07/03/16 第4回「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」議事録 第4回「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」議事録 日時:平成19(2007)年3月16日(金) 15:00〜17:20 場所:厚生労働省省議室(9階) 出席者:  委員   柏女座長、奥山委員、榊原委員、庄司委員、松風委員、西澤委員、山縣委員、   吉田委員  事務局   香取総務課長、藤井家庭福祉課長、佐藤家庭福祉課専門官、   鈴木家庭福祉課措置費係長  ヒアリング出席者:   全国乳児福祉協議会    会長  長井 晶子    副会長 平田 ルリ子   全国児童自立支援施設協議会    会長  岩田 久    国立きぬ川学院院長 相澤 仁   全国自立援助ホーム連絡協議会    代表  遠藤 浩    青少年と共に歩む会(憩いの家)評議員 三好 洋子 議題:  1. 関係者ヒアリング     ○全国乳児福祉協議会     ○全国児童自立支援施設協議会     ○全国自立援助ホーム連絡協議会  2. その他 資料:  資料1 「全国乳児福祉協議会」今後目指すべき児童の社会的養護体制についての意 見  資料2 「全国児童自立支援施設協議会」ヒアリング資料  資料3 「全国自立援助ホーム連絡協議会」ヒアリング資料 ○鈴木家庭福祉課係長  定刻となりましたので、ただ今から第4回「今後目指すべき児童の社会的養護体制に 関する構想検討会」を開催させていただきます。委員およびヒアリング関係者の皆さま 方におかれましては、お忙しい中お集まりいただき厚く御礼申し上げます。  本日の検討会の委員の出席者は8名です。なお、榊原委員は所用のため少し遅れてお ります。西澤委員は所用のため16時過ぎに退席の予定です。あらかじめご了承願いま す。  また、本日は関係者ヒアリングということで「全国乳児福祉協議会」、「全国児童自立 支援施設協議会」、「全国自立援助ホーム連絡協議会」の三つの団体から代表の方が出席 されており、各団体のご意見をいただくことにしておりますので、順にご紹介させてい ただきます。初めに全国乳児福祉協議会の長井会長です。 ○長井氏  長井です。 ○鈴木家庭福祉課係長  同じく平田副会長です。 ○平田氏  平田です。 ○鈴木家庭福祉課係長  続きまして、全国児童自立支援施設協議会の岩田会長です。 ○岩田氏  岩田です。よろしくお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  国立きぬ川学院の相澤院長です。 ○相澤氏  相澤です。よろしくお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  続きまして、全国自立援助ホーム連絡協議会の遠藤代表です。 ○遠藤氏  遠藤です。よろしくお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  続きまして、青少年と共に歩む会(憩いの家)の三好評議員です。 ○三好氏  三好と申します。よろしくお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  それでは、議事に入りたいと思います。柏女座長、よろしくお願いします。 ○柏女座長  皆さま、年度末のお忙しいところお集まりいただき、ありがとうございました。それ から、今日のヒアリングの3団体の方々も、年度末の本当にお忙しいところお集まりい ただき、ありがとうございました。どうぞよろしくお願いします。  3回にわたってヒアリングを続けるということで、今日は2回目です。今回も3団体 からのヒアリングをさせていただきたいと思っています。時間が2時間ということで、 各団体から15分程度資料に基づいてお話をしていただいて、その後質疑応答の時間を 15分ほど取らせていただければと思っています。一つの団体で30分ぐらいをめどにし ていきたいと思います。委員の方から補足的に質問などがあるかもしれませんので、も しお時間が許されるようでしたら、順番のヒアリングが終わりましてもそちらで待機し ていただけると大変ありがたいと思っています。そのような形で進めさせていただきた いと思いますので、よろしくお願いします。  それでは、最初に「全国乳児福祉協議会」からご意見をいただきたいと思います。 ○鈴木家庭福祉課係長  資料の確認をさせていただいてよろしいでしょうか。 ○柏女座長  では、資料の確認をお願いします。 ○鈴木家庭福祉課係長  それでは最初に、資料の確認をさせていただきたいと思います。上から順番に「第4 回議事次第」、「配布資料一覧」です。続きまして、資料1が全国乳児福祉協議会の「今 後目指すべき児童の社会的養護体制についての意見」、資料2が全国児童自立支援施設 協議会の「児童自立支援施設」、資料3は全国自立援助ホーム連絡協議会の「今後目指 すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」となっています。お手元に資料がな い場合はお知らせください。事務局よりお渡しいたします。資料の確認は以上です。 ○柏女座長  資料は大丈夫でしょうか。それでは、時間がもったいないので早速お願いしたいと思 います。よろしくお願いします。 ○長井氏  お手元に「今後目指すべき児童の社会的養護体制についての意見」がございます。こ れを作るに当たって、このたびのヒアリングで13項目の質問をいただきました。でき ることなら質問に沿った形で回答をしたいと思っていましたが、上手に組み込むことが できませんでした。アンダーラインを引いている部分が質問への回答と理解して読んで いただければと思っています。  まず前書きですが、乳児院では平成18年度に家庭引き取りとなった乳幼児が保護者 の虐待によって死亡するという事件が3件発生しています。この事例の入所背景は、経 済的理由やネグレクトなどでした。共通している問題ですが、どの事例も家庭状況や人 物像など子ども支援に関する基本情報が不十分だったということです。保護者からの引 き取り希望がありますと、まず児童相談所が家庭復帰への判断をします。その後、家庭 復帰プログラムが立案され、乳児院では家庭支援専門相談員であるファミリーソーシャ ルワーカーが中心となって、面会・外出・外泊を重ねて保護者と子どもとの関係を見極 めています。しかし、アセスメント不足は隠れたリスクを見逃してしまい見抜けません でした。次の問題点は、家庭引き取り後の他機関との連携でした。情報の共有によるネ ットワークが作られていたのですが、役割分担が明確でなかったため、3事例は死亡と いう結果になりました。アフターケア実施の期間と責任の所在の明確化をきちんとする べきだろうと考えています。  次に「現状」に入らせていただきます。乳児院に対する社会的な要請ですが、本来的 な子どもの養育に加えて、子どもと保護者・家庭を丸抱えで支援する方向になってきて います。保護者と家族の養育能力の低下は、全国的に見ても潜在的に広がってきていま す。大都市圏では虐待など深刻な課題を抱えた子どもの入所ケースが増加し定員を超え ての入所となっています。虐待認識のない保護者や精神疾患の保護者も増加しています。 これまでは育児方法である子どもの抱き方・授乳・おむつ交換・入浴・離乳食の作り方 や与え方などの育児技術的な支援・指導で育児不安を取り除いてやると、母親も大体安 定して家庭引き取りにつながっていくケースが多かったのですが、今はそれでは帰せな くなってしまいました。  「かかわりの難しい保護者」の現状です。今年度「こども未来財団」の調査研究費を いただいて「乳児院における関わりの難しい保護者への対応マニュアル作成に関する調 査研究」を行いました。その結果、育児指導より前に医療機関の受診を必要とする保護 者が201事例のうち57事例、33%もいました。保護者の問題行動としては「育児技術 や知識がない」が63%「最低限のケアができていない」が53%でした。入所理由分類 の虐待項目の「ネグレクト」は11%ですが、入所後の親へのアセスメントでは60%以 上に上っています。全国乳児福祉協議会実施の平成17年度の入所状況調査における入 所理由で「父母ネグレクト」は9.5%となっていますので、乳児院への入所時のアセス メントが十分であれば、ネグレクトの数字ひいては虐待による乳児院への入所実数はも っと高くなると考えています。かかわりの難しい保護者を持つ家族との再統合には、保 護者の精神科治療による改善が不可欠ではないかと考えます。治療が進まなければファ ミリーソーシャルワーカーや心理担当職員との人間関係は作りにくく、ましてや非言語 的な存在の子どもとの関係作りは難しいのが現状です。  「家庭復帰率の現状」です。家族機能の喪失は家庭復帰率の低下としても表れており、 乳児院における家庭復帰率は平成7年以降減少し、平成17年度は59%です。これは多 かった入所背景が「父母不明」だった昭和36年に近い数字になっています。乳児院の 保護者への対応・支援機能は、家族機能が低い保護者ばかりでなく、里親や地域の在宅 の方々の問題発生予防的活動としても有効活用できると考えています。地域社会とつな がるということは、子どもが地域社会で受け入れられるということにつながると思いま すので、地域資源として使いやすいシステムの必要性を痛感しています。  現状の「病虚弱児・障害児の増加」です。近年、乳児院では病虚弱児・障害児・被虐 待児の入所が増加しています。ここでいう虐待児は虐待によって身体に障害が残ってい る子どもです。今後も心身ともに特別なケアが必要な子どもの入所は増加すると予想さ れます。発達障害や重度の障害児は家庭引き取りの可能性が大変低く、次の生活の場の 確保も難しいため、年齢要件が6歳に緩和される以前からその年齢まで乳児院で生活す るケースが見られました。権利擁護の視点からも障害等を抱える子どもに対する新たな 社会的施策・体制を考える必要があると考えています。  現状の「職員体制充実の必要性」です。どんなに立派な人材育成システムができたと しても、乳児院で働く看護師・保育士・指導員がいなければ児童福祉現場は子どもを引 き受けることができません。乳児院では夜間勤務(夜勤)があるため人材確保が難しいの が現状ですが、乳児はすべての器官が未熟であり医療的なケアが必要ですので、看護師 配置は絶対に必要です。しかし最近、病院の看護師の配置基準が変更になったこともあ って、最低基準に見合う看護師数が確保できない状況が出てきており、児童福祉施設の 看護師の引き抜きも行われています。これは子どもに直接影響することです。職員の配 置基準については、これまでも加算職員にて改善していただいていますが、子ども・保 護者ともに大変厳しい状況で、預かっている子どもの視点での最低基準の見直しを何と かお願いしたいと思っています。家庭支援専門相談員については、すべての施設に複数 配置し、定員に応じた人数配置が可能になることを望んでいます。かかわりの難しい保 護者の増加はありますが、保護者とのかかわりの効果を期待できるのも乳幼児期です。 ファミリーソーシャルワーカーの業務の確立は家庭支援の核をなすものと乳児院では考 えています。また、人材の定着のためには、職責に適した給与体系と財源の確保、さら には要保護児童対策としての国の施策の中に人材確保対策をお願いしたいとも考えてい ます。  3番目の「将来ニーズのための方策」について話をさせていただきます。保護者と家 族の養育能力の低下は、ますます増大・拡大すると考えています。保護者支援には、措 置入所の場合であっても保護者支援に必要なメニューが選択でき、ケースバイケースで 地域の小規模入所施設や親子治療や親子再統合のための小規模施設など、さまざまな形 態が利用できることが必要だと考えています。乳幼児への虐待は生命への危険も大きく、 その後の人格形成に及ぼす影響は極めて大きいと言われています。虐待への対応におい ては乳幼児期が極めて重要であり、一方でこの時期に適切な養護がなされれば心身の回 復・改善の可能性も大きいです。また家族への支援により親子関係の改善・再構築の可 能性も高くなります。被虐待児は身体的障害、情緒・行動上の問題も多く見られること から、個別的で集中的な、より専門的な養育が必要ですし、その意味からも、乳幼児版 の情緒障害児短期治療施設機能を持つ施設も必要だと考えます。一時保護やショートス テイ、デイケア等の家庭養育機能を補完する事業も、ますます充実させることが必要に なると考えています。  また、家族療法事業についてですが、乳幼児の場合は母親が精神的な問題を抱えたケ ースが多いため、母親を家族で支えることが主体となり、その中で乳幼児をいかに養育 していくか、母親の精神的な問題状況から子どもが受ける影響を少なくするための内容 となります。乳児ということで、結婚してからの期間も短いため家族歴が浅く、父親も 初めての子どもということで乳幼児にどのように接したらよいかわからないというケー スが多いです。同じ家族療法でも、児童養護施設のように子どもも巻き込んで、という のとは違いがあると思っています。親支援機能を持つ機関である乳児院・児童家庭支援 センター・母子生活支援施設・保育所等が横断的に協力し情報交換できるシステムにし、 家族療法を拡充・発展させることも必要だと考えています。  「地域における養育支援機能の拡充」です。地域における養育支援機能の拡充として は、乳児院が単独で児童家庭支援センターを持っている所は、現在山口県に1カ所、来 年開設予定の秋田日赤、合計2カ所です。児童家庭支援センターは、当初児童養護施設 を対象としたために、乳児院が申請しても許可されにくいと聞いています。東北6県で は児童家庭支援センターの設置県と未設置県では虐待相談処理件数に2.6倍の差が生じ ているとのことで、虐待の予防的機能も強化できますので、乳児院等が単独でも在宅支 援の地域拠点として拡充できることを要望させていただきます。また、児童家庭支援セ ンターを機能させるためには、立ち入り調査等の権限を付与、相談支援機能や一時保護 機能・通所支援機能・短期入所の機能・家族療法等の機能を制度化し、地域住民の子育 て支援が提供できる体制整備をお願いしたいと思っています。  最後になりましたが「子どもの権利擁護の強化に向けた具体的施策」についてお話し します。地方分権推進が具体的に検討されていますが、乳幼児の生命の安全確保と健全 な発達保障、また乳幼児期から学童期、青年期まで継続的に見守り発達を保障すること が権利擁護につながると考えるとき、社会的に養育が必要な子どもは国が責任を持って 子どもの育ちの保障と経費を負担し政策を実施すべきだと考えています。一般財源化さ れて社会的養護が必要な子どもの施策が都道府県単位になれば、財源力の差による地域 格差が生じてしまい、社会的養護が必要な子どもの権利擁護が等しく守られることは難 しいと考えます。保護者に養育されることのない乳幼児の最低限の生活保障を行ってい るのが乳児院です。選挙権もありません。保護者の養育を受けられない乳幼児です。次 世代を担う、これらの乳幼児に対して国が責任を持つべきだと思いますし、その姿勢を 貫くべきであると考えています。以上です。 ○柏女座長  どうもありがとうございました。時間にご協力をいただきまして、ありがとうござい ました。10数分時間を残すことができましたので、ここからは委員の方々から質問があ りましたらお願いしたいと思います。どなたからでも結構です。 ○奥山委員  非常によくわかるご説明どうもありがとうございました。伺いたい点が2点あります。 一つは、どうしても乳児は一時保護所に入れないということで、乳児院が一時保護とい う形にならざるを得ないということになると思うのです。そうなると、一般的には一時 保護所で心理検査するなどのアセスメントがなされるのですが、乳児のアセスメントと いうのは、現在はどうなっていて、将来的にはどのようにすべきだとお考えでしょうか。 先ほどのお話にあった亡くなられたお子さんは、リービングケアのアセスメントの問題 があったと思うのですけれども、入所のときのアセスメントに関して、まずそちらの方 からお願いします。 ○長井氏  児童相談所には、入所後すぐにまず保護者について、どのような就労をしているか、 経済的にはどうなのか、母親の健康状態がどうなのかという、保護者の養育認識や態度・ 技術・養育能力などをきちんとアセスメントしてほしいと思うのです。夫婦関係それか ら親子関係・親族関係、それに乳児院の場合には3世代前の祖父母のところまできちん と調べてきてほしい、それが現状です。母親を育て上げたのは祖父母ですので、そこま できちんと調べ上げていただかないと次につながらないのですが、最近はなかなかそこ まで児童相談所に調べていただけていません。そして、保護者の社会性や支援者の存在、 私たちは何ができるか、その辺のところまでできちんと調べてきていただけるとありが たいのですが、乳児院で今現在児童相談所からいただいているのは、子どもの生年月日、 住所、親の名前、それから母子手帳があれば子どもの状況、ひどいときには母子手帳の ない子どももいます。心理的なアセスメントなどはすべて入所してからです。健康診断 をきちんと受けて来られる地方の児童相談所もありますが、そうでなければ健康診断も なしで入って来ています。 ○奥山委員  今の親のアセスメントは、どうしても児童相談所が中心にならざるを得ないと思うの ですが、乳児でも、虐待を受けた子どもは少しの物音でびくっとするしたり眠りのリズ ムができていないなど、子どものトラウマの状態があります。子どものアセスメントと いうことも非常に重要になってくると思うのです。もう一つは、子どもと親の関係性の アセスメントです。その辺のところは今の体制だとほとんど乳児院にお任せになってい ると考えてよろしいのですか。 ○平田氏  この時期の子どもの成長がいい成長なのか、まだ成長がゆっくりなのか、また、かか わりによってその成長に影響があったのかという子どものアセスメントをするのは、特 に乳幼児期という年齢の特徴もあると思いますが、入所時に行うのは非常に難しいと思 います。現在乳児院では約1週間から1カ月という期間を取って、まずはその子どもの 1日の生活サイクルがどうやってつくられているか、まだ授乳期であればミルクを飲む 時間、吸い付きの良さや、その子どもの手が職員へどう抱き付いてくるかなど、その子 どものいろいろな生活の流れを見た中で、これは気質的にもともと持っていた障害から 来るものなのか、家族というかかわりがないためにこの状態にあるのかという、子ども のアセスメントをしているのが現状です。それで入所後に、親との関係の原因が、入所 時の親の問題とは少し違ったところにあるのではないかという最初のめど、アセスメン トの見立てをまず1カ月未満でするというのが、ほとんどの乳児院で今行われているこ とだと思います。 ○奥山委員  そうすると、先ほどの質問なのですが、私も乳幼児のアセスメントというのは非常に 専門性を必要とされる分野だと思うのですが、今の状態では、そのアセスメントはほと んど乳児院に入ってきて、乳児院の側でやっているということでよろしいですね。今後 もそれが主体ということが望まれるのか、その辺のところを伺いたいです。 ○長井氏  それは今までも乳児院がやってきているので、できれば乳児院サイドでやらせていた だきたいです。ただ、今はケースワーカーも職員も足りない中で一生懸命やっていると いうことですので、そのためには職員の配置をしていただいて、この期間はきちんと一 時保護だとしていただきたいのですが、ほとんどが緊急一時と言いながらも措置で入っ てきますので、そこがとても難しいところです。 ○奥山委員  わかりました。あと簡単に二つほど聞きたいと思うのですが、先ほど精神科の治療を 必要としている親が多いとおっしゃったのですが、私たちがかかわっていると、モチベ ーションがなくて「精神科に行った方がいい」と勧めてもなかなか行かない親御さんが 結構おられるのですが、その辺をどのように考えられるかという点が一つです。もう一 つは、障害を持った子どもが増えているという点は、その通りだと思っていますが、例 えば私たちがいる東京では、病院併設の乳児院はどんどん減ってきているというのが現 状です。今後社会的養護を必要とする、障害あるいは病気を持った子どもたちにどうい う対応が必要なのか、例えば1カ所に集めた方がいいのか、それともそれぞれの乳児院 で1〜2人抱えるような形の方が育ちのためにはいいのか、その辺のご意見があったら お聞かせいただきたいです。 ○長井氏  病児・障害児と健常児を一緒に見るかバラバラがいいかという意味なのですが、それ は程度にもよると思うのです。一晩に1回ずつ息が止まるような乳児は、常時看護師の 夜勤がない乳児院では対応しきれませんので、レベルによって差があると思います。重 症心身障害児でも1歳前なら乳児院に全員入ってしまいますので、「それをすべて乳児 院で見なさい」と言われるのはきついと思います。ですから、そのレベルはもう別枠で 考えていただく。ただ、ある程度の心臓疾患などは、人の配置等でクリアできるかもし れませんが、その辺のレベル差をどこに持っていくか。今、少なくとも病虚弱児の段階 を超した子どもがたくさん入ってきているのが現状です。そしてこの子どもは本当に児 童養護施設に上がれないのです。今までは虚弱児施設というのがありましたが、児童養 護施設との統合でなくなってしまいました。虚弱児施設は医療的なケアの長い経験を持 っていましたので、結構なレベルの子どもを受け入れていただけたのです。ところがそ れが児童養護施設に統合されたために、「ある程度難しいが、このくらいなら虚弱児施設 で受け入れていただけるよね」という子どもを送り出すところがなくなってしまったと いうのが現状です。  それと、精神科を受診しない親のモチベーションですが、精神科の受診を勧めても応 じない程度に陥った方は、子どもの面会にもあまりおいでにはなりません。おいでにな る方も、子どもとの関係性をつくるというよりは、自身の話をするために来園なさるこ とが多いです。 ○柏女座長  では、ほかには。手短にお願いしたいと思います。 ○山縣委員  時間がなければ、お答えは最後でも結構です。2年ほど前に年齢要件が緩和されまし たが、その効果と評価を少し教えていただきたいです。実態という言い方でも結構です。 実際に年齢要件が緩和されたことによって、幼児が増えているのか、特に今の病虚弱児 を次に引き継ぎにくいという話がありましたが、その辺も含めてお願いします。 ○長井氏  効果というよりも私どもがこれはお願いしたことでした。虐待などの子どもたちを1 年くらいですぐに生活の場を次に移さずに済むという点においては、とてもいい効果が 出てきています。ただ、6歳まで上げたとはいえ、乳児院には設備が整っていないため、 6歳まで生活するには弊害がでてきます。部屋の造りが違うわけですから、実際問題と しては、3歳を過ぎるとほかの施設に変わるしかないと思います。小規模児童養護施設 の地域版をぜひ乳児院にさせてほしいとお願いしているのはそのためです。そこをやら せていただければ、6歳までの子どももお預かりすることができます。トイレの造り方 から風呂の造り方まで違いますので、施設の建て替えもできていない中で6歳までと年 齢要件だけ変えられても実際には預かれないのです。 ○柏女座長  よろしいですか。では時間も来ましたので、以上で全国乳児福祉協議会のヒアリング を終了とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。もし時間がありま したら、ぜひ最後までいていただければと思います。  それでは続きまして、全国児童自立支援施設協議会からご意見をいただきたいと思い ます。先ほどの全国乳児福祉協議会と同様、15分ほどご意見をいただいた後、質疑とい う形にさせていただきたいと思います。では、よろしくお願いいたします。 ○岩田氏  全国児童自立支援施設協議会の岩田です。東京都立萩山実務学校の施設長をしていま す。  それでは、資料に沿ってお話しします。最初に「需給見通し」ですが、現在の入所状 況を見ますと、大都市部は総じて入所数が多く、都市部以外の県は総じて入所数が少な いということが言えるかと思います。ただ細かく見ると県によって状況が違うというこ とです。これは、施設がきちんと安定して運営されているかということ、それから入所 措置をする児童相談所がどれだけ子ども、保護者を説得できるかという力量の問題、そ れから警察の補導の取り組み状況ということが、それぞれの施設の入所状況を規定する 要因でもあるということで、なかなか今の入所状況から将来の需給状況の見通しを立て るということが難しいという状況があります。ただ、少年非行の状況や子どもを育てる 家庭や地域の状況を考えますと、基本的にはニーズは高いのだろうと思っています。従 って、単純に数字的な需給の見通しを立てるということよりも、施設や児童相談所の力 量を上げるという課題をどうしたら解決できるか、そして入所ニーズを受け止めるのか という問題の立て方がいいのではないかと思っています。  2番目は「児童自立支援施設の課題」と設定しました。(1)は「児童自立支援施設の機 能の充実について」ですが、これは先般行われました「児童自立支援施設のあり方に関 する研究会」の中で報告されていますので、それを参考にしていただきたいと思います。 少し強調しておきたいのは、児童自立支援施設は非行等の逸脱した行動を行った子ども を受け入れて、職員と子どもが共に生活をしながら、子どもの立ち直りを図る、自立を 支援するということが基本的な機能なのですが、この基本的な機能を十分に発揮するこ とができない施設が少なからず生じているということがあります。最近、夫婦制の運営 形態から交替制に移行するという施設が増えているわけですが、交替制でも大規模な寮 舎形態の運営をする所、あるいは人事配置でも寮舎担当に行政職が配置されるというこ とで、かなり厳しい状況があります。一方では地方分権が進む中で国と地方自治体との 関係に配慮しなければならないという面があるわけですが、児童自立支援施設の機能充 実のための人的配置、必要な設備等については国が指導性を発揮してほしいと考えてい ます。そのためには最低基準の問題についても、改正すべきものについては改正してい くということでないと、なかなか国の考えていることが実現していくことができないの ではないかと思っています。  それから、寮運営のあり方や子どもとの基本的なかかわり方についての職員研修も極 めて重要な要素ですが、これは国立施設の大切な役割でありその強化を図ってもらいた いと考えています。特に、交替制に移行している施設で最近運営に困難が生じていると いうことですので、交替制に実績のある東京等の児童自立支援施設とも協力体制を作っ て、実効の上がる研修にしていく必要があるのではないかと考えています。  (2)が、「児童自立支援施設の機能拡充」です。これについても「児童自立支援施設の あり方に関する研究会」の報告がなされていますので、それを参考にしてほしいと思い ます。ここについても、こういう施設機能を拡充していくためには、本来の自立支援機 能が効果的に展開しているということがなくて、施設の機能拡充ということばかり唱え られても、実際にこの機能拡充すらできないということになってしまう。この機能拡充 については、「児童自立支援施設のあり方に関する研究会」の報告でも触れているように、 実際に取り組むということになると、検討すべき課題がそれぞれにあると施設の方は理 解しています。従って、どうやってそれをやっていくかというときには、全国の施設の 中には先進的な取り組みをしている施設がありますので、こうした取り組みを支援した り、そしてそれを国立施設等でモデル的に実施していって、全国の施設に普及していく という工夫が必要ではないかと思っています。  それから課題の3番目として「人材の確保と資質の向上」の問題です。この問題が児 童自立支援施設の抱える最大の課題ではないかと私自身は思っています。「児童自立支援 施設のあり方に関する研究会」の報告を受けて、自立支援専門員等の資格要件の改正が 行われようとしていますが、本当にそういう改正をして、なおかつそういう自立支援専 門員が戦力化するためには相当の期間が必要になってくるということで、若干遅きに失 したかという感じがしています。しかも内容が、当面行政職を排除するようなことにな っていますので、またいずれ見直ししなければならない内容ではないかと思っています。  児童自立支援施設の場合には、自立支援専門員を養成する仕組みというのがあり、国 立武蔵野学院に養成施設があります。ところが養成している人材が現場で働ける仕組み がないのです。そこをどうしたら作れるかということについて検討していく必要がある のではないか。それから人材の問題についてはかなりしっかりとした運営をしていると いう施設でも、子どもとの関係でかなりタイトな状態が出るということで、心身の不調 を訴えて勤務ができないという職員も毎年出ています。そういうかなり厳しい問題が、 人材の問題についてはあるということを理解していただきたいということです。  「年長児童の自立支援体制」ですが、年長児童というのは中学校を卒業した後の子ど もと理解しますと、そういう子どもを児童自立支援施設に受け入れた場合には、当初は 施設内で生活、指導を行うことになりますが、就職自立を目指すということになると施 設外に実習に出して自立をする力を付けていく取り組みが必要になってきます。そうす ると、中学生とは異なる生活空間、寮舎が必要になってくるわけですが、規模の大きい 施設ですと大体は中卒児を対象とした別の寮を設置してニーズに応えるというやり方を 取っています。ただ、小規模の施設はそれもなかなか難しいということがありますので、 小規模形態の年長児療の設置等を進めてすべての施設で年長児対応ができるようなこと をこれから考えていかなければならないのではないかと思っています。  児童自立支援施設から高校に通学する子どもたちも増えています。ただ卒業まで3年 間、児童自立支援施設から高校に通学するというのはかなり制約の多い生活になります。 本来は児童養護施設等に措置変更ということが考えられるわけですが、実際には受け手 の問題があってなかなか難しい。その中でどういう工夫があるだろうかということで、 ここに示していますが、児童養護施設のグループホームを児童自立支援施設の近くに設 置してもらって、そのグループホームに高校通学の生活態度等を勘案しながら生活の場 を移し、移った後は児童自立支援施設とグループホームが協力して自立を支援するとい う仕組み、これは東京では、「児童自立支援施設提携型グループホーム」という形で制度 化しましたが、こういうことも新しく作って多様な自立支援のあり方を進めたらどうだ ろうかということです。  それからこれは要望ですが、年長児の自立支援のためには日中施設内で援助プログラ ムをいろいろと組まなければならないのですが、これについては措置費上全く計上され ていません。年長児対策も一つの重要な柱だと思いますので、それについての財政措置 を講ずるということも考えていいのではないかということです。  5番目が「家庭支援に関する課題」です。家庭支援について、児童自立支援施設では 入所児童に対する面会、進路決定等の機会を通じて、それから必要な場合は家庭訪問も 行って、児童が家庭に戻った際に円滑に生活できるように支援を行っています。ただ、 家庭の問題というのは、貧困問題や複雑な家族関係に起因するかなり大きな問題で、入 所期間の1年少しという期間で解決できるやさしい問題ではない。ですから、児童自立 支援施設での家庭支援というのは、入所児童にかかわる事柄を中心に行わざるを得ない という制約があります。しかし児童相談所等と協力しながら地域のサポート体制を作る ということももう少し考えていいのではないか。これも東京の場合は、「自立支援サポー ト事業」ということで、民生委員等地域に戻った場合のサポート体制を作っていく取り 組みをしていますが、こういうものももっとやっていいのではないのかということです。  「児童の権利擁護」ですが、これも「児童自立支援施設のあり方に関する研究会」の 報告を参考にしてほしいと思います。研修等の取り組みや、それから苦情解決制度は全 国の施設で設置されている状況になっています。ただ、第三者評価制度はほとんど実施 されていないというのが実態です。これは児童養護等が先行して、後で児童自立支援施 設の第三者評価基準が発表されて、その後それを都道府県の方で実施対象施設として取 り込むということが行われていないということがあります。そういうことも、これから 考えられていいのではないかと思います。  学校教育の問題ですが、学校教育については実施している施設が三十幾つで、まだま だ実施していないところがたくさんありますが、これは学校教育を実施するための条件 整備の問題をクリアしていないからです。どういうことかというと学校の設置主体は市 町村ですが、児童自立支援施設に入所している児童はほかの市町村の児童が大多数で、 そのための財政負担を当該市町村が負うわけにいかないということが必ず出ます。それ に対して都道府県がどういう条件整備を行うかというのが実は話し合いの一番大事なと ころで、その協議が整えば条件整備の一つの問題が片付くのです。それから教員の配置 基準等もあります。今の学校教育の教員の配置基準は40人学級が前提となっています が、40人学級で実施しているような児童自立支援施設内の学校はありません。ですから 当然学校教育をするとなれば、教員の加配という問題が出ますが、その問題について当 該の市町村と県の教育庁との間で協議が整わなければならない。こういった問題が解決 しないとなかなか進まないということになります。さらに、この問題が都道府県と所在 している市町村との間の協議にすべて任されているわけですが、国のレベルでこれを解 決する基本的な枠組みを物事の考え方として提示することができないだろうかというこ とがあります。それから学校教育は実施されたのだが、本当にそれでうまくいっている のかという問題についても、少し検証が必要ではないかと思っています。  それから大きく3番目として「社会的養護のなかの児童自立支援施設の位置付け」と いうことで、整理をしましたが、児童自立支援施設というのは、非行行為などの逸脱行 動等を行った子どもを受け入れて、その立ち直りを図り、その自立を支援することを目 的とする施設です。多くの場合、家庭は養護問題を抱えていることが多いわけですが、 そのことが直接の入所理由になっているわけではなく、保護者も養護問題がゆえに子ど もが児童自立支援施設に入所することになったという認識はないのです。さらに家庭裁 判所に少年事件として係属して、その決定で入所する子どもが大体割合としては20%か ら多いところでは50%ぐらいを占めています。そういう意味では、少年院と比較されて、 利用されている児童福祉施設という性格も持っています。そういう意味では児童自立支 援施設というのは、乳児院、児童養護施設、里親のように養護問題そのものの受け皿と しての役割を直接的に担うものではないということで、独自性があるということです。 しかし、多くの場合は養護問題を抱えているために、施設を退所する際に、養護問題が 顕在化するということがあります。こうした場合には、退所後の受け皿を社会的養護の 施策体系の中に求めざるを得ないということになり、高校進学をした子どもについては、 児童養護施設、あるいは里親が受け入れ先と考えられるのですが、現実には措置変更と いうのは簡単ではありません。児童養護施設の生活単位である寮に、全く関係性が取れ ていない児童自立支援施設の退所児童を受け入れて生活させるということは児童養護施 設の職員にも相当な力量が求められ難しいからです。そういうことから、提携型グルー プホームなど、そういう新しい仕組みを設けたらどうだろうかということです。  それから就職する児童についても、家庭に戻れずに就職する子どもについては、いろ いろな支援体制が必要だろうと思います。児童自立支援施設そのもののアフターケアの 取り組み、それから自立援助ホームに入所しての自立支援と、多様な自立支援の取り組 みが必要になってくるのではないかと考えています。以上です。 ○柏女座長 ありがとうございます。時間が10分程度あります。はいどうぞ。 ○西澤委員  すみません。私は16時には出ないといけないので、質問のしっぱなしになってしま うのですが、また後でご回答を教えていただけたらと思います。  まず1点目は意見なのですが、学校の問題というのは情緒障害児短期治療施設も同じ 問題を抱えてそれをクリアしてきているので、国にいろいろ言う前に、情緒障害児短期 治療施設のやり方を学ばれてはどうでしょうか。  今の話を聞いていて私は非常に混乱したのですが、非行の問題と養護の問題を切り離 して考えられているのですか。というのは実際にこのデータを見ると、児童自立支援施 設が突出してネグレクトのケースが多いのです。4分の1です。養護施設は16%、情緒 障害児短期治療施設は19%なのですが、児童自立支援施設は25%もあるのです。結局 非行の背景をとらえずに子どもをケアできるのですかということなのですが、先般この 措置変更の子どものためのケースカンファレンスをしに某児童自立支援施設へ行ったの ですが、やはり体罰が横行しているのです。実際に子どもも体罰で骨折していましたし、 あるいは言うことを聞かないと措置変更をするぞ、某国立の施設に移すぞというような 脅しがされているのです。ちなみに男の子ですから国立きぬ川学院ではありませんが、 そういうケアのあり方というのは多分養護の問題と切り離してとらえられているから起 こるのだろうと思います。退所間際になって養護の問題が顕在化するなんて、そんなば かなと思いますが、その辺りのとらえ方は一体どうなっているのでしょうか。 ○岩田氏  先ほども申し上げましたけれども、児童自立支援施設に入所している子どもが養護問 題を抱えているということは、私たちもその通りだと思っています。ただ子どもに入所 を説得するときにそういう形で説得しているわけではないのです。 ○西澤委員  そうではなくて、それは施設のケアワーカーの方が、そういうことをきちんと認識さ れてケアしているのでしょうか。それともやはりあなたは悪いことをしたのだからここ にいるという認識でケアしているのであれば体罰に発展すると思いますが、どうでしょ うか。 ○岩田氏  子どもが入所した理由は、その子どもが社会的に許されない行為をしたことです。た だその背景として、家庭の問題があるなどそういうことは当然職員としては認識しない といけないし、そういう認識の下に対応するというのが原則です。 ○西澤委員  わかりました。私は本当に失礼しますので、申し訳ございません。  ただそれはやはりケースワーク、ソーシャルワークの問題も絡んできますし、それか らそれを反映したケアワークの質を改善しないと、いつまでたっても40%程度の入所率 にとどまるのではないかと思います。 ○柏女座長  吉田委員、どうぞ。 ○吉田委員  権利擁護のことでお伺いしたいのですが、先ほどお話にありました、さまざま子ども の権利擁護に関する研修や苦情解決の仕組みが全国では設置されているということで、 今日資料がなければ結構ですが、確かに苦情受付の窓口の設置率が高い。それから第三 者委員も7割以上配置されているということで、その利用状況や利用の内容です。そう 申しますのは、まだ相当難しい子どもが多いということもあって、また子どもの方から もなかなか苦情が言いにくいのではないかと思うのですが、その辺りがどういう工夫が なされているのかということをお伺いしたいと思います。  それから子どもに対するルールです。児童養護施設等でも同じ問題が起こるかと思い ますが、特に非行を理由に入所している児童を対象とする施設としてのルールの特徴と、 そのルールを守らなかったときに子どもに対するさまざまな指導があるかと思いますが そのときの説明や、それから施設内での合意、要はそうした子どもに対して指導すると きに透明性のある指導がなされるような体制について、今どういう状況にあるかという ことを教えていただきたいと思います。  それからもう一つ、この資料にありますけれども、権利ノートの活用状況です。これ は児童自立支援施設の場合にどうなっているかということを、もし資料がなければ後か らでも結構ですのでお願いします。 ○柏女座長  いかがでしょうか。 ○岩田氏  苦情解決制度の利用状況はどうかということですが、全国の資料は私どもは持ってお りません。制度はあるけれども必ずしも意見がたくさん入っているわけではないという 施設もありますし、相当の数が入っているという施設もありますが、子どもが意見を出 すと解決されるという信頼性の問題だと思います。私どもはやはり子どもから信頼され る解決を図っていって、苦情解決制度も生きる、そういう取り組みをしなければならな いと思っています。  それからルールの説明、透明性、これも我々の施設の1つの課題だと思っています。 ルールと言ったときに私たちの施設ではやはりかなり厳しい状況が起こる。それは暴力 の問題だったりするわけです。特に弱い子どもがそのターゲットになって、なかなか職 員が食い止めきれないという問題があって、それにどう対応するかということは大きな 課題です。けれどもそこでいかに透明性を高めるかということは大事な課題だと思って います。そのためにも、これから第三者評価制度等ももっと推進していかないといけな いのではないかと思っております。 ○相澤氏  よろしいでしょうか。先ほどの養護問題と非行との関係について指摘されましたが、 基本的には一人ひとりの子どものきちんとしたアセスメントをして、それに基づいて適 切な対応をしていくということから考えるべきだと私も思っています。  次に権利擁護の問題ですが、国立の、例えば児童自立支援施設においては、定期的に 主管課の職員に来ていただき、権利擁護に関するアンケート調査を年に2回ほど実施し ています。主管課ですので関係していないかと言えばそういう意味では関係しているの かもしれませんが、ある意味で第三者的な方に来ていただいて、不適切な対応がないか、 きちんと子どもの意見を聞いてもらうためのアンケートを実施する仕組みを作っていま す。そういうことは有効だと思いますし、また国立きぬ川学院では今年施設の中に子ど もの権利擁護委員会を設置しました。第三者委員に今の規則の問題やこういう問題につ いてはこのように対応しようと考えているが、子どもからこういう意見があるがこれに ついてはどう対応したらいいかということなどを、逆にそういう方に質問し、客観的に 判断してもらう。そして、これはこのように説明したらどうですかというご意見をいた だく。このような権利擁護委員会を設置したのですが、きちんと子どもの支援ができる ような権利擁護体制を確保していくことが、やはり社会的養護としても必要ではないか と考えています。 ○柏女座長  ではあとお一方、短くどうぞ。 ○奥山委員  では一つだけ。児童福祉施設の中では珍しく養成所を持っておられますよね。その養 成所の出身者のどれくらいが実際に児童自立支援施設で働いておられて、逆に児童自立 支援施設で働いている方々のどのくらいが養成所での研修を受けていられるのか、その 辺を少し教えてください。 ○相澤氏  今、具体的な数字は持っておりませんので、どのくらいかは正確には申し上げられま せんが、全国の職員数ですが1,800人くらいいるでしょうか。今まで養成所を卒業した のが大体800人しかいませんので、その内の占める割合は非常にごくわずかだと思って いただいて結構だと思います。また養成所の研修については、来年度少し研修の中身が 変わりますが、それぞれ、大体10くらいの研修を養成所で行っていますが、一つの研 修に30人程度の参加ということですので、継続的に1人の職員が参加するということ はなかなか難しく、各施設からそれぞれの研修に1人ずつ参加するかしないかといった 現状です。来年度は少し最低基準等が変わり、施設等には研修が義務化されるようです ので、きちんと研修を積むようなシステムを考えていかなければならないと考えていま す。この研修という問題には職員の資質の向上ということもありますが、先ほど会長の 方から指摘がありましたが、やはりケアのモデルのようなものをきちんと作っていき、 ハード面の充実とともにソフト面の充実という、両者相まって推進していかないと、な かなか社会的養護の機能強化にはなっていかないのではないかと考えていますので、そ ういう意味で国立としての役割を担っていきたいと思っています。 ○柏女座長  松風委員、どうそ。時間を過ぎておりますので短くお願いします。 ○松風委員  すみません。少し長くなるかもしれません。先ほど基本的な機能を十分発揮できない 状況にあるとおっしゃいましたが、それは非常に深刻な問題で、根源的な問題をはらん でいるのではないかと思います。その要因としては、大規模化と職員の配置の問題があ ると先ほどご説明いただいたかと思いますけれども、短くということで飛ばしてお話し しますが、児童自立支援施設の先生方からいろいろなお話を聞かせていただきますと、 小舎夫婦制の良さとしては子どもに与える非常に重要なキーがあるということなのです が、今後の小舎夫婦制の職員の確保、存続の可能性についてはどのようにお考えなのか、 また時代背景もあって難しく代替するとすれば、どういうことを重視していくべきなの かということが一つです。  もう一つは、機能拡充については基本機能があって初めてだとおっしゃったのですが、 先ほどの職員の心身の不調等々というお話も考えますと、単に基本的機能プラス機能拡 充というよりは、入所している子どもの時代的背景や特性を考えた上で、たとえ夫婦小 舎制でも、指導内容の構造化というか、何かを加えていくことによって存続可能になる のか、または効果を上げることができるのかということを提案していただくのが必要か なと思いますが、その辺についてのお考えを教えていただきたいと思います。 ○柏女座長  申し訳ないのですが、時間はできるだけ公平に使いたいので、ご回答は三つの施設が 終わった後の協議の時間に手短にご回答いただくということで、松風委員、よろしいで しょうか。 ○松風委員  はい。 ○柏女座長  すみません、お願いします。それでは、ありがとうございました。  お待たせしました。全国自立援助ホーム連絡協議会の方から15分、ご報告をいただ きまして、また15分、委員の方から質問させていただきますので、よろしくお願いし ます。それではお願いします。 ○遠藤氏  2枚ぐらいにまとめてくださいということでしたので、2枚にまとめてきましたが非 常に簡単なものです。それからもう一つは被虐待児の入所率などの細かい資料があった ら付けてくださいということでしたが、自立援助ホームでは99%が帰れる家のない子ど もですから、99%被虐待児ととらえてくださって結構です。少し細かい資料を大学の先 生方が作ってくださっていますが、作成途中で添付できなかったので、またいずれお示 しできると思います。  まず「拡充に向けた課題」ということですが、これは言うまでもなく私たちが要保護 児童を考えるときは、その家族や家庭を考えるということであるというスタンスに立っ て子どもを見ています。そしてその家族が子どもを育てる力が本当に失われている今、 次世代育成という観点から見ても自立援助ホームの必要性は非常に高まっていると思い ます。一昨年に厚生労働省主催の主管課長会議で、自立援助ホームを全国各都道府県に 1カ所は作りたいということを示していただいたので、3年前には20カ所しかなかった 自立援助ホームが一挙に増え現在は41カ所になりました。ただこれは、増えはしまし たが、皆さんもご存じの通り、補助金の国庫の基準額が10人未満のところで約520万 円という本当に安い金額ですので、増やしたはいいが運営できない、継続できないとい う所がたくさんあります。どうやってしのいでいったらいいのかと考えていたところに、 ちょうどSBI子ども希望財団から、今は自立援助ホームが非常に必要な施設なので、SBI 子ども希望財団として大きな金額を割きますというお話をいただきました。そこで私の 方で1,000万円に満たない所、例えば580万円を賛助金として集めたが1,000万円には 満たないというNPO法人などをピックアップさせていただいて、その差額分をSBI子 ども希望財団にお願いして運営を続けているというのが現状です。普通財団法人という のは、単年度で例えば建物の修繕費などにしか予算が付かないのですけれども、例えば 420万円を3年間継続して運営費として使っていいという出し方もしていただいていま すし、それからもう一つは都道府県で認知されるまでこの費用は継続して付けていただ けるということで、何とか今のところつぶれないで済んでいるという状態です。ただこ れはいつまでも民間の財団に頼っているべきものではなく、やはり小規模児童養護施設 の事務費分の約1,500万円ぐらいに引き上げてもらいたいというのが本音です。自立援 助ホームは社会福祉法人となっている所もありますけれども、多くはNPO法人だった り、社会福祉法人の傘下にあっても親法人からは何の援助もない所が多く、ホームもほ とんどが借家で、人件費・ホーム借り上げ料等、子どもへの支援の基盤となるものを保 証されていないというのが現状です。これは本当に真剣に考えていただきたいと思って います。  その下に厚生労働省の方のご意見のごとくに「補助金額が上がらない理由としては」 と余計なことを書きましたが、これは、法律や通知を読んでいると、現在の私たちの現 状と相当すれ違っている、食い違っているところがたくさんあり、法律や通知が50年 前から直っていない部分があるのです。ですからどちらかというと、いまだに自立援助 ホームというのは昭和33年代に始まった、ただ子どもの相談に乗ってあげて、2、3日 泊めて帰す宿泊事業の認識しかされていない。それが520万円のゆえんではないでしょ うか。私たちは第二種社会福祉事業で申請しましたが、それはなぜかと申しますと、一 つには児童福祉法ではカバーできない子どもがたくさんいて、どうやったらこの子ども を取りこむことができるかということになると、縛りのない第二種社会福祉事業として 申請するしかないのです。第一種だと全部児童相談所からの措置になります。そうする と、例えば非行で家庭裁判所に行った子どもは、家庭裁判所から児童相談所に送致され た場合、児童福祉施設、児童自立支援施設などに入れることになっていますが、現実は 高齢児はなかなか入れないというのが現状です。法律上は18歳までの子どもを児童福 祉施設で引き受けなければならないことになっていますが、児童相談所で断っている例 を幾つも見ますし、施設側で拒否している例もいくつか見ます。しかし、そういった子 どもに少し手を差し伸べてあげることで本当に普通の社会人となって自立できる子ども がたくさんいます。そういった子どもや軽度精神障害、軽度知的障害などのためにどこ にも行き場所がない子どもにも窓口を広げようということで第二種社会福祉事業として 申請しました。  援助の内容は、私たちは「発達の取り戻し」と「養育のやり直し」と思っています。 これは要保護児童、要するに児童養護施設などの子どもであっても非行を起こした子ど もであっても、変わらない援助をしております。そういった援助内容にもかかわらず、 私たちはやはり施設として認知されていない。その大きな原因の一つとしては、「起居を 共にしていながら」、実施要項では私たちは「共同生活者」として扱われていることが大 きな原因ではないかと思われます。この共同生活者という言葉は、障害者のグループホ ームの世話人と同じ扱いから来た言葉です。ですから私たちは起居を共にしながら子ど もの養育、それから発達の取り戻しをしているにもかかわらず、共同生活者として、例 えば少しお金を預かったり何かの相談に乗ってあげたりする程度の認識しかされていな いということが、金額が上がらない大きな理由だろうと思います。このようにずっと相 談事業としてとらえられていることが、慈善の時代から新たに生まれ変われない一つの 大きな原因ではないかと思うのです。厚生労働省ではその必要性を大変認めてくださっ ているのですが、やはりこういう文言が壁になっているのではないかなという思いがし ています。以上が「拡充に向けた課題」です。  一方で44カ所に増えたこの自立援助ホームの質を落とさないでいけるかということ ですが、本当にほかの種別の施設の歴史を見ていても感じますが、やはり最初の慈善事 業の時代には必ず素晴らしい先駆者たちがおられた。これは児童自立支援施設でも、児 童養護施設でも同じだと思います。石井十次氏、留岡幸助氏などの有名な方もいらっし ゃいますが、有名無名にかかわらず、慈善事業の時代にはいろいろなところに素晴らし いスピリットを持った方々がたくさんの方がいらした。ところがそのスピリットが後に 続く者たちに伝達されていない。それでは自立援助ホームのこれからはどうなってしま うのかということの一番の心配点です。その点を非常に重点的に考えなければいけない と考えていますし、そこを失ってはならないと思っています。家族という暖かく親密な 関係を6人規模のホームという小規模の中でどうやって作りだしていくか、そして私た ちは管理者でも指導者でもなく共に生きる者で、その援助を子どもに思う存分味わって もらうこと、そういったことをベースに子ども一人ひとりと深いきずなを作れる職員を 育てていくことが課題だろうと思います。今、私の隣におられる方は三宿憩いの家の三 好洋子さんです。三好洋子さんはそういった意味で大変素晴らしい力を持った職員です ので、これからの後進の指導にも力を貸していただきたいと思って、今日は一緒に出席 をお願いしました。  それから2番目の「年長の子どもの自立支援のあり方」ですが、これは非常に簡単に 書いていますが、あくまでも自立というのは発達の延長線上にあるもので、リービング ケア、つまり巣立つときにいろいろなことを教えても自立できるわけがないのです。で すから発達の取り戻し、奪われた子ども期をどう取り戻してあげるかというのが自立援 助ホームの課題です。この発達をもう一度取り戻すことさえきちんとできて職員との人 間関係ができれば、リービングケアする必要はないのです。発達段階は自然と、それも 急激に伸びていきます。その結果として子どもは自立できるようになっていく。私たち 児童福祉施設の世界で考える自立の概念というのは、私は少しおかしいと思っています。 自立ということが目的になっていますが、本当は社会的自立というのはただの通過点で しかなく、その社会的自立だけが子どもの目的になっていること自体がおかしいのです。 本当の自立というのは、死ぬときに自分の死をも受容できるかというところが人間の自 立だと思います。そのためにはたくさんの危機を乗り越えていかなければならない。で すから自立援助ホームはアフターケア施設とも呼ばれていましたし、アフターケアをし ている所として有名ですが、自立するためにはホームを出た後も常に子どもが求める限 り支援をしていく。そういった意味で子どもの「心の安全基地」、いつでも帰ってこられ る心の安全基地にならなければいけない、それが自立支援の一番大事なところだと思い ます。  そしてあともう一つですが、施設について先ほど大舎、小舎の話が出ていました。夫 婦制の話も出ていました。大きくなればなるほど管理的、指導的になります。そして子 どもの主体性がどんどん奪われていきます。子ども自身の自己領域と言ってもいいでし ょう。管理的、指導的になればなるほど、自分が考えなければならないこと、自分がし なければならないこと、失敗の経験、そういうことが全部奪われていきます。そういっ た生活体験の中で最後になって急にリービングケアなどということをやっても、子ども は戸惑うだけです。ですからやはりなるべく普段の規則は少なくして、子どもに考えさ せながら、失敗させながら、そしてそれを支援していくという主体性の保証が、自立支 援の一番の問題だと思っています。  3番目の「社会的養護に関する地域ネットワークに対する考え方」ですが、地域ネッ トワークと言うとトップダウンで作って、こういうことをお願いして、こういう人を集 めて、一つのネットワークを組んでください、そこで何とか片付けてくださいというの が行政の方の大体のご意見ですが、私はそれとは全然違って、そういったネットワーク は死に体のネットワークになる可能性が非常に強いと思っています。やはり、子どもが こういうことで苦しんでいる、しかし私の力では助けてあげることができない、私たち が真剣に悩めば悩むほど、お手伝いしてくださる方が出てくるのです。それなら私にで きることがある、それなら私が手伝える、と援助してくださる方がどんどんできてきま す。ですから多くの自立援助ホームで、ここに書いてありますように「職親、弁護士、 医者、家庭裁判所調査官、地域の警察、不動産業者、児童相談所のワーカー、福祉事務 所のワーカー、保健婦、職業安定所、母子寮」、こういった方たちが本当に親身になって 相談に乗ってくださるようになります。こういった、あくまでも子どもが中心になった、 下から上がってくるネットワークでなければ、大人側から作ったネットワークでは死に 体のネットワークになると思います。そういった意味では、それぞれの自立援助ホーム がネットワークを必然的に抱えていると考えています。もしも抱えていないときには、 そういった助言をしていければ一番いいと思っています。  「子どものニーズに対応するあるべき施設体系に関する考え方」についてですが、こ れは自立援助ホームとは関係のないことですけれども、自立援助ホームに来た子どもた ちを見ていて感じ取ったことを書かせていただきました。一番難しい子どもたちという のはどういう子どもたちかというと、乳児院、養護施設、児童自立支援施設と三つくら いを経て自立援助ホームに来る子どもたちです。児童自立支援施設は通過していなくて も、乳児院、養護施設を通過してきた子どもたちでも一番難しいです。どうして難しい かというと、彼らには根っこがないのです。自分のルーツがわからない。自分のルーツ がわからない子どもというのは、一生悩み続けます。これは子どもにとって何とも言え ない気の毒な問題であって、どう解決するか、どうしたらそれが軽減されるのかという ことを考えました。たまたま平成16年の児童福祉法改正のときに、乳児院は0歳から 就学前まで、児童養護施設は0歳から20歳まで置けることになりました。ただこれは 法が不整備ですから、例えば乳児院がそのまま子どもを育てていき3〜5歳くらいにな ると、支弁されるお金が急に減ります。乳児と養護では必ず違いがあります、例えば養 護施設に0歳児から入れると看護師を置かなければなりませんが、これも支弁されてお らずなかなか困難です。むしろ、先ほど長井先生がおっしゃっていましたが、乳児院は 同じ敷地内に小規模な児童養護施設を作る。それから、児童養護施設は小規模な乳児院 を作る。今まだ100名くらいの乳児院はありますが、あまり人数が多い乳児院というの は理想的ではなく、やはりケアの面では20〜25名が限度だろうと思います。最初に考 えるべきことは、乳児期の2歳を過ぎるときにはまず家庭復帰です。それが不可能な場 合次に乳児院なり各施設が里親を開拓していき、それに対して行政が手助けをしていく。 そして3番目に、どうしても家に帰れない子どもたちだけが児童養護施設に上がるとい うことです。私の知っているある乳児院と児童養護施設を併設しているところでは、養 護施設を出て結婚した子どもが、養護施設に帰ってきたついでに乳児院にまで帰ってく る。職員は替わっていても園長先生は割と替わっていませんから、ここが自分の生まれ た所だと妻に説明しているという話を聞きました。その施設では養護施設の方も、そこ の乳児院の子どもを受け入れると非常にかわいいと言います。非常に愛着形成がなされ ていて、その後も継続されたケアがなされているのです。奥山委員にもお聞きしたいの ですが、私の経験では子どもというのはにおいに敏感です。ある子どもが私に「自分が 育った所へ連れて行ってほしい」というので、自動車で探しながら大体その辺りに行く と、その子どもが車の中からにおいをかぎ始めたのです。そして、「ここが生まれた所だ」 とぴたりと当て、私が車を降りて探してみたら、その子どもが「この家だ」と言うので す。そういったことが子どもの成長・発達に大きく作用していくということを考えると、 同じ敷地内での乳児院・養護施設の併設が非常に理想的ではないかと考えます。  もう一つ、連携という問題を考えますと、通達の中で、児童養護施設を退所する児童 で、なお自立できない児童はそのまま20歳まで措置継続ができるとなっています。そ の冒頭部分には「都道府県は」と書いてあるのですが、都道府県の中で動かせるかとい うとそうではなくて、同一施設内でしか子どもは動いていないのです。つまり同一施設 内で育った子どもは18歳を過ぎてもいることができるが、他施設には行ってはいけな いことになっています。これは通達文によるものなのか、児童相談所、施設側の歪曲し た捉え方なのかよくわかりませんけれども、同一施設内ならば20歳まで置いていいと いうことになってしまっています。これは非常におかしい問題で、むしろ措置を解除さ れた児童で、なお自立ができない者にとっては、もう一度児童福祉施設を20歳まで利 用することができるとなれば、自立援助ホームとの連携が非常にし易くなってきます。 そうすれば18歳で児童自立支援施設を出た後自立援助ホームに来ることもできますし、 私たちは少年法の補導委託も受けていますから、20歳までの子どもも受け入れられます。 そうすると自立援助ホームの中では少年法の子どもと児童福祉法の子どもとの整合性が 出てくるのです。  もう一つは、児童自立生活援助事業の中で邪魔なのが、実施要綱にあります「義務教 育を出た子ども」という文言です。就職に失敗した児童、あるいは就労できなかった児 童は自立援助ホームに入るとなっていますけれども、今の一般家庭の子どもたちのモラ トリアムの長さを考えますと、自分たちは25歳で自立できると言い、親は30歳だと言 っているこの時代に、15歳でというのはあまりにも早すぎる。ですからこの「義務教育 終了後」という文言は取っていただいて、措置を解除された児童で、なお自立が困難な 「児童等」とすれば良いと思います。虐待を受けた子どもで18歳を過ぎてから病気が 出る子もたくさんいますし、対人関係がうまくもてるようになって働けるというような ことはあまりないのです。その期間をどう子どもたちのために延ばしていき、子どもた ちの本当の意味での社会的自立を図っていくのか、ということを一番考えていただきた いと思います。自立ができなくて途中で反社会的な世界に入るよりは、施策の費用とし てもその方がよほど安いと思います。 ○柏女座長  ありがとうございました。あと5分ほど時間がありますので、お一人かお二人、ご質 問がありましたらお願いしたいと思います。   ○山縣委員  詳細なご説明をありがとうございました。最後の方で、今の通知に基づくいろいろな お話をしていただきましたけれども、今利用しておられる子どもたちで、措置解除で来 る子どもと過去に措置経験があっていったん何らかの生活をしてくる子どもと、全く児 童福祉施設の経験なく来る子どもとは、大体どれくらいの割合になっていますか。 ○遠藤氏  児童福祉施設を経由していない子どもはほとんどいないと言っていいほど児童福祉施 設を通っています。むしろ児童福祉施設を通らないで家庭から直接来る子どもというの は1割ぐらいだろうと思います。家庭裁判所にかかった子どもも、家庭から直接家庭裁 判所にかかった子どももいれば児童福祉施設を出た後に触法行為を起こして家庭裁判所 にかかって私のところに来る子どもは多いです。ですから私のところは、養護施設、児 童自立支援施設、家庭裁判所、少年院の4つのところから来る子どもたちがほとんどで す。 ○山縣委員  この通知以前というか、自主的にやっておられた時代というのはそれ以外の子どもも 結構いたという経験があるのですが、制度化以降は児童福祉施設の経験者が実態として は増えてきたという数字の見方でいいですか。それは間違っていますか。 ○遠藤氏  最初は児童養護施設のアフターケア施設と呼ばれていましたから、100%、児童養護 施設を出て社会で自立できない子どもたちのアフターケアをしていました。それは自分 の施設のアフターケアではなくて、東京へ集団就職で出てきた子どもたちのアフターケ アでした。ですから、昔の方が児童福祉施設を出た子どもは多かったと思います。   ○山縣委員  ありがとうございました。 ○柏女座長  よろしいでしょうか。ほかにご質問はございますか。 ○奥山委員  先ほど宿題をもらいましたが、その通りだと思います。私も嗅覚とその集団の持って いるリズムの二つが非常に大きいと思っています。それはまたいずれどこかで議論させ ていただければと思います。  私のところで見ていて、精神的な問題を持った子どもの自立というのは非常に難しい 問題があると思うのですけれども、その辺のことで何かご意見があれば伺わせていただ ければと思います。   ○三好氏  PTSDも含めて医療を必要としている子どもたちがこの10年でとても多くなりまし た。本人自身に働く力はあるけれどもなかなか就労につながっていかないということが 結構多く、そういう子どもたちとのかかわりは時間もやり取りも非常に多くなります。 そういう意味では成長を5年、10年という単位で見ていかないと、その子どもと本当に かかわったことにならない。子どもによっては10年、20年という単位で見ていかなけ ればいけない。例えば、今見ている子どもが1年後にはまだめちゃくちゃでも10年後 に変わったとしたら、その10年後にかかわっていれば「この子どもは変われた」と思 えるけれども、もし5年でかかわりを切ったとしたら、めちゃくちゃなその子どもとし か付き合うことができないということです。もう一つ、例えば非行の子どもでも、付き 合いを10年目までは刑務所を出たり入ったりの子どもだったのに、12年たったら盗癖 のあるその子どもに留守番を頼めるようになったという大きな変化があることもありま す。それは精神的な問題を持つ子どもの場合も同じことだと思います。 ○柏女座長  よろしいでしょうか。吉田委員、どうぞ。 ○吉田委員  先ほどスピリットをどう承継するかというお話がありましたけれども、急速に数が増 えているということで、今自立援助ホームを始める方はどういう方なのかということと、 今後その質を保障するためにどういう形で職員の方を集めたり、研修したりするべきな のか。そのお考えをお聞かせいただきたいと思います。   ○遠藤氏  「憩いの家」の広岡知彦さんの「静かなたたかい」という本が、亡くなられてから出 版されました。「憩いの家」というのは大変有名で、自立援助ホームは最初は「新宿寮」 から出発したのですが、この新宿寮は生みの親、「憩いの家」は自立援助ホームの育ての 親として位置付けられています。この本や「憩いの家」が出している通信を読んで、自 分たちも始めたいという方が今のところは結構多いです。それと同時に、厚生労働省が 何カ所か作るように言ったので全然児童とは関係のない社会福祉法人が「やってみよう」 と手を挙げて、「何をやればいいですか」という施設ももちろんありますが、法人は金が 儲かると思っているのか、「意外と全然儲からないですね」というところもあります。こ ういう時期はいろいろなところが出てくる時期ですから、注意していかなければいけな いと思っています。  どのように継承していくかということですけれども、例えばどこの施設でも全国大会 をしていますけれども、研修会をやっていてもそれで施設のレベルがアップするという ことは余りあり得ないのです。何かもっとほかの方法があるのではないかと考えていま す。一つの案なのですが、三好さんは何十年間も休みなく働かれて、後ろに百何十人の 子どもの苦悩を背負っています。それでお疲れになっていったん「憩いの家」を退職な さっていますが、今も「憩いの家」の理事会の評議委員になっていますから、この会に 参加していただきました。私は三好さんに1カ所ずつ全部回ってもらおうと思っていま す。その給料を支弁しなければなりませんけれども、どこかから工面して1カ所ずつ一 泊二日で泊まりに歩いてもらおうと思っています。三好さんの話を聞くとみんな本当に 力をもらいます。子どもとの向き合い方を全部知ることができます。実を言うと、私も 三好さんと広岡さんがいなければ自立援助ホームは始めていませんでした。お二人の話 を伺って自立援助ホームをやってみたいと初めて思ったものですから、そのスピリット とエネルギーの伝達が必要です。今三好さんを口説いているところです。そういう形で 充実させていくということがそれぞれのレベルアップや底上げにつながっていくのでは ないかと思っています。 ○柏女座長  どうもありがとうございました。時間がきていますので、全国自立援助ホーム協議会 のヒアリングはこれで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございま した。 ○遠藤氏  どうもありがとうございました。   ○柏女座長  各団体からご意見をいただき、先ほどの児童自立支援施設協議会の方へのご質問も宿 題として残っておりますが、15分ほど時間がありますので、この時間に3団体共通して のご質問でも結構ですし、特定のところへの補足的なご質問・ご意見等、またご意見で も結構ですのでいただきたいと思います。前回も15分延びておりますので、もし委員 の方々の事情が許せば、せっかくの機会ですので17時10分くらいまで意見交換の時間 にさせていただきたいと思いますがいかがでしょうか。意見が結構たくさん出ているよ うですので、よろしいでしょうか。それではそのようにさせていただいて、あと20〜25 分ほど全体的なことについてのご意見・ご質問をいただきたいと思います。  それでは、先ほどの松風委員の質問の件ですけれども、児童自立支援施設協議会の方 から簡潔にお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。  皆さんどうぞ前の方へおいでください。せっかく全国乳児福祉協議会の方も残ってい ただいていますので、前の方においでいただければと思います。 ○相澤氏  まず、小舎夫婦制の維持ということですけれども、お手元に配布させていただいた「児 童自立支援施設のあり方に関する研究会」報告書の15ページを見ていただきますと、「維 持・充実・強化」ということで基本的には児童自立支援施設については小舎夫婦制の維 持・充実・強化を図っていきたいとなっておりますし、そう考えていきたいと思ってい ます。そこで、昨年度養成所の入所規定を改正いたしまして、例えば社会人でも養成所 に入所できるとか、都道府県知事等の推薦があって、児童自立支援施設の職員になるよ うな方があればということで、例えば夫婦の方を推薦していただいて、そういう方を養 成するなど、そういう形で弾力的に小舎夫婦制を維持するような人材の確保・養成をし ていきたいと、養成所の方では考えています。  もう一つ、最後のポツに「国は、将来的に、非行少年等に対する養育を行ってきた専 門里親」とありますが、今度専門里親にも非行の子どもたちを養育していただける仕組 みになると思いますので、そういう方を「職業化して、寮舎を受け持つ形態での寮運営 の仕組みを検討することが必要である」ということで、そういう里親の職業化という制 度などについても、ぜひ構想検討会等で検討していただければありがたいと思っていま す。 ○柏女座長  松風委員、よろしいでしょうか。 ○岩田氏  2点目が交替制に移行する場合にどういった点を重視すべきかということですが、こ れも15ページに大体書いてあるのですが、生活単位である寮舎の規模を小規模なもの にする。小規模といっても児童自立支援施設の場合は十何人ということになるだろうと 思いますが、そういう単位で考えなくてはいけないのではないか。それから、職員体制 の問題等についても、児童に対するかかわり方のノウハウが継承していくような仕組み を持たなくてはいけないのではないか。それから、交替制の職員構成の中で、次の寮舎 を担う職員を育成していく仕組みも取り入れた運営が大事ではないかと思っております。 ○相澤氏  指導内容の構造化というご質問がありましたけれども、基本的にはアセスメントに基 づいて自立支援計画をきちんと立てるということになっておりまして、そこで子どもの ニーズに対応した支援の構造化を図っていくということが必要かと思います。実際に児 童自立支援施設等に送られてくる児童相談援助指針等においても、具体的な内容につい て書き込まれているというよりも基本的生活習慣の確立とか基礎学力の向上といった、 個々の子どもに応じた指針にはなっていませんので、児童相談所ときちんと連携しなが ら、アセスメントをして指針ならびに計画を立て、子ども自身への支援の構造化を図る とともに、家庭、地域のサポートシステムという3つの大きな柱で計画を立て、それに 対するプランニングを作っていくということが今必要だと思います。ただそれを実施し ていく上で、児童自立支援施設という施設の特性を考えますと、生活秩序の維持・確保 というものが優先され集団的なグループケアに主眼を置く面がありますので、個別的な 支援をするのは難しい面がありますけれども、必要性があるので、個々の子どもの状況 に応じた構造化を図りながら支援を考えていかなければと思います。取り組むべき課題 であり、このような機能の拡充を図っていくことが求められています。 ○柏女座長  ありがとうございました。ほかにありますか。山縣委員、どうぞ。 ○山縣委員  継続して申し訳ないのですが児童自立支援施設の関係者の方に、先ほどの説明をベー スに2点伺いたいと思います。  1点目は、非常にがんばっておられる現場があることを少しながら知っている上で厳 しい質問になるかと思うのですが、前段で非常に謙虚に自己批判というか自分たちの置 かれている事実について丁寧にご説明いただいたのですが、最後の部分は結局国レベル の制度改善の要望ということで解決をしたいという説明だったと思うのです。例えば、 今のお話でも小規模化で十数人と言われますが、正確な数字は持ち合わせていませんけ れども、今恐らく20〜30%の施設は十数人になっているのではないでしょうか。その辺 を考えたときに、小舎夫婦制や小舎制そのものも崩れつつある部分には国制度のまずさ が影響しているのか、それはどれくらいのイメージなのか、あるいは都道府県や現場の 問題なのか、その辺りをどのように認識しておられるのかをお聞きしたいです。  2点目は事実だけなので厳しくも何ともないのですが、利用していれる子どもたちの 中で家庭裁判所からの処分として児童相談所から措置される割合はどれくらいになって いるのでしょうか。単純に児童相談所からのみのパターンと家庭裁判所型とがあると思 うのです。児童自立支援施設の入所を適当とするとかいう条文に基づくものがあると思 いますが、これも大枠で結構ですのでお答えください。 ○岩田氏  別に国制度の問題だけでというとらえ方をしているわけではないのですけれども、例 えば、職員の配置基準等が5対1なのですが、交替制でやる場合には5対1という配置 ではローテーションが組めないのです。だから、実際に交替制でやっているところはど こも都道府県の方で加配をして運営しています。そうすると、せっかく施設の機能を充 実するためにいろいろな措置費の制度を新しく作っても、全部吸収されてしまってそれ が生きないというようなところがあって、そういう意味で最低基準の改正とかそういう 問題をベースとしてやらなければいけないという問題提起です。もちろん問題解決のた めにそれぞれの施設、それから設置をしている都道府県が努力をすべきところが一番で あるということは、その通りだと思っています。  家庭裁判所の決定による入所の割合がどのくらいかというのは、全国の状況はわかり ませんが、東京は25%くらいです。一番多いところは大阪等で、50%近くが家庭裁判所 の決定による入所です。 ○相澤氏  先ほどの家庭裁判所の決定による措置児童の割合につきましては、お手元の資料の報 告書の26ページをご覧いただきますと、児童自立支援施設における家庭裁判所の決定 による措置児童の割合が出ており、年々増えていますので、これを参考にしていただけ ればと思います。   ○柏女座長  ほかにはよろしいでしょうか。進行係なのに申し訳ないのですが、私から一つ伺って もよろしいでしょうか。  自立援助ホームの先生にお伺いしたいのですが、その中に出ていますが自立援助ホー ム自体は、ホームといいながらいわば在宅福祉サービスと位置付けられています。それ に対して施設の方がもっとお金が出るので、施設の方がいいのではないかという話があ ったのですが、位置付けの仕方として、もし施設として位置付ければほかの先生方のと ころでもどの施設でも本体機能をベースにして小規模施設を作れるようにするべきだと いう意見がありました。そうすると自立援助ホームをもう少し充実させていくためには 施設の一つとして位置付けるというやり方と、もう一つは里親型のグループホームのよ うな、在宅ではないけれども小規模型の、施設ではないものとして位置付けていくとい う二つのタイプが考えられると思うのですが、そういうことについてはどのようにお考 えでしょうか。あるいは既に施設として考えていくということで意見は統一されていま すか。 ○遠藤氏  私の考え方になってしまいますけれども、これはどちらでもいいのです。ただ、要す るに費用が付くかどうかが一番不安で、継続できるかできないかというのが一番心配し ていることです。何か方策があれば一番よいのですが、やはり自立援助ホームは自立援 助ホームとして残しながら、どこかの制度を借りてやれればいいわけです。ただ、自立 援助ホームは決して在宅福祉サービスではありません。居宅の援助事業になっていて在 宅福祉サービスとの中間的な施設として位置付けられていますが、全くそうではなく、 内容はあくまでも施設です。里親型と言ってもよいですが、小規模児童養護施設と同じ ような施設です。入ってくる子どもが非常に複雑に入り組んでいますが、在宅福祉サー ビスではないし中間でもないと思っています。制度によっていろいろ変わるのだったら 何でもいいと思いますが、ただやはり非常に必要な施設ですので、何らかの形である程 度最低限の事務費をもらわないとやっていけない。子どもの自立のために大変重要なこ とです。費用のかからない施設ですから、何とか残していただきたいというのが一番の 思いです。 ○柏女座長  わかりました。ありがとうございます。座長の私が聞いて申し訳ありませんでした。 ほかにはいかがでしょうか。 ○庄司委員  全国乳児福祉協議会についてですが、今日のレポートの「はじめに」のところに「施 設養護・家庭的養護の体系が再構築され」と書かれています。そのためにこの検討会も あると思うのですが、どのようなイメージをお持ちですか。何かお考えがありますか。 ○平田氏  この言葉を出した経緯には、現在お預かりする子どもと保護者への支援を施設の中で 行うとき、特に母親が子どもを産んで私どもの施設を利用するときに、どういう支援が 可能かと考えると、乳児院の枠で使える支援では足りず、ほかのいろいろなシステムを 使わないとそこにたどり着かないということがあります。今の児童福祉施設という縦枠 の中では非常に支援が使いづらいというのが大きな視点でした。ですからそういう行政 の枠などにとらわれずに、親子に必要なシステムが使える、選択できるという形になれ ば、非常に支援がやりやすいという視点で出てきた言葉です。 ○庄司委員  最後のところで、確か地域小規模児童養護施設を乳児院でも、という話もありました けれども、乳児院と児童養護施設をそれぞれ残してというイメージですか。機能として は乳幼児を中心とする施設、年齢の高い子どもを中心とする施設という機能はあっても、 施設体系として乳児院と児童養護施設を分けておく必要はあるというお考えでしょうか。 ○長井氏  非常に厳しい質問ですね。個人的な答えになりかねないのですが、今私が言ってしま っていいのでしょうか。というのは、私たちはこういう質問に答える議論を組織として 行っていないので、答えることはできません。 ○庄司委員  そうすると、そういったことも併せて今後検討することはあるのですか。 ○長井氏  はい。私は大いにやらなければいけないと思っているのですが、今ここで答えを求め られても答えられません。 ○庄司委員  わかりました。 ○柏女座長  よろしいですか。では、奥山委員の次に松風委員。 ○奥山委員  前回も含めていろいろな施設の方々が共通で仰っておられることの一つが、入所して くる子どもと家族の変化ということです。そこで、新しいケアモデルの必要性があり、 それが求められているということがひしひしと感じられます。前回の情緒障害児短期治 療施設の方々も、やはり虐待のケアセンターが必要ということを言っておられて、そし て全国乳児福祉協議会の方々も乳幼児の虐待ケアセンターのようなものが必要だと言っ ておられるのもその理由があると思われます。児童自立支援施設の方もそういうケアモ デルの必要性があるということを仰っておられましたが、そのようなケアモデルを作る のは、社会的養護として一つになってそういうこと考えるべきなのか、それぞれの施設 体系の中でケアセンターのようなものを考えていかなくてはいけないのか。その辺を、 特に全国乳児福祉協議会と全国児童自立支援施設協議会の方に教えていただきたいと思 います。 ○平田氏  全国乳児福祉協議会が乳幼児版の虐待ケアセンターという形で提案しているのは、養 育の中で愛着対象ができて非常に改善が見られる子どもと、やはり治療が必要でその次 の階段が昇れない子どもが、ケアの中で出てくるからです。今は心理担当職員が配置さ れるなど、今まで乳児院が外部の機関として連携してきた方々と、施設内部でケアのア セスメントができるようになりました。小児精神科医やOT・PTなど、それぞれの専門 の方たちとアセスメントをしながらケアしていくことで、子どもの伸びが非常に違うし、 何よりも職員が倒れずに済む。そのようなやり方・アセスメントができたことで、施設 内部でのケアが非常にやりやすくなるという経験をしています。乳児を診てもらえる専 門家が非常に少ないので、外部に専門機関が1カ所あってアセスメントの調整が取れる という形も可能だと思いますが、施設の中の定期的なケースアセスメントまで、児童相 談所を中心にするのかはわかりませんが、専門的な連携がとれるということは非常に助 かるという意味でもあります。現在でも地域に存在している今の機能を、契約という形 でも定期的に行えるのは可能なのではないかということを、モデル事業をやってみてつ かんでいる感触ではあります。 ○岩田氏  児童自立支援施設は、虐待のケアセンターを外に作ってもらいたいということは考え ていません。我々の施設にももちろん虐待を受けた経験を持っている子どもが入所して います。そして児童自立支援施設の中で対応していきたいと思っていて、その具体的な 対応の仕方等については、これまでの研究等の成果をぜひ我々の施設の方にも返してい ただいて、それを反映して処遇のあり方について取り組みをするという形で進めたいと 思っています。 ○相澤氏  奥山委員の質問には、ケアセンターという点もありましたが、どちらかというと社会 的養護のいろいろな協議会などの団体がもう少し協力してやった方がよいのではないか というような趣旨がご質問の中に含まれているのではないかと思いますけれども、子ど ものケアの連続性など子どもを中心にして考えていくときには、やはり乳児院でどのよ うな支援を行われてきたのか、児童養護施設ではどうだったのか、そういう支援の内容 や子どもの発達の道筋を連続して考えていくのが本来あるべき姿で、例えば自立援助ホ ームに支援を行っていただくときに、我々が子どもに対してどのような支援を行ってき たのか、子どもの良いところはどういう点だったのか、そういうものは個々のケースと して引き継がなければいけないわけです。そういう意味では、各協議会がきちんと協議 をして、どういう支援を行うか、さらには子どもを中心にしてどういう支援を行ってい くべきなのか。そこについてはもちろん別々にやらなければいけないことと協働してや るべきものがあると思います。協働してやるべきものついては、全国乳児福祉協議会以 下いろいろな協議会が一堂に会して、皆さまのような有識者の参加を得て継続的に実施 していく必要性は非常に高いのではないかと私は個人的に思っています。 ○柏女座長  では、松風委員、どうぞ。 ○松風委員  奥山委員の先ほどのご質問と重なるかもしれないのですが、乳児院での障害児や病児 の受け入れについてですが。確かに非常に重篤な病状や障害の乳児が増えていると思っ ています。それで、病院でケアすべきなのか、福祉施設でケアすべきなのかという境目 のところが現実には非常に問題になってきているのですけれども、それぞれがもう少し 対応力を広げていくことが非常に重要だろうと思います。その際の機能として付け加え るべき点があればお伺いしたいです。例えば先ほどのお話でしたら、看護師の設置とい うことであればいけるのではないかと受け止めたのですが、医療との協働とか、または 医療系の施設としてそういう子どもを専門的に受け入れるような施設を整備すべきでは ないかというご意見があるのかどうか、その辺りを教えていただきたいと思います。 ○長井氏  機能として持った場合に、小児科のドクターがどれだけきちんといてくれるか。OT・ PTをやってくださる方がどれだけいるか。これは、入所している子がどれだけ通院し なければならず、それによってその対応にどれだけ職員が取られるかという問題なので す。子どもを医療機関に連れて行くと半日職員を取られてしまいます。1.7対1という 状況で、1人の子どもを連れて行って半日帰ってこない職員がいると、ほかの職員がみ んなでほかの子どもの対応をしなければいけない。そうだとしたら、やはり私どものと ころへ出前をしてOT・PTをやってもらえる、小児科のドクターが通ってきてきちんと 診てくれる方がいい。夜間でも受け入れてくれる病院があるならよいのですが、大都市 はまだその辺ができていますが、入院すると今の乳児院では付き添いの職員が24時間 付かなければならない。そうすると、とんでもないことですよね。夜勤の職員は抜かれ ていく。それができなければ、やはりそれに替わる職員を配置して病院の付き添いのよ うなことをしてもらわなければならない。ですからそうした子どもを乳児院が預かるの であれば、乳児院にそれなりの条件を整備していただかなければこれ以上は受け入れら れません。 ○柏女座長  ありがとうございました。それでは、まだご意見・ご質問があるのではないかと思い ますが、10分になりましたので、ここで時間を区切らせていただきたいと思いますが、 よろしいでしょうか。時間を切って本当に申し訳ないのですけれども、座長として、9 団体からヒアリングをさせていただきますので、どこかの特定の団体に時間を長くかけ るということは避けたいと思います。公平・公正な運営を心がけたいと思っており、そ ういう意味ではご迷惑をおかけしているのではないかと思いますが、ご容赦いただきた いと思います。  前回、今回と、いわば社会的養護の受け皿の方々のご意見を伺いました。委員の方か らも幾つかご意見が出ていましたけれども、社会的養護の受け皿の方のご意見が皆同じ というか、入所している子どものボーダーレスの状況や小規模ケアの必要性など、同じ ようなことが提案されているように思いました。しかし今は、例えば1歳〜2歳で分け られたり6歳あるいは18歳で分けられてしまったりして、年齢別で子どもの社会的養 護の受け皿が分けられてしまう。あるいは子どもが何をしたか、子どもの状態がどうな のかという性行別に分けられてしまっているということがある。本当にそれでよいのだ ろうかということで、委員の方々は、本体機能は充実して特性があっても良いが、その 本体機能は大事にしながらも小規模ケアを自由に幾つか持てるようなタイプの施設再編 も考えられてよいのではないかということが念頭にあったのではないかと思います。  また、ヒアリングをさせていただいた方々には、今は答えにくい部分も確かあったの ではないかと思いますけれども、この検討会では施設再編も議論の中に含めるという形 にしていますので、また個別にご意見などを伺うこともあるかもしれません。また、前 回も申し上げたのですけれども、社会的養護の受け皿相互の間でこうしたディスカッシ ョンをしていただければありがたいと思っています。本当に年度末の貴重な時間におい でいただきありがとうございました。  それでは時間になりましたので、今日はこの辺りで議事を終了させていただきたいと 思います。次回の予定につきまして事務局の方からご連絡をお願いしたいと思います。 ○鈴木家庭福祉課係長  今後の予定ですが、次回第5回の検討会が来週3月22日木曜日、時間は18時から 20時半までということで、場所は同じくこの省議室で開催することにしています。続き まして次の第6回ですが、4月3日火曜日、時間は18時から20時までということで、 場所は6階の共用第8会議室です。その次の第7回ですが、同じく4月16日月曜日、 時間は18時から20時までで、場所は6階の共用第8会議室。その次の第8回は5月 10日木曜日、時間は18時から20時、場所は未定です。詳細につきましては、追って 文書でご連絡いたしますのでよろしくお願いいたします。今後の予定につきましては以 上です。 ○柏女座長  それでは、今日はこれで終了させていただきたいと思います。委員におかれましては 大変お忙しい中ありがとうございました。またヒアリングにご協力いただいた先生方、 本当にありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課措置費係 連絡先  03−5253−1111(内線7888)