07/03/01 第25回社会保障審議会医療保険部会議事録         社会保障審議会医療保険部会(第25回)議事録 平成19年3月1日(木) 虎ノ門パストラル 鳳凰西の間  唐澤課長 定刻になりましたので、山本委員と神田委員が少しおくれていらっしゃる ようですけれど、これから第25回の医療保険部会を開催いたします。委員の皆様には、 本日は御多忙の折、お集まりいただきありがとうございます。  本日は開会の前に、委員の皆様に異動がございましたので、その御報告を、私、総務 課長から申し上げます。  まず、星野部会長が御退任されまして、新しい部会長として、社会保障審議会令第6 条第3項の規定に基づき、社会保障審議会委員の互選により、糠谷部会長が選任をされ ております。  また、浅野委員、漆畑委員、岡谷委員、清家委員、箱崎委員、松原委員の各委員が御 退任をされました。あわせて、日本医師会常任理事の鈴木委員、日本看護協会副会長の 古橋委員、日本薬剤師会副会長の山本信夫委員、日本歯科医師会常務理事の渡辺委員が、 新たに委員に御就任されました。  また、本日の委員の出欠状況についてでございますが、本日は磯部委員、岩村委員、 神田委員、河内山委員より御欠席の御連絡をいただいております。  続きまして、欠席委員のかわりに御出席される方についてお諮りいたします。  神田委員のかわりに、愛知県健康福祉部技監である吉田参考人の御出席につき、御承 認いただければと思いますが、いかがでしょうか。 (異議なし)  唐澤課長 ありがとうございます。なお、本日は省内用務により、水田保険局長が途 中で退席する予定となっておりますので、御承知おきいただきたいと存じます。  あわせて、前回の医療保険部会以降、厚生労働省の幹部にも異動がございましたので、 簡単に御紹介をさせていただきます。  私が総務課長の唐澤でございます。  続きまして、大臣官房参事官(社会保険担当)の深田でございます。  大臣官房企画官の谷内でございます。  保険局総務課老人医療企画室長の山本でございます。  保険局保険課長の岩渕でございます。  保険局国民健康保険課長の神田でございます。  医療課長の原でございます。  ただいま欠席しておりますが、医療課企画調査室長の八神、それから医療課薬剤管理 官の磯部でございます。  社会保険庁運営部医療保険課長の松岡でございます。  それから大臣官房政策企画官の梶尾でございます。  以下の議事運営は、糠谷部会長にお願いをいたしたいと存じます。よろしくお願いい たします。  糠谷部会長 部会長に選任されました、糠谷でございます。非力でございますけれど も、委員の皆様方の御協力をいただきまして、円滑な議事運営に努めていきたいと思っ ておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  それでは早速でございますが、議事に入らせていただきます。  医療保険制度改革が昨年の通常国会において成立したところでございますけれども、 現在、平成20年度に向けて医療費適正化計画の策定や医療保険者による健診・保健指 導の実施、75歳以上の後期高齢者の方々を対象とした後期高齢者医療制度の創設、後 期高齢者の心身の特性にふさわしい診療報酬体系の構築など、医療制度改革の本丸とも いうべき内容についての施行準備が進められているところでございます。  本日は、まず、制度改正後の状況として、後期高齢者医療制度の準備状況、高額医 療・高額介護合算制度の内容、船員保険法改正案の内容について説明を受け、次いでパ ート労働者への健康保険の適用拡大についての報告を受けた後、本題として、後期高齢 者医療のあり方について御議論いただきたいと思います。  それでは、まず、後期高齢者医療制度の準備状況、高額医療・高額介護合算制度の内 容、船員保険法改正案の内容について、一括して事務局より説明を受けたいと思います。 それでは事務局より、資料の説明をお願いいたします。  山本室長 老人医療企画室長でございます。まず、資料1をごらんいただきまして、 後期高齢者医療制度の準備状況について説明をさせていただきます。  1枚おめくりいただきますと、後期高齢者医療制度施行までのスケジュールというの がございます。さらに1枚おめくりいただきますと、平成20年度からの後期高齢者医 療制度の運営の仕組みというのがございます。現在、老人医療費を国民全体で支えてい く仕組みとして、現行では老人保健制度がありますが、医療の給付は市町村が行う一方 で、財源は公費と保険者からの拠出金によりまかなわれているということでございまし て、財政責任の運営が不明確ではないかという問題点が指摘されてきました。また、保 険者からの拠出金について、現役世代と高齢世代の費用負担関係が不明確であるという 問題点が指摘されておりました。  そうした中で、75歳以上の後期高齢者の方々については心身の特性等に応じたサー ビスを提供していく必要があり、現行制度を発展的に継承いたしまして、20年度に独 立した保険制度を創設することが先の医療制度改革で措置されたところでございます。 1つ目に財源構成としては、患者負担を除く給付費について、公費が約5割、現役世代 からの支援金約4割のほか、高齢者から広く薄く、保険料を1割、御負担を願うという ことでございまして、高齢者の保険料と現役世代の負担の明確化を図ることとされてお ります。2つ目は、運営主体は都道府県単位で全市町村が加入する広域連合としており まして、財政運営の責任の明確化を図ることとされた次第でございます。保険料徴収や、 申請の受付けといった窓口業務については、住民情報を持ち、日ごろから住民に接して いる市町村にお願いすることが適当であろうと考えておりますが、一方で財政の安定化 を図る観点から、広域化の必要性があり、こうした形での広域連合という運営主体にな ったわけでございます。  1枚おめくりいただきますと、今後の施行までのスケジュールということになります が、広域連合については、広域的事務を処理するための特別地方公共団体であり、施行 準備のために、法律で18年度末までに設置をしていただくということになっておりま す。設置の段取りについては、各構成団体である市町村の議会において、広域連合規約 を議決していただきまして、それをもとに協議をし、都道府県知事に広域連合設置許可 の申請をしていただきます。そして県知事から設置の許可を受けるということになって おりまして、昨年の12月議会において、おおむね大多数の市町村議会において、この 規約案の議決が行われたところでございます。  その後、設置の状況でございますけれども、4ページにありますように、本日までに 広域連合が設置された都道府県が41都道府県となっております。また、今後年度内に 広域連合が設立される都道府県が6県ということでありまして、関係の自治体の皆様が 大変精力的に準備を進めていただき、法律どおり年度末までに全ての都道府県において 広域連合が設置される見込みとなっております。  これから後の施行準備については、3ページにありますように、今年の11月を目途 に、保険料条例を各広域連合議会で、遅くともこの11月を目途に制定していただく必 要がございます。その準備のため、夏ぐらいから、市町村の住基情報等を活用して、被 保険者台帳をつくっていただく。さらに所得情報を得て、医療費の見込みを立て、保険 料設定の準備作業をしていただくという段取りになるかと考えております。  続きまして5ページからが、保険料の算定基準の案でございます。法律を受けまして、 私どもとしてはこれから保険料算定等についての政省令を定めていくということになっ ておりますが、大きな保険財政運営の枠組みをまず簡単に御説明させていただきたいと 思います。6ページにありますように、全体の医療給付費の中で、いわゆる現役並み所 得の方の医療費を除く部分については、公費が50%入るという形になっております。 従来の老健制度と同じように、国、都道府県、市町村が4対1対1という割合で負担を していくわけですが、国の4のうちの1の部分については調整交付金という形で、一つ には普通調整交付金として広域連合間における被保険者の所得の格差による財政力の不 均衡を是正していくために交付していく部分、さらに特別調整交付金として災害その他 の事情を考慮して交付していく部分、この2つにより交付することで検討しているとこ ろでございます。一方、現役世代からの各保険者からの支援金で40%、残りの部分は 保険料で、被保険者御本人から御負担をお願いしていくことになりますが、ここの保険 料率の決定や保険料の賦課について、財政運営の主体である広域連合が、大きな課題と して取り組んでいくことになるわけです。  さらに、こうした大きな仕組みの中で、広域連合の財政リスクについては、できるだ けの軽減をしていくということで、国と都道府県が共同してその責任を果たしていくこ とになっております。具体的には、高額医療費に対する支援して、高額な医療費が発生 した場合に、国と都道府県で4分の1ほど負担をしあうというような仕組みであります とか、財政安定化基金とありますように、保険料が予定した保険料収納率を下回って生 じた保険料不足といったようなリスクであるとか、給付費の見込み違いによる給付増リ スクについては、都道府県に基金を置いて、国、都道府県が3分の1ずつ拠出しながら、 この基金を活用して貸付等の事業を行っていくことになっております。  それから7ページでございます。そうした中で、今後の保険料の算定基準について、 現時点で考えている内容について御説明したいと思います。後期高齢者医療の保険料財 政運営については、2年単位の運営をしていくということでありまして、おおむね2年 を通じて財政の均衡を保つことができるように設定していくことになっております。賦 課総額は2年ごとに、保険料収納必要額として、「※1」で記載されているように、療 養の給付に要する費用の額から一部負担金を除く額であるとか、入院時食事療養費等の 費用の額、その他の費用の額から公費負担等の収入を控除したものを予定保険料収納率 で除した額として算定していくことになります。  それから8ページでございます。賦課総額については、所得割の総額、いわゆる被保 険者の負担能力に応じた応能保険料分と、被保険者均等割総額という応益保険料分の合 計額を考えておりまして、賦課総額に対する標準的な割合については50対50としたい と考えております。現行の国民健康保険についても、応能と応益の比率を50対50とし ておりまして、現在、後期高齢者の約8割の方々が加入されている国保の基準を参考に、 保険料の算定について検討していきたいと考えております。  各年度における賦課額については、被保険者につき算定した所得割額と被保険者均等 割額の合算額という組み合わせで考えていくこととしておりまして、被保険者の基礎控 除後の総所得金額、これはいわゆる「旧ただし書き方式」と言われておりまして、賦課 ベースとしては最も広いベースでございます。これに所得割率を掛けていく部分が所得 割額、それに加えまして被保険者均等割額というのを足し込んだ額がその賦課額という ことになります。今回の制度は全ての75歳以上の方を被保険者としますので、個人単 位の賦課をし、。さらに個人単位の賦課限度額を設けることを考えております。  次に9ページ、低所得者については、応益保険料部分について、その負担能力に応じ て一定の減額をしていくということでありまして、現在の国民健康保険と同様の軽減基 準である7割軽減、5割軽減、2割軽減を参考に検討していきたいと考えております。 また、後期高齢者医療の被保険者の中には、制度加入の直前までは被用者保険の被扶養 者として、御本人の保険料を負担してこられなかった方がいらっしゃるわけですが、こ れらの方々については激変緩和の観点から、資格取得日の属する月以後、2年を経過す る月までの間に限り、均等割額を2分の1まで減額していくことを考えております。  これらの保険料率については、広域連合の区域にわたり均一の保険料率を設定してい く、つまり所得割の料率と均等割額というものを均一にしていくということを考えてお りますけれども、幾つかの特例として、まず一点目に、離島その他の医療の確保が著し く困難な地域については、この地域単位で不均一保険料率の設定を広域連合の判断で設 けることができるという措置を講じております。この地域をどのように定めていくかで すが、へき地保健医療における無医地区というのを一つの参考として検討を進めている ところでございます。それからもう一つの特例ですが、経過措置として、制度が発足し て6年以内の広域連合条例で定める期間において、1人当たり老人医療給付費がその広 域連合内の平均老人医療給付費に対して20%以上低く乖離している市町村については、 円滑な施行という観点から、不均一保険料率の設定を可能とし、この6年以内の期間の 間に均一保険料まで徐々に引き上げていただくということを考えております。以上のよ うな基準につきまして政令で定め、その基準に従って広域連合が条例を定めて適用して いくということになります。  参考までに、10ページ、後期高齢者医療制度の保険料の粗い推計でございます。こ れは一定の仮定を置いた大変粗い推計でございますけれども、考え方としては、後期高 齢者医療の20年度の給付費推計をベースに試算すると、全国平均で月々6,200円、こ れを応益、応能で半分に割ると、それぞれ3,100円ずつということになります。この数 字は保険料の軽減制度を適用しない場合の平均値でありまして、実際は具体的なケース に応じてこの軽減措置が考慮されていくことになります。幾つかのケースをつけていま すが、例えば単身者世帯で基礎年金のみの収入の方については、応能保険料は課されず、 応益部分については7割軽減が適用されて、月々900円となります。また、自営業者の 子供と同居する親子世帯で、お子さんが年収390万円、親御さんが基礎年金のみという ケースについては応能負担はなし、応益分は3,100円ということで月々3,100円という ことになります。さらに、被用者の子供と同居する親子世帯では、応益分については特 例がなければ3,100円ということですけれど、従来被扶養者として御本人の負担を払っ てこなかった方であり激変緩和措置を講じ、この部分について半分まで減額していく。 このような粗い推計でございます。  保険料については、今後、各広域連合で検討していただくわけですけれど、私どもと しては保険料の設定の参考になるようなものについて、夏までに一定のものをお示しで きればというふうに考えております。説明は以上でございます。  岩渕課長 保険課長でございます。続きまして資料2に基づきまして、高額医療・高 額介護合算制度について、御説明申し上げます。まず、1ページでございます。高額医 療・高額介護合算制度は20年4月から施行することとなっております。現在、医療に ついては高額療養費制度が、また介護については高額介護サービス費制度が設けられて おりまして、それぞれ月単位で自己負担額の上限が設けられているわけですけれど、こ の合算制度は、これに加えてそれぞれの自己負担額、これは高額療養費等の支給を受け てもなお残る実質的な負担額ですけれど、この合計額が著しく高額になる場合に負担を 軽減するという仕組みでございます。合算の限度額は年額で定めまして、基本は後期高 齢者医療制度加入者で一般所得の場合、56万円ということですけれど、年齢区分及び 所得区分に応じて、きめ細かく設定いたします。限度額を超える部分の費用負担につい ては医療保険と介護保険の両方で自己負担額の比率に応じて負担しあうというものでご ざいます。  支給の手続きとしては、下に図をつけておりますけれども、利用される方が、まず介 護保険者である市町村に申請をして介護の自己負担額証明書の交付を受けていただき、 これを添えて医療保険者に申請を行います。医療保険者では、医療・介護の支給額を算 定し、支給額を介護保険者に連絡する。これに基づいて介護保険者及び医療保険者それ ぞれから、この対象者に支給が行われるというものでございます。  次の2ページには、年齢及び所得区分に応じた限度額を掲げています。今後、施行に 向けて関係の政省令等の整備を進めてまいりますけれども、その際には、この制度を利 用される方、それから保険者で事務をやっていただかないといけませんので、保険者に おける手続きや事務的な負担が過大にならないように、よく検討してまいりたいと存じ ます。  続きまして資料3、船員保険法の改正について御説明を申し上げます。1ページをご らんください。この船員保険制度は船員を対象として、健康保険だけではなく、現在、 労災保険、それから雇用保険に相当する部分も含めた、総合保険となっているわけでご ざいます。船員保険特別会計を設けて、国・社会保険庁が制度を運営しております。こ の船員保険制度について、昨年の行革推進法において、特別会計改革の一環として、労 災及び雇用保険に相当する部分を一般の労災、雇用保険制度に統合するということ、そ れから、それ以外の部分については公法人にこれを移管していくということ、こういっ たことを平成22年までを目途に行いまして、船員保険特別会計を労働保険特別会計に 統合するということが、規定されたわけでございます。  これを受けて、保険局におかれた船員保険制度のあり方に関する検討会、それから社 会保険庁におかれた船員保険事業運営懇談会の場において、関係者に議論していただき まして、見直しの検討が進められてまいりましたが、昨年12月に、船員労使を含め、 関係者の意見が一致して、懇談会報告がまとまりました。これに基づきまして、この船 員保険法改正の法案の作業を進めまして、雇用保険法等の一部を改正する法律案という 形で、一括改正の形になるのですけれど、この法案をまとめまして、2月9日に閣議決 定をして国会に提出したところでございます。  2ページをごらんください。内容について、こちらの絵で御説明させていただきたい と思います。左側が現行制度で、先ほど申し上げましたように、職務外の疾病部門、健 康保険部門だけではなくて労災に相当する職務上疾病・年金部門と雇用保険に相当する 失業部門が、現在、入っているわけでございます。これを見直しまして、職務上疾病・ 年金部門と失業部門はそれぞれ一般の労災保険の制度と雇用保険の制度に移管していく ということでございます。船員については業務の性格から手厚い保護が求められており まして、船員独自の給付というものがありますので、この独自給付の部分と職務外疾病 部分をあわせて新たな船員保険制度として存続をしていくということでございます。  また、その運営主体については、全国健康保険協会が実施していきます。全国健康保 険協会は政府管掌健康保険の新たな受け入れ先として予定されているわけですが、こち らにこの新船員保険制度の運営を移管していくということでございます。以上を行いま して、船員保険特別会計は廃止するということでございます。この法案には、そのほか にも、雇用保険法改正に伴う給付の見直しや国庫負担の見直し、あるいは統合を前提に した失業部門の保険料率の引き下げなどが盛り込まれております。統合の施行期日は平 成22年4月としておりますけれども、現在検討中の社会保険庁改革による、社会保険 庁の廃止の期日との関係で、今後、調整を要する場合もございます。説明は以上でござ います。  糠谷部会長 ありがとうございました。それでは、これまでの説明について御質問等 がありましたら、よろしくお願いをいたします。  岩本委員 資料2の高額医療・高額介護合算制度についての意見ですけれど、こうい う制度を設けることの意義は非常に重要であるという認識でおりまして、制度を導入す ること自体については全く反対ではないのですけれど、きょうお示しいただいた資料の 形で導入されていくと、少し懸念される問題があるのではないかということで、ちょっ とお聞きしたいと思います。  資料2の1ページの下のところに、その手続きの流れを示した図があります。これを 見て感じたことですけれど、一旦利用者は介護保険の方に自己負担額証明書というのを 申請して、もらって、それを医療保険の方に提出するという、こういう手間をかけてい る形になっています。世の中にはいろんな手続きがあるわけですが、ここで右と左に示 されている介護保険者、医療保険者というものが、例えば民間であれば同じ会社という ことで、そんなのは会社の中でデータを流してくださいよということで、どうしてこん な手間がかかるのかという不満が、多分、出てくると思うわけです。  医療保険と介護保険は別ですよというふうなことかもしれませんけれど、どちらも、 これは厚生労働省が管掌している社会保険の部門ということですから、もうちょっと連 携をとってはどうかというふうに思います。医療保険と介護保険の側で、それぞれ給付 額は出てきているわけですから、自己負担の方も、そちらの方で計算をして、この制度 が適用されるということになったら、それで自動的に、その人に対して給付が行われる という形で、個人ができるだけ手間をかけないような形にした方がいいのではないかと いうふうに思います。逆にそういう連携がとれないということの理由について、後から 御説明があるかもしれませんけれど、今、医療・介護のサービスの連携ということが重 要な課題になっている中、こんなことも連携がとれないぐらい仲が悪いのかというふう に言われかねませんので、そういった方向の考慮が必要ではないかというふうに思いま す。  この点は、単に手間を省くという、そういう、利用者の若干の利便を図るというだけ ではなくて、もう少し大きな問題があると思うんです。これは非常に複雑な制度だと思 います。きょうの御説明の中でも、次のページには、どういう金額になれば、こういう 合算制度に基づいて払い戻しがあるのかということを判断するのが非常に複雑な制度に なっているわけですけれど、もともと、先ほどの手続きの図のところで、医療保険と介 護保険がそれぞれ自分のデータしか持っていない場合には、合算するとなると、これは 個人の側で合算して、そもそも手を挙げて申請を始めないと話が始まらないというふう に見えるんですけれど、これをもしやろうと思ったら、相当手間がかかるように思いま す。  先ほどの御説明の中でありましたけれど、年間の自己負担額で適用するということに なると、これは1年間通算してみて、その段階で判断して申請していくということにな るんでしょうか。後でまた御説明をいただきたいのですけれど、もしそうなると、医療 ですとレシートを1年分集めてきて、計算して、それで高額医療費の方で払い戻しがあ れば、それを差し引いて計算して、介護を合算して、それで金額を出して、それで先ほ どの複雑な表を見て、自分が当てはまるかということを、世帯の属性を見て、それから どの保険に加入するかというのを全部見て、それで決めて手を挙げていくということに なるわけです。そこまで計算するとなると膨大な手間がかかるわけですし、複雑な計算 ですから、やる前はわからない。だから1日かけて一生懸命計算したら1万円足りなく て、結局、適用されませんでしたということになってしまうと、骨折り損のくたびれも うけということも起こるわけです。  ですから、これを個人に計算させて、個人の側から手を挙げてやりなさいということ は、かなり難しいと思いますし、実際に始めてみると、いろんな不平不満が出るような 制度になるのではないかというふうに思います。そういうことをやるのに、複雑すぎる から、「もういいわ」というふうにあきらめる人も出るということ自体も、これは問題 になってくると思います。こういう制度がせっかくありながら、あまりにも複雑なので、 利用できるはずの人も利用できなくなるということ自体も、問題になると思います。  そうすると、この制度を問題なくやるためには、先ほど申しましたように、医療保険 と介護保険の側で、実際にデータを、どういう形でやるかというのは、また詰めなけれ ばいけないところがあるだろうと思いますけれども、合算をして、保険者の側からきち んと計算をして、適用されるものは漏れなく適用されるというふうに制度設計した方が いいのではないかというふうに感じました。詳細は御説明がなかったので、私の読み違 えもしくは思い違いがあるかもしれませんが、そういうことがあれば訂正していただき たいのですけれど、これを見たところ、もう少し利用者に親切な制度ということを考え るのであれば、そういう、利用者に親切な制度になるためには、もう少し考えなければ いけないことがあるのではないかというふうに思います。  糠谷部会長 事務局、どうぞ。  神田課長 ただいまの御指摘ですけれど、制度としては、介護保険制度と医療保険、 また、後期高齢者医療制度というふうに分かれていますので、それぞれ分担した額を、 それぞれの保険制度から支給するという、制度のたてまえとしては、そういうふうにな っているわけですけれど、多くの方々は、介護保険の給付と医療保険の給付を両方受け ている。多くの方は後期高齢者医療の方が非常に多いかと思いますが、後期高齢者医療 制度については、窓口業務は市町村で行うということになっておりますし、介護保険の 保険者も市町村ということになっておりますので、実行上は1つの申請書を出していた だくことによって、それを同じ市町村の中で、介護保険の給付と突合する。また、実行 上は介護保険の審査支払いは、国保連で行っております。また、後期高齢者医療制度の 審査支払いというのは、支払基金と国保連、どちらとも選択できるわけですが、仮に国 保連ということになれば、給付実績は国保連にどちらもストックされていますので、同 じ市町村の窓口で、1本の申請書で預かって、制度上は給付額を出してくださいという ふうに書いてありますけれど、給付実績データはストックされていますので、それで突 合をしてお支払いをするということで、実務の流れは極力一元化できるようにしていき たいというふうに考えております。  ただ、被用者保険の部分については、どうしても給付実績データが、介護と医療保険 の給付データとで一元化されていませんので、そこについては、どうしても証明書を出 していただくということが出てくるだろうと思いますけれども、実行上は市町村の窓口 に申請をすれば、多くの場合は、いちいち御本人が確認しなくても、給付実績も、給付 実績データと突合することによってお支払いできるという実務を考えております。  岩本委員 あくまでも申請は利用者の側から手を挙げて始めるということになるわけ ですか。  神田課長 この点も給付実績データが1カ所にあれば突合はできますけれど、被用者 とまたがった給付突合というのが、なかなか難しい。例えば健康保険組合の被扶養者の 方の給付実績データと介護保険の給付実績データというのは、現実の問題としてデータ が一元管理されていませんので、その場合はどうしても問題がありますけれど、ただ、 多くの場合は介護保険の給付を受けているということからすると、後期高齢者の方であ ると思いますし、前期高齢者の方であっても多くは国保の被保険者の方の割合が非常に 高いと思いますので、多くの方については給付実績データが一元管理できていれば、先 生がおっしゃるように給付実績データから勧奨するというようなことも可能かと思いま すけれど、その点も含めて検討していきたいというふうに考えております。  糠谷部会長 私も実態がもう一つよくわかりませんけれど、今、岩本先生がおっしゃ ったように、この御時世、確かにそのようなことは、一般的にも持たれるかもしれませ んね。ですから、現実の今の仕組みの中でどうかというのはあろうかと思いますが、御 検討いただければと思います。  唐澤課長 総務課長でございます。全体的な問題意識は、岩本先生のおっしゃること は大変よくわかります。実態的には後期高齢者医療と介護保険に入っている人について は、できるだけ簡便な手続きで、かつ、できれば本人がわざわざ一生懸命調べなくても わかるようにすべきだというふうに考えておりまして、これは実施する方と御相談をし ながらやらなければいけないと思います。  実は今、70歳以上の方の高額療養費というのは、最初の月は御本人に申請していた だきますけれども、それ以降は役場の方で計算をして振り込んでくれているんですね。 本人がいちいち計算しなくていいという仕組みをとっていますので、できるだけ、そう いう簡便な仕組みができるように工夫をしたい。  それから日本全体の仕組みということになりますと、これは実は、私どもも大変大き な問題意識を持っておりますけれども、2つのことが必要であろうというふうに考えて おります。一つは、どこの保険に入っているかということ、個人を認証する仕組みです。 要するに、どこに行ってもその人の負担分と給付額がわかるような認証の仕組みという ものをつくる必要がある。それから、データのやりとりが簡単にできるということ。こ の2つの条件を満たすような方策というのを、これは将来に向かって考えなければいけ ないと思っておりますけれども、問題意識としては、岩本先生のおっしゃることは大変 重要であると考えております。  対馬委員 被用者保険の方ですけれど、被用者保険の本人の方が介護の対象というの は余りないんですね。ただ、被扶養者がやはり対象になってくるというのは十分あり得 ますので、その場合の高額療養費の仕組みというのは、医療の関係の高額療養費だけの 仕組みでも相当、今、複雑になっていて、保険者の方も本当にわかっている方がどれだ けいるかというと、やはりいろんな資料等、手引きをしながらやらないと、なかなか難 しいということがあります。  それで今、厚生労働省の方とも相談しているんですけれど、我々の方も簡便なソフト を開発して、できるだけ迷惑をかけないように努力はしていきたいというふうに思いま すけれど、全体的には、いずれかのタイミングでもって、医療のそういった仕掛け、介 護の仕掛け、それからさらに合算した仕掛けを、もう一回見直す必要があるのかなあと いう気が個人的にはしますけれども、いずれにせよ、余り迷惑をかけないように努力し たいというふうに思います。  齊藤委員 そういう、岩本委員がおっしゃった点や、今、対馬委員のおっしゃった点 もよくわかります。そういう意味でも、ぜひ、こういう社会保障制度におけるICT化 を進めていただいて、余り煩雑にならないで、かつまた、いろんな書類を出さなくても いいような形にしていただきたいというふうに思います。  直接は厚労省の関係ではありませんけれど、今ちょうど、確定申告なんかもICT化 されて、できますよという割には、結果的には、いろんな添付書類をいっぱいつけない といけないから、それだったらいっそのこと、今までどおり紙でやろうかというふうに なっているのが現状だと思いますので、できるだけ早く進めていただけたらと思います ので、よろしくお願いいたします。  古橋委員 資料1の件ですけれど、現在は準備状況ですので、今後一層詰めた検討が なされるのだろうと思いますが、まず総論的に、保険料負担のお話を、いろいろ、減額 のランキングなども含めてお話しいただきましたが、それ以前に、社会保障制度の大き な変革ですので、あえて素人っぽく伺うことになるかと思いますが、保険料負担ができ ない人たちというのは、どのくらい発生するというふうな予想をなさっているのか。  というのは、病院の窓口にいると、さまざまな場面がありまして、保険証がないとか あるとか、資格がなくなっているとか、そういう方が訪れられるという場面も多々あり ます。そういう点では、この後期高齢者医療制度に関して、保険料の負担ができない人 たちの発生予測というのは、どのように御検討になっているのかということと、それに 対してどのような対応があるのかということが一つ。  それから、今出ました資料2に絡みますけれど、私どもも、医療保険と介護保険の一 体的運用というのは国の方からもおっしゃっているんですが、現実はさまざまに込み入 っていて、給付の内容も微妙な差があったりして、非常にわかりにくい。合算制度とい うようなアイデアが具体化しようとしているということは、一般的には大変よいことだ というふうに思うんですが、医療保険と介護保険を一体的に運用していく仕組みを、ほ かに何か御検討になっていることがあるのかどうか、そんなことがありましたら伺いた いと思います。  神田課長 一点目の、保険料が負担できない方の見込みということですけれど、お手 元の資料の10ページ目にありますように、まず、保険料の賦課に当たって、所得の低 い方々については、まず、軽減をするということをしております。ここに書いてあるよ うに、年金の収入が低い方々については、原則として、負担能力に応じた応能割という 負担はないということになっています。なおかつ、原則として頭割りで割りつけられる 応益割という保険料についても、ここにある基礎年金だけで暮らしているような方につ いては7割軽減されるということですので、月額で言うと1,000円に満たない額になる のではないかというのが現在の推計でございます。  したがって、まず一次的には、今申し上げたような、所得の低い方々については保険 料を軽減させていただく。それから、なおかつ、それでも負担できないという場合。例 えば病気になったとか、あるいは自営でおられて事業が失敗したというようなことがあ った場合には、今の国民健康保険でもそうですが、市町村の条例に基づいて、災害その 他特別な事情がある場合には保険料を減免できるという規定があります。これは新しい 後期高齢者医療制度についても同様の仕組みがありますので、賦課した後の事情で、所 得が大きく減少するような場合については、主体は広域連合になりますけれども、そこ が減免をできるということになっております。  その上でも、なおかつ御負担できないような事情があるとすると、これは、実際に保 険料の納付相談をさせていただく中で、生活扶助の基準等を割り込んでいるというよう な実態があれば、そちらの申請の支援をさせていただくというようなことも含めて、こ れは国民健康保険の現場の実態もそうですけれど、そういった総合的な相談をさせてい ただくということになろうかと思っております。  唐澤課長 次に、医療と介護の一体的な提供のお尋ねがありましたので、一言申し上 げます。その前に、保険料の話は、今、国保課長からお話ししたとおりですが、国民健 康保険の実績で言いますと、70歳以上、後期高齢者医療の対象の方の収納率というの は99%以上ということで、ほとんどの方は払っていただいているというのが実情でご ざいます。というのは、御自分がお使いになるので、大変、その辺については理解があ る。むしろ国民健康保険では、若い方に、どうやって理解を求めるかが大変重要な問題 になっているということでございます。  それから医療と介護の一体的な運用・提供については、これは後ほど、まさに御議論 をいただきたいと思っておりまして、後期高齢者の医療部会の方で、医療と介護サービ スの一体的提供ということで、大変大きな柱として御議論をいただいているという状況 でございます。  糠谷部会長 きょうは大変議題が多いため、とりあえず今の説明については、ここで 切らせていただきます。次の議題に移りまして、また後ほど、あわせて御質問等があり ましたら、出していただければと思います。次に、パート労働者への健康保険の適用拡 大について報告を受けたいと思います。まず、事務局より資料の説明をお願いいたしま す。  岩渕課長 資料4をごらんください。健康保険は適用事業主に使用される者に適用さ れるわけですが、短時間働くパート労働者への健康保険の適用について、現在、厚生年 金と同一の基準で一体的に判断をしているところでございます。具体的な基準は、資料 の3ページにつけていますけれど、1日または1週間の所定労働時間、1カ月の所定労 働日数が通常の就労者のおおむね4分の3以上である場合に、健康保険、厚生年金保険 の被保険者として認定しているところでございます。通常の就労者の労働時間が週40 時間としますと、おおむね週30時間程度以上働いている方ということになるわけです。 この現在の基準を、より短時間の労働者にまで拡大していくかどうかというのが、この、 パート労働者への社会保険の適用拡大の問題です。  戻りまして1ページをごらんください。この問題については、厚生年金の適用拡大と いう形での議論が先行してまいりました。1にありますように、平成16年の年金制度 の改正時に、厚生労働省から、パート労働者への厚生年金の適用拡大について、所定労 働時間20時間以上の労働者まで適用を拡大する案が示されたわけですけれど、結果的 に法案には盛り込まれずに、法律の附則において、検討規定が設けられて、施行後の検 討事項とされたという経緯がございます。  2にありますように、昨年になって、再チャレンジ推進会議の報告等において、パー ト労働者への社会保険の適用拡大について検討するという報告がなされました。11月 には、総理から厚生労働大臣に対して、この問題について精力的に意見聴取を行った上 で、来年、つまり今年ということですけれど、通常国会への被用者年金一元化法案の提 出にあわせて、実現できるように調整していただきたいという指示があったわけでござ います。  これを受けまして、現在の状況としては、社会保障審議会の年金部会において、パー ト労働者の厚生年金適用に関するワーキンググループが設置され、本年1月から、関係 団体からのヒアリングが行われまして、現在も検討がされているという状況でございま す。現時点では、適用拡大をどのような形で行うか、具体的な方向はまだ示されており ませんけれども、今後、ワーキンググループとしての取りまとめを行って、年金部会の 方に報告する予定と聞いております。  今後、厚生年金の適用拡大をするという場合に、現在、同一の基準で一体的に判断し ているこの健康保険の適用拡大についてどう考えるかということでございます。これに ついて、年金部会のワーキングにおいて説明を求められまして、次に資料をつけていま すけれど、同じ被用者を対象とした社会保険として、健康保険についても一体的に検討 する必要があるということを御説明したところでございまして、当該ワーキングにおき ましても、関係団体からのヒアリングの際に、健康保険の適用拡大についてもあわせて 聴取が行われているところでございます。  2ページは再チャレンジ支援に関する関係閣僚会合のプランでございますけれども、 パート労働者などの非正規労働者について、社会保険の適用拡大を進めまして、正規・ 非正規労働者間の均衡処遇を目指し、再チャレンジを支援するという観点から論じられ ているところでございます。  4ページをごらんください。これは健康保険と厚生年金で、同一の基準で一体的に判 断していると申し上げましたけれど、仮にこれを切り離すという場合に、どのような問 題が生じるだろうかという観点から整理したものでございます。  1は被用者にかかる社会保険制度としての一体性ということでございます。健康保険 と厚生年金、ともに被用者とその家族の生活の安定と福祉の向上に寄与するということ を目的とするものでありまして、適用の範囲について、制度によって便宜的にその取り 扱いを異にするべきではないのではないか、と。また、両制度の取り扱いを異にする場 合に、パート労働者が厚生年金には加入できるが健康保険には加入できないなどの事態 が生じることになって、パート労働者の理解を得ることが困難ではないか。パート労働 者など非正規労働者と正規労働者間の均衡処遇の確保の観点からも、両制度は同様の運 用とすべきではないか、ということでございます。  それから2は、事業主等の事務の効率性ということでございます。この適用とか保険 料の徴収の実務において、厚生年金と取り扱いを異にする場合、事業主等の事務が煩瑣 にならないかという点でございます。  3点目は、適用拡大にかかる留意点ですけれど、厚生年金とは異なりまして、健康保 険の場合、保険者が多数存在するということですので、適用拡大に伴い、加入者が異な る保険者の間を移動することとなり、加入者の保険料負担や保険者の財政に影響が生じ ることになるわけです。  そこで5ページをごらんください。パート労働者が健康保険に加入した場合の給付と 負担の変化のイメージでございます。保険料負担を見ると、これが増える場合と減る場 合があるわけですけれど、その下の表がパート労働者の報酬月額10万円の場合の試算 でございます。健康保険の保険料については、政管健保で、40歳以上で介護保険の方 も納めていただくという設定で算出していますので、健保組合の場合はこれより安くな ると思いますが、これを見ますと、下の表の左上が、これは健康保険の被扶養者である 方が新たに勤め先で健康保険の被保険者となるというケースですけれど、こういう場合 には保険料の負担が増えるということがあるわけでございます。  一方で、その下の方をごらんいただきますと、パート世帯が中心的な稼ぎ手である世 帯。例えば1人親の家庭、あるいはパート夫婦世帯といったことで、今、国保に入って いらっしゃる方が、適用拡大に伴って、健保の被保険者となるということになりますと、 保険料負担が、こういう場合には減少するということがあるわけでございます。  以上が保険料負担の変化ですけれど、給付の方を見ますと、これは健保の被保険者と なるということですので、どのケースでも同じですけれど、傷病手当金あるいは出産手 当金といった休業補償が、該当する場合には受けられる。それから健保組合の場合は組 合独自の付加給付を受給することが可能となる、などのメリットがあるということでご ざいます。  以上が負担と給付の変化のイメージですけれど、この問題については、先ほど御説明 しましたとおり、被用者にかかる社会保険制度としての一体性、あるいは正規・非正規 労働者間の均衡処遇を目指すという観点からは、健保と厚生年金の適用の範囲について 便宜的に取り扱うことにするということは適当でないということもありまして、基本的 に厚生年金と同様に取り扱っていくということを基本といたしまして、今後、厚生年金 の適用拡大の検討状況を踏まえつつ検討してまいりたいという状況でございます。  糠谷部会長 ありがとうございました。ただいまの説明について、御意見、御質問等 がありましたら、どうぞお願いいたします。  齊藤委員 今御説明いただいた件ですけれど、厚生年金と健康保険を一体的にという のは、賛成ですけれど、そういう意味では、年金の方でいろいろ検討されて、一緒にと いうのはいいと思いますけれど、いま一つわからないのが、パートタイマーの人に、い わゆる社会保険の適用拡大をすると、どうして再チャレンジになるのかが、よくわから ない。労働時間の基準を引き下げることによって、かえって就労機会が減るということ にもなりかねない。いわゆるパートでなくては働けないというような方もおられる。一 方、企業はどういうふうにするかというと、4時間で社会保険料等が必要になるなら、 もうこの際、パートはやめて、いわゆる派遣とか、通常の社員にした方がいいのではな いかとか、いろんなことを考えなくてはいけないというふうに思いますので、一律的に、 要するに、そういう社会保険料をかければ、それでいいんだということではないという ことで、そこは一度、検討いただきたいと思います。  それを避ける一つの方法としては、例えば、今、130万円という年収の基準をもっと 上げていただく。そういうところまで稼げるような方については、ちゃんと社会保険料 等を収めていただくというようなことも、ぜひ一度考えていただけたらというふうに思 います。  それから事業主の立場からしますと、高齢者医療制度の拠出金制度を通じて、負担の 拡大に伴う納得性の欠如ということがある。それから2つ目は、短期間で入退社を繰り 返すパート労働者の資格喪失手続き等の煩雑性。3点目には、介護保険制度の被保険者 範囲が仮に拡大された場合は、それとあわせた事業費負担の一層の増大。こういうふう なことも懸念されますので、こういう懸念も踏まえて、関係業界の意見などをよく聞い て、慎重に検討していただきたいと思います。  糠谷部会長 なぜ再チャレンジになるかというのは、お答えできるかどうかわかりま せんが、今の御質問についてコメントをお願いします。  岩渕課長 なぜ再チャレンジになるかということですが、ここで再チャレンジの観点 から議論される場合には、先ほどの均衡処遇ということにかかわってくるかと思うので すけれど、働き方に中立的な社会保障制度をつくるということで、具体的にどこを適用 の範囲としていくかということによっても変わってくるわけですけれど、何時間働くか によって、社会保障制度の負担で障壁ができることがないようにという観点から、現在、 論じられているものと理解をしているところでございます。  糠谷部会長 後半の方はいかがですか。  岩渕課長 事業者団体のヒアリングが年金部会で実は重ねられておりまして、この中 において、特に健康保険についても質問を入れていただいて、御意見を賜っておりまし て、今、委員からお話があったような意見も伺っているところでございます。いずれに いたしましても、そういった厚生年金の検討状況を踏まえて、今後、よく検討していき たいと存じます。  逢見委員 パートと呼ばれる方は、今、1,200万人ぐらいいると言われていまして、 派遣等の非正規を含めると、大体、3分の1ぐらいがこうした働き方になっている。そ ういう意味では、我が国における大きな働き方の一つになっている。パートの問題とい うのは、今、説明がありましたけれど、正規との所得格差が非常に大きくて、かつ、そ れが固定化してしまっているのではないか。一旦パートで働くと、なかなか正社員にな る道というのもないし、そして低賃金で??それを余儀なくされている、それで生計を 立てなければいけない人たちもいるわけですが、しかしそういう人たちが、なかなか、 それでは生計が立てられないような状況になっている。  そこで再チャレンジということになるんだろうと思いますけれど、今国会でも、パー ト法の改正の中で、均衡処遇を入れるといったことが言われている。ただこれも、努力 義務になる部分がかなり多くて、実際にこれがパート処遇の改善に、どこまで進んでい くかということについては、まだちょっと疑問のところがあります。それから最低賃金 法の改正も、今国会で出ますけれど、じゃあそれで、最低賃金がこれからどんどん上が っていくことになるのかというと、法律だけでは上がっていくことにならないので、そ れはまた底上げ戦略というのを安倍内閣で出していますが、そういうところで議論され ていくんだろうと思います。  そういう処遇の改善ということと相まって、この、適用拡大の議論がされていかない と、低賃金の人に、負担増という部分が先に出てくると、これは何のための再チャレン ジ政策なのかということになりかねないので、基本的には年金部会の議論を待ちつつ、 適用拡大を進めていく。この方向は、そういうことだろうと思いますが、ただ、今申し ましたように、最低賃金の引き上げとか、あるいは均等待遇、均衡処遇が具体的に進ん でいくということと相まって、これが行われていくべきであるということをお願いして おきたいと思います。  糠谷部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。  それでは次に、本日の本題でございますけれども、後期高齢者医療のあり方について、 議論を行いたいと思います。後期高齢者医療のあり方については、後期高齢者医療のあ り方に関する特別部会が設置されており、議論が行われているところでございます。  まず事務局より、本部会と特別部会の関係について説明していただき、その後で後期 高齢者医療のあり方に関する検討のたたき台についての説明をお願いします。それでは 事務局、よろしくお願いします。  唐澤課長 お手元の資料5?1、「後期高齢者医療のあり方に関する特別部会につい て」という資料をごらんいただきたいと思います。1ページが、この特別部会の設置の 趣旨と委員の皆様でございます。1のところにあるように、後期高齢者医療制度が新た に独立した制度として創設されることになりました。このために、この制度の創設に当 たって、その心身の特性等にふさわしい医療が提供できるような、新たな診療報酬体系 を構築することを目的として、後期高齢者医療のあり方を審議するために、この特別部 会が設置されたところでございます。委員は糠谷部会長以下、合計9名の委員、ここに ごらんのような皆様でございます。  次のページをごらんください。これまでの開催の経過について、まず御報告をいたし まして、その後に、本医療保険部会との関係についてお話し申し上げます。まず、昨年 の10月5日に設置をされまして、第1回が開催されました。10月25日、11月6日、 11月20日、12月12日と、それぞれ開催いたしまして、学識経験者、あるいは現場で さまざまな高齢者の医療を御専門とされている先生方より、ヒアリングを行い、あわせ て討議を行ったところでございます。ごらんのように、10月25日には本間、伴、太田 の3人の先生、11月6日には桑田、秋山、片山、それぞれ3人の先生方、11月20日は 米山、林、岩月、川島、山口の計5人の先生方、12月12日には町野、田村、川越の3 人の先生方からヒアリングを実施しました。  3ページをごらんください。このヒアリングと、それに関する討議を踏まえまして、 年が明けた今年の2月5日に、第6回の部会を開催いたしまして、基本的考え方の取り まとめに向けて、フリーディスカッションをしたところでございます。詳しい内容につ いては後ほど医療課長よりお話し申し上げます。今後、3月末を目処に、この後期高齢 者医療のあり方に関する基本的な考え方の取りまとめを、この特別部会でしていただく 予定にしております。これは医療制度改革法案の国会の審議の際の、参議院の付帯決議 におきまして、後期高齢者医療のあり方に関する基本的考え方を、年度内、この18年 度内に取りまとめて、それを公表すべきだという御指摘をいただいておりますので、そ れに沿って、基本的考え方を取りまとめていただきたいと考えております。  その取りまとめの前に、本医療保険部会、それから医療供給体制を主に御議論いただ いております医療部会におきましても、この後期高齢者医療の特別部会の状況を踏まえ て御議論を、一度お願いをしたいと考えております。この後、基本的考え方に対するパ ブリックコメントを、厚生労働省として実施いたしまして、春から夏にかけては、さら に特別部会において、今度は、後期高齢者の新たな診療報酬体系の骨格の取りまとめに 向けた御議論をお願いしたいと考えております。さらに、この骨格の御議論におきまし ても、本医療保険部会及び医療部会において御議論をいただき、特別部会でのその取り まとめに進んでいきたいと考えているところでございます。  そこで、おさらいのようで恐縮ですけれど、診療報酬の改定に関する基本的なそれぞ れの役割について、改めて申し述べさせていただきたいと思いますが、前回の診療報酬 改定以降、それぞれの役割として3者に分担をされております。まず改定率については、 これは内閣が決めるということになっております。それから診療報酬改定の基本方針に ついては、これは当医療保険部会でお決めをいただくということになっております。こ の基本方針に沿って、中医協で具体的な項目と点数を御議論いただく。こういう役割に なっておりますので、この次回の改定につきましては、通常の改定に加えて、この後期 高齢者の診療報酬という新しいものが入ってくるわけでありまして、こうした骨格を踏 まえて、今後、この4ページにあります夏以降でございますけれども、新たな診療報酬 体系の骨格に向けた議論、そして、それも踏まえた全体としての平成20年度診療報酬 改定の基本方針の取りまとめに向けた御議論を、当部会においてお願いしたいというふ うに考えているところでございます。  なお、それとは別ですが、この3月の下旬にもう一度、今、日程の調整をお願いして おりますけれども、医療保険部会を開催させていただきまして、医療費適正化の基本方 針、全国医療費適正化計画??これはそれぞれ国が策定をいたしまして、それに基づい て47の都道府県で、この計画を策定していただくということが法律で決まっているわ けですけれども、それぞれの案等について、当部会で御議論をいただきたいと考えてお ります。  原課長 続きまして、資料5?2に基づいて、後期高齢者医療のあり方に関する特別 部会で議論されたこと、また、中間的な検討のたたき台について御説明をしたいと思い ます。なお、この資料5?2には、別途、参考資料1?3と、3部つけてございます。 参考資料1は、この検討のたたき台を検討していただきました、2月6日の、第6回の 特別部会での議論のまとめでございます。参考資料2は、ヒアリングを行った際に有識 者からいただいた資料を系統的にまとめたものでございます。参考資料3は、その際、 特別部会で行われた有識者のヒアリングにおける主な意見を系統的にまとめたものでご ざいます。参考資料の方は後ほどごらんいただきたいと思います。  それでは、資料5?2の、検討のたたき台でございますが、1枚めくっていただきま して、これが第6回の特別部会において検討のたたき台としてお示しした資料の表紙で ございます。「後期高齢者医療のあり方について」というタイトルに続いて、「後期高齢 者の心身の特性にふさわしい医療のあり方をどのように考えるか」という副題をつけさ せていただきました。3月中に、この基本的な考え方をまとめようとしているわけです けれども、その際に、最終的には診療報酬、支払いをどのような形にするかという方向 も考えるわけですが、その前に、まず医療のあり方についてまとめていこうというのが、 この検討のたたき台の趣旨でございます。  中身に入りまして1ページをごらんください。まず、後期高齢者の心身の特性ですが、 これはさまざまな御意見がありましたが、大くくりにくくりますと、老化に伴う生理的 機能の低下によって治療が長期化する、また、特に慢性疾患などを中心として、複数の 疾患へ罹患する方が多く見られる。もちろん若い方にも多いわけですけれど、この後期 高齢者には特にやはりこういう傾向が見られるということでございました。  それから、多くの高齢者に、症状の軽重は別として、認知症の問題が見られる。ヒア リングの際には、7割以上の方に、軽症でも見られるという御報告もありました。これ は一方でやはり、通常の医療と別の特性として、この認知症をどう考えるかということ が必要になってくるだろう、と。  それから3番目ですが、後期高齢者は75歳以上ですので、終生ということになりま すと、必ずこの保険制度の中で、いずれ避けることができない死を迎えられるわけです ので、その医療をどうするかということも考える必要がある。心身の特性については、 このようにまとめております。  また、このような方々に対して、どのような視点で医療を見るべきかという、基本的 な視点ですが、まず1番目には、後期高齢者の生活の中での医療。治療が長期化する、 あるいは慢性疾患である、このような方々については、当然ながら、その方々の生活と いうものを考える必要がありますので、その生活の中で医療がどのような形でかかわる か、そのような医療はどうあるべきか、そのような視点が必要ではないかということで ございます。  それから、特にターミナルケアにもかかわりますけれども、尊厳に配慮した医療。75 歳以上の、長い人生を歩んでこられた方々の医療に対しては、やはり、その人らしさを 大事にした医療という視点も必要ではないかということでございます。  また、受ける方々、後期高齢者が安心できる医療。このような視点も必要であるとい う御指摘を受けております。また、意見としては、この「安心」と、さらに、納得でき るということが必要ではないかという、複数の意見もございました。  次のページをごらんください。心身の特性とも重なる部分がありますが、課題はたく さんあるわけですけれど、ここでは5点に絞ってまとめております。先ほどの特性でも ありましたけれど、複数の疾患を併有している。あわせて心のケアも必要となっている のではないか、と。長期にわたる療養生活ということも念頭に置くと、心のケアも重要 であろうという指摘がありました。  それから、慢性的な疾患のために、その人の生活にあわせた療養を考える必要がある。 その視点として、もちろん若い人たちの急性疾患などにつきましては、疾患の治療、あ るいはその方々の治癒を目的とした治療というものが主となるかもしれませんが、特に 後期高齢者の場合、長期にわたる場合はその生活というものの中での療養というものも 考える必要があるのではないかということでございます。  それから、複数医療機関を頻回受診する傾向があって、検査や投薬が多数に、あるい は重複する場合も多くあるという御指摘がございました。  それから、長期間の療養となりますと、もちろん施設ということもありますが、在宅 等の療養も必要になりますので、その際には地域における療養を行えるよう、弱体化し ている家族や地域の介護力へのサポート体制についても考えておく必要があるという御 指摘でございました。  それから、患者自身が正しく理解をして自分の治療法を選択することの重要性が高い。 どうしても、先ほどの認知症の問題とも、必ずしも絡むわけではありませんが、患者御 自身が正しく理解をしていただくということが、まず大事である。さらに、その治療法 を十分理解して選択していただけるようなサポートも必要であろう、と。このあたりは、 ターミナルケアについても、あるいは通常の医療においても、重要性が高いのではない かという指摘でございました。  次のページをごらんください。後期高齢者にふさわしい医療の体系ということで、こ こでは大くくりに4つにまとめてございます。もちろん、ヒアリングの中でもさまざま な御意見がありましたが、ここでは大きく4つにくくりました。1番目ですが、急性期 医療にあっても、治療後の生活を見越した、高齢者の評価とマネジメントが必要である。 急性期医療本体について、治療内容として、75歳未満の方々の医療そのものと大きく 変わることはないとは思いますけれども、ただ、治療法の選択として、その方々が将来 どのような生活を送られるのか、そのような視点も入れた治療法の選択もあるのではな いかという御意見もありまして、このような形の一つの視点を入れております。ここで CGA、あるいはGEMsと書いてあるのは、下の方に注がありますように、高齢者の 総合評価、あるいは高齢者評価とマネジメントプログラムという形で御紹介がありまし たが、病気そのものだけではなくて、その方々のさまざまな状況も含めた評価、マネジ メントの中で、治療法の選択をしていく、そのような御指摘があったところでございま す。  2番目に、特に長期にわたる療養ということを考えますと、在宅あるいは介護保険で の居住系の施設等を重視した医療というものが重要ではないか、と。ここでは、そのた めには、かかりつけ医による訪問診療や訪問看護、あるいは特に口腔ケアが重要である という御指摘もあり、訪問による口腔ケア、あるいは多数の薬を飲んでおられるという 状況からいって、訪問による薬剤の服用指導等々が重要になってくるだろう、と。  それから複数の疾病も、多々、持っておられる方もあり、医療機関の急性期から慢性 期にわたる、それぞれの機能特性がありますので、それに応じた医療連携を、その地域 の中で考えていただく必要がある。それから、複数疾患を抱える後期高齢者を総合的に 診る医師を養成していく必要があるだろう、と。これはもちろん、その複数疾患の全部 を、その1人のお医者さんが治療できるというわけではないでしょうけれど、それを総 合的に診る、マネジメントして、必要な場合に必要なところに紹介するなどの機能を持 ったお医者さんが必要ではないかということでございます。  それから、心身の特性の2番目にもありましたが、安らかな終末期を迎えるための医 療ということで、ここでは、一つは十分に理解した上での患者の自己決定の重視という ことでございます。もちろん、先ほどの課題にもありましたが、その理解を助ける体制 は当然必要ですし、その上での自己決定の重視ということも必要ではないか、と。それ から、これは安心の医療ともつながるわけですけれど、どうしても、特にがんなどは疼 痛の問題が出てまいりますので、十分な疼痛緩和ケアが受けられる体制というものを、 在宅なり施設なりも含めて考えていく必要があるということでございます。  それから4番目ですが、これは先ほどの御指摘にもありましたが、介護保険のサービ スと連携のとれた一体的なサービスの提供。例えば在宅でおられる患者さんにかかわる 医療関係の職種の方々、医師や、あるいは訪問看護師の方々、そのほかにも当然ながら 介護サービスとしてのヘルパーの方や、あるいはケアマネジャーの方等々がありますの で、そういう方々がミーティングをするなり、そういう形での一体的なサービス提供も 考える必要があるのではないか、というような視点でもつくっていきたいと考えている ところでございます。資料の説明は以上でございます。  糠谷部会長 ありがとうございました。それではこれから、後期高齢者医療のあり方 についての御意見、御質問等を伺いたいと思います。本日御欠席の河内山委員からは、 御意見を文書でいただいております。お手元に配布してありますので、御参照いただけ ればと思います。また、本日御出席の委員の方のうち、6名の方かと思いますが、資料 を御用意いただいております。これらの方には、ぜひ御説明をお願いしたいと存じます。 本日は4時までの予定ですが、多少、4時を回ってもよろしいかとは思います。ただし 時間も限られておりますので、できるだけポイントを絞った御説明をお願いできればと 思います。それでは、どなたからでも結構でございます、どうぞお願いいたします。  鈴木委員 後期高齢者医療制度について、日本医師会の考え方を御説明させていただ きます。まず、現在の医療を取りまく環境を、改めて御認識いただきたいと思いますが、 過去3回の診療報酬改定の結果でございます。御承知のとおりでございまして、医療機 関は医療の質の向上を図り、安全性を確保していくことが非常に困難になっております。 また、骨太方針には、2006年からの5年間で社会保障費の1兆1,000億円を削減とい う方針が明記されておりますけれども、来年4月の診療報酬改定に配慮をされなければ、 全国の地域医療は完全に崩壊すると思っております。  次に2ページをごらんください。今、お話を伺いました、後期高齢者医療制度の御説 明を含めた、医療制度に対する我々の意見というのは、第1に、適正化という名の医療 費抑制が前面に打ち出されている。次に予想される、格差への配慮というのものが欠落 しているのではないか。後期高齢者の心身の特性は十分に配慮されているか。また、高 齢者の独居や老々世帯の激増をどこまで考えられているのか。お話にも出ましたけれど、 認知症を持つ高齢者の自己決定権というのは非常に困難であるという認識が少なくない だろうか。そして、終末期医療の選択肢が限定的である。こういった危惧を抱いており ます。セーフティーネットとしての、揺るぎのない基盤構築というものを望むものであ りまして、たたき台に御検討を重ねていただきまして、国民の危惧を払拭していただき たいというふうに考えます。  次のページでございます。まず、日本医師会は基本的な方向性として、2008年度を 制度創設の第一ステージと位置づけて、拙速を避け、後期高齢者医療の激変による混乱 を招かないこと、地域や個人の間の格差を是正すること、後期高齢者に必要な医療と介 護を一体的に提供すること、これは考え方は変わりませんけれども、私どもは医療と介 護の棲み分けを十分にした上で、一体的に提供をということを考えております。制度の 完成を、介護報酬との同時改定が予定されている、次回の2012年を目安にして、十分 な議論が尽くされることを主張したいと思います。また、日本医師会では今年1月に、 「在宅における医療・介護の提供体制?「かかりつけ医機能」の充実?指針」を公表し ております。最後にとじ込んでいますので、後ほどごらんいただきたいと思います。  次のページでございます。まず第1に、ハイリスク群である75歳以上を対象に、保 険というよりも保障の原理で運営すること。第2に、そのために財源構成のうち公費、 特に国庫負担割合を段階的に引き上げていただけないか。第3に、高齢者自身の保険料 は応能負担とし、一部負担金は一律にするということを提案いたします。さらに格差を 生じさせる地域ごとの特例診療報酬の設定は避けるべきでありまして、診療報酬につい ては急性期と慢性期の急性憎悪は出来高払い。また、「後期高齢者=在宅医療」という きらいのある限定された議論から脱却すべきと考えております。具体的には、現在の病 床数をある程度維持し、同時に在宅、居宅環境の整備を進めることを強く求めたいと思 います。また、終末期の医療については、多様な看取りを認め、多くの選択肢が後期高 齢者に提供されるべきだというふうに考えております。  次に5ページをごらんください。75歳以上では疾病の発症率、受療率、医療費が急 速に高まるため、先ほど申したように、保険原理は機能しにくくなります。そこで公費 負担を給付費ではなく医療費の9割に引き上げることを提案したいと思います。  次のページをごらんください。これまでの老人保健法では、法改正によって公費負担 の割合を給付費の50%まで引き上げてまいりました。医療費ベースで見ると27%から 45%への引き上げですが、これを段階的に引き上げるという考え方であります。  次のページをごらんください。ハイリスク群である後期高齢者の医療は、保険という よりも保障と考えます。一般の若人は保険ですので、公費の投入は行わず、後期高齢者 への公費負担8割を実現します。これと同時に、一般からの後期高齢者支援金は廃止し なければなりませんが、2006年度予算で見ると、一般と後期高齢者??現在は老人保 健となりますが、あわせて公費が10兆円投入されており、後期高齢者に公費を集中的 に投入しても公費負担は10兆円ということになります。  次のページをごらんください。終末期における診療報酬のあり方の考え方をお示しい たします。基本的には「急性期」と「慢性期の急性憎悪」は出来高払いという原則で、 多様な看取りの形を提供するための診療報酬の体系が求められます。個々の病態を考慮 しない画一的な設定は絶対に避け、論理的に構築されていなければならないというふう に考えます。  次のページのグラフをごらんいただきたいと思います。75歳以上の人口に占める単 身者比率は、1995年の12.8%から2005年の17%に上昇しておりますし、9.7%であっ た75歳以上の老々世帯も2005年には16.3%、あわせて33%以上になっております。 在宅で医療を受けたり看取られることが困難な高齢者が急増することも考慮し、十分な 選択ができるように制度設計がされるべきと考えます。  次のページでございます。日本医師会は中医協で医療難民と介護難民の問題を指摘し てまいりましたが、高齢者人口の増加に伴って、医療療養病床などの慢性期病床の必要 性はますます高まってまいります。現在の高齢化率のもとでの推計のグラフですけれど、 必要慢性期病床数は2015年で44万床、2025年には52万床という計算ができます。し たがって、後期高齢者は在宅医療という限定された議論ではなく、後期高齢者における 施設、老々介護とか独居ということを十分に考えられた制度設計がなされるべきであり ます。  次のページをごらんください。日本医師会は、終末期医療の基本理念として、第一に 御本人・家族の意思を尊重すること、医療提供者の倫理に基づく最善の医療を逸脱しな いということ、そして御本人・家族が希望する多様な看取りの形を提供することの3つ を掲げたいと思います。  最後のページはだぶりますので割愛させていただきます。  糠谷部会長 ありがとうございました。ただいまの御説明に対する御意見、御質問も あろうかと思いますが、よろしければ、資料をお出しいただいている方からの御説明を、 まず一通り伺ってから、皆様の御意見、御質問を伺うこととさせていただければと思い ます。恐縮ですが、時間の都合もありますので4?5分程度でやっていただければと思 います。お配りいただいている資料の順番といいますか、私の手元にある順番で恐縮で すが、次に、歯科医師会の渡辺委員からお願いいたします。  渡辺委員 歯科の立場で意見を申し上げたいと思います。この、後期高齢者の医療制 度の特性は、特に、心身の特性に応じた、それに特化したという医療であろうと考えま す。特に在宅医療を重視した点が、その特化された部分であろうかと思いますが、逆に またそれを裏返しますと、いかに、より健康な高齢者を多くしていくか、そこに逆の意 味があろうかと思いますし、また、目的もあろうかと考えております。そういう意味で、 歯科としてどう貢献できるかということを中心に述べたいと思います。  そういう話からしますと、私たちは、この一つの目的として、健康寿命を伸ばしてい こうという考えでございます。御存じのように、日本の男女の平均寿命は82歳ですが、 健康寿命は76歳と、そのギャップがございます。私たち歯科医療の役割としては、高 齢の方々のお口の機能を回復させ、それをしっかりと管理することによって、その健康 寿命を延長しようということでございます。  結果的には8020という、その目標を達成した高齢者を多くしていくということが、 一つの目標でございます。御存じのように80歳で20本以上お持ちの方は、生活のQO L、ADLの面でも非常に高い水準を保っております。これはまた資料を見ていただき たいと思います。また、8020達成者は一般医療費においても非常に少ない、同じ疾病 群の中でも少ないという結果が出てきております。これも資料をお目通しいただきたい と存じます。  さて、歯科医療で私たちが総合的に考えているのは、決して高齢者医療に限定するも のではありませんが、お口の機能を食と会話、食べることと話すこと、人間の根源にか かわる、これを支える医療であろうと考えているものでございます。特に高齢者の方の、 歯科的に見た特性を見ますと、歯を失うとお口の中の衛生状態は非常に悪くなります。 口腔の機能が落ちてまいります。これに対して入れ歯をしっかりと入れて、治療をし、 整備し、調整をし、さらに訓練をして、御本人の御努力も必要ですが、しっかりとリハ ビリをしていく中で、この機能を回復する。口腔機能の維持・管理を専門的にさせてい ただくことによって、それをフルに活用すれば、その年齢に応じながらもしっかりとお 口の働きを保つことができると思います。これは外来に来られる方においても、また在 宅の方においても、当然、必要なことでございます。その結果として、よく食べられる、 よくお話しできるということが回復するわけでございます。  ここで若干、専門的な目で、皆さんがいつも当たり前のように感じている、食べると いうことは何かというのを、ちょっとお話ししたいと思います。まず、食べるときは目 でものを見て、そのにおいをかぎながら、そしてお口の中へ持っていって、しっかりと 咀嚼する。だ液を出す、そして味わう、そして飲み込むという、この一連の流れの中に、 食べるということがあるわけです。これは御存じの皆様方も多いと思うのですが、大脳 から出てくる12本種類の脳神経と申しますか、このうちの4つが機能しないと、これ ができません。また、見るということとか、においをかぐということも入れますと、さ らに2つ増えますし、食感を音で聞き取るということを入れると7つの脳神経が働く。 12のうちの7つの脳神経が働くということによって、食べるということが、心地よく、 楽しく、おいしく食べられるというものでありまして、食事中には脳の血流は25%以 上も増えるというデータもございます。  私たちは、食べることは生きること、生活することの根源であると思っております。 そういう意味で、入院の方々にも、特に介護を受けている方々にとっても、これは非常 に重要なことだろうと感じております。そこで訪問診療の重要性が増すわけでございま す。私たちも努力いたしますが、制度的にもその支援が必要であろうかと考えておりま す。  また、訪問して私たちが歯科診療をする上で難しい点が、大きく分けて3点ございま す。1つは、治療の上では、全身にいろいろな疾患を持った方々ですから、大変リスク の高い中で診療を行う。また、大きな機械を持ち込んで診療しなければならない。難し い状況の中で治療をするということでございます。そしてまた、その治療が終わった後 は、不可欠的なこととして、しっかりと口腔管理を続けることが重要です。また2点目 には、これは当然ですが、かかりつけ医の先生方を初め、介護関連の方々との連携が必 要な点です。また3点目には、これは私たちの反省でもありますが、高齢者にとって重 要なこの歯科の診療への取り組み、また、高齢者からの受信の訴えが少なく、受診をさ れる方が非常に少ない状態でございます。そういう意味においては、これから、この制 度の中でも、健診と診断を適正に行って、その重要性を訴え、受診される方が多くなり、 そして我々がしっかり診療を提供できることが必要であろうと思います。  また、解決のもう一つには、かかりつけ歯科医機能を十分に支援する、評価する、そ うした意味で、地域歯科医療センターといったようなもの、またさらに総合的な地域連 携センター、これは医科、介護の方、あるいは諸々の看護等の方々との連携がございま すが、そのセンターの確立が不可欠であろうというふうに考えております。  最後になりますが、私たちも努力いたしますが、どうぞ高齢者の方々も、しっかりと 口腔の機能を回復して、よりよい人生を長く、少しでも生きられることは、この制度の 大きな一つの目的に合うのではないかと考えております。看取りに至るまでの歯科医療 を目指してまいりたいと考えております。  以上で歯科からの発言を終わらせていただきます。  糠谷部会長 ありがとうございました。それでは薬剤師会の山本委員、お願いをいた します。  山本(信)委員 日本薬剤師会の目から見た、高齢者医療制度に関する意見を申し述 べたいと存じます。私どもは薬を扱う者でありますので、焦点は薬という観点で整理を してみました。  高齢者医療制度が議論になるときに、よく起きるのは、いわゆる、薬が使われすぎて いるのではないかという議論があります。お手元にお配りした資料の3ページをごらん ください。先ほど事務局からの説明にもありましたように、傷病数の増加と医薬品の種 類数とをプロットしてみた図が、その3ページの図です。0?64歳、65?74歳の前期 高齢者、さらに75歳以上の後期高齢者というふうに分けてみますと、疾病数が増加す るに伴って医薬品の数が増えていくという傾向が見て取れます。しかも疾病数で、1疾 病当たりの医薬品というのを整理してみると、むしろ高齢者の方がやや少な目であって 若人の方が多いという傾向が出ていますので、必ずしも、我が国の高齢者の方々が薬を たくさん飲んでいるというのではなく、いわゆる疾病の増加に伴って薬が増えていくと いう傾向があるのではないかというふうに考えております。  また、4ページの図ですが、他国に比べて高齢者の薬の使用額が大変多いという指摘 がよくされています。製薬協にお手伝いいただいてつくった資料ですが、イギリス、ド イツ、アメリカ、それに日本の医療費をそれぞれ比べてみました。縦に比べると、為替 相場等が変わるので、必ずしも正確な比較にはなりませんが、各国間を横に見て、高齢 者あるいは高齢者以外、全体というふうに比較してみると、どこの国を見ても、それぞ れ額に違いはありますが、高齢者と高齢者以外の間の比率は1対3程度、全体の合計か ら見ても、ほぼ4倍程度を使っているという傾向がありますので、特段に我が国が医薬 品を使いすぎているという傾向があるわけではありません。したがって、現在言われて いるように、薬に特化して議論がされますけれども、このあたりは十分に御検討願いた いと存じます。しかも薬が増えていくことによって、冒頭、説明がありましたように、 最初のページに示した高齢者の特性等を考えますと、やはり認知症等の問題が出てきて、 薬が増える、したがって、うまく薬の識別ができないということもあります。  その結果、7ページにあるように、薬の飲み忘れが大変増えてくる。例えば3種類の 薬を服用しなければならない患者を考えると、ほぼ半数の方々で何らかの飲み忘れが起 きているということですので、あるいは全体として6種類というようなことになります と、かなりの飲み残しが出てくるという傾向が出ます。しかも生理機能が落ちてまいり ますので、当然、副作用等にも十分な注意を払わなくてはなりません。こうした高齢者 の特性を十分に踏まえた上で、今後考えられるのは、後期高齢者に対しては入院、ある いはそれ以外と考えますと、入院での薬剤師の役割、あるいは入院以外であれば外来あ るいは在宅というところでの薬剤師の役割というものも当然考えなくてはならないとい うふうに私どもは理解をしております。  8ページでございます。こちらは、全体を病院というふうに考えていただけばよろし いかと思いますが、病院の薬剤師については、例えば外来に来る患者さん方に、医師の 方々が処方をされる。そのときに、お薬が患者さんに渡る前に十分にチェックをして、 未然に、患者さんに害の作用が起きないような、悪い作用が出ないような情報提供、あ るいは処方時の相談に応じるという作業をしております。加えて、薬剤師が病棟を巡回 することによって、患者さんのそばまで、ベッドサイドまで近づいて、その方々の状況 について一つ一つ把握しながら、あるいは副作用が起きているのではないか、あるいは 副作用の兆候があるのではないかといったようなことを十分にチェックしながら他の医 療職と協力しながら仕事をしている。こうした、きめの細かな業務を薬剤師の役割とし て実施しております。その結果が9ページのグラフであります。10代から100歳まで、 大変な御高齢までを含めて、病院の薬剤師が副作用を未然に防いだ、あるいは重篤化す ることを防いだというグラフですが、やはり高齢になるにしたがって、未然回避であっ たり、あるいは重篤化回避といった事例が増えています。  一方、外来にまいりますと、入院とは違って、むしろその医療機関の中での各医療職 種の連携とはまた別に、地域の中では医療機関あるいは施設同士の連携というものが必 要になってまいります。資料の10ページですが、この例は重複投薬あるいは相互作用 という例を挙げております。複数の疾病を持つ結果、病院とは違って地域では複数の診 療科に受診する。その結果、たまたまこの例は、この患者さんは1つの薬局に処方せん をお持ちになり、投薬されていたために、上の方の表であれば、この網掛けの部分です が、スミルスチックという、同じお薬が同時に投薬される、あるいは似たような胃の薬 が出ていることが発見された事例です。これは、もし複数の薬局で調剤されていると、 ある意味では無駄になりますし、たくさん飲んでしまえば危険でもあるということであ ります。  一方、下の相互作用の欄ですが、たまたまパリエットという胃のお薬を飲みながら、 エリスロシンという抗生剤、あるいはイトリゾールという抗菌剤が同時に処方された。 これは同時に飲みますと、患者さんにとって大変に害のある作用が起きるものでありま して、こうしたものも未然に防げるということになりますと、やはり、ふだんからなじ みの薬局といいますか、行きつけの薬局を決めて、そこで服薬状況を一元的に管理した り、患者さん個人個人の状況に合わせた、きめの細かな対応をとれる、私どもが申し上 げております、かかりつけ薬局というものが十分に整備される必要があるのではないか、 そうした体制がとれるような仕組みが必要だろうというふうに考えております。  11ページは、一方、在宅であります。こちらの場合には、患者さんが御自分の意思 とはまた別に、御自分で通いたくても、なかなか薬局に行けないというケースがありま す。こうした方々が、今でも増えていますし、今回のこの部会もそうですが、全体の方 向が在宅の医療を充実させようということからしますと、在宅についても薬剤をどう管 理していくかということが大きな問題になります。たまたま、この11ページ、12ペー ジ、13ページの写真は、当初、介護ヘルパーの方々が十分に入って、介護は十分であ りましたけれども、医薬品に関しては御自分で管理される、あるいは他の方々がさまざ まに管理をされていましたが、何しろ7種類と4種類、都合11種類のお薬を飲んでお りまして、なかなか十分に整理ができないということで、次のページをごらんになりま すと、かなり雑多にベッドサイドに載っていました。そうしたものを薬剤師が介入する ことによって、13ページにあるように、73日分ものお薬を、必要なお薬を整理しつつ、 余ったお薬を整理しながら、一包化をする、あるいはカレンダーにして、飲み忘れがな いような作業が不可欠となります。こういった在宅の中では、薬に限らず薬事法関連の ものは、やはり薬剤師がきちんと管理すべきというふうに私どもは考えております。  一方、在宅の中でも、先ほどの事務局の御説明にありました、末期あるいは終末期で すが、この場合には当然のことながら麻薬の管理ということで、医療用の麻薬をどう管 理していくかということが大変大きな問題であります。麻薬の管理はなかなか容易では ありません。もちろん扱い方も難しいですし、その後の処理も含めて大変なことですの で、そうした麻薬の管理をする体制を組む、あるいは在宅での高カロリー輸液、あるい は中心静脈栄養等の、そうした準備ができる薬局の整備といったようなことも、私ども の責任でもありますし、もっと言えば、こうして今申し上げたようなことが、十分に、 地域の方々にとって、サービスが受けられるように、夜間あるいは休日といったような ときにも、その十分な供給体制がとれるような薬局の準備をするということが、薬剤師 会あるいは薬局に、今、課せられた義務だというふうに考えております。  私どもは、今後つくられる高齢者医療制度というものについては、今申し上げたよう なことが十分に担保できるような仕組みとしていただきたいのが一点でございます。も う一点は、薬を使うことについては、大変問題があるというふうな指摘がありますが、 高齢の方々にとって、薬物治療というものは、まさに医療の中の手段でありますので、 そうしたお薬が、高齢者だからといって、必要なだけ供給されないということがないよ うなシステムに、ぜひ、していただきたいということでございます。そういったことか ら言えば、できれば現在のような出来高払いがよろしいかと思いますけれども、仮に、 さまざまな方法が考えられるにしても、経済だけが優先されて、薬までも包括されたよ うな、十分な薬が届かないような仕組みだけには、していただきたくないというふうに 考えております。  最後の14ページをごらんください。全体の人口の1割を占める御高齢の方に関する 薬物治療も大切ですが、それ以外の方々にも、当然、私どもとしては医薬品の供給をし、 提供をしてまいるわけでありますから、そうした体制が崩れてしまっては大変困るとい うことでありまして、今後、高齢者医療とあわせて、通常の診療報酬あるいは調剤報酬 の議論がされると伺っておりますので、そうした中にあって、保険薬局の収支状況をお 示ししておきました。平成12年以降、私どもだけではありませんが、診療報酬はすべ てマイナスですので、もともと経済基盤が脆弱である薬局が、これ以上のマイナスにな りますと、むしろ健全な医薬品提供体制を構築し支えきれないということがありますの で、今後の議論の中で、高齢者医療についても当然でありますが、ぜひ、そうした面へ のご配慮も含め御検討願いたいというのが私どもの意見でございます。  糠谷部会長 ありがとうございました。それでは看護協会の古橋委員、お願いいたし ます。  古橋委員 看護職の立場から、後期高齢者医療のあり方に関して意見を申し述べます。 意見はお手元の資料の一番上の1枚に要約してございます。後ろにつけてあるものは、 こうした意見に連なる資料やデータなどでございますので、上の1枚紙で述べさせてい ただきます。  特に後期高齢者に関しては、先ほど医療課から御説明のありました、医療のあり方に ついての基本的な視点、資料5?2ですが、この基本的な視点に大いに納得をしながら、 後期高齢者医療というのは、医療中心、すなわち診断治療というものが中心のモデルか ら、生活中心のモデルに移っていくことが非常に重要ではないかというふうに考えると ころから、暮らす地域、あるいは暮らす場所の中で、どんな医療が望ましいかというよ うなことを考えたいというふうに思っております。  そういう点では、言葉が適切かどうかは別として、在宅医療というものが、どう進ん でいったらいいかということを考えたいと思います。ただし在宅医療というのは、介護 負担ということと重なって、素早く、広く、あまねく広がっていくということは、大変 困難だというふうに思っております。国民の合意形成、家族が納得する、ということが、 同時になければ進まないことですから、大変困難とは思いますが、そういう視点からい くと、1番の、医療ニーズが高い後期高齢者が利用しやすい安心で納得できる訪問看護 の拡充ということが、ぜひとも必要というふうに考えます。2つ目としては、在宅医療 あるいは暮らす地域の中での医療の推進においては、地域連携体制ということが非常に 重要であるという切り口。もう一つは終末期等における過剰な医療ではなくて、その人 らしく、みじめではなくて、人間らしい死というようなことを念頭に置いた医療が大事 ではないかという、この3つの視点でございます。  まず1番目ですけれど、医療ニーズが高い後期高齢者が利用しやすい、安心・納得で きる訪問看護に関しては、今、訪問看護のさまざまな項目や、あるいは評価という点に は制約がたくさんあって、広がりにくいという要素があります。そこは、細かい説明は 省きますけれど、そういう点では、やはり訪問看護が、必要なときに回数制限もなくで きる体制が要る。もう一つは、夜間や休日、早朝というような点での訪問看護が、緊急 事態が起きたときも柔軟にできるというためには、24時間体制ということが非常に重 要です。その24時間体制ということへの評価がしにくいとか、あるいは訪問回数の制 限があるとか、あるいは退院なさった日こそ非常に大事なキーポイントの日ですが、そ の退院当日は訪問しても報酬はつかない。すなわち保険体制では退院当日の訪問はでき ない、やってはいけない、というような仕組みです。こういう体制は、非常にニーズの 高い、本人・御家族にとっても、また大きな障害、障壁でございます。  もう一つは、これは薬事法との絡みもありますけれど、訪問看護ステーションには衛 生材料が置けません。これでは休日・夜間に迅速な対応ができません。尿が詰まった、 かえなければならない、そういうことには医師の指示によって、訪問ナースがただちに 適切に実施するようにという指示をいただいていても、管が置けません、関係材料が置 けません。これは薬事法改定ではなくて、この規制を緩和して、国民にとって益する体 制にしていく必要があるように思っております。3番目には、訪問看護の裁量という点 では、医師の指示がなければ訪問看護はスタートしませんけれども、療養所の世話とい う領域については、これは既に法律的な解釈も確認が済んでいます。療養の指導、ある いは療養の世話というような点では、看護師の裁量とすることを十分に合意形成してい く必要があると思います。それから、緩和ケアの疼痛管理においては、麻薬投与等の包 括指示に関しては、ガイドラインの策定を急いで整備していただきまして、ターミナル におけるナースの判断というものの裁量も広げていただきたいと考えております。あと は、拠点訪問看護ステーションの設立も重要で、大規模で多くのナースたちを配置する、 こうしたものが効果的に機能することが、暮らす地域あるいは在宅での医療を非常に有 効に進めると考えております。  2番目が、在宅医療の推進における地域医療連携体制でございます。これは、いわゆ るチーム連携とか職種連携ということが非常に重要であると同時に、退院をなさる病院 側と受ける地域の側との合同の連携の相談、支援ということが非常に重要でありまして、 これはもう成功例がさまざまなところで始まっておりますが、これが点ではなくて線に なり面になって広がっていくということが重要だろうと考えております。そういう点で は、こうした連携しているシステムを評価するというような考え方が重要だろうと思い ます。ただし地域での暮らしを中心にした医療展開が始まったとしても、急性増悪期と か急変があります。そういうことに対しては、後方病床という書き方が適切かどうか、 少し疑問にも思っておりますけれども、例えばターミナルを迎えられたときに、家族が 在宅を承知なさらない大きな理由は、介護負担感と急変したとき不安であるということ と、いざというときに入院できるか、そういう場所があるかどうかが不安であるという 点で在宅渋りというような意識が大きく動きます。  そういう点では、ぜひとも在宅ターミナル等の高齢者への入院要請に対しての体制整 備が必要です。そういう点では、私どもは、有床診療所などがこうした、お引き受けい ただく機能として、そうした機能を整えていただくとか、あるいはその患者さんの主治 である病院が必ずそういう点では在宅で急変した人への受け取りがスムーズに行くよう にというような点では、一次的な点で、在宅が広がっていくまでの間は、看取り入院を、 在宅でいた方がおいでになって看取るというような場合の看取り入院評価というような ことがあってもいいのではないかと考えております。  3番目が、終末期における過剰な医療の見直しです。これはもちろん適切に行われて いる場合もありますけれど、資料の7ページにつけていますので、後で見ていただきた いのですが、ある意味で過剰ではないかと思われるような透析とか、最後の最後までの 多量な点滴とか、あるいは効果はあるんですけれど、単に管理が楽だからという視点で の胃ろう増設とか、そういうようなものについては見直しがなされ、後期高齢者の心身 の特性を踏まえて、合併症の予防とか苦痛の緩和とか、その人らしさとか、みじめでは ない、そうした医療を重視した診療報酬体系が必要ではないかと考えています。  最後に、これは書いてございませんけれども、日本の国民は、入院指向が非常に高く なっております。これは優れた皆保険制度の結果でもあると思いますけれども、すべて の人は老いを迎え年をとります、死を迎えます。こうした後期高齢者医療制度が動き出 せば、なおのこと、国民の間で、そういうことの意識は高まるだろうと思います。そう いう点では、依存心というものを多く持たないためには、多くの情報提供をして、こう した医療が在宅では、暮らしの場では受けられているというようなことの、多くのわか りやすい情報提供をしていくということも非常に重要で、国民の意識もまた後期高齢化 時代に、医療に与する一方の人として、こういうことに対する情報提供、意識の穏やか で緩やかな変革を図るということも重要と考えております。以上でございます。  糠谷部会長 ありがとうございました。それでは対馬委員、お願いいたします。  対馬委員 健保連は、3枚の資料でございます。基本的な考え方のところの1つ目の 丸、2つ目の丸のところは、特別部会等で議論されている方向性と、基本的には合って いるのかなあというふうに思います。私どもとしても、患者の尊厳とか安心、納得、さ らには自己決定、選択といったところが重要だろうというふうに思います。3つ目の丸 のところですけれど、やはり包括払いの拡大というのが??診療報酬については、これ から議論していくわけですけれど、一つの切り口、キーになっていくのではないかとい うふうに思います。  やや個別になりますけれども、外来医療についてでございます。かかりつけ医につい ては、確かに非常に重要な機能を果たしているということですし、またこれからも機能 発揮が期待されているということですけれど、ただ、今のかかりつけ医のままで本当に いいのかどうかというのは、次のページに記載させていただいております。欧米の、い わゆる家庭医であるとか総合医といった、幅広い専門的な教育を受けているといった 方々が、やはり必要なのではないか。日本の場合は御承知のとおりですけれども、特定 分野の専門技術を基盤としている。例えば心移植をやっていました、肝移植をやってい ました、という方が開業をされるということです、またさらに私どもとして、非常に問 題だと思うのは、自由標榜制ですから、心移植や肝移植をやった人が内科、胃腸科とい うことを標榜している可能性も十分ある。そういうことでは看板が信用できない、看板 に偽りありということですから、こういったことは、ぜひ、是正を図っていかないと、 なかなか患者さんに、まずはかかりつけ医に行っていただきたいと、私ども保険者も自 信を持って言えないのではないかというふうに思います。  それから、その次の丸ですけれど、診療報酬点数の包括化。先ほど言ったとおりでご ざいます。外来については、なかなか難しい面がある。例えば外総診という制度でやっ た時代もありますけれど、やはりもう一度、再検討する必要があるだろうというふうに 思います。  それから3つ目の丸のところですけれど、家庭医等の育成。システムとしてビルドイ ンしていくことと同時並行的に、患者を登録させる方式ということも検討する必要があ るのではないか。このあたりは後ほど、恐らく多田委員からお話があるだろうというふ うに思います。  入院医療の方でございます。包括払い。ケースミックス分類でやってきたわけですけ れども、さらに一般病床の中にも、この包括払いが適合するケースが十分あるだろう、 と。拡大を図っていくべきだろうというふうに思います。  それから、その次ですけれども、地域連携クリティカルパス。これも、まずは大腿骨 頸部骨折ですけれども、検証しながら拡大していくんだろう、と。  それから在宅医療ですけれども、切れ目のない連携が必要不可欠だろう、と。在宅を 含めてですけれど、先ほど古橋委員からもお話があったというふうに思います。  それから、その次の、在宅療養支援診療所。今回の診療報酬改定の一つの目玉でした けれども、看取りの場合、1万点とか、そういったことにしたわけですけれども、その 次のページになりますが、求められる機能に本当に即しているのかどうか。先ほど申し 上げましたけれど、ただ手を挙げているということではないように期待したい。訪問診 療、看取り等もしっかりやっていただければというふうに思います。  それから、その次の丸ですが、患者の居所にかかわらず、適切な医療、介護サービス が弾力的に提供できるということが必要であろう、と。診療報酬、介護報酬の関係を整 理する。ただし相互に乗り入れができるということで結果的に医療費が増嵩しないよう な歯止めは当然必要だろうというふうに思います。  それから終末期医療ですけれど、私ども保険者としましても、単に医療費抑制の観点 からとらえるべきではないだろう、総合的に検討する必要があるだろう、というふうに 思います。  それから2つ目は飛ばして3つ目ですけれど、特に患者・家族の視点に立ちますと、 リビングウィルの普及とかホスピスの整備といったことが非常に重要ではないかという ふうに思います。  薬剤給付等は割愛いたしまして、最後になりますけれども、先ほど、後期高齢者医療 制度の説明がありました。私ども医療保険者が約4割ほど、後期高齢者医療制度に支援 金としてお出しするということですので、私どもが実質的に関与できてものが言えると いうような仕掛けを、ぜひ、よろしくお願いしたいというふうに思います。  糠谷部会長 ありがとうございました。  山本(文)委員 申しわけありません。きょうは、こういう機会があるとは知らなか ったものですから、事前に資料を出していませんでした。ところが市長会の方の河内山 さんが出していますので、これに尽きるような気もしますけれども、今回、せっかくこ ういうふうに後期高齢者のことについて、いろいろと御配慮をいただいているようです。 ですから、結局この、窓口事務をやるのは私どもですから、窓口事務がスムーズにやれ るような制度を考えていただかないと、窓口事務が行き詰まるようなことでは、これは うまく順調には運営ができないということになるわけです。  特に、私が今一番心配しているのは、保険料を最低900円に下げるという制度も考え ているようですけれど、一般的に今はゼロなんですね。今の後期高齢者は原則的に保険 料を払っていないわけです。ですから、新たな保険料を払うことになっていくわけです から、これでうまく皆さんたちが納得するか。こういうところでは、皆さん、よくわか っているけれど、一般の人は知らないんですよ。後期高齢者の医療保険制度ができて、 こういうふうになっていくということについては、まだ徹底していないんです。知らな い人の方が大多数だと思います。ですから、保険料がうまく徴収できるような、そうい う仕組みを十分配慮しなければならないと思います。  それから、だんだん上がっていくというようなやり方をすると、これはもう完全に行 き詰まりをします。ですから、治療のあり方が、私どもはいつも申し上げているんです けれど、濃厚治療をやってはならない。つまり無駄な治療はしないようにしてほしいと いうことです。老人ですから、昔は、よく言われましたように、高齢者は暇なもんです から、1日のうちに、あそこへ行ってここに行ってというふうに、3軒も4軒も行くと いう、そういうやり方をしていたんですね。無駄な治療を行わないということが一番大 事なことだと思います。もし、そういうことが起こると、保険料にはね返ってきますか ら。もし、保険料にそれがはね返ってきますと、私ども市町村の窓口で、保険料を徴収 するということは難しい。  これは、後期高齢者の場合は、広域連合になりましたが、私自身は今、介護保険で広 域連合の連合長をずっと務めておりますが、保険料の徴収についても大変苦慮しており ます。医療の保険料が、今の介護保険よりももっと高くなるわけです。ですから、介護 保険と医療と2つあわせたものを、いわゆる75歳以上の人たちが負担をすることにな るわけです。これはもう、私はあんまり感心できるやり方ではないと思うんですけれど、 福祉国家日本というような時代をつくろうではないかと、皆さん、努力をしてきた。と ころが75歳になって、後期高齢者の人たちに、これからは医療も介護も保険料を払っ て受けるようにしてほしいというやり方、それそのものが、どうかなあと思うんです。 決められたものですから、介護保険の方は、我々は実施している。しかし医療について は、今のところを見ると、介護保険よりも高いわけですから。ですから医療がもし、濃 厚診療、あるいは、やらなくていいようなことまでやったとしたら、保険料へはね返っ てきますから、運営上、市町村で保険料の徴収が困難になる。そうすると破綻する以外 にないわけです。  だから、ぜひ皆さんにお願いしておきたいのは、適正な高齢者の医療の実施ができる 仕組みを十分に考えて実施をしていただきたい。そういうことを、きょうは一言だけ申 し上げておきたいと思います。まだ言いたいことは山ほどありますけれど、時間がない ので、この次の機会に譲りますけれども、ぜひ皆さん、そういう御配慮をいただきます ようお願いしたいと思います。言うならば現場の1人として、私ども地方自治体のみん ながそう考えているということを申し上げておきたいと思いますので、十分御配慮をお 願いいたします。  糠谷部会長 はい。御意見、よく承りました。それでは多田委員、お願いいたします。  多田委員 私どもの方からは、ちょっと分厚いというか、クリップにとめたものをお 配りしておりますけれども、申し上げたいのは、この報告書の一番上にある1枚、これ をお話ししたいと思います。  今のままの医療構造をそのままにして、10年、20年、30年と進んでいきますと、大 変な事態が起きるのではないか、と。特に高齢者の受診量というのは大変大きい、そし て入院も物すごく多い、そういうことになりますので、それに追いつくような供給構造 を本当につくれるのかというぐらい、大変な山が来ることになるわけです。したがって その山を、もちろん強権力でもってどうこうということができるわけではありませんけ れども、少しでもなだらかにして、日本の医療構造というのを、高齢化社会に適応した ものにするということには、本当に真剣にならなければいけない。そうでないと、少々 の医療費抑制とか何とかというレベルではないぐらい、すごいものになるだろうという ふうな認識でございます。  そういう認識のもとに、どういう構造を考えていくのがいいかということを考えまし て、研究会を持って、いろいろ議論をしていただいたわけでございます。そこにおられ る西村先生なんかも、メンバーになっていただいたわけですけれども、その中で、基本 的にはまず交通整理が少し必要ではないかということです。高齢者というのは、基本的 に心身ともに衰えを感じつつある、そういう世代ですから、そういうところで何か不具 合があるというときには、やはりその方の日常の生活ぶりとか、あるいは生まれてから 現在までの病歴だとか、いろんなことをよく御存じの先生が、まずはこの人はどういう ふうにするのがいいだろうかということを、一回、判断をする。そのことによって、医 学的に最も的確な方向性というものを見出していく。そしてその治療につなげていく。 こういうことが大事ではないかということでございまして、この(1)の1番で、原則 として診療所の中からかかりつけ医というのものを選ぶ。病気になった場合は、かかり つけ医に受診することを原則とするということで、勝手に病院に行って受診をするとい うことをしないことが原則だというような考え方でございます。  かかりつけ医は、ここに列記してあるたくさんの項目がありますが、要するに高齢者 の顧問医と言ってよろしいかと思います。いろいろ相談をし、それから事前のアドバイ スも受けてということで、例えば、最近どうも、うちのおじいちゃんは大変ふさいでい るけれど、どうだろうかというような御相談も、家族からどんどん来るような格好で、 そういう中で重症にならないように、もしそうなら、ちょっと受診においでとか、ある いはどういうことに気をつけたらいいでしょう、といったアドバイスをする。そういう ふうな、要するに顧問医的な機能というものを、非常に濃厚に持ったかかりつけ医とい うものを想定して、そういうかかりつけ医を選んでいくということでございます。  これの一番の弱点は、今、そんなことが判断できるお医者さんがどのくらいいるのか という、今の教育体系あるいは今の開業医さんの資質ということからいくと、どちらか といえば専門医的な、ミニ専門医みたいな方が多いじゃないかということは確かではあ るのですけれど、それでも、やはり内科を標榜してやられている方もたくさんおられる わけで、そういう意味で、少なくともそういう志向だけはお持ちだし、そして、そうい うことで、私はこの人の顧問医ですよという認識がもしあれば、また随分、勉強の仕方 も、あるいは対処の仕方も変わってくるのではないかということも考えます。  そういう意味で、このかかりつけ医というものを、やはり、もっとしっかりと、この 制度の中で考えていくのがいいのではないか、と。かかりつけ医のそういう機能を果た していくためには、出来高払いというだけでは、どうも、ちょっとうまくいかないだろ うということですから、顧問料的なかかりつけ医報酬というのを別に考えなければいけ ないだろう、と。特別に処置その他が必要になった場合に、それはまた別に出来高で考 えるというようなことになるのかなあ、と。どこでこれを切り分けるかというのは、役 所の方でよく考えてほしいなあということで、出来高と契約払いの併用ということが、 この(2)の2番のところに書いてあるわけです。  そういうことによって、確かに、どこへでもという、フリーアクセスの一角が、少し 制限されるということにはなるわけですけれど、ただ、そのお医者さんとどうも相性が 悪くて、さっぱりサービスが受けられないということになれば、登録がえを認めるとい うようなことをすれば、必ずしも拘束ばかりが表れるというふうにも思わないわけです。 そういう意味で、一番医学的に見て適正な医療というもの、あるいは予防というものが、 この、かかりつけ医が中心になることによって展開されれば、大きな波である高齢者の 医療需要というのが、そのかたまりを大分小さく押さえることができるのではないかと いうのが私どもの見解でございます。  糠谷部会長 ありがとうございました。資料をお配りいただいた方から一通り御説明 をいただきました。4時を少しまわっておりますけれども、せっかくですので、多少延 長をさせていただきまして、ただいまの御意見、御説明に対する御質問、御意見、ある いはそれ以外でも結構ですので、どうぞ。  大内委員 私は老年医学を専門にしておりますが、日本老年医学会の理事長も努めて おりますので、今回は日本老年医学会を代表して、今回の高齢者医療の保険制度に対し てコメントをさせていただきたいと思います。  今までいろんな委員の方から御指摘がありましたけれども、高齢者の医療というのは 一言で言うと、やはり総合医療です。それで、例えば高齢の方が糖尿病があって血圧が 高くてひざが痛くて、それから白内障があってと、それだけで4科受診ということにな るわけです。そのときにやはり一番大切なのは、その高齢者を総合的に診る医師、ある いは看護師、あるいはそのほかのコメディカルの方々の養成ということが、一番急務で はないかと思います。  老年医学会では、老年病専門医という制度を既に一昨年の3月からスタートしており まして、これは厚労省の方で広告の認可をいただいている専門医ですけれども、先ほど のかかりつけ医のお話に関連して、その老年病専門医というのをもう少し発展させて、 お年寄りの、後期高齢者のかかりつけ医制度をつくったらいいのではないかと思います。  ただ問題は、どういう要件を満たせば、そういったことを認めるか。やはりそれには 再教育とかトレーニングとか、そういったシステムを、この保険制度とあわせてつくっ ていく。先ほどの委員の方からも御指摘がありましたけれど、この保険制度がうまく回 るための仕組みを同時につくっていかなくてはいけないと思います。ですから今後、そ ういった高齢者医療にかかわる、メディカル/コメディカル・スタッフの再教育やトレ ーニングの制度を、ぜひ、つくっていただきたいと思います。  それからもう一点は、保険の中身ですけれど、やはり何人かの方から御指摘がありま したように、ある一つの病気を診断して治療して、例えば肺炎を起こせば抗生物質を投 与して治療していく。こういう発想で今まで保険医療がなされてきたわけですけれど、 もちろん肺炎を起こして抗生剤で治療すれば、それは当然、医療資源を投入したわけで すから、その報酬というのは必要だと思いますけれども、それだけではなくて、例えば 高齢者の肺炎に関して、口腔ケアを毎食後5分間やることで、肺炎が半分に減るという ことが証明されています。ただ、現行では口腔ケアにそういったインセンティブは全く 与えられていないわけで、このような高齢者の疾患の予防とか、健康寿命を維持するた めのいろんな機能評価、あるいは機能を維持する方策、そういった視点からの保険制度 をぜひ構築していただきたいと思います。  今までは、ある病気があって、診断して、それに対して薬を使ったから幾らという、 こういう発想だったわけです。もちろんそれを否定するわけではありませんけれども、 さらにもう少し、疾病の予防あるいは健康寿命を保つという方向性にインセンティブを つけるべきではないかと考えています。CGAという高齢者の機能評価の手法が先ほど 紹介されましたけれど、これには物すごくマンパワーがかかる割には経済的な評価がさ れていないわけです。今後このようなことにインセンティブをつけていくべきではない かと思います。  齊藤委員 時間も押していますので、一言だけ。きょう出していただいた資料5?2 の2ページにも書いてありますけれど、患者自身が正しく理解をして、自分の治療法を 選択することの重要性とか、それから、納得性を得るための、医療における透明性を確 保していく。山本委員が先ほどおっしゃいましたけれど、過剰な内容がないかというよ うなことのチェックとか、そういったことも含めて、ぜひ、早急に、先ほども申し上げ ましたけれども、ICT化を進めて、より透明性の高い医療というものを、特にこの後 期高齢者医療については、早く進めていただきたいと思います。  それともう一点、やはり制度として、訪問介護とか在宅医療ということの重要性を皆 さんおっしゃっていますので、これに対して、お医者さんたちがそれをされたときに、 ちゃんと報酬が出るような形にしないと、理念だけではだめだなあというふうに思いま すので、よろしくお願いいたします。  逢見委員 私も簡単に申し上げます。まず、在宅重視という方向については、私ども も基本的にそういうことを進めるべきだと思っております。ただ、これはかかりつけ医 による訪問診療、あるいは訪問介護という、そういう供給体制がきちんと行われるとい うことでありまして、在宅だけれども全然来てくれないというような、その供給体制が 伴わないような形でスタートするということがあってはならないと思います。  それから、介護保険のサービスとの連携ということも指摘されていますが、これも基 本的にやはりそういうことが重要だと思います。特に治療を終えてもリハビリが必要な 人というのはいるわけで、それが、保険制度が違うからといって、そこで途切れるよう なことがあってはいけないわけで、きちんとした、制度の違いを越えて、そういうこと を、一人一人の状況を見ながら、介護と医療が連携していく仕組みと、そのための人材 ということも必要だということを申し上げておきたいと思います。  鈴木委員 フリーアクセスと現物給付、そして国民皆保険制と、この3つのうち、ど の1つが欠けても容認できないということを日医は考えています。しかしながらフリー アクセスを阻害してまで行いたい目的というものが、相当程度、我々が在宅療養支援診 療所で9時?5時勤務というようなものに一つのメスを入れたように、相当部分が、目 的としては合致していることが考えられますので、まずフリーアクセスを阻害せずにそ の目的を達するということに、より一層の知恵を働かせるべきだというふうに考えます。 それが一点です。  もう一点は、先ほど、介護と医療の棲み分けということで申し上げましたが、利用者 の目から見て、訪問看護というのは非常にわかりにくいので、それを医療に組み入れる ことを日本医師会としては考えております。  あと一点、先ほど、濃厚診療云々ということで、透析の患者さんについてのお話が出 ましたけれど、宮崎県で非常によく似た場面がありまして、結局は中止をいたしました が、それを見ていた医療従事者が内部告発をいたしまして、有罪になった判例がござい ますので、この辺のところは法律ばかりではなくて、国民的合意形成をきちんと行いな がら、この終末期というものを考えなければいけないのではないかと考えております。  吉田参考人 愛知県の吉田です。後期高齢者の医療というのは、県民の方々の福祉と 不可分です。愛知県でも老々介護の果ての心中とか、息子さん御夫婦と同居でもそうい う事件が時折起きております。ぜひ、後期高齢者の方々の、これからの医療の体系が、 後戻りするようなことがないような制度にしていただきたいと思いますので、在宅の受 け皿??先ほどから出ておりますけれども、総合的に診られる医師の資質を一体どうや って高めていくのか、それから居住系施設の充足とか、そういうことをきちんとやった 上での制度にしていただきたいと考えております。  糠谷部会長 大分、時間も過ぎておりますけれども、特に御意見等がありましたらお 願いいたします。  多田委員 フリーアクセスを制限するということについて、やはり医師会の方はかな りデリケートな問題があるようですけれど、基本的にお医者さんは、本当にこの個人の 責任を持とうということになったら、そうしたら、やはりその方とのかなりしっかりし たコンタクトがいつもとれているという格好でなければいけないだろうと思います。そ ういうことを考えると、それが複数に、あちこちにコンタクトがありますという状態は、 なかなか考えにくいので、やはり1人のお医者さんに、しっかりとつながっている。そ して、そのお医者さんが判断して、自分では手に負えない、あるいはだれかの意見を聞 こうといったら、そのお医者さんが信頼するお医者さんにまた意見を聞いたり、そうい うことをしていくということで、やはり、かなめは1人というか1事務所といいますか、 数人のグループ診療というのも、最近はヨーロッパでもはやっていますから、そういう 格好もあるかもしれませんけれど、そういう意味で、そういうところをつくっておくと いうことが、結局、医療のトータルな効率性と、それから効用というものを高めていく んだというふうに、私どもは思っております。  鈴木委員 おっしゃることはごもっともで、否定できない面が存在するのは事実でご ざいますが、信頼関係の構築というのは非常に、現在では、利用者と医師が五分五分の 立場で形成していくということは、相当希有な例になるのではないかと思います。その あたりは、我々の中でのルールづくりが必要であるとも思われますし、85%の後期高齢 者は既に主治医を持っているんですね。ですから、その15%に対して100%の登録制と いうのは、いかがなものかというふうに考えております。  糠谷部会長 大体よろしいでしょうか。予定の時間も大分過ぎましたので、本日はこ れまでとさせていただきます。本日いただきました御意見については、特別部会に私か ら報告をさせていただきます。今後、特別部会でさらに議論を進め、今年度内を目途に 後期高齢者医療のあり方に関する基本的考え方を取りまとめさせていただきたいと思い ますが、その検討に当たっては、本日の議論を十分に踏まえていきたいと思います。  今後の本部会の開催時期でございますけれども、今月中にもう一回開催するというこ とを考えております。時間、場所につきましては、決まり次第、事務局より速やかに御 連絡をすることにしたいと思います。本日は御多忙の折、お集まりをいただきまして大 変ありがとうございました。                                     (終了) (照会先) 保険局総務課企画調査係 代表 03−5253−1111 内線 3219