれで、右側が省令案、義務規定の下での例外を定めるということを決めるようで すね。その附帯決議によれば、抜本的な見直しをして、必要最小限のものにとどめると なっています。つまり今までの左側のものを右側に持ってくるだけではなくて、抜本的 に見直し、しかも必要最小限にするのだと。その観点で右側の案が出ているわけですよ ね。これを見ると1や2は維持、法令上しょうがない場合はいいと思うのですが、真ん中 辺のものはだいぶなくすということですよね。そうすると、おそらく基本的に1や2は維 持され、例外としてOKだということは、いわゆる新卒採用で定年までの長期的な雇用を 前提とした雇用管理をするという日本的な雇用管理のあり方は、一応できるようにして あげようということだと。  これ自体が妥当かとか、私の意見がどうかというのはいろいろありますが、それは置 いておいて、この案はそういう考え方に基づいているのでしょう。つまり根本的な日本 的雇用である、正社員の長期雇用的なシステムが駄目だとは、とりあえずは言わないと いう考えなのかと思います。それ自体、まず議論が必要だと思います。つまり抜本見直 しや必要最小限というのを、どういう方向でやるという意味なのかということを、多分 ここでは考えなければいけないと思います。この案に出ているのは、日本的な雇用慣行 のやり方は、一応そんなにうるさくは言わないよという方向だろうと思います。  一方でいわゆる統計的差別に当たるようなもの、年を取っていると重い物は運べない だろうとか、年を取っていると目も悪いだろうという単純なステレオタイプはやめてく ださいということで、7や8は削るのだと思います。それでいくと「芸術・芸能の真実性 等の要請がある場合」というのは残りますが、均等法などの芸術の真実性という場合、 「女優募集」というのは女性しか駄目な場合ですよね。しかし年齢というのは見た目と は違いますから、この流れの中で、果たしてこれは当然残るものなのか。程度問題だと は思いますが、日本的な雇用慣行のあり方は維持するけれど、ほかのものはなくすとい う方向だったら、左の6番、右側の3番も、当然残るものではないのではないかと私は思 います。それが1点です。  2点目は、より質問になるのでしょうが、法令の定め方が、年齢制限はいけない、た だし合理的理由がある場合はいけないというような定め方ではないので、ちょっと法文 がややこしいので、どういう構造になっているのかがわかりづらいのです。例外事由が 省令で定まった場合、いわゆる限定列挙なのでしょうか。つまり、ここに書いてある場 合は年齢制限禁止規定違反ではないけれど、逆に言うと、ここに書いていないものはす べて法律違反が成立するという意味の規定なのかどうか。  例えば、左側で言うと5番などは、企業によっては高校生に物を売るのだから、せい ぜい二十歳ぐらいまでの人に売らせたいよという希望があったとしても、今度の案では それは駄目なのです。アメリカで言う年齢差別禁止法の例外では、年齢が職業上、真正 な要件と言えればいいというようなものがありましたよね。そういうことの立証を使用 者がする余地が認められているのか、うちの仕事でこれをやるには、何歳ぐらいの人が いいですということを、仮に合理的理由として説明できればOKなのか。第10条の元の条 文を読んで、「厚生労働省令で書いてある場合は」というような書き方からすると、そ こに挙がっていない場合は全部駄目、そういう証明をする余地は認めないというように も読める気がしているのです。そこは私の理解不足かもしれませんが、どういうように 整理したらいいのでしょうか。もし限定列挙的なものだったら、なおさら慎重にやらな いといけないという気がします。  あと、もう1点言うと、案の中の1や2の例外として、こういう場合は○とか×という ように、非常に丁寧な例を作っていただいていますよね。それはそれでいいのですが、 こういう場合は○、こういう場合は×というように出しすぎるのも、個人的には逆にあ まりよくないのではないかと思います。これは高年法のほうで、年齢制限を付けるとき は理由を説明してくださいという話との絡みもあると思いますが、非常に微妙なことで すから、これは良い、これは駄目というのを単なるモデルで出しすぎることには、ちょ っと慎重になったほうがいいのではないかという気がします。 ○宮野企画課長 それでは、ただいまの2点のご質問にお答えしたいと思います。まず 1点目です。確かに法律の条文の書き方が、ややわかりにくい形になっております。基 本的には今回、省令で例外事項として定める部分というのは、これが例外として認めら れるという限定列挙の形になると考えておりますが、例示をあまり個別具体的にするの はというご意見をいただいたわけです。この資料の今日お示ししております頁数で言い ますと、個別具体の例外規定として認められるケースは11頁にあります。今回、10月1 日からこの部分が施行されることになりますと、実際に求人をする事業主、その求人を 受け取るハローワークの窓口、職業紹介、求人情報誌の担当の方においては、それぞれ の項目が果たしてこの例外規定に当たるのかどうかということについて、やはり判断を する必要があります。そういった意味で今回の例示は、具体的にご議論いただくに当た ってのご参考ということで、こうした○×でいくつかお示ししているのです。さはさり ながら、さらに具体的にいろいろなケースというのがあろうかと考えております。  それからもう1点、冒頭に森戸委員からありました芸術の部分ですが、確かにある意 味、芸術における表現の真実性という部分と、現行の年齢指針の部分でいきますと5番 のように、例えば10代の女性向けの洋服を販売するので、10代の女性が必要だという ものと一見変わりのない部分は、確かに形としてはあろうかと思います。ただ一方で6 番の芸術部分の表現の真実性については、お話がありましたとおり、均等法でもこうし た芸術的な観点からは認められています。あるいは諸外国でも、こうした点については 例外事項として認められています。そういう点から、今回は例外事項として挙げさせて いただいているものです。いずれにしても、こういった点も含めてご議論いただければ と考えております。 ○森戸委員 均等法が表現の真実性を認めているのはわかっているのですが、問題は男 女と年齢が一緒かという話だと思います。海外で認められているとおっしゃったけれど も、海外で年齢差別禁止法上、そういうものが認められているかどうかは私はわかりま せん。少なくとも男女よりは厳しい基準ではないかという気がします。そこは私も確認 していません。あと、最初にご説明いただいた限定列挙だということであれば、少なく とも「その他、年齢が職業上真正な資格であると証明された場合」という規定が1つな いとまずいのではないかという気がします。とりあえずの意見です。 ○樋渡委員 メインは年齢制限のところですが、その前に、先ほど外国人労働者のお話 がありまして、今回、21頁に指針あるいは細かいこと、外国人雇用状況を届け出るとい うようなことが書かれておりますよね。ここで書かれている外国人労働者の定義、ある いは厚生労働省で聞く外国人雇用者の状況の範囲以上のものは、やはり情報提供すべき ではないと思います。そこはもうこの範囲の中でやっていただくことが大前提だろうと 思っております。  次に、年齢制限禁止についてです。最初に確認させていただきたいのは、附帯決議の ことです。42頁の五に、「労働者の募集及び採用に係る年齢制限の禁止の義務化に当た り」と書いてあります。実はこの点に関して、この基本問題部会では全然議論をしてお りませんでした。あくまでもこの附帯決議で出てきているのは、募集・採用の際の年齢 制限だということを、共通の認識として議論をしていくということでよろしいのですね。 それを確認させていただきます。その上で、また後で細かいことをご質問したいと思い ます。 ○大橋部会長 外国人の定義の問題は、そういうご要望ということで結構かと思います が、年齢制限についての募集及び採用の問題は、文章ではこれが・になっていますね。 それも含めてお願いします。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 これは最初にご説明しましたように、自民党の雇用 政策調査会の中の議論から出てきた話です。そのときの議論を思い起こしてみますと、 最初の募集・採用の際に応募の機会すら与えられないのは、やはり問題ではないかとい うのが調査会での主たる意識でした。これは先ほどの森戸委員のご趣旨等の部分のお答 えにもなりますが、入った後のいわゆる「日本型雇用慣行」と言われるような部分まで の議論があって、今回の条文ができたわけではないのです。あくまでも募集・採用とい う最初の入口段階で、年齢が達していないから、あるいは上回っているから応募すらで きない、これを何とかすべきだというのが主たる議論ですので、条文もそういう趣旨で 作られています。 ○樋渡委員 あとはいろいろ細かいことがあるので、その前に大括りなところのご質問 があったら、先にお伺いしていただければと思います。 ○大橋部会長 わかりました。それでは市瀬委員、どうぞ。 ○市瀬委員 例えば外国人の問題にしても、いま森戸委員からご意見があったように、 これで結構な時間を割いているわけですよね。時間としては、もう一応30分ぐらいの残 り時間ですよね。このくらいの時間で議論の結論を出す必要性があるのか、こんなに急 ぐ必要があるのか、今これを見てすごく疑問に思います。  それと11頁の第2項の「30歳〜49歳のうち」というこの年齢に関して、どういう意味な のか、私は理解できなかったのです。今日初めてなので、前に何かあったのかもしれま せんが、こういうように技術を承継する場合は30歳〜49歳というようにしているのは、 何か根拠がおありになるのでしょうか。それが1つです。  それから、先ほどのいろいろ絞るということに関しては、いろいろな実例などが出て おりましたよね。例えばクライアントのほうから、「40歳までにしてほしい」とか、「 45歳までにしてほしい」と言われる場合がありますよね。しかし企業側としてはそうい う年齢ではなくて、60歳とか50歳の方たちしかいなくて、クライアントからの要請に従 えない場合は、もしかしたらその仕事がなくなるかもしれないという危険性があります。 そういう職業についても全部これを適用するのかどうか、その辺もお聞かせいただきた いと思っております。そのほかにもまだ多少はあるのですが、とりあえずはその2点だ けでもお聞かせいただきたいと思います。 ○大橋部会長 ごめんなさい。もうすでに森戸委員からのご質問も2つあります。では 順番としては、まず市瀬委員のご質問に対する回答からお願いいたします。 ○生田総務課長 これからの当部会の運営の仕方の問題ですが、今日ご議論いただいて おりますのは、雇用対策法と地域雇用開発促進法について、政令・省令・告示レベルで 定めるべき事項についてのご議論です。これについては先ほども申しましたように、施 行日とのかかわりがあります。その前に周知も含めて準備をしないといけないものです から、そのタイミングでまとめていただく必要があります。ただ、今日ここで結論を出 すという感じではありませんので、資料の作りもそうなってはおりません。今日のご議 論も踏まえて、適当なタイミングで指針の全文を作ります。施行規則については、施行 規則の要綱というものを作り、政令は決めるだけですので8月1日です。そういったもの をここで提出してご議論いただくことはありますが、いずれにしても今日の段階で結論 を出すという問題ではなくて、今後皆さんのご議論の推移によって、どういう運びにす るかを決めていくことです。 ○宮野企画課長 市瀬委員からの2点のご質問ですが、まず後段のご質問からお答えい たします。これは労働者の募集・採用の場面すべてにかかってきますので、募集・採用 についてはこうした例外を除いて、基本的に年齢制限は不問という形で行っていただき ます。それとさまざまな企業活動の中での問題とは、別のものであるというように認識 しております。  それから、前段のご質問ですが、対象となる範囲を30歳〜49歳までに限定している部 分については、11頁の項目(2)にありますように、技能・ノウハウの継承の観点からです。 これは10年前、20年前の不況のときに従業員を採用できず、従業員の年齢構成でちょう ど中堅層に大きく穴があいているというケースが、その典型的なケースになります。そ の穴があいている年齢層については、後から採用してもいいではないかという趣旨です。 むしろ、30歳未満の若い方を長期に勤続するということであれば、項目(1)のほうで採用 いただければと考えております。技能・ノウハウの継承の観点からいきますと、50歳以 上の方を採用して、その方に技能・ノウハウの継承を図るということは、基本的にはな かなか考えづらいだろうということで、中間層と言いますか、30歳〜49歳に年齢層を限 定してはどうかということです。 ○市瀬委員 要は、就職氷河期のことを想定されてということですね。 ○宮野企画課長 就職氷河期だけとは限りません。例えば、かつてのオイルショックの 時期等々、あるいはそれぞれの企業にも事情はいろいろあると思いますので。 ○市瀬委員 ここだけ何か異様な感じに、私には映ったのです。それと先ほどの話は、 もちろん今日で結論を出すというようには思っていませんが、もう後ろは決まっており ますよね。この会は、やられても月1みたいなことを伺っております。今このくらいの 質問でこれだけ時間がかかるのでしたら、それぞれのご意見を聞いていたら、私はすご く時間が必要ではないかと思うのです。それであってもそういう形でなさるのかどうか、 その辺をお聞きしたいと思います。 ○生田総務課長 当部会の開催頻度については、委員の皆様も非常にお忙しいところ恐 縮ですが、まとめないといけないということがあるものですから、今回は1カ月に1回と いうわけではなくて、もう少し高い頻度になる可能性が高いと思っております。恐縮 でございますが、よろしくお願いいたします。 ○市瀬委員 それでしたら大丈夫だと思います。私はそのくらいというように聞いてい たものですから。 ○樋渡委員 先ほど、8月1日に施行しなくてはいけないものと、10月にやらなければい けないものとがあるというご説明がありましたが、仮に先にやらなければいけないもの を先に議論しておくというのも、1つの方法ではないかということで、考え方として述 べさせていただきます。  年齢制限のところは、あまり細かくならないようにご質問したいと思います。そもそ も省令の中にどの程度のことを入れるのか。それぞれ○×△□というのがありますが、 これをその中に入れるのではなくて、ものによっては通達やQ&A方式にするのか、そう いうお考えがあるのかをお聞きしてから、ご質問したいと思います。 ○宮野企画課長 いま議論がありましたように、まず部会で何回かご意見をいただいて、 それを踏まえて省令案要綱を、またお示しすることになろうかと思います。具体的な省 令のイメージで申しますと、11頁に項目(1)〜(4)、あるいは※とありますが、こうした文 章が省例の形になってくるというようにご理解願えればと思います。12頁以下の○×の ようなものが、そのまま省令になってくるものではないと考えております。 ○長谷川委員 省令を作るのに、募集・採用における年齢差別の制限と、外国人と、地 域雇用というこの3点が、大まかな議論になったと思うのです。今日は包括的な議論に なったのでしょうけれど、3つだとこのようにバラバラになるので、できれば次回はこ れにしましょうというように、少し絞って議論をしたほうがいいと思います。  もう1つは、法律の効果について聞きたいのです。そもそも募集・採用においては年 齢にかかわりなく、均等な機会の確保というのは、雇用対策法の中の1つです。先ほど の先生の意見とも話の続くことで、雇用対策法の法効果というのは、男女雇用機会均等 法とは違うはずです。法律の法効果については後で説明してほしいのですが、これはお そらく行政が指導するときの根拠法ですよね。ですから男女雇用機会均等法とは、基本 的に違う構図になっていますよね。募集・採用における年齢差別禁止をするのだったら、 どういう法律を作るかというそもそもの議論を審議会でやれば、どういう法律の作りに するかという話になって、合理的な理由のない年齢差別は禁止するというようにやるや り方があるというのは、私もそうだと思うのです。均等法もそうですし、労働契約法も そうですから。しかし、もともと国会で雇用対策法に入れてしまったわけですよね。そ うすると、雇用対策法とはそもそも何なのか、今回の法律の効果は何なのかというのは、 きちんと説明していただきたいわけです。それが1つです。  それ以降の議論は、また別な議論になると思いますが、この募集・採用の年齢差別禁 止というのは、非常に複雑だし、同時に期待度も高いと思うのです。年齢差別禁止法を 作れという声もあるわけですから、年齢差別禁止法とか、諸外国の例とか、今回の雇用 対策法の中でどういうものなのかというのを、もう少し整理して説明してほしいのです。  次回以降は法律の対比を出してください。新旧対照表と今回の法律案がないと、どこ にどう収まるかわからないので、それをきっちり出してください。今日もそもそも法律 を持っていないので、どこのことを言っているのかわからなくなってしまいました。雇 用対策法の目的や理念などを見ながらでないと議論ができないので、是非それは用意し ていただきたいと思います。  それと最後に、私は次回も言いたいと思いますが、年齢制限を禁止するときに、(1)と (2)を残しておいて効果があるかどうかを聞きたいのです。ここで日本の雇用慣行を残す ということであれば、(1)と(2)は残す必要があるのだろうとは思うのですが、雇用・就業 形態の多様化ということを、厚生労働省もずっと支援してきたはずですし、企業だって そういうことをずっと言ってきたわけです。そうすると、雇用・就労形態の多様化があ って、外部労働市場を形成しようと言っていても、(1)と(2)でこういう制限をしたら、そ んなものはできるわけがないではないかと私は思うのです。ですから、この議論という のは、本当はこういうことから議論しなければいけないのです。しかし議員修正でこう いうものが出てきたから、何とも言えないわけです。そういう意味では、私たちは立法 府から送られてきたことに対して、規則を作らなければいけないという任務があります から、非常に苦しいのですが、ここのところの議論は少し丁寧にしていただきたいと思 います。 ○岡崎高齢・障害者雇用対策部長 最後の点を中心にですが、先ほども言いましたよう に、雇用政策調査会の中でも何が問題かという議論の中では、応募の機会すらないまま、 なかなか就職できないという事態については、議論になっていました。これは自民党の 中の議論ですが、その際にいわゆる日本的雇用慣行をどうするかという議論は、そんな に詳しく議論があったわけではないと、私どもは理解しております。むしろ年齢差別禁 止法で、募集・採用に限らない意味での年齢差別禁止をすべきかどうか、という大議論 があり得るわけです。その部分になればもっと根本的に、こういう場を通じて、労使を 含めてきちんと議論をしていかなければ結論の出ない問題だろうと、私どもは認識して おります。  そういう問題意識は、例えば経済財政諮問会議の労働専門調査会等の中でも、議論と しては一部出ておりますが、それはこれからの議論というように理解しておりますし、 必要があれば、また審議会等々の場で議論していただくようにしなければ、そんなに簡 単に結論の出る問題ではないと理解しております。今回の場合は、なぜそこまで議論を しなかったのかというご指摘はあるかもしれません。ただ国会という我が国の立法機関 の中で、募集・採用の部分については、年齢差別を禁止すべきだという議論があって法 律になったので、経緯、その他ご不満な点もあるかもしれませんが、これを前提にご議 論いただきたいと思っております。 ○大橋部会長 まだいろいろなご意見がありますが、時間も押しております。まだ地域 雇用開発促進法関係についての議論が残されています。雇用対策法関係については、次 回、さらにご議論いただくことにして、次に地域雇用開発関連について、ご議論いただ きたいと思います。資料8から資料11までで、ご意見があればお願いしたいと思います。 いかがでしょうか。  よろしいでしょうか。ないようでしたら、本日はこの程度といたしまして、次回、さ らに議論を深めてまいりたいと思います。その他、全般にご意見はございますか。 ○森戸委員 先ほど長谷川委員がご指摘になった法律効果の話は、特にコメントがなか ったので、次回にでも何か説明をいただければと思います。結構微妙な話で、この文言 は、均等法の今回の改正の前の文言に近いのでしょうけれど、そもそも雇用対策法に入 っているから、ただの行政取締規定で司法上の効果がないということなのか、そういう ことに関しての議論が、国会でもどこでもあったのかということ。少なくとも均等法も、 行政取締規定としての体制は持っているわけです。ですから、そこは結構重要な話なの です。確かに長谷川委員がおっしゃるように、どういう効果があるものなのかというの は、やはり省令を作る上でも関係があると思います。  ただ、ここの読み方ですが、一応禁止規定だというように読むと、少なくとも単に行 政上の話だけではなくて、年齢を基準に理由がないのに募集・採用で、「お前は何歳だ から雇わない」と言うことは、司法上不法行為になるとか、慰謝料の根拠になる可能性 があるという解釈も、たぶんあり得ると思うのです。ですから、そこも何かそういう議 論の資料などがあれば、今度出していただければと思います。 ○長谷川委員 いまのはとても重要です。やはり高齢者雇用安定法ができた後に、ある 弁護士から、民事効果はないというようなことを言われて、そうだなと思ったのです。 みんな均等法は分かっているので、募集・採用の年齢制限というのは、均等法と似てい ると思うのです。私は雇用対策法に入れている間は、なかなかないと思います。ただ男 女雇用機会均等法も、かつては勤労者婦人福祉法からずっと変わっていったわけです。 雇用対策法でこれが変わっていけるかどうかは分からないので、いま言ったことはもう 少し丁寧にご説明していただきたいと思います。 ○大橋部会長 そのほかによろしいでしょうか。 ○樋渡委員 先ほど長谷川委員からもお話があったのですが、次回は今日のように全部 一遍にやるのではなくて、議論の整理というか、順番を考えていただくとやりやすいの ではないかと思います。 ○大橋部会長 一応外国人と年齢制限についてということでしたが、次回は一つひとつ について、もう少し時間が持てると思いますので、もう少し議論を深めることができる と思います。次回の会議は7月10日の火曜日の13時から、場所は職業安定局第1会議室で 開催いたします。本日の会議の議事録の署名委員については、久保委員及び市瀬委員に お願いいたします。それでは本日の会議は以上で終わります。どうもありがとうござい ました。 (照会窓口)   厚生労働省雇用政策課雇用政策係   TEL:03-5253-1111(内線5732)