07/05/16 第4回医療費の将来見通しに関する検討会議事録 第4回医療費の将来見通しに関する検討会                        日時 平成19年5月16日(水)                           15:00〜16:05                          場所 厚生労働省専用第17会議室 ○飯野座長 ただ今より、第4回医療費の将来見通しに関する検討会を開催いたします。 まずメンバーの出欠状況ですが、本日は西村委員が御欠席です。それでは、議題に入り たいと思います。前回までに医療費の将来見通しについていろいろな意見を頂きました。 それについて事務局で整理していただきましたので、まず事務局から説明をお願いいた します。 ○真鍋数理企画官 お手元の資料1については、今までに検討会を3回開催させていた だき、頂いた主な意見をまとめさせていただいたものです。参考までにその次に参考資 料というものを用意しております。これはすべてではなく、前回までにお出しした資料 で議論になったときに必要かと思われる所を抜粋して一緒に用意しております。  まず、資料1の「これまでにいただいた主な意見」です。将来見通しの必要性に関す る意見に関しては1つ、「医療保険制度に必要な財源確保を安定的、公平に行うための 仕組みを議論するためのベースである」という意見を第1回に頂いております。  次は、将来見通しの提示方法や説明に関する意見です。1つ目の○が長いのですが、 「医療費の将来見通しにおける将来の名目額は相対的に見るべきものなので、経済規模 との対比で提示することが重要である」。そういった御意見を第1回にも第2回にも頂 いております。「過去、厚生労働省が行ってきた将来見通しは、名目額では乖離がある が、経済規模での対比ではほぼ同じ結果となっている。ただ、名目額のみが大きく取り 上げられたため、将来見通しの正確性が議論の対象となってしまっている。本来議論す べきは、将来見通しをベースにした医療制度や医療保険制度の在り方である」。こうい った御 意見も第1回、第2回に頂いております。「また、名目額だけに着目して見通しが恣意 的であるかのような誤解もあるが、経済規模との対比でみた場合ほぼ同じ結果となって いることから、過去行ってきた将来見通しは議論のベースとなり得るものであり、誤解 を招かれないよう、提示方法には十分留意し、丁寧な説明を行うことが重要である」と いう御意見を第1回に頂いております。  次の○です。「経済規模との対比で提示する場合、今後大きくなる可能性のある間接 税が考慮されていないNI比ではなく、GDP比で提示することが適当ではないか」、これも 第1回に頂いた御意見です。「医療費の将来見通しは、医療保険制度に必要な財源確保 を安定的、公平に行うための仕組みを議論するためのベースであることから、より長期 にわたる公費負担や保険料収入などの財源内訳や、将来の保険料率を提示することも考 慮すべきではないか」、これは第2回に複数の委員から頂いた意見です。「将来見通し の手法、前提および結果について、分かり易く、アクセスしやすい情報の提供方法を工 夫することが必要である」。これは主に第1回に複数の委員から、表現はいろいろあっ たわけですが、同趣旨の御意見を頂いており、それをまとめたものです。  続きまして、将来見通しの方法に関する意見です。1つ目の○ですが、「現在、厚生 労働省が行っている将来見通しの方法は、1人当たり医療費の伸び率の設定方法など検 討すべき点はあるものの、大枠としては基本となる方法であると考えられる」という意 見を頂いております。「現在厚生労働省が提示している将来見通しにおける医療費の伸 び率の前提は、過去の一定期間の医療費の伸び率の実績から、人口の高齢化と制度改正 効果を除いたものを基礎としている。このため、自然増と過去の一定期間における診療 報酬改定率が含まれたものになっている。ここで、診療報酬改定率は、タイムラグはあ るものの経済動向の影響を受けていることから、医療費の伸び率を設定するに当たり、 自然増分と診療報酬改定分を区分して、将来見通しの前提となる診療報酬改定率は経済 との弾性を勘案して設定することも一つの方法ではないか」という御意見を前回頂いて おります。「将来見通しに幅を持たせることや、前提をマトリックスで置き、それに対 応した複数の将来見通しを提示することを検討してはどうか」、これは主に第2回に複 数の委員から頂いた意見です。「人口構造の変化だけを織り込んだ推計を基本とし、そ の他の前提の影響度合いが分かるように、平均寿命の変化分、技術進歩が年率1%で起 こった場合の変化分を示すことなども、推計内容の理解に役立つのではないか」といっ た意見も第1回に頂いております。  3ページ、医療費の分析に関する意見です。1つ目は自然増の分析です。「医療費の 分析、特に自然増の分析を深めることが重要である。今後レセプトの電子化も進展する ことから、それらを活用することにより分析を深めることが可能になるのではないか」 これは多くの先生から頂いた意見です。「診療報酬改定が行われると医療機関の対応が 変化することから、診療報酬改定が医療費に与える影響が当初の想定通りだったのかど うかについての分析も必要である」、これは第1回から頂いた意見です。「大変難しい ことであるが、多少正確性を欠いてもいいので、医療費物価指数を作成することが理想 であり、その場合は将来見通しも名目額ではなく、実質額で提示できるのではないか」 といった御意見を頂いております。その他の意見ももちろん頂いておりますが、主な意 見ということで、取りあえずまとめさせていただいたものです。 ○飯野座長 どうもありがとうございました。この資料について御意見を頂きたいので すが。 ○鎌形氏 では、最初に私、言っておきます。私が言った意見が結構反映されている面 もありますし、私の言わなかったところでも積極的に反対というところもありませんの で、私はこれで結構かなと思っております。 ○井原氏 私も今回、経済財政の専門の先生から大変貴重な御意見を頂き、それを今後 うまく反映できる見通しを行っていただけるといいなと思います。それと同時に、私た ちのようにこういった基礎数値のデータになるレセプトというものを毎月毎月審査して いる立場から、毎月突きつけられているわけですので、そういった立場からすると、い ろいろな状況で変化することがあります。また、鎌形先生が御指摘になったように、自 然増の部分は、やはり以前、検査や薬剤が多かったという御意見も頂きました。今、360 のDPC病院、DPCはもちろん医療費のためのものではありませんが、それが今371ぐらい、 確か準備病院があります。そうすると来年の春には700以上になる。恐らく急性期病床の 半数以上になるでしょう。そうすると、そこでは検査や薬剤はほぼ包括という形になっ ていく。果たしてそういったことの影響や1,300万人もいらっしゃる後期高齢者の方は、 全く新しい診療報酬体系に来年の4月からは入っていくことになる。果たして従来のこ の試算方法というのに何か変化が出る可能性ももしかしたらあるのかなと。そういった 面と両方をうまく全体をトータルでミックスした形で集計していただいたらより正確に なるのではないか、そのような印象は持っております。 ○飯野座長 橋本先生、何か御意見ありませんか。 ○橋本氏 実は1回目から前回まで申し上げていた意見として。長期的な、要するに20 年や30年といったタームでの将来見通しとしての推計は1番にあるような「財源確保を 安定的、公平に行うための仕組みを議論するためのベース」にはならない、ということ が多分意見として出ていたと思います。むしろ安定的かつ公平に行う仕組みを議論する ためのベースとなるのは、特に前回フランスのONDAMの話などが出たところで明示的な話 になったと思うのですが、1年、2年先の中身がどうなのかということを明らかにする 作業です。その点では推計の作業はモデルに基づいた、要するに成長モデル的にやるも のではなく、むしろ会計分析的な内容を持つものに恐らくなるだろうし、そういう意味 で今、井原先生がおっしゃったような新しい電子レセプトやDPCなどの形のものが役に立 つのではないか。というような意見があったかと思うのですが、ちょっと反映されてい ないようなので、申し訳ありませんが、ここで1回苦言をさせていただきます。 ○飯野座長 ありがとうございます。権丈先生、何か御意見ありますか。 ○権丈氏 これまでも医療費将来見通しの名目額は経済規模との対比で提示しているの ですよね。これをどう受け止めていただけるか、あるいはどう読んでいただけるかとい うことがこれから先も課題になると思います。例えば、報道の方では、一方で20年後の 名目額を取り扱って大変な額だと報道される。もう一方では厚労省は医療費将来見通し を過大推計して医療費を抑制する機運を醸成しようとしているという厚労省陰謀説のよ うなことを報道される。医療費将来見通しについては「提示方法には十分留意し、丁寧 な説明を」と書かれているけど、これまでもよく読めば正しい提示方法で出していたで はないか、というのが私の中にあります。この4回、もう1回あるらしいのですが、5 回の会というのがまた無駄になるのかな、ここである程度の人が分かってくれるけれど も数年後にはまた同じような報道がされていく、それをどのようにして、「医療費の将 来見通しというのはそういうものではないのだよ」ということを説明していけばいいの かというのが私の中での課題なのです。教科書でも書いて、名目額の20年後をとるとい うことは意味がないのだよとか書いても、その教科書も読んでもらえそうにない。でも、 書かないことにはどうしようもないのかなとも思っております。  それと2ページの所で、これは恐らくこれから先、具体的な形になる可能性があるの ですが。自然増と人口の高齢化と制度改正効果を除いたものを基礎として、それを見る ために人口高齢化と制度効果を取り除いて、後の制度効果の影響を見るために今やって いるのは、自然増と診療報酬改定が組み込まれたものを伸ばしているわけですよね。 ○真鍋数理企画官 現行制度の医療費の見通しですか。 ○権丈氏 現行のやり方は。 ○真鍋数理企画官 はい。 ○権丈氏 診療報酬改定部分に関しては、この前の分析だとどうも所得と同じような動 きをしていくぞということで、この診療報酬改定部分を切り離していくとすれば、今度 は自然増の伸びだけを伸ばしていく形になるわけですね。それは方法としてある意味、 仕方がないのかなというのがあると同時に、今の医療費を外挿して、今の医療費のまま でGDPに占める割合などを伸ばしていったとしても、今の医療の状態が、大変な医療の疲 弊した状態ですから、その辺りをどう表現していけばいいのかなというのがちょっと分 からないところです。  下の「将来見通しに幅を持たせることや、前提をマトリックスで置き」、この2つを 私は一緒にしてもいいのではないかという気がしないでもないです。マトリックスの中 に恐らくこういった技術進歩がどうのこうのという、技術進歩と自然増というところを 外挿的に与えていくと思うのですが、この中で1つのマトリックスができるのではない かと思っております。ですから、見通しを誤解されるのだったらやらないことだ、例え ば年金でも世代間隔差とか誤解されるのだったら推計しないことだというようなのが私 の中のどこかにありますので、非常にリスキーなことを世の中に正当に評価される形で 提示するためにはどうすればいいかという、公にする仕方のところで十分留意していた だきたい、というのが文章としてもう少し強く入れていただければとは思います。 ○松山氏 今のお話との関係で、2ページの下から2行目に「技術進歩が年率1%で起 こった場合の変化分」と書いてあります。医療における技術進歩が医療費に与える影響 について多分、例えば経済財政諮問会議の方々は誤解している可能性があるのです。技 術進歩と言うと良いものが安く提供されると思っている人が多いのですが、医療の場合 技術進歩というのは良いものがちょっと高く出てくるということで、諸外国、特にアメ リカでも医療費がなぜどんどん増えるかと言うと、一番大きな要因は技術進歩だと言わ れているのです。したがって、ここの書き方に少し工夫が要るのではないか。「技術進 歩が年率1%で起こった場合」というのは、多分技術進歩によって医療費の伸び率が1 %高くなった場合という意味だと思うのですが、医療のことを考えない人がこれを読ん だら、技術進歩が年率1%で起こって医療費がどれだけ下がるのという質問をしてくる おそれがあるな、という気がしました。 ○権丈氏 私もいつの間にか医療の世界にどっぷりと浸っていて、技術進歩と自然増が パラレルに動くと感じていて、技術進歩は医療費が上がるものだといつの間にか考えて いましたが、世間ではそうなのですよね。昔、その辺から勉強しました。 ○松山氏 典型的なのは、例えば医療分野にITを導入したら効率化されて医療費が下が るなどと言っていますが、そんなことはないですね。IT投資をやれば、初期の5、6年 はIT投資コスト相当分医療費が増加します。アメリカでもそうだったのです。その後、 臨床行動が変わってきて効率化される部分もあるということです。大事なのは医療の質 をどうやって高めるかであって、そこはコストが高くなる可能性もあるのです。ですか ら、例えばIT投資をしたからといって医療費が下がるというのは、議論としてはおかし いと思います。 ○権丈氏 私も、昔はその辺りを川上先生の『技術進歩と医療費』とかでいろいろと勉 強させていただきました。医療の技術進歩は我々が普通経済学で考える技術進歩と逆方 向を向いていて、普通の経済学で考えられるような側面が医療の中ではほんの部分でし かない、ということをある程度前提にして議論しないと危ないことになると思います。 ○井原氏 今、松山先生がおっしゃったように、IT化すると、よくオーダリングシステ ムなどが電子化されたりいろいろするのですが、医師が出した1つの指示のオーダリン グがそのままになっているとそのまま続けて行ってしまったり、手作業の方がかえって 間違いがチェックできるようなことも現実には起こっているのです。我々から見ている と、なぜこの医療行為が31日間も続けて行われたのか理解できないようなもの。IT化を したということで、例えば患者さんが会計までの時間が非常に短縮されて便利になると か、そういったIT化のメリットは、私はたくさんあると思うのです。しかし、対医療費 ということになったときには、IT化をすることがそれを動かすことにはあまりならない のだろうと。使うべき薬は使うし、医師は行うべき医療を当然行うし、使うべき医療材 料は使っていくのだろうということに関しては、それは多分影響はほとんどないのだろ うと私も思います。 ○飯野座長 ほかに御意見ございますか。 ○鎌形氏 3枚目に自然増の分析を深めるということが書いてあります。このとおりな のですが、自然増というのは分からないから自然増と言っているわけなので、自然増と いうものも少しロングタームで考えると、だんだん変化はしているのですよね。私がや っていた20年前は4%ぐらいあったと思うのですが、今資料を見ると2.5%ぐらいになっ て、それもだんだん少しずつ変化しているということです。橋本先生は、長期の医療費 推計などはあまり意味がないといったようなことをおっしゃっていたのですが、どうし ても長期を出さざるを得ないようなことになると、やはり自然増も変化しているのだと。 そのときに、自然増の中身は何かということを説明することが必要になってくるのでは ないかと思うのです。ですからその辺の分析をもっときちっと、ここに書いてあるとお りで結構なのですが、やはり自然増の分析をきちっとした方が説明しやすいというか、 説得力があるのではないかと思います。 ○橋本氏 長期の推計は意味がないと申し上げたのは、財源の確保の安定、公平、設計 といったものには恐らく役に立たないだろうということで、長期的に何がどのように響 くのかといったことをシミュレーションすること自体は、私も2回目、3回目でも申し 上げておりましたように意味なくはないですが、その自然増の中身をちゃんとしようと 思うと、やはりどうしても現行のマクロデータだけでやるのは無理があるだろうと。今、 フランス、ドイツ、アメリカの方で出ているような最近の医療費推計のデータを見ても、 すべて、マクロからミクロデータに移っています。その中で疾病構造の変化であるとか 年代によって異なってくる、同じ60代でも昔の60代と違って元気だとか、逆に昔の40代 に比べると最近の40代は疲弊しているとか、そういったことをちゃんとモデルに入れて 推計を行っている。  ただ、それは多分毎年行うものではないだろうと。そこで何のための将来見通しなの かによってショートターム、ミドルターム、ロングタームで恐らく意味が違ってくるし、 かつ、やり方も違ってくるだろうと。ショートタームのものについては、よりアカウン ティングな方法の方がいいと思いますし、今のような長期的なものについては、自然増 の部分を従来のマクロをもう少しミクロのレベルで展開するようなものがあるといいの ではないかと思います。ちょっと言葉が足りなかったので付け足しをさせていただきま した。 ○鎌形氏 失礼しました。 ○井原氏 私も、鎌形先生のおっしゃる、分からないから自然増だと言うのだというの に基本的に異論はないのですが、20年近くもレセプトの審査をしていますと、何となく 感覚的には、今後、これなら増えるよなという印象を持っている項目は実はいくつもあ るのです、このような場で申し上げるのは何ですが。審査委員の先生は、皆さん、そう いうことを感覚的に持っている。でも、それを数量的にきちっと示すことは、今までは なかなか難しかった。ただ、この前もちょっとお話したレセプト画面審査の中のいろい ろな抽出機能を使ってやってみると、うん、やっぱり思ったとおり、こういうものがこ うなっている、というものがかなり出てくるので、私は以前と比べると、橋本先生もお っしゃっているように、私は自然増をすべてが解析できるなどとは言いませんが、今よ りは相当、何がどうしてこうなったのかということは、私は具体的に数字で出せるよう になるような気がするのです。そういった具体的な説明が前面に出た推計でないと、数 字だけが一人歩きをしてしまう。もう何十兆円になるのだ、そればかりが出てくる。そ うではなく、そこには今、鎌形先生がおっしゃったものすごく丁寧な説明が必要だと思 うのです。こういう条件がこう変わっているから短期的にこの推計が当たっても外れて も、外れたのはこういう条件が想像以上にこれだけこういう計数が増えてしまったので 恐らくこういう誤差が生じたのだろう。こういった十分な説明付きの情報を皆さんに公 開しないと、数字が突出して議論されてしまうというおそれがあると私は思います。 ○権丈氏 記憶に頼って話をするので間違えていたら後で修正しますが。ニューハウス という医療経済学者が時系列で医療費の分析をしていくときに、人口増加などいろいろ なものを引いていって、これを技術変化と言うのです。向こうは、自然増という表現は 確かしなかったと思うのです、技術変化、technology changeと言うのです。しかも、技 術進歩、technology progressという言葉も使わないのです。その辺に彼の価値判断が入 って技術変化と。これは進歩なのかどうかよく分からないぞ、というようなところがや はりあるのではないかと思うのです。ですから、これをどうにかして中身をしっかりと させましょうというのは、気持ちは分かりますが、ちょっと難しいことなのかなという 気はします。  経済学の経済成長に関しても、資本や労働力などの影響を全部引いてしまって、残り は技術だろう、という引き算でやっていくという、全く同じことが起こるわけなのです。 その部分に関して自然増の中身をいろいろと明確にしていくというのは、それは見える ところは全部明示的に取り扱った方がいいのですが、全体的な医療費の成長、医療費が なぜ伸びるかといった問いの中ではやはり技術変化というものが最大の要因で主因だと いうことになる。高齢化などというような影響はネグリジブルなところがあって、技術 変化というのが最大ということで、それをコントロールするといったことに関しては見 たことは私の中ではないです。 ○橋本氏 権丈先生を置いて、お言葉ですがと言うのも大変勇気の要ることなのですが、 いわゆる経済成長の方で説明できないものの残存の部分を技術の進歩によるものだろう ということについては、経済の領域では議論が延々とされていると伺っているのですが、 この医療の領域においては、恐らくは疾病や技術などといったものに関して、もちろん いろいろな種類の技術はあるものの、現行で手に入り得るであろうミクロデータを使え ば、もうちょっと細かいことは言えるのではないか。もちろん残差のすべてが説明でき るとは思わないのですが、先ほど井原先生も鎌形先生もおっしゃったように、ある意味、 マクロ経済よりは技術進歩の部分をクリアにしていく技術はそれほど難しくないのでは ないかという気がするのですが、どうでしょうか。 ○権丈氏 引き算をすることはいろいろできるし、自然増部分そのものが一体何なのか というのは、薬品の回数が増えるとか。これは、中村文子さんでしたか、昔からずっと なされていて、回数が増えたとか価格が高い診療や薬に移ったとか、そのように次元を 変えれば、中身を見ることはできますよね。でも、では、そうしたことがなぜ起こった のか、それは必要なことだったのか、無駄なことだったのかというようなことを、どの ように評価していけばいいのかというところはちょっと。  ですから、やった方がいいとさっきから言っていますよ。引き算ができるところは全 部引き算をした方がいいと。私は、最終的には、こういったものは価値判断が必要だと 思うのです。そして、仕方ないよねというところと、減らせるよねというところをある 程度峻別していくために見ていくところがあると思います。そのところで自然増のかな りの部分は仕方ないという部類に入るのではないかというのが私の何となくの感じで、 それを、ここは減らせるよねという形でのコントロールは今まではあまり見たことがな いですね、という話に入っていきますね。 ○橋本氏 それはおっしゃるとおりです。 ○飯野座長 ほかに御意見はよろしいでしょうか。 ○松山氏 今のことに関連して。結局、お二人は同じことを言っているような気がする のです。要は、国民に対する説明をどのようにするかというときに、例えば主要な疾病 を10個ぐらい選んで、その疾病に関する技術が新しく出てきて、その結果診療行動と患 者の受診行動がどのように変化して、それが医療費にどのような影響を与えたかという のは、多分ミクロベースで計算できると思うのです。それも、タイプの違うものを10個 ぐらい並べた上で国民医療費全体の議論をすれば、少なくとも今よりは国民から理解を 得られる。 ○権丈氏 理解は得られますね。 ○松山氏 ええ、可能性が高まると思うのです。アメリカのHealth Affairsのような雑 誌にはそのような論文が結構出ていますよね。  それと、先ほどの問題に戻りますが。例えば経済財政諮問会議の目的が財政再建と経 済の成長ということであれば、それは技術進歩によって技術が伸びるところで生産性を 上げて名目GDPを増やすということですが、それから見ると、医療は最適なところなので す。技術進歩があって、質が高まって、国民が満足して、金額は増える、どこが悪いの という世界なので、私はそこをもっと主張すべきではないかと。  最後に申し上げたいのは、日本の医療費に無駄があるのは、個別の診療行為というよ りは、医療機関の経営が個々の独立した施設単位で発想しているが故におかしくなって いるのであって、地域医療圏全体で経営資源を共有し配分する仕組みがベースにあって、 それに個々の民間病院などがぶら下がっていくということにすれば、無駄が相当排除さ れるはずなのです。そのような仕組みの問題と個々の診療行為の無駄の問題は分けて考 えておく必要があるのではないかと思います。 ○権丈氏 先ほど国民にどう理解してもらうかということで、自然増というものが何と なくまだ理解…。 ○松山氏 言葉が悪いのです。 ○権丈氏 言葉が、誰が作ったか知らないですが。しかし、どこかに当然増の部分とそ うでない部分がやはりあるはずなのですよね。その当然増部分は、お金を高く払ったの だけれどもそれだけちゃんと医療サービスの質が高まったのですよ、というようなコス ト・エフェクティブというかコスト・ユーティリティが、そういう分析との兼ね合いの 中で議論していける側面で引き算していけるのだったらば、人口高齢化というところに 対してはみんな、なかなか文句も言わないと思うのですよね。それと同じように、経済 的にいいことが起こっているんだけど、それを公的に負担するから悪いことということ 自体が私はおかしいと思っているのですが、医療費が高まっているのだけれども、その 中でいいことは起こっているのだよというようなコンセプトになり得るような、解釈さ れ得るようなタームというか、そういったものを少し分析していくことによって嘘のな い形で提出できるような方法に進んでいくのは、私たち研究者がやらなければいけない 仕事だと思います。 ○井原氏 ですから今は、患者さんが医療を受けたときに、一部負担金を払ったりする ときに、どうしてこういう金額になるのか、正直言って皆さん、誰も分からない形にな っていると思うのです。点数表も複雑ですし、難しいですし、新しいお薬だから高いの ですよと言われると、妙に説得力があるのかもしれないですが、新しいからどうして高 いのか、どこで納得しているのか、私には分からないところがあると思うのです。  それはやはり、薬事法等で適応症等を決めるときにはメーカーサイドで申請してきた もので承認がなされる、そのときには民間の会社の事情その他でいろいろと治験や何か が行われてくる、それが薬事法承認を得た途端に突然として完璧なるオフィシャルルー ルになり、今度は承認事項に従って査定などを私たちが行う。このように豹変してしま うところがあるのです。この辺に私たちが審査をやっていて一番悩むところがあるので す。本当にこれはこれでなければいけないのか、どうしてそれが決まったことなのか、 なぜこれがこうなっているのか、外国ではみんなが使っている薬がどうして日本ではい けないのか、患者さんは不満がたくさんあると思うのです。それに対して領収書を頂い ても、内容を見ても、その書かれている内訳もいま一つ分かりにくいのだろうと。です から、そういった本当に基礎のところからきちっと、とにかく丁寧に丁寧に繰り返し説 明をしていくという姿勢を持っていかないと、将来、こういう病気にかかったらいくら かかるということを説明できないのではないか、ちょっとそんな気がします。 ○石原調査課長 医療費の自然増の話で診療行為ごとにどう変化するかと見ると、ある 程度分かると思うのです。例えば今だんだん増えているDPC、定額払いが進んできている 段階で考えますと、DPC病院について、今でもやはり医療費は伸びているのです。なぜ伸 びているかと見ますと、要するにサービスが増えたから伸びているとか、サービスが向 上したから伸びているというわけではないです、DPCの単価は決まっていますから。  DPCの単価が決まっているにもかかわらず伸びているという原因は、1つは、DPC病院 において平均在院日数が縮んでいて、平均在院日数が短くなると、DPCの仕組み上、単価 が上がるという仕組みになっているので医療費が伸びているという面がやはり大きいの かなと思っています。そういった意味でそういったことが解明されるということが、平 均在院日数の場合ですと、国民の理解はある程度得られると思うのですが、要はサービ スが増えているとか国民のメリット的な形で理解されるかと言うと、そうでない部分も ある。では、DPCの単価をどう決めているのか。それは要するに病気に対していろいろな 技術進歩があってコストがかかるようになって単価を上げなければいけない、そのよう な状態がある場合にはそのような状態になるわけでしょう。そういった意味では、診療 点数表で決めている部分と、実際問題、診療行為がどう行われるかということで上がっ てくる部分とがあるので、電算化が進んだからと言ってそこが分かるかどうかはちょっ と自信がない部分もあるかなとは思っています。 ○橋本氏 これまた調査課長を前にこんなことを申し上げられないのですが、DPCの研究 班の方にも入っているものですから一応弁明させていただきます。何となくもうかって いるのは病院係数で吊り上げされているからであって、あの病院係数が廃止されれば、 話はもうちょっと違ってくるかと思います。  現行のDPCの一番いいところは、包括の点数だけではなく、その中身で何をやっている のかというのをEFファイルで全部吐き出させています。それが今、一応承認統計化する 方向で整備が進んでいると伺っています。その中身を使えば、行為がどのように変化し たかといったことなども含めて明らかにできると思います。私は、決して包括にしたか ら中身が見えないという話にはならないと思います。むしろその中身を明らかにできる 病院こそがそういったDPC対象病院として認定されるべきであって、こんなところで批判 してもしょうがない面があります。昨日の諮問会議の方で何か医療費抑制の中心鍵だと 言われていますが、そういうものではないということを是非ここで、いらっしゃってい るマスコミの方々には少し書いておいていただけるとありがたいなという。 ○井原氏 私も橋本先生と同じでDPCに関わっている者で、橋本先生と同じような意見な のですが。1つは、一応今のところ、これは中医協の問題ですが、20年には調整係数があ るけれども22年のときには別の形で見直そう、ということがあります。  現行のDPCは、従来の医科点数表での生データを基に平均点を標準偏差である程度割り 出したものです。では、もともとの医科点数表とは何かと言われれば、ある意味で配分 係数、調整係数なのです。決してその原価を積み上げた、実費で作られたものではない のです。医療費の総枠が決まり、各診療科別にいわゆる影響率や各科別の調整やいろい ろなことがなされた上での、DPCはそういうものに基づいて作られています。ですから私 は今、橋本先生がおっしゃったように、本来はきちんとした原価計算に基づいた、これ だけのお金を使ってこれだけの医療がきちんと行われているというDPCが将来的に出来る と、やはりDPCに対する誤解は減ってくると思うのです。しかし、今のままですとどうし ても。医療課は、今までは7月から10月までのデータを出させていましたが、今度は12 月までのものを出させますから、1年の半分はデータがそっくり来ることになりますよ ね。そこで医療行為がある程度多い所は、今は調整係数も高くなってきてしまう。つま り医療機関別係数、医療機関の持っているその能力に応じた係数というものと、今まで の金額の実績を担保してあげますという調整係数というものが両方あるわけですから、 その医療機関の過去の実績に基づいた係数というものが、橋本先生がおっしゃったよう に、少し問題のあるところなのかな、ということが多分中医協で議論されるのだと思う のです。ですからDPCは、やがては調査課長の御懸念ではない方向に行かせなければいけ ないのだろうと思います。 ○権丈氏 要するに、ここで議論していることは皆、意見がそう変わらないのですよね。 それが、なぜか知らないけれども、政策の俎上に上ったときに、あるいは医療政策につ いて論じる人たちのところでは間違えて理解されているのですよね。そこを厚労省がど う説明責任を果たしていきながら、分かりやすく、メディアとかにどのように説くか。 まさに先ほどおっしゃった経済財政諮問会議の中にいる人たちも分かっていないのです よね。彼らが無理解なのは医療が持っている特性ゆえなのか、それとも説明するところ での努力が足りないのか、それとも彼らにバイアスがあるのか、いや、あるかもしれな いですが、最終的には、医療とは何なのか、医療費は一体どのようなメカニズムで決ま っているのか、その水準をどう評価していけばいいのかといったようなことをいかに説 明して、どのように分かってもらうか。もっと普通の人にも分かるような形で説明して いかないとよろしくないのだろうし、その辺に何か貢献できるのだったらば、この検討 会は何がしかの意味があるのかなと思います。何か自然増という言葉は、自然増を分析 しようではなく、自然増の中に当然増がこれだけあるのだよというようなことが言える ような方向を何か見出せれば、私は、これは大いに一歩前進ではないかと思いますので、 よろしくお願いいたします。先ほど「私たち研究者がやります」と言いましたが、やは り厚労省の方でよろしくお願いいたします。 ○飯野座長 私も、最後に少し言わせていただきます。このような医療費の検討会、そ れ自身の意義は、今、こういった結論が出たところであると思うのですが、今までは、 経済財政諮問会議の人だけではなく、私のような財政屋の発想からすると、医療費が伸 びるというのは不健全であるという発想が基礎にあって、とにかく医療費を抑えなけれ ばいけないという考えがあるように思います。外国を見ても、確かにただ医療費だけが 無限に伸びている国はないようですし、伸びているときには、抑えにかかっているのは 万国共通のように思います。医療費の伸びを抑えるためのデータとしていつも出てくる のがこの長期見通しでありまして、医療費は将来こんなに増えるのだから今はとにかく 抑えなければいけないという形で使われていると思います。今までの経験から考えると、 やはり医療費は少しずつ伸びているけれどもそれなりの意義があるということを明らか にしなければいけないように思います。そういう意味では、先ほど権丈先生が言われた ように、自然増の中に当然増というものがあるということを明らかにする必要があるよ うに思います。不幸にして医療費というのは、その果たした役割がほとんど評価されて いないのではないかと思います。確かにある種の病気は、それが医療によって治っても 元よりも健康になることはあまりないわけですから、元にしか戻らないという意味では、 あまり評価されないところがあるのは仕方のないことです。  ただ、少なくとも寿命という点から言えば、今までは死んでいた人が医療によってか なり生き延びているという点もあるわけで、少なくとも、今までは医療の対象にならな かった人が医療の対象になったという意味で医療費がかかりだしたというところもある はずなのです。ですから、そういったことも含めた形で医療費はどれくらい伸びていい のかという議論が一方でなければいけないのに、とにかくこの長期見通しというのは、 「将来、このままでいったら危ないのだ」というためにだけ使われる、というのが私た ちもここで注意していかなければいけないことなのかなと思います。 ○権丈氏 医療費将来見通し額を経済規模との対比で見るとき、長期的に医療費が伸び ることは危ないぞとあまり思わなくなるのですが。経済規模との対比で見ると、「えっ、 このくらいしか増えないの」というような印象を持つようになっていくので、医療費将 来見通しの利用の仕方と公表の仕方ということだけでも、私は十分意味があると思いま す。 ○真鍋数理企画官 一番初めに橋本先生からあったお話で、先生から前回も財源につい て例えば来年度や再来年度といった近い将来のことについて議論すべきであるというお 話をいただいたのは私どもも重々承知しておりますが、例えば来年度の話で言うと、そ れはまさしく予算のような話になってくる面もありますし、これは、どちらかと言うと、 長い目で見た将来がターゲットであるので、あえてその意見を特段書かせていただかな かったという経緯があるということです。 ○石原調査課長 補足します。例えば医療費が経済規模との対比でどうこうという問題 もあるのですが、医療費が増加していっている中で、中身で申し上げれば、医療費の中 で増加するのは老人医療費だと、これは当然なわけです。老人医療費が増えてくると、 財源構成的に見ると、老人医療費の半分以上は要するに公費でみているという意味で言 えば、どちらかと言うと、医療費が伸びていくのに輪をかけて税でみなければいけない 部分が増えるという構造的な意味もあるのです。そういったことをこのような医療費の 推計からある程度導いて考えていくということ自体は、そういった意味では政策的な意 味合いがあるのかなとは思っています。 ○橋本氏 正におっしゃるとおりだと思います。見た目に明らかに高齢者医療費が圧迫 要因になっていて、しかも、一番問題となる公費の部分に一番影響を与えているもので あると。逆にそうであるだけに、それは単に高齢者が増えるからで片付けてしまうと、 方法は2つだけです。高齢者を減らすか、さもなくば、高齢者には同じ医療をやっても 高く払っていただくか安いものをお返しするかのどちらかしかなくなってしまうと思い ます。  そこでそれが例えば高齢者になるがゆえに疾病罹患率が変化しているためというので あるならば、それはそれなりの手の打ち方があります。また、いわゆるドクター・ショ ッピングといったような複数の非常に無駄な医療費の使い方がされているということで あれば、それはむしろディマンドコントロールの方をより積極的にやるというような誘 導政策が必要になってくるだろう。もしくは、高齢者の場合には単に死亡前医療費を多 く含んできているからそちらの影響だと言うのであるならば、昨今のように死亡前医療 に関するガイドライン等々といった議論がもしかしたら有効になるのかもしれないです。 ただ、どれが響きそうなのかといったことをこの医療費の推計からある程度の仮説がも う少し議論しやすい形の数字をもし出していただけると、評価がしやすくなるのではな いかと、ああ、この政策がうまくいったとか、この政策はあまり響かなかったとか。そ のような形にもこの医療費の見通しといったものが使われるようになると、国民の側も 払うのに対して納得がしやすくなるのかなというような感触を期待しております。 ○飯野座長 ほか、よろしいでしょうか。権丈先生もいいですか。 ○権丈氏 恐らくここの議論で私が今言うようなことはちょっとあれかもしれないです が、医療費というのは増えて悪いのかというところが私の根っこの部分にやはりありま す。ここ5年間ぐらい、例えば雇用だったら、医療・福祉がどんどん雇用創出をしてい て、建設業とかいろいろなものが減った分を相殺するぐらいの勢いで医療・福祉分野の 雇用が増えているわけです。ですから、医療費として増えるのが悪いというような議論 がなされること自体も私にはよく分からないし、それを今度公的にやらないことの方が 望ましくてプライベートだったらいいのだということも私にはよく分からないのです。 プライベートにやると、所得によって医療の一人当たりの消費量にどうしても差が出る、 本当にそれでいいのかというのがあるので、私は多くの財政学者の人たちの議論には、 はなから、うーん、医療というものをもう少し考えてみようねという印象を持つことに なります。そして、アウトカム、使ったお金がもたらす成果がよく分からない、それが どう評価されるか分からない、基本的にはそのようなアウトカムがよく分からないとい う特性を持つ対人サービスで、なおかつ、平等に消費した方がいいよなというようなサ ービスを最終的にはパブリックが抱えてきているのですね、いろいろな国が、教育にし ろ医療にしろ。ですから私は、その部分をどうにかして改善するというのは、ある面、 難し過ぎるだろうと思います。ですから、その辺のところはパブリックの役割のような ものをもう少し根っこから考えていかないといけないと思っています。報道にしろ、世 の中に情報が流れていくときのバイアスのスタート地点からちょっとおかしい角度を持 っているなというのが最近、全体に関することであって、私はパブリックの医療費が増 えていくことはさほど悪いことではなく、これは別に政治家とか官僚が食べているわけ ではなく、江戸時代の五公五民とは違って、これは国民に返ってきているところがある わけです。そのようなところから考えていくと、世の中の議論のスタート地点から私は ちょっとおかしいということを延々と書いている人間だということが御理解いただけれ ば、私の発言の全体像を理解していただけると思います。 ○飯野座長 よろしいでしょうか。それでは、ただ今の皆様の意見を踏まえて議論の整 理を行いたいと考えております。事務局の方で整理をしてもらい、次回の検討会で議論 することとしたいと思います。次に、最近の医療費の動向について、事務局から説明を お願いいたします。 ○真鍋数理企画官 資料2、概算医療費の伸び率です。これを用意させていただいた趣 旨は、診療報酬改定が当初想定したものと実際ふたを開けたらいろいろ医療機関の行動 も変わって違うのではないかという御議論があり、それを、確かに私どもは今、マクロ データしか持っていないのですが、そのマクロデータの中で見ていき、毎月月次で観測 しております。そのことについてちょっと参考になればと思って用意させていただいた 資料です。  概算医療費については、1ページの注1に少し書いてあります。いわゆる審査・支払 機関から頂いた医療費を集計したものです。ですから、いわゆる国民医療費のほとんど を占めていますが、その一部ということです。ただ、そのほとんどを占めていますので、 概算医療費の動向を見ていただければ、まず日本の医療費の動向が分かるということで す。今、データが平成18年の12月分まで揃っていまして、基本的にこれは実額ではなく、 対前年同期比という形の伸び率で常に見ております。15年度、16年度、17年度と書いて、 18年は4〜12月ということで、対前年同期比ですから、18年の4〜12月の平成17年4〜 12月に対する比率、伸び率です。18年4〜12月で言いますと、医療費全体で、一番下の 計の所を見ていただきますと、0.2%の増ということですが、これはいわゆる延べ患者数 である受診延べ日数とその単価である1日当医療費に分解いたしますと、単価は1%伸 びていて、受診延べ日数は-0.8%ということで、相殺して0.2%ぐらいの伸びで済んでい るということです。  これを4月〜6月、7月〜9月、10月〜12月と3カ月平均で右に見ていただきますと、 4月〜6月が-0.1%、7月〜9月が0.2%、10月〜12月が0.4%ということですが、実際 問題このように月別、あるいはある程度短い期間で見る場合には、稼働日数と言いまし て、医療機関は今でこそ日曜日に診療している所はもちろんあるのですが、大体は日曜 日は休診とかいうことで稼働日数の影響を大きく受けますので、その影響はあります。  4月〜6月が稼働日数が前年に比べて0.5日増えていまして、7月〜9月は変化なし、 10月〜12月が都合1日増えています。そういった影響を補正しますと、-0.5%、0.2%、 -0.4%という変化になり、18年度に入って医療費総額は大体0近辺で推移しているとい うことです。  ここで、先ほどから自然増のような話がありましたが、そもそも医療費というのは自 然体であると伸びるということがあります。17年度は、まず診療報酬改定がなかったで すし、制度改革もなかった年です。ですから、ほぼ自然体だとみなせるわけですが、17 年度を見ていただきますと、医療費で3.1%伸びていて、単価は3.4%伸びていて、延べ 患者数は-0.3%ということです。先ほど課長からも申し上げましたが、延べ患者数はや や微減傾向にありますから、単価が伸びて、医療費も3から4%、自然増が大体3から 4%と申し上げていますが、大体そのような感じです。ですから、仮に18年の改定の影 響を-3.16%と医療費ベースで言っていますが、それを考えるときには、そもそも自然体 で3.1%伸びたものと比較してどれだけ落ちたかと見なければいけないということです。  実際問題、これは12月までデータが出ていますので12月までと比べてもいいのですが、 実は18年というのは、4月に診療報酬改定がありまして、その後、実は制度改革の施行 が10月から、いくつかの制度改革はもう施行されていまして、かつ、歯科の金属材料の 価格が10月から改定されています。そういった意味で診療報酬改定の影響を見るのであ れば、4月〜9月の半年間と比べた方がいいのかなということで、一番右の方に平成17 年度の伸び率との比較ということで、(2)−(1)というものを作っております。取りあえ ずこれで診療報酬改定がどのぐらい効いたのかということを見てはどうかという意味で 作ったものです。計で申し上げますと、1日当医療費、診療報酬改定とは基本的には点 数の単価を変えることですから、単価にまず影響を与えるということで、1日当医療費 に対する影響をまず見ていただくということです。そういった意味で平成18年4〜9月 の平均が0.9%に対して17年度は3.4%でしたから、17年度と18年4月〜9月を比べます と、単価で言うと、2.5%下がっているということです。  ただ、診療報酬改定には、一部保険外にするなどといった延べ患者数にも影響を与え る面も実はあります。そういったことを考えると、医療費で見るというのも1つの見方 ですが、医療費全体で言いますと、4月〜9月の伸び率がちょうど0だったために、17 年度の3.1%と比べますと、-3.1%ということで、当初予定した診療報酬改定で-3.16% だったわけですが、結果的に医療費という面で見ると、-3.1%になっているということ です。  それを内訳で見ますと。医科と歯科と調剤別、かつ、医科は入院・入院外別に見てい るわけです。入院が単価で言うと-1.5%、入院外が-2.7%、歯科が-2.4%、調剤が-6.6 %となっています。これは、実際問題、診療報酬改定全体で-3.16%と言っても、医科、 歯科の技術料は1.5%の減、調剤の技術料が0.6%の減、それに対して薬価が6.7%と大幅 に引き下げられていますので、薬のウエイトが高いところは下がるのが当たり前で、で すから、調剤は当然ですが、薬のウエイトが大きいので下がり幅が大きくて、入院など はそれほど下がらないというような構造になっているということです。  そういう点で先ほどからお話がありますように、医療費は基本的には何もなければ伸 びるというのがまずあって、ただ、制度改正や診療報酬改定があると、診療報酬改定は プラスの場合ももちろんあるのですが、仮にマイナスの診療報酬改定ですと、そこはそ の分影響を受けて凹むと。ここの表で言いますと、平成15年度に制度改正があって、被 用者本人の2割負担が3割負担になったというようなことがあって、制度改正はどちら かと言うと、受診延べ日数に大きく影響を与えますので、15年度は-1.4%ということで、 ここで制度改革の影響が大きかったわけです。また、16年度は診療報酬改定がありまし て、医療費ベースで-1%の改定をやったということで、1日当医療費が1.9%というこ とでかなり落ち込んでいるということです。  2ページ目は、医科病院についてもう少し詳しく見たものです。入院と入院外を分け て、かつ開設主体別、大学病院、公的病院、民間病院別に同じようなものを作ったもの です。ここで申し上げるならば、医科入院の診療報酬改定、いろいろあったわけですが、 7月からの療養病床の医療区分の導入がありまして、その影響が若干出ているのではな いかということです。具体的に申し上げますと、医科入院の1日当医療費の伸び率が4 月〜6月は0.8%、7月〜9月が0.9%ということで、医科病院の入院全体で言うと、4 月〜6月より7月〜9月の方が伸びていますが、民間病院だけを見ますと、4月〜6月 が0.8%に対して7月〜9月が0.3%ということで、療養病床は民間病院に多いというこ とで、その影響が出ているのではないかというようなことです。  3ページは診療所の入院外の医療費について見たものです。この診療所を更に主たる 診療科別に分けたものです。ここで1点だけ申し上げますと、例えば眼科の一番右の所 ですが、これもやはり17年度と比べて影響がどうだったかと見ているものです。1日当 医療費の減という意味では診療所全体では-2.3%ですが、眼科は1日当たり-4.4%と大 きく落ち込んでいますが、眼科はコンタクトレンズ診療の関係で大きく点数が変わった というような影響があって、落ち込み方が大きかったのではないかというようなことで す。  同じような形式で、4ページ、5ページ、6ページは高齢者について見たものです。 ここで言う高齢者は、70歳以上の方を指しております。同じ形で7、8、9ページが3 歳未満の医療費の動向です。ここでも端的なものだけを申し上げますと、7ページは3 歳未満の医療費ですが、上から2つ目の医科入院の1日当医療費を見ていただきますと、 18年の4月〜12月で8.9%の伸びということで、1割までいかないですが、かなり高い伸 び率になっています。これは18年の点数改定で入院基本料をかなり大幅に、2割ほど引 き上げた影響でこの単価が非常に上がっている、といったこの診療報酬改定の影響が出 ているというようなことです。  こういったことを月別に観測してどのような影響があるのかといったようなことを見 ているということです。今のところ、確かにいろいろ行動は変わるのでしょうけれども、 総枠で言うと、18年の診療報酬改定の影響は、大体3.1%になっているという結果になっ ているということです。簡単ですが、以上です。 ○飯野座長 ありがとうございました。ただ今の説明について何か御質問、御意見はご ざいますか。 ○井原氏 実感どおりの数字だと思います。ちょっと皆さんに分かりにくいのは、どう して小児科に高齢者がいるのかということでしょう。小児科の診療所にも高齢者は受診 しているのです。孫がかかっていて、良い先生だからおばあちゃんもというのがありま す。ですから、小児科の診療所なのに高齢者がちゃんと受診しているというのは、そう いうところがあります。その辺が日本のクリニックの面白いところと言いますか、普通 考えたらちょっと理解できないですよね、小児科に70歳以上の増減が出ているというの はそういう意味だと思います。 ○飯野座長 ほかに御意見、御質問がないようでしたら、今日はこれくらいで終わらせ ていただきたいと思います。次回の開催日程等について、事務局から何かございますか。 ○真鍋数理企画官 ただ今日程調整中ですので、また御協力いただきまして早めに決め たいと思います。よろしくお願い申し上げます。 ○権丈氏 これの説明があるかと思ってそのときに話そうと思ったのですが。 ○真鍋数理企画官 これは議論のときに使っていただければいいかと思いまして。 ○権丈氏 とにかくこの41ページ(事務局注:第3回資料4の3ページ)の「これまで の将来見通しにおける医療費の伸びと経済成長率」、この図だけでも記憶にとどめてお いていただければと私は思います。今までの過大推計は、経済成長率が高いときに将来 見通しを立てたから医療費の将来見通しが高くなってしまっていた、ただそれだけのこ とだったのだということです。経済成長率が高いときには医療費の伸びも高くなるので、 どうしても基準とする、算定基礎となる医療費の伸びが高くなってしまう。しかし次第 に経済成長率が鈍化してきたために、医療費の伸びも鈍化してきた。本当にこれだけの ことで今まで、141兆円から81兆円、65兆円と医療費の見通し額が落ちてきているわけで す。そこに何らかの意図が働いていなかったことは、この図でほとんど説明がつくので はないかというのがあります。ですから、これは非常に面白いものを作られたなという のがこの前からあって、今日説明していただけるのを待っていたのですが…。 ○真鍋数理企画官 すみません。 ○橋本氏 これは前回先生が本来なら大学の研究者がやっておくべきことをという。こ れは学術的にも大変価値は高いですが、説明的にも対外的にも大変価値の高い図だと思 いますので、是非何らかの形で論文化して発表していただければと。 ○井原氏 権丈先生、このようなものを公開するといいですよね。 ○権丈氏 これはもう使って文章を書いています。ホームページにボンと出しています。 ○井原氏 是非調査課からも。このようなものがやはり分かりやすい。 ○権丈氏 これは本当に素晴らしいわけですから、去年の国会のときなどでもこれを出 せばよかったと思うのですよね、ただこれだけのことなのだということを示すために。 医療費の将来見通しを行う際に、その作業を医療費の伸びから始めていくとなると、医 療費そのものが実は周りの経済とリンクした形で動いているので、経済成長率が高いと きと低いときでは医療費の伸びが前者では高く、後者では低くなる。将来が1ポイント 違うだけで20年というのは複利でものすごく違ってきますので、その影響が、結果とし てこれまでの医療費の将来見通しの差に出てくるというのがあります。ですから皆さん がこの図「これまでの将来見通しにおける医療費の伸びと経済成長率」をどんどんどん どん、ご利用いただければと思うのです。私も授業などでは随分使っていますので…こ の図の作成者は私ではないのですけどね。 ○井原氏 これは、出典を示せばどこで使ってもいいですね。 ○真鍋数理企画官 ええ、もちろん。使っていただければと思います。 ○飯野座長 それでは、本日はここまでにしたいと思います。どうもありがとうござい ました。                                     (了)                     [照会先]厚生労働省保険局調査課                         電話(代表)03(5253)1111                           武藤、村木(内線3295)