中国残留邦人への支援に関する有識者会議 |
平成19年5月17日 |
資料3 |
中国残留邦人の現状と意見
1 中国残留邦人について
(1) 中国残留邦人
○ | 昭和20年当時、中国東北地方(旧満洲地区)には、開拓団を含めて約155万人の日本人が居住。 |
○ | 昭和20年8月9日のソ連軍の対日参戦により、現地の日本人は避難を開始したが、避難の途中、ソ連軍の侵攻や飢餓疾病等により多くの犠牲者を出した。 |
○ | このような状況の中で、肉親と離別し孤児となって中国人に引き取られたり、生活の手段を得るため中国人の妻になるなどして、やむなく中国に残ることとなった方々を「中国残留邦人」と呼んでいる。 |
○ | 中国地域からの引揚げは、昭和33年の集団引揚げ終了後、昭和47年の日中国交正常化までは、赤十字社を通じた少数の個別引揚げのみであった。 |
○ | 昭和47年の日中国交正常化以後、中国残留邦人の身元調査、帰国事業が本格的に進められ、数多くの中国残留邦人が本邦への永住帰国を果たしている。 |
(2) 中国残留邦人の数(参考資料のP3)(以下同様)
○ | 日中国交正常化後に国費により永住帰国した中国残留邦人の数は、6,343人(同伴家族を含めた人数は、20,293人)となっている。 |
(3) 中国残留邦人の年齢(P4)
○ | 帰国者本人の現在の平均年齢は、70.52歳であるが、年齢分布では、60歳代が最も多い。 |
○ | 帰国者本人の帰国時の平均年齢は51.67歳であるが、年齢分布では、40歳代が最も多い。 |
(4) 同居家族の状況(P6)
○ | 1世帯あたりの平均世帯人員は、2.3人となっている。 |
2 中国残留邦人の生活の状況
(1)生活保護の状況(P7)
○ | 生活保護の受給状況をみると、58.0%が生活保護を受給している。年齢別では、「60〜70歳未満」の受給率が最も高い。 |
(2)就労状況(P9)
○ | 帰国者本人の就労状況をみると、「現在就労している」が13.9%となっているが、一方「就労したことがない」が44.2%となっている。また、就労している者は60歳代前半までの者がほとんどを占めている。 |
○ | 帰国者本人及び配偶者どちらか一方または両方が現在就労している世帯は19.9%となっているが、一方、どちらとも就労していない世帯は80.1%となっている。 |
○ | 本人及び配偶者の就労収入(手取り額)をみると、どちらか一方が就労している場合の収入月額は、10〜20万円未満が41.4%と最も多く、平均月額は13万8千円となっている。 |
(3)年金の状況(P13)
○ | 年金の受給状況をみると、52.4%の者が受給中となっている。65歳以上では、81.9%の者が受給中となっている。 |
○ | また、受給及び加入している年金の種別では、国民年金が56.6%、厚生年金が29.1%となっている。 |
○ | 月額3万円未満が51.2%、月額5万円未満が76.3%となっている。 |
(4)日本語の習得状況(P16)
○ | 帰国者本人の日本語の理解度は、「日常会話に不便を感じない」が38.4%しかいない。 |
○ | 年齢別では、50〜69歳の者の理解度が他の年齢の者に比べ低い。 |
(5)居住の状況(P17)
○ | 帰国者の居住地を都道府県別にみると、東京都を始めとする6都府県で50.6%となっている。 |
○ | 帰国者の居住地を市区町村別にみると、全国812市区町村に分散している。 |
(6)地域生活の状況(P22)
○ | 帰国者本人の近所とのつきあい状況は、「招待し合うような親しい人がいる」が24.0%、「立ち話をする程度に親しい人がいる」が26.7%となっているが、「つきあいがない」も18.4%となっている。 |
(7)二世、三世の状況(P23)
○ | 帰国者の同居家族は、帰国者1人に対し、配偶者0.7人、子0.4人、孫0.2人等となっている。 |
○ | 帰国者の子の平均年齢は、37.9歳となっている。 |
○ | 帰国者の子及び子の配偶者の就労状況についてみると、世帯としては83.6%が就労している。 |
○ | 子世帯から帰国者への支援状況は、「生活の支援がある」は60.2%、そのうち、「生活費の援助がある」は17.7%にとどまっている。 |
3 帰国者本人の意識
(1)現在の生活の状況(P30)
○ | 「余裕がある」「やや余裕がある」の合計は7.7%、となっているが、一方、「苦しい」「やや苦しい」の合計は58.6%となっている。 |
(2)帰国後の感想(P31)
○ | 「良かった」「まあ良かった」の合計は64.5%である一方、「後悔している」「やや後悔している」の合計は11.5%となっている。 |
○ | 帰国して良かったと思っている者(64.5%)のその理由については、「祖国で生活できるようになった」(62.4%)が最も多い。 |
○ | 帰国をして後悔している者(11.5%)のその理由については、「老後の生活が不安」(55.0%)が最も多い。 |
4 中国残留邦人との意見交換会概要
1.生活支援問題
(1) 老後を安心して暮らせるようにして欲しい。
- 老後の生活が不安。しかし生活保護は額が少ないだけでなく監視されたり、墓参りにも自由に行けないので絶対に嫌だ。
- 安定した老後を送れるように、他の普通の日本人と同様な生活、暮らしができるような中国残留邦人のための新たな給付金制度を創設して欲しい。
- 年金受給額が少ない。一般の日本人と同様の年金が欲しい。
- 生活保護費では満足な生活ができない。
- 医療費補助の制度を創設して欲しい。
- 拉致被害者に手厚いことはいいことだが、自分たちにも同じように手厚い支援をして欲しい。
(2) 住宅対策をして欲しい。
- 帰国直後だけでなく、その後も公営住宅に入れるようにして欲しい。
- 帰国者向けの老人ホームを作って欲しい。
(3) 地域社会で孤立せず、安心して生活できるようにして欲しい。
- 中国では日本人、日本では中国人と言われ辛い思いをしている。
- 中国残留邦人の精神的苦痛、孤独感に配慮した支援策を作って欲しい。
- 自分の祖国なのに、母国語で他の人とコミュニケーションができない。
- 子供は小中学校に入学し、日本語が半年くらいで上達するが、反面中国語を忘れてしまうため、次第に日本語が理解できない親との間でのコミュニケーションがとれなくなってしまう。
2.生活保護の問題
(1) 生活保護は制約が多い。
- 役所には、生活を監視され、就労を迫られる。
- 中国に墓参りに行くと、生活保護費を止められる。
- 生活保護を受給するため、世帯分離しなくてはならない。
- 生活保護では病院も指定され、いきたい病院にも行けない。
- 生活保護は不自由で、不便な規定が多い。
(2) 生活保護者に対する日本社会の偏見、差別がある。
- 生活保護を受けていることで、悪口をいわれたりする。
- 病院に行っても生活保護受給者と分かると態度が変わる。
- 生活保護は国の税金だと言ってくる人がいる。
3.日本語の習得問題
(1) 日本語ができないことで、就職できないなど苦労した。日本語教育を充実させて欲しい。
- センターでの日本語教育では足りない。学習期間を長くして欲しい。
- 生活が苦しく、日本語の勉強をしないで働いている。
- 日本語学習の場をもっと増やし、交通費も支給して欲しい。
- 自分が帰国した時はまだセンターがなく、ほとんど援助を受けられなかったため、今でも日本語は挨拶程度しか分からない。
- 5〜6年生活の心配をしないで日本語を学べるようにして欲しい。
(2) 日本語ができないため、医療機関で医師との意思疎通がとれない。
(3) 日本語ができないため、社会の仕組み、生活の仕方、人間関係、法律、再就職も分からない。
4.二世・三世問題
【就労問題】
(1) 働く意欲と能力のある者への労働の場が(日本語が不自由なために)保障されていない。
- 2世・3世についても、日本語が不十分な場合が多い。日本語学習の場を増やし、日本語を学習できるようにして欲しい。
- 職業訓練を受けることができるよう支援をして欲しい。
- 日本語が不十分な者が学びやすい職業訓練をして欲しい。
【その他の問題】
(1) 生活保護を受けていないが、自力の生活で精一杯。親の面倒までは見られない。
5.その他
(1) 帰国者のための墓地を作って欲しい。
(2) 孤児達の意見を聞く機会を定期的に開催してほしい。(原告団)
(3) 残留婦人を無視せず、孤児と同等の支援をしてほしい。
5 中国残留邦人に対する現行の支援策
(1)中国帰国者に対する支援の概要
(2)生活保護による支援
○ | 年金等の社会保障給付などを活用してもなお生活に困窮する場合は、セーフティーネットとしての生活保護制度の適用により、生活支援をしている。 |
○ | 平成19年度からは、生活保護制度において「中国残留邦人地域生活支援プログラム」を実施し、例えば、従来は停止されていた中国へ渡航中の生活扶助費を継続支給するなど、中国残留邦人の個々の状況に応じたきめ細かな対応ができるよう措置している。 |
(3)国民年金の特別措置
○ | 中国残留邦人は、本人の意志に反して中国に残留せざるを得なかったにもかかわらず、帰国時には高齢を迎えているため年金への加入期間が短く、受給額が低額か又は受給できない事態が生じていたことから、中国に住んでいた期間について、
- 国民年金が創設された昭和36年4月1日から永住帰国するまでの期間(20歳以上60歳未満の期間に限る。)を保険料免除期間として、国庫負担相当分(満額の1/3)を受給
- 保険料の免除期間の保険料を追納することで、期間にかかわらず完全に年金額に反映することができる特例措置を講じた。(平成8年施行)
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