07/02/09 第3回化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会議事録 第3回「化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会」          日時 平成19年2月9日(金)          15:00〜16:00          場所 共用第6会議室 ○永野化学物質評価室長補佐 ただいまから、第3回化学物質による労働者の健康障害防 止に係るリスク評価検討会を開催します。本日は大変お忙しい中、ご参集いただきまして 誠にありがとうございます。本日の出欠の状況ですが、大前委員、清水委員より欠席のご 連絡が入っています。また、本日オブザーバーとして今回も厚生労働省の委託によりまし て、リスク評価事業を実施している中央労働災害防止協会化学物質管理支援センターから もご出席いただいておりますことを申し上げます。  以後、座長の櫻井先生に進行をお願いします。 ○櫻井座長 議事に先立ちまして資料の確認をします。事務局からお願いします。 ○永野化学物質評価室長補佐 資料のいちばん上は化学物質による検討会次第、2枚目は 配付資料一覧、資料3−1は1枚で両面になっていますが「第2回検討会の議事概要」、資 料3−2は「リスクの判定方法の考え方等について(案)」、資料3−3は「平成18年度リ スク評価対象物質の評価基準値候補リスト」、資料3−4は「ばく露測定データ(暫定)」、 参考1は「国が行う化学物質等による労働者の健康障害防止に係るリスク評価実施要領」、 参考2は「職域における屋内空気中のホルムアルデヒド濃度低減のためのガイドライン」、 参考3は「ホルムアルデヒドのACGIHの提案理由書」、参考4は「ホルムアルデヒドの 産衛学会の提案理由書」、参考5は「硫酸ジメチルのACGIHの提案理由書」、参考6は 「硫酸ジメチルの産衛学会の提案理由書」です。以上です。 ○櫻井座長 皆さん、揃っていますか。大丈夫のようですね。まずは、前回議事概要の確 認をします。事務局から説明をお願いします。 ○永野化学物質評価室長補佐 資料3−1です。前回同様、お目を通していただきまして、 何かお気付きの点がありましたら、後ほど事務局にご連絡をいただくことでお願いします。 ○櫻井座長 そのようにお願いします。  議事に入ります。最初の議題は、「リスク評価の考え方について」です。事務局から説明 をお願いします。 ○永野化学物質評価室長補佐 議題1の「リスク評価の考え方について」と、議題3の「対 象物質の有害性評価について」併せて説明します。資料3−2「リスクの判定方法の考え 方等について(案)」です。リスク評価の考え方については、この検討会の前身の検討会が 平成16年度にありまして、その報告書が平成17年5月に出ています。それを踏まえて、 平成18年5月に今回の参考1にも付けていますが、「国が行う化学物質等による労働者の 健康障害防止に係るリスク評価実施要領」というものを定めています。その中では、スク リーニング評価までの考えが示されていまして、詳細な検討までは具体的にどうするのか が定められていませんので、今回、その考え方をご議論いただければと思っています。  資料に基づきまして1の一次評価です。これは、ただいま申し上げました実施要領で基 本的な考え方が示されているもので、閾値がないと考えられる発がん性物質については、 (1)ユニットリスクを用いたがんの過剰発生率が算定できる場合。ユニットリスクがあ る場合、今回評価する5物質のうち4物質が(1)に該当しますが、この場合は判定の考 え方として、個人ばく露測定結果の最大値ががんの過剰発生率10−4に対応した濃度を超え る場合には、2の二次評価に移行するという考え方にしています。[2]は[1]以外の場合、個 人ばく露測定結果の最大値が、がんの過剰発生率が10−4に対応した濃度以下の場合、現時 点での、労働者の健康障害に係るリスクは低いと判断されますが、発がん性という一定の 有害性があるということで、各事業場において、リスクアセスメントを行って自主的な管 理を行う等の措置を検討することでどうかと考えています。  (2)ユニットリスクがない場合。がんの過剰発生率が算定できない場合。今回の5物 質のうち、硫酸ジエチルがこの場合に相当しますが、一次評価の段階では、定量的な判定 ができないことから自動的に2の二次評価に移行すると考えています。基本的には、前回 の検討会の報告に基づいて10−4のリスクと比較するという考え方です。  2の二次評価です。前回の検討会の報告では、1の(1)の[1]のような場合には詳細な 検討を行うことになっていますが、具体的にどういう考え方で判定をするのかの案という ことをお示ししたものです。(1)二次評価値の決定です。ア、許容濃度又はTLVが設定 されている場合。許容濃度というのは日本産業衛生学会が勧告している許容濃度、TLV は米国産業衛生専門家会議(ACGIH)が提言をしているばく露限界が設定されている 場合は、労働の分野の化学物質を管理する上でも最も信頼性のある基本的な濃度値という ことですので、この濃度がある場合は原則として、両者が同じ値である場合にはその値を、 両者が異なっている場合は最新の知見などを考慮して、どちらかいずれかの値を取ったら どうかと考えています。違う場合はどちらを取るかということですが、自動的に小さいほ うを取るか、産業衛生学会を優先するとかいろいろ考え方はあるかと思いますが、個々の 物質によって事情があると思いますので、どちらを選ぶかはこの検討会の専門的なご意見 を踏まえて選んだらどうかと考えていますので、そういった点も含めてご議論をいただけ ればと思います。  今回の5物質のうち、硫酸ジエチル以外の4物質は許容濃度、若しくは、TLV、若し くは、両方が設定をされていることになります。問題は、許容濃度もTLVもない物質、 今回硫酸ジエチルが、その両方が設定されていない。資料3−3です。前回のご議論を踏 まえまして、多少修正したものです。エピクロロヒドリンから硫酸ジエチルまで、評価す る物質についての各評価基準値の候補ということで、エピクロロヒドリンについては発が ん性のユニットリスクに基づいた濃度として、労働補正をしたあとの濃度として10−4に対 応したものとして0.11ppm、塩化ベンジルについては0.005ppm、1,3−ブタジエンは 0.007ppm、ホルムアルデヒドについては0.033ppmという値があります。硫酸ジエチルに ついてはユニットリスクが求められないので、そういった値がない。またTLV等ですが、 エピクロロヒドリンについてはACGIHのTLVが0.5ppm、産衛学会のほうは設定がさ れていません。塩化ベンジルについてはACGIHが1ppm、産衛学会のほうは設定なし。 1,3−ブタジエンについては、ACGIHが2ppm、産衛学会の設定なし。ホルムアル デヒドについてはACGIHが天井値で0.3ppm、産衛学会が0.5ppmになっています。硫 酸ジエチルは先ほど申しましたように、ACGIHも日本産衛学会もTLV、許容濃度が 設定されていない状況になっています。  資料3−2の2の(1)のイです。許容濃度、TLVが設定されていない場合、今回の 硫酸ジエチルのような場合はどうするか。米国のRELやドイツのMAKは、物質の健康 影響を根拠に科学的に設定した値、規制値のように、行政的な見地といったものを加えた ものではなくて、科学的な根拠だけで設定した値ということで、こういう値があればAC GIH、産衛学会に準ずるものとして使ったらどうかということです。ただ、資料3−3 を見るとMAK、RELは設定をされていない。資料3−2の[2]で[1]の値が設定されてい ない場合は、構造的に類似した化学物質で有害性等の性質も類似していると思われる物質 について、許容濃度、TLVがあればそういった値を選ぶ。なければ、RELやMAKの 値を選ぶ。資料3−3のいちばん右側の欄に、硫酸ジエチルに類似した物質として硫酸ジ メチルという物質がありまして、これについてはACGIHのTLVも産衛学会の許容濃 度も、ともに0.1ppmという値が設定されていますので、これを使ったらどうかと考えてい ます。  それをまとめますと資料3−2の2頁です。そういった考え方で一次評価値と二次評価 値というものを並べると、こういう表になります。エピクロロヒドリンの一次評価値、こ れは10−4のユニットリスクに対応した労働補正したあとの濃度になりますと0.1ppmで、 二次評価値ACGIHのTLVが0.5ppm。塩化ベンジルの一次評価値が0.005ppmで、二 次評価値がACGIHの1ppm。1、3−ブタジエンの一次評価値が0.007ppm、二次評価 値がACGIHの2ppm。ホルムアルデヒドの一次評価値が0.033ppm、二次評価値がAC GIHでは天井値として0.3ppm、許容濃度は平均になる0.5ppmというのが現在設定され ています。どちらを選ぶかは、またご検討をいただくことになります。硫酸ジエチルの一 次評価値が設定されていませんで、二次評価値は、先ほど申しましたように、硫酸ジメチ ルの許容濃度もTLVも同じですが、0.1ppmというのがありますので、これで評価したら どうかと考えています。  (2)評価及びそれに基づく行政措置です。二次評価値と実際の測定をしたばく露レベ ルを比較しまして、その結果によって必要な行政措置等の検討を行うということです。ア のばく露レベルが二次評価値を超える場合、労働者の健康障害に関わるリスクは高いと判 断されることから、必要な行政措置のレベル。例えば、規則に基づいて特化物に加えるな どの行政措置のレベルやリスク管理のあり方について検討をする。イのばく露レベルが二 次評価値以下の場合、労働者の健康障害に関わるリスクはアよりは低いと判断されますが、 一定の有害性、発がん性等ハザードがあるということですので、全く何もしないというこ とではなくて、個々の事業者において、きちんとリスクアセスメントを実施していただい て、自主的な管理を促進する等の措置を検討する。ただし、一次評価値を超えるようなも の、あるいはもう1つの指標としてがんの過剰発生率が10−3に対応した濃度。一次評価値 が10−4なので、一次評価値の10倍の濃度になりますが、産衛学会等では一部の物質、ベ ンゼンやアスベストについては10−3と10−4を併記して濃度が示されていることもありま すので、10−4で対応した一次評価値と10−3の濃度を超えるような場合は、もう少し、具体 的な措置を検討したらどうか、そういう判断をしたらどうかと考えています。以上が事務 局からの判定の方法の考え方の案で、これについてご議論をいただければと思います。 ○櫻井座長 ただいまご説明いただいた内容についてご質問、ご意見等をどうぞ遠慮なく ご発言をお願いします。今日は基本的に、考え方について固めていただきたいということ です。 ○和田委員 この前の委員会のときにお聞きしたかもしれませんが、ユニットリスク10−4 の値より高い場合は、今度は、許容濃度でやりましょうということになりますね。そうす ると、ユニットリスクの値の考え方というのは、あくまでも参考値の感じになるのでしょ うか。ユニットリスクというのは、基本的に発がん性のあるものを見るという考え方です ね。しかし、現実は、平均を見ると、それよりみんな高いですね。 ○櫻井座長 これを見ていただくと、高いものが多いですね。だから、それより低ければ 安全サイドで。 ○和田委員 ユニットリスクは、もうがんの指標ではなくて、その辺のところをきちんと してもらいたいです。発がん性ということで折角ユニットリスクを出したのに、そうでは なくて許容濃度でそれをクリアできる場合は、許容濃度は明らかにユニットリスクの値よ りも高いですから、それでやりましょうということはどうしてですかと言われたときに、 どう説明されるでしょうか。 ○櫻井座長 ユニットリスクより低い場合というのが極めて安全サイドですので、たぶん 今回は4つほどそこに引っかかってくるけれども、引っかからない場合も多々あると。 ○和田委員 ユニットリスクを何で計算したのですかということになる可能性もある。 ○櫻井座長 たまたま今回の化学物質は、みんな現実のばく露がそれを超えているから二 次評価に移行せざるを得ないけれども、少なくとも、それより下回っていれば問題ないわ けですよね。それをまずやる。高い場合に、次にどの数値を選ぶかというのを今日お決め いただく最大の眼目ですね。ですから、許容濃度とかTLVを超えていたら、今度は悪い ほうへ持っていく。それは、はっきりしている。その中間ですよね。 ○和田委員 提案理由では、発がんも考慮して許容濃度を決めた感じの提案理由になって いますよね。そのほかの物質は、そういう発がん性を含めて許容濃度を提案しているかど うかは、ここの資料ではわからなかったものですから、もしそういうのを考慮して国際的 にはこういう考え方をしているから、それでいいのではないかということを言おうと思え ばできるのではないかと思います。そうではなくて、ほかの許容濃度などが発がん性を考 慮しないで決めたということであると、今回は、発がん物質を扱っているわけですから、 根拠として許容濃度を使っていいかどうかということをいまのところ、ある程度、明確に して、できれば許容濃度というのは発がん性を考慮してと書いてあるから、考慮して国際 的な合意に達した値が許容濃度、TLVである。したがって、それでもって最終的にきち んと判断しましょうとはじめから出さないと、なんとなくユニットリスクと言い振らして おいて、都合が悪くなったら引き込めて没にしてしまうという印象を与えてしまうと、マ イナスかなという感じもします。 ○櫻井座長 おっしゃることはわかります。この1、3−ブタジエンは発がんを考慮され ていますね。ACGIHね。 ○和田委員 発がん性を考慮して、国際的にはこう決めてあるということで言えば、それ は皆さん納得して問題ないですよね。 ○櫻井座長 だから、それ以外の生殖毒性とか、刺激で決めているもの。 ○和田委員 決めているものを発がんのあれで持っていくとなると、根拠として問われた ときに少し弱い気がします。そこのところで、発がん性を含めてきちんと考慮してあるの だということを一応確認して許容濃度を使うのであればよいが。 ○櫻井座長 ほかに、ご意見があればどうぞおっしゃってください。資料3−2の裏の「ば く露レベルが二次評価値以下の場合」というのが、いまの場合に相当します。ただ、一次 評価値または、がんの過剰発生率10−3に対応した濃度を超える場合は、必要に応じて、具 体的な措置の実施を検討する。ここなんです。結局、10−3を持ってきて、それ以上だった らさらに具体的な検討をするとなっています。 ○和田委員 逆に言うと10−4は、参考値として、あまり重視しませんよという意味ですか。 ○櫻井座長 10−4は重視しています。それ以下なら。 ○和田委員 以下だったら問題ないです。それ以上の場合です。 ○櫻井座長 以上の場合は10−3をさらに援用するということで。 ○和田委員 1万人に1人ではなくて、1,000人に1人でいいでしょうということで。 ○櫻井座長 これは、そうはっきり言ってしまうとあれだけれども、10−4と10−3は、労働 環境で、しばしばそのあたりで使われている。発がん物質についてですね。10−3は1,000 人に1人でいいのですかと言われたら、誰もいいですよと言うことはできないけれども、 10−3程度というとかなり低い数字です。 ○和田委員 1,000人に1人以下にするのだということを盛んに言ってはいます。始めから そういうのが出てくればいいけれども、10−4で出して、それで合わないから10−3にしまし ょうという考えというのは、なんとなく弱い感じがします。それを初めから許容濃度TL Vというのは発がん性も考慮して国際的に決められた値である。それを元に検討した形に したほうが、すっきりする感じがしたのです。それは、どちらでもいいです。 ○櫻井座長 では、発がん性を考慮した許容濃度とかTLVがない場合は、新しく決める ならば決める。それは1つの方法です。それをどうするかは、ここで皆さんにご検討いた だいて。 ○内山委員 二次評価の値が発がんで評価している場合のほかに、ユニットリスクの一次 評価は閾値がないとして、二次評価はほとんどの物質にまだ閾値があると仮定をして、N OAEL、LOAELから求めている値が多いですよね。それも、問題が残ることは残り ます。けれども、いままでのユニットリスクを、どの程度の、信頼性を持った目安なり基 準値にできるかというと、まだそこまでデータがないというのが現実だろうと思います。 ○和田委員 2頁の表を見ると、ほぼ一次評価値と二次評価値では雲泥の差ですよね。 ○櫻井座長 私もこの委員会に課せられた1つの課題として、今日のような議論になるこ とは予測していまして。 ○和田委員 許容濃度でも、原則としては閾値ということを考えてその安全率をもってや ってはいますが、必ずしも閾値無でも動物実験でここら辺で出なかった。閾値があるかな いかは別にしてというようなことでごまかしていると言うとおかしいですが、そういうこ とをやってはいます。閾値の有無で、あまりとらわれなくともいいのではないかと思いま す。 ○江馬委員 TLVというのは現実的な値というか、実際のデータから出てきた値ですよ ね。データがほかにない限りは、仕方がないように思います。 ○和田委員 科学的なリスクアセスメントから言えば、日本は発がん性に関して閾値有無 のどちらの立場を取るかということですが、アメリカあたりは閾値無しで、ほとんど押し てきていますよね。それで、細かい計算で非常に低い値をすべてについて出していますか ら、リスクアセスメントではこういう考え方がある。リスクマネジメントになれば、現実 的にTLV−TWAで、一応、科学的な根拠を持って考えられますというところへ持って いくのか。 ○江馬委員 例えば、農薬とか食品添加物ということになれば発がん性があった場合、ジ ェノトキシックなカルシノゲンなのかノンジェノトキシックなのかを判断して、ジェノト キシックなものはもう使えないようになりますが、ジェノトキシックでなければNOAE Lから値を出していくことをやりますので、私はこれを見ていてそれほど違和感は感じな いのです。TLV現実的なデータから出てきた値ですので、それはそれで正しいとは思い ます。 ○内山委員 このときの出発点は、大気環境基準とか、あるいはNOAELのは基準とい う規制的な意味が強くなるので、非常に厳しくそこにジェノトキシックなのかどうかを吟 味して、それで閾値が有無というのを判定してとできますが、ここはスクリーニングとい うことでユニットリスクがあるものはそれをまず利用してしまおうというので、閾値が有 無というところは非常に膨大な資料と判断が必要としますが、ここはまず問題にせずにユ ニットリスクが計算されているものは、それをスクリーニング値として利用しようという 発想だったと思います。ですから、そのあとで厳しく見積ってそれより低ければ問題ない。 それで閾値がないと考えたときの……10−4を超えた場合に、何と比較して本当に労働者が 守られているかどうか。対策が必要かどうかということで、いま先生がおっしゃるように その次は何かといったら、もう1回この物質について閾値有無をまた吟味して新たな対応 を決めるのか、それともいまあるTLVなり許容濃度を指標とするかというところなので、 やむを得ないと思いますが、どう説明していったらいいかなというのが。 ○和田委員 説明といいますか、一般的に与えるインパクトですよね。ユニットリスクを 10−4を折角出しておきながら、それをどういう理由でやられるのですかと言われてしまう と弱い感じがします。技術的な問題と、一般環境はどうしても入ってきてしまいますから、 労働者の場合はある程度カバーできますし防ぐことができるし、万一なったら補償が与え られるわけですから、そういう意味では高い値を取ることの説明はある程度できると思い ます。それと実現性ですよね。実際のもので使えるかどうかというあたりが。ユニットリ スクは、そういうのを無視して科学的にただ言っているだけですから。 ○櫻井座長 アメリカで出しているのはどちらかというと安全サイドで、比較的多くの物 質を閾値無ということで割り切っています。 ○和田委員 労働界の場合、安全サイドを使わなくていいのですかということになったら 困りますよね。 ○櫻井座長 比較的、気楽に安全サイドにやっているということですね。ですから、スク リーニングに使うには有効だということで、ここでは採用している。けれども、そこへ数 字を出すと、たぶん、皆さんは心配されるから、説明が必要になってくる。だから、あえ てこういうスクリーニングレベルを採用したというのが1つの選択で、我々は説明の責任 を負ったわけだから、それで苦労すると思います。 ○和田委員 だから、先ほど出された私が言ったような根拠をある程度きちんと説明でき るということでいけば、それは問題ないと思います。 ○櫻井座長 資料3−2では10−3があって、いずれにしても必要に応じ、より具体的な措 置の実施を検討する。このあたりで、最初の10−4の数値の妥当性を調べる。これは内山委 員もおっしゃいましたが、動物実験から出ている数値ですよね。 ○内山委員 そうですね。ヒトで出ているのは1、3−ブタジエンとホルムアルデヒドぐ らいで、あとはほとんど動物実験になっていますね。 ○櫻井座長 動物実験で出てきた発がんの閾値ゼロということで出ている。 ○和田委員 それで非常に低い値を取っている。しかし、現実の労働界においてそれをそ のまま採用するのは、かっての感じで常に10−3ぐらいがいちばんいいのではないかという 方向に持っていけば、しかもTLVとかで見た限りにおいては、発がん性をある程度少な くすることができるということも、根拠として、書いてありますから、そういうのを使っ てやればフィージビリティの問題からいえば、これで十分だということをある程度言えば 納得してくれるのではないですか。 ○櫻井座長 そう言えると思います。10−3を取ること自体もまだ問題がある。閾値がない、 10−3の数値自体も随分低いものが出てくる。だから、それすら安全サイドに取っている。 ○和田委員 10−3は、1,000人に1人ぐらい出てもいいと認めるのですかと解釈されてし まうと、データを見るという基本的なことですよね。最近のOSHAも、まだ10−3でいっ ていますから、1,000人に1人以下にすることもある程度考慮したということで、そういう ことをあれすればいいのではないですか。 ○櫻井座長 これはホルムアルデヒド以外はIARCなどは2Aで、結局ヒトについてま だ発がん性は証明されていないものですから、一方、動物実験の発がんから、一応我々ヒ トにもあるものと推定しているという点でもある……。 ○和田委員 そう説明せざるを得ないということです。 ○櫻井座長 細かく説明するしかないです。この方針ということでよろしいですか。あり がとうございます。判定方法の考え方についてはご了解をいただいたということで、次の 議題に進めます。  対象物質の有害性評価については、いま一応済んだのですね。 ○永野化学物質評価室長補佐 資料3−3がそれです。 ○櫻井座長 もう1回説明してくださいますか。 ○永野化学物質評価室長補佐 基本的には、前回に説明してご意見をいただいて、間違っ ていたところなどを多少修正して、こういう表になりました。 ○櫻井座長 そういうことで、今日は議題2の事業場におけるばく露状況調査の実施状況 についてをご説明ください。 ○永野化学物質評価室長補佐 資料3−4です。まだ、すべてのデータが出揃っていませ んが、大体、3分の2ぐらいのデータがやっと出てきました。最終的には、次回の会議で 全部のデータをまとめたい。さらに、もう少し詳細に分析したもので判定をいただくとい うことで、今回は測定値の現在の状況ということで説明します。  資料3−4の2枚目と3枚目に表がありますが、1の平成18年度実態調査(暫定)が、 今年度リスク評価事業の中で有害物ばく露作業報告を提出してもらった事業場から、それ を選定して調査をしている事業場で、先ほど言いました3分の2ぐらいが出揃っている状 況です。次の頁の職域におけるシックハウス対策事業におけるホルムアルデヒド濃度測定 値というのは、以前、中央労働災害防止協会でシックハウス対策事業の関係で、ホルムア ルデヒドを使用しているいろいろな業種について、測定したデータをまとめたものになっ ています。最初の平成18年度実態調査から説明します。エピクロロヒドリン、塩化ベンジ ル、ホルムアルデヒド、硫酸ジエチルとなって、1、3−ブタジエンのデータが出ていな いということで、今回はまだ状況がよくわかりません。いちばん上がエピクロロヒドリン。 A測定の結果とB測定の結果、スポット測定値と、個人ばく露の測定結果ということにな っています。A測定、B測定は作業環境測定基準に準拠して測定をしたもので、スポット 測定というのは、例えばサンプリングをするとか、一定の短時間の作業を行っている時間 だけ近傍で測定をしたということで、個人ばく露はそのサンプラを労働者に付けてもらっ て、1日作業してもらったものになります。B測定は、基本的には10分間測定するという ことで、スポット測定はその作業をやっている間の時間になりまして、そういう意味では、 スポット測定のほうが高くなるのではないかということもあります。屋内の場合はB測定 をして、スポット測定値はほとんどが屋外での測定ということで、データとしてはB測定 と比べてスポット測定値のほうがだいぶ低い値になっている状況です。  黄色とオレンジの色を付けているのは、資料3−2の2頁に一次評価値と二次評価値が ありますが、単純に一次評価値を超えるものを黄色にして、さらに、二次評価値を超えて いる値をオレンジ色に塗っています。基本的には、個人ばく露の測定値と比較するのかな と考えていますが、エピクロロヒドリンについては個人ばく露でいいますと途中経過の、 平均が0.058ppm、最大値が0.23ppmということで、平均値ですと一次評価値も超えてい ない。ただ、最大値を見ると一次評価値を超えるものがある。ただし、二次評価値までは 超えていない。塩化ベンジルで個人ばく露を見てみますと、一次評価値が0.005ppmです ので、平均最大値ともにこれを超えている。ただし、二次評価値の1ppmは、いまのとこ ろ、個人ばく露測定値を見ると超えていない状況にある。  ホルムアルデヒドは天井値の0.3を使うのか、許容濃度の0.5を使うのかがありますが、 この表では、二次評価値が0.3を超えるものについて色を付けています。個人ばく露を見ま すと、平均のところで黄色い一次評価値を超えている部分が結構あります。また最大値を 見るとオレンジ、他の製剤の原料としての使用とか、塗装作業では最大値は0.3ppmを超え ている。ホルムアルデヒドについては、次の頁にシックハウスの関係で調査したものがあ りまして、A測定とスポット測定の結果になっていますが、ホルマリンの製造、樹脂の製 造、メッキ作業、塗料の製造、病理検査、接着剤として含有されているものの使用、建材 の製造といったものについて調べていまして、パッと見てわかるとおり、結構高い値が出 ています。例えばスポット測定で見ると、平均値のオレンジ色の0.3ppmを超えている部分 も高くなっていますし、最大値で見ると9ppmとか10ppmと非常に高いオーダーの測定が 出ているものが結構ある。先ほどのエピクロロヒドリン、塩化ベンジルと比べると、まだ 暫定なので、最終的な結果はわかりませんが、このホルムアルデヒドのばく露のレベルは 高いのではないかとなっています。  最初の表のいちばん下が硫酸ジエチルです。個人ばく露測定値で、これは一次評価値が ないので二次評価値が硫酸ジメチルの許容濃度を使うと0.1ppmになるので、平均が 0.082ppmと若干低くなっていますが、最大値を見ると0.964ppmで0.1ppmを超えている ことになります。今回は、まだ測定値が全部出揃っていないのと単純に平均とか最大値を 出しているだけですので、もう少し、具体的にどんな分布になっているのか、最大値とい うのは特異的な値なのかといったものを分析したり、換気装置の有無で何か違うなどをも う少し次回までに分析をした上で、その判定をしていただきたいと思っています。今回は、 現在まで出ているデータではこんな状況になっていますということでご報告させていただ きました。 ○櫻井座長 ありがとうございました。このデータをご覧になって、いかがでしょうか。 まだ、これは中間のものということですが。 ○和田委員 このデータを見ますと、先ほどの議論で黄色はそういう意味でいいというこ とになれば、平均的なばく露を示す平均値というのは、いずれにしても、その範囲内に入 っているわけですよね。それと、個人ばく露が大体いちばん右に入っているわけですよね。 問題はB測定やスポットですが、現実の問題としては何らかの予防対策ですね。制限対策 とか報告することで予防可能であるということで、平均的には、いまの値を使っていいの ではないかという感じがします。そういうことにすれば。 ○櫻井座長 あとは発がんを考えた場合、生涯にわたって1日8時間、週40時間の40年 で10−4の数値を出していますので。 ○和田委員 それは先ほどのあれの議論ですから、それはそれでクリアしたという仮定で 言えば平均値は黄色ですから問題ないでしょうということを言っていただいて、B測定が スポットより高いというのはきちんと予防対策が出れば予防可能でしょうと。 ○櫻井座長 このデータのB測定とスポット測定で、スポット測定のほうが作業をやって いるときに限定して測っているから高いはずであるのに、逆になっているのはなぜかとい う疑問がありましたが、どちらかというと、B測定はこのデータは屋内の場合にB測定と いうシステムに乗って測定している。屋外ではB測定というシステムに乗らないで、スポ ット測定という別の測定をやったということですね。わかりました。そうであれば、低い のは特段おかしいことはないです。 ○内山委員 具体的には、どういう採取、スポットされたのですか。 ○オブザーバー(中災防) スポットの場合は、大体、外が多いので、風上、風下と作業 者の両脇ぐらいに置きまして、そこで作業の開始から終了までの時間帯を取っている形で、 基本的には作業時間です。 ○櫻井座長 例えば、屋外でサンプリングをする作業ですよね。 ○オブザーバー(中災防) そうです。 ○櫻井座長 それは10分とか、15分でしょう。 ○オブザーバー(中災防) 実際にばく露しているのは、2分とか、3分です。 ○櫻井座長 その時間だけを測っているわけですね。 ○オブザーバー(中災防) はい。 ○櫻井座長 だから高くてもいいけれども、屋外であるから、わりあいにすぐサッと流れ てしまう。 ○オブザーバー(中災防) だいぶプラント的な所が多いので、どうしても風等の影響も 強くて、そういった形で、必ずしも、高くうまく取れていないのかなと。 ○内山委員 風下とか風上の平均を取っているのですか。 ○オブザーバー(中災防) スポットは、同じ箇所の平均です。 ○オブザーバー(中災防) B測定は最大値を取ることになりますので、同じ作業最大値 を取っています。 ○櫻井座長 あとはブタジエンが全然出てきていないので、すべては次回ですね。ホルム アルデヒドあたりは大体データが出ている。分析してくださるのですね。 ○オブザーバー(中災防) ホルムは7社だから、ひょっとすると、もう1社が出てくる かもしれません。その程度です。 ○櫻井座長 わかりました。まだ全部ではないですね。 ○オブザーバー(中災防) はい。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。議題ですと、3番目に対象物質の 有害性評価についてとなっています。先ほど順番を間違えてしまいましたが、今日はもう いいのですね。次回に、きちんとやるということですね。  なお、先ほど硫酸ジエチルのTLVと許容濃度がないので、硫酸ジメチルという類似物 質を使うことになるわけですが、先ほどは一般論としてご議論いただいて、それについて の議論は特段ありませんでしたが、よろしいですか。全然ない場合とは違って、類似物質 の許容濃度あるいはTLVが存在する場合に、それを引用する。ただ、機械的にその都度 そうするわけにはいかないですね。類似物質として認めていいかどうかという点の判断が あるだろうと思いますが、この場合、硫酸ジエチルに対してジメチルを使うことは、個別 にご判断いただかないといけないと思います。 ○和田委員 そうですね。値がないから、仮に参考として見た場合にというぐらいという ことでしょうね。 ○櫻井座長 化学構造からみるとメチルとエチルの違いだけで、分子量が少し小さい方の 物質のばく露限界値を使うわけで、どちらかというと、安全サイドのような気もします。 これは、次回にもう1回ご検討いただいて。  以上で、今日予定の議題についての大体のご議論をいただきましたが、何か追加のご意 見はありますか。事務局から何かありますか。特段これでよろしいですか。  その他ということで、次回の予定はいかがでしょうか。 ○永野化学物質評価室長補佐 次回は、既にご連絡してありますとおり、3月6日でまだ 時間と場所が未定ですが、午後に開催したいと思います。別途、時間と場所が決まり次第 ご案内させていただきます。次回は、先ほど申しましたように、具体的な測定データが全 部揃って判定をいただくことと、リスクが高い物質について具体的な対策として、どんな ことが必要かといったことも、少し、ご検討いただければと考えています。当初、次回で 取りまとめと考えていましたが、場合によっては、もう1日予備日ということでご連絡し ていました3月20日の午後までかかるかもしれないので、日程の確保をお願いをいたした く思っています。以上です。 ○櫻井座長 本日は、これで散会とさせていただきます。どうもありがとうございました。             照会先: 労働基準局安全衛生部化学物質対策課                            化学物質評価室                電話03-5253-1111(内線5512)