07/06/07 「中国残留邦人への支援に関する有識者会議」第4回議事録 日  時:平成19年6月7日(木)14:00〜16:00 場  所:法曹会館 2階「高砂の間」 出席委員:貝塚座長、猪口座長代理、岸委員、堀田委員、森田委員、山崎委員 (議事録) ○貝塚座長 それでは、これから「中国残留邦人への支援に関する有識者会議」の第4 回を開催したいと思います。  本日は、金平委員が御欠席との連絡をいただいております。  それでは、議事に入りたいと思います。本日は、これまでの議論の論点を整理し、取 りまとめに向けて議論を深めてまいりたいと思います。  初めに、事務局から論点整理した資料を説明いただき、その後に意見の交換をいたし たいと存じます。それでは、事務局から御説明をお願いいたします。 ○野島援護企画課長 それでは、事務局から資料の御説明をさせていただきます。お手 元にお配りしています「これまでの議論の整理」と題するものでございます。これは、 前回貝塚座長より御指示いただきました皆様方各委員のこれまで御議論いただいた内容 を事務局なりに整理をさせていただいたものでございます。  3つの柱ということで分けさせていただいております。これも前回、座長が整理をさ れたものに従っております。これを読ませていただきます。ページを1枚おめくりいた だきたいと思います。           1.中国残留邦人問題についての基本的考え方 ○ 中国残留邦人が置かれている特別の状況に鑑みれば、生活の安定とりわけ老後の生 活の安定を求めていることについては、理解できるのではないか。 ○ 法的な責任の議論ではないことについては、委員の間で見解が一致しているのでは ないか。 ○ これまで戦争被害に対する国の補償は、軍人・軍属等に対して支給される恩給、援 護年金等のみに限られている。責任問題から議論を切り離し、中国残留邦人のこれか らの生活をどのように支援するか、という観点から議論すべきではないか。 ○ 中国残留邦人は、   ・ 長期にわたって中国に残留を余儀なくされたため、日本人としての教育を受け ておらず、日本語が不自由であること   ・ 帰国が遅れ、戦後の経済復興の恩恵を享受できないまま、現在高齢に達してい ることが「特別な事情」と言えるのではないか。 ○ 国がいろんな施策を講じてきたことは認めるが、ここまで中国残留邦人が困窮に陥 っていることに鑑みれば、今までの施策は十分でなかったということを反省すべきで はないか。 ○ 支援を行う場合、どの程度まで支援すべきかについて考える必要がある。  その際、一般国民とのバランスに配慮が必要ではないか。 ○ 中国残留邦人はかなり特殊なケースであり、従来の制度が予定していなかったので、 可能な限りフレキシブルに対応すべきではないか。                2.支援の方法について ○ 老後の生活の基盤となるのは年金である。拉致被害者と同様、保険料を国庫で追納 するということが考えられないか。 ○ 一般の日本人であれば、基礎年金以外に、多くの人は一定の蓄えをして老後を迎え ているが、中国残留邦人には、そういった蓄えもないので、この点に着目した給付の 構成ができないか。 ○ 生活保護制度には困窮に陥った原因によって差別しないという無差別平等原則があ り、この原則は崩すべきではないのではないか。 ○ 生活保護に中国残留邦人の方々は抵抗を持っており、中国残留邦人は満足しないの ではないか。 ○ 生活保護を適用するとすれば、生活保護の運用について、基礎年金の一定程度を収 入認定除外にするなど思い切った施策が考えられないか。 ○ 一般国民に対する施策とのバランスを図りながら、制度の枠内での対応とするか別 の仕組みを設けるか判断が必要ではないか。         3.中国残留邦人に対して社会や国民がなすべきこと ○ 中国残留邦人についての情報が乏しく、社会全体で共有されて来なかったことを反 省し、継続的にフォローすべきではないか。 ○ 対策についても一過性のものにせず、終身見守るという覚悟が必要ではないか。 ○ 運用の問題が非常に重要であり、中国残留邦人の痛みを感じながら思いやりをもっ て対応すべきではないか。 ○ 中国残留邦人が既に高齢化していることを踏まえると、中国残留邦人に対し、一律 に日本社会への同化を強制するのは妥当ではなく、中国残留邦人だけのコミュニティ ーの中で安住する可能性も含め、多種多様なメニューを用意すべきではないか。 ○ 中国残留邦人の個々の抱えている事情は異なるので、「中国残留邦人」としてひとく くりに論ずることはリスクが高いのではないか。あえて一般化して言えば、自分の意 図がうまく伝わらないなどの「孤独感」をどうするのかが大きな問題ではないか。 ○ 中国残留邦人は生活習慣や文化の面では中国人に近いのではないか。多文化共生と いう考え方で対応すべきではないか。 ○ 地域社会における支援を検討するに当たっては、地域社会における様々な活動の担 い手であるNPO、ボランティアなどとも連携を図ることが重要ではないか。 ○ 中国残留邦人の中国語能力など中国残留邦人を社会としてどう活用するかという発 想の転換が必要ではないか。これは、中国残留邦人に生きがいを与えることにもつな がるのではないか。  以上、皆様方の御議論を事務局なりにまとめたものでございます。よろしくお願いし ます。 ○貝塚座長 ただいまの資料は、前回特にいろいろな御意見が出て、それを主要な論点 についてまとめたといいますか、基本的な考え方、支援の方法、それから我々がなすべ きことといいますか、そういうことでありまして一応3項目に分かれておりますので、 まず1番目の論点から始めて、ほかの論点と関連する場合は当然一緒に御発言いただい ても差し支えありませんが、そういうことでそれぞれについて、あるいは全体について 皆様の御意見を伺いたいと思います。  では、最初の方の論点からどうぞ御自由に御発言がありましたらお願いしたいと思い ます。岸委員、どうぞ。 ○岸委員 基本的な考え方の言い方でありますが、確かにこの場で法的な責任の議論を やっていたのではとてもじゃないが時間が足りないということもありまして、法的な議 論、責任論というのは避けましょうという合意があったと認識してはおりますが、基本 的に中国残留邦人が長期にわたって残留せざるを得なかったのは、戦後の一貫した引揚 げ業務に対して国、政府が極めて冷淡であって消極的であったことが大きな要因であっ たろうと思うので、その点はやはり明記すべきだろうと思うんです。  救済の基本的な考え方としても、非常に特別な事情のあるお気の毒な方だから支援す るんだという以上に、やはり基本的には中国からの引揚げ援護に対して極めて消極的で あったと、法的とは言わないにせよ一定程度の責任があるからこういうような施策を国 としてやるんだ。税金を投入してでもやるんだということは、何らかの形で触れておく べきではないかと考えております。 ○猪口座長代理 今の問題に関連して考えることは、総理の指示にも、要するに個人の 尊厳が感じられるような結果を出してほしいということがまずありますが、私は責任と いうことで、法的なというと、戦争をやったとか、戦争中とか、戦争後とか、帰国後と いうのもいろいろあると思うんですが、法的責任という議論をするととんでもなく難し くなるということを認識しながらあえて提案するのは、国家の尊厳、国民というか、同 胞にこういうことをやったことに対して、いいかげんなことをやって尊厳が保てるのか ということが1つ。  それから、国民としても同胞に対してこういうふうなことをやって、あなたは自分の 尊厳を持っていると言えるのかというような感じのことを入れることによって、法的責 任というと何もないということになってしまいかねないところがあるから、やはりこう いうことを起こしてしまった国家の責任、それから国民の責任というものを、自分の尊 厳に照らしてこんなことをやるというような文言が入ったら、私としては納得できやす いのであります。  取り分け法的責任ということを言わないとなると、やはり結果を出す。つまり、施策 がかなり変わったときにしばらくしたら、やはり帰ってきてよかったという方が何か数 字的に見えるような形があるような政策をつくってほしいというふうに文言としては書 くべきではないかと思います。もちろんやってみなければ結果はわからないということ になるかもしれませんけれども、それは一つひとつ考えれば、結果がよくなるような施 策を1つ、2つ、3つ、4つと結合して、結果としてやはり帰ってきてよかったという 人がかなり増えていくというふうに持っていくのが一番いいのではないか。  私は、この基本的な問題としては法的責任、政治的責任と言ってもきりがなくなるし、 政府はそんなに乗り気でもないとしたら、こういうような形で国家の尊厳、同胞として の尊厳はそんないいかげんなことをしてきたことに対していいのかという形でやるとい うのがいいのかなと私は思います。 ○貝塚座長 どうぞ。 ○堀田委員 これは、全然責任がないのに何らかの措置ということは基本的には考えら れないことなので、何らかの措置を講ずる以上はその責任があることは大前提なんです けれども、それを分析して法的責任かどうか、そして法的責任と言っても根拠の求め方 によって、何に求めるのかによって違ってくる。それから、その免責をするのも、戦争 ならば免責するのか、自然ならば免責するのか。これまた議論がいろいろ分かれてきま すので、責任の中身を詰めるといっても永遠に詰まらないだろう。  だから、私は広い意味での責任があることを前提にしながら、中国残留邦人について こういう具体的な特別事情があるので、それについてこういう対策をとるんだという包 括的なといいますか、いろいろな立場の人が見ても基本的にそれはそのとおりだと言え ることに限定して書くのがこの種の文書としてはいいだろうと思うんです。  私は原状回復義務と言っていますけれども、国ですから国民を守る義務があるので、 国が国策で出た人たちについて敗戦という事情になった以上は一刻も早く原状に回復し て幸せにやってもらう。これは国として基本的な国民を守る義務ですから、大きく基本 的にはそういう考え方で、それに当たるような事情をずっと並べるのがいいように思い ます。  ですから、法的な責任の議論であるとか、ないとか、責任問題の議論と切り離すとか、 そういう記述は要らないのではなかろうか。余分ではなかろうか。むしろ中国残留邦人 は2つ特別事情を挙げておられます。山崎さんは4点挙げられたそうですけれども、そ ういう原状回復義務という観点から見るといろいろ特別な事情がありますし、国を出て いかれた事情の国策との関係もあるので、責任論と関係なくいろいろな特別事情をずっ と並べていって、こういう事情があって、こういうわけで帰れなくて、だから今こんな 困窮状態にあられるので、これは何とかしなければいけない。そういう特別事情を元の ところからずっとしっかり並べて書いて、そういう事情をかんがみれば当然これはこう いう措置をとるべきだと、そういう流れがいいのかなという気がします。 ○貝塚座長 法的な責任の議論でないことは一致しているのではないかというのも、そ れはそうなんでしょうけれども、もう少し道義的というか、あるいはもう少し別な意味 での配慮が足りなかったということはそうなんだろうと思うんです。それは必ずしも法 的ということではなくて、いろいろな皆さんの言っておられる御意見は、私は余りそう いうものは得意ではないんですが、経済学者は特にそうですが、やはりある種の倫理的 な負い目というのを我々は持った上でというふうな感じの文章を入れるか、あるいは堀 田委員が言われましたようにかなり具体的にこれこれしかじかの特別な事情があるから という話にしていくのか。作文の仕方はいろいろあり得ると思うんですが、ここは最小 限何か付け加えないと、という気はいたします。 ○森田委員 これは大変難しい問題だと思いまして、どのように文章として表現するか は事務局の方に工夫していただきたいと思いますけれども、責任の話で、今、堀田先生 の場合には責任が根底にあることは間違いなくてそれは避けて通れない話だとおっしゃ いました。それはそうだと思います。  ただ、ここで哲学論争をするつもりはございませんけれども、いろいろな形の責任と いうものがあると思いまして、原状回復というのはどこまでを含むかはわかりませんけ れども、現在あることについて過去の原因行為に対する責任を根拠にして何らかの救済 を講じるというのも一つの考え方だと思いますが、今の日本の憲法の考え方をとるとし ますと、現在我が国で生活される国民である以上はまさにその尊厳のある生活ができる ように現在及び将来にわたってするのも国家の責任だという責任の考え方もあり得ると 思います。私はどちらかといいますと哲学論争をやって責任の議論が拡大していきます と、かえって混乱し、猪口先生がおっしゃったように結論を出すまでに時間がかかると いうことは、この問題の解決にとって余りいいことではないと思います。  そういう意味で、責任という考え方を取るならば、1つは現在及び将来にわたって尊 厳がある暮らしを保障するというのが国家の責任である。そういう責任のとらえ方もあ るのではないか。責任という問題がどうしても重要だとしますと、そういう考え方もあ り得るのではないかと思います。 ○山崎委員 私は法律上の問題はわかりませんが、前回の資料でもこれまでの判決につ いては国側が7つの地裁で勝訴をしている。しかし、敗訴をしている場合も神戸地裁で あるということでございます。  今、こういった法廷で争われていることでございますから、法的な責任論については 裁判所の判断に任せることにしてはどうでしょうか。  ただ、座長がおっしゃるように、道義的な責任というのは恐らく国民皆が負っている ことだと思います。 ○貝塚座長 ほかにこの点に関していかがですか。 ○森田委員 余りこだわるつもりはございませんけれども、道義的責任というのはもち ろんあることは間違いないと思うんですが、この言葉の意味合い自体が拡大していきま すと無責任と同じになりかねないということを危惧するものですから、その意味ですと 何らかの道義的責任だけではなくて、もしある程度の責任ということを理論の中に入れ るとしますと、やはり何らかの意味付けというものが必要ではないかというので先ほど 提案といいましょうか、そういう考えもあり得るということを紹介させていただきまし た。○貝塚座長 正直言って、この表現はなかなかある意味ではいろいろ……。  局長からもしございましたらどうぞ。 ○中村社会・援護局長 今日お出ししたこれまでの議論の整理は、ある意味で3回にわ たり委員の皆様から出された御意見をかなりぎゅっと圧縮してまとめている点もありま すので、法的な責任の議論でないことについては委員の間で見解が一致しているのでは ないかということもある程度そういうことで乱暴に書いてありますので、今の先生方の 御意見を踏まえて、もう一回どういう整理の仕方ができるのか、考えさせていただきた いと思います。 ○貝塚座長 付随して申し上げれば、やはり法的な責任というのは先ほど山崎先生が言 われたように、ある意味では司法の判断とか、そういうものと関係していて、我々はそ れはもちろん知っていることは知っているんだけれども、しかし、必ずしもその次元で ここでは議論しているわけではない。要するに、法律に素人の人間が考えてみると、煎 じ詰めれば今までの対応は非常に至らなかった点がある。その点は十分認識してそうい う文章をどこかに入れた方がいいと、多分皆さんもそれなりにそういうふうにお考えで はないか。  要するに、余り形式論で話をするのではなくて、その種の過去の多少の反省の意味も 込めたような何かを入れて、それでこれからは森田委員が言われるように、将来はそう いう形でこの問題について対応するのが基本的には重要であるという感じがよさそうに 思うんですが、いかがなものでしょうか。一応皆さんその点は余り大きな意見の差異は ……。 ○岸委員 座長のおっしゃるとおりのことを、私は言いたかったので。 ○貝塚座長 それでは、皆さんのいろいろ思っておられる御真意があるわけですが、そ れを反映したような文章を入れて、そこを基礎にしてこういう議論をやりましたという ふうにした方が、やはり社会に対するメッセージとしては重要ではないかとは思います。 そういう点をちょっと考えさせていただいて、なかなかこれは難しい文章になりますが、 それをなるべくうまく考えさせていただくということで、とりあえずよろしゅうござい ますでしょうか。  それでは、ほかの点についてどうぞ。そういう文章が入れば、ややあとは技術的な話 になってきても構わないんじゃないかと思います。あるいは保障は今までこういうケー スがあったけれどもとか、そういう結論があって、しかしその辺の文章の全体をどうす るかですが、中国残留邦人は極めて事情としては特殊であるということもうまく組み入 れて、先ほどの話と結び付くような形で作文できればいいのではないかと思います。  ほかにどうぞ。 ○堀田委員 この総論のところで、これが後の方の判断につながっていくと思いますの で、特別な事情をずっとしっかり書いて並べるということが大切であると同時に、2ペ ージ目の方で「一般国民とのバランスに配慮」というものが出てきています。これは当 然のことなんですけれども、この一般国民についても典型的な姿をもう少し具体的に書 いた方が、後をどうするか考えるときに考えやすいと思うんです。  要するに、戦争に駆り出された方々、これは別途遺族年金等はありますけれども、国 内にいて戦争被害を受けて家などを失い、戦後の中でしかし頑張って働き、税金を納め、 年金保険料を納め、そして今日一般国民はこうやってきている。その中で、帰られたと きにどういう観点からバランスをとるか。一般国民の姿をもうちょっと具体的に書かれ た方が、比較してこれだけあるというときにわかりやすくなるのかなと、ちょっと難し いと思いますけれども。 ○貝塚座長 堀田委員が言われましたように、私も一般国民というのはイメージが必ず しもはっきりとしていないで、ある意味で抽象的な表現ですので多少修飾して、やはり 戦争の体験を経ていろいろなことがあった一般国民ということがあって、しかしそうい う一般国民との対比においてバランスを失しないという感じの話ですね。  これも、文章的には余りお役所が得意でない文章をつくらなければいけないと思うん ですが、「一般国民とのバランスに」というと非常に抽象的になってしまうので、もうち ょっと踏み込んだ表現になればいいのではないかという気がいたしますが、皆さんいか がですか。 ○森田委員 多分そこの趣旨ですけれども、今、堀田先生のおっしゃったのは1ページ 目の「特別な事情」の2番目のところですが、戦後の経済復興の恩恵を一般国民の人は 受けてきたというニュアンスが入っているということですね。 ○堀田委員 そこの部分もですね。 ○森田委員 そういう意味でいいますと、ただ一般国民というだけではなしに、これま でいろいろ努力をしてきたかもしれませんけれども、それなりに制度をつくり、いろい ろな意味で豊かな社会に暮らせるようになった。そういう一般国民とのバランスという お話と理解しました。 ○岸委員 前回も申し上げたんですが、私の父親も台湾からの引揚げなんです。ですか ら、一般国民というと内地で戦争被害に遭ったりした人だけではなくて、この前の資料 にもあったと思うんですが、実は外地から引き揚げてきた600万人を超える人たちが帰 ってきているんです。この中には早期に帰ってきた人たちと、それから長期にわたって 残留された人たちといて、一般国民の中には外地からの引揚者も多分多く含まれると思 うんですね。ただし、それは早期に帰国された方であったろうと思うんです。その方た ちのことも言い出すと随分文書が長くなってしまいますが、要はそういう方たちも含ん だ一般国民だろうと思うんです。 ○貝塚座長 わかりやすく表現すると、要するに戦争の中でいろいろなケースがあるん ですが、とにかくいろいろな経験をしてきた人々とのバランスにおいてという感じです ね。やはりちょっと修文した方がいいと思います。ほかに何かございますか。  2ページの最後の方もそういうニュアンスで書くと、「中国残留邦人はかなり特殊なケ ースであり」というのは幾らかきつ過ぎるというのか、表現をもう少し穏やかにした方 がいいような気もしますけれども、結構難しいですね。ですから、「従来の制度が予定し ていなかった」ようなものであることは確かであって、「可能な限りフレキシブルに対応 すべき」というのはそうなんですが、「かなり特殊な」と言ってしまうと、この表現は多 少穏健にした方がいいんじゃないかという気はしますけれども、これは私の個人的な意 見です。  とりあえず1番目のところはまた後で戻っていただいてもいいんですが、「支援の方法 について」のところはいかがなものでしょうか。 ○岸委員 私は第1回目のときに、年金というのは違和感があるというふうに申し上げ ました。年金制度というのは、基本的に言うと保険料を負担し、一定程度の期間それを 受給資格と結び付けるというような形のものであって、本来はシンプルなものであるべ きだろうと思って、そうでなくても年金不信が非常に高まっている中で、むしろこうい う人たちを救済する手段として年金は直観的に余り好ましくないのではないかという話 を申し上げました。  ただ、私はずっとその後いろいろ考えておりまして、ではそれに代わる形があるのか ということを考えてきたのですが、なかなか自分の中でイメージできませんでした。た だ、基本的に言うと、この残留邦人の方たちに継続的に、なおかつ終身にわたって一定 程度の給付をなし得る手段とすると、やはり年金しかないのかなという気も今、実はし ているんです。  ただ、時期が非常に嫌な時期でして、年金制度そのものがありとあらゆる意味でバッ シングを受けている中で、またここに年金を持ち出すことについては、これもまた直観 的に非常に嫌でもあるのです。ただ、終身継続というような形で考えると年金という枠 組みは私はそれなりに尊重せざるを得ないのかなと変わってきております。 ○堀田委員 私も、最初に社会保障制度の枠で考えるのはおかしいのではないかと申し 上げました。その考え方は今でも同じでありまして、責任を取っての原状回復、そのた めの措置だということで、基本の考え方はそれで全く変わっていない。  それは社会保障ではないと思うんですけれども、ただ、支給の方法として、テクニカ ルな方法として社会保障制度がいろいろな仕組みをつくっておりますから、それでやれ るものであればそれでやる方がいいので、年金支給の形を借りて基本的にここまで原状 回復すべきであるという部分を支給するというのは、それはそれで私はいいだろうと思 います。だから、年金の中でそういう要素も入ってきますけれども、もともと年金とい うのはいろいろな要素が入ってくるような性質のものでもありますので、それに乗って もいいだろうと私は思います。  ただ、もう一つ乗る対象として生活保護があるんですけれども、これは実際問題とし て非常に抵抗感をお持ちになっていますし、それはよく理解できる。そして、これには いろいろな事情もあって不当にきついいろいろな調査等々がある。これは絶対に避けな ければいけないことなので、生活保護という形を借りる、あるいはそういう監視、調査、 報告等々を伴うような形を借りるのは極めて好ましくないので、そこは相当の工夫が要 るんだろうと思います。  では、おまえはどうするんだと言われるとちょっと困るんですけれども、これは生活 保護として給付するというのではなくて違うものを、もし生活保護という仕組みを使う ならばその中のこういう部分をこういう条件で使うとか、そういうふうな発想で組み立 てないと、これは納得が得られないし、また原状回復の支給方法としては不当なことに なるだろうと思います。 ○貝塚座長 山崎委員、どうぞ。 ○山崎委員 生活保護制度の枠内で対応するか、別制度をつくって枠外で対応するかと いうことでございますが、ここで仮に生活保護を適用するとしたら、その運用について 基礎年金の一定程度収入認定除外にするなど、思い切った施策が考えられないかという ことなのですが、前回も申し上げましたように生活保護法では原理とたしか言っていた と思うんですが、無差別平等の原理だとか、あるいは補足性の原理というものがありま して、この生活保護法の中で思い切った対応をしようとすると、そういう基本的な原理 に完全に抵触してしまうと私は思います。  したがって、生活保護の運用上、思い切った施策というのは考えられないと私は思っ ています。かえって差別を持ち込むことになってしまう。したがって、制度の枠外で考 えるべきだと思っております。これはこの場で結論を出していただきたいと私は思って おりますが、できたら委員の合意を得たい。得なければ、先に進まないのではないかと いう気がしますが。 ○貝塚座長 この問題は、ある意味で最初からの問題でもあるんですが、どうぞ。 ○猪口座長代理 この問題については、余り法的な具体的な詳しいところは知らないの ですが、生活保護という概念ではなくて生活支援というふうな概念を新たにつくって、 社会政策の体系、枠からは出るんだけれども、その正当化の理由として私が知っている 事例としては、非常に日本の文化に貢献した人には文化功労賞などというものが毎年何 かリメーニングイヤーズに対して1年にどのくらいが出るでしょう。ああいうものを当 てはめることはできないかなと思ったんだけれども、まさか文化功労者というわけにも いかないし、本当にそのくらい考えないと、結局社会政策の枠組みは余りにも厚生省自 身が戦前から長くて大きくて、しかも需要がこの30年、50年にものすごく高まって強 い法体系を持っているんです。  だから、その枠を離れなければだめだというのならばそういうものをつくった方が、 そのケースの何名かという、社会政策全体で年金みたいな何千万人あるいは死んだ人も 入っているんだからそれを超えるみたいな人が入るというのではなくて、比較的固定さ れているし、小さめだからそういう新たなものはつくりやすいのではないか。財政的な ことからも、それから法制度の枠からもちょっとだったらつくりやすいんじゃないかと 思って、私は生活支援、いろいろな困難な状況を何重にも経験されて、負い目というと 悪いんですが、国家の尊厳を自ら失うような事態をつくってしまったことに対して深く 反省して、こういうふうな概念を出すというような感じに持っていけないか。法律を具 体的に知らないし、似たような法律があれば、それを援用して何かできないかと考える 次第です。 ○貝塚座長 今の点は、この文章の中で言うと3ページの最後の丸で、「一般国民に対す る施策とのバランスを図りながら、制度の枠内での対応とするか別の仕組みを設けるか 判断が必要ではないか」、今おっしゃった点は多分まさにそういうことでしょうね。  森田委員、どうぞ。 ○森田委員 今までの委員の先生方の御意見に反論するわけではありませんけれども、 少し違う視点で考えてみる方が議論が生産的になるのではないかと思いまして、私自身 はそれに固執するつもりはありませんけれども、少し反論ではありませんが、そのよう なことを述べさせていただきます。  こういう社会保障の制度、年金の制度もそうですけれども、これ自体は歴史的にずっ と蓄積されてきたことでございまして、この考え方としましては先ほどの簡素・平等・ 差別でなるべくシンプルな制度で幅広くカバーをする。そして、その制度の枠の中でい ろいろなケースに適用していくというのが、ある意味で言いますと平等の観点から言っ ても効率性の観点から言っても安定性の観点から言っても、望ましいと考えられてきた わけですし、制度を運用される立場からしますと、その方がバランスが取れた形での資 源利用であるとか、まさにケアをすることができる。  年金の制度もそれであって、この場合も皆が少しずつ年金を払って、それを将来受け 取るというわけですね。それが適用されていなかったから、今回の場合は年金額が少な いというわけですけれども、この場合に関して言えばはっきり言って払いたくても払え なかった事情があったということですから、これは別に扱えるということだと思います。  生活保護も年金も今、言いましたような形で言いますとかなり重い基幹となる制度で あるわけでして、その両方の制度でなかなか救済できないような場合にどういうことを 考えるのかというのが問題だと思います。その場合に、山崎先生の問題の定義ではあり ませんけれども、やはり生活保護の制度が余りにもしっかりとした重い原則があって、 例外を認めることはその原則を曲げることになる。それをこの制度の中に持ち込むと、 制度自体が崩壊とは言いませんけれども、かなりゆがんでしまう可能性があるという御 意見だと思います。  それはそうだと思うんですけれども、反面、では特別な制度をどういう形でつくるの か。今までで言いますと、一般的にそうですが、個別の事情というのは皆、違いますか ら、それに応じた形での制度をつくれという要求がたくさん出てくると思います。それ をどんどん認めていきますと、はっきり言いましてかなり全体としてのあり方がゆがん でしまうということになりかねません。  そこの兼合いをどう考えるかということかと思っておりまして、私自身、個人的に言 いますと生活保護の制度をベースにしながら特殊事情を加味したような制度ができるか どうか。それも、かなりしっかりとした原理原則を持った制度というものが考えられる のかどうか。単に特殊事情だけで新しい制度をつくってしまうということについては、 行政などを研究している者としては必ずしも賛成したくないんですけれども、できるだ けそういう意味で新しい原理でそういう制度ができるのかどうか。その辺について少し 考え、議論する必要があるのではないかと思っております。  実際にそういう例を1つ挙げますと、我が国には例の独立行政法人という制度ができ ました。それで、最初は国立大学も独立行政法人化をしようとしたわけですけれども、 大学は違う、大学は特殊だということを言い張りまして、結局国立大学法人という新し い制度ができたわけです。これは独立行政法人と少しだけ違うんです。そういう形がい いのかどうかわかりませんけれども、やはり制度の原則というものをしっかりつくって おきませんと、制度そのものがいろいろな意味でほかにもよくない影響を与えますし、 制度の運用自体がなかなか安定しないという気がいたしますので、その辺は御議論いた だければと思います。 ○貝塚座長 これはかなり難しい問題ですが、生活保護の制度はいろいろな基準があっ てそれぞれ医療費とかいろいろあるわけですが、それとは生活保護の制度の中である意 味では別の基準になるのですが、要するに今回の対象になった人々の基準を生活保護の 制度の中にひとつ新しいものを入れてやるというのは厚生労働省の立場としてはいかが でしょうか。  これは局長に伺った方がいいんですけれども、生活保護の基準にはいろいろなケース があるんですが、やや特例的なケースではあるけれども、こういう人々に対するものも 入れて、具体的にはケースワーカーの人がそれぞれの地域において別個の判断を必要と する人々がいて、その人たちにはある意味では従来とは違ったやり方で支援する。そう いうことは行政的には変則的な話ですが、外側につくろうとすると森田委員が言われて いましたようにそういう支援費的なものをつくり始めると、この例は必ずしもそれに当 たらないかもしれませんが、過去の経験としては必ずしもうまくいかなかったケースが 多いということはあります。  行政サイドとして、その辺のところは何かお考えがございますか。 ○中村社会・援護局長 最初の論点の方の基本的な考え方の中で、やはりずっと御議論 があって、とにかく生活の安定が必要であり、そういうことを実現していくために、中 国残留邦人の方々がこれまで余儀なくされた事情を考えますと、戦後の復興の恩恵も享 受できなかった。  いろいろ考えますと、堀田先生のお言葉をお借りすると、結局そういうことを原状回 復できるような、原状回復の定義は難しいんですか、いわばハンディがあるので埋合せ をしなければならないというふうに考えますと、先ほど議論がございましたように、年 金の場合については加入できなかった期間もあるし、それから帰国後も相当保険料の納 付というようなことに問題があるので、まず国民共通の制度である老齢基礎年金、基礎 年金ということを考えれば、それを全部回復する措置を、やはり責任と言われるといろ いろ我々もありますが、3ページの最初の丸にありますように、国がやはり納めるとい うことである意味でそういう御要請にこたえるということではないか。  しかし、それだけで老後の生活に結び付かないケースもある。それこそ一般国民とは 何かということになるわけですが、一般の国民は年金と自分の老後の蓄えで何とか老後 生活を送るということを想定しているわけですので、そういう準備も相当ハンディがあ ったというふうに考えますと、その部分について年金で全額回復するわけですけれども、 その措置をどうとるかというのが3ページの論点で書かれている以下4つのお話ではな いかと思います。  それで、やはり言い方として公的年金を補完する支援の仕組みをどういうふうに組み 立てられるかということでございますけれども、御議論がありますように生活保護の制 度そのままでは、厳格に適用しますと必ずしも中国残留邦人の方々の特別な事情からく るハンディについて100%考慮できるかということで終わりの2つの丸が出てきて、生 活保護の中でどれだけ工夫できるか、あるいは別の仕組みを設ける必要があるかという のは非常に我々も判断に迷うところであります。  生活保護の中で特別な運用という議論になりますと、山崎先生が御指摘されるような 懸念がございますし、別の仕組みを設けるという選択肢をとる場合には、懸念としては 森田先生が指摘された個別のいろいろな事情があるわけですので、それぞれその事情を 訴える方は中国残留邦人の方に限らずあり得るわけで、その個別性の積み上げになって いくと収拾がつかなくなるという懸念があるということで、我々はそこのところは迷っ ております。 しかし、別の仕組みを設けるという選択肢を取る場合にも一定の原理原 則、ルールというものをきちんとした上でつくらないと、とても難しいことになるので はないか。それは、1番の論点であります中国残留邦人の方々にこの対策をとるときの 基本的な考えを展開していく中で、おのずとある範囲というものがあって、その範囲を 踏まえて別な仕組みとしてその範囲を救済というか、回復するためにその仕組みをつく るということかと今、頭の中で考えているところでございます。 ○堀田委員 大変難しいところですが、これは国民年金だとすっと原状回復でわかりや すい姿です。しかし、それでは足りない。そこのところを何で上乗せするかというので 生活保護を借りてみようかと、現実的にそういう発想かと思うんですけれども、やはり 生活保護はそれ自体を適用するのではなくてそれを借りるにしてもその仕組みがまさに 生活保護のためにあるわけですから、これはなかなかそぐいにくいし、実際にこれを使 ったらやはり支給の仕組みその他で原状回復にしては不愉快過ぎることがいろいろ起き るだろう。  ですから、老齢年金といいますか、厚生年金があって、これももし日本にずっとおら れればかなりの方が厚生年金を納められ、そちらに加入されてやってきておられるんで しょうが、その機会も全部奪ったわけですから、むしろ厚生年金の方の仕組みを借りて、 そしてその中でどれぐらい回復すべきか。これはバランスを見ながら判断する。  ただ、そういたしますと、それももちろん年金そのものではありませんので一種の擬 制で年金の形を借りるわけですが、帰国者の中で自分で生計を築き、もう援助は要らな いとおっしゃる方がほんの一部ですが、あります。そういう方についてどう考えるのか という問題が生じてきて、少し頑張っていただくことも大事だというので、それでは生 活保護の方へといってしまうんでしょうけれども、そこは違うので、厚生年金でやって おいて、そして自分でしっかりやっておられるごくごく一部の方については現在受給し ない、あるいは現在の収入があってしなくていい。そういう方については、また支給を 考える。  そういう形で、年金一本にして形をつける方がむしろ原状回復という点でもいいし、 現実にも年金ですとすんなりと払い込まれますから問題がなくなるし、それからバラン スも考えやすい。何かどうするんだと聞かれればそういう考え方もあるかなと、十分詰 めた議論ではないんですけれども、一つの選択肢としてということでございます。 ○中村社会・援護局長 最初の論点の方の基本的な考え方の中で、やはりずっと御議論 があって、とにかく生活の安定が必要であり、そういうことを実現していくために、中 国残留邦人の方々がこれまで余儀なくされた事情を考えますと、戦後の復興の恩恵も享 受できなかった。  いろいろ考えますと、堀田先生のお言葉をお借りすると、結局そういうことを原状回 復できるような、原状回復の定義は難しいんですか、いわばハンディがあるので埋合せ をしなければならないというふうに考えますと、先ほど議論がございましたように、年 金の場合については加入できなかった期間もあるし、それから帰国後も相当保険料の納 付というようなことに問題があるので、まず国民共通の制度である老齢基礎年金、基礎 年金ということを考えれば、それを全部回復する措置を、やはり責任と言われるといろ いろ我々もありますが、3ページの最初の丸にありますように、国がやはり納めるとい うことである意味でそういう御要請にこたえるということではないか。  しかし、それだけで老後の生活に結び付かないケースもある。それこそ一般国民とは 何かということになるわけですが、一般の国民は年金と自分の老後の蓄えで何とか老後 生活を送るということを想定しているわけですので、そういう準備も相当ハンディがあ ったというふうに考えますと、その部分について年金で全額回復するわけですけれども、 その措置をどうとるかというのが3ページの論点で書かれている以下4つのお話ではな いかと思います。  それで、やはり言い方として公的年金を補完する支援の仕組みをどういうふうに組み 立てられるかということでございますけれども、御議論がありますように生活保護の制 度そのままでは、厳格に適用しますと必ずしも中国残留邦人の方々の特別な事情からく るハンディについて100%考慮できるかということで終わりの2つの丸が出てきて、生 活保護の中でどれだけ工夫できるか、あるいは別の仕組みを設ける必要があるかという のは非常に我々も判断に迷うところであります。  生活保護の中で特別な運用という議論になりますと、山崎先生が御指摘されるような 懸念がございますし、別の仕組みを設けるという選択肢をとる場合には、懸念としては 森田先生が指摘された個別のいろいろな事情があるわけですので、それぞれその事情を 訴える方は中国残留邦人の方に限らずあり得るわけで、その個別性の積み上げになって いくと収拾がつかなくなるという懸念があるということで、我々はそこのところは迷っ ております。 しかし、別の仕組みを設けるという選択肢を取る場合にも一定の原理原 則、ルールというものをきちんとした上でつくらないと、とても難しいことになるので はないか。それは、1番の論点であります中国残留邦人の方々にこの対策をとるときの 基本的な考えを展開していく中で、おのずとある範囲というものがあって、その範囲を 踏まえて別な仕組みとしてその範囲を救済というか、回復するためにその仕組みをつく るということかと今、頭の中で考えているところでございます。 ○堀田委員 大変難しいところですが、これは国民年金だとすっと原状回復でわかりや すい姿です。しかし、それでは足りない。そこのところを何で上乗せするかというので 生活保護を借りてみようかと、現実的にそういう発想かと思うんですけれども、やはり 生活保護はそれ自体を適用するのではなくてそれを借りるにしてもその仕組みがまさに 生活保護のためにあるわけですから、これはなかなかそぐいにくいし、実際にこれを使 ったらやはり支給の仕組みその他で原状回復にしては不愉快過ぎることがいろいろ起き るだろう。  ですから、老齢年金といいますか、厚生年金があって、これももし日本にずっとおら れればかなりの方が厚生年金を納められ、そちらに加入されてやってきておられるんで しょうが、その機会も全部奪ったわけですから、むしろ厚生年金の方の仕組みを借りて、 そしてその中でどれぐらい回復すべきか。これはバランスを見ながら判断する。  ただ、そういたしますと、それももちろん年金そのものではありませんので一種の擬 制で年金の形を借りるわけですが、帰国者の中で自分で生計を築き、もう援助は要らな いとおっしゃる方がほんの一部ですが、あります。そういう方についてどう考えるのか という問題が生じてきて、少し頑張っていただくことも大事だというので、それでは生 活保護の方へといってしまうんでしょうけれども、そこは違うので、厚生年金でやって おいて、そして自分でしっかりやっておられるごくごく一部の方については現在受給し ない、あるいは現在の収入があってしなくていい。そういう方については、また支給を 考える。  そういう形で、年金一本にして形をつける方がむしろ原状回復という点でもいいし、 現実にも年金ですとすんなりと払い込まれますから問題がなくなるし、それからバラン スも考えやすい。何かどうするんだと聞かれればそういう考え方もあるかなと、十分詰 めた議論ではないんですけれども、一つの選択肢としてということでございます。 ○山崎委員 私は、第1回のときに社会保険と生活保護というのが社会保障の両極にあ るということですが、しかし、その中間に税を使った各種の手当だとか、あるいは公費 負担医療というものがありますと言いました。  そのときに、税を使った手当なり医療なり福祉サービスいうのはしばしば一般的に言 いますと何らかの形で所得の条件を設けておりますけれども、しかし、生活保護と違っ てかなり緩やかな条件でございますから、恐らく今、堀田先生がおっしゃったような戦 後の復興から立ち上がり、昭和30年ごろでしょうか、もはや戦後ではないと言われたわ けですが、昭和30年代の半ばから高度経済成長が始まり、サラリーマンが急増したわけ でございます。  早期に日本に帰国しておられれば、多くの方がサラリーマンとして基礎年金に上乗せ して一定の厚生年金を受給して今、老後を迎えておられるということになりますと、堀 田先生がおっしゃったような基礎年金を満額支給して、それにどの程度上乗せするかと いう点については厚生年金グループを少し意識するということがあってもいいのかなと。  その一方で、やはり税ですべて出しているということになりますと、あるいは帰国者 の中には相当成功した人もおられるようで、一定程度の所得制限のようなものはあって もいいのかなと。しかし、生活保護とは一線を画する仕組みにしてはどうか。したがっ て、一方に社会保険があり、厚生年金グループもあり、一方で生活保護がある。その中 間でどのような仕組みができるかというのは、最終的には我々より上のレベルで判断し ていただくことかと、かなり幅がある対応になるのかなという気がいたします。 ○貝塚座長 私の感想ですけれども、やはりこれは制度論として結構難しいですね。ど こへどういうふうにして……。  ただ、実際どの程度給付をするかということの現実的な判断では、今の生活保護とい うものがある種のリファレンスにはなっていて、それプラスどの程度がいいんでしょう かとか、そういう話は可能なんですが、制度それ自身としてどこにどういうふうに制度 という形で出発させるかというのは、上の判断ということですが、上が判断できるのか なと。  制度論には、結構これは難しい話なんですね。結局、新しくある種の手当てないしは 別個のものをつくるか。その辺りはいかがですか。 ○森田委員 私も余りこの分野に詳しくないんですけれども、具体的に今、山崎先生が おっしゃったような形で一定の条件の下で何らかの給付をする。それに対して所得制限 であるとか、そういう段階的な対応をして交付するような制度というのはほかにどうい うものがあるのでしょうか。 ○中村社会・援護局長 例えば、手当てとしては児童扶養手当とか特別児童扶養手当と か、障害者も障害基礎年金が出ますけれども、非常に重度の障害者の方の場合、1級の 人に対して4人に1人くらいの割合だったと思いますが、重度手当が出るというような 制度はございます。  それで、中国残留邦人の当事者の方からもヒアリングをしていただいて、例えば岸委 員から御質問があったときに、月17万円程度というような水準については、多分いろい ろな考え方はあると思いますが、消費生活の水準でございますとか、あるいは厚生年金 の平均の水準などがそういうものなので、そういうことをリファレンスされたのではな いかと思います。  他方、バランス論で考えますと、前回提出させていただいた資料の14ページにも出て おりますが、一般の国民の場合は生活扶助基準という基準があって、この基準が生活保 護のいわば生活費ですね。医療費とか住宅費とか、そういうものは別にして、前の13 ページにそのモデルが出ておりますが、東京で単身の場合は生活費が8万円、郡部の場 合ですと6万2,640円、その平均が14ページの7万3,956円ということで、これ以上は 支給しないというのが生活保護の限度になっております。  それで、実際に何らかの年金等の収入がありますと、ここに書いてありますケースで は2万4,307円が収入でございますが、自分で得た分と生活扶助費とを足して基準を上 回らないようにとされておりますので4万9,649円となる。これが、いろいろな理由で 生活が苦しいという方に対して適用される生活保護の基準です。  それで、中国残留邦人の方々にとってはこれは厳しいというお話なので、論点整理の 3ページで書いてあるのは、基礎年金の6万6,000円というものを回復するとしたら、 この基礎年金を生活保護の枠内でするか、あるいは別の仕組みとするかは判断があるけ れども、収入認定除外をするということは6万6,000円をいわば皆で出し合って、国が 出して保障するわけですから、その制度の趣旨を踏まえて生活保護の場合でも収入認定 などについて一定程度除外するということでトータルの、要は7万3,000円という平均 の水準、東京であれば月額8万円という水準に年金の一定部分を積み増しすることによ って対応できないか。いわば一種の年金と税金の手当とを組み合わせるというようなこ とができないか。それを生活保護の制度内で考えるのか、そういったような仕組みを別 な仕組みとして考えるのかということの判断が必要ではないか。今、我々はそんなこと を考えているところでございます。 ○猪口座長代理 私は今、局長から説明があったようなスキームが一番現実的であるよ うな気もしますが、先ほどから言っている尊厳とか、いろいろな国家としての、あるい は同胞としての負い目というようなことがあるとちょっと難しいところはあるので、私 は第1回のときに発言したのは、ドイツが統一したときにとにかく何でもいいから帰っ てこい。あれは結局、戦争のお陰でドイツ民主共和国ができてしまったんだ。それで、 ドイツ連邦共和国は負い目がある。それが一緒になりたいと言うからにはもろ手を挙げ て受け止めようという宣言だったわけです。  それは多分あったんだと思います。私は余りよく調べていないし、よくわからないん ですが、そういうことがあったんだけれども、何が起こったかというと多分こういうこ とだと思うんです。自由を求めて我ら同胞を受け止めたというところはいいんですが、 結局6,000万くらいの連邦共和国と2,000万くらいの民主共和国で、要するに2,000万 の帰還邦人ができたんです。ドイツ連邦共和国、1990年くらいで冷戦が終わった89年 からですね。 そういうことはものすごいんですが、結局それを社会政策の中に、社会 民主主義的な年金とか福祉とか、そういう制度に全部入れるということは多分できない し、余りあれもなくて、恐らく短期間の定着のためのいろいろなことはやったと思うん です。  東ドイツの場合は言語が同じ、それから教育もいいというか、普通にあったというよ うなことで、多分ずっとその後の保障というか、保護というか、そういう観点がなくて、 今起こっていることは余りスキルドな人、エデュケーションが高くない人は旧東ドイツ 地区の低賃金地帯の20%とか30%とか40%の失業率が残っているところにうろうろし ている。それで、その後、連邦共和国からの社会政策の恩恵も十分には受けられない状 態が続いているんだと思います。  エデュケーションが上がるだけの若い人がいればいいんだけれども、それは普通に高 齢者もいれば若い人もいる。若い人で十分に入れる人は上がっていくと思うんですけれ ども、中年以上の人は結構大変だ。取り分け欧州連合でもっと東の、旧西ドイツの賃金 レベルの4分の1とか5分の1のポーランドとか、そういう人がどっと入ってきている わけですから、旧東ドイツのドイツ人と言ってもそれとコンピートしなければだめだ。 コンピートというのはもっと賃金が下がるということで、しかもドイツ連邦共和国とし てはそういう社会政策的な、ここで言っているような年金などまで十分考えてこなかっ たし、財政的にも2,000万急にボンとくれば破綻どころか、考えただけで破綻するので やらなかったと思うんです。  それは非常に問題になっているんだけれども、結局旧東ドイツ自体が非常に低賃金地 帯になってしまったわけです。EU拡大でまたそれが温存され、もっと強化されている という状態が続いているのに、もっていると言っては悪いんですけれども。何とかもっ ている。 だから、余り学習する例でもないかということはあるんだけれども、ただ、 国家としては同胞を受け入れる。もろ手を挙げてとやった点はよかったかなという気も するんだけれども、何かいいようにそれが合わさらないかと思っているんです。 ○貝塚座長 私はそこは余り詳しくはないんですけれども、最初に一緒になるときに西 ドイツは簡単に言えば社会保障の給付の水準に関して、約束として西ドイツ並みという ことを一応言ったんです。そして、建て前としては西ドイツ並みになったということは そうなんですね。けれども、現実は……。 ○猪口座長代理 現実は本当に申し訳ない感じになっていると思います。 ○貝塚座長 話が少しずれてしまったのであれですが、どうぞ。 ○森田委員 いい勉強をさせていただきました。  水を差すつもりではないんですけれども、ドイツの場合ははっきり言いましてコール 政権の政治的決断が何と言っても効いているわけでして、今回の場合でも上のレベルで そういう決断があると言うならば、これは話は別だと思います。けれども、少なくとも 現在の制度を前提にした上でサステーナブルな形でどういう形で制度設計をするかとい う話だと思います。今のお話は、教師になるか反面教師になるかは知りませんが、大変 参考になるお話だとは思います。 ○貝塚座長 現実的には先ほど局長が言われた14ページの棒グラフで、結局ある種の特 例的なものを認めるというのは、基本的にはやはり基礎年金のレベルよりも高いものを ある程度具体的には保障するというところがある。そこで、例えば生活保護の水準と比 べればという話が出てくるんですが、基本的には基礎年金プラスアルファの部分をちゃ んと出す。そのプラスアルファも相当の部分を出すという辺りのところが最終的には 我々の、という感じを私は持ちます。 ○堀田委員 先ほど、借りるにしても生活保護はそぐわないと申し上げました。非常に 違和感があるのは、国策で出られて帰ってこられなくて、しかしその一方で戦後あるい はすぐ帰国された方々が頑張ってきて、帰れるようになってからどこまで原状回復する のが皆も納得するし、妥当か。  そういうラインでいきますと、原状回復の在り方について年金という形で考えるのは 非常になじみやすいのですが、生活保護というのは一般国民の中でももちろんそれぞれ 頑張られたんでしょうけれども、結局生活を自ら築けなくて最低限度の文化的保障、25 条で、ここは救わざるを得ない。ここは、最低限度保障せざるを得ない。それが生活保 護のラインですから、彼らがもしすぐ帰国しておられたら、あるいはもともと日本にお られたらどうしておられたか。  その標準像から考えると、どこまでやるかを考えるときに本当に成功できなくてどう しても保護を受けなければやっていけなくなった、その人のラインを持ってくるという 発想自体がこの原状回復の発想とそぐわない。だから、額も支給の仕方も非常にそぐわ ないものになってくるので、彼らがずっと兵役におられたとしたら大成功者を考える必 要はないんですけれども、かなりの方が働かれ、かなりの方が厚生年金も納められ、自 分の生活を築かれ、やってこられたであろう。  しかも、生活保護者は日本語をしゃべる人たちがほとんどでしょうけれども、それよ りも更に重いハンディを持ってしまっているわけですから、そういう方の原状回復とい うのはやはり生活保護基準を持ってくるのもそぐわないし、その支給方法として借りる のもそぐわない。やはり厚生年金の方がいいのかなと、さっき局長の御説明を聞きなが ら私は一層そう思ったんですけれども。 ○貝塚座長 今の点は非常に重要なポイントで、厚生労働省さんのスタンスとして基礎 年金の方からアプローチして基礎年金のレベルよりの、例えばここで言えば6万6,000 円ですけれども、それプラスアルファも相当部分出しますよという形でいくのがもう一 つのアプローチです。  それで、結果的に生活保護と比べればどうのこうのという話が出てきますので、どう も堀田先生の御意見にある程度私も賛意を表するのは、むしろ年金の水準としてこれだ けプラスアルファを出しますよと言ってしまってそちらの面からアプローチした方が、 物事がやはり積極的でしょう。その辺はどうなんですか。 ○岸委員 生活保護の枠でやって、しかも一部の金額、または多くの金額を認定除外す ると現場でどういうことが起きるかというと、恐らく所得認定などは及び腰になるんだ ろうと思うんですね。あの人たちはそういう特別な年金をもらっていらっしゃるので、 余り深入りしてあそこはどうだこうだというような、生活保護の言ってみれば監視機能 みたいなものは恐らく及び腰になって、私は逆の差別を生むような気がするんです。  現に残留邦人の方たちの生活監視の中に実はこういう一種の差別感があると思うんで すが、中国に戻ると賃金格差が非常に大きいですから、日本で得た一定程度の生活保護 などをベースとした金で、中国であの人たちはいい目を見ているのではないかという一 種の差別感があるんだというふうに聞いたこともあります。日本と中国を行ったり来た りすることが、言ってみれば賃金格差なりを利用していい目を見ているというような感 覚で、そんなに中国に行くような金があるんだったら、所得認定しますよと言いたくな るような現場の空気があるように思うんです。  だから、生活保護の枠内でやると、あの人たちはアンタッチャブルだから生活保護の 運用についても余り触らない方がいいですよというような感じの空気をつくるのは、私 は本来の趣旨としてはまずいのではないかと思います。 ○貝塚座長 制度論は結構難しいんですね。今まで伺っているところで、厚生労働省さ んもそこのところのスタンスは余りまだそれほど明確にはなっていないかもしれません。 ○森田委員 私は御議論を伺っていてだんだん収れんしてきたのかなという気もするの ですが、1つは生活保護の制度ですが、今、局長がおっしゃったような形でいわゆる認 定する収入の一部を年金の場合は除外する。その分だけプラスアルファをする。これは 説明の仕方だと堀田先生がおっしゃったようなことで、そもそも自立支援の制度ですか ら早く帰国して日本語がきちんと話せるようになっていれば自立できた人も、それがで きなかったためにできなかった。その部分についてカバーをする。そういう理由だと思 います。  それも一つの考え方だと思いますけれども、多分残留邦人の方がそれについて批判的 に思っていらっしゃるのは、今後の支給の仕方の問題であるということと、生活保護制 度そのものの一種の位置付けの問題もあるかという気がします。  他方で、ではそれ以外の制度ということになったときに、全く残留邦人であるという 特殊事情だけで何らかの一定額の給付保障をするということになりますと、これまた別 な面で問題になってくる。確かにそういう形で給付をすることが必要な方はたくさんあ るんですけれども、先ほどもございますが、一部にはきちんと自立されている方もいら っしゃる。その方はやはり少し違う扱いをする必要があるでしょうということですし、 先ほど国民年金については御自身で払えなかった部分については国が払うという話があ りましたけれども、事実関係はどうか、違っていたら御指摘いただきたいと思いますが、 仄聞したところによりますと、一部の方については少ない収入の中から頑張って追納さ れた方もいらっしゃる。そういう方についてどうするかというのは、これまた大変な問 題だと思うんです。  そういう意味で言えば、1つの考え方とすればやはり特殊事情を考慮しますけれども、 自立できる方は自立していただいていいでしょう。そうでない方について、そのハンデ ィを考慮した上でどういう形で支給するか。しかも、生活保護という制度ではなしにそ ういう支給方法とは違う形で支給できるかということで、山崎先生はそれを示唆された のではないかと思いますけれども、やはり一定の所得制限とか、その段階を設けた形で の給付制度とか、そういうものを私は生活保護制度の外にうまくつくることができるな らば、それが一つの考え方であると思います。  そういうものができるかどうかはなかなかわかりませんし、むしろ厚生労働省の方で 御検討いただいて、この有識者会議の位置付けとしてこちらの方でそれが妥当なもので あるのではないかという委員の方の一致といいましょうか、意見の大体の合意が得られ れば、そういう方向で検討するというのが、これからの話を生産的に進めていく上でも いいのではないかという気がしました。 ○貝塚座長 余り生活保護というのを正面には、結果的には生活保護と比べてどうかと いうことはいいと思いますが、むしろ給付の水準でプラスアルファをして、そのときは その条件がやはり必要で、ある種のミーンズテスト的なことが必要だと思いますけれど も、やはり給付の側でこれだけ追加的に出しますと、そういう形の提案の方が私はいい ように思うんです。そこでややミーンズテスト的なものが入ってくるのは当然ですけれ ども、その辺りの制度設計がうまくできればという気はするんです。 ○森田委員 具体的なケースは私も思い付きませんけれども、たまたま2ページにあり ますが、「かなり特殊なケース」というのはちょっと言い過ぎではないかという御発言が ございましたけれども、「従来の制度が予定していなかった」ケースであるというのはそ のとおりだと思いますので、「可能な限りフレキシブル」というのが生活保護の制度をフ レキシブルにするのか、枠外を含めてフレキシブルにするのか、ここは読みようによる かと思いますけれども、どちらかといいますとその枠外でというのが私はいいのではな いかと、だんだんそういう気がしてまいりました。 ○貝塚座長 話はそれなりにややポジティブな方向へ広がったという気がいたします。 座長がそんなことを言うのも変なんですが、先ほどの議論で「支援の方法について」と いうことを今、方法論的にどうしたらいいかということを御議論いただいて、もうちょ っと違った方法でやってみるのもよろしいのではないでしょうか。その点を検討してい ただく。その方が、今まで委員の方々も割合とそちらの方向でいるということは、逆に 言えばやはり積極的な支援ということをはっきり出すのがよろしいのではないかという 気が私個人としてはするということでございます。  とりあえずそういうことで、支援の方法についてはもう一度よく考え直すといいます か、もうちょっとスキームをその他の制度との関係でどうするかということは御検討い ただく必要がありますが、どうもそういう方がよさそうであるし、やはり我々が積極的 に支援するということであればその方が整理としてははっきりするという気はします。 一応そういう点の合意が委員の中ではありましたということでよろしゅうございますか。 あとは技術論としてはあれですけれども、厚生労働省さんがどういう形でそれをやるか ということをお考えいただく。これは結構簡単ではないと私は思いますけれども、その 点をお願いしておきたいと思います。  あとは、3番目の「中国残留邦人に対して社会や国民がなすべきこと」です。これは 話としては随分ある意味で今までの議論とは違うといいますか、もっと違った次元の話 でありますが、幾つかの主要な論点が書いてございますが、4ページと5ページについ て何か皆様方からコメントがあったらお願いします。  4ページに「運用の問題が非常に重要であり」と書いてありますが、これは実を言う とさっきの給付で出すか、それとも生活保護的なもので適用するかによって、これはど ちらかというと生活保護を念頭に置いているかと思いますけれども、その辺のニュアン スが変わってくるかと思います。  あとは、ほかのところはいかがでしょうか。これは、ヒアリングをしたときにいろい ろな御意見があったもので、かなり多様なわけですね。したがって、そういうことに関 する配慮と、どういうふうにコミュニティあるいはコミュニティそれ自身ができ上がっ ているケースもあるわけですね。ですから、その辺に関しては私はやはり役所というか、 政策の面ではある意味では中立的であった方がよくて、新しく一生懸命つくっておられ ることはサポートするし、ちゃんとエスタブリッシュされたところは、それはそれで結 構ですという話になって、あとはどちらかと言えば社会的に非常に不利益を受けている 方々に対してまだ今後なすべきことはいろいろあるのではないでしょうかというのが大 体書いてある中身であります。  これは非常に難しいですが、地域社会として、あるいは一般国民という表現も余りあ れですが、やはり我々も考えなくちゃいかんというところがいろいろありますよという ことをちゃんと書いておくということですね。  何か追加的にございましたらどうぞ。 ○堀田委員 この論点がやがて有識者会議の報告書につながっていくという視点で言え ば、これは有識者会議の報告書ですから、別に政府に対して、あるいは国会に対してと いうだけのメッセージではなくて、やはり国民全体に対するメッセージも出していいん じゃなかろうか。  だから、むしろ3の部分は表題が「国民がなすべきこと」となっていますが、やはり 大分政府側の遠慮があるといいますか、政府内での考え方みたいなところが強いので、 もっともっと国民に対してストレートに、こういう事情にある。第1章の最初のところ で特殊事情をずっと書かれたところから並べるとしますと、こういう事情でこういう厳 しい中を生きてこられた同胞なのであるから、そのことを皆がしっかり理解して、彼ら がそういう特別な体験をさせられずに済んだようにむしろ積極的に国民が協力して、そ れこそ尊厳があるといいますか、日本国民と同じようなというか、従来の日本国民と同 じような生活ができるように積極的に皆で協力し、回復を図る義務がある。そういうこ とをもっとはっきりストレートにまず言っていいのではないかと私は思います。  それが最初の書き出しであって、そういう視点に立ちますと、NPOとか、ボランテ ィア団体とか、あるいは近隣の方々とか、そういった方々がもっともっと彼らを支え、 受け入れ、彼らに能力を発揮してもらう機会をつくることが望ましい。それについて、 例えばNPOを支援するとか、その活動を自治体が支援するとか、そういうことも望ま しい。まずそこで差別感をなくし、彼らの活躍する場をもっともっと広げていく。そう いう形で受け入れ、支え、元に戻していこうという呼び掛けでいいのかなと。  そういう中で、しかしどうしてもやはり日本語のハンディ等があって溶け込めない 方々もおられる。なかなか溶け込むのは難しい。それも現実ですから、それはそれでそ ういう方々のNPO支援組織をしっかりそういう拠点をつくることについてもサポート したい。京都にエルファーという在日韓国人の支援組織がありますけれども、そういう 方々が集まられて、本当に心のよりどころになり、生活を支え合って築いていくよりど ころになっています。そういったいろいろな特別な支援の在り方もあっていいのではな かろうか。  そして、大事なことは少しでも彼らの能力が社会の中で生きるように、これは公共も 全部一致してそういう場を考え出していくということが必要ではなかろうか。そんなよ うなメッセージになればいいなと、勝手に言ってすみません。 ○貝塚座長 堀田委員のおっしゃったことは、3番目の項目の最初の部分に多少重複は するんですが、やはり最初の我々の、多少先ほどここで議論になったことを幾らか書き 込んで、それが前提になって今後の施策ないしいろいろなことは、こういうようなこと が例えばありますよという形で書いた方が、流れとしては最初を受けたところが必要だ と思います。それを受けて、それで具体的にいろいろ書いてあることを挙げていけば、 その方が全体の進みとしてはわかりやすいし、メッセージとしても説得性が増すと思い ます。  よろしゅうございますか。ここはやはり散文的に過ぎるので、ちょっと……。 ○森田委員 少し余計なことを言わせていただきますが、確かに堀田先生がおっしゃる ように最初にこれはあくまでも行政サイドから見た表現だと思いますし、特に一番下の 「同化を強制するのは妥当ではなく」というのはかなり強い表現だという気がしました けれども、むしろ最初は総理がおっしゃったこともありますが、日本へ帰ってきてよか ったと、尊厳のある生活ができるように社会的にサポートする。そのために、更に間接 的に行政サイドで何ができるかというストーリーがいいのではないかという気がします けれども。 ○山崎委員 今、言葉の問題が出てきましたから、私もちょっと気になっていたことを 申し上げます。  5ページの最後ですが、「中国残留邦人を社会としてどう活用するか」という、この「活 用」というのが民間人にとっては非常に抵抗があるんです。今、政府は総理を始め民間 の力を活用するとおっしゃるのですが、政府レベルの文書では当たり前かもわかりませ んが、やはり堀田先生がおっしゃられたように能力を生かしていただく。そういう機会 を提供できるようにいろいろな形で支援するという表現になるのかなという気がいたし ます。 ○貝塚座長 おっしゃるとおりで、社会としてどう生かしていくかという辺りの表現の 方が、余り役所的ではないかもしれないですね。その方がいいのではないでしょうか。 やはりその方がわかりやすいし、まさにその辺りのところは修文した方がいいのかもし れません。  ほかに、この最後の4ページ、5ページの部分でございましたら、積極的に御意見を どうぞ。 ○岸委員 これまでずっと一貫して中国残留邦人の方だけの話をしてまいりました。し かし、彼らは1人で帰ってきたわけではなくて、実は中国籍を持つ配偶者がおります。 この方たちも高齢化しております。それから、場合によっては3世はそうでもないと思 うんですが、結構中高年に差し掛かったときにこちらへ来た2世の方たちも日本社会で なかなか活躍の場が見出せない方もかなりいらっしゃいます。そういった方々の問題に ついてもやはり言及すべきではないかと思っております。 ○山崎委員 あえて非常に細かいことを申し上げます。実は、この支援というのは日本 社会で生活していただく上で多様な、しかもかなり内容的に思い切った支援をしましょ うということなのでございますが、年金というのは実は海外にも送金されるわけでござ います。我々が漠然と考えていますような基礎年金を相当上回るような水準の所得保障 ということになりますと、それは日本社会で生活していただくための支援だということ にしないとちょっとまずいのではないかという気がいたしております。 ○貝塚座長 先ほどの岸委員の御意見は、例えば4ページの「対策についても一過性の ものとせず」と書いてありますが、そこのところにもうちょっと、例えば次の世代の方 も含めたというニュアンスを入れればいいような気もするんです。ですから、現在のと いうか、次世代の方々のこともある程度ちゃんと入れた方がいい。その辺の修文をもし できれば、そうすればいいんですね。大体そういうことかと思います。  山崎先生のお話は極めてごもっともなのですが、今の送金の話は相当デリケートな話 ですね。 ○中村社会・援護課長 非常にデリケートな問題なので、よく……。 ○山崎委員 年金にそのまま乗せますとそういうことになるんです。例えば、基礎年金 だけでも6万6,000円が中国に送金されるということになります。 ○貝塚座長 制度的に別の道をたどると、やり方としてはですね。しかし、山崎委員の おっしゃったことはもっともですので、その点は……。  ほかに4ページ、5ページでいかがでしょうか。何か御意見はございますか。  では、かなり時間もたちましたし、今日のこの会では大変動きが発生したような感じ になりますが、基本的にはやはり積極的にやるというところが非常に重要なポイントで、 制度的にはむしろ給付の側からいってしまった方が話としてはわかりやすいし、あとは 生活保護の現在の水準と比較していただくのは別に差し支えないと思いますが、この程 度の感じになりますよということは、やはり一般国民とのバランスというのか、そうい うことにもやはり触れていただいた方がいいと思います。  ただ、そこのところに余りウェートを置くのは必ずしもよろしくないのですが、バラ ンス論としてこれくらいの感じになりますよということも言わないと、これだけ特別扱 いをしてしまったという話になってしまうと、かえってマイナスの側面がありますね。 その辺りも十分考えてと思います。何かほかに御意見がありましたらどうぞ。  それでは、今日は相当議論していただいた結果、やや修文が大変になったということ ですが、よろしくお願いします。私も是非御相談に乗って、最終的な取りまとめを次回 はしたいと思います。いずれにしても今日はかなり修文の程度が大きいので、恐らく事 務局の方がそれぞれ委員の皆様にある程度事前に説明していただいて、そこで御意見を 伺って、多少修正するとか、そういう形で弾力的に次回の会合までに進めたいと思いま す。大変事務局には御負担ですが、頑張ってくださいというふうに申し上げて、次回は 6月12日火曜日午後4時からやらせていただきます。そういうことで、細かい部分の修 文は別として、次回は報告書の筋及びおおよその文章の御了解を取るという形にさせて いただきたく思いますので、よろしくお願いします。  何か局長からございますか。 ○中村社会・援護局 特にございません。 ○貝塚座長 それでは、今日の会合はこれで終わらせていただきます。どうもありがと うございました。 ○野島援護企画課長 どうもありがとうございました。  次回は、6月12日火曜日午後4時から、厚生労働省6階の共用第8会議室で開催させ ていただきます。よろしくお願いいたします。 (照会先)  厚生労働省 社会・援護局 援護企画課 中国孤児等対策室 内線3417