07/03/14 第18回社会保障審議会議事録 第18回社会保障審議会 ○ 日時  平成19年3月14日(水)16:00〜18:05 ○ 場所  厚生労働省 省議室(9階) ○ 出席者 〈委員:五十音順、敬称略〉        大日向雅美、逢見直人、大森 彌、翁 百合、沖藤典子、        貝塚啓明、鴨下重彦、京極高宣、見城美枝子、齋藤英彦、        榊原智子、高橋清久、竹嶋康弘、寺谷隆子、糠谷真平、        廣松 毅、山出 保、米澤康博、渡辺俊介       〈事務局〉        薄井康紀 政策統括官(社会保障)、北村 彰 参事官(社会保障)、        松田 將 大臣官房参事官(総務担当)、        石井信芳 大臣官房会計課長、中沖 剛 参事官(会計担当)、        福島康志 統計情報部企画課長        中村博治 医政局総務課企画官、        度山 徹 雇用均等・児童家庭局少子化対策推進室長        矢崎 剛 社会・援護局総務課長        藤木則夫 社会・援護局障害保健福祉部企画課長        石塚 栄 老健局総務課長、唐澤 剛保険局総務課長、        岡田太造 年金局総務課長、弓場美裕 数理調整管理官        城 克文 政策企画官 ○ 議事内容 (城政策企画官)   定刻となりましたので、ただ今から第18回社会保障審議会を開会させていただきま す。本日はお忙しい中御出席いただきまして誠にありがとうございます。私は社会保 障担当の政策企画官をしております城と申します。  本日は委員の方が代わられまして、新しい任期のもとでの第1回目の会合でござい ます。後ほど皆様方には会長の選出をしていただくことになってございます。それま での間、便宜上、私の方で議事進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願 い申し上げます。  本日は、柳沢厚生労働大臣が出席をいたしまして冒頭に皆様に御挨拶を申し上げる 予定でおりましたが、急遽国会業務が入ってしまいまして、出席できなくなりました。 申し訳ございません。まずお詫びを申し上げます。  初めに、前回の総会以降新たに委員に御就任いただきました委員の皆様方を御紹介 申し上げます。  平成17年9月21日付で藍野大学学長の高橋清久委員が就任されております。  日本社会事業大学教授の寺谷隆子委員でございます。  平成17年11月25日付で日本労働組合総連合会副事務局長の逢見直人委員でございま す。  平成18年2月2日付で読売新聞東京本社生活情報部榊原智子委員でございます。  平成18年6月28日付で日本医師会副会長竹嶋康弘委員でございます。  平成18年9月22日付で独立行政法人国民生活センター理事長の糠谷真平委員でござ います。  本年1月29日付で恵泉女学園大学大学院教授の大日向雅美委員でございます。  名古屋セントラル病院長の齋藤英彦委員でございます。  早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授の米澤康博委員でございます。  また、全国知事会社会文教常任委員会委員長で愛知県知事の神田真秋委員、日本経 済団体連合会社会保障委員会共同委員長の井出明彦委員、神奈川県立保健福祉大学教 授の山崎泰彦委員についても前回以降御就任されておられるのですが、本日は御都合 により御欠席でございます。  次に、本日の出席状況を報告させていただきます。本日は先ほど御紹介いたしまし た神田委員、井出委員、山崎委員のほか、稲上委員、庄司委員、岩田委員、山本委員 が御欠席でございます。御出席いただいた委員が総数の3分の1を超えておりますの で、本会議は成立していますことを御報告いたします。  では、議事の1としまして、会長選出及び会長代理の指名に移らせていただきます。 社会保障審議会令第4条に定めるところによりますと、審議会に会長を置く、これは 委員の互選により選任するとなってございます。選出の方法につきましては、委員の 互選でございます。どなたがよろしいか皆様にお諮りしたいと思いますが、いかがで ございましょうか。 (渡辺委員)   私は、これまでも会長をお務めいただいた貝塚啓明先生に、引き続き御就任いただ くのが最もふさわしいと思いますので、御推薦申し上げます。 (城政策企画官)   ただ今渡辺委員から、貝塚委員に会長をお願いしたらいかがか、という御発言がご ざいましたがいかがでございましょうか。  御異議がないようでございますので、貝塚委員に本審議会の会長を引き続きお願い したいと存じます。貝塚委員よろしくお願いいたします。  早速で恐縮でございますが、貝塚委員には会長席にお移りいただきまして、以後の 進行をお願いしたいと存じます。 (貝塚会長)  簡単に御挨拶を申し上げます。私は非常にオールディストメンバーではないかと思 います。相当に長い期間、社会保障審議会の会長をやっております。本来ならば代わ るべきですが、ちょうど改革が最終段階にきている状況なので、何分にもよろしくお 願いいたします。  では、議事を進めてまいりたいと思います。社会保障審議会令第4条第3項に、会 長に事故があるときはあらかじめその指名する委員がその職務を代理する、という条 項がございます。したがいまして、簡単に申し上げれば会長代理を指名させていただ きたく存じます。御経験が豊富な大森委員にお願いしたいと思います。よろしくお願 いします。 (大森委員)  御指名でございますので、お引き受けいたすことにいたします。貝塚会長のもとで 円滑な全体の議事の運営取りまとめに努力したいと思っておりますのでよろしくお願 いいたします。 (貝塚会長)  議事に入ります。この社会保障審議会の全体の審議会は、かなりの期間開かれてお りませんでした。社会保障審議会というのは非常に大きな組織でして分科会もいくつ かあります。その間、いろいろな重要な議論・審議が行われております。また、特別 部会というものも新たに設置されておりまして、非常に全体としてはいろいろな審議 をしているということであります。  したがいまして、最近の審議会全体の活動がどういうものであったのかということ について、事務局から一括して御報告をお願いしたいと思います。 (北村参事官)   社会保障担当参事官の北村と申します、よろしくお願いいたします。座って説明を させていただきます。  お手元にいくつかの冊子がございます。まず右肩に資料1と書いてある「社会保障 審議会分科会・部会・特別部会の状況」という資料がございます。これにつきまして 私から分科会・部会・特別部会の状況を簡単に説明させていただきまして、その後に 引き続き社会保障給付費なり、平成19年度予算案なり、あるいは通常国会提出予定法 案などについても一括して担当課長・参事官から説明をさせていただきたいと思いま す。  お手元の資料1を1枚お開きいただきたいと思います。横長の表になってございま す。1ページ目が社会保障審議会分科会の状況ということです。ここに書いてある5 つの分科会が、社会保障審議会令第5条に基づきまして現在設けられております。  横に順番に分科会の名称、会長名、所管部局、所掌事務、この1年余りの間に主な 報告書が出たものがあればそういうものを記載させていただいております。右はそう いう趣旨でございますので、審議状況を書いたものではございません。  なお、分科会の委員の一覧につきましては、別途、資料の束の真ん中に、右肩に参 考資料1と書いた個表がございます。その個表にそれぞれの各分科会の委員の名簿な どをつけております。時間の関係上、こちらの参考1の説明は省略をさせていただき たいと思います。  戻りまして資料1の1ページの分科会のところです。  1が統計分科会でございます。統計の総合的企画を行う分科会でございます。右の ところが空欄でございますが、例えば、昨年でいいますと、国民生活基礎調査の調査 計画案の御審議、あるいはICFとかICDの専門委員会の検討状況の御報告などを していただいていると聞いております。  2が医療分科会でございます。これは特定機能病院の承認などを御審議いただく分 科会でございまして、直近では今年の1月に意見が出されております。  3が福祉文化分科会でございます。優良図書の推薦などを御審議いただく分科会で ございまして、そこに書いてございますように直近では昨年12月に推薦が出されてお ります。なお、この福祉文化分科会の推薦につきましては、この束の一番下の配布資 料1に「社会保障審議会児童福祉文化財推薦作品」という一覧が載っております。そ ちらにこれまでここしばらくの間に推薦されたもののリストが載っております。  4が介護給付費分科会でございます。これにつきましては右側に書いてございます ように直近では昨年の6月に諮問に対して答申がされております。  5が医療保険保険料率分科会でございます。これは健保法等の規定に基づく付議事 項について御審議いただく分科会でございますが、法定付議事項が生じておりません ので開催をされておりません。  なお、ここには記載しておりませんが、年金資金運用分科会がこの前までございま した。この分科会につきましては年金積立金の管理運用独立行政法人法の施行により まして、それまでの分科会の任務が終了したことにともないまして、昨年度末をもっ て廃止されております。したがいまして、現在はこの5つの分科会になっているとい うことでございます。  2ページと3ページこの2枚が部会等の関係でございます。これも番号を振ってご ざいますので、順番に簡単に御説明させていただきたいと思います。  (2)の人口部会、右側に『日本の将来推計人口』と書いてございます。この人口部会 で報告された将来推計人口、あるいは次のページにいきまして(8)でございますが年金 部会では、右に『暫定試算、人口の変化等を踏まえた年金財政への影響』、(12)という 一番下にあるものですが、人口構造の変化に関する特別部会、ここでは右側に書いて ございますように、『出生などに対する希望を反映した人口試算の公表に当たっての 人口構造の変化に関する議論の整理』、こういうものがそれぞれ出されて取りまとめ られております。こちらについては別途、後ほどの議題で一括して詳しく説明をさせ ていただきますので、ここでは省略をさせていただきたいと思います。  戻ります。2ページの(1)福祉部会です。福祉部会は昨年12月に『介護福祉士制度及 び社会福祉士制度の在り方に関する意見』を取りまとめていただいております。これ につきましては、こちらも別途、このあとに国会提出予定法案につきまして総務課の 担当参事官より内容等について御説明をさせていただきますので、省略をさせていた だきます。  (3)の医療保険部会は、右側に書いてございますように、17年11月に『医療保険制度 改革について』という意見を、また、(4)の医療部会は、これも17年12月に『医療提供 体制に関する意見』というように、それぞれ医療制度改革関係で意見が出されている ところでございます。  (7)は年金数理部会です。年金数理部会は直近では昨年の11月に『平成16年度の公的 年金財政状況報告』が出されております。  二重線から下にまいります。(11)は後期高齢者医療の在り方に関する特別部会、これ は後期高齢者医療の在り方について審議する特別部会として、昨年新たに設置された ものでございます。  (12)も人口構造の変化に関する特別部会ということで、少し説明申し上げましたが、 これも昨年新たに設立されたものでございます。  部会・特別部会・分科会の状況については以上でございます。  引き続き、右上に資料2−1と書いてございます「平成16年度社会保障給付費」 と書いてあります紙を取っていただきますと緑色の冊子がございます。国立社会保 障・人口問題研究所が平成18年10月に公表しました16年度の社会保障給付費の冊子を 御参考までに付けてございます。これも時間の関係で説明は省略させていただきます が、平成16年度社会保障給付費につきましては、85兆6,469億円で対前年度比の1.6% の伸びということで、前年に引き続き低い伸びとなっております。  2ページ目のところから概要が書いてございます。2ページ目の (3) のところにも 書いてございますが、国民1人当たりの社会保障給付費は67万800円ということで、こ れも対前年の伸び率でいくと1.6%になっているという状況でございます。これにつき ましても昨年の10月のものでございますので詳しい説明は省略をさせていただきます。  私からは以上でございますが、引き続き説明を続けたいと思います。 (石井課長)   会計課長でございます。座ったままで失礼いたします。平成19年度の厚生労働省関 係予算案のポイントにつきまして、少々お時間をいただきたいと思います。右肩に資 料2−2と書いてある1枚紙の次に少し白っぽい用紙で厚手の「平成19年度厚生労働 省関係予算案の概要」と大きな文字で書いてある資料を使ってお話し申し上げます。  上をご覧ください。左側ですが19年度予算案の金額合計が21兆4,769億円でございま す。右は対前年度増加額です。これが今年度平成18年度の当初予算に比べました場合 の来年度予算案の増加額です。5,352億円増加いたしております。これを率にいたしま すと2.6%の伸びということになります。  四角で囲った下に(参考)ということで情報がございます。下から4行目です。一 般歳出ということでご覧いただけると思います。政府全体の一般歳出の額が46兆9,78 4億円でございます。政府全体の一般政策経費、政府全体の政策に当てる経費がこれに 該当いたします。この一般歳出見ますと政府全体で増加額が6,124億円で伸び率が1. 3%ということでございます。  全体像がその中で厚生労働省関係予算案は冒頭に申し述べましたような格好でござ います。また下から3行目に( )がございます。政府全体の一般歳出に占める厚生 労働省関係予算の金額の割合は45.7%ということでございます。  2ページです。ただ今申し上げました合計額21兆4,769億円を大きく分類して内訳を 示してございます。平成19年度予算案という(B)の欄を縦にご覧ください。21兆4, 000億円強のうち、社会保障関係費が20兆9,659億円、科学技術振興費、これは厚生労 働省で所管している試験研究機関の予算でありますとか、あるいは研究費補助金など がこれに該当します。この科学技術振興費が1,118億円です。その他、これはいろいろ ございます。例えば、公共事業関係費に属している水道施設の整備費、あるいは戦傷 病者、戦没者の遺族の方々への援護の関係の経費、そういうものでございます。その 金額が3,992億円とご覧をいただきたいと思います。それぞれの増減額がこの表の右側 の欄でB−Aの欄でございます。  3ページです。円グラフがございます。これは左側の表で厚生労働省の予算のほと んどが社会保障関係費であると申し上げました。20兆9,659億円という金額でございま すが、その主な内訳を円グラフで示しております。金額とシェアの両方を書いてござ います。円グラフの右側で少し黒くなっている部分でございますが、医療が8兆4,285 億円です。厚生労働省所管の社会保障関係費のうちの約4割を占めてございます。次 が年金で7兆強です。割合にしますと約3分の1です。左上にいきまして介護が1兆9, 485億円です。福祉等と雇用とご覧いただくような金額とシェアでございます。ピンク の紙で主要施策というものが挟まっております。  5ページ以下が、21兆強でございますが、厚生労働省の19年度予算案を大きく10の 柱を立てて、それぞれについてまとめたものが数十ページ続いてございます。本日は 時間の関係で逐一触れる余裕がございませんので、当面、特に重要な政策課題につい て、コンパクトにまとめたページがこの資料の後ろの方にございます。後ろから3枚 目をご覧いただけますでしょうか。下のページ数をご覧いただきますと、(参考3)、 (参考4)というページが、この分厚い冊子の後ろから3枚目を開いていただくと出 てまいります。これは当面する特に重要な政策課題についてコンパクトにご覧いただ けるように、見開きでまとめたものが、この少子化と以下医療関係が出てまいります。 この(参考3)、(参考4)という後ろから3枚目の見開きは少子化対策でございま す。  冒頭に金額がございますが、左側中ほど以下が具体的施策ということでございます。 限られたスペースにいろいろな情報を入れておりますので字が小さくて見づらいかも しれませんがお許しください。  例えば、具体的施策1.の最初の○で、子育てとの両立など仕事と生活の調和1,352 億円というのがございます。御紹介をいたします。・仕事と生活の調和や育児休業な どの両立支援制度を利用しやすい職場風土づくりを進めるための予算などがこの中に 含まれてございます。・育児休業給付の給付率を改善しようということでございます。 現行が休業前賃金の4割というのが育児休業給付の給付率でございますが、これを5 割に暫定的に引き上げよう。またその下の・ですが、育児休業をとられた方々に法律 の制度の上乗せで企業が独自に給付を行った場合には、その企業の事業主に助成をす るという制度を創設しようという関係の予算がここに含まれてございます。  3.地域の子育て支援です。これもいろいろな内容がございます。生後4カ月まで の全戸訪問の実施に取り組むということがございます。これが新規でございます。 右側の一番上です。待機児童ゼロ作戦。総合的な放課後児童対策。こういう従来から 進めているものをさらに進める考えでございます。  右下の7.です。児童手当ての拡充ということです。0歳以上3歳未満の児童の方 への手当て額を月額一律1万円にするということでございます。  次のページの(参考5)、(参考6)というページの見開きが医師確保でございま す。左の上半分に金額的な御紹介をしております。今年度の当初予算額がこの医師確 保関係では41億円でしたが、今回の予算案では92億円ということで力を入れてござい ます。既に成立している今年度の補正予算にも8億円を計上しましたので、合計、当 面の予算的な金額でいうと100億円規模の施策を考えている。この他にも地方財政措置 で合計101億円を総務省の予算で手当てをしていただいているということでございま す。  時間がなくなってきましたので以下は省略します。医師確保の関係では1.医師派 遣についての都道府県等の役割と機能の強化をしていこう、2.開業医の役割の強化 も是非お願いしようと。3.地域の拠点となる病院づくりとネットワーク化。以下省 略しますが、こういう柱を立てまして、必要な予算措置を講じてございます。  次の(参考7)、(参考8)です。がん対策の推進です。最初の長い四角の2つ目 の〇にございますが、がん対策推進基本計画というものを来年度早々に作成する予定 です。その背景は最初の〇にございますが、昨年6月、前通常国会でがん対策基本法 が成立したという大きな背景がございました。そういう節目に当たりますので、予算 的にもご覧いただくような形で力を入れてございます。予防や早期発見の推進、がん 医療水準均てん化という、ご覧いただくような4つの柱を立てまして、それぞれに必 要な施策を盛り込み、また裏付けとなる予算措置を講じているという状況でございま す。以上でございます。 (貝塚会長)  ありがとうございました。続いてお願いします。 (松田参事官)   総務担当参事官でございます。第166回通常国会提出法案について説明をさせていた だきます。  右肩に資料2−3とついている資料をご覧ください。表紙をめくっていただきまし て、今国会6月23日までを会期としまして現在開会中でございますが、今国会に社会 保障関係でここに書いてあるように10本の法律案を既に提出、ないしは今後提出する 予定にしております。  なお、この他に労働関係の法案が5本ございまして、厚生労働省としては全体とし て15本の法案を今国会に提出することとしております。  では社会保障関係の法案について順次概略を説明させていただきます。説明の順番 はここに書いてあるとおりでございますが、これは国会への提出順でございます。  1ページです。最初に雇用保険法等の一部を改正する法律案でございまして、この 中で船員保険制度の改正をしてございます。下に図が書いてございますが、現行の船 員保険制度、ここに3つの部門がございますが、昨年成立しております行政改革推進 法を踏まえまして、職務上疾病・年金部門、失業部門につきまして、それぞれ一般制 度であります労災保険あるいは雇用保険に制度統合するということを内容としており ます。残ります船員保険制度は職務外疾病部門と船員独自の給付が残りますが、これ らにつきましては昨年の医療保険制度改革で設置予定になっている全国健康保険協会 を運営主体として実施する形にしてございます。  次に2本目の法律案です。次のページをご覧ください。国民年金法等の一部を改正 する法律でございます。これは平成16年の年金制度改正におきまして、基礎年金の国 庫負担を2分の1に引き上げる道筋はついているわけですが、引き上げるまでの間、 各年度2分の1に向けての引き上げを図る必要がございます。19年度につきましては、 17年度・18年度に引き続きまして、金額で1,124億円、率にしますと0.7%を引き上げ まして、19年度は約36.5%の基礎年金の国庫負担割合にするという内容のものでござ います。  次に3ページです。児童手当法の一部改正でございます。現行の児童手当は、3歳 以上、小学校終了前の児童の養育者に対しまして、現行では1子と2子が月額で五千 円です。3子以降が月額1万円の給付をしてございますが、これにつきまして3歳未 満につきまして1子と2子の月額五千円を倍額にして月額1万円にするというもので ございます。なお、19年度の追加所要額ですが、1,370億円になってございます。  4ページです。戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部改正の関係でございます。こ れは軍属またはその遺族に対して年金等の援護をしている法律でございます。今回の 法改正では恩給の改定に準じまして遺族年金等の額を改定するというものでございま す。改定の例はここに書いてあるような形になってございます。  5ページです。社会保障協定の実施に伴う厚生年金法等の特例等に関する法律でご ざいます。これは日本と外国の間を仕事で行き来する方々につきまして、現在では日 本と外国で社会保障制度が二重加入になりますが、この二重加入による二重負担の解 消なり、保険料の掛け捨てを防止する観点から、現在個別に社会保障協定を結んで、 これを解決しているわけですが、協定とともに相手国ごとにこれまでは法律改正が必 要であったわけです。これを今回の法改正によりまして、包括実施特例法をつくると いうことにしております。今後、協定締結の加速化が実現できるのではないかと考え ているものでございます。  6ページです。社会福祉士及び介護福祉士法等の一部改正の法案です。この両福祉 士の制度ですが、これは63年にスタートしてございまして、その後の介護福祉ニーズ の多様化・高度化、あるいは人材の確保・質の向上を図るという観点から所要の見直 しをするものでございます。主な改正は、資格取得方法の見直しでございます。具体 的には介護福祉士につきましては、すべての者につきまして、一定の教育プロセスを 経た後に国家試験を受験していただく、という形で資格取得の方法を一元化すること を考えております。さらに社会福祉士につきましても、現場における高い実践力をつ けていただくという形で資格取得法の見直しをしているものでございます。  なお、この制度の見直しにつきましては、社会保障審議会の福祉部会におきまして も、両福祉制度の在り方についてご議論をいただいたところでございます。  7ページです。消費生活共同組合法の一部改正の関係でございます。この消費生活 共同組合法でございますが、これは昭和23年に制定されて以降、既に60年近くたって いるわけですが、これまでの間、ほとんど見直しがされていないという状況でござい ます。今回、生協のやっている共済事業における契約者保護、経営責任体制の強化を 図る観点から改正をしてございます。  契約者保護の関係について申し上げます。共済事業につきまして、他の農協とか中 小企業共同組合でございますが、これらの共同組合法における規定の整備を踏まえま して、組合が最低限保有すべき出資金額の基準を設定するなど共済事業の健全な運営 を確保する観点からの改正をしたものでございます。さらに、経営責任体制の強化の 関係で申し上げますと、理事会に関する規定を整備するということで責任体制を強化 するという改正をしたものでございます。  8ページです。日本年金機構法案でございます。この法案は次の9ページにござい ます国民年金事業の運営改善のための国年法の改正とともに社会保険庁改革関連の2 法案でございます。これら2法案につきましては、昨年の通常国会に、組織につきま しては、国の特別の機関ということで年金事業機構法案というものを国会に出して、 昨年秋の臨時国会に継続審査の案件となっていたわけです。この社会保険庁改革につ きましては、法案提出後の状況を踏まえて、与党の方でもさまざまな議論が行われて、 昨年の12月に社会保険庁のさらなる改革をする必要があるということで、解体して出 直しをするということでのおまとめをいただいたところでございます。  今回、8ページに書いてある組織の法律でございますが、基本的には与党からの御 指示を踏まえて法案を作ったものでございます。  左上に箱がございます。この中に書いてあるのは基本的には与党から御指示があっ たものを踏まえて整理したものでございます。今回、組織につきましては、保険庁廃 止・解体しまして、新たに非公務員型の年金新法人を設置するということでございま す。国は年金にかかわる財政責任、管理運営責任を有する中で、大臣の直接的な監督 の下でこの新法人は適用、徴収、給付、記録管理等の一連の業務をするわけでござい ます。  なお、保険料の強制徴収権限でございますが、滞納処分につきましては大臣の一定 の監督の下で法人に委任することができる、という形にしてございます。さらに、悪 質な滞納者に対する滞納処分につきましては、国税庁長官にも委任することが可能な 仕組みにしてございます。  さらに、年金新法人の業務につきましては、可能な限りアウトソーシングする形に してございます。法人が行う業務と委託する業務につきましては、第三者機関により 業務の振り分けをすることになっております。  この新法人は、平成22年1月に設置する予定にしてございます。  9ページです。年金事業の運営改善のための国年法の一部改正でございます。この 主な内容は、概要に書いてございます。サービスの向上としまして住基ネットワーク を使うことにより住所変更届けの届出を廃止する、あるいは社会保険と労働保険の手 続きを整合性をもってやる、さらには保険料の収納対策の観点から、クレジットカー ドによる保険料支払いを可能にする。こういう形での運営改善を図る法律でございま す。  最後です。被用者年金制度の一元化を図るための厚年法等の一部改正法案でござい ます。これは昨年の4月ですが、被用者年金制度の一元化につきましては、閣議決定 がなされておりまして、基本的な方向が示されております。それを踏まえて今回、共 済年金制度を厚生年金保険制度に合わせることを基本としまして、所要の改正をする ものでございます。内容につきましてはここに書いてあるとおりでございます。  12ページです。この法案の中ではパート労働者に対する社会保険の適用対象の範囲 の拡大も措置をすることにしてございます。なお、このパート労働者の適用範囲の拡 大につきましては、この社会保障審議会の年金部会の中にワーキンググループをつく っていただきまして、いろいろと御検討をいただいて、それを踏まえて現在鋭意検討 を進めているところでございます。  以上、社会保障関係の10本の法律の概略でございます。 (貝塚会長)  かなり多岐に渡ることです。最初に社会保障給付費の推計の話がありました。後は 予算案の主要事項。現実に国会に提出されている法案の説明ということで、内容は極 めて多岐にわたります。後でもいいのですが、今の段階で御質問があれば御自由に御 発言ください。実際にそれぞれの分科会などに所属されていて、補足されたい部分が あればお願いします。 (渡辺委員)  予算に関連して意見です。本来は大臣がお見えになったら伺いたいと思ったのです。 プライマリーバランスの関係で、社会保障費用を5年間にわたって1兆1千億円をマ イナスにする。来年度の19年度予算では雇用保険助成金と失業給付で2,200億円を生み 出したわけです。  これが今回のプライマリーバランスで一挙に7兆円も改善されたり、国と地方を合 わせて、それ以上は政策判断だといわれるが、そうするとこれからも毎年毎年2,200 億円を削っていくとなると、例えば、今年の末には診療報酬に手をつけざるを得ない と考えるし、来年の年末には介護報酬と私は考えているのです。一挙に7兆円も、7 兆円が黒字になったからといっても油断ができないことはわかっておりますが、これ まで5年間で1兆1千億円の社会保障費用を機械的に削るというのは、見直すべきで はないか。答弁は求めませんが、見直すべきだと私は考えています。 (貝塚会長)  私の即応的な意見です。財政事情はここ1〜2年かなり変わってきている。社会保 障というのは、一番大きな経費だからある程度具体的に額としては、機械的に中身は もちろんですが押さえようとしてきた。それはそろそろちょっと方針を転換したらど うかということですね。ですから、今後の厚生労働省の政策上の予算の考え方を少し 変えたらどうかというお話だと思います。事務局、その辺のところをよく考えていた だき、生かしていただきたいと思います。 (竹嶋委員)  今座長からお話がありました。私も思うのですが、小さな政府・大きな政府という 表現をなさいますよね。私どもは非常に重くのっかかっているのは、国の債務、純債 務が対GDP比でいえば日本の場合には90%を超していると思います。よく例えられ るのは、非常に大きな政府といわれているスウェーデンです。これは税が直接税も付 加価値税も入れまして相当に高い。そこはしかし純債務のGDP比は17〜18%だと思 います。大きな政府・小さな政府は、債務で重苦しく国民に乗り掛かっている。です から、どうしても日本の社会保障費、あるいは私は医師なので直近の医療費のことに 一番関係しておりますが、医療費等々は私が申すまでもなく先進7か国ではイギリス が日本を抜いた。7か国の内でイギリスよりも下になってしまいました。  そういう状況の中で、最初に御質問をしようと思ったのですが、全体の社会保障費 の伸びは高齢者の比率がこれだけ高くなってきているから、いろいろな子育てが停滞 していくのはだれが見ても明らかです。そこから考えるときに、この伸びを本当にこ れで妥当だと思うかどうかです。いろいろな委員会に出させていただいておりますが、 こういうところでないとそういう御質問ができないので、敢えてそのあたりをお伺い してみたいのです。仕方ないというお答えではなく、所轄の省庁としてどうなのかと いうことです。 (貝塚会長)  統括官お願いします。 (薄井統括官)  政策統括官の薄井でございます。渡辺委員、竹嶋委員からお話がございました。政 府として昨年、骨太の2006におきまして、2011年度のプライマリーバランス回復を目 指して歳出歳入一体改革を進める、これは一つの方針になってございます。2007年度 はこういう形で予算案を提出してございますが、2008年度以降、どういう形で持って いくのか。厚生労働省としては、一連の年金、介護、医療という改革をしてまいりま した。そういうものの実績というか、そういうものの実施状況等も踏まえてこれは対 応していく必要がございます。社会保障としては、国民のセーフティネットという機 能を持っているわけですから、そこがきちんと果たしていけるようにということを考 えながら、政府の中で取り組んでいかないといけないと考えております。  全体として申し上げますと、今おっしゃられましたが、高齢化が非常に進んでまい ります。昨年、将来の社会保障給付の見通し、それに伴う負担というものをお示しさ せていただきました。高齢化に伴いまして給付の方は増えてまいります。一方では国 民の負担というものも、おのずと税にしても保険料にしても国民の負担になるわけで ございますので、しからば伸びていく給付というのは、ある程度効率化をしながら負 担とのバランスを考えていかないといけないということで、一連の制度改革の中で、 本来はこのように伸びていくところを、少しスリムにということでやってまいりまし た。ある程度伸びていくということは避けられないということでございます。  それに伴いまして、昨年のところでも将来的には、必要な基礎年金の2分の1の負 担のための財源の確保を含めて、これから考えていくというのが政府の基本的な方針 でございます。その中で今いただいた御意見も踏まえまして、厚労省としては取り組 んでまいりたいと考えております。 (貝塚会長)  この議論をしますと時間がなくなるので恐縮です。税金の問題は最後に絡んでいる わけです。ですから、前税制調査会長の石さんのような意見は、ある意味では財政学 者が、ある段階でどうしてもなんとかしないといけないのは間違いのないことです。 後は政治家がおられないのですが、政治家はそれを避けておられるという話もありま す。そこは相当強力な政権の下でそれをやっていただかないと困るというのは私の個 人的な考えです。  では、議事の3です。「社会保障制度の最近の動向について」ということで御説明 をお願いします。新しい委員会とか研究会ができて、いろいろな新しい課題をこなし ている最中でございます。 (城政策企画官)   私から人口関係等についての御説明をさせていただきます。資料の3−1をご覧く ださい。3−1から3−3まで人口等に関する資料でございます。資料3−4がござ いまして、これは年金の関係でございますので別途引き続きで御説明をさせていただ きます。  3−1でございます。これは「新人口推計の概要」ということです。  1ページ目をご覧ください。昨年末、18年12月に公表した将来推計人口でございま す。これは当審議会の人口部会で取りまとめをいただいたものでございます。将来推 計人口についてですが、左側の上にありますように、これは国勢調査等の客観的デー タに基づき5年ごとに将来の人口を推計しているものでございます。今回の推計は17 年の国勢調査に基づくものです。2055年までの推計をいたしております。参考推計と して100年後まで出してございます。  推計の前提値となる仮定値です。合計特殊出生率と平均寿命を示してございます。 合計特殊出生率につきましては、2005年に1.26であったものを中位で1.26、高位で1. 55、低位が1.06という形で2055年の段階の数値をおいて、これに基づいて推計をして おります。< >内にございますのは、前回の平成14年推計の2050年の仮定値でござ います。  その下に平均寿命の仮定もおいてございます。2005年、男78.53歳、女85.49歳であ ったものが、死亡の中位でいきますと、2055年の段階では男が83.67歳、女90.34歳と なってございます。この仮定値はこれまでの人口動向のトレンドに基づいて客観的に 将来に延ばしてつくったものでございます。  右側をご覧ください。そういう前提に基づいて推計をした結果、どういう人口の形 になるのかというものでございます。  右上です。日本の総人口につきましては、今は1億3,000千万人弱のところが、2055 年の段階では、9,000万人を切るくらいです。老年人口、65歳以上の人口につきまして は、いまは大体2割ぐらいのところにおりますが、これが40.5%ということで4割を 超えるぐらいです。生産年齢人口、15歳から64歳をとりますと、これは66%から51% です。大体、4,500〜4,600万人ぐらいのところになるということでございます。年少 人口の0〜14歳でとりますと、現在は13.8%ぐらいいるのが8.4%で、1,759万人いる のが752万人ということです。子供が7人から8人に1人ぐらいいるところが、大体、1 2〜13人に1人というような姿が2055年の姿であると示されております。  参考までに下に前回の結果、前回というのは平成14年でございましたが、その結果 を記載しております。   2ページです。これは合計特殊出生率の仮定値の将来の置き方を示したものでござ います。平成17年に1.26、平成18年については1.3を超えるのではないかという数字に なっておりますが、この推計上は1.29という数字で動いておりました。これが2055年 段階では、真ん中のところが中位推計で゛1.26、上が高位で1.55、前回の推計では205 0年では1.39という数字でした。こういう形で、合計特殊出生率は推移するだろうとい うことをおいております。  3ページです。これは今申し上げたような数字、これまでのトレンドとこれからの 推計の結果、全体を示したものでございます。真ん中の一番上に人口ピークが2004年 と書いてございます。1億2,779万人であったということです。真ん中の点線で仕切っ てあるところの左が実績で右が推計値です。  4ページです。人口ピラミッドの変化を付けてございます。左の2005年の実績を見 ていただきますと、真ん中の少し上と少し下に山がございます。上の山が団塊、下の 山が団塊ジュニアと呼ばれているところです。その少し上のへこみは丙午にあたると ころです。  これが真ん中のグラフでご覧いただきますと、2030年ですが、団塊の世代が後期高 齢者です。75歳以上に入ってまいります。ただこの段階では団塊ジュニアにあたる山 が生産年齢人口の中に納まっているので、支える側と支えられる側の比率はそうひど くなるものではありません。一番右を見てください。2055年、団塊は既に卒業してし まいまして、団塊ジュニアの世代が後期高齢者に入っているという時期でございます。 これはもう少し下に同じように山があればよかったのですが、これがないというのが 今の少子化の動向です。この状況になりますと、高齢者というか支えられる側の人口 と支え手側の人口の比率が相当に厳しいものになるということでございます。  下にマスで囲っておりますが、左側で見ると2005年では支え手と支えられる側の比 率が3人で1人を支える形であるものが、2055年の段階でと1.2人で1人を支える形で す。これは20歳から64歳で支えると見ておりますが、そういう比率になるということ でございます。  ただ真ん中のグラフで下の方に大きな矢印が書いてございます。これは2007年生ま れ以降の世代がどこからかということでございます。ご覧いただけますように2055年 段階だと2007年生まれ以降の世代というのが生産年齢人口の大半を世代的には占める ということになってございまして、今後の出生率の動向によって、ここはまだ改善と いうか、減少の緩和の余地があるというふうにも考えられますので、緊急の少子化対 策が必要ではないかということが言われるわけでございます。  最後のページです。これは労働力人口で見た場合でございます。労働力人口は、労 働力率そのものが将来推計人口から算出するものですから、まだ新しい将来推計人口 のもとでの労働力率が出ておりません。ですので、ここでお示ししているのは14年の 前回の推計の時のものでございます。一番上に実線がございます。その下に点線で図 と数字があります。この点線の部分が今のままの労働力率、就業率で推移した場合に 労働力人口がどうなるかというものでございます。この点線のように推移していきま して、真ん中あたり、下で見ていきますと、2030年ぐらいを境に考えると見やすいの ですが、2030年までというのは、生産年齢人口にいる世代というのは既に生まれてい る世代でございますので、そこでは新たに人口が増えるということはさほど考えられ ませんので、就業率を上げるということによって、労働力人口の減少を緩和するとい うことが考えられます。  そういうことをやっていくと、上の実線になるだろうということでございます。そ の実線のように労働力人口の減少を緩和して、皆が就業していくという形にした場合 にどうなるかといいますと、真ん中の少し上に533万人の減と書いてありますが、これ は2004年から比べると2030年までで533万人の労働力人口が減少するだろうというこ とでございます。2030年以降になりますと、就業率を上げましても、2030年の段階で 上がりきっておりますので、それ以上に上げるというのは難しくなってくる。そうな るとどうなるかというと、少子化とか人口減少の影響をそれ以降はもろに受けてくる ということがございます。実線の方のグラフも急カーブで落ちてまいります。2030年 から2050年までの間で1,245万人がさらに減るという推計でございます。  これが前回の推計でございます。今回の推計ではさらに少子化が進行しております ので、これよりももっと厳しい姿になるのではないかということでございます。  資料3−2をご覧ください。この審議会に人口構造の変化に関する特別部会という ものを設けまして、議論を行っていただいておりました。その議論の整理が、1月末 に示されております。そのポイントでございます。  1ページの上半分にございますように将来推計人口について、注目すべき点をいく つか挙げております。まず、1つ目の○です。これは単純な人口規模の縮小、今と同 じ形での縮小ということではなく、労働力とか世帯とか地域の姿が大きく変化すると いうことに注目するべきであるということがございます。例えば労働力人口で見ます と、2030年までは生産年齢人口は既にほぼ確定しているので、労働力人口の減少の緩 和は就労促進で図るということです。そして、2030年以降は、生産年齢人口はこれか ら生まれる世代なので、これから少子化対策を強力かつ速やかに講じるということが 不可欠であるということです。  3つ目の○です。世帯構成とか地域の姿です。これは大きく変わるということでご ざいます。例えば、2055年におきましては、50歳代は概ね4人に1人が未婚である。 ということになってございます。これはどういうことかというと、高齢者のいる世帯 の約4割が単身で子供がいないという単独の世帯ということになるだろうということ でございます。  単身世帯というのは社会的なリスクに弱いということがあります。また可処分所得 減少の影響も受けやすいということがございます。  したがいまして、要支援世帯の増大とか負担能力の減少、こういう形で社会全体に 大きな影響を及ぼしていくだろうということが懸念されております。  同様に2055年の段階で、出生数は今は106万人くらいおりますが、50万人を切るとい う推計でございます。これは地域社会で目にする子供の数自体が大幅に減少するだろ うということです。当然ながら地域社会の支え手そのものも相当部分が高齢者になる だろうということが指摘されております。こういうところから見ますと、下の矢印に ございますように、国、地方、経済界、労働界、地域社会におきまして、将来の暮ら しを守るという観点から少子化対策の必要性の認識について機運を醸成していくこと も喫緊の課題であるということが指摘されております。  その下です。そうした問題意識のもとで、出生等に対する希望と実態の乖離という ものを見ております。結婚とか子供数に対する国民の希望と、現実の少子化の進行状 況というのは大きく乖離しております。これは既存の統計調査によりますと、後ほど 出てきますが、結婚をしたい、子供は何人欲しいか、こういう希望についてはこの30 年間はそう大きな変化が出ておりません。しかし現実の出生率はどんどん低下してき ているという状況がございます。  これはなぜかということであります。その下の○です。社会・経済が発展すること に伴いまして、就労とか社会参加という個人の希望が拡大してきますが、これと結婚 とか出産、子育て、就労という両立に関する社会的な選択肢が拡大しなかったため、 結果的に二者択一を迫られて、希望の実現を犠牲にしてきているという姿ではないか という指摘がされております。こうした希望が実現できるように、社会的な選択肢を 拡大するという視点が重要であろうという指摘でございます。  次のページです。こうした観点から、出生等に対する国民の希望を反映した人口試 算を行っております。これは結婚、子供数について国民の希望が一定程度実現したと 仮定して、どういう将来の人口の姿になるのかということを試算したものでございま す。新人口推計の結果等と比べる、施策の立案等の議論の素材にするために、行った ものであります。  下の2つ目の○にありますが、これはもともと出生率目標を定めるというものでは 全くありません。子供を産み育てやすい社会というものを目に見える形にしたらどう いうものになるかという可視化を試みた、そういう性格のものでございます。  国民の希望値については参考として資料をたくさん付けてございます。御説明は省 略させていただきますが、後ほどご覧いただければと思います。国民の希望値は各種 の統計調査から見ますと、生涯未婚率10%未満、大体9割の方が結婚はしたいという お答えである。結婚したら子供は何人欲しいかというところは、大体、2人以上とい う数字が出ております。これを掛け算した後で離死別のケースを入れまして、合計特 殊出生率は1.75程度になるのではないかということが、国民の希望の結果としてはそ うなるのではないかということが計算されております。  これをケース1とします。そのうち一定程度かなうようなケースというものをケー ス2、ケース3、ケース4と置きまして、試算をしております。  これを見ますとケース1でいきますと、2055年の姿としては、例えば新人口推計で いけば9千万人弱になるところを、概ね1億人、高齢化率は35%程度に留まるというこ とです。出生数については大体45万人ぐらいのところが90万人弱ぐらいになるだろう ということです。生産年齢人口につきましては、全体に占める比率は同じぐらいであ りますが、人数としてはこの試算で見たときの方が800万人ほど多いという結果になっ ております。  さらに、その下です。ではそれをどうやって促していくかということで、結婚とか 育児と仕事の両立の必要性を書いてございます。  1つ目の○のところにございますように、これまでの女性の労働力率の上昇という のは、主に未婚率が高くなった結果でございます。既婚女性、未婚女性、それぞれの 就業率というのは、余り変化していません。これは仕事と子育ての両立が困難で、就 業継続と結婚子育ては二者択一であるという状況の結果であろうということでござい ました。  こういう構造を残したままでは、結婚、出生に関する国民の希望を実現すること、 今後の安定的な社会経済の発展の基盤となる労働力の確保、こういうものを同時に図 ることはできないだろうということでございます。したがいまして、有配偶の女性が 希望するように就労を継続できる環境の整備が必要であるということが指摘されてお ります。  下の囲みの中にありますように、こういう両方の希望がかなえられるということは、 イコールで女性が安心して結婚・出産し、男女ともに仕事も家庭も大事にしながら働 き続ける選択ができるシステムというものを構築していくことが必要であるという指 摘がされております。  次のページです。出生率の低下につきまして、さらにもう少しその要素に則して細 かく分解してみたものがこの3ページと4ページです。出生率というのは結婚、それ から子供を第1子、第2子、第3子以降というように分けて、これまでの調査とか研 究の結果から、どういうものが影響を及ぼしているのかということがわかるものを可 能な限り整理をしたものでございます。  結婚につきましては、経済的基盤、雇用、キャリアの将来の見通し・安定性という ものが影響を与えているのではないかということがわかってきております。  1つ目の○です。経済的基盤として、収入が低く、雇用が不安定な男性については、 未婚率が高いという相関関係が見えます。出産後の継続就業の見通しもどういう影響 が出ているのかということで、非正規雇用の女性、育休が利用できない職場の女性、 保育所の待機児童が多い地域の女性の未婚率が高くなっているという相関関係が見え てきております。  細かい調査結果については、さらに右側の囲みの中にございますのでご覧いただけ ればと思います。  同じように出産、特に第1子以降に関係があるだろうというのはその下にございま す。まず、1つ目の○です。出産後の継続就業の見通しが影響を与えているのではな いかということです。育休が利用可能な職場、そういう立場にある方というのは出産 確率が高いという相関関係がございます。仕事と家庭生活の調和ということです。長 時間労働のところでは出産確率が下がっているという結果が出ています。特に下の※ 印にございますが、働き方の問題と家事・育児を家庭で分担しているということ。さ らに保育所を利用できるということ、これはそれぞれではどうも効き目がないという ことであります。相互に組み合わされる、これらが3つ揃うということで継続就業の 効果が出ているということのようでございます。  次のページの一番上です。第2子以降は、どういうことが影響を及ぼしているのか ということであります。これは夫婦間の家事・育児の分担というのがどうやら大きい 影響を及ぼしているだろうということであります。1つ目の○です。男性の家事・育 児の分担、男性の分担度が高いという回答のあったところでは、女性の出産意欲が高 まっている。同じように女性の継続就業をしている割合も高いという状況にございま す。  では家事・育児の分担というのはどういうものに影響を受けているのかといいます と、夫の労働時間に影響を受けているようだというのが下の※印のところでございま す。  同じように第2子に効いているものとして、育児不安というものが出ております。 育児不安の程度が高いほど出産意欲は下がるという状況がございます。特に家庭内と か地域からのサポートというものが影響するようでございます。育児不安が高いとか 低いということは何に影響を受けているのかといいますと、配偶者の育児分担への満 足度が高い、保育所とか幼稚園から地域のサポートが高いところでは、育児不安が低 いという結果が出ております。  第3子についてです。どちらかというとさらに教育費の負担感というのが第3子か ら出てくるということでございます。下にございますように教育費の負担感が感じら れているところが、3人目以降のところから子供の教育費の負担を感じる割合が上が っております。ただ、これは後に生まれた世代ほど負担感が上がっているとともに、 特に1970年代生まれ以降の世代では、1人目とか2人目でも負担感が高いという回答 がございます。これは、世代の収入の問題とかも影響が出ているのではないかと思わ れるところです。  こういうことから、当面焦点を当てて取り組むべき施策分野としてあげられている のが、まずデータを見まして、出生率の要素別の乖離の状況を見ております。上では、 結婚の状況、子供数という新人口推計と調査結果を比較しました結果、下の矢印のと ころにありますように、国民の希望を実現するためには当面は結婚したいとか、子供 を持ちたい、2人目が欲しいという希望の実現のために、先ほどの相関している要素 等々も参考にしながら焦点を当てていくことが効果的ではないか、ということがわか ってきております。  したがいまして、下にありますように速やかに取り組むべき施策分野として、若者 の経済的基盤の確立であるとか、継続就業ができるような環境の整備であるとか、家 事・育児の分担ができるようなこと、保育環境の整備、こういう働き方の問題、家族 や地域の分野における施策、こういうものの効果的な施策の整理・検討を速やかにや る必要があるということがございました。  その下の○にございますように、今後の施策や子育て環境の変化等によりまして、 国民の希望水準自体も上下をしていくものでございます。今はまだ最大1.75という希 望がございますが、こういう希望水準が低下してしまって、一層の少子化を招くとい う悪循環に陥らないために、こういう希望ができるだけ実現するように早急かつ抜本 的な対応が必要であるという指摘がされております。  さらに資料3−3をご覧ください。「子どもと家族を応援する日本」重点戦略につ いて、という紙でございます。表紙をめくっていただき1ページ目です。  いま御説明したような当審議会の人口行動に関する特別部会の報告を受けまして、 こういうことも参考にしまして、「子どもと家族を応援する日本重点戦略」を策定す るという政府全体の動きに今なってございます。上の囲みにありますのは、今申し上 げたようなことでございます。その下にありますように、子どもと家族を応援する日 本重点戦略を策定するということでして、基本的な考え方としては、「すべての子供、 すべての家族を大切に」ということで2030年以降の若年人口の大幅な減少を視野に入 れて本格的に少子化に対抗するため、制度・政策・意識改革など、あらゆる観点から の効果的な対策の再構築・実行を図るものでございます。特に、結婚したいができな いという若い人、子供を産みたいが躊躇するという若い家族を支えるというようなこ と等々で、「すべての子供、すべての家族を世代を超えて国民皆で支援する国民総参 加の子育てに優しい社会づくりを目指す」という考え方に基づいて重点戦略を策定す るということになってございます。  2ページです。この戦略を策定するための検討体制として、この2月9日から官邸 で会議が既に始まっております。この検討体制の一番上にありますのが、総理を会長 とする閣僚で構成される会議でございます。その真ん中のところの会議、この重点戦 略検討会議というのが今回新たに設けられた会議です。官房長官を議長としまして、 関係閣僚と有識者で構成される会議でございます。ここでいまの重点戦略を策定する ということで、特にその下に4つの分科会を、基本戦略分科会、働き方の改革分科会、 地域・家族の再生分科会、点検・評価分科会というように設けて、それぞれの分野に ついての検討を早急に行うこととなっております。  その検討については、人口関係の報告、議論の整理等も踏まえながら具体的な検討 をしていくということで始まったところです。  3ページです。全体の会議の今後のスケジュールとして示されておりますのが、こ ういうものであります。これからしばらく各分科会で検討を行って、6月頃に官邸の 会議をさらに開くということです。骨太の方針に盛り込むということであるとか、基 本的な取りまとめを行ってまいります。さらに年末に向けて検討を進めて、税制の議 論等も見極めつつ、19年末を目途に重点戦略全体像を出していく、という動きになっ てございます。  人口の関係は以上でございます。引き続きまして年金の御説明をさせていただきま す。 (弓場数理調整管理官)  年金局数理課の数理調整管理官でございます。お手元の資料3−4でございます。 先ほど説明がございましたように、昨年12月に新しい人口推計が公表されたところで ございまして、これを受けるというタイミングで2月6日にここにある「人口の変化 等を踏まえた年金財政への影響(暫定試算)」というものを公表させていただいたと いうところでございます。  以下、要点を御説明申し上げます。2ページです。この暫定試算の趣旨ということ でございます。御承知かと思いますが、厚生年金、国民年金は少なくとも5年に一度 財政検証、これは従来、財政再計算と呼んでいたものですが、これを行うこととされ ておりまして、平成21年までに財政検証の結果を取りまとめるということとなってお ります。  そして、昨年の12月に年金部会がスタートしたという状況でございます。そういう ことでございますが、そんな中、先ほど説明がありましたように昨年の12月に新しい 人口推計が公表されたということで、次期財政検証についての議論に資するというこ とを目的としまして、新しい人口推計をベースとし、さらに近年の経済動向も踏まえ て、そういうものの年金財政、厚生年金ですが、年金財政への影響を試算したという ところでございます。  3ページです。この試算の方法ということです。基本的には前回の平成16年財政再 計算における基礎率とか、計算方法をベースとして、その上で人口推計とか経済の動 向についての長期の見通しを新しいものとしている、その際に、それに加えて以下の ような足元補正を行っております。  一つは、財政収支の状況とか、被保険者数の動向は実績、最新のもの、平成17年度 分までということですが、そこまでを反映する。基礎年金の国庫負担割合ですが、こ れも説明がありましたが提出法案で平成19年度に3分の1+1000分の32となっており ます。平成20年度も同じ率として、平成21年度以降は2分の1としております。  もう一つが、足下の経済前提です。足下といいましても、これは平成23年度までの 向こう5年間の近未来の経済前提ということです。これにつきましては1月25日に閣議 決定された内閣府「日本経済の進路と戦略」の参考試算を踏まえて設定をしており、 その数字は4ページの左下にある物価上昇率、賃金上昇率、運用利回りのとおり、平 成23年度まではこの「日本経済の進路と戦略」の数字を基として前提としているとい うことでございます。  このように平成23年度までの経済前提は内閣府の試算を踏まえているわけですが、 それ以降の長期の経済前提はどういうふうに設定しているのかということでございま す。これは近年の経済情勢が、前回の平成16年財政再計算を行った当時よりも好転し ているということを踏まえて、次の二つのケースを設定している、その一つが基本ケ ースというものです。これはやり方というか計算の方法は平成16年財政再計算と同じ 手法、成長率の推計等で同じ手法を使いました。そこで使います基礎数値としまして は直近の実績を踏まえる、ですから最近の経済動向を踏まえたような前提です。  もう一つが参考ケースです。これは平成16年の財政再計算の基準ケースで前提とし ていたものそのもの、平成13年から14年頃の経済動向を踏まえた前提といった、この 二つのケースを経済前提として置いております。  その数字が右下にございます。基本ケースですと、物価、賃金、運用利回りが1%、 2.5%、4.1%という数字となっております。  5ページです。これは労働力率の将来見通しということでございます。これも先ほ どと並んで基本ケース、参考ケースがございます。基本ケースとございますのは、こ れは平成17年7月の雇用政策研究会推計ということで、労働市場への参加が進むケー スとしての労働力率の見通しが示されてございます。これは先ほどの「日本経済の進 路と戦略」のベースにもなっているとか、雇用労働政策もこれを目指して展開されて いる等々、いろいろと勘案しまして、これを基本ケース、最近の経済動向を踏まえた 前提として基本ケースということで置いております。  それに加えて、平成16年財政再計算のときに前提としたものと同じもの、それはど ういうものかというと、平成14年7月の雇用政策研究会推計ということですが、これを 参考ケースということで労働力率を置いてございます。それがどういう数字かという ものを男性の60歳代前半とか女性M字の谷のところで見ますと下のような数字になっ ているということでございます。  そういう人口と経済、そして足元の置き換え等々をやりまして、6ページです、そ ういう前提の下で試算した結果、将来の所得代替率の見通しはどういうふうになって いるかということをまとめたものが6ページの図であります。  平成16年の財政再計算では、将来の所得代替率、給料分の年金額のようなものです が、それが50.2%と将来そのようになると見通されていたところですが、これがこの 試算ではどうなっているかということでございます。人口推計は出生率が中位・高位・ 低位と3種類ございますが、中位の出生の前提の下で数字がどうなっているかという ことは真ん中の列を上から下に見てください。基本ケースの場合には51.6%、これが 前回と同じ平成16年再計算当時の経済動向の下でということですと46.9%、出生中位 だと51.6%から46.9%という数字になっている、試算結果はそのようになっていると いうことでございます。  出生が高位とか低位の場合には、それがどのようになるのかというのは左を見てく ださい。51.6%が出生が高位の場合には54.2%で高止まる。2.6ポイントほど高い。出 生が低位ですと逆に49.4%と50%を割るような数字になるということでございます。  ここでのケースにおける経済前提とか労働力率の設定と申しますのは、先ほどの説 明でもありましたが、最新の状態を取り入れたものですが、あくまでも機械的なもの であるということでして、次回の本番の財政検証に向けて、経済前提とか労働力率の 見込みをどう設定するのかということにつきましては、先般年金部会の下に経済前提 専門委員会というものがスタートしたところでございまして、ここで十分に検討され るということとなってございます。  7ページは先ほどの将来的な所得代替率がいくつかということに加えて、その水準 になるのはいつからかということを表にしたものでございます。これは表の通りでご ざいます。  8ページのところです。これは先ほど基本ケース出生中位のところで将来的な所得 代替率が51.6%となる数字がございましたが、これは平成16年財政再計算では将来的 には50.2%となると見通していたわけです。この変化した要因は何によるものか、要 因分解をしたものがその下の囲みの中にあるものでございます。  一つは出生率を低い見通しとしたことによってマイナス2ポイント、死亡率の低下 というか寿命の延びによるもの、これがマイナス2ポイント半。足下の積立金とか被 保険者数といったものでプラス1ポイント半。最後に、これは基本ケースと参考ケー スとの差ということになるわけですが、将来的な長期の経済前提の変化による影響で プラス4ポイント半。こういう状況になっているということでございます。  次の9ページは今回の人口推計は出生率が3通りという前提に加えまして死亡率も 3通りの前提の下で推計結果が出ております。その死亡率の高位とか低位というもの を用いた場合に、どういうふうに将来の所得代替率が変化するのかということを表に したものでございます。  死亡中位のものに比べ死亡低位のものを使いますとマイナス1ポイント半。逆に死 亡高位を使いますとプラス1ポイント半、こういうことになっておるということでござ います。  次の参考資料以降は細かい話ですので今日は省略ということで、こういうことでご ざいます。 (貝塚会長)  相当に長い説明がありました。御自由に御質問いただきたいと思います。私は最初 の御説明がありました人口構造の変化に関する特別部会をやりました。その特別部会、 基本的に最も重要なメッセージは必ずしもここに出ていないのです。これからの世界 は経済の話が重要。経済の話で経済学者がやるような話ではなく、世帯とか結婚の携 帯とか高齢者の生活の仕方が非常に変わっていくだろう。すると今までの社会とは随 分違った、大分先のことですが、それは今までの時代とは違う新しい想像ができない ところに行く可能性があります、ということは割と重要なメッセージであると思いま した。 (竹嶋委員)  例えば、私はこの会議にお願いができるならしたいのです。いま64歳までを生産人 口としております。私ども日本医師会の方では、日医総研という政策をつくる研究所 を持っておりますが、そこで私どもは少しでも明るいことができないかということで、 定年を69歳まで延ばす。よく巷では言われておりますが、実際に計算をしました。こ れはお確かめいただきたいのですが、例えば5歳延ばして、65歳から69歳の就業とい うことを考えましたときに、就業を希望される方のアンケートでは、男性の方は70.5%、 女性が46.8%あるのです。実際には、どれくらい就業希望があるのかということは、2 005年のときのデータで、日本の就業指数は6,365万人という数字ですので、61歳から6 5歳人口の51%の437万人が就労可能というようなデータを私たちは出しました。  そうしますと、10年間で仮に5歳それを延長したとしますと、2005年のときに6,365 万人ですが就業者全体で6,251万人という数字が出ました。そう大きな就業人口ではな いのです。今私も65歳を過ぎておりまして、既に高齢者に入っておりますが、そうい う中でもまだまだ働ける、そういう方々がおられるわけですから、思い切って国もそ ういうことを考えてみてはどうかということが一つです。  そういう調査は、今までのお話の中では64歳までを生産年齢人口ということでやっ ておりますが、新しい視点での調査をできたらお願いしたいということが一つです。  もう一つは、女性の方がお子さまを出産されて、楽しく、お育てになるというその 環境づくりはいろいろといわれておりますが、今日御説明になった資料3−2の人口 構造の変化に関する特別部会における議論の整理のポイントの4ページの一番下に教 育の負担感というものがあります。これは教育費だけではない、養育費も含める。い みじくも1970年代生まれ以降の方が1人目とか2人目でも負担感が重いというのは、3 7〜38歳とか40歳未満ですよね。一番お子さんなどをお持ちになられてお育てになって いる世代が非常に生活がきつい。だから我が国のそういう世代をしっかり支えていく。 そうしたら子供さんもお持ちになれる。  むしろ、年齢が高い私たちのようなところは税でも何でももう少し重くても構わな いと思いますが、逆に子育ての世代には、税で十分に見ていくということを思い切っ てやらないと、抽象論ばかり我々が言っていても解決策にならないと思います。だか らこういう審議会で、そういう思い切った提案を是非して欲しいと思います。以上で す。 (貝塚会長)  どうぞ。 (廣松委員)  人口部会長として補足をさせていただきます。まず竹嶋委員が御指摘になった最初 の点です。現在の生産年齢人口の定義は15歳から65歳ですが、この定義はそう古いも のではありません。昭和35年の国勢調査までは15歳から60歳でした。それを昭和40年 の国勢調査のときから現在の64歳にまでにしました。そのときにも竹嶋委員が具体的 な数値を出してご指摘されたような議論がかなりあり、かつ、民間企業等の定年が徐々 に60歳にまで延長されていったという社会的背景もございました。そのような議論を 踏まえて40年の国勢調査の時から変えたということです。  その意味で生産年齢人口の定義は決して固定されたものではなく、いま御提案とい うか御指摘のあったようなことを勘案して、当然ながらそれを例えば69歳にまで上げ るということになろうかと思いますが、これは定義の問題ですから、変えることは可 能だろうと思います。それが1点目です。  2点目は、人口部会で議論になったことであり、特別部会においてフォローアップ していただいた点です。それは現在の将来推計人口の手法に関することですが、その 説明は、参考資料2とか3の結果の概要、報告書の本体に載っております。そこにご ざいますように用いた手法はコーホート要因法という人口学の分野で確立をし、かつ 国際的にもよく用いられているものです。今まで過去の数値との継続性とか、国際比 較を可能にするという観点から今回もこの手法を使って将来推計人口を行いました。  今回の人口部会でいろいろと議論が出ましたのは、これは皆さんも御承知のとおり、 人口が変動すると当然ながらそれが社会経済に大きく影響を及ぼします。では逆に社 会経済が人口に及ぼす影響はないのか、それを無視していいのかという議論が強くご ざいました。当然それはあります。ただし大変苦しいのは、今将来推計人口の計算を しておりますコーホート要因法という手法は、極めてテクニカルで、数理的かつ統計 的にかなりソフィスケートされた手法です。  それに加えて先ほど資料の3−2で御説明いただいたように、社会経済の変化が人 口に及ぼす影響の数値的というか数量的な把握というのがなかなかできません。かな り定性的にしか今は議論できないものですから、人口から社会経済に影響が及び、社 会経済からまた人口にフィードバック、というルートがうまく記述されていないとい うことは、残念ながら認めざるを得ません。  その点、将来推計人口、今回もそうですし前回までもそうですが、推計手法として の制約というものも一つ挙げておかないといけないと思います。  ただ、それを踏まえた上で、私が一番ショックだったのは、2055年になると14歳未 満人口の割合が8%。つまり100人のうち8人しかいない。そして年間の出生数が50 万を切るというのは、いくらなんでもちょっと社会全体としては歪というと語弊があ るかもしれませんが、望ましい姿ではないかと思います。  ですから、逆にそういう形にならないような政策を何らかの形で今から考えていか ないといけない。これは人口減少というのはかなり中長期的なものですので、例えば、 合計特殊出生率は大体2.1ぐらいが現在の人口を維持するために必要だといわれてい ますが、明日、その合計特殊出生率か2.1になったとしても、ここしばらくは減少しま す。それが底を打ってさらに増加に転じるというのは、多分その2.1という水準を30 年間位続けないとそれはできません。ですから、今は減少のスピードをどうやって緩 めるかということだろうと思います。その点に関しては是非、いろいろな方面からご 議論をいただき御検討いただければと思います。以上です。 (大森会長代理)  区分のくくり方です。今老齢人口の方の御議論が出ました。年少人口も14歳までと いうのはいかにも実態ではないですよ。ほとんど高等学校に入っております。大学だ って親がかりですよ。ですから、このくくり方も実は人口ピラミッドの変化の方は実 体で20歳から54歳になっているから、これの方はリアリティがありますが、従来型の 3区分の方式は地域に落とすと、ほとんどこれは使えないのです。大きくくくるのは いいのですが、これはきちんと修正していただき、もうちょっと実体に合わせた区分 がいるのではないかというのが一つです。  もう1つです。3−2でこれはいろいろと難しいテーマですが、こういう数値はど こかにあるでしょうか。結婚して余り良い言葉ではないのですが、専業主婦になった 人たちの子供を持っている比率と共稼ぎの女性が持っているというか夫婦が持ってい る子供の比率をどこかで調べた数値があるでしょうか。  私は正確ではないが聞いているのですが、むしろ専業主婦の方が子供を産んでない のではないか、共稼ぎの方が産んでいるのではないかという人がいまして、どこかに しっかりした数値が欲しい。この全体の話は、いかにして共稼ぎを可能にして子供を 産んでもらうか、という話になっているのですが本当だろうかそれは、ということも 確かめる必要があります。そういうデータはどこかにございますか。 (廣松委員)  年令区分についてはご指摘のとおりですが、その点については今のところ議論は出 ていません。2番目の点についてはいくつか数値が公表されています。  その一つとして、あるいはこれに関しては統計情報部から御説明いただいた方がい いかもしれませんが、統計情報部でいま大きく3つの縦断調査、もしくはパネル調査 といっていますものが行われています。具体的に2000年に生まれた子供、2000年のと きに20歳から34歳までの方、つまり青年を対象にした調査、そして50歳から60歳代を 対象とした縦断調査です。これらは同一人物をずっと追っている調査です。  特に青年を対象とした調査に関しては、確か先週、その3回目の調査結果を公表し ました。その中にいま大森委員がおっしゃったこと、すなわち専業主婦の方、正確に 言うと就業をしていて結婚育児のために退職をした人、産休が終わってからもう一度 復帰した人などの割合は数値として公表されています。そのいくつかのおもしろい結 果としては、確かこれは新聞にも少し出たと思いますが、女性が正規職員で育児休業 制度がありかつそれをとることに周りの理解があるような環境であると、生んだ後も もう一度職場に復帰する割合が多い。ただしそれは、第1子目だけで、第2子目にな ると家庭に専業主婦として留まる、ということが全体的な傾向だと思います。 (度山室長)  雇用均等・児童家庭局の総務課の少子化対策企画室長をしている度山と申します。 社会保障・人口問題研究所が人口推計をするにあたりまして、定期的にやっておりま す出生動向基本調査というものがございます。独身の方と御夫婦に対して調査をして います。その夫婦調査の方で、就業の履歴と結婚の持続期間別に子供の数がどのよう になっているのかということの調査を継続的にしております。このデータが男女共同 参画の議論などでよく使われておりますので、先生のご指摘はおそらくこのデータで はないかと思います。  どのように御紹介をしているのかといいますと、ある程度結婚持続期間の長い方で、 結婚あるいは出産を機にそのまま専業主婦を通しておられる御家庭と、そうではなく 継続して就業した御家庭で、例えば結婚期間が20年くらいの御夫婦で数を比べると、 ほとんど差がないという結果が出ているということでございます。  ただ、細かく見てまいりますと、今就業とか子供を持つタイミングの変化が起きて おりますので、結婚の持続期間によっては、どちらが多いとか少ないというのはなか なか難しい問題であり、 またその辺の実態も変化をしつつあるということだと思い ます。最終的に夫婦が何人の子供を産んだのかというのは、ある程度の期間を経て、4 0代ぐらいになって初めて何人産んだということの比較ができるので、まだ今産む途中 の世代にとっては、それが途中経過なのでうまく測りにくいということはございます。 現在既に産み終えた世代で比べると両方にそれほど大きな差はないという結果になっ ております。 (京極委員)  ちょっと違った視点でございます。国立社会保障・人口問題研究所の所長なのでい まの人口の問題で発言するつもりではございません。いま社会保障を巡る議論と人口 を巡る議論がかみ合ってきつつあります。私どもの印象ですと、今日は残念ながら経 済界の方が来ていらっしゃらないのですが、どうも社会保障の中長期的な展望につい て、経済界の方は割りかし当面の問題について、新聞社の方もいらっしゃいますが、 短期的なところに余りにも議論が集中しすぎているのではないか。  財政当局もそうですが、国民負担率というところで当面の問題について指摘をする のは多いに結構でございますが、しかし将来どうなるのかということについて、もう 少し視野を広げていただきたい。特に日本の経済界はしばらく不況が続いたために、 どうも目先の社会保障議論になっていまして、こういう数字を踏まえて、日本経済を どうするのかということを基本的に考え直していただかないといけない。  その点で厚生労働省に申し上げたいのです。経済界に対するレクチャーとかをもう 少し頻度を多くして、労働界の方はいらしておりますが、少し足りないのではないか ということを申し上げたいと思っております。 (翁委員)  少子化対策というのは、多分、二つある。一つは今までお話があった少子化を少し でも歯どめをかけるという対策で、もう一つは、人口動態の変化、こういう中でサス ティナブルな社会をつくっていくという2つの対応、両方を進めていく必要があると 思います。特に後者の方というのは、中長期的に相当にいろいろな面で影響が出てく るということがわかってきていると思います。  年金、医療、介護というのは、少子化が進んでいきますと、また高齢化も健康寿命 も含めて高齢化をどんどんしていきますと、そうしますと非常に大きな影響を制度設 計で受けていくと思います。ですから、この今回出た人口推計をどのように使ってい くのかというのは、非常に重要だろうなと思っております。現実の少子化の進行とい うのは、今まで中位推計よりも低位推計に近い形で進んできていて、本当にこういう 制度設計をサスティナブルなものにしていくという観点からは、より少子化が進んで、 より高齢化が進んでいくというシナリオであっても、サスティナブルなものを考えて いくという視点が非常に重要だと思います。  これからいろいろと御議論が進んでいくと伺いましたが、いくつかのシナリオを分 けて是非慎重に中長期的な観点から御議論をいただきたいなと思っております。 (鴨下委員)  この審議会には医者の方が何人かいらっしゃいます。医者が病気を治す場合には、 最悪の事態を考えて最善の策を備えるということです。ところが少子化に関していい ますと、隣に所長がいらっしゃるのですが、社人研の予想はことごとく外れて下方修 正、先生には責任はないと思いますが、今までですね。甘い見通しで社会保障を考え てきたというのが一番問題であると思います。ですから今日は縷々、説明をいただい たことも、これをもし10年前、あるいはせめて5年前にやっていただければ、ここま で少子化が落ち込まなかったのではないかと私は考えます。  ですから、是非これからさっき出生数が50万人にはならないとおっしゃいましたが、 そういう事態も考えて、むしろ非常に厳しい状況も考えて、これからやっていただき たいと思います。 (沖藤委員)  今の議論に関連します。こちらの3−2の資料によると早急かつ抜本的な対応が必 要と最後に書かれております。これがこのレポートの結論なわけです。ところが早急 かつ抜本的な対応をするにあたって、緑の冊子の社会保障給付費に子供というのがな いのです。家族の中に子供を入れ込んでいるのでしょうが、子供家族が常に一緒にな っているというところに問題の見えにくさがあるような気がします。ここに高齢とい うのがある以上は、子供も産まれたばかりの育休ばかりではなく、保育園だけではな く、小学校、子供を何歳までを定義するのかという話はまた別の議論として、子供が 一人前になるまでの社会保障費というのが過去にどのくらいかけてきて、これからど のくらいかけていくのかという見通しの数字を国民の前に提示するべきではないでし ょうか。この家族というところだけを見ても非常に少ない費用です。しかも、家族だ けではなんだかよくわからない。子供を別枠にして欲しいと私はお願いしたいと思い ます。  私はよく子供は文部行政、いや労働行政も関わるわけですから、幅広い概念で省庁 の縦割りというようなものをなくして、例えば子供省というものをつくるとか、さら には子供保険というような新しい財源の仕組みをつくる。育児保険とかね、そういう 新しい財源の仕組みをつくることをお願いしています。  そうしませんと例えば神奈川県などは、出生率は下から3番目くらい低くて、私が 住んでいる県ですが、それで高齢化比率は高いのですが、人口増なのです。それはな ぜかというと他県から入ってきているのです。よそ様の県が育てたお子さまたちが神 奈川県に来て働いてくださって神奈川県に税金を納めてくださる。そうしたらよそ様 の県の人たちは、せっかく自分のところでお金をかけても将来自分の県にいないのだ から、そういう非常に醒めた目があるわけです。日本全国に網をかける一本化すると いう子供対策が必要だという意味において、私はいつも育児保険構想、子供保険構想、 あるいは子育て連帯基金、そういうものの新しい財源のつくり方というのが必要では ないかと言っているのですが、いかがなものでしょうか。 (貝塚会長)  今の点について少し申します。日本の社会保障の一つの特徴は、ヨーロッパ諸国と 比べて高齢者に偏っております。内容がね。若い方の人には非常に底がある。長い間 の日本の社会ですが、それを変えていかないといけない、というのがまさに今のこと です。本当はもっと早く変えるべきです。そういうことはおっしゃるとおりです。客 観的にね。 (米澤委員)  いろいろな出生に関する施策とか、もともとこういう施策をやってもしょうがない から低出生率に対応するべき経済をきちんと作るべきとかいろいろな議論が出ました。 そこに欠けている点の一つはこの例えば資料の3−2あたりに、諸外国、マスコミで はフランスがなんとかという話が出てきますが、とりあえずその辺の国の出生に関す る施策を見て、いろいろと実験してくれているところもあると思いますので、そこの 情報がもう少しここに入っても良いのではないかという感じがします。できることと できないことがあると思いますが、いくつかの主要先進国のヒントも是非入れていた だき、先ほどコーホートの細かな分析のことはよくわかりましたが、クロスカントリ ーでそこのところの知恵もできるだけ取り込んでいって欲しいという気がしました。 (貝塚会長)  時間がもうございませんので手短にお願いします。 (山出委員)   そろそろ方向を変えてもいいのではないか、というお話がありました。私も実はそ のことを思っておりました。初めにお金ありき、そしてそのお金ありきの議論を理論 で作ろうという、その結果が現場とか地方に大変に無理な形になってきているという ことをつくづく思うわけでございます。  私は厚労省はもう少し現場の実態というものを知って欲しい、ということを申し上 げておきたいと思います。  一つ二つの事例を申し上げます。介護保険の仕組みでありますが、地域包括支援セ ンターの存在というのは大事であると思っておりますが、ここに来まして指定居宅介 護支援事業所への委託件数、これに基準を作ったということです。ところが基準から 外れた部分については、地域包括支援センターは人を手当するのに大変に苦労してい る。こういう実態というのはよく知って欲しいと思います。  いま地方は予算を組んでいるわけでございますが、国民健康保険も依然として従来 の仕組みというのは変わっていません。保険料でまかなうべき会計であるのに、一般 会計から支援をしないといけないという仕組みは、依然として残ってございます。こ の辺も事情をしっかりと踏まえていただきたいと思います。  後期高齢者医療制度は確かに都道府県単位で広域連合がスタートしました。これか らそういう方向に進んでいくと思っておりますが、そうしますと、今の現場はどうい うことをしているのかというと、電算システムを開発しているわけであります。しか し、このことについて現実にではどういうお金がいって、どの程度か、制度設計をし たのは国ですから、国がどこまでちゃんと面倒を見ていらっしゃるのか、その辺は十 分に踏まえて欲しい、このように思っています。  言い訳程度というのは品のない言い方ですが、そういうように感じられてならない ということでございます。私はもう一つ言っておきたいことがあります。  療養病床の再編成です。これもそういう方向に進んで、いろいろな形で行われ、い ろいろな面で問題を起こしてきている。実態を知って欲しい、療養病床の再編成とい う議論がどういうことになっているのか、そういうことについてよく実態を踏まえて 欲しいと申し上げておきます。 (榊原委員)  人口部会と人口構造の変化に関する特別部会に参加させていただきまして、議論を 通して私が学んだことというか一番印象に残ったのは、「少子化から脱することがで きない日本的な社会構造」があるのだ、ということです。様々なデータや調査の結果 を事務局が提示してくれた中で、そういうことがこの報告書の中で示されていたので はないかと思うのです。  10年以上、少子化の取材をしてきて感じますのは、少子化がなぜこうなっているの かという議論になったときに、いつも出てくる意見というのは、若い世代が甘えてい るから、頼りないからではないかということです。支援は甘やかせるだけだからやめ ようということで議論が停止になるというような状況を何度となく見てきました。ま たは少子化になっても人口減少になっても、それに対応した社会システムを作ってい けば乗り切れるのではないかという議論に流れてしまう。そうした傾向があったので すが、もうそういう考え方では乗り切れないところに来ている、ということをはっき りさせたという点が大きかったと思います。  では、「日本的社会構造」とは何かというときに、構造を作っている一つは間違い なく社会保障制度の在り方であるわけで、それも今回の報告書の中で見えてきたとい うふうに思っています。税制も一つですが、社会保障の影響も大きい。例えば、今、 年金制度の見直しでパートの人たちへの加入をどのように広げていくかという議論を されておりますが、社会保障制度のベースにある基本の世帯モデルという考え方は、 女性の就業やライフワークに対して一定の影響を与えている。こういうところをどう していくのか、ということも含めて社会保障全体の設計というものを考え直していか ないと、恐らく個別の制度を縦割りの中で見直しをしていくだけでは、少子化とか人 口減という大きな変化に対応していくことができなくなっているのではないでしょう か。その点で個別部会というよりもこうした幅広の議論ができる場は非常に重要にな っているのではないかと思います。 (見城委員)  いろいろな制度をこのように説明していただくと制度は出揃っているという感じが します。でも現実の社会の中で、例えば子供を産みたいのに近くに産院がない。出産 の時にはとんでもないところに行かないといけないとか、これで本当に子供を産んで 欲しいと思っているのかというような状況がございます。出生率が仮に2.0になっても 人口は底を打ってから上昇するということを考えますと、一つはこういう制度が本当 に使いやすいのかというところを早急に肉付けしていくべきだと思います。せっかく 制度がありましても、それを利用するのに大変であったりとか、手続きが繁雑であっ たりということがございます。仕事をしながらそういう手続きをしていくというのは 本当に大変です。こういう制度を活かしてもらうための活用の部分ということも、も う一つ付け加えていただけたらと思います。  もう一つは、どうして子供を産まないのかと考えたときに、産みたいと思えないと いうこの社会というのを根本から、制度だけではなく、どうしたらもう一度本当に若 い人が結婚したい、恋をして結婚して産みたい、となるかということもこの社会保障 制度だけではないということも踏まえて、いろいろな縦割りでものを考えずに、関係 各省庁が教育の問題とか、文部科学省との連携とかを踏まえながら、是非生きた制度 にしていってもらいたいと思いますし、そうするべきだと思います。 (貝塚会長)  時間が経過してしまいましたのでここで終わらせていただきたいと思います。事務 局、何かございますか。 (薄井統括官)  時間もかなり押しておりますので、御質問とか御意見もたくさん頂戴をいたしまし たが一つ一つにお答えができないことにお詫びを申し上げたいと思います。今日は貝 塚会長を初めとして各委員の皆様方におかれましては、長時間にわたりましての御審 議を賜り、また貴重な御意見を賜りまして誠にありがとうございました。また、今日 から新しくこのメンバーに加わっていただきました方につきましては、委員御就任の お願いに御快諾をいただきましたことに対しまして、御礼を申し上げたいと思います。  御意見が出ました少子化対策、これは厚生労働省あるいは社会保障の分野だけでは なく、省庁横断的な部分も当然あろうと思います。縦割り的なことではなく進めなけ ればいけないということで、重点戦略検討会議でもそういう観点での御議論、私ども 厚労省が事務局をやらせていただいている分科会、4つのうち3つの分科会におきま しては、そういうことに心して取り組んでまいりたいと考えております。  また、将来的には生産年齢人口の区分についてのお話もございましたが、厚生労働 省の労働部局との関連もございます。65歳を超えられた方も就労意欲が非常に高いの で、そういう方々が働ける社会をどうつくっていくのか、ということも大事なことで あると考えております。  少子化対策については、少子化に歯止めをかけるということと、翁委員が言われた ように少子化に対応した社会保障、あるいは社会、こういうことも重要であろうと考 えております。  その意味で、現場の意見という話もございました。そういうことも十分に承りなが ら、今日は総会でございますので一つ一つにお答えできませんが、事務局は各部局か ら来ておりますので、それぞれの分野におきまして、お話いただいたことを踏まえて これからの議論ができればと思っております。  改めて申し上げるまでもなく、この審議会は社会保障につきまして幅広く御意見を いただく場でございます。この審議会での御議論を得ましてここ数年、年金、介護あ るいは医療あるいは障害者の福祉、こういうことでさまざまな分野での改革を進めて まいりました。それらを着実に円滑に実施していくということは、私どもに今課せら れた使命であると思っております。これから少子高齢化が進む中で社会保障制度がセ ーフティネットとしての機能を果たしながら、かつ持続可能なものとして機能してい くためには、中長期的な視野に立って制度全体を見ながら、また給付と負担を一体的 なものとして見ながら、効率的な制度の運営、さらには不断の改革努力、こういうこ とが引き続き求められていると考えているところでございます。  その意味で、少子化、あるいは年金、あるいは医療、福祉、介護それぞれの分野に おきまして様々な観点からの検討議論というものが今後とも必要になってこようかと 思います。そういう場面におきまして、委員の皆様方におかれましては御審議をいた だく、あるいは御助言をいただくということが引き続き多々あろうかと思っておりま すので、どうかよろしくお願い申し上げたいと思います。  次回のこの全体の総会の開催につきましては、今のところは未定でございますが、 改めて御審議をいただく事項ができた場合には、日程の調整をさせていただき開かせ ていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。 (貝塚会長)  今日はこれで終わります。 (終了)