07/05/24 第7回医療施設体系のあり方に関する検討会の議事録について 第7回医療施設体系のあり方に関する検討会               日時 平成19年5月24日 16:00〜 場所 厚生労働省専用第15会議室 ○企画官(中村) 定刻になりましたので第7回「医療施設体系のあり方に 関する検討会」を開催いたします。委員の皆様方には、ご多忙中のところ当 検討会にご出席をいただき、誠にありがとうございます。  はじめに、本日の委員の出欠状況についてご報告いたします。本日は鈴木 満委員、山本信夫委員、和田ちひろ委員からご欠席との連絡をいただいてい ます。また前回欠席されていた方を改めてご紹介いたします。千葉大学医学 部附属病院院長の齋藤康委員に代わる新たな委員として、東京大学医学部附 属病院院長の武谷雄二委員にご就任いただいております。  次に、お手元の資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、委 員名簿以外のものを申し上げます。資料1はこれまでの議論の整理というこ とで、特定機能病院、専門医、医療法に基づく人員配置標準に関する資料で す。それから、資料2が特定機能病院について、資料3が専門医について、 資料4が医療法に基づく人員配置標準についてのものです。さらに山崎委員 の求めにより、「医師の需給に関する検討会の報告書」をお手元に配付しまし た。さらに、山崎委員よりご提出いただいた資料も併せて配付いたしました ので、ご確認をいただければと思います。以下の進行につきましては田中座 長、よろしくお願いいたします。 ○座長(田中) 皆さん、お忙しい中お集まりいただきまして、どうもあり がとうございました。本検討会では、参考人について毎回皆さんのご賛同を いただくことになっております。本日は山本信夫委員の代理として、社団法 人日本薬剤師会常務理事の飯島康典参考人のご出席をお認めいただきたいと 思いますが、よろしいですか。また、文部科学省の三浦公嗣医学教育課長に もオブザーバーとして参加し、必要ならば発言していただきますのでお認め いただきたいと考えますが、よろしゅうございますか。 (異議なし) ○座長 それでは議事に入らせていただきます。前回まで、それまでの議論 を踏まえて、資料に基づいて議論を進めてまいりました。今回は、前回には 触れられなかった特定機能病院、専門医、そして医療法に基づく人員配置標 準について議論をお願いいたします。初めに3つのテーマについて、まとめ て全体の資料を事務局から説明していただき、続けて山崎委員から、ご自身 から提出いただいた資料のご説明をいただきたいと存じます。その後、3つの 話題に分けて順に意見交換をしてまいります。では事務局から資料の説明を お願いいたします。 ○企画官 資料の説明をいたします。前回に引き続きまして、これまで検討 会でご議論いただいた内容について議論を整理し、本日のテーマに関する資 料を用意しております。  まず資料1をご覧ください。まず特定機能病院について、特定機能病院に 求められる機能、医療機関間の機能分化と連携の中での位置づけということ で書かせていただいております。特定機能病院の役割として、高度医療の提 供、高度医療技術の開発・評価及び高度医療に関する研修となっていますが、 医療機関間の機能分化と連携を進めていく中で、求められる役割をもっと明 確にしていくことが必要ではないか、と最初に総論的なことを書かせていた だきました。特に、特定機能病院が提供する高度医療の内容について明確化 を図る必要があるのではないかという指摘があり、これについてどう考える かということで書かせていただきました。  特定機能病院が高度医療の提供等に専念できるように、外来機能を含め、 一般的な医療への対応は縮小していくべきではないかというご指摘をいただ き、それについてどう考えるかというのが2つ目の○です。  次は特定機能病院と大学病院との関係についてです。まず、特定機能病院 のほとんどが大学病院であるという現状からすれば、特定機能病院の制度・ 名称が非常に分かりづらい状況にあるのではないか、見直しが必要ではない かという指摘がある一方で、大学病院が必ずしも特定機能病院である必要は ないのではないかという指摘もあり、それについてどう考えるかというのが ここに書いてある部分です。  次が特定機能病院の承認要件のあり方に関するところです。ここでまず書 いてありますのは、高度医療の提供を行う医療機関としては、特定の疾患に 対して最新の治療を提供する、いわば専門的な病院等も世の中に存在してい るわけで、そうした機能を有していれば、その規模にかかわらず特定機能病 院として承認しても構わないのではないかというご指摘がございました。一 方で、特定機能病院としては合併症の併発であるとか、複合的な疾患への対 応能力等の総合性が欠かせないのではないかという指摘があり、どう考える かということで整理しました。  次の○ですが、特定機能病院の承認を得ていても全ての診療科が高度な医 療に対応できているとは限らないという現状を踏まえ、病院の一部について 特定機能病院の承認を行うことも可能としてはどうかというご指摘があり、 それについてどう考えるかという部分です。  特定機能病院に関する最後の○は、これまで承認要件等に関してご指摘を いただいたことについて整理したものですが、承認要件の中に続けたり、取 組みの強化を求めてはどうかというご指摘をいただいた部分で、どう考える かということで1〜7まで書いてあります。難治性疾患への対応、医療連携、 特に退院調整機能、退院時支援機能の構築、医療安全体制の構築、平均在院 日数の短縮、治験の実施状況、それから後期研修プログラム。これは専門医 の養成という観点であろうと思います。それから診療記録の整備状況という ことで、さまざまご指摘をいただいたことについて列挙しました。  続けて専門医のあり方や質の確保についてです。最初の○は、専門医のあ り方として、地域的あるいは全国的な必要数を踏まえた養成を考えていくべ きではないかというご指摘をいただいており、それについてどう考えるかと いうこと。それから専門医の質の確保について、各学会で統一基準のような ものを設けて、第三者的で公正な立場での専門医の認定を行う仕組みを考え ていく必要があるのではないか、という指摘を従前からいただいており、そ れについてどう考えるか。  いちばん下の○。専門医の見直しを行うに当たっては患者の視点を取り入 れるべきではないか。また、症例数など技術的な側面の評価が必要ではない かという指摘がありますが、それについてどう考えるかという部分です。  3頁も専門医の続きです。専門医とひと口に言っても、制度を考えるときに、 領域の問題とレベルの問題とを分けて考えることが必要ではないかというこ とです。その中で、レベルの問題に関してはかなり厳密な基準を設けていく ことも考えられるのではないかという指摘をいただき、それについてどう考 えるかです。  最後の○は少し視点を変えまして、専門医に関する国民の意識ということ で書かせていただきました。患者の立場からすると、専門医に診てほしいと いう気持があり、そういう中で専門医認定の客観性を確保する一方で、過度 の専門医志向については軌道修正を図っていく必要があるのではないかとい うご指摘をいただいておりますので、これについてどう考えるかということ で書かせていただきました。  最後は3つ目のテーマ、医療法に基づく人員配置標準についてですが、こ こではまず、人員配置標準制度そのものの必要性について指摘をいただいて おります。人員配置標準は大変古い制度であり、また、質の担保については 診療報酬上の評価で行われていることから、廃止すべきではないかというご 指摘をいただいておりまして、それについてどう考えるか。  2つ目の○はそれに対するご意見ですが、人員配置標準について、疾病構造 の変化等に対して見直すことは必要であろう。ただ、廃止については、医療 の質の確保をどう担保するかということと併せて検討する必要があるのでは ないかということで、医療機能の分化、連携や医療機能に関する情報提供が まだ十分進んでいない状況においては、これを廃止することは困難ではない かというご指摘をいただいておりますが、それについてどう考えるかという ことで書かせていただきました。  次は病院における外来患者数に基づく医師数の配置標準規定です。これに つきましても、外来診療部門の分離等が進む中では実態に合わなくなってき ているのではないかというご指摘をいただいておりまして、どう考えるかと いうことで書いてあります。  最後は、人員配置に関する情報提供を行うに当たっては、ただ単に情報提 供をするのではなく、それが適正な数であるかどうか、国民に分かるように 行うことが必要ではないかということで、情報提供を行うに当たっての考え 方、やり方についても少し工夫が要るのではないかというご指摘であろうか と思います。以上がこれまでのご議論を事務局として整理させていただいた 部分ですので、本日はこの資料を中心にご議論をいただければと思っており ます。  資料2〜4ですが、これらは本日の3つのテーマに関して、これまでの検討 会で提出した資料等を、時点の修正ができるものについては施して、本日改 めてお手元に配付したものです。記憶を確認していただくために簡潔に説明 いたします。  資料2の1頁は、特定機能病院について。平成4年の第2次医療法改正に おいて、特定機能病院制度が制度化されました。これは高度な医療を提供す る医療機関について個別に承認するということで、2にある3つの役割を果た す病院として医療法上位置づけられているものです。  2頁の下の5ですが、今年4月現在で全国で81の病院が特定機能病院の承 認を受けており、その大半が大学病院です。大阪府立成人病センターが昨年 の4月に承認を受け、合わせて81になっています。3頁以降は承認にかかる 要件について用意した資料です。  9頁以降は、平成17年度に各特定機能病院から報告していただいた業務報 告の内容について整理したものですが、これは昨年も一度この場に提出した 資料そのものですのでお目通しをいただければと思います。14頁以降には、 特定機能病院のリストを付けてあります。  資料3は専門医についての資料です。専門医については、いまそれぞれの 学会において認定が行われているという状況で、国の関与という点では、平 成14年度から、一定の要件を満たした場合にそれを広告できるという形で関 与が行われているという状況です。1頁の下のほうに、具体的に広告可能な専 門医の要件について条文を抜粋してありますが、学術団体として法人格を有 していること、会員数が1,000人以上であること、資格の取得要件を公表し ていること。医師に関して申し上げれば、資格認定に当たって5年以上の研 修を経ていること、資格の定期的な更新制度等があること、このようなこと を要件にして広告可能な専門医を認めているという状況にあります。  2頁には現在広告が可能な専門医のリストを付けてありまして、今年の3月 の段階で48の資格が広告可能となっております。5頁以降に、それぞれの専 門医について、各学会でどのような条件に基づいて認定されているかという 資料を付けてありますので、ご確認いただければと思います。  資料4は、医療法に基づく人員配置標準です。昭和23年に今の人員配置標 準が、医療法上「標準」ということで定められました。3頁をご覧ください。 具体的には、一般病院の医師は、一般病床であれば16対1、療養病床であれ ば48対1、外来であれば40対1という形で人員配置標準を定めており、医療 監視の際にはこれに基づいて指導等を行っています。私からは以上です。 ○座長 続いて、山崎委員から資料の説明をお願いいたします。 ○山崎委員 前回の検討会の医師の需給に関するところで、医師の勤務時間 を48時間に調整するのにどれぐらいのドクターが必要かということで、6万 人必要だという発言をしたと思うのですが、この報告書をよく読んでみたら 違っていたので訂正をしたいと思います。この検討会報告書の16頁を見ます と、普通の医師の勤務時間が60〜80時間で、それを48時間にするのに6.1 万人足りないとあり、医師の需給を労働基準法で言っている週休2日制40時 間勤務に切り替えて最初から計算する、ということをしていないのです。40 時間勤務にしたら、とてつもなく医者が足りないというのが今の医療界の現 状であるということを認識していただきたいと思います。  また、医師の見通しというところが19頁に5番目としてありますが、それ の最初の○は48時間勤務したという前提で計算してあります。しかも、女性 医師と男性医師が一人前というか、生涯労働量は同じだという仮定で計算し たとして、需給と供給が均衡するのが平成34年であると言うのです。したが って、あと15〜20年間は医師不足がずっと続くと言っています。それから、 あくまでも48時間働く、週6日勤務をするという前提で計算して平成34年 に均衡するということですから、普通の国民の勤務の週40時間勤務にしたら、 とてつもなく数が足りなくなる。結果として、勤務医がオーバーワークにな って、バーンアウトして開業のクリニックのほうにシフトしてしまって、マ スコミでさんざん書かれているように、医療の崩壊が起こっている。それか ら、政策誘導で行った療養病棟も38万床を15万床に減らすということで、 医療も介護も完全に崩壊状態にあるということを指摘しておきたいと思いま す。  もう1つの資料は、今日の検討会の3つ目の項目に関連するものなので、 そのときに発言したいと思います。 ○座長 ありがとうございました。3つの議題のうち、まず、特定機能病院に ついて話をしてまいります。先ほどの中村企画官の説明に関する質問でも結 構ですけれども、先生方のご意見でも結構です。特定機能病院について発言 をお願いいたします。 ○藤川委員 特定機能病院と言っても、現状では、実際にどのような特定機 能を有して保持しているのかというのが分からないのではないか。病院全体 を称して特定機能病院と言っているわけですが、これは非常に分かりづらい というのが最大の問題ではないかと思うわけです。その観点から言いますと、 保有する高度医療等の機能を診療科別に個別に評価することによって特定機 能を明確にしていくということが可能になってくるのではないか、このよう に思っております。保有する個別の機能ごとに医療機関の差別化が図られて きて医療の機能分化が促進していくのであります。繰り返しになりますが、 病院全体を、特定機能ということではなくて、診療科別に個別に評価してい くことで、より特定機能ということについての明確化を図っていくことが望 ましいのではないかということです。  また、その際に、医療技術が日々進歩していくわけですので、保有してい る機能が常に特定機能に価するかどうかを継続的に評価していくということ も併せて必要ではないかと思います。 ○座長 ありがとうございました。2点指摘していただきました。 ○武谷委員 私はこの会に出るのは初めてで、これまでの経緯を存じ上げな いので、的外れの発言になるかもしれないことをお許しいただきたいと思い ます。特定機能病院というのは確かに分かりづらいところはあると思うので すが、実際には主として最先端の医学的技術あるいは知識を必要とする医療 を行う施設であります。手術などに関しても、手術のリスクが非常に高いも の、あるいは、頻度が低くて全ての病院でそれに習熟したドクターがいない、 リスクが高いゆえに、いざというときに様々な職種あるいは専門性を持った スタッフを一気に動員できる、そういうセーフティネットがあるということ も大事かと思います。  実際に多いのは合併症がある場合です。単一の疾患というよりは、心臓病 や肝臓病で悪性の外科的疾患があるという方が多い。私ども大学病院でもが んセンターや地域の専門病院から紹介されている患者が多く、高度といって も、病態の複合性という意味での高度ということもあるわけです。  それから特殊な症状を呈して診断がなかなかつきにくいという方もたくさ んおられて、こういう方も単独の科では対応できない。がんの治療でも、キ ャンサーボードというのがありまして、いろいろな領域の方が知恵を絞って、 その患者さんにとってベストな治療法を考案するわけです。  いま私が申し上げたすべてのことが単独の科ではできないわけでありまし て、私の考えでは、最先端とか高度というのは当然、その総体として高度で あって、1科で高度とかどうこうと分離してそれを論ずることは不可能かと思 います。ただ、一方では、どの科も平均以上のレベルを維持する。どの科も 落ちこぼれてはいけないのだと、逆に厳しい要求を突き付けられているので はないかと思うわけです。 ○座長 単独科だけが高度では意味がなくて、それらが総合性を持つことに よって初めて本来の機能を発揮できるということを例を挙げて説明いただき ました。 ○梁井委員 いまの武谷委員のご意見は、そのとおりだと思います。本来の 特定機能病院という名前の趣旨を十分にここで確認をしておかないと、「特 定」とは何だろうとか「特定機能」とは何だろうという言葉遊びになります とピントがずれてしまいます。ですから、資料2ですか、その中にある特定 機能病院の本来の趣旨をしっかりと踏まえて、その質をより向上させるとい いますか、本来の趣旨を確認して、よりリファインメントした形で整理して おくことが必要と考えます。資料2の3頁にいろいろな要件があり、標榜科 目にしても10科以上となっております。その当時は標榜科目は全部で38あ りましたが、最近では26にしようということで26分の10になるでしょうか。 しかし今後の改訂では例えば26分の15とか非常に厳しい状況にする必要が あろうと考えます。また、医師や看護師の配置もより厳しくあった方がよい と思います。  武谷委員がおっしゃった合併症、複合疾患のことでも、確かにそういうこ とが多いのです。ですから、各科の連携体制がどれだけとれているかという ようなところを特定機能病院とする必要があると考えます。各科の数だけで はないにしても、1科だけが十分にしっかりしていても診療の質は保てないか らであります。医師の数も問題でしょう。また、資料1に在院日数を減らす ということで「平均在院日数」と書いてありますが、入院患者の中には非常 に重症の方も多い。それを、在院日数が長くなるからその患者さんはお断り しようなどということは絶対にあり得ないわけです。自然と在院日数が減る にしても、在院日数を減らすことを特定機能病院の大きな目的にするのはお かしいと思います。 ○座長 趣旨は基本的にこれでよいが、それに則って基準等をより改善して いく、連携体制も大切であると言っていただきました。 ○西澤委員 いまのお二方のご意見はもっともだと思います。ただ、私ども 審議する者あるいは国民にとって、そうは言っても、具体的な例がないとよ く分からないのではないかと思います。ですから、それを実例として分かり やすく提示していただくことが大事かと思います。  今のデータでいちばんあるのはDPCではないかと思いますが、DPCで特定機 能病院と他の病院とがどれだけ違うのかと。その中で、特定機能病院では他 では扱っていない疾患を扱っているということが見えると思います。できれ ばDPCを基にしたデータで特定機能病院と、その対照として例えば地域医療 支援病院、あるいは政令指定都市とか500床以上の私立病院、公的病院との 比較を出していただいて、特定機能病院は他とは違うのだというものを見せ ていただければありがたいと思っております。 ○武藤委員 私もまさしく賛成です。実は、特定機能病院もピンからキリま であります。DPCで見ましても、重症度が一般病院とそれほど変わらないよう な所も疾患によってはあります。ですからDPCが良い指標になるのではない かということです。  もう1つは、特定機能病院は高度先進医療を行っているということですが、 実は、一般病院でも高度先進医療をやっているわけです。特定機能病院の中 で高度先進医療がどれだけ行われているかというと、これもまた、特定機能 病院間のばらつきもあるのではないかと思います。  治験の問題も、高度な治験を特定機能病院で行うべきだと思いますが、一 般病院でもかなり高度な治験も行われているのです。そのような形で逆に特 定機能病院の像を浮かび上がらせるためにも、具体的なデータで示していか ないと分かりづらいのではないかという気がします。 ○座長 西澤委員と武藤委員、お二人から、理念論だけではなくて、きちん とDPCのデータに基づいた評価が必要であるとの指摘をいただきました。高 度先進医療についてはデータが付いていますが、1件2件という病院もたくさ んあるので、これでは本当に特定機能病院と言えるかどうか疑わしいかもし れないという意味ですね。 ○島崎委員 前に特定機能病院について議論しましたが、私が特定機能病院 の否定論者のように受け止められているむきもありますので、発言の趣旨を 再度正確に申し上げたいと思います。先ほどお話がありましたとおり、研究 と医療の提供、それから技術を一般に広く伝播していく、このような役割が 必要であるということは、おそらく誰も否定しない。日本の医学あるいは医 療が世界標準に劣後しないようにするために、これはどうしても必要なこと だと私も思うのです。けれども、高度医療の研究・実施・研修を本当に三位 一体で持っていることが必然かどうかということが議論の分かれ目だと思い ます。お二人の先生は、そこは一種「総合力」のようなものがあって初めて 成り立つ、そういう趣旨のご発言だったと思うのです。それは1つのお考え だろうし、そうなのかなという気もしないでもありません。  しかし、この議論を聞いていて疑問あるいは整理を要する点があると思う のです。1つは大学病院の医育機関というかティーチングホスピタルとしての 役割との整理をどう考えていけばいいのだろうかという問題です。2つ目は、 これまでは大学病院やナショナルセンター、がんセンターや循環器病センタ ーといった教育機能なり研修機能なりが組織法上位置づけられていたところ だけが特定機能病院になっていた。大阪府立成人病センターがなったのがい けないと申し上げているわけではないのですが、これは「本邦初演」です。 今後の方向として、各地域で高次の医療機能の担っている病院を次から次に 特定機能病院として認めていくという方向に踏み出していくべきなのかどう なのかということです。これはよくよく考えておく必要があるのではないか。 3つ目として、「これまでの議論を踏まえた整理」のところに書いてあるので すが、本当に高い機能を保持する、研究なり教育なり実際の高度医療を提供 するとかという役割と、現実に多くの大学病院において外来患者をたくさん 抱えている状態との関係をどう考えるのかということです。ティーチングホ スピタルとして持つ必要があるにしても、特定機能病院としてそれほど多く の外来患者を持つ意味が果たしてあるのだろうか。もちろん、それは病院側 の話だけではなくて、国民側の意識の問題もあるかもしれませんが、特定機 能病院の機能・役割という意味では、そうした問題も併せて考えていかなけ ればいけないのではないかという気がしております。 ○座長 今後の問題として、医育機関としての役割、それから数を今までと 性質の違うものを増やすかどうか、それから一般外来のあり方、これら3つ を考えなければならないとのご指摘でした。ありがとうございました。 ○梁井委員 医育機関について、資料1の下のほうで、大学病院が全部特定 機能病院であって分かりにくいということですが、西澤委員や武藤委員のお っしゃるような、DPC等々を基にした質の評価をしながら、これは見直しをし てもいいと思うのです。もうだいぶ時間が経っているので「特定機能病院」 という名前も変えていいと思うのです。  外来患者については、私どものいる順天堂病院では4,000人ぐらいいらっ しゃるのです。それで、なるべく医療連携で他の所で薬をいただくようにお 願いするのです。総合医あるいは開業している所での信頼が厚ければそうい う患者さんはいらっしゃると思うのですが、結局、大学病院や特定機能病院、 あるいは大きな病院以外の病院やクリニックに患者さんが行くような手だて を十分にしていただくということが必要である。そうしないと、玄関で「今 日は500人で終わりですから」というわけにいきませんのでね。来るから悪 いと言うよりも、来ないように日本の医療全体を考えていただきたいと思い ます。 ○武谷委員 いろいろな先生方がおっしゃられましたように、ア・プリオリ に大学病院イコール特定機能病院というのも誤解を招きます。大学病院の中 でもいろいろなばらつきがあるし、大学病院以外でもばらつきはあり、両者 でオーバーラップする部分があり、これに関して見直すことは大変結構では ないかと思います。  教育に関しては話の次元が違うので、いま教育と特定機能病院とを一緒に してやると話が複雑化します。いまの医療というのは、多くの方々もエビデ ンスに基づいてやるということは異論を唱える方はおられないと思うのです。 明日の医療・医学を切り開くエビデンスというものをプロデュースする、こ れは非常に大事なことでありまして、どの病院でもそういうことをやってい ただいていいと思うのです。しかし、特定機能病院はそのような使命を十分 認識していただかなければいけないということで、特定機能病院の1つの条 件にはそのようなことも加味してもいいのではないか。医療の進歩を考える と、きちんとしたエビデンスや医療体系を確立するということは大変重要な ことでありまして、どなたかがそれをやらなければいけないのであり、それ が主に特定機能病院の役割ということになるのでしょう。  外来に関しては、私が申すまでもなく、病気というものは入院治療と外来 治療とを峻別できるわけではございませんで、多くの場合には、入院あるい は外来が一体となってその患者さんにベストな治療をする。たまたま病院の 中で治療を受けるか、通院するかであって、治療という意味ではそんなに本 質的なことではないわけです。多くの特定機能病院では、がんの治療のフォ ローアップがある。手術後経過を診ないのは無責任ですから、必ずフォロー しなければいけません。それから、入院する必要があるかどうか、これもよ く見定めなければいけない。これも外来治療になるわけです。それから、悪 性腫瘍では、入院して手術と化学療法とを交互にやらなければいけない。5回 も10回も繰り返す方もおられるので、これを外来扱いにするか入院扱いにす るか、これは区別できない。さらに、産科に関しても、合併症があってリス クの高い妊婦さんというのは、いつ入院するか分からない状況で外来でフォ ローしているので、これも外来診療なのか入院診療なのか峻別できません。 がん治療も集学的なものでして、各科がいろいろな形で協力してやらなけれ ばできませんので、これも1回の入院で事が済むというわけではありません。 多くの病院では、外来と入院というのは一体として、最終的にその患者にと ってベストな治療をしているということでありまして、初めから、入院の必 要は全くないとか、外来だけでやれるという患者はそれほど多くない。特定 機能病院では、特に外来だけで初めから十分であるという方は比較的少ない のではないかという気がいたします。○座長 外来でも専門性の高い、入院 と峻別できないタイプの外来のことは特定機能病院の責務である。それから、 多くの方から、DPC等を使って、改めて大学病院イコール特定機能病院ではな いという評価も必要ではないかと言っていただきました。ほかの意見はいか がでしょうか。 ○古橋委員 特定機能病院を承認するとか、事態の中で承認取消しをすると か、そういう分化会が厚労省の中にあって、私はそこのお役目もいただいて おります。それで、現在大学病院が78ありますが、そこの病院の、ここで言 う「高度先進医療の提供」「高度医療技術の開発と評価」「高度医療に関する 研修」、この大事な項目について、これら78の大学、現在承認が得られてい ない所も含めれば、約80の大学に非常にばらつきと温度差、あるいは質の度 合の幅の広さが現実にあるのだということを知りました。  国民の側からは、特定機能病院ということを知っている人というのは、普 通の国民には少ないだろうと思います。そういう点では、医師を教育する医 学部が全部、本院であっても、全部特定機能病院に連なる必要はないと私は 考えておりまして、この3つの要件の精度というものがかなり高い水準で審 査されるということがとても大事だと思っております。  もう1つ、私は、特定機能病院という名称は分かりづらいということを言 い続けてまいりましたけれども、よく考えれば、特定機能を保有する、ある いは特定機能を実践している病院であるということであれば、そこの病院の 特定機能とは何であるかをもっと分かりやすく、第一義的に表示するという ことが重要ではないかと思います。  さらに、特定機能病院であるならば、そこで行われている医療はリスクを 伴い、高度であり、非常に密度の濃い、高濃度、高密度、高速回転の医療が 現実に行われているはずです。これは前回議論になりましたが、看護職員配 置は高い水準で置かれているということが、安全の点から非常に重要ではな いか。あるいは、医師の非常な長時間労働ということに、ある意味で連なっ ていけるという点でも大事ではないかと思います。  もう1つ。特定機能病院は、おおかた外来患者数が大変多い。高度医療を たくさんやっておられるような非常に知名度の高い病院は、外来患者が多い ですね。国民の受療行動がそうなっているわけですから、そこのところがよ り詳細に分析されなければ。機械的に「来ちゃ駄目、行くんですよ」という 制度ではなくて、国民が納得いくような医療計画と医療提供体制が目の前に 分かるようになっていなければ、国民の受療行動は変わらないという気がし ますので、受療行動をより分析的に詳細に見てみるということが大事ではな いかと私は思っております。 ○座長 医療機能は、DPCと受療行動も調査に基づいて決定していくべきだと いうことですね。 ○島村委員 私は、この検討会の前に事務局といつも議論をするのです。事 務局のほうからは、特定機能病院について、施設の類型としての役割は終わ ったと考えるから廃止という発言をしてくれと何度も言われるわけですが、 私自身はそうではないだろうと思っていました。いま武谷先生や梁井先生の お話を聞いて「やっぱり言わないで、そう思わないでよかったな」と思って いるのです。診療報酬の評価も付いているということからすれば、国民とか 患者とか我々保険者とすれば、一般病院とどこが違って、どういう機能を果 たすのかということをもう少し明確にすれば、いま両先生がおっしゃったよ うな機能を果たすためには十分必要なことだと考えます。事務局からは「ま た言ってくれない」と言われるかもしれませんが、私自身はそう思います。 だから医療連携のような機能、それから総合力を果たしているのだというこ とを明確に、保険者なり国民なり患者なりに分かるようにしてくれればいい と。冗長的で申し訳ないのですが。 ○座長 機能を果たしていれば多少高くても、保険者としてはのめるけれど も、ただ大学病院が一律になるようなことではおかしいということですね。 ありがとうございました。 ○座長代理(遠藤) 先ほど、外来機能が必要かどうかという議論が出たわ けですが、外来機能を無くすべきだというようなお話ではないのだと思うの です。外来に本来必要でないような患者さんがかなり来るという問題をどう 排除するかというところで議論がされるのだと思っております。現行でも、 大病院ですから紹介状がなければ選定療養の対象になるわけですが、それが 全然バリアになっていないところがあるわけですので、そこら辺は診療報酬 上の問題として、特に、高度な医療を行うことが全面的な目的であれば、貴 重な資源を有効に使うという意味合いから、そこにもう少し経済的なバリア を付けて、先ほど患者の受療行動という話もありましたが、そういうコント ロールをする。要するに、紹介状がない人にはかなり高い自己負担を課すと いうようなことをする。別の言葉でいえば、原則として紹介患者を扱うよう にする。大阪の成人病センターはそれに近いことを行ったという話をこの間 ここでされていたかと思いますし、国立がんセンターが、たしかそれをやっ ておられますね。その場合にベッドの稼働率や収支にどういう影響を及ぼし ているのかということを知りたいところではあるわけですが、そういう形の 誘導は如何なものかということを、むしろお聞きしたいと思います。 ○座長 すぐには難しいので宿題ですね。 ○座長代理 ブランド病院に行きたいという気持はよく分かるわけです。し かも、かかりつけ医はそれほどいないのですから、ダイレクトに行ってしま ってもいい。検診で再検査が必要だと言われたら、日本でいちばん有名なが ん病院に行きたいという気持も分からないでもない、という気持はあるわけ ですが、そこら辺を経済的に多少制約をかけるかどうかです。行きたい人は お金を払えばいいわけですが、そういう誘導を今よりも少し強めるかどうか という話になるかと思います。 ○座長 そういう経済誘導が果たして正しいかどうかをみんなで考えてほし いということですね。 ○座長代理 あるいは効果があるかどうかです。 ○座長 効果があるかどうか、また、妥当かどうか、両方だと思います。 ○梁井委員 経済的バリア、いいと思います。大学病院の外来収入を減らす べく点数を安くしようというような議論もときどき聞かれるのですが、そう すると、患者はそちらのほうによりたくさん行ってしまうのです。ですから、 いま先生がおっしゃったように、できたら、反対に上げなければいけないわ けです。重症で特定機能病院での治療がどうしても必要だという場合に、か なり上がってしまう。紹介患者であればOKというのであれば、それはそれで 結構なのですが、紹介患者も初診だけではありませんで再診があるというよ うなところもある。ある種の専門病院のように、手術が終わったら、よその 病院に行きなさいよということになると、ほったらかしにされたような診療 になる。その辺のところをうまくバランスをとっておかないと、非常に具合 の悪いことになるだろうと思います。 ○山崎委員 先ほどからお聞きして感じているのは、これから政策的に、在 宅で終末期を迎えるという1つのスローガンがあるわけですが、特定機能病 院の主治医にかかっている患者が在宅で急変して亡くなったときに、特定機 能病院の主治医と称する先生は在宅の部分まで関われるのでしょうか。具体 的に言うと、亡くなったときの検視とか死亡診断書を書くというのは、特定 機能病院の先生がしてくれるのでしょうか。 ○座長 それは特定の質問ですか、一般的な問いかけですか。 ○山崎委員 一般的なことです。 ○座長 問題点があるということですね。 ○内田委員 これは特定機能病院の議論があったときに私が最初に申し上げ たと思うのですが、特定機能病院の3つのスローガンというかテーマという か、そういうものが出ていますが、これを実践するには教育と研究が不可分 なものであり、大学病院ほぼイコール特定機能病院という現在のシステム、 これは必然ではないかと思っています。  もう1つは先ほどからの議論、外来かどうかという話なのです。今回の医 療法改正の中では、機能分化と連携、それから病院完結型の医療から地域完 結型の医療に転換するということが言われて、これは患者さんのためにも非 常にリーズナブルな方向転換であると私は考えております。そこのところを 考えますと、何でもかんでも大学病院の外来に行くという今のあり方は非常 に問題があるので、そこの仕組みは変更して何かの仕組みをつくる必要があ るのではないかと思います。 ○座長 ひと渡りご意見を言っていただきました。時間を3つに分けなけれ ばいけないので、まだ言い足りないかもしれませんが、次に移ります。専門 医について、中村企画官の資料説明についてのご質問でも結構ですし、ご意 見でも結構ですのでお願いいたします。  資料1の3頁に(専門医に対する国民の意識)と書いてあります。これは 私が前に申し上げたことですが、「専門医」という言葉には、専門分化、つま り細かくしていく意味の専門化と、同じ診療科の中でレベルが高い専門医、 つまり上級医とがごっちゃになっています。まさに3頁の上から2つ目の○ の「過度の専門医志向」これは医者の区分が細かくなっているとの意味です ね。「患者の立場からすると専門医に診てほしい」が、上級の医師に診てほし いという意味なのか、それとも細かく分かれた、より深い専門を持った人に 診てほしいという意味なのか分かりません。いちばん上の○にあるように、 同じ分野の中のよりレベルの高い人の話と、医学の進歩とともに領域が細か くなっていく専門医の話が区別されずに今まで来ていますので、ここは私た ちとしても整理したいと考えています。いまの点でなくて、何でも結構です ので、どうぞ。 ○藤川委員 資料1の最初の○のところに書かれている「必要数を踏まえた 養成を」ということ、また、認定を行う仕組みを考えていこうという話も出 ているのですが、いずれにしても、専門医をどのように位置づけるのかとい うところが必ずしもはっきりしていないのではないかと思うのです。私自身 よく分からないところがあるのですが、各学会でそれぞれに、というのは語 弊があるかもしれませんが、それぞれの学会の考え方に基づいて、何をもっ て専門医の資格を付与するかというところはそれぞれある。それはあくまで も医療を提供する医師の側からの資格要件と見ていまして、全体の医療を受 ける国民あるいは患者の立場で専門医というのはどういう意味を持っている のかというふうには考えられていないのではないかと思うわけです。そうい う意味では、数ありきではなくて、専門医の役割をもう少し明確に位置づけ る中で、専門医に必要なレベルあるいは領域についてどのように確保してい くかという論議になっていく必要があるのではないかと思います。現状では 専門医が「広告可能な専門性を持った」という基準を外形標準的に持ってい るということについて、国民が求めている専門医というものとあまり合致し ていないと思いますので、もう少し積極的に、専門医であればどれだけの症 例を経験しているか、どういったアウトカムを持っているかとかという観点 でも評価していくべきではないかと思います。 ○座長 口火を切っていただいて、ありがとうございます。患者の目から見 た専門医の位置づけと役割に関する議論をしなくてはいけない。学会が決め ているから専門医ではないということですね。 ○座長代理 私も患者の立場から述べさせていただきます。自由標榜制の下 では、専門医というのは医師や医療機関を選ぶ1つのシグナルにはなると思 います。ただ、資料3を見ますと、会員数に占める専門医数、要するに認定 率と言ったらいいのでしょうか、これに各学会で非常に大きなばらつきがあ るというのが実態です。これだけの乖離があるとなると、クオリティーのシ グナルだと見ていいのかどうかというところがあるのです。こういうことは 学会が中心で考えるべきで、行政が関与する話ではないと思いますが、あま り極端な認定率の乖離というものは学会のほうでも是非修正していただいた ほうが、一般の人が信用しやすくなるだろう、率直にそう思うわけです。 ○内田委員 専門医認定機構というのがあると思うのですが、その取組みの 進捗状況をお話いただければと思いますが。 ○武谷委員 専門医の認定に関して、直接に関わるのは各学会です。学会か ら申請された書類が厚労省の定める規定を満たせば、それはまず認められる ことになっています。それから、専門医制認定協議会といって、専門医制度 のあり方を第三者的に中立的な立場で評価し、指導するという組織であり、 各学会が一定の資金を拠出してそれを維持しているわけです。この協議会は 10いくつかの基幹診療科のみの専門医を広告が許容されるという扱いにし、 それ以外の専門医は認めないという方針なのです。  基幹専門科以外には、厚労省も今いろいろ標榜科を再検討していますが、 患者さんに分かりにくいのも少なくありません。ここにあるように、「レーザ ー専門医」「細胞診専門医」と言われても、私はその先生に診てもらうのかど うか分からないということで、専門医制認定協議会は専門医の枠を制限して 「社会に開かれた専門医」ということを強く意識しているわけです。  さらに専門医というのも、学会によって扱う領域の特殊性あるいは広さと いうのはさまざまです。それぞれの会が認定する専門医なので、当然そこで 認定された専門医の守備範囲とか、要求水準は学会が定めるということでば らつくことになります。しかも学会によっては、とても患者さんにはわかっ てもらえないような専門医があるわけです。輸血、細胞診、レーザーとか、 医療手段を専門医として認定している場合と、あるいはアレルギーとかリウ マチとか具体的な疾患を専門医として出しています。この学会名がそのまま 専門医になっているわけなので、その辺りも一般の方々には、一体この専門 医というのは何をされるのかというのが分かりにくいのではないかと思うわ けです。 ○内田委員 いまのご説明に関してですが、やはり学会が主導で、それぞれ の学会のいろいろな思惑といいますか、考え方がありますので、そこのとこ ろで自立的な働きがあればいいかと思うのですが、利害とかその辺まで絡ん でくる話になると、学会の代表だけが集まった場では、なかなか話がまとま らない。国民の目に分かりやすいシステムができないという印象をすごく持 つのですが。 ○武谷委員 そのとおりでして、ただ個々の学会は自分の学会から専門医を 出せないというのは非常に屈辱的なことで、ステータスが低いということに なってしまうのです。うちの科だけ専門医を出せないということで、プライ ドも傷つけられてしまうわけですね。ただ世間一般にそういう目で専門医を 見る方もおられるわけでして、病院の雇用条件なども、専門医かどうかを聞 いてきて就職にも関わることにもなります。 ○島崎委員 1つ事務局に質問したいのですが、標榜科目の分科会がスタート していますね。それとこの専門医の話というのはどういう関係に立つと考え ればよろしいのですか。 ○保健医療技術調整官 いまのご質問ですが、標榜のほうの検討と専門医の 整理、検討とかいまの件については、向こうの審議会の整理では、全く関係 のないものという形で、向こうは医療機関の広告としての標榜をどういう形 で整理していくのかという観点で議論をしていますので、直接関係のない議 論です。 ○座長 医師に帰属する話と医療機関の広告ですから、差し当たり独立して 議論してよいとのご回答のようです。 ○島崎委員 確かに理屈の話としてはそうなのかもしれませんが、何のため に専門医制の議論をするかといえば、医学が高度化し専門分化が進む中で専 門医のあるべき姿は何かということだと思うのです。座長がおっしゃるよう に、その専門科ということの意味合いというのは2通りあり、1つはそれぞれ の学会の中で専門家同士でクリティカルに批判を行い、それぞれの専門領域 のスタンダードを作りスキルアップを図っていくという重大な役割があるの だろうと思います。もう1つは、専門医制は国民にとって医師が何を専門に しているのか分かりやすくする、究極的には国民のほうをやはり向いていか なければいけないという面があることも間違いがないと思うのです。そうし ますと、専門医制を考えるに当たっては、標榜との関係も考えてみる必要が あり、分かりやすく、同時に、一定のクオリティが保証されているというこ とが、必要な条件になってくるのではないかなと思います。  申し上げたいことは、遠藤先生もおっしゃったように、こういう領域に直 ちに国が直接的に介入していくことが決していい方向だとは思いませんが、 同時に機能分化を進めていくことが医療政策の重要な柱の1つとして掲げら れるのだとすると、医療関係者も「時間感覚」をもう少し持っていただかな いといけない。いろいろと議論があって、利害がいろいろ輻輳しているのは 私も承知していますが、時間がいたずらにかかるのは、国民とくに患者の側 は待っていられない。ですから、いつまでも調整中で解決がつかないという ことだと、言葉は悪いかもしれませんが、国家の介入が始まってしまうので はないかという気がします。 ○座長 重要な指摘ですよね。国の介入前にきちんと解決すべきだと。 ○武藤委員 別の視点で、やはり専門医制度と診療報酬のリンクがもっと必 要ではないかと思います。現行の診療報酬の支払体系の中にも、一部診療報 酬、診療行為の算定要件の中に専門医であるということが一部入っています が、まだまだ諸外国に比べると低く範囲が狭いと思うのです。例えば米国の ドクターフィーを決めている資源準拠相対スケールなどですと、医者がもう 資源ですから、医者の専門性も資源として、非常に計数化されていますし、 ヨーロッパでもそうです。ですからもう少しその辺りを検討すべきだと思う のです。それであれば国民の側も、それによって専門医に診てもらえば少し 割高になるけれども、ということであれば、それで納得してもらえるのでは ないかと思います。 ○座長代理 よろしいでしょうか、要するに専門医と診療報酬とのリンクの 問題はいろいろな視点からいろいろなご議論があるところですが、ただ、直 接的に専門医と診療報酬をリンクさせますと、その認定に関してかなり行政 は介入します。これは100%にしないことにはお金が入ってくるわけですから、 お金とリンクさせればたぶんそういうことになると私は思います。 ○座長 諸刃の剣になり得るわけですね。 ○梁井委員 学会はたくさんあります。ただ医師は多くの学会に所属してい ることが多い、それから当然ながら医療が発達しますと専門分化する、それ から学会もたくさん出来る。するとより専門化されたところを第三者が評価 するかというのは、ますます出来にくくなっているのが専門医です。  資料3の6頁目に、先ほど専門医の数と会員のバランスとありましたが、 例えばこれは守備範囲も泌尿器科の分野と内科の分野では、皆さんどなたが お考えになってもわかるように泌尿器科の分野というのは非常に狭いわけで す。ですからそこで一生懸命に泌尿器科だけやっている先生方は、やはりか なり高いパーセンテージでの専門医になるだろうということと、ほかの分野 からの会員が比較的狭すぎて少ないのだろうと思います。  もう1つは内科学会11番と13番、14番の糖尿学会、肝臓学会とあります が、おそらく内科学会には糖尿病学会に入っておられる方や、肝臓学会に入 っている方のほとんどが入っておられると思います。そうしますと、内科学 会での会員数が多いと、その中の専門医が少ないのは当然だろうということ になりますし、糖尿病だけをやろうという人たちは専門医のパーセンテージ が多くなる。従って、必ずしも会員数と専門医のバランスで、専門医制度が おかしいというのは当たらないと思います。 ○島村委員 先ほどと同じように議論をすると、事務局からはどういうこと が出てくるかというと、学会の専門医の認定を第三者機構に一元化すべきと いう話が出てくるわけです。それは合意を得たのでいいのですが、私自身は やはり国民なり患者が医者の事情はよくわかるにしても、国民がわからなく て困っているのだから、やはり第三者機構という屋上屋を重ねるよりも、医 学界の中で整理をして、もう少し分かりやすいように自己努力をしてもらい たいと思います。また屋上屋で何か認定機構を作っても、それは認定もでき ないだろうし、もう少し医学界の中でそういう整理ができないかなと思いま す。いろいろな事情があるのはいま内田先生のお話を聞いたらよく分かりま すが、実際にわからなくて患者なり国民なり、保険者が困っているのでそこ を医学界の中で整理をしてもらいたいというのが要望です。 ○座長 まずは行政以前に医学界のほうで。 ○企画官 先ほど来島村委員がおっしゃっている事務局というのは、どちら の。 ○島村委員 それがいいのか、健康保険組合連合会のことです。 ○座長 厚生労働省から言えととられては困るわけですね。健保連の事務局 に言えなら納得です。重大な疑義があると思ったので。 ○山崎委員 専門医というのを考えた場合、短期に少数の優秀な専門医をつ くるのか、長期である程度量的な専門医をつくる方法と2つあると思うので す。アメリカなどの場合、例えばこの前本を読んでいたら、心臓の高度の手 術ができる専門医というのは年間40〜50人しか採用枠を作らない。そのかわ り集中的にトレーニングをして、ゴッドハンドのようなドクターを短期間 にポンとつくって、全米に配置をしていくという仕方をしているわけです。 だから、そのように専門医というのは、学会で大量につくっていくほうがい いのか、あるいはきちんと政策的に分野に特化して集中的につくっていった ほうがいいのかというのも、やはり検討をすべきだと思います。  この表を見ていて感じたのは、16番目に日本救急医学会の専門医というの は2,289人と書いてあるのですが、いま救急車の出場回数は年間5,000万回 ぐらいあるのです。救急指定病院に急病者が搬送されるわけです。救急指定 病院の当直医の要件は、救急業務にある程度熟達しているという条件が付い ている。現場できちんとした対応ができなくて裁判が相当起きているわけで す。だから、そういうことを考えると救急の専門医が2,000人しかいなくて、 この国の救急というのは実際にやっていけるのかなというのが実感なのです。 ○座長 専門医の考え方も2種類あるとのご意見でした。救急医については 問題提起ですね。アメリカの様子については資料3の3頁にもレジデントプ ログラムでの数の規定という書き方がなされています。 ○武谷委員 いまのお話でアメリカの例も出ましたが、アメリカにもいろい ろな形の専門医があると思うのですが、最初に座長がおっしゃられましたよ うに、専門医というのは特定の限られた診療に精通している人と、通常よく 見られる頻度の高い疾患でも非常に腕のいい経験豊富な方を専門医とするの かしないのか、そういうことがあります。特定な稀な疾患のみに限るという ことになると、専門医を限定してもよろしいですが、あらゆる領域に熟達し た優秀な医者を専門医とするとなると、制限することは一般の方にとっても 好ましいことではないので、専門医のあり方をどのようなものにするか、そ の議論がベースにないと、何パーセントにしろという議論は、あまり意味が ないのではないかという気がいたします。 ○山崎委員 最近だいぶ新聞紙上で問題になっている総合医という考え方と いうのがあるのですが、あれも今の話にあったように、あらゆる部分に広く 浅くという専門医も当然現場のトリアージとしては必要なわけでして、そう いう意味でいうと、総合医というのもある意味で言う専門医ではないかと思 うのです。したがって、これからの医療提供体制を考えた場合に、そういう トリアージができる一線の診療の先生をつくっていく必要があると思います。 ○内田委員 それはご指摘のとおりでして、1つはトリアージというか、初期 の対応ですね。もう1つは地域の医療あるいは福祉、保健とのコーディネー ト機能を持った医師。そして私ども医師会で考えているのは、もう1つは社 会的な医療に協力する。要するに学校医、産業医、警察医であるとか、ある いは予防接種であるとか健診であるとか、そういう役割を果たすような医師、 地域に密着した医師ということを考えて、いまプライマリーケア学会、家庭 医学学会、総合臨床医学会の3学会と、日本医師会の学術推進会議、これは 高久先生が座長をやっておられるのですが、それが話し合いをもって、その ためのカリキュラムを作っていこうということで取組みを進めています。こ れはこれからの医療提供体制の中で非常に大きな役割を果たすものだと思っ ています。 ○座長 では、次に進みましょう、最後3つ目の議題は医療法に基づく人員 配置基準、これはずっと実務的な話ですが、これについてのご意見、ご質問 等をよろしくお願いいたします。 ○山崎委員 本日の資料の4の2頁にあります医療法の施行規則ですが、昭 和23年に人員配置基準が作られて、実に60年間計算方法を全く変えていな いのです。したがって現在の状態に合っているのかどうかを考えた場合、見 直さなければいけないのではないかと考えています。  本日私が「医療法の人員標準未満保険医療機関の取扱いについて」という2 枚刷りの資料を提出しています。これは診療報酬の世界の話だろうと言われ てしまうとそれまでなのですが、診療報酬のほうで入院基本料というのは、 このように70%、50%から70%、50%ということで、段階的に診療報酬が下 がる仕組みになっていますが、その次の頁にあるように、まるめの部分の特 定入院料を精神科の場合は多くの病院がとっています。特に精神療養病棟入 院料の1は、真ん中の表にあるように平成17年で8万1,000件で、平成18 年が7万2,413という数字で、精神療養病床数が下がっているのですが、こ れは実は平成19年の1月17日の中医協から出た資料から抜粋している数字 でして、たぶん中医協に提出した資料が違っていると思います。それは病院 数が723から794に増えているのに病床数が減っているはずがないと思って います。  資料の下の参考のところについているように、小児の場合も精神科の救急 入院料、あるいは急性期治療病棟入院料、それから精神療養病棟は、医療法 の基準を満たさなくなったと同時に、そのいちばん上の表にあるように、い ちばん低い特別入院基本料というところまで落ちてしまうのです。例えば精 神療養病棟でいうと、1,090点の入院料を取れていた病室が、今日例えば保健 指定医が心筋梗塞で倒れたとすると、550点まで入院料が半分になってしまう という、非常に危い橋を渡りながら精神科の医療が行われている現実になる わけです。これはほかの科にない話です。  今日の資料の4頁に人員配置の遵守率がついていますが、地区別でかなり この遵守率には差があるわけです。例えば東北、北海道は80数パーセントな どという数字ではなくて、60%の後半から70%です。多くの民間病院は例え ば医療法で10人必要なところが常勤のドクターは6人ぐらいしかいなくて、 非常勤のドクターの0.25とか、0.5というのを全部積み上げていって、その 10人をクリアーしていたりとか、10人必要なところを10.2とか、10.3でや っと法律をクリアーしているという病院がほとんどなのです。したがって1 人で、非常にドクターが少ないので、もう70、80のドクターが一線で頑張っ ていて、今晩心筋梗塞を起こすような先生が実践で頑張っているのが現状な のです。  そういう現状を考えると、ここのところの計算方法がどうしても変えてい ただかないとならないという感じをもっていますし、会員の先生方が「おま えが頑張って、ちゃんと主張をしてこい」と応援を受けてまいりましたので、 発言いたします。 ○座長 今度は事務局ではなく会員の方々の声です。でも実際にはこの局で はなくて中医協マターだと思いますので、声をここで伺っておくしかないと 思いますが、ありがとうございます。 ○武藤委員 この外来の問題も先ほどのお話で、いま急性期の病院も外来も ものすごく変わっていてER、それから外来……センター、日帰り手術センタ ー、日帰り心カテセンターなどというのもあります。そういうふうにして大 きく変わっているのですが、そして相変わらず人員配置というのはとても納 得できないわけです。ただ、いつもこの議論になるときに、外来の実態を表 わす調査データといいますか、入院では幸いにしてDPCが入りまして、入院 のケースミックスがわかるようになりましたが、外来のケースミックスを表 わす調査、あるいはスケールがないのです。ですから、これを是非とも。実 は米国では2000年から外来のこういうケースミックスであるアンディラト リペイシェント クラフィケーションが400分類ですがあります。これは処置 あり・なしとか、症状、検査あり・なしとかいくつかに分けまして400分類。 ちょっと多いのではないかなという気がするのですが。  そうしたスケールを使って是非とも日本の外来を分析して、私も外来をや っていて、痔の薬を出すだけの外来とかいうのと、日帰り心カテの外来とで は明らかに違うわけですから、まずそうした実態調査が必要ではないかとい つも言っているのですが、どうでしょうか。 ○座長 それこそ厚労省以前に、学問研究の側の義務かもしれませんね。そ ういう意味を含めて言っておられます。 ○島崎委員 この人員配置の標準という意味なのですが、よく分からない点 があります。「標準」はあくまで「標準」だから最低基準ではないという趣旨 の記述が資料の中にもありますね。ところが、標準を割り込んだ状態が2年 を超えて継続する、正確には、標準の2分の1以下である状態が2年継続を した場合には、都道府県の医療審議会にかけられ、これは適切ではないねと いう結論になると是正命令がかけられる。場合によっては病院の業務停止命 令までかかるという形になるわけです。そうすると、この人員配置の標準な るものは、最低基準として一定の意味合いも持っているのではないですか。  言いたいことは、この「標準」というのは法律的にどういう意味をもって いるのか、その辺りも整理をしないとまずいのではないかなと思います。こ れができた当時は、病院というのはおおよそこういうものです、診療所はこ ういうものですということで、まあおおよその目安としてはこういう人を配 置してくださいよというものとして設けられたはずなのですが、その後、機 能分化が進んでいき、病院の中でもグラデーションがあり、さらに安全性の 確保とかを考えるとすると、「標準」とは言いながら業務停止命令までかかる という話になれば、「標準」の意味合いというか、法的な意味そのものが変わ ってきているのではないかという気がします。したがって、今日事務局にそ こはどうなのだということを尋ねるつもりはないのですが、そもそも法律的 に「標準」ということの意味を整理しておく必要があるということを申し上 げておきたいと思います。 ○山崎委員 今の意見に関連しているのですが、標準だったらこの診療報酬 でストンとこの最低のところまで落とすというのは、非常におかしいと思う のです。最低基準だったら守らなければペナルティが付くというのはわかる のですが、標準ならば、どうしてこの1,090点が550点まで瞬時に落ちてし まうのだと。だから今のお話のように標準なのか最低基準なのかというのは、 やはりきちんとするべきだと思うのです。  もう1つは現場でやっていて私が非常に不満なのは、例えば診療所にして しまうと、病院の真ん前に診療所を作ると100人診ようと200人診ようと、 300人診ようと1人でいいのです。したがって多くの病院が門前診療所を作っ てしまうのです。そうすると、本院のほうのドクターの数は少なくても、そ の診療所のほうに1人だけカウントして外来の患者はそちらでできるという、 裏芸ができるわけですよ。だからそういう裏芸をさせるような法律自体がそ もそもおかしいと思います。 ○島崎委員 誤解があるといけないのですが、私は現実に人が張り付いてい ないときに診療報酬上それをどう評価するかという、個別の点数の付け方、 経済的評価の問題もあるかもしれませんが、私が申し上げたかったのは、衛 生法規として、「標準」ということでありながら実質的には最低基準的な要素 をもっているということは法的に整理する必要があるということが1つです。  それからもう1つは、確かに昔できた標準といまの実態というのは合って いない。武藤委員が言われるように、例えば同じ外来にしても、そこでやっ ている機能は千差万別だとしたときに、一律に「標準」という“たが”をは めるのがいいかどうかという問題があるということです。  ただ、一方では一切全く何の基準もなくていいのだろうか、エモーショナ ルな言い方で申し訳ないのですが、「何となく気持が悪い」部分があるのも事 実です。仮に標準を廃止するのであれば、代替的に例えばこういうことで担 保できますとか、その質なり安全性なりが担保できますというものを考えて いかなければならない。そういうこととセットで議論すべき問題だろうとい う気がいたします。 ○山崎委員 その件については、来年度の4月から病院情報の情報公開が始 まります。したがって、看護師が何人いてどうなっているとか、ドクターが どう張り付いているかとか、いろいろな病院情報が公開されるわけですから、 患者はその病院情報を見て、ああこの程度の病院で、こういうイメージだと いうのは当然わかるはずです。だからその情報公開と同時にこの法律はあま り意味がなくなってくるのではないかなと思うのです。 ○五十里委員 確かに今年度の4月から、いわゆる医療機能情報公開制度が スタートして、いま当局でもいろいろ準備を進めているわけですが、しかし ながら、そこで提供される数が適正数であるかどうかということは、なかな か患者は分からないのではないかなと。したがって先ほどからの議論をずう っと聞いていましても、やはり質の担保という観点で何らかのそういう基準 なり、それが標準なのか最低基準なのかはわかりませんが、やはり必要なの ではないかなということを、ますます思いました。 ○座長 これが医師数であるかどうかは別として、もし違う指標があるなら それもいいかもしれないけれども、なければこれがいまのところそういう指 標になり得る。しかし、標準か下限は議論をしてほしいというのが皆さん共 通の意見です。ほかにいかがでしょうか。 ○古橋委員 私自身もこの配置に関しては、一応医療施設は、診療報酬側の ルールとコントロール、そして医療法上のルールとコントロールと2つの方 法論のコントロールを受けております。診療報酬などにつきましては、例え ば看護職で言えば算定の考え方は、常時配置的な考え方に変わってまいりま した。そういう点では医療法がこのままあることの問題は、まあ、整理をす ればいいのですが、いいのかなということと同時に、もう1つ島崎委員から のご発言もありましたように、私は実態としては最低要件的な意味合いをも っております。したがって医師不足、看護師不足という社会的問題もありま すが、そこのところは最低要件的要素であるということがより明解になった ほうがいいのではないかという気がいたします。  いろいろと多くの人が葛藤しました18年4月からの看護職の配置などを見 ましても、国立病院とか国立大学病院の配置の実態を見ますと、結局標準あ るいは捉え方によっては、十分要件のような解釈があって、経営の問題も含 めて、そこの独自の必要数というところまで広げられなくて、この人員配置 基準というものがくつわになっておりました。そして、大きな変革があった ときに、結局病院独自の裁量や判断ができないということを眺め、いわゆる 総定員法とか定員のルールですね。ですから、私はそれが最低要件なのだと いう考え方が端から流れていれば、今回、国立大学等が、多くそのご苦労も 得ながら、たくさんの看護職確保のエネルギーを使わなければならなかった 辺りも、少しは回避できているのではないかという気がいたします。何を言 っているのかと思われるだろうと思いますが、私は人員配置は最低要件的意 味合があるのだということをより明解にして、足りないことへの配慮と妥協 から標準ということに決めていくと、そこは質の問題に絡んでまいりますか ら、そういう捉え方がいるのではないかと思います。  もう1つは私も外来機能に関して、このままではとてもいいとは思えない のです。多様になっておりますシステムが、さまざまにいわゆる外来という 言い方は患者の視点から言えば外来ではなくて通院部門だと思います。外来 というのは病院側から外から来る人という価値判断で言っているので、要は 入院か通院か在宅かという考え方が、今必要だと私は思うのです。その外来 機能がもっと特化された機能をたくさん持ってきています。そういうものが どう医療法で言うのかというと、これは難しいと思うのですが、30人に1人 と言い続けるような事態ではないのではないかという気がしております。 ○西澤委員 今のご意見にかなり反論があるのですが、看護師等でも、一部 の大病院が集めたがために、集められないで困っている病院がある。しかも 地域差があるということ。日本の医療を考えたときに、本当の急性期の大学 病院を含めた大病院だけが質がよければ、ほかの地方の病院がなくなっても いいのか、それは考えていただきたい。やはり決まった数の看護師あるいは 医者がいるのであれば、国民全体の医療の質を保つためには、日本全体でど う考えるかということをもうひとつ考えていただきたい。そうすると、最低 基準を設けても、都会の病院はそれの倍でも集まれば置ける。しかし、地 方には医師も看護師もいなくなる。地方の住民はどうしたらいいのですか。 やはり地方でもある程度の医療を受けられることを前提にしていただきたい。 日本の医療、量の問題はなくなったから質へと言っていますが、日本全体を 見るとまだ量が十分ではないという認識は是非持って議論をしていただきた いと思っています。 ○座長 大変痛切なご意見と思います。 ○藤川委員 ちょっと話は違うのですが、配置基準を廃止するかあるいは見 直しをするかといえば、両論がこれまでの議論でありましたが、私自身は見 直しをすべきだと。それは患者側から見てこの人員配置基準があるというこ とが最低というか、基本的な医療提供体制、人員体制が構築されているとい う証になるのだろうなという意味では、必要だろうと考えています。  では、どのように見直しをしていくかということですが、この人員配置基 準は基本的には一医療機関に対してどうであるかということなので、この辺 の基本は変えられないとは思うのですが、今後、医療計画が実施される実態 を踏まえて、医療分化あるいは地域連携という中の実態を見ながら、この配 置基準、人員数をその中で見ていくことも1つの考え方としていいのではな いかなと。いますぐ性急にこの配置基準、人員の見直しをしていくのではな くて、医療計画の実施状況を見ながら、どういうふうに人員を考えていった らいいのかということもあってよろしいのではないかなと思っております。 以上です。 ○座長 前のほうの話題に遡っていただいても結構ですが、ほかにいかがで すか。 ○内田委員 いまの人員配置基準のお話にも若干関係するのかと思いますが、 今回の検討会は第六次の医療法改正を睨んでの検討会になっていて、具体的 なテーマとしては特定機能病院、地域医療支援病院そしてかかりつけ医でし たか、そういうテーマが3つありましたが、私は第六次の医療法改正を睨ん で、いろいろな中身の中では、やはり医療費適正化の問題がいちばん大きな1 つのテーマになっていると考えています。それはそのとおりだと思います。  病床が多いとか人が足りないとかいう話がありますが、基本的には私はそ の話をするときには、やはりOECDの平均の医療費のGDP当たり9.9%を日本 の医療費が大きく下回っている中で、上質の医療が提供できる体制が現状で ある。この現状をさらに効率化し、さらに入院日数を削減したり、病床数を 減らしたりして、それを維持していくことが、いまやもう限界にきていると いうのが現在の状況ではないかと考えています。  ですから今回のこの検討を進めるに当たっては、大前提として医療費を少 なくとも9.9%の半分ぐらいまでのレベルまでは日本の医療費、今は8.1%ぐ らいではないかと思うのですが、少なくとも9.0%ぐらいまではアップする。 それがあれば人の問題に関しても施設の問題に関しても、おそらくほとんど の問題が今の医療のレベル以上のレベルで維持できるのではないかと考えて いますので、そこのところをまずこの答申の中で最初に触れるべきではない かと思います。 ○座長 多少範囲を超えているかもしれません、ひと渡り出たということで 少し早いですがよろしいですか。皆さんそれぞれ貴重な意見を3つの議題に ついて述べていただきました。2回り議論ができたので何が問題で、それもそ れぞれの問題について各層で問題が分けられることは整理もできましたし、 そのうち役所に責任を持ってもらうこと、あるいは学会の側で持ってもらう こと、病院側の責務等々の区別もついてきたと考えます。これらのご意見を 基に厚労省の事務局で次回の審議に向かって資料を整理するとともに、意見 を踏まえて議論を今後お願いいたします。事務局から次回以降の予定につい て説明をお願いします。 ○企画官 ありがとうございました。前回と今回で一応検討項目について2 度目のご議論を一通りお願いをしたところです。次回は検討項目全体につい て前回と今回のご議論を踏まえて、また議論の整理をした資料を用意させて いただければと思っていますので、検討会としてこれまでの議論の整理とい う形でご議論をお願いをいたしたいと思います。具体的な日程については現 在調整をさせていただいているところですので、改めて連絡をさせていただ ければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○座長 では、少し早いのですが本日はこれにて閉会したいと存じます、お 忙しい中また暑い中ご苦労さまでした。どうもありがとうございました。 照会先 医政局総務課 高島、柳田 連絡先:03−5253−1111(内線2519)