07/04/09 第28回労働政策審議会安全衛生分科会議事録 第28回労働政策審議会安全衛生分科会 1 日 時 平成19年4月9日(月)17:00〜19:00 2 場 所 厚生労働省 専用第22会議室 3 出席者 (委 員)公益代表 和田委員、相澤委員、今田委員、内藤委員、  名古屋委員、平野委員 労働者代表 鈴木委員、高橋委員、古市委員、中桐委員、仲田委員、 眞部委員、芳野委員 使用者代表 伊藤委員(代理)、金子委員(代理)、加藤委員、  豊田委員、松井委員、三浦委員、山崎委員、 (事務局)      青木労働基準局長、小野安全衛生部長、山越計画課長、 高橋安全課長、金井労働衛生課長、平野化学物質対策 課長、矢島生活習慣病対策室長、深田医療費適正化対 策推進室長、松岡医療保険課長 4 議事録 ○分科会長 第28回の労働政策審議会安全衛生分科会を開催いたします。北山 委員、伊藤委員、金子委員は所用のために欠席されています。本日は労働政策 審議会令第9条に規定いたします定足数を満たしております。当分科会は成立 していることを、まず、ご報告申し上げます。なお、本日欠席の伊藤委員に代 わりまして東京商工会議所産業政策部長の橋本様、また、金子委員に代わりま して日本アイ・ビー・エム株式会社豊洲事業所健康支援センターの産業医をさ れています中村様に代理出席をいただいております。  本日は、前回に引き続きまして議論をいただきたいと思います。まず、事務 局から資料が提出されておりますので、その資料に基づきまして議論したいと 思います。それでは事務局から説明をお願いいたします。 ○労働衛生課長 資料に基づきまして説明をいたします。用意しておりますの は、「労働安全衛生法における定期健康診断等に関する検討会」報告書に記載さ れている論文の要約というもので、前回説明が足りなかったことについて説明 するという趣旨です。別途、検討会の報告書もお手元にお配りしておりますの で、必要に応じてご覧いただければと存じます。  論文の要約は2枚ものです。1つは、英語で表題がありますが日本語で申しま すと、内臓脂肪の蓄積は肥満でない中年の日本人男性のインスリン抵抗性、小 型のLDLコレステロールの増加や冠状動脈疾患の進行に寄与するといった表題 です。この論文のポイントですが、まず内臓脂肪の蓄積と冠状動脈疾患の発症、 糖代謝、血清脂質との関係についての調査・研究を行ったということです。  表題にもありましたとおり、非肥満の中年男性、日本人を対象にしたもので す。内容は2つ調査・研究があります。まずStudy1のほうは、ご存じのとおり 冠状動脈疾患については、心筋梗塞なり狭心症が該当するわけです。そういっ た疾患を有する方たちの群が50名、BMIが24.1±1.6という範囲です。それに 対して、冠状動脈疾患のない対照群ですが15名、BMIの標準偏差が23.8±1.9 です。この65名について内臓脂肪の蓄積が、糖代謝等による影響について調査 を行ったというものです。  結果としては、冠状動脈疾患を有する群の内臓脂肪の面積は、対照群のもの と比べて、これは統計学的に有意に広かったという結果が出ています。数値上 は括弧の中にあるとおりです。また、内臓脂肪の面積は、インスリン抵抗性、 要するに糖代謝の異常を示すものですが、こういった指標や、冠状動脈の狭窄 の程度を示す指標と有意に相関しているというものがStudy1です。  Study2は、冠状動脈疾患がなく、高脂血症薬を飲んでいない44名に対して、 内臓脂肪の蓄積が脂質代謝にどう影響するかという調査を行ったものです。そ の結果、内臓脂肪の面積は、総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロー ル等と有意に正の相関をしていることが確認されたということです。内臓脂肪 の面積が増えるに従って、こういった血中脂質が増えることが統計上確認され たということです。  結論ですが、内臓脂肪の蓄積は、体内の糖代謝の異常の進行、あるいはLDL コレステロール、特に小型のLDLが増えるといったものを通じて、非肥満の中 年日本人男性の冠状動脈疾患の増加に寄与していることが考えられる、という のが結論として述べられているところです。これは2001年の論文です。  2頁は、内科系8学会がメタボリックシンドロームの診断基準を作成した際に、 腹囲のカットオフポイント、いわゆる基準値というものですが、普通の健康診 断に使えるように検査項目にはカットオフ、基準値がありますが、それと同じ ようなものを定める上で、根拠とした論文です。  過去の調査から、欧米人と比較して肥満の程度がそれほど強くない一般の日 本人においては、内臓脂肪の蓄積がBMIよりも健康障害のリスクにより密接に 関係していることが明らかになってきたこと、さらには、肥満病には脂肪の分 布、特に内臓脂肪が重要であり、その測定が必要であることから、内臓脂肪に 着目した簡便な指標を作成するための研究を実施した、というのが目的等に述 べられているところです。  まず、1,193名の対象者に対してCT検査を実施して内臓脂肪面積の実測、あ と、皮下脂肪の計測等も行っておりますが、そういった計測をするとともにBMI を測定しているということです。また、腹囲については1,193名中の748名の 対象者に対して測定を実施し、腹囲は1,193名全員にされたわけではないよう です。1,193名のデータから言えることですが、BMIは皮下脂肪と正の強い相 関、この相関はご存じのことと思いますが、2つの変数間、2つのデータ群と言 ってもいいと思います。その2つのデータ群の関係を表すもので、その強さを 相関係数という指標で表している、普通はこの相関係数rと示しておりますが、 このrは正の相関です。正の相関というのは、1つの変数が増えると他の変数も 増えるというものです。この正の相関をする場合は、0〜1の間を動きます。1 に近づけば近づくほど2つのデータ群の関係が強い。1に近づけば、より強い関 係があるということを示すものです。  それがBMIと皮下脂肪と強い相関、rが0.82ということで強い相関ですが、 これが認められたということです。BMI25、いわゆるBMI上の肥満の方ですが、 そういった方に限っても同様の強い相関が認められたということです。一方、 BMIと内臓脂肪面積とはそれより弱い相関しかなかった。r=0.54ということ です。さらにBMI25以上の肥満の方に限ると、BMIと内臓脂肪面積とは相関 関係が認められなかった。rは0.06で、すなわちBMI25以上の肥満の方で見る と、BMIと内臓脂肪面積の関係はバラバラであるということが分かったという ことです。ここでは、BMIというのは皮下脂肪といい相関関係を持っていると いうことが言えるわけです。  さらに、748名のデータから内臓脂肪面積とBMI、腹囲との関係を評価した 結果、腹囲は内臓脂肪面積と最もよく相関して、男性で相関係数が0.68、女性 が0.65といったことが確認されたということです。  なお、この論文、ここには書いてありませんが、この論文の中にも、国内外 で1990年代前半から多くの研究者が内臓脂肪がBMIよりも健康上重要な指標 であるということを指摘していると言っております。また腹囲が最も良い指標 であるというのが1990年代から分かって、1997年のWHOの腹囲を用いた診 断基準に結びついたと言われています。そういったことを踏まえ、やはり腹囲 と内臓脂肪が最もいい関係があるという結論があったと考えております。  下から3つめのポツですが、内臓脂肪の面積が100cm^2以上になりますと、 高血圧、高脂血症、高血糖のうち1つ以上認められるということが確認され、 また、複数の危険因子、高血圧、高脂血症、高血糖でありますが、複数の危険 因子を持つ率は、内臓脂肪面積が100cm^2以上のほうが有意に高かったという ことです。  そういったことを踏まえ、最終的に内臓脂肪面積と腹囲の男女別の相関関係、 統計学的な解析をした上で計算して、最終的に内臓脂肪面積100cm^2に対応す る腹囲が男性85cm以上、女性90cmであったという結論が導き出されたもので す。 ○分科会長 ただいまのご説明について、ご意見、ご質問を承りたいと思いま す。 ○松井委員 最後に説明されたところについて確認をさせていただきます。2枚 目の上から4つめのポツで、「男性腹囲0.68」と「女性腹囲0.65」と書いてあ って、横のBMIが「0.61」「0.63」というところの説明はなかったのですが、 ここの数値はどのような意味合いを持っているのかどうか。仮にBMIと内臓脂 肪の相関係数が、0.61と0.63となっているとするならば、何か1つ上のポツの 所と、どういった関係で読み込めばいいのかどうか、教えていただきたいのが1 点です。  2点目は、前頁のStudy1とStudy2は違うStudyと理解するものと思います が、その1と2のStudyの結果が結語だと思います。ただ素朴な疑問として、 Study1の2つめのポツに「冠状動脈疾患を有する群:121±57cm^2、有さない 群:91±25cm^2」というのは、冠状動脈疾患を有する人であっても、内臓脂肪 の面積だけで見ると有しない群の人の中と、相当重複しているケースがあるよ うに読めます。しかしそれは数値の範囲を書いているだけであって、統計学的 には、実際の数値はバラつきがあります。両群の範囲が相当重なっているデー タが、今後、腹囲を安衛法の規則に追加していくことに対してどのくらいの意 味合いがあるのか、ないのかについて、ご見解を事務局に伺いたい。以上2点 です。 ○労働衛生課長 1点目の3つめのポツと4つめのポツの違いというのは、いわ ゆる対象者の人数が違う。1,193名のうちの748名のデータですが、対象者が違 うために、そういった差異が出てきたというふうに考えられるわけです。  あと、男性がBMIの相関係数が0.61、女性が0.63と女性の腹囲の相関とあ まり変わらないという、そういった面も含んでのご指摘と思うのですが、先ほ ど申し上げましたように、1990年前半から多くの研究者がBMIよりも腹囲の ほうがいいと、あるいは、腹囲を測定する方がいいことだということは既に分 かっていたと、さらに、3つのポツの中で、BMIと内臓面積でいうと、25以上 の肥満の方だと相関関係がないと、そういったことを総合的に判断して、当然 BMIよりは腹囲の相関係数を取って、その上で、内臓脂肪面積100cm^2に対応 する腹囲の基準値を作ったという理解です。  2点目の冠状動脈疾患を有する群が121±57、有しない群が90±25と、重な っているというご指摘は、たぶん、その標準偏差まで入れると重なっている部 分があるということではないかと思うのです。これはあくまでも統計上の、2つ の群の有意差があるかどうかという観点、特に平均値等から見てどうかという ことですので、あくまでも統計学的な有意差があるということで、冠状動脈疾 患を有する群のほうが有意に広かったということをいっているものです。こう いった冠状動脈疾患を有する方が内臓脂肪の面積が広かったということは、逆 に申しますと、作業関連疾患としての心臓疾患、特に心臓の血管障害について は、内臓脂肪が大きく関与する可能性があるということです。やはり労働安全 衛生法上、こういったものについて適切に対応する必要がある、ということを 示唆するものだと考えているところです。 ○松井委員 理解力が悪いのでもう一度、質問させていただきます。2つめの説 明で、内臓脂肪の面積が100cm^2を基準にするという考え方に立っている点は 間違いないですよね。その場合、121±57というデータの意味合いは、内臓脂 肪が176cm^2という人と、この中でいくと121−57cm^2でも冠状動脈疾患に なっている人がいると読めばいいのですよね。そして、有さない群も91+25cm ^2と、91−25cm^2と読めばいいわけですよね。  そういう場合に、今後、基準としていこうとするものが、どのくらい意味が あるのかということの説明を聞きたいのです。今の説明だと、よく分からない ということだけを、まず申し上げます。 ○労働衛生課長 説明が悪くて恐縮です。1枚目の論文の要約の120±57とい うのと91±25とあります。後の数字は標準偏差でして、この範囲にすべてが収 まるというのではなくて、あくまでも一部を除いて大体入る範囲を標準偏差と して示すものですので、全部このデータに入っているわけではない。これはあ くまでも統計的なデータの処理です。 ○松井委員 標準偏差であれば、個別には、本当はもっと外れているデータが あるはずである。それは大体この中の1つの括りだとみているのか、その標準 偏差の見方はどうなっているのか。室長から回答をお願いします。 ○生活習慣病対策室長 いま統計のご議論になっている大前提で100cm^2の話 が出てきたのですが、それとは別で、実は病気になった人、要するに心筋梗塞 という動脈疾患になった人はどういう人だったかを見ただけなのです。100cm ^2の基準は、また別の論文です。病気になった人を見てみたら内臓脂肪が多か ったと。明らかに多かったといっているだけの論文です。  次の論文のところで、それではどの基準で危険のリスクがあるかということ を見たところが、100cm^2を超えたところで、今度は病気のある人、ない人を くるめて。いまのは病気のあった人の話です。そうではなくて病気のない人も 含めて、どの段階でリスクが出始めたのかというのを見て、100cm^2というこ とで、全く違うものなのです。 ○加藤委員 テーマが変わってもよろしいですか。 ○分科会長 はい。 ○加藤委員 今回の法改正の問題というのは、企業ですべきことはメタボリッ ク対策なのか、作業関連疾患の対策なのか、どちらを重点に置こうということ ですか。 ○労働衛生課長 それは先ほども申し上げましたとおり、あくまでも作業関連 疾患としての脳・心臓疾患障害の防止、いわゆる内臓脂肪自体から生理活性物 質が出て動脈硬化を起こし、なおかつ、高血糖、高脂血症というのが相俟って 動脈硬化を進展させ、作業関連疾患である脳・心臓疾患障害の基礎を起こすと、 そういったものを防止しなければいけないという観点で入れるということです。 当然、保健指導としての対策は当然あると思いますが、基本は作業関連疾患対 策です。 ○加藤委員 いま金井課長が言われたことはよく分かりました。作業関連疾患 だとしますと、問題はその要因です。作業関連疾患の要因というのは、例えば 個人の要因と企業でかかるストレスの話と、社会的な要因といろいろある中で、 職業病と違うのは個人に基礎疾患があることがあり得るという点です。例えば、 厚生労働省がテキストにもお書きになっているグラフを見ますと、要は、経過 とともに症状が増加する。それにストレスが加わった場合は急激に増加して、 そこを問題にしているのではないかというのが作業関連疾患だと思うのです。  去年の4月に安衛法の改正で、過重労働による健康障害防止対策の内容が入 った。我々企業側にとってみますと、そこの部分の対策をきちんとすれば、企 業側の対応はとったことになると理解しているわけです。ですから、基礎疾患 としてのメタボリックシンドローム対策を企業はやらなくてはいけない、とい うことにはならないという気がするのです。ただし、国の政策として厚生労働 省が国民全体の中でおやりになることは、全く我々は反対はしておりません。 非常に重要だと思っております。  その辺、作業関連疾患としての企業の役割と、国あるいは国民がすべき健康 の保持・増進とは少し範囲が違うのではないか、企業でなすべきことは、スト レス等を含めて、過重労働を減らすことではないかと思っているのですが、私 の考えが違っているかどうか、お話いただければと思います。 ○労働衛生課長 事務局からお答えいたします。作業関連疾患については、い わゆる両面からの取組みが必要ではないかということです。1点は基礎となる疾 患を予防していく。それと同時に過重労働対策もしっかり企業なりにやってい ただく必要がある。両方が相俟って効果的な施策ができるのだと考えておりま す。 ○加藤委員 作業関連疾患だといくつかあります、メンタルな問題もしかりだ と思います。厚生労働省が出しているメンタルの労災、認定基準によると、3つ のファクター、すなわち、業務上のストレスと業務外のストレスと個人の要因 が考慮され、業務上のストレスが大きい場合に企業責任としての労災認定され る。メタボッリクシンドロームは個人の要因だと私は思うのです。もし、これ をこのままの考えでいかれますと、個人のさまざまな要因も労災認定を基礎づ けることになりかねない。例えば、自分たちが今までできてきた生活の環境の 問題とか、個人の性格の問題とか、そういったこともみんな企業責任になって しまう可能性が、将来十分あるのではないかという懸念を持っています。そう いったところまで企業は本当に踏み込んでいいものかどうかという議論が、も う少し必要ではないかと思うのです。その辺はいかがでしょうか。 ○労働衛生課長 ストレス、メンタルヘルスについてもちょっと離れまして、 あくまでも脳・心臓血管障害に限って言いますと、そもそも基礎になる病態に ついては個人の責任でも、それは当然あるのは否定はしません。しかしながら、 それを放っておくことによって、過重労働をすることによって、いわゆる作業 関連疾患が発症してしまう。それを防ぐという二面からの対策というのが非常 に重要であるというのが我々の考え方です。  なおかつ、これについては平成元年にコレステロールなり、あるいは、平成 11年にHDLコレステロールとかも追加をしているところですので、その延長 としての位置づけが今回なされるものだ、というふうに考えていただければよ ろしいかと思います。 ○加藤委員 今までの改正の中で、今までやってきたからこのまま延長でいく のかといえば、そうではないと思うのです。メタボリックシンドローム対策が 第一義的に個人の問題という位置付けであれば、法律で一律に決めることには 馴染まない。法定以上の対策として、労働安全衛生マネジメントシステム (OSHMS)をいま導入している企業もあるわけですから、ニーズによってやれ ばいいのではないかという気がするのです。 ○生活習慣病対策室長 メタボリックシンドロームという言葉、内臓脂肪とい うことなのですが、従来からも肥満と高血圧と高血糖、糖尿病と高脂血症とい うか、マルチプルリスファクター症候群というものがまずいという概念はずっ とあったわけです。それは変わっていないのです。肥満のところを、従来のBMI というのは、内臓脂肪と皮下脂肪、要するに体脂肪ですから、身長と体重だけ ですから。一緒くたでやっていたわけです。肥満というものを、体の中の脂肪 を全体でみていた。メタボリックシンドロームの概念は皮下脂肪と内臓脂肪を 分けて考えましょうと、分けて考えて内臓脂肪に着目しましょうと。同じ肥満 ではあるのですが、従来のBMIよりも、突っ込んだ肥満の概念です。  今までやっていた肥満を入れたマルチプルリスファクター症候群の概念が、 より精緻になったというようにお考えいただけると有難いと思います。 ○加藤委員 いまの室長のお話は決して反対はしておりません。先ほどから申 しておりますように、メタボリックシンドロームにしろ肥満にしろ、対策をや ることは私は必要だと思っていますし、企業の中でもやっておられる所は多い です。ただ、それが労働安全衛生法の中に完全に組み込まれて、要は作業関連 疾患として企業責任が生じるところに問題があるのではないかということを申 し上げているわけです。 ○安全衛生部長 前回、この検討会の報告書を説明させていただいて、いろい ろ議論がありました。今日も改めてお配りしていますが3頁をご覧いただけれ ば、いま加藤委員がいろいろ言われているところのご疑念が解けるのかなと思 うのです。3頁の健診項目の「腹囲」の所です。まず、この検討会の中で、最初 の4行の所は、いまご議論されている作業関連疾患の性格を書いて、特に最新 の医学的知見によって脳・心臓疾患、作業関連疾患である脳・心臓疾患発症の リスクが、この4つの要因を併せ持つと、非常に高まってくるということが明 らかになっています。  今まで労働安全衛生法の中でもいろいろな健診項目がありました。血液の検 査とか、その中には身長・体重があって、BMIが数値として、これは省令の51 条、様式5号ということで加藤委員もご存じだと思います。その中に、ほかの さまざまな健診項目と合わせてBMIの数値の書く欄が決められております。現 場の医師は、そういうものを総合的に診断をして、自分の意見を書いていただ くということになっていたわけです。最新の知見では、このBMIというものが、 特に内臓脂肪と脳・心臓疾患、先ほど来、2枚の論文等を説明したように、内臓 脂肪との心臓疾患のリスクの関係が非常に明確になってきたという幾つかの報 告があります。そうするとBMIに比べて、内臓脂肪の代理指標である腹囲とい うものが、きちっと把握されるべきであるというようになってきたのだろうと 思うのです。これは国内はもとより、国際的にもそういうことが医学的な知見 として確立していた。だから、労働安全衛生法、まさに職場の中での個々の労 働者の健康管理についても、まさに腹囲というものを他の項目と併せて測ると いうことが、作業関連疾患の予防に非常に重要なのだということを、ここに書 いてあるわけです。  いま加藤委員ご疑念の安全配慮義務、あるいは事後措置について、企業の責 任というものが直ちに及んでくるのではないかということなのですが、ここも 前回ご議論がありまして、現在もBMIというもので取っているわけですが、そ れだけで事後措置を行えとか、そういうことは全くありません。そういう意味 では、今回、腹囲を測定したということをもって直ちに、こういう作業を転換 をしろとか、作業配置を変えろとかということではなくて、ほかの高脂血症の 状況だとか、健康診断のいろいろなデータがありますから、トータルで医師が 判断されて、さらに、今の安衛法の体系で言えば、医師の意見を踏まえ、これ は必要に応じて事業者がどうするかという仕組みですから、二重、三重にそう いう対応がかかっているということですので、この腹囲をとることが直ちに安 全配慮義務を拡大するものではないと考える。ここは検討会でもだいぶ議論が ありました。そういうことでこうなっているということなので、いまのご疑念 のところは、まさにここのくだりで、おそらく説明されているのではないかと。  我々も、この検討会の報告をいただいておりますので、腹囲を測定すること が直ちに作業関連疾患対策、安全配慮義務としてこういうことをしなければい けないということではない。あくまでもトータルとしての判断であり、事後措 置であると考えております。 ○橋本氏(伊藤委員代理) いまのに関連しての話です。前回もご議論された ということで安全配慮義務のお話がありましたけれども、はっきりここに、先 ほど言われたように「拡大するものはないと考えられる」と記載されておりま すが、正直言って私ども商工会議所がちょっと心配するのは、本当にこれでい けるのかどうかという部分に不安を隠せないところがあります。確かに、何か トラブル等を生じた場合、果たして司法とか、そういった部分でこの考えでい くのかどうか。特に生活習慣病と先ほど加藤委員も言われましたが、事業者と してのコントロールが非常に利きにくい分野、その分野でこういった部分が拡 大される心配といいますか、その辺は非常に強く感じております。本当に大丈 夫なんですか、というところが本当に心配なところです。 ○労働衛生課長 何回も同じことを申し上げるわけですが、腹囲だけで事後措 置されるものではない。腹囲というのは、ほかの高脂血症なり高血糖と組み合 わせて医師が所見を書く。それを踏まえ、労働者の事後措置をどうするかを事 業者が必要に応じて判断するという流れになるわけです。医師の意見として腹 囲だけで事後措置が必要とか、そういったことは考えられないわけです。そう したことからすると、それだけで事後措置をとる必要がないということは、当 然安全配慮義務についても、それほど問題にならないだろうというのが一般的 に推測されるわけです。  はっきり申し上げれば、これはあくまでも司法の世界で、行政の話でしかな いということになればそうですが、一般的に考えると、そこまでの安全配慮義 務は拡大しないと考えられるものであると考えております。我が方としては、 そういった趣旨の通知等を出したい、周知徹底したいと考えているところです。 ○中村氏(金子委員代理) 内臓脂肪の意義や腹囲測定の意義は非常に意味の あるものだと思います。ただ、産業医の中におけるスクリーニング検査として 全例に腹囲を測定するかということは、ちょっとどうかなと思っています。ス クリーニング検査ですから大まかに振い分けをするという意味ですので、例え ば、簡単なBMIでスクリーニングをして、肥満の方にはその肥満の種類を特定 して指導法を考える。腹囲を測定することだけで分かるものということになり ますと、肥満でもないし、血圧も高くないし、脂質も血糖も全く正常な方を産 業医が厳しい指導をするかと、それはちょっと外れてくるのではないかなと。 これは国民的に、おなか回りは病気と関連しますから皆さん気をつけましょう、 という程度の扱いになってくるだろうと思います。安衛法の中に入れて厳しく 管理するという形で、腹囲が新たに入ったことによって大きく変わるというも のではないような気がいたします。余裕のあるところは、そういった肥満で振 い分けをして、腹囲を診ながら指導・調整していくことはやっていると思いま すし、強制して新たにというようなことは、ちょっとどうかなというところも あるかと思います。 ○分科会長 今までの全体のことに関して検討会の座長として、ちょっとお話 をさせていただきます。基本的には、作業関連疾患というのは事業者責任で防 ぐものであると私は思っております。ただ、作業関連疾患が一律に発生するこ とは絶対にないわけで、これは皆さんが言われるとおりです。生活習慣病の非 常に多い人、少ない人、いっぱいあるわけです。しかし、非常に多い人であれ ばあるほど作業関連疾患に対して中心的に予防してほしいということなのです。 したがって、個人的な差というよりも、個人の差によって、その人に作業関連 疾患が発生するかどうかのほうが問題で、そのリスクが非常に高ければ、きち んと管理してほしいと。きちんと管理するには、今までの方法は非常に弱い、 したがって腹囲を中心として、きちんとそれを対処してほしいという考えなの です。  例えば、司法がどういう考え方をするかは分かりませんが、かなり生活習慣 病その他があったとしても、それが作業によって悪化したということが言えた 場合は、これは事業者の責任になってしまうわけです。したがって、それをい かに事業者はきちんと早く押さえて、そして早く対処してほしい、ということ。 そういったことで腹囲をきちんとしてほしいということなのです。BMI、腹囲 で内臓脂肪が分かるかというと、残念ながら今までのデータ、先ほども説明が ありましたが残念ながらできないのです。BMIが25以下だって、内臓脂肪が 非常に高い人、そういった人は脳・心臓疾患を起こしているわけなのです。し たがって、やはり内臓脂肪をきちんと測って、それでやっていただきたいとい う要望であるわけです。  もし、きちんとした対処法がないまま生活習慣病が非常に強い人であっても、 それが作業関連疾患ということになった場合、別に安衛法の項目の中に入って いなくても、やはり司法は、それは企業がきちんと安全配慮をしなかったとい う判断を、おそらくするだろうと思うのです。しかも、これだけメタボリック シンドロームが有名になってきているにもかかわらず、そういったことに着目 してどうして予防しなかったのだと、逆にそういうふうになっていく可能性が、 私自身はあると思うのです。  したがって、この辺のところできちんと、基本的に、現在いちばんいい方法 と考えられているもので、企業は作業関連疾患をきちんと予防してほしいと。 作業関連疾患のないような人は、そこで腹囲を測って、途中のいろいろな項目 で、この人はもういいでしょうとなってしまうわけです。しかし、生活習慣病 が重くて、ほんのちょっとしたことで脳卒中を起こしそうな人であったら、そ れがもし作業によってきたということになれば、それをいかに防いでいくか。 そのためにはどのような方法がいいか、そのためにメタボリックシンドローム 的な考えがいいのだと。そういうことで、それをきちんとやっていけば、事業 者として安全配慮義務をしなかったということは追求されないと思うのです。 ○加藤委員 いま座長が言われることはよく分かります。我々が心配している のは、先ほど部長も言われましたが、要は、今までいろいろなことをやってき たからいいではないかということよりも、作業関連疾患はILOやWHOでも国 際的に定義されているものです。ところが、私が元いた会社は全世界に工場を 持っているのですが、世界的にはあまりないのですね。日本以外はあまりやら れていない。それは個人の問題と企業責任のところが分かれているからではな いかという気がするのです。 ○分科会長 外国では、例えば過労死の問題であったとしても、いろいろな外 国へ調査に行きましたけれども、過労死って何ですかと言われるのです。そう いった関心は全くなくて、外国では、確かに労働者は、とにかく自分で自分を 守りなさいと。それで企業は、その労働力に応じて賃金を払って人を雇う。そ ういったことだけです。したがって、そういった労働文化といいますか、日本 の労働文化と外国の労働文化は全然違うと思うのです。  日本では安衛法の体系とか、そういった考えで日本労働文化は、きちんと検 査をして、そして守りましょう、過労死も防ぎましょうという方向に現在進ん で、それが社会的にも認められている日本の労働文化なのです。ところがアメ リカでは、この前ちょっと話をしましたが、定期健診などはほとんどやってお りません。これは労働文化が全然違うわけです。したがって、外国では作業関 連疾患などはほとんど問題にならないです。そういった違いだと思うのです。 ○松井委員 分科会長がそのようにおっしゃってくださったので、申し上げま すが、ならば、なぜ安衛法で今回新たに分科会長が言われるようなことを規定 しなければいけないのか、その部分を十分議論したのかどうか疑問であるとい うことを改めて申し上げたいと思います。と申しますのは、今回の枠組みとい うのは、医療保険者に対して生活習慣病予防というものを義務付けて、それに よって医療保険者に対して後期高齢者支援金の±10%を行うという仕組みのも とに考えられたものがベースになっていると思うのです。そこをメタボリック ドミノという観点で、当然のように事業者が生活習慣病の予防を罰則付きでや るものだという考え方そのものについて、私どもとしては、まず、異を唱えて いるのだということは、何度申し上げても理解してもらえてないのだと思いま す。それは分科会長からすれば、何度言っても、この素人は医学的なことは分 からないのだということと同じだと思います。まず、そういう意見を申し上げ ておきます。  そういうことからすると、検討会での議論としては、新たに医療保険者に対 する義務付けがおきたこととの役割分担をどのようにするのかということは、 十分考えられていないのではないかというのが私どもの意見です。  それともう1つ、私、いま理解力が特に落ちているのでもう一度確認をした いのです。先ほど2枚目の説明で748名のデータについては、男性と女性、腹 囲、BMIでそれぞれ相関係数が書いてあります。この相関係数というのは、748 名については、男性は腹囲について0.68で、BMIについては相関係数が0.61 と読めばいいのか。女性については、腹囲が0.65、BMIについては0.63と読 めばいいのか。そして、統計的にこれを見たときに、それほど差がないのでは ないかと思うのですが、それが間違いかどうかを教えてください。  それから、1,193名については違う結論であるというような説明があったと理 解できたのですが、その1,193名のうち748名だと思うのですが、これだけの データをもってしても、それなりに違う結果が出てくる場合について、何であ る程度一定の基準が出たという理解に達することができるのか、最後の結論が 分かりません。先ほどは1990年代以降さまざまな指摘があったという説明だけ ありましたので、ここの統計の読み方だけをもう一度、正確に教えていただき たいと思います。事務方から回答してください。 ○労働衛生課長 本来医療保険者がやるべきものが事業者のほうにやるように なっているのではないか、あるいは、医療保険者と事業者との役割分担ができ ていないのではないかというご指摘ですが、これはそもそも健康局の検討会で、 4月に標準的な健康保険指導プログラムの暫定版が示され、その中に健康診断項 目が入っていたわけです。この健康診断項目について労働者の脳・心臓疾患の 予防に役立つものであるだろうかと、そういったことから労働安全衛生法上ど のように取り扱うべきかということがありましたので検討を始めたということ です。検討会の結果では、労働安全衛生法上必要なものであるという結論をい ただいたものです。  また、役割分担ができていないということですが、一応高齢者医療確保法に は、医療保険者はその事業者に事業者健診の結果を求めることができて、事業 者はその求めがあった場合は医療保険者のほうに提出するという規定があるわ けで、全くないわけではありません。  この検討会報告書の中にも三者の役割分担について再検討することもあるの ではないか、というご意見が出ておりますので、それについては、実施してい く必要があるのだろうと考えている次第です。  2点目のデータですが、参考のところにあるデータですが、これは内臓脂肪と 腹囲の相関係数が男性で0.68、女性で0.65ということです。男性で内臓脂肪と BMIの相関係数は0.61、女性で0.63ということです。1,193名のうち748名で、 我々直接解析をやっているわけではありませんので、結果的に見ると、対象者 が違うので結論も違ってきたとしか言えないわけです。少なくとも1,193名の データでは、BMIと内臓脂肪との面積、これは男女合計ですが、相関係数が0.54 であったと。それが748名で見ると、内臓脂肪とBMIの相関係数は上がってい ると。これは対象者が違うとしか言えないわけです。  いずれにいたしましても、1,193名のデータで見ると相関係数0.54というこ とで、あまり強い相関ではないということ。あとポイントとしては、BMI25以 上の方に限りますと、BMIと内蔵脂肪面積とは相関関係は認められなかったと いうこと。さらに先ほど申しましたように、1990年代から既にBMIより内臓 脂肪がいいと、内臓脂肪の測定としては腹囲がいいというデータなり報告があ りましたので、そういうのを総合的に判断すると、相関係数というのは、単に 数字が高ければいいということではありませんで、その相関係数の意味すると ころも十分に勘案した上で、総合的にどの相関係数を使うかということもある と思いますので、それを総合的に判断して、内臓脂肪と腹囲の相関係数が最も いいと。数字もそうですし、内容的にもそうだということで、そういうように されたと考えております。 ○生活習慣病対策室長 松井委員のご懸念は、要するにBMIと腹囲で、お互い に使えるように見えるのではないだろうかというご懸念だと思うのです。基本 的なメカニズムの話をさせていただきますと、心血管疾患に影響がある、要す るに生理活性物質が出てくるのは内臓脂肪からなのです。内臓脂肪から出てき ているエビデンスが明確になっているのです。それから、内臓脂肪から出てく る生理活性物質によって、先ほどの心筋梗塞などに影響があるという因果関係 があるということなのです。この言葉の使い方については専門の先生に確認し ました。因果関係はあると言っていいのかどうかと、BMIはありません。  内臓脂肪と心血管疾患は因果関係があるという流れの中で、どちらの指標が いいのかということで見ていくと、やはりBMIよりは腹囲のほうが、明らかに 上ですねということを言っているだけで、これはBMIが腹囲に代わることがで きるかどうかを言っているのではなくて、BMIよりも腹囲が明らかに先ほどの 因果関係からもそうですし、統計的にも明らかに有意であるということが裏付 けられている、ということがここに書いてあるわけです。 ○内藤委員 お話に口を差し挟んではいけませんが、現在、医学的な所見等に ついてのご回答は十分に厚生労働省の方々からいただいたと思うのです。私、 個人としては労働安全衛生法の改正に決して反対するものではありません。た だ、先ほどの松井委員、加藤委員のお話を伺って、同じ法律を学ぶ者として非 常に理解できる点がありました。  それはなぜかと申しますと、労働安全衛生法と申しますのは、いわば、国家 である国が諸企業体、あるいは事業者に対して、66条で健康診断の実施義務を 与えております。そうした義務付けに対して、一体、なぜこの法律がそこまで 対象を拡大するのかというご疑問であったと。その意味で加藤委員のご意見は 非常に聞くべき点があると思いました。  もし、できましたら厚生労働省側から労働安全衛生法の、例えば、第1条の 目的にあるような、労働災害の防止のための危険防止基準の確立、あるいは責 任体制の明確化ということとの関連で、なぜ法改正が必要かという点を、いま 少し詳しくご説明を賜れるならば、多分、ご納得いただけるのではないかと私 は考えた次第です。その点は法律学的には確かに、いわば医療保険者の義務付 けをなぜ労安衛法へもってくるのかという点についての、回答はまだ伺ってい ないように思いましたので、是非、お願いしたいと思った次第です。  第2点として、これは先ほどからというよりも、前回の会議から使用者側の 各委員が繰り返し、異口同音にご質問なさいます安全配慮義務の対象になるの ではないかという点について、個人的な考え方を申し上げたいと思います。労 働安全衛生法はもともと国家に対する企業体の、いわば公的義務を定めるもの です。安全配慮義務云々が問題になりますのは、あくまで労働者と使用者との 間の私的な損害賠償請求の紛争が生じた場合の問題になります。そのために、 確かに労安衛法で何か定められている義務に違反していた場合、そういった場 合に安全配慮義務を、いわば十分に果たしていなかったとみなされる可能性は ありますが、水平的な義務の問題と垂直的な義務の問題ですので、イコールで はありません。  次に、安全配慮義務の対象になるかならないかということは、その分野を研 究している者として、私自身も不勉強ですので見落としがあるやもしれません が、私の知る限り、例えば、健康診断をしているときに、何か重篤な障害とい いましょうか、疾病を見落とした、あるいは非常に難しい疾患であって通常の 健康診断ではなかなか引っ掛からなかった。例えばの話ですが、これはある保 険会社でそういった事件が起きていたと記憶しているのですが、非常に難しい 所の癌を健康診断では引っ掛からなかったのだと思うのです。それについて労 働者側が使用者側の責任だと言った場合に、果たしてそれが安全配慮義務違反 で損害賠償請求につながるだろうか。非常に簡単な言い方をさせていただきま すと、もともと損害賠償とは、ある事象なかりせばその損害は起こらなかった であろう、ということをいうものでありますので、私が思いますに、こういっ た健康診断によって何かある疾病が引っ掛からなかった、それをチェックでき なかったことによって、使用者側が責任を問われるというケースは極めて少な い。  前回、分科会長が、すべて判例までご覧いただいたとおっしゃいましたが、 私の知る限り、多分、それで使用者側の責任を安全配慮義務違反であるという 形で認めたものは、未だにないのではないかと思われます。不勉強なので1、2 例見落としがあるやもしれません。そう考えますと、将来、例えば状況が変わ りまして10年、20年経ったときの安全配慮義務がどのような姿になっている かは、これは生きものであって流動的ですので分かりかねます。ただ、この時 点において労働安全衛生法の義務は、例えば66条の義務として1項目増えたと して、それについて即座に安全配慮義務違反であるという形で紛争が頻発する かと問われたならば、私は、まずそんなことはないのではなかろうかと考えて おります。長くなりまして大変失礼をいたしました。 ○分科会長 どうもありがとうございました。では、どうぞ。 ○安全衛生部長 内藤委員から安全配慮義務について非常に明確なご意見をい ただきました。我々も同じような考え方だと思っているのですが、もう1つそ の先に、要はメタボリックとしての医学的知見、保険者としての義務について は説明があったのですが、労働安全衛生法上、なぜそれを義務付けなければい けないのかということについての明確な回答ということで。そこは先ほど加藤 委員がご質問のあったときに、お答えをしたという認識だったのです。結局、 先ほどの報告書の3頁に戻るのですが、ここに書いてある最初の4行、まさに これが作業関連疾患の定義です。これは通常、私病の問題だけではなくて、ま さに業務による過重な負荷が加わることによって脳・心臓疾患が増悪する、と いうことを作業関連疾患として書いています。  ここの最初のところから、この検討会は労働安全衛生法上、つまり高齢医療 法で保険者に義務付けられたので、なぜそれを労働安全衛生法上で取り入れて いくのか、あるいは、どういうように告げたらいいのかということを、まず、 この検討会で議論いただきましょうというところから始まったのです。ですか ら、ここに書いてあるすべてが労働安全衛生法上の位置づけとしてどう扱った らいいのかという回答になっているのだと思うのです。いま申し上げたように 作業関連疾患はこういうことだと、その作業関連疾患のリスクが、まさに、こ の肥満と高血圧、高脂血症、高血糖の4つを合わせ持つことによって非常に高 まってくるという医学的知見が明らかになったのだと。  今までは、肥満の指標としては、労働安全衛生法の世界ではBMIを規則の51 条別表5、様式5号ということで、健康診断項目は多数ありました。これはBMI 以外にも血圧、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図とか、さまざま な測定を、ここに健康診断個人票というものがありまして、ここに記載してい ただくと。BMIについても、その中の1つとして記載をしていただいて、そこ の全体の項目を医師が評価をする、診断をするという項目があります。医師の 診断に基づいて医師が意見を述べる。その意見というのは、様式5号の中に書 いてあるのですが、「健康診断の結果、異常の所見があると診断される場合に就 業上の措置について医師の意見を記入する」という形になっております。いま の体系の中ではそういうことが行われているということでありました。  それで今回、肥満の指標として、先ほど来ここは説明されておりますのでわ ざわざ説明する必要はないと思いますが、腹囲というもの、これは特に内臓脂 肪の代理指標として、そういうものと脳・心臓疾患のリスクとの間に非常に関 連性が深いと。先ほど来説明があった報告、いわゆる知見というものが出てき た。そういうことで、腹囲を測ることによって、作業関連疾患である脳・心臓 疾患の発症率の把握はより正確にできるようになってきた。これは私病の世界 ではなくて、まさに職域の世界の問題としてそういうことが言えるだろうと。 これは内外にわたる知見として確立されています。ですから、ここまでがすべ て、何故安全衛生法上で腹囲を測定する必要があるのか、という理由になって いるのではないかと。したがって、個々の労働者についても、従来から取って いた血圧、血中脂質、血糖と合わせて腹囲を測定することで、医学的知見に応 じた、作業関連疾患である脳・心臓疾患の予防をすることは可能となる。した がって、安全衛生法上も、腹囲を測定していただくことが必要なのだと。  ただ先ほど、安全配慮義務との関係でいろいろ、ヒアリングのときに経営者 側からも、検討会の中で、そこはどうなのだというご疑念があったのです。で すから、そこについては、いままで保存様式の中で、経緯のBMIというだけで、 事後措置を求められることはなかったということなので、同じように、腹囲だ けで事後措置を行う必要はないと書いてある。安全配慮義務の所は先生がおっ しゃったとおりだと思います。そういうことで、一応お答えはしたつもりです。 ○三浦委員 ちょっと疑問なのですけども。労働者の方がメタボリックになっ ている中で、会社より、食事制限とか、運動するようにという押しつけをする と、労働者側の方からすごい反発があるのではないか。そうなると、衝突の発 生の可能性も出てくるのではないか、と私は思います。ですから、指導とかそ の辺の責任まで、そこまで会社がしなければいけないのかどうか、その辺を教 えていただきたいと思います。 ○労働衛生課長 事務局からお答えいたします。先ほど来出ております事後措 置の中で、食事制限とか、あるいは運動しなさいとか、就業上措置で、そこま でやるような内容ではないと考えています。ただ、保健指導という、事業者が 行う努力義務の中で、食事・運動についても、あくまで事業者が医師にやらせ るわけですが、実際の保健指導の中で医師がそういった指導をすることはあり 得ます。なおかつ、別途、今度は特定保健指導という高齢者医療法に基づく保 健指導が行われて、そうなると、当然食事とか運動の指導はなされると考えて います。いずれにしても、ご心配いただいている事後措置について、お話があ ったような、食事制限とか、運動しろとか、そういったものはなされないと考 えています。 ○山崎委員 本当に初歩的な質問なのですけれども。これはいろいろな調査結 果によって85とか90という基準ができてきたと思いますが、プラスマイナス はないですね。これによって、一律にこういう規定でいいのかどうか。という のは、人は体格も違う、筋肉質の人もいるし太った人もいるし、それから、年 齢差もあるし、いろいろ違いますね。そういうことで、体格・体質等にかなり 違いがあるのに、単純に一律のものでいいか。例えば84、89ならどうなのだと、 そこになったらメタボリックシンドロームと診断されないのかと、そういう単 純な、初歩的な質問です。 ○生活習慣病対策室長 あくまでも、内臓脂肪の面積、おへその位置の断面積 が100cm^2というのは、10cm×10cmの大きさです。それを超えるだけ内臓脂 肪がたまることによって、論文にあるように、リスクが増えるのです。その100 cm^2に相当する腹囲を測ると、男性が85で女性が90ということで、身長が高 い人はどうなのかというお話もあったのですが、そこの所はそんなに関係がな くて、むしろおへその位置の断面積でそれを代表できることになっています。 ですから、男性の場合にはおへその位置の内臓脂肪の量でホルモンの分泌が変 わってくる、要するに、アディポネクチンと呼ばれるいいホルモンが減って、 他の悪いホルモンが増えてくるということが出てきているので、その所が基準 になる。それが腹囲でいう、男性は85cm、女性は90cmということです。 ○山崎委員 それはまったく同一の基準でいけるものなのですか。 ○生活習慣病対策室長 これはまた、将来的にどうなのかというのは、医学の 進歩で変わり得る可能性がありますが、現段階でエビデンスがある論文は、科 学的に根拠があるのはその基準だと。よく勘違いされるのですが、薬を飲んだ り治療をする基準ではなくて、これを超えたら内臓脂肪を減らしたほうがいい という基準です。 ○豊田委員 データの中で、1,193名というのが議論されているのですが、普通 に考えると、母集団が小さ過ぎはしないかと、それから、例えば男性554名、 女性194名と書いてありますが、かなり重要なことを議論していますね。そう いった意味では、普通は層別整理がなされて然るべきだと思いますが、それは どうなのでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 これは日本内科学会をはじめとする8つの学会が、平 成16年4月から平成17年4月まで、1年間ご議論していただいたのです。そ の1年の間に出てきた、科学的な根拠がある論文ということで、平成17年4月 に出して、過去1年間ずっと調べたときの科学的根拠があるのはそのときのデ ータだった、ということが根拠になっています。また、将来いろいろな意味で、 科学的にデータが集まってくるということがあれば、可能性としてありますが、 その時点ではこれだけの症例数で根拠として十分足り得たわけであります。 ○松井委員 反対に教えていただきたいのですが、こういうデータを集めた所 で、職域で行ったものはあるのでしょうか。何故そういうことを質問するかと いうと、これはおそらく研究でやられていることで、協力してくださる方も積 極的にやってくれるのだと思います。ただ、仮に安衛法において、義務付けと いうことになりますと、これは逃げることができないというか、まず事業者に 対する義務として、それをやらないと罰則がついて回る、そういう仕組みにな っていることはご承知のことと思います。要するに、誰でも喜んで受けてくれ るような仕組みかどうかということと、それを実際にやってネガティブな反応 が起きたとき、事業者としてきちっと対応しできるかどうかという懸念もあり ますので、職域で行って、何か問題が起きたケースがあるのかないのか、そこ ら辺を教えていただきたいのです。 ○生活習慣病対策室長 ここではそういうふうなことではなく、あくまでも日 本人のデータですので、いろいろな方が入っていると思います。たまたまそこ で、データを集めた医療機関に来た方々のデータが基になっておりますので、 先ほどから繰返しになりますが、あくまでも内臓脂肪の量に着目して、断面積 で測って、100cm^2の所で、データがどうだったのかということで、リスクが 増えたのか減ったのかとか、そういうことを分析している論文です。 ○松井委員 すみません。前回ご質問したのですが、今日はまだ労働側から一 言もないので、確認をしたいと思います。今回、いま議論されていることは、 仮にこういう腹囲等を安衛法に義務付けるとすると、全員きちっと測るとなっ ていることについて、どのように考えるのか。また、省令事項ではないと思い ますが、問診の項目に喫煙歴を明記することを徹底することが、検討会報告書 で示されています。私は、健康診断の項目に入ったとしても、本来、産業医が 知っているべきことと、事業者が知るべきこととの違いがあるべきだと思って います。しかし、日本の職場の場合、なかなかそういうことにはならないケー スもあって、少しでも注意を喚起するために、たばこを吸っている人について は、心臓疾患に陥りやすいからやめたほうがいいということも、事業者として いろいろ言わざるを得ないようなケースも起きてくると思います。  もう1つ重要なことは、腹回りを測ることです。仮にスクリーニングの仕方 によっては、その中で基準に引っかかりそうな人は、今年から健診はやめたと か、そのようなことにはならないと思いますが、少なくとも私どもが聞いたヒ アリングの範囲では、測られるのはあまり好きではない、そういう社員がいる と聞いております。労働側として今回、こういうものについてどのように考え るのか、率直なご意見をお聞かせ願えればと思います。 ○中桐委員 審議会ですので、使用者側から意見を求められて、答えなければ いけない義務はないと思いますが、せっかくこういう議論をするわけなのでお 答えいたしますけど、前回の議論とあまり変わっていないわけですね。それで、 同じことを何回もおっしゃっている。それも論点がいろいろ広がっているだけ でして、はっきり申し上げて、こういう時間が必要なのかというのは私の立場 ですけども。  ご指摘が腹囲の問題ですが、全員にやるわけではないですね。報告書はそう いうふうに書いています。ですから、全員に、女性も含めてすべての人にやる わけではない。見ればわかりますし、今回ご指摘のあった料金の問題も含めて、 お金のかからない方法でというのも入っていますね。そういうフレキシブルな ものがあるということで。いまでもそうでしょうが、絶対健康診断を受けない 人がいます。逃げ回る人がいます。労働組合は、それは問題だと思います。で すから、各事業所で、安全衛生委員などが、受けてくださいと説得することは あろうかと思います。  そういうことと同じようなことが、腹囲のときに起きることもあると思いま す。やはり、それは説得するしかないのかと。だからといって、男女で分け方 はまずいと思いますが、絶対いやだからということで意識する人もいると思い ます。やはりそれは説得するしかないと。それを強制して、従業員を直接つか まえて来て、君、何で受けないのだ、ということでいろいろ言うことはいき過 ぎだと思いますが、それはあくまでも、推進委員なり安全衛生委員会のメンバ ーなり衛生のスタッフがするということでいいのだと思います。それについて はいま、そんなに懸念はないです。ですから、通常起こっていること、最初は ちょっとあるかもわかりません。しかし、40歳以上とかいろいろな、全員にや るというわけではありませんので、見てもわかりますし、その辺はいろいろな 対応ができると思います。  それから、喫煙の問題ですが、実はいまでも問診でやっていますね。自分で 書きますけども。それをきちんと書いてねという程度でして、書いてあるから、 書かせるからどうなのだということで、労働者が怒ってくることはまずないと、 いまでもそんな話はあまり聞いたことはありません。ですから、そこは違うと 思います。  先ほどから説明がありますが、いま何が問題かと言えば、過重労働の問題、 過労死の問題なわけですね。それを防ぐために100時間のこともやっています。 それに追加をして、死の四重奏の方々がよりハイリスクなので、それをもう少 し精度の高い健診方法で見つけようということについて、労働者のほうから、 けしからんと言われることはないと私は思いますし、今後もそういう努力はし ていかなければいけません。また、この検討会の報告書の中には、いちばん最 後に、「時間をかけて慎重に検討すべき問題もあります」という指摘をしていま す。ですから、これはあくまでも専門家の検討会がこの間の議論をまとめて、 この審議会に提出をしたということで、この後、一応これで議論がおしまいか と言えば、そうではなくて、私のほうも主張しておりますが、健康診断のあり 方について、定期的に見直しをしていくことは必要だと指摘していますし、そ ういうことはおっしゃっています。いまの知見で、これがもっとも有効だから ということで、検討会のほうは報告書の中で指摘するわけですから、明らかに すごい問題があると言うならば、それはやめるべきだと思いますが、いま見て いて、さっきも説明したとおり、個々の問題ではないと思います。  それから、大分いろいろな意見があったので、ご理解いただけるかと思いま すが、安全配慮義務と自己保健義務の問題について、個々のケースですから、 ここで議論できる話ではないわけですね。事業者はどれだけの努力をしたか、 また、労働者がどれだけ、例えば、健康診断で指摘されたことを守らなかった かについて、一般論で言えないと思います。個々の問題だと思いますので。そ れについて、今後できるであろう、労使が参加できるような検討会で、円滑な 実施をしていくにはどうしたらいいのだという中で、この問題もそれぞれの懸 念を出し合えるのではないかと思います。ですから、もう1回ぐらい審議会が あろうかと思いますけども、今日のお話で、使用者側の皆さんのご心配も大分 解けたと私は思っているのです。これでおしまいという議論ではなく、まずこ の報告書についてどうだということで、一応区切りをつけていただければと思 います。でないと、延々とこんなことをやっている場合ではないと私は思って います。議論は大体出つくしているのかと。答もそれぞれ出ておりますので。 それでも、絶対納得いかないという点があるならば、次回もあろうかと思いま すから、出されるのは結構ですが、前回と今回の参加されている方がちょっと 違いますが、議論としては同じことを言っているとしか思えないのです。こう いう時間になってしまいましたが、それを妨害する気はないので、時間いっぱ いご懸念を事務局にお聞きになればいいと思っています。以上でございます。 ○分科会長 どうもありがとうございました。大体議論も出たような気がいた しますが、いかがでしょうか。 ○加藤委員 確認なのですが、今回の法改正というのは、企業にメタボリック 対策を義務づけるのですか、過労死対策を義務づけるのですか。 ○分科会長 過労死対策です。それにはメタボリックシンドロームの考え方と、 その方法がいちばんいいということです。 ○加藤委員 あと、新聞とか何かを見ると、肥満も企業責任という記事が出る 時代になってきたのですね。これがいいか悪いかは別として、我々はそういう のが独り歩きするのを非常に心配しているわけです。 ○分科会長 非常に間違っていると思いますね。 ○松井委員 いま加藤委員からありましたように、安全配慮義務の拡大という 懸念については、いま分科会長が明解にお答えになられましたけれども。もし かして入れてなくてもなるのかもしれませんが、裁判とか一般的な場に行くと、 こういうものも会社がよく見ていなかったではないかと言われることについて、 労災の認定よりも非常に厳しいものが求められる可能性は、私どもとしては否 定できないという懸念を持っていることを是非ご理解賜りたいのです。ですか ら、もう1つ言いたいのは、85、90といっても、やはり幅があるものだと、世 の中によく認識されていないと困りますし、産業医の先生方はそういうことを 勉強されると思いますが、必ずしも一律的に決められているものとすると、な かなかそこまで判断がつかなくて見てしまうケースもあるのではないかと、そ ういう懸念があることを申し上げておきたいと思います。 ○分科会長 いまの産業医はかなり勉強しています。85だったら、これは危な いからすぐ作業をやめさせるなどという産業医はいないと思います。その辺の ところはちゃんと医学的に勉強していると思います。85というのは1つの区切 りであって、それでもって、その後、どのぐらい血圧が高いとか、そういうこ とによって、どのような対策をするかというのが本来の筋であるわけですから。 ただ、先ほどから松井委員は、最後の相関係数のことを理解されていらっしゃ らないと思うので、簡単に説明しておきます。  この論文のいちばんの趣旨は、要するに内臓脂肪が非常に重要であって、BMI ではそれは捉らえられないと言っているのです。たまたま相関係数を測ったら こうだったというだけのことで、他の方法はいっぱいあります。例えば、これ が相関係数を出しているときの図ですが、この相関係数は線形で出している、 直線で出しているから、実際にどういう分布をしているかというのは、非線形 なのです。したがって、線形でやれば相関係数など全然低くなってしまうので す。だから、本当は非線形で検定しなければいけないのを線形でやっていると いうことです。BMIの場合は、内臓の脂肪と身体の脂肪は大体比例するから、 線形でやればきれいに出てきます。ところが、内臓脂肪の場合はそうはいきま せん。ですから、本来であれば非線形の、カーブによる検定をやらなければい けない。そうすれば、相関係数がすごく高くなると思います。その辺の所を理 解しておいてください。他に何かありませんか。  大体議論は出つくした感じですので、次に、「労働安全衛生規則の一部を改正 する省令案要綱」について議論したいと思います。それを配布してください。  本件は、厚生労働大臣から労働政策審議会会長宛ての諮問案件でして、これ を受けて、当分科会において審議を行いたいと思います。事務局から説明をお 願いします。 ○局長 本日の諮問案件は、「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」 です。前回の分科会から引き続いて、「定期健康診断等に関する検討会」の報告 書についてご議論いただきましたが、いまご諮問する省令案要綱につきまして は、検討会報告書の内容に基づいて、労働安全衛生規則について所要の改正を 行うというものです。詳細については担当から説明させますので、よろしくご 審議いただきたいと存じます。 ○労働衛生課長 それでは、諮問についてご説明いたします。1枚めくると別紙 というのがありまして、諮問の内容でございます。「労働安全衛生規則の一部を 改正する省令案要綱」ということでお願いしているのですが、まず第一、雇入 時の健康診断及び定期健康診断の項目について、次のように改めるということ で、まずは1つ、腹囲の検査を追加すること、あと、血清総コレステロールの 量の検査に代えて、低比重リポ蛋白コレステロール(LDLコレステロール)の 量の検査を定めることです。なお、補足ですが特定業務に従事する労働者に行 う特定業務従事者健診、これは労働安全衛生規則の45条ですが、あと、海外派 遣労働者の健康診断、これは同45条の2ですが、これらについては定期健康診 断の項目を行うこととなっており、これらの規則を改正することではないので すが、そういった条文がありまして、定期健康診断の項目をこれらの健診でも 行うことになること、あともう1点、補足ですが、検討会報告の中には、腹囲 の省略基準を35歳を除く40歳未満等にすることが妥当としていますし、あと、 尿糖の省略基準の削除というのがありましたが、これらにつきましては、厚生 労働大臣が定める基準を定める告示と、こういったものの中で示す予定にして おりまして、告示なのでこれらは提案していません。これが第一関係でござい ます。第二に、施行期日等ですが、この省令は平成20年4月1日から施行する ということ、2点目ですが、この省例の施行に関して必要な経過措置を定めると いうことです。これは罰則に関する経過措置でして、いつものパターンのもの で、この省令の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の 例によるということを書くというものです。以上でございます。 ○分科会長 はい、どうも。ただいまのご説明について、ご意見とかご質問が ありましたら、どうぞご自由にご発言ください。 ○松井委員 労働側から繰返しと言われるかもしれませんが、この項目につい て、このように安衛法の規則に腹囲を追加することについては、やはり納得し かねるという気持をまず表明させていただきます。もし事業者側として協力で きるとするならば、これは高齢者医療確保法に基づく事業者側の協力義務とし てやるとか、そういう考え方がとれないものかと考えております。確かに、診 断をするのに、分科会長は、医学的知見ではいいということを何度もおっしゃ っていますが、それは相当手前のものまでも会社側の責任で診断をする項目に なりますし、私どもとして、もう1つ懸念をするのは、仮に男性が85を超えた ら、その場合は自動的にそれで有所見と見てしまうものなのでしょうか。そこ でいくと、特に中高年などの有所見率は既に高い状況にもなっていますし、そ れでなおかつ二次健診を、本当に診なければいけないのかどうかとかいう疑問 があります。先ほど分科会長は、産業医はよく勉強しているから、それだけで 見ませんよというおっしゃり方をするならば、それだけでは見ないというもの について、では何故そこまで項目に入れるのか。もう1つ、有所見かどうかの 判断は二次検診のほうにも関係してきますので、そういう問題については既に 整理がなされているのでしょうか。 ○分科会長 1つは、現在でもまったく同じことですが、BMIでどうこうとい うことは一切していません。ただ、それを基にして、その他、血圧とかコレス テロールとか、そういうデータを見て、それで産業医は判断するわけですから、 腹囲が85以上あったら危ないと、そういうことは一切しないと思いますし、医 学的に見てできない問題で、そんなことをする産業医はいないと思います。や はり血圧とかそういうのを見てやるということと、腹囲を測るのとBMIを測る のでは、腹囲を測るほうが遥かにいい結果を与えると。しかも、何回も説明し たように、メタボリックドミノの問題とか、そういうことのいちばん上流にあ るのが腹囲であるわけですから、やはり腹囲を外してしまうとそういった理論 が成り立たなくなるし、検査のこともよくわからなくなってしまうことがある わけですね。したがって、そういった心配はまったくないと考えております。 ○中央労働衛生専門官 労災の二次健康診断給付の件ですが、この件について は、我々の分科会の結論を得てから検討すると聞いております。 ○分科会長 他にございませんでしょうか。他にご発言がなければ、本日はこ のぐらいにして、次回、本分科会としての結論を出す方向で、引き続きご議論 をいただくこととしたいと思います。では、次回の日程について、事務局から お願いいたします。 ○計画課長 次回の日程でございますが、4月25日水曜日、午前11時から開 催を予定いたしております。いろいろ日程を調整して、この4月25日11時と させていただきましたので、定足数の関係もありますので、ご出席方、よろし くお願いしたいと思います。 ○分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。議事録への署 名は眞部委員と松井委員にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いい たします。  皆さん、本日はお忙しい中ありがとうございました。 照会先:労働基準局安全衛生部計画課(内線5476)