07/05/18 治験のあり方に関する検討会 第14回議事録 第14回治験のあり方に関する検討会 開催日: 平成19年5月18日(金) 場 所: 厚生労働省専用15会議室 ○ 中垣審査管理課長  それでは定刻前でございますが、委員の先生方におそろいいただきましたので、ただいま から「治験のあり方に関する検討会」を開催させていただきたいと存じます。  議事に入ります前に、委員の交代と本日の出欠状況について御報告させていただきたいと 思います。本日の会議から、これまで委員でおられました生駒委員にかわりまして、日本製 薬工業協会医薬品評価委員会の副委員長の川口さんに委員に御就任いただいておりますの で御紹介させていただきます。   ○ 川口委員  川口でございます。よろしくお願いします。   ○ 中垣審査管理課長  また、本日は木村委員、望月委員より御欠席との連絡をいただいております。  また、本日は参考人としまして浜松医科大学医学部教授の渡邉裕司様に御出席いただいて おりますので御紹介申し上げます。   ○ 渡邉参考人  浜松医大の渡邉でございます。よろしくお願いします。   ○ 中垣審査管理課長  なお、大臣官房審議官の黒川でございますが、申しわけございませんが所用のために本日 は欠席させていただいております。よろしくお願いします。  本日の御議論いただきたい事項ですが、前回の治験の契約に関する規定につきまして、検 討会での主な意見について事務局の方で整理させていただいておりますので御確認いただ くというのが第一点でございます。これに加えまして、本日は治験審査委員会の設置に関す る規定について御議論いただくことを考えてございます。最初に事務局から治験審査委員会 の設置に関する規定について、GCP省令とICH−GCPとの相違点について説明させて いただきまして、その後に渡邉参考人よりプレゼンテーションをしていただきまして、それ をもちまして事務局で整理させていただきました論点について御議論をいただければとい うように考えている次第でございます。  それでは池田先生、以後の議事進行をよろしくお願い申し上げます。 ○ 池田座長  おはようございます。先生方、本日はお忙しいところ御出席いただきましてありがとうご ざいます。それでは、いつものように事務局から配布資料の説明をお願いしたいと思います。   ○ 事務局  それでは事務局から配布資料の確認をさせていただきます。本日、机の上にお配りした資 料でございますが、まず本検討会の座席表、議事次第、その後からが資料になります。配布 資料一覧をごらんください。  資料1としまして、第13回治験のあり方に関する検討会(概要)(案)がございます。資 料2としまして、治験審査委員会の設置に関する規定についてがございます。資料3としま して、自施設IRB設置に関する考察と今後の検討課題(渡邉参考人説明資料)がございま す。資料4としまして、治験審査委員会の設置に関する規定について(論点整理)がござい ます。また参考資料としてドッチファイルの資料をお配りしております。このファイルは各 回共通資料ですのでお持ち帰りにならず、お帰りの際には机の上にお残しいただきますよう お願いいたします。当該参考資料は傍聴の皆様にはお配りしておりませんが、厚生労働省ホ ームページの当該検討会サイトに資料を掲載いたしますので、そちらをごらんいただきます ようお願い申し上げます。  以上が配布資料の説明ですが、過不足等がございましたら事務局までお知らせいただきま すよう、よろしくお願いします。 ○ 池田座長  ありがとうございました。よろしいでしょうか。委員の先生方、配布資料で過不足なもの はございませんでしょうか。よろしいですか。  先ほど課長の方からお話がありましたように、前回の検討会での主な意見についてまず事 務局から説明をしていただきまして、その後、本日の議題がお手元にございますように、治 験審査委員会の設置に関する規定について、御議論いただきたいと思います。最初に治験審 査委員会の設置に関する規定について事務局からGCP省令とICH−GCPの相違点に ついて説明をしていただきまして、その後に先ほど説明がありましたように、渡邉参考人よ りプレゼンテーションをしていただきます。その後、事務局で整理していただきました論点 について御議論していただくということでお願いしたいと思っております。それぞれの説明、 あるいはプレゼンテーションが終わった時点で先生方の活発な御意見をいただきたいと思 っております。本日はそのような格好で進めさせていただいてよろしいでしょうか。 もし、御異存がなければ、早速、事務局から資料1について説明をお願いしたいと思います。 よろしくお願いします。 ○ 事務局  それでは資料1に基づきまして説明させていただきます。 「2.」の主な意見(メモ)以下が事務局において前回の検討会の主な意見について整理さ せていただいたものでございます。  1つ目ですが、直接契約により治験に係る経費のうち研究費の使用については、治験責任 医師の裁量が大きくなることが予測され、治験に関わる医師のインセンティブとなる。また、 治験に対する責任が大きくなり、医師の治験への意識が一層高まる、というような意見がご ざいました。  それ以外にも、治験責任医師は直接契約前に医療機関の長の承認を得ることとしておけば、 緊急時も医療機関で対応できるはずである。治験に係る経費の流れについては、医療機関が 把握できるようにすれば直接契約を定めない理由はないのではないか。 勤務医は日常診療等の通常業務に専念しなければならず、直接契約した治験をその業務中に 行うことは、兼業になり問題ではないか。  インセンティブを高めるために治験責任医師に報酬を支払おうとすることは、本務がおろ そかになることも懸念されるとともに、勤務時間内にアルバイトをすることとなって問題で はないか。  企業から依頼された治験を医師個人が受託して実施することができるほどの自由度、責任 能力はないのではないか。  法的に整理すると、医療の延長線上に治験があることから、治験中に発生した事故の責任 を治験責任医師のみで負うことはなく、医療事故と同じく医療機関の長、または管理者も負 うことになると考えられる。  治験責任医師との契約は選択肢の一つとしてあってもよいのではないか。ただし、その場 合にあっては、あらかじめ医療機関の長の承認を得るなど機関としての適正な手続きをとる ことが必要。  治験責任医師との契約を行った場合には様々な利益相反が生ずる可能性があり、利益相反 に対する適切な対応が必要である。しかしながら、我が国では未だ利益相反に対する理解は 不十分である。  治験に関連して我が国では不祥事が幾つか起きたため、治験については治験依頼者と実施 医療機関が契約することになったと認識しているところ、治験依頼者と治験責任医師とが直 接契約をするようになると、「利益相反」が生じやすくなり問題ではないか。  以上のような御意見がございまして、事務局の方でまとめさせていただいております。以 上でございます。 ○ 池田座長  ありがとうございました。委員の先生方は御記憶だと思いますが、4月20日に行われま した第13回のこの検討会ですが、治験依頼者と治験責任医師との直接契約についていろい ろ御意見をいただいておりますが、その意見の主なものとしてここに掲げられております。  まず、このまとめというか、このような概要の部分について委員の先生方、このようなニ ュアンスではないとか、あるいはこういう意見があったはずだとか、あるいはこの意見につ いてさらにつけ加えるような御発言があればお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。 特に、ただいま事務局の方から説明していただいたことについて、不足しているとか、ある いは発言のニュアンスが少し異なっているとか、そういうことが何かございましたらお願い します。それぞれの先生方に何か御意見があればお願いします。 ○ 吉村委員  ちょっとよろしいですか。「治験責任医師に報酬を支払おうとすることは、本務がおろそ かになることも...」と書いてあるのですが、前回の議論の時には、治験責任医師が個人と して契約したからといってそれで報酬をもらうことはない、ということだったと思いますが、 そうではなかったでしょうか。 ○ 加藤委員  メーカーサイドの意見として、「インセンティブを高めるために」というのは出ておりま した。 ○ 吉村委員  わかりました。 ○ 池田座長  よろしいでしょうか。そのほかいかがでしょうか。 ○ 中垣審査管理課長  今の吉村委員、あるいは加藤委員のお答えに関連して申し上げますと、仮に治験責任医師 との契約を認めるということになりますと、契約上は企業と例えば池田医師との間で、そこ に受託研究費が発生する。その際に、例えば国の研究補助金なんかもすべてそうですが、そ の経理は大学の事務局でやっているということを一つのルールとしておりますから、この治 験の場合においても一つはそのような工作金も当然考えられるんだと思います。 ○ 吉村委員  国の補助金、研究費の例ですと、主任研究者が研究費を自分の報酬として受けることが許 されていません。治験の場合でも、契約した当事者が自分の報酬という形で収入を得ること は許されていないんじゃないかと思います。 ○ 中垣審査管理課長  法律的に「報酬」の意味というのを私も調査しなければいけないなと思っています。すな わち、先ほど私の発言の中で「受託研究費」という言葉を使ったわけでございますが、それ が先生のおっしゃる意味での報酬、すなわち税制上どのような形になるかなどいろいろなこ とがあるんだろうと思います。そこは私の調査不足で今、先生が使っておられる意味での「報 酬」になるのかどうかというのは疑問があるとことでございます。ただ、あくまで受託研究 費としてのやり取りが治験医師との間に発生する。恐らくはそれは国の研究補助金と同様に、 大学なら大学の事務局によって経理してもらうことによってその透明性を確保するという ことが考えられると思います。 ○ 池田座長  ありがとうございます。確かに「報酬」という言葉を使うと、例えばある企業に頼まれて 講演をするとそれは個人的な収入として、報酬として理解される。受託研究等であれば、こ れはまた個人の収入でなく、大学のルールに従ってということになりますので恐らく直接契 約を結ぶ場合には、いわゆる受託研究と同じような扱いになると思います。そうすると恐ら く変わってくるということだろうと思います。  その辺はいかがですか。よろしいですか。そのほか御意見はございますか。  一応、事務局の方から、前回の検討会でこういうような意見で会議が行われたという記録 として理解してよろしいでしょうか。 ○ 全員  異議なし。 ○ 池田座長  ありがとうございました。 それでは、続きまして事務局の方から資料2について御説明をお願いします。 ○ 事務局  本日の検討課題である「治験審査委員会の設置に関する規定について」を御紹介させてい ただきます。  GCP省令とICH−GCPとの相違点ということでございますが、以前から御説明して おりますようにGCP省令では第27条におきまして、実施医療機関ごとにIRBの設置が 原則必要というように規定されております。ただし、実施医療機関が小規模であること、臨 床試験に関する専門的知識を有する者の確保が困難であること、により実施医療機関に治験 審査委員会を設置することができない場合において、当該治験審査委員会の設置に変えて次 に掲げる治験審査委員会に当該調査審議を行わせる時にはこの限りではないということで、 小規模であること、専門的知識を有する者の確保が困難の場合には外部のIRBに調査審議 を委託することができるということが書いてございます。  ICH−GCPではIRBを設置することのみ規定しておりまして、実施医療機関ごとに IRB設置を求めているわけではございません。  検討のポイントとしましては、実施医療機関ごとにIRBを設置せず、医療機関外のIR Bを活用しても被験者保護その他治験の運用上懸念される事項はないか。また、活用に際し ては、どのような点に注意すべきかというところが検討のポイントになると考えてございま す。以上でございます。 ○ 池田座長  ありがとうございました。ただいまのGCP省令に関して、本日は特にこの点について検 討するということにしておりますが、ただいま御説明いただきましたように、実施医療機関 ごとにIRBを設置しない、医療機関外のIRBを活用しても被験者保護という非常に重要 な観点、あるいはその他の治験の運用上懸念される事項はないかどうか、また活用に際して どのような点に注意するか、そこが論点になるということでございますので、よろしくお願 いします。  それでは続いて渡邉参考人から資料3について、プレゼンテーションをお願いします。 ○ 渡邉参考人  浜松医大の渡邉です。本日は自施設IRB設置に関して参考人として意見を述べさせてい ただきます。お手元の資料3をごらんください。  本日は「自施設IRB設置に関する考察と今後の検討課題」について、まずIRB施設に 関する我が国とEU、そして米国の現状、日本のIRBについての問題点、実施医療機関ご とにIRBを設置せず外部のIRBを利用した場合のメリットとデメリット、外部IRBを 活用する場合の課題、このような順番で話を進めさせていただきます。  実施医療機関ごとのIRB設置原則は、先ほど事務局の方から御説明をいただいたとおり、 GCP省令では実施医療機関ごとのIRB設置が原則です。ただし例外として、実施医療機 関に適切なIRBを設置することが困難な場合、これには実施医療機関が小規模であること、 専門的知識を有する者の確保が困難である場合、その他の理由等などの例外規定が設けられ ております。  一方、ICH−GCPではIRBを設置することを規定していますが、必ずしも実施医療 機関ごとのIRB設置を求めているわけではありません。  このIRB設置に関して各国の現状を見てみますと、まずEUについてはEU臨床試験指 令(EU Clinical Trial Directive)が2004年から施行され、ここでは1加盟国につき1 つの倫理委員会での承認、プラス当局の許可が得られた場合に臨床試験を開始することが可 能となっております。このEU Directiveにあわせて英国は新しい行政規則を施行、フラン スは生物医学研究について既存の法律を改正、ドイツは薬事法体系を改正するということで 対応しております。  このEU臨床試験指令による体制の要点を次にまとめました。この試験指令は治験に限ら ず、適応外・未承認薬剤の治療目的の投与から既承認薬の研究的方法を含む臨床試験までを 対象としております。したがって、このようにICH−GCP準拠の範囲が拡大されたこと から文書管理等が非常に膨大となって、むしろ臨床研究の阻害要因となっているということ は前回、藤原委員から御発表があったとおりでございます。1加盟国につき1つの倫理審査 委員会の意見と当局の許可があれば、これはいずれも60日以内というタイムラインが設定 されておりますが、その条件のもとに臨床試験を行うことが可能となりました。倫理審査委 員会の修正要求・申請者の再申請は1回限り、35日以内。未成年者・同意能力を欠く人の保 護強化。Qualified PersonによるGMPから市販後まで一貫した安全性管理。書式・SOP・ ガイダンス等のEUにおける共有化とともに、臨床試験計画を登録するEudraCT、重篤未 知の副作用を報告するEudravigilanceなど、データベースによる情報共有化を目指してい ます。さらに個人情報保護の1995年EU指令の適用が行われるようになりました。以上が EU臨床試験指令による体制の要点です。  続いてIRB設置に関する米国の現状を見てみますと、米国では日本と同じように施設審 査が基本になっております。しかし、施設の判断で外部委託も可能です。下に英語で書いて ある通り、施設内IRBを概念的には考えておりますが、決してFDAは外部のIRBのレ ビューを阻害していません。したがってIRBはその実施施設外の臨床研究についてもレビ ューできることになっております。  ただ、その場合に臨床試験実施医療機関とNon-Local IRBの間で、Non-Local IRBが どのような役割を果たし、どのような責任を負うかということを明文化して臨床試験実施医 療機関との間で書面同意を得ることが求められています。このようなNon-LocalIRBの存 在を認めている米国ですが、そのIRBの質を保証するシステムが次のページに記したもの になります。  IRBの質を保証するために、米国では査察、登録・認証、教育・情報提供・連携、そし て利益相反の開示と管理といったシステムを構築し、最終的な目標である、被験者の保護を 目指しています。  米国における査察システムと登録について簡単に御紹介させていただきます。米国におけ るIRBの査察システムについては、OIG(監察総監局)、FDA、OHRPによる査察 が行われております。また、FDAのBioresearch Monitoring ProgramによるIRB、研 究者、スポンサーに対する査察も行われ、これらのことに関してはガイダンスが発表されて おります。このガイダンスに基づき倫理的、そして科学的な情報を査察されています。  続いて米国におけるIRBの登録・認証システムですが、このシステムにはOHRPで管 理するIRB登録制度があります。OHRPの連邦被験者保護保証の基準に従って、施設責 任者、被験者保護責任者を特定し、IRBの手順書を提出、また教育・トレーニングなどの プランを明らかにすることで保証を与えられたIRBが登録する制度となっております。こ れは3年ごとに更新され、公的助成を受ける施設に適用されます。なお、FDAの規則では 登録の義務づけはありません。しかし、FDAとOHRPで管理する倫理委員会がかなり重 複しており、実際には多くの倫理委員会が登録されています。  続いて、研究・教育機関等が出資する非営利団体であるAAHRPPが、各施設の被験者 保護プログラムを評価、認証する被験者保護のシステムを構築しています。また、3番目に ARENAと呼ばれる機関が、IRB委員の能力を保証する目的で認定基準を設けています。 このようにIRBそのもの、そしてIRBの委員の能力の認証ということが行われています。  続いて日本のIRBについての問題点を挙げました。この問題点については景山班の資料 に基づいてここに記載させていただいております。1施設当たりの被験者数が少なく、施設 数が多い。これによってIRB開催に要する人的・経済的負担が過大である。IRBの数が 多く、依頼者の業務負担も過大となっているという問題点が指摘されています。  また、治験実施機関として小規模医療機関の役割が増大し、そのために適切なIRB委員 の確保が困難になっています。この「適切な」に関しては、外部委員、一般市民の立場の委 員、GCPや倫理指針について理解する委員、そのような委員の確保が困難になっていると いうことです。また、専門分野の委員の確保も困難になっています。さらに、対象となる治 験の医学領域と治験審査委員の専門性が乖離し、審査が形骸化する可能性も指摘されており ます。  最後に、審査対象の情報・資料が膨大であり、十分な議論が尽くせない可能性も指摘され ているところです。このような日本のIRBが抱える問題点の解決を図る事を目的として、 恐らくこのような課題が与えられたものと理解しております。  続いて、きょうの本題であります実施医療機関ごとにIRBを設置する原則は必要かどう かということで、実施医療機関ごとにIRBを設置せず、外部のIRBを利用した場合のメ リットとデメリットを検討してみました。メリットとして考えられる幾つかの点は、臨床薬 理、あるいは臨床試験の専門家による審査が可能となること。各分野の専門家を治験ごとに 招聘することが可能となる。各施設の資源の節約につながる。依頼者の業務軽減にもつなが る、といったメリットが考えられます。  一方、デメリットとしては、各施設独自の考え方をあらわせない。各施設の審査レベルの 向上を計れない。治験担当医に対する教育の場が失われる。各施設の適格性を判断すること が困難。IRBショッピングの危惧。この場合の「IRBショッピング」というのは、米国 で問題となりました、承認が得られやすいIRBに審査が流れてしまうという事象を指して おります。このようなデメリットが考えられます。  このメリット・デメリットを勘案して、デメリットがあればそれを解決する方策があるか どうかということを次に検討してみました。最初に、外部IRBを利用した場合のメリット について説明させていただきます。  外部IRBを利用した場合のメリットとして、先ほども申し上げましたように、先ず臨床 薬理・臨床試験の専門家による審査、あるいは各分野の専門家を治験ごとに招聘することが 可能となることが挙げられます。これによって審査内容の充実、業務の適正な遂行が可能に なるのではないかと考えられますし、人的資源を有効に活用することにもつながるだろうと 考えております。これらのことが可能になれば、問題点として挙げた、治験実施機関として 小規模医療機関の役割が増大する中で、適切なIRB委員の確保が困難となるという状況は 打開できると思いますし、専門分野の委員の確保が困難、あるいは対象となる治験の医学領 域と治験審査委員の専門性が乖離し、審査が形骸化するといった問題点も解決可能と思われ ます。  現状では各施設の倫理委員会で審査の質はまちまちでありまして、多施設治験を一つのI RBで審査できるような制度を設けるのであれば、プロトコルの科学的・倫理的な審査が正 当に行われるというメリットが期待できるのではないかと考えます。また、今のシステムで は、例えばあるIRBでプロトコルの問題が指摘されても、その指摘事項がすべての施設に 反映されるわけではなく、1施設の修正でかえって全体としての科学的な妥当性を損なうと いう可能性もありますし、またその修正案が認められない場合には疑問を残したままその臨 床試験が行われるということも危惧されます。このような点を解決できる可能性があると考 えています。  続いて2番目のメリットですけれど、ここに示しましたように、現状では同じ内容の治験 に関して各施設で同じような調査審議が重ねられているのが現状です。ですから、一つの治 験Aに対してA医療機関のIRB、B医療機関のIRB、C医療機関のIRBがそれぞれ多 くの人的資源、また時間を通やして審査をしているということになります。もし外部IRB を利用できたならば、各施設の資源の節約につながるし、依頼者の業務軽減にもつながるの ではないでしょうか。日本の治験の問題点である1施設当たりの被験者数が少なく、施設数 が多いということに関連して、IRB開催に要する人的・経済的な負担も過大となっていま す。IRBの数が多く、過大となっている依頼者の業務負担や人的資源の投資を、必要性の 高い部分へ回せるのではないかというように考えております。審査対象の情報・資料が膨大 であり、十分な議論が尽くせない可能性も、専門的な外部IRBを利用することによって十 分な議論を尽くせるようになるのではないでしょうか。  続いて、外部IRBを利用した場合のデメリットと解決策ですが、デメリットとして各施 設独自の考え方をあらわせない、各施設の適格性を判断することが困難であるという指摘が なされております。もっともな指摘ですが、これを解決するために英国では中央IRBとロ ーカルIRBの間でインターナルコミュニケーションと呼ばれる事前意見聴取が行われて います。日本でも外部IRBを利用する場合に、実施医療機関の長が外部IRBを選定し、 調査審議を行わせる際に、自施設の適格性を伝えること、あるいは、外部IRBが会議前に、 実施医療機関から施設状況を意見聴取することは十分可能であると考えております。  各施設の審査レベルの向上を計れない、治験担当医に対する教育の場が失われる、という デメリットも、非常に重要な指摘だと考えております。このような指摘が生まれた背景とし ては、我が国の臨床試験や日常診療の場での科学性や倫理性の向上に、これまでICH−G CPに沿った治験の普及が果たしてきた役割が非常に大きかった事が考えられます。IRB は治験担当医に対する教育の場ともなっており、自施設のIRBにより啓発されてきた科学 性や倫理性への配慮や意識が、外部IRBを利用することによって後退してしまうのではな いかという危惧が存在します。しかし、現在はこのICH−GCPに沿った治験が広く浸透 し、医療の場での科学性、倫理性への配慮という事項も十分に改善し進歩してきたのではな いかと考えられます。所期した治験の科学性や倫理性の土台はある程度築かれたのではない でしょうか。また、医育機関では治験審査委員会だけでなく、ほかの倫理委員会が存在する ことが多く、治験担当医に対する教育の場が失われるという問題も、他の部分に教育の場が 確保され、解決される可能性があることを指摘させていただきたいと思います。  最後に、外部IRBをもし活用するということになった場合の課題を挙げさせていただき ました。最初に書きました部分は景山主任研究者が行った「GCPの運用と治験の倫理的・ 科学的な質の向上に関する研究」報告書から引用したものです。年間開催頻度が5回以上。 女性委員の存在、治験の専門家の存在、例えば臨床薬理学認定医など。IRB委員の研修を 実施というような条件をクリアする事が外部IRBに求められています。  さらに、IRBの公開登録制度の導入が必要と思われます。この登録制度の運用に関して はさまざまな考え方があると思いますが、例えば臨床試験登録が現在行われていますので、 同じような登録制度を活用することも一つの方法ではないかと考えております。  またIRBの情報公開を行うこと。開催日時、出席委員名簿、審議件数と審議時間、これ によって1治験当たり審議時間をどのくらい費やしているかということも把握可能である と思います。  IRB委員の教育・研修システムの整備、IRBインセンティブの認定制度の導入という ことも検討すべき課題と思われます。  資料最後のページになりますが、IRBは治験のプロトコル、説明文書、同意文書の科学 性・倫理性を調査審議するばかりでなく、その治験が適正に行われているかということを調 査することもその責務として含んでいます。自施設IRBの場合には治験実施医療機関内に IRBがあるわけですから、その治験の進行状況を把握することはある程度容易であると考 えられますが、これが外部IRBとなりますと、その治験の実際上の実施の仕方について把 握することは自施設に比べて困難になると思われます。適切に実施されているかを調査する ために、IRBによる調査が可能とされている既存の規定を、現実に運用可能なものにする ためにGCP運用通知、課長通知の改定等が必要になるかもしれません。また、具体的な外 部IRBによる調査のモデルSOPを作成ということも必要になってくると思われます。以 上です。 ○ 池田座長  ありがとうございました。ただいま渡邉参考人から自施設のIRB設置に関する問題につ いて御説明をいただきました。EUやアメリカにおける現状、そして我が国が抱える問題点、 外部IRBを活用する場合のメリット・デメリットを御説明いただいたわけですが、これに ついて先生方から何か御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。この点について は、この治験のあり方に関する検討会の委員である景山委員からも御説明していただいて、 大分議論が進んでいると思いますが、いかがでしょうか。 ○ 加藤委員  大変整理してお話をいただきまして勉強になりました。質問は幾つかあるんですが、まず 参考人が今お話をされた7枚目、被験者保護にかかわるIRBの質を保証するシステムのお 話があったところなんですが、利益相反の開示と管理というところを少し端折られたかと思 いますので、その点を具体的にはどういう形で運用されているのかということと、査察をす ることによって、次の8枚目のところなんですが、具体的に問題点が指摘されて改善された というような事例について御紹介いただければと思いますが。 ○ 渡邉参考人  まず最初の御質問に関しては、利益相反の開示と管理というのは既存の行政規則でして、 IRB委員のための要点としてまとめたガイダンスが2004年に最終版として公表されてい ます。IRB委員が、審議対象となる治験の依頼者と利益相反がないこと、治験担当医師で はないことなどについて情報を開示するといったような内容になっています。  2点目の、査察が行われて改善したという事例に関しては、具体的に私は把握しておりま せん。ガイダンスでは、FDAによる査察が行われ、査察に基づく結果がFDAから連絡さ れ、指摘事項があればそれに対しての当該IRBからの回答を待ち、最終的に当該IRB、 あるいは研究者が場合によっては治験に適さないという勧告がなされる流れがつくられて います。 ○ 加藤委員  今の利益相反の関係で、例えば研究費の補助を受けているとか、そういうことも全部把握 できる仕組みになっているんですか。 ○ 渡邉参考人  はい、自己申告ですけれど、そういう形になっています。金額の上限があるかどうかとい うことはちょっと私にはわかりませんが、金銭的な関係を開示するということが求められて います。 ○ 池田座長  ほかにいかがでしょうか。 ○ 今井委員  この委員会の検討課題ではないんですけれど、欧米の場合IRBは臨床研究も全部審査し ているわけではないですよね。そうだとすると、被験者になった人のことを考えた時に、治 験でも臨床研究でも余り変わらない。被験者にとっては変わらないんですが、治験の方だけ はIRBの質を向上させるために外部のIRBに頼むという道ができていて、それで臨床研 究の方は自施設で審査するというのはどうなんでしょうか。 ○ 池田座長  これは非常に重要な問題だと思いますが、課長、何かございますか。 ○ 新木研究開発振興課長  治験以外の臨床研究につきましては、私の研究開発振興課で作成している臨床研究に関す る倫理指針というのがございます。それは平成15年からございますが、それがちょうど20 年に改定の時期を迎えますので、こちらの議論も参考にさせていただいて、見直しを行って いきます。もちろんその中には倫理審査委員会の規定等もございますので、合わせて具体的 に考えていきたいと思います。 ○ 池田座長  今井委員がおっしゃったことは非常に重要だと思います。被験者の立場からすると、治験、 あるいは臨床試験に参加するというか、もちろん薬の承認されるためということもあります が、被験者の保護ということは共通した事項として議論しなければいけない、そういう御指 摘だったと思います。ここのところはGCP、ICH−GCP、法律で規定されたものにつ いての議論をとりあえずきちんとしていただき、そして今、課長が言われたように臨床試験 についてもどういうように考えていくかという、そういう道筋で行くのかなと思います。こ れは先ほど御説明があった5ページのEUの方は一応含んでいるということですね。 ○ 渡邉参考人  はい、そうです。 ○ 池田座長  その辺について少し御説明いただけますか。 ○ 渡邉参考人  EUの臨床試験指令では治験に限らず、先ほども述べさせていただきましたように、適用 外・未承認薬剤の治療目的の投与から、未承認薬の研究的方法を含む臨床試験までを広く対 象としています。新しい薬の承認申請に係る治験以外の臨床試験も含まれるということにな ります。ですから、すべての臨床試験の手続きがICH−GCPに準拠しますので、医師が みずから行おうとする臨床研究であっても同じようなドキュメントが要求されることにな ります。 ○ 池田座長  ありがとうございました。ここでは一応治験というGCPに則って行われるものに限って 議論させていただくということにしております。この課題は先ほど課長が言われたように、 今後の臨床研究に関する倫理指針の改定も踏まえて当然議論が行われるだろうと。そういう 意味ですごく大事だと思いますが、それでよろしいですか。 ○ 吉村委員  今の渡邉参考人のお話の中で14枚目以降に、デメリットはこうすれば防げるというよう なものがあったと思いますが、それと先ほどから議論になっている7枚目にはアメリカのシ ステムというのがあって、正直なところ私がもしそっちのIRBに呼び出されて委員などを 頼まれたら、これは大変なことになるなという実感がするんですね。つまり、こうすれば解 決できるということは確かに解決できるかもしれないけれど、その分だけ中央IRBという のは従来に増して負担が大きくなるのではないかという感じがします。と言いますのは、例 えばインターナルコミュニケーションをやればいいんだというんですが、そうすると実は中 央IRBがたくさんの施設と非常に頻繁にコミュニケーションをやらなければいけなくな る。それから査察などもやらなければいけなくなるとすると、私は今、新薬審査に関しては いろいろな仕事をしていますが、到底そんな能力はない。出されたデータを鵜呑みにするし かないというのが現実で、到底、査察などには行けないのではないかという感じがする。で すから、もし中央IRBの方でこういう欠点をこうすればしのげるということがあるとする と、先ほどの査察とか教育というのも含めてかなりきちんとしたサポート体制というか、カ チッとした体制ができない限りは、こういういわばデメリットをしのぐための工夫というの は実現し得ないのではないかという印象を受けるんですが、いかがでしょうか。 ○ 渡邉参考人  おっしゃるとおりです。きちんとした教育・研修システムの整備は非常に重要だと思いま す。現状では、いろいろな業務を抱えている方が、IRB委員を兼務するということになっ ていると思います。ですから、時間的な制約もあり、審査委員会でも十分な審議も尽くせな いという状況になっています。今後、このような環境を変える必要があると思います。現状 のままでは、先生がおっしゃっているようなIRB委員の負担が増すのではないかという危 惧は尤もですが、同時に、IRB委員というのはそのぐらいの責務を担うものであるという ように考える事も必要であると思います。 ○ 池田座長  ありがとうございました。景山委員、何かございますか。 ○ 景山委員  きょうは渡邉先生が簡潔に上手にまとめてくださったので、それ以上、私から申し上げる ことはありませんが、最後に渡邉先生がIRB委員はそこまで重大な役割を負っているもの だと言われたんですが、建前としてはもちろんそうなんですが、現実にはIRB委員はそれ ぞれの病院、あるいは大学でそれなりの立場にある人が多いわけですね。そうなると、1日 24時間どうしても限られていますので、その中でできることとなるとおのずと限界がありま す。もちろんこの外部IRB、あるいはセントラルIRBの導入ということに関しては、私 は従来から前向きな意見を持っていました。しかし、平成15年度のGCP研究班の調査で は、余りにも各施設が自施設のIRBに対するこだわりが強かったということで、平成16 年度、17年度、18年度とそれ以上セントラルIRBを特に推進するということはしなかっ たという記憶があります。ただ、先日の研発課の調査結果は、2〜3年前の我々の成績とは 違いますので、大分世間も変わってきたのかなという印象がありますので、少しまた考え直 してもよろしいのではないかというように思います。  それからもう一つ、外部IRB、セントラルIRBを導入する際に、IRB委員、あるい はIRBの負担の問題が出ましたが、外部のIRBに一体どこまで業務量を求めるかという ことです。一つはいわゆる二段構えの審議というもので、プロトコルと説明文書についての みと申しますか、そこを中心に審査する。それ以外のことはそれぞれの施設でやっていただ くという考え方があります。しかし、それに対しては恐らく依頼者は相当反対されるだろう と思います。かえって二度手間になって現状の方がまだましであるということも指摘されて おります。ですから、その辺はやはり考えていかなければと思います。役割分担を考えてい ただければいいのではないかと思います。  それともう一つは、IRBの業務量を考えると、副作用報告に対してどう対処するのかと いうのが現場としては常に、すべてのIRB、あるいはIRB委員が苦渋していると思いま す。これはIRBシステムを変更する、セントラルかどうかというシステムを改善するとい うことだけではなく、副作用報告を日本の国の制度としてどういう風に持っていくのかとい う、相当重大なところまで踏み込んで議論しないと、いわゆる外部IRB、あるいはセント ラルIRBが十分に機能するには至らないのではないかと思います。 ○ 池田座長  ありがとうございました。 ○ 渡邉参考人  吉村委員のご質問に対して、つけ加えさせていただければ、現在のIRBは自施設に幾つ もの対象とする治験を抱え、それらすべてを審査・調査審議していると思います。一方、外 部IRBに委託する場合には、当該の治験に関しての調査審議をするということで、外部IRB 委員の負担が必ずしも増大する訳ではないと思います。 ○ 加藤委員  先ほどの7枚目のところに、IRBの質を保証するシステムのことが書かれている中に、 例えば管轄機関ということでDHHSとかOHRPというのがあるんだというお話があっ たんですが、それは被験者保護を専門とするスタッフがそれぞれいるということ。それから IRBにかかわる臨床薬理とかその他の専門家がスタッフとしているという構造になって いると理解してよろしいんですか。我が国の場合には日々日常診療をやりながらIRBのこ とにかかわるという、そういう構造になっているんですが、その辺は現実にはどうなってい るんですか。 ○ 渡邉参考人  この「管轄機関」というのは米国国内の臨床試験、そしてIRBの質保証をするすべてを 管轄する機関ということで、行政当局の対応機関と考えていいと思います。DHHS、FD A、OHRPにはIRB、あるいは臨床試験の適正な実施を管轄するようなスタッフが存在 するということになります。 ○ 加藤委員  要するに臨床薬理の専門家とかそういう人がいるということ。 ○ 渡邉参考人  はい、少なくともFDAには存在しております。 ○ 加藤委員  それでIRBの質の確保のために査察する、例えばIRBの委員という人も動くのかなと 思いますが、そういう人たちはどういう立場というか、臨床を日々やりながら片手間にIR Bの委員をやっているという構造なのか、ある程度中核的なところは専任のスタッフがいる ようなところがあるんですか。 ○ 渡邉参考人  米国では、外部のIRBに委託することも可能ですが、原則的には実施医療機関内にIR Bを設置することが日本と同じように求められています。多くの場合に、IRB委員は自施 設医療機関内でほかの業務を行いつつIRB委員を兼務するという、日本と同じような状況 にあります。一方、Non Local IRBの中にはコマーシャルIRBと呼ばれるものがあり、 そのような場合にはIRBに専任の方が含まれる場合もあるかと思います。 ○ 中垣審査管理課長  私の理解が違っていたら御指摘いただきたいんですが、この7ページの下の「管轄機関」 と書いてあるのは、FDAの一部門であって、ここは当然のことながら専任職員がいる。そ れは恐らくはドクターもいるでしょうし、薬剤師もいるでしょうし、管理部門、あるいは倫 理的な知識を持った方もいるのかもしれない。ここがそういう意味では査察を行ったり、規 則をつくったりしている。ですから我が国で申し上げますと、ここに当たる機能というのは、 規則をつくるという意味で申し上げますと審査管理課が当たりますし、査察をするという意 味で申し上げますと機構の信頼性保証部でしょうか、そういう構図になっている。一方、I RBの委員自体はやはりアメリカにおいても、私が聞いているところでは、それ専任という よりは、兼職をやられている方がほとんどである。そういう意味でここに「査察」と書いて あるのはFDAの査察です。我が国で言うと医薬品機構の査察ということになるわけです。  2点目、これはちょっと教えてほしいんですが、教育が重要であるというのは御指摘のと おりだと思いますが、一方においては外部IRBによって知識経験豊かな方を委員にするこ とができると。逆に言うと、教育された方を雇ってくることができるということと、ここに 書いてある教育が重要というのは一体どういう関係にあるのか。一般論としての教育の重要 さ、あるいは限られたIRBの委員、知識経験が豊かな方に限られている、それを今後、将 来に向けてふやしていくという意味での教育というのは重要だと思いますが、IRBの質の 保証の中での教育というのは、もしかすると生涯研修的なことをイメージされているのか、 ちょっと教えてください。 ○ 渡邉参考人  この場合の教育・情報提供連携というのは、広い意味での教育を指します。現在IRB委 員になっている方、そして将来IRB委員になっていただきたい候補者も含めた教育という ことです。 ○ 池田座長  あるいは、この11ページに書いてあるように、治験担当医に対する教育の場、これもそ れぞれの施設にあって、このIRBを持つことによってその施設の中での教育ができるとい う、そういうことも含まれているわけですね。 ○ 渡邉参考人  そうです。 ○ 池田座長  ありがとうございました。幾つか非常に簡潔に渡邉参考人にまとめていただきまして詳し く御説明を伺ったんですが、それで資料4が先生方のお手元にあるかと思いますが、既に幾 つか御議論をいただいたんですが、事務局の方で治験審査委員会の設置に関する規定につい て、論点の整理をしていただいておりますので、それに基づいてまた先生方に御意見をいた だきたいと思いますが、簡単にこの資料4の説明を事務局からお願いします。 ○ 事務局  それでは資料4に基づきまして事務局で整理した論点について説明させていただきます。  2ページ目ですが、論点1としまして、適切なIRBで調査審議するために、原則として IRBを実施医療機関内に設置しなければならないというような自施設設置の原則を置く 必要があるかというところがあるかと思います。外部IRBで調査審議した場合には、以下 のような長所・短所が考えられることを踏まえまして御議論いただけましたらと思います。 メリット・デメリットにつきましては景山委員が以前に論文として発表されたものを引用し ております。そこにつきましては渡邉委員からの説明がありましたので省略させていただき ます。  次に3ページ目ですが、論点2−1として、外部IRBの設置者に関する規定を見直す必 要はないかということで、質の確保されたIRBを多く確保するためにIRBの設置者を見 直す必要はないかというところが議論になるかと思います。現行ですと、外部IRBの設置 主体というのは社団法人、財団法人、特定非営利活動法人、医療関係者により構成された学 術団体、医療機関の長に限定されているところでございます。ただ、非営利公益の法人とし ましては医療法人とか学校法人とかございますし、あとは独立行政法人とか国立大学法人と いうものもございますので、そこを踏まえまして設置者に関する規定の見直しについて御検 討いただければと思います。  次にめくっていただきまして4ページ目ですが、論点2−2として、外部IRBの設置者 に関する規定ですが、設置者の要件というものがGCP省令の27条第2項の方で定められ ております。そこにつきましては第2項、第一号から六号までここに掲げておりますが、こ のような条件がついておりまして、ここについても見直す必要がないかどうか、あわせて御 検討いただければと思います。  次に5ページですが、論点3としまして、医療機関が当該医療機関で実施する治験につい て適切に調査審議を行うことができるIRBを選択するために、どのような方法が考えられ るかということで、治験を実施しようとする医療機関が適切なIRBを選択できるように、 外部IRBの情報を確認できるようにしてはどうか。その例として、現在の臨床試験情報公 開データベースと同じような仕組みで、外部IRBの情報公開データベースを構築して、倫 理的・科学的観点から十分に調査審議を行うことができるIRBを選択できるように情報を 公表してはどうかということで、外部IRBの情報公開を促進してはどうかというような提 案でございます。  最後に6ページですが、参考として27条の全文を書いております。27条の1項のところ の一号から五号までが外部IRBの設置者の現在の規定でございます。参考にしていただけ ればと思います。以上でございます。 ○ 池田座長  ありがとうございました。この実施医療機関ごとにIRBを設置しなければいけないとい うことを議論しているわけですが、それの論点を少し整理していただいたんですが、論点1 に関しては既にこの委員会でもいろいろ御議論していただきましたし、今回、渡邉参考人か ら御説明をいただきました。それは常に頭に置きながら、論点2から少し御意見を伺いたい と思います。論点2は外部IRBの設置者に関して規定を見直す必要があるかどうかという ことですが、設置主体、設置者の要件、これについて少し先生方の御意見を伺いたいと思い ますが、いかがでしょうか。設置主体について現行はそこに書いてありますように、社団法 人、財団法人、特定非営利法人、医療関係者で構成される学術団体、あるいは医療機関の長 と限定されていますが、その設置主体はどのようにしたらいいかということ、それから設置 者の要件、これも省令で規定されているわけですが、この2つの問題について少し先生方の 御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。 ○ 景山委員  よろしいですか。まずお聞きしたいんですが、設置主体をさらに拡大しようということな んでしょうか。それとも縮小しようということなんですか。もし拡大しようということであ れば、そういう意見がどこからか出ているんですか。その辺の背景を教えていただけますか。 ○ 事務局  今のところ特に拡大しようとすることについて御意見はいただいておりませんが、自施設 設置の原則を外せば、先ほど渡邉先生から御紹介がありましたように、外部IRBの負担と いうものがものすごく多くなるのではないかということで、外部IRBの設置者というもの をもっと広く拡大して、質が確保されたIRBが設置できるような環境をつくっていかなけ ればならないのではないか、というように考えて御紹介させていただいた次第でございます。 ○ 藤原委員  私も質問で、以前いわゆるセントラルIRBの議論が景山班も含めて行われて、GCP省 令が改正された時にいろいろな議論がされたと思いますが、それを踏まえてこういうように 変えられたにもかかわらずスムーズに進んでいない実態というのは、どういうところが今問 題としてあるか厚労省は把握されているか。もうずっと前からセントラルIRBを設置しま しょうという議論がされて、それでこういう改定をしたにもかかわらず、また今回ここでこ ういう議論をするということは、改定しても何も実効性はなかったのか、それとも改定した のにこういう欠点が認められたのか、果たしてその辺が実態としてこの運用がどのようにさ れているのかよくわからないので、今のこの省令上のいわゆるセントラルIRBの日本での 運用状況はどうなっているんでしょうか。 ○ 事務局  運用状況につきましては審査課では詳しいデータは把握しておりませんが、27条の最初の 文章にありますように、「実施医療機関ごとに一つの治験審査委員会を設置しなければなら ない」というように書いておるところでございますが、ただし、ということで実施医療機関 が小規模であることとか、当該治験に対して専門的知識を有する者がいない場合ということ で、実際に大規模の病院であっても課長通知にも書いてありますように、例えば循環器の治 験とかそういうものについて専門的なIRB委員の確保が困難な場合にも外部のIRBに 調査審議を委託することができるというようになっておりまして、そこのところが外部IR Bへの委託が進まない原因になっているのではないかというように考えています。 ○ 藤原委員  設置主体と設置要件に関して細かく決めるか、それとも一つのIRBという省令上の記載 を抜いてしまって、別にIRBをちゃんと通せばいいというように、簡潔にしてしまうかと いうのが皆さんの御議論だと思いますが、それ以外に設置要件とか設置主体を決めると同時 に、日本で一番欠けているのは治験審査委員会の登録というか、開示というところが何もな されていないというところだと思いますので、同時に設置主体と設置要件を決めるとともに、 治験届けの中にちゃんと治験審査委員会の項目を含めるとか、そういうようにしないといつ まで経っても勝手にIRBが動いている、だれもそれをうまく把握できないという現状が続 くと思いますので、治験審査委員会の治験届けでの把握というのを予定されていないんでし ょうか。 ○ 中垣審査管理課長  資料4の6ページをごらんいただきたいと思います。今、藤原委員から御紹介されました とおり、あるいは前回も御指摘いただきましたとおり、セントラルIRBに関する議論とい うのはかなり綿密に精力的にこの検討会の中で行っていただいてきた経緯がございます。そ の議論と最終的なGCP省令の中にもしかすると若干齟齬が生まれているのではなかろう かと思っている次第でございます。すなわち、先ほど渡邉参考人から御紹介いただいたよう なIRBの委員がなかなか集まりにくいとか、専門性の問題であるとか、そういうものを中 心にセントラルIRBがあってもいいのではないかというような御議論が展開されたとい うことを私は覚えているわけでございますが、結果として見てみるとこの6ページの27条 のところを見てみますと、実施医療機関ごとに一つの治験審査委員会を設置しなければなら ないということで、ただし、ということでいろいろと小規模であるとか、専門的知識を有す る者の確保が困難であるとか、その他の事由により医療機関に治験審査委員会を設置するこ とができない場合に利用することができるというように書いておるわけです。  すなわち、池田先生ばかりを例に挙げて申しわけないんですが、慶応大学はそこに治験審 査委員会があるということになると、慶応大学でやるのはすべて慶応大学の治験審査委員会 に持っていかなければいけない。あるいは私は福岡の生まれでございますから、福岡の田舎 に中垣病院があったとして、そこはいろいろな理由で治験審査委員会がないということにな るとどこかに頼むわけですが、いずれにしても医療機関内にあればすべてそこでやると。法 におきましては先ほど渡邉参考人からも御紹介いただきましたとおり、例えば第III相試験で あるとか、第IV相の市販後臨床試験と呼ばれるものであると、数百例から数千例の試験を行 う。そこには2桁、あるいは場合によっては3桁の医療機関が関与する。その3桁の医療機 関ごとに治験のプロトコルを審査するというのは果たして合理的なのかということもある んだろうというように考えてみたわけです。すなわち、セントラルIRBのメリット・デメ リットというのは、例えば慶応病院に治験審査委員会があるにしても、例えば4千名を取る 市販後臨床試験であれば1カ所で治験を厳格に審査した方がいいのではないかというよう な議論もあったんだろうと思います。結果的な現在の省令を見てみますと、自分の医療機関 にあるか・ないか、というところで区別されておるわけでございます。今回、ICH−GC Pとの相違という点で改めて整理をしてみますと、今一度そこは御議論になった方がいいの かなというように判断したのが経緯でございます。よろしくお願いします。 ○ 加藤委員  今の論点に関して話し合う前提として、外部IRBの実情というのが全然委員にはわから ない状況で、少なくとも私にはわからないです。実態の実情が。例えば外部IRBができる という仕組みにはなっているけれど、その外部IRBをつくろうとしたらそこにしかるべき 専門家を集められないみたいなことがあったらとんでもない話になるわけですね。設計図上 おかしな話になるわけですね。施設内では専門家がいないから外部IRBをつくろうという 話をしていたのに、全然その前提がこけてしまうという話になりますね。ですから実情を少 し事務局の方で把握していただけないでしょうか。そしてそれを委員に出していただいて、 どういう問題点が今出てきているのか。それを検証した上できちんとした議論がなされるべ きだというように私は思います。 ○ 岩砂委員  例えば市場原理主義の国であるアメリカにおいては、その辺はどうなっているんですか。 セントラルがあるということは、それを請け負う会社があって、そういうことも行われてい るということはないんですか、アメリカなんかはどうなっているんですか。 ○ 池田座長  その辺はどうでしょうか。問題を整理しなければいけないと思いますが、IRBが設置さ れているところはそこでやる。設置できない場合にほかに依頼することができるということ なんですが、設置されていても外部のしかるべきところでやっていれば、そこにスキップし てもいいということをきちんとまず一つ整理しておかなければいけないということ。それが 一つですね。ポイントとして。  それから今言われたように、IRBの外部というのをどういうところを想定されているか、 委員がどういうところを言われているかによって多少議論がかみ合わないところがあるよ うな気がするんですが。それは既に存在している、例えばここで言われている社団法人、財 団法人、あるいは学術団体、あるいは医療機関でも実際にIRBが動いている、そういうと ころもこれは当然ほかの施設から見れば「外部」ということになると思いますが。いかがで しょうか。 ○ 中垣審査管理課長  今、座長がおまとめいただいたとおりだと思いますが、岩砂委員や加藤委員の御質問に私 なりに対応すると、まずアメリカの現状は先ほど渡邉参考人からございましたとおり、IR Bショッピングというのが一部問題になっています。もちろん学問的、あるいは科学的にも 優れた外部IRBもたくさんあると聞いておりますが、一方においてはそういうことが問題 になっている。一方、我が国においていわゆるセントラルIRB的なものがどこまであるの かということでございますが、資料4の6ページのところにございますとおり、従来ですと 小規模であることだけが自施設にIRBをつくらなくてもいいという理由だったわけです。 それに専門家の確保が難しい場合、専門的知識を有する者の確保が困難な場合ということで 追加したわけでございます。逆に申し上げますと、今それほど国内において需要がないわけ でございます。実際上、私が承知している限りで申し上げますと、いわゆる外部IRBとし て活躍いただいておりますのは各地の医師会が設立されたIRBにほとんど限られている のではないかと思います。先ほど私が申し上げましたような例、市販後の臨床試験で数千例 にわたって例えば心筋梗塞の発症を高血圧の薬について市販後臨床試験でやるというのを、 一つの審査委員会でクリアしてもいいということであれば、例えば循環器学会、そういう学 会がつくるというのも想定されてくるわけでございますが、いかんせん現状においてはそれ ぞれの医療機関につくるというのを原則にした上で、しかも非常にごくごく例外を絞った上 で外部IRBという形になっておりますので、そういう意味で申し上げますと、今現在、日 本にある外部IRBというのは各地の医師会でつくっていただいたIRBに限られていま す。 ○ 池田座長  あとは一部の学会ですね。学術団体としての学会がIRBに乗って、そこに依頼してやる というぐらいで、いわゆる設置主体から外れたもので、先ほど渡邉参考人が言われたような IRBショッピングというような状況が起こるようなIRBがたくさんあるというような ものでは、今の時点ではないというように言えると思います。その辺は渡邉参考人、どうで しょうか。 ○ 渡邉参考人  現在の日本の状況はそうだと思います。しかし、アメリカでは先ほども御紹介させていた だいたように、商業的な事業体のコマーシャルIRBが存在します。 ○ 加藤委員  渡邉参考人の9枚目のところで、各施設の被験者保護プログラムというものが出ておりま すが、これは各医療機関ということもあるし、ここで今議論している外部IRBというよう なところにもあるわけなんでしょうか。 ○ 渡邉参考人  そうだと思います。 ○ 加藤委員  もしそうだとすると、我が国ではこの被験者保護プログラムというのはどういうものか少 しお話をいただきたいんですが。外部IRBをつくる時に被験者保護プログラムを用意して いるということは我が国の場合にはあるんでしょうか。その辺、御存じであれば教えてほし いんですが。 ○ 渡邉参考人  詳しく把握しているわけではございません。しかし基本的な概念として説明文書、同意文 書に求められている要項をしっかり守っているか、そしてそれが適切な環境で説明がなされ、 そして納得された上で同意が得られているか。そういうようなものを管理するプログラムだ と理解しています。 ○ 池田座長  よろしいでしょうか。それについては治験も臨床試験も倫理指針を含めて被験者保護とい うものに関してはどこもやはり関心があり、当然のことですが。ほかに。 ○ 吉村委員  今ここで議論されているIRBの設置主体とか設置者の要件ということに関して、少なく とも今の議論ではそれを国内で必要と感じている部分がないような気がするんですね。それ よりもむしろ重要な論点というのは、今言われたショッピングに対する歯止め、これはなぜ かというと、この外部IRBの利点の中に依頼者がそれで非常に楽になるということが書か れていますね。それは当然、依頼者としてそれを求めるのは当然ですから、どうしてもそう 流れていく可能性があるわけで、それをどうやって歯止めをかけるかというのは論点として は非常に重要である。  それからもう一つは、先ほどから言っているように、これはIRB自身の質を上げて、か つ質を保証するということをしなければ、それは非常に危ないことになるわけですね。だか らそれを保証するためのインフラ整備というか、体制構築、こちらの方がむしろ論点として は重要なんではないかと思います。 ○ 池田座長  ありがとうございました。論点2の設置主体・設置者の要件の議論の中で、やはり今言わ れたのは恐らく歯止めになるかと思いますが、一つはその外部IRBがどうあるべきかとい うこと。もう一つは藤原委員がかねてから言われているように、この16枚目の渡邉参考人 の資料にもありますように、こういうような課題をクリアするというところが恐らく藤原委 員が再三言われていることになるんじゃないかと思います。 ○ 加藤委員  今の点ですが、これは外部IRBを活用する場合の課題ということで、渡邉参考人の資料 に書いていただいたものなんですけれど、現在、施設内であっても同じですよね。ここに書 かれていることの大切さという意味では。それが今まで実はそんなにやられていない部分が 書かれているんだろうと思うんですね。それはどういう背景によるんですか。これは必要な ことなら治験にかかわる人は皆思うわけですね。心ある人は。それが全然なされないまま長 いこと治験がされていますよね。我が国では。 ○ 渡邉参考人  ここに課題を挙げた理由でしょうか。 ○ 加藤委員  この課題は外部IRB特有の課題ではなくて、施設内でやるIRBでも同じぐらい重要な ことのはずですよね。それが今ほとんどきちんと実施がなされていないことですよね。 ○ 渡邉参考人  実施がきちんとなされていないというわけではないと思います。施設によってきちんとさ れているところも十分に多くある。IRBに求められる条件をすべてクリアするような倫理 委員会は多数存在するというように考えています。ただ、ここに挙げたのは今回、外部IR Bをつくった場合、その外部IRBの質の保証というのをどうしたらいいかということで挙 げさせていただいた課題になります。もちろん御指摘いただいたように、このすべての要件 が現在あるIRBでも共通して求められるという理解をしております。 ○ 加藤委員  だから今、吉村委員が指摘されているきょうの事務局のまとめの論点というのは非常に本 筋の話なのかどうか、委員としてはちょっと疑問に感じて。むしろ、こうした15ページに 書かれたようなものをどういうように保証していくのか、これは外部IRBに限らず現在進 行中のものでも、かねてから藤原委員が情報公開とか登録制度とかいろいろなこともおっし ゃっていて、それが進んでいないということの問題点を私たちが認識して具体化する方策を 考えていくということが、この「あり方検討会」の重要な役割なんじゃないかという気がし ます。そういう意味で、吉村委員の指摘には私も賛成です。 ○ 中垣審査管理課長  この渡邉参考人から出していただいた16ページの課題が医療機関のIRBと外部IRB でこれはどう違うのか。今、渡邉参考人がおっしゃったとおり外部IRBの課題としてこれ は整理されている。と申しますのも、例えば公開登録制度と書いてありますが、いわゆる先 ほど御指摘のあったIRBショッピング的なものを阻止していくということで考えますと、 医療機関のIRBであれば被験者から見れば当然そこのIRBにかかってくることを前提 としているわけですが、どこのIRBかわからないというようなことがございますし、医療 機関の方から見てもどこに頼めばいいのか、どこのIRBがしっかりしているのかというの がわからないということがありますから、こういう公開とか、それを「登録」という言葉が いいのかどうかわかりませんが、制度というのは必要となってくるんだろうと。  では、何を登録していくかということになりますと、ここに次に書いてありますような開 催日時とかそういう概要であるとか、どういう人を雇っているか、この教育・研修について は先ほども申し上げましたとおり、今からの教育・研修というよりは、どういう人を雇って いるのかということの方が質という意味では重要なんだと思うわけです。また、その認定と いうのを、今は国が認定するというのはなかなか考えられないわけであります。アメリカに おいてもNPOでございますとか学会の場でやっていただいている部分がありますから。い ずれにしても、どういうIRBがいいのかということを公開していくというのが、先ほどの IRBショッピング的なもの、あるいは医療機関から見るとどこに外部IRBがあるのかと いうようなことを調べていく意味でも重要だというような意味で、外部IRBへの審査の委 託を実現する上での課題としてあるんだろうというように考えた次第でございます。 ○ 池田座長  ありがとうございます。論点3にも医療機関が当該医療機関で実施する治験について、適 切に調査審議を行うことができるIRBを選択するためにはどのような方法が考えられる かという、これについてお話をいただいたわけですが。  座長が意見を言うのが適切かどうかわかりませんが、IRBに対するそれぞれ委員の先生 方の意味というのは少しずつ違っているんですね。被験者保護も含めてきちんと専門家をや られて、それに求められる要件をすべてクリアして一生懸命にやっているIRBもたくさん あります。しかし、やはり人材が必ずしもすべての医療機関で十分ではないということで、 それも踏まえて専門的知識とか臨床試験に関する知識がある者の確保が困難だからという ことでこの委員会でも議論していただいて、そういう場合には外部IRBをという話をした んですね。しかし、ここではそこにIRBがある時にはそこでやる。あってもほかに依頼で きるというのは、ここは少し法律的に違うんじゃないかというところがあってこの問題を持 ち出したんだろうと理解しております。 ○ 藤原委員  基本的にセントラルIRBに賛成で、省令の通知に細かくだらだら書くから解釈が難しく なって後で皆が困るので、単純に治験審査委員会を通せばいいですよというようにして、そ の後に吉村先生がおっしゃっているように、ちゃんと機能するようなシステムを整理してお けばいいだけのことなので、単純に実施医療機関ごとに1のIRBというのを消してしまっ て、但し書きも全部消してしまって、あとはIRBの質をどうチェックしていくかなどを見 ていけばいいと思います。それで、ここは治験を話す会なので、その時には企業さんの意見 というのは非常に大事だと思いますので、よく耳にしたりするのは、SMOさんがI相屋さ んと呼ばれる人たちの医療機関等でお手盛りのIRBを組織するというダークなところが あるのを防ぐために、もっときちんとした審査をさせるためにセントラルIRBを設けた方 がいいんじゃないかという議論も聞いたことがあるんですが、その辺の実態を教えてくださ い。  だから加藤先生が御懸念されているように、セントラルIRBにするとむしろIRBショ ッピングとか審査の質が落ちるんじゃないかという議論よりも、むしろいかにいい加減なこ とがやられつつある今の日本のダークなところに光を当てて、きちんとセントラルIRBで そういう人たちの審査の質を上げようという試みを多分始めているんじゃないかと思いま すが、多分それは製薬協さんが実際にはいろいろな依頼者さんとしていろいろなところとコ ンタクトしているわけですから、そのダークなところをどのぐらい把握されているか。それ を改善するためにこのセントラルIRBが貢献するというように僕は思っているんですが。 ○ 川口委員  ただいまの藤原先生の御意見に賛成でございます。私たちとしては企業側はすべての治験 に責任を持たなければいけないわけですから、そんなあいまいなところにお願いしたくない。 ところが多施設共同になりますと非常にたくさんのIRBにかかります。そのIRBのメン バーの人たちをすべて理解するというのはなかなか難しい。ですから統一性を図るという観 点も含めて考えますと、やはりセントラルのようなものがあればいいなということと。藤原 先生が先ほどおっしゃっていたように、但し書きのところにいろいろな案があり、この条件 とは何だろうなと。別に小規模でなくても、あるいは専門性がなくても外部に委託するとい うことは可能ではないかな。そのかわりに先生方がおっしゃったように、IRBの質の保証 というのはとても大切なことだし、現状、施設ごとのIRBに関しても、ちょっと後になり ますが、総合機構からの実地調査を受けるわけですね。だからそういうものが例えば事前の 調査を受けるとか、そういう形で進めることは可能なんじゃないかなというように思います。 ○ 景山委員  先ほど池田座長が、施設がIRBを持っていても外に頼めるかどうかということをおっし ゃったんですが、これは頼めるんです。IRBは治験ごとに設置するという考え方ですので、 施設にIRBを組織していても、新たに依頼のあった治験に関しては外に頼むことができま すので、そのことを追加しておきます。 ○ 加藤委員  外部IRBの質の確保の問題、あるいは施設外IRB、これは外部委託というか、ある程 度はやれると仮定して、要するに各治験を実施する医療機関が、要するに丸投げしていくと いうような構造に伴ういろいろな例外の部分というのも考えておかなければいけないんじ ゃないかな。両面あるように思うんですね。だから、そういう視点で御議論いただければと 思います。 ○ 池田座長  ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。先ほど景山委員がおっしゃったのは、 「IRBを設置することができない場合において」というように理解したんですが、これに ついては課長、いかがでしょうか。 ○ 中垣審査管理課長  私も今の省令上は無理だというように解釈しておりましたが、うちの担当に確認したとこ ろ、確かに解釈通知の中で今、景山委員から御発言があったような言葉が書かれております。 ただ、幾つもそこに条件がありまして、治験審査委員会は新たに行おうとする治験ごとに設 置すると解釈されるものであるが、既に実施医療機関に治験審査委員会が設置されている場 合には、他の外部IRBを調査審議の対象となる治験に関するIRBとすることが適当であ るかどうかを、実施医療機関の長、及び院内のIRBが協議の上、判断しようと。この場合 において何々と。もうほとんど実施不可能のようなことが延々と書かれているところでござ いまして、それで申し上げますと法律上は可能であるけれど、実際上はなかなか難しい規定 になっているというところではないかと思います。 ○ 池田座長  設置することができない場合においてではなく、委員会があっても議論することができな い場合においてというような、そういうような解釈であるということですね。設置というよ りは、むしろそこで審査というか、そういう法律的な。 ○ 景山委員  私もその通知を読んだ時には少々驚いたんですが、治験審査委員会が施設ごとに設置する という単純な理解をしていたんですが、「治験ごとに設置する」という考え方が示されてい ますので、考え方が変わったのか、以前からそうであったのかその辺のことははっきりわか りませんが、そういう考え方が導入されたことによって外部IRB、あるいはセントラルI RBの調査審議の依頼ということが可能になったというように理解しております。 ○ 渡邉参考人  先ほど加藤委員の御指摘は非常に重要なものだと思っています。ですから教育・研修シス テムの普及が重要だと思いますし、最後のページに書かせていただいたように、IRB自身 がもし外部IRBになった時には、適切に実施されているかどうかの調査を本当に行えるよ うなシステムにしていくこと。IRBによる実施医療機関の治験担当医師の教育が重要な課 題だと思います。 ○ 池田座長  ありがとうございます。そのほか重要な点を議論していただいたわけですが、委員の先生 方は共通して、これは当然と言えば当然ですが、IRBが外部にあろうが、その施設内にあ ろうが、そこのIRBで被験者の保護を中心に置きながらしかるべき審査がされているかど うか、それをちゃんとしているかどうか、そこが一番大事であるということを前提にしての 御議論であるというように考えていただきたいと思いますし、そこの仕組みづくりというこ とを踏まえた上で条件にしてそういう方向に進めていくのはどうだろうかと。そういうこと ではないかと思います。そういう前提があるということだと思います。 ○ 加藤委員  事務局にお願いしたいことですが、せっかく渡邉参考人がこの外部IRBを活用する場合 の課題という形でまとめていただいて、これに沿った形で論点整理というものができている わけですが、ある意味では省令の条文の案を作成いただきこの検討会にお諮りいただいて着 実に、藤原委員がおっしゃったような実質的に質の高いIRBが我が国でできていくような、 そういう方向の議論を進めていただけるようにお願いしたいということでございます。 ○ 池田座長  ありがとうございます。これは恐らくここにいらっしゃる皆様のお考えだろうというよう に思いますが。いかがでしょうか。今後の進め方を事務局の方で。 ○ 中垣審査管理課長  先ほど景山委員の御説明に私も誤解していたということを申し上げたわけでございます が、どうもここの規定というのは細かく入り乱れ過ぎていますので、きょうの議論も踏まえ て、今、加藤委員から御指示のあったように、では具体的にどういうようにするかと。もう 少しすっきりした形で、条文まで示すのはなかなか難しいと思いますが、それに近いような 形で考えを次回にでもお示しさせていただきたいと思います。少しすっきりした形に持って いきたいと思っています。 ○ 池田座長  基本的な考え方はここで皆さんにお認めいただいたということを踏まえて、事務局の方で その辺の整理をしていただけますでしょうか。それで次回にそれを提示していただいて、こ れなら皆さんのお考えもその方向に向かっていくだろうと、まとまるのではないかと思いま すが。そういうことでよろしいでしょうか。ありがとうございました。  きょうは非常に皆さんから活発な御意見をいただきましたので、皆さんが納得できる形で 文言、その他も含めて整理していただくことが必要かなと思いますので、それも事務局の方 にお願いするということにしたいと思います。そのあたりで何か委員の先生方から御意見は ございますか。本日の議論を踏まえて。そのようなことでよろしいでしょうか。もし、よろ しければ課長の方からもう一度、事務局からということで御連絡をお願いします。 ○ 中垣審査管理課長  どうも本日は御活発な御議論をありがとうございました。今お約束をさせていただきまし たとおり、このIRBの設置につきましてはより具体的な形でまとめたような資料を次回に 提出させていただきたいと思います。また治験の契約、前回に御議論していただきました事 項につきましても考え方を整理させていただきまして、資料として出させていただきたいと 思います。 次回の日程でございますが、7月4日の15時から17時ということで調整させていただいて いるところでございます。場所については追って御連絡申し上げたいと思います。本日はど うもありがとうございました。 ○ 池田座長  ありがとうございました。少し時間が早いですが、非常に御熱心に討論していただきまし たが、本日はこれで閉会とさせていただきます。渡邉先生、どうもありがとうございました。                −終了− 照会先: 厚生労働省医薬食品局審査管理課 TEL 03-5253-1111(内線2745) 担当者 森岡、山脇