07/03/02 社会保障審議会年金部会経済前提専門委員会(第1回)議事録 社会保障審議会年金部会経済前提専門委員会(第1回)議事録 日  時:平成19年3月2日(金)16:30〜18:00 場  所:全国都市会館第1会議室 出席委員:米澤委員長、江口委員、権丈委員、駒村委員、樋口委員、本多委員、      増渕委員、山口委員 ○宮本大臣官房参事官 定刻まで若干時間がございますけれども、委員の皆様方おそろ いでございますので、これより「社会保障審議会年金部会経済前提専門委員会」を開催 いたします。 委員の皆様方には、本日は、御多忙のところお集まりいただき、ありがとうございま す。 初めに、恐縮ですが、机の上に大部の資料を用意させていただいておりますので、御 確認をお願いいたします。 配付しております資料は、1枚紙で議事次第、配席図。 その下に、議事次第のところに記載しております資料1委員名簿以下、資料7まで。 それから、参考資料を用意させていただいております。 今の段階、あるいはいずれかの段階におきまして、資料の不足、落丁、乱丁などござ いましたら、事務局に御連絡をお願いいたします。よろしいでしょうか。 それでは、第1回目でございますので、年金局長より、一言ごあいさつ申し上げます。 ○渡邉局長 年金局長の渡邉でございます。本日は、本当に御多忙の中、御参集いただ きまして、ありがとうございます。 昨年末に、社会保障審議会年金部会の下に設置されました経済前提専門委員会の第1 回会合に当たります。この専門委員会は、16年改正において制度化された新しい財政検 証という枠組みを進めていく上で、どうしても欠かすことのできない大事な委員会であ ると認識しております。将来、100年にわたる年金財政の収支の見通しを作成して、法 律に定める財政検証を実施していくことが制度の責任になっております。 財政検証全般につきましては、親部会に当たります年金部会で検討をしていただくと いうプロセスを予定しておりますけれども、この経済前提専門委員会では、経済に関す る前提について御検討をいただき、財政検証の基礎を固めていただきたいと考えており ます。 議論の進め方に関連してでございますが、改めて申すまでもなく、公的年金制度は、 3年前の16年改正で構築された新しい制度環境の下に、言わば新たな時代を迎えている というふうに認識しております。 すなわち、最終的な保険料水準を法律で定めて、その負担の範囲内で給付を行うこと を基本にして、給付水準を自動的に調整する仕組みが導入されたわけでございます。少 なくとも、5年に一度財政状況を検証する仕組みとして、財政検証が制度化されました。 これに伴いまして、従来は5年に一度、給付と負担の見直しを行うということになっ ておりました、いわゆる財政再計算というプロセスを経ておったわけでございますが、 保険料水準を固定していることから、こうした仕組みに別れを告げて、新たな財政検証 という仕組みに入ったものと考えております。 将来にわたる年金制度の持続可能性を確保して、国民の真に信頼される制度運営を行 うために、この財政検証のプロセスが非常に大事でございます。言わば、頑丈な建築物 であっても、周囲の環境変化も起こり得るわけでございますので、マンションに例えれ ば、住民が長年にわたり安心して住み続けるためには、定期的な総合診断が欠かせない ということであろうかと思います。その定期的な総合診断に当たるのが、この財政検証 であると思っております。 その際重要な点は、年金制度が非常に長期的な制度だということであり、目の前で起 こっている短期的な変化は大きなものと捉えられがちでございますけれども、短期的な 変化と長期動向の区別を誤らずに、また短期的な変化の中にも潜む長期の動向を見逃さ ないためにも、御専門の皆様方の御知見を十分に発揮していただければと願っている次 第でございます。 公的年金は、我が国1億2,000万人の人生設計がかかっている社会保障の中核を成す 制度でございます。繰り返すまでもなく、その安定と信頼が国民の安心をもたらすこと に間違いないわけでございます。 近年、国民の目からは、年金財政の健全性に関して非常に高い関心が寄せられており ます。今後、少子高齢化が進展する中で、年金制度への期待の表れであると同時に、注 文の厳しさでもございます。私どもといたしましては、年金財政に関する説明責任を果 たして、国民の皆様に老後が安心というふうに確信していただけることが一番の目標で あると考えております。 そのために、大切な財政検証の足場を固めていただくこの専門委員会におきまして、 お集まりの委員の皆様に、自由で活発な御議論をいただくことを重ねてお願い申し上げ まして、私からのあいさつとさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたしま す。 ○宮本大臣官房参事官 では、事務局より、委員の皆様の御紹介をさせていただきます。 五十音順に御紹介いたします。 江口隆裕委員。筑波大学ビジネス科学研究科長でいらっしゃいます。 権丈善一委員。慶應義塾大学商学部教授でいらっしゃいます。 駒村康平委員。東洋大学経済学部教授でいらっしゃいます。 樋口美雄委員。慶應義塾大学商学部教授でいらっしゃいます。 本多俊毅委員。一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授でいらっしゃいます。 増渕稔委員。日本証券金融株式会社代表取締役社長でいらっしゃいます。 山口修委員。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科教授でいらっしゃいます。 米澤康博委員。早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授でいらっしゃいます。 なお、本日は吉冨委員は御欠席でいらっしゃいます。 次に、厚生労働省の出席者を紹介させていただきます。 先ほど、あいさつ申し上げましたが、年金局長の渡邉でございます。 本日、出席予定ではございますけれども、所用により遅れておりますが、後ほど大臣 官房審議官の間杉が出席をさせていただくことになっております。 年金局総務課長の岡田でございます。 ごあいさつが今ごろになりまして遅れましたが、私は大臣官房参事官資金運用担当の 宮本と申します。よろしくお願いいたします。 大臣官房総務課企画官の柳樂でございます。 年金局数理課数理調整管理官の弓場でございます。 なお、年金局数理課長の山崎は、本日、都合により欠席させていただいております。 以上でございます。 次に、委員長の選任についてでございます。 あらかじめ、本委員会の各委員に相談いたしましたところ、米澤委員に委員長をお願 いしてはどうかとの御意見がありましたが、いかがでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○宮本大臣官房参事官 ありがとうございます。それでは、米澤委員に委員長をお願い することとし、これからの議事運営につきましては、米澤委員長にお願いいたします。 恐縮ですが、米澤委員、委員長席に御移動をお願いいたします。 (米澤委員、委員長席へ移動) ○米澤委員長 委員長を務めさせていただきます、米澤です。よろしくお願いいたしま す。 本来ですと、もっと適切な方がいらっしゃったんですが、諸般の事情により、私が務 めさせていただくことになりました。ピンチヒッターの代わりにもならないかと思いま すが、幸いなことに、前回の16年改正のときに、いろいろ創立等に関しまして、縁の下 で計算に携わったこともありましたので、その関係で多少お力添えになればいいかなと いう格好でやらせていただきたいと思います。 幸いなことに、その分野の大家の皆様方に集まっていただいておりますので、大船に 乗ったつもりで司会を一生懸命やらせていただきますので、よろしくお願いいたします。 ミッションとしましては、平成21年までに実施される公的年金の財政検証における経 済前提の検討を行っていきたいということでございますので、重ねてよろしくお願いい たします。 それでは、議事に入ります前に、本委員会を公にするかに関しまして、事務局より説 明をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。 ○宮本大臣官房参事官 それでは、お手元の資料3、6ページをご覧ください。 「社会保障審議会運営規則」の一番下にございます、第5条第1項に「審議会の会議 は公開とする。ただし、会長は、公開することにより公平かつ中立な審議に著しい支障 を及ぼすおそれがあると認めるときその他正当な理由があると認めるときは、会議を非 公開とすることができる」とあり、同第6条第2項に議事録に関して同様の規定がござ います。 本委員会は、この取扱いに準じ、原則公開となりますが、委員会での検討事項は、年 金積立金の運用にも関連する可能性もございますので、お手元の資料4にございますよ うに、各種の市場に影響を与えるおそれがある場合等には、委員長の御判断により、全 部または一部を非公開とすることができることとしてはいかがかと考えております。 以上でございます。 ○米澤委員長 ありがとうございます。いかがでしょうか。よろしいですね。その辺は、 適宜弾力的にやらさせていただきたいと思います。 それでは、公開につきましては、事務局の原案どおりに決めさせていただきたいと思 います。 それでは、議事に入りたいと思います。 今日は、第1回目の会合ということもありますので、キックオフということで、経済 前提に関しますいろんな事項に関して、いろいろ事務局の方から最初に説明、レクチャ ーを受けたいと思いますので、よろしくお願いします。 では、お願いします。 ○弓場数理調整管理官 数理調整管理官の弓場でございます。今日は、数理課長が都合 により欠席ということで、代わって御説明させていただきます。座って失礼いたします。 それでは、お手元の資料5でございます。これは、2月6日に公表いたしました「人 口の変化等を踏まえた年金財政への影響(暫定試算)」というものでございます。これ につきまして、簡単に御説明を申し上げます。 まず「暫定試算の趣旨」でございます。 御存じかと存じますが、厚生年金、国民年金は、少なくとも5年に一度、従来の財政 再計算に当たる財政検証を行うこととされておりまして、平成21年までにこの財政検証 の結果をとりまとめることとなっております。 そういうこともありまして、昨年の12月、年金部会がスタートしたという状況でござ います。 そういうことでございますけれども、昨年の12月に新しい人口推計が公表されました。 そういうことですので、この新しい人口推計をベースとしつつ、近年の経済動向等を踏 まえて、年金財政への影響を暫定的に試算した、そして、先ほど申し上げました財政検 証の議論をする際の参考としていただく、この資料はそういうものでございます。 2ページは、この暫定試算を行うに当たっての方法の概要ということで、まず、足下 補正についてどういうふうにしたのかというのが記述してございます。 まず最初に、できるだけ最近の実績を取り入れるということで、収支及び被保険者数 等は、平成17年度までの実績を織り込んでおります。 基礎年金の国庫負担割合でございますけれども、これは提出法案で平成19年度は3分 の1+1,000分の32となっておりまして平成20年度も同じ数値です。平成21年度以降は 2分の1ということを前提としております。 足下の経済前提は、平成23年度までの向こう5年間のもののことでございますけれど も、これは1月に出ました内閣府の「日本経済の進路と戦略」にあります参考試算を踏 まえて設定しております。詳細につきましては、後で付録1がございますので、そちら で御説明申し上げます。 3ページに簡単な表がございますので、そこでも御説明申し上げます。 それと、所得代替率が将来どうなるかを見込むわけですけれども、その際平成18年度 の所得代替率の実績を出発点としております。 足下については、こういう補正を行っている、基本的には、平成16年の財政再計算の 基礎データ、基礎率とか、計算方法とかをとっているわけですが、足下についてはこう いった補正を行っているということでございます。 3ページは、今回の議題の1つにつながるわけですれども、経済前提についてどうい うふうに置いたかという説明でございます。 前回の平成16年の財政再計算では、要するに平成13〜14年ごろの経済動向を踏まえ て設定をしておりましたけれども、その後、近年、経済情勢が当時よりも好転している ことを踏まえまして、次のような2つの前提を置いております。 1つは、基本ケース。これは、先ほど申し上げました最近の経済動向を踏まえたもの でございます。 参考ケースは、前回財政再計算のときの平成13〜14年の経済動向を踏まえたものでご ざいます。ここら辺の詳細につきましては、後で付録2がございますので、そこで説明 をさせていただきます。 下の表でございますけれども、左の方が、先ほど2ページのところで出てきました足 下の向こう5年間の経済前提でございます。これは基本、参考共通ということで、先ほ どの進路と戦略を踏まえた数字でございます。 右は長期の設定でございまして、これは付録2のところで御説明申し上げます。 これが、経済前提でございます。 次に、労働力率の見通しということで、4ページでございます。 これも2つのケースを想定しております。 まず、基本ケースとして、これは最近の経済動向を踏まえた前提ということで、平成 17年7月の雇用政策研究会の推計の中の「労働市場への参加が進むケース」というもの を前提としております。雇用労働政策がこれを目指して展開されているということや、 先ほどの進路と戦略のベースにもなっているということがありまして、これを基本ケー スとしておるところでございます。 更に、平成16年財政再計算で用いましたものそのものを参考ケースということで置い ております。ですから、これは平成13、14年ごろの経済動向を踏まえた労働力の前提と いうことでございます。 こういった足下の補正を行いまして、経済前提、労働力率等を最近の実績等を踏まえ たものに置き換えまして、試算をした結果が5ページでございます。 試算の結果でございますけれども、基本ケースの真ん中に「出生中位」とございます。 その下に、参考ケースで「出生中位」とございます。そこに51.6%、46.9%とございま す。これが、先ほどの前提の下で、かつ出生が中位の場合に試算を行ったときの将来的 な最終的な所得代替率の見通し51.6〜46.9%、基本ケースと参考ケースの場合でござい ます。 また、人口推計は出生率につきましては、中位のほかに高位、低位というものが前提 として置かれたものもございますが、それに対応した結果が、基本ケースの場合ですと、 高位で54.2、低位ですと49.4といった試算結果になっておるということでございます。 6ページは、将来的な所得代替率と申しましたが、それがいつごろ到達するのかとい うのを、各々のケースについて表にしたものでございます。 7ページでございますけれども、先ほどの試算結果の中にございました出生中位で基 本ケースのところに、将来的な所得代替率が51.6%とございました。これは、前回の平 成16年財政再計算では50.2%と見込まれておったわけでございますけれども、この50.2 %から51.6%に数字が動いた要因を下にとりまとめてございます。 まず、出生率の将来的な見込みが低下した要因によるものが、マイナス2ポイント。 寿命が延びたことによる影響が、マイナス2.5ポイント。 先ほど、一番最初に申し上げました足下の変化ということで、積立金とか被保険者数 を直近の実績等に置き換えた、そういった諸々のことによる影響が1.5ポイント。 それに加えまして、先ほどの基本ケース、参考ケースのところにあります経済前提で ございますが、基本ケースの場合による影響としまして、プラス4.5ポイントといったこ とで数字が動いたということでございます。 更に8ページは、ここまでは死亡中位の場合の結果でございますが、人口推計は死亡 率、要するに寿命に関しても高位、低位の前提での推計を行っております。寿命が高位、 低位の場合に、この最終的な所得代替率がどのような変化をするかというのが表になっ ておるわけですが、死亡が高位、それほど長生きをしない場合ですが、この場合にはプ ラス1.5ポイント、更に寿命が延びる死亡低位の場合ですと、マイナス1.5ポイントとい ったふうに見込まれておるところでございます。 ここまでが試算の結果の概要ということでございまして、9ページ以降が、この前提 になっている人口とか経済のもう少し詳しい説明でございます。 9ページは、18年12月の将来人口推計がどういうものだったのかを簡単にまとめてあ るものでございます。 左上にございますのが、出生率の仮定です。将来的な合計特殊出生率は、前回の人口 推計では1.39となっておりました。今回の人口推計では、将来的な合計特殊出生率は 1.26と、現在とほぼ同程度の水準のTFRという前提になってございます。 平均寿命の方でございますけれども、これは前回、男性ですと、将来80.95歳と見込 まれておりましたものが、3歳近くも延びて83.67歳、女性の場合でも1歳ほど延びて 90.34歳と、前回の人口推計に比べてかなりの長寿が前提ということになっておるわけ でございます。 こういった出生率、寿命の仮定の下で将来人口推計を行った結果が右の方にございま して、将来的な人口規模は、2055年で約9,000万人、65歳以上の老年者が人口に占める 割合は約4割といった、かなり厳しい結果が出てきておるということでございます。 10ページですが、結婚するかとか、夫婦の子ども数がどうなるかといったことにつき まして、国民の希望が一定程度かなった場合に、将来の人口はどうなるのかというのを 試算したものが今年の1月に出ておりまして、4つのケースが置かれております。 ケースIですと、生涯未婚率が10%未満、夫婦の子ども数が2人以上という、すべて 満たされる場合。 その中間ケースとして、ケースII、III、IVといった4つのケースが計算されており ます。これに対応した将来の所得代替率と呼ばれるものは大体どのぐらいかというのを 粗々見込んだものが、10ページの下の方に55、54、53%と書いてあるこういったもので ございます。 そこで、ようやく11ページ以降、今回の話につながります経済前提の設定についての お話でございます。 まず、11ページ「(付録1)足下の経済前提の設定について」とございます。 これは先ほど出てまいりました内閣府の「日本経済の進路と戦略」の参考試算にござ いまして、ここには、下に小さい字でありますが、シナリオを2つ書いております。1 つが新成長経済移行シナリオ(歳出削減ケースA)、そして、もう一つ、成長制約シナ リオといったものがございます。 このうちの新成長経済移行シナリオというものを今回の計算の前提にしております。 政権としてはこういうものを目指しているということを反映して試算を行ったというも のでございます。 飛びまして、一番下のところにございますのは、向こう5年間の前提の話でございま して、そこを新成長経済シナリオに基づくものではなくて、成長制約シナリオに基づく ものに置き換えたときに、最終的な所得代替率がどの程度変化するのかということが書 いてございます。それによる影響は0.2ポイント低下ということでございます。 真ん中に戻りますけれども、どういうふうに物価、賃金、利回りを置いたのかという ことでございますが、物価上昇率はこの試算の中に出てくるものに基づいて設定をして おる、賃金上昇率につきましては、労働力人口一人当たりの名目GDP成長率イコール 賃金上昇率とみなす形で設定をしてございます。 その際、労働力人口は人口推計及び労働力率の見通しから算出したということでござ います。 運用利回りでございますけれども、これにつきましては名目長期金利というのが出て くるわけですが、これに厚生年金、国民年金の場合には市場運用というのをやっており ますので、その分散投資によって追加的な収益がある、要するに株式等で運用を行って いることの上積み分があるということでございます。それにつきましては、積立金の基 本ポートフォリオ策定時の数字を踏まえまして、プラス0.4%と設定しております。 下には、制約シナリオの場合の数字が載ってございますけれども、これは3ページの ところに新成長経済移行シナリオの場合が載っておりましたが、3ページの左下の数字 に当たるものということでございます。 ここが、向こう5年間の経済前提の見込みということでございまして、これは基本的 に進路と戦略の数字を使っておるということでございますけれども、それ以降の長期の 経済前提の設定の方法につきましての記述が12ページ以降ということでございます。 まず最初が、物価上昇率でございます。これは極めて見込むのが難しいものかと思い ますけれども、1つは、過去20年間の平均が0.6%、先ほどございました進路と戦略の 数字の向こう5年間の平均が1.4%だということ、それと、16年の再計算のときに1.0と していたことなどを総合的に勘案いたしまして、今回の暫定試算では1.0%と設定して おるということでございます。 賃金上昇率、これは、一人当たりの実質GDP成長率イコール実質賃金上昇率とみな すということで、これに先ほどの物価上昇率を加えまして、賃金上昇率とするというこ とでございますけれども、この一人当たり実質GDP成長率はどうやって推計したのか ということにつきましては、平成16年の財政再計算では、いわゆるマクロ経済にありま すコブ・ダグラスの式というものを用いまして推計をしておりますが、基本的に、暫定 試算でも全く同じということでございます。ただ、その計算をするに当たっての要素が 下にございますけれども、そういったものは、基本的に直近の実績に置き換えておると いうことでございます。 下の表にございますけれども、先ほどの式で実質GDP成長率を推計するに当たりま して、要素ごとにどういうふうに今回、設定しておるかというのが書いてあるわけでご ざいます。  まず総投資率につきましては、基本的に前回のものをそのまま使用するということで ございます。 資本減耗率と資本分配率は、前回の再計算では平成4〜13年の実績平均ということで 使っておったわけですが、これはかなり機械的ですけれども、直近、平成16年の実績に 置き換えて要素としておるということでございます。 労働力人口の変化率は、先ほど労働力率の推計がございましたが、それに基づいたも ので年平均マイナス0.5%。 そして、 一番下にございますものが成長率を推定するときの要になるわけですけれど も、いわゆるTFPと呼ばれます全要素生産性上昇率でございます。これは、前回の再 計算では平成13年度年次経済財政報告にある0.5〜1.0%を勘案しておったわけですが、 今回、その数字につきましては、直近の数字が0.9%であるということと、先ほど来、 出てきております進路と戦略の2011年度の期待値というのが1.5%程度だということを 勘案いたしまして、1.5%から見れば固めということですけれども、1.0%ということで、 基本ケースの場合の全要素生産性上昇率の仮定を設定しておるところでございます。 こういった要素を先ほどの式に放り込みまして、計算をした結果が13ページでござい ます。最終的に一人当たり実質GDP成長率は、基本ケースの場合で1.5%程度。これ を実質賃金上昇率と考えて、これに物価上昇率を足し算することによりまして、賃金上 昇率の前提は2.5%と暫定試算では置いておるということでございます。 最後に、運用利回りの前提でございます。これは、基本的に過去の実質長期金利の実 績に対して、将来の利潤率の変化を見込んで推計した、ここでは、利潤率は実質利率と 比例的だと考えて、利潤率の将来伸びるであろう変化に沿って実質長期金利も将来変化 すると置いて、将来的な実質長期金利というのを推計しております。 これに物価上昇率を足し算します。最後に、先ほど来、出てきておりますように、市 場運用による追加的な収益というものにつきましては0.4%と、足下の経済前提のとこ ろでポートフォリオ策定時の上積みの率と申しましたが、これと同じ0.4%をオンする ことによりまして、4.1%ということで、利回りの設定をしてございます。 以上のようなことでございます。 ○米澤委員長 では、続けてお願いします。 ○宮本大臣官房参事官 続きまして、もう一つの資料6「年金積立金の基本ポートフォ リオについて」につきまして、御説明をさせていただきます。 先ほど、局長のあいさつの中でも御説明させていただきましたように、本委員会で御 検討いただきます長期の経済前提は、この財政検証におきます足場となるものではござ いますが、それと同時に約150兆円に上ります年金積立金の運用におきましても、基礎 的な数値となるということでございまして、その関係につきまして、資料6に基づきま して簡単に御説明をさせていただきます。 初めに、前回の年金財政の検証後に行われました年金積立金運用の改革等につきまし て、御説明をさせていただきます。資料6の1ページをご覧ください。 財投改革を受けまして、平成13年度以降は、年金積立金は財政融資資金に預託して、 運用するというのではなく、厚生労働省において運用することとされまして、その運用 は特殊法人の年金資金運用基金が担当しておりました。 その後、平成16年に専門性の徹底、責任の明確化を図る観点から、年金資金運用基金 が担当しておりました業務のうち、下にあります融資等の業務は整理、合理化して、別 の法人が担当し、年金積立金の運用に特化した組織を新たに設立することとし、その法 人は平成18年4月に年金積立金管理運用独立行政法人として発足し、今日に至っており ます。 この改革によりまして、厚生労働大臣と運用担当の主体との役割が以前と大きく変わ っております。 第1に、この左の方の厚生労働大臣という枠の中にございますように、従来は年金制 度の設計、年金財政の検証、加えまして株式等に投資する資産構成割合の決定、基本ポ ートの策定ということでございますけれども、国内外の債券にそれぞれどのぐらいの割 合で投資して、どのぐらいの収益率を期待するかということが厚生労働大臣の役割とさ れておりましたが、年金資金運用基金の役割としておりまして、年金資金運用基金は、 その下で指示された運用を粛々と実施するという役割をそれぞれ分担することになって おりました。 この独立行政法人に移行した現在におきましては、かつて厚生労働大臣が担っており ました役割のうち、基本ポートフォリオの決定など、専門性を高めた組織が担うことが 適切と考えられるものを管理運用独立行政法人に担わせることとしております。 また、第2に、管理運用主体の組織を独立行政法人化しております。すなわち、年金 制度の設計に整合的な積立金運用を実現するために、大まかな目標をおおむね5年間の 中期目標として厚生労働大臣が管理運用独立行政法人に示しまして、この目標に沿って 管理運用独立行政法人が、かつて厚生労働大臣が定めておりました基本ポートフォリオ をこの独立行政法人が策定、あるいは管理運用の基本的な方針につきましても独立行政 法人自らが定め、実行するという仕組みになっております。 その結果は、毎年度、あるいは中期目標の終了期間後に第三者からなる独立行政法人 評価委員会が評価し、公表するという仕組みになっております。 2ページ以下に、現在の基本ポートフォリオを平成16年度に決定いたしましたときの 資料を添付しております。今後はこのような事務と申しますか、検討は、管理運用独立 行政法人が担うことになりますが、その際、大まかには4ページをご覧ください。 4ページにございますようなプロセスで基本ポートフォリオが決定されることになる と思われますけれども、その出発点は(1)にありますように、これは平成16年決定当時で すので、16年財政再計算の結果、予定運用利回りなど、というものを出発点とし、その 後、各資産につきまして、リターン・リスク・制約条件などを検討するという作業が続 くわけですが、その土台となりますところの(1)に当たります部分につきましては、今般、 先生方に御検討いただきます経済前提であるとか、財政検証の結果を踏まえまして、こ れと整合的な運用環境見通しの下に基本ポートフォリオ等の運用の方針を独立行政法人 に定めていただくことになるということでございます。 以上、年金積立金の運用につきまして、前回の財政検証時との違い、当委員会で御検 討いただく結果と年金積立金の基本ポートフォリオ等の策定につきましての関係につき まして、簡単ではございますけれども御説明させていただきました。 以上でございます。 ○米澤委員長 どうもありがとうございました。 それでは、随分いろいろ資料がございますので、これらに関してどこからでも結構で すので、御意見がありましたら言っていただきたいということです。 最初に、どこからでもと言いましたけれども、資料5のマクロ的なことに関してから スタートしたいと思います。どなたからでも結構です。 基本的には、1つの暫定的な数字が出ているんですけれども、このような方法でいい のかどうかも含めてですね。ここはこういうふうに直した方がいいんではないだろうか ということを今日、得られればいいかなと思っておりますので、遠慮なく言ってくださ い。 何の問題もないですか。駒村さん、どうぞ。 ○駒村委員 では、質問させてください。暫定試算の4ページです。 労働力率の見通しなんですけれども、厚生年金の加入の割合というのは、一定のまま なのかということと、労働力率が60〜64歳の男性、30〜34歳の女性が上がってきますの で、これが男性は今、平均加入年数が35年ぐらいあると思うんですけれども、それぞれ 男女の平均加入年数か何かが動く、何年か延びるような形で財政に反映されているかど うか。そこをお願いします。 ○米澤委員長 では、お願いします。 ○弓場数理調整管理官 労働力率の使い方ですけれども、これは基本的に、簡単に言い ますと、現在の被保険者数をこの労働力率の伸びで伸ばしていったようなものというこ とで、現在の状況は将来に反映される、言い換えると、労働力人口分の被保険者数とい うのが年齢ごとに将来同率であるというようなやり方をやっているということでござい ます。 ですから、そういう前提でやっておりますので、当然、被保険者期間は労働力率が伸 びた分だけは伸びていく形で財政計算に反映されてくるということでございます。 ○米澤委員長 江口先生、どうぞ。 ○江口委員 基本的なことで恐縮ですけれども、私は経済はよくわからないのですが、 このデータでは、例えば人口とか平均寿命は大体2055年をターゲットとしてこうなると いうのは明確なんですが、経済の足下値の根拠、将来推計の根拠は御説明があったので すが、そのターゲットがいつなのかということについては、足下値とそれ以降の前提に 基づいて、50年後ないし100年後もそうなるのだと考えればよろしいのでしょうか。 つまり、前回改正で一応100年の有限均衡方式に改めていますけれども、この推計の ターゲットは一体いつなのだという質問です。 つまり、人口推計については、明確に2055年の時点と出ているのですけれども、経済 の推計のターゲットというのは一体どこに置いてそもそも議論をすればいいのかという ことを確認させていただきたいと思います。 ○米澤委員長 では、お願いします。 ○弓場数理調整管理官 まず、人口ですけれども、御承知のように、将来人口推計は 2055年までは出生率とか死亡率とか変化していきますけれども、その後は一定といった ことかと思います。 ただ、年金の財政計算を行う場合には、先ほどおっしゃいました2100年までの収支を 全部見て、所得代替率が将来どうなるかというものを見ておるということでございます ので、あえて言うとターゲットは100年間を見ているというか、100年後を見ているとい うことかと思います。 経済の方は、この資料にも出てきていますけれども、2032年まではなにがしか近似し たりしながら推計しておりますけれども、それ以降はその状態が続くとかなり割り切っ た前提を置いておる、100年間の経済前提を見込むというのは、できるかどうかわから ないぐらい非常に難しい話でございますので、我々はそういうやり方で考えておったと いうことでございます。 ○江口委員 そうすると、今の議論で100年を前提にすると、前回改正からまだ3〜4 年しか経っていないわけですけれども、この3〜4年の変化で大ざっぱに言えば103〜 104年後の変化を見込むと考えてよろしいわけですか。 ○弓場数理調整管理官 基本的にはそうですけれども、短期の動きにとらわれた形で長 期の見込みを置くものではないということだけは確かなんだと思います。 ○米澤委員長 どうぞ。 ○増渕委員 人口の推計の方は、概して2050年とか2055年ぐらいのところについては、 不幸にしてというか、かなり当たってしまうということがよく言われているわけです。 したがって、それを前提にせざるを得ないんだと思います。 経済情勢の方については、これから議論する話の中身そのものということにはなるん でしょうけれども、例えば3ページの「足下の設定」と「長期の設定」というのは、明 らかに不連続なわけですね。例えば賃金上昇率は、進路と戦略の望ましいケースの下で はだんだん高まっていって4%。しかし24年度以降は2.5%。これは、勿論内閣府の政 権の方針の下でのあり得べき経済の姿を足下については前提とし、しかし、より長いと ころでは、それはとりあえず横に置いておいてという計算の仕方になっているわけです が、その辺をどう考えるかについて、これはこうせざるを得ないのかもしれませんが、 それから我々が議論をすべきことなのかもしれませんが、どういうふうに平仄をとった らいいのかということはどうなんでしょう。 ○米澤委員長 お願いします。 ○弓場数理調整管理官 向こう5年間は、この内閣府の数字にディペンドするというこ とでございますけれども、この長期の経済前提の見方ということですけれども、これは 将来的にどういう実力のものかという平均値のようなものを考えていると考えればいい のかなと思います。 要するに、5年後以降、100年後までの平均的なものとして、こういった賃金とか利 回りの前提ということなんだろうと思います。ですから、もし細かくやることになりま したら、5〜6年後のところは連なるような数字を持ってきてということもあるのかも しれませんけれども、ここはあくまで5年後以降の平均的なものを、5年後以降に機械 的に置かせていただいている。今後の議論の中でそれはあまりにも不連続で見た目にも 悪いということでしたら、それ以降の平均値がこの値になるように、かつ5年目と6年 目が接続するようにといったことも考えられるのかなと思っております。 ○米澤委員長 山口先生、どうぞ。 ○山口委員 こういうマクロの予測の場合、余り関係ないのかもしれないんですが、積 立方式の年金制度などの場合には、給与のカーブというんですかね。賃金カーブがフラ ット化していくと、保険料率に与える影響というのはすごく大きいんです。最近、実際 にもそういう賃金カーブのフラット化は進んでいるように思われるんですけれども、こ ういうマクロの予想で平均でざくっととらえていくといった考え方をするときには、そ ういった賃金のカーブといったことの要素は余り影響を与えないという検証とかはされ たんでしょうか。ちょっと教えていただきたいです。 ○弓場数理調整管理官 これは非常に難しいところだと思います。実際の財政再計算の ときには、定期昇給の状況は、あくまで今のような定期昇給パターンが将来も続いたら ということが前提で、それとは別に全体としてのベアがどうなるかというのを外から経 済前提として与えて計算をしておるということでございますけれども、今後、その賃金 カーブ自体が変化してくるであろうということまで見込んでやるべきであるということ であれば、今後、議論させていただきたいなということです。 ですから、これまで、そこら辺はそんなに細かい分析等ができていたことではない状 況ということです。 ○米澤委員長 先ほどの接続のところも含めて、この辺は基本的に余り年金の財政のこ とはビルトインしていなくて、専らマクロの生産関数と簡単な投資(貯蓄)関数を使って、 将来シミュレートしていくという程度のものなんですね。 しかも、そういう話ですと、お分かりになりますように、実質は決まりますけれども、 名目は決まらないわけです。ですので、先ほどうまく接続したかったというのは、恐ら く最初に物価上昇率を1%と長期が決めて、その下で賃金上昇率が2.5%で出てくるよ うな名目経済が実は裏にあったかと思うんです。 ですから、そこの接続のところを少し名目のところでもきれいに接続するという工夫 が必要かもしれません。 それから、今、言いました賃金カーブのフラット云々というのは、この段階ではまだ 恐らく反映されていなくて、そうは言っても所得代替率のところなどでは計算は出てく ると思いますけれども、ここのところでは極めてもっと大ざっぱで、マクロで1つ賃金 があるというレベルで計算しているんだと思うんです。 樋口先生、どうぞ。 ○樋口委員 4ページの労働力率のところで表が出ていまして、現在、男性60〜64、 70.3%が89.4%。20ポイントぐらい上がるということです。あるいは女性30〜34の62% から80%。18ポイントぐらい上がる。 これは、雇用政策研究会の数字なんですが、私もそのとき参加したんですが、労働市 場への参加が進むケースと進まないケースがあります。現状が維持した場合、かなり大 きな差が当時あったと覚えているんです。 進むケースというのは、実は労働時間が短縮されるというようなことで、ですから人 数ベースではこれだけ増えるけれども、トータルマンナワーですか。時間も考慮したレ ーバーインプットというようなことになると、こうは進まないよ。だから、パートタイ ムとか、あるいは短時間の労働者が増えていくんだということで、生産関数という議論 が先ほどから出ているんですが、その生産関数を考えるときに、ここでは人数辺りのレ ーバーインプットということを考えてきたのか、それともマンナワータームで測ってい るのか。延べ労働時間で測るんですということによって、相当に違った将来見通しにな ると思うんです。 どちらでまずやっているのかということと、そこのところを、例えばこの比率の分だ け厚生年金の加入者が増えますよとそのまま言っていいのか、片方でパートの適用拡大 の問題もありますが、そういったところをどう考えていくのか。 要は、今までの政策、経済成長の見通しというのは、みんな人数で何人増えるんです かというようなことで言ってきたわけですけれども、例えばこういう高齢者とか、ある いは女性の人たちにも労働市場に参加してもらおうということになると、全員がフルタ イマーとして参加してもらうということには、やはり限界がありますし、ましてや週60 時間以上の人が今度増えてくるんですという話になると、こんなに人数でも増えないだ ろうということを考えることになってくるわけで、その点、ちょっと御説明いただけた らと思います。 ○弓場数理調整管理官 おっしゃることは貴重な御意見で、経済前提を設定するにあた りまして、労働時間というのは、簡単に言えば変化しないものだと思って推計をやって おるわけです。 勿論、この場合、労働市場への参加が進むケースは、それも含んでやられたものだと いうことで、これを使うのはいかがなものかということでございますが、現時点ではこ の労働力率推計に当たるものはこの2種類しかございませんで、その中間のものを我々 がつくるということもなかなかできなかったものですから、この労働市場への参加が進 むケースをそのまま機械的に使わせてもらっているわけでございますけれども、それも 今後の極めて重要な議論のテーマかと思っております。 ○米澤委員長 そうですね。それはちょっとうまく全部できるかどうかわからないです けれども、それは再検討する必要がありますね。 前の財政再計算のときは、まだそれほどそういう問題が見えてこなかったのかな。そ の後、ここに至って深刻な問題になってきていますのでね。データとの兼ね合いもあり ますけれども、それはちょっとテークノートしておきましょう。 ほかにいかがでしょうか。 江口先生、どうぞ。 ○江口委員 資料の11ページなんですけれども、運用利回りは名目長期金利+分散投資 による追加的な収益率に設定となっていますが、これは、分かればで結構なんですが、 分散投資の効果はいろいろあると思うんですが、国際分散投資、つまり、外株、外債等 による追加的な収益率はどの程度見込んでいるのでしょうか。 というのは、端的に言うと、我が国は少子化で人口減少社会になっていくわけです。 そういう中で、このデータは多分12ページを見ると、労働力は全体で0.5%減っていく けれども、生産性は1%増えていきますという前提になっているのですが、そういう生 産性の上昇だけではなくて、我が国経済を維持するためには、外国に投資をして、言っ てみればそこで収益を獲得するというのも、今後、非常に大きな要素になるし、資本の ストックがある我が国としては、そこにどの程度ターゲットを置くのかどうかが重要に なると思うのです。アジア経済、最近ちょっとあれですけれども、そういう意味で、日 本の投資構造として、収益を対外投資にどこまで求めることを前提としているのか、も し分かればで結構ですが、お聞きをしたいと思います。 分からなければ、また次回でも結構です。 ○米澤委員長 では、分かる範囲でお願いします。 ○宮本大臣官房参事官 この現在の数字につきましては、資料6の5ページをご覧いた だきたいと思うんです。 基本ポートを策定する際に、それぞれの各資産につきまして、当時の財政再計算しま したときの長期の利回り利子率に対しまして、各種のいろいろな推計を行う中で「2. 各資産のリターン・リスク・相関係数の推計」といった数字を置いて、その上で最適な 値の組み合わせを設けたということでございます。 今、江口委員からの御指摘にありました点につきましては、若干計算をしなければな らない点はございます。1つ今、ここでお示しできるものとしましては、それぞれの外 国債券、外国株式につきまして、大体どのぐらいの期待収益率を名目値で持っていたの かという数字はこんな数字になっておりますということはお示しできますが、外国資産 につきまして投資したことに伴う分散投資という形のものにつきましては、次回の宿題 とさせていただきたいと思います。 ○米澤委員長 本多委員、どうぞ。 ○本多委員 今の点に少し関連するので、お聞きしたいというか、これはむしろ要望と いうか希望になるのかもしれません。 今、御指摘があったように、ここの数字を見ていますと、やはり非常に難しい将来の 予測になっておって、それは非常に数字を当てることはすごく難しいなと思うんですけ れども、少しこういうのがあったらいいかなと思うのは、世界の中での日本というのが どういう位置づけになっていくのかというビジョンのようなものがもう少し示してある と、数字が当たっている、当たっていないというのとは別に、相対的に日本という国が アジア、世界の中でどういう位置づけになってくるのかなというのが、どこかの段階で 議論してあるとよろしいのではないかと思いました。 と言いますのは、これはちょっと先走ってしまうかもしれませんけれども、今、御指 摘のあった運用面の方で見た外債、外株等の議論をすると、その為替リスクが大きいも のですから、やはり海外に持っていくことは非常に難しい、リスクが高いというふうに して終わってしまう部分が非常に多いんです。 実際、それは数字で言うと確かに正しいんですけれども、5年先、10年先や50年、 100年ということを議論した場合には、今、江口先生から御指摘のあったとおり、やは りエマージングな国はたくさんありますから、そういったところに分散投資というか、 成長性の高いところに資金を投下していくということは、可能性としては十分あり得る と思うんです。 ただ、過去のデータで行きますと、クレジットリスクといいますか、ソブリンリスク が高いとか、そういうところで議論が止まってしまう可能性もありますので、今までそ ういう議論が余りなかったので、少しその辺考えていただければよろしいかと思います。 ○米澤委員長 どうぞ。 ○宮本大臣官房参事官 非常に難しい宿題をいただいたと思っておりますが、事務局と してできる範囲のものは努力させていただきます。 ○米澤委員長 何かないでしょうかね。ここはどこの官庁になるんですか。いずれにし ても、100年先なんていうのは無理でしょうね。 ○宮本大臣官房参事官 恐らくOECDであるとか、国連であるとか、人口基金とか、 ああいったところの国際機関のデータの中で、そういったものがある可能性があるかな と思いまして、むしろ本多先生がお詳しいのかもしれませんけれども、また、委員の皆 様にもお知恵を拝借させていただきまして、できる範囲のものを努力いたします。 ○米澤委員長 我々のミッションは、このポートフォリオまではタッチしない方が良い のかもしれません。ただ、議論としては、幅広にやっていきたいと思いますけれども、 最終的には、そこは独立行政法人のマターになるのかもしれません。 ただ、これまでも議論しましたときに、そもそも株式運用はいかがなものかという議 論が必ず付いてくることがありまして、それ以上に、株式とは認めても、外株、外債も 含めて、外物に関しては、やはり同じように高い割合がいかがなものか、日本の年金の 運用に関して議論がございますので、仮にポートフォリオで計算して、最適が国内より 外物が高く出てきたときに、結構あり得る話なんです。 そういったときに、それを選べるのかどうかというのは、ちょっと違ったサイドから 難しい議論があるのかなというのが、これまでの私の印象であります。 どうぞ。 ○駒村委員 考え方を1つ整理させていただきたいんですけれども、経済前提と年金制 度というか、年金財政、その関係というのは一方方向だけで見ていくかどうかというこ とを教えてもらいたいんです。 例えば予測を立てるときに、年金制度が経済に与える可能性も考慮しなくてもいいか。 例えば今回、マクロ経済スライドで、公的年金が給付抑制になっていくわけですけれど も、それがもしかしたら家計の貯蓄率に何らかの影響を与える可能性もあります。現に 企業年金の方の研究会では、税制上の優遇措置を給付確定拠出年金の方に上げましょう という話もして、それはある意味、部分的な積立方式への移行みたいな部分もあります ので、考え方としては、一方方向なのか、それとも多少は年金制度の経済に与える影響 もフィードバックして考えていくのか、その辺を教えてください。 ○弓場数理調整管理官 確かに公的年金の規模は非常に大きいですから、経済等いろん なものに影響を与えるということは、前から重々承知をしていて、これまでも再計算の たびに経済モデルのようなものが、何か組めないかということを検討してきて、今日に 至るという感じでして、要するに、なかなか確たる経済モデルのようなものが構築でき ない状態のままでいます。 ですから、財政再計算では、あくまで外からそういう変数を入れるということで、逆 に年金が経済に与える影響までは、今のところ、システマチックには見切れていないと いうことです。これは、今後どんどん進歩して、そういうことを我々も見ていけたらい いと思っておりますけれども、現段階では、まだ、そのレベルまで達していない、今後 の重要な検討課題かなと思っております。 ○米澤委員長 先ほどからおわかりのように、次の資料のポートフォリオの方も入って いますので、そちらの方も含めて、更に意見がございましたら、お願いしましょう。 ○樋口委員 要は、今度、人口の高齢化とか、人口減少社会がどういうインパクトを日 本社会に与えるだろうか。また、そしてまたそれを通じて年金財政にどういう影響を与 えてくるかというようなことをやりたい。 そのときに、例えば家計貯蓄率に人口の高齢化といったものがどういう影響を与える か。中には、2020年に家計貯蓄率がゼロになって、その後、マイナスだというような議 論もなされている。本当かどうか分かりませんけれども、そういったところもあるわけ です。 そのときに、例えばここだと総投資率というものを外から与えているように見えるん ですが、これだけ投資すると、家計貯蓄率がマイナスだとなると、その資金をどこから 持ってくるんだというような話、海外から借りなければ、とてもやっていけないという ようなグローバル化がさっきから議論に出てきますけれども、そういった可能性を何か 示すシナリオが、どういう経済になるということを想定しているのかというシナリオが 見えないと、なかなかこれが妥当なものであるのかどうかというのが分かってこないの で、ここでは貯蓄とか、そういうのはどういうふうな扱いになっているんですか。外か らここにある設定というのは与えていますよということで、貯蓄は扱っていないという ことなんですかね。総投資率だけですか。 ○弓場数理調整管理官 正直なところ、そのレベルだということです。ですから、そう いったことを専門家の方々のお知恵をお借りして、どういうふうにやるのがいいのか、 また可能なのかということを、これから検討していく重要なテーマかなと思っておりま す。 ○米澤委員長 そこは、今、樋口委員から御指摘があったとおり、全く外から与えてい ます。これは何だと言われて、貯蓄率であり、投資率でありということで、そこのとこ ろは一緒でいいだろうと、100年レベルの予測だと、ISのアンバランスはないだろう というのを根拠にして推計していますが、ただ、それが一番いいとは思ってもいません し、それがどういうようなメカニズムで減っていくのかに関しても、別にロジックがあ るわけではないので、そこのところも一つ再検討していく必要があります。 ○樋口委員 多分、IS、オープンモデルで考えると、ちょっとあれですけれども、 ISがバランスしているとすれば、逆に相当高い利率になっているわけです。利子率に なっていないと、貯蓄率が減って、投資は今と同じような水準になっていますよと、こ れは民間投資だと考える。 ○米澤委員長 投資も大きく減っています。 ○樋口委員 25.5〜21.4と書いてありますので、21.4というのは、これはかなり高いと いうふうに思ってみていたんですが、これはどうなんでしょうか。12ページの設定のと ころですね。付録2のところですね。 ○弓場数理調整管理官 確かにこれは、過去の傾向を伸ばしたもの以外の何ものでもご ざいませんので、そういう諸々の要素を踏まえて将来どうなるかというのは、重要な検 討課題だとしか、この場では言えない状況だということです。 ○米澤委員長 では、変わるにどうやるのかというと、結構難しい話ではありますね。 もう一つ、さっきおっしゃったように、いろいろ年金の制度を入れると、家計の貯蓄が どう変わるかというのは、経済屋は得意なんで、合理的にはこう変わるといえるんです けれども、最近分かってきたように、どうもそんなに合理的ではないということです。 公的年金が増えれば、プライベートの貯蓄が減るかというと、そうでもなさそうな感じ もしているので、モデルを組むのは難しくないけれども、実際にそうなっているのかど うかというのは、なかなか難しい点があるみたいです。ただ、決してこれでいいという わけではないので、今、御指摘の点は、可能な範囲でチェックしていく必要があるかと 思います。 さあ、このレベルで見られると、幾らでもたたけば出てくるのかもしれませんけれど も、大きな点で、是非この点は、どうぞ。 ○江口委員 今までのお話を聞いていると、結局、例えば100年とか50年の経済前提を 考えるというのは、極論すれば、50年先、100年先の我が国の姿、ありようを考えると いうのとニアイコールなのではないでしょうか。例えばここにあります生産性上昇率を どう見込むかというのも、例えば教育とか、諸々のシステムの中で、いかに科学技術の 分野も含めて、より高いパフォーマンスを上げるかとか、さっき言ったように、対外投 資というのは、どこまでやっていくのかとか、どうも本当はそういうあるべき姿があっ て、その結果として、諸々の数値が出てくるというのが、本当の姿なのではないかと思 います。その話を言い出すと、それはここの手に負えないという議論になるのでしょう が、でも考え方としては、そういうことに行き着くということでよろしいのでしょうか。 私は、経済は素人なのですが、どうも今までの話を聞いていると、結局、最後にこうい う数字が、日本は例えば50年後、100年後にどういう姿を目指すのか、それによって年 金制度がどうやって維持されていくかということを表わすことになっていくのではない かという気がするんですけれども、もし、お分かりでしたら、お願いします。 ○弓場数理調整管理官 まさに、向こう100年の日本国がどういう経済社会になるのか、 そのものを占えというのに近い作業というふうに、極論すればなってしまうかもしれま せんけれども、あくまで公的年金の制度を、これからどういうふうにやっていくのかと いうことについて、向こう100年のような予測を基にしないと、そういう議論ができな いという公的年金制度の宿命みたいなものを考えて、そういう公的年金の経済前提を置 くと。しかも5年ごとに財政検証とかも行われるわけですし、そういうときには、どう いう前提を置くのが妥当かとか、現実的かといったことも、ちょっと加味して議論して いただくということなのかなと思っております。 ○米澤委員長 私も、それに付け加えることはないんですが、どうなんでしょうか。一 応使っている経済モデルなんですけれども、その辺を明確にビジョンを考慮して、将来 を描くというのは、どうもまだ道具としてできてないんではないかと思うんです。 片方は、経済成長論というのが道具としてあって、これは余りビジョン、シナリオは なく、後者の方に乗っているので、それがいいとは思わないんですけれども、今のとこ ろ、そういうものしかないのかなということです。そこのところで、先ほど幾つかいた だいた議論で、江口先生の言葉から言うと、ファインチューニングですけれども、微小 なところは直していって、一応、姿を見ていくのかなと。 あとは、出てきた数字を見て、我々の感覚で、どうもこれはこんなにならないという、 そこのところの我々のプライアーと比較するのが精一杯かなという感じがしています。 とんでもない数字が出てくるのか、出てこないかということですね。 ○宮本大臣官房参事官 委員長、よろしいでしょうか。 ○米澤委員長 どうぞ。 ○宮本大臣官房参事官 いろいろ御指摘事項も多々ありますが、その中で、既に私ども からも、今後、いろいろと御相談させていただきたいということを幾つか御指摘いただ きましたが、資料7としまして、検討事項としてお願いしたい項目を整理したものがご ざいますので、これを御説明させていただいてよろしいでしょうか。 ○米澤委員長 お願いします。やっていただきましょう。 ○弓場数理調整管理官 では、資料7でございます。もう先取りして、かなり議論して いただきましたので、もう後追い的に確認するような話になってしまいますけれども、 先ほど来、平成16年財政再計算ないしは今回の暫定試算で経済前提とか、労働力率の前 提といいますか、そういった設定をどういうふうにしているかという説明を簡単にさせ ていただいたわけですけれども、あくまでも今回の暫定試算は、直近の実績を踏まえた 言わば機械的なものということでございます。 平成21年までの財政検証に向けまして、ここら辺をどう考えるか、これがまさにこの 専門委員会設置の趣旨ということでございますけれども、その際の検討事項の案という ことで、ここに1〜4まで箇条書きになっております。 1は、マクロ経済の見通しに関する事項ということでございます。これは、先ほど来、 説明の中にもいろいろ出てきましたもので、成長率とか金利とかを推計するに当たりま して、生産性とか資本分配率とか投資率といったものを仮定しているという状況ですけ れども、こういったものをどう考えるかということ。 それと、先ほど来、少し意見が出ておりましたけれども、今後、我々が経験したこと がない人口減少社会に入っていく中で、労働力率の見通しとか、将来の賃金とか、利回 りといった経済の動向がどうなっていくと考えるのかといった話が1つの大きな事項と いうことでございます。勿論、これ以外のことにつきましても、やり方も含め、御議論 いただくと、更にありがたいということでございます。 2番目といたしまして、積立金運用における期待収益率、これは、先ほど来、出てお りますが、市場運用をしておりますので、例えば株式等で運用している分を長期金利に 加える、すなわち上積み分があると、そういったものをどういうふうに考えるかといっ たことがもう一つのテーマでございます。 3番目は、なかなかこれは難しいといいますか、そもそも長期の物価上昇率というの は、どう考えて、どうセットするものなのか、すべきなのかといったことについてとい うことでございます。 そういった諸々の話の集大成として、最終的に4にありますような経済前提を具体的 にどういうふうに設定するのか、考え方とか、計算方法も含めて、更に足下の設定も含 めて、どういうふうに考えていくのかといったことを検討していただければということ でございます。 ○米澤委員長 ありがとうございます。これは、一応、検討課題を整理していただきま したけれども、何かもし付け加えること、こういうものが必要ではないかとか、先ほど 2〜3点はその都度チェックしておきましたけれども、それ以外に関して、もしござい ましたら、今日辺りにしていただくとありがたいんですが。 もし、今日すぐ出なくても、後で何かありましたらば、事務局の方に、こういう点も ちょっと付け加えておいたらということを連絡していただけるということでよろしいで すかね。 そうしますと、大体今日議論しなければいけないことというか、繰り返しますけれど も、今日は聞く方ですから、一応レクチャーを受けたということで、いかがでしょうか。 よろしければ、本日の審議を終わりたいと思います。 それでは、次回の日程につきましては、追って事務局より連絡するということになっ ておりますので、今日はこれでよろしいでしょうか。 それでは、どうも長い間ありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省年金局数理課 03ー5253−1111(内線3355)