07/03/30 第45回労働政策審議会職業安定分科会議事録 第45回 労働政策審議会 職業安定分科会 1 日 時 平成19年 3月30日(金)17:00〜19:00 2 場 所 厚生労働省職業安定局第1会議室 3 出席者 委 員(公益代表)            諏訪分科会長、大橋委員、椎谷委員、宮本委員 (労働者代表)            徳茂委員、成瀬委員、長谷川委員、古市委員、堀委員 (使用者代表)            石原委員、紀陸委員、成宮委員、山極委員、            尾崎委員代理(吉免氏)、       事務局 高橋職業安定局長、鳥生職業安定局次長、荒井審議官、            岡崎高齢・障害者雇用対策部長、生田総務課長、            宮川雇用保険課長、宮野企画課長、石坂高齢者雇用対策課長 4 議 題 (1)高年齢者等職業安定対策基本方針の一部を改正する告示案について(諮問) 5 議事内容 ○諏訪分科会長 年度末押し迫った金曜日の夕方にお集まりいただきまして大変ありが とうございます。定刻となりましたので、ただいまから第45回「労働政策審議会職業安 定分科会」を開催いたします。 (出欠状況報告)  議事に入ります前に、事務局より報告事項があるようですのでをお願いいたします。 ○職業安定局長 冒頭にお時間をいただきまして、お詫び旁々ご報告をさせていただき たい事項がございます。まず、日ごろより分科会の委員の皆様方には、私どもの職業安 定行政にご理解、ご協力を賜っているところでございます。この場をお借りいたしまし て改めて御礼申し上げる次第でございます。  本日、あらかじめ皆様方にご連絡申し上げておりました議題にかかわる事項のうち、 本日におきましては雇用保険法施行規則の改正等にかかわります事項につきまして、本 日の審議事項から除かせていただきたいということになった次第でございます。これは、 現時点、本日時点におきましても、国会に提案をさせていただきました「雇用保険法等 の一部を改正する法律案」がいまだ成立を見ておらないという事態でございまして、そ うしたことを受けましての対応でございまして、いま申し上げました雇用保険法施行規 則の改正等の関係につきましては、また後日委員の皆様方のお時間を賜りまして、改め てご審議を賜りたいというふうに思っております。  経緯等につきましては、この後、雇用保険課長から説明をさせていただきたいと思い ますが、改めて本当に申し訳なくお詫び申し上げますとともに、ひとつご理解のほどを 賜りますことをお願い申し上げまして、簡単でございますが、私のほうからのご報告に 代えさせていただきます。 ○雇用保険課長 私のほうから、事実関係をご説明申し上げます。本分科会の答申を得 まして、政府提案として提出いたしておりました、雇用保険法等の一部を改正する法律 案につきましては、3月8日衆議院本会議の趣旨説明、質疑後、衆議院の厚生労働委員 会の質疑の後、3月20日には衆議院本会議で可決、3月23日参議院本会議で趣旨説 明、質疑後、参議院厚生労働委員会において質疑がなされているという状況です。  誠に申し訳ございませんが、私どものミスで、法案成立後に配付すべき法案成立を前 提とした資料を事前に参議院関係議員の一部に配付してしまうという、とんでもない行 為が行われてしまったということでございます。もとよりこのような行為は国権の最高 機関でございます、立法府の威厳を著しく傷付けるものでございまして、担当事務の責 任者として深くお詫び申し上げます。  今般の事態に立ち至りました事実経緯、これは早急に究明中でございまして、責任の 所在を明らかにした上で、管理責任を含め、厳正に処分が行われるものと考えておりま す。併せて、このようなあってはならない行為が二度と起こらないよう、厚生労働省と して再発防止策を現在策定中でございまして、その徹底を図っていくこととなっており ます。このため、先ほど局長から申し上げましたとおり、現在においても法案は可決成 立しておらない状況でございまして、法案成立を前提といたしました、本日予定されて いた議案中、料率に係る告示、あるいは雇用保険法施行規測の改正案、この諮問はでき ない状況になっているということの状況でございます。  当該法案につきましては、雇用保険料率は当初の予定ですと4月からの引下げという ものを可能とするなど、国民生活に直結する大事な法案でございましたところ、今後、 早期成立に向け、厚生労働省全体を挙げて努力を続けていく考えでございます。このよ うな事態に立ち至りましたことを重ねてお詫び申し上げます。 ○諏訪分科会長 そのようなことでございます。委員の皆様には大変ご迷惑をおかけい たしますが、ただいまの説明をめぐりまして、ご質問なり、ご意見がございましたらお 願いいたします。 (特に発言なし) ○諏訪分科会長 それでは、議事に入ります。以上のような次第ですので、本日の議題 は「高年齢者等職業安定対策基本方針の一部を改正する告示案」の検討になります。ま ず、事務局から説明をお願いいたします。 ○企画課長 議題(1)、資料No.1とNo.2をご覧ください。資料No.1は諮問文です。資 料No.2「高年齢者等職業安定対策基本方針」のいちばん最後の頁に、高年齢者雇用安定 法第6条に基づき、「厚生労働大臣は、高年齢者等の職業の安定に関する施策の基本と なるべき方針を策定するものとする」となっております。第6条第3項に、この「労働 政策審議会の意見を聴かなければならない」となっております。  現行の基本方針は、平成17年度から平成24年度までの8年間を対象期間として策 定されております。状況に応じて、基本方針の内容についても改正を行うものとしてい るところです。この度、この基本方針について一部改正を行いたいということで、本日 審議会のご意見をいただきたいという内容です。  それでは、具体的な改正の内容についてご説明させていただきます。資料No.2の1頁 で改正の趣旨です。これは既にご案内のとおり、少子高齢化の急速な進行の中で、労働 力人口の減少が見込まれていく中で、女性、若者、そして高齢者が社会の支え手として 活躍していくことは極めて重要な課題であるということは既に申し上げるまでもないこ とですけれども、こうした中で、意欲と能力があれば、65歳を超えても働き続けること ができる社会の実現に向けた取組みを開始するということは極めて重要であると考えて おります。  こうした中、平成18年12月25日に、政府として「再チャレンジ支援総合プラン」 が取りまとめられております。この行動計画の中においても、いま申し上げたような趣 旨により、「70歳まで働ける企業」の実現に向けた取組みを進めることとされ、その中 でこの基本方針を改正するという内容が盛り込まれているところです。こうした状況を 踏まえ、今般、年齢にかかわりなく働き続けることができる社会の実現に向けて取り組 むということを、この方針の中でも明記をいたしたいということで、今般この基本方針 の改正を行いたいというものです。以上が改正の趣旨です。  次に、具体的な改正の内容です。この基本方針は大きく4部から成り立っております。 第1が高年齢者等の就業の動向に関する事項、第2が高年齢者の雇用の機会の増大の目 標に関する事項、第3が事業主が行うべき諸条件の整備に関しての指針となる事項、第 4が高年齢者の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項の4つに分かれてお ります。  今般は、このうち第2の目標に関する事項、第4の施策の基本となるべき事項につい て、冒頭に申し上げたような趣旨での改正を行いたいというものです。  具体的には(1)第2、目標に関する事項については資料にありますように、65歳ま での雇用の確保を目標としつつ、この部分はご案内のとおり、前回の高年齢者雇用安定 法の改正により措置がされている部分ですけれども、これを目標としつつ、意欲と能力 がある限り、年齢にかかわりなく働き続けることができる社会を実現するための施策に 取り組むことを目標として新たに追加をしたいというものです。  (2)第4、施策の基本となるべき事項についても、この目標に対応する形で追加を いたしたいと。具体的な項目として、○にありますように、年齢にかかわりなく働き続 けることができる社会の実現に向けた取組みという項目を新たに追加し、その具体的な 内容として、意欲と能力のある限り、年齢にかかわりなく働き続けることができる社会 の実現を目指すため、65歳までの高年齢者雇用確保措置の円滑な実施に加え、70歳まで 働ける企業の普及・促進を図ることとして、具体的に都道府県労働局、公共職業安定所、 さらには高齢・障害者雇用支援機構、その他の団体において積極的な取組みを行うこと を記載したいというものです。  以上簡単ですけれども、ご諮問の内容です。私からは以上です。 ○諏訪分科会長 ただいまの説明について、ご質問、ご意見がありましたらお願いいた します。 ○長谷川委員 本日はちょっとびっくりしています。70歳まで働けると言われて、なん で70歳まで働かなければいけないのかと突然思いました。いやいや、60歳で辞めようと 思っていたのに、もう10年働けと言われるのかと。なんで国から言われなければいけな いのかと正直に思いました。  例えば平均寿命が、男性が71.4歳で、女性が75.8歳なのです。そうすると、70歳まで 働けというと、定年退職して1年ぐらいしかありませんので、死ぬ直前まで働けと言わ れているのかと思いました。70歳というのを、再チャレンジで決めたからと言われて、 押し付けられても本当にいいのかと率直に思っています。  意欲と能力がある人が、年齢にかかわりなく働けるということはとても大切だと思い ます。この審議会で議論するということは、雇用されている労働者が対象になるわけで す。いろいろな助成金だとかいろいろな支援も、おそらく企業で働いている雇用労働者 になるわけです。そのときに、本当に70歳まで働ける環境づくりでどうなのか。  65歳までは前回の高齢法の改正で決めたわけです。いまは経過措置期間で、大企業3 年、中小5年という経過措置があります。今年の春季生活闘争の結果で、うちも継続雇 用がどのように進んでいるのか見るつもりですけれども、そんなに思っているほど進ん ではいないのです。現に、希望する者全員ではなくて、やはり労使協定で差別化、選別 化、区別化しています。そういう意味では全員ではなく、必ずしも希望が実現されてい ないという現状もあります。これが3年、5年できれいに終わって、本当に全部が65歳 までとなるかどうかというのもよくわからないと言われております。  65歳までの動向を見ながら、次にどうするのかという議論がこういう審議会できっち りやられてから70歳ということであれば、私どもはそれぞれ納得するのだと思いますけ れども、この70歳という年齢について議論したという記憶が私にはないのです。意欲と 能力のある人が働けるということは言いましたけれども、70という数字について私は議 論したとは思っていません。  それから70歳という数字の嫌らしさは、いま年金問題がいろいろ言われていて、年金 支払い開始年齢が65歳まで延びたので、おそらく次の年金改正のときにはもっと延ばそ うか、という話がないわけではないわけです。65歳ではなくて、もっと引き上げようと いう話がいろいろ言われているときに、70歳までとくると、年金開始年齢も70歳にいく のかと。前回の改正は、年金開始年齢が65歳になったから65歳まで雇用保障しましょう という法改正だったけれども、今度は、こちらのほうが先に70歳と出して、それで年金 開始年齢を70歳まで持っていく、というように受け止めてしまうのではないかというこ とです。この70歳という数字の扱い方に私は戸惑っております。  なにも、働く意欲と能力のある人が働きたいという人を否定するわけではないのです けれども、高齢法の中で、70歳という数字の出し方についても少し議論が必要なのでは ないかと思いました。これは、70歳まで働けと言われてしまうなと。 ○企画課長 長谷川委員のご意見ですけれども、70歳まで働けということではなく、あ くまで意欲と能力のある方が働くことのできる環境を整える、そういう取組みをいまか ら進めていこうという趣旨です。こういう点について、まずご理解をいただければと思 います。  65歳までの雇用確保措置についての普及状況のご説明がありましたけれども、私ども の調査でも65歳までの雇用確保措置については、既に法律上定められた措置について、 昨年6月時点の調査で約85%の企業が実施済みです。その中でも、ご案内のとおりこの 法令においては、義務化年齢は段階的に引き上げることができることになっております けれども、こうした措置をとった企業のうち、スケジュールを前倒しをして、対象年齢 として65歳以上とした企業が、そのうちの75%になっている状況です。もちろん、その 中で長谷川委員のご指摘にありましたように、労使協定で基準を設けるという形の企業 が一定の割合を占めていることも事実です。  そうした中で、ご指摘のとおり65歳までの雇用確保措置についても、引き続きこれは 取組みを進めていく必要があると思っております。ただ、冒頭に申し上げましたとおり、 一方で日本のこれからの高齢化の状況を考えますと、昨年12月に発表されました、直近 の将来人口推計によると、2050年時点で65歳以上の高齢者の人口が約4割になるという 推計も出ております。そうした中で、もちろん働かなければならないということではな いのですが、やはり60歳以降についても、働ける方が働くことのできるような環境、こ れは非常に大きなハードルだと考えておりますけれども、そうしたものについては早い 段階から準備、取組みを進めていく必要があるだろうと思っております。そういう考え 方で、今般再チャレンジの中でもそうしたご指摘がされたものと認識しております。 そういう中で、私どもとしては取組みを進めてまいりたいということです。  もう1点、年金との関係のご指摘がございましたけれども、これはいま申し上げたよ うな問題意識の中で取組みを進めてまいりたいということですので、年金の議論とは全 く関係ないということでご理解を賜ればと考えております。 ○成瀬委員 質問と意見とごちゃ混ぜで何点か発言させていただきます。いまの論点と も重複して恐縮ですが、資料No.2の改正の趣旨のところです。改正の趣旨の1項目の最 初の2行というのは、私としても非常に共感できるというか大賛成のことであります。 ちょうど団塊の世代がまさに60歳前後に到達するこの時代、少子化が一方で進み、労働 力人口が減る中では、やはりここに書いてあるとおり、高齢者が社会の支え手として活 躍していただくことが最も重要だろうと思っております。  そういう点から、3点目にアンダーラインが引いてありますが、年齢にかかわりなく 働き続けることができる社会の実現に向けて取り組むということは、もちろん政府が先 頭に立っていただくとして、政府だけではなくて労使共に国を挙げて取り組むべき課題 なのではないだろうかという問題意識を持っているところです。  そういう観点から、ここに記載されている改正の趣旨を読ませていただくと、年齢に かかわりなく働き続けることができる社会の実現が大目標であるとするならば、当然な がら1項目目の3行目にあるとおり、意欲と能力があれば65歳までに限らず、65歳を超 えても働ける社会の実現というのは必要だろうと思います。  ここでこういう正しい認識に立っていながら、2番の改正の内容のほうにいくと、な ぜ70歳までとなるのか。年齢にかかわりなく、ということが大目標として認識されてい るのであれば、当然ながら70歳までに限らず、70歳を超えても働ける企業というものが 出てくる必要があるだろうし、そういう企業が1つでも出てくることを国として奨励す る、そういう施策を推進していくことが必要ではないかと思います。  そういう点からいって、この70歳まで働ける企業ということを、ことさらに打ち出す ことが、うちは定年の廃止を考えていたけれども、70歳まで定年延長すればそれでいい のか、というふうにブレーキをかけてしまう役割を果たすのではないかという懸念があ ります。そういう点からいって、「70歳まで働ける企業」という表現というのは非常に 問題がある表現ではないかと思っております。  2つ目は改正の趣旨の2点目です。「また、再チャレンジ支援総合プラン」というと ころですが、ここの文末が「盛り込まれているところ。」と体言止めになっているので、 この2項目目がどういうことを意図としているのか、いまひとつ不明な部分があります。 再チャレンジの行動計画に入っているから、高年齢者職業安定対策基本方針を改正しな ければいけないということなのでしょうか。それならば、確かにそれを受けて改正のた めの審議をここでしなければいけないということで審議をすることになるのでしょうけ れども、この再チャレンジ支援総合プラン行動計画に記入されているから何なのか、と いうことがこれからはわからないので教えていただきたいということです。  かつ、そこで70歳まで働ける企業の実現に向けた取組みを進めるということが記載さ れているということなのですけれども、それが拘束力を持って、この基本方針の改正を しなければいけないということになるのかどうなのかをお聞きいたします。  実際の改正案のほうになるわけですが、新旧対照表で出ておりますけれども、2頁か ら3頁に移るところです。「さらに」という段落の3行分が追加されております。「さ らに、65歳までの雇用の確保を目標としつつ」とあるのですが、これは当然ながら議論 の前提として皆さんご存じのとおり、65歳までの雇用確保措置というのは、いまは猶予 期間だとか、労使協定あるいは就業規則で選別できるといった課題はありつつも、とり あえず大枠としてはできているわけです。それを「目標としつつ」というのは日本語と してちょっとおかしいのではないのかという気がいたします。  あえて書くのであれば、「65歳までの希望する者全員の雇用の確保を目標としつつ」 とかそのように書かないと、いろいろな課題はあるにせよ既に法で義務化されているも のを「目標としつつ」というのは何なのかという気がいたします。  その上で、第4の3の(10)なのですが、(10)は「年齢にかかわりなく働き続ける ことができる」ということで、この項目名自体は先ほどから言っているとおり全く異存 はないのですが、そこに記載の文章の中で、「70歳まで働ける企業」ということが、こ の中で3度出てきて、プラス「70歳」というのがさらに2回、合計5回記載されており ます。70歳をここまで強調することが、先ほど言った、将来的にマイナスの影響を与え るのではないか、という懸念があるわけです。そういう点からいうと、「70歳まで働け る企業」というのは、例えば「65歳を超えても働くことができる企業」というような言 い方に変えていただいたほうが、いま現在の国民的コンセンサスですとか、過去の審議 会でのいろいろな議論の経緯からすれば自然なのではないかという気がいたします。以 上、質問と意見ですがよろしくお願いいたします。 ○企画課長 主として3点ご質問、ご意見をいただきました。最初に2番目のプランと の関係です。「再チャレンジ支援総合プラン」の行動計画との関係ですが、これは資料 No.2の改正の趣旨のところにありますように、そもそも、今回の改正のいちばん大きな 問題意識は、最初の○にありますような、高齢化の進展の中での、年齢にかかわりなく 働き続けることができる社会を実現していくための取組みを、高齢者の基本方針の中に も盛り込む必要がある、というのが第1の理由です。  併せて、「また」とありますように、昨年来の再チャレンジの中でも、こうした内容 が盛り込まれているということから、合わせてこの2つの理由により、今回改正をお願 いしたいというものです。  2点目は、1番目のご質問、それから3番目の具体的な内容についてのご質問双方に ありました、なぜ70歳なのかという点です。これは、目標のところにありますとおり、 あくまで究極の目標としては年齢にかかわりなく働き続けることができる社会を目指し て取組みを進めるということですけれども、あくまでも意欲と能力がある方について、 こうした取組みを進めていくということについて、一律にこれが実現するというもので はなくて、企業の理解、あるいは高齢者の就業ニーズも踏まえ、普及・啓発等々の施策 を進めていく必要があるであろうと考えております。そうした具体的な施策を進めるに 当たって、当面国民にとってわかりやすいキャッチフレーズ、目安として70歳という1 つの言葉をお示ししているものです。 ○徳茂委員 いまの説明に関してですが、なぜ70歳なのかというのは、私もこれを見た ときに少し疑問に感じております。1つのキャッチフレーズということでありますと、 あまり客観的なデータなどによる裏付けのある数字ではないのかと、いまお話を伺って いて思ったところです。  厚生部門では、65歳以上が高齢者ということになり、介護保険の給付の対象になって います。75歳から上が後期高齢者で、新たな医療制度をいま準備しております。そこの 65、75という数字には制度化するに当たってのバックグラウンドになるようなデータが あったのだと思うのです。70歳というのは、再チャレンジの行動計画で出てきた以外に、 何か施策の根拠になるような背景やデータがあるのかどうかというのをもう少し教えて いただけたらと思います。  再チャレンジもそうなのですけれども、納得を得ながら積上げ方式で納得を得ながら 施策を進めていく。最近は少し違うやり方で官邸筋からボールが投げられますが、そう いうことは果たしてどうなのかということで、私は常々疑問に感じています。70歳とい う数字の根拠が要るのではないかと思っています。  65歳までの雇用の実態ですが、先ほど企画課長から、スケジュールを前倒しにして65 歳としている所が増えているという説明がありました。私の出身は自治体ですが、自治 体の多くは条例を作って65歳まで雇用というのは、既に制度としてある所がほとんどな のですが、実際にはその地域、地域の民間の皆さんとの雇用情勢などの比較で、必ずし も再雇用が順調に進んではおりません。制度を作るということと、実際に65歳までの雇 用を確保していくということとの間にはギャップがあり、しかも地方に行けば雇用情勢 などもかなり厳しいということもあり、大きなギャップがある現状がまだまだあると認 識しております。  自治体においてすらそうですから、65歳までの希望する者の全員の雇用をきちんとや り上げていくということが、まずは最優先されるべき目標なのではないかとも考えてい るところです。  趣旨の1つ目と3つ目の○には私も異存はないと思っております。そのためにも、ま ずは65歳までの雇用を確実に進めていく、ということこそきちんと基本方針の中で強調 されるべきなのではないかと考えておりますがいかがでしょうか。 ○企画課長 70歳という数字のデータ的根拠という点ですが、いくつか統計調査的なも のをご紹介させていただきます。平成16年に厚生労働省が実施いたしました、高年齢者 就業実態調査があります。これによると、働いていたい年齢は、60歳代前半64歳までと する方が約10%、69歳までとする方が約25%、70歳以上という方が5.7%、年齢に関係 なくいつまでも働きたいという方が35%という数字があります。  また、昨年労働政策研究・研修機構が、団塊の世代を対象にして行った、団塊の世代 の就業と生活ビジョン調査結果があります。これは団塊の世代の男性に、就業を希望す る上限年齢を聞いております。これによると65歳が42%、70歳が27.4%という数字が出 ています。このようなデータを踏まえて65歳、そして70歳というところでいままで申し 上げたような形で70歳という1つの目安としてお示しをしたものです。  2点目の、65歳までというのをまず優先すべきではないかという点ですが、これも先 ほど来ご説明申し上げておりますとおり、65歳までの雇用確保措置についても、昨年4 月の改正高齢法の施行以来、重点課題として取り組んでいるところです。これにつきま しても、引き続き取組みを強力に進めていかなければならないと考えております。先ほ ど申し上げましたとおり、今後の急速な高齢化の問題を考えますと、さらにその先の取 組みについても、いまから準備を進めていく必要があるだろうと考えております。そう した点を踏まえ、今回こうした改正をお願いするというものです。 ○成瀬委員 先ほど、私の聞き方が悪かったのか、私の質問に対する答えがよくわから なかった部分があります。2頁の下から2行目の「65歳までの雇用の確保を目標としつ つ」というのは、一体何を指しているのかというのがよくわからないのです。確かに、 いまは年金支給開始年齢と同じ歩調で1歳ずつ引き上がっているから、それを確実に実 施するということを目標とするということを言っているのか、それとも65歳までの希望 者全員の雇用の確保を目標としているのか、何を言っているのかわからない。  少なくとも大枠のことで言えば、既に法で義務化されているのであって、目標と掲げ ることなのかというのは、そもそも疑問でありますので、ここはどういう意味なのかを 明確にしていただきたいと思います。そういう誤読の可能性があるので、誤解の余地の ない表現にしたほうがいいのではないかということを申し上げておきます。  それから、先ほどから論点になっております70歳まで働けるという部分についてです。 私の所属団体は電機連合ですが、電機連合は昨年の春季生活闘争の中で、希望者全員の 雇用確保措置という要求を掲げました。電機連合は、1990年代後半からエイジレスとい うことを主張しています。昨年の春季生活闘争の中で、産別労使交渉、それから大手で すが個別企業の労使交渉の中で、まさにここに書いてある趣旨のとおりでありますけれ ども、年齢にかかわりなく意欲と能力のある限り働き続けられる、そういうことを前提 として60歳以降の雇用のあり方について、労使で研究・検討を行うということについて は、労使の合意事項になっています。  それについて、昨年春から実際に研究を労使で開始しています。そういう中に、70歳 などというのはハナから考えていないわけです。しかしながら、ここで政府の基本方針 の中に70歳ということが出てくるというのは、所属団体の利害にかかわるのであまり言 いたくないと思っていたのですけれども、はっきり言って迷惑なのです。我々としては、 70歳以前であろうが、70歳以降であろうが、まさに能力と意欲のある限り働き続けられ る企業、そういう社会をつくりたい。それが少なからず経営側も、大枠では同意してい ただける方もそれなりにいらっしゃるわけであります。  そういう考え方の下でどういう制度を作っていくのか、高齢者に適したどういう職務 を開発していくのかということをやろうとしているときに、70歳などというところでぶ った切る基本方針は出してほしくない、というのが率直なところであります。70という 数字については、是非ご配慮いただきたいと思っているところであります。 ○企画課長 1点目の「65歳までの雇用の確保を目標としつつ」という文言ですが、こ れは具体的にはその上のところにあります2つ目の段落に「これにより、平成25年3月 末までに」とありますが、「高年齢者がその意欲と能力に応じて65歳まで働くことがで きる環境の整備を図る」というのを目標として掲げており、これを受ける形で「65歳ま での雇用の確保を目標としつつ」というような記載をしているものです。 ○成瀬委員 2つ上の段落とおっしゃいましたけれども、これは各事業主の義務ですよ ね。義務であっても、別に目標であってはいけないとは言いませんが、義務だから自動 的に平成25年3月にはこうなるわけですよね、違うのですか。目標という言葉の使い方 に私は違和感を持つんです。 ○企画課長 この第2自体全体が目標ですので、平成25年3月末までにこうした環境の 整備を図るということで、これは既に今回の改正事項ではありませんけれども、こうし た第2の目標の中に、こうした文言を掲げているというものです。 ○紀陸委員 新旧対照表の3頁の下のほうの段落の「このため」以下のところです。 「70歳までの雇用機会が確保されるよう、必要な支援に積極的に取り組む」とあります が、この「必要な支援」というのはどのような施策イメージなのか。さらにその下に 「その際、70歳まで働ける企業を奨励するための措置」とありますが、「奨励の措置」 というのはどのような措置をイメージしているのか。  現行の雇用保険の中で、高齢者雇用継続給付で、国庫負担が今度なくなります。結局 は、また三事業を活用するということになってしまうから二事業になるのでしょうか。 このような支援措置ですとか、奨励措置ということは、内容的にどういうものなのかを 伺います。そういう場合の財源というようなものはどのように考えているのかという点 をお願いいたします。 ○企画課長 具体的な支援措置、奨励措置の内容ですが、これについては平成19年度の、 成立いたしました予算の中に、平成19年度から新たな事業として一部盛り込まれてお ります。具体的に申しますと、2つの事業を新たに平成19年度の予算の中に盛り込ん でおります。  1つは、定年引上等奨励金という新たな奨励金を設ける内容です。これは、70歳以上 の定年引上げ、あるいは定年を廃止した企業、中小企業等について奨励金を支給すると いう内容です。  もう1点の事業は、同じく70歳まで働ける企業推進プロジェクトです。現状でも70歳 まで働ける企業がありますけれども、こうした先進事例等々をご紹介する事業、あるい はそうした取組みを考えている企業の担当者にアドバイスをするといったような事業、 そういう内容を盛り込んでおります。  こうした具体的な内容については雇用保険三事業、改正されますと二事業ということ になりますけれども、活用することによって措置をする内容になっております。一方で、 この事業についてもスクラップ・アンド・ビルドにより、既存の助成金の廃止をし、代 わりにこうした措置を行う内容になっております。 ○堀委員 先ほど、働く年齢が64歳から、あるいは70歳からという実態調査がありまし た。ただ、希望的観測と、実際に働いている部分というのはだいぶ違うと思っています。 私の所の企業は、もう10何年前に定年を60歳から65歳に変えました。それぞれ定年延長 に応じていただけるというふうに努力はしたのですけれども、大半の人が60歳で辞めま す。それから、そうこうしているうちに若い人を育てなければいけないということで、 60歳で役職定年という形にしました。結局60歳を過ぎて働く意欲はあっても、企業のほ うが整わないという部分もあると思っています。  いま、法律で65歳までの雇用をそれぞれ企業に義務化していますので、その中身の実 態を厚生労働省としてきちんと調査をして、本当に1つの企業で定年延長というのか、 いまの定年までいく方が何人いるのか、60歳で辞める方が何人いるのか、そういうのを 先にきちんと調査をするべきではないか。その企業は60歳以降も雇用が続けられるのだ けれども、なぜ60歳で辞めなければいけなかったのか、そういう分析をしているのなら その結果を待って、これから先65歳以降の部分について対策を打っても遅くはないと思 っています。その点についてはいかがでしょうか。 ○企画課長 ただいまのご意見についてですが、まず70歳までという部分については、 いまご意見にありましたとおり、65歳までの雇用の確保については、改正高齢法にあり ますように、基本的にはそれまで働いておられた企業での定年の延長、あるいは継続雇 用制度というような形で雇用が継続される、というのが基本的な形であると考えており ます。  一方、65歳以降70歳というものを1つのターゲット、目安というふうに考えますと、 これについてはそれまで働いていた企業での継続雇用だけではなく、さまざまな雇用の 形があるのだろうと思っております。先ほどお示ししたような事業の中で、そうしたさ まざまな形の好事例等々についても収集し、提供していくというような取組みも進めて まいりたいと考えております。 ○成瀬委員 もう1点ですが、65歳までの雇用化というのはいま経過措置中ではありま すが、大目標として年齢にかかわりなく働き続けることができる社会、企業の実現とい うことにいく、次の段階として、次のステップとして70歳までだというのが、いま聞い ているところでは厚生労働省の考え方のようであります。だんだんに定年や雇用の上限 年齢を引き上げていくというのは、一見実現しやすい現実的な路線のように見えるかも しれないのですが、それは実際には労使で議論してみると、必ずしもそうではないとこ ろも多いわけです。  路線として、戦略として、いまの65歳を次に70歳に延ばしてから、年齢にかかわりな くというところにいくのか、一足飛びに年齢にかかわりなくというところにいくのか、 これは戦略論の問題であって、その一方の戦略だけを実現しやすそうだからということ で、厚生労働省でどういう検討がされたかわかりませんが、その考え方を押し付けると 言ったら語弊があるかもしれませんが、一方の案だけで検討するというのはいかがかと 思います。 ○石原委員 これを見ますと、先ほど紀陸委員もおっしゃいましたけれども、各企業の 実情に応じて70歳以上までの定年の引上げ、継続雇用云々とあります。これをこのまま 読んでいきますと、やはり65歳まで定年を引き上げていく前回の内容と全く一緒で、一 企業の担当として読みますと、65歳が終わったら、次に70歳定年にしなければいけない というような状態になるのではないかという気がするのです。  確かに、生きている間は働かなければいけない時代が来るのかもしれないけれども、 60歳以上の体力差というのは相当ありますから、必ずしも働けない人も出てくる。企業 としてもやってほしいと思いながらも、やれない人も出てくる。企業としては、あくま で福祉事業をやっているわけではないですから、それだけの給与も払い、働いてもらわ なければいけないということがあります。まず、我々としては当面65歳まできちんとし て、全員が働くようにして、その次に次の段階を考えて、それは希望者だけでいいので はないかという気もいたします。  この70歳というのは、1つのインパクトとして国民に訴えるということでは理解でき ますけれども、一方で70歳まで働かないとどうにも食っていけないのだという逆の印象 も与えかねないのではないかという気がいたします。国の実情というか、将来の高齢化 のこともよくわかりますけれども、もう一度表現を考えてほしいという気がします。 ○高齢・障害者雇用対策部長 それぞれからご意見をいただいておりますけれども、基 本的に表題につきましても、「年齢にかかわりなく働き続けることができる社会の実現」 と置かせていただいております。そういうことが、基本的な次のステップであろうとい うことについては、そういう認識を持っているということです。ただ、それを進めてい くときに、65歳、70歳、それで次の段階ということかどうかということについては、そ れは必ずしもステップであるという認識ではなくて、基本的な方向としては、働き続け ることができるということにしながら、その1つの手法として今回はカギ括弧付きで70 歳まで働ける企業と。再チャレンジのあれをどう見るかというのはありますけれども、 65歳を超えた部分を考えていただく1つのキャッチフレーズとして、70歳まで働ける企 業というカギ括弧付きの問題提起を再チャレンジの中でしたということです。  したがって、すべての企業で、あるいはすべての方について65歳の次は70歳だという 考え方を今回お示ししたというつもりは全くございません。むしろ、それは年齢にかか わりなく働き続けることができるという社会の実現のための、現段階における1つの手 法として、70歳まで働ける企業という、奨励措置とか啓発措置とか、そういうものをし ながら、そこにおいては65歳までと同じようにみんなが基本的に同じようにという発想 では難しいだろうと。それは体力差とかいろいろ希望の違いもあるだろう。そこは、も っと柔軟な話として位置づける。  今回、ここだけ抜き出してありますが、65歳の話が全体にずっとある中で、今回こう いう状況の中で次を見通したものとして、最後にこういう形のものを付けさせていただ きたいということです。65歳までが基本であって、ここ数年間とにかく65歳をきちんと やっていくというのが基本だ、というのは間違いない事実です。そういう全体の状況だ ということの中で、今回ご意見を求めているところについてご理解をいただければ幸い だと思います。 ○紀陸委員 新旧対照が出ている2頁の下から3段目のなお書きが、言ってみれば基本 的な思想が出ていると思うのです。高年齢者等の雇用対策、これは同じ企業に居続ける ことを基本にしているような考え方です。安定した雇用、これが困難な場合にあっては、 円滑に企業間の労働移動を図ることができるよう、再就職促進対策の強化を図るとあり ます。  同じ企業にずっと居続けることというのをメインに考えておられるようですけれども、 実際にはそうではなくて、60歳以降も、あるいは65歳以降も働く場を変えるとか、そう いうことを望む人が結構多いと思うのです。私どもとしては、全体的に円滑な労働移動 ができるような措置にはどういう仕掛けがいいのか、いろいろな手立てがあるのだと思 うのです。どうも、そちらのほうの視点がちょっと乏しいのではないか。言葉では書い てありまして、強力に取り組むということなのでしょうけれども、これからはこちらの ほうの対策のほうが重要なのではないか。  もちろん、選択の余地が広がればいいわけですから、どちらでもいいのでしょうけれ ども、労働移動の円滑化というのを軸に据えて、いままでもやっているのでしょうけれ ども、これからもやり続ける必要があるのだと思います。そういう意味で、なんとなく 改定案のところは、同じ企業の中でというようなイメージが強いのですが、そうではな いのではないかという感じもします。これは賛成とか反対ということではなくて、追加 的な要望です。 ○成瀬委員 何回かの答弁を聞いていても、いまひとつ釈然としない面があります。再 チャレンジの出された方向性、これは戦略論は別として、大きな方向性としては一致で きると思うのです。再チャレンジで打ち出された70歳までというものの拘束性がどこま であるのか、あるのかないのか。もし細かいところまで拘束される必要がないというこ とであるならばという前提ですけれども、この新旧対照表のところでいう70歳まで働け る企業というのが3カ所出てきますが、ここは65歳以降も働き続けられる企業というよ うに、例えば直していただく、これは1回目の発言でも言いました。  その前の頁の下から2行目の「65歳までの雇用の確保」というところは、「65歳まで の希望者全員の雇用の確保」というふうに直していただくとかも含めて是非ご検討いた だきたいということを要望しておきます。 ○古市委員 70歳というのはどうも違和感があるという気が非常に強くいたします。先 ほど企画課長は、年金との関係についてということは全然考えておりませんというお話 をされました。企画課長はそのように考えていなくても、そういうことが行く行くいろ いろな意味で年金の支給開始年齢に影響を与えるだろう、ということを見た瞬間に考え ます。いまご意見が出ていますように、70歳まで働ける企業というところを、65歳を超 えてもという意見も出ましたし、その年齢にかかわりなく働き続けることができるとい うことについてはどこからも異論が出ておりませんので、そのようなことにしていただ くのがいいのではないかという気がいたします。 ○大橋委員 70歳までということに随分こだわっておられるようですが、私の解釈とい うのは、先ほど企画課長からアンケート調査の結果が出ておりますけれども、尋ねると きに60歳までとか、65歳までとか、70歳といった限りのいいところで皆さん答えます。 したがって、そういう意味でも70歳という数字が出てきたのかということです。  それからもっと大事なのは、行政としては65歳まで、それから70歳までという区切り をある程度付けて政策対応を考えていかなければいけない、ということがあるのかと。 これは私の邪推ですが。つまり、65歳までの高齢者雇用の促進と、それから65歳から70 歳までの雇用の促進ということへの対応は違いますよと。当然違ってきてもいいのです けれども、ただ、そのときになぜ70歳だと言われてもあまりうまく答えられないと思う のです。でも、それは一応ないと、対応というのがいろいろな支援策を構想するときに、 1つの目処のようなものがあって然るべきではないかと。そういう意味では70歳という のは、そんなに大した根拠はないと思うのですが、実務的には70歳というのは仕方がな いのかなということ。もう1つ私はよく思うのですけれども、先ほど、男性の平均年齢 を71歳とおっしゃいましたかね。71歳というのは正しいですか。 ○長谷川委員 正しいと思います。 ○諏訪分科会長 健康寿命が72歳。 ○大橋委員 健康寿命ですね。平均寿命ではなくて。わかりました。  大体働いて平均寿命まで何年間。例えば自分の力で答えられるかということを考えた ときに、大体年数が出てくる。例えば78歳とすると、いままで自分が働いてきた部分で、 人に迷惑をかけないで働いたときに、どれだけ自分が支えられたか。人によって違いま すが、働かないで、大体10年とかそんなものではないかなと。そういうようなところか らも、大体その辺の数字が出てくるのかなと。その辺はもう少しきちんとしたほうがい いと思いますが、区切りが65、70というようなところで出されて、そういう意味で70と いうのはそんなに変な数字ではないのですが70歳に拘わると厳密な数字ではないですが、 そういった政策対応のときには仕方がないという感じがしています。 ○長谷川委員 私は今日事務局から70歳という数字が出て初めて、公労使で70歳のこと が議論になったわけですよね。それならば、これは大臣告示で企業に対して「そういう ことをやります」といくつかの施策が出されてくるわけです。だとすると、審議会で65 まで一応、昔は60歳定年で、その次が65歳までと3つの方法を取っていたわけですよね。 65歳以降の働き方について、どういう施策の打ち方があるのかという議論をしながら、 では当面いままで55、60、65ときたから、次は70までというところで施策を打つとすれ ば、そういうことが必要だと。でも、目標はやはり年齢にかかわりなく、意欲と能力が ある人が働く。そういう社会がこれからの社会だという。それを基本に据えながら、で は具体的な行政の施策の打ち方として、どうでしょうかと。議論はそういうようにして いくのだと思います。今回の70というのは、再チャレで官邸で決まったからという、私 はそういう理由にしか見えなくて、それは少し乱暴なのではないかと思います。だから もう少し議論の仕方の順番があったのではないかということと、65までの状況がどうい う状況になっているのか、企業は企業の調査があるだろうし、労働組合は労働組合の調 査があって。ホワイトは、比較的に働ける職種があるのですが、現場は大変だと聞いて います。例えば自動車などの組立てだと、とてもとてもと言われていて、60から65歳ま での雇用の確保で、すごく苦労しているというふうに聞いています。いままでのやり方 ではないやり方が必要だと聞いていますし、おそらく、それはモノづくりの現場や鉄な んかはそうだと思います。だから、かなり職種、業種によっていろいろなばらつきがあ るのだと思います。もっとそういう調査などもしながら、次の政策目標をどう立てたら いいかという議論は、本来はあるべきだと思います。ちょっと、その議論の仕方が私は ぱっと落とされて、70でどうでしょうかと言われて、ああいいですねと。なかなか難し いですねと。70というのは何なのですかと拘って。議論の仕方の方向だと思います。 ○大橋委員 紀陸委員から先ほど65から70までの雇用支援をどうするか、具体的な内容 についてお尋ねがあったのですが、この辺の議論から、ある程度やってから70というの が出てくるのが自然だったと思います。ただ、その辺はできればこれから詰めていけば いいと思います。例えば、働けるだけ働くという場合に、支援するときにどういう支援 の仕方があるのかということを考えると、ちょっと難しいなと。だからどうしても70と いう数字が出てきてしまうというのが私の印象です。 ○諏訪分科会長 なかなかいろいろなご意見がありまして、本当にいままでの働き方、 あるいはこれまでの社会のあり方から、大きく転換をしていく中の、その大きな流れの 中の一環の議論を我々はしているものですから、簡単に答えを出そうとしても難しいこ とがあることは、全く委員の皆様がお考えのとおりだろうと思います。いろいろ諸般の 事情等考えますと、当分科会としては、厚生労働省案を概ね妥当と認めることにしつつ、 ただ、いまのご意見が処々ございましたので、報告文においては、労働者代表の意見等 を付記させていただくことにいたしまして、この報告文の案文は、できますれば、分科 会長にご一任いただきたいと思います。このようなご処置をさせていただいてよろしゅ うございますでしょうか。                   (了承) ○諏訪分科会長 ありがとうございます。それではそのように報告をさせていただきま す。  続きまして、その他の事項に移ります。雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を 改正する法律案に関しまして、事務局からご説明があります。 ○総務課長 お手元の資料No.3を用いましてご報告させていただきます。雇用対策法及 び雇用開発促進法の一部を改正する法律案につきましては、当分科会におきまして、1 月22日に法律案要綱の答申をいただきました。資料No.3に入っている内容と1点だけ違 いが生じておりまして、それがこの資料の真ん中の3として書いてある、「募集・採用 に係る年齢制限の禁止の義務化」という部分です。  これにつきましては、1月24日に与党審査の過程で、自民党の雇用生活調査会があり まして、その中で雇用対策法の中で、事業主の方の努力義務となっている労働者の募集 ・採用については、年齢制限の禁止につきまして、義務化すべきではないかというご提 言がありました。同じ日に公明党の雇用問題検討会がありまして、そこでも同じような 議論がされたと伺っています。同じ日に両党から厚生労働省に対して、3に書いてあり ます内容につきまして、法案に盛り込んだ上で、国会に提出するようにという申入れが ありました。省内でもいろいろ検討しましたが、1月26日に、大臣の下でこういう内容 を盛り込んで国会に出すという意思決定をさせていただきました。2月13日には、この 内容で閣議決定をし、国会に提出をさせていただいているところです。  この雇用対策法の3の部分につきましては、従来、努力義務ということで、7条の条 文に書いてあります。ここで読み上げさせていただきます。「事業主は労働者がその有 する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときは、労働者の募集及び採 用について、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えるように務めなければならない」 となっています。大臣指針の中で、この具体的な運用につきまして規定するというやり 方になっていました。今回、国会に出しました条文につきまして、いまから読みますが、 10条ということで条文が移りまして、「事業主は労働者がその有する能力を有効に発揮 するために必要であると認められるとき」として、「厚生労働省令で定めるときは、労 働者の募集及び採用について、厚生労働省令の定めるところにより、その年齢にかかわ りなく、均等な機会を与えなければならない」と、こういう形になっています。  内容的には、従来の努力義務が、義務規定になったということですが、厚生労働省令 として2箇所、省令事項があります。これにつきましては、従来、大臣告示で、指針と いう形で示されておりましたものにつきまして、省令で規定するということになります。 具体的にはこの年齢にかかわりない均等な機会の確保の義務について、こういうケース については、実はなかなかこの義務を課すことが難しいのではないかという例外事項に つきまして、省令で規定するということ。 もう1つは、事業主の方が求人を出す際に、 求職者としてこういう資質や経験だとかが必要だということを具体的に明記して、応募 をしやすくするという2点につきましては、省令で書いておく必要があります。この省 令につきましては、雇用対策法の改正案が国会で成立しましたあと、当分科会でご議論 いただくということで、それ以降また皆様のご議論をお願いすることになりますので、 よろしくお願いします。雇用対策法につきましては、こういう経緯で若干の修正が加え られて、国会に提出されたということです。 ○諏訪分科会長 ただいまの説明につきまして、ご意見、ご質問等ございますでしょう か。 ○長谷川委員 報告されたからと言って、何かが言えるわけではないわけですよね。事 実、閣議決定して、法案を提出する予定でいるわけでしょうから。よくわからないのは、 厚生労働省の審議会は、三者構成の審議会で、ある意味では使側と労働側は非常に努力 して、いろいろな議論の結果、大体こういうことだったら、職場で生きるだろうと思っ て報告を出した法案要綱まで確認しているのですが、そのあとに、修正が入っていくと いうのが。今回これだけではなくて、他の法律にもあるわけですけれども、他の法律の ところはここの場所ではないので、このことに関して言えば、何となく理解できないと いうか、私の頭が悪いのかわからないのですけれども、非常に理解できないことだなと。 やはり三者構成の審議会をもっと大切にしていただきたいと思います。  労働法というのは、職場に定着する法律ですから、労使が、これだったら職場で運用 できるのではないかと、法律が定着するのではないかと努力するわけです。長い時間を かけて議論してくるわけですよ。だったらそれは何だったのという思いはあるわけです。 したがって、もう少し三者構成審議会なるものについて、私は尊重していただきたいと 言っておきたいと思います。 ○諏訪分科会長 他にこの点いろいろ皆さん思いがあろうかと思いますので、他の方か らは何かご意見ありますか。 ○成瀬委員 改正法が成立したあとの指針の段階でということになるのでしょうが、成 立した場合にはということですけれども、先ほど努力義務を淡々と義務化するとおっし ゃられましたけれども、努力義務が義務化するということは、実は非常に大転換なわけ で、現場でうまく実施できるかというと非常に懸念もあるわけです。一般的に差別をな くしていくということについては、もちろん私も大賛成なのですが、ただ、現場でうま く回るかというと、課題がある。例えば同程度の人がくれば長期的に貢献していただけ る人を選びたいというのが人情なわけで、そういうときも年齢による差別的取り扱いが 禁止だということを大上段に掲げると、募集のときの応募で人が集まり過ぎて、かつ絞 る手間もかかるということで、使用者、労働者ともにいままでしなくてもよかった負担 が増えてしまうという事例が起きないように、細かいところまで是非配慮した指針をつ くっていただきたいと思います。法改正が成った暁にはそうしていただきたいと思いま す。 ○諏訪分科会長 ほかに何か関連してございますか。では、ここまでのところで総務課 長お願いします。 ○総務課長 まず三者構成の審議会の重要性につきましては、私どもも全く同じ考え方 です。特に労働法制につきましては、現場で具体的に実行できるかどうかということが 重要で、実際に実行できる案を審議会の委員の皆様にご議論いただいて作っていただい ているということで、本当に大事な審議会だと思っています。従来から審議会で決まっ たものにつきまして、途中で変更枠はあるということが、現実にはありました。2つの ケースがありまして、1つは国会の修正枠は、与野党の議論の中で法案自体に修正が加 わるというケースがありました。もう1つは、各省の関係施策との関係で、法案を国会 に出す前に他省庁との調整の過程で変更が加わるということがありました。与党との関 係で変更が加わったのは、これが初めてではないのですが、内容的に大きなものという 意味では、実質的には初めてということでございます。これからどのようになるのかよ くわかりませんが、できるだけ審議会の議論の段階で与党のほうで、変更が加わらない ような内容になるようにご議論いただくように、私どもとしても必要な情報を集めたり、 あるいは資料を提供したり、精一杯努力したいと考えています。  それから、義務化された規定の施行につきましては、委員からご指摘がありましたよ うに、省令事項として規定すべき点は相当重要でございます。実質的にはその内容がこ の規定を左右すると言ってもおかしくないと思っております。法案が仮に成立しました ら、省令事項の議論については十分な資料も準備し、ご議論いただけるような体制はつ くっていきたいと考えています。以上でございます。 ○諏訪分科会長 ほかに何かございますか。よろしいですか。いろいろございますが、 審議会として本来果たすべき役割をきちんと果たしていけるように、是非委員の皆様だ けではなく、事務方にも今後とも然るべきご尽力をお願いしたいと思っています。  それでは以上が本日予定していた議題ですが、そのほか何かございますか。 ○長谷川委員 今日の議題ではないのですが、この場で言わないとと思いまして、私の ほうから1点だけあります。ハローワークなのですが、4月から新しい年度が出てくる わけですが、最近ハローワークや、労働基準監督署の統廃合が毎年のように進められて います。ここではハローワークのことについて申し上げたいのですが、奈良のある地方 のハローワークを削減、統廃合するときは、厚生労働省に申し入れたことがあるのです けれども、ハローワークというのは、労働者から見ると、非常にセーフティーネットな わけです。それが、労働者が相談したり行きやすい場所にあるということが必要なので、 ある一程の数が確保されるべきものだと思っています。ところが、この間の一連の行政 改革で、公務員の定員削減やハローワークの統廃合が行われています。困るのは、労働 者と中小の人たちだと思います。企業のほうでも、遠くなるわけですから困ると思うの ですが、私はやっぱりハローワークの再編問題については、然るべきところで議論して ほしいし、説明していただきたいと思います。  私が聞いたところによりますと、かつて労働政策審議会になる前の、中職審の時代に は、公共職業安定所の位置、名称だとか、管轄区域などを定めるときは、審議会の意見 を聞くとされていたと聞いています。しかし、最近はそういうことがないわけですけれ ども、是非ハローワークの統廃合については、審議会の議題にしてほしいと思います。 是非そのことについて検討してほしいし、いつの時期がいいのか、回数がどのぐらいが いいのかというのは、検討してもらうとしても、適切な時期にこの問題について議論で きるような、関係法律の見直しもしていただきたいと思います。どこで言えばいいのか わからないので、ひとまず今日は発言させていただきました。- ○諏訪分科会長 この点は以前、私も中職審にいたことがあります。確かに報告を受け たことがありましたが、労政審になりましたら、議論の簡素化ということで、議題には 上ってこなくなったような気がします。何かこの点でありますか。ではそういう要望が あったということで。事務方は何かございますか。 ○総務課長 いま委員からも分科会長のほうからもお話がございました件ですが、いま のご意見を踏まえまして、必要な検討をさせていただいて、対応を決めたいと思います。 ○諏訪分科会長 ほかに何かございますでしょうか。特にないようでしたら、本日の分 科会はこれで終了とさせていただきます。 (署名委員指名)  本日の議事録ですが、当審議会の運営規定第6条により、会長のほか、2名の委員に 署名をいただくことになっております。つきましては、労働者側は徳茂委員、使用者代 表の成宮委員にお願いをしたいと思います。お忙しいところ大変申し訳ございませんが よろしくお願いいたします。  なお、終わる前に一言だけ私、中職審の委員を始めたのがおそらく平成3年ぐらいだ ったと思いますので、随分長くここに関わって、労働政策審議会になって、分科会長を 務めてまいりましたが、このたび、任期終了とともに退任させていただくことになりま したので、1つだけこの場を借りて皆様にお礼を申し上げます。長い間大変お世話にな りました。  以上をもちまして終わりにいたします。お忙しいところ、大変ありがとうございまし た。 (照会窓口)                         厚生労働省職業安定局総務課総務係  TEL:03-5253-1111(内線 5711)