07/02/21 手術に係る施設基準等調査分科会平成19年2月21日議事録 07/2/21 診療報酬調査専門組織         平成18年度第3回手術に係る施設基準等調査分科会              (1)日時   平成19年2月21日(水)15:00〜17:00 (2)場所   厚生労働省専用第15会議室 (3)出席者  福井次矢分科会長 辻一郎分科会長代理 大江和彦委員 栗山真理子委員 坂本徹委員 中川正久委員 羽尻裕美委員 長谷川敏彦委員 本田麻由美委員 松下隆委員 松山裕委員 南和友委員 鈴木中医協委員 〈参考人〉 高本眞一氏 〈事務局〉 原医療課長 八神保険医療企画調査室長 福田企画官 上條歯科医療管理官 磯部薬剤管理官 神ノ田医療課課長補佐  中野医療課課長補佐 星医療課課長補佐 菊岡医政局総務課課長補佐 他 (4)議題   ○手術に係る情報の開示について        ○手術件数と手術成績に関する調査について        ○その他 (5)議事内容  ○福井分科会長  時間になりましたので、ただいまより「第3回診療報酬調査専門組織・手術に係る施設 基準等調査分科会」を開催いたします。  初めに委員の交代がありましたので、事務局より紹介をお願いいたします。 ○事務局(中野医療課課長補佐)  紹介させていただきます。小柳委員におかれましては、任期満了に伴いまして退任をな されました。新たに、平成18年11月13日付で坂本徹委員が任命されております。坂本委 員より一言ごあいさつをお願いしたいと思います。 ○坂本委員  東京医科歯科大学の坂本です。よろしくお願いいたします。 ○福井分科会長  それではよろしくお願いいたします。次に委員の出欠状況について、事務局より報告を お願いいたします。 ○事務局(中野医療課課長補佐)  それでは委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、永井委員及び名川委員が 御欠席、そして大江委員はおくれる旨を事前に御連絡をいただいております。また、オブ ザーバーといたしまして中医協の鈴木委員に御参画をいただいております。  また、議事の2の手術件数と手術成績に関する調査に関しまして、前回、南委員からお 話がございました日本心臓血管外科学会で行った調査の発表者といたしまして、本日、東 京大学大学院医学系研究科の高本眞一先生に御出席いただいております。 ○福井分科会長  続きまして、資料の確認を事務局よりお願いします。 ○事務局(中野医療課課長補佐)  それでは資料の確認をさせていただきたいと思います。本日お手元に配付いたしました 資料ですが、まず、座席表、議事次第、名簿が一枚ずつございます。その後、手−1とい うことで医療機関の医療機能に関する「一定の情報」(案)です。  続きまして、長谷川委員の提出資料でございます。  続きまして、高本先生提出資料でございます。  そして大江委員提出資料でございます。  最後に参考資料といたしまして、麻酔における「厚生労働大臣が定める重症の患者」に ついての資料でございます。以上でございますが、配付されていない場合は事務局までお 申しつけお願いいたします。 ○福井分科会長  それでは早速議事に入りたいと思います。議事の1.「手術に係る情報の開示」について、 御議論をお願いしたいと思います。前回事務局より御説明いただきましたが、患者がさま ざまな情報に基づき適切に医療機関を選択することができるよう一層の情報開示を進める 観点から、手術に係る情報開示のあり方について、議論をいただくことになっています。 本日は、厚生労働省における取り組みについて御報告いただき、それをもとに議論してい きたいと思います。ではよろしくお願いします。 ○事務局(菊岡医政局総務課課長補佐)   それではお手元の、手−1の横紙の厚めの資料に基づいて御説明をいたします。私、医 政局総務課の菊岡でございます。よろしくお願いいたします。  この資料でございますが、表紙にございますように、今医政局で行っております医療情 報の提供のあり方等に関する検討会、この検討会の提出資料でございます。この資料の中 にいろいろな項目が出ておりますが、医療機関の主に医療機能に関する情報をこのような 形で集約をして、各都道府県がこういった情報を医療機関から収集をして、そして集約を してインターネット等の情報媒体を、主にインターネットということになりますが、この ような内容の情報を提供するという枠組みになっております。きょうは、中身すべての項 目を説明できませんので全体を御説明いたします。  ページを開いていただきますと目次がございます。こちらにまず基本情報を示しており ます1.でございます。医療機関の医療機能に関する「一定の情報」ということで、1) から4)まで、病院、診療所、歯科診療所、助産所になっております。この情報の中に別 表1、別表2と、もう少し細かい情報を整理するものが含まれています。  1ページをごらんいただきますと、病院用の医療機関の医療機能に関する情報です。こ ちらにつきましては、比較的基本的な機能の情報をかなり細かく拾うことになっておりま す。いわゆる基本的情報といわれている部分、それから病院へのアクセス、そして2ペー ジにございますように院内のサービス・アメニティ、費用負担等。大きな2番目で提供サ ービスや医療連携体制に関する事項ということで、診療内容ですとか提供の保健・医療・ 介護サービスといった中身になってございます。3ページは、医療の実績や結果に関する 事項という形でまとめております。44番から56番までの項目がございます。  この中で特に触れさせていただくものがあるとすれば52番、53番です。例えば52番で いいますと死亡率、再入院率、疾患別・治療行為別の平均在院日数等治療結果に関する分 析の有無といった内容が、分析をしているかどうかということ。それからその下にござい ますように、そういった分析の結果をきちんと提供しているかどうかといったことを中に 入れてございます。この中で、実は1ページ、2ページにもありますように別表1、別表 2という形で詳細を別表に譲っている部分がございます。こちらにつきまして内容の多寡 はございますが、診療所、歯科診療所、助産所の部分は飛ばさせていただき、御説明させ ていただきます。  11ページになります。別表1は、どちらかといいますとどのような内容のサービスや医 療を提供しているかという部分を、疾患別でない部分といいますか病院のハード面を中心 に整理をしています。1)が、併設している介護関係施設等。2)は、必ずしも施設では ありませんが、医療保険ですとか公費負担に関する情報を整理しております。  12ページでは、3)の学会の認定医、専門医を出しております。ここにありますのは、 特に厚生労働大臣の広告の承認がおりているものについて47件出しております。  13ページにつきましては、保有する施設の設備、それから短期滞在手術といった内容に ついて出しております。以後、予防接種ですとか在宅医療といったものも含めて、医療情 報の内容を書くようになっております。  本日、主な議題になっております手術件数等については、もう少しページを進めていた だきまして18ページ以降の別表2に示してございます。こちらには対応可能な疾患・治療 内容という形で整理をさせていただいております。見ておわかりのように、診療領域、例 えば1)であれば、皮膚・形成外科領域、2)であれば、神経・脳血管領域、こういった 形で整理をさせていただいております。右の縦の枠に○がついてございます。この○は件 数を、ついていないものについては対応可能かどうかということを提出していただくとい う内容になってございます。すべてのものをもちろん領域ごとにカバーしているものでな く、考え方として専門性ですとか内容を網羅するといった観点ではなく、先ほど分科会長 からもお話がございましたように、患者さんの側から見て選択に資する観点でどういうも のが必要なのかという点で、今検討会で整理をしていただいた素材ということになってお ります。  早口で内容を説明させていただきましたが、この「一定の情報」の(案)につきましては、 実はパブリックコメントを終了しております。来年の4月から法律が施行されるもとで実 施がされますので、今最終的な整理をしているところという状況でございます。以上でご ざいます。 ○福井分科会長  ありがとうございます。来年度でなくて来年の4月ですか。 ○事務局(菊岡医政局総務課課長補佐)  今年の4月からです。済みません。 ○福井分科会長  ただいまの御説明につきまして、何か御質問、御意見はございませんでしょうか。この 分科会として、これを伺って何か意見を述べるだけということなのでしょうか。 ○事務局(菊岡医政局総務課課長補佐)  どちらかといいますと、位置づけとしましては情報提供という形になると思います。今 の段階では先ほどお話しましたように、パブリックコメントが終了していますのでそうい う状況になると思います。 ○福井分科会長  それでは御意見を、何かありませんでしょうか。 ○南委員  循環器系の領域で気になることがあります。冠動脈バイパス術がありますが、その他の 心臓の手術が含まれていないということはどういうことでしょうか。例えば心臓の手術の うちの3分の1が冠動脈バイパスとしても、後の3分の1には、やはり血管系の病気があ りますし、先天性の病気もあります。いろいろな病気があるわけですが、冠動脈だけに限 るのはどういうことでしょう。 ○事務局(菊岡医政局総務課課長補佐)  実は内容につきましては、先ほどもお話を申し上げましたようにすべてのものを網羅し たものでないものですから、要するにどこが出ていて、どこが出ていないという部分につ いてはいろいろ御意見等もございます。事務局の立場として申し上げられるのは、患者さ んの選択に資するという点でどこを今回持ってくるのかというところで議論をした結果、 こういう内容になっているということでございます。ですので、これはあるけれどもこれ はないとか、網羅されていないのではないかといったところは今回すべてに対応できてい ない部分があるかと思います。ただもう1点は、やはりこういうデータを用意する観点で、 心臓血管の病気もございますが、さまざまな領域がある程度バランスをとらなければいけ ない部分もございます。そういったさまざまな点でこういう内容になったということでご ざいます。  先ほど意見の趣旨という点で、若干私の言い方に足りないところがございましたので追 加をいたします。明らかに専門的に見ておかしい部分があるとか、事実として間違ってい る部分については私ども直せないことはございません。そういった点について御指摘をい ただければと思っております。 ○南委員  ぜひそれはつけ加えていただかないと、非常に偏った情報が患者様方に行くということ になるのです。と言いますのは、割と小さな病院で冠動脈外科だけをほとんど主体にやっ ているという病院があります。そういうところに弁の疾患を持った患者さんが、ここの病 院はいいということで行ったら非常にマイナスな結果になるということが生まれてきます。 ですから、やはり先ほど言いました3分野の疾患というのは、心臓外科でもだれでもが認 める分野です。大血管、先天性、弁疾患そして冠動脈のバイパス手術というものを網羅し ないと、非常に不満足なデータが出るのではないかと懸念します。 ○福井分科会長  具体的に22ページに循環器系領域の5番が冠動脈バイパス術で9番が開心術になって いますが、これはどういうふうに変えた方がよろしいでしょうか。 ○南委員  この開心術というのが非常にあいまいな表現だと思うのです。ですから、このようにカ テゴリーをするのであれば弁疾患、そして大血管手術というカテゴリーにすればいいので はないかと思います。 ○福井分科会長  南委員からそういう御意見がございました。本田委員はいかがですか。 ○本田委員  済みません、この検討会では直接関係しないことですが一応意見です。丸がついている のは件数もということですが、手術の件数だけでなく患者さんの選択に資するという意味 でしたら、悪性腫瘍の化学療法だとか放射線治療の数、特に放射線治療はその病院でやっ ているのかどうかということで、かなり患者さんにとって選択にかかわる点です。そうい うものも今後検討していただきたいと思いますが、これの見直しはどれぐらいのタームで やっていくことになっているのですか。 ○事務局(菊岡医政局総務課課長補佐)  現在、制度の開始に向けて検討しているところですので、ちょっとそこは難しいかと思 っております。ただ、はっきりとした正確なお答えになるかわかりませんが、件数を取れ るものは医療機関の間で、間違いなくちゃんとした標準化ができるようなものを中心にそ ろえている部分があります。例えば化学療法ですとか放射線療法がどこまでの治療が化学 療法になるのか、そういった点で件数をとるための標準化が難しいのではないかといった 観点も少しあって、今のこういう整理になっているということでございます。 ○福井分科会長  ほかにいかがでしょうか。松下委員。 ○松下委員  整形外科の筋・骨格系の分野でいいますと、分け方に疑問があります。手術の種類と部 位とが混在していて、例えば脊椎手術や手の外科手術は部位別になっていますが、人工関 節手術は種類別になっていて、人工関節すべてを含んでいます。人工関節は特殊ですから これが独立していることがいいのかもしれませんが、整形外科は部位別の専門化がかなり 進んでいます。例えば股関節手術、膝関節手術というのは、ほとんどその部位の専門家が いるような部位です。部位でやるのならば、主な専門医がいる部位については股関節手術 が何件というように数えるのがいいと思います。人工関節の件数が多いからいいというわ けではなく、本来は骨切り手術の方が高度な手術ですから、安易に人工関節にかえる医師 だけがいいわけではありません。そういう意味ではもう少し分け方を整理していただいた 方がいいかと思います。 ○福井分科会長  ほかにいかがでしょうか。今ごらんになっただけですので、細かいことに目が行き届か ないかと思います。1点だけ、3ページの52番、治療結果情報。2つの段に分かれていま すが、分析結果の提供の有無というのは患者さんオープンにしているかどうかという意味 の提供ですか。 ○事務局(菊岡医政局総務課課長補佐)  はい。ただ細かいこの文言の整理といいますか、何を指してこれがしているのかどうか ということについての整理も今合わせて進めています。イメージは今のお話に近いと思い ます。 ○福井分科会長   ほかにいかがでしょうか。坂本委員。 ○坂本委員  22ページの循環器系です。大動脈系がもし、先ほど南先生が言われたように分かれれば、 腹部大動脈瘤とあるいは末梢血管疾患ですね、下肢静脈瘤が入っていますから、それも入 らないと静脈瘤クリニックというのはあちこち乱立しています。静脈瘤だけ載ってしまう ことが起こり得ますので、そこら辺抑えるべきだろうと思います。  それから消化器の方で、いまだに虫垂切除は必要ですか。これは日本のレベルからいっ たら、どこに行ってもできる病院が当たり前であって、いまだにそれを求められておられ るのかどうか。その点を整理し、今回の調査は何を水準にしてこれが存在しているのか、 その点もぜひ検討してもらいたいと思います。 ○福井分科会長  ありがとうございます。ほかにないようでしたら、次の議事に進みたいと思います。よ ろしいでしょうか。  それでは議事の2.手術件数と手術成績に関する調査について、御議論をお願いしたい と思います。前回御欠席で、次回御説明いただくこととなっておりました長谷川委員から 御説明をいただいて、質疑応答を行いたいと思います。それでは約20分程度お願いいたし ます。 ○長谷川委員  御要望として、これまでの手術研究あるいは手術数と医療の質、あるいは手術成績に関 する研究をレビューせよということでしたので、今回国内外の研究をレビューいたしまし た。手短にやってまいりたいと思いますが、パワーポイントが多いのでスピードが早くな るかもしれませんが御容赦ください。(パワーポイント使用)  若干個人の話で恐縮ですが、私としてはちょうど99年ごろからこのテーマに興味を持ち まして研究してまいりました。いろいろな部位の手術の分析をし、その結果多くの部位で 相関を認めました。学会で発表したりあるいは論文形式で発表してきました。99年の最初 はこの食道がんでして、食道がんが手術ボリュームと死亡率との間でフロー相関があるこ とがわかって、これが出発点になってそれ以降の研究を始めました。  その中でも2002年に厚労省からお金をいただきまして、特別研究という形で医療の質と 外科手術の技術に関する研究をやりました。これがいわば集大成の形になっております。 それ以降は、特に大きな研究は続けられませんが少しずつ現在に至っている次第です。  これはこの表紙と内容となっているのですが、ここではこれまでの研究のレビューもい たしましたし、私みずからも7つのデータベースを使いまして、手術件数と手術死亡、5 年生存率等の相関の研究もいたしました。きょうは、この研究のこれまでのレビューの部 分についてお話できればと思っております。  医療の質に関してはハムラビ法典の時代から関心があって、傷害を起こした医師の手を 切るといった罰則が載っていることがあります。しかし近年科学的に分析し始めたのは、 1978年のウエンバーグによると言われていまして質のばらつきが証明されたと。手術の件 数と死亡率の相関につきましては、60年代後半のハローセンの副作用の研究で、たまたま 手術死亡に、施設によって10倍のばらつきがあるということがわかりました。その後、ス タンフォードグループがきちっとした研究をした。結構この間時間がかかっております。 そして国際的には米国学術会議医学院が、2000年5月11日に専門会議をもってレビュー をしたというものが一番まとまった分析としております。これがその表紙です。たまたま 私は2000年の秋に「こんなのが出たよ」というのでいただいた記憶があります。同時にそ の次の年には、がん関連のレビューも行われています。  この研究報告は集大成をしたということにおいても意義があります。同時に論文をレビ ューするに当たって一定の評価の基準をつくって、そして選択したというところにも大き な意義がありました。手術成績は、前向きにランダマイズコントトライアルというのは不 可能です。倫理的に不可能でありますので、結局リトルスペクティブに、ないしはランダ マイズは無理とプロスペクティブには可能ですけれども、そこで完全にEBMの手法によ ってランダマイズコントトライアルということは不可能ですので、それに似たような手法 で評価をするということで全部で10項目、IOMの方で基準を決めて評価をしたというこ とです。850の論文の1980年から2000年までの20年間の論文を引っ張り出して、それを こういう手法で評価をしました。分析に耐え得る88論文を絞り込んだことになっておりま す。  出版例を見ますと、だんだん近年に成り下がりまして少しずつ点数が良くなっています が、見ましたらわかりますように90年代の後半に数がふえてきているということは、やは り量、結果の研究に関する関心がふえたのだろうということも反映しているように思いま す。また研究の質が高まっているということもわかります。最終的には、850のうち88に 絞り込んだものは、真ん中のコラムで冠動脈バイパスが9、小児心臓が3というようにし て全部で88、各種の疾患に及んでおります。  その結果はお手元に配りました資料の、ちなみに今お話をしておりますのは2ページか ら6ページにわたって書いております。5ページ、6ページ、7ページ、8ページがIO Mのレビューをした文献の結果でございますので御参照ください。このような形でまとめ てあります。簡単にまとめますとこういうことになります。一番右側に文献数とその相関 が認められた分母分子で書いておりますが、ほとんどの疾患において技術性が示されたと いうことで、このレポートの結論は手術件数と手術成績に相関があるとなっております。  それ以外にも、メディケアでかなり大量のデータを使ってやったことでも結果が出てお ります。ただこれはリスク調整をしておりません、そういう傾向が認められるということ であります。  さて、そのIOMの方でやられたレビューは80年から2000年までの論文をまとめたも のでありました。それ以降は、調べましたら5つぐらいのシステマティックレビューがご ざいました。例えばがん、心臓、胃がん、食道それから膵臓ということで、その2000年前 後の、以前の分も若干含まれておりますが、それぞれの領域でのレビューがなされており まして、どの文献もIOMの結果を追認する形で結論を出しています。ただ、疾病により ましては、かなり技術集積性というか手術数の集積性が高まっている疾病等がありまして、 医療の質を評価する場合にはボリュームのみならず、そのほかの手法を使った方がいいと いうコメントがついているレビューもありました。  大変興味深いのですが、ここ数年間論文を見ますとこういうふうには事実関係をどうこ うするというより、むしろどのようにファインディこの結果を政策に用いたらいいかとい う論文が幾つか出ております。例えばJAMAとかインガジャマメディスンにそういう関 連の論文が出ておりまして、特にJAMAには最近はやりのPay for Performanceとある いはボリュームをどう考えるのかと、つまりこれを診療報酬に応用する必要があるのかな いのかといった論文が出てきております。言い忘れましたがIOMのレポートの最終章に、 この事実をどのように政策に生かすかということがかなり詳しく述べられております。恐 らくこの会の参考になるのかと思っていますので後で申し上げます。  では日本ではどうだったかと。何度も言ってしつこいですが、諸外国は基本的には技術 集積があるということは証明されていて、それをどう使うかという段階に入っております が、日本はどうか。国内研究をレビューしますと、全部で13論文見つかりました。結論か ら申しますと、その13論文のうち10論文で技術集積があるということが確認されており ます。そこで、この13論文をIOMの手法、スコアの手法でスコアリングいたしまして論 文の質を評価いたしました。その結果は資料の2になっておりまして14ページ、15ペー ジに書いております。これが13論文のリストでありまして、一番右から2つ目がスコア、 IOMの手法によるEBM用の点数でして、点数が高い方が評価が高いということです。 一番右から結論が「有・無」ということになっています。  そこで実際に見ますと大変興味深いのですが、次のゾーンに出しますが、これは評価が 手前が相関があったもの、後ろが相関がなかったもので、左から右にIOMのスコアを並 べております。明らかにスコアの低いものには相関がない。だからきちっと分析をすれば 相関が出てくるということを示唆しているのではないかと思われます。  次に、私が2002年に行いました特別研究の御報告をしたいと思います。これまでのIO Mの評価基準にも入っておりましたが、たまたま悪い施設が多いところは重症患者が多い のではないかという議論が長い間ございました。この研究についてはやはりリスクアジャ スメント、リスクをどう調整するかということが大変重要な研究所の手法になっておりま す。私は2002年のときに、臨床経験とか医療の質以外に与える影響、例えば地域とか診療、 個人、疾病、病気のステージあるいは個人のリスクといったものを調整した上で、専門家 の能力に差があるかないかということを分析しました。一般モデルを考えた上でこういう ふうに、作業モデルとして手術量それ以外の因子で調整した上で手術量に相関があるかと いう検定をいたしました。非説明変数としては5年生存率や90日死亡、やはり急性性疾患 では30日で十分なのかもしれませんが、近年がん等では術後ケアの発達とともにやはり 30日は見なければならないということでやっております。影響因子の方は、このような地 域、施設、個人レベルの手法を織り込んで調整をした。その他の問題につきましては、こ のようなリストになっております。  データベースは全部で7です。患者調査や地域のがん登録そして脳卒中登録、それから 胃がん研究会の登録等を使って……失礼しました。もともとこのために集めたデータでは ありませんが、胃がん研究は除きまして地域の全数調査ないしはランダムサンプルという ことでリプレゼンティブネス、代表制という観点から非常にパワフルなデータかと思って おりますし、EBMでもIOMの評価でもそれゆえに点数が高くなっております。ただ、 先ほど申しましたようにそのために集めたということでないので、一部の変数が足りない という課題もあるかと存じますが、その結果、大変見にくくて恐縮ですがこのような結果 になりました。  細かくは16ページ以降です。16、17、18、19ページにその結果を示しております。同 様に私がやりました特別研究につきましても、IOMの評価の手法を使いましてスコアリ ングをいたしました。先ほど申し上げましたようにきちっとリスク調整をしているとか、 あるいは地域の代表制のあるデータということがありましたので、スコアは比較的よい、 5、6などがございますが、大半が9になっております。5、6というスコアがつきまし たのは、やはりサンプル数も少ないですが、同時に合併症の数が少ないということが理由 です。その結果、59データベースの中で33のデータベースで相関があるということが証 明されました。統計的に優位であるということが証明されました。  今お見せしておりますのは、先ほど申し上げたIOMのスコアと相関を割り出した関係 ですが、ここにおいてもやはりスコアがいいデータベースでは相関が高いとなっています。 感想めいたもので恐縮ですが、福井や山形のがん登録はどうしても数が少なく、大阪府の がん登録はボリュームが大きいものですから、かなりの部分で相関が認められました。ひ っくり返しますと、やはりきちっとデータをそろえれば相関が出るのではないかという感 触を持っています。あるいは、乳がん等につきましてなかなか出にくいという側面がある ということは、やはりアウトカムの差が少ない場合には出にくいのかというイメージを持 っています。したがってアウトカムの差をきちっとしてサンプルをそろえれば、基本的に は手術量とアウトカムの結果というものに相関があるのではないかと思います。  最後にこれらをどのように考えるかです。IOMのレポートの最終章に、結構スペース を割いてボリュームに影響があるということを前提にして、それをどういうふうに政策に 応用したらいいかという議論がされています。古典的には2つの戦略があります。1つは 規制です。法律による診療制限。例えば施設基準をつくって、それ以上の症例数がないと ころにはさせないというアプローチ。それを医療計画等に盛り込んで、ということはつま りそれをまずは許可しない。それを違反した場合に処罰を行うということです。もう1つ のアプローチは競争戦略です。情報公開をして医師の市場に任せると。消費者もしくはそ の他の人に、このような情報を提供して数の多い方を選んでもらうということであります。 情報、患者家族、選択するのは2つグループが考えられます。1つは患者家族です。もう 1つは診療所、病院そして保健者です。日本につきましては、もはやこれが進行いたしま いた。患者家族に情報提供する。先ほど御説明がありましたように、来年度から手術件数 が公開されてそして患者の施設の選択に資するように制度が出来上がりましたので、ここ の部分は完成してしまったわけです。  しかし、実はIOMでも大議論をしております。なかなか患者さんが自分の疾病を理解 したりこういう情報に到達するのが大変と、また一部内容的に誤解を生む可能性もある。 IOMの推薦は、むしろかかりつけ医がこの情報を使って選択をするとした方が、総合的 な判断としてはいいのではないかという結論です。それらを受けてアメリカの厚生省が医 療安全の対策の評価をスタンフォードのEBMセンターに発注しました。79技術評価をし た結果、30技術が医療安全に失するという結論が出ました。その一つが特殊な手術や主義 を多数症例を施設に周知させること。選択的紹介、医療安全のためにはかかりつけ医が、 こういうデータをもとに施設を選んでいく。むしろかかりつけ医にそういうことをやって もらった方がいいのではないかという結論で、アメリカの場合にはこういう推薦が出てお ります。  実はIOMには書かれておりませんでしたが、第3の戦略がございます。いわば経済戦 略といいますか、お金でもって誘導する。これには例えば施設基準を決めてお金を余分に 払う、もしくは少なく払うと。あるいは近年では医療の結果をはかって、結果がいいとこ ろに余分にお金を払う、Pay for Performanceという概念も出てきております。たしかお ととしだったと思いますが、アメリカの保険庁はPay for Performanceというものを実験 的に始めました。来年度で終わって、その結果それを政策に全面展開すると聞いておりま す。大変興味深いのですが、Pay for Reporting つまりまずは情報を提供する。情報を集 める、そういう施設にお金をつけようと。そうした上で、その結果を分析していい質のと ころにお金をまく。実はすごく少ないお金で、下の1%をつけかえて上の1%にするとい うような物すごく少ないお金ですが、どうも先日アメリカに行きましたら、アメリカ全土 が大変興奮しておりました。学会を中心に医療の質をはかるのだったらこういうインディ ケーターがいいとか、各学会が提案している。あるいは医師会でもこういうのがどうかと いうことを大議論しているとなっています。これを始めた人が、こんな少ないお金でアメ リカ全国がこんなに熱中するとは思っていなかったと驚いていました。  さて、最後に残ってくる戦略が処罰、あるいは規制路線です。小泉改革以降、規制はは やりませんで、経済的規制の緩和が政策の至上命題になっています。経済的規制を緩和し ますと危険が増大するというので、むしろ逆に社会的規制は強化するべきだと。経済的規 制を緩和するために社会的規制、安全対策等は強化すべきだというのが政策学の提案にな っております。したがってこの場合も、安全対策として考えていく必要があるのではない かと思われます。事実、諸外国では、この場合バイパスターゲットにしておりますが手術、 ある種の手術については規制されている。米国の場合には、地域予約で限定した施設のみ で行われている。フランスの場合には安全性を考慮して、パリ地域では例えば300例以上 のみに許可すると、アメリカ病院というのがあってフランスの病院ですが、それが適用さ れるか適用されないかということでもめているうわさを聞きました。ドイツも集約をして いるということです。  したがって先進国で安全性を配慮した施設基準がない国はありません。日本もぜひそう いう方向で、安全性の観点から規制を考えるべきではないかと、私個人では思っています。 施設基準というのは、そういう意味で安全性、質、教育の研修のための基準がありますが、 診療報酬が適切かどうかはいかがなものでしょうか。  結論を申し上げます。諸外国の先行研究では、特にIOMの評価、緻密にいろいろな評 価のステップを経て、やった結果としては多くの手術で技術集積性が認められていると。 その後もそれが確認されている。日本でも出版された13のうち、質の高い10論文につい ては集積が明らかになっている。私がやりました特別研究においても、かなりの手術で集 積性が示唆されたと。その結果、政策応用としては規制戦略と市場戦略があって、諸外国 でそれをまぜて使われておりますが、一般には規制戦略、安全性のために制限するという のがポピュラーです。日本では選択が始まりましたが、安全性確保のために施設基準等が 必要ではないかと思われます。そして支払い方式も、次のステップつまりPay for Performance、アウトカムや医療の質に対応した支払い方式というのも考えるべき段階に日 本も来ているのではないかと思われます。以上でございます。 ○福井分科会長  ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、何か御質問、御意見ござい ませんでしょうか。 ○南委員  長谷川先生、非常に興味深いデータをお示しいただきましてありがとうございます。非 常に参考になりました。先生が言われるのはごもっともで、やはりボリュームとアウトカ ムの関係はこのエビデンスメディスンを見ているとはっきりとする。現実に我々手術して いて、若い経験のないものが手術するのと、経験のある者が手術するのでは成績が変わっ てくることは当たり前のことは当たり前ですが、このように論文をレビューしての成績を 見せていただいて非常に参考になりました。  1つ私からつけ加えたいのですが、戦略の中で先生の言われる規制戦略、もう一つは競 争戦略といいますか社会の競争に任せるということですが、やはり私も競争性に任せるの であれば、よほどその社会のインフラといったものがないと、例えばクォリティーコント ロールをされて、きっちとされているというものがあれば一般の人がそういう情報を見た 場合に、この病院はいいということで判断なると思うのです。今日本で行われているよう に、ほとんど自己申告でクォリティーコントロールをなされている状況ですと、このよう な競争規制は非常に危険だと思います。ですから私もやはり当初から申しましたように、 施設基準をつくっていかないとクォリティーは保障されないと思います。 ○長谷川委員   おっしゃるとおりで、ニューヨークでリスク調整をせずに手術死亡率を公開いたしまし たから大騒ぎになりました。ですからもし公表していくとなると、その辺をきちっと方法 論的に固めていかないと誤解を生むのではないかと思います。  もう一つ、もしそういうふうにしてもなかなか一般の方はわかりにくい。以前、一度日 経の記者にインタビューされたことがあります。広告公開がなった3年か4年前です。第 一質問が、「済みません、平均在院日数とは何ですか」と聞かれました。我々にとっては当 たり前のことですが、一般の方にしてみれば何のことかわからないということがあるかと 思うのです。したがってこういういわゆる市場作戦といいますか、情報公開戦略をとった 場合には、いかに情報をわかりやすくしていくかということが大きな課題です。ニューヨ ークでもそのデータを使って、病院を選んでいる人は余りいないといううわさがありまし た。ただニューヨークの死亡率が下がって、ニュージャージーの死亡率が上がったという うわさです。 ○福井分科会長  ほかにいかがでしょうか。1つ伺いたいのですが、外国のデータ、日本での研究論文な どのレビューをされていつも疑問に思っていることの一つが、この厚生科学特別研究とい うので、いわゆる報告書になっているもののデータの信憑性ということがあります。もし できましたら、先生が平成14年度の研究で報告されたものはピュアレビュージャーナルに 掲載されることが必要ではないですか。 ○長谷川委員  10年間そう言われて続けております。これに限らずまだたくさんパブリックしていない のがあります。頑張ろうと思っております。 ○坂本委員  9ページに冠動脈バイパス(CABG)と書いてありますが、これ1983年あるいは79 年からのデータです。かれこれ20数年前のデータをもって今云々とあります。心臓外科は その間にかなり進歩、南先生もドイツでかなり進歩している事実を見ていると思うのです が、その点、時代の流れと当時の状況は随分違っていると思うのです。そこら辺をぜひ踏 まえていただかないと、歴史的な評価はいいのですが、現在の調査に基づいてきちっとデ ータを出されることも必要かと思います。 ○長谷川委員  バイパスの場合は、量とアウトカムに相関があるというのは明確になりましたので、ア メリカの場合などは政策展開をしてかなりケースが集まってきていると。日本で20例、30 例という話でなく、アメリカは200例、300例となってきています。そうなってくると差 がなかなか少なくなってくると。だから政策の結果があるので、おっしゃるとおりで歴史 的な変化を追っていかなければいけないと思われます。 ○坂本委員  2、3年前のJAMAの(2004年1月14日号)などにも、STSがもうすでに症例数 267000人で死亡率を全部出しています。是非そういうのも引用してもらいたいと思います。 ○福井分科会長  ありがとうございます。続きまして、前回の議論を受けまして本日は、日本心臓血管外 科学会で行った調査について、高本先生より御発表していただくためわざわざお越しいた だいております。お手元に配付している資料について御説明をいただき、その後質疑応答 を行いたいと思います。 ○高本参考人  私は心臓血管外科学会におりますし、胸部外科学会の監事でもあります。その2つの学 会が日本心臓血管外科手術データベース機構というのをつくりまして、こういうデータを データベースから分析をしております。リスクアジャスメントをやります。その結果をお 話したいと思います。(パワーポイント使用…*)  長谷川先生のいろいろな施設基準とかありますが、私はやはりこれは専門家がみずから ある程度やった方がいいだろうと思います。自分たちのデータというものを使ってしかも 正確なデータを集めて、ベンチマーキングをまずやる。その中からしっかりしたデータベ ース、現場にのっとった医療政策をつくっていかなければならないと考えております。 * 2ページ 本日の報告の構成  データベースを紹介しまして、ボリュームのアウトカムの報告をしたいと思います。次 お願いします。  * 3ページ 本日の報告の構成  * 4ページ 心臓外科領域におけるデータベース事業の成り立ち  我々のデータベースは99年に始まりました。ですから、もう8年たっているわけです。 アメリカは胸部外科学会のデータベースが世界で一番信頼性があるというデータベースで すが、項目はそれにのっとってやりました。  * 5ページ JACVSDにおけるデータ入力システム  インターネットを使いまして、このデータを集めて分析をしております。次、お願いし ます。  * 6ページ JACVSDのデータエントリー  全部で250項目以上ございますから、入れるのに相当時間もかかります。各施設にこの 大事さを訴えまして、やっと7年たちまして昨年リスクアジャスメントができました。先 ほどの長谷川先生のIOMのスコアでやりますと、18点のうち17点という非常にハイス コアをとっています。  * 9ページ JACVSDへのデータ登録の状況  このようにデータベースは37,000件のデータがありまして、次、お願いします。  * 10ページ 日本におけるNation Databaseに向けて  112施設が加盟しております。今は150施設になっております。施設としては22%。 症例数としては32%のデータが、250項目でインプットされております。  * 11ページ 参加施設へのフィードバック  各施設にとりましてはリスクカリキュレーターが配付されております。各患者さんに関 しましてデータを入れますと、その人が大体何パーセントの在院死亡率、手術死亡率が幾 らかというのが出るようになっておりますから、患者さんの説明にも非常に有用だという ことになります。次、お願いします。  * 12ページ 本日の報告の構成  これを使いましてボリュームとアウトカムの調査をいたしました。  * 13ページ Volume-outcome分析枠組み1  これはIOMの基準に基づいて、また胸部外科は95%以上のアンケート調査。これは症 例数と死亡数だけで集計しておりますが、それと見合わせて入力率に隔たりがある施設の データは省いています。しかも施設をサイトビジットして、データのバリデーションも行 っております。  * 14ページ Volume-outcome分析枠組み2  そうしますとIOMの基準を全部一応満たして、総点18のうち17以上カバーしており ます。30日死亡と手術死亡、それから30日死亡と主要合併症の発生率。それを施設と術 者の両方のクライテリアで検討を加えております。術前リスクごとあるいは年齢別の検討 も加えました。次、お願いします。  * 15ページ Volume-outcome分析枠組み3  そうしますと、我々のデータはC-indexが0.83とか0.84、0.71となりまして非常に信 頼性があるデータです。H-L testもプラスということであります。  * 16ページ Volume-outcome分析枠組み4  リスクモデルを冠動脈疾患と弁疾患、大動脈疾患とつくっております。大動脈に関して は世界で初めてのリスクモデルです。一番オッズ比の高いのが術前クレアチニンで4.95 でした。これは臨床ともよく合うもので、このリスクモデルをつくりました。次、お願い します。  * 17ページ 施設の年間症例数と30日死亡−胸部外科学会学術委員会調査  これは胸部外科学会のアンケート調査のデータです。単独のCABGの手術が15例以下、 16-30、31-50、51以上としますと、平均死亡率、これはリスクアジャストしていない生の モータリティであります。15例以下は3.79%、その次が2.60、2.17、1.61と、やはり症 例数が多くなるにしたがってデータの結果がよくなってまいります。これは待機手術と緊 急手術両方含んだ全部のデータです。欧米はこの分類はもっと数が多くて150ごとにやっ ていますが、我々日本データはこういうところが数が割りと多いものですからこういうデ ータを使いました。次、お願いします。  * 18ページ 年間症例数10件区分による死亡率の推移−胸部外科学会学術委員会調 査  この胸部学会のデータを10例ごとに見ました。そうしますと10例以下が3.15%、40 ぐらいになりますと1.86%、ごらんのとおり40例以上になると大体成績が安定してまい ります。年間に10例から40例ぐらいまでのところがだんだんと成績がよくなって、40例 以上になってくると成績が安定してくる。このデータは欧米では、変曲点が150です。変 曲点が低いという事は、日本は非常に丁寧に手術しているということになります。日本で は数が少ないのですが、一つ一つ丁寧にやっているということで、こういうデータが出て いるのだろうと思います。次、お願いします。  * 19ページ JACVSD(2003-2005)分析における患者の属性  今度はデータベースで、これでリスクアジャストメントしたものです。  * 20ページ JACVSD(2003-2005)参加施設における粗死亡率  そうしますと、粗死亡率で見ますと30日死亡で2.68、1.95、1.47、1.88これも優位に 差がありますが、そのほかの手術死亡率、30日死亡と主要合併症、これもだんだん症例が 多くなるにつれて成績がよくなってくるというのがあります。次、お願いします。  * 21ページ 各Volume指標と治療成績の関係  リスクアジャスメントした、施設の年間の種々の症例数です。全体の成人の心臓の手術、 CABG関連手術、あるいはCABG単独の手術。そのすべてどれをとっても、症例数は 30日死亡と手術死亡、30日死亡+主要合併症の結果と相関関係があります。術者の年間症 例数に関しましては、手術死亡に関係がありますが30日死亡とか30日死亡と合併症を起 こした症例数とは優位な差はございませんでした。  * 22ページ 施設と術者の症例数区分ごとのリスク調整済み手術死亡率  ですから、やはり施設の数の方が全体のアウトカムに優位にきいてくるということが言 えると思います。これは非常に大事なデータです。横軸に施設の症例数をとっております。 16-30、31-50、51以上。そして縦軸に術者の年間症例数を15例以下と、16例以上ととっ ております。年間15例以下の術者というのは、恐らく若い医師です。トレーニング中の医 師が大体こんなものだろうと思います。シニアとかあるいはその辺の部長クラス、あるい は大学病院ですと講師以上は年間にこれ以上やりますから16以上はシニアと考えて、15 例以下はジュニアと考えていただいていいだろうと思います。  それぞれにおいて、症例数に応じてごらんのとおり3.47%、2.52%、1.70%と、症例が 多くなるにつれて成績がよくなっているのです。シニアの方も、2.05%、1.90%、1.46% とこれも優位に下がってまいります。もう一つ大事なことは、症例数の多い施設の数が少 ない術者、つまり若い医者は1.70%です。症例数が少ないところのシニアと比べてもいい、 これは統計的に優位差はないのですがいい成績なのです。やはり症例数が多いところの方 が医療の質がいいということと同時に、症例数が多いところは若い医師の教育にも適して いる。しかも患者さんに迷惑をかけないで、教育ができるということになるだろうと思う のです。そういうことで、やはり施設の集約化というのが非常に大事な問題になってくる だろうと思います。  * 23ページ 術前リスク別のリスク未調整、調整済み手術死亡率の分析  これを術前のリスクが低い群とリスクが普通の群、非常に高い群との3つに分けます。 そうしますと、普通の群で2.78%、1.66%、1.26%と、これもやはり症例数が多くなるに つれて成績がよくなってまいります。高い群というのは緊急手術とか、心筋梗塞、あるい は腎機能が悪いとか、そういう群であります。これも症例数が多いところの方が成績がよ くなっています。術前の低いリスクのところは、やはり症例数がいいところはいいのです が優位差は出ておりません。ですから、どういう群においても症例数が多いところの方が 成績がいいという結果が出ているわけです。症例の数は4,500です。  * 24ページ 患者の年齢群ごとのリスク未調整、リスク調整済み手術死亡率の分布  これは65歳以上の高齢者と65歳未満と比べましても、高齢者の方が成績が少し悪くな っておりますが、これもやはり症例数に応じて成績がよくなっているということがいえる と思います。次、お願いします。  * 25ページ まとめ  なぜそうなるかといいますと、年間症例数というのは、ただ単に症例数だけでなく術者 の経験もあります。術者の経験が多いところにはやはりたくさん症例も集まってくる。そ れからチームの経験。バックアップする内科、麻酔科、皮膚科。治療中にほかの病気も出 てまいりますからそういう専門家が存在する。あるいは施設もよくなる。人工心肺技師な ども非常に優秀である。カンファレンスなども非常に活発に行われて、いろいろな経験を されるということで、やはりこの年間症例数というのはそういうところに関係して、結果 がこう出たのだろうと思います。  したがって医療の質の向上と、もう一つは、若手の医師の教育のためにやはり集約化は 必要であろうと考えます。  * 26ページ 本日の報告の構成  それでは医療の質向上のためにどうしたらいいか。次、お願いします。  * 27ページ 手術成績に関わるプロセス  数だけでなくいろいろな緊急対応、プロトコールの管理、手術適応に対する判断、こう いうことについても判断しなくてはならないわけです。  * 28ページ 施設集約化の限界  症例数と死亡率というプロットしたのは胸部外科学会から出ました。症例数が少ないと ころは非常にばらつきが多いわけであります。症例数がある程度よくなってくるとばらつ きが少なくなる。こういうのが一般的なデータです。ただ症例数が少ないところも死亡率 がゼロのところもあるという議論もございます。ただ、非常にばらつきが多い。ばらつき が多いというのは、ゼロであっても翌年はまた非常に高くなる可能性があるということで すので、やはりクォリティーをよくするためには症例数が少ないところを右に持っていか なくてはいかんだろうと。これだけでは十分いかない。こういうふうな数の多いところで も成績が悪いところがあります。次、お願いします。  * 29ページ 手術の質の評価・改善  手術数が多いけれど成績が悪い施設に対しては、一つ一つ施設においてその成績を検討 するということが、あるいは専門家、専門家集団にとって必要ではないかと思います。そ ういう意味で一つ一つのデータをちゃんとベンチマーキングする。これはやはりだれかに 強制されてというよりは、我々自身が、学会の会員としてみんなでみずから入れて、みず からのクォリティーを上げると。しかもそれをリスク調整してやるということが大事にな ってくるだろうと思います。  * 30ページ 心臓外科領域における医療の質向上への視点  3、4年ぐらい前にありました施設基準は、100例ということで突然出てまいりまして 日本の現状に対して余りにも急激でした。やはり現場のことを考えますと、ここで示しま したちゃんとしたデータをもとに集約化というものを考えなくてはいけないだろうと。100 という数字はある程度まともな数ではあると思いますが、突然100というのが出てきます とみんなが戸惑ってしまうわけです。3年でこの施設基準はなくなりましたけれど、現場 では国民のために本当に自己犠牲の精神で手術もやっているわけですから、そういう人も やはり大事にしながらやらないといけないと思います。次、お願いします。  * 31ページ 本日の報告の構成  そのほか。次、お願いします。  * 32ページ 施設集約化において検討すべき事項  集約化に関しましては、ただ単に数を集合すればいいというだけでなく、アクセスや医 療提供者、医療施設への影響ということも考えなくてはいけません。次、お願いします。  * 33ページ 集約化による手術成績への影響  例えばアウトカムだけでいいますと、集約なしで全部やりますと手術成績(死亡率)は 4.62%ですが、10件以下を集約しますと4.4になります。25件以下を集約すると4.28。 50件以下を集約しますと3.78、集約しますと成績がよくなっているのはシミュレーション でわかりました。次、お願いします。  * 34ページ 集約化による心臓外科施設 心臓外科医への影響  そうすると心臓外科医はそれだけ集約しますと失業ということもあり得るわけですが、 どれぐらいあり得るのか。例えば25件以下ですと100人ちょっとです。50件になると 200-280人ぐらい。この人たちをなんとかしなければならないわけですから、血管外科を やるとかあるいは一般外科をやるとか、あるいは循環器内科にするということを考えなく てはいけないということです。次、お願いします。  * 35ページ 心臓外科手術全症例の地理分布  これは日本の地図で、症例の多さに応じて高さで表されていますので、循環器センター が高いわけですが、やはり北海道の北端のところは医療過疎でして、冬などは手術ができ ないということもございますからこの地域性も考えなくてはいけない。数が少なくてもあ る地域にとっては必要だということもあります。次、お願いします。  * 36ページ 集約化によるアクセスへの影響  アクセスを考えてみますと、25件以下を集約しますと30キロ以上今までかかった病院 から動かなければならない、96人。50キロでは66人。そんなに大したことはありません。 50件になると、これが全部合わせると700人ぐらいになります。ですからそれほど大した わけではないのです。ただこういう人がいるわけですから、集約しますとヘリコプターと か交通機関を整備しなくてはいけないだろうと思います。次、お願いします。  * 37ページ 医療の質向上に向けた政策試案  そういうことで我々学会としても、このことを真剣に考えております。やはり症例数の 少ない施設に対して科の統合や施設の統合等集約化を、医療の質、安全性を保障する点か らも推奨しなくてはいかんだろうと思います。人員配置、施設設備など、施設認定は学会 としても基準をつくって、専門医の認定のためにも必要であろうと思います。それぞれの 施設は利害関係がありますから、学会内に調整機関を持ちまして人材配置、修練医育成、 緊急搬送体制などの調整をしなくてはいけないと思います。何よりも前回やってうまくい かなかったというのは、1月頃でしたか4月からやるという突然医療政策が決まってまい りました。やはりある程度の余裕が必要だと思います。例えば数が少なくても成績がいい 施設というのは必ず伸びてきます。1年、2年たったら必ず上がってきます。25例で集約 化の対象になりそうでも、成績がよければ翌年には50例あるいは60例になる。あるいは 新規参入のところもあるかもわかりません。最初は少ない。そういうところがちゃんとし てアクティビティーを非常にいい成績で出すためには余裕が必要です。やはり私は2年ぐ らいの余裕が必要だろうと思います。集約化するためには、正確なベンチマーキングです。 これは上からお仕着せのベンチマーキングでなく各学会が自分たちみずからやると、しか もそれのフィードバックが受けられると、そういうベンチマーキングをとおしてクォリテ ィーコントロールをしなければいけないと思います。次、お願いします。  * 38ページ 本日の報告の構成  * 40ページ 手術成績の改善に向けた3つの戦略  構造・プロセス・アウトカムですが、手術においてはアウトカムは非常に大事になって きます。それにはさっきも長谷川先生が言われましたPublic Reporting、Pay for Performance 、Pay for Participationという戦略があるわけです。次、お願いします。  * 44ページ 医療の質評価・改善の戦略に向けて  やはり一番何をするにしてもベンチマーキングが非常に大事です。正確なデータを知ら ない限りいろいろなことができません。リスクアジャストした上で、しかも施設から数多 くの参加を得てベンチマーキングをする。そのベンチマーキングはただ単に情報として使 うのでなく、その施設にもフィードバックしてその施設がみずからクォリティーコントロ ールに使うということが大事だろうと思います。それに対するPay for Participationが 最初で、今度それが行われるということです。こういうちゃんとしたベンチマーキングに 診療加算をすべきであります。単にバリデーションもないような報告、例えば新聞などで もランキングが出ておりますが、ああいうことに関して加算するようではだめだろうと思 います。ちゃんとバリデーションもあるようなしっかりしたベンチマーキングに加算をす る。その上でPay for PerformanceそれからPublic Reportingとこういう方向に行けば、 スムーズにいろいろなものが進むのではないかと思います。次、お願いします。  * 45ページ 最後に  最後にやはり専門家を中心にしたベンチマーキング。Pay for Participationをまず設 定して、それにはリスク調整をちゃんとして公正な指標を設ける。それには小さな数では ベンチマーキングできませんし、クォリティーも保障できないということで施設の集約化 ということを同時に考えなくてはならないだろうということです。どうもありがとうござ いました。 ○福井分科会長  ありがとうございました。それでは御質問なり御意見なりございませんでしょうか。よ ろしいでしょうか、ちょっと余分なことかもしれませんが先ほどの長谷川先生のデータも そうですが、サイエンティフィックに信頼十分できるものだと思うのですが、やはりだれ かがピュアレビューしたアカデミックジャーナルに先生方のデータが出れば、またそれが ポリシーメーキングにより信頼性を持って使われると思うのですが、いかがでしょうか。 ○高本参考人   もうすぐ出ます。今年中にはパブリッシュされると思います。 ○福井分科会長  いかがでしょうか、南先生、大分外国のデータと違って、数が少ないところでもプラト ーに達するということですが。 ○南委員  そうですね。ただいま高本先生が非常に興味深いデータ、私の知らないデータも発表し ていただきまして非常に参考になりました。今までの学会から出てくるデータと、きょう 高本先生が示されたデータが全く違うといいますか、よく何々学会からということで、学 会が推薦してくるデータは学問的なことは非常に表面に出ますが、実際にはどうなのか、 そして死亡率がどうか、クォリティーがどうかというのは出てこなかったように思うので す。30年間日本にいませんでしたからそれほどつかんでいないかもしれませんが、今高本 先生が御発表された2つの大きな心臓血管外科の学会を統括したようなデータですが、こ れを見ますとやはり専門家を中心として施設基準をつくっていくということに関しては、 そこまでみんなのコンセンサスがあるのであれば、これは厚生労働省指導だけで「やりな さい」と。私はドイツいたので、ドイツの場合は公立病院が大半ですから100%厚生省が 指導で物事が運んでいます。歴史からいって非常にうまくいっています。日本にどのよう な制度を導入するかということに関して、私はどちらかといいますと厚生労働省指導でき ちっと例えば50なら50以下はやってはいけませんよというのがいいのではないかと思っ ていましたが、今学会が、先生が中心になって非常に御足労されてやっておられる仕事を 見ますと、学会が中心になって十分にできるような、また厚生労働省と一緒になって十分 にできる姿勢ができているのではないかと判断しました。 ○坂本委員  私も、先ほどの学会の同じ理事をやっています。去年の忘年会でも私どもは死亡率が高 いところはもう閉鎖しろと、逆にこの4月からは医師も派遣するなと。そうすると自動的 に医師不足で手術はとまるだろうと、逆にポンプテクニシャンを大学に引き抜いてしまっ たりとか、間接的なあるいは直接的な引きあげ方法もとっています。  一つはこういうデータを学会で出したときに、学会自身が自浄作用を持たなければだめ です。国には規制だけがあるだけで自浄作用がないです。そこが学会主体で行う場合は違 うのです。その点をぜひ理解してもらうと同時に、先ほどの250パラメーターをインプッ トするだけで臨床現場の負担は大変なのです。入力方法の指導を受けた上でデータ入力を 行いきちっと学会サイドに戻ってきます。と同時に、各施設の倫理委員会を通した上で許 可を通してやっています。倫理委員会を持たないところに関しては学会の倫理委員会で外 部調査員を入れて動くとか、厚労省、文科省が出している倫理指針にもきちっと基づいて 許可を得た上でやらざるを得ない。そこら辺をきちっと満たしながら、心臓外科人数が少 ないところで患者が少なくてもそれなりに忙しい中でこれ全部入れているわけです。恐ら く外科系、内科系合わせて高本先生の肩を持つわけではありませんが、私どもの施設もや っていますが、ここまで自浄作用を持ちながらやっている施設に育ちつつありますので、 それをぜひ逆に国がファイナンシャル的にサポートしてもいいのではないかと考えます。 また保険点数を患者に直接加算して云々よりも、トータルでもって施設の加算的な、大き な意味では国策としてあってもいいのではないか。その結果、5年、10年たったときに、 もっとエビデンスを踏まえた法規制なり経済規制なりというのができるのではないかと思 います。ぜひその方向でも検討をしていただきたいと思います。 ○福井分科会長  ありがとうございました。 ○坂本委員  もう1点、今日来たばかりで発言をして申しわけないのですが、高本先生のスライドナ ンバーの16番をごらんになってください。分析枠組みの4になりますが、ここでリスクの 高いものに慢性呼吸障害があります。それから術前クレアチニン、したがったどんなに手 術をやっていても透析施設を持たない病院で数を300、400やっていますと、ある意味で最 初から透析施設を持たないということでクレアチニンの軽いものを選びます。それから呼 吸器では循環器専門病院ではどうしても大人・子供を含めて多いからと、老人の間質性肺 炎とか慢性呼吸器障害を持った者をお断りした場合には、ここにあります2大リスクファ クターの症例が最初から抜けるわけです。この様な要因は従来の施設基準等には一切含ま れておりません。  私どもは大腸がんであっても間質性肺炎もあればいろいろなものを絡めてやっています。 そうしますと、全身麻酔でがんの手術ができるものはいろいろなセンターで行っておりま す。腰椎麻酔で大腸がんの手術をしたり肝臓がんをと思わぬところでやるわけです。それ は呼吸器内科を動員したり、サイクロスプリンを使いながらやったりとしています。ほか の外科も同じだろうと思いますが、高齢社会になって術前クレアチニン、腎機能が悪い、 呼吸機能が悪いという症例を外してやった手術数の多い施設というのは逆にいい方にラン クされます。そういうところは学会の自浄作用を持ちながら学会が出したパラメーターで 見ていかないと、ある意味で見えない点だろうと思います。この点も十分御理解いただけ ればと思います。 ○福井分科会長  いかがでしょうか、ほかに。大変説得力のあるデータをお示しいただきましてありがと うございました。 ○松山委員  大変貴重なデータと感じました。36施設のデータですか、もう少し施設がふえて御検討 されるということはないのでしょうか。 ○高本参考人  データを入れるのは結構大変ですから、事務局が毎月「あなたのところは何例入りまし た」と連絡するわけです。それでも日常の診療が忙しいものですから、入ってないところ があるわけです。胸部外科学会で例数と死亡例だけは把握しているものですから、それと ディスクレパンシーがあるのは除きました。ですからみんなの認識が高まりますと、もっ とよくなります。とにかく初めて昨年の10月にリスクアジャストできたわけです。そのた めにはいいデータをつくるために記入率の悪い施設は削りました。実際、今は151施設ご ざいます。 ○南委員  先生、データを入れてこないところに罰則を加えるということはできないですか。 ○高本参考人   半分以上の施設が参加してくれますと罰則ができると思うのです。専門医認定施設から 外すとか、それはできると思います。まだ20%から30%ですから、もう少しこっちに努力 が要ります。ただこれによって、いろいろなメリットが各施設にできてまいりましたから、 みんなが認識してまいりました。アメリカとも共同研究ができるということで、学会とし ては全体に盛り上がっていますのでぐんと上がると思います。もう50%超えますとドンと 強制にすることができるかと思います。 ○福井分科会長  先生のところの学会のこういうアクティビティーを、ほかの学会の方に広げていただく にはどうしたらいいと先生はお考えですか。 ○高本参考人  相当な努力が必要です。アメリカも胸部外科学会が先頭になっていろいろなデータベー スに関しましてやっています。これをそういうことに関しては、我々もお手伝いをする覚 悟ではいます。だからそこの学会が本当にやる気がないとできません。 ○長谷川委員  それにつきまして、名古屋大学の二村先生が前の日本外科学会の会長さんですが、4つ か5つかの学会を束ねて、こういう活動を開始されています。 ○福井分科会長  そうですか。やはりノウハウをもっと広めていただくということがいいのではないかと 思います。と言いますのは、やはりゼロから先生方がやられたようなことをそれぞれの学 会がやろうとすると、また長い期間がかかります。ある程度指導していただいて、こうす ればこのようなデータが出るというところで期間を短縮してできればいいと思います。個 人的な意見です。 ○坂本委員  私、院長をしている立場から見ますと、心臓血管外科というのは、材料も高いそれから ポンプテクニシャン、麻酔科も人数が要る。いろいろな意味で夜のナースの動員も多い。 採算は若干黒になりますが、採算のとりにくい大型企業ですがすごく見ばえはするのです。 1件緊急手術をやると、一晩で700万円とか。点数も2倍、3倍になるとか、一見大きく 見えるのですが実際、いろいろなことをやって純益を見ると少し程度のプラスバランスで ある。そこで逆に何かが起きた場合の、きのうも東大が新聞に出ていますが、一方でそう いうリスクも絶えず伴う。しかし国民を救うために医療上の尺度的な何が存在しなければ ならないのか、国策的にやはり他の外科もこれにも参考になるような仕組みに持っていく べきだと考えます。法制化してどこかで国策として、きちっとエビデンスを集めた上で行 政に持っていけばもっとすばらしいものになるのではないかと思います。  一方、腸管縫合とか大腸外科が一番外科では売り上げがいいのです。なぜかといいます と針と糸しか使いません。何も治療材料がないのです。患者が来て縫ってきちっと退院す れば、これは人件費も麻酔科もテクニシャンも何も要らないのです。一番外科の中では効 率がいいです。肝臓外科も脳外科も心臓外科も、整形外科も材料、人件費が多くなかなか 難しいのです。そういうところも踏まえて、胃がんも乳がんもいろいろなものがありなが らどうのこうのでなく、現場の厳しさを踏まえた上で何を選んで国策として、何を選んで 投資していくのか、何をエビデンスに求めていくのか、国民サイドもそこら辺をきちっと 分けて考えていくべきです。しかし関節など完全には治らないけれども若干障害を残して 復帰できるかもしれないとか、そういう医療レベルその中にまた高齢者と老化現象の中で、 病気なのか老化現象なのかを区別していかないとそこら辺ごちゃまぜで心臓外科も脳外科 もいろいろなものが入る。先ほどの虫垂切除まで入ると、これは本質ではない、ある程度 ずれているのではないかと思います。 ○福井分科会長  ありがとうございました。それでは次のテーマに移りたいと思います。前回の議論の中 で、大江委員から本分科会に関連のある調査研究としまして、本年度から実施する厚生労 働科学研究費補助金の研究の内容について御報告をいただいたわけですが、その進捗状況 について簡単に御報告をいただければと思います。 ○大江委員  それでは前回、前々回も計画を御報告しました「外科手術のアウトカム要因の解析と評 価方法に関する研究」の調査の進捗状況を御報告したいと思います。調査目的や方法につ いては、前回、前々回で概略を御報告しましたので省略させていただきます。その後の経 過を御報告したいと思います。  その後、当初11月からスタートしていきたいということで計画を御報告しましたが、関 係協力いただく学会との調整の関係で11月からスタートしたものもあれば、1月に入って からスタートしたものもあります。そこに書きましたように、6つの学会から協力してく ださることになりました。一緒に進めておりますが、調査の進める主体をどういうふうに するかということについては、学会ごとにそれぞれの体制あるいはお考えで違っておりま す。  日本外科学会、日本胸部外科学会、日本脳神経外科学会につきましては、学会が主体と なってデータを収集して解析を行うというお返事をいただきました。現在のところ、まだ 調査期間中ですので学会の方に具体的に今どういう状況にあるかということは詳細に問い 合わせておりません。3月末になった時点で調査の紹介をさせていただき、その後データ を解析するに当たり一緒にさせていただくという方向になっています。  具体的な方法としましては、1番はウエブのデータベースに直接医療機関票と個票を入 力していただくということで、学会の方でサーバーを管理してやっていただいております。 日本胸部外科学会については、1月の後半に全学会のホームページ対して載せていただい てデータを収集していると聞いております。これは先ほどの高本先生の御報告にあった調 査と重なるところがあると聞いております。ホームページによりますと、高本先生の方の 調査に参画されている医療機関については、こちらの調査に参画してもしなくてもよいと いうことになっているようです。  日本脳神経外科学会については、学会の方で自主的にホームページをおつくりになって そちらでデータ収集をしていると聞いております。  (4)(5)(6)の日本産科婦人学会、日本泌尿器学会、日本整形外科学会については共同で 行うということです。ただし、データの調査の催促、回答の催促に対して人手を割くとい うことが事務局では難しいということから、研究班の方でするようにという指示がありま したので研究班の方でデータ収集をして個別に医療機関に催促をしているという状況です。 ということで今日は、(4)(5)(6)について状況を統一的に御報告したいと思います。  次のページにいきまして4番に相当する婦人科手術のアウトカム研究です。調査対象は 日本産科婦人科学会に登録されている265の婦人科腫瘍登録医療機関に対して、担当して いただく医師のメールアドレスをファクスまたは郵送、e-mailで返事をいただくという通 知を郵便で全医療機関に学会と研究班の連盟で出させていただき、登録をしていただいた ところに対してファイルをお送りして、エクセルのファイルを返却いただくという形で行 っております。先ほどもお話が出ましたが、単に郵便を送って依頼するというだけでは、 なかなか御協力いただけない。別に協力したくないわけでなく、普段の仕事に紛れてしま うという状況が多いようでして、一通りすべての医療機関に電話で研究班の事務局の方か ら状況を問い合わせてお願いをしました。  その結果、現在までに265施設のうち16施設は当該手術をしていないということで、残 り249施設のうち187施設、75%について協力をしてくださるという回答を得てメールア ドレスの登録を経て回答をいただくように、今後さらにお願いをするということになりま した。  協力困難といいますのは、協力したいけれどもどうしても人手が足りないので難しいだ ろうというところがほとんどを占めております。  現在までに次のページで、参加承諾をされた187医療機関のうち、2月11日の時点で 47医療機関が医療機関票を返してくださっております。そのほか45の医療機関から127 症例が登録されているという状況です。ただ、回収率からしますと、さらに2月、3月も う一巡、二巡あたり電話でのお願いをしないといけないかと考えています。  次に泌尿器科の手術ですが、これは対象は根治的腎全摘術ということになりました。学 会に登録されている1,216の医療機関すべてに対して同じ方法で依頼しましたが、これに 関して、回答はウエブでいただくということにいたしました。この1,216のすべての医療 機関に対しては2回、研究班の事務局から電話で担当の方にお願いをするということがで きました。当該手術をしている1,121の施設のうち817施設、73%から協力をしていただ くということになりました。  現在までに、次のページですが、817医療機関のうち595の医療機関について医療機関 票の入力を完了。この完了といいますのは、この場合は直接その担当のドクターがウエブ で入力をしてくださったということになります。それから症例の個票については197の医 療機関から488症例が登録済みという状況です。  整形外科に関しては、人工股関節の置換術と人工膝関節の置換術の2つの手術を対象に、 これはかなり学会登録数が多くて2,061の医療機関を対象にウエブサイトでの入力をお願 いするという形になりました。医療機関数が多いので、すべての医療機関に電話でのお願 いは完了しておらず実施の最中であります。2,061の施設中、この手術をしていないと回 答したのは247施設が現在までありました。残る1,824施設のうち現在までに協力をして いただくと回答を得たのが755施設、41%になっています。  整形外科の場合は学会の方での御希望があって、かなり調査項目が多くて特に術前の患 者さんの個票の調査項目が多岐にわたって入力項目が多いことがありまして、入力してみ たけれど、これではとても続けられないということで協力が難しいという施設も比較的多 くありました。  そういうわけで協力していただくという医療機関は510近くには上っておりますが、現 在までに実際に個票として登録されたデータ数の医療機関数としては86ないし99、個票 の数で400弱という状況にあります。今後さらにもう一巡電話をして担当のドクターにお 願いしたいと思っています。もう一つは研究費の経理の年度末の処理が、どうしても3月 には電話催促のための人件費をうまく活用できないということがありますので、4月に入 ってからさらに催促をすることが起こるかもしれないと考えています。若干人の異動など がありますと、協力いただくと回答してありましたが実際には個票をいただけないという こともあるかもしれませんけれど、今後さらに回収率を上げたいと思っています。  全体として、やはり先ほど高本先生からの御発表の中でも強調されていたのと全く同じ ことを印象として持っています。個々の医療機関、担当のドクターは協力はしたい、こう いうことをきちんと登録して学会が解析することは必要だということはよく認識されてお られますが、大学病院規模ですと比較的入力していただける人手もあるようですが、各地 域の病院ですと手術が終わって、当然次の診療、日常の業務がありますので到底入力でき ないとい意見がかなり多くありました。完全にボランティアベースでやっていただいてい ますので、先ほどお話がありましたように、やはりこういうデータの質を確保した状態で 集めるためには、何らかのインセンティブを医療機関それから個々の学会に対して支援を 考えることが必須だろうと痛感しているところです。  データの詳細の解析は、3月末の時点で1、2、3番の学会にも調査状況をお伺いした 上で4月以降に解析を進めたいと思っています。手術の種類、6学会ということ、それか ら回収率などを総合的に考えますと、今回の私どもの研究の結果は傾向をつかむというこ と、あるいは調査上の問題点を明らかにして今後の改善に向けてどういう施策が必要かと いうことには生かしていただけると思います。データの得られた解析結果自体を診療報酬 の反映にどうするかという面で使うには、不十分な結果になるのではないかと思っていま す。 ○福井分科会長  ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御質問ございませんでしょ うか。長谷川委員。 ○長谷川委員  研究デザイン上、特に施設間の格差等を研究していまして2点気になることがありまし た。1つは、これ対象が学会登録です。そうしますと、登録しているということはかなり いい施設となります。問題は登録していないどこか端っこで勝手にやっているというとこ ろが物すごく問題です。もし、手術格差を調べるのであれば、研究デザイン上全国の代表 制をとって学会以外の施設も含めないと答えが出てこないのではないかと思います。極論 を言えば、ここで差が出たら具合が悪いのです。学会が認定しているのに差があることや 死亡率が高いとなると大変問題だと思います。  もう1点が、この研究の対象疾患にがんが多いのです。そうしますと短期間の死亡とい うことは、がん場合は短期死亡と長期死亡の両方を考える必要があります。長期死亡とい うのは5年生存率です。通常は治癒率というのは5年生存率を見ています。一部の施設の 考え方、僕が間違っていると思うのですが、一生懸命に頑張って短期で少し死亡率が高く ても5年生存率でやっているのだということを言われる方もあります。何が言いたいかと いいますと、疾病によっては短期の死亡率では無理ではないかということです。心臓手術 等は30日、60日、90日で十分だろうと思うのですが、疾病よっては長期の用法を考える 必要があるのではないかと思います。  この2点で、せっかくデータを集めても分析できないのではないかという心配をいたし ます。 ○大江委員  1つ目の問題は、デザインの段階で研究班でも懸念を持っていました。学会ともよく相 談した結果、今回の調査対象に関する手術をしている医療機関としては、正確に真値がわ かりませんので確実なことは言えませんが、バイアスがかかるという形でごく一部が登録 されているというわけではないということは一応確認はできています。ただ実際、1例以 上手術をしている医療機関のリストが確実な形で得られているわけではありませんので、 先生の御指摘いただいているところは問題としては残ると思います。  2番目の問題も、これも前回、前々回も御意見もいただきましたし、我々もそういうふ うにも一部思うところがあります。ただ今回は外科手術のアウトカムというのを、何をも って手術のアウトカムと考えるのかということと多分関係していると思うのです。例えば がんの長期生存率の場合は、当然手術後のさまざまな併用療法のことも関係してきます。 それは当該手術の手術時の技術の環境のアウトカムとは違う要因を多く含んでいるわけで す。そういう意味では、短期の手術成績、しかも今回は生存率を議論するのではないとい う調査をしていますので、対象を悪性腫瘍に絞ってもその範囲以内での外科手術のアウト カム評価はできるだろうと考えています。 ○福井分科会長  ほかにいかがでしょうか。 ○坂本委員  実際私、日本胸部外科学会の保険診療問題担当をしている者で、この間1月1日からや っと始めるところまでこぎつけました。高本心臓血管外科学会理事長からも先ほど提案が ありましたように、データベースという一方では確固たる、まだまだ参加してくる施設の 多いものを持っているという中で、なんとか1月1日からホームページに載せました。20 万円かけて友達と一緒につくって載せているのです。この中で先ほど協力困難施設という のがありました。私どもの中では国立がんセンター、静岡県立がんセンターの大きいとこ ろが抜けています。これは忙しくて協力困難という意味ではありません。法的にこれが問 題があるということを指摘されています。これにこたえるために相当四苦八苦しながら結 果的には協力困難に至りました。この間の過程の中で、大江先生の研究計画書を全部見せ ていただきました。本来厚生科研費の17年12月12日と、中医協で問題になる8カ月前に これは既にプログラムができているのです。そこにさかのぼって全部調べさせてもらいま した。その中では、「介入のない臨床研究」という言葉で提案されていて、各施設の倫理委 員会にかけるということが書いてありますが、これが今になって問題視されています。私 も余り倫理感がなかったものですから困りました。調査していきますと、基本的には厚生 労働省及び文部科学省が決めた研究に係る臨床指針でございます。平成14年4月1日に改 定されて、これが広く流れています。  個人情報保護法が設定されても、この規制はいまだに倫理として残っています。そうす ると現場でカルテを見ながら、これを匿名化するときにそこに倫理感が問われるのではな いかと思います。したがって日本胸部外科学会がホームページに載せて、これに協力せよ とおっしゃるのであれば日本胸部外科学会としての研究計画書をいただき、それをもとに 病院の倫理委員会にかけて許可を取ることになり、多分その病院は整形外科領域あるいは 脳外科領域も同じ理由で研究計画書がない以上今回の調査から抜けてくると思います。恐 らく循環器においては、大阪の方がどう動くかというところが微妙なところで今学会の最 中ですので、その返事をどこかで聞こうかと思っています。  厚労省直下にある大きな症例数を誇る病院が、逆にこの調査の中で抜けています。大江 先生自身はこの研究は匿名化したものを集めてデータ整備ですから、彼自身の研究プログ ラムには倫理はある意味で要らないのですが、これを全国に投げるときに、東大の所属の 中の倫理委員会を通っていれば各地方の病院で倫理制度のないところでも届けて調査でき たわけです。それを問われた場合どうかというのが出てきまして、若干国立病院機関の方 から雑音が流れてくるのでちょっと困っています。  3月を終えてふたをあけて見たときに、これをどのようにするのかと、ちょっと今の大 江先生のお言葉を聞いていると心配になります。ふたをあけない方がいいのかと役に立た ないものにこんなに苦労して現場に負担をかけてまでやろうとしていたのに、逆にお話を 聞いていますと雲散霧消するのであれば・・・・・また一方では、したがってデータベー スに入れているところは、こちらエクセルにはいいよという投げ方です。いずれ日本胸部 学会としてはまとめて両方ふたをあけるのですけれど、そこら辺がちょっとがっかりした と思います。 ○大江委員  まず倫理に関しては、研究班としての研究倫理と個人情報保護に関する見解というのは 文書でまとめています。各学会あるいは医療機関から問い合わせがあったところに関して は、こういう見解でということを文書で御報告します。ただしこれは研究班の見解です。 個別に学会あるいは医療機関がどういう見解をお持ちになるかはそれぞれの立場ですので、 それぞれで判断いただきたいということにいたしました。  それから東京大学としては、11月に研究倫理委員会に申請を出しまして手続をとってお ります。既に承諾は得られております。11月の時点で各学会にお願いするときには、まだ 審査中でしたので、先生のおっしゃるようなやり取りの中で、特に学会から医療機関にお 願いするときにそういう問題があったことは、私も承知しております。  それからさっき、最終的に得られたデータが施策に生かせるかどうかということについ て、私は必ずしも明確にそれを生かせるという自信があるとは申しません。それは当然で す。最終的にふたをあけてみない限り、どの程度の回収率かわかりません。特に手術症例 数が少ないと予想される機関からの回収率がどれぐらいなのかもわからない段階で、この 研究の結果をぜひ使っていただきたいと言うのはかえって無責任だと思いますので、そう いう意味で発言させていただきました。 ○福井分科会長  ほかにいかがでしょうか。 ○辻分科会長代理  長谷川先生の話の蒸し返しになりますが、がんの場合に、やはり短期的な生存率よりは 5年などの長期生存率あるいは再発のない生存率ということが本質的に重要になってくる のではないかと思います。その辺を考えなければいけないと思います。これは恐らく循環 器疾患、先ほどのCABGにしても30日死亡率ともちろん大事な話ですが、それが固まっ てくるともう少し長期効果はどうだという話になってくるわけです。その長期効果を見て いくときに、長期追跡するための体制を今からつくっておかないと、結局その病院で追い かけることができただけの、よりよいバイアスのかかった症例だけで生存率を出しました というようなかなりいい加減なデータも出てくる恐れがあります。少しその辺も長期的に 考えた方がいいのではないかと思います。  そのときにどうしても考えなければいけないのが、また倫理の話です。そういった長期 追跡することの倫理的な御本人の同意など、その辺がかなり臨床研究の中ではネックにな っている部分があります。疫学研究と臨床研究と倫理の指針を見ていますと、かなりずれ があります。臨床研究の方は同意のところがかなり厳しいのです。そのためにせっかくこ ういう最終的に患者さんのためになるようなことをしようとしていても、足を引っ張って しまうといった自家撞着のところがあります。その辺も含めて総合的に考えていただきた いと思います。 ○南委員  先ほど大江委員からの報告で感じていたのは、6学会をまとめるのはなかなか困難だと、 これは当たり前のことです。このデータが出ないと、施設基準は進行しないものでしょう か。といいますのは、先ほど高本先生からも提出された胸部学会のデータは非常にいいデ ータが出ています。もう既に心臓血管に関してはこういう施設基準を持っていこうという ふうにすることができないのでしょうか。でないと、やはり先ほどのデータでも明らかな ように小さなところで未経験な者が5年、6年と過ごしていると、そういう人たちの医者 としての成長も非常に危ぶまれる。そしてまたそこにかかっている医療費、そこにそのよ うな小さな施設に心臓施設としてうたっていることによって莫大なお金が費やされている と、いろいろなことを考えますと一日も早く施設基準はつくるべきだと思うのです。それ を50例で絞るか100例と絞るかということは、高本先生も懸念されていたように一朝一夕 ではできないと思いますが、ある程度のタイムスケジュールをもって話を進めていくべき ではないか、別個に進めていくべきではないかと感じました。 ○福井分科会長  私が理解しているところでは、この分科会では、できるだけその手術と手術の数とアウ トカムの関連性について科学的な視点から関連があるかないかとか、そういうふうなこと をこの分科会として意見をまとめることが第一目的だと思っています。高本先生や長谷川 先生がプレゼンテーションされましたけれども、それを踏まえてポリシーメーキングまで 恐らくこの分科会でするというのは求められていないのではないかと、私は理解している のですが事務局いかがでしょうか。 ○事務局(中野医療課課長補佐)  座長(分科会長)の発言のとおりでございます。事務局と致しましては、当会議におい て、ご議論いただきますが、最終的には調査結果をもとに議論するということです。日本 胸部外科学会からのデータ等も出ていますし、ほかにもいろいろなデータが収集されてい るところでもありますので、そういったデータをもとに御意見をいただきながら決めてい きたいということで考えております。  ただ、この調査分科会におきまして、手術の施設基準についての方向性はいただくとし ても、決定ということにはなりません。上部の診療報酬基本問題小委員会等で議論いただ いた上で方向性が決まっていくと認識しております。 ○長谷川委員  南委員の御発言をフォローするとすれば、本日お示ししましたように日本でも既にたく さんの研究が、たくさんといっても13ですが、そのうち10、特に質の高い論文では相関 が示されているということですのでエビデンスとしてぜひお使いいただきたい、プラス私 の方を使っていただくと幸いであります。 ○大江委員  私も今南先生の意見に賛成な部分があります。つまりこれは対象疾患によって当然違っ た結果が出るでしょうし、同じ結果が出るのかもしれません。ただエビデンスに基づいて ボリュームアウトカムを評価するという立場からすれば、この疾患についてはそういう結 果が得られているというものについては、ここで議論してそれを評価する方向に持ってい くというのが当然だと思います。例えば今回の厚生科研の中で、比較的回収率が高くてそ れなりにデータは得られているけれども、ボリュームアウトカムの関係が見られないとい う結果が出たものについては、それに対して新たな評価を持ち込むというのは科学的でな いでしょう。そのあたりは個別に考えるべきことではないかと思っています。 ○福井分科会長  全くそのとおりだと思っています。恐らくここでも100%確実に関連性があるとか、 100%絶対に関連がないという結論は、そもそも疫学的なデータに基づくわけですのでそう いう言い方はできないと思っています。ただ、ある程度のレベルづけはできると思います。 ほぼ確実に関連があるとか、ほぼ確実に関連性がないという何かしらグレードをつけた関 連性について報告を出すという格好になるのではないかと思います。ただ、調査もしてい ない手術について総論的にすべて関連があるということは一切言えません。そこから先は ポリシーメーキングのときにデータのない領域についてはどうするかというのは、別のと ころで決めていただくより仕方ないと思います。 ○長谷川委員  会長の御意見でありますが、私はたくさんの文献をレビューし、かつまた幾つかのレビ ューをしてきました。結論から申し上げると、基本的に関係ある。したがってそれをない ということを証明する必要がある。だからこの会自身の最初の出発点は余り意味がないの ではないかと思っております。もともとあるのだと、だからそれを「ない」というのであ れば「ない」と証明しなければならない。あるいは「ある」という場合に、それをポリシ ーとしてどうするのだと。例えば改善するためのどこからどの部分にどうするのかといっ た議論、少なくとも諸外国の議論はそこまで既に進んでおります。 ○本田委員  済みません素人の発言ですが、きょうの先生方の発表を聞いていて、やはり分科会で決 定づけをどうするかと、どちらにしても決定は親の会議なのでこちらではそういう方向性 を出すということできっちり、長谷川先生がおっしゃったようなことはきっちりやってい ただきたいと思います。  もう一つの視点として、きょう高本先生が御発表されていましたが、ではそういう言い 切れないことは言い切れないのかもしれませんが、そういう研究をちゃんと進めていこう と、育てていく視点を診療報酬などに投入してはどうですかという方向性をここで出すと いうこともあると思います。それをまたここの意見としてまとめて、さらに上で議論して いただくということは必要かと思います。 ○福井分科会長  それは報告書としては十分できると思います。 ○坂本委員  今、本田委員からお話がありましたが、基本的にはここの会は、先ほど大江先生のプロ グラムがあってその後中医協でお話をしたのですが、なぜそのときにここでの独自のプロ グラムを打ち立てなかったのかと、最初にどういう調査方法、どういうパラメーター、ど ういう機関でいくのかです。それが第1点。  それは仕方がないことですが、後は施設基準を満たしている病院でも死んだ場合、施設 基準の登録の病院だと思って来たのに何で死んだのかと聞かれたら何と答えられるのです か、日本は100%できなければだめなのですか。この点は外科医に対してどういう水準を 設定していくのか。これを見ていても500例以上やっていても100人に1人、100人に2 人死ぬわけです。多分ドイツでももちろん死ぬと思います。人間いつかは死ぬのです。そ の点をこのプランニングはどこにポイントを置いていくのか、それがないと国民は何しろ 全部助かると思って最近は病院に来ます。物すごくイージーに考えて来ます。その点もや はりいかなるものかとして設定していかないと、施設基準の登録の病院だから安心してき ました、ホームページにもそう書いてあるではないですかと言われたときに、100人に1 人は死ぬんだよということで、たまたま当てはまったときにどのように納得していかれる のか、医者に説明責任が求められてよく説明しているけれど、結果が悪ければ相手の理解 責任は問えないです。これは一つの問題点です。 ○本田委員  それについてはやはりこういうデータをきっちりまとめていって、現状こうなんだと。 100例に1例なのか2例なのかわかりませんが、これが施設基準を設けた上でもこういう ものなんだと。諸外国でも、こういうものなのだというデータをきっちり出していただか ないと理解も深まりません。ない中で、今医療は何でもできるのが当たり前と思ってしま うのは、やはり情報が与えられていないという現実があります。そこは一緒に理解をして いかなければいけないと思います。 ○福井分科会長  栗山委員、いかがですか。 ○栗山委員  本田委員のおっしゃるように、情報がない中で今選択を迫られています。やはり情報開 示をし、それを見る手段といいますか、見る方法を情報提供していく中でそういう文化を 育てていくといった段階ではないかと思います。施設基準を満たしているのに死んだとい う見方もあるかもしれませんが、そこには何か別の要素が入るかもしれない。失敗して亡 くなったのか、それともどうしても助けられない要素だったのかということも、お互いに 理解し合っていく道筋の一つとして、情報公開がまずベースにないと何もわからない中で 判断はできないと思っています。 ○福井分科会長  情報の開示に係る問題ですので、次回以降も検討したいと思います。最後に羽尻委員が 前回の議論を受けまして、御発言があるとの申し出を受けております。参考資料をつけて おります。御説明をいただけますでしょうか。 ○羽尻委員  前回の会議から時間もたっておりますし、今大江先生からの研究が既に進捗状況の御報 告がございましたので、今さら御説明申し上げまして意味があるかどうか何とも難しいで す。前回大江先生の御研究の方のプロトコールを拝見させていただいたときに、先ほどか ら何度か話題に出ております疾患のステージングではなく患者のバックグラウンドにある リスクファクターの調整をどうするかということで、それぞれでばらばらではなくある程 度統一されたリスク調整が必要なのではないかという御提案をさせていただきました。そ の中で麻酔科が平成18年4月から麻酔料を算定する上でリスク評価を行っておりますの で、それを御利用いただいたらいかがしょうかというお話をさせていただきました。  委員の中で、実際にはどういう評価なのか御理解いただけない方もいらっしゃいました ので、今回実際にそれをこういう形で評価していることを出させていただきました。一応 このリスク評価を満たすものは厚労省からの依頼もございまして、大体全症例数の12%に なっております。御報告が前後しましたがそういうことです。 ○福井分科会長  2ページ目にあります、「重症の患者とは」というところ、このどれかを満たせば重症と みなす。 ○羽尻委員  そうです。ですので、この評価は必ず麻酔科が行っているということです。 ○福井分科会長  ありがとうございました。最後に坂本委員がおっしゃったことで、この分科会として独 自の調査をなぜしなかったのかということですが、最初のところで実はそういう研究費は ないということでスタートしました。大江委員の研究に、かなりおんぶにだっこの状態の スタートになっております。  外国と比べますと、研究費については、本当に日本は貧しい国です。大江先生の研究や データのインプットも含め、やはり重要なことだけしかやらなくて、人員も少ないし研究 も恐らく将来につながるデータの集積にも十分な投資がされていないことを実感するとこ ろです。何かしらそういうことも提言できればと思います。 ○坂本委員  文部科学省の19年度予算で、医師不足の6領域における活性化ということで、しかるべ きその大学の研修とかいろいろなものを見ながら、数千万ずつ3年計画と5年計画で投げ られています。ある意味で、厚労省もそういうふうにいずれこういうことをきちっとやっ ていけば医療費の削減につながるわけです。ですから3年計画でそういう人員を例えば 400万で3人なら1,200万その大学にとか、いろいろな病院、地区含めてある意味でそう いうプログラムで投げてみて、それがプログラマーとして現場の記入する人間として役に 立って、それが届けられれば大江先生でなくてもっと楽にできるわけです。ある程度デュ ティー化して、県に何人なりどうかと。最初の3年間はお金がかかるかもしれませんが、 逆にそれがきちっと根づいてエビデンスがそろえば国策としていろいろなことができます。 海外の論文を引用して云々もいいですが、日本のオリジナルというのは随分風土が違うと 思うのです。それにあえてアメリカがどうだ、これがどうだとどんなに現場が苦労してい るかです。そこら辺も踏まえて、逆に投資することが経済効果が大きくよくなることもあ りますので、その点もぜひ考えてもらいたいと思います。 ○大江委員  今回の高本先生の御発表の中にあったPay for Participationというのは非常に大事だ と思います。それに加えて今回のような調査は、どの学会がやっても今のようなやり方、 つまりそれぞれ学会が準備をして「何とか入れてください」「忙しい中頑張ってください」 というやり方になると思います。そこから良質なエビデンスを得ようということ自体に無 理があります。もう少しシステマティックにやるべきで、例えば22年度からはレセプトの 電子化も始まります。さまざまな電子カルテのシステムや麻酔のシステムもどんどん現場 に電子化が入っています。そういったことからとれるデータはきちんと標準化してとれて、 それがそれぞれきちんと解析能力ある学会に集約されていくといった枠組みをつくること を国自体が支援するということが必須だと思います。そのあたりもこの分科会で今後提言 をまとめていただけたらいいと思います。 ○福井分科会長  また議論は続けていきたいと思います。時間になりましたので、本日の議論は以上とし たいと思います。  今後の予定につきまして、事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局(中野医療課課長補佐)  次回の日程については未定でございます。追って、日程が決まり次第お伝えさせていた だきたいと思います。 ○福井分科会長  それでは、これで第3回の分科会を終了させていただきます。本日はお忙しい中ありが とうございました。                 【照会先】                  厚生労働省保険局医療課企画法令第2係                  代表 03−5253−1111(内線3276)