第8回ILO懇談会議事要旨
1.日時:平成19年4月10日(火)15:30〜17:45
2.場所:厚生労働省第12会議室
3.出席者:(敬称略)
(1)労働者側
日本労働組合総連合会国際代表 | 中嶋 滋 | |
日本労働組合総連合会総合労働局長 | 長谷川 裕子 | |
日本労働組合総連合会国際局長 | 生澤 千裕 |
(2)使用者側
日本経団連国際協力センター参与 | 鈴木 俊男 | |
日本経済団体連合会国際第二本部長 | 讃井 暢子 | |
日本経済団体連合会労政第二本部国際労働グループ長 (松井労政第二本部長の代理) |
高澤 滝夫 |
(3)政府側
厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当) | 松井 一實 | |
厚生労働省大臣官房国際課長 | 妹尾 吉洋 |
4.議題
(1)第298回ILO理事会の報告
(2)未批准条約について
・ 第94号条約について
・ 第105号条約について
・ 第111号条約について
・ 第175号条約について
5.議事要旨
(1) 議題1 第298回ILO理事会の報告
松井総括審議官からの挨拶、出席者紹介に引き続き、政府側より資料1に基づき第298回ILO理事会の概要説明がなされた。
【発言概要】
(労働者側)
[1] 国連改革(いわゆるOne-UNに向けた動き)について
想像以上のスピードでOne-UNの取り組みが進んでいる。パイロット事業は現在8カ国で行われているが、開発途上国における各国連現地事務所の予算・プログラム及び代表者が統合される過程の中で、ILOの三者構成主義の基盤が危ぶまれている。例えば、パキスタンにおけるパイロット事業では、UNDP主導のもとに各種プロジェクトが進行し、労使のみならずILOや労働担当官庁すらプロジェクトに関われていないと聞いている。ソマビアILO事務局長は当該案件を成功事例として報告したが、実態は全然違う。また、同事務局長は三者構成主義と他の国連機関に広める良い機会だと言っているが、実態を鑑みれば実現可能性は低いと言わざるを得ない。労働の世界の公正確保という観点から、三者構成主義が損なわれないよう今後の動向に注意すべきである。
[2] CFA(結社の自由委員会)について
報告書において、我が国の岡山高教祖案件について言及された。公務員制度改革とも関連があり、今後CFAの動向について注視する必要がある。
[3] ミャンマー案件について
ビルマ(ミャンマー)案件について、ILOと政府間で合意文書を締結したとのことであるが、軍事政権によって組織的に強制労働が行われているという点については何も改善しておらず、依然として深刻な事態が続いている。
[4] PFA(計画財政管理委員会)について
必要な主張はしつつも事務局の予算案と説明に理解を示すという、今次理事会における日本政府の態度は労働者側からも評価されている。また、次期予算年度の日本の分担率は前期比で約3ポイント下落しているが、これは中国の分担金よりも大きな額である。技術協力予算は各国の任意拠出によってようやく成り立つ状況となっている。従って労働側グループの議論の中でも、今回の日本政府の減少分について、技術協力活動に対し任意拠出することを期待する声が強い。せっかく良い政策を打ち出しても、財源の裏付けのない知恵は無力である。ILOにおける日本の影響力を低下させないためにも、日本政府としてしかるべく予算をつけるべき。
[5] ISO(国際標準化機構)との関係について
理事会本会議では安全衛生マネジメントシステムについてのみ議論されたが、MNE(多国籍企業小委員会)でも議論の俎上に上ったCSR(企業の社会的責任)に関するISOとの協力関係については、話が進行しているようだ。
(使用者側)
[1] 国連改革について
国連内でも規模の大きな組織に全てを任せると政労使の三者構成は表面に出てこなくなってしまう恐れがある。ILO事務局長が国連事務総長に対し、“One-UN”における三者構成の維持を直訴してもいいのではないか。
[2] 2009年の第98回ILO総会議題について
選定された議題の一つ、「仕事の世界におけるHIV/AIDSへの国家的対応の強化」については、基準設定とするか一般討議とするか、労使の間で意見が割れた。一義的にはWHOで議論されるべき性質のものではあるが、労働と絡めて本件を議論することも価値があると考える。
[3] ミャンマー案件について
在ジュネーブのミャンマー大使が交代したことで、ILOとのこれまでの信頼関係の維持に懸念があったが、最終的には大使交代による悪影響は無かった。
[4] PFAについて
今次理事会で日本政府がとった態度は使用者側からも評価されている。
[5] PFA/BS(ビル小委員会)について
11月の第300回理事会にどのような文書が事務局から提出されるか、注視している。
[6] ISOとの関係について
ILOとISOはCSRの面で協力関係にあるが、労働安全衛生関係についてILOに一義的なマンデートがあるということについては、労使とも同じ見解であると考える。
[7] WP/SDG(グローバル化の社会的側面に関する作業部会)について
貿易と労働基準については、今後も議論が続くと考える。その中で、労働基準自体が非関税障壁にならないよう考えていくことが必要。
(政府側)
[1] 他の国連機関も本部同士のみならず、地域レベルでの政策面の協調を考え、フィールドワークからの政策・実績を積み上げることが、One-UNへの動きを進めるために必要である。
[2] 我が国がILOの中で存在感を高めるには、地域機構を使った技術協力にかかる企画・立案が重要でないかと考える。それには人的ネットワークのほか、財源よりもむしろ知恵で勝負する必要がある。
(2)議題2 未批准条約について
政府側より、資料2-1〜2-4に基づき、第94号条約、第105号条約、第111号条約、第175号条約について説明がなされた後、意見交換が行われた。
[1] 第94号条約について
[労] 本条約の批准検討が進まない理由如何。格差を是正し、ディーセント・ワークを実現する観点からも本条約の意義が大きいが、批准に向けて法改正を行う意思はおありか。国内法で何を整備すれば批准が可能となるのか。条約第2条の「仲裁裁定」「国内の規制」とは国内制度の何に相当するのか。
[政] 条約の批准については、条約の規定を担保する国内法制度を整えてから批准することを政府の方針としている。本条約に関しては、我が国の民間部門の労働条件は、労働基準法に定める最低基準を満たした上で企業ごとに定められており、条約が求めるような法制度は存在しない。
[使] 我が国の制度と条約の土台の部分が異なっており、批准には我が国制度の大きな変更が必要。
[2] 第105号条約について
[使] 我が国の制度と本条約の批准には、どの位の距離があるのか。
[労] 基本条約であり、非常に多くの国が本条約を批准している中、我が国の制度が国際的な基準から後れていると見られてしまう。批准に向けたプロセスとして何がなされなければならないのか。批准に向け政府として具体的にどのような努力をしているのか。
[政] 条約は一定の場合を除き懲役刑を認めておらず、我が国の制度との整合性が課題。
[3] 第111号条約について
[労] 105号条約と同様に基本条約であり、早期に批准すべき。本条約を批准するにあたり、「人権擁護法」の整備が必要か否か。
[政] 広汎な差別禁止等、条約の細部と我が国制度との整合性につき検討が必要。
[4] 第175号条約について
[労] 比較対象となるフルタイム労働者について、条約では事業所外の者も含むため批准が難しいとのことだが、格差を是正する観点からも条約の精神が尊重されるべきである。今後も引き続き検討が必要である。
[政] 一般に、我が国では事業所ごとの雇用管理が行われている。
[使] 94号条約と同様、我が国の制度・実態と条約との土台が異なる。
−了−
照会先:厚生労働省大臣官房国際課
国際労働機関第2係
03-5253-1111(7310)
03-3595-2402