07/01/24 第5回 市町村保健活動の再構築に関する検討会議事録 第5回 市町村保健活動の再構築に関する検討会 議事録 日時:平成19年1月24日(水)13:30〜15:30 場所:厚生労働省5階共用第7会議室 照会先:健康局総務課保健指導室(内線2398) ○出席構成員(50音順・敬称略)  伊藤雅治、尾島俊之、鏡諭、佐伯和子、曽根智史、田上豊資、藤内修二、長谷部裕子、 藤山明美、本田栄子、山野井尚美 ○オブザーバー(発言順・敬称略)  世古一穂、有田さおり、仲宏 ○厚生労働省関係出席者  上家大臣官房参事官(健康、医政担当)、勝又健康局総務課保健指導室長、清野健康局 総務課生活習慣病対策室栄養専門官、加藤健康局総務課保健指導室主査 ○次第 1.開会 2.議題  (1)NPO、民間事業者等と市町村の連携・協働の在り方について  (2)地域住民と市町村の連携・協働の在り方について 3.閉会 1.開会  加藤主査  それでは、定刻となりましたので、ただいまより第5回市町村保健活動の再構築に関 する検討会を開会いたします。  構成員の出席状況でございますが、本日は有原構成員、井伊構成員、大橋構成員、迫 構成員、田尾構成員からは御欠席の連絡をいただいております。なお、本日は金沢大学 大学院教授、特定非営利活動法人NPO研修・情報センター代表理事の世古一穂様、坂 戸市立市民健康センターの有田様、坂戸市市民みんなの健康づくりサポーター「元気に し隊」会の仲様にも御出席をいただいております。よろしくお願いいたします。  続きまして、資料の御確認をお願いいたします。お手元にお配りいたしました資料で ございますが、座席表、議事次第、構成員名簿の後に、資料1、「NPOと市町村の連携・ 協働の在り方について」、資料2、「地域住民と市町村の連携・協働の在り方について」、 以上でございます。不足、落丁等がございましたら事務局までお申し出ください。  それでは、この後の進行は伊藤座長にお願いいたします。  伊藤座長  それでは、議事に入らせていただきます。初めに議題1、「NPO、民間事業者等と市町 村の連携・協働の在り方について」です。このことにつきましては、本日、金沢大学大 学院・世古教授にお越しいただいております。世古教授にはNPO、民間事業者等と市 町村の連携・協働の在り方について、お話をしていただくことになっております。  世古様のプロフィールにつきましては、お手元にペーパーが配付されておりますが、 現在総務省、環境省、国交省等の委員のほか、地方自治体の委員をされておりますし、 著書もございます。  それでは世古さん、ひとつよろしくお願いいたします。  世古オブザーバー  はじめまして。世古と申します。きょうは協働ということについてどういうことなの かということを、基本的に概念の整理を先にさせていただきたいと思います。その後に、 時間はどれぐらいいただけるんでしたっけね。  加藤主査  発表で20分ぐらいです。  世古オブザーバー  20分ぐらいで、あとは質疑ですか。質疑は何分あるんですか。  加藤主査  30ほどです。  世古オブザーバー  30分ですか。わかりました。  では、質疑の時間を別個にとらずに、私の方は話しながらいきますので、そのときに 質問がある方はしていただくというふうにしたいと思います。  では初めに、皆さんもう御存じのことを、御存じでなければいけないことなのですが、 ボランティアとNPOの違いですね。きょう、それから私がNPOという言葉を使うと きには、特定非営利活動法人、法人格を持ったものだけを言っているわけではないです。 特定非営利活動の目的を持って活動をする非営利団体を一般にNPOと言います。NP Oという言葉を御存じですよね。アメリカの用語です。イギリスでは何というか御存じ の方、ちょっと手を挙げてください。知らない方、ちょっと手を挙げてください。  イギリスではチャリティーとかボランタリーという言い方をします。NPOという言 葉は日本とアメリカでしか通用しない言葉ですね。NPOというのを日本語では、「市民 活動団体」というふうに言えばいいと思います。市民活動団体のうち、特定非営利活動 促進法というもので法人格をとったものを「NPO法人」「特定非営利活動法人」という ふうに言っています。私はこの特定非営利活動促進法をつくるということを、1990年の ときからずっと市民活動団体の方々と一緒にやってきまして、このNPO法成立に一生 懸命やってきたということがあります。  今現在NPO法人が何法人あるか御存じの方は手を挙げてください。知らない方はど れぐらいいらっしゃいますか。今3万近くになっています。3万という数は大体何と一 緒かというと、財団法人や社団法人ですね。要するに民法法人と同じ数になっています。 いわゆる公益法人というものと同じ数。ちょっとオーバーしているかもしれませんね。 公益法人よりもNPO法人の数の方がちょっとふえている。ただし、いろいろな大きさ や市場規模からいえば、公益法人の方が大きくなっているということがあります。ただ、 これから公益法人の改革ということも始まりまして、何年後かには民法が改正されて、 NPO法人も公益法人の法律の中に一部入るということもあるかもしれません。まだそ れはちょっと先の話だと思いますが。  きょう私が少しお話しするときに、「参加協働型社会へのパラダイムシフト」というふ うにタイトルをつけさせていただきました。パラダイムシフトの意味がわからない方は、 ちょっと手を挙げていただけますでしょうか。では、ほかの方はおわかりでしょうか。 パラダイムシフトというのは、価値観を転換するとか物事の見方を変えていくというこ とです。協働と連携というのを厚生労働省から来た文書では続けて書いていらっしゃい ますが、全く意味の違うことです。連携と協働というのは同じものではありません。連 携というのはネットワーキングすることですが、協働というのはそういった意味ではな いので、基本的にその理解もしていただこうと思ってきょうはお話ししたいと思います。 パラダイムシフトしないと、つまり価値観を従来の価値観から変えていただかないと、 今お話しする話はなかなかぴんとこないかもしれません。  では、皆さんの中でボランティアとNPOが同じだと思う方は手を挙げてください。 違うと思う方、手を挙げてください。違う理由が明確な方、きちっと手を挙げていただ けますか。どれぐらいいらっしゃいますか。後ろの方もいかがですか。そこに座ってい らっしゃる方も、NPOとボランティアの違いを明確に言えるという方、手を挙げてく ださい。違うと思うけれども中途半端にしか理解していないという方はちょっと手を挙 げてください。  では、ちょっと今整理をしてみたいと思います。ボランティアとNPOは基本的に違 うものです。きょう来るまでに厚生労働省からいただいた文書を見ていても、ボランテ ィアとNPOを意識してきちんと使い分けていないなというところがあったので、きち っと話をしておきたいと思います。ボランティアというのは基本的に個人のことですね。 NPOというのは組織のことです。会社と会社員ぐらいの違いがあります。  それから、収益、報酬との関係でいえば、ボランティアは無報酬です。無報酬という のは労働に対価を得ないことです。労働に対価を得ないということと経費がかかるとい うこととは別です。交通費とかお弁当代とか、そういったものは経費ということですか ら、労働の対価とは別なので、例えば原則的に無報酬といっても、お弁当代や交通費に 近いものを500円とか600円とか払っているというのも無報酬のうちです。NPOは収 益を上げますけれども非営利です。収益を上げるけれども非営利という考え方が、特に 行政関係やこれまでの公益団体にいらっしゃる方でよくわかっていない方がいらっしゃ います。収益と利益は違います。収益と利益の違いがわかる方、ちょっと手を挙げてい ただけますか。収益と利益の違いがわからない方、ちょっと手を挙げていただけますか。 どちらかに手を挙げてください。  収益と利益は全然違いますよ。収益というのは、いろいろな事業をやって、そこで入 ってくるお金全体を言います。利益というのは、その収益から必要な経費、いろいろな 人件費などを除いたものです。NPOというのは、収益は上げるけれども非営利です。 非営利の意味は御存じでしょうか。非営利の意味を御存じの方、ちょっと手を挙げてい ただけますか。どっちか手を挙げてください。参加していただかないと、これから協働 型と書いてあるわけですから。いかがですか。わからない方、いかがでしょう。どっち か挙げてください。後ろの方もただ座っているだけではなく、どっちか挙げてください。 非営利の意味がわかる方、手を挙げてください。わからない方。どっちも挙げていない 方はどっちですか。非営利というのはどういうことですか。では手を挙げた方、どうぞ。 もう一回、非営利の意味がわかったという方。手を挙げていただいた方。では勝又さん、 いかがですか。非営利というのはどういうことですか。今連携・協働をする相手として NPOと書いていますよね。非営利団体というのは、どういうふうに厚労省では理解さ れているのでしょうか。  勝又室長  利益を上げない団体。  世古オブザーバー  それは全然違います。利益を上げないことではないです。  伊藤座長  配当しないということです。  世古オブザーバー  そうですね。分配しないということです。参加している人たちに分配しない。ただし、 その出た利益を次の活動に投資するなり、社会的な目的にやっていくということです。 今おっしゃったように勘違いしている方が多いですね。利益を上げてはいけないという ふうに勘違いしている方が多いです。特に行政の方に。非営利というのは、利益を上げ ても分配しないことです。NPOはもちろんどんどん利益を上げてもいいのです。それ を次の社会目的に使っていく。報酬を受けるスタッフがいる場合も多いです。これは当 然人件費がかかって報酬があるというのは当たり前のことです。報酬を受けるスタッフ がいたりして利益を上げている、だからけしからん、なんてまだ考えている人がいれば、 それは時代錯誤です。非営利団体というのは、利益を上げても分配しないことです。何 でこのことがいまだに皆さん、今お答えいただいた方のようにわかっていないかという と、日本には非営利団体というと行政だというふうに勘違いしている方が多いからです よね。その話を後からちょっとしていきたいと思います。  ボランティアというのは自発的ですが、行政のためのボランティアもあるので自立的 とは必ずしも言えません。だから、保健活動などでも行政は、要するに頼み込みボラン ティアみたいなものも結構あるので、こういうのは自立していないので本当のボランテ ィアとは私は言っていません。NPOは自発的で民間活動としてあるので、自立性・自 律性が問われます。ただし、今はNPOも3万何千団体になりましたが、その多く、17 分野にNPO法人はなるときがあるのですが、その中で保健・医療・福祉という分野が 非常に多いです。なぜかというと、保健・医療・福祉のところは介護保険というのがあ って、それから子育て支援とか、飯が食っていけるNPOというのがほとんど少ないで すね。ですから、どちらかというと行政とNPOとの協働という形で、今言われている ものの中には行政がNPOを安上がりの下請にして、ボランティアと勘違いしているの で下請にして使っている場合も多い。ほとんど委託費の中にそこのスタッフの人件費を ちゃんと見込んでいない、事業費を見込んでいないというところもあります。それは間 違いですので。  それから、ボランティアは自己実現や自己満足のための活動も可能です。2007年問題、 これからボランティア市場にどっと定年退職の団塊世代の方がいらっしゃいます。その 方々は、どうしていったらいいかというふうにこれから迷う。活動に迷うんですね。路 頭に迷うわけではなくて、お金はあります。まだ年金が入りますから。ただし、路頭に 迷うのは何をしていったらいいかわからない。何をしていこうか。老後のことを考えて いくときにもNPOが必要です。NPOは目的達成を第一義とします。目的の達成度が その評価軸です。  一番大きく違うのは、ボランティアはマネジメント、経営の感覚というのは要らない ですね。経営という概念が。NPOは必要かつ重要です。これは一番大きいところです ね。  それから、ボランティアは収益活動も必要性という意味では原則としてなしです。あ っても付随的です。NPOはといいますと、組織維持のため必要な場合が多いし重要で す。収益活動をしていないような、ただ会費と寄附に頼っているようなNPOでは事業 ができていかないということです。  もう一つ大きい違いは、参加に関していえば、ボランティアは参加する側です。NP Oは参加を促す側です。このことをはっきりとわかっていただいて、これから協働とい うことを考えていかないと、ボランティアとの協働という言葉を使う人もいて、それは 大きな間違いです。協働という言葉は組織と組織、セクターとセクターの関係で使う言 葉です。ボランティアの場合だったら参加という言葉を使います。市民参加ということ です。先ほどの御紹介で私は市民参加の専門とおっしゃいましたが、市民参加と協働と は大きく違います。市民参加、協働、パブリックインボルメントと言いますが、そうい ったところの公共政策が私の専門です。  今、市民が市民社会を創るということで、NPOというのは非常に注目され出しまし た。NPOの社会的機能としては、サービス・プロバイダーとしてのNPO、そういっ た意味では保健・医療・福祉、皆さんがこれから一緒にやっていこうというときは、そ のサービスの提供者の方に非常に期待をされているのだと思いますが、実はNPOの大 きな役割はアドボカシー、政策提言や社会変革の主体としてのNPOというのが大きな 役割だと私は考えて、NPO法をつくるということをやってきました。ただし、今ふえ ているのはどちらかというと行政からの委託やいろいろなそういったものが取れるとい うことで、NPO法人に参入するところがふえています。3万ぐらいのNPO法人のう ち、従来ずっと活動してきて任意団体からNPO法人になったものよりも、NPO法が できてこれからいろいろな市場ができるということで参入した団体の方が多い。それが 6割ぐらいと考えた方がいいと思います。その中では、政策提言や社会変革の主体とし てのNPOという概念が失われつつあるというのが問題です。  NPO法をつくるときに、私たちは市民活動促進法という形で立法しようとしました。 ただし、市民という言葉が1998年当時国会で通りませんでした。それで、特定非営利 活動というわけのわからないような形になったんですね。何を特定しているかというの を御存じでしょうか。おわかりになる方、手を挙げてください。わからない方、ちょっ と手を挙げてください。  これは民法の特別法としてつくったのです。民法を読んでいただくと、民法の中では 公益というのは要するにお上がやることというふうに書いてあるわけですね。市民がや る公益というのはもともと認めていなかったわけです。ですから、市民公益活動なんて いうことを名乗って法律がつくれなかったのです。民法の特別法としてやるので、ある 特定した分野についてのみやるという理屈をつけて、特定非営利活動促進法というのが できてしまった。そういう意味では17分野といいますが、17分野の中に入っていない のは政治活動と宗教活動です。でも、ここに書いてある政策提言って政治活動じゃない の、というふうに日本の方は勘違いする方が多いのですが、政治活動の中でもNPO法 ではある特定の議員を応援したり、ある特定の政党を応援することは禁じていますが、 政治的な活動、特に政策提言というのは大いにやるべきことというふうに考えるべきで す。だから、宗教法人についてはNPO法とは別に宗教法人法があるので、別の形にな っているということです。  それで、今の日本の社会構造全体を少し考えてみたいと思います。後ろの方、見えま すか。官で非営利の部分を何と言いますか。これは行政セクターと言います。セクター という言葉は組織と組織がつくる領域を言います。行政セクターにはどういうのがあり ますか。  曽根構成員  保健であるとか医療とか。  世古オブザーバー  行政セクターには保健医療というのは、そういう概念ではないです。行政セクターに はどういうのがありますか。佐伯さんですか。大丈夫ですかね。行政セクターというと 国、都道府県、市町村です。きょうは皆さん市町村の方も国の方もいらっしゃいますが、 行政セクターですね。では、民で営利の部分を何と言いますか。佐伯さん、いかがです か。近いところにいらっしゃるので。  佐伯構成員  企業。  世古オブザーバー  そうですね。企業セクターと言ってください。領域を言っていますから。ではついで に、民で非営利は何と言いますか。ここは市民セクターです。NPOセクターというふ うにも言います。きょう協働・連携というふうに書いてあるのは、この特に行政セクタ ーと市民セクター、市民セクターと企業セクターの関係性を考えることを課題にしてい るということです。そこの概念をきちんとしておかないと何を言っているかわからない。 言葉としては協働とか連携とかよさそうに聞こえますね。どこでも今協働と言っている のです。それは大体の場合、「きょう、どうしよう」というのを協働と言っているような ところが多くて、協働という概念があいまいになっています。  行政セクターと企業セクター、日本は行政セクターと企業セクターで国をつくってき た。それは明治維新のときですね。その考え方がずっと抜け切らない。行政セクターと 企業セクターで国をつくっていく。富国強兵的につくっていく。これをやってきた国で す。市民セクターが発達してこなかったですね。行政セクターにおんぶにだっこで。私 が小学校、中学校のころはイギリスが福祉大国で、揺りかごから墓場までというのがと てもいいことのように思っていました。それも破綻しましたけれども、そのように教え られましたね。日本も行政セクターが非常に大きい権力を持ってやってきた。つまり、 どっちかというと大きな政府でやってきたんですね。大きな政府でやって、企業セクタ ーが護送船団方式で行政セクターと一緒にやるという形で、今の日本の高度経済成長を なし遂げたというふうに考えていいと思います。  それで、行政セクターと企業セクターとの関係でずっとやってきた。市民セクターが 発達しなかった。発達しなかったもう一つの理由というのがあります。それは何かとい うと、行政セクターはこういうものをつくってきたんですね。行政セクターは第1セク ターと言います。企業セクターは第2セクターです。本来の第3セクターは市民セクタ ーなのです。皆さん3セクという言葉を御存じですか。この中にも名前を見ると3セク の方がいらっしゃるのですが、3セクという言葉は市民セクターと一緒だとお思いです か。ちょっと違いますよね。日本では行政セクターがお金も人も出して、外郭団体をつ くって、この中にも外郭団体の方が何人もいらっしゃるようですが、いわゆる3セクと 言ってきたのです。これは1.5セクターですね。私は3セクとは言いません。日本では なぜこの1.5セクターをつくってきたかというと、行政セクターが非常に特殊な非営利 なのです。非営利というのを、先ほど利益を出さない集団というふうに間違われました ね。なぜ間違われたかというと、行政セクターが利益を出せない構造になっているので、 非営利というと利益を出せないというふうに勘違いしているのです。それは多くの方で すよ。行政セクターは利益を出せないのではなくて、予算制によって利益を出さない構 造にもともと設定されているのです。だから、それ以外の収益事業が絡むようなものを やらなければいけないというふうになると、外郭団体をつくらざるを得なかったのです。 それでそれをつくってきた。それで、福祉も含めておんぶにだっこで、市民は税金を払 っているんだからというので、何でもかんでも行政セクターがやるべきだというふうに 考えてきたし、国会でもそういう討論をしたし、議会もそういうふうにやってきた。そ の結果、このいわゆる3セクというのが非常に肥大化して、日本の財政状況を破綻させ るぐらいまで大きくなってしまった。それで、今ここにメスを入れようという形になっ ているわけです。  基本的には、今市民セクターとの連携・協働をきちっと考えようと思えば、この外郭 団体こそ市民セクターにならなければいけないのです。要するに行政がつくってお金も 人も手当てしていく、ここがそのまま残ったままでは、本来の協働というのは成り立た ないというのが実態です。実際今公益法人の改革というのが始まって、いろいろな市民 活動団体も公益的な活動をやるんだということが徐々に認められ始めてというよりも、 行政に財政、要するにお金がなくなったものだから、もうちょっと安上がりにできるも のはないかというので、この市民セクターに目をつけられ始めたところがあるというの が本音だろうと思います。だから、この3セクと言ってきたものは、日本の行政セクタ ーが、中央政府が非常に大きい権力を持ってきたためにつくらざるを得なかったもので、 これから考えていくときには、今いろいろな公益法人の改革も始まって、指定管理者制 度なども始まっていますので、外郭団体もこの市民セクターの中で一緒に競争するとい う時代が、そろそろき始めているというふうに考えた方がいいと思います。  今協働ということを考えるときに必要なことは、分権という発想です。連携というこ とを考えて、何かNPOと行政が仲よくすることを協働と考えていたら大間違いです。 協働というのは分権の発想から考えないといけない。分権というのは、国が都道府県に 分権していくのを地方分権と言います。これは垂直分権です。この図をちょっと見てい ただいて、オレンジの部分、これは国、都道府県が本来はやるべき役割ではないけれど も、自分たちがみずから、もしくは市民から要請されてやってきた、外郭団体をつくっ てやってきた部分です。その部分を市民に分権していく。これを私は協働というふうに 言っています。ですから、協働というのは市民への分権、もっと言えば行政改革そのも のだというふうに言っていいと思うわけです。行政をスリム化して小さな政府にしてい く。そのときに民間に分権していく。小泉内閣のときに「民でできることは民で」と言 っていましたが、ほとんど小泉さんの言っているのは民間企業のことでした。でも、本 来の民間というのは市民セクターなのです。市民セクターが育っていなかったために、 民間というと皆さん民間企業を思い浮かべるのは、日本の不幸なところですね。  NPO法人がまだ3万しかできていない。それも非常に経済規模の小さいところが多 い。1億円以上の規模を持っているのはそのうちの10%ぐらいです。50%以上が300 万円以下とか、非常に規模の小さいものです。それはなぜかというと、さっき言ったよ うに大きな市場ですね、公共的な市場が外郭団体、いわゆる3セクに行っていたからで す。それを開放しないとなかなかNPOは自立しない。この分権をしっかりやっていこ う、市民に分権していこうという協働を進めるためにも、各地域でNPOの自立という のが必要なわけです。  新しい公共・公益の概念からいえば、官で公益の部分は行政セクターですね。民で私 益の部分は企業セクターです。今までこれだけだったのです。民で公益の部分をやるも の、市民セクター、NPOセクターがあらわれてきた。こことの関係を考えなければい けないということです。  もう一つ考えなければいけないのは、では協働といえば行政とNPOが真っ二つに、 行政からNPOに、市民活動団体に、市民セクターにどんどん委託を出せばいいのかと いうと全然違います。協働ということについては5つぐらいの分野に分かれて考えるこ とが必要です。  1つは、行政が行政本来の、というのは税金で賄われる公平・平等のサービスをやる 部分は何か。その次にBは、行政が責任でやるのだけれども、その中に専門性がないと きに、その専門性を市民セクターや民間企業セクターに委託してやる部分。ここは例え ば参加の問題では市民参加と言います。幾ら市民参加をやっても、協働ということの一 部でしかないということです。Cの部分は、市民と行政セクターが一緒に企画の段階か らやるものです。委託なんていうものをどんどんふやしても、ほとんどは行政の方で委 託内容を決めて、仕様書まで決めてから、はい、やってください、というふうにやる。 これは委託ですね。これは協働とは本来言えないものです。Dの部分は、行政がやるの ではなくて市民が自主的にやって、行政の方がお手伝いする部分です。どうお手伝いす るかというと、行政の方が市民から預かっているお金、これを補助金と言います。補助 金は行政の方も勘違いしている方が多いので。行政はひもつきではないですよ。本来補 助金というのはどういうものかというと、民間団体の中でとてもいい活動をしていると。 そこの活動を応援することによって、公共の福祉が増進すると認められるとき、行政に 預けてあるお金を再配分するということが補助金です。だから、行政がお金をあげるこ とでは全くないですね。この補助金というのは本来はもう民間側で、市民の側でコント ロールできるようにすべきだというのが私が考えていることで、税制の改革などで、政 府の委員会などで言っていることです。Eの部分は、行政にはもうかかわらず市民が公 共部門を担う。これも非常に多いです。  今のところAとBの部分がほとんどなので、それをこっち側に移行する。それが協働 ですね。協働していこうと思えばどうしたらいいかというと、市民セクターの側にしっ かりしたその地域地域での自治的な自立したNPOが必要です。地方の田舎に行くとN POみたいなものはありませんというところが多いですが、それは地域の自治的な組織 をつくっていくことだと私は思っています。つまり町内会、自治会がもっとNPO的な ものに変身しなければいけない。今までどおりの行政の下部構造としての町内会、自治 会では無理です。地域の自治組織がNPO的というのはどういうことかというと、そこ に住んでいるから入る団体ではなくて、その目的に賛同した人たちが入る団体、それが NPOですね。そういったものに転換していくということが必要だろうと思っています。 ですから、先ほどから何度も言うように、ある行政の組織とあるNPOが仲よくするこ と、一緒に何か仕事をすることを協働と言っているようでは違うということです。それ から、委託と補助の関係というのも違う。だから、委託というのは単に行政がお金を出 すのだけれども、責任は全部行政の中にあって、NPOに幾ら委託しても行政の仕事が ふえているだけというふうに考えるということです。  それから、市民参加についても先ほどお話があったので、市民参加と協働を勘違いし ている人がいるので少し整理しておきたいと思います。市民参加には8つの段階があり ます。これを初めて見られる方、ちょっと手を挙げてください。どれぐらいいらっしゃ いますか。ありがとうございます。  協働の前提として市民参加がありますね。市民参加には8つのはしごという考え方が あります。これは私がつくったのではなく、シェリー・アーンスタインというアメリカ の社会学者が1960年代に、公共政策をアメリカもかなりNPOと一緒にやっていく、 協働型に変換するときがありました。そのときに整理したものです。  1番目は「あやつり」と言います。これは読んで字のごとく、いろいろな審議会や委 員会に市民の代表や町内会、自治会の代表、ここでもそういう方がいるのかもしれませ んが、私もいろいろな委員会であやつり的に入っているのがほとんどだと思いますが、 あやつり、アリバイ的な参加というふうに言います。それから、「セラピー」というのは なだめる、慰めです。声の大きい人が出てくると、首長さんやそれなりの役職の方が意 見を聞く。ただし、その意見を聞いても慰めるだけで、それが実施されるという保証は 一切ない。3番目が「お知らせ」。これは情報を提供することですね。情報提供というの は民主主義の第一歩ですが、この提供も行政側から何を提供するかを決めている。双方 向性がないので低い段階です。「意見聴取」、これもかなり市民参加の段階だと思ってい る方がいらっしゃるのですが、パブリックコメントとかアンケートとか市長さんと語る 会とかタウンミーティングとかさまざまありますが、これも言った側の意見をどう取り 入れるかは聞いた側が判断するという意味で、どちらかというとまだ低い段階です。そ の次は「懐柔」。これは市民セクター、市民側、NPO側が例えば強くなってくると、行 政がすり寄るといったときに懐柔というふうに言います。その次が「パートナーシップ」 ですね。これは対等の関係でやっていく。その次が「委任されたパワー」。市民活動団体 やそういう地域の自治組織、町内会、自治会ではないですよ、そこがNPO的に変化し たら、そこに委任していく。それから「住民によるコントロール」。もう行政が手を引い ていくということです。保健の関係では、特に住民によるコントロールというのも私は あり得ると思っています。  それで、1、2は市民参加とは言えない段階です。あやつり的、アリバイ的に市民の 代表を委員会がそこに入れて、結局事務局が考えたとおりの答申を出すというのが従来 のやり方ですが、そのものを市民参加とは言いません。それから、「お知らせ」「意見聴 取」「懐柔」は印としての市民参加です。最も目指すべきは市民の力が生かされる市民参 加。つまり参加したことによって、その意見によってかんかんがくがくの議論が行われ て、結果が出されるということを保証する、それが本来の行政の役割です。その場を提 供する。事務局案をつくってそれを承認してもらうというような形の会議のやり方をや めるという以外、この市民の力が生かされる市民参加にはたどり着かないということに なります。  では、行政とNPOとの協働はどうしていったらいいかというと、行政の中にも協働 推進の仕組みをつくる。協働といったときに、すぐに行政は取り組めるわけはないので す。行政は縦割りになっていますので、縦割り構造に横軸を刺せるような組織をつくら なければいけない。その横軸を刺せる組織、「ありますよ。何とか調整課がありますよ」 とよくおっしゃるのですが、そこに人事権も予算権も何もないんですね。ただ調整して 日程のコントロールをするぐらいのものです。そんなのではだめです。行政内に協働推 進の仕組みをきちっとつくること。  それから、NPOも縦割りになっています。行政よりも縦割りですね。行政の人は2 〜3年に1遍異動しますのでかわってしまうのですが、NPOの代表というのはなかな かかわりませんので、NPO同士も保健医療関係、国際関係、それが全部縦割りになっ ているのです。それに横軸を刺さないと本来協働にならないのです。そこに協働推進の アリーナ、その地域ごとに、例えば坂戸市さんだったら坂戸市さんでこういった仕組み をつくる。NPOの中にも、NPO全体を統合できる中間支援型、インターミディアリ ーNPOと言いますが、そこがお金の管理もやれるようにする。つまり行政から一つの NPOに委託を出すのではなくて、行政の中でどういったものをNPO、市民セクター にやってほしいかということをきちっと出して、話し合いのテーブルを持つ。それの予 算配分もNPOの中間支援のまとめられるところがやっていく。それが基本的な協働の 目指すべき方向です。これをやり始めているのがイギリスです。  イギリスもサッチャー政権のときに、もうそれまでの大きな政府というので財政破綻 が激しかったので、急に民営化ということを進めたんですね。そうすると、民営化をど んどん進めると、企業への委託がどんどん進むと、福祉が非常に後退する。今の日本と 似たような状況です。どんどん福祉が後退して格差社会になる。その是正をするために は、NPOが一つずつばらばらでやってはだめなので、まとまってくるということをや ったんですね。それでコンパクト、協定書というのを結んで、行政との関係をつけてい くというのをやってきました。ですから、NPOと行政とが協働していくには、各地域 地域、それから各都道府県単位、国レベルだったら国レベルでの、厚生労働省とそれと 対応する国レベルでのNPOとの協働という形をつくって、協働の協定書をつくってい くのが一つのやり方ということです。それに見習って三重県とか名古屋とかいろいろな ところで、横浜市でも協働協定書というのをつくって、つまり今までの委託関係ではど うやってもNPOが行政の下請にならざるを得ないので、それを補完して協定書をつく って、対等な関係でやっていくのをつくっていくというのが今始まっています。協働の 関係というのは、責任も横軸を刺せるような組織がとれるし、意志決定の仕組みもそう いうふうに変えていかないと、本来の協働ということにはならない。私自身は公共政策 の中で、各自治体でこういう仕組みになるように、協働協定書をつくったり、協働政策 のガイドラインをつくったり、そんな仕事を幾つかのところでコーディネートしていま す。  それから、パートナーシップということについても整理しておきたいと思います。協 働・連携ということが前提になるのはパートナーシップという概念です。パートナーシ ップにはいろいろ原則があるのです。パートナーシップとよく似た言葉で何を御存じで すか。どうでしょうか。パートナーシップによく似た言葉、どんなことですか。パート ナーシップにはいいイメージを持っていますか。悪いイメージを持っていますか。  尾島構成員  どっちかというといいイメージです。  世古オブザーバー  パートナーシップと癒着って似ていませんか。癒着とパートナーシップはどこが違い ますか。どう違いますか。みんな協働、協働というふうに言っているとよさそうに聞こ えますが、ひょっとしたら癒着かもしれませんよね。どこが違いますか。どうでしょう か。パートナーシップと癒着の違いがはっきりしていないと、協働というのも癒着の再 概念にしかすぎなくなる可能性もあります。今結構そういうのがありますよね。協働で やっていますと言うけれども、ほとんど癒着しているかもしれません。坂戸市さんはそ んなことはないですか。どうですか。癒着とパートナーシップの違いは何ですか。有田 さん、どうですか。  有田オブザーバー  癒着はお互いの利益みたいなものがあって、ほかへの広がりがないのかなと思ったの ですが。  世古オブザーバー  ああ、なるほどね。開かれていない。それだけでしょうか。  有田オブザーバー  ちょっと今思いつきません。  世古オブザーバー  ちょっと整理しておきましょうか。お互いに自立していること。そうすると、自立し ているということは、NPOの側も行政の委託だけに頼らずに、自分たちで事業をして きちんと自立できるようになっていないといけないです。その上で一緒に共通の目標を 持つ。行政の目的にNPOを従わせるとか、NPOの目的に行政がすり寄るといった形 ではなく、共通の目標を一緒につくり出す。ということは、協働をやろうと思えば、最 初の企画の段階からNPOセクターと組まないとだめなのです。行政の側からもう目標 をつくってしまって、それに対して協力してくれるところを求めるというのは本来違う わけです。お互いに相互に認識する。さっきのようにNPOは利益を出してはいけない と思っているような人もまだまだいますから、そういう誤解を早く解いて、NPOとは 何かという認識を行政の側が持つ。NPOの側も行政がよくわかっていないんですね。 特殊な非営利であるために、そういう政策をつくったり、やってきている状況や予算の つくり方についてなかなかわかっていないです。それを知る。  それから相互に理解する。お互いが違うということを理解することです。NPOの中 には原発推進をやっているNPOもあります。原発反対をやっているNPOもあります。 それから、保健医療の分野でいえば中絶禁止をやっているNPOもあります。中絶禁止 の反対をやっているNPOもあります。多様な価値観があるんですね。それを理解する。 それを理解するには、従来の行政の考え方では難しいです。同じテーマでもそれぞれ違 った価値観で動くところが多いのですから。だから、行政がそのままNPOと協働しよ うとせずに、NPOの中間支援組織と組んでいくというのが必要です。  その上で対等の関係を持つこと。対等の関係を持つためには、情報を必ず公開してい くこと。それは基本的に企画の段階からです。今は終わってしまった情報は公開されて いますが、始まりの、最初の一歩の情報は公開されていないです。それがないと難しい。  それから、お互いに変わっていくということ。それから、今もおっしゃったようにだ れでも参入できること、開かれているということが必要です。それから、公開された関 係、透明性を持つこと。これがだれでも参入できて公開された関係、透明性を持つと、 癒着にはなりませんよね。このことです。  それともう一つ大切なのは時限性。協働に関しては時限性があります。時限性という のは、どこまでの協働、何をやるのかということを協定書で明らかにして、何年間ぐら いでやるのか。協働することによって目的が達成されるか、達成されないかの見込みが ついたとき、市民に公開してそのパートナーシップを解消するということが必要です。 つまり何が言いたいかというと、協働ということについては、第三者である市民に開か れているということがいつも必要。協働というのは二者間の関係ではないということで す。つまり市民に向けた、第三者である市民が必ずそこに関与してくるときに協働とい うことが言えるということです。だから、連携というのは単にネットワークしていくこ とですから、連携と協働は違うんですね。連携するだけなら行政主導でNPOと連携す ることだってできるでしょうけれども、協働と連携を並べて書くのは大きな間違いだと いうのはそこの点です。  一応新しい公共を創り出すパートナーシップというのはそういう原則があるというこ とをお話しして、基本的な概念の整理をやっておいたというところで、席に戻って御質 問があれば受けるというふうにしたいと思います。  あと何分ぐらいありますか。  伊藤座長  25分から30分ぐらい大丈夫だと思います。  世古オブザーバー  では、今ざっとお話ししましたので、企業との関係については概念的なことしか言い ませんでしたが、何かあれば御質問いただきたいと思います。  伊藤座長  世古先生、ありがとうございました。これから質問、意見等をぜひ活発に御議論いた だきたいと思いますが、かなりの方は相当今まで経験したことのないことを、突然たく さんお話を聞かれたのではないかなと思います。それで、企業との関係という前に、ち ょっと私から一つお聞かせいただきたいのですが、市町村が行政上責任を負っている保 健事業の分野で、本当にモデルになるような市民セクターとの協働の実例というのがも しあったら御紹介いただきたいと思うのですが。  世古オブザーバー  実例はないと思います。なぜなら先ほど言ったように、行政がやるべきこととNPO セクターがやるべきことの概念整理をきちっとしている市町村はまだないからです。協 働の取り組みの前に、どこを市場化できるか、どこがNPOに協働していく部分かとい うことを、行政の中で整理していないと無理です。  今保健の分野とおっしゃいましたが、それは本来市町村が本当にやるべきものなのか どうかについて検討しないと、国から、都道府県から市町村にその権限がおりてきたか らといって、それが本来行政がやるべきことかどうか、それをきちっと対等にやれるN POがあるかどうか、それを考えないといけないのですが、ほとんどの市町村ではそれ より先に自分たちがなかなかやりにくいところ、手が出せないところ、そういうところ をNPOに委託してしまっていたり、NPOとの関係を考えようとしているという前提 があるので、行政がやるべき本来の役割、市町村がやるべき役割を先ほど5つの段階に 書きましたが、本来行政だけでやるべきところ、行政がやって市民、NPOに手伝って もらうところ、最初から考えていくところ、それよりももっと行政からも市民に権限を 渡して市民がやるところをお手伝いする。補助金や場所の提供、情報の提供、もしくは もっと全部市民セクターに渡してしまうところ。個人の市民ではないですよ。市民セク ターに渡してしまうところはどこかということを、各市町村できちっとそれの基本計画 をつくらないとだめなので、実際にやっているところは今のところない。ただし、三重 県では北川知事のときにそういう試みを、NPOの領域でNPO室と一緒にやったとい うことはあります。  坂戸市さんはそういうことをやった上ではやっていませんか。要するにそれはまさに 行政改革そのものなのですが、行政改革という名前でそういう協働の構成ですね。どう いうふうに協働の分野の役割分担をするかということをやっていますか。  有田オブザーバー  はい、それに全く当てはまるかどうかはあれですが、それに近い形ではやってきてい ると思っています。  世古オブザーバー  近い形というのは、市民、NPOが一緒に入ってそれをやっていますか。  有田オブザーバー  NPOは応援し隊という形で、また別の形で入っていただいていますが、計画策定で すとか推進のところでは住民のボランティアという形で入っていただいて、一緒に企画 からやっている。  世古オブザーバー  先ほど言ったように、ボランティアとNPOは違うんですね。個人のボランティアさ んに入ってもらってやるレベルの話ではなくて、行政セクターと市民セクターががっぷ り一つのテーブルに着いて、どこの役割分担をするかを基本的にやらないと、基本計画 はできないと私は思っています。先ほどの伊藤座長の質問に対しての答えです。  伊藤座長  それで、今この検討会は市町村の保健行政においてNPO、もっと広くいえば市民セ クターとどう協働していくかという、そのためにこの検討会がどういうことを情報発信 して、全国の市町村に報告書を提供するかということになるのですが、今世古先生のお 話から考えますと、市町村の保健事業の担当者が市民セクターとの協働を進めていくた めには、まず何から手をつけなければいけないとお考えでしょうか。  世古オブザーバー  もう何度も言っているように先ほどと同じことです。そういった意味では、保健の分 野の人ばかり集まっていてもだめだと思います。財政課とか企画課とかそれを全部集め て、その横軸を刺せるような組織をつくらないとそれは難しいです。その横軸を刺した 組織がきちんと行政とNPOの役割分担を考えた上で、その中での保健分野は何なのか ということをやるような構造に転換すること。それが抜本的な行政改革そのものなんで すね。それをやらないと出てこないです。  伊藤座長  横軸というのは、政策決定プロセスに参画する形をつくるということですか。  世古オブザーバー  そうですね。政策決定プロセスの中に保健の分野があって、それには保健の関連の人 たちだけがやるのではなくて、各領域の行政の組織をつくっていくということが必要だ ろうと思います。それと対応できるようなNPOセクターというのが、市民セクターが 各自治体にどのようにあるのかということをきちっと調査して、そことの協働をするよ うなラウンドテーブルをつくっていく。それが先ほどの図式ですね。そういう手順が必 要です。それをやるにはやはり首長さんの意志決定というのが大きく左右するんですね。 それをやる気のあるところはやっていますよ。例えば杉並区とか、私がかかわってきた 三重県とか、そういうところではやり始めているし、今新宿区でもやり始めていますね。  伊藤座長  ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。はい、どうぞ。  尾島構成員  サービス提供で、例えば保健指導を地域の中でだれがどういうふうに提供する体制を つくっていくかという問題と、あと政策をつくっていくという問題と、ちょっと分けて 考えようかなと思うのですが、政策について、例えば中絶に賛成するNPOと反対する NPO、もしくは保健分野ですと、フッ素洗口をした方がいいというグループとしない 方がいいというグループとあったとして、あとNPOを調整や統括するようなNPOが あったり、行政や議会などがあるときに、最終的にどんな形でそのNPOが参画して、 政策決定していく形が理想だとお考えですか。  世古オブザーバー  それは先ほど言ったように、ラウンドテーブルをきちっとつくっていくことですよね。 そこに首長さんもいれば、しっかり政策を企画決定できるような企画財政の人たちもい て、つくっていて、そこにNPOも一緒に入っていくという図をつくる。図で示したよ うなことです。だから、サービス提供と政策の問題は別だとおっしゃいましたが、私は 関連して考えないといけないと思っていて、政策とサービスの提供というのは全然別で はなくて、政策にのっとって必要なサービス提供者はだれかを考えるべきですね。  前の報告書をざっと読ませていただいても、やはり市町村の方で何でもやらなければ いけないと思い込み過ぎているのではないかと私は思っています。それに必要なNPO が地域の中で育ってくる仕組み、それをどのようにつくるかということが必要です。行 政の方がNPOをつくるのは間違いですね。そのNPOが立ち上がっていく仕組みをつ くるために、専門家の方々が協働する場面をつくっていく。そのときに一番必要なのは コーディネーターです。コーディネーターを行政がやったらだめなんですね。NPO側 がやっても難しいです。NPOと行政の中間的なところにいるような、そういう中立的 なコーディネーターを置くというのは必要だろうと思います。行政の方とNPOの人が 直接ラウンドテーブルに行っても、それをコーディネートする中立的な人、人材が必要 だ。私はそれを「協働コーディネーター」と言っているのですが、そういう人材をつく っていくこと。それは例えば保健師さんとか、そういった専門家とは違うんですね。そ ういう協働をつくっていく専門的な人というのは、保健の分野にも必要ではないかなと 思っています。  伊藤座長  そのほかいかがでしょうか。はい、どうぞ。  藤内構成員  先ほど三重県の例を幾つかお挙げになったんですけれども、実際に三重県は確かにニ ュー・パブリック・マネジメントであるとか、あるいはアウトカムの目標を設定して取 り組んだりとか、いろいろな新しい取り組みをされているのですが、これは保健分野に 限らなくても結構ですが、先ほどの行政とNPOの協働という形で三重県での協働の事 例というのを、具体的に少し御紹介いただけるとイメージがわくのですが。  世古オブザーバー  三重県だけではなくて、例えば私は今金沢大学にいるのですが、金沢でも集いの広場 とか、子育て関係のでかなり協働の事例があります。金沢駅におりた経験のある方はち ょっと手を挙げていただけますか。  金沢駅の構内に「こどもらんど」といって、子供の集いの広場があるのを御存じです か。それも金沢の子育て生活応援団というところと金沢市が協働して、子供の集いの広 場というのをつくって、駅に来た人たちで金沢で特に観光したい人たちが預けるのもオ ーケーだし、この地域の人たちが来て預けてお母さんとお父さんが日曜日に遊びに行く のもオーケーだし、そういう場をやっています。それから、富樫というところに地域セ ンターがあって、そこでも集いの広場というのをやっていますし、あと21世紀美術館 といって今金沢市の目玉になっている、その中にも子供の集いの広場があります。保育 をしています。それはそこの美術館を見に来た人でも、それから近所の人でも、だれで も預かれるような仕組みにしていて、それも金沢市と子育て生活応援団というところが 委託の関係でやっているのです。  かなりうまくやっているのですが、価格設定とかそこら辺が今問題で、私がその協働 のコーディネーターとして入って、協働の協定書をつくろうというふうに言っています。 つまり、そこだと委託者と受託者の関係になると、どうしても請負関係になるので、行 政側の言い分を聞かないというのがなかなか、こういうやり方でやりたいというふうに 提案しても、それ以上やらなくていいとかいうのが出てくるので、協働関係であれば実 際その預かる分は委託された分でいいけれども、それ以外の事業も当然やっていいだろ うと。そこで地域の人たちを巻き込んでやれるようなもっといい事業をするために、協 働の協定書をつくって、委託事業の枠を超えた協働のあり方を今模索中というのがあり ます。  保育関係だったら集いの広場というのを御存じだと思いますが、全国のその集いの広 場のNPOの代表をやっている「びーのびーの」というのがあるんですね。横浜にあり ます。私はびーのびーのの人からも相談を受けて、集いの広場事業を厚生労働省が今1 万にしたいというようなことで大きく出ているのですが、それを受託できるようなNP Oはなかなか地域にない。それをどうつくっていくか。受託したときに対等な関係をど う持てるかということで、協働の協定をしていくようなその方式というのを、今つくろ うとして応援しているところです。それで、集いの広場を受けているびーのびーのは、 どろっぷというところを横浜市から受託しているのですが、それを協働で委託を受ける ときにも、協定書を初めて結ぶということに成功して、横浜市は子育て分野では協働と いうことに関して、かなりいい姿勢を示していると思っています。  伊藤座長  きょうここにいらっしゃる方は保健医療分野の方がほとんどですが、協働という言葉 から私どもが受ける非常に代表的な例は、がん患者大集会というのがあったわけですが、 例えばそれが市民運動の契機になって、がん対策基本法が議員立法ででき、そしてその がん患者の団体の代表が、国の政策決定プロセスを議論する厚生労働省の諮問機関であ る協議会のメンバーになるという、言ってみればきちっと政策決定プロセスに関与する。 それから、例えば昨年の医療法の改正で、その地域の医療の提供体制でどういう計画を つくっていくかということに、住民が計画作成段階で関与していく。そういう政策決定 プロセスに関与していくというイメージが非常に強いんですよね。そうしますと、例え ば市町村や県の保健衛生の分野での市民セクターとの協働というのは、もう少し具体的 なイメージ、先生のレジュメでは女性の働く場をつくるとか、障害者の雇用ですとか、 こういう地域での具体的な、こういう問題をこの地域でどういうふうに解決したらいい んだろうかという、その市町村がその検討を始める段階で、市民の参加を促していくと いうことをもっと考えなさいということなのでしょうか。  世古オブザーバー  全然違います。市民の参加を促すのではなくて、行政というのは市民が委託者なんで すよ。行政は市民からの受託者、負託者なんですよ。  伊藤座長  ただ、行政の側から見たときに……。  世古オブザーバー  行政に参加させるというのではなくて、そのプロセスをもっと開くことですよ。どう いう団体に入ってもらうかということについて行政側が考えるのではなくて、市民側が きちっと考えてきて、そこが合意形成できるようなNPOのインターミディアリーとい うのをつくっていく。そこと一緒にやっていくということです。市民のだれかが参加す るというレベルではないです。  伊藤座長  そうすると、まず行政が手をつけるべきことは、NPOを育てていくということです か。  世古オブザーバー  NPOを行政が育てる役割はないです。また育てられないです。  伊藤座長  いやいや、では市町村の保健衛生の担当者はまず何をすればいいのですか。  世古オブザーバー  市町村の担当者は、その地域の中でのNPOを掘り起こしていく。それで、そこの人 たちと話す場をつくっていく。それで、自分たちの考えも伝えるし、向こうの力量もわ かるようにしていく。それは先ほど、例えば横浜市で言っている集いの広場なんかまさ にそうで、行政の委託者の方と集いの広場の人たちが何度も話し合いの場を持っている んですね。やはりそういう地域の中での市民のいろいろな動きを、足で歩いてちゃんと 見られるようにしていくというのが一番だろうと思います。  大体行政の方で委員会をつくったりするときに、自分たちに都合のいいNPOを選び がちなんですね。そういうのではなくて、市民の側から、NPOの側からどういう人た ちを入れたいということを言ってきたときに、それに合意していくシステムというのを つくらざるを得ないと私は思います。  伊藤座長  ちょっと申しわけないのですが、そういう人たちが市町村の保健衛生の担当者になっ て、本当にそういうNPOや市民がどこにいるか皆目見当もつかないという、そのとき はどうしたらいいのでしょうか。  世古オブザーバー  皆目見当がつかないようだったらやめた方がいいと思います。つまり、そんなのはそ れこそ縦割り行政の中で言っているだけですから。どこの市町村にも今市民活動をやっ ている部署もありますし、そこと協働しないで、自分たちでそうやって皆目見当がつか ないというようだったら、その人はやめた方がいいですよね。基本的にその市町村の中 にきちんと市民活動の支援センターが、今特別市以上のところだったら大抵あります。 23区もあります。ないところでも、小さな町村でも協働係とかそういうのをつくってい ますから、そこに一応ちょっと聞いてみるということも必要ですよね。ここのところで も、保健関係の人ばかり集まっているというのがやはり問題ではないかなと思います。 やはり市民活動や協働の担当の人、市町村の中にあるのですから、そういう人たちのと ころときちっとやること。  それから、各市町村に市民の側が市民活動センターをつくっているのが全国で300ぐ らいあります。そういうNPOをまとめているNPOと接触することです。例えば仙台 だったらせんだい・みやぎNPOセンターというのがあります。そこへ行けば宮城県じ ゅうのNPOのことが把握できます。そこで相談してみればいいと思うんですね。どう いうところにアプローチしたらいいか。つまり、個別に1個ずつ見つけていくのではな くて、それを取りまとめている中間組織との協働ということをまず考えることだと思い ます。  伊藤座長  そのほかいかがでしょうか。  仲オブザーバー  発言してもよろしいでしょうか。  伊藤座長  はい、どうぞ。  仲オブザーバー  私は皆さんと違ってきょうは市民の立場ということで参加させていただいている中で、 世古先生がさっきおっしゃっていた「協働コーディネーター」という表現がございまし た。私どもはこの後、坂戸として発表させていただくわけですが、確かにそういう方が いると長い時間がかかったものが、すごく短い時間で済むこともあるのではないか。た だ、そういう方というのは、世古先生もそうでしょうけれども、だれに頼まれてどんな 方がいらっしゃるのか。事例があれば参考までにお聞かせいただきたいと思います。  世古オブザーバー  皆さん、それぞれの自分のお住まいのところで、市民活動の支援センターがあるかど うか知っている方、この中で構成員の方、手を挙げていただけますか。知らない方、挙 げてください。その状況だとやはり無理ですよね。市民活動の支援センターの人たちが、 特に民間でやっているようなところの人が協働コーディネートする能力があります。そ れから、行政がやっていても、そこの中にそういう能力のある人もいます。だから、ま ずはこの構成員の方々が自分の地域の中で市民活動センターがあるのかどうか。日本N POセンターのホームページを見てもわかりますし、内閣府のを見ても出てきますので、 一遍調べてみられて、そういう市民活動センターの中で、つまり市民活動センターやN PO支援センターというのは、今おっしゃったような協働をコーディネートする役割を 持っているんですね。その持っているところとやってみる。その中に優秀なコーディネ ーターがいるかどうかというのは問題ですが、そういうコーディネーターを育てていく というのは、各都道府県でも一生懸命やっているところなので、そういうところとコン タクトしてみるというのが一つだと思います。  まず皆さんが住んでいらっしゃるところにあるのかないのかわからないようだと、や はり取りつきようもないですね。やはりここにそういう市民活動関係のことがわかる人 を、構成員として入れた方がいいのではないかなと私は思いますが。つまりいろいろな 委員会でもそうですけれども、同じ分野の人ばかり固まっているので、議論が次に進ま ないのではないでしょうか。  伊藤座長  そのほかいかがですか。では曽根さん、どうぞ。  曽根構成員  今お話を伺って、やはりNPOもその地域の市民社会の成熟度に比例して育つ。それ ぞれの地域でいろいろな段階があって、別に都市部だから農村部だからということはな いと思いますが、そういうものを成熟させる土壌みたいなものを教えていただけますか。  世古オブザーバー  それはすごく重要な質問だと思いますね。成熟させるためには、やはり行政の側から 働きかけるというのも一つです。この分野は自分たちでは手に負えないとか、この分野 は任せた方がいいと思えば、そういうNPOが少しまだ成熟していなくても思い切って 任せてみる。そうするとそれは育っていくという土壌があります。  そういった意味では、田舎の方に行くとなかなかNPOなんて名乗っているところは ないですよね。でも、地域の自治会や町内会ってすごく大きいんですよ。そういう自治 会、町内会の人たちが、今までの行政の下請的に長老政治みたいなことをやっているの をやめて、そこを少しNPO的に改革するというのも一つですね。だから、自治会、町 内会が地域の自治的な組織に、地方自治法が変わって地域自治組織が今できるようにな ってきているんですね。合併とともにできています。私は地方制度調査会でそれを提案 した一人ですが、地域自治組織というのがありますから、そういう地域自治組織と協働 していくというのも一つです。NPO、NPOと言っていないで、地方では地域自治組 織、特に合併後には地域自治組織は必ずできていますので、そういうところとの協働を やってみるというのも一つだろうと思います。  自分たちで問題を抱えていないで、思い切って一緒に考えてみてくれというようなラ ウンドテーブルをつくってみること。その話し合いの中からやれそうな事業を一遍やっ てもらう、そういう実験をしていくということが必要だと思います。私は国土交通省の 方の社会実験の委員会の委員をしていまして、まさに今までの行政は実験ということは できていなかったのですが、今いろいろな形で試みにやってみる、試行してみるという ことが必要だと思います。NPOがすごく成熟して、何でも頑張ってできるというとこ ろは、世の中探しても3万のうち100個ぐらいしかないですね。ですから、そこがしっ かりしてくるためには、先ほど言いましたように、横浜のびーのびーのもそうですが、 集いの広場なども全国組織をつくって、自分たちで質を上げようというふうに頑張って いますから、そういったところと一つ事業をつくってやってみること。事業をつくる前 に、事業をつくるかどうかをラウンドテーブルをつくって話してみることですね。その ときに、仲介してくれるNPOの支援センターの人を入れてみるというのも一つだと思 います。つまり、1対1でやってしまうと、行政とNPOとはやはりかなり対等になれ ないので、それをコーディネートする人材を入れて試行してみる。そういったことも計 画の中に入れてみていいのではないでしょうか。チャレンジ事業というような形で入れ てみるのも一つではないかと思います。  伊藤座長  よろしいですか。それでは、時間の関係もございますので、次に議題2の方に移りた いと思います。まず最初に坂戸市の保健師の有田様、それからその後に仲さん、2人で 役割分担してお話をしていただくという……。  世古オブザーバー  済みません、私はちょっとまた金沢に戻らなければいけないので、ここで失礼させて いただきます。本当は聞きたいんですけれども、ごめんなさい。  伊藤座長  どうもありがとうございました。  有田オブザーバー  皆さん、こんにちは。埼玉県は坂戸市から参りました、市民健康センターの保健師を しております有田と申します。きょうは坂戸市の取り組みについて、ちょっと御紹介さ せていただきたいと思います。使っている用語に協働ですとか連携という言葉も出てき ますので、世古先生がお聞きになったらちょっと違うというふうに怒られるかもしれま せんが、とりあえずつくってきましたのでこれでお話をしていきたいと思います。よろ しくお願いいたします。  これは埼玉県の中の坂戸市の位置ですが、ちょうど真ん中ぐらいですね。池袋からで すと電車で1時間弱、東京のベッドタウンとして発展してきました。高齢化率は16%、 人口的にも昨年の10月にやっと10万人を超えまして、今10万都市になったところで す。  保健師は健康センターに10名、介護保険の地域包括支援センターに2名、障害福祉 課に1名おります。それ以外に技術職としては、健康センターに栄養士が2名、歯科衛 生士が2名という関係です。後でまた触れますが、健康づくり政策室というところがこ としからできまして、そこに以前までこちらの健康センターの所長をしておりました医 師が異動しております。  この健康づくり計画を平成15年につくったわけですが、それをつくることになった きっかけについて、少しお話ししたいと思います。平成14年度に県や国の方で計画づ くりが進んできまして、坂戸市の方でも市民の思いが健康づくりに生かされているのか なということで話し合いを始めました。ここがなかなかできていなかったところかなと 思うのですが、内部職員9名、医師、保健師、歯科衛生士、事務職の9名の構成で話し 合いが始まっております。  この中で目標達成型で計画を立てていこう、市民全員公募で会議を開こうという合意 がなされました。ここの1年はすごく大きなポイントだったと思っています。先ほど先 生の方から無報酬とかいろいろ御説明がありましたが、坂戸市の場合は本当に無報酬で、 交通費も出ないで参加していただいております。当時は23名の応募がありました。や はりどんな方が来てくれるのかな、応募があるのかな、というところから不安がありま したが、上司もそこを後押ししてくれまして、募集の方が進んでいきました。  これが1年目の活動の様子です。右の上の方にいらっしゃるのが藤内先生ですが、ヘ ルスプロモーション研究センターにいらっしゃった当時、アドバイザーとして携わって いただきました。また後ほど述べますが、人の意見は最後まで聞く、人の意見を否定し ない、1人1回以上発言する、というようなお約束を最初にしまして、ワークショップ を進めていきました。「健康って一言で言うと」というようなカードをみんなで整理して いきまして、いろいろな健康観があるなということをここで認識できたところです。  この中で9項目の「めざす健康なまちの姿」というのができてきました。これが皆さ んにお配りしたリーフレット、「第3次行動計画」という白黒の計画書の方にも載ってい ます。それを目指すためには、「実践したい生活習慣」にどんなことがあるかなというこ とで、10分野、24項目の「実践したい生活習慣」を出し合いました。これが9項目で すね。心と身体のバランスがとれていること、家族や仲間が一緒であること、というよ うなものを掲げました。実際にこれが現状把握として市民生活の中でどうなっているの かということで、20歳以上の方、2,000人を対象にした実態調査をしております。それ がそこの表でいう現状値になっています。これは検討する内容についても郵送の作業に ついても集計の作業についても、市民の方と一緒にやってまいりました。回収率は 38.6%と高くはありませんでしたけれども、皆さんと一緒にやってきたという経過があ ります。  それ以外にこんな活動もしました。後でキーワードの中で出てきますが、やはり楽し くなければ続かないということもありましたので、いろいろな運動を体験するようなこ とですとか、ちょっと飲みニュケーション的な宴会などもやりながらやってきました。  これが先ほど見せました9項目です。最終的には健康づくりシンポジウムというのを 年度末に開きまして、計画案を市長に手渡しするというセレモニーを行って、最初の年 は終わりました。  最初の年に集まったのは、まちづくり市民会議という会議だったんですけれども、そ れを解散しまして、2年目から実践ということで、新たに市民みんなの健康づくりサポ ーター「元気にし隊」という、これも市民ボランティアさんですが、募集をかけさせて いただきました。最初の年は26名応募がありました。ここにたくさん写っているのは 視察にいらっしゃったときの記念写真です。平成16年度は第1次行動計画ということ で、ここに挙げたような活動をやったのですが、応援し隊の募集、おすすめ一品料理の 募集、また後ほど説明したいと思います。  応援し隊というのは、リーフレットの方にも書いてございますが、「あなたの出番!お いでおいで健康づくり計画」というネーミングの計画になったんですけれども、この趣 旨に賛同して、計画の推進のために市民の健康づくりをさまざまな角度から応援してく ださる方の集合体のことで、個人、団体を問わずにどなたでも登録できる形になってい ます。リーフレットの方に載っておりますが、今23団体登録していただいています。 市内に大学が3つありますので、市内3大学ですとか、ボランティア団体、あるいは工 業会の方にも登録をしていただいております。  これが坂戸市でいう健康づくりサポーターのイメージ図です。元気にし隊というのが 先ほど言いました市民ボランティア。それと連携して応援し隊という団体が後押しをし てくれる。それで、行政が協働して、市民の皆さん全体の健康づくりをサポートしてい こうというイメージ図になっています。  これは第1次行動計画の具体的な活動の一つです。「僕の私のおすすめ一品料理をおし えちゃおっ」というので、皆さんのおすすめ一品料理を募集しました。これは若い年代 の食事に対する関心を高めるために行ったものですが、小学校にも中学校にも募集をか けまして、若い方からの応募がありました。委員さんのところにはお配りしたのですが、 レシピ集を作成して健康パークというイベントで表彰したり、一部は保育園給食や学校 給食の献立にも導入されています。  もう一つ、この第1次行動計画のときにやったことの一つで、健康づくりのマスコッ トキャラクターをつくろうということで募集をしましたところ、ぞうを題材にした応募 がありまして、坂戸市の地図が、ここを見ていただくとハイハイをしているぞうさんの ような形をしていることと、市民の皆さんのやる気、「やるぞう」というような意気込み もかけまして、「やるぞうくん」というキャラクターをつくりました。この「やるぞうく ん」はレシピ集の表紙にもなっていますが、お父さん、お母さん、お姉ちゃん、あとお じいちゃん、おばあちゃんもいまして、ファミリーになっています。  最後にまたこの年も健康づくりシンポジウム「おいでおいで健康パーク」というイベ ントをやりまして、皆さんに集まっていただきました。そのときにはみんなで楽しむ運 動コーナーやひとくち試食会、応募いただいた方たちの表彰、あるいは坂戸市の中で健 康づくりで頑張っていらっしゃる方を招いてのシンポジウムもやりました。このときは 藤内先生にもコーディネーターをしていただいたのですが、約400人の方にお集まりい ただきました。  平成17年、18年と行動計画を進めてきたのですが、平成17年度は応援し隊との連 携ということで、イベントを行う際に協力してくださいというようなお願いに行ったり、 この年は心の健康と社会参加という部分にも取り組み始めましたので、あいさつしよう 運動の標語の募集などの活動をしてきました。あとは、食事と運動の体験講座を開きた いという市民の方からの、メンバーさんからの強い希望もありましたので、メンバーさ んと一緒に行った健康ナビという講座もあります。  平成18年度、第3次の行動計画ということで今進めているところです。たくさんあ ったのでここに書き切れなかったのですが、いろいろな活動をやっています。何年かや っていくうちに、最初の計画の策定から一緒にやってきた住民の方と、途中から参画し てきた方との温度差が結構あるなというのが問題にもなりまして、ことしはサポータ ー・リーダーの養成講座ということで、一緒に健康づくりを考えていくところから入っ ていただいて、次の年には元気にし隊のメンバーとして仲間を広げていこうということ で、養成講座を始めています。ことしは庁内の中でも形が変わってきまして、今までは 健康センターの方で中心になって市民の方とやってきたのですが、その活動を外に向け て情報を発信しまして、坂戸市の取り組みが注目をされるようになりました。それを受 けて庁内の方の体制も変わってきまして、ことし、平成18年の4月から政策企画部門 に健康づくり政策室が新設されました。そこに健康センターの所長だった医師が異動し て、計画策定にもかかわっておりました事務職が入って、今3人体制で政策室ができて おります。今、行動計画の実践の場合には、健康センターも一緒になって取り組みをし ているところです。  この取り組みを通して私なりに感じたところをまとめてみました。最初は市民の方が 来たときに批判や要望だけではないかなというような不安もあったのですが、一緒に取 り組んでいくうちに市民の底力をとても感じました。最初に「健康って一言で言うと」 というカードの整理をしながら、市民も職員も健康観の共有ができて、目標が立てられ たなと思っています。ここに「会議の時間帯」と書いたのですが、これは市民の方で、 きょう来ていただいている代表の仲さんもサラリーマンでいらっしゃいます。皆さんが 参加しやすい時間帯となりますとやはり夜間の時間になっております。今も定例会議は 6時半からという形で進めています。あと、意見を言える関係というところで、最初の ところでも3つお約束をお話ししてから始めましたと話しましたが、ワークショップを スムーズに進める上でも、親睦を深めたり、このお約束を守るということをしながら、 意見を言える関係をつくってきたと思います。あとは職員のやる気と上司の理解がとて も大事だったかなと思います。先ほど説明をしました健康づくり政策室も、市長が「市 民がつくり育むまち、さかど」という構想を掲げておりますので、それとも合致する形 になったかなと思っています。それはやはり周りから注目されたということもすごく大 きな要点だったと思います。坂戸市の保健師はアピールする十分な力がなかったのです が、事務職と一緒にやっていく中でそういうところを強調していただくことで、庁舎内 でも認められてきたのかなと思っています。あと最後には、楽しくやることが継続につ ながっているかなということで、いろいろ仕掛けをしながらやってきたと思っておりま す。  きょうは住民代表の方もおいでいただいていまして、住民の立場での意見もいただき たいと思っておりますので、よろしくお願いします。私の発表は以上で終わらせていた だきます。  仲オブザーバー  皆さん、こんにちは。今、坂戸市の有田さんと一緒に活動している坂戸市在住の仲と 申します。後ほど細かく説明しますが、今単身赴任で土日しか在住しておりませんが、 御了承いただきたいと思います。  「参加活動中の市民の立場から」という表記になっておりますが、先ほどの学問から 申しますと、「協働活動中の市民の立場から」というような言い方にあえて変えさせてい ただきたいと思います。私はこういう保健事業関係とは全く無関係の人間なものですか ら、先ほどの御説明の学問があることさえわからなかったのですが、相当いいところを いっているなというようなことを実感いたしました。ですからそのあたりを、皆さんと 言葉は違うかもしれません、泥臭い言い方になるかもしれませんが、今まで4年間やっ てきたものを一つ一つ御披露させていただきながら、参考にしていただけたらと思いま す。  私もここに参加するに当たって、こちらの検討報告書というのを若干でございますが 見させていただきました。赤字のところを見ますと、「地域住民」とか「住民が主体的に」 とか「住民が共有し」とか、やはりキーワードとしてはどうしても住民、我々市民がい かにかかわるかということが多少ポイントなのかなということがあるかと思います。そ れに今まで我々がどういう形でかかわってきたのか。先ほどの学問ではなくて、地道に やった坂戸市の例はそこにポイントがあるのではないかなと感じております。  坂戸市健康づくり活動参加で感じたこと、言葉がだんだん使っていいことか悪いこと かわからなくなるのですが。一番上に小さく「市民側の課題・問題点はさておき……」 と書いてありますが、今回私も参画して、市民の課題・問題点、よくないことっていっ ぱいあるねというのをすごく感じました。ただ、それはちょっとさておかせていただき まして、一緒に協働で活動させていただいた市役所の方に対して、あえて感想を申し上 げさせていただくと、やはり行政担当次第ですべては決まるのではないか。これは間違 いないと思います。ですから、先ほど「協働コーディネーター」という言葉をあえて質 問させていただきましたが、今回は市の方にやっていただいたと私は感謝しております。 有田さんもそうですが、きょう事務職で三谷さんという方が来ているんですけれども、 あと藤内先生にも御指導いただきながら、まさにその方たちに協働コーディネーターを していただけたのではないかと感じています。  あと感じたのが、積極的な活動をする市民は必ずいる。私がどうのこうのではなくて、 実はきょうこの場を私が担当させていただく前に2人断られたそうです。私が3人目。 ということは、もっと熱心な方もたくさんいて、私以外にもだれでも来られるような状 態になっているのではないかなと思います。  どんな理想を掲げてもアリバイづくり的なやり方というのは、私はやはりだめではな いかとすごく痛感しました。やはり何か体温を感じるようなやりとりを市民と行政の方 とがやる。それは一歩踏み込んでやらないとお互い何も出てこない。そういう意味では、 結構泥臭いのではないかなという感想をすごく持ちました。  協働の大切さを知りました、これは当然のことですが、そのときに自助、公助、共助、 これはだれに教えていただいたか忘れましたけれども、やはりクレームだけ言う市民は だめですよね。当然何かしてもらえるだろうという市民は絶対だめですよね。逆に行政 の方というのは、何かをしてあげているという意識が出たときに、市民はすごく反発を する。それも全然なくなると思います。ですから、事なかれ主義も全然受け入れられな い。そういう意味では市民も努力するし、公助、行政の方も努力していただく。それで 初めて共助の域に達していけるのではないかなということを実感しています。  その下に矢印がありまして、「大変ですが……」。例えば市の方に今後もお願いをさせ ていただけるのであれば、御近所づき合いの精神で市民と向き合えるでしょうか、この あたりというのは私はすごく今も痛感しています。御近所づき合いって私の中ではトラ ブルあり、楽しさあり、面倒くささあり、喜びあり、そんなところで、お互いその立場 で向き合えますか、というのが結構キーワードになるのではないかなと思っています。  私ごとでちょっと触れさせていただきますと、元気にし隊隊員、活動4年目というこ とで、私は昭和32年生まれ、建築系のサラリーマンです。残念ながら昨年10月から名 古屋に単身赴任中です。ただ、そういう意味ではまだ活動にかかわっていきたいし、い つ坂戸へ戻れるかということもあるものですから、ずっと活動をしていきたいと思いま す。その中で、丸がつけてありますが、やはりこの年代というのは一番健康について気 にしなければいけないし、一番参画してやらなければいけないし、という年代だと思う んですよね。残念ながら私と同じ年代というのはそう多くはありません。ただ、ほかの ところよりも、もしかしたら集まりとしてはすごく多いのではないかというとらえ方も できると思います。だから、そんな世代の人間がなぜ健康づくり活動に参加したのか、 また継続した理由というのが、今回皆さんにお知らせしたい部分でもあるのかなと考え ています。  4年前、先ほど有田さんから御説明がありました公募に私も応募しました。何でもよ かったんですね。地域活動がしたかった。多分ほかの方もたくさんいると思うんですよ ね。ですから、世古先生の言うことはよくわかりますが、既存の自治の組織ということ があって、そこと、というのは余り僕は現実的でないのではないかと思います。ですか ら、やはりある程度主導的に声をかける、きっかけをつくるということにだれかが応募 する。そういうことが今回私のきっかけでした。ですから、一緒にやろうよというよう なタイトルでありまして、無報酬、何かそこにちょっと新鮮な感じもあったものですか ら、応募させていただいたということでございます。今思えば、行政側もどんな人間が 来るのかなということについては、多分相当の心配をしていたのではないか。実際には 1人途中で抜けたりとか、けんか腰になったりということもあったので、それを乗り越 えたというのは坂戸の底力ではないかなと思っています。  先ほどの内容とちょっと重なりますが、活動がすごく面倒くさいんですよね。多分私 どもが面倒くさいかどうかというより、当初は引っ張り回されているといいますか、も うとにかくついていくだけで必死という中で、一番大変だったのは行政の御担当者だと 思います。少なくとも先ほど来、会議は夜、活動は土日、だれでもサラリーマンは土日 休みたいというのは当然のごとく、行政の方も休みたい中、実に面倒くさいことを熱心 にやっていただいたというところは間違いなくあったと思います。  これも2年目ということで、いろいろな事業をやるわけですが、だんだんやっていく うちに、世代を超えた輪が徐々に広がっているなという実感を持ってきたころかなと思 います。  これは私がつくった画面ではないですけれども、さっきの世古先生の話と重ねると、 いいところいっているなと思うのは、1〜8までのはしごがあって、私どもでも6番の パートナーシップのあたりにいっているのではないかなと思っていました。この辺で公 募をして、我々は素人ばかりなわけです。「健康づくりって何」とかいろいろある中で、 やはり行政の人がどんどん引っ張っていかないと、とても我々対等の立場なんてあり得 ない話なんですね。ですから、ここに例えばさっき言った協働コーディネーターさんが いるのかもしれませんが、今回はそういう意味では坂戸市の職員の方たちが、わからな いながらも本当に協働のコーディネートをやっていたのではないか。そのうちに信頼関 係ができて、いろいろなことをやっていくうちに、本当にNPO法人までいかないまで も、元気にし隊という組織で少しでも我々がリーダーシップをとってできる組織になる のではないか。そうするとだんだん矢印が下がってくるわけですよね。ですから、A、 B、C、D、Eということになりましたけれども、一番下のがAだとしたら、ちょうど 真ん中あたりのCの活動が今できているのではないかということで、講義を受けたもの ですから、自信を持ったというところかなと思います。  まとめということで、これは有田さんが先ほどまとめたところについて、一言ずつ書 いた方が共通の見方ができるのではないかなと思いまして、整理いたしました。市民の 底力を感じたということに対しては、そんなことではなくて、行政担当者が一生懸命市 民を巻き込むきっかけをつくってくれた。これだと思います。どこの地区でもやはり物 好きもいますし、地域が好きな人もいます。だから、それを掘り起こすにはやはりきっ かけがないといけない。もうそれも何度も何度も参加できるような場面をつくったとい うのが一つあるかと思います。健康観の共有については、かなり健康ということがよい テーマで、広がりのあるテーマであったので、私も大変参加しやすかったということを 感じています。それから会議の時間帯。先ほど説明がありましたけれども、多くの人が 参加できる時間帯・曜日への配慮、サラリーマンも参加ができた、これは大変なことだ と思います。それから意見の言える関係。今まで行政と市民がしっかり話し合える向き 合った機会が、やはり余りなかったのではないか。ですから、坂戸市の中でもこういう 会議が持てているというのはそう多くないのかな。ひいては坂戸のほかの部署もこうい うことがやれるのであれば、また違うまちづくりができると思います。職員のやる気と 上司の理解。これはもう私が四の五の言う場面ではございませんが、坂戸市のすばらし い行政担当者に出会えて感謝を申し上げているということです。あとは「楽しく」がキ ーワード。市民も当然楽しくなければ何も活動する気もございません。ですから、楽し さと達成感の演出をしていただくことに拍手を申し上げたい、そんな感想を持っており ます。  そういう意味で、ちょっと泥臭い話ではございますが、一つの坂戸の事例として御参 考にしていただけたらと思います。私の話は以上です。ありがとうございました。  伊藤座長  有田さん、仲さん、どうもありがとうございました。これから質疑、意見交換をさせ ていただきたいと思います。どなたからでも結構でございます。  ちょっと私から、これは一番初めに、さっきちょっとありましたけれども、健康日本 21というか、健康増進法の成立を受けて市町村の健康増進計画をつくるということがき っかけだったわけですか。  有田オブザーバー  最初はそうですね。  伊藤座長  では、これ自体が市町村の健康増進計画だというふうに理解してよろしいですか。  有田オブザーバー  はい。具体的な行動計画はそこには載っていませんが、目標のところまでというとこ ろでの計画書になっています。  伊藤座長  最初は保健衛生部門だけだったけれども、現在は政策企画部門に事務局を移したとい うことで、そこはどういう経緯で。そこは世古先生の最初のプレゼンテーションと非常 にリンクするところだと思いますが、いかがでしょうか。  有田オブザーバー  前に、星 旦二先生などに御講義を伺ったときにも、やはり保健部門だけで健康づく りは成り立たないという部分もありましたので、全庁的なかかわりが必要だろうという ことの認識が上の方にも伝わったのだと思います。  伊藤座長  ありがとうございました。あと皆さん、いかがでしょうか。はい、どうぞ。  長谷部構成員  私が所属している南アルプス市役所も約7万人の人口で、同じような健康増進計画を 立てまして、今同じように住民の方と一緒に推進をやっている最中ですが、4点ほど質 問をさせていただきたいと思っています。  先ほどの資料の中で、元気にし隊は毎年公募ということだったのですが、もしよろし ければその1年ごとの人数、あと上限はあるのかなと。どのくらいの人数までだったら いいのかなということと、リピーターもオーケーなのかということと、どういう年代層、 男女の別みたいなもの、その辺の元気にし隊についての内容を1点聞きたいということ。  あと、うちの市でやはり同じような組織をつくっているのですが、多くの市町村がそ うだと思いますが、いろいろな組織の長の方が役職というのかな、当て職という言い方 がいいか悪いかわかりませんが、構成メンバーに入る自治体が多いかと思うんですよね。 それプラス公募という形をうちはとっているのですが、今回の場合は公募のみというこ とですよね。やはり組織の長が入るメリット、デメリットもあるかな、難しさもあるな と私たちは感じているのですが、その辺でまたお2人は組織の長が入ることをどうお考 えか。ちょっと難しい質問かもしれないですが、どうかなと。モチベーションの問題も あるかと思いますが、役職で来ているという意識を持つ方と、積極的にかかわっていた だけるという方の構成員のモチベーションというのがすごく大きくあるなということ。  あと、先ほどの仲さんのお話で、4年間活動されてきたということで、すごく高いモ チベーションを4年間お持ちになっていらっしゃる根拠というか、エネルギーのもとと いうか、住民の方がすごく高いモチベーションで何年間かやられているというのはすご いなと思うし、それはもちろん有田さんという存在もあるかもしれないですし、いろい ろな要因があると思いますが、そのエネルギーのもとを教えていただきたいということ。  最後ですが、先ほどのこの第3次行動計画の4ページに、元気にし隊と応援し隊とい う2つの部門があると思いますが、ここの間に大きい矢印があって「連携」と書いてあ るんですけれども、この辺の具体的な動きをぜひ、坂戸市さんの状況というか。応援し 隊の中にも市民活動団体とか企業とか教育機関とか、その間に市民も入りという形で矢 印がいっぱいありますが、その辺の具体的な連携、協働という言葉がいいかわからない ですけれども、具体的な事例を挙げていただけると参考になるかなと思います。  済みません、長くなりました。以上です。  伊藤座長  ではお願いします。  有田オブザーバー  全部覚えているかどうかわからないですが、一つ一つお答えしたいと思います。  最初に人数ですが、平成16年から元気にし隊という組織ができたのですが、その年 が26名。次の年が22名でしたかね。今が27名という構成になっています。最初のま ちづくり市民会議計画策定の段階のときは、先ほど言いました23名で、男女比はほぼ 同じで、20歳代から70歳代まで、年齢構成だけいうと幅広くありましたけれども、参 加している一番多い年代はやはり60歳代だったと思います。  皆さんやる気のある市民の方に集まっていただいていますので、すごく会議はモチベ ーションが高くできたと思います。団体の代表などという形では全然なく来ていただい ていますけれども、皆さんそれぞれボランティア活動をやっていらっしゃったり、いろ いろなところに所属していらっしゃる方も多かったように思います。なので、特に役職 の代表として来ていただいていませんので、そこで広げてくださいということではない んですけれども、自分たちにできるところということで、自分が所属しているところに 広めてみようかなというような活動につながっていったかなと思っています。  それで、仲さんの方のモチベーションの話はまたお話しいただくとして、応援し隊と の連携のところですが、最初の年には登録をしていただくだけで精いっぱいで、次の年 は健康パークというイベントを年度末に行いましたので、そのときに向けてこういうの をやるんですけれども協力いただけますかとか、あるいはこういう活動をやっています というPRを込めて、元気にし隊のメンバーと事務局とで応援し隊の団体を幾つか回り ました。全部の団体はちょっと回れなかったのですが、幾つか回ってPRをさせていた だいたという活動をしております。応援し隊同士の連携のところはまだまだこれからで すが、今市内の3大学、女子栄養大学、城西大学、明海大学という3つの大学がありま すので、そこと連携を図るということで、健康づくり政策室が中心になって進めてくれ ましたけれども、3大学との健康づくりに関する協定というのを結ばせていただいて、 今いろいろなところで大学の協力を得た活動ができているかと思います。  以上です。  伊藤座長  仲さん、お願いします。  仲オブザーバー  はい。私がどうしてそんな4年間やっていたのか。やっていられるのかということ。 余り大した理由はなくて、私は坂戸に住んで6年になるわけですが、活動は何でもよか ったというのは先ほども申し上げて、大変関係者にも失礼なんですけれども、この町が 好きになりたくてという部分がちょっとあったかなと。その次は、この町が好きだから ということになったと思います。今のメンバーや関係者の人とは、そういう意味では本 当に御近所だと思って日夜おつき合いしていますので、そのあたりだけのことかなと思 っています。  以上です。  伊藤座長  どうもありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。どうぞ。  田上構成員  とてもすばらしいお話をありがとうございました。まず仲さんに、楽しさと達成感を 演出してくれたという、その最後のキーワードがとてもぐっときたんですけれども、具 体にどんなことなのかということを教えていただきたいのが一つ。  それからもう一つは、この検討会としてこの議論をすることの論点がどうなのかとい うところがいま一つ私は理解ができなくて。一つはこういう取り組みが大切だというこ とは、このメンバーの中ではみんな「そうだ、そうだ」ということですが、坂戸市のよ うな取り組みは、みんな思いはあるけれどもほかの市町村への広がりがまだまだである。 それはなぜなのかといったところが一つ。  もう一つは、今の医療制度改革の大きな流れの中で、こういう活動よりもサービスの 方にすごくスポットが当たり、市町村の保健活動がサービスの方にすごく引っ張られて いる。ますますこういう活動がしにくくなってきている環境の中で、この議論をどうと らえたらいいのかなということです。やはり行政組織としてこういう活動はとても大切 なんだということの大きなところの認知が、市町村という自治体もそうですし、国の政 策としてもそうだと思います。そのあたりがとても大事だと思うのですが、それがむし ろ小さな政府と言いながらその方向に向かっていないのではないかという、そこらあた りがとても気になっておりまして、今この議論をどう生かしていったらいいのかなとい ったところが見えなくて。これはどなたに御質問していいのかはわかりませんが、問題 提起として言わせていただきました。  伊藤座長  今の田上構成員からの質問にコメントをいただきたいと思いますが。  有田オブザーバー  先ほど仲さんへの質問だったかと思いますけれども、楽しさと達成感というお話があ ったのですが、以前この計画づくりが2年目になったときでしたか、成功の要因みたい な形でアンケートをとらせていただいたんですけれども、そのときに出てきたのは職員 のやる気や熱意があったというような要因もあったのですが、自分の意見が計画書にな ったというよりも、自分の意見を言えたとか、そういった感想がかなり高い要因になっ てきていたかなと思いますので、そういうところも一つあったのかなとアンケートから は読み取っています。仲さんとしてのコメントもあると思いますけれども。  田上先生からサービスの事業にスライドしているというようなお話があったのですが、 私もその辺は少し考えがありまして、今やっているこの坂戸市の取り組みというのは、 ポピュレーションアプローチに近いのかなと思っています。健診であったり保健指導と いうのは、サービスというかツールの一つであって、自分が何か自分らしい生き方をす るための健康であって、健康が目的ではなくて、自分らしく生きていくための健康。で は、そのためには健診を受けなくてはいけないとか保健指導を受けるというような、ツ ールとして考えていった方がいいのかなというふうに私自身は考えています。  伊藤座長  仲さん、ほかにコメントはございますか。  仲オブザーバー  やはり私どもの活動が市内でどれだけ数字として改善してあらわれているかなという ことを、大上段に期待している時期ではないのも事実ではあります。自己満足的なもの もやはり少なからずあるかと思うんですね。ただ年に1遍の、健康パークと称して3月 に毎年行うものというのは、みんなでつくり上げていくという過程もあるわけで、それ がたくさん来れば喜ばしいし、それが一つの記録となって残ること。これはひいてはあ と何年かたてば、もう少し人数がふえてくれば、徐々に認知されていくことに対しての 楽しみみたいなところというのでしょうか、そういうことはあるのではないか。それは 我々市民の団体だけではとてもできない部分があるので、市役所の皆さんと協働してい るというのは、多分活動している者はみんな思っているのではないかと思っています。  伊藤座長  どうもありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。  佐伯構成員  今の活動をすごく楽しくされているのは、聞いている方も楽しくて、いい活動だなと 聞かせていただきました。多くの町で市民が参加したときに、「じゃ、これもできますか」 と言ったときに、ボランティアで参加しているときはいいけれども、「責任がかかってく るととても」と言われる体験を私もしました。  先ほどの話の中では、市民にどう権限を委譲していくか、責任を伴うことが出てくる という話が出てきました。今この活動の中で仲さんは責任というものをどんなふうに感 じていらっしゃるのかということと、市としては将来的なことも含めて、市民への権限 の委譲ということをどんなふうに考えていらっしゃいますか。  有田オブザーバー  権限委譲というのが当てはまるのかどうかわからないですが、今健康づくり政策室の 方とも一緒に考えている構想として寺子屋構想というのがありまして、地区の自治会単 位、集会所単位で、自分たちの地区を健康にしていくにはどうしたらいいかみたいな勉 強会をするということを企画している段階で、住民自身の力がついてきているのではな いかなと思っているので、それを権限委譲と言うかどうかはちょっとわからないですが、 そういう草の根的な活動がだんだん坂戸市に根づいてくればいいなと思っています。  伊藤座長  ちょっとそれに関連して。会議をやりますね。その会議をやるときには、会議に出す たたき台の資料というのは、市役所のスタッフだけでやるのか。それとも市民の参加者 と一緒になって会議の資料を準備するのか。そこでいろいろ具体的な形ができ上がって いくと、当然最終的には市役所が責任を持って議会に予算や事業計画を出さなければい けないわけですよね。ですから、その段階はもう市が責任を持ってやる話になってきま す。その辺の流れはどのようになっているのでしょうか。  有田オブザーバー  予算的なものは、その年の活動がどういうふうに転んでいくかというのが非常に見え にくいところがあるので、予算計上はとても難しいですが、最終的には行政が責任を持 つ形にはなるんだろうと思います。一応市民とは協定書という形で、この第3次行動計 画書の後ろの方、16、17ページに、市との協定ということで協定書を結んで、役割分担 的なところは明確にしてやっていますが、予算的なものは今は事務局が持っている形な ので、最終的な責任は市の方になるのかなとは思います。  伊藤座長  仲さんの方は何かございますか。  仲オブザーバー  責任という言葉は意識したことが一つもなくて、多分市民として自覚しなければいけ ないことの一つだなという部分なものですから、やれることはやれる範囲内で頑張ろう というのが多分皆さん一致した考えではないかなと。今やっているのは普及啓発的な、 仲間をふやそうよという部分だと思いますので、余りそういう言葉について意識をした ことはなかったというのが正直なところです。  伊藤座長  そのほか。では鏡さん、どうぞ。  鏡構成員  市民の方々と活動をやられて、非常にいい面が出ているということを伺って、大変い いことではないかなと思うのですが、ただ形としては、先ほど世古先生がお話になった 8段階のうちの6段階ぐらいじゃないかという評価がありましたが、私はそこまでいっ ていないのではないのかなと。つまり、行政が用意した枠の中でいわゆるワーク方式で、 市民の方々に新たな意欲が生まれたというところではないかなと思うんですね。そうい う意味では、大変申しわけないけれども特に珍しい活動ではないのではないか。結構行 政の中で、一般的にこの健康づくり21の計画をつくる中では行われている割とスタン ダードな方式だと思うし、ただそこに新たな点というのが、市民の側からも評価すべき 点というのが出ているんだろうなと思うのです。  そのときに感じるのが、一つ行政が像を持って積極的に活動する市民とか、いわゆる いい市民像というのをつくりがちだと思いますが、それに入らない人は、じゃ、どうす るのか。その人たちはいわゆる悪、だめな市民かということをやはり考えていく必要が あるのではないかなと思います。ですから、そういう人たちに対しては、どういうアプ ローチをするのかというのがまず一つの話と、あとはこういう活動をした中で大変難し いのは評価ですね。何を目標としていくのかということで、夜の活動だと時間外勤務手 当とか、あるいは職員の方が出るとか、会場を用意するとか、相当多くの労力がかかる し、恐らく相当の費用がかかっていると思うんですね。行政の組織の中でいうと費用対 効果というのは常に突きつけられる問題なので、何を評価としていくのか。何を到達点 として考えるか。そこを2点ほどちょっとお伺いしたい。  有田オブザーバー  先ほどのいい市民像という御指摘の関係ですが、確かに話をしていて意見の食い違う 市民の方もいらっしゃいますが、それは事務局が誘導するのではなくて、市民同士の話 し合いの中で常識的な意見になっていったのではないかなと思っていますので、特にこ ちらで誘導したつもりはないんですけれども、それをただ活動の中で行政にやらされて いるというか、協働という名とはまたちょっと違うのではないかというふうに感じた方 もいらっしゃいまして、1年目の策定のときには1人途中で脱退された方も確かにいら っしゃったことはいらっしゃいました。  評価についてはなかなか難しいところで、目標値としての数値は挙げていますが、評 価をどこに置くかというところは確かに難しい問題かなと思います。実態調査をしたと きの回収率が38.6%と低かったのが、この活動が地道に進んでいけば今度回収率が上が ってきて、関心を持ってくれる方がふえてくるのではないかというところが、一つの評 価になるのではないかなとは思っているのですが、どういう評価がいいのかというとこ ろはまだ具体的には出ていません。  伊藤座長  それでは、最後に。  藤内構成員  先ほどの鏡先生の質問にも答える形になるかと思いますが、坂戸市のこの取り組みと いうのは、例えば食生活改善推進員さんや愛育班のような既存の住民組織と行政との協 働ということではなくて、公募の市民と計画策定を通じてこういう元気にし隊という一 つの組織ができ、今その元気にし隊という組織と実際にいろいろな組織や大学も含めた 機関、市内で健康づくりにかかわる各種団体、ここでは応援し隊という名前ですが、と の連携というのをこれから目指しているわけです。先ほどの世古先生のお話にもあった ように、行政と住民組織の間にこの元気にし隊といいますか、この計画策定に携わった 市民が入り、行政と一緒に目的を確認したり、あるいはさらに市内にあるいろいろな住 民組織や団体、関係機関と協働を促す、あるいはそこが参画するのを促す役割を果たし ていくようになれば、確かにどこでもある活動だと言われればそれまでですが、この後 のそういう応援し隊との連携という中に、これまでの活動のまた真価というのが問われ てくるのではないかなと思っています。少なくとも今お2人の発表を聞いていて、そう いう方向に着実に歩いているというか、動いているというのを感じますので、その辺の 成果は僕は期待できるのではないのかなと思っています。  伊藤座長  例えば従来から食生活改善推進員とか、いろいろ既存のそういう組織があると思いま すが、そこはもう全く関係がない形で進んでいるのでしょうか。いかがでしょうか。  有田オブザーバー  食改さんは応援し隊の方に入っていただいておりまして、また事業によっては一緒に ということがあり得ると思います。  伊藤座長  そろそろ時間ですので、もしなければここで一応終了したいと思いますが、先ほど田 上構成員の方から、市町村の役割はサービスの提供と、それから保健事業そのものの企 画立案とか非常にコアの部分、そことの関係をどう考えるかというのは、きょうちょっ と議論できなかったのですが、また次回以降そのことも含めて少し御議論をいただきた いと思います。  きょうこの議題はここで終了したいと思いますが、今後のスケジュールにつきまして、 事務局の方からこれから説明をしていただきますが、次回の検討会では、今までいろい ろ議論していただいたことをもとにして、市町村保健活動の具体的な推進方策について 議論していただきたいと考えております。それで、今までの各構成員からいただきまし た意見を事務局が取りまとめて、メールでお送りいたしますので、追加の御意見があり ましたら次回の検討会までにはいただきたいと考えております。よろしくお願いしたい と思います。  それでは、事務局の方から今後のスケジュールについて説明していただきたいと思い ます。  加藤主査  それでは、今後のスケジュールについてですが、構成員の方には既にお伝えしていま すとおり、第6回の検討会は2月9日、16〜18時を予定しております。場所と詳細につ きましては、後日改めて御案内いたします。  事務局からは以上です。  伊藤座長  それでは、本日の検討会はこれで終了したいと思います。どうも長時間ありがとうご ざいました。 <了>