07/06/14 第13回予防接種に関する検討会議事録                         健康局結核感染症課予防接種係                                内線 2383                                  第13回予防接種に関する検討会 日時 平成19年6月14日(木) 17:30〜 場所 厚生労働省5階共用第7会議室 ○山田課長補佐 それでは、定刻になりましたので、これより第13回予防接種に関する 検討会を開催いたします。  本日は、御多用のところ予防接種に関する検討会に御出席いただき、誠にありがとう ございます。  最初に、出席者の紹介をさせていただきます。まず、委員の方々より御紹介いたしま す。  飯沼雅朗様、社団法人日本医師会常任理事でございます。  岡部信彦様、国立感染症研究所感染症情報センター長でございます。  加藤達夫様、国立成育医療センター総長でございます。本日の座長をお願いしており ます。  蒲生真実様、「ひよこクラブ」編集長でございます。  澤節子様、元墨田区役所保健衛生担当部長・墨田区保健所長でございます。  竹本桂一様、社団法人日本小児科医会常任理事でございます。  なお、廣田委員、宮崎委員については欠席の御連絡をいただいております。  廣田委員の代理といたしまして、筑波大学大学院人間総合科学研究科教授、大久保様 に御出席をいただいております。  宮崎委員の代理といたしまして、国立病院機構福岡病院統括診療部小児科医長、岡田 様に出席いただいております。  続きまして、参考人として御出席いただいております先生を御紹介させていただきま す。  砂川富正様、国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官でございます。砂川様 は、つい最近までWHOに勤務されておりまして、感染症の専門家でございます。  多屋馨子様、国立感染症研究所感染症情報センター第3室長でございます。  脇口宏様、日本小児科学会理事でございます。  また、本日オブザーバーといたしまして、総務省、文部科学省、国土交通省及び厚生 労働省の関連部局より御出席いただいております。  それでは、開会に当たり、外口健康局長よりあいさつを申し上げます。 ○外口健康局長 健康局長の外口でございます。  予防接種に関する検討会に御出席の皆様方には、大変お忙しいところをありがとうご ざいます。そしてまた、今日は特に総務省、文部科学省、国土交通省の御担当の方々 にも参加していただいております。改めて御礼申し上げます。  この予防接種に関する検討会は、予防接種を取り巻く重要な課題について検討してい ただくために平成16年10月に開始していただいたものであります。平成17年3月には 中間報告書を取りまとめていただきました。その報告書を基に麻しん及び風しんの2 回接種制度の導入など、予防接種対策に大きく貢献していただいているところでござ います。予防接種の普及に伴い、麻しんについては患者の発生数が大幅に減少してき たところでありますが、本年については10代、20代の者に顕著な麻しんの流行が見ら れ、平成13年の流行を超える規模となっており、また大学や高等学校等における学級 閉鎖等も相次いでいるところでございます。  また、WHOにおきましては天然痘、ポリオに引き続き、麻しんの根絶に向けた取り 組みが国際的になされておりますが、既に他の先進国においてはもとよりほかの国に おきましても麻しん排除の宣言が出されているところであります。このような状況の 中、最近カナダへの修学旅行中の学生が麻しんを発症し、隔離された事案が発生する など、感染症については国外の状況も踏まえて、我が国としてしっかりした対策に取 り組まなければならないと考えているところでございます。  今回のような麻しん流行が今のような対応のままですと、同じようなことが繰り返さ れるおそれもございます。麻しんの排除に向けた今後の対策の強化について、各委員 の方々から活発な御議論・御提言をいただけますことを期待いたしまして、簡単では ございますが、冒頭のあいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上 げます。 ○山田課長補佐 もう一方、委員の御紹介をさせていただきます。  岩本愛吉様、東京大学医科学研究所教授でございます。  これをもってカメラ撮りは終わりとさせていただきます。 (報道関係者 退室) ○山田課長補佐 続きまして、事務局を紹介いたします。  健康局長の外口でございます。  結核感染症課長の三宅でございます。  感染症情報管理室長の滝本でございます。  感染症対策企画調整官の正林でございます。  課長補佐の三宅でございます。  補佐の山田でございます。  予防接種専門官の高山でございます。  課長補佐の川上でございます。  この後の議事の進行につきましては、加藤座長にお願いしたいと存じます。加藤座長、 よろしくお願いいたします。 ○加藤座長 それでは、本日の議事を進めさせていただきます。  まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○山田課長補佐 それでは、お手元に配付しております資料の確認をさせていただきま す。  資料1といたしまして「予防接種に関する検討会 委員名簿」でございます。  資料2「麻しんの発生状況について」でございます。  資料3「麻しんの流行の背景と要因分析について」でございます。  資料4「世界の麻疹の状況および対策について」でございます。  資料5「麻疹排除−我が国の麻疹対策への提言−」でございます。  資料6「麻疹対策に関する見解と要望」。  参考資料といたしまして、先ほど「麻疹にどう対応するべきか?」という資料をつけ させていただきました。  資料7といたしまして、平成19年6月11日付の通知をつけさせていただいております。  資料8につきましても、同じく6月11日日付の通知をつけさせていただいております。  参考資料1といたしまして、予防接種施行令及び予防接種実施規則の抜粋でございま す。  参考資料2「定期の予防接種」の一覧表でございます。  参考資料3、平成19年5月30日付麻しんに関するQ&Aの通知を添付させていただい ております。  以上でございます。不足等がございましたら、事務局までお知らせください。  済みません、資料5でございますが、追加資料として提言3は差し替えということで、 1枚もので配付させていただいておりますので、よろしくお願い申し上げます。 ○加藤座長 それでは、資料の確認ができたと思われますので、早速本日の議題でござ います。現在はしかの流行状況を踏まえまして、今後のあるべきはしかの対策につき まして、感染症・予防接種の専門の方々にお集まりいただきまして、御報告・御提言 をいただきました上で、各委員の先生方に活発な御議論を期待いたしているところで ございます。そして、今後の方策について御意見を伺うことにいたしてございます。  最初の議題でございますが、はしかの発生状況についてに関しまして、事務局より御 説明をお願いいたします。 ○滝本感染症情報管理室長 感染症情報管理室長の滝本でございます。私の方から麻し んの発生状況につきまして御説明申し上げます。資料2をごらんいただきたいと思い ます。  1枚めくっていただきますとグラフが出ております。麻しんにつきましては、感染症 法に基づく5類感染症に位置付けられております。この5類感染症の中で麻しんにつ きましては定点、すべての医療機関からの報告を求めるという対象ではなくて、特定 の一定の定点から発生したものについて報告していただくというシステムで発生動向 を把握してございます。具体的には、全国で約3,000か所の小児科を標榜する医療機関 に御協力をいただきまして、それぞれの医療機関から1週間の間に診断をいたしまし た麻しんの患者数を取りまとめていただきまして、翌月曜日に保健所に御報告をいた だくと。都道府県で取りまとめまして、厚生労働省、感染症研究所の方に御報告いた だくというようなシステムでこの流行状況を見てございます。  真ん中に折れ線グラフがございます。横軸に時間、すなわち1月から1週間ごとで区 切っておりますけれども、1から52〜53週までとってございます。縦軸は定点当たり の報告数ということでございます。すなわち1医療機関で1週間の間に診た患者数と いうことでございまして、具体的には、すべての報告数をおよそ3,000の小児科定点で 割った数字ということでございます。年によりまして流行の大小があるわけでござい ますが、おおよそ20週前後にピークを示しているというのが麻しんの流行の状況でご ざいます。  このグラフでは過去10年間及び今年の第22週までの数字をプロットしてございます。 この10年間のうちでは、紫色の折れ線で示したところでございますが、2001年に大き な流行が見られたところでございます。以降、流行の波は小さくなってきておりまし て、特に昨年あるいは一昨年は、ほとんど底辺のところに位置するというような状況 でございました。  右上に拡大図がございますけれども、2005年、2006年はほとんど数として把握できな いような状況でございました。  今年の状況でございますが、赤い太い線で示してございます。第19週目に報告数が200 を超えました。以降、20週、21週、22週と200を超える報告数が報告されているという ような状況にございます。  次は、15歳以上の成人麻しんということでございます。こちらのサーベイランスにつ きましては、基幹定点と申しまして、患者を300人以上収容する大きな病院、およそ二 次医療圏ごとに1か所以上指定させていただいておりますけれども、そちらからの報 告数を示してございます。  成人麻しんにつきましては、先ほど来お話の中にもございましたが、今年は大きな流 行が見られているというような状況にございます。2001年はしかが大流行した年の成 人麻しんの数を大きく超えて発生している。特に、第21週に至りましては感染症法に 基づくサーベイランスを始めて以降、最高値となります数字を示しているというとこ ろでございます。  3ページ目、都道府県別の麻しんあるいは成人麻しんの発生数を示しております。地 域的な偏りが見られているというのは御承知のとおりだと思いますが、麻しんにつき ましては、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、いわゆる南関東での発生数が非常に 多いという状況にございます。これまでの累計にいたしますと、全報告数のおよそ6 割がこの4つの都県からの報告になっているということでございます。また、定点当 たりを見ましても、埼玉、千葉、東京あるいは栃木などで1を超えている、あるいは 山梨県でも1を超えているというな状況になっています。  成人麻しんについてみますと、東京、神奈川で非常に報告数が多くなっているという ことでございます。定点当たりにいたしますと、両都県でいずれも5以上の報告が上 がっているという状況にございます。  直近の第22週目につきましては4ページになりますが、5月28日から6月3日までの 1週間に報告をされた成人麻しんの報告数ということでございます。依然、南関東か らの4都県からの報告が多いということでございますけれども、例えば北海道であり ますとか、あるいは大阪府、福岡県という関東以外の都道府県からも報告が上がって きているというような状況がうかがえます。  5ページ、先月来、麻しんで大学が休校したということがマスコミを賑わせてござい ます。今般の流行の社会的なインパクトを推し量るあるいは流行の全国的な広がりを 見ようという観点で、学校の休校状況について調査を開始いたしました。学校保健法 に基づきまして、学校の設置者は伝染病予防上必要がある場合には臨時に学校を休校 することができるという規定になっています。そういった休校措置をとった場合には 保健所に連絡が行くということになっていますので、我が方から各都道府県にそうい った数について報告を求めて、それを取りまとめて先週から公表してございます。  先週の金曜日に第2回目の状況を公表したところでございます。4月1日から6月2 日までの累計で見ますと、全国の学校で累計143の学校が休校措置をとったということ でございます。特に大学あるいは高等学校、大学で54校、高等学校で34校ということ で、こういったところでの休校が目立つということでございます。  次のページ以降は、各都道府県別でのそれぞれ休校等の措置の数を表にしてございま す。詳細については説明を割愛させていただきます。そもそも休校の判断はそれぞれ の施設長に委ねられておりますし、学校の数そのものが都道府県によってばらつきも ございますので、これで患者の分布を正確に反映するというのはなかなか難しいかと は思いますけれども、全国的な流行状況を推し量る一つのデータになるのではないか と考えてございます。  一番最後のページでございますが、これは後ほど多屋先生からも御説明があるかと思 いますが、過去20年程度の麻しんの流行状況を示してございます。感染症法に基づく サーベイランスは1999年4月から始まっておりますが、それ以前におきましては感染 症サーベイランス事業ということで、予算事業といたしまして同じようなサーベイラ ンスをしてございました。2001年に大きな流行があったということでございますが、 それ以前を見ますと、例えば1991年あるいは1984年に大きな流行が見られていたとい うことでございます。全体的には徐々にですが右肩下がりにはなってきていたという ところでございます。  私の方からは以上でございます。 ○加藤座長 ありがとうございました。  ただいま滝本さんから、今般のはしかの発生状況につきまして再度の現状認識も踏ま えて御説明をいただいたところでございますけれども、ただいまの御説明につきまし て、各委員の間で少しディスカッションをしていただきたいと思いますが、御意見ま たは御質問がおありの方はどうぞ御遠慮なく活発に議論していただきたいと思います が、いかがでしょうか。  単純と申しますか、今問題になっているとおりの流行状況というものをわかりやすく 御説明いただいたわけでございますが、特に小児におけますはしかの流行状況は2001 年ほどではないけれども、いわゆるサーベイランスで出てくるところの成人麻しんに つきましては、2001年の流行を上回ってしまっている状況であるということが今大き な問題になっているところでございますし、今御説明にございましたように、大学や 高校での休校が目立つといったところが今年の一番の問題点であろうかと。そういっ たような観点から本検討会も開かれているところでございますので、その辺を十分視 野に入れていただいて、今後のディスカッションの基としていただきたいわけでござ います。 ○岡部委員 よく私たちのところに質問が来るんですけれども、過去の成人例というか 子ども以外のはしかはどのくらいあっただろうかという問い合わせがあるんですが、 実はそれは報告制度がなくて、私たちとしてはわからないとしか答えようがなかった わけですけれども、感染症法が感染症新法として発足したときのディスカッションに あったんですが、それまではしかは小児科定点から報告を受けていたけれども、今後 恐らくは成人例が問題になってくる可能性があるから、その代表値として入院施設や 何かに大人のはしかが入院する可能性が高いから、基幹病院の500か所、県では450か 所ぐらいのところにお願いして成人例というものを届けていただければ、そのうち大 体の傾向がつかめてくるのではないかというのが感染症法が1999年に発足したときの ディスカッションで、今回それが一応アンテナに引っ掛かるような状況にはなってい たということだと思います。 ○加藤座長 ありがとうございました。という現状でございますが、ほかにいかがでし ょうか。 ○岡田小児科医長 結局今は定点でやっていますから、御存じのように小児科の場合に は3,000の定点でほとんど上がってきますからつかまりますけれども、今回のような流 行の場合には、基幹病院定点に行かないと実際にはほとんどわからない状況になって います。福岡県では、たまたま今回流行が起こり始めてサーベイランスと並行して全 数調査をやりますと、実際の数は約5倍ぐらい上がってきました。発生動向調査で基 幹病院定点から上がってくるのが20ぐらいだとしたら、保健所を通して大人を含める と大体100ぐらい上がってきますから、今から発生動向を見ていくためには、定点把握 だけではなくて岡部先生が言われたように全数把握をしないと全体像がわかっていか ないのかなとは思いました。 ○加藤座長 ありがとうございました。ただいまの御発言は実数を把握しましょうとい うことですが、これは後に機会がございましたら議論として行いたいと考えておりま すが、今の先生の御発言は実数と1対5ぐらいだということですか。岡部先生は以前 サーベイランスを実施されたときは1対10ぐらいかもしれませんというような……。 ○岡部委員 そうではなくて、小児の場合ですと大体10〜20%ぐらいの患者さんが把握 されているだろうという推計になります。それは大人の方については、例えば内科、 小児科の定点の先生のところに大人が来ればカウントされるけれども、実際は大人は ほとんどカウントされていないので不明である。それがトレンドとしてわかるのが入 院されたような基幹病院から来る報告ということで、当時の設定はトレンドを求める というところだったので、一応役は果たしているけれども、そのままでいいかという のは岡田先生がおっしゃるような意見になると思います。 ○加藤座長 ありがとうございました。  一通り現在行われている方法でトレンドが出てくれば、少しのところで実数把握をし ていけば当面のところはトレンドと実数との関係が出てくるので、全体数も把握でき る可能性はあるだろうととらえていいかと思いますけれども、もう少し全体の数が減 ってくれば全数把握も可能になってくるかなと思いますが、それは後の議論にいたし たいと思いますが、室長からの御発表についてほかの委員の方々、御意見ございまし たらお願いいたします。よろしゅうございますか。  これは今、学校が休校になった例等が出ておりましたが、このサーベイランスの中か らでは感染者がワクチン接種既往者であるか否かというところまでは突っ込んではわ からないと理解してよろしゅうございますね。 ○滝本感染症情報管理室長 はい。 ○加藤座長 では、今後の課題ということになろうかと思いますけれども、ほかに何か 御意見ございませんか。それでは、先に進めてよろしゅうございますか。  続きまして2番目の議題でございますが、はしかの流行の背景と要因の分析につきま して、今回は参考人として御出席いただいております国立感染症研究所の多屋先生か ら御説明をいただきたいと存じます。 ○多屋参考人 国立感染症研究所感染症情報センターの多屋馨子と申します。どうぞよ ろしくお願いいたします。後ろを向いてということになりますが、申し訳ありません。 (PP)  ただいま厚生労働省の滝本室長よりお話がございましたので、一部重なるところは少 し早めにお話を進めたいと思います。  はしかの発疹はスライドに示しますように、典型的にはこういったパターンをとりま して、こういった発疹を見ますと、口の中にあるコプリック斑とともに麻しんの臨床 診断が出されることが多いのですけれども、麻しんはウイルスの感染を受けたとしま すと、約10日間の潜伏期を経まして、カタル期から発症いたします。カタル期という のは発熱と鼻水、咳、くしゃみ、目が赤い、めやにといったはしか特有の症状ではな く、はしかと診断されることが少ないと思います。しかし、この時期が一番ヒトへの 感染力が強い時期ということになっておりまして、この時期に麻しんであることに気 づかず行動して感染を広げるということが起こっていると思います。特に今のような 年長者の方ですと、行動範囲も広く、感染を広げている結果になっていると思います。  そして、麻しん特有のコプリック斑というのがカタル期の終わりに出てきますけれど も、これを見つけますと、はしかの臨床診断がほぼできるのですが、その翌日ぐらい から発疹が出始めまして、先ほどのスライドに示すような特徴的な発疹が全身に広が ってまいります。  その後、更に熱は高くなりまして39〜40度の熱が数日続き、その後、熱が下がり、発 疹は色素沈着を残して治っていきます。しかし、麻しんというのは免疫不全状態が数 週間にわたって続くということが特徴的で、ほかの感染症を併発しますと、そちらも  重症になるということもございます。また、合併症を起こす頻度も非常に高いと言わ  れています。 (PP)  麻しんの感染経路は3つありますけれども、空気感染を起こす感染症というのは非常  に感染力が強く、同じ空間を共有すると感染してしまいますので、よく体育館などで  入学式や卒業式を行ったときに、1人カタル期の患者さんがいらっしゃると全員がウ  イルスの曝露を受けてその後10日ぐらい経ってから発症してくるということが今回の  流行でもよく聞かれたことかと思います。 (PP)  麻しんの予防方法は、麻しんワクチンあるいは麻しん・風しん混合ワクチンを受けて  麻しんの免疫をあらかじめ持っておくことしかないわけですけれども、今日、患者さ  んと接触したということがわかった場合は、3日以内に大急ぎでワクチンを受ければ  発症を予防できる可能性があります。こういったことから、迅速な対応をとれば発症  を予防できる可能性があるということになり、1例患者さんが発生すれば早めに対応  をとるということが今各地で行われているかと思います。  また、3日を過ぎてしまった場合は、6日以内であればガンマグロブリンの注射で発  症を予防できる可能性はあるのですけれども、ガンマグロブリンは血液製剤ですし、  筋肉用の製剤が健康保険適用されていますが、体重当たり0.3cc程度の注射量になりま  すので、成人ですと10ccを超えるかなり大量の注射が必要になります。  発症してしまいますと、麻しん特異的な治療法はありませんので対症療法となります。  そのため予防に勝る治療はないというのが麻しんの特徴かと思います。 (PP)  大急ぎでワクチンを接種する場合ですが、いかに緊急に接種するということであって  も接種事故が起こらないように、接種に当たっては接種の不適当者に入らないという  十分な確認と、また、効果と副反応についても緊急であっても十分に説明すること。  それから、今のような年長者への接種の場合は、特に妊娠が考えられる女性では成人  用の問診票等を使いまして、女性は妊娠していないかといったような問診も必要にな  ってまいります。  また、接種医が接種可能と判断され、本人あるいは保護者がワクチンを希望して接種  した場合、その後の健康状況調査も重要かと思います。 (PP)  では、なぜ麻しんを予防したいかというところですけれども、麻しんが死因となって  死亡された数は人口動態統計により報告されていますが、死亡診断書の中に麻しんと  いう診断が書いてあった場合で、実際には肺炎ですとか脳炎といったような報告もご  ざいますので、これより多く死亡されていることが推察されますけれども、今流行の  中心となっている高校生や大学生が生まれたころというのは、1年間に大体数十人か  ら100人未満の麻しんによる死亡者が日本でも出ていたという状況です。先ほどから  話題になっている2001年の比較的大きな流行のときに二十数人が麻しんで亡くなって  おり、この年の特徴として20歳以上と20歳未満が半分半分というようなことで、麻し  んは亡くなることがある病気だという認識が必要かと思います。 (PP)  これは3年前に新潟県からIASRに御報告いただいた麻しんによる死亡例ですけれども、  20代の女性でお子さんがお二人いらっしゃいまして、小児科の病院に受診しておられ  ました。お子さん方は予防接種を受けていたのですけれども、お母さんは予防接種歴  もなく罹患歴もなかったということで、4月7日に熱と咳、先ほどのカタル症状が始  まり、発疹が出現して、その後高熱となり内科を受診。コプリック斑を認め、麻しん  と診断され、皮膚科に入院となっています。その後、呼吸困難が出現して肺炎を合併  され、解熱して発疹も改善傾向にあってよくなってきたころに、尿失禁状態で座り込  んでおられて発見され、意識障害の進行、昏睡レベル、そして、4月28日、20日前後  の経過で亡くなられるということが3年前に発生しています。  この患者さんの麻しんは、お子さんの感冒のために通院していたクリニックで感染し  た可能性が高いと報告されていますけれども、受診されている子どもさんに関しては、  予防接種ですとかガンマグロブリン等の勧奨が行われていましたが、付き添いのお母  さんについては予防接種歴、既往歴なくこのような不幸な転帰をとったという報告が  実際に最近でもあるというのが現状かと思います。 (PP)  麻しんの合併症には一番多いものとして肺炎がありますけれども、麻しんによる死亡  の二大死因は、肺炎ともう一つは後で御説明する脳炎と言われています。肺炎の中に  は麻しんウイルスによる肺炎、先ほど申し上げましたが、細菌が二次感染をして、そ  れが重症になる細菌性の肺炎、そして、免疫不全の方に発症することがある巨細胞性  肺炎、これは非常に予後がよろしくないのですけれども、それから、5〜15%に認め  られる中耳炎、クループ症候群、心筋炎などがあります。 (PP)  それから、重症で予後がよくない中枢神経合併症として先ほどの28歳の女性の例もそ  うですけれども、治りかけたかなと思うころに脳炎を発症するという合併症がござい  ます。発症しますと致死率は約15%で、完全に回復される方が約6割、20〜40%に後  遺症を残すとされています。  また、もう一つ、感染してかなり時期が経ってから亜急性硬化性全脳炎といった合併  症もございまして、これも非常に予後の悪い病気で、麻しんの患者さんが10万人発生  すると1人ぐらいの割合でこの病気が発生するだろうということが言われています。 (PP)  先ほど滝本室長からもお話がございましたが、1978年に麻しんワクチンは予防接種法  に基づく定期の予防接種となりまして、どんどん患者数は減ってきています。近年最  も大きかった2001年規模の流行は20年ぐらい前は毎年起こっていた。この何倍もの流  行が起こっていたということです。1994年の予防接種法の改正によって義務接種が努  力義務接種に、集団接種が個別接種になったことにより、接種率が下がって患者数が  増えているのではないかという意見がよく聞かれますけれども、決してそういうこと  ではなく、接種率が下がっているということもございませんし、患者数はどんどん減  少している傾向にあります。 (PP)  しかし、2001年の流行のときに患者さんの最も多い世代は1歳児で、1歳のワクチン  の接種率が約半分しかないという特徴がありましたので、とにかく1歳になったらす  ぐにワクチンを接種しましょうというキャンペーンが全国の小児科医あるいは行政の  方々、国といったいろいろなところが中心となって始まりまして、予防接種率はこの  4年間で非常に大きく増加いたしました。1歳児の接種率が約8割を超えていまして、  2歳以上になりますと95%以上の接種率になっていますが、一方、当時定期の予防接  種世代を超えていた10代、20代の方は、やはり1割程度の未接種の方が残っていると  いうのが現状にあろうかと思います。 (PP)  昨年、麻しんの地域流行が茨城県の南部と千葉県で起こったことは御存じのとおりか  と思います。終息宣言が行われたところもあるのですけれども、完全にはしかの患者  さんの報告がなくなったということではなく、これは沖縄県の先生からの御報告です  が、東京都や埼玉県といった関東地方では高校ではしかの流行があり、修学旅行に行  った沖縄県で麻しんを発症して入院というような事例も昨年の秋に報告されていると  ころです。 (PP)  こういうような形で昨年の地域流行から流行は完全にとまることなく今年に入ったの  ですけれども、これは先ほどお話がありましたが、今日は第24週になりますが、2001  年の流行以降、1歳になったらすぐにワクチンを受けましょうというキャンペーン効  果で、小児科定点から報告される子どもの麻しん患者数は減っています。 (PP)  昨年末から今年にかけて関東地方を中心に流行が始まったのですけれども、それがゴ  ールデンウィークを経まして全国に患者さんが広がっているということがあります。  これはゴールデンウィークに関東地方に来られた方、あるいは関東地方から各地に行  かれた方々が各地で発症されて、その地域で流行を広げているということが現在起こ  っているのではないかと推察されます。 (PP)  もう一つ、2001年との比較を考えますと、2001年は1歳児が最も多く、小学校に入る  までの乳幼児が圧倒的多数を占めていました。しかし、1歳になったらすぐワクチン  を接種しましょうということで接種率が上がって、今年の特徴は小学校に入るまでの  数は非常に減少して、逆に10代の報告割合が増えているというのが特徴で、6割以上  が小学生以上の報告となっています。 (PP)  これは先ほどもお話がありましたように、基本的には小児科定点からの報告ですので、  15歳以上の患者数はたまたま小児科定点を受診された15歳以上の患者数ということで  すので、ここは余り数として正確ではないところです。 (PP)  次に、15歳以上の成人麻しんの報告数は、先ほどもお話がありましたように、2001年  の流行を超える数となっております。 (PP)  この成人麻しんの年齢割合は、20代前半が最も多く、次いで20代後半、10代後半とい  う形で、20代が半分以上を占めるという流行が今年。10代を合わせますと4分の3以  上が20代までということになっています。  今の2つのサーベイランスは定点からの報告でしたので、なかなか全数を把握するこ  とが困難であるということから、昨年の地域流行をきっかけに全国の麻しんの患者数、  発生状況を任意の報告ではあるのですけれども、登録していただこうと。そして、一  人入力していただきますと、その瞬間に患者数がどんどん増えていきますので、迅速  な対応と各関係者の情報共有を目的にこういったものを感染症情報センターで始めま  した。 (PP)  その結果をまとめたものがこのグラフですけれども、今年1月1日から6月4日まで  に報告をいただきました850人、報告は879人ですが、麻しんがその後否定された場合  削除できるシステムとなっていますので、29例を除く850例の年齢と予防接種歴あり・  なしをグラフ化してみました。  その結果、1歳児が一番多く、次いで18歳、0歳、そして10〜20代に大きな山がある  ことがわかります。予防接種歴別で考えますと、「なし」がブルー、「あり」が赤で  すけれども、不明の割合が年長者になりますとどんどん増えていきますが、不明を除  きますとやはり予防接種を受けたことがない方が、受けたことがある方よりも若干多  いというような特徴があります。半分半分という世代もございます。緑が小学生、青  が中高生、赤が大学生というところで、ここに大きな山があるということが、この結  果からもわかります。 (PP)  しかし、なぜワクチン接種者とワクチン非接種者が半分半分に見えてしまうかですけ  れども、今、ワクチンを接種すると10年経てばみんなが免疫を持っていないというよ  うなことがよく聞かれますが、そういったことではなく、ワクチン接種者が半分、非  接種者が半分という集団で麻しんが流行しますと、ほとんどの患者さんはワクチン未  接種者からの発症ということになります。しかし、ワクチン接種率がどんどん高くな  って、8割5分から9割といった今の状況になりますと、麻しんの患者さんだけを見  ますと、ワクチンを受けたことがない人と受けたことがある人が半分半分というよう  な特徴になります。それは、ワクチンを1回受けたことがある人全員に免疫がつくわ  けではなく、5%未満ですがprimary vaccine failureというたまたま免疫がつかな  い人がいて、また、免疫が十分ついていないあるいは減衰してきているという方が一  部いらっしゃって、そういう方からの発症があるということが今の特徴を示している  のではないかと思います。 (PP)  これは毎年厚生労働省が行って、都道府県、感染研が協力している感染症流行予測調  査事業からの結果ですけれども、麻しんPA抗体保有率を見ています。PA法は非常  に感度が高く、この方法で陰性であれば麻しんに対する免疫を全く持っていないとい  うことが推察されます。感度が高いということから、低い抗体価の場合は余り十分と  は言えないという状況になります。一番上のラインより上の方の割合というのが全く  免疫を持っていない方とごらんいただければと思います。勿論0〜5か月、6〜10か  月といった、0歳は免疫を持っていない方がたくさんいらっしゃるのですけれども、  1歳になってワクチンを接種し始めますので、ここで7割、2歳になって大体9割ぐ  らいの人が免疫を持つようになります。  しかし、今流行の中心である小学校、中学校、高校、大学のところを見ますと、5〜  10%の方は全く免疫を持っていない。そして、免疫が十分ではないと考えられる人を  見ますと、世代の1割から1割5分は十分ではない、あるいはないということが今の  状況です。例えば中学、高校ですと、数百人規模の学校が多く、大学ですと数万人規  模の学校があるようなのですけれども、5〜10%というと少なく見えますが、1,000人  ですと50〜100人になりますし、1万人規模の大学ですと非常にたくさんの感受性者、  すなわち免疫を全く持っていない人が残っているというのが現状かと思います。そう  いった中で流行が起こっているように思います。 (PP)  ワクチンを1回受けたことがある人がどれぐらい免疫を維持しているかですけれども、  このグラフで示す水色の部分というのが、残念ながら全く免疫がつかなかった方を示  します。これはどうしても一部存在いたします。黄色の方というのは、免疫が十分で  はない、もしかすると流行に際しては修飾麻しんという、少し典型的な麻しんより軽  い麻しんを発症してしまうかもしれないという方がこのぐらい残っていらっしゃいま  して、1回接種を受けた方のほとんどの方は多分、今回の流行でも発症していないの  ですけれども、1回接種者の内の一部の方からの発症と未接種・未罹患の方からの発  症が混在しているというのが今の状況ではないかと推察されます。 (PP)  先ほども御報告がありましたように、高等学校と大学の休校が多く発生していますけ  れども、こういう大きな子どもたちあるいは若年成人での休校に関しましては、休ん  でいる間の注意もとても重要で、その間に是非、感受性者はワクチンを接種するとい  う期間にしてほしいなと思っています。 (PP)  これは高校での麻しん集団発生をグラフ化したものですけれども、ワクチン接種歴あ  りの方が初発例で、その後なしの方とありの方が1人ずつ発生し、その後大きな流行  になっています。ワクチン接種歴なしの方とありの方が、やはりここも半分半分のよ  うな流行をとっているというのが特徴かと思います。大体14日を超えますと一つの山  が入るというような状況にあります。 (PP)  ワクチン接種歴ありの方の麻しんは、先ほども申し上げましたが、少し軽めの修飾麻  しんという形を発症している方が多いのですけれども、最初にお話ししましたような  典型的な発疹ではないですとか、高熱ではない、37℃台で終わる、あるいはふつうな  ら1週間、10日高熱が続くのが、3〜4日で終わってしまう、特徴的なコプリック斑  が見つからなかった、そういった特徴があり診断が非常に難しいということがありま  す。  ただ、ワクチン接種歴のない非常に典型的な麻しんの患者さんに比べますと、感染力  は若干弱いということがあります。しかし、感染源とはなっています。 (PP)  そこで、昨年の茨城県南部での流行の際にこういったマニュアルをつくったのですけ  れども、保育園、幼稚園、学校等では1人発生したところですぐに対応をとっていた  だければ、2つ目の大きな山は予防できるだろうと。発生してからの対応はとても大  変なので、是非発症者が出る前に予防接種歴や罹患歴を母子手帳などで確認して調査  をしておいて、未接種・未罹患の方は少なくともいないようにしておけば、非常に後  の対策がとりやすいということをマニュアルの中で紹介しています。  しかし、もし1人発生してしまった場合は、是非、朝検温をしていただいて、熱があ  ったらお休みをする、今回の流行でもそうなのですが、熱のまま無理して学校に来て  いて感染を広げているということもありますし、解熱剤を飲みながら学校や職場に行  って広げているということも多く聞いていますので、こういったことも重要かと思い  ます。多くの方々が一堂に会する行事は延期することも必要ですし、医療機関を受診  するときは校内あるいは園内ではしかの患者さんが出ているということをまず伝えて  いただいて、待合室で何も伝えずにずっと待っているということがないような工夫を  是非お願いしたいと思っています。  それから、学校については解熱後3日を経過するまで出席停止という学校保健法を是  非遵守していただきたいと思います。 (PP)  今回の麻しんの対応でいろいろお話を伺っておりまして気づいた点ですけれども、予  防接種歴、罹患歴の確認は記憶だけでは本当に不確かで、はしかと思っていたのが実  ははしかではなかったとか川崎病だったとか、いろいろなことを今回の流行中に伺っ  ています。ですので、入学時や就職時に生徒も、先生も、先生の発症も結構たくさん  聞いておりますので、未接種・未罹患の方は少なくともワクチンを受けていただきた  いですし、年長者ほど「予防接種を受けましょう。」というお知らせだけでは、なか  なか予防接種を受けに行ってくれていないということも今回問題点となっていますの  で、その後受けたかどうかの確認も必ず必要であると思います。  そして、発症してしまった方がつらい思いをしないような配慮も学校の現場では必要  というのを感じています。  先ほどもお話に上がりましたが、修学旅行前の対応として、私も学校での対応の御相  談を受けましたけれども、特に麻しんが排除されている国に行って発症された場合は、  今回のようなこともございますし、対応が急務かと思います。  また、教育実習が幾つかのところで延期になったり、証明書を持って行くということ  もありますけれども、これも今回何回も聞いたのですが、熱があるままカタル期の間  に解熱剤を飲みながら保育園の実習に行っていた、あるいは小学校の実習に行ってい  たというようなことが今回問題点として挙がってきておりますので、こういったこと  も是非文部科学省の先生方とも協力した上で、対応をとっていく必要があるのではな  いかと感じています。 (PP)  今回は休校が非常に多いのですけれども、休校である間こそ毎朝検温をしていただい  て、熱があったら外に出掛けない、学校は休みだけれどもアルバイトだけには行って  いたとか、学校には行かないけれども映画館に行ったとか旅行に行ったといったこと  がないような注意と、もう一つ、最近伺った話で非常に重要と思ったのは、大学生の  場合、一人暮らしで麻しんと診断された場合は、是非一人で家で休んでいるというこ  とがないように、保護者の方に来ていただく、あるいは入院といったような措置も必  要ではないかと感じているところです。 (PP)  昨年から2回接種も始まりまして、先ほどのprimary vaccine failure、secondary  vaccine failureの患者さんをなくすには2回接種の徹底が絶対に必要なのですが、  この2回目の接種率が余り十分とは言えないという現状にあります。 (PP)  その1つとして、なぜ2回接種が必要なのかという理由が対象者に御理解いただけて  いないということもあって、こういったものをつくりながら是非2回接種をそれぞれ  95%以上にするという努力が必要であり、もう一つ定期接種の年齢を超えた感受性者  に対する何らかの方策が必要であると思います。 (PP)  MRワクチンが今、定期接種として行われていますけれども、その効果は風しんにも  現れています。2005年度、それぞれのワクチンを1つずつ受けていたときは、1歳児  で半分くらいしか風しんワクチンを受けていなかったのが、麻しんワクチン並みに8  割ぐらいの接種率になっています。風しんは多くの方というか、1〜2割のワクチン  を受けていない方が今10代に残っていますので非常に心配で、ちょうど9〜17歳のと  ころに低い抗体保有率の集団がありますので、是非麻しん・風しん混合ワクチンを用  いたこういったところへの対策も今後は必要になってくると感じています。  以上です。どうもありがとうございました。 ○加藤座長 多屋先生、どうもありがとうございました。多屋先生には、はしかの症状  から診断、合併症、どういう方々にはしかが生じるのかというようなこと、特にはし  かが学校等で出た場合の対処の仕方というような点について詳しく御説明していただ  きましたけれども、多屋先生の御発表に関しまして、委員の方々で御意見がございま  したらお願いいたします。 ○岩本委員 何点か教えていただきたいと思います。一時MMRワクチンが出掛かった  ときに髄膜炎が起こって問題になったことがありましたけれども、そのこと自体は余  り接種率には影響していないということですか。 ○多屋参考人 少し説明が不足しておりましたが、MMRワクチン世代の接種率に関し  ましては、特にその世代だけが落ちているというような状況にはないと思います。一  部の地域によっては、その世代だけ接種率が低いというところもあると聞いています  が、全国で平均してみますと、そこだけが極端に落ち込んでいるということはなさそ  うです。 ○岩本委員 先ほどPA法でグラフが何歳になると抗体価がどのくらいというのが出て  いたと思うんですが、30ぐらいになるとまた抗体価が高くなるようでした。これがも  し麻しんに再曝露されている結果だとすると、もし2回接種率が上がってきて麻しん  が減ると、常に10%ぐらいの方は免疫がないように移行していくのか、2回接種を普  及すれば更に上がって95%以上になることが期待できるのか、その辺はいかがですか。 ○多屋参考人 先生がおっしゃるとおり、恐らく40代以上の方というのは何回も大きな  流行を経験されて、そのたびに免疫のブースター効果などがあり、非常に高く保たれ  ていると思うのですけれども、10%近く残っている全く免疫を持っていない方につい  ては、2回接種の徹底等を含めた何らかの対策が必要であると感じます。 ○岩本委員 もう一ついいですか。私も学校関係者なんですけれども、学校閉鎖に踏み  切るときの基準とかそういうものはあるんですか。 ○多屋参考人 よく御質問がありますが、基準というものはなく、多分学校長の先生と  校医の先生の御相談で決められていると思います。とめると判断されたところと、と  めないと判断されたところといろいろ混在していると聞いています。それぞれに注意  する点はあるかと感じております。 ○飯沼委員 同じ12ページのところでございますけれども、抗体価の低い子どもたちが  おりますよね。この人たちにはブースターみたいなものはかからないんですか。全く  メモリーがないと理解するのか、どちらでしょうか。 ○多屋参考人 全く免疫がない方につきましては、恐らくかかってしまうということに  なると思うのですけれども、ある程度免疫を持っていらっしゃる方というのは、修飾  麻しんを発症するか、あるいはブースターがかかっているか、それはあり得ると思い  ます。 ○飯沼委員 そのぐらいついていなかったということですね。 ○多屋参考人 ワクチンを接種して免疫がついていない方は数パーセントどうしてもい  らっしゃるので、それは各世代に残っているというのは事実かと思います。 ○竹本委員 15ページなんですけれども、学校での麻しん対策で気づいた点をお聞きし  たんですが、今、川崎市では全数定点に入りまして、今まで202例発表されています。  すぐ全数定点に入ったときに11歳以上からやった人でもかかっているということで、  学校の方に先生を中心にして、生徒がワクチンをやっているか、罹患していないか全  部調べてもらいたいということを言ったら、個人保護条例にかかわるのでのそういう  調査はできませんということでけられてしまったんですね。ですから、こうなってく  ると厚生労働省だけではなくて文部科学省と一緒になってやってくれないと、発症の  つかみ方ができなくなってしまう。川崎市は全数定点で調べていますと、212例のうち  0歳が14例、1歳と6歳、8歳が打っていてもかかった子が3人いるんですね。それ  以外は全部やっていない人がかかっていて、あと、11歳になると打っていてもなって  いるというのがだんだん上がっていって、最高21歳までが大きなピークとなっている。  最高年齢84歳の人がかかっているという御報告が出ていますけれども、1〜11歳まで  の間打っている人は、その3例を除いてほとんどかかっていないというと、やはり今  のワクチンは10年ぐらいはもっているのかなという感じがするんです。それは川崎で  1歳半健診全部調べていまして、来た人の95%がワクチンをやっている。厚生労働省  の統計で出すと100%以上がずっと続いているんですね。ですから、ほとんどで打って  いるんですけれども、実際に今回かかった大学生は川崎市では専修大学がそうですし、  創価大学は隣の市ですから、必ず北の方から掛かるんじゃないかと言ったら、やはり  川崎市の北の麻生区であるとか、多摩区が多く冒されているということがわかってい  ます。  それから、麻しんの接種率が高い、川崎はそうなんですけれども、日本小児科医会が  調べたところでは、ある町村では24%ぐらいしかやっていない率です。4人に1人し  かやっていないという町村があるし、有料でやっているところもあると。必ずしも90  %とか85%が全部やっているわけではなくて、そういうやっていない子どもたちが東  京の大学へ来るとすれば、当然そういう子どもたちが中心になってうつっていくんじ  ゃないか、その辺の実質を把握していくのに、できるだけ早く学校の中でやったかや  らないか調査できる方法を考えてもらえないかと。  それから、上の段に教育実習前の対応ということですが、やはり看護学校の授業数が  非常に多い中にあって、ワクチンをやっていない子どもたちの実習が実習病院から拒  否されていますので、そうなってくると本当に卒業できない子が出てくるんじゃない  かということもありますので、こういう教育関係とかあるいは看護学校あるいは医学  部の学生というのは、ある程度入学前に調べるとか、今は勧奨ですけれども、そうい  う形である程度必要なところは強制しなくてはいけないのかなとは思います。  それから、自宅で1人で休んでいることがないように注意が必要。これは私のところ  に1人で来た高校生なんですけれども、和歌山県の高等学校で有名な学校らしいんで  すが、そこで発症したということで全寮制なものですから、全部休校にしてしまうと、  その子だけ残しておくわけにはいかないので、親に迎えに来させたんですね。お母さ  んは新幹線で帰ってきたんですけれども、コプリックが出てはしかだよと言われてそ  のときに帰ってきていますから、新大阪から新横浜まで2時間半新幹線にずっと乗っ  てきて、学校では寮から出てくれということしか指導しないで連れて帰りなさいと。  こうなってくると、教育者ももう少しはしかの怖さを知らなければいけないんじゃな  いかと。そうなってくると、厚生労働省だけでなくて文部科学省も是非そういうとこ  ろは力を入れてやってもらわなければいけないかなと、経験から述べさせていただき  ました。 ○加藤座長 ありがとうございました。  先ほど来お話が出ておりますが、このたびは成人のはしかが問題となっておりまして、  まさに竹本先生御指摘のとおりであろうかと思いますけれども、ほかに委員の方で。 ○澤委員 16ページの2回接種のことなんですが、これは後で多分検討されることであ  ろうと思いますけれども、接種の勧奨というのはかなり強力にできるんですが、今の  段階で接種完了の把握というのがなかなかできていないんですね。ということで、接  種率が上がってきていない現状で、その辺のことも今後はしっかりとやっていく必要  があるんじゃないかということが考えられますので、現場の意見からよろしくお願い  したいと思います。 ○加藤座長 それは、接種率の把握という御意見ですか。 ○澤委員 いえいえ、接種率が低いんですけれども、要するに2回目を受けなさいよと  いうチェックと勧奨はできるんですが、受けたかどうかの把握が先ほどのお話のよう  にできていないんですね。 ○加藤座長 ですから、勧奨した後にどのくらいの方が接種しているかという把握をし  ていただきたいと。ですから、接種率ですね。 ○澤委員 それから、あと個人に対してもきちんと受けたかどうかをフォローする必要  がある。 ○加藤座長 個人については証拠として何か残しておきたいという御意見ですか。受け  たかどうかということについて。 ○澤委員 受けたかどうか確認をしたい。勧めた本人が受けたかどうかの把握をしたい  と。要するに、あなたは受けていないから受けてくださいよと勧めますよね。そこま  では今やっておりますよね。その後、受けたかどうかまできちんと把握はできていな  いんですね。 ○加藤座長 わかりました。そういうことで、確かに勧奨はするけれども、勧奨した後  の成果が出ているかどうかということですね。 ○脇口参考人 1つは、竹本先生の繰り返しになるんですが、確かに学校の壁というの  は非常に厚くて高くて、何かを対応したいときにいつも我々の手に負えないんですよ  ね。教育委員会に申し出てもどうにもならないので、是非とも文部科学省との連携と  いうものは非常に強くやっていただかないと、こういう感染症だけではなくて病気に  ついての対応ができないだろうということが一つ。  それから、後で言おうかなと思っていたんですが、場合によっては小学校へ入るとき  のアメリカのような法律ですね。こういうことも検討の課題になるのだろうなという  気がします。  それから、現在の麻しん流行の問題点はやはりの修飾麻しんが結構多いということで、  診断が難しく、なおかつ患者さんが元気であるということで、あちこち出かけるとい  うこともありますけれども、私が厚労省の先生方にお願いしたいのは、現在小学校、  中学校の子どもたちを連れて予防接種に行こうという親御さんにとって、学校を休ん  でまで行かせるのかという意識が非常に強い。と同時に、中学性といえども1人で行  かせるということが非常に危険な行為ですから、親が仕事を休んでまで行くのかとい  うことになると、職場の問題が非常に大きなことになって参ります。病気も含めてで  すけれども、予防接種をするために保護者が職場を休むということに対する休みやす  い環境といいますか、そういうものを是非ともつくっていただかない限り、小学校以  上の子どもたちに対する2回目のMRの接種を是非していただきたいと思うんですが、  この接種率は上がらないだろうと思っております。そうしますと、これから10年ぐら  いは同じことの繰り返しが起きますので、世界じゅうから責められる日本ということ  になるのではないかと思っております。 ○加藤座長 ありがとうございました。貴重な御意見をいただいておりまして、竹本先  生と脇口先生共通の御指摘は、今話題となっております学校の学生等の新罹患に関し  まして、調査をいたしたいとような場合に、どうも教育委員会での協力が得られない  ので、なかなか先に進みにくい状況がありますということで、本日は厚生労働省の会  でございますけれども、局長もお見えになっておられますし、また、今日は文部科学  省からも関係者の方がオブザーバーで御出席されておりますので、委員の御意見は十  分お聞きいただいておると思います。また、今後のディスカッションの課題にさせて  いただきたいと考えます。  また、脇口先生がお話になりました、もし、中・高校生に接種する場合に、先生や保  護者が同伴でないと危険であるということでございましたけれども、中学生はどうか  わかりませんが、高校生になってやはり親が一緒に行かなければ行けないのかどうか  というようなこと。中学生であれば1人で言っても大丈夫ではなかろうかというよう  なことも考えられるかもしれませんし、そういう点についても今後のディスカッショ  ンにしたいと思います。  それでは、時間の関係もございますので、御意見はいろいろあると思いますが、先に  勧めさせていただきます。  3番目の議題でございますけれども、視点を諸外国の状況に移しまして、世界のはし  かの対策につきまして、同じく参考人でございます国立感染症研の砂川先生から御報  告をお願いいたします。 ○砂川参考人 国立感染症研究所感染症情報センターの砂川と申します。よろしくお願  いいたします。私は5月31日までWHOにおりまして、6月1日より感染研に復帰し  てまいりました。後ろを向きますけれども、よろしくお願いします。 (PP)  私はWHOに約2年半ほどおりましたけれども、実は感染症全般のアウトブレイク情  報を収集したり、それを評価したり、また、アウトブレイク対応を行うチームの支援  をするという部署におりまして、そのチームはEPRというEpidemic and Pandemic  Alert and Responseと呼ばれるチームに属しておりました。そのアウトブレイクの  中にははしかも含まれますので、はしかやポリオという面で私は以前にも日本でもい  ろいろやっていたこともありまして、はしかやポリオのチームの方にも半分足を突っ  込んで、橋渡し的なリエゾンとしての役割も担っておりました。特に、はしかやポリ  オに関するアウトブレイク情報の収集を行ったりでありますとか、時には、写真に見  られますようにインドネシアの全国一斉ワクチン接種デー、これははしかのワクチン  の接種デーですが、そういった活動に参加して現場のはしかのワクチンの状況がうま  くいっているかというような辺りを支援すると。これは山の中とか大変厳しい場所に  も行かせていただいたんですけれども、そういった活動に従事してまいりました。そ  のような経験がありましたので、今日は呼ばれたのかなと思っております。 (PP)  世界のはしかの状況として、この図を最初にお見せしたいと思います。これは世界に  おける麻しん死亡の推定ということで、1980〜2005年までの状況がプロットされてお  ります。1980年代前半には250万人を超えるような麻しんによる死亡者数があったと。  感染症による死亡というところでは、小児においてかなり重要な位置を占める死亡原  因であったわけですけれども、予防接種をだんだん実施していくにしたがって死亡数  がだんだん落ちてきたという状況があります。特に1990年代になりまして大体100万人  前後に来ていたんですけれども、この5〜6年の間に一挙に半分ぐらいまで下がって  きたということが非常に大きいかと思います。  はしかという病気は、先進国などでは大体1,000人に1人ぐらいが亡くなってしまうよ  うな病気なんですけれども、栄養状態が悪いような地域になりますと、死亡率が20%  とか30%になるというようなこともあります。私が実際に収集していたアウトブレイ  ク情報などを見てみましても、1,000人とか数千人という単位ではしかによって死ぬよ  うなアウトブレイクが引き起こされたりすると。そういったことで、はしかワクチン  はその子どもの命を保証する一つの重要なツールだったんですね。それで、WHOと  かユニセフ共通の声明としては「We want to alive!」僕らは生きたいと、はしか  ワクチンの持っているそういう重要な位置付けというものが世界的にあるということ  を御理解いただければと思います。  ちなみに、ここに2回目の接種、回数を問わずにワクチンによって守られた子どもた  ちの率を挙げておりますけれども、これが2000年のちょっと前ぐらいから数字がだん  だん上に上がっていっているという様子が見てとれるかと思います。これは1回だけ  のワクチン接種のみならず、2回目の定期ワクチンを導入した国、もしくは後で述べ  ますけれども、補足的ワクチン接種、いわゆるキャッチアップキャンペーンとかそう  いうワクチンを一斉に、ある一定の年齢層に一遍にやってしまうという活動によって  免疫が上がった子どもたちがこういうふうに増えたと。恐らくそれとこの麻しんによ  る死亡数が減ったということは、大きな関連があるだろうと言われております。 (PP)  先ほど100万人ぐらいの規模が50万人を切るという状況になったということがありまし  たが、WHOはもともと2005年にはしかを1999年の100万人という段階から半減させる  という目標を持っておりました。これはかなりうまくいきまして、麻しん死亡数は60  %減少するということで、2005年の状況では大体45万人ぐらいの死亡者数まで落ちた  ということが言われております。そのうちアフリカ地域の活動状況は非常に目覚まし  いものがございました。  ワクチンを1回接種する率というものは71%から77%に上昇いたしまして、先ほど申  し上げましたようなワクチンを一定の年齢層に一遍に接種する、つまりキャッチアッ  プキャンペーンみたいなものを含める、そういった補足的ワクチン接種活動を受けた  お子さんたちが3億6,000万人以上に上るといった活動の状況であります。そして、  230万人の麻しんの死亡がこれらの活動で世界的に阻止されたとWHOは  『The LANCET』という雑誌の上で発表いたしました。 (PP)  現在、麻しんによる死亡がどういった地域で起こっているかという様子を端的に表し  ているのがこの図です。アフリカの中部、サハラ砂漠の南側辺り、赤道周辺から南イ  ンドを含む南アジア、それから、インドネシア、パプアニューギニアという辺り  の地域が、今実は95%のはしかの死亡が報告されている国となっております。これら  の国が47あるということで、WHOやユニセフはこれらの国をターゲットにして、麻  しんワクチンの大々的なキャンペーンとか接種活動もしくは治療の向上という活動を  行っております。 (PP)  WHOは6つの地域事務所に分かれるわけなんですけれども、それぞれの地域事務所  ごとの麻しんの排除というような、もしくは麻しんの制圧という目標を掲げておりま  す。これは2007年の一番新しい情報になりますが、先ほど申し上げましたようなアフ  リカ地域もしくは南アジア地域というものは、麻しんによる死亡というものをできる  だけ減らしていこうという地域として一つ目標を掲げております。しかし、それ以外  の南北アメリカ地域、ヨーロッパ地域、中東地域、日本を含めます西太平洋地域とい  うものが麻しんを排除していこうと。つまり、その地域内で麻しんの土着のウイルス  が循環していないという状況を達成しようと、そういったことを一つの目標に掲げて  おります。この状況の中で、日本も頑張っていかなければいけないということになる  わけです。 (PP)  その日本を含めます西太平洋地域が麻しんを排除していくということで明確な合意を  したのが2005年9月に、ニューカレドニアで行われましたWHOの西太平洋地域総会  であります。これは前年にテクニカルアドバイザリーグループという、技術的な勧告  を行うグループがあるわけですが、そちらからの勧告を受けまして、西太平洋地域か  ら麻しんの排除は可能であるという勧告を受けまして、WPRO地域では2012年までに麻  しんを排除していこうと、それを目標とすべきであるということが、日本を含め、加  盟各国間で合意されたということになっております。  このWPRO地域の中では、これはちょっと古い情報なんですが、2000年ぐらいの情報と  して毎年約3万人くらいの小児を中心とする麻しんの死亡があるだろうということが  推定されておりまして、この死亡はカンボジア、ラオス、中国、パプアニューギニア、  フィリピンが主であろうということが言われておりました。こういった麻しんの死亡  をなくしたり、麻しんによる後遺症の発生をなくすということが一つの大きな目標に  なるわけです。しかしながら、今ここで名前が挙がったすべての国が、実は先ほど述  べましたように、それぞれの地域ごとに数百万人単位でキャッチアップキャンペーン  をやっておりまして、最も新しいデータではこのWPRO地域内の死亡者数は年間5,000人  ぐらいまで減っているんじゃないかというようなことも言われたりしております。こ  ちらの国々の目覚ましい努力というものが非常に目立っているという状況です。  なので、日本を含めたWPROに属する各国は、それぞれの麻しんを排除する計画を更に  強化させる、もしくは発展させていく、そして、実施状況をモニタリングして、それ  を地域委員会に報告するということが求められているわけです。 (PP)  その重要な戦略が幾つかありますけれども、まず、1つ目が、初回の麻しんワクチン  接種率を95%以上に持っていこうという大きな目標があります。  それから、次の目標といたしましては、2回目の接種機会をすべての小児に与えよう  というような目標があります。つまり、これは2回目の定期接種ということや、もし  くは先ほど言いましたようなキャッチアップキャンペーンを含む補足的なワクチン接  種活動で2回目のワクチン接種を確実に行っていくということになります。  それから、症例ごとの麻しんのサーベイランスを確実にやっていこうと。いわゆるこ  れは全数報告と言ってもいいかもしれませんが、できればこれにワクチン接種の既往  というものも含めて、それぞれの患者さんのリストというものをしっかり把握してい  こうということになっているわけです。 (PP)  世界に目を向けてみますと、麻しんワクチンの2回接種というものが定期接種として  実際に行われている国、これは新しい図が見つからずに2004年時点で申し訳ないんで  すが、オレンジ色で示されています。アフリカの多くの国がまだ始まっていない状況  もありますし、南アジア、インドなどでもまだ始まっていない。日本は2006年6月か  ら実施しております。この日本を含めた西太平洋地域では、ベトナムとかカンボジア  などでは2回接種を始めようとして準備をしている状況であると聞いております。 (PP)  次に、麻しんの全数報告、症例ごとのサーベイランスを実施している世界の国の状況  を見てみますと、麻しんの排除を達成したアメリカなどでは勿論、それから、ヨーロ  ッパなどでもかなり大きい、たくさんの国に広がっているわけですが、これを見て私  も驚くんですけれども、アフリカの多くの国が麻しんの全数報告を始めたところです。  私はアフリカのはしかなどのWHOの担当者といろいろ話をする機会がありましたけ  れども、彼は物すごく胸を張っておりまして、アフリカは全数報告をほとんど始めた  んだと。サーベイランスの質をどんどん改善していくけれども、とにかく始めたんだ  と。これはアフリカ地域からの麻しん排除の大きなステップだということをすごく胸  を張って言っておりました。これに比べますと、東アジアの地域はまだまだもっと頑  張っていかないといけないというようなことが挙げられるかと思います。 (PP)  さて、幾つかの麻しんの排除に成功した国の様子を見ていきたいと思います。最も有  名な例が南北アメリカ大陸、1980〜2005年という状況のグラフをお見せしております  けれども、最初はかなりはしかの患者さんが出ていたんですが、補足的ワクチン接種  活動というものに含まれる、いわゆるキャッチアップキャンペーン、大体一般的には  生後9か月のお子さんから15歳未満のお子さんを含めることが途上国などを含めて多  いという状況がありますが、そういうキャッチアップキャンペーンを大々的にやった  と。それで患者さんの発生がガクンと減ったところで、今度はワクチンの接種率どん  どん頑張って上げていくと。これはキープアップキャンペーンと言っていいかもしれ  ません。更に加えまして、3年か4年ごとに今度は5歳未満のお子さんたちについて  の補足的なワクチン接種活動をやっていったと。このような活動の積み重ね、それか  ら、時々アウトブレイクがベネズエラなどで発生しましたので、そういった地域での  活動を徹底することで、南北アメリカ大陸では麻しんの排除に成功したというような  ことが言われております。 (PP)  これを字に書きますとこうなりますけれども、まずは、南北アメリカ大陸にある各国  政府が全面的に麻しんを排除することを合意したということが一つの大きな要因だっ  ただろうと言われております。技術的にはワクチン接種活動としまして、先ほど申し  上げたようなキャッチアップキャンペーン、キープアップキャンペーン、フォローア  ップキャンペーン、これは補足的ワクチン接種活動と言っていいものだろうと思いま  すが、こういったものを実施して、また、サーベイランスもできるだけラボ診断、検  査をするまでのサーベイランスに高めたと。  あと、積極的に患者さんを探すというようなことをしたりとか、地域レベルのモニタ  リングといったことを一生懸命やったと。  また、麻しんを排除していくということが世の中として非常に機運が盛り上がって、  財政面での支援が得られた。また、アメリカにはCDCといったかなり技術の高いと  ころがありますので、そういったところからのサポートが南北アメリカ全体に可能で  あったということも一つの要因だろうと言われております。 (PP)  南北アメリカがいつも目立つわけですけれども、WPROの地域におきましても麻しんを  排除したところがあるということで、お隣の国、韓国の例を挙げさせていただきます。  韓国は1965年に麻しんのワクチンを導入いたしました。1983年にはMMRワクチンを  導入して、1997年には2回の麻しんを含むワクチン接種を導入するということで、こ  の辺りは去年始まった日本のやり方とかなり似ているかと思います。ただ、2000年12  月の時点で、麻しんを含むワクチンの2回接種率が40%弱にとどまるという状況があ  ったようです。  さて、2000年の年が明けまして7月まで韓国では麻しんがかなり流行いたしました。  5万5,000人の患者さんが報告されて、この中には7例の死亡した方が含まれていると  いうことになりましたので、韓国はこの状況を見まして、国を挙げて麻しんを排除し  ていくというような目標を設定したわけです。 (PP)  これが実は患者さんの年齢別の発生数を人口当たりの発生頻度で見ているわけですけ  れども、これを見ますと、大体小学校に入学する辺りから16歳ぐらいまでの間に患者  さんの山が一つできているということがあります。戦略といたしまして、小学校に入  った以降のお子さんたち、8〜16歳の方々についてはキャッチアップキャンペーンと  いうことでワクチンを一斉に接種して、麻しんにかかる感受性を持つ人たちを減らす。  それから、入学する際に麻しんワクチンを必須化することで、新しく小学校に入って  くる方たちの麻しんの感受性者を減らすと。そういったことで接種率の95%以上の達  成を目指すというようなことを一つ目指したわけです。これが580万人キャッチアップ  キャンペーンを伴って行われました。 (PP)  この結果を見ますと、華々しい成功を収めまして、キャッチアップキャンペーンは目  標を上回る97%の接種率を達成したということが報告されております。そして、入学  時の2回目の麻しんを含むワクチンの接種率も99%になったと。それ以降、2002年か  ら現在に至るまで2回目の麻しんを含むワクチンに接種率が95%以上を保っていると  いうことで、韓国における麻しん排除に向けた計画は、非常に順調に進んでいるとい  うことが言えるかと思います。 (PP)  WHO、特に西太平洋地域が設定しました麻しん排除の指標というものに当てはめて  見てみますと、麻しん排除の指標といたしまして、まず、麻しんの発生が少ないとい  う指標が一つあります。つまり、100万人の人口当たり1例以下の確定例が報告される。  これについては韓国は0.9例ということで、輸入例は入っておりませんが、達成しております。  それから、質の高いサーベイランス、韓国は疑い例まで含めてそれをやるということ  ですから、これは数字は余りよくないんですけれども、疑い例のラボの診断とか、確  定例におけるウイルス分類などは確実に行われているというような状況があるようで  す。  そして、何よりも麻しんに対して95%以上の免疫能を有することということで、韓国  は99%以上の麻しん含有ワクチンの2回接種率を達成しましたので、これは非常に良  好な数字であったと。  実際に麻しんの免疫が低い地域に輸入例が入りましても、そこで地域で流行が起きて  しまいますので、実際に輸入例が入ったときにどうなるかということが非常に重要な  ポイントなんですが、輸入例に端を発するアウトブレイクというものが実際韓国では  発生していないという状況から、やはり韓国においては麻しんに感受性のある方は非  常に少ない状況になっただろうと。やはり韓国においては土着の麻しんウイルスは駆  逐された、つまり韓国においては麻しんは排除されたというようなことが言えるかと  思います。 (PP)  最後ですが、最初の方で述べましたように、麻しんの死亡者を減らすというような地  域を特に見てみますと、2005年までに麻しんによる死亡は1999年から考えますと60%  ぐらい減少したと。次の目標としてこれを90%まで減らすという目標があります。こ  れについては述べておりませんが、これが2010年ということになっておりますので、  これを目指して今、WHO、ユニセフは一生懸命先ほどのアフリカや南アジアの国々  で活動しているところであります。  麻しんを排除した地域、それから、麻しんを排除しようという地域では、排除を達成  した地域からの経験を生かすことが大事であるということで、先ほど述べましたよう  に、政府による完全な合意、政府がこれを主導してやっていくといった意思決定が必  要であるということが言えるかと思います。  それと、排除計画のクオリティが十分に高い必要性があるだろうと。どうやって真の  ワクチン接種率を95%以上に達成する必要があるかという辺りについてディスカッシ  ョンする必要がある。それから、接種率が95%を切る状況であれば、キャッチアップ  キャンペーンといったものをどんどん考えていく必要があるのではないかということ  で、またマイクロプランというような言い方をしますけれども、地域レベルでのモニ  タリングやサポートが必要であるということなどが言われております。  それに加えまして、サーベイランスを症例ごと、全数報告にして、できるだけラボ診  断を加えて行っていくと。それから、先ほど述べましたような麻しん排除に見合った  いろいろな目標を設定していって、これを実行していく、これらをやることで麻しん  排除というものが実現していくのではないかと思われます。  私からの報告は以上です。ありがとうございました。 ○加藤座長 砂川先生、どうもありがとうございました。ただいま御報告にございまし  たように、砂川先生はWHOからお帰りになったばかりですので、非常にホットなお  話を伺えたと思います。どうもありがとうございました。  今お話を伺ったところで、委員の方から何か御質問・御意見がございましたら、伺い  たいと思います。 ○岩本委員 先ほどの韓国の例で、割と2000〜2001年に小学校、中学校の発症が多かっ  たと。多屋先生の御発表では、日本の今の小学校、中学校、高校、大学と抗体価の保  有率というのは割と似ているのに、現在日本で余り小・中には幸運にもアウトブレイ  クは起こらなくて、大学とか高校の年齢の高いところで起こっている原因というのは  結局何なんでしょうか。 ○砂川参考人 私は日本の状況はよくわからないんですけれども、まず、今の流行の状  況をよく分析して、それに見合った対応をしていくというところに尽きるのではない  かと思います。  多屋先生、何かありますか。 ○多屋参考人 確かに、韓国の流行のグラフの山は10歳前半をピークとしてあるのに比  べて、日本の方は10代後半から20代に山があるので、確かにおっしゃるとおりだと思  います。理由についてははっきりわかりませんけれども、抗体保有率の状況を見ます  と、日本でも小・中・高の世代には約1割ぐらいの免疫を全く持っていないだろうと  いう人がいらっしゃいますので、1人患者さんが発生して、ある一定の環境下に置か  れれば、どこでも起こってしまう状況にあるのではないかと感じております。 ○岡部委員 韓国のeliminationについては、私も向こうといろいろディスカッションし  たんですけれども、彼らは定期接種としての麻しんの予防接種をするということは決  めたけれども、その実施がどのくらいかきっちりフォローしていなかった。それが我  々の初期のの失敗であったと言っています。つまり、麻しんの予防接種は2回接種法  を決めたけれども、その実施率がきちんと把握できていない、そして接種率も低かっ  たというような状況で、恐らく免疫を受けていないところの集団として小学校などに  起きてきたのではないか、それが韓国におけるアウトブレイクについて彼らのまとめ  ているところです。 ○飯沼委員 7ページと8ページの2000年12月に接種率39%であったのが、あっという  間に95%になったという、これはマジックか何かあるんですか。そういうことの教訓  がもしあれば、これが日本に大いに使えるんじゃないかと思いますが。 ○岡部委員 韓国の方とディスカッションしながら一緒にやっていたので、代わって答  えますと、衛生行政のやり方も我が国と随分違って国の権力が強いわけですけれども、  国が方針を強く打ち出し、決めて、麻しん制圧国家委員会のようなものをつくって、  各地方にデューティとしてやらせ、韓国は国を挙げてすすめたというのがあります。  もちろん副反応モニターも同時にやって、そのほとんどがいわゆるヒステリー症状み  たいなものではあったけれども、それによって救急車で運ばれた人数とかそういうも  のもすべて把握したというのがあります。それから、予算措置とワクチンの供給につ  いてのディスカッションをすべて事前にやって、それでeliminationに向けてスタート  したということがあります。 ○砂川参考人 今、岡部先生がおっしゃっていたことと全く同じことなんですけれども、  韓国の人たちとも話をしましても、これは国家プロジェクトなんだと。韓国は麻しん  を排除するんだという辺りを明確にどんと打ち上げて、それでマスコミも含めて気運  を盛り上げて、こういった活動に至ったという辺りをかなり強調しておられました。 ○岡部委員 追加でいいですか。今のディスカッションには私だけが入ったのではなく  て、例えばアメリカとかオーストラリア、WHOそれぞれの経験のある国を呼んで、こ  れに対するeliminationをどういうふうにやるかというような国際的なアドバイスを  受けながら、しかし、彼らは自分のストラテジーをつくってこういうふうにやるんだ  というようなことをアピールして、2年後にもう一回フォローアップの会議をやると  か、そういう非常に先を見ながらやったということが彼らの物すごくいいところだっ  たと思います。 ○加藤座長 キャッチアップキャンペーンを行ったということと、それに対する接種率  が低かったということも反省に立って、韓国ではいろいろ政策を変えて、しかも、先  ほどの砂川先生のお話ですと、入学時に行っておかなければいけないという必須性を  つくったというようなところも接種率を上げた要因かなと思っております。  白熱した議論をいただいて大変ありがたいんですけれども、夜中になってしまいます  ので、次に移りたいと思いますが、では、1つだけ。 ○岡部委員 感染研情報センター同士の質問で申し訳ないんですけれども、砂川先生、  南北アメリカが一つにしてやっていたけれども、キャッチアップキャンペーンのほと  んどは中南米であって、アメリカ合衆国はストラテジーが違うと思うんですけれども。 ○加藤座長 では、簡潔に。 ○砂川参考人 今現在のストラテジーということですか、排除に向けたときのストラテ  ジーですか。私の理解している限りにおいては、米国のスクール・ロー及び接種する  年齢の対象群とかそういったものは違っていたと理解しております。実際にベネズエ  ラとかブラジルのようなところでは、キャンペーンがうまく進まずにアウトブレイク  が発生したような状況があったので、それに加えるキャンペーンがかなり必要だった  とは聞いています。 ○加藤座長 ありがとうございました。いろいろディスカッションはあるかと思います  が、今日だけで終わるわけではございませんので、十分意見をためておいていただい  て、また次回に発言していただきたいと思いますが、続きまして、本委員会の岡部先  生に感染研を代表いたしまして、はしかの排除計画に向けた御提言をいただきたいと  思いますので、よろしくお願いいたします。 ○岡部委員 情報センターの岡部です。今のようなディスカッションを踏まえて、総合  的に、具体的なところでどういうことができるだろうかということをまとめてみたの  で、お聞きいただければと思います。別にこれが決定した作戦ではありませんので、  これをたたき台としていただければと思います。  今回ははしかの流行があって、そしてはしか対策ということが行われているんですけ  れども、本当に今でよかったなと思うのは、パンデミックの真っ最中とかパンデミッ  クの手前じゃなかったということです。つまり、パンデミックのようなことが起きる  ときに、実際には予防できる疾患について放置した場合には、大きいプラスアルファ  となってえらい目に遭うことになるので、これは今のうちにパンデミックプランの一  つとしてもきっちりやっておく必要があるのではないかと思いました。 (PP)  感染症情報センターでは平成14年10月にはしかの現状と今後の麻しん対策という一つ  の冊子をまとめ、(今はホームページにも載っています。)平成14年、15年ぐらいで  すか、この検討会が開かれたとき、それから、その前のポリオ、はしかに関する検討  会での検討材料にしていただいたことがあります。そして、今のMR2回といったよ  うなことがそこで、検討され、導入されたというのがあります。したがって、はしか  について国が手をこまねいていたというわけでは決してないと思うんですが、そのと  きに幾つか目標設定として書いたことをまず紹介します。これには短期的対策の結果  につき、定期的にその評価を行うとあります。これは毎年、毎年やれるように今なっ  ているので、実態がかなり把握できるようになっています。  当時、20〜30万人の患者が発生したというのは、先ほど多屋さんの方から発表があり  ましたけれども、短期的対策、つまり1歳になってすぐにワクチンを接種しようとい  うことを提言し、結果として、当時の現状の5%以下に患者さんを減じようと述べて  います。目標は年間患者発生数か5,000人前後で、死亡者数は5人以下ぐらいです。  現在の報告数、今年はちょっと多いんですけれども、昨年、一昨年ですと5,000人近く  ぐらいまでとなっており達成をしつつあるのではないかと考えています。 (PP)  中・長期的対策の設定として、年間患者発生数100人以下、死亡数0を目標として幾  つかの対策をとるというようなことも述べていますが、このうち導入ができたのは、  はしかワクチンについては2回接種が必要である、そして、これは風しん対策も同様  であるからMRとして風しん対策も同時に行おうというような中・長期的対策であり、  これについては達成しております。  それから、当時はしかの根絶、eradicationということを目標にするかどうかは世界も  まだ最終決定をしていないので、特にWHO西太平洋地域事務局も決めていないから、  更に検討を続けようというところでペンディングとしてあります。その後、西太平洋  地域事務局では、さっき砂川さんの報告にありましたように、2012年を麻しんの排除、  ゼロに近いeliminationを目標にしたということが当時との違いになってきています。 (PP)  WHOの基準も金科玉条ずっと決まっているわけではないので、ある程度流動的では  ありますけれども、そのためには段階があって、ワクチンを使用していないかあるい   は中途半端に使っているような状態、このときにはしょっちゅうはしかが起きている  んだという時期が初期段階です。したがって、これをコントロールしなくてはいけな  い。でも、それが進んでくると、予防接種率がかなり高くなってきて、大体の麻しん  流行は遮断できるけれども、時々再流行がある。  現在の我が国はこの状況では時々ふっというものが出てくるのは、接種率が高いとは  いえ感受性者がたまってきたときに流行するのだろうと考えられます。したがって、  免疫保有率をきちんと上げておくことによって、かなりのはしかの数は減少し、  eliminationに近づけることができるのではないかというのが、WHOがステップとし  て示したものです。 (PP)  したがって、我が国がこれからやるためには、ついこの間までは、はしかの患者さん  の発生をとにかく少なくして死亡数を減少しようとするコントロール期については、  「1歳のお誕生日にはワクチンを」、これは90%近くまでいっているわけですから、  かなり達成していると言えます。しかし、時々集団発生が出てくるようなものを抑え  る第2段階をこれからやらなくてはいけないんですが、これについてはMR2回接種  の導入が行われてきたわけで、これから期待できるところであります。しかし、それ  に対する対応をとるのがまだ現段階では十分ではない。  そして、世界の方向としてはeliminationというとで、はしかという病気による子ども  の悩みを減らそうと、少しでもゼロにしようということにあるので、これに向ける中・  長期対策を設定しなければいけないんですけれども、これがまだ我が国では不十分で  あろうと思われます。 (PP)  そして、幾つかの提言を資料に示しました。今やらなくてはいけないこととしては、  どこかで発生があったならば、多屋さんの発表があったように、1例でも発生したら  それに対応すると。1例でもというのは、厳密に1例か数例なのかという議論があり  ますけれども、しかし、そういうようなところがあったならば、接触者の調査を行っ  て、周辺にいるこれからうつりそうな人に対する対策をとる。そして同時にやれれば  一番いいんですけれども、ワクチンが足りないという現象も今見られていますが、そ  のような状況下ではプライオリティをつけなければいけない。最初にやらなくてはい  けないのは重症麻しんの発生予防ですから、未接種、未罹患者へのワクチン接種。少  し余裕が出てきたならば、接種歴不明者へのワクチン接種を行う。もうちょっとワク  チン等々に余裕があれば、1回のみしかやっていないという人たちに追加接種を行っ  て、接種によってうまく免疫がつかなかった人、あるいはだんだん免疫が落ちてきた  という、軽症ではあるけれども感染源になるような人に対する接種を行っていくとい  うことがこれから必要なことと思います。 (PP)  ただ、短期的対策はその場でとれるわけですけれども、同じようなことを繰り返して  はいけないとさっき岡田先生からも発言がありましたように、中・長期対策として2  回接種をまずきっちりやっていかなくてはいけない。これは既にスタートはしている  んですが、実際はなかなか2期の接種率が上がらないとか、1期を一生懸命やってい  るうちに2期を忘れてしまった、あるいはこのとき1期の年齢を非常に狭めたために、  2歳、3歳、4歳と抜け落ちている年代があるといったことに対する対策も必要であ  ろうと思われます。しかし、いずれにしても、1期、2期の95%以上の免疫保有率と  いうことをまず最低限必要なこととしてやらなくてはいけない。 (PP)  そのほかに、ルーチンだけで終わるのではなくて、定期接種から外れた人が従来は定  期接種じゃないから面倒は見にくいというような議論もあったわけですけれども、は  しかをもっともっとゼロに近づけていくという目標を設定したのであるならば、漏れ  てしまった人に対しても対策をとらなくてはいけないことになります。それが南北ア  メリカの例、韓国の例が出ましたが、キャッチアップキャンペーンの必要性です。実  際には途上国を中心にして行われるわけですけれども、定期接種率の低い国において  行った場合には年齢幅が広く、接種歴・既往歴を無視して一斉にできるわけですが、  幸いか不幸か、幸いだと思うんですけれども、日本の場合はかなり定期接種率は上げ  ることができるので、大がかりな途上国スタイルのキャッチアップはいらないかもし  れません。それから、日本の土壌からいって本当に一斉のキャッチアップということ  も私は難しいように思います。  ほかの国もキャッチアップと言いながら地域的なキャッチアップだったり、なかなか  進まないといったことがあるので、日本的なものを考えていく必要があると思います。  それにしても現在接種を受けていない、あるいは2回目の接種機会がなくなってしま  った、あるいはこれからもない、アウトブレイクが起きやすいような集団である小学  校、中学校、高校、できれば大学生年齢も含めたいんですけれども、少なくとも小・  中・高を対象にした2回目の接種の機会を設定することが必要ではないかと考えます。  例えばですけれども、中学1年と高校3年の年齢で、いわゆるキャッチアップに相当  すると思うんですけれども、このときに2回目の接種を実施してこれを5年間やれば 少なくとも中学・高校年齢間での感受性者はなくなっていくと思われます。大学年齢以  上にも接種機会の設定を進めていってはどうかとも考えます。今回のように大学自体  が困ることがあるということから、ただし、大学に皆さんが入るわけではないので、  その年齢に対する対応ということも考える必要があると思います。  それから、先ほどちょっと申し上げた、今までは生後90か月までは受ければいいとい  うことから、1期の年齢を12〜24月と狭め、2期の年齢も小学校入学1年前とし  たところから、少数ながら従来の定期接種漏れ者が出ているので、これについてはや  はり何らかの措置をとっていかないと、感受性者として残ってしまう可能性がありま  す。 (PP)  学校で発生するとえらい騒ぎになるというのは、今回いずれのところでも経験したわ  けで、その苦い経験を少しでも生かし、起こさないためには、例えば小・中・高、大  学も入りますが、あるいは会社も含めて就職時とかそういうときに健診があるわけで  すから、特に小・中・高・大は入学時、これも先ほど御意見がありましたけれども、  入学時のチェックでこのときに感受性者対策、つまり接種していない人あるいは2回  目の接種をやっていない人に接種を強く促すということが必要ではないかと思います。  これは実際は小学校は今まで文部科学省の通知及び厚生労働省からの通知で、小学校  入学前にはチェックをして必要なワクチンを勧めて頂きたいとようなことを書いてあ  るけれども、実際にはそれをやられているところが少ないといったこともありますの  で、それを強化し、なおかつこれは学校という集団ではきちんとやっていかないと、  今回のような痛みがまた数年後に起きる可能性があることを指摘しておきたいと思い  ます。  特に医療関係の教育機関、これには医学部、看護学部、教育学部等が含まれますけれ  ども、子どもたちに接することが多い教育機関であったり、それらの職業に従事する  人は別格として、職業上の必要あるいは実習上の必要からも強く勧めるべきではない  かと思います。勿論強制というのはできないので、その辺はきちんと説明してという  ことが必要であります。 (PP)  その他ですが、私たちを含めて小児科関係者が努力しなくてはいけないところですが、  初診時であったり、いろいろなところで海外への渡航などもあるでしょうし、そうい  う機会を通じて予防接種歴の確認をし、未接種者に呼び掛けるということも重要です。  20代の感受性者の対策もこういうようなときにやれるでしょう。  もう一つは、予防接種を受けやすいような形にするという工夫が必要になります。  Immunization dayといったようなもの、あるいは予防接種休暇といったようなものが  その中に入ってくるだろうと思われます。 (PP)  そして、基本的に必要なこと、ちょっと細かい話が今までの(1)から(5)だったんで  すけれども、柱がないとできません。我が国は残念ながら今のところその柱が決まっ  ていません。つまり、今のアウトブレイクをどうするのかということは頭を低くして  いれば過ぎ去ってしまうかもしれませんけれども、これからまた出てくることがあり  得ます。それから、国際的な麻しんゼロの問題、パンデミック対策というようなこと  も考えた場合には、eliminationを視点に置いて国として方針を固め、国際的な宣言を  していただくということが必要ではないかと思います。  ポリオ対策はポリオ根絶委員会というものがあって、常にウオッチングをやっている  わけですけれども、それに対して同様にはしかに対するelimination委員会といった  ようなものを設置していただいて、いろいろな方策をきちんと経時的にディスカッシ  ョンしていくということが必要であると思います。  それから、何といってもきちんとしたデータが入ってこないといけないので、はしか  については現在の定点報告によるという役割はもう果たしてきたと思うので、そろそ  ろ全数報告に切り替えるべき時期だと思います。  前の感染症法改正のときに、はしかの全数報告もディスカッションされていましたけ  れども、当時10万人の発生を全数報告するのは無理であるという議論がありましたが、  今の1万人弱、数千人の単位になっていけば何とか可能ではないかと思います。とい  うのは、現在多い疾患を拾う全数報告疾患が腸管出血性大腸菌で年間3,000〜4,000例  の報告になります。また、そうなってくると実験室診断も必要ですし、周辺的な感染  症流行予測調査によるモニターというようなことは強化してやっていかなければいけ  ません。さっき韓国のときにお話も出ましたけれども、それには常にそれに見合うだ  けのワクチンあるいは試薬類といったようなものを確保しておくことが基本的に必要  になると思います。この3つ、国としての宣言・委員会の設立・全数報告がまず基本  にあって、そこから細かいやり方を決めていけばいいのではないかと思います。  更に進めて、そういったようなワクチン全般に関する中・長期的プランを考えるとこ  ろが我が国にありませんので、今議論が随分起きていますけれども、そういう国に対  する助言であったり提案ができるような公的な機関が必要ではないかと思います。米  国のACIPというのが一つの手本になります。  それから、今日の中心ははしか対策でありますけれども、風しん対策もほぼ同様の戦  略で可能です。幾つかの先進国は既に風しんに対するeliminationということを念頭に  置きながらMMRを使っているわけですが、我が国は今MMRはありません。しかし、  MRワクチンを使うことによって風しん対策も一緒にきちんとできるようになれば、  かなり先進的な方向になると思います。  また、予防接種はどうしても極めてまれでありますけれども、紛れ込み例も含みなが  ら健康被害の事故が起こり得るということは、勧める側としては覚悟しておかなけれ  ばいけないことですけれども、因果関係が明らかに否定できるものは勿論除くわけで  すが、疑わしき事例、因果関係の可能性があるのではないかというものに対する救済  は、手厚くやっていく必要があります。しかし、今の傾向は、それについて法的な責  任も同時に追及されるというようなことで、むしろ救済についての考え方が厳しくな  ってきているといった状況があるので、これは社会の考え方もありますが、こういっ  たようなことにも一方では手厚くしていく必要があるだろうと思います。 (PP)  そして、この委員会や何かが中心になって、定期的な評価を行っていくということに  よって、次の作戦がいいか悪いか、どういうふうにしようかということが検討される  べきであります。今から2012年がeliminationの目標であるので、真ん中の2009〜2012  年辺りには、幾つかの今回のことで動きが出るならば、それに対する中間評価を行う  必要があると思います。例えば、目標値として全数報告で50例以下。そうすると、現  在の10分の1以下になるんですけれども、これは人口100万人当たり1以下になるので、  ほぼelimination達成ということになります。そして、輸入症例からの流行の拡大はな  いと。今はむしろ輸出をしているわけですが、輸入されても大丈夫というような状況  をつくって確認をしていく必要があります。 (PP)  委員会としてはちょっと不謹慎なスライドが最後にありますけれども、これは江戸時  代にはしかから全快してお祝いをしている絵です。はしかのゼロというのは世界がや  っているから取り組むということではなくて、放っておくと我が国の子どもたち、あ  るいは大人も巻き込んで重症感染の流行的発生というようなことになるので、きちん  とストラテジーを立てていく必要があるのではないかと思います。となれば、委員会  が酒盛りをやるわけにはいきませんが、2012年に何とかこういうお祝いごともできる  ようになるのではと考えております。  以上です。 ○加藤座長 岡部先生、ありがとうございました。  幾つかの御提言をいただきましたが、特に中学校の1年生、義務教育ですから高校3  年生と言っていいかどうかわかませんけれども、中1、高3辺りに時限的に5年くら  い掛けて接種を勧めるような方向もよろしいのではないかということや、また、従来  12〜90か月であったものが24か月までとなったために接種し損なっている方がいる可  能性もあるので、その辺の調査も必要かなということで、いろいろな委員会の設定等  も必要かなというような御提言をいただいたかと思います。  まとめてやってしまいたいと思いますので、続いて、脇口先生から小児学会からの提  言または見解・要望についてお願いいたします。 ○脇口参考人 それでは、学会からの提言の前に少し参考資料を説明させていただきま  す。今日お話ししたいことが幾つかございますが、まず、先ほどから話題になってお  ります1ページ目(参考資料)の右下にある現在の小学生以上の1回接種しかできて  いない子どもたちが積み残しになっている、これに対する対応が必要ではないかとい  うこと。  それから、これは麻しんにかかってもそうかもしれませんが、ワクチンの効果という  ものは決して永続的なものではなくて、大体十数年経つと半分以下の抗体陽性率にな  るというデータもあり、実際ワクチンを接種した人と麻しんに罹患した人では抗体価  に随分差があります。  1991〜1992年に掛けて高知県で流行したとき、これは室戸地方の子どもたちですけれ  ども、ワクチンを打ってからの年数ですが、大体小学校3〜4年生辺りにワクチン接  種後の修飾麻しんが多発したというようなことがございました。  2001年の大流行のときには、高知県の全体の10%の患者さんがワクチン接種例でした。  今回ほどではありませんが、流行があればこれまで2%前後だといわれていたワクチ  ンフェーラー例が随分増えてくるというようなことも既に経験されております。  現在、成人の麻しん抗体陽性率及び抗体価そのものも下がってきておりまして、臍帯  血の抗体価も随分下がってきております。このままですと成人や乳児・新生児麻しん  さらには亜急性硬化性全脳炎が増加して非常に危険な状況になると予想されます。ど  れほど悲惨なものであるかという脳萎縮が高度なCTを見ていただくだけで、こんな  になるんだという病気であることが理解されると思います。勿論ワクチン接種例でも  非常にまれにあるんですが、自然麻しんに罹患することで起きるこういう子どもたち  を限りなくゼロにすることが必要だろうという個人的なお話を先にさせていただきま  した。  資料に入らせていただきますけれども、日本小児科学会では、私が理事になる前から  予防接種あるいは感染対策というものに対して随分提言も行ってきておりますけれど  も、麻しんに関しましては昨年7月、別所会長の名前でまず厚労省への要望が出され  ております。この中で2001年辺りをピークとして、数年前まで年間20〜30万人の麻し  んの患者さんが出ておりましたけれども、平成17年には報告例として545例、推定する  と1,000人前後ではないかという程度まで減少させることができております。これは、  ワクチン接種率の向上によるものでありますし、平成18年4月からMRワクチンの2  回接種が導入されたことで、更に麻しん抑制の効果が期待できるのではないかという  ことが考えられるということであります。  問題は、残された感受性者に対する対応というものが非常に重要であろうということ。  それから、過去に海外においても本年のように年長者の麻しんの流行というものが見  られておりますので、本年のような麻しんの流行がおき得ることであるということを  昨年の時点から警告といいますか、注意していただきたいということを言ってまいり  ました。そのためには、サーベイランスを強化すること、先ほどから岡部先生の発言  にもありましたように、全数把握というもの、どういう種類の麻しんが発生している  かということをきっちり把握していくことが重要であります。  昨年も関東地方で小流行がございましたけれども、こういうことに対する適切かつ迅  速な対応をするには、きちんとした診断と発症者に対する学校あるいは家庭での対応  を行政的にもきっちりしていただくことが必要でありましょうし、現在のように例え  ば5,000あるいは1万以下の発生例になりますと、定点では把握できない例があるとい  うのは先ほど来発表があったとおりであります。これをきちんと把握して、我が国で  どのような状況にあるかということを把握するには、やはり全数報告が必要であり、  予防接種の接種率、積み残しの対応というものが必要ということです。早く対応しな  いと2012年の麻しん排除計画に乗り遅れる危険性があります。  本年の麻しん流行につきましても、6月5日付で見解と要望ということをホームペー  ジに出しておりますけれども、この内容は大体昨年に出したものと同じようなことで  あります。大学の休校というのは前代未聞のことでありまして、このようなことが二  度と繰り返されないために早急な対応が必要であるというのは、今日の多くの委員の  お話からここに御出席の皆様方は御理解されたことと思います。  これからとるべき対策として、岡部先生の話と重複することになりますけれども、1  番としまして、麻しんに対する正確な状況把握と対応策を検討し、我が国における麻  しん排除の戦略を策定するための公的な麻しん対策委員会を厚生労働省内に早急に設  置するということ。  2番目といたしまして、麻しんサーベイランスについて、これまでの定点報告から全  数報告に切り替え、対策に必要な正確な情報を速やかに把握する。  3番目といたしまして、残された感受性者、要するに小学生、中学生、高校生、大学  生、それ以上の年齢の方も勿論いらっしゃるわけでありますけれども、その方々に対  する対応、少なくとも学校に行っている子どもたちへの対応というものを具体的に行  わなければならないだろう。  それに対して、厚生労働省だけでは先ほどの教育委員会、学校の壁というものがござ  いまして厚生労働省だけでは限界がありますので、文部科学省との協力が必須と考え  ております。そのことによって初めて、麻しんワクチン接種の積み残し者に対する積  極的な勧奨システム及び接種率の向上が得られる可能性が期待できると考えておりま  す。  接種率の向上は何度も皆さんおっしゃったとおりで、最低でも95%以上の接種率が必  要であろうと考えます。このためには、積み残しのワクチン接種も含めますと、現在  でさえワクチンが不足しておりますので、ワクチン増産に関する早急の対応というも  のをしていただきたいと望むものでありますし、同時にMRワクチンがきちんと接種  されますと、赤ちゃんの奇形症候群であります先天性風しん症候群の予防という意味  でも大変重要な、かつ、価値のある効果が得られますので、積み残しに対する接種も  単に麻しんの予防というだけではなくて、MRワクチンの接種で先天性風しん症候群  の予防対策も行っていただきたいということが、小児科学会としての提言であります。  現在もワクチンが足りませんし、抗体の測定もままならないという状況でありますの  で、ワクチンの接種対象者はトリアージが必要であろうというのは岡部先生の御意見  と同じでありまして、まず、麻しんワクチンを接種していない、明らかに感受性者と  思われる人たち及び第1期の1歳の子どもたちへの接種量を早急に確保し、その後で  ワクチンの増産が得られてから順次secondary vaccine failureあるはい更に年長の  人たちというふうに接種していただきたいということが小児科学会からの提言でござ  います。 ○加藤座長 どうもありがとうございました。岡部先生と脇口先生から、感染研からの  提言と小児科学会からの提言ということでお話をいただきました。ありがとうござい  ました。  予定した時間を少しオーバーしてございますけれども、委員の方々から御意見がござ  いましたら少し伺いたいと思います。 ○蒲生委員 多屋先生の御報告にもありましたように、風しんの抗体が9〜17歳で下が  っているということもあり、今回の麻しんのこともあり、妊娠前のMRワクチンの接  種率を早急に上げる必要があると思います。低年齢での妊娠が増えておりますし、  2006年度の初婚の婚姻者の約4分の1が婚姻前に妊娠しているという報告もあります。  やはり結婚イコール妊娠の可能性があるということではない社会になってきておりま  すし、16歳、17歳でも妊娠する方がいますので、その辺は5年計画では間に合わない  ですから、非常に早く対策をとる方がよいのではないかと思っております。  それから、ワクチンの料金は対象の年齢外で受けますと高いので、是非国としての対  策をお願いしたいと思います。子どもたちというのは勿論自分では出せないんですけ  れども、親としても教育費が掛かる年齢なので、できるだけ出費は押さえたいですし、  予防接種が後回しにならないように是非補助をいただければと思います。  また、長期的なところでは麻しんを初めとする重症な感染症について、日本の人たち  一人一人が麻しんはこういう怖い病気なんだとか、妊娠中に風しんにかかるとこうい  うことになってしまうんだということを子どものころからよく理解しておくための教  育が必要だと思います。小学生には小学生の教育の仕方がありますけれども、小・中、  少なくとも義務教育の間、できれば高校生ぐらいまで今、勧奨接種になっている、勧  奨接種が検討されている感染症ぐらいについてはよく理解しておかないと、母親にな  ってから、保健所から連絡が来たから受けますという形では困ると思います。是非教  育の部分でもこれから長い期間は掛かると思いますが、検討していく必要があるので  はないかと思いました。 ○加藤座長 どうもありがとうございました。蒲生委員には座長のまとめのようなお話  をしていただきまして、私の出番がなくなったと考えております。  ちょうどお時間になりました。非常に白熱した議論をいただきまして、本当に座長と  してありがたく思います。ありがとうございました。本日は、今後の麻しんの対策に  ついて、本当に貴重な御議論をいただきました。今回の検討会の議論の内容につきま  しては、事務局で取りまとめていただきまして、また引き続いて議論をしていただき  たいと考えてございますので、各委員の方々には御協力のほどよろしくお願い申し上  げます。  最後に、事務局から御報告がございましたら、よろしくお願いいたします。 ○三宅課長補佐 報告事項でございます。資料7と資料8でございますが、青森県の健  康福祉部長より予防接種に関することで疑義照会が参りましたので、それに答えたこ  とについて御報告をいたしたいと思います。  まず、資料7につきましては2ページ目、DPTワクチンの第1期の予防接種の初回  接種時おいて、対象者が発熱を呈しているなど予防接種を行うことが不適当な状態に  あったことにより、予防接種実施規則第9条に定める接種間隔を超えて予防接種を実  施せざるを得ない場合については、当該接種は予防接種法に基づく定期の予防接種と  して取り扱って差し支えないということを回答しまして、各都道府県の関係部局に周  知したところでございます。  また、資料8につきましては、今回の麻しんワクチンとも関係がございますが、やは  り疑義照会が来まして通知をしたのですが、生後12月未満の時点で麻しん及び風しん  ワクチン接種を受けた児については、予防接種法施行規則第2条第1号に規定する  「当該予防接種に相当する予防接種を受けたことのある者」に該当しないことから、  定期の予防接種の対象者として差し支えない旨を回答したところでございます。  以上、御報告でございます。 ○加藤座長 どうもありがとうございました。事務局から御報告をいただきました。  それでは、本検討会は終了でございますが、事務局からよろしくお願いします。 ○山田課長補佐 それでは、次回の第14回予防接種に関する検討会でございますが、  7月9日月曜日、17時半から19時半を予定しております。会場につきましてはまだ未  定でございますので、後ほど御連絡申し上げます。その会におきまして、関係者及び  関係団体からのヒアリングを予定しております。関係学会及び被接種者代表、保護者  の方でございますが、その団体、ワクチン製造にかかわる者からの団体、先進的な取  り組みをしております沖縄県のはしかプロジェクト等大学関係者等からお願いしよう  と考えておりまして、現在人選をしているところでございます。  以上でございます。 ○加藤座長 長い間御協力をいただきまして、どうもありがとうございました。今後と  もどうぞよろしくお願いいたします。