07/06/14 有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会 第7回速記録                      平成19年6月14日(木)                      於:厚生労働省17階専用第18〜20会議室 ○ 中垣審査管理課長  それでは、間もなく参ると思いますので、第7回「有効で安全な医薬品を迅速に提供 するための検討会」を開催させていただきたいと存じます。本日は、松本恒雄委員から 御欠席という御連絡をいただいております。その他の委員には全員御出席いただいてお ります。  申しわけないことに、事務局は6月1日からクールビズで、ノーネクタイはもとより 腕まくりをしておりますが、御容赦いただきますようお願い申し上げます。また、それ と相まちましてクーラーがまだ入っておらず、蒸し暑い中、申しわけございませんが、 よろしくお願い申し上げたいと思います。  それでは、高久座長、議事進行をよろしくお願い申し上げます。 ○高久座長  それでは、最初に本日の配付資料の確認を事務局の方からよろしくお願いします。 ○ 山本承認審査等推進室長  それでは、お手元にございます議事次第の下のところに配付資料の一覧表がございま すが、これに従いまして御確認をお願いいたします。この議事次第のほかに座席表が1 枚入っておりまして、資料1が開催要綱、資料2が構成員の名簿、資料3が論点整理で、 この資料1、2、3は前回と同様の資料でございます。資料4が、「第7回検討会の検討 課題に関する参考資料」ということで用意しているものでございます。  落丁等がございましたら、御指摘いただければお届けいたしますのでお願いいたしま す。 ○ 高久座長  それでは、まず本日の議題「検討課題」ということで、今回は論点8に関連して、前 回に引き続きまして「コンパッショネート・ユース」について、さらに論点5に関連し て「医薬品の適正使用」について、それぞれ御議論をお願いしたいと思います。まずは 「コンパッショネート・ユース」について、事務局の方から説明よろしくお願いします。 ○ 事務局  それでは説明いたします。資料4の5ページ目をあけていただければと思います。「前 回(第6回)検討会における主な議論」といたしまして5つまとめてございます。1つ 目が、まずはCU(コンパッショネート・ユース)制度を我が国でも導入すべきである ということでございまして、その際に、薬事法において未承認薬についても必要な規制 を行うべきではないかという御意見がございました。2つ目でございますが、治験を実 施して国が承認を行うという原則は堅持するということですが、その上で日本では開発 が進まない国内未承認薬については、CU制度を活用するということ。さらに、それを 最終的に承認に結びつけるような制度設計ができないかという御意見がございました。 3つ目でございますが、個人輸入の問題が議論されまして、個人輸入に関しては品質が よくないものが輸入されたり、もしくは安易に使用されることにより、健康被害の発生 が危惧されるということで、特に医師以外の個人輸入については、保健衛生上の観点か ら一定の制限を設けるべきではないかという御意見がございました。4つ目でございま すが、CU制度を導入する場合につきましては、先進国で承認されている、または治験 の後期のものを対象とするなど、最低限の品質の確保を図るべきではないかという御意 見がございました。最後の5つ目でございますが、CU制度により未承認薬の提供をす る場合、国、製薬企業、医師など関係者の役割分担を整理する必要があるのではないか ということでございました。  1枚おめくりいただきまして、6ページから本日の検討事項とさせていただいており ますが、大きく分けまして、1に「CU制度の基本的な考え方」ということでまとめさ せていただいております。もう1ページおめくりいただきますと、2に「国、製薬企業、 医師の役割分担」ということで、1と2と大きく2つに分けまして議論させていただけ ればと思います。  1でございますが、基本的な制度の枠組みといたしまして、対象となる医薬品の範囲 と、制度の対象者、申請者をまとめたものでございます。まず、前提といたしまして、 「考慮すべき事項」と書かせていただいておりますが、国内で必要な治験を行った上で、 国が承認するとの原則に影響を及ぼさないこと。もう一つは、一定の品質等が確保でき る範囲であること。このことを踏まえまして、まず(1)といたしましてCU制度の対 象とすべき未承認薬の範囲について考えてみますと、例えば、重篤な疾病を対象とする もので他に代替治療法がない医薬品、かつ、国内で治験実施中または欧米で承認済みの 医薬品が考えられるのではないかということでございます。下に四角で囲ってございま して矢印が2本ございますが、国内で治験実施中ということであると、治験のどの段階 のものを対象とすべきかという論点。もう一つは、欧米で治験中のものをどう扱うかと いうこと。その場合、将来的な国内承認申請を前提とすべきかどうかという論点を考え させていただいております。  (2)といたしまして、CU制度の対象者でございますが、例えば国内製造販売業者、 医師が考えられるが、このほかにどのような者が適当かということを論点とさせていた だいております。  おめくりいただきまして7ページでございます。「国、製薬企業、医師の役割分担」と いたしまして、まず「考慮すべき事項」でございますが、通常の医薬品のような国によ る承認はし得ないということ、一定の品質等が確保されること、という2点がございま す。  これを踏まえますと、(1)国の役割といたしましては、「国による承認はし得ないこ と」からすると、副作用被害救済制度の対象にはなり得ない。ただ、そのような状況の 中で、国が行い得ることは何か。例えば以下のような仕組みは必要かということで、(1) 〜(3)まで挙げさせていただいております。(1)実際の製造、輸入、販売、使用に当たり、 当該未承認薬がCU制度の対象であることの確認、(2)諸外国の規制当局が行う当該未承 認薬に対する公衆衛生上の措置に関する情報収集、(3)上記(2)及び当該未承認薬を取り扱 う製薬企業、医師からの副作用に関する報告を受け、必要に応じ使用中止等の勧告を実 施すること、その他必要なことはないかということでございます。  (2)製薬企業の役割でございますが、CU制度を活用して未承認薬を提供する製薬 企業が行い得ることは何か。例えばということで(1)〜(5)までございまして、(1)未承認薬 を提供する医療機関、医師、患者の特定、(2)医療機関または医師との必要な取り決め、 (3)未承認薬の製造、輸入、販売等、またはその中止に当たり、行政への必要な手続、(4) 提供する未承認薬の品質確保、(5)提供した未承認薬によると疑われる副作用の発生を知 った場合の行政への報告でございます。  もう1枚おめくりいただきまして、(3)医師の役割でございますが、まずCU制度を 活用して未承認薬を輸入、使用する医師が行い得ることは何かということで、(1)〜(4)ま で挙げさせていただいております。(1)患者の特定、(2)製薬企業との必要な取り決め、(3) インフォームドコンセントの徹底及び必要な患者の保護、(4)提供した未承認薬によると 疑われる副作用の発生を知った場合の行政への報告でございます。「医師による単独での 輸入、使用等を認める場合」ということで、先ほどの(2)の製薬企業を介さないで医 師による場合ということでございますが、その場合は(5)未承認薬を使用する医療機関、 医師、患者の特定、(6)提供する未承認薬の品質確保(この際、薬剤師が関与すべきか)、 (7)未承認薬の製造、輸入、販売等、またはその中止に当たり、行政への必要な手続の実 施でございます。  9ページ、10ページにつきましては、前回もつけさせていただいておりまして、欧州 とアメリカのCU制度についての参考資料でございます。  以上でございます。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。コンパッショネート・ユースについて主な議論とい うことで、5〜8ページまで説明がありましたが、今の事務局の説明につきまして何か 御質問、御意見はおありでしょうか。これは企業の立場と医師の立場があると思います が、企業の方としては青木委員、何かありますか。 ○ 青木構成員  責任の所在でありますが、これは未承認薬の使用ということでございますので、意思 決定はすべて医師の責任において行われると我々は考えています。企業の責任で行うこ とではないと考えています。  それからもう一つ、CUの対象の薬剤でありますが、我々の方の内部のディスカッシ ョンの中では、海外で承認とか後期の治験とか十分なデータがある場合は、国内で初期 の治験が行われていること。それで、海外で全くデータがない場合には、少なくともIII 相の試験まで行っていないと、我々としては安全性、品質に対して十分な責任を果たす ことができないと。そのくらいのフェイズというのは考えておいた方がいいのではない かなということであります。 ○ 高久座長  国内で開発した薬でフェイズIIIが終わって、申請をして、それが実際に許可がおりる までの間というのは、有効だった患者さんには使わざるを得ないですね。 ○ 青木構成員  はい。今提供はしております。 ○ 高久座長  していますね。これもやはりコンパッショネート・ユースですね。 ○ 青木構成員  これは継続投与と言っているのですが、法的にはどういう位置づけになるのでしょう か。 ○ 事務局  法的と申しますか、実際に提供していただいているということでございまして、コン パッショネート・ユースの一つの枠の中に入るのかなと思っております。 ○ 高久座長  枠に入りますね。それは今までもかなり行われてきたと思いますが、特に難しいのが、 欧米で有効な事が証明されていて日本では使われていないものが、今までも随分あった と思います。私が知っている範囲では、multiple myelomaに対するサリドマイドが一 番いい例だと思いますが、池田先生、その御経験から御意見はいかがですか。 ○ 池田構成員  確かに未承認薬というもので研究をする、あるいは試験をするということになると、 医師の責任においてやるわけですが、これは一つだけ確認したいのですけれども、適応 外のものはここには含まれないということでよろしいですよね。承認をされているけれ ども、使い方についてまだ十分にエビデンスがないということで、抗がん剤の併用療法 であるとかいろいろ適応外で試験をすることもあると思いますが、それはここの議論に は含めないという、そういう考え方でよろしいですよね。 ○ 中垣審査管理課長  そのとおりだと考えております。すなわち、もう物自体が手に入らないというような 状況を考えております。 ○ 高久座長  ですから、承認薬の適応外使用は、医師主導の治験という形でやらざるを得なかった。 これはコンパッショネート・ユースではないですね。外国で有効性が報告されていて、 日本でまだ治験も始まっていないというものが、問題になるのだと思います。 ○ 池田構成員  そうですね。サリドマイドの場合には、これは前回の議論でも出ましたが、要するに 薬剤の品質管理というものがどういうふうに保証されるかという問題と、それからやは り臨床試験としてやる場合の、その臨床試験のクオリティーの問題がございまして、や はり治験と同じような形でそのクオリティーが保証されて、更に情報がオープンになっ て、被験者の方、あるいは患者さんのためにもちろんやるわけですが、患者さんに対す る十分な配慮というものがなされているということ、そのあたりを検証できるような仕 組みをつくっていかないと、なかなかやりづらいだろうと思います。 ○ 高久座長  そうですね。国がそういう仕組みをつくらないとやれないでしょうね。どうですか。 ○ 青木構成員  品質の保証ですが、これは企業が申請の意思を持って開発作業にかかっていないと、 そういった品質を保証するようなものをつくることはちょっと難しいと思います。です から、海外で許可になって、国内で許可になっていないけれども、少なくとも開発の作 業には入っているというものですと、それはもうもちろん自信を持った開発品を提供で きますが、全然そういうことのない製品を提供しろと言われても、これは非常に難しゅ うございます。 ○ 高久座長   そうですね。ほかにどなたか。どうぞ。 ○ 大澤構成員  医師の役割ということを考えたときに、私自身がコンパッショネート・ユースで医師 の個人輸入という形で患者さんにお薬を使った経験からしますと、やはりその場合には、 所属施設などの倫理委員会にかけて審議をしてもらって許可をもらう。その倫理委員会 がなかなか開かれなかったりすると、その分遅れるということはあるのですが、それが 1点です。もう一つは、学会などであらかじめ論文などでその効果が明らかであって、 みんながこれは早く使えるようになるといいと思っていれば、学会としてガイドライン を少しつくっておいて、それをもとにするというようなことも一つではないかと思いま す。 ○ 高久座長  そうですね。サリドマイドのときは血液学会が中心となって動きましたね。他にどな たか。どうぞ。 ○ 望月構成員  私も正しい使い方ですとか、安全をどう担保する使い方が必要なのかというような情 報が、先ほどの青木委員のお話で、海外で承認がされてもう販売されているものでした ら、それなりの情報が入手できると思いますが、まだ海外でも開発途上ですとそれが論 文として公表されていないこともあって、この場合にその正しい使い方をどうするかと いう情報をどういう形で入手されるのかが、今この整理した文章の中では見えてこない のですけれども、そのあたりはどなたに御質問していいのかわからないのですが。 ○ 青木構成員  我々が考えていましたのは、フェイズIIIをやっていることということで、そうなりま すとフェイズIIでの安全性と有効性は一応出ておりますので。 ○ 望月構成員  それは公表されているのでしょうか。 ○ 青木構成員  いや、公表はまだその段階ではしていないと思います。しかしながら、必要であれば その情報をお伝えすることはできないわけではありません。 ○ 望月構成員  そうですか。そうすると、製薬企業の役割というのが7ページのところに書いてある のですが、この中の(2)で、医療機関または医師との必要な取り決めの中に、適切な情報 を提供するというようなことを入れる。あるいは、先ほどお話にあった、倫理委員会を 通す等の取り決めもこの中で行うという形ですね。 ○ 青木構成員  はい。その中で取り決めるにしても、我々として提供できるデータというと、フェイ ズIIIに入らなければ、海外のデータがない場合には十分なデータは提供できないと考え ています。 ○ 望月構成員  そうするとフェイズはIIIということで、でも情報はIIIまで行っていれば提供されると いう。 ○ 青木構成員  ある程度の安全性と有効性の情報はあるということです。それから品質については、 輸入は別として国内の会社が提供するとすれば、少なくとも申請の意思を持って開発を やっていない限り、きちんとした品質を保証することはできないと考えております。 ○ 高久座長  この7ページの製薬企業の役割でも、製薬企業が将来日本で開発する意欲がないと、 ただむやみにサービスというわけにはいかないでしょうね。 ○ 青木構成員  サービスというと、どこまでの品質を保証するのか、その保証に対しての責任はどう かという問題もありますし、海外の製品ですとやたらとやりますよといったって、いろ いろな権利の問題もありますし、手を出すわけにもいきません。ですから、この辺のと ころはしっかりしておかないと、責任の所在が不明確になると思います。 ○ 高久座長  そうですね。ほかにどなたかいかがですか。どうぞ、池田先生。 ○ 池田構成員  このコンパッショネート・ユースの制度だとすると、これは当然のことながら承認に 結びつけていくということが前提になると思います。そのときに、医師の責任において 進めるわけですが、一つだけ費用負担をどのようにしていくのかという問題も、恐らく 避けて通れないのではないかなと思います。患者さんにどれだけの負担を強いるのか。 あるいは国は行政の指導で、こういう研究なり試験が進めば、非常に国にとってもメリ ットがあると。同時に企業にとってもやはりメリットがあると。しかし患者さんにとっ て一番メリットがあるような方向に進まなければいけないということを考えた場合に、 どのような費用負担を考えていったらいいのかということは、突っ込んで議論した方が いいのかなと思うのですが、いかがでしょうか。 ○ 高久座長  そうですね。患者さんが個人輸入して医師が使うということは許されないのですね。 他の診療を保険でカバーすると混合診療になるわけですか。 ○ 中垣審査管理課長  今座長がおっしゃったような、医療保険の問題とのジョイントと申しますか、そこの 議論をし始めるとなかなか難しいですし、この場でどこまで有意義な議論ができるのか なというふうに考えておりますが、その前の段階として、衛生規制としてどうあるべき だというところをまず固めていただく。その上でもちろん費用負担。現実の社会はやは り今御指摘のあった費用負担の問題は避けて通れませんから、そこは意見を言っていた だくのは一向に構わないと思いますし、また宿題としてお預けいただくのも構わないと 考えているところでございます。 ○ 高久座長  わかりました。宿題になるそうですが。 ○ 池田構成員  一つだけ言わせていただければ、こういうのは国にとっても企業にとっても患者さん にとっても、皆さんがある程度それなりに利益を得られるという格好で恐らく進むもの ではないかなと思っていまして、やはりそれを考えながら負担を考えていった方がいい のかなと思うのですが、いかがでしょうか。 ○ 青木構成員  ちょっとよろしいですか。私どもも今先生に言っていただいたようにありがたいので すが、やはり継続投与で治験が終わってから投与する場合も、かなり長い間大勢の患者 さんに投与することもありますので費用はばかになりません。したがって、せめて原価 だけでも持っていただけるとありがたいなという声は、開発の方から非常に頻繁に聞か れます。 ○ 高久座長  わかりました。ほかにどなたか。5ページの一番上に書いている、CU制度を我が国 でも導入すべきであるということには、皆さん御異論はないと思います。しかし導入す る場合でも、未承認薬については国として必要な規制を当然行うべきであるということ には御異論ないと思います。それから、治験を実施して国が承認する、これがルールで すが、オーファンドラッグなどのように企業が治験を行わないという場合に、このコン パッショネート・ユース制度を活用して、最終的に承認に結びつけるような制度設計と いうことが当然考えられると思います。ただ、個人輸入の場合に、この3番目にありま すように、品質が当然問題になると思いますし、個人輸入については一定の制限を設け るべきではないか。そういうことが5ページに、導入する場合の条件についていろいろ なことが書いてありますが、最後にCU制度によって未承認薬の提供をする場合に、国 と製薬企業と医師などの関係者の役割分担をどうするかということで、7〜8ページに いろいろと書いているのだと思います。特に国と企業と医師の役割という7〜8ページ について、どなたか御意見はおありでしょうか。はい、どうぞ。 ○ 佐藤構成員  ちょっとその前にですが、どのような医薬品をコンパッショネート・ユースの対象と すべきかということに関して、現状の個人輸入でどんな薬が入ってきているのか。例え ば薬監証明の統計などから調べてみると、恐らくこんな薬が将来コンパッショネート・ ユースの対象になり得るのではないかというのがわかるのかなと思いますが、何かその ようなデータというのはありますでしょうか。 ○ 大西監視指導室長  監視指導・麻薬対策課の監視指導室長の大西でございます。前回の資料で医師の個人 輸入の件数が約17,000件ということを御報告させていただいておりますが、平成17年 のデータでございました。それをもう少し大くくりで御報告させていただきますと、約 12,100件が医薬品でございまして、その中で治療用途は、先ほどお挙げいただきました サリドマイドですとか、あと抗がん剤でございますベバシズマブ、オリスタットなどで およそ4,800件、大きく言うと5,000件ぐらいでございます。そのほかは自由診療の世 界になりますが、いわゆる美容整形用の医薬品が入ってきておりまして、これは本日の 議論からいきますとスコープの範囲外かと思いますが、件数でいきますと相当ございま して、6,500件程度ございます。そのほかは、歯科用の医薬品と動物用の医薬品がそれ ぞれ大きく500件、300件というふうに入ってきております。そのほかは医療機器など でございます。そういう状況になっております。 ○ 高久座長  これは全部医師の個人輸入ですか。 ○ 大西監視指導室長  さようでございます。 ○ 高久座長  患者さんの個人輸入というのはないのですね。 ○ 大西監視指導室長  患者さんの個人輸入につきましては、前回も監視指導・麻薬対策課長からあると御説 明差し上げましたが、薬監証明が必要なものは一定の数量以上のものということで、そ の薬監証明を発給させてやっている件数が800件程度でございますので、薬監証明の大 部分は医師の個人輸入、医薬品ということで御理解いただいて差し支えないと思います。 ○ 高久座長  そういうことでよろしいですか。 ○ 佐藤構成員  今のをお聞きしますと、結局医師が個人輸入しているもののうち、恐らくコンパッシ ョネート・ユースの対象になりそうなのは数種類の薬剤にとどまるというように、大ざ っぱに理解してよろしいのでしょうか。 ○ 大西監視指導室長  申しわけございません。先ほどの治療用途4,800件のさらに細かい内訳、網羅的な表 は今手元にちょっとございませんで、件数の大きいものから申し上げますと、先ほど申 し上げました3種類が今手元にございまして、そのほかにも医薬品としてはいろいろな ものが入ってきていると思います。 ○ 高久座長  ですから、コンパッショネート・ユースはそれほど多くないのでしょうね。 ○ 大西監視指導室長  済みません。もう少し申し上げますと、やはり抗がん剤が多ございます。上から申し 上げますと、サリドマイド。ベバシズマブ、これが直腸がんの薬でございます。オリス タットは抗肥満薬でございます。その次に、オキサリプラチンが平成17年に承認にな るまで大分入っておりました。さらにボルテゾミブ、エルロチニブ、レトロゾール、い ずれもがんの薬でございます。テモゾロミド、セツキシマブ。シロリムス、これは腎移 植後の免疫抑制剤でございます。上位10件でこれぐらいになってまいります。その下 も、セレコキシブ、フルオレセイン、ストレプトゾシン、デフィブロタイドというよう な形で入ってきております。 ○ 高久座長  そうですか。ストレプトゾトシンというのは。 ○ 大西監視指導室長  膵島細胞がんの薬でございます。 ○ 高久座長  リツキシマブはもう承認されているのではなかったですか。別なユースですね。 ○ 中垣審査管理課長  平成17年度の統計でございますから、そういう意味で申し上げますと、その後に承 認になったものももちろん入っています。 ○ 高久座長  そうですね。大腸がんの2番目の薬もたしか承認になりましたね。今挙げられたもの を見ますと、やはり医師の個人輸入の中で、ある程度の量のものはその後承認になって きていますね。ですから、その間のコンパッショネート・ユースということになるので しょうね。わかりました。森田委員、どうぞ。 ○ 森田構成員  副作用が発生したときには国に報告するとか、それで報告を書いてございますが、そ ういうような状況が起きたときには、救済制度で現在あるような対象にはしにくいのか なと思いつつも、どんな考え方を持ったらいいのでしょうか。 ○ 中垣審査管理課長  救済制度そのものが、今国内で製造、販売された一定額を拠出していただいて、それ を財源にして運用をしていっているという実態で、金額の面からはそういう問題が一つ あるのだろうと思います。2番目の問題としては、あくまでまだ承認するようなレベル の品質、有効性、安全性が担保されていないと。この状態でやむを得ず患者さんの状況 を見ながら使っていくということから考えますと、直接に何らかの社会的責任をもとに した補償をするようなものでもないのではないかという、制度論的な問題があるのだろ うと思います。また3番目には、例えばこういった救済制度がある国で、どのような形 で取り扱っているのか。例えばドイツでどうなっているのか。今ちょっとそこも調べて いるところでございます。恐縮でございます。 ○ 高久座長  そうですね。今のところ7ページには、救済制度の対象にはなり得ないのではないか と書いてありますね。どうぞ。 ○ 池田構成員  確かに現時点での副作用被害救済制度の対象にはならないということですが、御存じ のようにいろいろな臨床試験の補償というのもまたなかなか難しいということもあって、 やはり患者さんが仮にこういう薬の試験を受けたとき、患者さん保護ということを考え たときに、どういうような仕組みができるかということについても、突っ込んで議論を しておかないといけないのかなという気がするのですが。現在ある副作用被害救済制度 でもだめだ、補償というのもなかなか難しいということになると、何かやはり新しい仕 組みづくりというのが必要なのでしょうか。難しいとは思いますが、ただそれは避けて 通れないのかなと私は思いますし、やはりそれがないと患者さんの理解が得られにくい なという気がするのですが。 ○ 中垣審査管理課長  今御指摘いただいた点はまだまだ深く検討が必要だと思いますが、今の段階で申し上 げますと、確かに治験においてはGCPで補償という規定がございます。現実問題とし ては、治験を依頼する各製薬企業は民間保険に加入することによって、その補償を担保 しているのだろうと考えております。この根っこにある考え方というのは、治験という のは製薬企業が承認申請するという目的のためにデータを集めるということがあって、 それに御協力いただいている患者さんという性格づけなのだろうと思うわけでございま す。  一方において、今議論していただいているコンパッショネート・ユースというのは、 欧米においてもそうでございますが、日本においてどのような方を取り込むかというよ うな議論が、まだ詰めなければいけない部分があると思いますが、少なくとも欧米でや られておりますのは、代替治療がなくて、もうそれしかほかに方法がないだろうという ような患者さんの治療目的での使用ということで、製薬企業の承認申請のためのデータ 収集の試験というのと、かなり性格が違うのだろう。そこに基づいて、患者さんの保護 というのも、当然一定の限界が出てくるのだろうと考えておるわけでございますが、ま だまだその点は詰めた議論をしてみたいと思います。 ○ 高久座長  たしか医師主導の治験も補償がないのですね。 ○ 中垣審査管理課長  補償というのは、今製薬企業が一般に民間の保険に加入しているような、先ほど御議 論のあった副作用被害救済基金レベルの対応をすることだけが補償ではないのだろうと 思うわけでございます。例えば副作用が起きたときに、当然のことながらその副作用を できるだけ治癒させるような医療行為をやる。そこの費用負担というのも当然補償の一 つなのだろうと思うわけでございますが、そういう意味で申し上げますと、医師主導治 験の中においても何らかの補償と申しますか、患者の保護というのが行われているのが 実態だろうと考えております。 ○ 高久座長  どうぞ、青木委員。 ○ 青木構成員  このCU制度というのは、許可をとる意思を持って開発をしているけれども、まだ許 可がとれていないという段階における緊急のユースであって、これは定常的なユース、 許可がとれていないものをどこかから持ってきて定常的に使う、そういうこととは全く 違います。ですから、時間的に非常に限定された緊急的な使い方というふうに、我々は 理解しております。これがもし定常的にお医者さんがどこかから薬になっていないもの を持ってきて使うということになると、これはまた補償の方向も全然変わってくると思 いますが、時間軸から考えると、補償ということを特に考えるほど長い間使われては非 常に困るので、その前に許可をとらなければいけないと思うのですが。 ○ 高久座長  わかりました。しかし、実際にはモノクローナル抗体なども、日本で使われている種 類とアメリカとでは10倍ぐらい違いますよね。だから、かなり差が出てくることは事 実だと思いますが。ほかにどなたか。はい、どうぞ、佐藤委員。 ○ 佐藤構成員  7ページに「製造、輸入、販売、使用」と。「販売」という言葉が何度か出てくるので すが、何かちょっと気になります。今の青木委員の話にもありますが、日本で治験中の ものは製薬企業がちゃんといるので恐らく問題ないと思いますが、海外で承認されてい るけれども日本では全く治験がされていない場合に、それを販売するというのは、まさ に開発する意思がないのに恒常的にコンパッショネート・ユースという制度のもとに販 売が続けられると、むしろ治験や承認の妨げにならないかというのがちょっと気になる のですが。今現状でいうと、医師個人輸入をしているような場合になるのでしょうかね。 そのあたりはいかがでしょうか。 ○ 事務局  ここで言葉遣いとして「販売」という言葉を使っておりますが、ちょっと事務局の方 で資料を整理する際に、薬事法の体系みたいなものを念頭に置いてつくっておりました ので、薬事法でいうところの「販売」でございまして、製造販売業者から医師、医療機 関等に提供することを「販売」と言っているということで、言葉遣いの問題かなと思い ます。 ○ 高久座長  この意味はアメリカの企業から医師が買うときの販売ということですね。そういうこ とですね。 ○ 事務局  そうですね。 ○ 高久座長  そういうことだそうです。 ○ 中垣審査管理課長  私が答えられるかどうか、佐藤委員の語義も正確に捉えているかどうか、まだ若干わ からないところがあるわけでございますが、アメリカの制度においては、有償あるいは 無償、どちらも認められておるというふうに聞いております。我が国の治験というのも、 実は有償でも無償でもいいということになっております。実態的に申し上げますと、 99.9%無償で行われていると考えております。  ただ一方におきましては、アメリカのコンパッショネート・ユースというのは、かな り治験の枠組みの中でやっておるということが一つの特徴だろうと思いますが、それ以 外に、ヒューマニタリアン・ユース・ディバイスという、これは医療機器の方ですが、 ヒューマニタリアン・ユースというのが認められております。この規則の中で読んだの は、利益を上げてはならないというような規定がされておったかと思います。恐らく佐 藤委員がおっしゃっているのは、販売という行為でここで利益――利益というのも、私 は経済の専門家ではございませんからよくわからないところがあるわけでございますが、 いろいろな計算の仕方、あるいは考え方があるんだろうと思いますが、単純なことを言 うと、これでもうかるような仕組みではいけないというような御趣旨なのかなと。それ を一つの御意見として、我々としても留意しなければいけないのかなと考えているとこ ろでございます。 ○ 高久座長  よろしいですか。この委員会として、CU制度を我が国にも導入すべきであるという ことでよろしいですね。その具体的なストラテジーといいますか、いろいろなことにつ いては、事務的にもいろいろ検討していただくとしても、今まで我々が一番よく使って いたのは、恐らく治験が終わってから承認、それか実際に販売されるまでの期間と、そ れから外国で明らかに有用で、しかも日本で治験が行われていない薬ということでやっ てきたのだと思いますが、それを日本でも一つの制度として導入するということについ て、この委員会としては報告といいますか、リコメンドしたいと考えています。よろし いでしょうか。  それでは、次の「医薬品の適正使用について」、これも事務局の方から説明していただ けますか。 ○ 事務局  それでは、引き続きましてお手元の資料12ページに基づきまして、医薬品の適正使 用につきまして御説明申し上げたいと思います。  まず、医療現場における適正使用の実践というところに至りますまでに、治験、ある いは承認申請、承認審査というステップを経て承認という段階に至ります。まず「警告」 など添付文書に使用上の注意を明記することによる注意喚起を行ったり、製造販売業者 に対する承認条件の付与、例えばボツリヌス毒素につきまして、当該医薬品の使用に関 する講習を受講した医師のみへ販売するようにと、こういったようなことを通じまして、 医療現場における適正使用の実践というようなことをお願いしております。あるいは、 承認後におきましては、市販後の安全対策としまして、副作用報告の評価などに基づく 情報提供として、使用上の注意の改訂であるとか、緊急安全性情報といったようなもの が情報提供されることにより、適正使用に結びつくといったような現状がございます。  1ページおめくりいただきまして13ページ目でございますが、この医薬品の適正使 用に関する国・製薬企業・医療現場の関係につきまして、整理させていただいておりま す。一番中心となりますのは、一番上にございます製造販売業者から医療現場の方に向 かう黒い矢印だと考えますが、添付文書などによる医薬品の情報提供であるとか、緊急 安全性情報の発出といったようなこともあろうかと思います。このほかに回収、販売の 停止であるとか、製造販売業者におきましては市販直後調査や使用成績調査等の実施を 通じまして、必要な情報が提供されるといったようなことがあろうかと思います。  この製造販売業者の情報提供に対しまして、厚生労働省からは、例えばその添付文書 の改訂や緊急安全性情報を発出するように指示を行ったり、あるいは法律上、販売の一 時停止、廃棄、回収の命令等を行うといったようなこともあろうかと思います。このほ か厚生労働省から直接医療現場へのアプローチとして、製造販売業者への添付文書改訂 につきまして、月に1回、医薬品・医療機器等安全性情報という形でお知らせをしてお りますし、そのほか厚生労働省緊急ファクス情報といったような枠組みもあろうかと思 います。  このような医薬品の適正使用に関し、製造販売業者と医療現場の関係については、製 造販売業者は、その製造物である医薬品の安全性に対して、添付文書等により必要な情 報を提供することを通じて、医薬品の適正使用に関する一義的な責務を負っていると考 えられます。その一方、医療現場におきましては、患者さんの安全の確保のために、添 付文書等を含め、医師が置かれた状況のもとで可能な限りの最新情報を収集し、治療を 行うことが求められているというような現状でございます。  このように添付文書の位置づけというのは非常に重要な情報提供のツールと考えられ るわけですが、おめくりいただきまして14ページ目に、この添付文書の位置づけにつ いて整理させていただいております。  薬事法の第52条におきまして、用法、用量その他使用及び取り扱い上の必要な注意 を医薬品に添付するようにというような規定がございます。この使用上の注意に関しま して、右側の方でございますが、平成9年の局長通知におきまして、医療用医薬品の使 用上の注意記載項目及び記載要領というものが出されております。基本的には、内容的 に重要な事項を前の方に配列するということで、「警告」「禁忌」「慎重投与」「重要な基 本的注意」「相互作用」などに関しまして記載をしていくといったような記載要領がござ います。  おめくりいただきまして15ページ目でございますが、参考といたしまして添付文書 の意義などにつきまして、これまでの最高裁の判決などを整理させていただいておりま す。  まず、平成8年の最高裁判決の中で添付文書のことに言及がなされておりますが、こ の医薬品の添付文書の記載事項というのは、医薬品の投与を受ける患者さんの安全を確 保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するも のであるということが明記されておりますし、仮にその使用上の注意事項に従わず、そ れによって医療事故が発生した場合には、特段の合理的理由がない限り、当該医師の過 失が推定されるといったような判断が示されております。  また、平成14年の最高裁判決の中では、医師というものは可能な限りの最新情報を 収集する義務があるというべきであるといったようなことで、添付文書もその中の最新 情報の重要な情報であるということが位置づけられているとともに、副作用を有するこ とやその症状をきちんと認識しなければならない。その発生を予見、回避すべき義務を 負っているといったような判断がなされております。  このほか、薬事法第77条の3の第3項におきまして、薬局開設者、病院もしくは診 療所の開設者または医師、歯科医師、薬剤師等の医薬関係者におきましては、医薬品の 適正使用を確保するために、相互の密接な連携のもとに、第1項というのは製造販売業 者、製薬企業でございますが、製薬企業より提供される情報の活用その他必要な情報の 収集、検討及び利用を行うことに努めなければならない、といったような規定がござい ます。  おめくりいただきまして16ページ目でございますが、この添付文書の中でも特に重 要な情報として位置づけられる警告欄につきまして、私ども事務局の方で少し精査させ ていただいております。医療用医薬品約2,000成分のうち、その添付文書に警告欄が設 けられているものは、243成分ございます。これらの警告欄に記載されている事項を精 査いたしますと、右側のところに記載もございますが、大きく3つの分類があろうかと 思います。1.使用可能な医療機関や医師の資質を限定するといったような警告事項、 2.患者選択の厳格化を求めるもの、3.医療関係者の行為を限定・規定するもの、こ ういったような警告を、現在添付文書を通じて医療現場の方に提供させていただいてい るような状況でございます。  おめくりいただきまして17ページ目でございますが、この警告欄の中でも、特にこ れを遵守しないと患者の生命に重大な影響を与え得ると考えられる警告事項というもの もあろうかと思います。例えば、使用可能な医療機関や医師の資質を限定するものとい うことで、ボツリヌス毒素につきましては、講習をきちんと受けた知識・経験のあるお 医者さんに使っていただくことであるとか、必ず医療施設で使用して、在宅療法では使 用しないといったような警告事項があります。あるいは患者選択の厳格化を求めるとい う観点からいたしますと、過去に重篤な副作用を起こした患者さんには再投与をしない といったような、患者さんへの投与を厳格に規定するものがあったり、妊婦さんには投 与しないといったような規定の医薬品もあります。また、3番目の医療関係者の行為を 限定・規定するものといたしましては、いろいろな規定・限定ぶりがあろうかと思いま すが、一つの例といたしまして、塩酸チクロピジン製剤というものがあります。これに つきましては抗血小板剤というような医薬品でございますが、無顆粒球症であるとか重 篤な肝障害が重大な副作用として、投与開始後2カ月以内に起こるということが知られ ておる薬剤でございます。これにつきましては、警告欄におきまして、投与開始後2カ 月間は原則2週間に1回血液検査を実施して、副作用の発現が認められたときには直ち に投与を中止するといったような記載もありまして、この適正使用の徹底のために、過 去に2回緊急安全性情報を発出したという経緯もございます。  おめくりいただきまして18ページ目でございますが、ここではサリドマイド製剤に つきまして整理させていただいております。御存じのとおりこの製剤につきましては、 サリドマイドの催奇形性による重大な副作用被害が発生しまして、過去に製造中止・回 収等が行われております。一方、1990年代後半より、サリドマイドの多発性骨髄腫等に 対する有効性が文献等で明らかになり、我が国においては、医師個人輸入によりサリド マイドが輸入され、使用されているという実態がございます。このような状況から2004 年12月に、「多発性骨髄腫に対するサリドマイドの適正使用ガイドライン」を、日本臨 床血液学会を中心として作成・公表していただきまして、このガイドラインにおきまし ては、使用施設・医師の限定、医療機関における管理の徹底、患者さんによる管理の徹 底などを主な項目として定めております。また、我が国におきましても昨年8月に、サ リドマイドの多発性骨髄腫を効能効果とします承認申請がなされておるといったような 状況でございます。  このような状況を考えますと、サリドマイドの使用・薬剤管理には、医療現場におい て厳密な対応が求められると考えられますが、このような医薬品の保管・使用・管理・ 廃棄等につきまして、いかに医療現場に情報提供し、その遵守を求めることができるか ということは、考えなければならない重要なことだと考えております。  おめくりいただきまして19ページ目でございますが、医薬品の適正使用を推進する ための課題としてまとめさせていただいております。課題の中でございますが、医薬品 を安全に供給するために、製薬企業に対して、添付文書等に必要事項を記載すること等 の義務が現在でも課されております。また、医療現場におきましては、添付文書等の必 要な情報を収集して、患者さんに対する最適な医療を選択するといったようなことが求 められていると考えられます。  その一方で、現在の添付文書をごらんいただきますと、その情報量は非常に莫大で、 その内容にメリハリをつけて記載されているとは言いがたい場面もあるのではないか。 また、医療現場で周知、活用されていると言えない場面もあるのではないか、といった ような懸念もあるわけでございます。  このようなことを考えまして、医薬品の使用上の注意のうち、厳守しないと患者さん の生命に重大な影響を与える事項については、もう少し添付文書にメリハリをつけると いったような考え方、あるいはその周知をもっと徹底するといったような考え方もあろ うかと思います。その際、現在の添付文書の記載ぶりを工夫するほか、医療関係者への 周知を図るためにどのような手段をとり得るのか、ということにつきまして御議論をお 願いしたく、資料の方を準備させていただいております。  20ページ目は参考でございまして、添付文書と製造物責任につきまして簡単にまとめ ております。  以上でございます。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。医薬品の適正使用ということですが、きょうは特に 添付文書の位置づけということに中心を置いて御議論を願いたいと思います。どなたか 御質問、御意見はおありでしょうか。どうぞ。 ○ 青木構成員  それでは、企業としましてですが、日本は市販後の適正使用ということに対しては、 世界でも非常に進んでいると我々は思っています。それで、この添付文書でありますが、 これもアメリカなどに比べると比較的簡潔に、しかも正確に書かれているケースが多く て信頼できると思います。ただし、添付文書をずっと見てみますと、中にはちょっとメ リハリ上問題があるようなこともあるので、それはさらにブラッシュアップする必要は あるかと思います。  それから、MRについては日常の情報提供もかなりしっかりやられておりますし、も う一つ、日薬連の会長が今いらっしゃっておられますが、日薬連には医薬品安全情報、 DSUという網羅的な伝達のシステムがありまして、これでかなりきちんと伝達してお りまして、そういった面ではかなり適正使用の情報の伝達はしっかり行われていると同 時に、市販後の調査につきましても、日本は世界の中でも一番きちんとやっていると考 えております。 ○ 高久座長  そうですね。アメリカは市販後調査をFDAが余りきちんとやっていなかった。今、 大分やられていますね。 ○ 青木構成員   ええ、これからやろうということで、むしろ日本の方を見ているという状況だろうと 思います。 ○ 高久座長  ただ、アメリカの場合、今度のGSKの糖尿病の薬で心疾患があった場合に、すぐブ ラックボックス警告をしている。正式の名前はブラックボックスではないのですね。 ○ 山田安全使用推進室長  Boxed Warningと言っています。 ○ 高久座長  普通のニュースだとブラックボックスと書いてあるけれども、そういうのを随時出し ている。日本もそういうシステムがあるんですかね。 ○ 青木構成員  日本は緊急安全性情報がありますよね。 ○ 山田安全使用推進室長  安全対策課でございますが、今おっしゃいました、FDAの添付文書の中でブラック ボックスワーニングと言われているものは、日本の添付文書ではいわゆる今御説明がご ざいました警告ということです。日本の添付文書では、警告については赤枠で表示をさ れることになっております。 ○ 高久座長  注意をしているのですね。新しいことがわかれば、随時添付文書を変えるわけですね。 その赤枠を。 ○ 山田安全使用推進室長  さようでございます。 ○ 高久座長   そうですね。ほかにどなたか。どうぞ、寺脇委員。 ○ 寺脇構成員  青木構成員がお見えですので、ちょうど我々が実際遭遇していることを構成員にお伝 えしておきたいなと思って、発言させてください。私も添付文書は医薬品の適正使用の ためにもバイブルだと思っております。それで、我々は添付文書が改訂になったときに、 先ほど発言がありましたとおり、こういう日薬の医薬品情報等を通しまして、特にDS Uのなぜ添付文書が改訂になったか、解説書を出しています。その解説書を出すときに、 なぜ添付文書が改訂になったか、細かいデータが欲しいのですが、時々メーカーさんに なぜという理由を書くために情報をくださいと言っても、ちょっと拒否されるメーカー がありまして、手元にどういうメーカーさんだというのは持っているんですけれども、 ここで公表するわけにはいきませんが、ぜひ我々の立場も理解していただきまして、我々 のサイドから細かい情報が欲しいといった場合には、ぜひ御協力のほどをお願いいたし ます。 ○ 青木構成員  わかりました。努力いたします。 ○ 高久座長  ほかにどなたか御質問は。どうぞ。 ○ 倉田構成員  私は専門家ではなくて一般の者なので、一般用医薬品の添付文書というのはよく見る のですが、ここ何年かの間に非常に変わりましてよくなったと思います。子供から高齢 の方まで見てもわかりやすい、とてもいいものになってきたように思っています。それ と比較して、この医療用医薬品の添付文書を拝見すると、この文言は法律用語のように 私には思えるのですが、この文言は変えてはいけないものなのでしょうか。それからし て私はよくわからないのですが、こういう文言で書かなければいけないことになってい るのですか。 ○ 中垣審査管理課長  その文言というのが、例えば専門用語をおっしゃっておられるのか。それとも、我々 役人が書くときには、公用語の書き方という一応のルールがございまして、そういうル ールに基づいて書いていく。恐らくは添付文書も、それに倣ったような書き方をしてい っているということがあるのだろうと思います。  一方、ここ2〜3年進めてきておりますのは、医療用医薬品についても特に外来の方々、 御自分で患者様がその添付文書の要点をおわかりいただきますように、患者用添付文書 をつくろうということで活動を始めさせていただいているところでございます。先ほど、 使用上の注意に警告があるものが数百に及ぶということを申し上げたわけでございます が、それらのものを最初にやろうということで、厚生労働省並びに日薬連、業界が一緒 になって、また何人かの先生方に御指導を賜りながら、患者の添付文書をつくってきて おります。それをまた医薬品機構のホームページに掲載して、インターネットを介して ではありますが、どなたでもアクセスできるようにしてきておるというのが現状だろう と思います。 ○ 倉田構成員  今おっしゃったのは患者向け医薬品ガイドというものだと思いますが、存じておりま す。私のような者がみても非常にわかりやすくまとめられていると思います。あれはど んどん数がふえていってますが、このガイドの作成が望まれる医薬品のリストもあって、 そのうちにタミフルも患者向けのガイドが出るのだろうなと。いつだろうなと思って期 待して待っているのですが。  医療用医薬品の添付文書ですが、その文言は別としても、読んでもらおうという意思 が余り感じられないように私には思うのです。もっと表現方法を、相手に読んでもらお うというふうに少し変えていった方がいいのではないでしょうか。どういうふうに変え ていったらいいかという具体的なものはわからないですが、これを読んでいて読み飛ば してしまったりしないでしょうか。忙しい現場の医療者の方たちが、ああ、また同じよ うなもの、というふうにして飛ばして見てしまわないだろうかと、忙しい中、苦労なさ るのではないかなと思ってこの文書を拝見しています。 ○ 高久座長  どうぞ。 ○ 望月構成員  確かに添付文書の記述の仕方はわかりづらいところもあるかなと思いますが、先ほど 青木委員がおっしゃっていたように、それなりにはよく考えられて、日本の添付文書と いうのは今できていると思っています。10年ほど前に添付文書の書き方について、ソリ ブジン事件がきっかけになって書き改められたときに、重要な事項ほど前の方に出しま しょうということで整理をされて、重要な項目は前の方に出てきているというふうにな っているのですが、例えば一つそれを例にとっても、そのことをおわかりいただいてい る医師、薬剤師がそれほど多くない場合もあるのではないかという意味では、まずは添 付文書にどのような項目があって、そこに何が書かれているのかということは、各大学 等で医師、薬剤師、看護師さん等、医薬品を扱う場合にきちんと教えておくことが必要 なのかなと思います。その上で、各項目の中は確かに文言がわかりづらい表現というの がありますので、それは今後検討課題の一つであるかなと思います。  もう一つよろしいでしょうか。先ほどのBoxed Warningの話も含めてですが、青木 委員もメリハリがというお話をされていましたけれども、余り極端にメリハリをつけて しまうと、またそこしか見ないという方に走ってしまう可能性もあるのですが、アメリ カの場合はWarningとBoxed Warningと2つあって、本当にもうこれはというときに Boxed Warningになるので、そこは多少日本と違う形の整理になっています。実は日本 の添付文書の警告というのは非常に幅があって、本当にBoxed Warningに近い警告か ら、ほとんど普通の禁忌や重要な基本的注意におろしてもいいような警告まで、ちょっ とそこがメリハリがないといえばないのかもしれませんが、そのあたりはもう少し、一 応添付文書というのは薬事分科会で、新薬として発売する段階では審議をしていること になっていますので、その段階でもきちんと整理をしていくべきだと考えています。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。確かに15ページの判決の例などが非常に参考にな るので、研修医のガイダンスのときにそれをよく教えておく必要がありますね。学生は なかなかそこまでいかなくて、学生は処方しませんが、研修医はやりますから、そうで すね。 ○ 池田構成員  よろしいでしょうか。添付文書に関しては、やはり新薬の承認のときには一番議論に なるところで、もちろん承認するかしないかのデータをきちんと評価するわけですが、 やはり添付文書がどう適切に書かれているかということに関しては、いつもかなり議論 があります。ですから、そういう面では工夫をされていると思いますが、ただ医療現場 では本当に情報量が年々多くなってきますので、医師の側からするとやはりそれを全部 カバーするためにどういう工夫をしたらいいかというのは、もう一つ考えなければいけ ないと思います。やはり医療現場への徹底ということになると、先ほど来私は非常に結 構だと思いますが、患者さんへの添付文書の内容をわかりやすく説明するということを もう少し考える必要があるのではないかと思います。今取り組んでいらして非常に効果 が出てきていると思いますが、患者さんは自分の飲んでいる薬に対して、インターネッ ト等を通じて、もうほとんどの患者さんが見るようになってきているということがあり ますので、その内容をやはりわかりやすく書くということ。そして、変に誤解を与えな いというようなことで議論を進めていくということが、これから非常に大事になってく るのではないかなと思います。 ○ 高久座長  そうですね。ほかにどなたか。どうぞ。 ○ 青木構成員  今いろいろ書き方の面でコメントをいただきましたが、ただ私はメリハリと言いまし たけれども、こういった赤の枠でくくった警告も、日本の場合は比較的サイエンティフ ィックにきちんと書けているなということを感じます。もちろん患者さんに伝えること も大切ですが、お医者様にできるだけ簡潔に適切に伝えようとすると、どうしても専門 用語を多用して簡潔に書いていくということはやむを得ない面もあるかなと。ですから 2つ、やはり患者さん向けと両方要るというのはあるかもしれません。  それから、アメリカの場合はblack boxed warningということでよく出ますけれども、 これは自分の会社の中で交渉した記憶からしますと、それが本当に適切にボックスとす る必要のあるような警告かということについては、随分異論がある場合がありまして、 時によるといちゃもんとしか考えられないようなことにボックスをつけたりされますの で、その面、日本の方がまだリーズナブルではないかと思っています。 ○ 高久座長  わかりました。どうぞ、望月委員。 ○ 望月構成員  もう一つ適正使用という意味では、添付文書をきちんと読んで理解をしていただいて、 それを活用していただくというのはとても重要なことだと思いますが、先ほど池田委員 からもお話がありましたように、余りにも情報量が多過ぎて、すべて把握してきちんと 実践に活用することはなかなか難しいと思いますので、そこはある意味ではチーム医療 の中で医薬品の専門家とうまく協力をし合う。例えば薬剤師と医師が協力し合う。ある いは、ITにうまく乗るような形で添付文書の情報を活用できるような、今もかなり活 用できる形にはなっているのですが、ちょっとまだ難しい部分もあるようなので、その あたりにうまく乗っかれるような形で提供していただくような仕組みも必要かなと思い ます。 ○ 高久座長  はい。ほかに。どうぞ、佐藤委員。 ○ 佐藤構成員  添付文書の今までのお話は本当におっしゃるとおりだと思いますが、それをきちんと 読んで守れば恐らく大丈夫なのですが、本当に読まれるのか。あるいは、それが実際に 医療の現場で守られるのかというと、なかなかそうでない事例がやはりこれまでもあっ たかと思います。例えば17ページのところに出ていますが、肝機能検査を定期的にや るだとか、あるいは分娩監視装置を使って十分に監視するとか、添付文書に書いてある にもかかわらず必ずしも守られない場合があって、問題が起こるということがしばしば あるわけです。  そのときに、19ページの下のところに論点として、添付文書の記載を工夫する以外に どんな手段がとり得るのかということですが、アメリカのFDAでリスクマネジメント に関するガイダンスをつくって出しています。言葉でいうとリスク・ミニマイゼーショ ン・アクションプラン、リスク最小化のための行動計画というのでしょうか。そういう ガイダンスが出ていまして、それを製薬企業の方で実は承認の申請のとき、あるいは実 際に承認されるまでの間に、リスクをいかに最小化するか。添付文書をこう書くという 以外に、医療関係者への周知をどういうふうにするのかということの計画を立てて、そ れをFDAに提出して、承認時までにそこをディスカッションして、じゃ、こういうふ うにやっていこうというような、こうやりなさいというガイダンスがありまして、それ によりますと、通常多くの薬は添付文書をきちんと書くだけでいいということがそのガ イダンスに書かれています。ただし、幾つかの薬はそれだけでは足りなくて、それだけ では足りない場合に何かプラスのことをしなければいけないのですが、プラスの何をす るかということを大きく3つのカテゴリーに分けています。  一つは、ターゲットを絞った教育と情報伝達です。添付文書というのはとにかく書か れるのですが、その薬を使うお医者さんがそれを本当にちゃんと読んでいるかどうか。 そこの保証が全然ないわけですよね。当然それは医師は読まなければいけないと言って しまえばそれまでですが。そこをまさに本当にその情報を使わなければいけない人たち にターゲットを絞って、いかに教育し情報を伝えていくか。当然製薬企業の方はMRさ んなどを通じてきめ細かく、日本では特にやっていらっしゃると思いますが、要するに もう少しそれをシステマチックにやることができないかということです。あるいは添付 文書のほかに、ただいま倉田委員も言われましたが、使用上の注意をコンパクトに絵入 りでまとめたようなガイドというんですかね、その使用のためのガイドとか、あるいは 絶対注意しなければいけないことを書いた下敷きをつくって、その下敷きを配って、い つもドクターの机の上に置いておいてもらうとか、いろいろな工夫をしているのです。 まだアメリカでもここ何年かの経験しかなくて、今経験を蓄積している段階ですが、そ ういうものがありますので、厚生労働省でもぜひ何かそういう日本版のガイダンスをつ くっていただけるといいのではないかと思います。  そこでもう一つ、教育と情報伝達だけでは足りない場合には、もう一段階上がありま して、リマインドのシステムというのをつくる。例えばステッカーを処方せんに張ると か。例えば肝機能検査を定期的にやるということですと、処方せんを切るときに、肝機 能検査をやってこれこれこういうふうに正常だったということを書き込んだステッカー を張って、薬局で薬剤師がそのステッカーが張ってあるかどうかをチェックして、肝機 能検査がやられていなければドクターに、「先生、検査をやっていませんよ」というよう なことをお伝えするとか、そういう定期的なリマインドのシステムをやることが時には 必要である、というようなことは書いてあります。  さらにそれでもだめな場合というのが実はサリドマイドのような場合で、一番厳しい のがアクセスの制限と適切な行動をリンクさせるということです。サリドマイドの場合 は、アメリカのS.T.E.P.S.という非常に厳格なシステムがありますが、そこでは医師が 処方するたびに中央のセンターに電話をかけて、これこれこういう患者さんにこれだけ サリドマイドを使います、妊娠検査の結果は陰性でした、ということを報告しないと、 医師はその処方せんを切ることができないのです。つまり必ず妊娠検査をして、結果が 陰性であることを確かめないと処方すらさせてもらえない。そういうリアルタイムの介 入のシステムがあるのです。それを実は製薬企業の中央のセンターが一元的に管理して います。  サリドマイドに関してもう一つ重要なのは、患者さん自身がきちんと避妊をするとい うことで、女性はもちろんですが、実はサリドマイドは男性の精液中にも存在して、精 子の中にもあるので、男性がサリドマイドを飲むときにも避妊が必要なのです。そのこ とをいかにサリドマイドを使う患者さん自身に直接教育し、それを守ってもらうかとい うことのために、実は同じ中央のセンターに患者さん自身も定期的に電話をかけて、避 妊をちゃんとやっているかということを報告しなければいけないのです。そうしないと その患者さんはサリドマイドを使わせてもらえないという、非常に厳しいシステムです。 ここまで厳格なシステムが必要なのは恐らくごくわずかな薬しかないということが、こ のFDAのガイダンスに書いてあるのですが、早々そんなにめったにはないと思います が、そんなようなことがずっと書かれていますので、このあたりも少し、では日本に当 てはめたときにどうなるのかというのを整理されてはいかがかなと思います。 ○ 高久座長  どうも。どうぞ。 ○ 中垣審査管理課長  今、佐藤委員から御紹介のあったFDAのリスク最小化計画というのは、確かに概念 的によく整理されているのだろうと私も思っております。ただ内容的には、例えば日本 においては市販直後6カ月間にわたっては、情報提供した医師、医療機関にしか販売を しないとか、さらには審査の過程においてどういう医師、あるいはどういう医療機関に 例えば緊急の対応がとれるとか、絞ろうとか、あるいはリマインドという方策において は、場合によっては患者手帳みたいなものを用意してもらおうとか、いろいろな政策を 打ち、またそれを審議していることも事実なのだろうと思います。要は、その体系化と いうか、打ち出し方というか、アピールの仕方というか、そこは抜けがないようにとい う意味でも、将来に向かって必要なのかなとは思っております。  また今回、医薬品医療機器総合機構の審査人員を、おおむね3年で倍増ということを 先日報告させていただいておりますが、その中におきましても、審査段階から市販後の 安全対策に向けた一貫した政策がとれるように、審査段階からチェックをしていこうと いうようなことも始めたいと考えておりまして、今の御指摘を踏まえながら我々として もより体系化を図りながら、また実質的にも、今申し上げましたような審査から市販後 に一貫した対策がとれるように努めていきたいと思います。 ○ 高久座長  どうも。ほかにどなたか。どうぞ。 ○ 松本(和)構成員  市販後調査も機構で最初から行うというお話ですが、この場合調査費というのは、今 のところ企業から直接依頼される先生のところに行くわけですが、これを一度そういう 第三者機関に入れて、そこから依頼するというのが一番わかりやすくなると思うのです が、その点に関してはいかがでしょうか。機構の方は人員が足りないとおっしゃってい たので、そこまで手が回らないのではないかと思っていたのですが、そこも一応考慮の 中に入れているとおっしゃっているのであれば、そういう調査費の面についても、その 辺皆さんが納得されるようなやり方をとられるようにお願いしたいと思うのですが、い かがでしょうか。 ○ 中垣審査管理課長  私の説明が舌足らずだったのだと反省をしております。機構でやっていこうとしてお りますのは、また機構からも御説明いただいたらありがたいのですが、審査をしていく 段階で、市販後の安全対策でこんなことを調べなければいかん、あるいはこういう点に 気をつけなければいかんというようなことを織り込みながら、市販後対策、あるいは市 販直後調査で何をやるのか、市販後の特別調査で何をやるのかというようなことを組み 立てていくという、いわゆる政策論でございます。調査自身は、治験がそうでございま すように、一定の枠の中で一定のやらなければいけない条件というのはまず企業に考え ていただいた上で、審議会等のお力も借りながら、厚生労働省としてチェックをしてい くというやり方になるのだろうと思いますが、それを調査する主体というのは治験と同 様に、やはり企業にお願いをすると申しますか、安全対策、あるいは物に一番の責任を 持つのが企業である限り、治験と同様の実施の方法をするというのが当然ではなかろう かと考えております。 ○ 松本(和)構成員  認可の条件として出されている市販後調査とは別のものであるということですか。 ○ 中垣審査管理課長  いや、認可の条件として、市販後調査の中身としてどういう項目を調べてもらおうと か、ここには特に重点を置いて市販後調査をしてもらおうとか、そういうような点を審 査の段階から抜け目なく漏れがないようにチェックをしていくというのが、今回新しく 考えていることでございます。 ○ 高久座長  市販後の調査はやはり企業の責任というか、企業でやっていただかないとなかなか。 それで、今はもうほとんどすべての薬はやっているのですよね。いわゆる必要条件とな っていると思います。   ○ 松本(和)構成員  今座長がおっしゃるように、そういう市販後調査といいますか、調査が企業から先生 の方に依頼されて調査をされるというのは、確かに現在必要であろうとは思います。こ れは国費を使うわけにはいきません。ただ、その場合にある結果についてかなり利害が 対立するような大きな問題が起こった場合に、企業から直接そういう調査の依頼が行っ ている場合に、一般的な信用性というのにかなり疑問が出る場合もあり得るので、そう いうものをできるだけ少なくしていくというのが必要ではないかと思ったものですから、 第三者機関に調査費を依頼して、そこから市販後調査という形で持っていかれてもいい のではないかと思います。その第三者機関というのを機構が受け持ってもいいかなとい うのでお話ししたのです。 ○ 青木構成員  済みません。よろしいですか。その調査というのは、では調査の作業そのものを第三 者機関と、そういうことですか。 ○ 松本(和)構成員   はい。ある程度その内容によりますが。 ○ 青木構成員  これは相当な人数が、今の増員ぐらいではとても追いつかないキャパが必要になると 思います。 ○ 松本(和)構成員  ええ、そう思ったものですから、私がちょっと聞き間違えたかもしれません。 ○ 青木構成員  現在、営業活動と同調してやっておりますので、市販後調査のデータ集めに相当なキ ャパシティーは投入しています。ですから、これを独立した機関でやろうというと、こ れは人のリクルートからトレーニングから大変なことになると思うので、ちょっと現実 的ではないような気もするのですが。 ○ 高久座長  どうぞ。 ○ 宮島医薬品医療機器総合機構理事長  ちょっとコメントします。個別の製品についての調査は企業の方にお願いしています が、それはすべて機構の方に報告をいただいて、それを分析評価するのは第三者機関と しての公的な機構において、まさにサイエンティフィック、客観的にやっています。そ れは安全拠出金、いわゆる共同事業的な形でやっていますので、そういう役割分担で今 進めているということではないかと思います。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。ほかにどなたか。どうぞ。 ○ 大澤構成員  薬の適正使用に関することではあるのですが、今までの御議論の内容と少し異なるこ とでよろしいでしょうか。 ○ 高久座長  はい、どうぞ。 ○ 大澤構成員  小児科学会から、この会の初めのころにヒアリングをお願いいたしましたが、その席 上で小児科学会の薬事委員会の方から話がございましたように、小児科領域における薬 剤のほとんどといいますか、6割ぐらいは適応外使用というのが現実でございまして、 先日アセトアミノフェンの用法、用量がやっと統一見解で、文書の適応ということの御 指導があったというのが現状でございます。そういう中で、今厚労省でも、小児薬物療 法検討会議、未承認薬使用問題検討会議でかなり精力的に小児の薬剤を守ってくださろ うという御努力はいただけているのですが、あくまでも暫定的な対応でございます。実 際には製薬企業にとりましては、小児の薬剤を適応承認に持っていくまで治験を進めて いくというのは、基本的にはやはり経済的な背景に結びついていかないというのが現状 です。小児の治験というものがなかなか促進されていないというのが現実でございまし て、この会議でそのことについて踏み込んで御検討いただくのは難しいかとも思います が、やはり将来を担う子供たちのための薬につきましても、ぜひ視野に入れていただき まして、御検討をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○ 高久座長  適応外というのは、量の問題と薬の種類の問題、両方あるわけですね。 ○ 大澤構成員  そうですね。もちろん狭義の適応外、つまり効能効果が認められていないというもの の適応外というのは、6割も多くはありませんが、ほとんどの薬剤におきまして小児で の安全性は確立されていないですとか、用法、用量は定められていないというようなこ とが書かれております。現実とは乖離がございます。実際には添付文書を非常に重要視 して私たちが行動するといった場合には、やはりかなりの規制があるのが現状でござい ます。 ○ 高久座長  そうですね。たしかアメリカの場合、小児のための用量の試験をした場合に、パテン トの期間を長くしていますね。それをある程度考えてもいいのかもしれないですね。ど うぞ。 ○ 中垣審査管理課長  確かにアメリカの場合、小児用量の試験をやって、それで承認をされるときに、一定 の独占期間――パテントを延ばす方法だったかどうか私自身はわかりませんが。 ○ 高久座長  例えばある薬があって、成人の投与量だけ決まっていて、小児の量を決めるための治 験をやると、全体のパテントの期間を長くするシステムですね。 ○ 中垣審査管理課長  独占期間がたしか長くなるという。 ○ 高久座長  そうです。大人も含めてですね。 ○ 中垣審査管理課長  実は似たような制度が日本にもございまして、再審査期間中にそういった小児の用法、 用量の開発をやる。それで再審査期間の中で終わらない場合には、再審査期間を延長す る。再審査期間は今基本的に8年で運用しておりますが、10年まで延長できるという規 定がございますので、その規定を動かすこともあるわけでございますが、今先生が御指 摘のとおり、小児の用法、用量の開発というのがある程度の負担になるということであ れば、それに対するインセンティブを何か考えろというのは、一つの御示唆だろうと考 えております。 ○ 高久座長  私の理解している範囲ではアメリカでも非常に少ない。それでそういうインセンティ ブをFDAの方で与えたのだと思います。ほかにどなたか。どうぞ。 ○ 望月構成員  市販後調査の御議論は、「有効で安全な医薬品を迅速に提供するため」というこの冠か ら考えますと、非常に重要なところではないかと私は思っておりました。やはり迅速に 提供するということと安全を担保するというのは、若干裏腹なところもありまして、情 報量が必ずしも十分取り尽くせていないところで販売に至るというところもあるかなと 思いましたので。先ほども青木委員の方から、世界の中では日本は市販後調査の制度が 一番進んでいるだろうというのは、私もそのように思うのですが、今の市販後調査の仕 組みの中でよく製薬企業の方がおっしゃっているのは、ただ集めるだけでなく、もう少 しきちんとした手法を、疫学的な手法と申しますか、使って、それなりのエビデンスに なるような集め方ができないものだろうかということです。今回先ほどお聞きしました ら、例えば仮に承認条件として、こういう部分を市販後にきちんと集めなさいといった 場合に、かなり機構の方で方法論も含めて多分指導されるということだと思いますので、 ぜひそれをきちんと遂行していっていただくことが、この「有効で安全な医薬品を迅速 に提供する」ことを、きちんと担保していくことにつながるかなと思います。 ○ 高久座長  おっしゃるとおりだと思います。迅速に審査をするということと市販後の安全性とは、 逆の関係になるので、審査を早くしようとすれば市販後の調査をきっちりやらなければ ならないと思います。どうぞ。 ○ 井村構成員  望月委員がおっしゃるとおりだと私も思うのでございますが、市販後の調査が本当に 行われたというその事実は公表されるのでしょうか。 ○ 高久座長  それはどうなっているのですか。どうぞ。 ○ 中垣審査管理課長  市販後の結果というのは、基本的には再審査の中に盛り込まれて提出されてくると。 もちろんその再審査期間の間、1年に1回提出していただきますが、最終的な評価とい うのは再審査の中で行われて、それが公表されていくというシステムでございます。 ○ 井村構成員  その1年に1回行われているというのが、実際本当に1年に1回行われていて、そこ でどんなことがわかってきたかということについてはどうなのでしょうか。 ○ 中垣審査管理課長  最初の2年間はたしか半年に1回、その後1年に1回提出いただくわけでございます。 現在の処理要項から申し上げますと、その中で安全対策として、例えば先ほど来議論い ただいたような使用上の注意を変えなければいけないようなものというのは、即座に変 えていくという形になっております。  一方におきましては、例えば3,000例や数千例をまとめて解析するということになり ますと、3〜4年かかってまいりますから、それをまとめた上で解析結果を企業から出 していただいて、最終的には再審査の中にそれを反映していくという形でございます。 ですから、もしかすると委員御指摘なのは、再審査期間の後でまとめて発表するのでは なくて、もっと経過報告みたいなものを何かの形で出していけという御示唆なのかなと 承りながら聞いておったわけでございますが。 ○ 井村構成員  いや、示唆というほどのことではないですが、先ほども話題になっていますように、 アメリカではそれがちゃんと行われないということが随分問題になっていたと思います し、私は審査を担当させていただいていて、その分科会の議論の中で聞いておりますと、 とにかくその市販後調査を条件として、承認を非常に迅速にやるということが最近は特 に多いものですから、そこで心配になったのがそういう点でございまして、その辺をし っかりやっていただけるのだったら、それは非常にありがたいことだと思います。 ○ 高久座長  よろしいでしょうか。どうぞ。 ○ 山田安全使用推進室長  添付文書の中でも、最初の承認のときには、治験のときの副作用についての頻度情報 を、副作用の欄に記載するように最近なっておりますし、それから再審査期間中に行わ れます使用成績調査等の結果につきましては、やはり再審査の方で審査を行って、なお かつ信頼性の調査を行った上でということになりますが、その結果が固まった時点で、 この添付文書の副作用情報の欄に頻度情報として記載するようになっております。 ○ 高久座長  ほかにどなたか。どうぞ、佐藤委員。 ○ 佐藤構成員   疫学の観点から言いますと、確かに日本の使用成績調査というのは市販後きめ細かく やられていて、頻度がきちんとわかるという点でいいと思いますが、多分足りないのは 頻度の比較ができないのですね。例えばある有害事象が問題になったときに、同種同効 薬と比べて特に有害事象がその薬で高いのか。あるいは、それはそのクラス全体の問題 なのか。あるいは、例えば特にAという薬の有害事象の頻度が高齢者で高いといったと きに、それが薬のせいなのかどうかというのが、これは比較がないとよくわからないの です。つまり、例えば活動低下とか抑うつした気分とか、そういうものの頻度が高いと いっても、それは薬がなくてももともと高齢であるがゆえに高いだけなのか、それが薬 によってさらに高くなっているのか、ということの見きわめができないのです。そうい う意味で、やはり比較の群を設けた観察研究というのが、どうしても必要なものが多い と思うのですが、やはりそこを何とか実施できる方向にしていくべきではないかと思い ます。  今ですと比較するというとすぐ市販後の臨床試験にいってしまって、ランダム化比較 試験になって、それはGCPのもとでやらなければいけないというと物すごく大変で、 実は欧米ではそういうランダム化をする場合でも市販後の試験はもっとずっとシンプル なというか、がちがちのGCPではなくて、日本でいうとGPSPぐらいのところでや られているものがありまして、何とかそのあたりを実現していただければなと思います が。 ○ 高久座長  どうぞ。 ○ 岸田医薬品医療機器総合機構理事(技監)  今のことにつきまして、今総合機構で中期計画の中で行っていることを一つ御紹介し たいと思います。拠点医療機関というネットワークをつくりまして、そこである群の薬 剤について、副作用の情報を集中して集める。そうすることによって薬剤間の頻度の違 い、あるいは年齢層、併用薬による違い、そういったものを解析して、そういったもの をまた添付文書等に反映していこうと考えています。こういう試みを今しておりまして、 これまで抗がん剤と小児用法の薬剤について、試行しております。最終的には、ほかの 薬効群についても応用できるようなネットワークの仕組みを構築していきたいと思って おります。すぐにできるわけではありませんが、そういった方向で現在取り組んでおり ます。 ○ 佐藤構成員  そうしますと、ちょっと先ほどの第三者機関のことにもつながるのかもしれないです ね。 ○ 岸田医薬品医療機器総合機構理事(技監)  ええ、製薬企業さんで行っている市販後調査というのは、それはそれなりに必要だと 思いますが、すべてを総合機構が行うということは、マンパワーの面からおいても、先 ほど御指摘がありましたようにそれは無理な話でございますけれども、ある特定のこと に着目して拠点医療機関とネットワークを組んでやると。それは確かにこの総合機構で、 それを実施するためのマンパワーというものは必要にはなりますが、今できる体制の中 でそういったことをしていきたいと思っております。 ○ 青木構成員  もう1点だけ、ちょっとよろしゅうございますか。企業の方の見方をさせていただき ますと、比較してどちらがどうかというきちんと信頼できる結果を出そうとしますと、 GCPの厳しさがどうかということは別としまして、かなりプロスペクティブなプロト コールスタディーというのは、相当厳密な統計学的な種類もしなければいけませんし、 組み入れのときの条件のあれもやらなければいけませんし、これはやはり費用の面で相 当大変になります。よく差別化のために、うちの薬はコンパラティブなやつに比べてこ んなにいいんですよ、ということを出すための非常に巨大なスタディーを海外の会社が やっていますが、本当に差を出そうと思うと2万例、3万例をかなり厳しいプロトコー ルでやって、そうでないと同種同効の薬の中で差をきちんと言うのはかなり難しいよう に思いますので、そこはどういう程度の信頼性のデータでいいかということがはっきり しないと、なかなか企業としては取り組みにくいところがございます。 ○ 佐藤構成員  今それに関して実は日本薬剤疫学会でも、少ないコストでそれができないかというよ うな検討をちょっと始めていますので、いずれまた何か機会があったら。 ○ 青木構成員  方法論をまたぜひ教えていただけたら。 ○ 佐藤構成員  それともう1点、今のことに関連するのですが、首相官邸のホームページを見ますと、 2011年までにレセプトの完全電子化というのですか、オンラインにして、それを中央に 全部集めて、データベースをつくるという構想が書かれております。具体的には何も書 いていないのですが、たしか首相官邸のIT化計画ですか、その日本全国をIT化する 中の一つで、医療のところのIT化の中で、そういうデータベースを2011年までにつ くって、それを疫学研究にも利用できるようにするということがはっきり書かれている のですが、そのあたりの環境整備というのは、医薬食品局の中ではどのように考えられ ていますでしょうか。それができるとまさにコストという意味では、格段に安くいろい ろなことができると思うのですが。 ○ 中垣審査管理課長  今御紹介がございましたように、レセプトのIT化計画というのを、省全体として推 進しております。もちろんレセプトでございますから、一定の限界はあるのだろうと思 います。と申しますのも、疾病名が書かれているにしても、詳細な情報が、疾病の状況 があるわけではないというような一定の限界があるのだろうと思いますが、どういう薬 がそこで使われているのか、どういう疾病の患者さんに使われているのか、というよう な情報はまたとれていくのだろうと。ただ、ここで議論しているような副作用までそこ の中で出てくるのか。それは疾病名として副作用がレセプトの中に記載されていくよう なケースであれば、当然そこもつかまえられるものがあるのだろうと思いますが、それ もかなり相当の限界があるのだろうとは思っております。  一方におきましては、アメリカにおきましても我々が時々文献で見るのは、健康保険 データを分析したというような報告が出ております。この最大のメリットというのは、 非常に大きなボスでやれるということがその特徴なのだろうと思っております。ですか ら、我が国においてもレセプトデータが調査に使えるということになりますと、その使 い道というのはぜひ研究してみたいと考えております。 ○ 高久座長  ほかにどなたか。よろしいですか。この部屋は大分暑いですからそろそろ終わりにし ていただいて、本日の議論、討議につきましては、事務局の方でまた整理していただき たいと思います。あと2回ということでして、次回について事務局の方から連絡してい ただけますか。 ○ 山本承認審査等推進室長  では、次回でございますが、今月6月29日の金曜日、午後2時から、場所は霞ケ関 ビル33階の東海大学校友会館にて開催する予定にしております。 ○ 高久座長  東海大学は冷房が入っているそうです。それでは、次回にはこれまでの議論をまとめ た報告書の骨子案を事務局の方で用意するようですので、その骨子案についてまた御議 論をしていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。 (了)                      照会先                      厚生労働省医薬食品局承認審査等推進室                      TEL:03−5253−1111