07/03/15 第4回「院内感染対策中央会議」議事録            第4回「院内感染対策中央会議」議事録 1.日時   平成19年3月15日(木)   10:00〜12:00 2.場所   厚生労働省専用第17会議室(16階国会側) 3.出席者 (構成員)荒川 宜親、大久保 憲、岡部 信彦、賀来 満夫、            木村  哲、切替 照雄、倉田 毅、倉辻 忠俊            小林 寛伊、武澤 純   (五十音順、敬称略)               (厚生労働省)佐藤医政局指導課長、針田医療計画推進指導官ほか 4.議題      (1) 院内感染対策関連の省令・通知について   (2) 各厚生労働科学研究班の研究成果について   (3) 平成19年度 院内感染対策関連予算案について   (4) その他 ○針田医療計画推進指導官 ただいまから、第4回院内感染対策中央会議を開催させて いただきます。本日、構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中ご出席いただきま して、誠にありがとうございます。開催にあたり、指導課長の佐藤よりご挨拶申し上げ ます。 ○佐藤指導課長 皆様、おはようございます。医政局指導課長の佐藤でございます。年 度末の大変お忙しい中、第4回院内感染対策中央会議にお集まりいただきまして、本当 にありがとうございます。通例ですと毎年1回程度の開催ですが、今年は2回目の開催 となりました。  理由はいくつかあります。その1つは、先の医療法改正以降、法施行事務という形で 院内感染についても、所要の手続が整いましたので、それをまず報告しておきたいとい うのが1つです。2つ目は、大学等々でいくつか話題になるような院内感染がございま した。今日お集まりの先生方にも、大変お世話になったのではないかと理解しておりま す。そういった事例が続いたこともありまして、今回は年度内2回目となりましたが、 開催させていただきました。  限られた時間ではありますが、今日は大変たくさん資料を準備しておりますので、ご 議論を深めていただければ幸いに存じます。簡単ではございますが、私のほうからの挨 拶とさせていただきます。よろしくお願いします。 ○針田医療計画推進指導官 それでは各構成員のご紹介を、五十音順にさせていただき ます。国立感染症研究所の荒川宜親構成員です。東京医療保健大学の大久保憲構成員で す。国立感染症研究所の岡部信彦構成員です。東北大学の賀来満夫構成員です。東京逓 信病院の木村哲構成員です。国立国際医療センターの切替照雄構成員です。富山県衛生 研究所の倉田毅構成員です。国立成育医療センターの倉辻忠俊構成員です。東京医療保 健大学の小林寛伊構成員です。名古屋大学の武澤純構成員です。それでは小林座長、よ ろしくお願いします。 ○小林座長 本日は資料もたくさんありますので、構成員の皆様方のご協力をいただき、 当検討会の円滑な運営に努めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいた します。議事に入る前に、検討会の議事や資料の公開の取扱いについてのルールを確認 しておきたいと思います。事務局よりご説明お願いいたします。 ○事務局(徳本) 運営に関して、あらかじめお断り申し上げます。本検討会は公開で 行います。議事録についても、事務局でまとめたものを各構成員の皆様にお目通しいた だいた後、厚生労働省のホームページで公表することといたします。この点においてご 了承願います。なお、写真撮影等はこれまでとさせていただきますので、ご協力のほど、 お願いいたします。 ○小林座長 続いて本日の議事資料について、事務局からご説明いただきたいと思いま す。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日用意させていただいた資料の構成は、 資料1として「医療法施行規則 新旧対照条文(案)」とポンチ絵です。資料2は、「改正 医療法(平成19年4月1日施行)医療安全関連医政局長通知(案)」です。資料3は、 「中小病院/診療所を対象にした医療関連感染制御指針(案)」です。資料4は、「小規 模病院/有床診療所施設内指針(案)」です。資料5として、「無床診療所施設内指針(案)」 です。資料6は、「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のためのガイドライン」 (案)です。資料7は、「多剤耐性緑膿菌に関するアンケート調査報告書(案)」です。 資料8として、「院内感染対策サーベイランス事業年報・季報(案)」です。資料9とし て、「院内感染地域支援ネットワーク及び相談体制の改善・普及やデータベースおよびバ ックアップ体制の構築」に関する報告です。資料10として、「院内感染対策サーベイラ ンス」に係る参加医療機関の募集についてという通知です。資料11として、「平成19 年度院内感染対策関連予算案」です。資料12として、「clostridium difficile及び北米流 行型BI/NAP1/027株について」です。 ○小林座長 それでは議事に入ります。本日の進行ですが、議事次第に沿って進めて、 それぞれの議題に沿って院内感染対策に関する認識やお考えなどについて、各構成員か らご意見をいただき、議論を進めていきたいと思います。議題(1)は、「院内感染対策 関連の省令・通知について」です。これに関して、まず事務局からご説明いただきます。 ○事務局 この件に関しては、昨年の第3回院内感染対策中央会議において、簡単にご 説明申し上げたものの粗々のものがまとまりつつありますので、ご報告いたします。先 般の医療法改正における医療法第6条の10において、医療の安全の確保が規定されま した。資料1の「医療法施行規則」をご覧ください。医療の安全の確保の1項目として、 院内感染対策が含まれることになりました。ほかに医薬品に係る安全管理の体制や医療 機器に係る安全管理のための体制も含まれております。院内感染対策のための体制の確 保のそれぞれの項目としては、「院内感染対策のための指針の策定」「院内感染対策のた めの委員会の開催」「従事者に対する院内感染対策のための研修の実施」「当該病院等に おける感染症の発生状況の報告その他の院内感染対策の推進を目的とした改善のための 方策の実施」が規定されております。  これまでの規定と比べて、どういうように変化したかということに関しては、ポンチ 絵をご覧いただければ分かりやすいかと思います。縦軸に「指針の整備」「委員会の開催」 「職員研修の実施」「発生状況の報告等」「部門の設置」「担当者の配置」というように6 項目挙げられており、◎の部分が今回新たに規定されるもので、○がすでに規定されて いるものです。この基本的なスキームに関しては、平成17年5月に出された「今後の 医療安全対策についての報告書」に則って実施することとなっております。  実際にこれが通知等でどのように落とし込まれるかということに関しては、資料2を ご覧ください。資料2はまだ案の段階ですので、多少の変更等はありますが、3頁をご 覧ください。「医療施設における院内感染の防止について」で、院内感染対策の体制につ いてア、イ、ウ、エと規定しております。特定機能病院においては(2)の部分で規定 されております。それぞれ簡単にご説明申し上げます。  アは「院内感染対策のための指針」ということで、院内感染対策委員会の議を経て策 定及び変更するものです。その指針に掲げられる項目に関しては、(1)から(7)の項目です。  イでは、院内感染対策のための委員会が記されております。特にご注目いただきたい 所は、(3)の院内感染が発生した場合は、速やかに発生の原因を分析し、改善策の立案及 び実施並びに従事者への周知を図ること、(4)の院内感染対策委員会で立案された改善策 の実施状況を必要に応じて調査し、見直しを行うこと、(5)の月1回程度開催するととも に、重大な問題が発生した場合は、適宜開催すること、(6)の委員会の委員は職種横断的 に構成されることです。医師や看護師だけで構成されるのではなく、医療機関の従事者 に職種横断的に実施していただきたいという意味を込めております。  ウは「従事者に対する院内感染のための研修」です。こちらに関しても職種横断的に 実施していただき、年2回程度定期的に開催していただきたいということです。  エは「当該病院等における感染症の発生状況の報告その他の院内感染対策の推進を目 的とした改善のための方策」です。2行目からですが、「院内感染の発生状況を把握する ため、医療機関内における感染症の発生動向の情報を共有することで、院内感染の発生 の予防及びまん延の防止を図るものであること」となっております。聞き慣れた言葉で 言いますと、院内のサーベイランスを実施し、それに応じて対応を取ってくださいとい うことです。院内感染対策サーベイランスについては、後ほど荒川構成員よりご紹介い ただけるかと思いますので、そのときにも話題に挙げていただけたらと思います。  「また」以降では、「重大な院内感染等が発生し、院内のみでの対応が困難な事態が発 生した場合、若しくは発生したことが疑われる場合には地域の専門家等に相談が行われ る体制を確保することが望ましいものであること」となっております。これは義務では ありませんが、望ましいという努力規定として記しております。これに関してもまた後 で倉辻構成員からご説明があるかと思います。地域支援ネットワーク等で対応いただく ことを望むものです。  さらに「院内感染対策のための指針」に則した院内感染対策マニュアルを整備する等、 その他の院内感染対策の推進のために必要な改善策を図るとともにそれらを定期的に見 直すことが望ましいものであること、というように記載しており、今回、小林座長及び 武澤構成員等から、医療機関内における指針やマニュアルを作るのに資する研究報告書 が上がってきておりますので、それに関しても後でご議論いただければと思っておりま す。  5頁に移ってください。「特定機能病院における院内感染対策について」ということで、 2行目の後半から、規則第1条の11が改正され安全管理のための措置に院内感染対策 のための措置が含まれる事が明確化されたことを踏まえ、今回の法改正の中の院内感染 対策の趣旨をこちらに記載しております。特定機能病院においても部門や報告制度等で 対応してゆくということです。(2)の下から2段目ですが、「医療の安全を確保するた めの体制の整備と一体的に実施しても差し支えないが」ということで、従前より特定機 能病院に義務として課せられている医療安全対策と一体的に実施しても構わないが、院 内感染の専任者は継続して置いてくださいという規定になっております。  以上、簡単ではありますが、今般の医療法改正に伴う院内感染対策に関して、趣旨及 び注目すべき項目等を、強調してご説明させていただきました。 ○小林座長 ただいまご説明いただいた内容に関しては、昨年9月に開催された第3回 院内感染対策中央会議で説明のあった内容で、実際にはこのような文言で整理がついた というのが、いまのご説明です。  そこで、次の議題にも関連する内容ですが、前回の院内感染対策中央会議で、各構成 員からこれらの内容に対して、厚生労働科学研究班の研究成果をどのように活用してい くかというお話をいただきました。議題2として、「各厚生労働科学研究班の研究成果に ついて」に関して、各研究班の研究成果が現在、取りまとめの段階にあります。それら についてのご報告を、先ほど事務局より説明のあった院内感染対策の推進について、ど のように活かしていくかという視点で、ご議論いただければと思います。  それでは本日、資料の提出をいただいている順番で、約5分程度でご説明いただいて、 その後にまとめてご議論いただければと思います。順番として私、小林の研究成果から ご説明させていただき、続いて武澤構成員、切替構成員にご説明いただいた後、院内感 染対策サーベイランスの事業報告を含め、荒川構成員にご説明いただき、最後に倉辻構 成員にご説明いただくという順番で進めたいと思います。  それでは、小林班の「安全性の高い療養環境及び作業環境の確立に関する研究」につ いて、当中央会議の構成員でもあり、小林班の分担研究者でもある大久保構成員からご 説明いただきたいと思います。 ○大久保構成員 資料3、4、5を併せてご説明いたします。資料3は、300床未満の 「中小病院/診療所を対象にした医療関連感染制御指針(案)」です。資料4は、「小規 模病院/有床診療所施設内指針(案)」です。内容的には「ガイドライン」と言うより、 マニュアルを想定しておりますが、それらを作成するための単純且つ効果的な指針の例 を、案として示しております。資料5は、「無床診療所施設内指針(案)」です。これも マニュアルを念頭に置いていますが、それを作成するための単純且つ効果的な指針の例 を、案として示しております。  これらを指針とした背景については、いずれも先ほどご説明のありました医療安全関 係の省令において、病院等の管理者は、施設内で医療の安全を確保するため、指針の策 定、従業員に対する研修の実施、委員会の開催、事故報告等々、安全確保のための措置 を講じなければならない、としており、院内感染防止においても安全管理の省令の書き ぶりとの整合性から、指針としております。いずれの指針案においても、中小病院/有 床診療所等における医療関連感染制御対策が、これからの重要な課題の1つとなってい るため、そのような施設においてもあまり無理なく実行できて、なお経済効果もあり有 効である、施設ごとのマニュアル作成に役立てるための指針案を作成しました。  したがって、なるべく複雑な指針にはせず、要点のみを簡明に示す道しるべにいたし たく、推敲を重ねてまいりました。この指針を基に、対象各施設はご自身の置かれた状 況に従って、独自の手順書、マニュアルを作成していただければと考えております。こ れらの案については、本中央会議の委員各位、日本病院関連関係者、感染制御大学院教 育協議会のメンバー、そして日本医療機能評価機構関係者などに対して、広く意見を求 めて案を作成しています。なお、今後は2007年度に試行しつつ、パブリックコメント を求めて、2008年度にまとめることを目標としております。 ○小林座長 ご質問やご意見がおありでしょうけれども、後ほどまとめて行うというこ とで、ご了解いただきたいと思います。続いて武澤構成員から、「医療の安全性及び安全 対策の評価指標の開発と有効性の検証」についてです。武澤構成員は、後ほどご説明い ただく荒川班の分担研究者というお立場もありますので、併せてご説明いただければと 思います。 ○武澤構成員 簡単にご説明したいと思います。「医療の安全性及び安全対策の評価指 標」ですが、中身は院内感染対策のシステム的なアプローチを、どうするかという枠組 みの研究です。今年は129の地方自治体にアンケート調査をいたしました。感染症法や 医療法が変わったことによって、地方自治体の院内感染に対する役割が変化してきて、 かなり高度化し、しかも複雑化していることを受けて、一体どのような課題があるのか、 あるいはその課題に対して、どのような解決策があるのか、できれば地方行政機関に対 する地域院内感染対策支援ガイドラインのようなものが提供できればということで、研 究を進めてまいりました。  今年はアンケート調査をして、129の自治体のうち、100の自治体から回答をいただ きました。項目に関しては、院内感染対策を地方行政機関が実施するに当たっての課題 と問題点が何かということを、アンケートでお聞きしました。大きくは研修・教育、ア ウトブレイク時の対応、医療機関からの情報収集、行政処分に関すること、各行政機関 の役割分担、もしマニュアル等を作成することになった場合には、一体どういうものを 記載すべきかということをお聞きしました。  研究結果として出てきたことの1つには、地方行政機関が今般の医療法、あるいは感 染症法の改定に対応して、院内感染対策を実施するに当たっては、医療法の詳細がまだ 決まっていないところがあるので、しょうがないとは思いますが、責任と権限が少し不 明確になっているために、やや対応が遅れているという感じがありました。  2番目は、感染症に関する業務が飛躍的に増えてきているということです。特にSARS や新型インフルエンザなどの感染症も含めて、社会安全保障と言いますか、社会防衛的 な観点からの感染症対策というのもあるので、地方行政機関の中の感染症専門行政官の 役割、あるいは必要性がますます増えてきています。それに対する教育や支援などが要 るのではないかというのが2番目です。  3番目が、院内感染等々も含めて、地域全体で感染症に対する支援のネットワークの モデル事業ができていますので、その支援を特に学会に期待したいということです。ま た、大学やFETPもそうだと思いますが、そういう専門職機関がネットワークをつくっ て、地域の院内感染対策を支援する体制をつくると。この3つが緊急の課題として浮か び上がってきたということが、1つ目の研究班の活動状況です。  もう1つは、ガイドラインのほうです。こちらは先ほど大久保先生がご報告されたガ イドラインとは、ちょっと性格を異にしています。むしろ病院の現場の人たち、より患 者に近い人たちが実際にどうするかということに関して、各医療機関は医療法に則って マニュアルを作らなければいけないわけです。それに参考になる、より具体的なガイド ラインとして作成しました。 各方面から、実際に患者を診ている方々を含めて、 Evidence-based clinical guidelineを作りましたが、皆さんもご存じのように、感染症 に関してはエビデンスがある分野と、少ない分野と、事故報告だけで作られる分野とい ろいろあります。CDCのを見ても、いろいろバラツキがあるものですから、そういう ものも考慮して、集大成をしてみたわけです。出来上がったばかりなので、体裁を整え るだけで精一杯だったものですから、これから皆さんのご意見を多々伺って修正をして、 できれば7月ぐらいに最終版として完成したいと思っています。  それから、最初の資料6をご覧になるとおわかりになると思いますが、ガイドライン の題名と研究班の名前がごちゃごちゃになっています。実は、題名に関しても悩みまし て、とりあえずこういうガイドラインの名前にしました。構成や表現等に関しては、統 一性は保ったと思いますが、名前を含めて専門職の方々のご意見をいただいて、できれ ば今年7月ぐらいに完成させたいと考えております。一応現段階では、案ということで ご報告いたしました。 ○小林座長 続いて切替構成員、よろしくお願いします。 ○切替構成員 私は平成18年度に荒川先生の研究班で、薬剤耐性菌等に関する研究の 分担研究員として、高度多剤耐性緑膿菌の院内感染解析に関する研究をさせていただき ました。特に高度多剤耐性緑膿菌に関しては近年、いくつかの大学病院等の大きな病院 で、多発事例があるということで、社会的にも注目されている病原体です。まず今回は 全国の医療施設の実態を調べるために、アンケート調査をいたしました。アンケート調 査は全国538施設に依頼をして、そのうち63%に当たる339医療施設、及び4施設の 臨床検査受託事業所から回答をいただきました。  その回答結果は、資料7にまとめてあります。まず地理的分布から見たところ、多剤 耐性緑膿菌は全国の各地域の医療施設から検出されていることが明らかになりました。 このアンケートでは平成15年度から18年度の6月までの患者数、及び多剤耐性緑膿菌 の分離数についての回答をいただきました。特に急激な増加は認められておりませんで した。平成18年度の多剤耐性緑膿菌分離数総数あたりの分離率は、2.7%でした。検査 材料別に見ますと、多剤耐性緑膿菌は尿路系から分離されて、次に呼吸器系からの分離 が次に続くという傾向が見られました。  全体的な多剤耐性緑膿菌の分離患者数ですが、90%の医療施設で、1,000病床あたり 年間約25.6名以下の患者から分離されております。これをもう少し具体的な形で申しま すと、調査に参加していただいた医療施設のうち、約85.8%の施設から、多剤耐性緑膿 菌が分離されているという現状があります。しかし、その件数を見ますと、1,000病床 あたり年間数例程度が大半であったということがわかりました。  まとめますと、我が国の各医療施設で多剤耐性緑膿菌が少し新興し始めていることが 明らかになりました。アンケート調査を行ってご回答いただいた医療施設のうち、特に 多剤耐性緑膿菌が多く出ている施設に関しては、電話で実態を確認すると同時に、事情 の許す限り、ご協力いただいた医療施設を訪問して、実態調査とか、どのような対策を 取っているのか等についての聴取り調査をいたしました。皆さんいろいろな経験をされ ており、各医療施設の経験を基に、次の頁にある多剤耐性緑膿菌対策に係る提案をさせ ていただきました。多剤耐性緑膿菌のまん延を防止するためには、特に多剤耐性緑膿菌 に限定して、どういう対策を取ったらいいか、各医療施設の経験やご提案をいただいて まとめました。  多剤耐性緑膿菌に対する対応としては、特に病院長先生のリーダーシップというのが、 非常に重要であるということ、多剤耐性緑膿菌に関する十分な知識を持つための職員教 育というものが、非常に重要であるということがわかりました。また多剤耐性緑膿菌分 離に関する重点的な把握を、各医療施設にしていただくとともに、その病院の置かれて いる地域内との連携をして、情報を共有していくことも、非常に重要であるということ がわかりました。特に個室管理で多剤耐性緑膿菌の患者を管理するということ、皆様も ご存じのとおり、緑膿菌は水回りによく生息いたしますので環境の整備ということ、こ の2点を徹底しますと、非常に効果的に多剤耐性緑膿菌の感染対策ができることがわか りました。研究班としてもあと2年間ありますので、多剤耐性緑膿菌に関しては、引き 続き重点的に監視をして続けていこうと考えております。 ○小林座長 続いて荒川構成員の「薬剤耐性菌等に関する研究」について、資料として 登録していただいている「院内感染対策サーベイランスの事業年報・季報(案)」を含め て、ご説明いただければと思います。 ○荒川構成員 資料8に沿って、院内感染対策サーベイランス事業について、ご報告さ せていただきます。このサーベイランス事業は、平成12年(2000年)から開始されま した。これはこれまでの集計結果等を、各参加施設に個別に返す資料で、全国の平均と 各施設のデータを、それぞれお返ししております。それと同時に一般向けとして、感染 研のホームページを通じて、集計結果の中で特に皆さんが興味を持たれそうな内容につ いて、還元させていただいております。前回の委員会でご承認いただいた部分について は、すでにホームページに掲載されておりますが、それ以後の集計がまとまったものが、 資料8の1から5です。  検査部門、集中治療部門、全入院患者部門等の5つの部門について、主に平成18年 度の後半以降の季報・年報が大体完成いたしました。これについては過日、厚生労働省 のほうから各構成員にはテストページのご案内をさせていただいていると思います。た だ、これは膨大ですので、すべて目をお通しいただくのはなかなか大変だと思います。 掻い摘んで申し上げますと、全般的な傾向としては、これまでとほぼ同等の傾向が得ら れました。特に特定の病原体が急激に日本で増えている、あるいは耐性菌が増えている という兆候は、今回はありません。  ただ、感受性試験装置のエラーで、バンコマイシン耐性の黄色ブドウ球菌などが、一 部で報告されております。これについては各施設に確認いたしまして、入力ミスであっ たことが確認されております。この図表の中には一部、まだそれが残っているかもしれ ません。これについては今、事務局のほうで最終確認をしており、確認ができ次第、今 日の委員会でご承認いただければ、ホームページにアップロードして一般に公開させて いただくようにしたいと思います。 ○小林座長 VRSAに関しては、訂正が入ってあれするということですね。 ○荒川構成員 はい。 ○小林座長 続いて、院内感染対策サーベイランスの事業については、現在新たに参加 医療機関の募集をかけているという状況にあるようです。このことについて事務局から、 ご説明いただけますか。 ○事務局 資料10をご覧ください。この院内感染対策サーベイランスに関しては、平 成12年度より、一般の方への院内感染対策に係る情報の公開という目的が1つ、各医 療機関における院内感染対策を支援するということがもう1つ、最後に、国内全体の院 内感染の発症率等を大まかにつかむということが、目的として実施されてきました。1 つ目の一般に対する情報提供と、3つ目の大まかな情報の把握に関しては、従前より効 果を上げてきたところですが、2つ目の目標として挙げた、各医療機関における院内感 染対策の支援という面においては、実際のところデータを返す際にはかなり膨大で、そ れなりに院内感染対策に詳しい人でないと、なかなか読み解けないというご指摘のあっ たところです。  今般の医療法改正において、各医療機関における院内感染対策の推進をお願いしてい ます。各医療機関における院内感染対策の推進を目的とした改善の方策を支援すること から、今回、医療機関等への還元情報の見直しを行うということで、平成19年7月よ り新たなシステムで、新たなサーベイランスデータの還元方法で実施したいと考えてお ります。それに伴い、平成19年2月22日付の通知で各都道府県を通じて、現在、参加 医療機関の募集を行っています。 ○小林座長 それでは倉辻構成員から、「院内感染地域支援ネットワーク及び相談体制の 改善・普及やデータベースおよびバックアップ体制の構築」について、ご説明いただき ます。 ○倉辻構成員 資料9です。現在、モデルの道県、地方自治体からの報告を集計し、ま とめているところですが、ここに簡単にその目的と問題点を書かせていただきました。 1つは、いままで対象としていたのは小規模病院、あるいは診療所だったのですが、や はり昨今は老人保険介護施設でも、いろいろ施設内の感染が起こっているところから、 そういう所でも対象とし、同じように乳児院なども対象にしたほうがいいかどうかとい うことが、問題として挙げられております。  相談員については、ほとんどのモデルの所ではICN、感染管理看護師、感染管理医 師を中心とした専門家がやっておりますが、やはり薬剤師も入れたほうがいいのではな いかということがあり、入れている地域もあります。問題は、相談窓口です。大体の所 では県の病院協会、あるいは県の医師会がすでに事務局を置いております。しかし保健 所や地方衛生研究所に事務局を置いている所では、たとえ相談員が大学の専門家であろ うとも、やはり取り締まられるというような意識から、非常に相談が少ないというとこ ろがあります。やはり病院協会や医師会が中心になったほうがよかろうということです。  それから今度、医療法施行規則で新しく改正される中に、研修ということがあります。 その講演会や研修会には、各施設の担当者に来ていただいて、その方はポイント制のよ うにしたほうがいいのではないか、そのほうがインセンティブになるのではないかと。 そして各施設に戻って、必ず伝達行使を行うことを徹底しなければならないのではない かと。また、東北大の賀来教授の所を見学させていただいて、やはり施設に入っている 人だけではなくて、家族などが一般的にマスコミに報道されたものを理解する上で、市 民講座というものが必要ではないかということがありました。実際にこれを行っている 地方自治体もありました。  地方自治体の役割としては、広報を通してですが、やはり病院協会だけではなく、老 健施設の協議会やほかの保健・福祉関連施設とのお互いの調整を、もうちょっとちゃん とやったほうがいいのではないかと。問題は担当部署、担当官、予算の確保です。モデ ル道県の中でもすでに完全に打ち切ってしまっている所もあります。直接担当官にお会 いして、新しい施行規則では地方自治体の長が、ちゃんと指導することになりますとい う説明はしておりますが、予算面の削減というのがあって、なかなか難しいところがあ りました。  すべてのモデル道県からは、バックアップ体制をもうちょっとしっかりしてほしいと いうことで、ここに掲げてあるようなことが要望されております。特に厚生労働省から のいろいろな通知や通達の解説とか、サーベイランス情報の解説をしていただきたいと いうことです。後者に関しては、国立感染症研究所の医療情報センターがしっかりして おりますので、いいのではないかと思います。また、これから全国展開をするのに、国 としても全国展開のロードマップをしっかりしていただけると、都道府県のほうでも受 けやすいということがあります。それにおいてはやはり地方厚生局の役割が何であるの かということを、もうちょっとはっきりしていったほうがいいのではないかということ がありました。 ○小林座長 いままでのご説明で言い漏らされて、追加されるようなことはありません か。よろしければ議論に入ります。ただいままでのご説明を受けて、いろいろな問題が ごっちゃにありますので、ご質問やご意見を、とりあえず順不同で進めたいと思います。 各指針やガイドラインの取扱いについては、また事務局からご説明があるかもしれませ んが、今後通知や事務連絡で対応されるのかどうか、アウトブレイク時の対応、地域支 援ネットワーク及び相談窓口についてなどあります。地域支援ネットワークの数は、あ まり増えない状況にあります。先ほど大久保構成員からご説明のありました中にも、日 本環境感染学会の教育認定施設等が全国に散らばっておりますので、こういう所を相談 窓口として活用できないかということもありますから、その辺も含めてご検討いただけ ればと思います。ご意見がありましたら、何からでもどうぞ。 ○大久保構成員 いまの件に関して、少し追加したいと思います。資料3の最後に、中 小病院における感染制御の専門家がいない場合の相談窓口として、いくつか候補が挙げ られています。そこに書いてある以外にもいろいろあるわけですが、まずは地域支援ネ ットワークの担当者、日本環境感染学会の認定教育病院の担当者、従来からある日本感 染症学会の施設内感染対策相談窓口、日本病院会の相談窓口及び日本医療機能評価機構 の支援事業なども念頭に入れて、現在、交渉中です。その中で日本環境感染学会の教育 認定病院については、現在、認定作業中の2件を含めて34病院があります。  地域的に少し偏りがあって、西高東低といった感じですが、今年から認定のための規 約を少し変えました。その規約の総則の中に、次のような文言を入れました。すなわち 「認定された教育施設は、感染制御専門職等の教育研修、地域の病院及び診療所等の感 染制御に関する相談への対応」ということを織り込んでおります。したがって今後は認 定病院に対して、学会及び本中央会議等から、そういうお願いの文書をお出しすること を予定しております。 ○小林座長 ほかにいかがでしょうか。いま大久保構成員から追加説明のあった資料3、 4、5に関して、何かご議論、ご意見がありましたらどうぞ。 ○倉辻構成員 諸外国でどうなっているかということを調べてみたところ、特に抗菌薬 の使い方についての指導がものすごく強い国があります。具体的には北欧系で、スウェ ーデンでは400頁余りのちゃんとしたガイドラインがあり、各学会を通じて、医師はそ れを守るようにしています。しかも処方しても直接それが医師の収入のほうに響かない というか、いくら処方しようがしまいが、医師個人の収入には関係ないということで、 MRSAも含めて、それにより多剤耐性菌の問題が非常に低く抑えることができるわけで す。スウェーデンではいまだにペニシリンGなど、基本的なペニシリン系の薬を、…… 陽性菌には使って有効であると言っております。そういうことで、もっと日本も臨床微 生物学会や感染症学会といった専門学会で、そういう指針をちゃんと作って徹底したら いいのではないかということを、逆に提案されました。 ○小林座長 これは化学療法学会から、すでに出ておりますね。 ○賀来構成員 はい。抗菌薬の適正使用についての化学療法学会と感染症学会の合同の 指針は、すでに実際には出ておりますが、それをどのように活用できるかです。特に大 きな病院では今、抗MRSA薬などに関しては使用する際に、感染症の専門医などが構成 メンバーとなっているICTが出向いて対応することになっています。ただ、実際に中 小規模の病院や診療所、あるいは無床診療所の先生方が抗菌薬を使うときに、どのよう に使ったらいいかということについては、専門性の点で実際には判断に困るケースも多 いと思われます。今後、さらに使い方も含めての啓発活動が必要になるかと思います。 ○小林座長 ほかにいかがでしょうか。 ○武澤構成員 先ほどの大久保先生のお話に戻りたいと思います。環境感染学会の教育 認定病院が中心となって、いろいろな支援をしていただけるということですが、環境感 染学会以外にも、いろいろな感染症関連の学会がありますよね。その辺の調整とか、各 自治体のアンケートの結果では、どこに教育や研修のお願いをしたらいいかというのが、 自治体によって違うわけです。東京や大阪などの大きい所は、そういう依頼する機関が あるものですから、出来るのですが、地方へ行きますと、どこに頼んでいいかわからな いということがあります。  ですから是非、感染症関連の学会の方もまとめていただいて、窓口を何らかの形で一 本化するとか、例えば先生の所にお願いすれば、どこの都道府県でも紹介できますとか、 アウトブレイクが起こったら、人材を紹介するところまで支援していただけると、地方 行政機関もやりやすいのではないでしょうか、学会も含めて、その辺の支援活動を強化 していただけるといいのではないかと思います。 ○大久保構成員 それは非常に大切なことです。先ほど申し上げた、いわゆる地域格差 と言いますか、バランスの問題もあります。それから関連する学会もいくつかあります。 実は現在、感染症学会、臨床微生物学会、化学療法学会、そして私の日本環境感染学会 という4つの理事長会議をつくって、お互いの意見交換や何らかの調査をする場合の協 力をしております。相談体制については、まだ具体化はしていないのですが、そういう 1つの集まりをつくりましたので、今後は進んでいくと思います。 ○小林座長 それから後ほど来年度予算のところで、事務局からご説明があると思いま すが、厚労省が長い間予算を付けて、相談窓口を日本感染症学会の事務局に置いており ます。その辺のお話を木村構成員からご説明いただければと思います。 ○木村構成員 相談窓口については当初、MRSAを主体とした院内感染対策についての 相談窓口でしたが、現実には幅広く病院感染対策について質問があります。ただ、いろ いろな質問があまり来すぎてしまっても処理し切れないので、一応所属長の承認を取っ て質問をしてくださいという形で実施しており、年間100から100数十件ぐらいの問合 せがあったと思います。それを毎年、「Q&A」という形で冊子にしています。たぶん、 これはホームページにも出ているとは思いますが、いろいろな質問を整理して、模範的 な回答を載せているという事業を行ってきました。 ○小林座長 これは後ほどご説明があると思いますが、いままで以上に活用していただ くように、予算化もされているようです。ただ現実問題としては、いろいろな所で同じ ような質問が重複して出てくるという現場の悩みは、しようがないのだろうとは思いま すが、いま木村構成員がお話くださったように、いろいろなQ&A集を出して、そうい うところに載っているものであっても、いろいろな場で質問として出てくるわけです。 このようなことも含めて今後、現場の特に中小の病院が対策上、いろいろな質を上げよ うという試みを始めていきますと、またいろいろな問題が出てくるのではないかと思い ます。その辺も含めて、何かありましたらどうぞ。 ○木村構成員 先ほどのガイドラインにしても、教育認定施設にしても、学会レベルで やっているわけですが、それがなかなか周知していかない。知らない人が多く、アクセ スをあまりしないということが多いのです。各学会がもう少し宣伝すればいいのかもし れませんが、何らかの形でオーソライズしていくようなことをしていただけると、もう 少し普及していくのではないかと思います。 ○倉辻構成員 その件に対しては、各地方自治体がホームページを見るとしたら、まず はどこを見るのかという質問をいたしましたら、すべての方が国立感染症研究所の情報 センターのホームページでした。リンクはかなり書いてありますが、そこから各関連学 会へのリンクを、わかりやすいようにするといいのではないかと思います。臨床のほう は、実は国際医療センターのほうでもやっておりますということは、お話しましたが、 そちらのほうがもっと充実しまして、また、つい最近はホームページが一新されて見に くくなったので、ちゃんと改めるようにします。それと密接にリンクしていけばいいの ではないでしょうか。 ○岡部構成員 はい、各方面に利用していただけるよう致します。 ○小林座長 それから、これは後の問題にも引っかかっていきますし、倉辻構成員のと ころで議論しなければいけないのでしょうけれど、いまのお話に絡めて。もともと有識 者会議で、地域支援ネットワークをつくろうという、いろいろなご意見が強く出たのは、 地域において保健所中心の行政が窓口だと、すべてそれが大問題として取り上げられて、 マスコミにリークされる、そのためには地域として然るべき有識者、有経験者が窓口に なって、本当に異常発生なのか、アウトブレイクなのかということを判断してもらうよ うな、そういう窓口が必要だというのが、第1回の中央会議でも出ましたし、その前の 有識者会議のときも、いろいろな地域から強く出されたことなのです。先ほどの調査の 中でもありましたが、賀来構成員や北九州のように、現場の経験者が窓口になって相談 している所と、依然として行政関係の方が窓口になっておられる所とあります。いまは 11ですか。 ○倉辻構成員 11です。 ○小林座長 その割合はいかがですか。 ○倉辻構成員 2カ所だけが地方自治体、あるいはA県とJ県に事務局があります。あ とは全部病院協会や医師会といった所にあります。 ○小林座長 9地域がそういう窓口になっているということですね。ほかに何かありま すか。また何かあれば戻ることとして、内容的なことも含めて、ご議論していただきた いと思います。  次に、武澤構成員からご紹介いただいた資料のないほうの話も含めて、この膨大なガ イドライン(案)を作成してくださいましたが、こういうものをどういうように取り扱 っていくのかということも含めて、ご議論いただければと思います。 ○大久保構成員 いま武澤構成員からお示しいただいたガイドライン(案)には、あら かじめ目を通させていただきました。科研報告としては、非常に立派なものができたと いう印象を持ちました。先ほどの先生のご説明でかなりわかりましたが、最初に引っか かったのが、この「ガイドライン」というタイトルです。ガイドラインは決してレギュ レーションではないのですが、一般的なとらえられ方としては、そうしなさいという感 じですよね。  さらに、これが厚労省関係から出されることになると、相当な重みを持って受けとら れることになります。細かいところはいろいろあると思うのですが、従来から通知等で 出されてきたものの解釈が少し違っていたり、そういういろいろな問題が目に付いたも のですから、発言させていただいたわけです。7月に公開される前に、パブリックコメ ントや広くいろいろな形で、もう少し有識者と言いますか、専門の方にご意見をお聞き する必要があるのではないかと思います。日本にはすでにいろいろな通知、及びオーソ ライズされているいろいろなマニュアル、ガイドライン等がありますので、そういうも のと区別をしてきちっと合った形で出さないと、これはちょっと問題かと思います。も し、ガイドラインという名前を変えられるのなら、「道しるべ」とか「手引書」というほ うが受け入れられやすいかという気がしますので、その辺をもう少し検討していただき たいと思います。 ○武澤構成員 名前にこだわってはおりません。皆さんが良いと思われる名前に変えて いただければ問題ないと思います。  それから3頁にも書いていますけれども、これは中央会議とか感染症関連学会、職能 団体、病院団体などの専門組織の意見を調整して、その後社会から意見をいただいた上 で確定する、というふうに最初に作るときから考えていました。これは、最初の案だと 考えていただければいいので、これから皆さんのご意見をいただいて、より良いものに 修正していくつもりでおりますので、是非ご意見をいただきたいと思います。 ○小林座長 先ほど、現場で携わっている方にこれを担当していただいたというような、 武澤構成員からのお話がありましたが、拝見したところ必ずしもそうでもなくて、現場 で専門にそういうことにタッチしていない方も書いておられます。武澤構成員が法令を 引用している辺りはきちんと引用されております。  いままでに出た通知などを、いま大久保構成員の話にもありましたけれども、全く誤 解してこの中に引用しているようなところもありますので、その辺は相当細かく見てい ただかないと、これが厚労省から出ることになると、結局現場が困ることになると思う のです。1991年の通知の中で出されたものも、結局10何年かかって、1995年には既 にエビデンスではなくなったことが通知として、また医療法施行規則に絡んでいるもの として、2005年までかかってやっとそれが修正されたという過去の事例も日本にはあり ます。  この中で武澤構成員は、2年か3年で見直しということになっていますけれども、見 直しても必ずしもそれが通知として行くかどうかというのは、行政の中の難しさもある ようですので、かなり慎重に取り扱うほうがいいのか、というのが大久保構成員のいま のご意見かと思います。ほかの委員の先生方はいかがでしょうか。 ○賀来構成員 是非お願いしたいことがあります。先生がおっしゃいましたように、エ ビデンスとなる論文を非常に多く引用している項目と、少ない項目があります。できる だけ、有用な論文を多く引用していただくようにお願いしたいと思います。 ○小林座長 資料として、内容は非常に膨大なので、先ほど武澤構成員は、内容的には 夏までかけて皆さんのご意見をお聞きくださるということですので、詳細に関してはそ ういう形でご検討いただければと思いますが、全体的に何かありますか。 ○倉田構成員 いくつかあるのですが、このガイドラインとか、マニュアル、リコメン デーションというのは、かつて私がバウセ……の委員をしているころに、こういう言葉 を8カ国の人に英語で説明せよと、みんな同じ意味で、これはサゼスチョンなのです。 こうやったらいかがですかという、日本語で言ったら「示唆」という言葉が適確なので す。ところが、日本語の持つ意味のガイドライン、指針、勧告というのは全然違うので す。ですから、英語の単語をこのまま使うときには使い方を考えたほうがいいと思いま す。指針という意味を持たせたいなら指針だし、勧告という意味を持たせるなら勧告だ し、そうでなかったら院内感染防止のためにとか、そのようなことのほうが使いやすい と思います。  もう1つは改正医療法、感染症法という言葉は必要なのかなと思うのです。改正医療 法の規則で、ファンクションがみんな違う病院のこととか、いろいろなことのためにこ の中身はあまり関係ないと思うのです。つまり、院内感染ということは、医療法のこう いう基準ができてこうだから、これがあるという話では全然なくて、もともとこれをき ちんとしておくということと、医療法ができたからどうだという話ではない。  いま感染症法の言葉は別にセキュリティの意味で、この間法律が通って、いま施行に 向けて具体的な政省令を整備しています。そこのところの意味で、こういうものが何か 出てくると、病原体の問題とその扱いとかでがらっと意味が変わってきますので、院内 感染防止という言葉の使い方というのは、院内感染防止ならいいのですが、医療法、感 染症法という言葉に基づいて、というのはちょっと避けたほうがいいと思います。  もう1つは、いままでの行政対応ということと、現場では起きてしまったときのバタ バタが目について、いわゆる事前の防止の強化というためには、病院の中の整備、ハー ド・ソフト面の整備とともに、人とかお金もそれなりにいろいろなことが必要になりま す。そういうところは、厚労省のいつものやり方で、各自努力せよということであるの か、その辺のところを行政側はどのように考えていますか。たまたま、私はほかのこと でいま地方へ行って、そういうことを直接見ていて気がついたことがいっぱいあります のでお聞きします。 ○佐藤指導課長 シンプルにお答えすると、本当は診療報酬なりで、医療を実施するに 当たって伴ってくる問題なのですから、本来診療報酬で十分措置されればいいのですが、 いまの流れというのは必ずしもそうではなくて、むしろやっていない場合に減額という 感じで、十分に付いているのかどうかというのはちょっと難しいところだろうと思いま す。  だからといって、補助金で何かできる部分があるのかというとそこも難しいです。し かしながら、先生は法律や政省令とは無関係に院内感染対策はちゃんとあったのだとお っしゃいますけれども、役所風に言えば法体系が整備されたということは、それなりに 補助金になるのか、診療報酬になるのかわかりませんけれども、要望なり要求なりして いきやすい体制になったのは事実です。平成20年4月には診療報酬改定も予定されて いるのではないかと思いますけれども、そこに向けて努力していきたいと思います。 ○倉田構成員 こだわりますが、国が全国個々の病院の問題に関して絡まるからますま すあれなのです。これのためにという地方にそういうお金が流れて、そこでそのために 使うというやり方のほうがたぶんうまくいくのではないか、というところがあると思う のです。  どういうことかというと、いま言われたように何かあったら全部そこは減額になった らたぶん病院は潰れます。今朝のテレビでも、医者が病院長をやっているからいけない のだ。経営の達人を持ってきて院長に当てたら病院は良くなる、などと馬鹿なことを言 っている評論家がおりました。そういうことが堂々と言われるようになってくると、こ れに対してはそれなりの論理を、厚労省が院長は医者でなければいけないと決めておく からこういうことが起こるのだ、ということに対しては相当な反論をすべきだと思うの です。院内感染の問題も含めて、現場で起こる問題がみんなかかわってくるのです。  国が、一個一個の病院に関してそういう評価をするという話なのか、あるいはいろい ろな所の関連学会が努力するのは当然でよろしいのですけれども、そういう所にお任せ という話なのか、法律は作るけれどもということなのか。いつも文章を作って、机の上 に置いて、あとは動かないというのが随分ありますので、本気でちゃんとやるのなら、 それなりの社会基盤整備という意味での投資はあまりしていないですよね。診療報酬は どんどん削られてきて、実際にそこまで回るか。中規模クラスの病院の院長たちの話を 聞いてみると、そんなに甘いものではないです。  日本では、どうでもいいことに「生命」と言うのですが、私の知っている限り文明諸 国ではそんなことは言わないです。それは、粗末にしているから言うのであって、これ は流れる思想が全部関連しているのです。私はそこがちょっと気になるのです。国が人 の生命を守るのならそれだけのことを、これは地方の自治体がやればいいのですが、地 方の自治体がそれなりのことをやらないと、そのお金はもちろん厚労省が握っているか どうか知りませんけれども、財務省かもしれませんけれども、その辺のところをなしで、 ルールだけいっぱい決めていくと、中堅の良い病院にどんどん人がいなくなるというこ とと、みんな同じ流れの中にあるのではないかと思うのです。その辺で何か見解はあり ますか。 ○佐藤指導課長 多少時間があるようなので少しお話させていただきます。いくつかの ことをおっしゃられたと思います。思いつくままに1つ目を申しますと、先生は、国が こうやってガチガチ決めて、感染症法だ、改正医療法だと決めていくけれども、そんな やり方でいいのかということを1つおっしゃったように思います。 ○倉田構成員  決めるのはいいのです。必要なことを決めるというのは非常によくわ かる。その後始末です。 ○佐藤指導課長 日本の医療というのは、昭和60年ぐらいまで、基本的に国は最低線 だけ決めて、細かなところは病院や学会にお任せします、ということでやってきたのだ ろうと思います。ところが、残念ながらそればかりではうまくいかないことがわかって きました。先ほど、抗菌剤の使い方という話がありましたけれども、こんなことを国が 紹介するというのは大変おこがましいはずなのですけれども、そのぐらいやらないとい けないほどになったというのは事実としてあるのだろうと思います。  しかも何か問題が起こると、世の中の誰が責任を取るのだろう。それも国のレベルで 誰が責任を持っているのだろう、という責任追及が起こります。そうしますと、感染症 法一般の市中感染については感染症法のような形でしっかり、がっちり組み込まれてい るのだけれども、院内感染の部分はないではないかと。たまたま患者の取り違いも含め た、広い意味での医療安全のようなことが問題になってきたので、正直申しまして国と しても何らか手を出さずにはいられなくなった、というのが6年前ぐらいの状態でした。 小林先生にお願いしたときの状況だったのです。  ちょっとくどくなりましたけれども、そういう意味で国としては、国が絶対にこれを やらなければいけなくて、がっちり病院を押さえ込んでというような気があるかという と本当はそうではなくて、抗菌剤の使い方も含めて学会・病院でやってくださいという のが本音だと思います。ただ、そればかりでも進まなくなったのだろうというのが1点 です。  2つ目は、国と地方との関係がありました。国と地方というのは、私どもが考える国 と地方、つまり都道府県や市町村と国の関係というよりは、おそらく先生は国と病院と の関係をおっしゃったのかなと思います。もし国と都道府県なり市町村ということでお っしゃったのであれば、通常の感染症ですら都道府県や市町村のパワーといいますか、 能力というものがなかなか十分ではない。いまの医療水準ですとか医学の水準に追いつ いていないということを考えると、院内感染のように、まだまだ検討の歴史の浅い分野、 それも病院に対して専門的な立場からアドバイスするとなると、都道府県や市町村の能 力と言ったら怒られますけれども、能力とかいまの技術とか知識というのは圧倒的に遅 れているだろうと。  だから、少なくとも当分の間は、こういう形で中央会議なり、あるいは研究班のよう な形で国が一元的にお世話をさせていただいて、もし状況が好転してといいますか、ど んどん進んで都道府県もやれます、あるいは個々の病院がかなりやれます、あるいは感 染症学会のような所で、相当にアドバイスができるようになりました、という時期には また状況が変わるのかもしれません。現時点では、国が音頭を取って、日本の国情なの かもしれませんけれども、ある程度厚生労働省のお墨付があって動くほうが動きやすい のかという気がしています。  3点目は非常に難しいです。私は何度も申し上げておりますように、院内感染も含め て病院で発生する費用というのは、ちゃんと診療報酬で払われるべきなのだろうと思い ます。ただ、いまの診療報酬の立て方というのは、個々の患者を想定して、個々の患者 にどのぐらい費用がかかったのかという概念でやっていますので、院内感染とか医療安 全のように、共通コスト的なものについてはなかなか費用が付けにくい、付きにくいと いう状況にあったのだろうと思います。  最近はフィジシャンズフィーだとかホスピタルフィーと言われてきていますけれども、 その共通コストみたいなものを診療報酬の中でどう支払っていくのか。例えば山田太郎 なら山田太郎、田中一郎なら田中一郎という患者にどのぐらい院内感染とか医療安全の コストを乗せていけるのだろうというのは、もう一度議論しなければいけない時期にあ るかと思います。  何にしても、私どもは診療報酬を担当していないので、要望を出すにとどまりますけ れども、かなり要求水準が高くなってきたときに、いままでの診療報酬の範囲内で頑張 ってやってね、いままでのスタッフで頑張ってやってねと突き離して、あとは頼むよと いう感じで言えるかどうかというのはまた精査したいと思います。  しかしながら、それにしても本日いただいたものを拝見しますと、スタンダードプリ コーションと言っても、診療所や病院に応じて非常に丁寧なものを作っていただいたの で、これを守るためにどのぐらいのコストを生じてくるのか、どのぐらいの手間が生じ るのかというのは、それこそ言い古された言い方ですけれども、少し勉強させていただ いて今後の課題にしたいと思います。 ○小林座長 倉田構成員の後半のご指摘は非常に大きな問題で大事なのですけれども、 これを議論していると次へ進まなくなります。また、佐藤課長からは大変貴重なコメン トを賜りました。最後のご指摘のコストのことなどは、これからの研究班の中でいろい ろな試案が出されて、それに伴って経済効果がどうかということもこれからの課題で、 我々も数値を出していかなければいけないことだと思います。貴重なご指摘をいただき ました。  最近の動きについては、先ほど説明がありました通知が中小の病院に対しても積極的 に取り組むように、という通知になるわけですけれども、最近数年の日本の動きという のは、中小の病院も非常に感染制御とかリスク管理に対しての意識レベルが上がってき ていると思います。そういう興味を持ってくださる方の数からいったら世界一のレベル になってきていると思います。そういう意味においては大変時宜を得た通知の内容で、 いま課長の話にもありましたように、さらにそういう方向性を加速してくださるような いいタイミングだと私は思っております。そういう観点で前向きに、中央会議としても 捉えさせていただいて今後進めたいと思います。  地域の問題は、この中央会議をつくる1つの目的でもあって、地域差をなくしてなる べくバランスよく地域の問題を解決していけないか、というのが1つの課題なのですが、 これはまだ未解決ですが、今後の課題として検討していきたいと思います。  倉田構成員の前半のお話の、英語の日本語訳というのは非常に難しくて私もしょっち ゅう悩みます。武澤構成員もこのガイドラインに関しては最初の説明のときに、タイト ルにはあまりこだわらないとおっしゃってくださっていますので、倉田構成員、それか ら大久保構成員のご意見を勘案すると、中央会議としては、改正医療法とか感染症法と いうのはどういうところで絡んでいるか、という絡みを書いていただいて、ここからは 何とかを考慮した院内感染防止の手引きとか、現場があまり拘束されない、だけどちゃ んとそれを参考にできるような形で再度タイトルを考えていただく、ということを中央 会議としてはお願いしたいと思いますが、何かご異論はございますでしょうか。 ○武澤構成員 それで結構なのですけれども、ガイドラインとか、マニュアルとか、パ スというのは、英語ではしっかり定義されているので、日本語に直したときに、日本語 のほうが曖昧なものですからわからなくなるのです。外国人同士が話していれば、これ はガイドラインなのかパスなのか、それともマニュアルなのかはわかるのです。日本が、 標準化ということに対して作業が進んでこなかったものですから、製造業では、その辺 のことはちゃんとされているのですけれども、行政とか学会ではそれができてこなかっ たので、曖昧になっているのだと思います。  言葉で反発されるのは損ですから、名前にはこだわっていません。皆さんがいいとお っしゃる、現場がそれで受け入れやすいというのならば、その名前で私は問題ないと思 います。  もう1点保険のことなのですけれども、いまDPCの中では機能係数という考え方が あります。ちゃんと診療した所に関しては、それだけ診療報酬をあげましょうという考 え方です。ですから、院内感染も個々の患者ではなくて、病院全体として、この病院は いろいろな意味でちゃんと設備も整っていて、人も配置されていて、院内感染も少ない ということであれば、その病院に関して機能係数という形で病院全体に点数を加算する というやり方をしてあげると、病院のほうもそれなりにインセンティブも湧くでしょう し、対外的にも認められたということになりますから、そういう要望を中央会議か、あ るいは指導課のほうから、中医協に出していただいて、積極的に院内感染対策を実施し たことに対する評価をいただけるようお願いしたいと思います。 ○小林座長 これは、かつて佐藤課長に随分ご尽力いただいたことであったのですけれ ども、1996年4月の改正だったでしょうか、院内感染対策に1ベッド1日当たり5点の 加点を付ける、という画期的なことがなされたわけです。それが何年か経って減点法に なってしまったので、陰に隠れてしまったようです。また、いろいろな問題としてその 辺を厚労省としてもお考えいただければ、現場はかなり励みになるというのは、武澤構 成員のおっしゃるとおりだと思いますので、議事録に残していただいて、どうぞよろし くご高配をお願いしたいと思います。  タイトルに関しましては、そういうことで中央会議としては、なるべく受け入れても らえるような、折角これだけ貴重な資料ですから、内容的なことは後でいろいろご意見 を賜るとして、そんな方向でご配慮いただければと思います。 ○木村構成員 このガイドライン/手引き書が、いろいろ推敲されて出来上がったときの 位置づけはどうなるのでしょうか。大久保先生、小林先生から、中小病院とか診療所の ガイドライン的なものが出ましたけれども、武澤先生のものが出来上がったときは大病 院におけるということですか。中小以外の病院のガイドラインということになるのです か。あるいは、全体を包括したもののようにも思いますが。 ○事務局 イメージをご説明させていただきます。小林先生の班にお願いした指針に関 しては、今回の法改正に伴い、いわゆる病院、診療所、有床・無床の診療所もすべて、 医療機関すべてに院内感染対策が求められるわけです。いろいろな医療機関に指針を作 っていただいたり、委員会をつくっていただいたり、研修をしなさい、その他の院内サ ーベイランスをしなさいと、いろいろ院内感染の取組みが求められるところです。  これまで院内感染対策をやってきたのはやってきたのだけれども、そのような切り口 ではなかなか見ていなかったという医療機関もあるでしょうから、そういう医療機関が 4月から急にやりなさいと言われたときに戸惑わないための、4月からすぐにでも院内 感染対策に取り組めますよ、というための指針であると思います。  武澤先生に作っていただきました手引書になるのでしょうか、このものに関しては個 別の医療機関が院内感染のマニュアル・指針等を作成する際に、この手引書の中から各 医療機関の実情に応じて、この中で必要なものを取り込んでいただきたい。いわゆる素 材集のようなものをイメージとして考えております。必ずしも大病院とか中小病院にこ だわらず、各医療機関の施設規模に応じて、自分たちの実情に応じたものを抜き出して 作っていただきたい。いま、さまざまなガイドラインやマニュアル等があるかと思いま す。それから、専門家の一意見等が流布しておりますが、このエビデンスに基づいて、 こういうものに取り組んでいただきたいという思いで作っていただいているところです。 ○木村構成員 そうしますと、このポンチ絵でいう、指針を整備しなさいというときの 特定病院から無床の診療所まで全体をカバーする基本資料になるもの、ということにな るわけですね。各々の指針を作るときの参考にする。 ○事務局 指針やマニュアルを作成する際の、各医療機関の実情に応じてこの中から抜 き出して活用してくださいと。しかも活用する際には、ちゃんとエビデンスのレベルを 知ってやってくださいと。うちの医療機関はこれをやっているけれども、実際にはエビ デンスがないけれども、私は心配だからこれをやると、あくまでそのエビデンスがある かないかもわからずに、なんとなくやっているというのはなくしてほしいというところ もあります。 ○小林座長 そういう考え方は、数年前の厚生科学研究で、荒川先生にも倉辻先生、切 替先生、武澤先生にもいろいろお手伝いいただいて、大久保先生にももちろんやってい ただきました。そういう中で、厚生科学研究としてのエビデンスに基づいたグレード付 けをしたガイドライン的なものを日本で初めて作ったわけです。あのぐらいやわらかい 感じで皆さんが活用できるような形にしていただいたほうが、使うほうも混乱なく有効 に活用できるのではないかと思いますが、当時のことも含めて荒川構成員はいかがです か。 ○荒川構成員 今回武澤先生にお作りいただいたものは、私の研究班の分担研究という ことでお願いしました。先ほど武澤先生がおっしゃいましたように、あるいは徳本先生 からお話がありましたように、いろいろなことがいろいろなガイドラインに書かれてい ます。そういうものを参考にして各病院が、それぞれの施設に応じたガイドラインとか マニュアルを作っていただくときに、いろいろな項目があります。  その項目のリストを作るときに、この中からいくつか何頁の何番を見たときに、その エビデンスになっている資料がどういうものかということを、うちの文献のほうから簡 単に探していただいて、なるほどこういう内容で、こういうことが言われているのだな ということをわかっていただきやすい、そのための資料としてこれが活用されていくの ではないか。あくまでも武澤先生がおっしゃったように、コンテンツ集といいますか、 いろいろなガイドラインを作るときのエビデンス集のようなものという位置づけで私は 考えております。以前、小林先生が中心におまとめになられたものを補完するような資 料集としてこれが使われることになるのではないかと期待しております。 ○小林座長 あれも、厚労省絡みで、厚生科学研究として作らせてもらったことで、こ このほとんどの皆様方にご執筆、ご尽力いただいていますので、そことの整合性もまた 調整の段階で必要ですね。先生ご自身が内容的にはいちばんよくご存じで、あとは国立 大学の先生がお作りになったものもありますし、公的なものでもそんなものがあります ので、その辺を是非齟齬のないようにお願いできればと思います。タイトルもそういう 形でご一考いただければと思います。  先に進ませていただきます。続きまして切替構成員のご説明にありました緑膿菌の問 題はいかがでしょうか。 ○賀来構成員 貴重な資料をありがとうございました。非常に興味深くこのアンケート 調査を見させていただきました。多剤耐性緑膿菌が検出される地域が全国的に広がって いるということでご報告をいただいたのですが、例えば西高東低とか、あるいは東高西 低とか、地域によってかなり多い所と少ない所ということがアンケート調査の上であり ましたでしょうか。 ○切替構成員 全体的に見ますと、非常に満遍なく全国で、それほど数は多くないけれ ども、多剤耐性緑膿菌が検出されている状況にあるということがまず1つあります。  先生のご質問の1つ目は、ある特定の地域に少し高頻度に多剤耐性緑膿菌が出ている のではないかというご質問だと思うのですが、このアンケート調査の中からそういう地 域がいくつかありました。その中で、高い地域に関しては、地域の先生方、それから院 内感染対策の専門家の先生がおられましたので、その先生に荒川先生とご一緒させてい ただき、地域全体で多剤耐性緑膿菌の監視及び感染制御対策、防止をお願いできるよう なシステムのネットワークを作っていただけないかということで実際に作っていただき ました。 ○賀来構成員 非常に素晴らしい試みですね。このような調査を通じて全国的な検出状 況がモニターできることになれば、いま先生がおっしゃったような、地域全体にとって も具体的な対応に結びつくことになりますし、素晴らしい成果につながることになると 思います。 ○小林座長 だいぶ時間も迫ってきましたので進めさせていただきますが、荒川構成員 からご説明いただきました、サーベイランス事業の結果のことと、事務局の徳本先生か らご説明いただきました、今後の参加施設に関する募集等に関して、このサーベイラン スに関して何かご意見、ご質問はございますか。 ○木村構成員 SSIについて、NTT関東病院の小西先生たちのSSI研究会のほう でもサーベイランスをやっておられます。これと、この厚労省から出たSSIとは相互 乗入れということで、どちらかに報告すればよろしいのですか。 ○荒川構成員 このSSIサーベイランスについては、小西先生を中心にまとめていた だいております。いまSSIサーベイランス研究会が数十施設参加しています。いま、 このJANISの事業のほうには、これまで新規募集はしてきませんでしたので、一部 の施設のデータが集計されています。  7月以降は、SSIサーベイランス研究会に所属している病院の中から新たに、活力 のある元気な施設に加わっていただいて、それで事業のほうの充実をさらに図っていた だくということでいま作業が進められております。  あくまでも研究会というのは研究会ですので、これは試行的なことも含めてやってい ただいているのですけれども、事業のほうはある程度足腰がはっきりして、やっていた だける施設がこちらのほうに参加していただいてということです。データのすり合わせ とか、その辺は小西先生を中心にしていただく予定にしております。 ○木村構成員 個人的な話ですけれども、いままで東京逓信病院はSSI研究会でやっ ていたようなのですが、こういう通知が来て、国のほうのサーベイランスにも協力した ほうがいいのかと思ったのですが、そうしますと両方に出さないといけないことになっ てしまうのですが。 ○荒川構成員 データに関しては、SSI研究会のほうで集めたデータが、施設がもし それを可能ということであれば、こちらのJANISのほうに、同じようなデータセッ トとして出していただくことになります。ですから、SSI研究会で集めているデータ のフォーマットと、JANIS用のフォーマットは一緒ですので、両方へ出していただ いてもいいです。 ○木村構成員 研究会のほうへ出せば、自動的にこちらのほうへは回らないのですね。 ○荒川構成員 事業のほうは厚労省の事業ですので、いま都道府県を通じて登録の受付 をしております。そこの登録を受け付けていただいた施設からは、厚労省のほうにデー タを出していただくことになりますので、その点は研究会と切り分けてお願いすること になると思います。 ○大久保構成員 木村先生が考えておられるようにかなり混同しています。関東病院の 事務局のほうに、これの登録についての問合せがかなり来ています。一般の方はかなり 混同しておられますから、その辺をもう少し都道府県を通じて、きちんと説明していた だけたらと思います。 ○小林座長 これは、荒川構成員にその辺の交通整理をお願いしたいと思います。 ○荒川構成員 SSIに限らず、ほかの検査部門とか全入院、ICU部門についても、 それぞれのご担当の先生の所に問合せがかなり寄せられています。それについては、事 務局から個別に、どういう手続で参加していただくか、ということをお返ししておりま す。SSIについても、たぶん小西先生のほうで、そういう問合せが来た場合は、都道 府県を通じて登録してくださいという返事をしていただいていると思いますが、これは 帰りましてから小西先生に確認してみたいと思います。 ○小林座長 なにぶんよろしくお願いいたします。まだ議論はあるかもしれませんが、 次の議題に進ませていただきます。議題3「平成19年度院内感染対策関連予算案につ いて」ということで、事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局 資料11で、平成18年度の予算額及び平成19年度の内示額を提示しており ます。平成19年度の予算に関しては、現在国会で審議中ですので確定というわけでは ありませんが、現在のところこのような形で進めさせてもらっているというところです。  ご存じのとおり院内感染対策に関しては、平成18年度は約4,500万円の予算額で実 施しているところです。院内感染対策中央会議の経費で、先ほど倉辻構成員からご紹介 のありました、院内感染地域支援ネットワーク補助事業、そして先ほどの話にありまし た院内感染対策のサーベイランスに関しては3番、4番の項目で対応させてもらってい ます。そのほか院内感染対策の相談窓口事業ということで、こちらは日本感染症学会に 相談窓口を開設しております。そのほか、院内感染対策の講習会経費ということで、全 国4カ所で、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師を対象に講習会を開いています。こ ういう形で、平成18年度は事業を実施してきたところです。  平成19年度は、1番、2番、3番、4番、5番に関しては従前どおり、ほぼ変わら ない額で予算案にしております。6番に関しては、今般の医療法改正に伴い、すべての 医療機関に対して院内感染対策が求められることから、これまで院内感染対策講習会と いうのは、各医療機関の、しかも比較的規模の大きな病院の中核となるような職員が受 講しに来て、最新の知識を広める。その中核となる職員が、院内や地域に帰って伝達講 習をしていただくというスキームでやってきたのですが、すべての医療機関に院内感染 対策が求められるということから、もう少し幅広く、内容に関しては従前のとおりの講 習も続けながら、もう1つ基礎的な分野からも実施していくような講習会のスキームで 平成19年度は考えており、予算は約500万円近く増額ということで現在は考えており ます。 ○小林座長 いろいろご配慮いただいてありがとうございます。特に、最後に説明があ りました、院内感染対策講習会経費は予算を増やしていただきました。いろいろな所が 締めつけられている中で増やしていただけるというのは大変ありがたい話です。これは 1年ぐらい間違っているかもしれませんけれども、1992年から継続しているものです。 始めた当時は、日本感染症学会が主催という形で、厚労省から予算をいただき、日本環 境感染学会がそれをサポートする、支援する形でスタートして、当時の帝京大学の紺野 教授が最初に世話役になりまして、その後に私が引き継ぎ、それから木村構成員に引き 継いでということで長い間続いて成果を上げてきております。  これが基になっていろいろな所の意識レベルが、先ほど申し上げましたような中小病 院の意識レベルなども、こういうものを通してかなり上がってきて、医療の質に大きく プラスになっているわけです。今回の通知も絡んで、そういうところに予算をかなり多 く見ていただけたことは大変ありがたいことです。特にこの講習会は、出たくても出ら れない人がたくさんいて、いままではそういう逆の不満もありましたので、その辺も含 めてよろしくお願いいたします。  それ以外に関しても、いろいろ来年度は予算化していただきました。まだいろいろ欲 しいものはあるにしても、これだけの配慮をしていただいたことは、中央会議の座長と しても心から感謝の意を表する次第です。どうもありがとうございました。またよろし くお願いいたします。  議題4「その他」に移ります。ここでは荒川構成員から、Clostridium difficileでの 新しい問題が起こってきておりますし、またこれ自体が世界的にもあまり表面には出な いのですけれども、隠れたアウトブレイクを起こしていろいろ問題になっておりますの で、その辺のお話をいただければと思います。 ○荒川構成員 情報提供といいますか話題提供ということで、Clostridium difficileの 問題について紹介させていただきます。ご承知のように抗菌薬関連下痢症とか、1980 年代の半ばぐらいから、このClostridium difficileがそれに関与するということが広く 知られるようになりました。ただ、この菌によって死亡者が出るということはそんなに ないということで、日本ではこれまでそんなに重視されてきている菌ではない。  1つは嫌気性菌ということもあり、検査で検出することは難しいとかいろいろありま す。ところが北米、特にカナダからアメリカ、最近はヨーロッパのほうへかけて、従来 よりも毒性といいますか、感染すると発症して、それで死亡率も非常に高くなるという Clostridium difficileの感染症が広がりつつあります。これについては、この資料の裏 のほうにありますように、欧米では学術的にもあるいは臨床的にも高い警戒心を持って いま対応がされております。  この菌は、従来のClostridium difficileよりも毒素の産生量が非常に多くて、それで 症状が強く出るということです。これが、国内に入ってくると、日本でもそういう問題 が起きる可能性がありますので、私のほうではこれまで医療機関、あるいは医療従事者 の方々に対して、学会等で注意喚起や情報提供をさせていただいております。  国内でこういう菌がどの程度出ているかということを、前から少しずつ調べています。 過去にClostridium difficileの腸炎、あるいは難治性の腸炎になった患者の便の材料か ら、北米で広がっているものと遺伝的には同じものが見つかっています。ただ幸いなこ とに、北米型はガチフロキサシンとか、モキシフロキサシンといったものに対して耐性 になるのですけれども、日本の株はまだそういうものに対しては感受性がある程度残し ておりますので、耐性については北米型よりもまだ低いところがあります。  ただ、遺伝的には毒素の産生量、遺伝子のミューデーションは全く同じですので、国 内でも今後こういう株が広がっていきますと、いろいろ院内感染対策上も問題になると いうことが懸念されますので、今後も感染研のホームページ、あるいはいろいろな学会 活動を通じて、臨床の現場に注意喚起をしていきたいと考えています。 ○小林座長 貴重な情報をありがとうございます。従来からあまり問題になっていない というご指摘もありましたけれども、日本でもひと度アウトブレイクが起こると、環境 汚染の問題があって、なかなかその制圧に苦労しているという話が起こっております。 ただ、死亡率云々という意味で、毒性が低いためにあまり大きな問題になっていないの ですけれども、これは非常に重要な問題だと思いますし、こういう毒性の強い株が入っ てくれば、さらに問題になると思います。  これは、もう1つ市井感染として欧米で非常に問題になっていますが、日本でも過去 には分離されていますが、大きな問題にはなっていない、Panton-Valentineロイコシジ ン陽性のMRSAの市井感染、これが病院内にも入り込んでいるという世界的な傾向があ ります。こんなものと同じようにClostridium difficileの株と同じように、PVL陽性 株も今後注意していく必要があると思います。いろいろフィールドを調査されている賀 来先生、その辺を含めて何かございますか。 ○賀来構成員 日本ではまだ、いま先生がおっしゃいました市中感染型MRSAについて のサーベイランスはそれほど広く行われてはおりません。しかし、実際には市中の病院 や診療所の外来患者さんから検出されるMRSAの中に従来病院内で検出されるMRSA とは遺伝的にもやや異なるタイプのものが出てきておりますので、今後また市中感染型 のMRSAのサーベイランスの実施も是非お願いしたいと思います。 ○小林座長 荒川構成員の情報提供に対してご質問はございますでしょうか。この辺の 問題はまた何らかの形で注意を喚起するような方法を事務局にもご検討いただきまして、 今後こういう問題が大きく日本で広がらないようにできればと思います。中央会議の提 言としてお願いしたいと思います。  そろそろ時間も迫ってきましたので、どうしてもこれはというご意見があればお伺い します。 ○賀来構成員 ネットワークの件ですが、先日環境感染学会で、地域ネットワークの活 動についてのワークショップが開催されました。同ワークショップには徳本先生、それ から切替先生もご出席でしたけれども、この中央会議の中で推進されているネットワー ク活動が指導課の適切な指導もあり、着実に進展しているとの報告がありました。また、 加えてそれらの地域の方々はこういう機会をいただいたことを非常に喜んでおられまし た。さらに、今後この地域ネットワークによる活動が充実していけば、またモデルケー スとしていろいろな地域へ波及していけば、日本全体の医療レベルの向上、医療の質の 改善にも非常に役立つものになると思います。今後とも是非とも指導課に継続的にご指 導いただくことが必要ですし、今回ある程度の予算措置もお考えいただいたということ は非常に大きいことだと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。  倉辻先生より地域の厚生局の活動の重要性についてご指摘いただきましたが、私ども のネットワークでは東北厚生局とジョイントで東北6県の基幹病院を、地域の保健所の 職員の方々と一緒にラウンドさせていただいております。この事業はすでに3年目にな りますし、併せて各種の感染症対策の啓発用ポスターや介護施設向けの感染対策マニュ アルなどを共同で作らせていただいています。このように厚生局と連携してネットワー ク活動を実施していくことは、単に医療監視という枠を超え、行政と医療機関が共に共 通の目標に向かい相互協力していくこととなり、情報の共有化、相互理解なども含め、 医療の質向上にとって非常に有用であると思われます。すでに九州地域でも東北地域と 同様な活動が始まったとお聞きしていますが、そのようなネットワークにおける厚生局 との連携活動もに対しても是非ともご支援をよろしくお願いいたしたいと思います。 ○小林座長 事務局に確認させていただきたいのですが、本日の通知の中でも、専任の 院内感染対策を行う者を配置するということで、「専任」という言葉が出てまいります。 厚労省として、専任、専従、専ら、兼務、これは英語を日本語ではなくて、日本語を日 本語の問題なのですが、この辺の定義はあるのでしょうか。 ○針田医療計画推進指導官 指導課でも今般の通知を検討しているところですけれども、 そういうものを踏まえて皆様方に誤解のないよう検討していきたいと思っておりますの で、いましばらくお時間をいただきたいと思います。 ○小林座長 厚労省の中でも、必ずしも言葉の解釈が統一されていないかに聞きますけ れども。 ○針田医療計画推進指導官 先ほども話が別にあったのですけれども、いわゆる法令と か私ども行政が使う言葉というのはある程度定義をもってしゃべらなければいけないと。 それに比べて、英語を使う方も、学術的な話があり、同じ言葉であっても違った定義と なると。それは、現場の方々が混乱してしまうのではないかというものがありますので、 私どももう少し明確な定義をお示しすることは大事なことだと思いますので、併せて検 討していきたいと思っています。 ○小林座長 是非よろしくお願いいたします。現場ではこの言葉の解釈で混乱していて、 私も聞かれて困ることがあります。この間も岡部先生といろいろ話をしたのですが、な にぶんよろしくお願いいたします。いままで出ましたいろいろなご意見を事務局で取り まとめていただき、提言に関しても座長であります私と事務局で内容を検討した上で、 各構成員の皆様方にご確認いただくという手順をとりたいと思います。徳本先生、今後 の進め方はそういうことでよろしいですね。 ○事務局 はい、結構です。 ○小林座長 事務局から何かご発言はございますか。 ○佐藤指導課長 ございません。 ○小林座長 それでは、本日はこれで終了したいと思います。貴重な議論を大変パンク チュアルに進めることができまして、時間内にこの会議を終了することができました。 院内感染対策は、安全で安心な医療の推進の観点から非常に重要なことですので、今後 とも医療の質を高めていくために、患者サービスの向上のために、是非構成員の先生方 のご協力、ご指導を賜りますようお願いいたしまして、本日の会議を終わらせていただ きます。どうもありがとうございました。 (以上) 照会先:厚生労働省医政局指導課     院内感染対策担当(徳本) 電話 :03-5253-1111(内線2771)