07/01/16 有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会 第3回速記録 第3回有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会議事録                       平成19年1月16日(火)14:00〜                       於:厚生労働省第15会議室 ○ 中垣審査管理課長  定刻になりましたので、ただいまより「第3回有効で安全な医薬品を迅速に提供する ための検討会」を開催させていただきたいと存じます。本日は、飯沼委員、柴崎委員、 寺脇委員より御欠席という御連路を受けております。  それでは、座長の高久先生、以降の議事進行をよろしくお願い申し上げます。 ○ 高久座長  それでは、ただいまから第3回目の会議を開きます。最初に配付資料の確認をよろし くお願いします。 ○ 山本承認審査等推進室長  お手元に御用意しております資料に従いまして、配付資料の確認をお願い申し上げま す。議事次第のところに配付資料の一覧がございまして、そこで資料1から6までござ いますが、座席表の次に資料1としてこの検討会の開催要項が1枚。それから委員名簿。 資料2が1枚ございまして、資料3「科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた 制度改革について」と題した15ページの資料がございます。資料4「有効で安全な医薬 品を迅速に提供するための検討会」論点整理の2枚の紙。資料5として横長の資料がご ざいまして、資料6「新たな治験活性化計画の策定について」という5ページの資料が ございます。この資料6編が本日の資料でございます。 ○ 高久座長  皆さんのお手元にあると思います。もしなければ事務局の方に御連絡下さい。  最初に議題1の報告事項です。昨年の12月に総合科学技術会議から安倍総理大臣への 報告書が出ています。総合科学技術会議というのは、我が国の科学技術の政策の企画立 案、総合調整を行うことを目的とした重要な会議ですが、この報告書について、資料3 ですが、その内容を事務局の方から御説明、よろしくお願いします。 ○ 中垣審査管理課長  それでは私の方から御説明申し上げます。資料3をごらんいただきたいと思います。 高久座長の方から御紹介いただきましたとおり、昨年の12月25日に総合科学技術会議 から報告がなされ、関係各大臣に意見具申がなされたものでございます。  総合科学技術会議は、今御紹介がございましたとおり、科学技術政策全般にわたりま して、その総合的、基本的な方針を決める、あるいは調整するということを役割に、総 理大臣を議長に関係各大臣及び有識者からなっているものでございます。医薬分野、医 薬に関係が深い有識者といたしましては、もとの京都大学医学部長の本庶先生、あるい は国立精神・神経センターの総長でございます金澤先生が御参画されているところでご ざいます。  今回なされました報告は、科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革 についてということでございまして、1枚めくっていただくと、右下と本文の真下にペ ージ数が2つ入っているわけでございますが、この会議では便宜上、右下にございます ページ数を使わせていただきます。2ページをごらんいただきますと、外国人研究者の 問題、研究者の流動性の問題、研究費の公正な使用の問題、研究支援、女性研究者、治 験を含む臨床研究の総合的推進、国民の理解の増進というふうに幅広い分野にわたって 意見具申がなされているところでございます。  基本政策推進専門調査会という総合科学技術会議の中にございます調査会で長いこと 議論があったところでございまして、この調査会には本会議にも御参加いただいていま す青木委員が専門委員として参画されたところでございます。  3ページをごらんいただきたいと思います。今回は治験を含む総合研究の総合的推進 として基礎技術の実用化を促進していくという意味で承認審査にまで踏み込んだ報告と なっていることが一つの特徴なんだろうと思います。  ここに背景がございますが、1行目に第3期科学技術基本計画で「健康と安全を守る」 ということが3つの大きな理念の1つとして掲げられているということでございます。 さらにその1行下でございますが、第3期の計画では、基礎研究の成果を社会的・経済 的価値の創造に結びつけるイノベーション創出をとりわけ重視し、治験を含む臨床研究 は国民の健康増進に直接つながるイノベーション実現のための研究開発手段で、その活 性化は我が国にとって大きな国益をもたらすという考え方がございまして、3ページの 一番下でございますが、「ここでは治験を含む臨床研究のための体制整備のさまざまな課 題の中で、思い切った制度的な対応が必要とされ、政府全体による推進のバックアップ が必要な問題について、その改革の方向性を示す」ということになっているわけでござ います。  (2)から臨床研究、あるいは我が国の治験の制度の枠組みの説明がございますが、 これはもう先生方御存じのところでございますので省略させていただいて、7ページを ごらんいただきたいと思います。7ページの上から2行目、II.体制整備に向けた改革 の方向ということで、その方向性が示されているところでございます。  まずここの(1)のところ、最初のパラグラフでございますが、日本で臨床研究が余 り活発にやられていない、さらには研究費の配分も基礎研究に傾斜しているということ が書かれておりますし、第3パラグラフ、下から10行目ぐらい、臨床研究を効果的に推 進するためには、一定規模以上の研究を支援する体制を早急に整備する必要があるとい う考え。あるいはそこから3〜4行ございますが、臨床研究支援拠点を創設することも 一つの方策であるという、研究の推進について意見具申がされているところでございま す。  次、8ページでございますが、上から3行目、(2)といたしまして、臨床研究者・臨 床研究支援人材の確保と育成ということで、8ページの下から7〜8行、「平成18年度 以降実施」の前でございますが、生物統計学、臨床疫学等を実践的に教育し、臨床研究 者を育てる機能を整備する必要があると述べられています。さらには学会等と連携して 臨床研究者が専門家として正当に評価される環境を作るなど、業績として評価する必要 があるということが書かれているわけでございます。また、最後の行、研究従事者や支 援者への経済的インセンティブ付与のために研究費を活用していくべきであるという、 臨床研究の推進について(2)で触れているところでございます。  この検討会と直接関係する事項には下線を引いておりますが、9ページ上から3行目 の(3)でございますが、研究推進や承認審査のための環境整備ということが出てまい るわけでございます。この中にはもちろん研究推進の項も含まれておりまして、例えば 9ページの下から12〜13行目、「このような状況は」から始まる段落でございますが、 ここでは臨床研究に関する倫理指針の改定、臨床研究全体についてICH−GCPへの 準拠を原則とした法律に基づいた実施基準を策定すべきであるという考え方がございま すし、同じく9ページの下から4行目の段落でございますと、臨床研究の安全性と品質 管理の観点からモニタリング基準を明示して、監視機能を充実させるという考え方が示 されているところでございます。  10ページでございますが、このあたりからこの検討会でも論点として挙げられている 事項が出てまいるわけでございます。最初にございますのは、下線部でございますが、 医薬品開発を効率的に進めるための新しい手法として、マイクロドージングやクリティ カルパスリサーチ等の研究が欧米を中心に進められているということでございます。次 の下線部でございますが、マイクロドージングを含む探索的早期臨床試験について、そ の導入に向けて欧米のような指針を早急に検討すべきであるということで、18年度より 検討・19年夏結論という形で書かれているところでございまして、まさしくこの検討会 でも新しい技術の一つとしてマイクロドージングについて論議すべきだというふうに論 点整理させていただいておりますが、このような形で総合科学技術会議もほぼ同様なこ とを言っているかと思います。  [2]が独立行政法人医薬品医療機器総合機構の承認審査の迅速化・効率化ということで ございまして、機構の審査官の慢性的な人手不足でございますとか、その一番下の行か ら次のページにかけて、承認審査の遅延、ひいては新しい医薬品と医療機器の国民への アクセスに遅れを招いていると考えられるという、この検討会と同じような考え方が示 されているわけでございます。  その次の下線部でございますが、「機構の治験相談や承認審査の遅延を解消するために は、審査手続の透明性・効率性の向上とともに質の高い人員を増やす必要があると考え られる。そのために、機構は人員の拡大(審査人員をおおむね3年間で倍増)、治験着手 から新薬承認までの期間短縮や、人材の育成を図るための工程表を示すべきである。そ の際には、製薬企業からの審査費用の増額により民間活力の活用を含む審査体制の拡充 を図るべきである。」ということで、19年度、来年度より実施となっているわけでござ います。  「また、先端科学を応用した新薬や医療機器の治験相談や承認申請に対して、速やか 且つ的確に対応できるように審査官のレベルアップが急務である」と書かれているわけ でございます。  次は12ページでございますが、上から2行目、審査官の待遇の見直し、キャリア・パ スの確立、さらには民間との人事交流を活発化させる新たなルールづくり、その際に機 構と規制対象の会社の関係に注意しつつ、機構の就業規則を緩和すべきであるという考 え方が示されているところでございます。  その次の下線部でございますが、審査の透明化を図り、効率化を促進するために、承 認審査ガイドラインを早急に策定するなど、承認審査基準を明確化すべきであるという ことが書かれております。また、その下は医療機器の点でございますので割愛させてい ただきまして、13ページの下線部でございますが、「細胞・組織を利用した医療機器や 医薬品」、すなわち再生医療と呼ばれる分野だとお考えいただければよろしいかと思いま すが、こういった分野の審査の迅速化・効率化を図るということの観点から、安全評価 基準を明確化する。確認申請というのは治験に入る前に厚生大臣の確認を求めるという 制度でございますが、その確認申請、もしくは治験計画届に係る調査、この2つの調査 で重複する部分があるのではないかという御指摘をいただいております。  さらに国際共同治験について述べられておりまして、14ページ上から10行目ぐらい の下線部のところでございますが、新規医薬品と開発の効率化・迅速化の観点から、国 際共同治験を推進すべきであるというところでございます。国内外の治験データの有効 活用の促進のため、日本のGCPや、その運用のあり方について検討し、国際共同治験 を推進するために適切な措置を講じるべきであるというようなことが書かれております。  さらには治験の情報提供活動の規制緩和として、14ページの下から4行目の下線部で ございますが、国民に対する治験への理解を求める観点から、どの医療機関で何の薬剤 の臨床研究を行っているかを明確にして、米国のように治験・臨床試験に参加しやすく するために、インターネットなどを通じた情報提供・広告規制のあり方について検討す べきであると書かれているわけでございます。  最初に申し上げましたとおり、臨床研究あるいは治験を推進するための環境整備、あ るいは研究の推進という分野と、この検討会で検討をお願いしております医薬品承認審 査制度に関する規制の枠組みづくりの問題と、両者指摘されているわけでございますが、 私どもといたしましては、承認審査にまつわる点につきましては、ここで指摘されたも のも含めて、この検討会でその具体的なあり方について我々としても素案を示したいと 思いますし、先生方の御意見をお聞きして、その実現に向けて取り組んでいきたいと考 えているところでございますので、よろしくお願いしたいと思います。  また、1点追加して報告させていただきますと、先ほどごらんいただきました11ペー ジの上から10行目ぐらいの下線部にございます機構の人員の拡大について、審査人員を おおむね3年間で倍増としております。現在の審査人員が、このレポートの10ページの 下から3行目の末尾でございますが、平成17年度における医薬品承認審査等の審査部門 の人員の国際比較では、日本では197人、これはたしか昨年の秋現在の数字だと思いま すが、この197人ということを言った上で、11ページの先ほどごらんいただいたところ で、審査人員をおおむね3年間で倍増ということでございますから、大体200人を超え るような数というのがこの念頭にあるんだろうと考えておりますが、我々といたしまし ては、もちろんのことながら医薬品機構と一緒になって、政府の関係部署と相談しなが ら、その実現に向け取り組んでいるところでございますので、この点についても進行状 況をこの検討会に報告させていただきますとともに、また先生方の御意見を賜れば幸い と考えておりますので、あらかじめ御報告させていただきたいと思います。以上でござ います。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。今の説明につきまして、どなたか御質問、御意見、 いかがでしょうか。  ちょっと追加いたしますと、審査要員のことですが、質の高い審査要員をふやすとい うことはなかなか容易ではないのですが、日本医学会でも厚生労働省の方からの依頼を 受けまして、関連する10以上の学会に、2年間ぐらいの短期間でもいいから、学会から どなたか中堅、30歳代ぐらいの人を派遣してもらえないかという依頼を出しました。一 つのキャリア・パスになると思いますし、またもとのポジションに戻ればいいというこ とで、各学会の会長・理事長にお願いしています。今のところまだ返事がありませんが、 しばらく時間がかかるのだと思っています。  この報告は非常に立派な報告ですが、1つだけ、ここに臨床の池田先生もいらっしゃ いますが、最近は基礎的研究がよりハイレベルで、臨床的研究を少し低く見るという傾 向は大学でもほとんどなくなり、医学部の研究は将来的に何らかの形で臨床に応用する、 すぐには結びつかなくても、そういう方向性を持った研究の方がより重要ではないかと いう様に意識が変わってきているとは思うのですが、池田先生、いかがですか。 ○ 池田構成員  高久先生がおっしゃられたとおり、今、大学でも臨床研究を担う人材を育成すること が急務であるという気運は、徐々にだと思いますが、かなり盛り上がってきているとい うことは言えると思います。それをどう評価していくか、そしてどういうふうにキャリ ア・パスをつくってあげるかというところにまだ少し見えない点があるかもしれません。 しかし、こういう人材は大学として育成する責任があるだろうという考え方をかなりは っきり打ち出している大学が増えてきていると思いますし、例えばそのためのカリキュ ラム、大学院のコース、臨床大学院のコースをつくろうという動きもあります。  実は学術会議でも臨床系の大学院のあり方についての検討会というのを今やっていま す。臨床系大学院というのは例えば外科に行く、内科に行く、眼科に行くといって、専 門に分かれて入るのですが、そこで大学院に入って何をするかといったときに、今まで だったら4年間のうちの2年間、あるいは3年間、基礎研究をやって、そして論文を出 してということが多かったのです。検討会では、それだけではなくて、レギュラトリー サイエンス等を学んで、臨床研究を、例えばプロトコールをつくれるようなそういうス キルを学ぼうということを検討しています。そして課程で博士を出していったらいいの ではないかという議論すら今出ていますので、高久先生がおっしゃられたように、各大 学で臨床研究の重要さということへの関心はここ1〜2年、急速に高まっていると思い ます。そこをきちんとリードできるような施設が、これからこの臨床研究の中心的な施 設になっていくのではないかと私は感じています。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。ほかにどなたか、この報告書に関して御意見は。よ ろしいでしょうか。非常に立派な報告書で、さっきの点以外、特に私もコメントするこ とはないのですが、よろしいでしょうか。 ○ 井村構成員  右下11ページの真ん中よりちょっと上の下線部分ですが、ここに製薬企業からの審査 費用の増額により民間活力の活用云々と書いてあります。これは今、製薬企業からの費 用の負担が大体どのぐらいのものなのか。そしてこれを19年度から実施すると書いてあ るところでは、どういうふうにそれを増額するようなことを考えていくべきなのかとい うことについて、何かお考えが事務局の方にあればお聞かせ下さい。 ○ 中垣審査管理課長  直接的に申し上げますと、この表現ぶりというのは、受益者負担と申しますか、申請 者たる企業が承認審査をするために必要な人件費でございますとか、設備費でございま すとか、そういうものを負担すべきなんだというような考え方を示したんだろうと考え ております。  具体的な審査費用につきましては次回、一覧表を示したいと考えておりますが、例え ば新医薬品1品目での審査費用というのが約1,000万円程度だったかと思っております。 ですから、その費用というのを、今回、この審査人員を増加する、当然のことながら人 件費等が余計な負担となるというようなことを見込んで、審査手数料を改正するという ような方向で今検討しているところでございます。 ○ 高久座長  確かに受益者負担というのはあると思います。ただ、最近のニュースで、FDAの場 合に、COX-2 inhibitorやSSRIの認可に対する批判がありまして、メーカーさんから審 査費用をたくさんとると、審査が少し甘くなるのではないかという懸念も言われていま す。ですから審査の費用を上げるのは問題だという意見もある様ですね。 ○ 中垣審査管理課長  今座長から御指摘がございました点が一番集約されていると考えますのは、前回第2 回の検討会で配布させていただきましたアメリカのNational Academy of Sciencesの報 告書の中に、今座長から御指摘されたような点があるんだと考えております。もちろん、 この審査と安全監視の問題というのは、どちらが上とか、どちらが下とかいう問題では なくて、審査は審査で、安全は安全監視としてしっかり対応していかなければならない と考えておりますし、薬事・食品衛生審議会での組織というのも、承認を担当する部会 と安全対策を担当する部会も分かれているところでございまして、公平・公正にやって いく必要があるんだろうと考えているわけでございます。  ですから、今回仮に審査手数料を上げるというような形で審査人員を増員させるとい う方策をとるにいたしましても、もちろんその大前提としてあるのは公平・公正な審査、 さらにはしっかりとした安全対策と考えているところでございます。 ○ 森田構成員  8ページの下から3行目のところで、次期治験活性化長期計画に入っているとなって いますが、現実問題として、日常の診療で超多忙な臨床医の方々がこの研究に携わって います。施設と個人の問題で、こういう先生方がインセンティブというのは気分的に御 本人たちからなかなか言いにくいような部分もあろうかと思いますが、真に必要だとい うことを、透明度とモラルを明確にして、御自分は貢献しているんだと堂々と胸を張っ て、治験に取り組めるようにきちんとした検討を、公的病院であろうと私的病院であろ うと、いろいろな形で行うことが私は待ったなしになっているのではないかという印象 を持っています。この点、ワーキングのような形でも、具体的にもっとスピードを持っ て詰めていただくことが、治験に取り組む先生方がふえてくる一因になるのではないか と思います。 ○ 中垣審査管理課長  今の御指摘、治験活性化5カ年計画ということで、医政局の研究開発課を中心に現在 作業が進められております。この検討会、医薬品規制に焦点が絞られているわけでござ いますが、一方では森田委員から御指摘のあったように、治験をどうするかというよう なものは密接不可分に連携が必要だということを考えておりまして、本日の会合でも後 で時間をとって、治験活性化5カ年計画の進行状況について医政局研究開発振興課長の 方から報告させていただきますし、その説明の中で、今森田委員の御指摘についても行 政としての考え方を示していきたいと考えておりますが、そういう形でよろしゅうござ いますか。 ○ 高久座長  それではまた後でよろしくお願いします。ほかにどなたか。 ○ 青木構成員  この総合科学技術会議で議論されたものの中で、余り他で触れられていない点が1点 ございます。法律の問題がありまして、今までのようなガイドラインではなくて、臨床 試験の患者の方の安全性を担保すべきで、きちんとした法律が要るのではないかと。ア メリカの場合はナショナル・リサーチ・アクトというのがございます。それをこの会議 では議論したのですが、その後、余りこれには触れられていないように思うのですが、 いかがなものなのでしょうか。 ○ 新木研究開発振興課長  この臨床研究の現在ある倫理指針は平成15年に策定いたしまして、5年をめどに見直 しを行うとその中で決めております。そうしますと、15年から5年間ですから、20年度 までに見直すことになります。その見直しを早速我々のところで始めたいと思っており ますが、その中で現在の臨床指針の遵守の状況であるとか、また、それを運用している 上での課題であるとか、こういうことを明らかにしまして、総合的に検討したいと考え ているところであります。 ○ 池田構成員  先ほど、大学での人材の育成についてお話をさせていただいたのですが、この報告書 は研究推進、あるいは承認審査のための環境整備と人材の育成と。これは今までいろい ろなところで議論されてきたところが非常によくまとまっているのではないかと思うの ですが、1つ最後に国民の参画という視点が項目としてございます。  これは私、非常に大事な点だろうと思っています。国民にどういう臨床試験、臨床治 験が行われているのかということを幅広く知らせるということと、その試験そのものの、 あるいは臨床試験そのものの問題点がどこにあって、安全性はどうなっているのか、補 償の問題はどうなっているのかということが情報として非常にクリアになることが重要 な点です。治験はもちろん企業が実施するもの、あるいは医師主導治験があり、臨床試 験となるとまたいろいろな形があると思うのですが、行政と大学、あるいは医療施設と 民間がお互いどういう関係で、どのような協力関係でやっているのかということがかな りクリアな形で進められるということが一番大事ではないかと思うので、その点で私は 国民の参画というのは非常に大事だと思います。実際に9ページに、一部で実施されて いる臨床研究登録情報のネットワークというものについて少し触れられているのですが、 これについては今後どういうネットワークをつくって情報を国民に知らせていくのか、 その辺についてどのような議論をしていったらいいか、あるいはするべきか。私はもっ と進むべきだと思っているのですが、その辺どうでしょうか。 ○ 新木研究開発振興課長  この臨床研究、治験についての情報公開をすることによって広く国民の皆さんに知っ ていただくというのは大変重要なことだと我々も思っております。ここで3つ出ており ますのは、現在行われておりますUMINのシステム、日本医師会の治験促進センター のシステム、JAPIC、製薬企業中心のシステム、この3つのことを掲げています。 現在、WHO世界保健機関におきまして、これら臨床研究、特に治験の情報を必ず登録 するよう義務づけるという議論や、登録することをジャーナルへの発表の条件等にする という議論も進んでいるところであります。  そのような中で、とりあえず我々といたしましては、国民の皆さんが個々の情報にア クセスしやすいような、そういう総合的な環境をポータルサイトで実現して、それを具 体的には保健医療科学院、ここのホームページでつくりたいと思っております。さらに その先の議論というのは、先ほど申し上げましたWHOの議論も踏まえながら、これか ら議論していきたいと思っております。  いずれにしても、国民の皆さんに知っていただくということが一番重要な点でありま すので、あとはそれをどう進めていくかという方法論を具体的に詰めて進めていきたい と思っております。 ○ 高久座長  ことしの4月から各医療機関の情報を公開する事が始まりますね。たしか医療機関で やっている治験も公開することになっているのではなかったですか。 ○ 新木研究開発振興課長  医療制度改革に基づきまして、医療機関の方から情報を公開するという項目に入れま して、それは治験をやっているかどうかというようなところでありますが、それを公開 することにしております。先ほど申し上げましたのは、それを集めた形で一覧できるよ うな仕組みということでございます。両方の側面から進めていくことが必要ではないか と考えております。座長御指摘のとおりだと思います。 ○ 高久座長  ほかにどなたか。よろしいでしょうか。よくまたごらんになっていただければと思い ます。  次に議題2の検討課題に入りたいと思います。第1回では承認審査の実態などについ て事務局の方から説明がありまして、第2回目には団体の方々からのヒアリングを行っ たわけですが、これまでの御議論等を踏まえて、事務局の方で論点整理ということで資 料4が示されています。この第3回の検討会からは、論点整理に示されていますいろい ろな課題について、まず総論以外の論点について検討を行った上で、その後、総論につ いても検討をしていくことにしたいと思います。  本日は整理された論点のうち、お手元の資料4の各論の中の論点3−[1]、それから、 これは個々の医薬品の特性に応じた治験を実施するために薬事規制の観点からどのよう な方策が考えられるかということと、3−[3]、「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)」 運用上の課題にどのようなものがあり、どのように解決すべきかということについて御 議論していただきたいと思います。  事務局から、関連資料として資料5が用意されていますので、資料5の医薬品の特性 に応じた治験の実施方法ということで説明をよろしくお願いします。 ○ 山本承認審査等推進室長   それでは資料5をおめくりいただきまして、2ページに今座長から御紹介いただきま した資料4の論点についてご覧下さい。前回の配付資料でまとめたものでございますが、 総論の論点1の今後の新たな科学技術に応じた柔軟な対応の可能性についての検討、論 点2のより適切な安全対策の可能性についての検討といった総論につきまして、さらに 制度的な課題としての論点3医薬品ごとの最適な治験を実施するための方策、論点4審 査方法、論点は市販後の安全対策、さらに体制的課題としての論点6治験相談体制、論 点7として承認審査体制、そのほかの未承認薬の使用、あるいは再生医療といったよう な論点があるのではないかと考えております。そのうち本日は論点3の[1]と[3]のところ について御議論をお願いしたいということで用意した資料でございます。  次のページは第1回目の配付資料でございますが、治験の段階におきましてはヒトで の有効性・安全性の評価を行うということ…真ん中に記載がございまして、右の方にG CPとか、治験薬GMPとかという基準がございますが、こういったことに関します点 について今回の話題とするものでございます。  次の4ページでございますが、これは米国の医薬品の開発規制の改革に関するクリテ ィカルパス・レポートの中で前回の配付資料の中から抜粋したものでございますが、こ の中で治験に関することについての論述がございます。開発者はしばしば、21世紀の進 歩を評価するために20世紀のツールに頼らざるを得ない。このためには新しい製品開発 のツールが早急に必要。そのために6つの優先的課題があるというようなことで整理し ている中で、1から6まで下の方で掲げている中では、バイオマーカー、生物情報学な どと並びまして、臨床試験の効率化というのが非常に重要なことであるということで指 摘しているもので、これが今回の論点3と呼応するものでございます。  この中の医薬品の特性、あるいは開発段階に応じた臨床試験ということで、先ほどの 総合科学技術会議のもの、5ページでございますが、特にマイクロドーズ試験というも の、あるいはそういった開発段階の臨床試験ということにつきまして御説明を申し上げ ます。  このマイクロドーズ試験でございますが、これは枠の中にございますように、被験物 質が薬理作用を示すと考えられる投与量の100分の1未満かつ100μg以下の投与量と いう非常に少ない投与量におきましてヒトへの単回投与試験を行うという、そういった 試験方法でございます。具体的な試験方法といたしましては、下に小さな字で書いてあ りますように、放射線元素で標識して加速器質量分析法で分析する方法でございますと か、放射線標識をしない方法で、高感度のタンデムマス法というような方法で測定する、 あるいは特殊な同位元素で標識したものにつきまして陽電子断層撮影法、PETという 画像情報としての診断をする、こういった方法によりまして、通常の第I相試験の治療 開始前にヒトの薬物動態の情報を解明して、その後の治験等の迅速化・効率化を図るも のでございます。  これによりますと、例えば分子イメージング技術の開発なども期待されているという ことでございます。  これの現状について、次の6ページでございます。まず我が国の状況について、我が 国では医薬品の承認申請を目的としたマイクロドーズ試験の実施に関するガイドライン 等につきましてはまだ作成されていない段階でございます。また、このようなことから、 国内では医薬品の承認申請を目的としたマイクロドーズ試験というものについての報告 はないというのが現状でございます。  このことに関しまして、一昨年の暮れ、日本薬物動態学会から、マイクロドーズ試験 の有用性ということについて認めて、そのための指針作成が必要であるという意見書が まとめられております。さらに総合科学技術会議では、この12月に、先ほど御紹介があ りましたように、マイクロドーズを含む探索的早期臨床試験について、欧米のような指 針を早急に検討すべきであるということで、先ほどの資料3の10ページの記載でござい ますが、そのようなことで提言があったところでございます。  一方、諸外国の状況でございますが、2のところでまとめておりますように、欧州、 特に英国でこの研究方法が先行しておりまして、英国では1997年から実施され始めてお ります。それに関しまして、欧州の医薬品の審査機関でございます欧州医薬品庁、EM EAが2003年に「医薬品の単回マイクロドーズ臨床試験実施のための非臨床安全性試験 に関するポジションペーパー」というものを発出いたしました。これ以降、このポジシ ョンペーパーに基づく形で、欧米ではEUの開発の方法として採用がなされているよう な状況でございます。  また、米国の状況でございますが、昨年の1月に出されました「探索的IND試験に 関するガイダンス」というものの中で、マイクロドーズ試験に関しましてもガイダンス を取りまとめております。そういうような形で、ガイダンスに基づく開発が行われる体 制が確立するものでございます。  さらに国際的な状況としましては、日米欧が医薬品審査に関します申請資料の共通化 のための国際会議の取り組みを1992年からやっておりますが、これの取り組みの中で、 昨年の秋、このマイクロドーズに関する議論に関しまして、見直しのための専門家のグ ループを立ち上げまして、今年の後半には原案を作成し、さらに来年の秋には最終合意 を得たいということで作業に着手したところでございます。  このような状況になっているのですが、次のページで、我が国でマイクロドーズ試験 を実施することに関する課題についてということで、事務局としての整理を書かせてい ただいております。まず第1に被験者保護への十分な配慮ということでございますが、 これは通常の第I相試験で初めてヒトに投与されるという、早い段階で極めて微量の薬 物の投与試験をするというようなものでございますので、その際の被験者保護への配慮 について、まず検討が必要ということでございます。  その場合に、どのような化学物質について、あるいは候補物質について対象にするの が適当かという対象範囲の問題ということがございます。特にバイオテクノロジーを利 用しました生物製剤、あるいは抗がん剤について、試験対象に含めるのが妥当かどうか ということについて議論が必要ではないかということが考えられております。  この投与量設定に対する考え方でございますが、これに関しまして、動物実験に基づ く薬理作用発現量の100分の1未満、あるいは100μg以下ということですが、これ以 外にさらに特性に応じた上限量というものの検討が必要なのではないかということもご ざいます。  さらには、そもそもこのマイクロドーズ試験を実施する前に、動物によるどのような 安全性試験を行うべきかということがございまして、これに関しましては次のページに EUと米国についてのマイクロドーズ試験のガイダンスの状況についてまとめてござい ますが、これを参考にした整理が必要なのではないかということがございます。  8ページでございますが、まずマイクロドーズ試験の対象の範囲について、この表の 一番下のところで、どのような薬物を対象外とするかということにつきまして、EUが 左側、アメリカが右側に書いてございます。バイオテクノロジー由来薬品について、あ るいは抗がん剤については対象外とするようなことがEUでは言われております。また、 マイクロドーズ試験の投与量の上限につきましては、真ん中の投与量上限、あるいは単 回投与試験の最高用量というようなところで、EUと米国で考え方の相違もございます。 その下の臨床試験に関しましても、例えば遺伝毒性試験について、欧州では必要とする が米国では必要とはしないという形で、まだこのあたりは欧米で考え方が一致していな いところでございますが、こういった先行しているものを参考にしつつ整理が必要では ないかということがございます。  このマイクロドーズ試験は医薬品の開発のための試験でございますので、薬事法上の 治験という位置づけになるわけでございますが、これに対しまして生命倫理あるいは法 律の専門家を含む研究班におきまして、これらの課題について整理検討してガイダンス をまとめていくことが必要ではないのかということで事務局としては今検討していると ころでございます。前半の資料の説明は以上でございます。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。今、マイクロドーズ試験のことについて説明があり ましたが、どなたか御質問、御意見おありでしょうか。 ○ 望月構成員  効率的な治験が実施できるということで、フェーズIスタディが始まる前にマイクロ ドーズ法でPKパラメータを出すということになるんだろうと思うのですが、パラメー タを出すということが結果的に従来のフェーズIスタディのやり方をどう変えるのかと か、どこが効率的なのかとか、諸外国でマイクロドーズ法を使った治験をやった医薬品 としてどんなものが具体的にあって、その中でどこが効率的だったのかというあたりの ことを教えていただきたいのですが。PKデータが出るだけで私は効率的になるとはと ても思えないのですが。 ○ 山本承認審査等推進室長  これに関しましては、まずどのような薬品が開発されているかということにつきまし て、今手元に資料がございませんので、取りまとめることができましたら、また次回以 降に御報告したいと思います。  どのように効率化されるのかということにつきましては、候補化学物質のファーマコ カイネティクスと薬剤の吸収・分布・排出に関するスピードもさることながら、臓器の 分布性ということに関しましてのデータにつきまして、これが極めて早い段階で候補物 質についてのプロファイルを固めることによりまして、逆に好ましくないプロファイル を持った薬剤を開発の早期の段階から排除していくという、そういったようなこととし ての利用が欧米の開発では採用されていると聞いております。 ○ 望月構成員  よくわかりました。候補物質を絞り込むところをヒトで、マイクロドーズでやって、 ある程度絞り込んでいいものだなというものを、きちんとしたフェーズIスタディに移 していくということになるわけですね。 ○ 中垣審査管理課長  言い方としてはそのとおりだろうと思いますが、考え方として申し上げると、フェー ズIだと20例とか、40例とかやるわけでございますが、その前の段階で、ごく少数例 で、望ましくないような臓器分布であるとか、レセプターとの問題であるとかいうもの で脱落するものが出てくれば、20例、40例を危険にさらすことがないというような、で すからより早い段階で、より少数例で、ごく微量で、ほとんど薬理作用が考えられない ような用量で試験をすることによって、全体としての被験者の保護、あるいは20例、40 例の試験をやって結果としてだめなものを早い段階でだめにする、よさそうなものを早 い段階でスピードアップするという意味で、全体としての効率化ということになるんだ ろうと考えております。 ○ 望月構成員  よくわかりました。ありがとうございます。 ○ 森田構成員  最後の方の御説明の中で、薬事法の範疇に入れるということは、欧米においても、こ のような内容のものはいわゆる規制の中に入っていると考えていいでしょうか。 ○ 山本承認審査等推進室長   そのとおりでございます。医薬品のフェーズIのガイドラインというのはガイダンス のような形でもってEUもFDAもまとめているところでございます。 ○ 高久座長  生物製剤や抗がん剤をどうするかということが書かれていますが、逆に言うと、生物 製剤、抗がん剤の方がマイクロドージングでセイフティーを、チェックしておいた方が すぐにフェーズIに行くよりいいのではないですか。いかがでしょうか。イギリスで、 抗体薬の第I相試験の副作用で大問題が起こったことなどを考えると、極めて少量の方 が良いような気がするのですが。 ○ 中垣審査管理課長  私が承知している限り、8ページをごらんいただきますと、ちょうど真ん中に、マイ クロドーズ臨床試験投与量上限として、薬理作用発現量を計算値の100分の1未満かつ 100μg/human以下というような記載があるわけでございます。この100μgという根 拠でございますが、これまでに行われました動物の試験、あるいは動物の試験を通じて ヒトの試験が行われてきたわけでございますが、その毒性試験のデータをたしかアメリ カのFDAが膨大な解析をし、500以上の化合物について解析をした結果が報告されて おりますし、それをもとにWHOの中でも議論がされたところでございますが、100μg 程度であれば、今まで開発された薬物においては毒性をもたらすというのはなかったと いう報告の実例から来ているわけでございます。  他方、抗がん剤が除かれている理由と申しますのは、推測するに、いわゆる変異原性 の問題だろうと思います。抗がん剤の多くは変異原性を有するところがございまして、 そういう意味で除いておいた方がという考え方だろうと思いますし、生物製剤につきま しても、先ほど申し上げましたFDAでの検討、またWHOでの検討というのは、いわ ゆる化学物質を対象とした検討でございますから、そういう意味で申し上げますと、そ ういったバックグラウンドのデータがまだないということなのかなと推測いたしており ますが、そのあたりも含めてしっかりした検討を専門家の方々にお願いしたいと考えて いるところでございます。 ○ 高久座長  そのとおりだと思います。ほかにどなたか。 ○ 池田構成員  ちょっと素人っぽい質問で大変恐縮なのですが、マイクロドージングの臨床試験でフ ェーズI、非常に推奨すべき方向だと私自身認識しているのですが、自分の知識の不足 をさらけ出すようで申しわけないのですが、例えば今まで幾つかフェーズIで、いろい ろな副作用で肝障害が出たとか、それでかなり先へ進んでドロップしたような、そうい う薬剤がたくさんあるわけですが、そういうものをマイクロドージングで、倫理的に非 常に問題があるとは思いますが、改めてそういうものをやった場合に、このマイクロド ージング法だったら恐らくその先へ行かないで済んだだろうというようなデータはある のですか。  難しいのはわかっているのですが、実際にマイクロドージングを実施するというのは、 先ほど望月委員が言われたように、プロファイルが余りふさわしくないもの、プレクリ ニカルでやってフェーズIに行こうかという時に、マイクロドージングで一応確認して、 プロファイルが余りふさわしくなければ、そこでドロップさせようということで有用で あると思います。それで先ほど課長が言われたように、たくさんの人をフェーズIにさ らさないで済むだろうということなのですが、仮にフェーズI、あるいはIIに進んで、 それで途中でドロップしたようなものは明らかに幾つかありますよね。相当の数がある わけですが、そういうものをマイクロドージングで振り返ってみて仮にやったとして、 その安全性とか何かは担保されるという、そういうデータというのはあるのですか。倫 理的にあり得ないですか。 ○ 中垣審査管理課長  先生がおっしゃっておられるようなデータを少なくとも科学論文的なもので見たとい う覚えは、私には残念ながらありません。それは先生がおっしゃっているような倫理的 な問題としてやりにくいということもあるだろうと思いますし、また、この手法という のがEMEAで2003年にガイダンス、考え方を出して以来、やられるようになってきた ということもまだあって、そういう意味ではまだまだ積み重ねの薄い分野なのかなと考 えております。  したがいまして、また先生方の御意見もお伺いしたいわけでございますが、いわゆる ガイドラインとして現段階でまとめていく作業というのはちょっと難しいのかなと。基 本的な考え方と申しますか、海外で使われる言葉で申し上げますと、ガイダンス的な考 え方の文書をまず第1弾としてまとめていくのかなというふうに考えている次第でござ います。 ○ 池田構成員  先ほど森田委員の言われたように、これを薬事法でフェーズIと位置づけるというこ とは、プレクリニカルはそのまま今までどおりにやると。当然そういう考え方で、そう いう理解でよろしいわけですね。 ○ 中垣審査管理課長  相対としてのプレクリニカル、前臨床試験、すなわち動物を中心とした毒性試験をや るというのはそのとおりだろうと思っております。ただ、やるタイミングをどのような 形にするのか。すなわち、医薬品の開発段階に応じて、例えばフェーズIスタディをや る場合には、短期間の反復投与毒性試験と変異原生試験等はやっておきなさいとか、フ ェーズIIスタディをやる場合には反復投与毒性試験をやっておきなさいとかいうような 考え方を日米欧3極のガイドラインとして出しているわけでございますが、それとの絡 みの中で、このマイクロドーズ試験をどのような形で位置づけるのか。また、マイクロ ドーズ試験をやるときに必要な動物試験の範囲をどのような形にするのかということに ついても、アメリカ、ヨーロッパの考え方も参考にしながら、専門家の御検討をまずは お願いしたいと考えているところでございます。 ○ 高久座長  よろしいでしょうか。それでは3−[3]に関連して、資料5の後の方になりますが、I CH−GCPとの対比における我が国のGCP運用上の課題と改善策ということで、9 ページ以降になると思いますが、説明していただけますか。 ○ 山本承認審査等推進室長  資料5の9ページから御説明を申し上げます。9ページは第1回の検討会で配布した 資料でございまして、治験の流れの中で、右側の吹き出しで書いてありますように、治 験の規制と制度としてGCP、あるいは治験薬はGMPというものがございます。さら に下の方に吹き出しで書いてございますように、そのGCPに適合しているということ を承認申請の段階では確認して審査しているところでございます。  このGCPの概要につきましては次の10ページの資料、これも第1回目の配付資料で ございますが、目的は被験者の人権の保護、安全の確保、それと同時に治験の科学的な 質と成績の信頼性の確保というものでございます。このために薬事法に基づいてつくら れている基準でございまして、具体的な内容は2のところにありますように、治験の準 備に関するものとしての業務手順書、あるいは実施計画書、契約、さらには被験者に対 する補償措置といったようなことの規定を定めております。次に、治験の管理に関しま しては、治験薬の管理・交付、あるいは治験の監査、治験の中止といったようなことに ついて定めております。実施に関しましては、治験審査委員会、これはIRBと略して おりますが、それの設置、あるいは被験者の同意、インフォームドコンセント等につい ての規定をしているものでございます。  次のページ、治験薬GMPというものについて、これはGCPの一環といたしまして 定めているものでございます。これは治験薬の品質を保証して被験者の保護をする、あ るいは治験の信頼性を確保する、さらには市販後のものとの同一性を保証して、市販後 に対して治験の結果の公正性を確保するというものでございまして、これについては市 販後の医薬品に係るGMPに準じたような内容となっているものが現状でございます。  次のページにGCPのこれまでの制定経緯につきまして年表の形でまとめております が、医薬品の臨床試験の実施に関しましては1989年、平成元年にまず通知の形で一定の 基準をつくりまして、この運用を開始したものでございます。  一方、このころ、ICHが創設されまして、日米欧で医薬品の規制に関する手順、あ るいは開発の資料の調和を図ろうということで始まったわけでございますが、ICHの 場合におきまして、臨床試験の実施の基準に関する議論はその後、合意が固まりまして、 1996年、平成8年の段階で最終的に日米欧の間で合意がなされました。  これを受けまして、平成8年の改正薬事法の中でGCPの根拠の条文を設け、これに 基づきまして、ICHを受けて、中央薬事審議会で審議がされ、答申され、さらにそれ につきまして我が国でのICH−GCPを実際に施行するためにということでGCPを 公布したものでございます。これが平成9年でございます。  その後、さらに治験に関しまして医師主導ということを平成14年の薬事法の改正で入 れまして、それを受けまして一部の改正を行いました。一昨年、GCPのさらに効率的 な運用が必要ということから、治験のあり方に関する検討会というものを設置いたしま して、ここで具体的にさらに治験を推進するためのGCPの見直しをしたわけでござい ます。その中で医師主導治験の運用改善のための見直し、さらにはそのためのIRBに 関する規定の見直しをやりまして、12ページの右下の方に書いてありますように、医師 主導治験の場合の一定の手順の簡略化、あるいはIRBに関しての規制の一定の緩和と いうものをやったというのが現在の経緯でございます。  次の13ページでございますが、このGCPにつきまして、このようにICHに準拠す る形で制定した経緯ではありますが、実際には我が国で行っているGCPに関しまして、 国際的なICHのものと若干異なって、そのために我が国の治験がやややりにくいので はないかという御指摘がございまして、それを3点、以下にまとめております。  1つには、省令に異なる規定がされているということ、さらには、省令には規定がな いような部分について文章の相違があるという部分でございます。  まず、我が国のGCPの規定とICHの規定の相違点の1番目でございます。治験の 契約に関する規定について、GCP省令では医療機関が契約の主体とならなければいけ ないと規定しておりますが、ICHの場合については、医師または医療機関が契約の主 体となるということになっております。これにつきましては平成8年当時、ICH−G CPを導入するにあたりましての検討を行った場におきましては、治験に関する研究費 の流れなどの透明化を図るという観点から、契約の主体は医療機関にするのが適当であ るということで、そのような規定ぶりにしたところでございます。これに関する検討の ポイントといたしましては、医師個人と企業との間で契約を直接締結するということに ついて、医療機関と医師個人の責任の範囲、透明性の観点からの慎重な検討を行って、 そこに関しての検討が必要ではないかということが考えられるところでございます。  14ページ、次でございますが、もう1点の違いといたしまして、治験審査委員会の設 置に関する規定がございます。我が国のGCP省令におきましては、原則として実施医 療機関ごとに治験審査委員会を置かなければいけないというように規定しております。 これにつきましては見直しのときに、医療機関が小規模な場合、専門的知識を有する者 の確保が困難であるような場合については、中央IRBのような方法で、医療機関ごと に置かなくてもいいというように規定を改正しておりますが、これを例外としつつも、 原則としては実施医療機関ごとに置かなければいけないという規定をしております。I CHにおきましては、このような実施医療機関ごとというような原則については定めて おりません。そういう違いがございます。  これにつきましても、平成8年に導入した当時につきましては、インフォームドコン セントの徹底といったような観点からいきますと、各医療機関ごとに治験審査委員会を つくることが原則であるけれども、将来的には機能の一部または全部を代行する第三者、 あるいは地域別の審査委員会というような考え方もあるということで検討して、医療機 関ごとに設置するということを決定したという経緯がございます。  この検討のポイントといたしましては、実施医療機関ごとにIRBを設置しないで、 医療機関の外のIRBを活用する場合に、被験者保護、そのほか治験の運用上に懸念さ れる事項がないかどうかという点、及び、現行ではGCP省令では実施医療機関が小規 模であることなど、実施医療機関にIRBを設置できない場合に限って院外のIRBの 活用を認めるという限定をしているところでございますが、この限定の必要があるかど うかということについての検討というのがポイントにはなるということでございます。  ICHと我が国の相違の3点目でございますが、IRBにおける意見を聞く場合の審 議依頼の手続に関する規定ぶりの相違でございます。これにつきましては、実施医療機 関の長が聞かなければいけないというのが我が国の規定に対して、ICHでは治験の責 任医師、あるいは治験実施医療機関がIRBから承認を得るというようなことで、ここ も医師が意見を聞く手続の主体になれるのかどうかということについての相違がござい ます。  これにつきましても、ICH−GCPを導入する当時におきましては、治験の契約の 主体というものが医療機関であるということから、その主体である医療機関が意見を聞 くというようなことで手続を定めたところでございます。  これにつきまして検討のポイントといたしましては、治験契約の主体にも関係するこ とでございますが、実施医療機関の長の責任を確保しつつ、治験責任医師がIRBに諮 問手続を行うことを可能とすることについてどうであるか。さらに、医療機関の外のI RBを使う場合についてはどうであるかということについての検討が必要であると考え られますし、さらに治験に関する業務を統括する治験責任医師が実際には治験の内容を 審査委員会に説明する上で最も熟知して適当であるということから、治験責任医師がI RBに意見を聞くということを可能としてはどうかということが検討のポイントでござ います。ただし、この場合につきましては治験の適否の判断を医療機関の長が求めると いうようなことが別途必要となるということが書かれているところでございます。  16ページに移りまして、GCPの運用上についての問題としての相違点として指摘さ れている点でございます。我が国におきましてはGCP省令で規定しているもののほか に、答申の中で整理されたもの、さらには実際の審査の段階における適合性調査のため に必要な文書が幾つか規定されているところでございます。これにつきましては平成16 年の事務連絡で取りまとめをしておりますが、我が国では必須文書と言われるGCPの 関連文書が127種類あるというようになっておりまして、GCP省令に基づかないもの も中にはあるという整理になっております。  一方、ICHのGCPにおきましては58種類が規定されているというところでござい まして、具体的にGCP省令では規定しないような事例といたしましては、IRBの設 置に関する記録、あるいは委員の指名に関する記録、IRBの意見に基づく医療機関の 長の意志決定に関する文書、そういったものがございます。  これらに関しまして、検討のポイントといたしましては、治験依頼者及び治験実施医 療機関で作成・保存すべき文書が多くて負担となっているのではないかという点につき まして、必須文書のさらなる整理が必要ではないかという点がございます。  以上のGCPに関します点につきましては、先ほど年表のところで御紹介いたしまし た治験のあり方検討会に、治験に関するGCPに関する専門家もおられるということか ら、そちらにおきましてさらに詳細に今後検討をしてはどうかということで事務局とし て整理したところでございます。  17ページに移りまして、日本における治験の信頼性調査についての御説明を申し上げ ます。信頼性調査と言いますのは、提出された資料がGCPに従って収集されて作成さ れたものであるかということにつきまして総合機構が調査するというものでございます が、具体的な方法につきましては下に図示してあるとおりでございまして、承認申請の 後に、まず書面を申請企業から総合機構に持ち込んでいただきまして、書面で調査する。 その後、実際に総合機構の職員が製薬企業に立ち入って調査させていただき、さらには 幾つかの医療機関をサンプリングしてGCPの遵守状況についての立ち入った調査をさ せていただいて、これらの調査結果に基づいて資料の適正性を確認して承認審査を進め るというものでございます。  これに関します課題の整理につきまして、18ページでございますが、まず実地調査の タイミングでございます。我が国では承認審査の後で実地調査をするという手順になっ ているところから、実地調査の時点におきまして必ず治験は終了しているということに なっております。米国では治験実施中に査察、実地調査がされるというような運用にな っておりまして、この実地調査を治験実施中に行うことによって、より的確な実施状況 を把握することができるのではないかということ。さらに、被験者保護の観点からの迅 速な対応ということもとり得るのではないかという点で、実地調査のタイミングという のがまず検討の課題として挙げられるところでございます。  2番目に治験実施医療機関の情報の公開について、現在、医薬情報センターのホーム ページにおきまして治験についての公開等をしているところでございますが、ここでは 実施医療機関の名称等については公開しておりません。米国におきましてはより詳細な 情報の公開が、先ほど御紹介があったようになされているところでございます。これに つきましては治験への国民の参加を得る、理解を得るという観点もありまして、治験関 連情報をより充実・強化することが必要ではないかという課題が2番目としてございま す。  次のページでございまして、GCP遵守状況についての情報について、現在は審査報 告書の中で品目ごとに総合的にGCPの遵守状況について総合評価の言及をしておりま すが、個別医療機関の評価については言及しておりません。  米国におきましては、GCP違反を行った治験実施医師に関する情報をインターネッ ト上等で公開しているというようなやり方をとっているところでございます。このよう なことに関しまして、医療機関のGCPの遵守状況に関しまして、例えば希望する医療 機関について個別にGCP適合調査の実施の結果につきましてホームページ上で公開す るといった形での情報提供のあり方は考えられないかという点が課題としてございます。  最後のページでございますが、治験薬GMPに関する課題でございます。この治験薬 GMPというものは治験が第I相から第III相まで段階的に進んでいく段階のそれぞれの 治験に当てはめられるものでございます。これにつきましては表でまとめました真ん中 に書いてありますように、治験薬GMPに関する実際の通知による指導の内容といたし ましては、治験薬の製造管理に関しまして、施設ごとに責任者を置くこと、あるいは基 準書を作成する、指図書も作成して製造記録の保存、出荷の可否の判定、バリデーショ ン実施、構造設備基準等におきまして、ほとんど市販後のGMPと同じような規定ぶり の規定を治験薬についてやっているところでございます。さらにこの規定の仕方につき ましては、I相からIII相までにつきまして、規定ぶりを特に変えていないというところ がございます。  これにつきましての課題といたしましては、治験の段階ごとに治験薬そのものの安全 性の程度や影響の度合いと、GMPにより排除できるリスクの程度といったことを勘案 いたしまして、治験実施全体のリスクの程度を考えてGMP規制のあり方を考えてもよ いのではないかという点がございます。  以上がGCPに関係する問題点に関する資料でございます。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。今、GCPに関連して説明がありましたが、どなた か御質問、御意見、おありでしょうか。 ○ 青木構成員  治験を実施しております産業側からの意見として聞いていただければありがたいので すが、我が国の省令GCPとICH−GCPの比較に3点ございましたが、これはぜひ 規制改革ということで進めていただければありがたいということがございます。治験責 任医師に責任とインセンティブをきちんと付与するということは治験をスムーズに進め る上で非常に大切だろうということ。  IRBはセントラルIRB方式をとっていただかないと、日本の場合には非常に多く の施設で1施設当たりの症例の少ない治験をやらなくてはいけないものですから、たく さんの書類を扱って、しかも施設ごとに違う要求があったりして、その割になかなか患 者の集積ができないという労力的な問題もございまして、IRBについてはきちんとど こかで集中的に目を配っていただくという方向がいいのではなかということがございま す。  もう一つ、信頼性調査の問題がございまして、これはここに述べていらっしゃるとお り、治験実施中に時に応じてやっていただくということが、いろいろな問題に対して対 応が迅速にいくということも含めて結構ではないかと考えております。  これらはすべて「考えるべきである」とか、「検討する」というふうに述べていらっし ゃるのですが、これにつきましては余り時間を置かずに、慎重にやることは必要なので すが、考えて考えて進まないというのは非常に困りますので、できたら結果をできるだ け早く明快にしていただきたいということをお願いしたいと思います。特に治験のあり 方検討会につきましては、これはかなり説明の労力が大きくてなかなか進まないという ような感じを受けておりまして、その辺のところの効率化をお願いしたいと思うわけで あります。 ○ 高久座長  私も全く同感でして、特にIRBが施設によって非常にレベルがばらばらということ は前から問題になっていまして、セントラルIRBをぜひ実施していただきたい。もう 一つ、医師主導治験のとき一番皆さん悲鳴を上げているのは必須文書が多過ぎるという、 これが非常に負担になっているので、せめてICH−GCPの程度に必須文書を減らす ことをぜひやっていただかないと、医師が全部やるわけではないのですが、非常に負担 になっているということは事実です。  ほかにどなたか。よろしいでしょうか。それでは、次にその他ということで、資料6 の「新たな治験活性化5カ年計画の策定について」、これをよろしく御説明をお願いしま す。 ○ 新木研究開発振興課長  それでは資料6「新たな治験活性化5カ年計画の策定について」に基づきまして、次 の治験活性化計画の概要について御説明させていただきます。  「現在」というふうに上の枠で書いてありますが、ここに書いてありますとおり、現 時点で平成15年からの3カ年計画を1年延長いたしまして、全国治験活性化3カ年計画 というのを策定して実施しているところでございます。その背景等については既にこの 会でも説明がありましたので、省略させていただきます。  現在行っております治験活性化3カ年計画は4つの柱からなっております。1つが、 1に書いてあります治験のネットワーク化の推進。これを策定した当時の状況、認識と いたしまして、治験を行う医療機関が少ない、これをネットワーク化して協力関係をつ くった上で進めることが必要ではないかという認識のもとに、大規模治験ネットワーク の構築、これも現在、1,215施設に登録していただいておりますが、これを構築したと ころでございます。また、これを利用いたしまして医師主導治験等のモデル事業が行わ れておりまして、医師主導治験は現在、12件13の薬について採択されておりまして、 既に8件について治験届が提出されております。1件、承認申請になっております。  2番目といたしまして、医療機関の治験実施体制の充実。医療機関で活動する治験に 携わるスタッフ、質の高いスタッフが十分量確保できていないという現状に対しまして、 治験コーディネーター、CRCの養成確保、これは既に5,000人目標に対しまして4,500 人の終了をしているところであります。  3番目、患者の治験参加の支援のための普及啓発。  さらに4といたしまして、企業における治験負担の軽減といたしまして、治験契約に 係る様式の統一化、医薬品医療機器総合機構の相談体制の充実等が行われてきたところ でございます。これらが行われてきたところでありますが、さらに、治験がなかなかそ れでも進まないという課題を踏まえまして、残された課題にどのようなものがあるのか。 また、それを解決するためにはどのような方策が必要なのか。これについて検討するた めに、ことしの6月に次の治験の活性化計画の検討会を設けまして、これまで検討して きているところでございます。  昨年の暮れにパブリックコメントを掲げるための中間取りまとめを行いまして、現在、 国民の皆さんから意見をいただくためのパブリックコメントを実施しているところでご ざいます。今後、年度内にさらにこの委員会を開きまして、年度内にこれを策定し、こ としの4月1日から新たな治験活性化計画を推進していきたいと考えております。  その新しい治験活性化計画の概要でありますが、資料6の1枚目の下に書いてありま すとおり、5つの柱からなっております。これらの5つの柱について具体的な数値目標 をできるだけ掲げながら実施してまいりたいと考えております。  まず、1の治験等の中核病院・拠点医療機関の体制整備であります。先ほど申し上げ ましたとおり、大規模治験ネットワークを構築いたしまして治験の協力体制をつくった のですが、それを中核として引っ張っていくような、そういう医療機関が必要ではない か。治験をどんどん実施できるような拠点病院、またそれらをさらに指導できるような 中核病院、こういうものが必要であるという認識から、次の計画におきまして、この中 核病院・拠点病院を整理したいと考えております。この内容につきましては次のページ でまた御説明をさせていただきたいと思いますので、省かせていただきます。  2といたしまして、治験等を実施する人材の育成と確保であります。研修や業績等に よって医師、CRCのスタッフの質的向上、治験などに係るインセンティブを確保する ということを目的としております。やはり何と言っても治験を実施する人材が必要であ りますが、CRCについては先ほど申し上げましたとおり、4,500人養成したのですが、 そのCRCのさらなる養成、レベルの向上、またそのほかの職種、医師やそのほかであ りますが、そういう人たちの養成や確保をしてまいりたいと思っております。  さらに3番目といたしまして、国民への普及啓発を引き続き進めたいと思っておりま して、患者向けの相談窓口を医療機関に設置する。これをモデル的に中核病院・拠点病 院等に設けるなどによって普及してまいりたいと思っております。  また、治験実施の効率化、企業負担の軽減でありますが、現時点の治験活性化計画で 国立病院様式というのを策定いたしましたが、それでもまだほかの大学の様式、さらに そのほか個別の様式をつくっている医療機関がございます。これらにつきまして、統一 した様式を策定してまいりたいと思っております。また、ITを活用いたしまして、治 験のデータの整理、やりとりをスピードアップ、コスト低減を図れるような仕組みをつ くってまいりたいと思っております。  さらに5番目、規制の適正化、被験者保護といたしまして、GCP省令の見直しは先 ほどのとおりでありますが、そのほか、臨床研究に関する倫理指針、先ほど総合科学技 術会議からも御指摘がありましたが、それについて早速見直しを開始したいと思います。  次の2ページ目をごらんください。拠点病院・中核病院の図で説明をしております。 治験の活性化の目的というところは省かせていただきまして、次のイメージの図をごら んいただけますか。中核病院、拠点病院という図がございますが、全国で現在5カ所の 中核病院を既に今年度から指定しております。それにつきましては左下の細かい字です が、現在、慶応大学病院、国立がんセンター等、5カ所の病院が指定されております。 これをさらに分野等を勘案しまして10カ所程度に来年度ふやすと同時に、新しく拠点病 院の制度を実施したいと思っております。この拠点病院は中核病院と協力し、また、場 合によっては単独でそのほかの病院との協力関係のもとで治験を進められる医療機関で ありまして、この拠点の方は予算上、30カ所の拠点を整備するというふうにしておりま す。  その拠点や中核の概要につきましては、このページの左の方に「候補医療機関(公募)」 と書いておりますが、公募方式によりまして、これら中核拠点として実施し得る能力、 具体的には治験を実施するスタッフの数であるとか、治験や臨床研究の実績であるとか、 そういうことを勘案して基準をこれから策定いたしまして、その基準に基づいて公募の 医療機関から選定していきたいと思っております。  なお、治験というふうに申し上げましたが、この中核は特に治験以外の臨床研究も十 分実施し得るということを念頭に置いて選定し、また運営しているところであります。 さらに、この中核や拠点の医療機関で働くスタッフの養成、どういうふうに養成してい くかということも別途、現在、研究班で検討しているところでございまして、それらを 総合的に運用することによって、治験、臨床研究、これが進む体制を整備してまいりた いと思っております。 ○ 高久座長  どうもありがとうございました。これに関しまして、どなたか御質問、御意見、おあ りでしょうか。 ○ 望月構成員  治験を支援するスタッフの養成ということで、CRCの養成が4,500人、研修が終了 されているという、目標の数字に近い数字を達成されているのはすごいなと思ったので すが、実際に資格を取られた方が、実際に全員が働いているのかどうかとか、定着率が どの程度かとか、そのあたりの情報というのはお持ちですか。 ○ 新木研究開発振興課長  この治験の活性化計画を策定する段階で調査を行っております。それによりますと、 4,500人、調査時点ではもう少し少ないですが、対象人員の6割ぐらいが現在治験等で 働いているという状況であります。これは4割の人がそうでないという状況で、これを 高いと見るか、低いと見るかというのはございますが、定着状況についてはまだ数字が そろっていないと。これからどのぐらい定着していくのか。まだどういうキャリア・パ スを積んでいくのかということはフォローが必要な状況だと思っております。 ○ 望月構成員  ありがとうございます。私も定着率がそれほどよくはないという話をちらっと聞いた ことがあるものですから、CRCの方々の処遇とかも、比較的臨時的な扱いであったり するケースも多いということも聞いておりますし、そのあたりも含めて、本当に支援す る人たちがキャリアも積んだ方々を確保できるような形になっていくように、実質的な ところをきちんと御検討いただく部分も必要かなと思います。 ○ 新木研究開発振興課長  優秀なCRCを十分量確保するということが何と言っても御指摘のとおり必要だと思 っております。医療機関において直接は雇用される人材でありますので、行政が特にと やかく言うというのはなかなか難しいところがございますが、我々の今後設定します治 験の拠点病院、また中核病院におきましては、これらのスタッフを十分量確保すること、 またその雇用形態だとか、雇用の活動状況、これらについてもそのほかの医療機関のモ デルになるような良好な活動状況が維持できるようなことで選んでいきたい、運用して いきたいと思っております。 ○ 青木構成員  非常にいい取り組みであってありがたいと思うのですが、例えば臨床研究機関に1施 設あたり1億円なり、8,000万なりを年間予算として配布していただいて、これはその 年はいいのですが、恒久的な人員の費用になるものですから、5年やったらおしまいと か、そういうことになってしまいますと、我々としても非常に困ってしまいますので、 これはきちんとした恒久化をしていただきたいということがお願いであります。また、 1億円といっても、10人程度の人件費にしかならないということで、本当に臨床センタ ー的なものをこういった拠点病院・中核病院につくっていこうとすると、この数倍は欲 しいなという気がするのですが、もうちょっとこの辺を充実させていくということは今 後お考えなのでしょうか。 ○ 新木研究開発振興課長  予算の事業の話ですので、なかなか限りがある中でどう工面するのかということにな ってまいります。1点、まず後者の方の、増額すべきではないか、もっと多くないと足 りないのではないかという御指摘についてでありますが、確かにそういう御意見も我々 お聞きしております。ただ、限られた予算で始まったところでありますので、これで様 子を見ながら、とりあえずこの予算で5年間行くということで要求しているところであ りますので、この計画の途中、3年程度のところで見直しをしたいと思っておりますが、 その時点での評価をいたしまして、また方針の見直すべきところは見直していきたいと 思っております。  5年たって終わるという期限では困るという御指摘でございますが、確かに優秀な人 材を長期間確保しておくことが必要でありますので、何とかもっと恒常的な予算という ことも考慮すべき検討点だとは思っておりますが、先ほど申し上げましたような予算の 制約等で、これを5年間行いまして、できれば治験なりという形でひとり立ちできるよ うになればありがたいなと思っておりますが、そのことにつきましても、3年程度たっ たところで状況を見まして、状況をお聞きして、中間評価を行って、その後のことにつ いて検討してまいりたいと思っております。 ○ 森田構成員  この5カ年計画の中で、3番目の国民への普及啓発、参加促進という点で考えると、 日本は皆保険でよい医療が諸外国に比べては恐らく提供されている、あるいは国民の風 土などがあり、なかなか治験に参画しにくいといった状況にあります。情報開示につい ては施設側など、いろいろなことについて工夫がされていますが、最初御説明があった 資料3の総合科学技術会議の9ページのちょうど中段あたりに、臨床研究で行う投薬・ 注射等についても健康保険との併用が認められておらず、こういうことで臨床研究が阻 害されているという指摘があると記されています。こういうところの阻害度というのは どのような認識でしょうか。このような仕組みによって、例えば治験が進まないとか、 被験者がなかなか集まらないとか、こういうあたりの感覚はどんなものでしょうか。 ○ 新木研究開発振興課長  治験とその他の臨床研究によって状況が若干異なっているんだと思っております。治 験につきましては保険との併用が認められておりますので、こういう問題についてはな いと思いますが、そのほかの臨床研究、特に保険で認められていない医薬品などを使っ た研究は、そうしますと、混合診療の規定の関係で全体が保険の適用にならないという 問題が生じてまいります。これにつきましては学会等からもこの点についての改善の要 望を受けておりますので、逆に現場ではそれがネックになる事態があるのではないかと 思っております。これにつきましても今後、臨床研究の検討の中であわせて検討いたし まして、保険局等関係部局と、検討していきたいと思っております。 ○ 池田構成員  先ほど、活性化5カ年、次期の計画を拝聴したのですが、国が本当に国を挙げて臨床 研究、臨床治験を活性化しようということは非常にひしひしと感じて、我々としては非 常にいい方向に向かっているなと思うのですが、先ほど、資金のことで話が青木委員か らも出ましたが、国がお金を全部投入して、こういういい拠点形成ができるというふう にはなかなかならないということが事実だと思うんです。実際に総合科学技術会議の報 告書を見ても、これはたしか7ページにあったと思いますが、一番下の方に、臨床研究 支援拠点の整備において、民間との関係に注意を払いつつ、公的研究投資が呼び水とな って民間資金の導入が一層の研究を活性化させていく、こういうような仕組みもいかが かという提言がなされています。私は情報の公開、透明性と利益相反とか、そういう非 常に倫理的な問題も表に出しながら議論して、官が主体となるにしても、民間の力を借 りながら大学が中心になってやっていくというような、そういう産官学の一致した取り 組みをもう少し進めるという方向にいった方がいいと思います。そのときに本当に情報 の公開、透明性、そういう利益相反、倫理的な問題、あるいは被験者の保護と補償、そ ういう問題をクリアしながら進めていったらいいのではないかと思うのですが、その点、 いかがでしょうか。 ○ 新木研究開発振興課長  御指摘のとおり、国の予算も限られておりますし、また、その有効な活用、運用のた めには民間とのさまざまな協力関係を築くことが必要だと思っております。特に、この 総合科学技術会議でも指摘されているように、いろいろな資金の話なども必要ですし、 人的な交流なども必要になってくると思っております。この民間資金をどのように活用 した研究を現場でしていける体制をつくるのか。これは我々の今後の重要な検討課題だ と思っております。  一部、これらのことについて官民の共同研究ということで始まっておりますが、まだ まだその規模は小さいと思っております。幸い、安倍政権のもと、官民共同でイノベー ション25などの政策も始まっておりますので、具体化の中でもそういうものが検討され ていくことになると思います。そういう中で官民、特に民の人的資源、資金的なもの、 こういうものをどういうふうに、活用というと変ですが、一緒にやっていけるのか。こ の共同体制をつくっていく必要があると思っておりますので、今後それを具体化・検討 してまいりたいと思っております。 ○ 青木委員  今、池田先生がおっしゃっていた官民共同ですが、これは非常にいい方向だと思いま す。今、新木課長がおっしゃったように、現在、生活習慣病の戦略的アウトカムスタデ ィのDOITスタディというのがありますが、あれは官の方から始められたものに対し て、民の方もかなりマッチングファンドを出して、相当うまく動いているように思いま す。ただ、ああいうことを見ておりましても、受け入れ側としての医療機関に相当の余 裕がないとできないという気がします。今回のお話をお聞きしておりましても、制度的 とか、いろいろな面で改善は進んでいるのですが、医療機関が余りにも厳しい条件に置 かれています。一般的に臨床研究というのは臨床の片手間でやれるような印象を持って いらっしゃると、これは非常に困ると思うのですが、臨床研究には臨床研究用の余力が お医者さんの方にも要る。それが今のような非常に厳しい状況ですと、そこまで人を割 けないし、病院としてもなかなか対応していただけないのではないかと思います。もう 少し一部の大学病院とか、ナショナルセンターとか、国立病院とか、臨床研究の中核に なるようなところに、そういった人的な余裕というものを持たせるような政策があって も良いのではないかと思います。これは製薬産業が言うべきことではないのかもしれま せんが、我々の方のお願いとしても、そういうふうにしていただきたいということであ ります。  もう一つ、我々が治験をやっているときに感じますのは、日本の場合には非常に患者 の集積度が低い。どこの病院に行っても、ほんの数例しか入らない。それがアメリカな どと非常に違うところでありまして、それは病院そのものの機能の分化というのがなく、 日本の場合にはフリーアクセスという非常にいい原理があるのはいいのですが、都会な んかを見ていましても、非常に多くの病院がほとんどまとまりもなく分散しています。 専門領域というのがどこの病院にもある。  それがヨーロッパの国やアメリカなどですと、例えば高度の医療をやるというところ というのは非常に限られていまして、病院の機能による編成というのが非常にうまくで きており、患者の集積度が非常に高い。そういうことになりますと、治験も非常にやり やすい。生活習慣病のような重篤でない疾患に対する医薬品の場合にはクリニックを使 って治験をやれば非常に早くいくのですが、ちょっと新しい薬、抗がん剤とか、免疫調 整剤とか、そういった高度な体制が要るようなものを開発しようと思うと、どうしても 大きな病院にお願いしなくてはいけない。そういうところでの患者集積度が非常に低い というのが我々の方から拝見していて気になります。この辺のところは我々が口を出す ことではないのかもしれませんが、日本の医療体制という中でもう一遍考えていただか ないと、臨床研究の方にもかなり影響があるように思います。 ○ 高久座長  全く同感でして、ここでその問題を切り出すと非常に大きな問題になりますが、きの う日本病院会の新年の理事会とパーティがあったときの話でも、今の日本の病院の医療 そのものがかなり危機的な状況にあるということはすべての理事の方々の認識でして、 その中で臨床研究をやる余裕がだんだんなくなってきている。臨床研究だけではなくて、 従来、臨床で研究をしている中にだんだん研究自体に興味を持って、それから基礎研究 に行く人が随分多かったのですが、そのプールが減っているものですから、基礎研究に 行く人がもっと減っているという事で、日本全体の医学研究全体でかなり危機的な状況 が起こっているというのが、大学関係者の認識です。ほかにどなたか。よろしいでしょ うか。  それでは、事務局から連絡事項がありますか。 ○ 山本承認審査等推進室長  次回の日程でございますが、次回は2月22日木曜日の午後4時からを予定しており ます。場所は未定でございますが、追って御連絡いたします。 ○ 高久座長  次回が2月22日の木曜日ということですが、2時から4時までということで、御予 定いただければと思います。  それでは、これで第3回の検討会を終了したいと思います。どうもありがとうござい ました。                                   (了) 照会先 厚生労働省承認審査等推進室                         03−5253−1111 26