07/06/20 平成19年度第1回化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会  第1回議事録  平成19年度第1回化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会                     日時 平成19年6月20日(水)                        10:00〜                     場所 三田共用会議所3階大会議室A ○永野化学物質評価室長補佐 ただいまより「平成19年度第1回リスク評価検討会」を開催いたします。 本日は大変お忙しい中をご参集いただきまして、誠にありがとうございます。本日の出欠状況ですが、 大前委員よりご欠席の連絡が入っております。また、今年度もオブザーバーとして厚生労働省の委託 により、リスク評価事業を実施している中央労働災害防止協会化学物質管理支援センターよりもご出 席をいただいていることを申し上げます。それでは以後、座長の櫻井先生にご進行をお願いいたしま す。 ○櫻井座長 議事進行を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。まず、議事に先だちま して資料の確認を事務局からお願いします。 ○永野化学物質評価室長補佐 本日は資料が大変多く、厚くなっていますが、いちばん表が検討会次第。 2頁目が配付資料一覧。資料1-1が検討会の開催要綱。資料1-2が参集者名簿。資料1-3が19年度スケジ ュール案。資料1-4がリーフレット「有害物ばく露作業報告書の書き方」。資料1-5が「リスク評価の 手法(改訂案)」。資料1-6が「平成19年度リスク評価物質の評価値関係資料」。資料1-7が「平成19 年度リスク評価物質有害性評価書(暫定版)」。資料1-8が「クレオソート油リスク評価書(平成16年 度試行)」。参考資料は、参考1が4月6日付けの新聞発表の資料。参考2がリスク評価の実施要領。参 考3が各物質の提案理由書となっています。 ○櫻井座長 皆様、お手元に揃っておられますか。大丈夫のようですので、今年度の第1回の会議という ことでもありますので、今年度の検討事項、スケジュールについて事務局から説明をいたします。 ○永野化学物質評価室長補佐 まず、今年度のスケジュールの前に、昨年度検討していただいた結果が どうなっているかを先にご説明させていただきます。参考資料1です。昨年度においてはエピクロロ ヒドリン、塩化ベンジル、1,3-ブタジエン、ホルムアルデヒド及び硫酸ジエチルの5物質についてリ スク評価及びその評価に応じた対策の方向性についてご検討をいただきました。これについては4月6 日に検討会報告書を公表するとともに、それに基づく行政措置の考え方について公表をさせていただ いております。   結果から申しますと、ホルムアルデヒドについては1頁の下からありますが、多くの作業でリスク が高いということで、評価値を超える個人ばく露量が測定されたことから、設備の密閉化、局所排気 装置、もしくはプッシュプル型換気装置の設置、作業環境測定の実施等を行うべきだということで、 労働安全衛生法施行令別表第3の第2類物質、特化の第2類物質、いまは現行第3類物質ですが第2類物質 とすべきであるとされています。また、健康診断についても鼻咽頭がんが見られることから一般健康 診断を年に2回実施する等の措置を事業者は徹底するよう引き続き指導すべきであるとされています。   1,3-ブタジエンについては製造工程及び合成ゴム製造工程におけるサンプリング、保守、点検、分 解、組立て、修理等の作業において評価値を超える個人ばく露量が測定されたことで、これらの作業 について設備の密閉化、または呼吸用保護具の使用等を行うべきであり、そのための関係法令の整備 を検討すべきであるとされています。   硫酸ジエチルについては樹脂の製造工程における触媒として使用する混合、撹拌、混練、加熱等の 作業において評価値を超える個人ばく露量が測定されたということで、これらの作業について設備の 密閉化、または局所排気装置、もしくはプッシュプル型換気装置の設置を行うべきであり、そのため の関係法令の整備を検討すべきとされています。   エピクロロヒドリンと塩化ベンジルについては評価値を超える個人ばく露量が測定されておりませ んが、有害性が高い物質であるため、現行の法令に定められた予防措置を徹底すべきであり、国はそ のための指導を引き続き行うべきであるとされております。5物質のうちホルムアルデヒド、1,3-ブ タジエン、硫酸ジエチルについては新たな法令の整備を図ることとしており、化学物質の輸入に影響 を及ぼす恐れがあるので、WTOの通報手続を現在行っており、それが7月末まで外国から意見の募集を しております。それを踏まえてその後関係審議会での検討等をいただき、早急に法令の改正公布施行 を実施していきたいとしております。昨年度の検討物質については現在そのような状況になっていま す。   続いて今年度の予定です。昨年度は5物質でしたが、今年度については10物質について検討いただ きたいと考えています。物質については資料1-4のリーフレットにあります。1枚めくっていただきま すと右側に黄色い物質の一覧表があります。この10物質について今年度リスク評価をしていきたいと 考えております。  1番は2,3-エポキシ-1-プロパノール。物質名は労働安全衛生法の法令に載っている物質名で基本的 に整理しておりますが、世間一般的にはグリシドールという物質でIARCの2Aになっています。  2番目が塩化ベンゾイル。ベンゾイルクロライドです。これはIARCではアルファ-クロロトルエン類の 複合ばく露として2A、昨年度の塩化ベンジルと同じですが、複合ばく露として2Aという評価になって います。  3番目がオルト-トルイジンです。トルイジンの異性体のうちオルト形のもので、これもIARCの2Aにな っています。  4番目がクレオソート油でこれもIARCの2Aになっています。5番目が1,2,3-トリクロロプロパン、IARC の2Aです。6番目がニッケル化合物で、これはIARCで1と評価されています。ただし、ニッケルカルボ ニルについてはすでに特化2類物質になっていますので、除くことにしています。7番目が砒素及びそ の化合物で、これもIARCで評価1になっています。ただし、三酸化砒素についてはすでに特化2類物質 になっていますので、評価の対象から除くことにしています。8番目がフェニルオキシランでIARCの2A、 物質名はフェニルオキシランよりも酸化スチレンとかスチレンオキシドといったほうが馴染みがある ものかもしれませんが、フェニルオキシランについて評価をお願いします。  9番目が弗化ビニルで、これもIARCの2Aです。10番目がブロモエチレンというか、臭化ビニルで、これ もIARCの2Aの評価になっています。以上10物質について今年度評価とその評価に応じた対策の方向性に ついてご検討をいただければと思っています。   スケジュールですが、資料1-3で1枚ものの資料です。3月30日に関係告示を改正し、有害物ばく露作 業報告の対象物として、ただいま説明した10物質を対象にしています。第1回目のリスク評価検討会を 本日開催していますが、この有害物ばく露作業報告の提出期限が6月30日になっています。この報告を 受けて報告の結果について集計分析をしてばく露が高いと思われる事業場について、中災防で事業場の ばく露実態調査を実施していく。これを今年中には完了したいと考えています。その実態調査を踏まえ て11月ごろから来年の2月ぐらいにかけて検討会を2回から3回ぐらい開催させていただき、10物質のリ スク評価について検討、取りまとめをいただければと考えています。   資料1-1は開催要綱で、昨年と変わっておりませんので、説明は割愛させていただきます。資料1-2は 参集者名簿で、委員の先生方は変わっておりませんが、一部、清水先生の役職について若干修正をさせ ていただいています。以上、今年度の検討事項、スケジュールについて説明させていただきました。 ○櫻井座長 何か質問、コメント等がありましたらどうぞ。よろしいでしょうか。それでは議題に従いま して「平成19年度リスク評価対象物質の有害性評価及び評価値について」、今日のメインの議題を事務 局から説明をお願いします。 ○永野化学物質評価室長補佐  本日の検討会の主要な議題は、この評価値を決定していただければとい  うことです。資料1-5です。昨年度いろいろご検討をいただき、評価の手法についてその考え方をまと  めていただきましたが、昨年度評価した5物質についてはその発がん性についてすべて閾値はないと考  えられる物質でした。今年度の物質の中でいくつか閾値があるのではないかと考えられる物質があり、  若干それを踏まえてリスク評価手法を改訂させていただければと思います。具体的には4頁の(4)「リス  クの判定方法等」というところからになります。昨年度検討いただきまして一次評価と二次評価という  形になっていますが、昨年度はすべて閾値がない物質でしたので、一次評価についての評価値はユニッ  トリスクを用いたがんの過剰発生率が算定できる場合という、ユニットリスクからがんの過剰発生率  10−4に対応した濃度を一次評価値としています。5頁のbで発がん性の閾値があるとみなされる場合、  個人ばく露測定結果の最大値が、腫瘍発生に係る無毒性量等に関する主要文献から得られた知見を基に  設定した発がん作用の閾値を超える場合は、イの二次評価値。評価値は閾値がある場合はその閾値を一  次評価の評価値とする。  ただし、閾値がユニットリスクから求めた値と違い、閾値の場合は結構高い場合があり、bのiが閾値を  超えるとイの二次評価値に、iiで閾値以下の場合は基本的には現時点で労働者の健康障害に係るリスク  が低いと判断するが、各事業場においてリスク評価を行い、適切な管理を行う等の措置を検討する。iii  でi及びiiにかかわらず、腫瘍発生に係る無毒性量等に関する主要文献が得られた知見を設定した発が  ん作用の閾値が、二次評価値を超える場合があり、この場合は自動的に二次評価に移行する。ユニット  リスクから求めたものは非常に小さいので、二次評価値を超えることは通常考えられないのですが、閾  値の場合は二次評価値を超える場合があり、閾値よりも低い場合で許容濃度を超えている場合が想定さ  れますので、必ずしも閾値よりも低いからといって産衛学会の許容濃度ですとか、ACGIHのTLVの二次評  価値を超えている場合もあるので、それがリスクが低いという判断はできないと思いますので、こうい  う閾値が二次必要値を超えているような場合には、二次評価に移行するとしています。  Cとして発がん性の閾値が判定できないような物質があり、閾値の有無がわからないようなものについて  は一次評価値もわからないのでこれはイの二次評価に移行することにしています。   1つの改訂点が(4)のアのbで、「発がん性の閾値があるとみなされる場合」について追加しています。  6頁の(iii)で二次評価値については原則産衛学会の許容濃度か、ACGIHのTLVを使うことにしていますが、 これがないような物質については、昨年度は硫酸ジエチルのようなものについては、似ている物質の値  を用いる。ただ、今回はそういうものもなくて、構造的に類似した化学物質の許容濃度等がない場合に  ついては、個別に検討を行って二次評価値を決定する。あとで個別にこういう物質については相談をさ  せていただきたいと思います。   ちなみに閾値があるとかないとか、どういう考え方で判断をしているかですが、基本的には各物質の  有害性の評価を、昨年度までに中災防の委託事業の中で、専門家の健康影響の評価のタスクフォースと、  その上のリスク評価委員会でご検討いただいています。考え方として変異原性が陽性であって、遺伝子  障害性があると考えられる物質についてはこれは閾値はないと判断しており、そうではないような物質  については閾値があるという考え方になっています。後で個別の物質ごとの閾値の有無については説明  させていただきます。   以上のような考え方を踏まえ具体的な評価値をどれにするかということで、資料1-6、1頁と2頁に10物 質の評価値の候補ということで取りまとめています。1番目の2,3-エポキシ-1-プロパノールですが、こ  れは閾値はないという判断になっており、したがって一次評価値についてはユニットリスクから計算し  て、0.00033ppm、二次評価値についてはACGIHのTLVが2ppm、産衛学会はないので、ACGIHの2ppmを二次評  価値としたらどうかと考えています。  2番目の塩化ベンゾイルについては中災防の検討会の評価で閾値の有無が不明となっているので、一次評  価はできないので二次評価に自動的に移行する。評価値としてはACGIHの天井値のTLVが0.5ppmになってい  るので、これを用いたらどうか。ただし、天井値なので8時間のばく露を評価する場合にはこの半分ない  し3分の1ぐらいで比較すべきではないかと考えています。  3番目のオルト-トルイジンについては閾値はありという判断になっており、閾値で2.9ppmになっていま  すが、ただ二次評価値がACGIHが2ppmで、日本産衛学会が1ppmになっているので、二次評価値としては産  衛学会の1ppmではどうか。一次評価は閾値が1ppmを超えてしまっているので、この2.9で比較してもあま  り意味がないので、自動的に二次評価で判断することを考えています。  4番目のクレオソート油は平成16年度にまだばく露作業報告制度ができる前にこのリスク評価の試行的な  事業として中災防でリスク評価したものがあり資料1-8です。昨年度の1回目の会議でも同じ資料を出し  ていますが、クレオソートは混合物なので、クレオソート油という物質では評価できないものですから、  2頁に横表がありますが、有害性がある含有成分について7物質、ナフタレン、ビフェニル、エチルベン  ゼン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[e]フルオラセン、ベンゼンの7物質に  ついて測定をして、個々の物質ごとに評価を行う手法をやっています。   この16年度の結果だけでは、規制をしなければならないという緊急性はないと判断をしております。   ただ、まだばく露報告等の制度ができる前で、一部の作業について、その作業場が必ずしもばく露が高  いところかどうかわからない限定的な実態調査なので、昨年度の判断としてはきちんとばく露報告に載せ  て評価したらどうかというご意見でしたので、今回、きちんとばく露報告に載せて評価したい。その評価  値についても前回と同様、有害性があるとされている7つの物質、資料1-6の1頁に戻り、エチルベンゼン、  ナフタレン、ビフェニル、ベンゼン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[e]フル  オラセンについて評価をしたらどうかと考えています。個々の物質の評価値はエチルベンゼンは閾値があ  りとされてお  り、閾値が1.9ppm、二次評価値、ACGIHTWAが100ppm、短時間ばく露が125ppmですが、産衛学会のほうが  50ppmなので、二次評価値としては産衛学会の50ppmでどうかと考えています。  ナフタレンについて閾値の有無が不明で、一次評価値がなし。二次評価値としてはACGIHのTWA10ppmでど  うかと考えています。ビフェニルについては閾値の有無が不明で二次評価値についてはACGIHの0.2ppmで  どうかと考えています。ベンゼンについては閾値はなし、ユニットリスクから計算すると10−4に対応  したレベルが0.1ppmです。ベンゼンは規制物質なので法令の管理濃度が1ppmというのがあります。ACGIH  は0.5とか2.5ppmがありますが、日本産衛学会では10−4と10−3があり、10−3が1ppmで、これを管理  濃度として採用しているので、この1ppmでどうかと考えています。   その下のベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[e]フルオラセンはそれぞれ閾値は  なしで、一次評価値がそれぞれ0.0005ppm、0.00000055ppm、0.00045ppmとなっており、二次評価値がACGIH  や産衛学会等の許容濃度等がないので、似ている物質もいまの段階ではこれというものがなくて、先ほど  の資料1-8の4頁の表3で、ばく露濃度の評価結果があります。その3物質についてはすべて定量下限未満に  なっていて、4×10−4ppm未満となり、すべてそのようになっていたので、今回は取りあえず当面は定量  下限値を超えるかどうかで判断したらどうか。検出されなければそれでよろしいかと思いますが、こうい  った場合、測定された場合はそれをどう評価するかはまた別途検討をしなければと考えています。  5番目の1,2,3-トリクロロプロパンについては閾値はなしです。ユニットリスクの知見がなくて評価値は  なし、二次評価値でACGIHが10ppmとなっているので、これを二次評価値としたいと考えています。  6番目はニッケル化合物で、閾値はなしで、一次評価値がニッケルとして0.0013mg/m3、二次評価値はACGIH  のTLVでそれぞれニッケルとしてですが、可溶性ニッケル化合物について0.1mg/m3、不溶性ニッケル化合  物は0.2mg/m3、亜硫化ニッケルについては0.1mg/m3になっているので、これを二次評価値としたらどう  かと考えています。   次の物質は2頁に7番目として砒素及びその化合物です。一次評価値は閾値がなしで、ユニットリスク等  から計算した評価値として砒素として0.33μg/m3。二次評価値はACGIHと産衛学会とがあり、ACGIHは3つ  に分けています。砒素及びその無機化合物とアルシン、ガリウム砒素と分けています。産衛学会は砒素及  び砒素化合物とアルシンの2つに分けて許容濃度等を勧告しており、ACGIHの砒素及びその無機化合物は単  位がmgでμgに換算すると10μgになります。産衛学会の砒素及び砒素化合物については10−3でも3μgで、  ACGIHの0.01mgよりも低いので、原則はこの産衛学会の10−3リスクレベルに対応した3μg/m3にしたらど  うかと 考えています。   ガリウム砒素についてはACGIHは0.3μgを提案しており、これはいまの3μgよりも1桁低い値になってい  るので、ガリウム砒素だけはACGIHの0.3μgで評価をしたらどうか。   アルシンについてはACGIHもμgに換算すると16μgで、産衛学会のほうも古いもので32μgになるので、  10−3の3μgと比べても高いので、取りあえずアルシンも含めて3μgで評価すればいいのではないかと考  えています。  8番目のフェニルオキシランについては閾値はないのですが、ユニットリスク等の値がないので、評価値は  なし。  二次評価値としてフェニルオキシラン、酸化スチレンについてはTLVや許容濃度等がないことになってお  り、何を使うかで資料1-6の10頁、IARCのモノグラフからもってきたもので、スチレンの代謝経路というこ  とで、いちばん上の真ん中が出発点のスチレンになっており、代謝経路で大部分は太い矢印を酸化スチレン、  フェニルオキシランに代謝されて、またそこからほかの物質になるということで、スチレンの有害性はフェ  ニルオキシランによってもたらされるのではないかといわれているので、評価値としてはスチレンの評価値  を参考にしたらどうかということで、2頁に戻り、スチレンの許容濃度が20ppmになっているので、安全を見  て10分の1ということで、2ppmを今回のリスク評価の評価値としたらどうかと考えています。  9番目が弗化ビニルで一次評価値は閾値はなしで、ユニットリスク等が計算できないので評価値はなし。二  次評価値ではACGIHのTLV1ppmがあるので、これでどうかと考えています。  最後のブロモエチレンについては閾値はなしで評価値が0.00058ppm、二次評価値がACGIHが0.5ppmでいかがか  と考えています。   以上が取りあえずご提案としての評価値になっています。   3頁からは今回発がん性を基に10物質を選んでいますが、二次評価値の基としたTLVや許容濃度で提案の中  に発がん性をどう考えられているかを、ごく簡単にまとめたものです。   2,3-エポキシ-1-プロパノール(グリシドール)についてはACGIHの提案理由の中では2年間グリシドール  にばく露したラットとマウスに新生組織形成の増加を示す明らかな証許が認められ、発がん性を考慮したTLV  を設定している。   ACGIHの塩化ベンゾイルですが、事例報告及び疫学調査に基づいたヒトに対するがんの増大例は、ベンゾト  リクロリドの過剰ばく露と労働衛生管理の欠如によるものと考えられるものから、TLVは刺激を抑制するため  の濃度として勧告する。 オルト-トルイジンについてはACGIHはオルト-トルイジン(塩酸塩)はマウスとラットの高濃度の経口投  与で発がん性を示すが、気中濃度に外挿することが困難である。このため、アニリンとの類似性に基づきTLV-TWA  としてアニリンと同等の2ppmを勧告している。産衛学会のほうがオルト-トルイジンの塩酸塩を長期間経口投  与した動物実験では、マウス、ラットいずれの動物種においても種々の臓器に腫瘍の発生を有意に増加させ、  ことに雌ラットでは膀胱がんの発生も有意に増加した。ただし、変異原性の成績は一様ではない。構造や毒  性の現れ方がアニリンに類似していることから、アニリンと同じ許容濃度1ppmを設定している。参考にアニ  リンを下に書いておりますが、ACGIHでは動物の経餌試験で脾臓血管肉腫、繊維肉腫及び非上皮性悪性肉腫の  報告があるが、動物試験で血中メトヘモグロビンの増加が認められること、及びヒトでの経皮吸収性がある  ことに基づいてTLV2ppmを勧告しているとしています。産衛学会はアニリンが労働者に対して発がん性を示す  か否かについてはなお確定されていないが、ラットに対する発がん性は明らかにされているので、皮膚吸収  を防止することも含め、ばく露を極力抑制する目的で許容濃度1ppmを提案しているとされています。   クレオソート油の各成分ですが、エチルベンゼンの産衛学会は、2年間の反復ばく露によりラット、マウス  で良性又は悪性の腫瘍が認められたが、ヒトにどのように外挿できるかは今後の研究を要するとされている。  急性毒性はトルエンに類似していることから、トルエンと同じ許容濃度、50ppmを提案している。  ナフタレンについてのACGIHですが、ナフタレンにばく露した雌のマウスについて発がん性のデータはあるが、  雄のマウス及びラットについての発がん性の実証はない。ナフタレンへのばく露はヒトにおいて白内障及び  急性溶血を引き起こすことが知られており、眼の刺激を考慮してTLVを設定している。  ビフェニルのACGIHについては鼻粘膜の刺激とビフェニルを含む粉じんの吸入ばく露を考慮してTLVを設定し  ていることで、発がん性の分離はなされていない。  ベンゼンのACGIHは、ベンゼンのばく露によりヒトの白血病を誘発することを確認する。発がん性を根拠にTLV  を設定する。産衛学会も40年間のベンゼンばく露により白血病の過剰死亡リスクを10−3以下に抑えるため  の評価値として1ppmを提示している。  ベンゾ[a]アントラセンのACGIHは、TLVは勧告されていないのですが、ベンゾ[a]アントラセンはベンゾ[a] ピレンなどの他の多環芳香族、よりいくぶん弱いが動物において発がん性が認められるとされています。  ベンゾ[a]ピレンについてもACGIHで動物での発がん試験で陽性の結果となっていること。また限られたデ  ータではあるが肺がんの有意な相関関係が認められると主張する。  ベンゾ[e]フルオラセンのACGIHではベンゾ[e]フルオラセンはベンゾ[a]ピレンほど広範な評価はな  されていないが、ヒトに対して発がん性を示唆する報告があるとされている。  1,2,3-トリクロロプロパンについてACGIHは、強制経口投与されたラットとマウスにおける口腔粘膜及び前  胃の扁平上皮細胞の乳頭腫とがんの発生率の増加の報告があるが、TLVは最も敏感なラットの経口投与試験を  ヒトに外挿して、肝臓と腎臓障害の発現を最小とする値として設定している。  ニッケル及びその化合物についてACGIHは可溶性ニッケルについてはヒトに対する皮膚炎とじん肺の可能性及  びがんの恐れを最小限にするためのTLVとして設定している。不溶性ニッケルについてはヒトに対する鼻腔が  ん、肺がんの可能性を最小限とするためにTLVを設定している。  砒素及びその化合物についてACGIHは、砒素及びその無機化合物についてTLVは皮膚、肝臓、末梢血管系、上気  道、肺(肺がんを含む)への悪影響の可能性を最小とすることを意図して設定する。  アルシンについては従前は0.05ppmだったものから、2007年に1桁下がって0.005ppmになっていますが、TLVは  末梢神経機能障害及び腎臓、肝臓障害の可能性を最小とすることを意図して設定されています。  ガリウム砒素についてはTLVは肺炎症の可能性を最小とすることを意図しているが、悪性の生殖影響と肺がん  の可能性も考慮して設定している。  砒素の産衛学会は、砒素及び砒素化合物については無機砒素は哺乳類の体内でメチル化され、発がん性のジメ  チルアルシン酸になることから、ジメチルアルシン酸投与ラットでがんが発生すること。40年間のばく露によ  る過剰死亡リスクを10−3以下に押さえるための評価値として3μgを提案している。  アルシンは古い提案で、動物実験において溶血及びそれに伴う脾腫が観察されており、長期ばく露を想定し、  許容濃度として0.01ppmを勧告している。  フェニルオキシランについてはACGIH、産衛学会ともに許容濃度を勧告していません。参考でスチレンですが、  生体中に取り込まれたスチレンのほとんどは代謝されてフェニルオキシラン(酸化スチレン)になるとされて  います。 スチレンのTLV、許容濃度はACGIH、日本産業衛生学会とも中枢神経、末梢神経影響、刺激作用を根拠として  TWA20ppmを勧告している。日本産衛学会では疫学調査による白血病やリンパ腫の増加等の知見や動物試験にお  ける乳腺腫の増加から、スチレンの発がん性を2Bと評価している。  弗化ビニルについてはACGIHでは動物試験で発がん性が観察されており、塩化ビニルとの類似性で疑われる肝  がんの可能性を最小化することを意図してTLVが設定されている。  ブロムエチレンについてはACGIHで動物試験で発がん性が観察されており、塩化ビニルとの類似性で疑われる  肝がんの可能性を最小化することを意図して、TLVが設定されている。  以上、ほとんどの物質では発がん性を根拠とするか、もしくは発がん性以外のものを直接は根拠とはしていま  すが、発がん性は何らかの考慮はされていて、ほとんどはそういうことになっています。  6頁は各物質の評価値を一覧表にまとめたものです。7頁がクレオソート油の有害成分について、評価値等を  一覧表にしたものです。8頁は主なニッケル化合物としてどのようなものがあるか。ACGIHの分類は可溶性、不  溶性、難溶性に分けています。可溶性のニッケル化合物としては塩化ニッケルが業界団体から聞いた話ですと、  7,000tぐらい取り扱われているのではないかと。主な用途が電気メッキ、コンデンサー用のニッケル粉などに  使われている。硫酸ニッケルも2万tぐらい取り扱われているのではないか。メッキ、触媒といった用途に使わ  れている。そのほか硝酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、塩化アンモニウムニッケル、酢酸ニッケルと化  合物としてはこういう種類があり、取扱い量が具体的にはわからない部分があります。  不溶性ニッケルとしては炭酸ニッケルが3,000tぐらい製造されている。酸化ニッケルが6万tぐらいあるのでは  ないか。  そのほか具体的に量がわからないのですが化合物の種類としては水酸化炭酸ニッケル、水酸化ニッケル、硫  化ニッケル等があります。難溶性としては亜硫化ニッケル等があります。  9頁が砒素と主な砒素化合物です。砒素の生産量が40tあるのですが、本当にこんなに少ないのかと少し疑問な  点もありますが、文献等ではそのような記載があります。化合物としては砒酸、砒酸石灰、亜砒酸ソーダ、硫  化砒素、五酸化二砒素、アルシン、ガリウム砒素などがあり、いちばん下の網掛けになっている亜砒酸は正確  にいうと三酸化二砒素が正確なのですが、法令では三酸化砒素と言っていて、すでに特化物になっているので  今回の評価の対象外ですが参考に載せています。  10頁は先ほど説明したフェニルスチレンの代謝経路になっています。以上が評価値関係です。  資料1-7は各物質の有害性評価書になっていますが、詳細な説明は割愛させていただき、必要があれば議論の中  で確認させていただければと思います。基本的には資料1-6の評価値についてご検討いただければと考えており  ます。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。一応すべてリスク評価の手法とそれぞれの化学物質についてのリスク評価値の  案が示されています。 ○内山委員 閾値のありなしに関しては、ほかの大気環境でも室内でも値のありなしに分けているので、それは  それでいいのではないかと思うのですが、一次評価値が二次評価値よりも高いものが当然出てきてしまいます。  そうしますと、このリスク評価値の改訂版では、あくまでも有害性をがんでしか見ていないので、閾値のある  ものはがんのほうが高くて、そのほかの影響で二次評価のACGIHとか産衛学会がそのほかの指標でやっていった  場合には、当然閾値のある発がんの評価より低い値が許容濃度になっていたりACGIHになっていたりします。で  すから、これはオルト-トルイジンはそういうことだろうと思うのです。やはり一次評価値のほうが二次評価値  よりもスクリーニングな値の計算したのが高いというのは、いかにも機械的に計算したみたいで、今後こうい  うものが出てきたときに誤解を与えるし、一次評価値は一生懸命に評価しても、ただやっているだけだなという  ことなので、このリスク評価の手法の改訂案のところに閾値ありと入れた場合には、そのほかの閾値が発がんで  評価したよりも、その他の指標で評価するのがあれば、それを入れるか、あるいはスクリーニングは発がんだけ  を評価していて、閾値がある発がん物質の場合はその他のエンドポイントのものよりも高くなった場合には、発  がんでのスクリーニングはやめて次にいくとか、何かバイパスを付けておいたほうが誤解はないのではないかと  思います。   評価の話で手法の案のところの下線部分で、閾値と発がん作用を、ここでいう閾値はいろいろ不確実係数をか  けたり、ここで言っている閾値というのは労働者補正をしている値のことを言っているわけですね。それは本来  の実験から求めた、あるいは疫学調査から求めたNOAEL(無毒性量)とは少し違っていますので、これも誤解を  招くのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○櫻井座長 そうですね。 ○内山委員 ですからオルト-トルイジンの2.9ppmというのはスレッシュホールドというのではなくて、NOAELを  求めてNOAELに100分の1をかけて、さらに労働者のばく露評価補正をした値です。ですからこれはもう閾値では  なくて評価値なのだろうと思います。我々は、普通は閾値というとNOAELと、まず実験的に求めたNOAELと考えて  しまいますので、その2点が誤解を招く可能性があると思います。 ○櫻井座長 5頁のb、「発がん性の閾値があるとみなされる場合」のところで使われている閾値と、その下で「設  定した発がん作用の閾値」というのは、意味が違いますね。 ○内山委員 閾値ありなしで使っている閾値と、発がん作用が絡む閾値とは意味が違うと思います。 ○櫻井座長 どのような表現にしたらよいか、少し難しいですね。 ○春日化学物質評価室長 例えば5頁の改訂案のbのiのところの2行目に出てくる「発がん作用の閾値」という、  この「閾値」が、不確実係数を入れた閾値ですので、それがわかるような記述にするということでしょうか。 ○内山委員 この評価のガイドラインの手法だとすれば、例えば括弧をして一次評価値と書いてしまってもいい  かと思います。それを基に設定した発がん作用の閾値(一次評価値)としたら、調査の中で、あるいはこのシ  ステムの中で使う値と。何か新しいことを考えるよりも、一次評価値としてしまえば、こうやって計算した値  をすぐにここに2.9ppmと出てきますというので、よろしいかという気がします。 ○櫻井座長 ここを一次評価値と書いてしまうのですか。 ○内山委員 まずいですか。 ○春日化学物質評価室長 それを2つに分けているようですね。そう書いてしまっても実態は同じですからそれで  もいいのかもしれませんが、そうしますか。 ○内山委員 その次に二次評価値を超える場合とか、二次評価値だっていろいろあるわけです。ACGIHの値をとっ  たり、許容濃度をとったり、ここでは二次評価値と1つ決めているわけですね。ですから一次評価値がいろいろ  あってもほかのところで矛盾が出なければ、それでもいいかと思います。 ○春日化学物質評価室長 言葉については若干検討させていただきまして、いずれにしても閾値が実験結果から  求められた閾値か、不確実係数を掛けた閾値なのかがきちんとわかるような表現にさせていただきたいと思い  ます。 ○櫻井座長 bの「発がん性の閾値があるとみなされる場合」の閾値というのは、理想的なものを考えているので  すね。 本当にあるとしたらどこか明確にわからないけれども、NOELよりも上でNOAELよりも下のどこかの数字というこ  とであるので、表現をお考えいただきたいと思います。  それに絡んで少し気になるのが3頁の真ん中で、波線でアンダーラインがしてあるところ、「閾値がないと考え  られている場合以外の場合」という表現にあえてしているのと、5頁では「閾値があるとみなされる場合」とい  うこと、同じことを違う表現にしているので何かと誤解を招かないか。3頁の真ん中では閾値があると考えられ  る場合と書くのを避けたのですね。 ○春日化学物質評価室長 実は平成17年度に労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会というのをやっており  まして、そのときの報告書では3頁のような記述になっており、確かに5頁の記述と表現が矛盾しているところが  あるので、どちらかに統一したほうがよろしいですね。 ○櫻井座長 どちらに統一したほうがよいか、ご意見ございますでしょうか。みなすという表現がある以上、閾値  があるとみなすという。そうすると、例えば3頁のほうは「閾値があると考えられる」とかでもいいですね。3頁  の真ん中のは、あえてこういうもって回った表現にして、微妙なニュアンスを表現しているのですが、事務局で  ご検討いただいてもよろしいでしょうか。 ○春日化学物質評価室長 資料1-7の個別の評価表を見ますと、閾値の有無の判断の記述が出ているわけですが、  判断としては閾値がありという判断と、閾値がなしという判断と、閾値が不明という3つの判断がなされており、  その根拠としてはそれぞれの変異原性試験の結果が明解なものと、必ずしも対立するような結果が出ていて不明  であるという判断と、そういう形に3つに分類していて、そういうことを考慮して、手法ではそれがうまく読み  取れるような表現にしていかなければいけないと思っております。 ○櫻井座長 「閾値がないと考えられている場合以外」というと、閾値が不明という場合も入ってしまいますね。 ○春日化学物質評価室長 そうですね。 ○櫻井座長 そうすると、閾値が不明ならば無毒性量と直結してしまいますから、かえってまずいですね。 ○春日化学物質評価室長 まずいですね。 ○櫻井座長 3頁の真ん中を書き換えるということですね。それでよろしいでしょうか。 ○和田委員 閾値が不明の場合はないと考えるべきですよね。けれども、この場合は閾値ありと考える方向になる  のではないですか。だから、少し誤解を与えることがあるかもしれないですね。 ○櫻井座長 今回のもそうでしたっけ。 ○和田委員 不明なものが閾値ありという判断のニュアンスがあるので、よく考えた方がよいということ。それと、  閾値ありという場合の発がん機序は、遺伝子毒性ではないということ、エピジェニックとかコカルシノーゲンだ  ということですね。遺伝子異常がなくて発がんしてくるというのは考えられないので、プロモータということを  意味しているのですね。もう1つ、安衛法に基づく変異原性試験でなかっただけのことで、ほかには発がん性あり  という報告もあるわけですから、その辺を突っ込まれるとどうされるのですかね。 ○櫻井座長 では、これはこのままでいいですね。 ○和田委員 遺伝子毒性がないということで、閾値ありと判断するということですね。ということは、直接発がん  性がないというだけのことでしょう。 ○内山委員 いわゆるイニシエーターではないと。プロモーターではないですね。 ○和田委員 発がん性実験で、代謝物によってイニシエーターになる可能性とか、そういうのは全部否定できるの  ですかね。あの実験だけで。 ○内山委員 できるものもあるし、できないものもあるし。だから直接遺伝子障害性を持たないとなっていれば。 ○和田委員 直接遺伝子障害というのは、この方法では検出されなかったというだけで、本当に直接カルシノーゲ  ンでないということは言えるかどうかという疑問もあることはあります。エビジェニックかコカルシノーゲンで  あるという証明があるのかどうかということですよね。厳密に言うとですね。 ○櫻井座長 厳密に、そういったところを議論したいとは思うけれども、個別にね。 ○和田委員 前提として、一般の大気の場合は科学的極限値を求めるけれども、この場合は産業界ということで実  現可能性ということをむしろ重視しなければいけないということで、そういう考えから見るというような感じで  いけば問題ないと思いますが、その辺が何か引っかかる感じを持っています。 ○櫻井座長 先ほどの話題に帰りますが、3頁の表現と5頁の表現は別に矛盾がないということがわかりました。  5頁では、発がん性の閾値があると見なされる場合とcが不明な場合と分けている。それを両方含んでいるという  ことですね。 ○春日化学物質評価室長 はい、そうです。 ○櫻井座長 このままでいいということです。いかがでしょうか。個別の評価値について。 ○和田委員 不明の場合は、閾値ありということで判断するということに了承したということでいいのですか。 ○櫻井座長 ここでは当面ね。不明な場合、どうでしょうか、「イの二次評価に移行する」と5頁に書いてありま  すね。単純にそうしていいかどうかということですね。一応総合的に判断してという言葉があったほうがいい  ですね。その他のいろいろな情報を。 ○和田委員 そうですね。 ○櫻井座長 そのほうがよろしいですね。5頁の真ん中のcは、シンプルに「イの二次評価に移行する」のではな  くて、総合的判断という言葉を入れることをお考えください。 ○春日化学物質評価室長 わかりました。 ○櫻井座長 リスク評価の手法の資料1-5は、リスクの判定方法等で発がん性がない物質についてはこれにはまだ  書いていないということになりますか。 ○内山委員 3頁のイ、ウ、エ、オ、カ、キが、急性毒性のあとのウ、エ、オまでがそれ以外のだけれども、どれ  を採用するかというものがない。 ○櫻井座長 不確実係数を使って云々ということがないですね。不確実係数については書いてあるけれども、リス  クの判定方法のところでマージンをエクスポージャー的な考え方を使っているわけで、その総論的な部分がまだ  それを使うところに至っていないのですが、抜けているかも。当面はこれでよろしいですか。 ○春日化学物質評価室長 4、5頁の判定方法のところで、確かに発がん性のことばかり考えていまして、それ以外  の記述が確かに抜けています。 ○櫻井座長 発がん性が閾値不明な場合は、イの二次評価に移行するというところがそれ以外の部分に絡んでくる  ので、書いてあったほうがいいだろうなと思います。次回までに。 ○春日化学物質評価室長 その辺も併せて、ご検討させていただければと思います。 ○櫻井座長 資料1-6にほんの小さなミスがありますが、4頁の上のベンゼンの日本衛生学会の1ppmが10−4と書い  てありますが、10−3ですね。 ○春日化学物質評価室長 そうですね。 ○櫻井座長 これも大したことではないですが、2頁の8のフェニルオキシランの右側に、スチレンの許容濃度20ppm  というのは、ACGIHと産衛両方ともということですね。同じ数字で。 ○春日化学物質評価室長 同じです。私どもでちょっと悩みましたのが、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]ピ  レン、ベンゾ[e]フルオラセンについてはユニットリスクしかなくて、許容濃度等が設定されていないので、定  量下限という値を提案しているのですが、これでよろしいのかどうかと、8のフェニルオキシランについて、安全  率を見てスチレンの許容濃度の10分の1という形にしているのですが、そのような考えで当面やることに対して問  題がないかどうかで、先生方のご意見を伺えればと思っています。 ○櫻井座長 定量下限の問題ですが、いかがでしょうか。 ○和田委員 環境の定量下限濃度はどのぐらいいっているのですか。 ○櫻井座長 一般環境ですか。 ○和田委員 一般環境です。 ○櫻井座長 たしか、データを調べていただいた。私もそれが気になりました。 ○和田委員 そちらのほうが、むしろ重要だと思いますから。 ○春日化学物質評価室長 かなり低い値になっていまして、ベンゾ[a]アントラセン等の定量限界値と定めている  ものより1,000分の1ぐらいの濃度になっています。環境省が測定している結果を見ますと、ベンゾ[a]ピレンの  結果を我々は入手していますが、ピークがあるのが0.3から0.4のナノグラム/m3ということで、定量下限が4マイ  クログラム/m3ですので、単位が1,000分の1違ってさらに10分の1ですから10,000分の1ぐらい。 ○和田委員 環境濃度を出すときは、どうやって測定しているのですか。 ○春日化学物質評価室長 これは、おそらく大量に採取をして、濃縮して測っているということだと思います。 ○和田委員 だから、産業現場で我々がやっている測定限界ということになりますね。 ○春日化学物質評価室長 この定量下限値という考え方が確かに曖昧ですので、通常の我々の労働現場で測定する方  法でという注意書きが必要でしょうか。 ○和田委員 少し矛盾しているような感じになりますね。安衛法に基づく測定法によると書いてもいいではないです  か。我々は安衛法に基づいてやっているわけだから。 ○櫻井座長 要するに、ベンゾ[a]ピレンですね。 ○春日化学物質評価室長 はい。 ○櫻井座長 だから全く違うのですよね。 ○和田委員 実際の現場では、どの程度の濃度になるのですかね。 ○春日化学物質評価室長 平成16年度に測った限りでは、すべて定量下限値になっていますので、それ以下がどのぐ  らいの濃度だったかはわかっていないのです。 ○櫻井座長 あえて、その工場の中の空気を全部サンプリングしてしまうぐらいにやれば、引っかかるかもしれない  ですよね。二次評価値もないのですね。 ○春日化学物質評価室長 はい。 ○櫻井座長 当面、定量下限値。定量下限というのは、何か少し労働現場における。 ○春日化学物質評価室長 そこは注意書きがある。 ○和田委員 安衛法に基づくようなこと、ここは安衛法に基づいて測定しているわけですから、それでいいのではな  いですか。 ○櫻井座長 当面の判断として、現実的にはこれでいきましょうということでよろしいでしょうか。ご異存がないの  で、このまま少し表現を明確にしていただくということでお願いします。それからフェニルオキシランについては、  スチレンの許容濃度の安全率10分の1で2ppmにしていることについてはいかがでしょうか。 ○内山委員 先ほどの代謝経路のスチレンが、フェニルオキシランにどのぐらい変わるかというところまでは文献的  にはありますか。 ○春日化学物質評価室長 正確な記述を覚えていませんが、6割から7割ぐらいはフェニルオキシランになるという表  現だったと思います。 ○和田委員 スチレンとフェニルオキシランの気道からの吸収率のデータはあるのですか。 ○春日化学物質評価室長 ちょっとそこまでは。 ○和田委員 データはないですか。 ○櫻井座長 吸入した場合の吸収率が。 ○和田委員 同じぐらいと考えれば。どうせ脂溶性でしょうね。フェニルオキシランのあと、水溶性になるというこ  とですか。そうなると、あまり水溶性ではないのですかね。 ○櫻井座長 これは、エポキサイドになったもののほうが水溶性が高いとか、そういうことがありますか。 ○和田委員 OHは付いていないけれども。 ○櫻井座長 もし、同じ吸収率ぐらいだったらスチレンよりもやや安全サイドということで、同じ数字でもいいのか  もしれない。 ○和田委員 そのほうがいいかもしれないけれども、6割ぐらいはフェニルオキシランになるということから、安全  サイドを見て10分の1で、かなり安全に見ているのだということでいいのではないですか。 ○櫻井座長 そういう感じで妥当であろうというご判断のようですので、フェニルオキシランについては2ppmとい  うのを二次評価として、この原案でいこうということにしたいと思います。ほかに何かありますか。 ○内山委員 オルト-トルイジンは、注を付けておいていただけるといいのではないかと思います。一次評価値のほ  うが二次評価値より高く設定されているということです。 ○櫻井座長 注を付けるということですね。 ○内山委員 例えば二次評価値のほうは、アニリンを推計したものですね。 ○春日化学物質評価室長 はい、アニリンから推計した。 ○内山委員 直接オルト-トルイジンの評価値ではないのですね。こちらの2.9というのは、オルト-トルイジンであ  るものをずっとやっていったら発がん性の閾値のあるもので、これがいちばん低いということですね。右のほう  はアニリンでも、経皮吸収があるから少し安全を見てたぶん低くしてあるのではないかということで2とか1にな  っていると書いてありますので、どうなのでしょうか。例えば右側のほうには経皮吸収部分が考慮されている、  左側のオルト-トルイジンは経皮吸収は考慮していないとか、あるいはオルト-トルイジンを評価したものである  ということを何かわかるように書いていただいたほうが、ここでやっているリスク評価で一次評価、スクリーニ  ングですから本来は低く出るべきところが高くできた理由を何か注で書いておいていただいたほうが、全体的な  ものとしてはいいのではないかという気がします。理由があるわけですので。 ○櫻井座長 オルト-トルイジンについては、発がんの閾値は2.9ppmと考えられるけれども、それよりも低い濃度  で発がん以外の影響が認められるので。 ○内山委員 最初に聞いたときはそう思ったのですが、詳細なリスク評価をもう1回見直してみたら、ほかのもの  の中で閾値のあるはずが、2.9がオルト-トルイジン自体ではいちばん低い値です。それはいいと思います。そう  すると、なぜ産衛学会やACGIHがこれよりも低い。本来、このあれでいちばん低かったら既に100かけているわけ  ですから、さらに3分の1ぐらいになっている理由が何かということがあるはずですが、そうしますとそれは1つ目  はメトヘモグロビン血症をしようとした……である。経皮吸収もあるので、それを考慮してこの値だという評価  ですので、そこがわかるようになって。なぜ一次評価値のほうが。 ○櫻井座長 発がんよりも低い濃度で起こる、メトヘモグロビン血症の予防と経皮吸収があることの2点から。 ○内山委員 考慮されたACGIHと産衛の値である。ですから、今回は一次評価を飛ばしてすぐに二次評価、少しわか  るように本文でもいいですし、注でも。 ○櫻井座長 ありがとうございました。そのようにさせていただきます。特にないようでしたら、この議題は以上  で終わります。  今日の議事の(2)平成19年度リスク評価対象物質のばく露実態調査についてです。いかがでしょうか。 ○永野化学物質評価室長補佐 実態調査の今後の方針について、ご確認をさせていただければと思います。先ほど  申しましたように、ばく露報告の締め切りが6月30日。労働局や労働基準監督署から多少催促して、最終的に7月  半ばぐらいにデータを抽出して、そのあとに集計、分析をする予定にしています。  昨年度に考え方をまとめていただいていますが、参考資料1の記者発表資料の中に昨年度の報告書が入っていま  して、報告書の5頁の(3)に「ばく露状況の把握」ということで、ばく露報告を基にリスクが高いと推定される作  業を把握して、対象事業場を選定してばく露の状況等について調査を行う。イ、対象の選定の考え方として、 (ア) のiからあるようなことを考慮して、例えばiで「対象物の量」「作業従事労働者数」及び「作業従事時  間」の多いものを考慮するとか、iiは作業の態様ごとに考えられる発散の程度を考慮する。iiiは「事業場数」の  多いものは広範に使用されている可能性があるので、対象選定に当たって考慮する。そんな用途や「取扱温度」  の高いものや、1人当たりの従事時間の長いものや「性状」による蒸散しやすさ。昨年度にそういう考え方をま  とめていただいていますので、今年度もそういう考え方を基にばく露が高いと思われる事業場を選定しまして、  ばく露実態調査を実施していく予定としています。昨年度は、結構3月の頭ぐらいまで結果が出なくて、年度末  も大変ご苦労をおかけしていましたが、今年はなるべく早く、できれば今年中には結果が出るようにしたいと  思っていますので、今後その結果を調査しまして、それを踏まえてまたリスク評価を検討いただきたいと思っ  ています。  以上です。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。去年と同じ考え方で、ばく露状況の把握、特に対象の選定のところが当面いちば  ん大事なことですが、大体よろしいですか。去年のこれでいこうということで。5、6頁にかけて。 ○清水委員 今回の対象物質は、全部測定方法が確立しているのですか。 ○(中災防)一応、昨年度に対象になっている候補になっていた物質については分析手法の検討を行っていまして、  ほぼできることはできますが、例えばユニットリスクの濃度までは測れない物質もあります。少なくとも、二次  評価値になっているものの100分の1までの精度を出せるような測定分析方法になっていますので、そのあたりは  二次評価値に確実に評価できるような形にしています。  あとは、若干ニッケルと砒素に関して、砒素の場合は砒素として評価するのでいいのですが、ニッケルの場合は  ニッケルの化合物の種類として分離定量。例えば個人ばく露のようなものではできないのですが、現場の作業環  境測定の中では1点か2点についてそういった方法を検討して、一応分別定量ができるような形になっていますの  で、そこから推計すれば個人ばく露の結果からもできるかなとは考えています。ただ、完全に相関があるとは言  えないので、その辺のところは先生方に考慮していただいて検討していただければと思っています。 ○櫻井座長 アルシンも測りますね。 ○(中災防)そうですね。 ○櫻井座長 性状による蒸散のしやすさの程度を考慮するというのは、性状の中に蒸気圧以外に例えば粉じんの発  散のしやすさとかの使えるようなデータはないでしょうね。前回も、そういうあれはなかったですね。無理です  ね。 ○春日化学物質評価室長 粒子の大きさ、若しくは例えば溶接のようなものがあれば明らかに発散が大きいので溶  接などは優先することができると思いますが、粉体については事前にどの程度の粒子の大きさのものを使ってい  るかまでは、実際に事業場に行ってみればわかりますが、最初の情報のところではそこまでは掴みきれていない  かなと。 ○櫻井座長 性状による蒸散のしやすさというのは、これだと蒸発することだけが前提になっていますよね。粉体  の発散のしやすさはここに書いていないのでいいのかなと思ったけれども、事実上は難しいだろう。やむを得な  いですね。そういう情報は、報告の中にはないですね。 ○春日化学物質評価室長 ないです。 ○櫻井座長 ほかに何かありますか。特段これについての質問、コメントが大体出尽くしたようですので、今日の  議事は一通り終了しました。次回の予定はいかがでしょうか。 ○永野化学物質評価室長補佐 次回の会議はスケジュールにもありましたとおり、事業場のばく露実態調査の進捗  等を勘案しまして11月以降に開催したいと思っていますので、別途日程調整をしますのでよろしくお願いします。 ○櫻井座長 そのときに、今回のいくつかのコメントに基づく修正等をお願いします。  これで、今日は閉会とします。どうもありがとうございました。             照会先: 労働基準局安全衛生部化学物質対策課                            化学物質評価室                電話03-5253-1111(内線5511) 0