06/12/27 第19回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 第19回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 1 日 時  平成18年12月27日(水)11:00〜11:25 2 場 所  厚生労働省専用第22会議室 3 出席者 【委員】 公益委員   今野部会長、石岡委員、勝委員、武石委員、田島委員、 中窪委員 労働者側委員  勝尾委員、加藤委員、高石委員、中野委員、横山委員        使用者側委員  池田委員、川本委員、杉山委員、原川委員、前田委員 【事務局】厚生労働省   青木労働基準局長、青木勤労者生活部長、               熊谷総務課長、前田勤労者生活課長、               藤井主任中央賃金指導官、吉田副主任中央賃金指導官、               吉田勤労者生活課長補佐 4 議事次第  (1)今後の最低賃金制度の在り方について  (2)その他 5 議事内容 ○今野部会長  それではただ今から、第19回最低賃金部会を開催いたします。本日の出席状況ですが、 高橋委員と竹口委員が御欠席です。  議題に入る前に昨日の日経新聞の記事について一言申し上げたいと思います。部会で 検討している段階にも関わらず、あのような記事が出たということについて、大変遺憾 に思っております。これについて事務局から説明をいただければと思います。 ○前田勤労者生活課長  昨日、日経の一面で「最低賃金制度見直し、生活保護との逆転解消」という見出しで 記事が出ております。今まさに審議会で御議論をいただいている中でこのような記事が 出まして、委員の皆様には大変御迷惑をおかけしましたたことは申し訳ありませんでし た。  12月1日の部会のときにも同じようなことがあったわけですが、いずれにいたしまし ても厚生労働省としてこういう中身で決定したということは全くございませんし、この 記事について、内容については関知しておりません。  生活保護との関係については、前回の部会でお配りした資料2というところで、その 考え方を説明をしておりますが、地方最低賃金審議会において様々な要素を総合的に勘 案するに当たって、その要素の1つとして生計費があり、さらにその生計費の1つの要 素として生活保護があるという趣旨で、いずれにしても地域別最低賃金は地方最低賃金 審議会で様々な要素を総合的に勘案して決定されるということから、生活保護基準から 例えば機械的に算定されるというようなものではないという趣旨と認識しております。 以上です。 ○今野部会長  今、説明がありましたように、前回お配りした資料2のとおりですので、御理解いた だきたくお願い申し上げます。  それでは議題に移ります。前回の部会で労使各側からいただいた御意見を踏まえて、 事務局で部会としての報告案を用意していただいております。まず、事務局から読み上 げていただければと思います。 ○吉田勤労者生活課長補佐  それでは読み上げさせていただきます。  今後の最低賃金制度の在り方について(報告案)。  本部会においては、厚生労働大臣から労働政策審議会への諮問を受け、今後の最低賃 金制度の在り方について、昨年6月16日以降 回にわたり検討を行ってきたところであ る。  この間、産業別最低賃金の在り方については、使用者側から、すべての労働者を対象 とする地域別最低賃金に屋上屋を架すものとして廃止すべきであるといった主張がなさ れる一方、労働者側からは、公正な賃金決定の確保、労使交渉の補完という観点から継 承・発展を図るべきであるといった主張がなされ、また、地域別最低賃金の在り方につ いては、労働者側から、実効ある機能と水準の確保のための有意な制度改善を行うべき であるといった主張がなされる一方、使用者側からは、現行制度のままで安全網として 十分機能しているといった主張をがなされたところである。  このように労使の主張が対立する中、昨年11月18日には、労働市場や賃金制度の変化 も踏まえ、産業別最低賃金を廃止し、基幹的な職種について賃金の下限を定める民事的 なルール(職種別設定賃金)を最低賃金法とは別の法律において措置するとともに、地 域別最低賃金がすべての労働者の賃金の最低限を保障する安全網として十全に機能する よう見直すことを内容とする公益委員試案が提示されたところである。この公益委員試 案については、使用者側からは、労働の対価である地域別最低賃金の決定に際して、国 が社会保障として行う生活保護との整合性を考慮することは疑問であるといった主張が なされる一方、労働者側からは、地域別最低賃金は生活保護を下回らない水準とすべき であることは当然であるといった主張がなされたところである。また、職種別設定賃金 については、その詳細について議論を行ったところ、部会としての合意を得ることがで きなかったところである。さらに、使用者側からは、産業別最低賃金は、今回の見直し によって廃止すべきであるとの主張がなされたところである。  しかしながら、さらに、今後の最低賃金制度の在り方について、関係者による真摯な 審議を重ねた結果、今般、下記のとおりの結論に達したので報告する。  この報告を受けて、厚生労働省において、次期通常国会における最低賃金法の改正を はじめ所要の措置を講ずることが適当である。  記。1 見直しの趣旨。最低賃金制度については、今後とも賃金の低廉な労働者の労 働条件の下支えとして十全に機能するようにすることが必要である。現在の最低賃金法 においては、地域別、産業別など多元的な最低賃金の設定が可能な体系の下で、運用上 すべての都道府県において、地域別最低賃金が整備されているが、就業形態の多様化、 低賃金の労働者層の増大等の中で、地域別最低賃金がすべての労働者の賃金の最低限を 保障する安全網として十全に機能するようにする必要がある。  一方、安全網としての役割は地域別最低賃金が果たすことを前提に、産業別最低賃金 等については、関係労使のイニシアティブにより設定するという観点から、その在り方 を見直す必要がある。  2 基本的考え方。(1)最低賃金制度の第一義的な役割は、すべての労働者につい て賃金の最低限を保障する安全網であり、その役割は地域別最低賃金が果たすべきもの であることから、すべての地域において地域別最低賃金を決定しなければならない旨を 明確にする必要がある。  (2)産業別最低賃金等は、企業内における賃金水準を設定する際の労使の取組みを 補完し、公正な賃金決定にも資する面があることを評価しつつ、安全網とは別の役割を 果たすものとして、民事的なルールに改める必要がある。  (3)社会保障政策との整合性を考慮した政策が必要である。  (4)地域の賃金実態との整合性の確保、派遣労働者の増加等就業形態の多様化への 対応等といった観点からの見直しを行う必要がある。  3 具体的内容。1 地域別最低賃金の在り方について。  (1)必要的設定。国内の各地域ごとに、すべての労働者に適用される地域別最低賃 金を決定しなければならないものとする。  (2)決定基準の見直し。決定基準については、「地域における労働者の生計費及び 賃金並びに通常の事業の賃金支払能力」に改めるものとする。  「地域における労働者の生計費」については、生活保護との整合性も考慮する必要が あることを明確にする。  (3)減額措置の導入。現在適用除外対象者について運用により講じられている減額 措置を、法律に基づくものに改めるものとする。  (4)罰則の強化等。地域別最低賃金の実効性確保の観点から、地域別最低賃金違反 に係る罰金額の上限を労働基準法第24条違反よりも高いものとする。  監督機関に対する申告及び申告に伴う不利益取扱いの禁止に係る規定を創設するとと もに、申告に伴う不利益取扱いの禁止に係る罰則を整備するものとする。  その他の最低賃金法違反(周知義務違反(第19条)、報告の懈怠等(第35条)、臨検 拒否等(第38条第1項))の罰金額の上限を引き上げるものとする。  2 産業別最低賃金等の在り方について。(1)産業別最低賃金。労働者又は使用者 の全部又は一部を代表する者は、一定の事業又は職業について、厚生労働省令で定める ところにより、厚生労働大臣又は都道府県労働局長に対し、最低賃金の決定を申し出る ことができる。  厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、上述の申出があった場合において必要がある と認めるときは、最低賃金審議会の意見を聴いて、一定の事業又は職業について、最低 賃金の決定をすることができる。  一定の事業又は職業について決定された最低賃金については、最低賃金法の罰則の適 用はないものとする。(民事効)。  産業別最低賃金の運用については、これまでの中央最低賃金審議会の答申及び全員協 議会報告を踏襲するものとする。  なお、使用者側の一部から、産業別最低賃金の廃止に向けての議論は継続すべきであ るとの意見があった。  (2)労働協約拡張方式。労働協約拡張方式(最低賃金法第11条)は廃止するものと する。  3 その他。派遣労働者に係る最低賃金は、派遣先の最低賃金を適用するものとする。  最低賃金の表示単位を時間額に一本化し、併せて所定労働時間の特に短い者について の適用除外規定を削除するものとする。  以上でございます。 ○今野部会長  ありがとうございました。それではただ今の報告案について、私の方から若干補足を させていただきます。1頁目の報告書の記というのが一番下にありますが、その前の文 章です。この部会における審議の経過を説明したものでありまして、そこに労使の主要 な主張も取り入れてまとめるということにしております。  次に記以下ですが、12月1日に提示した案を基に作られております。そのうちの3頁 を見ていただきますと、2頁目の一番下に表題がありますが、「地域別最低賃金の在り 方について」という部分でその中の3頁目の(4)の罰則の強化等というところがあり ます。この中の1つ目のポツと3つ目のポツに罰金額の上限という言葉が使われており ます。以前は、罰金額となっていたのですが、表現を正確にするということで、罰金額 の上限というふうに表現を修正させていただきました。  なお、具体的な金額については前回池田委員から御意見がありましたが、その点につ いては法務省とも調整が必要ということですので、現段階ではこのような表現として法 案要綱の段階で引き続き御議論をいただければというふうに考えております。  4頁目を見ていただきますと、ここは「産業別最低賃金等の在り方について」の部分 ですが、上の一番最初のポツのところになお書きがありますが、これが追加をされてい ます。産業別最低賃金の廃止に向けての議論を継続すべきという御意見が、使用者側の 一部からあったということですので、そういう趣旨で今申しましたようになお書きを追 加させていただきました。  あと、前々回の部会で、原川委員から最低賃金の引下げの可能性についての質問があ りましたので、それについて説明をさせていただきます。法律上は最低賃金について 「改正」というふうに規定されておりまして、この「改正」については条文の解釈上は 引上げも引下げも可能性としては含まれるものと考えております。ただ、実態としては、 これまでは引き下げられたことはなかったということです。以上で報告案の補足説明を させていただきました。この報告案について、何か御意見はありますか。 ○加藤委員  前回の第18回部会において労働者側としては一応は、第17回部会で公益委員より提示 されました最低賃金制度の見直し案に関しまして、いくつかの点で課題認識は持ってい るものの、労使の意見の一致を図ることを念頭に取りまとめられた最終的な提案である ことを我々としては重く受け止めて、この内容でもって部会報告の取りまとめを行うこ とを了解すると、こういう旨の見解表明をしたところであります。  この我々の見解との関係で、ただ今説明がありました本部会報告案の4頁目の2の産 業別最低賃金の在り方についての(1)の末尾の追加になったなお書きについてであり ますが、第17回部会で提示された見直し案には記載されていない新たな表記であります。 この意見については労働者側としては納得はしていないということ、異論を持っている ということで表明をしておきたいと思います。本日、本報告が確認をされました以降は、 最低賃金法改正に向けた法案要綱の作成であるとか、法の改正後は、その運用の在り方 についての議論が多分行われることになるのだろうと思いますが、本報告に記載をされ てある趣旨を十分踏まえつつ、その具体化に向けた真摯な審議が粛々と進められること を要望しておきたいと思います。以上です。 ○今野部会長  ありがとうございました。使用者側からはいかがですか。 ○池田委員  いろいろと御意見を申し上げさせていただきました。今回も商工会議所としてまたい ろいろと検討をさせていただきたいと思います。ここに書いていただきましたように産 業別最低賃金を廃止すべきということは、いまだに変わっていないわけでありまして、 一度は公益の先生方から廃止案が出たことは大変評価をさせていただきたいと思います が、最終的に産業別最低賃金が残るということは、非常に残念でありまして、屋上屋と いうことに付きましては、大変残念なことになりました。また、生活保護との問題も同 様であります。  ご存知のように、日本の企業の99.7%が中小企業であるということと、全労働者の71 %がやはり中小企業であります。昨日の新聞紙上でありますように、産業別最低賃金は すべて中小企業にも影響があるわけであります。同時に今回は、昨日の新聞を見まして も最低賃金が上がるのかなという心配が非常に首都圏では出ております。また、同時に 罰則も強化されるということでありまして、中小企業の経営者にとっては、まさに三重 苦のようなものだと非常に心配をしております。実情をよく考慮していただきたいと今 後とも思っています。以上です。 ○今野部会長  他にございますか、よろしいでしょうか。それでは、今、労使から御意見をいただき ました。最低賃金制度の見直しについては本部会において、昨年の6月から今日まで、 1年半にわたって議論をしてまいりました。この間公益委員としては何度か案を提示さ せていただき、何度か部会としての取りまとめができるように努力をしてきたところで ございます。公労使がそれぞれ完全に満足のいく結論ではないというふうに思いますが、 部会としてなんとか合意ができる案としては、この案しかないというふうに考えており ます。  またこの報告案には、これまでの労使の主要な主張も記述しているところですので、 ぜひとも御理解をいただければというふうに思います。これで本部会としては取りまと めを行い、労働政策審議会から厚生労働大臣に答申することとしたいと思いますので、 よろしゅうございますか。 (異議なし) ○今野部会長  ありがとうございました。  それでは形式的には、本部会から労働条件分科会へ報告し、更に労働条件分科会から 労働政策審議会へ報告、そして労働政策審議会から厚生労働大臣へ答申がなされるとい うことになります。その案文を事務局から配布していただきます。 (報告・答申案文配布) ○今野部会長  ご覧いただきましたでしょうか。報告・答申の案文については、今お配りいたしまし た文章のとおりにしたいというふうに考えております。よろしいでしょうか。 (異議なし) ○今野部会長  これより厚生労働大臣に答申をさせていただきたいと思います。委員の皆様には、非 常に長期間にわたって精力的な御議論をいただきまして大変感謝申し上げます。  それでは審議会の会長に代わって答申を手交させていただきます。 (部会長から局長に答申手交) ○今野部会長  それでは労働基準局長から御挨拶があります。 ○青木労働基準局長  ただ今、今後の最低賃金制度の在り方について答申をいただきました。大臣にも報告 をさせていただきたいと思います。この最低賃金制度の見直しにつきましては、昨年6 月から1年半にわたりまして、この部会において大変熱心に御議論をいただきました。 19回にわたる御審議をいただきまして、取りまとめをいただきまして大変ありがとうご ざいます。委員の皆様方には、大変お世話になりありがとうございました。  この最低賃金法の改正は、昭和43年以来の抜本的な改正ということになるわけでござ います。厚生労働省といたしましては、この答申を踏まえまして、最低賃金法の改正案 を作成いたしまして、次期通常国会に提出したいと考えております。年が明けてから、 この部会におきまして法案要綱を御審議いただきたいというふうに思っておりますので、 また引き続きどうぞよろしくお願いします。大変ありがとうございました。 ○今野部会長  それでは事務局においては、本日の答申に基づいて、法案作成作業を進めていただき、 次回の部会では法案要綱について審議をしたいというふうに思います。  事務局から今後のスケジュールについて、説明をお願いします。 ○前田勤労者生活課長  最低賃金法につきましては、予算非関連法案ですので、3月上旬に国会に提出を予定 しております。そのため1月下旬にこの部会において法案要綱を諮問させていただきま して、2月に答申をいただければと考えております。具体的な日程につきましては、改 めて調整をさせていただいた上で、御連絡をさせていただきます。 ○今野部会長  それでは本日の会議は、これで終了させていただきます。本日の議事録の署名ですが、 勝尾委員と川本委員にお願いをいたします。それでは終わります。ありがとうございま した。 【本件お問い合わせ先】    厚生労働省労働基準局勤労者生活部    勤労者生活課最低賃金係    電話:03−5253−1111            (内線5532)