07/04/04 医薬品等安全対策部会安全対策調査会 平成19年度第1回議事録 平成19年度第1回薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録 日時 平成19年4月4日(水)16:00〜              場所 グランドアーク半蔵門4階「富士西の間」 ○事務局 ただいまより、「薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全 対策調査会」を開催いたします。本日の会議は公開で実施していますが、カメ ラ撮りは議事に入るまでとさせていただいておりますので、報道関係の方々に おかれましてはご理解とご協力のほど、よろしくお願いいたします。また、傍 聴者の方は、傍聴に際しての留意事項、例えば「静粛を旨とし、喧噪にわたる 行為はしないこと。座長および座長の命を受けた事務職員の指示に従うこと」 などについて、厳守していただきますようお願い申し上げます。御出席の先生 方には、御多用のところお集まりいただきありがとうございます。開催に際し まして、厚生労働省大臣官房審議官黒川の方から御挨拶を申し上げます。 ○審議官 厚生労働省大臣官房審議官の黒川と申します。本日は、本来であれ ば医薬食品局長の高橋がまいりまして御挨拶申し上げるところでございまし たが、国会等の用務でどうしてもまいれません。代わりまして、私が御挨拶申 し上げます。  本日は、安全対策調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうござい ます。タミフルにつきましては、今年の2月に入り、タミフルを服用したと見 られる中学生が自宅で療養中、転落死されるという痛ましい事故が2例報道さ れました。このようなことから、万が一の事故を防止するための予防的な対応 として、特に小児・未成年については、インフルエンザと診断され治療が開始 された後は、タミフルの処方の有無を問わず異常行動発現のおそれがあること から、自宅において療養を行う場合、異常行動の発現のおそれについて説明を すること。それから、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が1人に ならないよう配慮することが適切と考え、2月28日、その旨を患者家族に対 し説明するよう、インフルエンザ治療に携わっておられます医療関係者に注意 喚起をいたしましたところであります。  このような予防的な対応を行ってまいりましたが、3月20日にタミフルの 服用後に12歳の患者が2階から転落して骨折したとする症例が報告されたこ と。これなどを受けまして、10歳以上の未成年の患者においては、その患者 さんの合併症、既往歴などからハイリスク患者と判断される場合を除いては、 原則として本剤の使用を差し控える旨の緊急安全性情報の発出等の措置を講 じたところでございます。  これまで、薬事・食品衛生審議会においては、タミフルの副作用に関し、他 の医薬品と同様、医薬品ごとの副作用名別の件数データを御報告した上で、死 亡症例について個別に検討をお願いしてまいりました。しかしながら、死亡に 至らなかった事例について、詳細な調査が行われていないなど、分析において 不十分な面があったことは否めないことから、今般これまでのタミフルのすべ ての副作用報告を改めて精査し、現データに当たって異常な行動と思われる事 例などについて再整理を行いました。  本日はその結果を報告いたしますので、当調査会におきましてはタミフルの 服用と異常行動、突然死などとの関係、これらの点につきまして症例の検討を いただくとともに、現在講じている措置や今後必要な取組みなどについて、先 生方の専門的な見地から、幅広く忌憚のない御意見をいただきたいと考えてお ります。国民の関心も極めて高いものがありますので、よろしくお願い申し上 げます。 ○事務局 続きまして、本調査会の委員および参考人の先生方を御紹介させて いただきます。本日はタミフルに関する検討を主題とすることから、調査会に ついては松本座長をはじめとする調査会の委員に加えて、参考人としては感染 症、小児科領域などの有識者にお越しいただいております。また、本日御参加 いただいたすべての先生方には、タミフルの製造販売業者である中外製薬との 関係で、事務局より事前にタミフルの承認、2000年12月以降、中外製薬より 寄付金または委託研究費を受けていないこと、タミフルの治験に関与していな いこと、また2000年12月以降、中外製薬の治験に関与していないことについ てお尋ねしており、これらについて実績がないことを確認させていただいてお ります。  資料の3ページで、委員名簿の上から順に御紹介させていただきます。東京 医科歯科大学薬剤部長の土屋先生、国立医薬品食品衛生研究所薬理部長の中澤 先生、国際医療福祉大学臨床医学センター教授で調査会座長の松本先生、総合 母子保健センター愛育病院産婦人科部長の安達先生、社団法人日本医師会常任 理事の飯沼先生、東京都立豊島病院院長の一瀬先生、東京都立駒込病院アレル ギー膠原病科部長の猪熊先生、国立精神・神経センター国府台病院院長の浦田 先生、国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部先生、国立国際医療セン ター名誉総長の鴨下先生、国立国際医療センター国際疾病センター長の工藤先 生、納得して医療を選ぶ会事務局長の倉田先生、社団法人日本薬剤師会副会長 の児玉先生、国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部第三室長の新見先生、公立 学校共済組合関東中央病院皮膚科部長の日野先生、明星大学理工学部教授の広 津先生、東京医科歯科大学大学院教授の槇田先生、長野県立こども病院長の宮 坂先生、国立感染症研究所長の宮村先生、自治医科大学小児科教授の桃井先生 でございます。  続きまして、行政側の出席者を御紹介させていただきます。大臣官房審議官 の黒川です。医薬食品局審査管理課長の中垣です。安全対策課長の伏見です。 安全使用推進室長の山田です。医薬品医療機器総合機構安全管理監の川原です。 同機構安全部長の別井です。  それでは、これ以降の進行を松本先生にお願いしたいと思います。ここで、 報道関係者の方々におきましては、大変申し訳ございませんが、頭撮りはここ までとさせていただきます。よろしくお願いします。 ○松本座長 本日はお忙しい中お集まりいただきまして、本当にありがとうご ざいます。御案内のとおり、今日ビデオカメラが大変多いことからお分かりに なりますように、一般の関心が大変高い議題をこれから討議していただくこと になっております。黒川審議官もおっしゃいましたように、忌憚のない意見を 出していただき、多くの人に納得していただけるような提言ができればと思っ ておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。事務局から、本日の配付 資料の確認をお願いします。 ○事務局 お手元の資料を確認させていただきます。まず、本日の議事次第が あります。その裏のページには配付資料の一覧がありますので、2ページの資 料一覧を見ながら説明をしたいと思います。資料1「インフルエンザについて」、 資料2「医薬品の安全対策について」、資料3「タミフルの安全対策の経緯等に ついて」、資料4「タミフルの有効性・安全性について」、資料5「タミフルの 副作用報告の精査について」ということで、そこから枝番になって細かく分か れております。資料5-1「中外製薬からの副作用報告」です。さらに枝番があ り、資料5-1-1から5-1-5まで、5種類のものがあります。これは目の前にブ ルーのファイルで並んでいるものも含めての資料です。資料5-1「中外製薬か らの副作用報告」、資料5-2「医療機関報告の概要」、資料5-3「中外製薬から の学会で発表された文献等の研究報告の概要」です。資料6「タミフルの疫学 調査等について」、資料7「インフルエンザに伴う異常行動に関する論文等に ついて」、資料8「その他」ですが、枝番になっております。資料8-1「陳情書・ 要望書等」、資料8-2「添付文書」、資料8-3「インフルエンザ患者で見られた 精神神経系の異常に関する報告書」です。さらに別冊ということで、資料1-1、 1-2を一つに綴じておりますが、「中外製薬からの報告の概要」、「医療機関報 告の概要」です。当日配付資料として、「タミフル服用後の有害事象と因果関 係判定についての考え方についての要望」ということで、本日付けでいただい た資料です。  2ページの下で、右肩に※を付けてある資料は資料が大部のために、配付し ているのは委員限りということにさせていただいております。この資料につい ては、厚生労働省の情報公開文書室にて閲覧可能としておりますので、よろし くお願いいたします。 ○松本座長 配付資料については、よろしいでしょうか。 ○倉田参考人 会議に入る前に、この資料のことについて申し上げたいのです。 ひょっとしたら私の見落としかもしれませんが、この資料の中に被害者の方の 要望書はありますが、厚生省が被害者団体の方のヒアリング調査をしたような 結果は入っておりませんね。 ○松本座長 事務局、いかがですか。 ○安全対策課長 ここにお付けしているのは要望書ですので、今、倉田委員の おっしゃったような資料は添付しておりません。 ○倉田参考人 それですと、医療の提供側の方の資料ばかりで、受け手側の資 料がないというのは、不公平を感じるのです。とても残念に思いました。今後、 被害者団体の方のヒアリングをする計画もおありになると思いますが、是非早 い段階で調査をしていただきたいと思います。 ○松本座長 御検討のほど、よろしくお願いします。 ○審議官 事務局からお答えいたします。検討して、例えば参考人の方を公募 して、それで適切な場でお話を伺うということもあり得るかと思います。どう もありがとうございました。 ○松本座長 よろしいですか。本日の議事の進め方についてですが、次の3 点に集約できるのではないかと考えております。たくさんありますが、本日の 資料を御覧いただきながら、一つにはタミフルの安全対策に関して、今すぐに 対応すべきことは何かということ。二つ目には、逆に患者や国民の皆さんのた めに、今してはいけないことは何か、これが分かればいちばん良いかと思いま す。三つ目には、今後の宿題として何をやればいいかということになろうかと 思います。この三つを御検討いただければと思っております。  引き続き、資料1の「インフルエンザについて」ほか、本日の資料の内容の あらましの説明を事務局からお願いします。 ○安全使用推進室長 事務局から、配付いたしました資料の概略について説明 させていただきます。「議事次第」という紙の付いた資料が基本的な資料にな りますので、こちらを御参照ください。まず資料1の5ページになります。資 料1では「インフルエンザについて」ということで、インフルエンザに対する 治療法について、これは国立感染症研究所のインフルエンザQ&Aから抜粋を したものです。6ページですが、今日の治療指針から抜粋したものです。  次に、インフルエンザの患者数、死亡者数の推移ですが、7ページ以降です。 7ページの別紙1のインフルエンザ報告数は定点での報告数の推移ということ ですが、1999年から2005年まで、このような推移になっております。下の段 は報告数の実数ということで、年齢別になっております。  8ページは、インフルエンザ死亡者数の推移です。この死亡者数の推移につ いては、年代別にインフルエンザの発生数に従って動いていると思いますが、 患者の年齢別の分布が9ページにあります。10歳未満のところで、若干上が っているということと、50歳台、60歳台以降のところで大きく上がっている ということがお分かりいただけるかと思います。同じ9ページの下のグラフは 同じグラフですが、0〜29歳までのところを上下拡大したものです。  10ページですが、インフルエンザの死亡率について、人口10万人対の数字 でグラフに示しております。前ページのグラフと対応するものだと思います。 10ページの下のグラフについては、5歳から59歳までのところを拡大したも のです。11ページ・12ページは、各年次別のインフルエンザ死亡率について、 年齢ごとにグラフにしたものです。  13ページですが、インフルエンザ脳炎・脳症の発生について、研究班の報 告書から抜粋をした表です。下の方に、「インフルエンザ脳炎・脳症に見られ た異常な言動ということで、その1例を記載しております。以上がインフルエ ンザについてです。  次に、14ページから「医薬品の安全対策について」ということで、私ども 厚生労働省で行っている医薬品の安全対策の流れを説明しております。副作用 等の情報を収集して、それを評価し、また公表をする。さらに、評価の結果、 安全対策を実施するという流れです。  24ページに、これを簡単に示したポンチ絵があります。医薬品を使って副 作用等が発生すると、大抵、医療機関でそれを把握されるわけですが、そこか ら右の方に厚生労働省に直接報告をいただくルート、左の方の医薬品の製造販 売業者に情報が行って、企業の方から医薬品医療機器総合機構の方に報告が来 るルートと二つあります。それぞれ企業の報告が平成17年度で2万4,000件 余、医療機関から厚生労働省への報告が平成17年度で4,000件程度というこ とです。これらの報告についてはデータベースに入力をされて、厚生労働省と 医薬品医療機器総合機構の方で情報を共有化して、さらに調査・検討を行った 上、安全対策の企画・立案を行い、それを実施に移すということです。  資料3、25ページですが、「タミフルの安全対策の主な経緯」ということで、 これまでの経緯を簡単にまとめております。タミフルのカプセル剤については 平成13年2月に販売が開始されており、ドライシロップ剤については平成14 年9月に販売が開始されております。その後、平成16年5月に添付文書の改 定を指示して、重大な副作用の欄に精神・神経症状を追記しております。また、 平成17年7月には出血性大腸炎の追記を指示しています。それから、平成18 年10月には、厚生労働科学研究の「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状 況に関する調査研究」の結果を安全性情報に掲載をしております。平成19年、 本年2月28日にインフルエンザ治療にかかわる医療関係者に対して、「インフ ルエンザ治療開始の注意事項についてのお願い」を注意喚起させていただいて おります。  26ページですが、さらに本年3月20日に「緊急安全性情報」を医療機関に 配付をするようにということで指示をして、ここに記載のように、10歳以上 の未成年の患者においては「合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断され る場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること」等の内容で、添 付文書の改訂を行っております。  27ページから29ページにかけては、我が国と外国の添付文書の記載、特に 精神・神経系の事象に関する添付文書の記載について、比較をした表です。我 が国の添付文書については、今説明をしたとおりですが、米国においてはここ に仮訳と、29ページには原文を示してありますが、精神・神経系の事象を「使 用上の注意」の所にこのように記載をしております。括弧して、「(主に日本か らの)市販後報告により、インフルエンザ患者において、タミフル服用にて自 傷や幻覚が報告されている。これらは主に小児患者の報告である。これらの事 象への薬剤の影響については分かっていない。」というようにしており、さら に、「インフルエンザ患者の治療期間中は、異常行動の兆候について注意深く 観察すべきである」とされております。  28ページにカナダと欧州のものが書いてありますが、カナダについては米 国とほぼ同じです。欧州については、今、改訂の準備中ということで聞いてお りますが、有害事象の中に「タミフルを服用した症例で、痙攣や意識レベルの 低下、異常行動、幻覚、譫妄などの精神障害が報告されている。まれに、譫妄 による不慮の事故が報告されている。これらの症状は主に小児や青年期の症例 で認められている。痙攣や精神障害の症状は、インフルエンザ感染患者でタミ フルを服用していない場合でも認められている」というような記載になってお ります。  30ページですが、これは中外製薬が作成した資料で「タミフルの使用状況」、 全世界で約4,500万人、日本で約3,500万人に使用されたのではないかという ことです。ただ、参考として付けているのは、処方箋の枚数のデータから出た 数字です。若干、数字は異なっておりますが、処方箋の枚数からはこういう数 字になっていると思います。  31ページ、資料4です。この資料は、「タミフルの有効性・安全性について」 ということで、主に承認時のデータを簡単にまとめさせていただいたものです。 成人の治療に係る承認時、平成12年12月においては、国内で二重盲検比較試 験が実施をされている。それから、海外においてもプラセボ対照の二重盲検比 較試験が実施されており、ここに示すような成績になっているということです。  それから、平成13年12月の小児の治療に係る承認時ですが、国内では一般 臨床試験が行われており、海外ではプラセボ対照の二重盲検比較試験において、 有効性・安全性が確認をされております。成人の予防に係る承認時、平成16 年7月ですが、この際にも国内でプラセボ対照の二重盲検比較試験が行われて おり、海外においても同様にプラセボ対照の二重盲検比較試験、65歳以上の 高齢志願者を対象としたプラセボ対照の二重盲検比較試験といった試験が実 施をされているということです。  成績の概略については、添付文書に記載のものを33ページから以下示させ ていただいております。最後に、中外製薬からハイリスク症例を対象とした特 定使用成績調査の結果が提出されており、これは再審査の申請に伴うものです が、40ページにその概略の結果が示されております。  続く資料5については、後ほどもう少し詳細に説明させていただきます。  次に、資料6、174ページからです。「タミフル服用患者を含む疫学調査等に ついて」ということで、これまで行われている、1が厚生労働科学研究の「イ ンフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」ということです。 2番目に「1歳未満インフルエンザ患者に対する治療実態特別調査」の結果報 告ということで、これは中外製薬の委託により、日本小児科学会等の学会で実 施をされた調査の結果です。3番目としては、これは今実施中ですが、平成18 年度からのインフルエンザに伴う臨床症状の発現状況に関する研究の実施計 画書を示させていただいております。詳細な内容については、省略をさせてい ただきます。  次に202ページ、資料7です。「インフルエンザに伴う異常行動に関する論 文等について」ということで、インフルエンザの患者で異常行動等の精神・神 経症状が認められたという論文がこれまでいくつか発表されておりますので、 その主なものを概略まとめさせていただいたものです。205ページまで、その 概要が続いております。  205ページの下の「インフルエンザ罹患時の異常言動に関する臨床的検討」、 これは平成18年の『小児感染免疫』という雑誌に発表されたものですが、50 例を調査したところ、異常言動が14例、24時間以内が10例で、6例は抗イン フルエンザ薬内服前、異常言動発症12時間以内に脳波検査を行った事例が4 例あり、全例で徐波を認めたというような結果が記載されております。  207ページに、これはあくまで参考ではありますが、タミフル非使用症例の 異常な行動等について、最近、医療機関等からの報告によって把握された例の 概略です。11例あります。208ページ以降は、その御報告の原票です。  226ページからは資料8-1ということで、先ほど言及がありましたが、薬害 タミフル脳症被害者の会等の方々から要望書をいただいておりますので、その 要望書をここに示させていただいております。それから、当日配付で、もう一 つ要望書を配付しております。248ページからが資料8-2で、タミフルのカプ セル剤、ドライシロップ剤の添付文書です。  最後に資料8-3として、中外製薬を通じてホフマン・ラ・ロシュ社からの報 告書ということで、提出されたものを付けております。英文のものの後ろに日 本語の訳、中外製薬による翻訳が付いております。280ページからがその翻訳 です。副作用報告以外の資料については以上です。 ○松本座長 これまでのところで、御質疑等ありますでしょうか。 ○槇田参考人 東京医科歯科大学の槇田です。別紙3、古い資料で10ページ、 新しい資料の13ページですが、表の「我が国におけるインフルエンザの流行 と脳炎・脳症の発症」で、2002年までの報告はあるようですが、これ以降は ないのでしょうかということ。それから、この年に急に数が増えているのです が、脚注で「調査方法が変わったため以前に比較して、多数把握されるように なった」と書いてあるのですが、どのように調査方法が変わったのかというこ とをお聞きしたい。つまり、この2001年と2002年からタミフルが発売され始 めたわけですね。この辺りはどうでしょうか。 ○松本座長 事務局から答えられますか。 ○審査管理課長 申し訳ございません。ここに書いてありますように、これは 平成15年度の研究報告から持ってきております。その以後のものについて、 ちょっと見当たらなかったもので、そういう意味で今日お示しすることはちょ っとできません。また、調査方法の変更について、今、手元に詳しい資料があ りませんので、追ってまた説明させていただきたいと思います。恐縮でござい ます。 ○岡部参考人 拝見した資料の中の一つの言葉の定義なのですが、治験などで は、最近よく「有害事象」という言葉が用いられるようになっています。この 中にも「有害事象」という言葉が入ってきているのですが、それと「副作用」 という言葉が非常に交錯をして、両方とも同じような意味に使われているよう な気がしないでもないのですが、今後話を進めていくときにどのように定義さ れるか、お尋ねしておきたいのですけれども。 ○松本座長 これについては、そちらのほうで答えられますか。お願いします。 ○安全使用推進室長 御指摘のとおりで、今、薬剤に注目をしておりますので、 医薬品との関連にかかわらず、被験者に対して有害な作用が発現した場合に、 それを「有害事象」と定義をすると思います。さらに、「副作用」というのは、 その有害事象の中で、その薬剤との因果関係が否定できないものについて、「副 作用」と定義をすると思います。 ○松本座長 そのような定義でよろしいですか。 ○岡部参考人 言葉の定義はよろしいと思うのですが、文章の中でも時々それ が混じっているようなところがあって、「有害事象」と書いてあったり、「副作 用」というところがあったりして、その都度議論が必要なときが出てくるので はないかと。 ○松本座長 そうですね。これはすべての面で出てきますが、やむを得ないと 思うのですが、よろしいですか。ほかに御質問はありませんでしょうか。よろ しいようでしたら、次に進みたいと思います。資料5の「タミフルの副作用報 告の精査について」、事務局から説明をお願いします。 ○安全使用推進室長 引き続きまして、事務局から簡単に説明をさせていただ きます。資料5、41ページです。今回、タミフルの副作用報告の精査をさせて いただいたわけですが、まず資料5として取りまとめたのは中外製薬から報告 をされた副作用報告、個別の症例報告が対象で、販売開始から本年3月20日 までに、全部で1,079人、1,079例で、1,465件の報告がありましたが、これ をすべて精査させていただいたということです。  (注)にあるように、企業からの報告とは別に医薬関係者、いわゆる医療機 関報告というものが平成16年4月から平成19年3月20日までの間に、合計 226人、261件が報告をされております。それらのうち、55例と書いてありま すが、55人分ということです。55人分については、中外製薬から報告をされ ているものと重複しております。残りの171人分は、重篤ではないなどの理由 により、中外製薬の方からは厚生労働省への報告の義務がないということで、 報告をされていない症例ということです。この171例については別途集計をし ており、別冊の資料5-2に一覧表、いわゆるラインリストの形で記載をしてお ります。資料5-2の171例ですが、171例のうち、精神・神経症状にかかるも のについては21ページ以降に、その概略を記載をしております。これが前提 となる副作用報告です。  2番目として、これらの中外製薬から報告された副作用の全体像の把握をす るということと、症状別の解析を行うということで、いくつかの表を作成して おります。次の作業として、異常な行動が報告をされた事例の洗出しを行って おります。この異常な行動が報告をされた事例というのは、単に副作用の報告 名が異常行動ということではなくて、何らかの異常な行動が副作用の報告表の 症例経過表の中に記載をされているもの。これを手作業で洗い出し、ピックア ップをしております。具体的には、実際に飛び降りをした、あるいは転落をし たというようなことが起こった症例のほか、そういった飛び降り、転落等に結 び付くおそれがある症例として、例えば急に走り出したとか、部屋から飛び出 ようとした、あるいは窓から飛び降りようとしたというようなもの、あるいは もう少し広くとって徘徊をしているとか、ウロウロしているといったものをす べてピックアップしております。これは精神神経系の副作用が報告をされてい るもの以外の副作用、すなわちこの1,079例の全例についてこのような作業を 行ってピックアップをしたものです。3番目として、タミフルとの関連を報告 された死亡事例の解析を行っております。  42ページに、対象となった副作用報告の全体的なまとめの図が書いてあり ます。今申し上げたように副作用報告1,079例、1,465件あったわけですが、 そのうち精神・神経症状を呈したということで報告をされた事例については、 341人の446件ありました。そういった作業を行った結果、128人の例で先ほ ど申し上げた異常な行動が記録されているということが分かりました。この 128人というのは、ほとんどが精神・神経症状として報告されている症例の内 訳になるわけですが、精神・神経症状ではない、別な名前の副作用として報告 をされているものが7例、7人あったということです。その128人の異常な行 動が記録されている事例のうち、死亡例は合わせて8人だったということです。  これとは別に死亡の症例というのが55人あって、55人のうち突然死という 名前で報告を受けているものが9人、9例あったということです。異常な行動 が記録されている事例が128人あったということですが、そのうち死亡が8 例であった。これを年代別に見ると、ここの表に示したように、10歳未満が 43例で33.6%、10歳代が57例で44.5%ということで、20歳未満の未成年者 で全体の8割弱を占めております。こういった状況です。  それから、死亡の事例については、今回の副作用報告の中に入っているのが 55人ですが、これ以外に治験中の事例が1例、論文中の記載ということで、 研究報告として報告されたものが4人、中外製薬としてはタミフルとは無関係 という判断で報告がなかった1人を含めて、ほかに6人ありますということで、 合計61人になるということです。(4)として副作用報告の年次別の報告件数が 出ておりますが、これを全部合計すると1,465件になるということです。ただ、 これは1人の患者で二つ以上の副作用が発現した場合には、2件、あるいは3 件というようにカウントしておりますので、人数としては先ほど申し上げたよ うに1,079人ということになります。  参考の所に、これまで公表をしていた死亡事例54人との関係とか、3月21 日時点で飛び降りや転落が実際に起こった症例として22例公表しております が、それとの出入りの関係を記載しております。  44ページですが、先ほどの1,465件あった副作用について、年度別に、そ れから大分類別に集計をしたのがこの表です。いちばん多く報告されているの が下から6番目ぐらいにある精神障害、次がその二つ上の神経系障害というこ とで、精神神経系の副作用というのがかなりの割合を占めているということが お分かりいただけるかと思います。  45ページは、この有害副作用等の年齢別の一覧です。各年齢・年代で、そ れぞれ報告をされておりますが、10歳未満、10歳代が比較的多くの件数を占 めております。  次の46ページからですが、神経系障害、精神障害に分類される副作用を細 かい副作用名別に集計をした表です。例えば47ページですが、精神障害の上 から三つ目の所に「異常行動」というのがあって、今回問題となっております 異常行動の症例と必ずしも一致するわけではありませんが、一応、異常行動と して報告をされているものが77件あります。そのうち0〜9歳が30件、10〜 19歳が37件ということで、やはり20歳未満が大部分を占めているというこ とです。49ページ以降は、その精神・神経系の副作用の年度別の集計表です。  56ページからですが、資料5-1-2は先ほど申し上げたピックアップをされ た異常な行動が記録をされている事例と判断した128例について、その経過の 概略等を表にまとめたものです。この各症例の報告の原本については、資料 5-1-3ということで、パイプファイルに綴じているものの中に入っております。  次に、81ページにはただいまの異常な行動が記録されている症例それぞれ について、インフルエンザの感染、これは経過の中から拾い上げたものですが、 インフルエンザウイルスが検査によって検出されているものが○、検査をした けれども検出されなかったものが×、検査が実施されていないもの等、不明な ものは不明ということで分類をしたものです。  82ページからは、精神神経症状の副作用のうち、異常な行動が記録されて いる事例以外のもの、これの経過の概要の表です。これに対応する報告の原本 については、資料5-1-3ということで、お手元のパイプファイルに示しており ます。次に、120ページからが死亡症例の一覧表です。同様に、報告原本につ いては資料5-1-5ということで、パイプファイルに綴じております。  次に131ページですが、医療機関報告のまとめの表です。先ほど申し上げた ように、医療機関報告のうち、中外製薬からの企業報告と重複しないものにつ いては、別冊子で資料5-2にラインリストと、そのうちの精神神経症状の概略 についての表をお配りしております。  133ページ、資料5-3は中外製薬から報告をされた、学会等で発表された文 献等の研究報告ということで、薬事法上、自社が製造・販売する医薬品の有効 性・安全性等の評価に影響を与えるであろうような研究報告、文献については、 このような形で報告をすることが義務付けられております。ここに記載をされ た研究報告、耐性ウイルスの発現等のもの等がありますが、番号の3、11、12 については、浜六郎氏ほかの発表された文献です。135ページ以降は、これら の文献を要約した報告書です。  副作用等の報告については大体以上ですが、それ以外のものについて若干説 明させていただきます。まず、別冊子の資料5-1-1は、先ほど申し上げた中外 製薬から3月20日までに報告をされた全部で1,079例のラインリストとして 打ち出したもののリストです。それから、私どもはこういった解析を詳しく行 ったのは、3月20日までに報告されたものということで示させていただいて おりますが、それ以降に報告をされたものについても、リストにしてお配りし ております。それが別冊資料1-1と書いたものです。別冊資料1-1の前半の部 分が、中外製薬から3月21日から昨日4月3日までの間に症例報告をされた 症例の一覧表で、特に精神神経症状、あるいは死亡例等については経過の概要 についても記載をして御覧いただけるようにしております。この冊子の後半の 部分ですが、28ページからが別冊資料1-2になっておりますが、3月21日か ら4月3日までの間に報告をされた医療機関報告について、同様に経過の概要 等を記載した一覧表です。以上が資料の説明です。よろしくお願いします。 ○松本座長 ただいまの事務局の説明に関して、御質問等ないでしょうか。よ ろしいようでしたら、事務局からのこれまでの説明を踏まえて、議論を進めさ せていただきます。タミフルに関しては一つには異常行動等について、二つ目 には突然死を含む死亡症例について、この順に議論を進めていきたいと存じま す。まず、タミフルの服用と異常行動をはじめとする精神障害、精神神経症状 との関係について、どのように考えたらいいかということについて、御意見を 伺いたいと思います。こちらから指定して申し訳ありませんが、まず精神科の 立場から浦田先生、一瀬先生、コメントがありましたらいただけませんでしょ うか。 ○一瀬参考人 豊島病院の一瀬です。専門が精神科、それから、今、盛んに異 常行動という言葉が出ていますが、その異常行動の専門と言ってもいいのかと 勝手に思っているのです。いちばん初めに松本委員長の方からお話がありまし たが、三つのことです。今やらなければいけないこと、やってはいけないこと、 三つ目はこれから先のこと。今やらなければいけないというのは、お話を聞い ていて異常行動、あるいは異常な言動ということで、拾いづらいというか、と にかくおかしなことを言ったというぐらいの意味で使われているのだと思い ますが、非常に曖昧な言葉でトータルが表現されている。我々の使っている国 際疾病分類の第10版、ICD10のFコードというのがあるのですが、これは 精神および行動の障害が入っています。その中に、睡眠異常の項目があります。 例えば睡眠時驚愕症、Fの51の4というのがあるのですが、これは夜中に急 に起きて、叫び声をあげて恐怖をもって起き上がると。飛び出したり、叫んだ りというのがあって、15分から30分ぐらいの間におさまる。無理やり起こそ うとすると、非常な恐怖を訴えておかしな言動をする、という定義付けをされ ているのがあります。それとか、夢中遊行、夢の中を歩くという昔でいう夢遊 病ですけれども、これもFコードの、国際疾病分類の中にきちんと分けられて 入っております。そういう睡眠障害としての捉え方がきちんとされていないの かという印象を持ちました。  譫妄、これはFコードのゼロのところに入っているのですが、それはきちん と書かれていますけれども、それ以外の睡眠障害の部分、特に年のあまりいっ ていない方たち、子供の症例のところに睡眠の随伴症が多く含まれている印象 を持ちました。私は、タミフルのせいであるとか、熱のせいであるとか、その 辺についてはあまり詳しい専門ではないので発言は控えさせていただきたい のですけれども、現在示されている病態が、譫妄のコード、それから睡眠障害 のコードというものを使うと、わりときちんと分類できるのではないか、とい うことをいちばん初めに思ったものですから発言させていただきました。  これは、今やっておかないと、急におかしくなったと全部拾って書いてある のですけれども、その前に寝ていたかどうか、これは睡眠異常の、睡眠随伴症 のほとんどの者は、睡眠を始めてから前3分の1、つまり1時間半とか2時間 ぐらいのところに起きるというのが定義の中に入っております。そういうデー タが失われないうちに、是非睡眠研究の成果を一部取り入れて、症状の整理を した方がいいのかという思いがいたしました。  お年寄りの方は、レム関連異常行動というのがあるのですけれども、これは 夢を見ているままに動いてしまって、障害物とぶつかって怪我をしてしまうと いうので見つかることが多いです。専ら覚醒の部分だけから捉えられていて、 睡眠の方からのアプローチが若干薄いのではないかというのが、今差し当たっ てデータが失われないうちに言っておかなければいけないと思った一つです。 ○浦田参考人 国立精神神経センター国府台病院の浦田です。私も一瀬先生の 御意見とほぼ同様です。症例報告の資料は事前にいただきまして、正直言って いろいろな点で、何が異常行動なのか、異常行動がどのようにして生起してい るのか、時間的な関係とか。  それから、しばしばあったのが幻覚です。どこに幻覚があるのかが分からな い。実際に幻覚があったのかどうか分からない。一瀬先生は譫妄と書かれてい るのは間違いないだろうと言われたのですけれども、譫妄も本当に譫妄なのか どうかが分かりづらいと思ったりします。要するに、疾病の症状を分類するの に少し困難を感じる状態ですので、もう一遍各症例に戻ってきちんと整理して おいた方がいいかと思います。  もうちょっと踏み込んで言いますと、うんと幼い方と、少し学齢期の方と、 それ以降の方、それから成人とお年寄りで、症状のスペクトラムが違うかと思 います。特に、学齢期のお子さんに関しては、今一瀬先生がおっしゃった、睡 眠時随伴症状が少し見えるのかなと。それ以前のお子さんにもそれがあるけれ ども、もうちょっと別のものの、例えば痙攣などが小さいお子さんには多いよ うに見えます。そういうところから考えると、症状のスペクトラムが違うだろ うと。  私もここへ来て意見を言えと言われて、資料を見てからまだ浅いものですか ら、まだそんなことしかつかめておりませんが、今のうちに元の資料とか、調 べられることをきちんと調べて、症状の解析をきちんとできるようにした方が よろしいのではないか。そのように精神科の観点からは一つ言えると思います。 ○松本座長 私たちも、最初はこの精神神経症状というのはどういうものなの か、異常行動というのはどういうものなのかということを知りたかったし、そ れを定義できればいいなと思いました。お二人からそういう意見を言っていた だきました。  ただ、副作用報告の泣きどころでありますが、副作用名からいくと、なかな か診断が難しいことがあります。症状詳記がきっちりされていれば、先ほどお っしゃいましたように、譫妄かどうかの判断が、症状詳記から専門家が見れば ある程度分かるのだろうと思うのです。  昨日これを貰って、これを見て判断しろと言われてもなかなか難しい面があ ろうかと思うのです。その点は、またゆっくり検討していただければと思いま す。ただ、差し当たり本日の時点である程度の結論を得なければいけないとい うことを考えますと、この症状詳記をお読みになった限りで、タミフルとの関 係をどのように感じられるか、という御意見をいただければと思います。 ○一瀬参考人 私は検討を始めさせていただいたばかりでなんとも言えない のですけれども、ただ一つ言えることは、睡眠時随伴症はどれに属するのかと いうのは、お子さんの場合はなかなか難しいと思うのです。例えば、先ほど述 べました睡眠時驚愕症、昔言っていた夜驚症というものは、一般人口子供の中 の大体3%ぐらいと言われています。そういう意味では子供の寝ぼけ、それか ら夜中にワッと叫び声を挙げて起きるのですけれども、これは一般の小児の中 にも見られます。  それが、インフルエンザによる熱があるとそれによって増強されます。さら に、そこにタミフルが加わると、さらにもう一歩増強されるかどうか。それは、 この検討会の趣旨というか、いちばん考えなければいけないところだと思いま す。一つの原因ではなくて、もともと自然界の中で、子供の特徴としてあるも のが、インフルエンザによる脳症あるいはタミフルでより発現頻度が増えるの かどうか。そういう形でタミフルを飲んでおかしなことが起きたときに、これ の原因はタミフルでしょうかと聞かれると、なんとも返事のしようがないので す。  もともとある病気の中で、どういうものにいちばん近いか。その近いものが 一般人口の中でどのぐらいあって、それに熱が高いということが加わるとどの ように増えたか、あるいはその増えた頻度に、さらにある種の薬物を加えると どうなるか。そういう考え方で解き明かしていった方がいいのではないか。一 点一対応ではなくて、頻度とか発生をしやすくさせているという増強の因子と して考えた方がいいのではないかと感じております。お答えになっているかど うか、だいぶずれているのではないかと思うのですけれども以上です。 ○松本座長 浦田先生、このことに関して何か御意見はございますか。 ○浦田参考人 今の一瀬先生の御発言は全くそのとおりだと思います。それと 同時に、私が急に勉強しながら思ったことは、例えば、今普段でも起きること、 それからインフルエンザにかかって、インフルエンザ脳症にかかって、そして タミフルというのが一瀬先生のお話でした。そのときに、例えばインフルエン ザ脳症などは、昔からどのぐらい起こっているのかというのは、僕にはあまり 資料がないわけで、ここ10年ぐらいの様子しか見られません。  しかし、インフルエンザ脳症については、非常に古くから報告があることは あります。海外の報告を見ても、50年以上前から報告があることはあります。 ただ、これは大人の例ですし、最近言われているインフルエンザ脳症の主たる 層は、非常に幼い子供たちで、大人には非常に稀な例でしかないだろうという こともあります。一体もともとどのぐらいあるものかということが分からない から、余計今一瀬先生がお話になったようなことの考えていく道順がなかなか 進まないところがあります。その辺がもう少しどこか資料で分かるものはない のかと思っております。  それから、既に小児科の現場の先生方は、臨床的な印象は以前から持たれて いるかもしれないというのが、今一瀬先生が言われたことは、文献でも二つぐ らい指摘されておりますので、こういうことは最近いくつか注目されているよ うなことがあるのだろうと思っています。そういうデータをきちんと拾うこと が必要かと思っております。 ○松本座長 実際に患者を診る機会の多い、小児科の立場から御意見を伺いた いと思います。宮坂先生、桃井先生からコメントをいただけますか。 ○宮坂参考人 長野県立こども病院の宮坂です。今の精神科のお二人の先生の コメントは全くよく理解できます。私から質問なのですが、先ほど207ページ の非タミフル、タミフルと関係ない異常行動というのは、たまたま平成19年 3月23日から4月2日までの間で11例あります。この中の2例を除いては最 近の期間の発症なのですけれども、これの基になるデータというのか、これ以 外の期間で、タミフルと関係なく異常行動が普通にどのぐらい起きているのか、 ということを皆さん知りたいと思うのです。この辺のデータがあるのかどうか を教えてください。 ○松本座長 確かにおっしゃるとおりだと思います。その辺のデータはありま すか。 ○安全使用推進室長 残念ながらございません。 ○松本座長 それは、なかなか難しいかもしれません。 ○宮坂参考人 今はないけれども、むしろこういうことをちゃんとデータとし て取らないといけないということだと思います。 ○松本座長 薬を使っているときのデータは集まりやすいのですが、何もして いないときのデータは集まりにくくて、むしろ小児科の先生に集めていただけ ればと願っているわけです。実際に臨床の立場からこのことについて御意見を いただければと思います。 ○桃井参考人 うちの病院は、年間1万人ぐらい小児救急が一次も三次も来ま すので、インフルエンザ脳症はある一定地域だと大体は来るのだろうと思うの です。その年度によって、インフルエンザ脳症の重症度も違えば、その様相も 違います。小児において、インフルエンザ脳症の症状は非常にバラエティの強 い疾患なので、どこまでを脳症と診断するかというのは、我々も困りながら診 断をしている状況があります。  感じを言うことはあまり適切ではないかもしれませんが、私自身最近の異常 言動と行動と2種類言葉がありますので統一しないといけないと思うのです。 異常言動の急患で来る大半が、開業医の先生や一次医療施設でタミフルを服用 しています。前に比べて、異常言動の長さと重症度がちょっと違うような感じ が個人的にはしています。それをきちっと見ようと思っていましたら、今年は インフルエンザが極めて少なかったものですから、インフルエンザ脳症も極め て少なかったので調査ができませんでした。  そういう臨床医の感覚を数字にするのは非常に難しいのですけれども、厚生 科学の研究で出た10.6%から11.9%という数字の解釈及び、その10.6%の内 容と11.9%の内容を詳細に分析をしないと、その数字の意味するところが分 からないのだろうと思うのです。その数字をもって決して否定はできないわけ で、差の1.3%に大きな問題がある可能性があることと、それから年齢別の異 常言動のパーセンテージとか、重症度別のパーセンテージとか経過時間です。  経過時間が特有に短い方が多い。特有に長い方もこの症例の中にはあるので すが、2通りあって、長くて後まで何か残すタイプと、最初の48時間ぐらい で発症する方は特有に短いという特徴があって、その経過時間がタミフルを服 用していない方と経過のdurationと重症度、行動の過激さのパターンに違い がないか、というところまで分析しないと、いわゆるインフルエンザによる、 我々が軽度の脳症というようなものとのパーセンテージといいますか、数字の 上で差はなかなか出にくいと思います。  そこまでカルテ上で詳しく分析する必要があるのと、我々の所は大学病院で すので重症の場合には割合来やすいので、高熱でなおかつインフルエンザ脳症 で来る率が例年多いのですけれども、解熱後の異常言動のパーセンテージが、 タミフルを服用しているのと服用していないのと本当に同じなのか。タミフル を飲むと解熱した後、なおかつ異常言動が出ますので、これは明らかに熱譫妄 ではないわけです。脳症としてもちょっと違うパターンをとっているような気 がいたします。これは、あくまでも気がです。そういうところを詳しく出す調 査が必要かと感じております。 ○松本座長 教えていただきたいのですが、異常言動、異常行動というのは、 インフルエンザだけでも見られることがあるということですね。 ○桃井参考人 ございます。 ○松本座長 その場合、こういう症状というのは、脳症との関連で考えるわけ ですか。 ○桃井参考人 それが、高熱を伴えば熱譫妄です。熱譫妄と脳症の間の線引き は極めて短くて、その経過時間といいますか持続時間で決めているところがあ ると思います。短ければ熱譫妄と我々は言っていると思います。それは、何時 間持続したら脳症と定義するか定義にもよると思います。高熱を伴わない場合 にはもちろん熱譫妄ではないわけですから、今までは脳症と考えざるを得なか ったわけです。 ○松本座長 必ずしも脳症がなくても起こることはあり得るというわけです か。もし起こしていなくても。 ○桃井参考人 物事は連続的なものなのかもしれないのですが、インフルエン ザという一つの感染症が、特に小児の中枢神経系に与える影響が、非常に高熱 を伴って短い場合に我々は熱譫妄と診断せざるを得ない。それが一定程度続い た場合には脳症と診断せざるを得ない。そこが連続か非連続かは、今の科学で は分かっていないと思います。 ○松本座長 今の段階では、タミフルを使って起こっている異常行動と、イン フルエンザそのものによって起こる異常行動との間に起こる時期であるとか、 起こり方に明らかな差は見られていない。 ○桃井参考人 という結論は出せないのではないかと、このデータを見て思い ました。先ほど申し上げたのは、解熱後に異常言動を起こすパーセンテージが どのぐらいあるのかとか、その異常言動の持続期間と重症度のパターンが、タ ミフルを服用している、していないとで本当に同じなのかとか、そのぐらいま での詳細な解析をしないと結論は出ないのではないかと申し上げました。 ○松本座長 今ある症例を検討するというより、むしろ、もっと症例を増やす 必要があるということですか。 ○桃井参考人 いや、今ある症例で十分よろしいと思いますが、タミフルを服 用していない症例が十分数あればよろしいと思います。 ○松本座長 鴨下先生からコメントをいただけますか。 ○鴨下参考人 今の点よりも、私自身は現場でかなりインフルエンザの患者を 診てタミフルを投与していますが、これほどドラマティックに熱が下がって効 く薬もないのではないかと出たころは思っていました。実際にこういうことが 問題になってからは、投与の度に、親には十分注意するように言っております。 正直なところ、それでも自分自身の経験では全くないものですからあまり実感 がつかめていないです。これだけ例があるということは、むしろ驚きなのです。  それはそれとして今の問題点で、インフルエンザ脳症について申しますと、 インフルエンザ脳症は、脳症か脳症でないかこれは昔からありますけれども、 そういう二分法ではいかない状態だと思います。中間的というのか、非常に高 熱で意識が朦朧として、けいれんが起きても、CTなどが出てからは病態がか なりはっきりするようになりましたけれども、以前の状態では脳波ぐらいしか 検査法がありませんでしたから、そういう状況で診ますと、そこまでいけば脳 症だけれども、それの前段階といいますか、連続性があって、その過程の中で 譫妄というか行動異常というものが起きても不思議はないだろうと思います。  問題は、先ほど宮坂参考人が言われたように、タミフルを使用していなくて 似たような状況が出ているということが、実際にもっと多いのかという点が分 からないと、なかなか関連付けは難しいように思います。 ○松本座長 もう一方、呼吸器科の立場から工藤先生御意見をお願いいたしま す。 ○工藤参考人 小児のことに関してですか。 ○松本座長 肺疾患というか全体的な感じからお話をいただければいちばん ありがたいです。 ○工藤参考人 私の個人的な体験から申し上げますと、小児は全く診ていませ んのであまりコメントできません。大人に関しては、希望される方には投与し ていますが熱が下がって非常によく効くわけです。大人に関してもそんなに多 い経験があるわけではありませんけれども、報道されているような副作用は経 験しておりません。  ただ、報告されているような副作用についてはもう少し慎重に、謙虚に見て いく必要があるのだろうと思います。つまり、大人でも今まで私がデータとし て診せていただいた症例との中で死亡例は少なかったわけですが、小児でこれ だけの報告があるということで、先ほどから言葉の定義として問題になってい る異常行動、あるいは異常言動で、死亡には至らなくても大人でもそういうの があるらしいということになると、小児と比較して大人では少ないのでしょう と。脳の発達等を考えれば小児に多いのも理解できます。前提として小児にこ ういう現象が多いということになれば、大人でも考えなければいけないと私自 身は思っております。  ただ、報告されているすべての症例がこの薬によるものとはとても思えませ ん。先ほどから出ている、こういう感染症によって起きてくる脳症、あるいは 神経症状、それに対しての薬が加わって、何か新しいものが誘発されているの かという印象は持ちます。  呼吸器に関して言えば、最近の報告にもありますように、通常のインフルエ ンザは上気道、あるいは気管支のそう深くないところでインフルエンザウイル スが感染するということが分かってきましたので、これに対する抗ウイルス作 用としては非常に有効であろうと思われます。そして、脳症などいろいろな症 状が出てくるメカニズムは、おそらく多くのサイトカインが出てくることによ って全身症状が出てきます。これを抑えるという意味ではかなり有効な薬だろ うと考えております。いろいろ申し上げたいこともありますが、まだ整理でき ておりません。 ○松本座長 一瀬先生お願いいたします。 ○一瀬参考人 簡単なというか言葉の定義で、先ほど異常言動と異常行動とい うのが出ましたけれども、厚生労働省にお伺いしたいのですが、アブノーマル ビヘービアを言動と訳したり、行動と訳したりということですね。言動という のは英訳すると何でしょうか。もしそういうのがなければアブノーマルビヘー ビアそのままでよろしいのではないでしょうか。異常行動ということで統一し てしまえば。 ○安全対策課長 今、副作用の分類にはMedDRAという日米欧合同で作っ たターミノロジーを使っています。その中で通常使うのはプリファードターム (PT)というレベルの言葉を使っておりますけれども、そこで使っているの は異常行動という言葉を使っております。そのMedDRAの体系の中では、 異常言動という言語はありません。英語は、アブノーマルビヘービアというこ とになっています。 ○松本座長 タミフルと異常行動又は異常言動との関係について、委員の先生 方から何か御意見等はございませんか。 ○広津参考人 単なる数値上の質問なのですが、資料5-1で、精神神経障害の 企業報告は、2005年度と2006年度を見ますと2006年度が少ないわけです。 それは、流行の違いによるのかと思っています。しかし、資料5-2の医療機関 報告で見ますと、その逆に2006年度の方が2005年度より、特に精神障害はは るかに多い。この数値の違いは何か説明があるのでしょうか。 ○松本座長 事務局いかがですか。 ○安全使用推進室長 確固たる原因というのは分かりませんが、医療機関報告 については、今年2月以降かなり増えているということもあります。ですから、 いろいろ報道等がされ、医療機関の方々の御協力が得られやすくなったという ことはあるかもしれません。 ○松本座長 タミフルと異常行動等の精神症状との関係についてほかにござ いませんか。先ほども申し上げましたように、フロアからの質問は受けており ません。御協力をお願いいたします。タミフルと異常行動等の関係について、 現段階では明確な関連性はないと、精神科領域からの意見ではあったような気 がしたのですが、それでよろしいですか。もう少し検討を広げる必要があると いうことでしょうか。 ○浦田参考人 先ほどの繰り返しになるかもしれませんが、今報告されている 症例の中で、あるいはその中から選んでもいいのですが、それをもう少し丹念 に調べたらどうだろうか。例えば、先ほど一瀬先生がおっしゃったような話が あるとすれば、一体この患者は服用後寝たのかどうかということが問題になる と思います。  中には、ちゃんと寝ているということが分かっている症例もあって、その後 に跳び起きて異常行動が起きているということがあります。中には、あるいは 眠っているかもしれないけれども、それが分からないという症例もあります。 そういうことをもう一遍きちんと精査する。具体的に症状についてももう少し きちんと、異常行動というのはどんな行動だったのか、それから幻覚と書いて あるけれども、幻覚というのは一体どういう内容だったのだろうかということ を、拾える範囲でいいですから少し精査して整理した方がいいのではないかと 思います。  そうすると、先ほど一瀬先生が最初におっしゃったようなことが、もう少し きちんと整理できるだろうと思います。今報告があったのを、本日来るまでに ざっと見させていただいた中でも、そういうことが分かっている例と、もうち ょっと知りたいという例がありましたので、その辺を調べる必要があるのでは ないか、広げるよりも、今報告されているものをちゃんと調べた方がよろしい のではないかというのが私の考え方です。 ○松本座長 小児科の先生も同じようなことをおっしゃっておりましたので、 その点はこれから症例をさらに検討してもらうということ。そこから出てきた ヒントを基に、これから新たに出てくる症例についても、そこに焦点を合わせ て調べる必要があろうかと思っております。  この点についてもう少し御発言をいただきたいのですが、次の議題に進ませ ていただきます。次は「タミフルの服用と突然死についてどのように考えれば よいか」について御議論をいただきたいと思います。まず、槇田先生から御意 見をいただけますか。 ○槇田参考人 東京医科歯科大学麻酔科の槇田です。私は、インフルエンザは 全然専門ではないのですけれども、この症例報告を見させていただいて、突然 死は症例No.47ぐらいから何人か続けてあります。中には、担当の先生が関連 有りとされている症例もあるようです。実際にあるかどうかは分かりませんが、 担当の先生のコメントではそういうのが書いてあります。  それから、異常行動と関係のない、古い資料の85ページのNo.42の症例、新 しいのは90ページにありますけれども、その方は心電図上期外収縮の頻発を 認めたと。意識が消失したときに病院に行って心電図をとったら、心室性期外 収縮が頻発したということがあります。  同じくNo.5の患者にも心電図異常があった。No.58の方は心房細動が診られた。 No.104の方はQRSの延長ですか、完全右脚ブロックが診られたと。  そのようにいろいろな症例があります。それが、タミフルによるものか、イ ンフルエンザの場合は心筋炎を起こすこともありますので因果関係は分かり ませんが、担当の先生のコメントは、因果関係があるというのも何人かあるよ うです。インフルエンザでこんなにたくさん心肺停止や突然死が起こるのか、 というところは少し疑問に思いました。精神症状もそうですが、心肺停止とか 突然死との因果関係も十分調査していただきたいと思います。 ○松本座長 調査といいますと、新たな症例に関する調査ということですか。 ○槇田参考人 いいえ、新たでなくてもいいのですけれども、例えば心電図が とってある患者についてです。お聞きしたいのは、I相とかII相の治験のレベ ルで心電図異常を指摘されたことはなかったかということと、動物実験ではど うかということももちろんそうです。動物実験がいちばん簡単だと思いますけ れども、それはおそらく企業の方は持っていらっしゃるのではないかと思いま す。 ○松本座長 突然死症例に関してそういう資料を集めるのはなかなか難しい のですが、確かにどこかの病院にかかっていれば、そこから情報を集めること も可能かもしれないですけれども、いつものことながらなかなか難しい場合が 多いです。呼吸器の方から工藤先生お願いいたします。 ○工藤参考人 精神神経症状だけを呈し、突然死というケースがあるようです。 先ほどの問題に戻りますが、この薬が有効であれば、成人の場合、9ページに ありますように、年配者のインフルエンザによる死亡者というのはすごく多い わけですが、高齢者の死亡者が多いのは、色々な合併疾患を持っていると、イ ンフルエンザにかかることは死への最後のひと押しだと言われていることで あります。  この薬が有効ならばここに示す死亡率が下がっているはずなのですが、直接 的なデータは出ておりません。この辺りのデータが詳しく示されれば、大人の 場合、インフルエンザによる死亡者というのはたぶん減っているのではないか と予想されます。それがどうなのか、ということをまず私たちは知りたいもの です。  そのように考えると、先ほどの突然死というのは、インフルエンザで全身に サイトカインが出て、特に年配者においては突然死ということもあり得るでし ょう。神経系にも循環器系にも働くこともあるでしょう。私自身は別にタミフ ルに固執するものではありませんけれども、有効な薬だとすればそれを押さえ ているはずだと。そういうデータが出てきてしかるべきなのではないかという 気がいたします。  突然死というのは、特に年配者を診ていると、インフルエンザで入院してい ても亡くなることはしばしばありますので、そういう病気だということも認識 していただきたいと思います。 ○松本座長 小児科領域から御意見を伺いたいと思います。宮坂先生いかがで しょうか。 ○宮坂参考人 症例としては、やはり異常行動というのか、それが基になって 亡くなった症例がいくつかあります。それはほとんど10歳代ですので除いて、 そうではなくて異常行動に直接結び付かずに亡くなった症例が7例あったと 思います。02-1635、03011242、04062215、04026881、05024866、05000322、 05020031であったと思います。これらはタミフルを飲んだということになっ ているのですけれども、飲んですぐ嘔吐したという症例が含まれていたり、服 用しているかどうか不明と書いた症例が、例えば021635、5000320の症例であ ります。  分からないというのは分からないので、分からないとしか言いようがないの ですけれども、これを除いても、いただいた情報だけでタミフルが原因で亡く なったとか、インフルエンザが原因で亡くなったと結論的に言うことはできな いと思うのです。それでも、いただいた資料の中のそれ以外の症例のほとんど は、インフルエンザだけでも死因が十分に説明できるのではないか、必ずしも タミフルがかかわっているとは言えないのではないかと思いました。  ただし、絶対に関係ないかと結論付けるには情報が不足しています。例えば 04026881の症例では、2月28日にタミフルを飲んで、3月1日に中止してい るのですけれども、この間に1日分の記録がないとか、副作用報告という限ら れた情報の中ですのであまり明確には言えません。私が見た限りでは、少なく ともタミフルだけが原因で亡くなった症例があるとは言えませんけれども、本 当にタミフルが関係ないかと聞かれた場合に、そちらの方はなんとも言えない、 というのが今の感じです。  例としては、03011242のメチルマロン酸尿症の子供の例があります。タミ フルを5日間投与した後に亡くなっているのですけれども、これは元来相当重 症な患者で、もともとインフルエンザからトリガーされたことによって起きて いるのではないかと主治医は書いていますが、これは全くそのとおりだと思い ます。でも、実際にその5日間はタミフルを飲んでいるわけです。飲んでいな ければ関係ないとは言えますけれども、飲んでいましたから、それは本当に全 く関係ないかというと、関係ないとは言えないということになります。しかし 常識的にはタミフルは関係ないのではないか。元の疾患のためではないかと考 えられます。  そのように考えていきますと、タミフルがこの突然死の中で原因になった、 ということを積極的に言える症例は今まで挙げた症例の中ではありませんで した。これが私の見たところです。 ○松本座長 桃井先生いかがでしょうか。 ○桃井参考人 簡単なお返事で恐縮ですが、いただいたこのデータだけではど の症例も判断できませんでした。メチルマロン酸尿症の例も、アーノルドケア リキ系の基礎疾患がある例も、ない例もこれだけでは判断できませんでした。 普通の重症の経過として、よく我々が診るような結果というのは、その死に至 る直前のいろいろなデータを拝見したりしないと判断できませんので、ここに 書いてある概要では、医者としては判断できませんでした。 ○松本座長 同じことで教えていただきたいのですけれども、インフルエンザ そのもので突然死することはあり得るわけですね。 ○桃井参考人 そのお子さんがどういう状況かによりますけれども、抗サイト カイン血症を伴っていて、血液のいろいろなデータが非常に動いて重症感を 我々も察知できるような状態であれば循環不全、あるいは心筋障害などで亡く なることはあり得ると思います。  ただ、いろいろな重症のインフルエンザの患者を診ていても、我々が全く予 期しない突然死というのはそう多くは経験しておりません。なんだかよく分か らないけれども、状態は良かったのに突然死というのは、我々の所ではそんな に経験しておりません。宮坂先生のような、ICUが御専門ですと経験される かもしれません。 ○松本座長 鴨下先生、何かコメントをいただけますか。 ○鴨下参考人 インフルエンザによる子供の突然死というのはあり得るとは 思いますが、一般的ではない。本には書いてないと思います。ただ、私自身は 摂食障害の女の子がインフルエンザにかかって、いわゆる突然死は経験したこ とがあります。ですから、基礎疾患が何かあれば、先ほどのお年寄りと同じよ うな条件で起こり得ると思います。 ○松本座長 この問題に関して、タミフルの服用と突然死について御質問、御 意見等はございませんか。 ○飯沼参考人 日本医師会の飯沼です。本日いただいたデータだけで結論めい たことを言うのは間違いだと思っております。先ほどから一瀬先生がおっしゃ られるみたいに、このデータをいろいろなファクターで分けて、もう一回精査 する、整理するということがいいと思います。例えば、その方に基礎疾患があ ったかどうか、それから症状、年齢はもちろんです。  先ほど私が考えたところでは、両親や兄弟のリンパ球の幼若試験をやってみ る。本人はやれないわけです。それから、HLAの共通点はあるかどうか。統 計の問題としては、massとファクターがたくさん増えなければ駄目だと思 うのです。今やっているように聞いておりますが、タミフルを飲んだ人の追跡 調査といいますか、異常行動があったか、なかったかということを、mass をたくさんにして調べていただければ、答えとしては出てくるのではないかと 思います。いろいろなファクターを入れてほしい、というのが私の見解です。 ○松本座長 この症状詳記を見ますとかなり詳しく書いてありますので、おっ しゃるようにもう少し詳しく検討し直せば、もうちょっと良い結論が導き出せ るかも分かりませんので、今後そのことは一つの問題点として残しておこうか と思います。 ○宮坂参考人 今のは症状詳記の話だったのですけれども、私は桃井先生と全 く意見が同じで、このデータだけでは結論できません。今の飯沼参考人も全く 同じだと思います。ただ、これをもう一回見直すのか、本当にこの点を見た調 査をやるのか、ということは考えた方がいいかと思います。ここから本当にち ゃんとデータが出てくるのか、先ほどのように飲んだけれども吐いた。でも、 それは本当に飲んだかどうか分からない、というようなデータが今はここにあ るわけです。これからデータを取るとしたら、本当に飲んだのかどうかという ことを明確にする、というようなことをしないと、かえって混乱が広がるかも しれません。むしろ、ここに焦点を合わせてもっと大きなデータをこれからは 取った方がいいかという気がします。 ○松本座長 そうですね、もっと具体的な情報を得るというのは必要だろうと 思います。このことが可能かどうか事務局から答えられますか。症例一つひと つについて、より詳細な追跡ができるかどうか。 もう少し情報を増やせるかどうかということについてはいかがですか。 ○安全対策課長 おそらく、これはタミフルが販売されて以降の症例を全部集 めていますから、ものによってはかなり古いのもあって、診療記録等が残って いないものもあり得るかもしれません。そういうことで、すべてについて詳細 なフォローアップが、これは企業の報告ですからある程度詳細フォローして報 告が上がってきていますので、それ以上のものを特に古い症例に関してフォロ ーアップできるかどうかというのはちょっと難しい面があるような気がいた します。 ○松本座長 そのようなことですが、このデータをより良くするために何か御 提言があればお受けいたします。 ○岡部参考人 感染研の岡部です。例えばこのデータだけを見ても、一体いつ 飲んで、いつ発症しているのか。先ほどの寝ているかどうかということも含め たり、そのようなことが分からない中で判断するのは非常に辛い、苦しい、分 からないところが多くあります。調べても分からないのかもしれませんけれど も、調べれば分かるものが出てくるのだとすれば調べる必要があり、それらを きちんとした上で判断の材料にしていただけないかと思います。  それから、私はインフルエンザのワクチン接種後の健康被害の認定といった ものに加わっておりますが、そのときにも、提出されたものだけを見ながら判 断するというのは非常に難しい。あるものをやった後に起きた症状というのは 誰にでも起こり得るけれども、そのときに接種したというものによってどうい う変化が起きるか、というのは実際には医学的には判断が非常に難しいもので す。  このような場合も、臨床医の直感というのはものすごくて、あるものからだ んだん膨らんでくるという可能性はあります。インフルエンザ脳症のときは、 当初はそんなものはあまりないだろうと言われていたのが、きちんと精査をし、 全国調査をしていく中で、その状況は次第に明らかになってきたということが あります。そういう意味でも、この状況で判断しろというのは困難であり、後 の話になってはしまいますけれども、やはりきちんとした調査をやっていかな いと、最終的な結論には至らないだろうと思います。  ちなみに、予防接種による健康被害の認定をやるときは、1人についてこの ファイル一つぐらいのことを議論して、それも多くの場合はやはり医学的判断 は困難であるという結論が出ます。今回の材料として、この一人当たり一コマ の数というだけで、これを判断するのは難しいと思います。ただ、一見しただ けでこの中に入っているものには、今回の薬物では説明ができないものも含ま れているように思います。  もう一点は、あるものがきっかけで起きるとすると、大抵は時間的に集積性 があると思うのです。つまり、ある時に使用したものが悪さをするのであれば、 それが体内に入って、あるところで増えていくという状況があって、そこで何 が生ずるだろうと思うのですが、その辺がちょっとバラバラです。あるいは詳 細が分からない。先ほどの薬物の蓄積ということも含めて、どのぐらいの量が、 いつ使用されて、そしていつ起きたかということがないとなかなか判断が難し いです。 ○松本座長 その辺の基礎的データも必要である、可能であれば必要であると いうことですね。槇田先生は、突然死との間に疑わしい例もあるという御意見 だったような気がするのですが、現段階ではいかがでしょうか。判断するとす れば、かなり疑わしいということになりますか。 ○槇田参考人 かなりという言葉を使っていいかどうか分からないのですけ れども、ただインフルエンザ・マイナスで飲んだ方もいらっしゃる、ただ検査 もフォルスネガティブということもあるからどっちか分かりませんけれども そういうこともあります。主治医の判断でたぶん関連がある、というようなコ メントがあるのも事実ですので、関連がないとは言えないと思います。  それから、飲んでからの経過ですが、特に精神症状の場合は一つひとつの症 例報告を読むと、例えば服薬して1時間ぐらいで出てきて、しばらく経つとそ の症状が治まって、次の服薬をして、また1時間か1時間半ぐらいで症状が出 て、しばらくしてまた治まるというような経過をとっている患者もいます。そ ういう患者は怪しいような気もします。ここを一つひとつ読めば、そういう情 報は結構あるのではないかという気はしました。 ○松本座長 異常行動によって、不幸にも亡くなられた方の場合は、異常行動 がタミフルと因果関係があるかどうかによって、ある程度判断が可能だとは思 うのです。それ以外の突然死に関しては、この症状詳記なり何なりで判断せざ るを得ないわけなのです。そのことについて、先生は先ほど少し疑わしいとお っしゃったような気がしたのですけれども、それははっきりさせる必要がある とすれば、どういうことをやったらよろしいかを教えていただけますか。 ○槇田参考人 先ほども言いましたように。 ○松本座長 心電図とか、そういうことをおっしゃったのですが、これはなか なか突然死の方には。 ○槇田参考人 それは動物実験でやってどうかということですが、おそらくデ ータはあると思いますので、そのデータを明らかにしていただければ。 ○松本座長 少し基礎的なデータを集めることも必要だろうということでよ ろしいですか。 ○槇田参考人 はい。 ○松本座長 現在の段階で、タミフルと異常行動、又は突然死との間に。 ○工藤参考人 私は成人を診ていて、小児の方を言うのはおこがましいと思う のですが、9ページのデータで成人の方を言及しました。下の方を見ますと29 歳か、今問題になっている若年者、あるいは小児の異常行動、死亡者数が出て います。これをざっと見たところ、死亡率が高いのはタミフル以前の傾向で、 下の方になっているのが最近のデータではないでしょうか。つまり、タミフル の効果がある程度ここで統計的な手法を使えば、タミフルが出る前と後の死亡 率が全体として分かるのではないでしょうか。そこからもしあるのならばタミ フルの副作用が出てくるのではないかという気がするのです。ざっと見た印象 ですがいかがでしょうか。 ○岡部参考人 今のはなかなか難しいと思うのです。これは、インフルエンザ ウイルスの流行株のタイプによってもときどき変化がでるものでもあります。 例えば、シドニー株が出たときに、強い重症感がある患者が増えたけれども、 ある年はB型が主流で重症率の割合が違ってくる、などであります。  もう一つ複雑なのは、これにもいろいろ議論がありますけれども、その中に ワクチン接種がどういう影響を及ぼしているかというのがあります。ですから タミフル一つだけのキーでもって減った、増えたというのはなかなか難しいの ではないかと思います。 ○松本座長 おっしゃるとおりだと思います。ほかに御意見はございませんか。 ○工藤参考人 摂取は、いつごろからでしたか。タミフルとの関連は少しずれ るのではないですか。それから、いまストレインの強弱ということを言われま したが、おそらく蓄積されたデータを見れば、1年、2年のデータではないと 思うので、初めから意味がないということではないという気がします。 ○岡部参考人 意味がないと申し上げているのではないけれども、一つだけで やっていくのは難しいと申し上げました。それからインフルエンザワクチンの 導入に関しては、高齢者に関しては年々接種率が上がっているという状況があ ります。ですから、それも一つの含まなければいけない要素として考慮する必 要があるだろうという意味です。 ○松本座長 よろしいですか。ほかに御意見等ございませんか。このたび、こ こにいろいろな副作用が挙げられているわけですが、先生方、日常の診療で御 経験になるものの中に、ここに書いてない副作用について、お気づきのものが あれば教えていただきたいと思います。いかがですか。これは膨大な副作用報 告書ですから見るのが大変だと思いますが、これを御覧になった上で、いま現 在、お気づきの点がありましたら教えていただきたいと思います。いかがです か。特にございませんか。これまでの議論を伺っていますと、タミフルと異常 行動等の精神症状、また死亡との関係については、はっきりとした結論が得ら れていませんが、現在、講じられている措置が当面の措置として妥当かどうか。 実際、これを行わなければいけないものですから、このことについてこれから 御意見を伺いたいと思います。現在講じられている措置については先ほど事務 局から説明がありましたが、ページ25、26に記載があります。現在講じられ ている措置について、事務局から25ページ、26ページをもう1回読んでいた だけますか。 ○安全使用推進室長 現在の措置としましては、3月20日に添付文書の警告 の欄を書き換えたわけですが、それが26ページに出ています。読み上げさせ ていただきます。 「10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤 の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。こ のため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断さ れる場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。  また、小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な 対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれ があること。(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等 は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対 し説明を行うこと。  なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの報告があ るので、上記と同様の説明を行うこと。」 以上です。 ○松本座長 現在、このような対策が行われているわけですが、これに関して 御意見はございませんか。倉田先生、何か御意見はございませんか。 ○倉田参考人 現状、どんなふうに使われているかというのを少し申し上げた いと思います。私の知っている限りの周りですと、例えば熱が38.5度ぐらい 出てしまうと、インフルエンザかどうかの検査もせずに、自動的にタミフルを 処方する医師がかなりいるように聞いています。また受験を控えたお子さんが 家族にいて、その家族が頼み込むとインフルエンザに罹っていないのに予防的 に処方する医師もかなりおられます。大事な子供、大事な孫が高熱を発して苦 しんでいるのを見ていられないという保護者たちが、可哀想だから解熱してや ってくださいと言って頼み込むと、やはり簡単に薬がもらえるという現状もか なりあるように聞きます。このタミフル自体、かなり使いすぎではないかと思 います。必要以上に使われていることで余計被害が増えているのではないかと 思います。  タミフルでもほかの薬でも、リスクとベネフィットの考えというのは大前提 だと思います。リスクとベネフィットには医学的な評価と、個人的な必要性や 価値観というのが絡んでくると思います。医学的な評価というのはハイリスク のグループとか、そういうものだと思いますが、個人的な必要性、価値観とい うのは、人生において自分で大事だと思っている例えば結婚式があるとか、ス ポーツマンが大きな試合があるとか、そういうことは特殊な事情で必要性が高 いと思っている人がいると思います。そのようなリスク・ベネフィットのバラ ンスというのは、本人しか判断が付かないものですから、医師が医学的なリス ク・ベネフィットの説明を十分にした上で、それで患者がそれを選べるという ことが、いちばん大事ではないでしょうか。 ○松本座長 そのことは大変大事なことだと思います。ただ、現在の段階では、 一つは10歳以上の未成年の患者さんにおいて、ハイリスクの患者さんを除い て原則、本剤の使用を差し控えることとなっていますが、この事について、こ れだけでよろしいかどうかを含めて、御意見をいただきたいと思います。いか がでしょうか。 ○槇田参考人 説明が十分なされたかどうかの担保がないわけです。こちらで 説明してくださいと企業の方から言っても、開業医の先生方が実際にそういう ふうに説明して渡されているかどうか、現段階では保証はないわけです。そう いう意味でこういう処方をするときに、我々は麻酔科医なので、麻酔をかける 方全員に書面によるインフォームド・コンセントをしてからやるわけですが、 そういうことも必要ではないかと私は思います。 ○松本座長 ほかに、どなたか御意見はございませんか。 ○日野参考人 私たちは皮膚科なのでかなり薬でいろいろな制限があり、すぐ 出せない薬があります。そういうときには同意書をとることになっているので すが、この薬に関してもきちんと説明を受けたかどうか、親御さんたちが理解 してくれたかどうかの同意書を必要とするのではないかという意見が、私たち の病院ではありました。今後、やっていくときに、一つの方法としていいかな とも思いまして、一応、述べさせていただきました。 ○松本座長 岡部先生、いかがですか。 ○岡部参考人 説明を十分するのは当然だと私も思います。ただ、インフルエ ンザという病気で多数の人が外来に来ているときに、一人ひとりに5分から 10分時間をかけて同意書をいただいてというのは、ますます小児科の診療が 不可能になるだろうと思います。私は小児科の一線から退いていますけれども、 それはよく分かる状況です。しかし、それは何らかの形で例えば外来に示すと か、あるいは文書で予め渡してもらうとか、あるいは処方箋と一緒にそういっ た説明を出す工夫は必要だろうと思います。  これは私の意見なのですが、資料の5ページで感染症情報センターのインフ ルエンザに対する説明というのが引用されています。インフルエンザは基本的 に大多数の人は特に治療しないで治るというのは、どなたも分かっていること であると思います。ただ、少しでもクオリティをよくしようとしてタミフルに 殺倒してしまったところがあります。そこら辺で先ほど倉田参考人が言われた、 リスクをどういうふうに考えるか、あるいは利益をどういうふうに考えるかと いうことは医師だけではなく患者さんにも、そこは理解していただかないとい けないと思います。ちょっと前までは救急外来に、「タミフルを出さない医者 は医者とは思えない」といった投書が来たりしたこともあったわけですから、 その辺、社会全体で考えていかなければいけないのだと思います。  私、かつて自分で当直をやったときに、抗生剤と解熱剤の注射をしないこと の説得をするのに1時間以上かかっていたことがしばしばありましたが、おそ らく今もそれと同様のことではないかと思います。社会に対してこの薬の使い 方というのは説明したほうがいいと思いますが、これイコールこの薬を葬り去 るという状況では今はないと思います。 ○松本座長 臨床現場の問題であろうかと思います。 ○倉田参考人 先ほど診療時間が5分、10分の中で説明は十分できないと言 われましたが、その時にパンフレットでも渡すという方法は私も賛成です。こ のパンフレットを是非作りたいと思います。厚労省がリードして作ってくださ るのかもしれませんが、是非、その中で、医療の受け手の人たちの意見も反映 できるようにスタッフの中に入れていただいて、資料の5ページにあるように、 そもそもインフルエンザはどんなものか、風邪とはどんなものかということか ら始まって、専門家の方たちから見れば、そんなつまらないこと当然知ってい るだろうと思うかもしれませんが、一般の人たちには知識の差が非常にあるの です。ですから、そう思われても段階を踏んでわかっていけばいいことで、そ れを含めてこういうパンフレットというのは、是非、作っていきたいと思いま す。 ○松本座長 インフルエンザの経過であるとか、ハイリスクな人について教え ていただこうと思っていたのですが、なかなか時間がありません。 ○桃井参考人 医療現場で、こういうふうに因果関係が明確でないと、否定も 肯定もできないというのは当然だと思いますが、その段階で患者さんは、いく ら言葉を尽くしてもメリット、デメリットは判断できないと思います。ですか ら患者さんのメリット、デメリットの判断にある程度委ねるのは、医療行政と して私は無責任ではないかと思います。医療行政としては、これだけ白か黒か 分からない以上、最悪のリンクがあった場合の安全をどうやって考えるかとい うところも、考えなくてはいけないのではないかと思います。  もちろん、100%関連なしと出ることが最良の場合ですが、しかし、重症度 化、あるいは一部なりとも、何らかの関連性ありという問題が出た時のことも 考えた医療行政をすべきで、患者さんに今の段階でメリット、デメリットの判 断を委ねるというのは、医療現場で患者さんが怒り出します。実際にそのよう にしている医師がいますが、私はタミフルをほとんど処方しませんけれども、 「私が決めろと言うんですか」と言って患者さんは怒り出します。そう言って 怒る患者さんの気持ちも私はもっともだと思います。ここでの議論でさえこう いう状態ですから、いくら言葉を尽くし、1時間話したとしても本当のメリッ ト、デメリットの判断はできないわけです。「あなたが判断しましたね」と言 うのは、まずいと思います。そういう意味で、これだけはっきりしない以上は、 最悪の場合も想定した医療行政というのが然るべきだろうと私は思います。で すから、10歳以上でハイリスクのみにするというのは、あまり根拠がないの ではないかと思います。  それと日本においてこれだけ使用し、国際基準からこれだけ離れた使い方に 関しては猛反省すべきではないか。日本の使い方のほうが正しいという根拠は どこにもないのではないかと思います。それを考えると白黒がはっきりしない 現状では、ハイリスクに限るという国際基準に戻したときに、翌年あるいは 翌々年に問題となった症例が減ったかどうかという数字が出てくるのではな いか。最悪のリンクがわかるまで待つのは医療行政として遅いのではないかと 思います。 ○松本座長 措置年齢は今のままでよいと、少なくとも今のままでいいという ことですね。これ以上広げるのはまずい。 ○桃井参考人 10歳以上という根拠がないので、あらゆる年齢においてハイ リスクという国際的な使用基準にすべきではないかと私は個人的に思います。 ○安達参考人 私は産婦人科医なので小児に出すということはあまりないの ですが、確実にタミフルが原因ということは今日の議論でも確定できないとい うことは明らかです。そういうことで若年者では、ハイリスク症例以外には出 さない。あるいは今回、未成年の方にこういう文書を出すことは非常に賛成で す。  ただ、タミフルによって死亡率が減っているのも事実だと私は思います。も ちろん、きちんとした解析はしなければいけないのですが、タミフルが怪しい から絶対使わないという方向に持って行くというのは、なかなか難しいのでは ないかと思います。今日の議論の中で、突然死に関してのお話があったのです が、もともと基礎疾患があったために突然死に至ることもあります。一方で、 そういう症例はハイリスクということになりますので、そういう症例に対して タミフルを使わないようにすることには、大きな分析が必要と思います。  先ほど話がありましたが、私も経験しているのは、受験期の子供がいるので タミフルを出してほしいという依頼です。今日、いちばん最初に座長が言われ た、してはいけないことというのがあったと思います。インフルエンザの確定 診断をしていない症例に対して、タミフルを出すことは絶対しないというのは 大原則と思います。  妊産婦でインフルエンザの方は結構いらっしゃるのですが、異論があるかも しれませんけれども、いちばん最初は予防ということでワクチンの接種をお勧 めします。日本ではまだ、妊産婦にワクチン接種を必ず勧めるところまでいっ ていないのですが、世界的には妊産婦にはまずワクチン接種を勧めます。タミ フルを私は一度も妊産婦に処方したことはありません。これは慎重投与という か、「実際に有益性が上回った場合」という非常に曖昧な書き方なのですが、 私は妊産婦にタミフルを処方したことはありません。いちばん最初にすべきこ とは予防することであり、確定診断していないものにはタミフルは処方しない ということです。  実際に臨床の場で、先ほどパンフレットを渡すというお話がありましたが、 ずらっとインフルエンザのことが書いてあって、一般的にこんなリスクがあり ますと書いてあっても、患者さんは絶対読まないです。それをその場で渡して 読んでくださいと言っても、まず読まないですね。私たちも産婦人科の医療の 中ではいろいろな情報提供があるのですが、まず項目をいくつかに分けて、あ なたはこれに当たりますよというところで、ここを重点的に読むという形でし ていただくのがいいと思います。全般的にずらずら書いても絶対無理だと思い ます。この年齢ではこういうことが言われています、こういうリスクのある人 はこうだと言われていますとポイント、ポイントのものがあって、そこだけチ ェックし、そこだけをまず重点的に読むというのを作っていただければ、実際 には活用しやすいし、そのぐらいの文章であれば読んでいただけるのではない かと思っています。 ○松本座長 審議官からコメントしていただきます。 ○審議官 ありがとうございます。先ほど桃井参考人からお話がございました 国際基準というお話ですが、例えば27ページに欧米の添付文書の写し等があ ります。その中で薬の側から見て特別の基準のような書き方は、私はこれをす べて精査したわけではありませんけれども、今のところないと承知しています。  その他のものですが、似たような部分としては、6ページの「インフルエン ザについて」というところを御覧いただきたいと思います。そのトップにイン フルエンザによってもともとの御病気が悪くなったり、あるいは予後が不良の ケースを想定せざるを得ないような、そういったハイリスクの方や重症例では、 早期にインフルエンザウイルス薬を投与するといった、むしろ裏側の表記なの かもしれませんが、記載があります。現在はそのような状況ではないかと思っ ています。 ○松本座長 ほかに御意見はございませんか。  ○医薬食品局長 もう1回、先生方にお聞きしていることのポイントを申し上 げたいと思います。先ほど安全使用推進室長の方から申し上げましたように、 私どもが今とっている措置は、異常行動との因果関係はあるかどうか分からな いと、その前提での予防措置です。ですから、あってもなくてもそれはどうで もいいので、最後に振り返って考えたらインフルエンザが本当の原因であった かもしれないし、タミフルが原因であったかもしれない。あるいは相互作用か もしれない。それは別に構いません。ただ、最悪の結果を防ぐために、今とる べき行動がどういうものかを警告として示している。それは基本的に、10代 の患者さんについては原則投与禁止、ただ、ハイリスク患者は別だということ。  10歳未満の患者さんについては、親御さんが一人にならないように2日間 十分見てくださいと。これについては投与して、2日間徹夜して見るというの は不可能とは言っていませんが、何か投与の時間帯をうまく制限できないのか という話は来ています。ただ、それは血中濃度等の動態を見れば当然明らかな ので、それは1日2回投与ですから、時間をきちっと守って投与していただく しかないのです。寝る前だけ特別投与しなくてもいいとか、そういうことはで きないのですが、それが10歳未満の患者さんです。  20代以上の方については、基本的なもともとの投与の注意に戻りますが、 248ページに今のカプセルの使用上の注意、警告が書いてあります。248ペー ジの警告のいちばん左の欄のいちばん上に、「本剤の使用にあたっては、本剤 の必要性を慎重に検討すること」とあります。このもともとの限定は付いてい ます。ただ、このもともとの限定は日本の医学標準ではかなり広く投与してい る実態になっている。欧米はそうではないということはあるわけです。  そのことについて、特に私どもがいま気にしているのは、20代以上の方に ついて何らかの投与制限が要るか要らないか。それは因果関係についてはよく 分からないけれども、今の段階で何かする必要があるのか。ここについては私 どもとしては、どうすればいいかという部分はまだあります。  ただ、20代以上の方についての今までの事例を見ると、それほど多くはな いのと、今回は20代の方について1例あるのですが、その詳細はよくわかっ ていないわけです。いずれにしても、この点についても少し御議論いただきた いと思っています。 ○松本座長 御意見はございますか。 ○工藤参考人 20代でも少し見うけられますね。断定はできませんけれども、 薬の副作用によるものがあるかもしれません。今どうするかという議論として、 これだけ副作用かどうか言われているわけですから白黒の決着は付いていな いので、疑しきは控えるという姿勢が私はよろしいだろうと思います。  ただ、成人の場合は先ほどから申し上げているように、明らかにこれは副作 用も少ないし、その有効性が明らかなので、あまり成人のほうで制限するのは、 いかがなものかなという印象を持っています。  そして、これだけ問題になっていますから、これを曖昧にして、このままそ れぞれ患者さんの判断でということはなかなか難しいと思うので、ある程度の 結論は将来出していかなければいけません。それは現時点だけでなく、新型イ ンフルエンザ云々と言ったとき、おそらく厚労省の場合は、2千万人分のスト ックをされているということもありますので、結論を出すにはプロスペクティ ブスタディを組んで結論を出すべきではないかという気はいたします。 ○松本座長 ほかに御意見はございませんか。 ○猪熊参考人 私は感染症でも小児科でもなく、膠原病、アレルギーの専門な のですが、非常に強い免疫抑制剤やステロイドを使って、日和見感染どうぞと いう状態となるつくる患者さんを抱えている者です。そういう患者さんたちの インフルエンザそのものの感染頻度が著しく高いかどうかということは、感染 症の専門家にも伺いたいと思いますけれども、まだ分かっていないのではない か。ただし、そこから先でもし合併感染をした場合には、インフルエンザその ものの病態が極めて重症化しやすいだろうと思われるし、予後にも関わり得る だろうと思います。  もう一つ、インフルエンザに罹患することによって原病もそうですが、さら に合併症を引き起こす頻度が極めて高いだろうと思います。そうなるとタミフ ルを投与するというチョイスをする。それをこちら側の勧めとしてプレゼント しなければいけなくなるだろうということがあります。私が言いたいのは、ハ イリスク患者がどうしてハイリスクかということの整理を、もっとしておいて いただきたいということが一つです。  その投与における適応なのですが、先ほどからの議論を伺っていると、QO Lに関して、例えば日常生活のQOLを高めるために、投与をしてもらいたい という要望もあると思います。そのあたりの適応の範囲というのを、ある程度 整理して出していただけると非常にありがたいと思います。あと今後の宿題に ついて、またその時に申し上げたいと思います。 ○松本座長 今後、どのような取組みが必要と考えられるかについて御意見を 伺いたいと思います。中澤先生、何か御意見はございませんか。 ○中澤委員 私はもっぱら薬事の非臨床のほうの仕事を中心に進めているの ですが、臨床の先生方のお話を伺っていて、臨床例を精神病の分類に従って詳 細に分けることによって、タミフルの影響を浮き彫りにするアプローチもすご く重要だと思います。これに加えて非臨床の動物の実験で、中枢神経系に対す る作用というものに、もう少し踏み込んで調べてみることも必要ではないかと 私は考えます。  例えば、インフルエンザの熱による影響に対する、増強因子となり得るのか どうかなどを、実験条件を揃えて、動物数を揃えて比較することにより、より 科学的な情報が得られる可能性があるのではないかと私は思います。 ○松本座長 土屋先生、いかがですか。 ○土屋委員 今後の問題として一つ考えなければいけないのは、最近になって 医療機関からの報告が急激に増えたということで、このことは非常に重要では ないか。いわゆる企業報告だけでなく医療機関からの報告が非常に多く出ると いうことは、いろいろな意味で重い意味を持つと思います。  そうすると、こういうデータを精査していくことが必要なのですが、先ほど の話ではないですけれども、いま集められているデータが精査に耐え得るのか どうか。少なくとも今後集めるものについてはポイントを絞った集め方をして いかないと、なかなかいけないのかなと思います。そういった中で現在のデー タの取り方も、タミフルということに限るのではなく、どうあるべきかという ことは検討すべきではないかと思います。  また我々はタミフルという物質について、まだ分からない点がいっぱいある のかなという気もします。そういった意味では、先ほどから出ているハイリス ク患者の場合でも、どのような時点でどうなるのか、きちんとデータを取って 精査していくことが必要ではないか。有効性として罹患期間の短縮しかないと いう話が出ていますが、ハイリスクの患者さんに対してというところは、もっ ときちんと検討していくべきではないかという気がします。  その中で、さまざまに言われている効果というものが、どういう患者に対し てどうなのかということをきちんと見ていくことがないと、さまざまな制限を しようとしても、そこで使うか使わないかというときに、データをきちんと取 る必要があるだろうと思います。そういった意味で、今後のデータの取り方、 あるいは現在あるデータでもそれに耐え得るものは当然使うべきですが、デー タの取り方ということを、今後、こういうことを考えていく上では重要なファ クターとして、どうとるべきかということをきちんとやっていかないといけな い。  副作用情報の報告と公表の資料が24ページにありますが、こういったもの が報告されてきたときの解析体制が、果たして十分とれているのかどうかもあ ると思います。これは医療機関の報告、その他が増えてくれば、こういうこと について解析に莫大な労力がかかることは分かっているわけです。どちらかと いうとドラッグラグなど新薬の承認については、これから大幅に人を増やして 審査を早くということが行われていますが、一方で、企業あるいは医療機関か ら来た副作用情報を解析するためのスタッフも、かなり豊富にしておかないと、 現実としては資料がきちんと上がってこないということも、対応の遅れを招く 可能性がありますので、そういった意味での体制がきちんととれるようにする ことも、今後の宿題なのかなと思います。 ○一瀬参考人 今後、是非お願いしたいこととして、先ほど言っていましたが 睡眠学的な検討を是非加えていただきたい。実は睡眠科学はかなり進んでいて、 実験室睡眠で睡眠異常についてはいろいろな知見が得られます。先ほど動物実 験というお話が出ましたが、まるごと人に対して投与して睡眠に対してどうい う影響を与えるか、異常睡眠を起こし得るかどうか、その辺の検討まで含めて 是非お願いしたいと思います。  そうすると、いまいちばん問題になったのは異常な言動で、そのまま落ちて しまうといういちばん悲惨なことが問題になっているわけですから、その辺に ついてきちんと科学的なデータを出して、WHOに提言していくことがいちば ん大事ではないかという感じがします。 ○猪熊参考人 先ほどリスクの話を申し上げたのですが、もしかすると現在言 われているリスクを持っている患者さんの方が、むしろ突然死を呈したり、あ るいは異常行動を呈したりということすらあり得ると思うのです。だからリス クを持っていれば投与していいと、そんな簡単に言ってしまったらいけないの ではないかと思います。  今後のやり方ですが、ここの資料からは白も黒も言えないという話が出てい ますけれども、こういう問題が起きたときのやり方としては、プロトコールを 決めて前向きにデータを取っていくという手法もあるでしょうが、私自身が臨 床家ですので、ここにファイルされている事例の研究、症例の研究というのが 最も大切です。まさに真実がここに入っているわけです。それを事例研究、症 例研究として専門家が見れば、かなりの共通項が見えるのではないかと思いま す。この宝を活かすということを忘れてプロトコールを組んでも、いいプロト コールはできないのではないかと思います。ここから疑しき作業仮説を引いて きて、それでプロトコールを組むということなしには、エフェクティブな研究 ができないと思いますので、作業は大変ではありますが、臨床家の目、専門家 の目というのは、それだけ鋭いと思いますから、これを是非更に活かす方法を 探っていただきたいと思います。 ○岡部参考人 先にやるべきことということで、よろしいですか。一つは、ど うしてできないのかなと思っているのですが、異常を起こした人に対する薬の 血中濃度というのは多くの薬物の場合は測れるというのが、今までと思います。 そこら辺がないとなかなか科学的なディスカッションができない。私は薬理の 専門ではないので、どうしてこれがタミフルではすぐに測れないのか分からな いのですが、血中濃度あるいは髄液中濃度といったものが測れると、それです べて回答が出てくるかどうか分かりませんけれども、一つの大きい指標になる だろうというのがあります。  次に、もしインフルエンザという熱性の病気について、何か異常反応がもと もとあるのかどうか。広範なデータが我が国だけでなく実はどこにもないので はないかと思います。ですから、こういうような機会があるならば、インフル エンザという病気の病態、特に問題になるような異常行動については、これは 一種の感染症ですから、感染症サーベイランスといった中から何かピックアッ プできる方法がないのか。一応、そういったことのデータベースの作り方を考 えておりますけれども、しかし、これは研究レベルでできることではなくて、 国が国としての調査のためにこういう報告をしてほしいと、医療機関に協力を お願いしなければいけないと思います。そういった形をとればもう少しインフ ルエンザという病気の実態が浮き上がってくるのではないかと思います。ただ、 これは、すべてを届けるわけにはいかないので、ある程度については定点とい った形での報告がいいとは思います。  もう一つは、極めて稀な異常行動あるいは重症例に走った場合、これも現在 は届け先がないので、結局、臨床の先生方は、これを一体どこに報告していい のか迷っていらっしゃると思います。それも、そういったサーベイランスの中 で全数報告として一つ出来上がるのではと思います。私たちは薬の効果とか副 作用を調査する所ではないのですが、感染症の関連ということであるならば、 調査は可能ですが、何らかのシステムの変更が必要かもしれません。そういう ところが国の中でも理解していただければ、実行としてはできるだろうと考え ています。  異常死の問題ですが、異常死を届けるということになると、どうもすぐに警 察ということになって非常に届けにくい状況が、おそらく臨床の現場ではある のではないかと思います。一時、地域保健の中で保健所にそういう異常死を届 けて、医学的に問題があるかどうかのデータベースを取ろうかとなったのです が、いつの間にかそれは消えている状況にあります。今回のような事例を医学 的に検証していくということであれば、そういったシステムも必要ではないか と思います。  最後に、薬事法上の報告制度の中で、いま行われているのは副作用の届け出 になっているのではないかと思います。冒頭に申し上げた有害事象をどう捉え るかという形での有害事象の見方では、副作用という言葉と有害事象という言 葉は微妙に違う部分があるので、それによって報告制度をどういうふうにする か。先ほどほかの先生も言われていましたが、それをきちんと分析するシステ ムについても言及していくことが、この薬だけでなく、そのほかのものに多分 に応用ができるのではないかと思います。 ○日野参考人 今の岡部先生のお話ですが、医薬品医療機器総合機構の健康被 害救済システムを使ってはいけないのでしょうか。そうすると、もう少し細か いデータもより集まりやすいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 もう一つ、26ページまたは248ページですが、インフルエンザの証明された 方だけが投与されるというのを、きちんと明文化したほうがいいのではないか と思いますが、いかがでしょうか。これだけだと非常に曖昧ではないかと思い ます。先ほど言われたように、子供の受験のために投与してほしいと言われて もすぐに処方できないように、きちんと証明されない限りは処方しませんと言 えるように明文化したらいかがでしょうか。  もう一つ、このタミフルに関して、データはたぶんお揃いだと思いますが、 確かにインフルエンザのときに投与されて何かが起きる、あるいはインフルエ ンザプラス脳症で何か起きてくるのもあるかもしれません。動物実験などで、 何もなく全く健康なときに投与された場合に異常行動を起こすような薬なの でしょうか。例えば抗ヒスタミン剤などですと眠気だとか、インペアドパフォ ーマンスがいろいろ起きてくることがありますが、このタミフルというのは全 く健康な動物などで異常行動を起こすのか、そういう実験データはあるのでし ょうか。Aという条件のみ、またはA+B、A+Cという場合の反応の仕方は どう変わっていくのかと思って伺ったのですが、いかがでしょうか。 ○松本座長 そのことを今日議論していただきたかったのですが、答えはいま 出せないかと思います。 ○日野参考人 今後、もしそういうことがあるならばということで、そういう 面からも討議したらいいと思います。 ○松本座長 分かりました。広津先生、何か御意見がありますか。 ○広津参考人 自分の専門は統計科学ですが、いま、この問題で統計に問われ ているのは、非使用と、今の場合に比較されているのは未使用ですけれども、 未使用群と使用群の間に差があるかということだと思います。平成17年度の 解析報告も読みましたし、先ほどの発言の中にも10.6%と11.9%の比較の話 なども出ていますが、いくつか分かったこともあると同時に、また問題点が非 常に浮き彫りにされたという印象も持っています。細かいことは置いて、自分 が非常に大きな問題点と思うことを三つ挙げたいと思います。  その一つは、これもどなたかの発言の中にあったことですけれども、今回の データは朝昼晩という大きな括りでデータが取られていますから、300人、400 人が同時期、統計的にはタイと呼びますが、タイを成していることと、服用と 発症の前後関係が厳密に定義されていないことです。したがって、例えば朝に 関して言うと、朝一番でタミフルを飲んだことにすれば、朝発症したものは全 部タミフルのほうに被せられるわけです。したがってタミフルの方を過大評価 することになります。一方で、その300を未使用の方から一斉に引くと、未使 用の分母が今度は過小評価になってしまうわけです。そうすると結果として比 率が過大評価になるということで、いろいろ補正したり、いろんな見方をして 何とか結論を出そうとはしているわけですが、今回のデータでは、いま言った ことから厳密な議論は非常に難しいだろうということが一点です。  次に、いろいろ報告を読み、今日、お話を聞いてもつくづく思うのは、比較 可能性を問われているエンドポイントは何かというのが、たぶん医師の中でも 必ずしもはっきりしていない。異常行動を何から何まで拾うと、特に先ほどタ ミフルは増強因子という側面があるのではないかという発言がありましたが、 そのことを考えると、すべてのものを拾ってしまうと、むしろ差が出にくくな るということは当然ありますから、例えば、場合によっては死に至る異常行動 ということが、果たして医学的に定義できるのかできないのか。非常に難しい とは思いますが、いま見ようとしている、特に差を明らかにしようとしている エンドポイントをもう少しクリアにしていただかないと、統計のほうはちょっ とどうやっていいか分からないという部分があります。  もう一つは、いま未使用と使用の群間比較になっているわけです。そして最 終的には使用群が約90%、未使用群が約10%ということなのですが、普通の 臨床試験の群間比較だと、群間の処理の違いを除けば、2群は被験者の無作為 割付けで定まるわけですが、この10%、90%に分かれた2群は処理ではもち ろんはっきり分かれているわけですけれども、無作為割付けとはとても思えな いわけです。症状を見ながらタミフルを投与したり、しなかったりということ をやっていると思いますから、処理以外の部分が無作為割付けで均等化されて いるとは到底思えない。それは統計的に、事後的にいろいろな共変量による補 正、例えば熱が測られているとかいろいろなことがあれば、ある程度補正はで きるのですが、この使用・未使用のデータから推測するには相当データの取り 方自体もきちんとしないといけないし、推測も相当気をつけなければいけない だろうという気がします。本来は臨床試験が望ましいと思いますが、それは現 場のいろいろな要請から、ちょっと不可能ということであれば、いま言ったよ うなことに十分気をつけながら、データを取り、データを見るということにな ると思います。  ただ、もう一つ公表されているものに平成18年度の調査というのがありま す。そちらでは、少なくとも時間経過に関しては非常に厳密に取ることになっ ていますし、熱等の重要な共変量もきめ細かく報告してもらうようになってい るようですので、平成18年度データが出てくると、さらに詳しいことがある 程度わかるのではないかという気がしています。  もう一つ、リスク・ベネフィットは大事なポイントなのですが、我々が聞か されているベネフィットの方は、熱の下がるのが20何時間早いということだ けですので、死亡率に関する議論がもし可能なら、もちろんそれは大いにやっ ていただきたいことだと考えています。大体そんなところです。 ○松本座長 ほかに御意見はございませんか。 ○鴨下参考人 今日はタミフルの白黒を決定する会議だったと思いますが、結 論としては、これだけのデータでは決せられないということです。これをもう 1回精査してというお話がありましたけれども、私もざっと見ただけですが、 これから新しい何かが出てくるのはすごく大変なことです。やることは必要か もしれませんが、それよりもむしろ今後、特にハイリスクだけに限って使うと いうことで、それによってどのような結果が出てくるかを、慎重に検討するこ とが大事ではないかと思います。  そもそも日本人の薬の使いすぎがベースにあると思います。先ほど検査もし ないでタミフルを飲ませるということがありましたが、そんなことは私ども小 児科医としては考えられないことです。そういう医師がいるのであれば、それ は厳しくそういう認識を持ってもらわなければいけないということはあると 思います。  これは繰り返しになりますが、インフルエンザプラスタミフルと、インフル エンザだけと、少数ではありますけれども似たような異常行動が出ているわけ です。その辺も今後どういうふうになるか。これは流行がないとなかなか分か りませんが、それと子供の場合は異常行動そのものの分析というか、これは年 齢的に非常にはっきりしていると思うのは、子供のときから使えば子供の発達 期の脳、発育期の脳には何らかの影響の可能性があるだろうと思います。それ はインフルエンザそのものもインフルエンザ脳症が子供に多いわけですから、 そういう点で、今後臨床的な分析も非常に重要だろうと思います。  なおもう一点言わせていただければ、このインフルエンザウイルスと神経系 の関係というか、タミフルの神経組織への薬理作用とか、その辺の基礎的なこ とが本当にしっかりやられていたのか。これはこの場での課題ではないと思い ますけれども、厚労省としてはそういった研究も進めていただくということも 重要と思います。  私自身の個人的な経験ですが、インフルエンザに罹った子供に予防接種しま したかと訊くと、全員していませんね。それはウイルスのホストの問題という のはあると思いますが、インフルエンザ対策としては、もう少しワクチン接種 など別途考えていただくということも必要ではないかと思います。 ○松本座長 岡部先生、どうぞ。 ○岡部参考人 インフルエンザと確定、あるいはインフルエンザと診断される 方には、タミフルの適用だというお考えに賛成です。日本では迅速診断という ものが非常に普及していて、あれができるのは我が国だけで、ほかの国はほと んど使っていないということがありますが、現在の迅速診断法といわれるもの が100%信頼性のあるものなら、それでインフルエンザである、インフルエン ザでないという診断がある程度つきますが、必ずしもあれは信頼性が100%の ものではなくて、キットで陰性であるけれども実はインフルエンザであったと か、それはご存じのように検体採取の取り方にもよりますし、あるいは途中の プロセス、時間等々いろいろな要素で左右されますのでがありますから、必ず しも迅速診断キットでインフルエンザ、インフルエンザでないというのは決ま りにくいものであるということも、また意識しておかないといけません。右左 ということでは検査は難しいものだと思います。 ○松本座長 ほかにございませんか。 ○児玉参考人 安全対策の今後の問題ということで、いま議論されていますが、 先ほどからお話がありましたように、安全対策は大きく分けて二つあります。 一つは先ほどずっと議論されたように因果関係を確定していく。あるいは処方 時の注意をしていく。これは当然だと思います。  もう一点は、先ほど倉田参考人が言われたことと関係があるのですが、処方 後、患者さんが受け取ったときの注意喚起も同時並行で非常に大事なことだと 思います。先ほどお話がありましたように、25ページ、26ページで、2月28 日に注意喚起の医療関係者向けのものが出ました。これについては、私どもは 保険薬局が対象ですので翌日にはFAXで全薬局に流したのですが、問題は今 回のように因果関係が不明の段階で注意喚起ということです。これは確かに先 ほど話があったように重症化を防ぐ意味で大事だと思います。  ところが、第一線の特に薬局関係でいくと、いろいろなことを患者さんが聞 かれる。いまはもう54%ですから、単純に言えば半分以上の患者さんはタミ フルを薬局で受け取るわけです。したがって、そこでいろいろなことを聞かれ るわけです。特に今回のような、いわゆる異常行動となってくると、通常以上 に不安感をお持ちになっている。例えばいろいろなことを聞かれるわけですが、 この1、2に書かれていますね。発現の恐れがありますよ、一人にしないよう にと言うと、お母さんなどが「ではこうなった時に、どうしたらいいんですか」 と聞くわけです。「異常行動を起こしたときに押さえるんですか、何か大きい 声を出したほうがいいんですか」となってくるわけです。そういうふうにいろ いろな反応が出てくるわけです。  何を言いたいかというと、今後、こういうふうな流れの中で、医療関係者と 同時に患者さんへのフォローアップ体制という意味で、そういうふうなことを 同時にやる。それがある意味で安全性対策になると思いますので、よろしくお 願いしたいと思います。 ○松本座長 本来、医師や薬剤師がやるべき仕事であろうかと思います。ほか に御意見はございませんか。いろいろな御意見が出ましたが、まとめると既に あるものの精査と、これからの前向きの調査が必要であろうということになる と思います。このことに関して、このような作業を今後行っていく上では、必 要に応じて、この調査会の下にワーキンググループを作るのが合理的ではない かと思いますが、いかがですか。ワーキンググループを作ることに賛成してい ただけますか。よろしいですか。                  (異議なし) ○松本座長 ありがとうございます。それではそのようにさせていただきます。 そろそろまとめに入らないといけないのですが、先ほどはっきりとした意見を 述べていただけませんでしたので確認をとらせていただきます。10歳未満と 20歳以上の方に関してどのようなことをするか。今のままでいいかどうかに ついて、御意見をいただければと思います。飯沼先生、医師会の立場から何か 御意見をいただけますか。個人的な意見でも結構です。 ○飯沼参考人 個人的にはそれでいいと思いますが、医師会の意見ではありま せん。 ○松本座長 規制することに関して、今のままでよろしいということですか。 ○飯沼参考人 私個人的には。 ○松本座長 分かりました。ほかに、このことに関して御意見はございません か。今のままでよろしいという方が多いですか。10代を原則禁忌にしている 今の措置でよろしいということですか。あと10歳未満と、20歳以上に関して は何も制限をかけないということをこの調査会の意見としてよろしいでしょ うか。反対はございませんか。   (異議なし) ○松本座長 ありがとうございます。 ○浦田参考人 データの見方で一つ気になっている所があります。それは10 歳という所で切られていることなのです。実は5歳まで、5〜12歳まで、12〜 20歳まで、20歳以上という切り方をしている別のデータを見ていますと、ち ょうど10歳そこそこの所にピークのあるような行動の問題が出ており、10歳 の所で切られているというのは、何となく嫌な気持もしないわけではありませ ん。私どもがいま見させていただいているデータでは、年齢は0〜10歳までか、 10〜20歳までかというぐらいしか分かりませんので、この辺を一度きちんと 整理した上でこの問題を、本当にこれでいいのかどうかお考えいただきたいと ころがあるのです。ですから私は、原則的にこのままでよろしいというのに「う ん」と言えと言われると、つらいところがございます。 ○松本座長 分かりました。このことに関してはここですぐに結論が出る問題 ではありません。先ほど御了承を得たWGで検討して即座に対応をとっていた だく。すなわち今はこのままにして、WGで精査をして、必要があれば、でき るだけ早く変更なり何なりの対応をとるということでよろしいでしょうか。   (異議なし)− ○松本座長 本日の議論を取りまとめたく思いますので、15分ほど休憩に入 ります。15分後には、皆さん席にお戻りください。何人かの先生と一緒に草 案づくりをいたします。よろしくお願いします。 (中断30分)− ○松本座長 先生方、大変お待たせいたしました。一応意見(案)がまとまりま したので、ただいまから事務局の方に読み上げていただきます。 ○事務局 それでは読み上げます。平成19年4月4日。薬事・食品衛生審議 会医薬品等安全対策部会安全対策調査会。リン酸オセルタミビル(タミフル) の副作用報告等を踏まえた当面の対応に関する意見。タミフルについての当面 の対応に関する意見は、次のとおりである。 第1、本日の検討。本日、当調査会は、平成19年3月20日までに企業から報 告された1,079人、1,465件の副作用報告及び翌21日から同年4月3日まで に企業から報告された185人分の副作用報告(未整理分のもの)等について検 討を行った。本日の検討では、タミフルの服用と転落・飛び降り又はこれらに つながるような異常な行動や突然死などの副作用との関係について、結論は得 られていない。今後、詳細な検討を行うなど、第3に示すような取組を行うこ とが必要である。 第2、現在講じられている措置。1、 3月20日に緊急安全性情報を発出し、次 のような措置が講じられている。当面の措置としては、現在講じられている措 置を継続することは妥当と考えられる。ただし、新たに設置するワーキンググ ループにおいて更に検討を行う。 ◎10歳以上の未成年の患者は、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断 される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。◎小児・未 成年者は、本剤による治療が開始された後は、[1]異常行動の発現のおそれがあ ること。[2]自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・ 未成年者が一人にならないよう配慮することについて、患者・家族に対し、説 明を行うこと。◎インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの 報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。 2、タミフルを服用していない場合においても、インフルエンザの臨床経過中 に転落・飛び降り又はこれらにつながるような異常な行動の発現がみられる。 この点について医療関係者は注意すべきであり、関係団体は、医療関係者に注 意喚起すべきと考えられる。 第3、今後必要と考えられる取組。 1、本問題の解明に資するよう、次のような基礎的研究を実施し、その結果を 当調査会に報告することが適当である。 ◎タミフルの神経生理学的な作用を更に明らかにするためのタミフルの脳内 (中枢神経)への移行等。 2、タミフルの安全性について、次のような臨床的な側面及び基礎的な側面か ら詳細な調査検討を行うため、当調査会の下に、[1] タミフルの臨床的調査検 討のためのワーキンググループ(仮称)(以下「臨床WG」という。)及び[2] タ ミフルの基礎的調査検討のためのワーキンググループ(仮称)(以下「基礎WG」 という。)を設け、その結果を当調査会に報告させることが適当である。 [1] 臨床WG ◎転落・飛び降り又はこれらにつながるような異常な行動、突然死等の副作用 についての詳細な調査検討。 ◎今後の臨床研究の計画、結果等についての検討。 ◎平成18年度厚生労働科学研究費補助金「インフルエンザに伴う随伴症状の 発現状況に関する調査研究」の結果等についての検討。 [2] 基礎WG ◎今後の基礎的研究の計画、結果等についての検討。 3、平成18年度厚生労働科学研究費補助金「インフルエンザに伴う随伴症状の 発現状況に関する調査研究」の結果を臨床WG及び当調査会に報告する。 4、企業及び厚生労働省は、引き続き、タミフルに関する国内外の安全性情報 の収集に努め、必要に応じ、迅速かつ適切な対応をとるべきである。以上です。 ○松本座長 この案に対し御意見等はございますか。 ○槇田参考人 いろいろ意見が出たと思うのですが、そこで吸い上げられた意 見があまり書かれていないように思うのです。例えば、インフォームドコンセ ントを書面でとるとかいうようなこともあったと思いますが、そういうことは どうなったのでしょうか。  また突然死について、因果関係があるかも分からないということを主治医の 方が出していることもあります。転倒防止には、不整脈のことは書いてあるの ですが、突然死のことが書かれていない。結構な人数の方が突然亡くなられて いることに鑑みますと、突然死も副作用に入れていただきたいと思います。 ○岡部参考人 1ページの1の3番目のポツに、インフルエンザ脳症等によっ ても同様の症状が現れるとの報告があるとありますが、必ずしも「インフルエ ンザ脳症」と確定されていなくても症状が起きることはあるので、「インフル エンザ」でいいと思います。 ○松本座長 「等」と言う場合はいろいろなものが入るので、それで入ったの かもしれませんが、消しますか。 ○岡部参考人 特に年齢が長じた場合にはインフルエンザ脳症あるいは脳炎 のリスクが低くなっているので、ちょっと別だと思うのです。 ○松本座長 インフルエンザによってもということですね。 ○岡部参考人 「等」に含めるということがコンセンサスであるならば結構で す。 ○松本座長 それはどれぐらい断定するかにもよりますから。ほかにございま せんか。 ○猪熊参考人 本当のリスクというのがよく分かっていない。リスクのある患 者に限りなさいと言われてもいまいち分からないので、WGの検討課題として、 そこにも触れていただくとありがたいと思います。 ○松本座長 そうですね、先ほど先生がおっしゃっていましたね。ハイリスク を避けるために使うような意味で書いてあるのですが、必ずしもそうでない場 合もあるかもしれない。 ○審議官 分かりました、検討します。 ○松本座長 ほかにございませんか。 ○倉田参考人 患者さんに向けてのパンフレットは要らないということにな ってしまったのでしょうか。 ○審議官 いいえ、違います。 ○松本座長 パンフレットその他は要ると思いますが、ここに書いてないです ね。 ○審議官 では、直したものを読みます。1枚目では、最初にいただいた意見 と倉田参考人の意見を反映しております。1枚目のペーパーの下から3分の1 「第2」の1のおしまい辺りですが、「現在講じられている措置を継続するこ とは妥当と考えられるが、医療従事者に対する注意喚起の徹底に一層努力する とともに、患者、患者家族等へのインフルエンザ等の基礎知識の普及に努力す ること。」  猪熊先生に言われた部分については、例えば2枚目、2の[1] 臨床WGの最 初の◎の2行目を「詳細な検討調査、また、インフルエンザハイリスク患者に 特有な問題の有無の検討」といたしました。 ○医薬食品局長 私どもの話を少しさせていただきたいのですが。今第2に付 け加えました「医療従事者に対する注意喚起の徹底に一層努力するとともに、 患者や患者家族等へのインフルエンザ等の基礎知識の普及に努力する」とあり ます。これを役所だけでやるとか、タミフルを売っているメーカーがこれを背 負ってやるとかというのは当然無理があるので、いろいろな関係団体や学会等 の御協力を仰がなければいけない。私どもの立場としては、特に薬の局であり ますので、そこはそういった含みがあるという上でのご了解ということでよろ しゅうございますか。そこだけ確認したいのですが。 ○松本座長 よろしいですね。 ○審議官 次は突然死に関する注意喚起の問題です。私どもとしては、今回御 手元に紹介した症例において、判然と内容を確認し、これこれである、あるい は病気のせいであるということには至らないところ、ここに書いてあるWGで できるだけ詳細なデータを再度集め、そこで改めて検討をし、必要があれば遅 滞なく、迅速に適切な対応をとる、そのような方向の議論だったかと考えてお りますが、いかがでしょうか。 ○松本座長 いまのような訂正で御異論がなければ、この案を今日の調査会の まとめの意見とさせていただきます。では、全体について御意見等はございま せんか。 ○宮坂参考人 今日討論されませんでしたが、一般の方々が、まだ発生してい ない新型ウイルスに対するタミフルの備蓄の問題と今流行しているインフル エンザに対する治療とを混同しているところがあると思いますので、何かの機 会にうまく情報を流していただければいいと思うのです。タミフルがすごい薬 だと思われているのは、どうも、そちらのことと混同されているところがある かなと思いましたので。 ○医薬食品局長 新型インフルエンザ対策として、罹患したおそれのある場合 には発熱から48時間以内にタミフルを投与ということで、その効きめに着目 して今備蓄をやっています。その一方で、こういったリスクの問題が指摘され ているわけですが、通常のインフルエンザに使用する場合のリスクとベネフィ ットの話と、新型インフルエンザにおけるリスクとベネフィットの関係は全然 違いますので、私どもも、この辺ははっきりとホームページ等で呼びかけてい きたいと思います。  折角今日は報道の方も後ろにいらっしゃいますので一言付け加えれば、イン フルエンザ死亡率のグラフが10ページに載っております。これは過去5年間 のもので、太い線がその平均値です。お年寄りはインフルエンザの死亡率が非 常に高い。5歳までを見ると明らかに10歳以下は低いことがよく分かるので すが、スペイン風邪のときのアメリカでのインフルエンザの死亡率の姿は、こ ういった形ではありません。端っこが高いのは同じなのですが、スペイン風邪 (インフルエンザ)のときの死亡率曲線は、20〜40代でもう一つ山を作ってい ます。これはたぶん非常に免疫が強いので、過剰免疫の関係だろうと言われて いますが。そういったことで、リスクとベネフィットの状況は新型インフルエ ンザと違いますので、私どもも、その辺はきちんとPRし、お話をしていきた いと思います。 ○松本座長 ありがとうございました。岡部先生、何かございますか。 ○岡部参考人 私は「新型インフルエンザ対策ガイドライン」の議長を務めま したので、少し付け加えさせていただきます。そのときの委員会では、ガイド ラインをまとめる中で、もしも我が国で起こりうるとしたら、新型の手前の段 階で、鳥インフルエンザH5N1の感染が国内で起きる可能性がありえます。宮 崎県はうまくコントロールできていますが、そのような状況のときに人が感染 する、あるいは外国から持ち込まれることがある。これは通常のインフルエン ザと違うので、治療として直ちに使用するのは妥当であるということを決めま した。  もう一つは、実際には新型インフルエンザというのは今のところ仮想であり まして「起こりうるもの」として、いくつかの想定がなされているわけです。 そして、通常のインフルエンザとは異なったものである可能性が高い。うまく いけば同じ程度ですが。「スペインインフルエンザ」といわれるものは約2% の致死率だったわけですが、それを上回る可能性があるということも世界中で 想定されているわけで、そうなった場合には、現在の状況では抗インフルエン ザウイルス剤を特定のものにしているわけではないのですが、実際にアベイラ ブルなものとしてのタミフルの使用の方針は、今のところ変わりがない。ただ し、この対策ガイドラインの委員会では、現在のシーズナル・インフルエンザ に対するタミフルの使用状況、あるいは今問題になっていることというのは、 きちんと科学的に調査する方向で進めていただきたい。それによって今後の検 討が変わる可能性があるけれど、現在は変わりがないという形にしております。 ○桃井参考人 議論の中で何回か出ましたが、今後白か黒かということがグレ ーゾーンになる可能性もありうるわけです。そういうときに、タミフルを服用 したときのメリットが何かということについて今より明確なデータがないと、 どうしたらいいかという行動の決定にならないわけです。タミフル服用のメリ ットやエビデンスに関して、発熱期間や肺炎等の合併症の数字が出ております が、各年齢別のインフルエンザによる死亡に関してエビデンスを出しておかな いと、グレーの結果が出たときに、それではどのように使い方を決定するのか という結論が出ないように思います。これは臨床WGの範疇ではないと思いっ たものですから申し上げなかったのですが、それはどこかに明記していただき たいと思います。そのデータがないと、今後いろいろな議論で困ってくるよう な気がいたします。 ○松本座長 審議官、何か意見はありますか。 ○審議官 資料が手元にございませんので文言が不正確ですが、今回設置する ことをお示しいただいた臨床WGにおいて、そういった真のエンドポイントと いいますか、死亡率や発熱期間、また合併症、重症化といったものも設計とし て取り入れて行います。具体的には、臨床WGには統計の専門家の先生に入っ ていただいて、先生の御指摘を反映してまいりたいと思います。 ○松本座長 事務局等、ほかに何か御意見はございませんでしょうか。 ○事務局 特にございません。 ○松本座長 これで本日の調査会を終了いたします。長時間にわたり活発な御 議論をしていただき、ありがとうございました。 照会先:厚生労働省医薬食品局安全対策課  電話:03−5253−1111