参考資料 3
「メタボリックシンドローム予備群」検討のためのワーキンググループ報告
平成19年2月

メタボリックシンドローム1)の概念を導入した特定健診・保健指導の在り方の検討にあたって、特定保健指導の対象者を選定する上での判定値について、糖尿病学会の見解を求められた。

ワーキンググループでは、保健指導対象者を選定する上での空腹時血糖のカットオフ値は、(1)将来の糖尿病発症のリスク増加、(2)将来の心血管病発症のリスク増加、の2点に基づいて決定されるべきであるとの見解で一致した。その上で、糖代謝異常の一型であるIGT(75gOGTT2時間値140mg/dl以上200mg/dl未満)の概念が(1)(2)にともに符合すると考えられることで見解が一致した。したがって、保健指導対象者を選定する上での空腹時血糖の下限値(カットオフ値)は75gOGTT2時間値の下限(140mg/dl)に対応する空腹時血糖値として求められるべきであることが提起された。

これを踏まえ、糖尿病に関する我が国の代表的な疫学研究である舟形町研究および広島原爆対策協議会健康管理センター研究のデータに基づいて検討を行なった結果、それぞれ98mg/dl、99mg/dlが2時間値140mg/dlに対応する空腹時血糖値であるとの成績を得た。また、当該調査では、空腹時血糖が100mg/dlを超えた場合、将来的な糖尿病の発生リスクが、空腹時血糖が90mg/dlの場合と比べて、2倍以上になることが確認された。これらに加え、さらに他の国際的な基準値、すなわち、[1]空腹時血糖の正常域と境界域を区分するADAの新基準2)、[2]メタボリックシンドロームに関するIDFの基準3)および[3]NCEP-ATPIIIの新基準4)の各々空腹時血糖に関する閾値をも勘案し(三者いずれも100mg/dlである)、本ワーキンググループでは、保健指導対象者を選定する上での判定値は、空腹時血糖の下限値として100mg/dlをとることが適当であると提言する。

さらに、ワーキンググループでは、空腹時血糖100mg/dlに対応するHbA1c値についても検討を行った。HbA1cと空腹時血糖は良く相関しており、HbA1c 5.2%に対応する空腹時血糖は100mg/dlであった。また、健診受診者における空腹時血糖値100mg/dl以上の者の割合とHbA1c 5.2%以上の者の割合はほぼ同数であった。そこで、保健指導対象者を選定する上での判定値は、HbA1cの下限値として、5.2%をとることが適当であると提言する。


文献

1. 日本内科学会雑誌94: 188-203, 2005
2. Diabetes Care 26: 3160-67, 2003
3. A new worldwide definition of the metabolic syndrome [article online], 2005.
Available from http://www.idf.org/home/index.
4. Circulation 112:2735-52, 2005


「メタボリックシンドローム予備軍」検討のためのワーキンググループ委員


日本糖尿病学会
(座長) 門脇 孝 (東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授)
  伊藤千賀子 (グランドタワーメディカルコート所長)
  清野 裕 (関西電力病院院長)
  田嶼尚子 (東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科教授)
  山田信博 (筑波大学臨床医学系内科代謝内分泌教授)
  岩本安彦 (東京女子医科大学糖尿病センター教授)

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