07/02/20 平成18年度女性の活躍推進協議会議事録 平成18年度女性の活躍推進協議会議事録 日時  平成19年2月20日(火)13:30〜15:30 場所  厚生労働省共用第6会議室 出席者 丹羽座長、内永委員、内海委員、大橋委員、岡田委員、立石委員、     手島委員、樋口委員、福原委員、水越委員、茂木委員、山崎委員     大谷雇用均等・児童家庭局長、村木審議官 (事務局) 安藤雇用均等政策課長 議事次第 1 開会挨拶 2 委員ご紹介 3 今年度及び今後の活動について 4 意見交換 ○安藤雇用均等政策課長 ただいまから「女性の活躍推進協議会」を開催させていただ きます。本日は大変お忙しい中、皆様方お集まりをいただきまして、誠にありがとうご ざいます。はじめに雇用均等・児童家庭局長であります大谷からご挨拶を差し上げます。 ○大谷雇用均等・児童家庭局長 雇用均等・児童家庭局長の大谷でございます。どうぞ よろしくお願い申し上げます。本日はお忙しいところご参集いただきまして厚く御礼を 申し上げます。人口減少社会が到来する中で、活力ある社会を維持・発展させていくた めには、多様な人材がその意欲と能力を最大限に発揮できる環境の整備が不可欠となっ ております。そのための取組が企業の持続的発展、ひいては我が国の経済発展につなが るものと考えているところでございます。  私ども行政といたしましては、公正かつ多様な生き方を実現できる労働環境の整備が 極めて重要な課題であると認識しておりまして、その一環として、改正男女雇用機会均 等法がこの4月1日から施行されることになりました。概要につきましては後ほどご説 明申し上げますが、今回の改正におきまして、企業が行いますポジティブ・アクション に対する国の援助メニューが追加されております。ポジティブ・アクションの取組状況 を外部に開示しようとする企業に対して、国が援助することになりました。また、この 法改正の国会審議の過程で、衆参両院の厚生労働委員会におきまして、ポジティブ・ア クションの一層の普及推進のため、事業主に対する援助を特段に強化することという附 帯決議が付けられたということでございます。  一方でその現状を申し上げますと、妊娠とか出産の後、多くの女性が離職するという 現状がございます。女性が仕事を継続する上で、やりがいが感じられる仕事の内容であ ることが、育児・仕事を両立しやすい職場であることと並んで欠くことのできない条件 となっているところです。  また、我が国におけます女性の管理職や役員など、いわゆる政策や方針決定の場にお ける女性の登用状況を見ますと、依然として先進諸国に大きく遅れをとっており、女性 の活躍が進んでいるとは、まだ言えない現状でございます。  更にポジティブ・アクションに取り組む企業の割合は、大企業を中心に上昇している とは言え、なお、全体として低調でありまして、特に中小企業においては、まだ十分な 広がりを持つには至っていない状況でございます。法律や企業における制度上の男女平 等は、相当程度整備されてきたところですが、本当の意味での均等を目指すには、現状 をしっかりと把握して、現場の声に耳を傾け、ポジティブ・アクションに企業自らが本 気で取り組み、実積を上げていただくことが何よりも大事なことでございます。  また話が変わりますが、現在、安倍内閣におきまして、塩崎官房長官を議長に、つい 先日からの動きですが、「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議を立ち上げま して、少子化対策について新たに検討を始めたところです。「働き方の改革」というもの がその中でも重要な柱の1つになっております。ワーク・ライフ・バランスの実現は、 まさに企業に自ら取り組んでいただかなければ、現実のものとはなりません。こうした 動きもポジティブ・アクションの展開における重要な契機になり得るものではないかと 考えるところでございます。  そこで本日お集まりの女性の活躍推進協議会ですが、これは平成13年度から経営ト ップの方々、有識者の方々にご参集いただきまして、開催してきたところです。これま でのご協力、ご尽力にこの場を借りまして厚く御礼を申し上げます。我が国を代表する 経営トップの方々がこうして発信源になり、行動をしていただくことによりまして、社 会全体に及ぼす影響は甚だ大きなものがあると確信しております。この活動を通じまし てポジティブ・アクションが制度上の男女平等だけではなく、男女共に活躍する企業を 目指すものであること、また、女性のためだけというものではなくて、男性にとっても 企業にとってもプラスになるものであるということについて認識を深め、共有していた だければ幸いに存じます。後ほど委員の皆様から、これからの本協議会としての活動に ついてご発言をいただく時間を設けておりますが、政府の取組に対しますご意見も含め 忌憚のないご発言を頂戴いたしますようお願い申し上げます。この協議会が我が国全体 のポジティブ・アクションの発展につながりますよう、心より期待申し上げまして私か らのご挨拶とさせていただきます。  なお、誠に失礼とは存じますが、本日衆議院の予算委員会が開かれておりまして、出 席の必要がございますので、本当は最後まで私も着席したいのですが、中座することを あらかじめお詫び申し上げます。本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。 ○安藤雇用均等政策課長 まず資料1として委員名簿をお示しています。委員の方々の 中で今回新しく委員になられた方でございますが、東京商工会議所の常務理事の茂木洋 様がまず一方です。本日所用のため1時間ほど遅れていらっしゃるというご連絡を受け ております。もう一方、日本経済団体連合会専務理事の紀陸孝様でございますが、本日 は所用のためご欠席ということでございます。これ以降の議事の進行につきまして、丹 羽座長にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○丹羽座長 本日の議題は先ほど局長からお話がありましたように、「女性の活躍推進協 議会の今年度と今後の活動について」でございます。最初に事務局から説明をお願いい たします。 ○安藤雇用均等政策課長 お手元の資料3から説明をいたします。平成18年女性の活 躍推進協議会の主な取組についてまとめてあります。(1)ですが、昨年2月22日に「女 性と仕事の未来館」におきまして、ポジティブ・アクションをテーマとしたシンポジウ ムを開催しました。パネラーとしては丹羽座長、大橋委員、水越委員にご参加をいただ きまして、ポジティブ・アクションの意義について、大変よいお話を伺ったところです。  2番目の機関誌・パンフレット等への寄稿につきましては、21世紀職業財団の機関 誌の『ESSOR(エソール)』に、ご覧のようにたくさんの方々にご寄稿いただきました。 4月号も内永委員を初め4名の方々にご寄稿をお願いしていますので、よろしくお願い いたします。実際のお書きいただいたものにつきましてはコピーをお付けしています。 また、当方で作成している「女子学生のための就職ガイドブック」がございますが、こ こに丹羽座長から女子学生へのアドバイスを執筆いただいたところです。  3点目の政府広報テレビ番組についてですが、ここでポジティブ・アクションを取り 上げました際に、ご覧の2社にご協力を賜ったところです。4点目の各委員の取組につ いてですが、資料3の後ろのほうに委員限りということでまとめています。多くの委員 の方々にご覧のようなセミナー講師であるとか、公職のお立場でさまざまな形でご発信 をいただいています。また、各社の取組状況として取りまとめたものもあります。個人 の活動状況の更に先のほうに、各企業・団体においてのポジティブ・アクションの取組 ということでまとめていますが、簡単にご紹介いたします。  まず、伊藤忠商事では、ダイバーシティ・フォーラムを設置されて、女性の活躍のた めの具体策をまとめる取組をしておられます。また、ニチレイではワーク・ライフ・バ ランスセンターを設置して、また、女性を対象としたSNSを立ち上げておられるとい うことでございます。また、東京海上日動火災保険では、「育児フルサポート8つのパッ ケージ」として、各種の制度の整備に努めておられるほか、女性の活躍推進をテーマに セミナーを開催して、社内外にアピールをしておられるということです。セブン&アイ・ ホールディングスでは、グループ企業内に新たに5名の女性役員が誕生したということ で、これで女性が5%の割合を占めるに至ったという成果を上げておられます。資生堂 では人事部主導で男女共同参画推進のための活動に取り組んで、CSR委員会の下に男 女共同参画部会を設置されて、第2フェーズアクションプランを作成中であるというこ とです。オムロンでは平成18年度、均等推進企業表彰において、京都労働局長優良賞 を受賞されました。女性の活躍機会の拡大プロジェクトを設置して、ポジティブ・アク ションを推進し、着実な成果を上げられました。あるいは両立支援についても強化を図 られたという取組が評価されたものです。  次の頁です。日本経団連でも2007年経営労働政策委員会報告におきまして、女性の 活躍推進の提言をされたほか、各種の提言・講演・セミナーを開催して、会員企業に発 信いただいたところです。また、東京商工会議所においても、3月にシンポジウムを実 施する予定でおられるなど、取組を進めていただいています。  資料4、最近の行政の取組をここからいくつかご紹介したいと思います。まず、最初 は改正男女雇用機会均等法についてです。先ほど局長からのご挨拶の中にもありました が、4月1日から施行ということになっています。中身につきまして簡単にご紹介しま す。今回の改正は、昭和61年の法の施行以来、2回目の改正で、大きく分けて5つの ポイントがあります。1点目は性差別禁止の範囲の拡大です。まず、これまで女性に対 する差別のみを禁止する法律であったものを、男女双方に対する性差別を禁止する形に したことで、均等法が名実ともに性差別禁止法になったということです。また、差別的 取扱いを禁止する雇用ステージの追加・明確化で、新たに降格、退職勧奨、職種の変更 といったステージを追加しています。更に配置という雇用管理ステージについては、業 務の配分や権限の付与も含まれる形で明確化を図りました。  更に間接差別の禁止という新たな概念を導入しました。間接差別というのは、一般的 には性別以外の事由を要件とする措置であって、他の性の構成員と比較して、一方の性 の構成員に相当程度の不利益を与えるものを、合理的な理由がないときに講ずるという ことを言いますが、日本においては、これまで馴染みの薄い概念であることも考慮しま して、法律の中では資料の囲みの中に要件が3つ並んでいますが、この3つの要件、つ まり、募集・採用における身長・体重・体力要件、コース別雇用管理における総合職の 募集又は採用における転勤要件、昇進における転勤経験要件というこの3つについての み、合理的な理由なく課することは均等法上の差別となる形にしたものです。  大きな2点目は、妊娠等を理由とする不利益取扱いの禁止です。これまで解雇のみを 禁止という形にしていたものについて、妊娠・出産・産休等の母性保護措置などを理由 とした解雇その他の不利益取扱いまで、広く禁止する形にしたものです。また、妊娠中、 産後1年以内の解雇について、妊娠・出産等を理由としたものでないことを事業主が立 証しないかぎり無効にするという中身もあります。  3つ目がセクシュアルハラスメント対策の強化です。これまでは事業主の配慮義務の 形で規定していたものを、措置義務の形に規定をし直したというところと、あと、男性 に対するセクシュアルハラスメントも対象になったということです。  4つ目がポジティブ・アクションの効果的推進方策ということで、国が事業主に対し て行う援助の内容として、ポジティブ・アクションを事業主が公表する場合に、国が援 助するということを追加していますが、これを受けまして、平成19年度の予算におい て、企業のポジティブ・アクションの取組を公開するサイトを創設するということで、 いま予算案に盛り込んであるところです。  5つ目は実効性の確保で、セクシュアルハラスメントと母性健康管理措置について、 個別紛争解決援助の調停などの対象とするといった中身を盛り込んであります。以上、 この4月からの施行となるところですので、よろしくお願いいたします。  次に資料5です。これも平成19年度からの新たな取組として、私どもにあります表 彰制度を見直すことにしています。現在行っていますポジティブ・アクション関係の表 彰として、均等推進企業表彰がありますが、これとは別にもう1つ、両立支援対策を中 心にしたファミリー・フレンドリー企業表彰があります。来年度からこの2つを統合し まして、均等部門で、例えば大臣表彰を受けられた企業が、ファミリー・フレンドリー 部門でも優秀な取組をしていただいた場合には、均等・両立推進企業として、いわばグ ランプリを差し上げようという仕組にするものです。こうした均等を確保するための取 組と両立支援の取組が、ともに1つの企業の中で推進されることが広がっていくように と期待しているところです。  資料の6です。これは後ほどのご議論の時間の参考にと思いまして、現在の女性の就 業継続についての課題に関するデータをまとめてみたものです。1頁目は、女性の勤続 年数は均等法施行以降、ずいぶん延びてきているという図です。右の方が長くなってい ますが、10年選手以上が3分の1強、20年選手でも1割を超える具合になっています。 男性よりはまだ短いもののかなり延びてきている状況です。 次の頁は、高学歴化も進 んでいるということです。特に新規学卒就職者の学歴別の状況を見ますと、いまや半数 近くがいわゆる高等教育を受けて就職している状況です。学歴を質の第一指標として見 るならば、女性労働力の質的な向上が見られるというところです。3頁は、このような 状況ではありますが、女性の継続就業にはまだまだ課題があるというところです。この グラフは第一子の出産を機に離職した女性が7割にも昇るというグラフです。4頁、こ れは年齢階級別の女性の労働力率で、M字カーブと呼ばれているものです。出産・育児 にかかる時期に労働力率が下がるカーブを描くということですが、このM字の底の部分 は、過去20年ほどの間に上がってはきています。全体的にM字自体が上にシフトして いる。赤いほうが新しい数字で、シフトしてきているのがわかるかと思います。ところ が5頁に、同じグラフを未婚者と有配偶者に分けて書いてみますと、ちょっと動きが違 っています。未婚者は既にかなり労働力率の水準としては高いのです。また、中年層に 上昇も見られますが、既婚者については若年で少し上がっているところもありますが、 この10年間はほとんど変わらない状況です。つまり、近年の女性のM字の底の上昇は、 かなりの部分が労働力率そのものが高い未婚者層の比率が上がったからということで、 有配偶者の継続就業はあまり進んでいないのではないかという結果が出ています。6頁 です。では、なぜ出産を機に辞めたのか理由を聞いてみますと、およそ半数の方は家事、 育児に専念するためとしておられますが、一方で両立が難しいからという方、更には解 雇されたという方もおられまして、この2つを加えますと3割ほどの方が心ならずも退 職したことになっています。7頁です。では、その両立が難しかった理由として、どの ようなものがあるか。一番多いのが体力が持たなさそうだったということになっていま すが、そこから続くのが育児休業が取れない、あるいは勤務時間が自由にならないとい うことが挙げられています。8頁では、継続就業のために何が必要か、何をしてほしい かということについて聞いたものです。ここで見ますと子育てしながらでも働き続けら れる制度や職場環境が51.7%でいちばん多く挙げられていますが、その次に続くのが 50.5%とほぼ同じぐらいの割合で指摘されているのが、やりがいが感じられる仕事の内 容ということで、これが二大要因であるという結果が出ています。以上ご参考になれば ということでまとめてみました。  続きまして両立支援対策について、職業家庭両立課長からご説明申し上げます。 ○麻田職業家庭両立課長 資料の7に沿って説明させていただきます。両立支援につい て最初に制度面がどうなっているか、その次に現状がどうなっていて、対策がどうかを 説明したいと思います。  1頁が、両立に先立つ妊娠・出産段階からステージ別にどのような対策があるかとい うことで制度面です。妊娠中は母性保護だとか、いろいろな母性健康管理の措置があり ます。その次、出産の時期ですが、産前6週間、産後8週間の産前産後休業の措置があ ります。休業中に出産手当金の支給があります。以上が女性のみの部分です。その後、 男女の問題になりまして、育児中の支援になります。まず育児休業がありますが、これ は原則として子供が1歳に達するまでで、前回の法改正で1歳時点で保育所に入れない 場合には更に6カ月の延長が可能とされたところです。また、従来、無期雇用だけであ ったものが期間雇用者、契約社員、パート、派遣の方々についても、一定の要件の下で 育児休業が取れることになっています。休業中は給付金が支払われる形になっています。 育児休業から復帰した後ですが、小学校就学前まで、何らかの柔軟な働き方ができるよ うにということで措置を講じています。  1点目、勤務時間短縮等の措置とありますが、これはいろいろなメニュー、例えば短 時間勤務、フレックス、残業をやめるとか、事業所内の託児所とかいうメニューの中か ら、最低限1つ措置を講じていただくことを、子供が3歳までの労働者に対しては義務 づけ、3歳以降、小学校に上がるまでは努力義務の形にしています。また、子供の急な 病気がありますので、小学校就学前の子供を養育する男女労働者に対しては、年間5日 間、年次有給休暇とは別枠で看護休暇が権利として規定されています。ざっとですが、 制度面は以上です。  介護については、こちらに書いていませんでしたが、介護を要する家族がいる場合に、 最大93日間の介護休業が取得できる形になっています。  3頁です。ただいま申し上げたことは最低労働基準ですが、法律を上回りまして、企 業で自主的に従業員の子育て支援を進めていただくために次世代法を制定していまして、 平成17年からこれがスタートしています。これは企業の中で自主的に従業員の子育て 支援をするための行動計画を策定して、これを労働局に届け出ていただきまして、その 計画を実施して成果が出た場合に、一定の基準を満たす企業に対しては、厚生労働大臣 が認定をします。認定を受けた企業は、3頁の下のほうにありますお花のマーク、これ はごく最近「くるみん」という愛称を決めましたが、この「くるみん」マークを商品と か募集広告に付けることができる仕組です。301人以上の大企業は義務づけ、300人以 下の中小企業は努力義務になっていますが、大企業については大変ご理解をいただいて いまして、昨年12月末で対象企業の99.7%が届出済みという状況です。また、今まで に届出をいただいた企業の約2割が認定の申請の予定ありということで、認定を目指し て取り組んでおられる状況になっています。以上、制度面です。  4頁以降が実態になります。4頁の左側が先ほどと同じです。第1子出産を機に7割 が離職をしているということがあるのですが、出産を期に離職しなかった女性のうち、 育児休業を取っておられる方が約7割です。これは出産を期に辞めなかったといいます か、出産をした時点で勤めておられた方です。反対に男性ですが、これは配偶者が出産 した男性労働者に占める育児休業利用者数の割合が0.5%と大変低くなっています。  5頁ですが、では、実数でどのくらいかです。大体年間で12万人ぐらいの方が育児 休業を取得されていることが給付ベースで出ています。期間雇用者についても平成17 年度以降、育児休業給付を受給される方が出てきています。  6頁です。育児休業を利用できたのに取得しなかった理由を調査したものです。青い 棒が男性、赤い棒が女性になっています。男性では利用しなかった理由のトップが自分 以外に育児をする人がいたため。女性のほうは業務が繁忙あるいは職場の迷惑というこ とで、職場要因を理由に利用しなかったと答えておられる方がいちばん多くなっていま す。  7頁は、育児休業復帰後の柔軟な働き方です。上のほうの表が事業所を100とした場 合に、それぞれの柔軟な働き方の措置をとっている事業所がどのくらいあるかです。何 らかの柔軟な働き方を措置している事業所が大体4割ぐらい、そして、短時間勤務がそ の中でいちばん多くなっていまして、全事業所の3割ぐらいが短時間勤務の措置をして いる。その次に多いのが所定外労働の免除、残業の免除の形です。下のほうは育児休業 から復帰した女性がどういう柔軟な働き方を利用しているかです。復帰者を100とした ときに、約2割ぐらいの女性が短時間勤務を利用している状況です。  8頁は介護休業の取得状況です。要介護の家族がいる人の数がわかりませんので、取 得率の分母が非常に大きくなっていまして、常用労働者に占める介護休業を取った人の 割合が0.04%となっています。下のグラフは介護休業を取得しなかった理由を聞いたも のです。調査対象は介護を必要とする家族がいる男女のうちで、介護が始まったときに 雇用されていて、かつ介護休業を取得しなかった方です。取得しなかった理由としては、 家族の助けや外部サービスを使って対処できた。あるいは休日・休暇制度などを活用し て介護対処できた。あるいは職場に休業制度がなかったという結果になっています。  9頁は介護休業の給付を受給しておられる方ですが、大体年間6,000人ぐらいとなっ ています。以上が実態です。  10頁以降はいろいろな対策ですが、時間もありませんので、概略を申し上げますと、 10頁から12頁までは、いろいろな両立支援に取り組まれる事業主の方に向けての助成 金です。このほかにいろいろリーフが付いていますが、ファミリー・フレンドリー・サ イトとして、両立支援の状況を自己診断していただく事業、あるいは再チャレンジサポ ートプログラムとして、女性の再就職を支援する事業、あるいは先ほど申しましたファ ミリー・フレンドリー企業の表彰等をしています。  いちばん後ろに付いている「男性も育児参加できるワーク・ライフ・バランス企業へ」 というパンフレットがあります。これは内海委員、水越委員、茂木委員、山崎委員にも ご協力をいただきまして、企業経営の立場から男性の両立がどうしたら進むかを議論し ていただきました。その答としては、やはりワーク・ライフ・バランスを充実させてい くことだということで、ご提言をいただいたものです。  1枚めくりますと左側に目次のようなものがあります。中ほどに、「本協議会が最も重 要と考えるのは以下の3点です」とあります。ここでワーク・ライフ・バランスは企業 の競争力を高める。仕事も家庭も大切にしたいという男性の声に応えていく必要がある。 男性が育児参加できる働き方を進めるには、子育て世代の両立支援だけでなく、従業員 全員のワーク・ライフ・バランスが重要である。こういうメッセージをいただいていま して、いまこの提言を普及しているところです。以上です。 ○丹羽座長 これについてご意見ご質問などあろうかと思いますが、後ほど時間を設け ることとします。とりあえず本年度の本協議会の活動について、事務局よりご提案があ るということなのでお願いをいたします。 ○安藤雇用均等政策課長 資料8、1枚紙をご覧ください。平成19年度の活動として、 事務局からご提案するものです。4点ありますが、最初の2点は提案というよりも、ど ちらかというとお願いに近いものです。先ほど説明いたしましたとおり、来年度は均等 法改正に伴い、各社のポジティブ・アクションの取組を公表する場として、サイトを立 ち上げようと考えています。ただ、多くの方にこのサイトをご利用いただくためには、 まずコンテンツをしっかりしたものにしなければいけないということでして、この協議 会の委員の先生方には是非、各社の取組はもとより、傘下の企業あるいは関連企業に対 して、このサイトの周知や取組の登録を促していただければありがたいというところで す。  2ですが、これも先ほど説明いたしました均等・両立推進企業表彰制度についてです。 この表彰制度は広く公募により、企業の応募を呼び掛けて、その中から選定していくも のなので、これもまた少しでも多くの企業の応募についてご協力を賜ればと思っていま す。来年度実施を予定している表彰については、資料8の1枚紙の後に青いリーフレッ トが付いていますが、ここにあるとおりこの2月から3月末日までが応募期間です。是 非、呼び掛けをお願いできたらと思っています。  3として、シンポジウムの開催を提案しています。昨年2月に開催されましたシンポ ジウムは、ポジティブ・アクションの意義についての基本的なテーマ設定で行っていた だきましたので、今回は場合によっては、もう少しポイントを絞ったような形でいかが かと思っています。例えば継続就業について、働く女性自身のニーズも拾いながら、具 体的な取組や課題についてご議論いただくのはどうかと思っていますので、この後の議 論の時間で、シンポジウムのテーマや持ち方についてもご意見を賜われば幸いだと思っ ています。  4は、本日ご紹介しました各委員の取組については、引き続きやっていただくことで はどうかというご提案です。以上です。 ○丹羽座長 この協議会は「発信・行動」がキーワードになっていまして、皆さんの今 年度の活動報告と来年に向けての方針を順次お話いただきたいと思います。併せて、た だいま事務局から提案がありました意見につきましても、ご意見をいただければと思い ます。事務局の議事次第に従い、まず私からお話させていただきます。  私どもの会社の「女性の活躍推進」については、まだまだ不十分だし、非常に難しい なという印象をもっています。もちろん、男性の意識もそうですが、女性の考え方も少 しずつではありますが変化しています。しかしながら、なかなか大きくは変わりにくい ものだという印象です。しかし、地道に一歩ずつ続けていく継続が非常に大事です。私 の考え方は、ある時点で臨界点を越えると、ぐっと進むのではないかと思っています。 では、臨界点はなんだということですが、やはり女性の働く人数を増やす。ある一定の 数になったときに、急速に女性の活躍が進むのではないかと期待しています。私どもは できるだけ女性の採用を多くする。母数を増やしていくことがいちばん大事です。そう しますと当然のことながら、いろいろな能力のある方が出てくるわけです。当社で会議 をやりますと、女性は1人か2人しかいない。そういう中で意見を言えと言いましても、 男女立場が違いますと、私も意見を述べるのにヘジテイトする、なんとなくそんなこと 言っていいのかなというような気がするわけです。我々が会社の中で会議をやるときも、 できるだけ女性の数が増える状況をつくることが大事だと思っています。その数がある 一定程度になってくると急速に女性の中でリーダーシップをとる方々が増えてくるだろ う。母数が少なければいくら頑張っても、オリンピックと一緒です。中国のように人口 が多ければ優秀な方も多いですが、日本のように人口が少ないとなかなか活躍できない のは皆さんご存じのとおりです。  次に具体的にどのようなことをやっているかという点につきお話します。先ほど事務 局からご紹介いただきました資料3の「委員限り」と書いてある各企業・団体における ポジティブ・アクションの取組が記載されています。当社は3年ほど前に、経営のトッ プ会議で人材活用推進委員会を発足させ、その翌年に人材多様化推進計画を策定しまし た。少子高齢化の動きも踏まえ、性別・国籍・年齢に関係なく多様な人材の確保・育成 を目指す方針を社内外に公言しました。また、できるだけ女性とノン・ジャパニーズの 役員比率を10年後には5割近くまで持っていきたいと公言しました。つまり、自ら縛 っていくことに挑戦していますが、なかなか難しいです。しかしながら、多様な人材の 確保・育成に向け、まずは、課長・部長を中心とした女性経営幹部の育成あるいは育児・ 介護制度の提供と、具体的な行動を展開しています。  基幹的な業務を担う総合職については、2008年度末までに数の倍増を目指しています が、併せて、2004年度からメンター制度を導入しました。経営幹部候補の中堅女性総合 職を指導者として任命し、積極的にキャリアの構築とか、育児と仕事との両立で悩んで いる社員の相談に乗っていただく機会を設けている。この活動を通じて、中堅女性総合 職自身の成長を目指すとともに、悩みを抱えている後輩の相談役の役割を担っていただ いています。こういうメンター制度があるということは、女性の数が少ないという現わ れでして、できるだけ早くこれはやめたいと思っていますが、やはり相談する方が非常 に少ないこと、男性社員には相談できないこともありますので、できるだけこの制度を いまの段階では充実させていきたいと思っています。育児とか介護制度の提供について は、社内にこういう制度があることを知らしめることと、できるだけ幹部会とか課長会、 部長会の機会を利用して、繰り返し説明をしていくということに注力しています。  人材多様化推進計画で定めた「女性総合職の数の倍増」という数値目標自体は順調に 推移をしています。しかしながら、女性総合職の採用開始から17年経過しましたが、 意識改革が十分には進んでいないことから、2006年度に「ダイバーシティ・フォーラム」 を設置しました。これは先ほど申し上げましたように、女性総合職自身が中心となって 現場で何が問題となっているのか。具体的にどのようにすれば解決するのかという観点 から女性総合職自身が主体的に考える場を提供し、経営トップに具体的な提言を行う仕 組みです。女性総合職以外にも総合職を支える事務職や最近急増しているキャリア(中 途)採用者についても分科会を設け、活発に議論していただいています。 安倍内閣再チャレンジ新総合プランにおいては、各方面にわたって230〜240の計画を 予算付で決めているのですが、国民になかなか伝わっていないという問題を抱えていま す。おそらく国会議員の方もほとんど読んでおられないのではないかということと同じ で、会社も決めたことを社員にいかに知らしめるかということが非常に大事です。そう いう努力を我々がいま繰り返しています。  もう1つは経営トップのコミットメントが非常に重要という点です。社長から、経営 幹部から社員に対する発言を、同じ内容でもいいから繰り返して社員に知らしめるとい うことです。大体、経営トップとか、会社の方針を紙で渡してもほとんど読みません。 関心のない方は残念ながらごみ箱に直行します。読む方は非常に関心のある方ですから 紙を渡さなくても大体どこかで聞いて知っているのです。会社の方針を知らしめるとい うことは、おそらく100回ぐらい言うとようやく伝わるかというのが、私の体験です。 経営トップが繰り返しそれを伝えていくことが大事かと思います。  今度は内永さんの日本アイ・ビー・エムからお願いいたします。 ○内永委員 今年度の活動ということでご報告をするのか、今までのことを要約するの か迷ったのですが、簡単に私もアイ・ビー・エムの中でどのようなことをやってきたか ということとその現状と、それから去年特にどういうことに私個人としても力を入れて きたかをご報告したいと思います。  アイ・ビー・エムは1998年にウイメンズカウンシルをスタートしまして、そこで5 年後にこういうことをやりたいという数値目標を作りました。この数値目標を決めると きにいくつかの目標があったのですが、1つは女性が全体の社員の中で13%しかいない ので、これを5年後には16%に持っていこう。もう1つは管理職の比率です。女性の社 員の中における管理職比率と男性社員における管理職比率が1対8という、非常に大き な差がありましたので、これをそれぞれの管理職比率は母数に対して同等にしようとい う非常に大胆な目標を立てました。最後に入社して5年で辞めていく女性のパーセンテ ージが男性の同等のパーセンテージに比較して倍という現状が、1998年にありましたの で、これをともかく5年後に是正しようということで、ウイメンズカンシルを作り、ウ イメンズフォーラムを2回ほどやり、先ほどお話がありましたメンター制だとか、あと はeワークと言いまして、いわゆる在宅勤務です。こういったいろいろなことをして、 お陰さまで2003年、ちょうど5年後ですが、何とか数字をすべてクリアすることがで きたというのが現状です。  お陰さまでいま取締役も含めて執行役員が35名ほどいますが、そのうちで女性が5 名になりました。1998年の段階では役員は私1人だけでしたので、それから見ますと飛 躍的な進歩が遂げられたかなと思っています。  いちばんやりたかったことは、役員を増やすことも1つのシンボリックなインデック スというか、指標としては大事だったのですが、その当時の女性の管理職というのは、 私の表現でいくと「まな板状態」。要するに係長か課長クラスにべたっといるのですが、 その上がほとんどいない。たまたま私が役員に1人いるということでしたので、これを 何とかピラミッドにしたい。役員が5人になりました。それに伴って役員から下の理事、 本部長クラス、そして部長ということで、大体ピラミッドができてきたということで、 これから本当の意味で、女性が自分たちの実力を発揮して頑張ってもらえる、最初の一 歩の土俵が出来たのかなと思っております。その中でいろいろなことを経験しましたが、 お話をすると長くなりますので、結果だけをご報告したいと思います。  実は日本アイ・ビー・エムだけではなかなかうまく解けない問題があります。例えば ワーク・ライフ・バランスだとか育児の問題とか、周りの環境の問題ということを加え て、その当時から私どものお客様から非常にたくさんのお問い合わせをいただきました。 同じように女性活用をしたいのだけれども、ないしはうちに女性で優秀な人がいるのだ けれども、アイ・ビー・エムのケースを話して欲しいというお話をいただきました。私 自身はそれを伺って、これはどうやら女性のネットワークを企業を越えて企業同士で作 っていくのが大事なのではないかと思いました。ちょうど2年前にJWIN、フルネー ムではジャパン・ウイメンズ・イノベーション・ネットワーク、ちょうどイノベーショ ンという言葉が出ていましたので、それを入れて、それらの頭文字を取りますとJWI Nということになります。これで約50社ほどのいろいろな企業から、その企業におい て今後を託す女性の人たちを出していただいて、2年間ネットワークを作らせていただ きました。  ちょうどいま2年経ったわけですが、実はこれをもう少し増やしてアイ・ビー・エム が今まで、どちらかというと、いろいろな形でご援助させていただいて進んできたので すが、そうではなくて、もっとニュートラルな形で民間の中でのこういったネットワー クづくりにこれから進んでいきたいと思っています。JWINをやってみてよくわかっ たことは、ともかく参加しておられる女性の方々は皆さんとても優秀です。すごく優秀 なのですが、キャリアが上がっていくことに対して一種のためらいがあり、すごく忙し くなって何がよくなるの、そんなに偉くなって何が嬉しいの、私は育児もあるし家庭も あるし、本当にそれがいいのだろうかということで悩まれる方がずいぶんいたのです。  女性同士がキャリアが上がっていくことは、自分の人生にとって素晴らしいことで、 ものすごく自己実現ができる素晴らしいステップなのだということを、お互い同士が言 い合って、その女性達の中で言ってきた1つのキャッチコピーに「痛気持いい」という ことを言い出したのです。これはどういうことかと言うと、管理職になると仕事も増え て、人も評価しなければいけなくて痛いと、大変苦しいと、でも、やっぱりキャリアが 上がっていくと気持いいと、大きな仕事が出来て気持がいいと。だからこれは「イタキ モ」だということを言って、女性たちが「イタキモで頑張ろう」ということでえらい気 合いが上がりました。そういうことでこれからもう少し広げていきたいと思います。   ついでに申し上げますと、こういった活動をアメリカで50年ほどやっているカタリ ストという団体があります。このカタリストがまさに同じようなことを50年間ずっと、 フォーチューン500の内の300社に対して、いろいろコンサルテーションをしたり、教 育をしたり、アドバイスをしたり、それからベンチマーキングもやっています。こうい ったデータを是非日本で使ってほしいというお申し入れを受けましたので、今回はそこ をもう少し加えて、もう少しアイ・ビー・エムの色のないニュートラルな形で進めてい きたいと思っています。そういうことで、是非ご興味をお持ちでしたら声を掛けていた だければと思います。 ○丹羽座長 では、内海さんにお願いいたします。 ○内海委員 第一回目の女性の活躍推進協議会で見せていただきました資料の中に、2 1世紀職業財団が調査した、企業の業績とその企業の女性活用との関係を5年前と現在 とを比較して示したデータがありました。女性管理職の比率が上がった企業が業績も伸 ばしているといううれしいデータです。これはなぜだろうという議論が、たしかこの会 議で行われたと思います。その資料を、いろいろなセミナーで話をする時に使わせてい ただいてます。  本日の資料の「委員限り」という「講演、セミナー等における活動状況」の中に、内 永さんが大変たくさん活動していらして、私がその下に少しだけ載っていますが、富山 県とか沖縄、埼玉と、今週も山梨に行きます。どのセミナーも経営者の方々が聴きにい らっしゃるので、女性の活用をすると業績が伸びるのだと、大橋先生も『ESSOR(エソ ール)』の記事に書いていらっしゃいますが、それがやはりいちばん経営者には訴える言 葉なんです。業績と女性管理職登用が正の相関があるということをいつも強調して、女 性活用の話をさせていただいております。  私の会社は、NECのグループ会社でNECラーニングという200人ぐらいの会社で す。この会社は、企業の人材育成を担当する会社で、もともと女性の多い会社です。女 性の管理職も男性の管理職比率の半分ぐらいのパーセンテージを占めていますし、女性 が活躍している会社だと思っています。  一方でNEC本体ですが、いまからもう18年程前になりますが、女性の活用にかな り力を入れて取り組んだ時期がありました。平成元年から平成6年までの4年間、私が 人事課長として、女性活用のいろいろな取り組みを行ったのです。その結果、1桁であ った女性管理職も急増しましたし、かなり女性活用が進んだと思うのですが、それでは、 18年経った今、女性の役員ができたかというとできていないのです。先ほど大橋さんに 「NECさんは女性役員がいらっしゃいますか」と聞かれたのですが、いま社外からお 招きしている1人の女性がいるだけで、社内から女性役員はまだ出ていないのです。  こういう活動というのは、1回力を入れて何年間かぼんとやっても、そのときはいい のですが、その後自分の会社は女性活用が進んでいるという何か安心感のようなものか ら、また、女性の管理職は他社に比べると比率的には高いので、女性を必ずしも特別扱 いする必要はないと逆に思うようになって、女性の力のある人はちゃんと上に上がって 来るだろうという、ある意味で男女平等に何もしない状態になっているのではないかと 思うのです。  一方、両立支援、育児と仕事の両立面ではかなり制度を充実させてきています。次世 代育成プランに関連した、従来の子育てのために休めるよう支援する仕組はもちろんで すが、育児をしながらもキャリアを目指して働きたいという人たちが子どもを育てなが らどうしていったらいいかということで、例えば親の支援を受けるために一緒に住むと いうことであれば、その引越しの資金を援助しましょうとか、保育園に長時間預けるた めに引越しをしなければいけないときには、その費用を負担しましょうとか、キャリア を目指して働くための両立支援という意味では、制度が充実してきております。しかし、 女性がもっともっとプロモーションしていこうということには、男性と同等、特別扱い はしないというのが現状なのです。「こういう活動は本当にこれで終りということはない ですね」と、今も大橋さんとお話をしていたのですが、繰り返し繰り返しやらなければ いけないのではないかと感じています。 ○大橋委員 いまちょうど内海委員から言われた話に関連して、私から2つだけお話し たいと思います。実は私は昨年の6月まで山口県の第二地方銀行の頭取職をやっていた のですが、そのころの取り組んだ実績ですね。まさに金融界はこういう取組が最も遅れ ている業界になるのではないかと思うのです。私は民間金融機関に出る前に日銀にいた ものですから、そのころから、ずっとテーマでもあったのですが、やはり女性を本当に 活かしきれているだろうか。それからそれを活用することが企業業績にマイナスになる とよく言われるけれども本当だろうかという疑問がありました。いまから20年ぐらい 前に、中国の人民銀行という中央銀行の行長、向こうは行長ですが総裁ですね。それと 日銀の総裁との会合に私もたまたま末席のほうに参加しました。双方7、8人ずつ出た 会議があったのです。20年前です、中国人民銀行はチンボカさんという女性の総裁だっ たのです。人事部長と天津の支店長が女性、7、8人中3人が女性です。日本は全員黒 づくめの集団ということだったのです。どちらがおかしいのだろうかという素朴な疑問 を持ったのですが、それが20年前の話なのです。  民間に出ましてから11年間で、9年間頭取をやったのですが、いくつか取り組んだ テーマの中の1つだったのですが、そのテーマにずっと取り組みました。支店長や支店 の幹部ですね、特にナンバー2が非常に向いているのですが、そのクラスには女性をど んどん登用し、定着していったのです。役員になりますと中からの昇格は出ませんので 外部からということで、常勤と非常勤を含めて11名中3名を女性役員という形にしま した。私のすぐ下の副頭取は女性ですが、これは日本の全銀行界の中で全く初めてです。 日本で「銀行」という名前の付く所は、信用金庫と信用組合を別にして110ぐらいあり、 それぞれに平均10人役員がいるとすると1,100人いるわけですが、そのうち女性の常 勤役員は、たった1人なのです。この話を外国人にしますと、とんでもない野蛮な国だ、 考えられないという感じです。  では、そういう形で取り組んで業績が付いてこなかったのか。私が辞める直前、昨年 3月の決算の数字がその後まとまりまして、昨年の夏ごろ、東洋経済の出しております 『金融ビジネス』という雑誌に110の銀行ランキングが出たのです。このランキングは 健全性、収益性、成長性、規模という4つの指標ではじいたものですが、私がやってお りました銀行は、その昔は100位前後、その直前まで、よくて80位前後でいたのが、 一気に23位に上がったのです。不良債権の処理が進んだことがいちばん大きかったの ですが、公的資金は全然入っていないのです。また、私どもの銀行は、資金量でいきま すと6,000〜7,000億規模のいちばん下位地銀なのです。  地銀は今も再編の波で、まだこれからもそれは続くと私は思っております。ここのと ころ、自治体再編の話をテレビや雑誌でやっていますが、実は、地銀は戦後1県1行で 生まれているのです。今、相互銀行が入って1県2行になっています。しかも、地銀は 自治体の指定金融機関制度のもとで出来上がっているのですが、夕張をはじめとして、 自治体そのものにいろいろな問題が起こり出しています。問題はまだこれからだと私は 思うのですが、それにもかかわらず危機意識はあまりないのです。そして金融、地銀の 問題もそういうことが行われているわけです。  金融界が女性登用で業績がマイナスになるかというと、実際にやってみたらマイナス にはならない、むしろ不良債権処理なども進むというようなことがありますので、どこ かで誤ったことがあると私は思うのです。本当は能力のある女性が活かされていない、 能力のある人が活かされていないということで実践してみたのですが、そういうことで 業績が上がるのは、たまたまではないと私は思っています。  そういう取組をすると、なぜ業績が上がるかというと、要するに、本当に適正分野に 人を配置しているだろうかということ。それから、私はよく内永委員と議論しています し、内永委員もそれをずっと実践してこられて今もやっておられるわけですが、ボード の緊張感が違うのです。11人中3人が女性ですと、まず、しがらみがないのです。過去 のしがらみに引っかかるのは大体男性です。女性ははっきりと意見を出しますから、議 論が非常に活発化します。それから、細かいところの指摘があります。さらに、今いち ばん重要なコンプライアンス・マインドが非常にある、その辺が非常に大きいのです。 実は、このことが組織にとって非常に大きい。金融界は最たる例ですが、巨大企業もコ ンプライアンスの問題で今、いろいろな問題が噴出しているのです。にもかかわらず、 危機意識が乏しい。日本全体がまだ乏しいと思います。  私はたまたま内閣府の会議の委員を昨年の6月までやっていて、今は内永委員がやっ ておられると思うのですけれども、そこでも議論はあるのです。総理も2カ月に一遍ぐ らい出てこられますし、官房長官が議長です。そこでも議論は出るのですが、実際には なかなか火がつかないというような問題もあるので、これを繰り返し繰り返し言ってい かなければいけないと私は思っています。  私は昨年7月に銀行を辞めましたし、これが自らできること、ライフワークと考えて おりますから、小さな組織ですが、秋に自分で経営コンサル会社を立ち上げました。当 然、コンサル先には女性社長や女性副社長の会社もあります。  私どもでは、まずダイバーシティ・マネジメントが行われている企業を最優先のコン サル先にしております。2番目がチャレンジ精神、ベンチャー精神のある企業です。3 番目がコミュニティ・ビジネスで、これにはNPOが多いのです。この3つの柱、3つ のミッションを持った企業をコンサル先ということで、そのマネジメントに関して私な りのアドバイスをしていくようにしているのです。  また、私は大学でも教えているのですが、日本にはまだそういう学問領域もありませ んし、もちろん学界もありません。しかし海外にはそういうものがあるのです。だから、 まだまだ課題が山積していると私は思います。おそらく、これは草の根だと思いますが、 できることを粘り強くやっていこうと思って取り組んでおります。 ○岡田委員 私は昨年からこちらのほうに参加させていただいておりますが、昨年1年 間、多少活動をさせていただいて感じたことをまず申し上げたいと思います。  私は地方にも何箇所か行きました。地方の経営者たちも、女性活用を進めたほうがい いと意識的には思っていらっしゃいます。また、それが業績に必ずしも悪ではないとい うご認識もあるようなのですが、経営上固定費化してしまう人件費をどのように有効に 活用しようかというところで、より具体的な活動内容や工夫の成果というものを非常に 求められているということを感じました。そこでは弊社ベネッセコーポレーションの制 度の歴史や運営状況を説明したりしているのですが、それは東京の大きな会社のことで しょう、だから、できるのではないですかというような声が聞かれるのです。今回ポジ ティブ・アクションのサイトの話がありましたが、より具体的な活動内容の周知徹底、 そういったところのナレッジの共有が今後は求められるのかなと思いました。  ベネッセコーポレーションに関して言いますと、私が入社した当時は、それこそ女性 が全社員の7割ぐらいで、いかに優秀な男性を採ったらいいかということに思い悩むよ うな会社でした。それが現在は4対6で、女性が6割おります。そして、管理職のうち の3割が女性ですので、女性活用という意味では非常に進んできていると思います。た だ、全体の人数では6割なのに管理職の中の3割しかいないということで考えると矛盾 があります。まずそこを改善していく余地があると思っております。ただ、この活動の ゴール、どういう状態になればいいのかということに関していろいろな方々からお話を 聞いて、非常に難しいと感じています。ベネッセとしては、まずは今度の「均等・両立 推進企業」を目標に頑張って推進していきたいと思います。  私のほうでは、同時に次世代育成研究所というものをやっております。そちらのほう には6人しか所員がいないのですが、そのうち4人がワーキングマザーということもあ って、昨年、在宅のテストをいろいろとやって、その結果をテレマーケ協会に出して優 良賞をいただきましたので、それを何とか本体のベネッセのほうにも広げていきたいの です。制度運用を考えると一律のほうがやりやすいのですが、人事政策を複線化して一 人ひとりのライフスタイルに応じた人事制度を考えていこうということで、今年、新人 事委員会を発足させることになっておりますので、そちらでライフ・ワーク・バランス であるとか子育て支援、それから介護支援なども含めた形で考えていければと思ってい ます。  あとは、たまたま『たまごクラブ』『ひよこクラブ』といった妊娠・出産に関わるメデ ィアを担当している関係もありまして、私の配下の男性に対しては、産後3週間、床上 げまでの21日間が非常に大事だということで、奥さんがお子さんを産んだら21日間は 必ず休職して子育てをすることを義務づけました。こちらに関しては反発もあるのかな と思いましたが、男性社員からも非常に好評ですので、順調に進んでいくのではないか と思っているところです。 ○立石委員 私はポジティブ・アクションにずっと携わっておりますが、ポジティブ・ アクションはある日突然パッとできるものではない、地道に言い続けて攻めていかない と改善できないのではないかという思いを持っています。私自身がこの推進協議会の委 員になっていることもあり、当社でも人事のほうで、トップに恥をかかせてはいけない、 何とか制度的に支援できるような形に持っていこうと、一生懸命努力をしてくれていま す。  例えば育児休職制度は、法制では最長で満1歳6カ月までですが、それ以上の期間を 与えようということで、最長で2歳の3月末まで休職できるようにしています。また、 育児短時間勤務制度も法律では小学校就学開始年度までになっているようですが、それ を最長で小学校3年生修了までにしています。  家族手当も、従来は2万円を配偶者に渡して、子どもには4,000円という制度だった のですが、それを子どもに重点的に支援していこうということで、配偶者には月に8,000 円、子どもには1人当たり月額1万2,000円、それを22歳まで支援しています。  育児支援については、保育所を2カ所つくりました。1カ所は私どもの研究所がある 京阪奈にある「きらら京阪奈」です。ここは保育士7名で運営しておりますが、この7 月には京都の本社にも「きらら京都」をスタートさせます。そして、契約社員、派遣社 員も含めて使えるような形に利用範囲を広げていろいろやってくれております。不妊治 療についても最長365日、つまり1年まで休暇を与えようということで進めております。  これらが本当にどういう形で利いてくるかというのは、これからだと思うのですが、 保育所は希望も多く出ておりますので、うまくいくのではないかと思います。私どもと しては、先ほどから出ているダイバーシティ・マネジメントとワーク・ライフ・バラン ス、これらに重点を置いて取り組んでおります。 ○手島委員 立石委員のものすごい先進企業の話を伺って、すごいなと思ってすっかり 感心しております。私の所はそれほど進んでもおりませんので、少し次元の低い話だと 思うのですが、こんな会社もあるということで聞いていただければと思います。これは むしろ一般の会社の方と共通の悩みだと思うのです。  例のポジティブ・アクションは2001〜2003年まで3年間やったのです。その結果、 目標にしていた管理職の中の女性の比率は5%弱、50人弱の管理職が出来まして、その 人たちはみんな相当活き活きとやっていただいて、今でも大変な戦力になっています。 なぜ3年でやめたかというと、優秀な人がいっぱいいるので、3年も経つと独りでに男 の人と同じ比率でどんどん増えるだろうと思っておりました。私は今でも、きっとそう なると思っているのですが、現実はそうなっていないのです。  1980年ぐらいから学卒の、いわゆる総合職の女性の方をかなり採るようになったので すが、その方々は、皆さんとても優秀な方が多いのです。ご存じのように、その辺りか らずっと最近まで、女性の就職が厳しいということもありましたが、どの女性もみんな 頑張っておられるので、これは学校にいる間からそういう動機づけが皆さんできていて、 ぼんやりしている男の子に比べると優秀という方が揃っていたわけなのですが、会社に 入ってもそのとおりで、光っている人が多かったのです。しかし、どういうわけか、管 理職にはなかなかなれない人が多かったのです。会社の制度もそうだったし、会社の中 の雰囲気もそうだったので、これはポジティブ・アクションで勢いをつけなければいけ ないと思ってやったわけです。  3年やって、その後はみんな一般の男性と同じように公募で役職につくのですが、そ れをやったら2年間は女性の応募者がほとんどいないということになりました。前倒し でやったので2年ぐらいはしょうがないかと思っていたのですが、3年目になっても、 ゼロではないのですが少なくて、これは少し違う理由もありそうだということになった のです。この間聞いてみましたら、役職になった女性は相当張り切って頑張っているの ですが、少し張り切りすぎのきらいもあって、次の年代の女性の方々は、そこまで頑張 らなくてもいいのではないかと思う方がだいぶ増えたらしいのです。皆さん、家庭もあ ったり子どもさんがおられる方もいらっしゃるわけですが、あそこまで男に負けないよ うに頑張らなくてもいい、あそこまで苦労しなくてもいいのではないかという雰囲気も あるのだという話を伝え聞いたのです。  よく考えてみると、男の人にもそういう人も結構いるのかもしれません。男の人全部 が何でもかんでも役員にならねばいけないと頑張っているわけではないだろうと思うの で、そういうことは男の人も一緒なのかと思うのですが、ポジティブ・アクションをや ったほうからすると、もう少し頑張ってくれればいいのにという気がしないでもありま せん。  しかし、私はこれはそれほど心配していないのです。女性の管理職の方、今でいえば 課長クラスぐらいの方が多いのですが、そういう中から「よし、ではもう一歩先に行こ う」、「イタキモ」でいこうではないか、というような人が3人に1人とか5人に1人は きっといらっしゃるのではないかと思って期待はしているのです。ポジティブ・アクシ ョンをやったお蔭で女性の応募者もたくさん増えまして、最近では新入社員の4割ぐら いが女性になったそうで、それはすごくいい。その中で、もっと先に行こうという人は 必ずいると思っています。  ただ、私どもの人事担当者の話を聞いてみますと、ここまでくれば、もうポジティブ・ アクションではない。管理職の女性を優遇して何とかというようなことではなくて、男 の人も女の人も、仕事にも思い切って打ち込める、あるいは家庭生活とか自分の生活も きちんとやっていくというような、先ほどからお話に出ているワーク・ライフ・バラン スのほうをしっかりやることがこれから先は大事なのではないかと考えました。その中 で働く環境づくりなどもきちんとやって、女性の方がより活躍できるようにする。これ は女性だけではなくて男もそうなのですが。非常に雑な言い方をすれば、世の中の半分 は男で、半分は女の人がいるわけですから、今はどの職場でも、どういう場面でも同じ ように活躍する人が出てくる、そういうことが当たり前の姿になるように環境を整える ことが大事になってきたと思っております。  実は、私が会社の人に聞いたら、そういうふうになっているということを言ってきな さいと言われて来ましたので、そういう話をしたわけなのです。したがって、ポジティ ブ・アクションという言い方は決して間違いではないのかもしれませんが、これからは、 ポジティブ・アクションというのはあの頃のことだった、私どもの会社の中では、これ からはワーク・ライフ・バランスという言い方で、そちらの視点から社員のバックアッ プをしていくことが大事になってきたのではないか、そのように考えているのです。具 体的に何をやっているかについては、ここに書いてあるとおりです。 ○樋口委員 私どもの会社も金融関係で、昔から女性の割合が多く「女性の戦力の活用」 は何十年も前からの課題で、会社としてもかなり力を入れてまいりました。しかし、私 も現場で女性と話をすることが無くなっておりますので、最近みんながどう考えている かについて、あまりビビッドな情報は持っておりません。その代わり、ここへ参ります 前に少し意見を聞いてきたのです。  我々の場合も、職場の中のいろいろな場で女性が活躍しています。私どもにそういう 話をするときも、ちゃんと女性の社員が来て要領を得た説明をしてくれます。課長とい うのはあまりいないし、管理職の割合も、ここで申し上げるのも気が引けるほどに少な いのです。最高位の管理職は次長ですから課長と部長の間、したがって部長が一人もい ないという状況です。そのような状況の中で、一般社員プラスアルファの課長代理とい いますか、先輩社員というところに、女性の戦力はかなりめざましく台頭してきている ということがあって、実務的な説明も彼女らで十分間に合って、私も頼りにしていると ころです。  数値的に女性の割合が以前と同じように多いにもかかわらず、女性が管理職なりキャ リアが上がっていく数値になぜならないのだろうと聞いてみますと、2つ問題があると いうのです。1つは周りの理解です。同じ能力のある男性社員と女性社員ですと、残業 だとかお客さんの接待等々で、どうしても女性よりは男性という選択になってくるとい う中での男性の意識、周りの環境の問題です。もう1つは、それを受けるごく平凡な女 性自身の問題がある。先ほど手島委員がおっしゃったように、求めて上に上がりたいと いう希望や野心が男性ほどないというところでしょうか。ここにいらっしゃる方は皆さ んキャリアの方だから、普通の女性とは意識が少し違うのではないかと思うのですが、 私が聞いている限りでは、無理やりステップを上がっていきたいということではなくて、 どちらかというと引いてしまって、何だったらどうぞという人のほうがやや多いのでは ないか。女性社員の意識の問題があって、そこは私が代わってやりましょうというよう なことは随所にあるのかもしれません。それはむしろテレビの世界ではしょっちゅうあ りますが、我々現実の仕事をしている場の中ではそれほど見られない。比率的には少な いものだから、どうしても女性のキャリアが上がっていかないのではないかと思うので す。  では、これからどうしたらいいのだろうかというと、これも先ほど丹羽座長がおっし ゃいましたが、結局、環境を整えて、やる気のある女性はどんどん上がっていける。そ の場合、意識的に周りの意識を変えるためには、同じような能力だったら女性のほうを 上に使ってみる。私はそんなことをずっと前に申したような気がするのですが、相変わ らず女性の支店長は一人もいないのです。しかし、そういう具合に使ってみる。支店長 会議で一人だけだと発言できないので、何人もの女性の方が出てきて、ひとつのパワー を持って意見を言えるようになれば変わってくるのではないかと思います。  私どもでは育児支援制度とか女性の活躍の場を広げる等、人事制度の面では、以前と 比べてこの辺がこうなったらいいのにと思ってきたところはかなりの程度改善され、実 施・実践されているのです。それにもかかわらず実態が付いてこないというところは地 道に努力していく意外にないのでしょうが、これももう少し時間をかけていかなければ いけないだろうと思っています。 ○福原委員 長いことお話するのもいかがかと思いますので、お配りしてある表を見て いただきながら、何をやってきたかをお話します。私どもがポジティブ・アクション以 来いろいろな施策をやってまいりまして何が変わってきたかというと、男女の勤続年数 の差がどんどん縮まっていることです。ご覧のとおり、ポジティブ・アクションのいろ いろな施策をやって、大幅にここは詰まり、男女共同参画アクションプランになったと ころで両方とも勤続年数が下がっていますが、それは2005年に早期退職優遇プランを やりまして、そのショックがいまだに残っているからです。しかし、これは来年辺りか ら回復して元に戻るだろうと考えております。見ていただきたいのは、男女両性の差が いかに詰まっているかです。  これは結果でありまして、ではポジティブ・アクションのときに何をやったか。株式 会社資生堂は、男性が約1,800人、女性が約1,500人、平均年齢で申しますと、この前 の年で男性が42歳、女性が38歳強というところです。  ポジティブ・アクション以後にやってきたことはマネジメント研修と社員の意識改革 ですが、これがいちばん大きく利いたと思います。制度の中にはハードの制度と、それ を実施するためのソフトが付いていかないといけないのですが、制度よりもソフトのほ うがどうも重要だという認識を私は持っています。  マネジメント研修と申しましたが、これは女性に対して研修することを意味している のではなく、男女両方に、どうしてこのことが重要なのかということを繰り返し繰り返 しやっていくことによって社内の意識変革が行われるのです。それから、人事諸制度で 問題があるものは2002年に見直しました。具体的にはコース別雇用管理を廃止したり、 男性だけが対象となっていた世帯手当をなくする、家族手当を見直す等もこの辺りで変 わってきます。  ここでいちばん気をつけなければいけないことは、女性の方々を調べてみますと、身 近にロール・モデルがいないと言うのです。社外を拝見すると水越委員や内永委員のよ うな立派な方がいくらでもいらっしゃるのですが、社内に身近なモデルがいない、「ああ いうふうになろう」というあこがれがいないということが分かりましたので、あこがれ るような人を養成することを考えまして、それはやや成功したように思います。  これから先はワーク・ライフ・バランスをいかに良くしていくかと考えていくと、自 ずとこの問題については制度、あるいはこれ以上のソフトをやらなくても独りでに少し ずつ物事は改善していくのではないかとも考えています。ところが、これがいちばん難 しいところで、考えてみると最初にこっちを改善したほうが早かったのかという感じも あります。  もう1つ大事なことは、先ほど座長が、社内に対するコミットが大事だということを おっしゃって、それも大事ですが、社長の社外に対するコミットも大事であるというこ と。新聞に出てしまうと、やらざるを得ないというところがありますので、そのように 自分で自分に圧力をかけるということが必要になってくるのではないかと考えています。 ○水越委員 いま、福原委員がトップの社外に対するコミットが大事と言われましたが、 同感です。私どもでは小売業という事業特性から見ても、女性の登用を推進するように 方針が出されており、各事業会社の社長も女性の役員をはじめ管理職への登用には積極 的です。今年度はセブン&アイ・ホールディングスで5名の女性の役員が誕生しました。 ホールディングスのトップは、アナリストの方々との会合やマスコミのインタビューの 折りにも積極的な登用を公表しております。このトップの本気が、社内の徹底を促進し ていると思います。  私はポジティブ・アクション推進のお役に立てればと講演依頼のあった地域に出かけ ております。各県では参加されているのは中小企業の方々が多く、その方々の事例発表 を伺いますとトップの考え方によってずいぶん違うのだな、ということを感じます。「女 性の活躍を推進してください」と言われるから何とか登用しようという考え方では腹に はまらないため、なかなか推進できません。でも、女性も男性も会社にとって重要な人 材であり資産である、その能力を最大限発揮できる環境を作り競争力をつけていこうと いう社長の所では、女性の活躍が推進されています。  このところ、CSRの観点からも女性の活躍度が重視されていますが、単に「女性の 活躍を促進しているので、わが社は社会的責任を果たしていますよ」というのではなく、 「CSRを推進することによって、企業の競争力がこれだけ高まっています」というこ とを示すことが、これからのCSRの重要な視点になるだろうと思います。そういう視 点からも、女性が活躍していくことが会社の成長のために必要なのだという認識を、ト ップが持つことによって、はじめて効果が上がるのではないかと思います。  もうひとつは女性の意識改革です。1986年男女雇用機会均等法施行の前後から、 当社では自分たち自身が意識改革していこうと女性たちの有志で勉強会の組織をつくり、 社内外の講師を招いたり、シンポジュームをしたり、10年間勉強を続けてきました。 そのメンバーの中から、今、部長になったり、店長になったり、執行役員になったり、 多くの人材が輩出されています。  私どもではスペシャリストの女性を店長に抜擢したことがあります。驚くような力を 発揮し、ゼネラリストとしての力量をみせた者もいましたが、店長よりバイヤーのほう が能力を発揮できる者もいました。1年後にバイヤーにもどり、これまで以上にいい仕 事をしています。スペシャリストもゼネラリストも会社にとっては大切な人材です。適 材適所で生き生きと能力を発揮することが重要なわけですから、柔軟な対応が必要です。  トップ、中間管理職、そしてなによりも女性自身が本気になってはじめて成果が生ま れるのだと思います。そしてそれは、すぐに達成されるものではなく、時間もかかり、 根気も要る作業ですが、それをやり続けてこそ達成されるものと思います。 ○山崎委員 私どもは中小企業団体を会員としている組織でして、中小企業の細かい実 態までは把握していないのですが、中小企業におきましては制度あるいは施策に対応が 追いついていないのが一般的ではないかと思います。いま中小企業は約470万企業あり ますが、そのほとんどが小零細企業、小規模企業であり、少人数ですので仕事に追われ ていて取り組む余裕がない、意識がそこまでいっていないということではないかと思い ます。  厚労省からいただいた労働関係の資料は業種・業態に共通していますので、私どもの ルートに載せて中小企業に広く普及を図っています。特にポジティブ・アクションにつ いては、会員団体を通してPRはしていますが、個々の企業における実態の把握はでき ておりません。いずれ、これについても調査等はしたいと思っております。  私どもは中小企業事業者で組織する中小企業団体、いわゆる中小企業組合を会員とし ており、現在約3万2,000組合あり、傘下の企業数は300万企業を超える組織でありま す。、このような組合の中には女性部というものが結構あるわけです。また、県単位でレ ディース中央会があり、私どもが親会になっております。現在20ほどの県で組織され ており、この11月に全国組織を結成することになっています。このレディース中央会 に関しては、特に男性に伍して積極的に活動することを申し合わせており、この全国組 織の結成により、全国規模での女性の躍進・活動が期待されるのではないかと思います。 一部の中小企業においては、女性の感性や柔軟性を発揮して、社会活動や事業活動の面 においても活躍している状況が見られます。しかし、まだまだ中小企業では十分とは言 えない状況にあります。この全国組織によって女性の輪がかなり広がりますし、また、 女性の登用に関しての議論も活発化するのではないかと思います。  それから、事業活動の項目の中に「男女共同参画に関する施策への協力」も謳ってい るようです。こういうことからしますと、その活動として、より一層ポジティブ・アク ションの推進が女性からの声に基づいて我々親会の方にもいろいろ訴えがあると思いま すので、かなり推進していけるのではないかと思っています。私ども親会としてもこれ は女性の活躍の母体となる組織ですので、組織のメンバーを各団体の役員にお願いする。 また、国からの依頼があれば審議会等の委員に推薦して活躍の場を広げるように頑張っ ていきたいと思います。また、各県の中央会の指導員を対象として多くの講習会をして おりますので、テーマに取り上げてやっていきたいと思っております。  先ほど水越委員からありましたように、中小企業の経営者の決断ひとつにかかってい ると思いますので、我々もいろいろな会合の場において、できる限り取り組んでいただ くように訴えかけていきたいと思います。 ○茂木委員 私どもも中小企業を抱えている団体で、いま8万ぐらいの会員がいらっし ゃるのですが、9割以上は中小企業です。ただ、その中でも小零細等幅があり、こうい った議論の俎上にのる規模がどのくらいだろうかと、お聞きしながら考えていたのです が、どの辺をターゲットにするかというところに少し難しさがあるのです。  今、私どもとしては個別の相談やセミナーをやっております。また3月には「ワーク・ ライフ・バランスがあなたの企業を伸ばします」ということで、企業側と学生が一緒に なったシンポジウムを行います。先ほどのお話のように、業績がよくなっていくのだと いうような議論もあるのですが、いま中小企業の中では、人材をどう確保するかが相当 大きな課題になっております。  景気がよくなればなるほど中小企業に人は集まらないという傾向があり、経営者の決 断という部分もあります。中小企業自体が自分たちの企業を今の状況の中にどう適合さ せていけるのか、そういう努力を相当していかなければいけないという感じがしました が、そういう面では均等・両立推進企業表彰という制度がありますので、こういったこ とを中小企業がどう利用できるのかです。現状の基準という面からいけば、全国平均と の比較の中で自己採点していくということですが、そのレベルでいくと相当レベルが高 く、どこまで中小企業がエントリーできるのだろうかという感じがいたします。その点 ではバーを下げる、そこの層をもう少し広げていくということが当面は重要になるとい う感じがいたします。例えば自己採点の場合でも、管理職比率の全国平均がすぐ分かる ようなリンクが張ってあるとか。中小企業の方々がそこまで調べ切って全国平均のこの 基準をクリアしているのだということでエントリーしていく、というようなことも実は 大変な面もあり、その辺にも少し配慮していただきたい。表彰制度の枠も少し緩めにし ていただいて、自分の企業はこういう形で進んできています、というアピールができる ものに変えていただけるとありがたいと思います。  これは山崎委員が話されたことと若干筋が違うかもしれませんが、私どもでも女性経 営者の会をやっております。女性経営者は東京で500人ぐらい、全国では3万人ぐらい いらっしゃるのですが、そこで創業支援をやっております。そこでは企業を女性が起業 する場合のノウハウを伝授するようなセミナー等もやっており、なかなか好評です。女 性の活躍の場として起業という部分も、もう1つの軸としてあるのかなという感じがし ますので、私どもとしては、その辺も今後努力してまいりたいと思っております。 ○丹羽座長 ありがとうございました。いま皆さん方に大変いいご意見をいただいたと 思います。問題点が全部お話の中から浮かび上がってきていると思いますが、これを更 に一言言っておきたいということがあれば、どうぞ。内永委員、いかがですか。 ○内永委員 先ほど、女性自身が自分のキャリアが上がるということに対してあまり積 極的ではないのではないかというお話があったと思います。実際、そういう現象は随分 見られることも事実なのです。しかし私どもの経験、それから、私がいろいろなお客様 の所に伺って女性活用ということでお話をさせていただくとき、同時にその企業の女性 の方といろいろお話をするのですが、ある意味では最初から諦めているということがあ るのです。「どうせ、私たちが頑張っても、そんなにないんじゃないの。トップはああ言 ってくれるけど、本当にうちの人事は動いてくれるのかしら」というようなことがしょ っちゅう私の耳に入ってまいります。  また、これは私たち女性もよくないのだと思うのですが、キャリアを上げていくのに こんなに努力しました、こんなに頑張りました、こんなに大変だったんですということ を少し言いすぎているのではないかと思うのです。男性でもキャリアが上がるというこ とは大変なことであって、女性だから大変なこともあるかもしれないのですが、何でそ んなに頑張ってやりたいのかというと、キャリアが上がっていくことによって大きな仕 事ができるとか、自分の夢を実現できたりするのです。私が言うのもおかしいのですが、 ポジションが上がれば、それなりに責任も増える代わりに、実現できることも増えてく る。この醍醐味というか、うれしさというか、そういうものをもっと女性に教えてあげ る必要があるのではないでしょうか。それが分からなくて大変だ、大変だ、ワーク・ラ イフ・バランスで大変だと言いすぎるのは、どうしようかと迷っている人たちに対して、 かえって水をかけてしまうようなところがあるのではないかと思います。  ただ、私どもはこれを「お目覚めプログラム」と言っているのですが、女性たちにも う一回、目覚めさせてあげよう、キャリアを上げていくことがそれなりに自分の人生を 豊かにする、ということに目覚めさせてあげようと。そうすると、少々苦しくても頑張 ろうというように、みんなが助け合えるのではないかと思います。決して引いているわ けではありませんので、目を覚まさせていただけると、と思います。横から少しサポー トをいただきたいのですが。 ○内海委員 全部内永委員が言ってくださったので何も申し上げることはないのですが、 男性の管理職の方たちの中には、「女性は責任ある仕事につきたくないだろう」と最初か ら決めてしまっているような人も多いのではないかと思うのです。もちろん、管理職に はなりたくないと意思表示する女性もいますので、そういう一部の人の声を基に、多く の女性が管理職にはなりたくないのだと決めてしまっているようなところがないだろう かと思うのです。でも、どうか決めつけないでいただきたい。  私は、女性を育てる立場にある管理職の方々に、女性を活かす3つの「き」という話 をしています。3つの「き」の最初のきは「決めつけないでください」です。その次は 「期待してください」そして「鍛えてください」です。 ○__ 「イタキモ」ですね。 ○内海委員 ありがとうございます。女性に限りませんが、枠をはめてしまうというこ とが人間の能力開発の大きな妨げになるのではないかと思っています。 ○丹羽座長 「イタキモ」というのは良いかもしれませんね。時間も参ったようです。 皆さん、本当にありがとうございました。今日ご意見としていただいたいろいろなこと を今後の女性の活躍推進協議会の活動の中で是非活かしていただきたいし、活かしてい く必要があるかと思います。  さて、資料の8頁の事務局案はこのまま実施ということでよろしいですか。   (異議なし) ○丹羽座長 委員の皆様にもそれぞれご尽力いただいて積極的な活動をお願いしたいと 思います。本日皆さんからいただいたご意見は、私自身も大変勉強になりました。今日 いただいた意見について、全部はディスカッションできないかもしれませんが、ほとん どの問題を含んでおりますので、これを是非シンポジウムの中でも取り上げていただい て、パネル討論なり基調講演で皆さんにアピールをしていくようにお願いいたします。 事務局から何かご連絡はございますか。 ○安藤雇用均等政策課長 ただいま座長からおっしゃっていただきましたように、本日 のご意見を踏まえ、今年度のシンポジウム等について具体的に調整を進めます。詳細は、 個別にご相談申し上げますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○丹羽座長 これで終了といたします。     照会先:雇用均等・児童家庭局 雇用均等政策課         均等業務指導室 啓発指導係         03−5253−1111(内線7843)