06/12/27 労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 第34回議事録 第34回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 1 日時 平成18年12月27日(水)10:00〜12:00 2 場所 厚生労働省13階 職業安定局第1会議室 3 出席者     委員 公益代表  :大沢委員、諏訪委員、中窪委員、林委員        雇用主代表 :中島委員、原川委員、輪島委員        労働者代表 :栗田委員、豊島委員、長谷川委員、三木委員、古川委員    事務局 高橋職業安定局長、鳥生職業安定局次長、生田総務課長、        宮川雇用保険課長、田中雇用保険課課長補佐、戸ヶ崎雇用保険課課長補佐、        金田雇用保険課課長補佐、長良雇用保険課課長補佐 4 議題 雇用保険制度の見直しについて 5 議事 ○諏訪部会長 皆様、おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから、第 34回雇用保険部会を開会します。本日の出欠状況です。中馬委員、相川委員、塩野委員 がご欠席です。  議事に移ります。本日の議題は、雇用保険制度の見直しについてです。ご案内のとお り、本日は取りまとめに向け、事務局で前回の雇用保険部会でのご議論を踏まえ、部会 の報告書案を作成して、お手元に配付しています。これを巡ってご議論をいただこうと 思います。まず、事務局からご説明ください。 ○田中雇用保険課課長補佐 おはようございます。お手元の資料に基づいてご説明しま す。資料1、資料2を配付していますが、資料1と資料2の違いは、資料2は、前回11 月30日の素案からの変更点を明記しています。今回は資料2を用いて、素案からの変更 点についてご説明いたします。  資料2をご覧ください。下線部、見え消しの部分については、11月30日にお示しした 素案からの変更点、修正点です。2頁目の途中までは変更点はありません。3頁も変更 点はありません。4頁の「失業等給付」です。失業等給付については、基本手当につい ては修正点はありません。(2)の特例一時金ですが、上から4行目の「現在の」とい うのは、ワープロミスでしたので消しています。  それから3行下に追加をしています。「関係省庁や関係自治体等とも連携しつつ、積 雪寒冷地域等の雇用対策を推進すべきである」と修正しています。  それから追加をしているのは、その下のなお書きです。「なお、労働者代表委員より、 給付水準を維持すべきであるとの意見があった」ということです。教育訓練給付につい ては、特に修正をしていません。  (4)の育児・介護休業給付です。前段の6行を新たに追加しています。「少子化対 策は我が国の喫緊の課題であるが、育児休業給付は、制度創設以来、育児休業の取得を 促進する重要な施策として位置づけられていることから、一般求職者給付(基本手当) との均衡に配慮しつつ、暫定的に、給付率を休業前賃金の50%の水準に引き上げ、雇用 保険制度としての最大限の対応を図ることはやむを得ないものと考える。ただし、育児 休業期間の算定基礎期間への不算入といった被保険者期間に係る調整規定を設けるべき である」。このように6行ほど追加しています。「また」以下については、前回お示し したものと同じです。  「雇用保険三事業」のところは特に修正していません。  6頁の「財政運営」のところです。総論は素案のままです。(2)の国庫負担ですが、 前回お示したときに、以下はペンディングとなっていたところを埋めています。読み上 げますと、「ただし、行政改革推進法の趣旨を踏まえ、かつ」というところからが、挿 入した部分です。「かつ、現在の雇用保険財政の状況や従前実施した国庫負担率の縮減 方法等にかんがみ、雇用保険制度の安定的運営を確保できることを前提に、以下のよう な措置を執ることもやむを得ないものと考える」ということで、挿入しています。ここ でいう「従前実施した国庫負担率の縮減方法」というのは、平成4年度から平成12年度 まで行いましたが、本来の国庫負担率に、90%であるとか80%あるいは56%の縮減率を 掛けるという方法です。  「以下のような措置」というところですが、2つあります。[1]として、高年齢雇用継 続給付に係る国庫負担の廃止です。「高年齢雇用継続給付は、原則として平成24年度ま での措置とし、激変を避ける観点から、その後段階的に廃止すべきものとされ」。これ は隣の頁ですが、第3の「今後の課題」に書かれている内容をそのまま書いています。 「本来の趣旨が薄れたことなどを踏まえ、国庫負担を行わないこととする」。ここまで が[1]です。[2]として、「当分の間、国庫負担を本来の負担額の55%に引き下げることと する」ということです。ちなみに、この国庫負担の見直しによって、来年度予算で、制 度的な対応としては、1,800億円の減になっています。  (3)の保険料率です。いちばん下の段を修正しています。「毎年、前年決算の結果 を勘案の上、必要に応じ、翌年度の保険料率にその状況や雇用・失業情勢等を適切に反 映させるようにすべきである」というところを、「反映させること等により、弾力条項 の適切な運用を図るべきである」と修正しています。  「さらに」ということで追加をしていますが、「さらに、当該弾力条項は平成19年度 から4/1000引き下げる形で発動すべきである」と追加しています。  最後に「今後の課題」というところですが、[4]です。これについては「失業認定等基 本手当に係る制度の運用」に「育児休業給付等その他の給付制度の運用については」と いうことで付け加えています。  [5]ですが、最後の「また」以下に付け加えています。「また、改正高年齢者雇用安定 法の的確な施行に努める必要がある」ということです。  [6]も追加で、「育児休業給付については、雇用保険部会審議経緯(平成17年1月14日、 第29回労働政策審議会職業安定分科会配付資料)に留意すること」ということですが、 この資料については、資料1の39頁に掲げています。いちばん最後の頁で、1月14日付 で雇用保険部会の審議経緯ということです。これは育児・介護休業法等の一部を改正す る法律案の施行に伴って、雇用保険法施行規則の改正をする際に議論をした内容ですが、 この中で、当部会としては、「育児休業期間中の所得保障の在り方について、雇用保険 制度以外の制度で対応することも含め、関係部局において検討することが適当であると いうことで意見の一致をみた」と記載されています。この内容です。  戻って[7]です。雇用保険三事業のところに書いてあったものを再掲という形で追加し ています。資料の説明は以上です。 ○諏訪部会長 ただいまの説明にあった雇用保険制度の見直しについての案について、 ご質問、ご意見がありましたらお願いします。 ○古川委員 4頁の育児・介護休業給付のところですが、40%から50%に引き上げると いうことですが、これはどのように引き上げるということなのでしょうか。  それから、育児休業期間を算定基礎期間への不算入というのもあるし、「調整を設け る」と書いてありますが、具体的にどのようなことをするのかがわかりません。少子化 対策とするなら、どうしてこのような措置を設けるのかと思います。  これは私の思いですが、算定基礎期間というのは、雇用保険の勤続年数のようなもの です。それから育児休業期間を引かれるということは、育児休業期間というのは、いろ いろな制度の中で期間に算入すべきとなっています。ここで算入しないとなると、いろ いろな場面で問題が起こってくるのではないかという心配があります。 ○宮川雇用保険課長 2点のご質問がありましたので、お答えします。育児休業制度に ついては、資料1の参考資料として、雇用保険制度の概要を13頁以降に付けていますが、 その18頁の(8)が育児休業給付です。現行の育児休業給付は、2つの内容に分かれて います。1つはイにあるように、休業前賃金の40%を支給という中に、括弧書きで、 30%相当額を休業期間中に支給するということと、残額は育児休業後6カ月間被保険者 として雇用された場合、残り10%をまとめて出すとなっています。それぞれの名前が、 育児休業基本給付金と、育児休業者職場復帰給付金となっていて、2つの制度になって いるわけですが、今回考えている10%の引上げは、後者の育児休業者職場復帰給付金の 10%を20%に引き上げる形で行おうと考えています。これが雇用保険制度の趣旨、目的 を考えた場合、今回の引き上げるに至った経緯を考えた場合に、適切なものと考えた次 第です。  2番目の算定基礎期間の問題ですが、具体的には15頁をご覧ください。これは古川委 員からお話があったように、基本手当の給付額を考える場合に、年齢と被保険者であっ た期間の一種のマトリックスになっているわけですが、被保険者であった期間のとこ ろが算定基礎期間です。  これについて、どうしてかというご意見、ご質問です。今回、雇用保険として最大の 対応を従来からも行ってきたと考えていますが、さらにその中で、ギリギリのところま で出したというところも相俟って、もともと育児休業の算定基礎期間については、いわ ゆるノーワーク・ノーペイの期間で、その点、賃金は支払われないという意味で扱われ ているわけですが、従来は算定基礎期間には算入されていた形ですが、一方で育児休業 給付という形での給付を雇用保険制度の中で支給されていることを勘案し、雇用保険制 度としては算定基礎期間の中から算入しない形で調整する必要が、雇用保険制度として は必要であろうという趣旨で設けようということで、他制度はどうなるかということに ついては、他制度は他制度のさまざまな考え方があろうかと思いますが、あくまでもこ れは雇用保険制度の中での調整と考えているところです。 ○三木委員 関連してですが、いまノーワーク・ノーペイと言われましたが、従来は算 定期間に入れていたのに、なぜ今回外すのかというのが理解できないということを含め て、影響が起きることが考えられます。そういう意味では、算定期間に入れるべきだと 私は考えますし、是非そのような方向を取っていただければという思いは強いです。  あと関連して、「今後の課題」についてですが、ここに「雇用保険部会審議経緯」と いうことで先ほどありましたが、雇用保険制度以外のことについて対応することが部会 で検討されてきたという経過もありますし、そういう意味で関係部局と検討を早急に進 める必要があるのではないかということも、併せて付け加えたいと思っています。  それと育児休業法。10%引き上げるということですが、休業中の所得保障という観点 からすると、休業中の30%を40%に引き上げることにすべきではないかということです。 ○宮川雇用保険課長 先ほど申しましたように、算定基礎期間の問題については、従来 からギリギリのところまで雇用保険として対応してきて、そのギリギリをさらに一歩踏 み出すかは別にしても、ある程度雇用保険制度の中で、最大限の対応として今回行うこ とと相俟って、必要な雇用保険制度の中での公平性を図る意味での最低限の調整は必要 ではないかという観点から、算定基礎期間の調整規定を設ける趣旨で入っていると理解 していますので、今後諮問するに当たっては、その趣旨、目的がかなう範囲で、かつ育 児休業制度そのものには悪影響がないような意味で、諮問案を作成したいと考えている ところです。  審議経緯の話については、平成17年1月14日、この点については分科会にもご報告 させていただきましたし、また関係部局にも、改めてその趣旨を伝えたいと思っており ます。  3番目の30%を40%に引き上げるところに対しての考え方ですが、今回、雇用保険 として、従来から引上げについてはいろいろなご意見があったところを踏まえつつ、雇 用保険制度として最大限の対応をするという趣旨から踏まえると、雇用保険は雇用の継 続のための制度であるという観点から考えた場合、10%引き上げるとすれば、雇用の継 続の部分をより評価した育児休業給付の職場復帰金のほうを引き上げるべきだろうと考 えているところです。以上です。 ○古川委員 育児休業をしているときの雇用の継続を考えるということで、これは実際 に子どもを育てながら働いている人からの意見があるのですが、休んでいる期間の保障 がありますが、休まないで短時間勤務で対応している人も賃金を引かれているわけです。 そういう人たちに対する対応はないのかという意見をよく聞きます。今後、そういうこ とも検討していただけたらと思います。 ○宮川雇用保険課長 今回、育児休業給付そのものについて、こういう形で引上げをさ せていただこうと思っていますが、短時間の問題については、今回併せて、現在予算措 置で行おうとしていた、育児休業給付に事業主が経済的支援を上乗せするというような ものに一定の助成措置を設けようという形で、来年からの事業化を考えているわけです が、それに併せて、短時間で働く形での場合の経済的支援も、その中に取り込んでいこ うと検討しておりまして、今回の予算の中にそれを入れたところですので、そういう面 でご意見の趣旨を踏まえた形での適切な内容にしていきたいと思っております。 ○長谷川委員 育児休業期間の算定基礎期間の不算入というのは、いま古川委員と三木 委員から意見が出されていたのですが、従来のものと異なる取扱いを行うときには、そ れがものすごく慎重に行われなければいけないし、今回、例えば育児休業給付を40%か ら50%に引き上げたというのは、ある意味では子育てに対する支援を行う形の1つだっ たと思うのです。  したがって、いまあるものを変えるときというのは、慎重に行うことが必要だし、他 の制度も見習いながら調整することも、ここの扱いについて、今日出てきたものですか ら、なかなか議論をする期間もなかったのですが、私どもの意見がきっちりと反映され るようにしていただきたいと思います。 ○豊島委員 いくつかあるのですが、質問2つと、意見が1つ、今後の課題については 感想めいた話ですが、発言させていただきます。  2つの質問というのは、先ほど来、意見も出ている4頁の育児・介護休業給付のとこ ろの下から2行目に「暫定的に、給付率を云々」というのがありまして、「暫定的」と いうのがあります。6頁で、これもかねてから議論になったところですが、(3)の上 の[2]「当分の間、国庫負担を本来の負担額の55%に引き下げることとする」とあります。 根本的な意見は別として「当分の間」というところと、4頁の「暫定的」というところ について、少しコメントあるいは解説をいただければと。いまの段階で、事務局として の見通し、考え方があれば紹介していただけないかというのが1つです。  意見は、これは赤文字のところで、4頁の特例一時金の問題で、「これに関連して」 という行で、「関係省庁や関係自治体等とも連携しつつ、積雪寒冷地等の地域雇用対策 を推進すべきである」ということを加えていただいて、このことについては、私どもの 意見を反映していただいたと考えています。ただ、その最後の行に加わっているように、 「なお、労働者代表委員より、給付水準を維持すべきであるとの意見があった」となっ ていますが、これに関連して、以降の2行がイコールというか、この削減分と対応して いるわけではなくて、将来の目標ですから、これについては当該の仲間の皆さんのこと を考えると、これではいけないということを強く思っていますので、意見として申し述 べたいと思います。  それから、今後の課題についてですが、これはいままでの議論を前提にしない話なの ですが、この財政状況とか失業者の生活保障とか、そういう意味での狭い観点、狭い概 念を越えたところで、私は雇用保険の支給水準の改善を通して、今後の課題の[3]にかか わる部分で、水準の問題は何回か発言させていただきましたが、この[3]の前提を疑うよ うな発言なのですが、雇用保険の支給水準の改善を通して、国民経済を疲弊ではなくて、 発展に導くべきである。国民福祉の充実に向けて一石を投ずべきであるというのが、私 の結論です。  いま、いろいろとキーワードは言われていますが、雇用の流動化とか、再チャレンジ とか言われていますが、大手企業から中小企業へ中小企業から大手企業へという労働力 移動、人材移動、このことは促進するものであると考える理由があるからです。  いま、格差社会とか、少子化の危機とか論じられていますし、特にこのところ深刻な 議論も言われています。私などが見ていると、トップ企業、大手企業の働きすぎと、相 対的な高賃金があって、逆に中小の皆さんは、発注単価の日常的な切下げ、あるいは企 業の利益率の低下があるといろいろ言われています。それが圧迫して低賃金の構造にな っているということです。  私は失業保険の支給水準の改善、ショッキングな話に聞こえた方もおられると思いま すが、これは労働者と企業の力関係とか、大手と中小の力関係をよりいい意味で平等に することにもつながるし、賃金の平準化にもつながるし、同一労働同一賃金にもつなが りますし、そういうことを労働者の立場からということを越えても考えているところで もあります。  先ほど発注単価の話もしましたが、民間から民間に発注する場合は11%と少し圧縮さ れているそうです。官から民に発注する発注のレベルは23%ぐらい、この5年ぐらいで 下がっているそうです。官が民業を圧迫しているというのは、このようなところに妙な 形で数字が表われている感じがしたのですが、まさに構造改革をいうなら、そのことが 中心的な課題になるだろうということです。  なぜこのようなことを申し上げるかというと、この間日経新聞を見ていましたら、 「北欧の挑戦」という特集が組んでありまして、年間の労働者の離職率が3割という国 で、一生のうちに6回仕事を変わる。それで、経済成長を4%、3.何パーセントにつな がっていることがあります。競争、成長、このキーワードで、ほとんど一世代にわたっ て続いてきていますし、これからまた一世代が続くのであれば、本当に疲弊してしまう という危機感がありますので、今後の課題で丼を引っ繰り返すような話になるかもしれ ませんが、直接的な手当は、いろいろとその他の施策でも厚労省を中心にやられており ますが、外堀というか、環境、短期的なものの見方ではなくて、少し長期的に見たとき に、これは労使ともに豊かなプラスの方向をもたらすのではないかと、私はいまの段階 では強く確信していて、このことを今後の課題に据えていただいて、最後のことは事務 局に言っていることではなくて、見識ある皆さんに是非考えていただいて、お知恵をい ただきたいと思います。 ○宮川雇用保険課長 質問についてお答えいたします。まず、育児休業給付については 暫定的にという意味ですが、4頁に書いてありますように、少子化対策は我が国の喫緊 の課題であるということで、これに対応するという趣旨から暫定措置とさせていただき ますが、その期間については、現在少子化対策として、子ども・子育て応援プランが、 平成21年度までの期間となっているところを踏まえて、平成22年3月31日までの措置と いう形で、暫定的措置を考えているところです。  国庫負担ですが、当分の間の55%引き下げることですが、従前実施した平成4年度か ら平成12年度に行われたときも、当分の間の措置ということでやらせていただいたこと を踏まえて、今回、当分の間引き下げるという形で、ご提示させていただきますが、こ の期間については、国庫の財政状況と、雇用保険の財政状況、それから雇用失業情勢な どを総合的に勘案して判断すべきものという形で、当分の間とさせていただくと考えて いるところです。質問に対しての回答は以上です。 ○栗田委員 国庫負担の関係については、この間に議論をしてきて、国が全廃をするこ となく、国の責任として雇用対策は責任があるのだということを、(2)の中に入れて いただいたことは評価したいと思っております。  雇用保険料率のことなのですが、懸念されるのは1,000分の4という上限について弾 力条項が発動することがあることからすると、いまの保険料率からすると、1,000分の 2までは引き上がることが想定されるわけですが、修文された赤文字で「弾力条項の適 切な運用を図る」としていただいたわけですが、適切な運用ということは、具体的には どういう状況になって、どうなるのかが少し見えるような形でお答えいただきたい部分 が1つです。  それから、先ほど豊島委員がおっしゃられた給付水準の見直しの今後の課題の中の[3] の中で、今回の改定についても、本来必要とする方に痛みが伴ったわけです。短時間に ついても、特例一時金についても、痛みが伴っているわけです。本来のセーフティネッ ト機能が、この雇用保険の中で十分になされているのかの議論が不足していたのではな いかと思っていまして、平成12年改正と、平成15年改正というのは、危機的な状態だ ったというのは承知しているわけで、かなり給付水準もこのときに下がったということ で、[3]の中の「平成15年改正の効果をさらに見極めるべきである」という、その「効 果」というのが何を指しているのかという部分です。  要は財政面の効果だけをここで今後見ていくのか、果たしてセーフティネット機能が 十分にされているのかどうかということを見極めるべきではないのかと思っていまして、 ここの部分を少し言葉でいただければありがたいと思っています。 ○宮川雇用保険課長 2点についてお答えさせていただきます。まず、「弾力条項の適 切な運用を図るべきである」という趣旨ですが、前回の議論等も踏まえて、このように 修正させていただいた趣旨は、今回の改正によって、1,000分の16を中心として、弾力 条項を発動することによって1,000分の20まで引き上げることができることになるわけ ですが、ただ弾力条項を発動するためには、当然のことながら厚生労働大臣は法律の手 続きに従って行わなければなりません。法律の中には、引上げの必要性を勘案すること が第一点にあります。それは手続き的な面ですが、労働政策審議会、具体的には職業安 定分科会にお諮りし、意見を聞くという手続きを取らなければなりません。こういう内 容、必要性。内容と形式、手続きの両面にわたって、適切な運用を諮るべきだという意 味の文言であると理解しているところです。  2番目の今後の課題の[3]の「平成15年改正の効果」という意味ですが、この「効果」 という文言は、当然のことながら、当時の早期再就職の促進等の観点から抜本的な適正 化を行ったという内容でした。この効果、さまざまな効果があります。財政的な面もあ りますし、実質的に給付がどうなったかという効果も議論の対象になろうと思っており ます。  今回の改正、平成15年改正から、3年の間で今回の改正に至ったわけですが、そうい う意味で、早期再就職の促進の観点、その他の観点も含めて、平成15年改正あるいは平 成12年改正がなされたわけですので、全体として、総合的にさまざまな角度から見極め るべきであろうという趣旨に理解しています。 ○中島委員 育児休業給付に関係して、少子化対策と関係があるのですが、もともと少 子化対策などについては、本来税金でやるべきだというのが私たちの主張です。この育 児休業期間中の所得保障の在り方については、雇用保険制度以外の制度と対応すること も含め、今後検討していただくという雇用保険部会の審議経過を取り上げていただいて いるのは、当然のことですが、これは育児休業給付だけではなくて、児童手当とか、少 子化対策は本来国の政策として、現行のように雇用保険に依存したり、年金に依存した り、しかも専ら事業主負担に頼る部分などはもってのほかでありまして、そういう観点 から、税制改正全体の中できちんと見直していただく方向が、この間の税制改正大綱の 中にも出ていましたので、そうした方向で是非検討していただく必要があると思います。  こうした中で、今回の育児休業給付を40%を50%に引き上げる代わりに、休業期間を 不算入となったわけでありますが、給付率が50%ということは、基本手当は60歳未満で すと、50%から80%までありますが、実質50%というのは基本手当を受けているのと一 緒なわけです。つまり、給付を受けているということになるわけですから、そういう期 間を不算入にするというのは、ごく自然だと思います。  しかも、言葉が適当ではありませんが、妊娠、出産というのは、ある程度自己都合的 な退職に近いのではないかと思いまして、本来の趣旨の会社の倒産などで離職するのと は、どちらかと言えばですが、子どもを産みたいと思って計画して出産されるのでしょ うから、そういう意味でも、本来なら自己都合だと3カ月間は給付が出ません。こうし た点も比較できるのではないかと思います。  全体として雇用保険財政そのものは極力、本来の失業した方等の給付に使うのは当然 ですが、そういう趣旨で、バランスよく財政を保っていただくという必要からも、不算 入は自然ではないかと考えます。 ○輪島委員 中島委員がおっしゃったことと大体同じですが、資料1の14頁を見ると、 ここのロの基本手当の給付率が50%になっています。そこが私どもとしても、育児休業 給付とは言え、報告書にあるように、「少子化対策は我が国の喫緊の課題である」とい うことは十分に理解するわけですが、雇用保険制度の中の育児休業給付という制度で、 基本手当の給付率50%と並ぶところまできたということについてのバランスについてい うと、大きな課題があるのではないかと思うわけです。  そういった観点で、多少の調整という意味合いでの、算定基礎期間への不算入という ことも、ある程度やむを得ないのではないかと思っているところです。  それから、先ほど別途議論がありましたが、育児休業の中の短時間勤務、18頁の育児 休業給付についての被保険者期間の算定、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上あ る月はいいということのわけですが、裏読みをすれば10日未満は働けることになるわけ ですが、例えば2時間とか、3時間働いていても、なかなか難しかったり、最近は在宅 勤務の形もあるわけですので、そういうところでいうと、ここの運用は少しきつく見え るのではないか、就労の実態からすると、もう少し広く見ていくことも含めて、今後の 課題があるのではないかと思っています。少子化対策の中でやむを得ない面はあるもの の、もう少し課題も残ったと私どもとしても考えているということです。  もう1つ、6頁の[1]の高年齢雇用継続給付の[1]ですが、「本来の趣旨が薄れた」とい う意味合いがわからないのですが、この点を教えていただきたいと思います。 ○原川委員 7頁の今後の課題の[6]ですが、ここに「雇用保険部会審議経過に留意する こと」と書いてありますが、留意するという意味ですが、これからどのように具体的に やっていくのかということを教えていただきたいと思います。 ○宮川雇用保険課長 2点ほどご質問がありましたので、お答えさせていただきます。 まず高年齢雇用継続給付のところで、「本来の趣旨が薄れたこと等」ということですが、 雇用継続給付につきましては過去にご説明しましたように、いま国庫負担を行っている ところですが、雇用継続給付、60歳定年制ですので、60歳における相当程度の賃金の 低下といった、雇用の継続が困難となる失業に準じた状態を保険事故とする保険給付で あるという整理をさせていただいて、この状態をそのまま放置すれば、さらに深刻な保 険事故である失業に結び付きかねないという意味で、失業を保険事故とする求職者給付 に準じた国庫負担を行うことが適当である。これは以前にご説明したとおりです。  一方、この法律は雇用継続給付を行った以降、従来努力義務であった60歳から65歳ま での雇用継続措置、これが現在はまだ62歳までという形ですが、改正高年齢者雇用安定 法というものができ、施行され、順次65歳まで上がっていくという状況の中で、失業に 準じた状態を保険事故とする保険給付であるという趣旨が薄れてきたという部分は否め ないのではないかという意味で、「本来の趣旨が薄れたこと等を踏まえ」と書かせてい ただいたところです。  2番目の「留意すること」という意味、内容ですが、これは当然のことながら、審議 会の審議経緯としては、すでに分科会に報告させていただいたとおりです。先ほどの資 料1のいちばん最後に付けた審議経緯のとおりでして、「雇用保険部会における育児休 業期間中の所得保障の在り方について今後を考える際には、雇用保険制度以外の制度に 対応することも含め関係部局において検討することが適当である」という雇用保険部会 での審議経緯を踏まえて、厚生労働省全体としても、関係部局を含めて検討していく際 には、当然のことながら、こういう雇用保険部会におけるご議論、ご意見、審議経緯と いったものを十分に踏まえて行っていくべしという趣旨です。  具体的にどういう段取りでというのは、いまの時点ではありませんが、今後行われる であろうこういう所得保障の在り方についての検討の際には、当然のことながら審議経 緯が留意されるということを、念のためにもう一度、前回それを審議経緯として注意を 喚起したわけですが、そういう注意喚起という意味だとご理解いただきたいと思います。 ○長谷川委員 中島委員がおっしゃるように、子どもを何人産むとか、産む産まないは 全く個人の自由だと思っています。政府だとか、使用者が関与することではなくて、本 人が決めることだと思っています、そこは全く一緒だと思います。  ただ、いま何が起きているかといえば、少子化社会の重大さは何かといったら、労働 力人口が減るということです。我が国が、これからどのように成長、発展していくかと いうときに、重要な要素の中に労働力があるわけです。その労働力が確保できないとい うことが、すごく深刻になってきた。そういう意味では、国を挙げて少子化対策をやり ましょうというのが、我が国の方針だと思うのです。  そのときに、なぜ女性たちは子どもを産まなくなったのだろう、なぜ子どもが少なく なったのかと考えたときに、女性たちも職場進出をして、女性たちが仕事と家庭生活を 両立することを考えると、子どもは産まないとか、1人にするという現象が起きてきた。 一方、主婦たちも、産んでも1人で終わりとなってきた。そういうことに対して、みん なで子どもを大切にして、少子化社会を何とかしましょうというのが、国の施策であり、 国民もそう思っていると思うのです。  そのときに、女の人たちに、結婚しても、子どもが生まれても働き続けてもらうため には、どういう政策が必要なのかということで、産前・産後休暇の問題とか、育児休業 の問題というのは、ある意味では歴史が非常に長いことかかったわけですが、1つずつ 積み上げてここまできたのだと思うのです。だから、私はこれは使用者の皆さんもかな り支出があったわけですから、大変ご努力なさったと思っていますし、そういう意味で は国も努力してきたのだと思うのです。  今回の育児休業のこの問題は、ある意味では給付率を40%から50%に上げることに 伴って、育児休業期間中の期間をどう考えるか、そういうことが発端で今日の議論にな っているのですが、いまの政府の方針は、労働政策の中では、育児休業を使いやすくし よう、特に子どもを産んでいる人たちは大体30代なわけですが、ここは賃金も低いわけ です。賃金も低いし、だからそういうところに対して休業保障などをしなければ問題な のではないかという、いくつかのメニューの中の1つではないかと思うのです。  使用者の方は、これで支出が増えることも非常にご懸念されていると思うのですが、 ただ、そこはお互いに、どうやって労働力を確保するか、少子化社会に歯止めを打つか、 女性が結婚しても、子どもが生まれても働けるような職場環境をつくっていくのかにつ いて、お互いに弱さも持っているし、欠点も持っているのですが、そこを克服していく ことが必要なのではないかと思っています。  財源の問題については、税でやるほうがいいのか、保険でやるほうがいいのかという のは、議論があると思うのです。いま保険でいろいろな制度をやっているのは、保険の ほうがいいと選択したからだと思うのです。保険でやらないとなれば税を上げろという ことになって、そうすると法人税を上げろという話になってくると思うのです。  法人税を上げたほうがいいのか、保険でいったほうがいいのか、いろいろな制度をつ くるときの制度設計のときの根本議論なので、前の育児休業のときのこの審議会の経過 もそういうことだったわけで、これからどうしていくかという、そもそも論の議論は、 全体的にいろいろなところで必要なのではないかと思います。  わかるのですが、ただ、あまり事故だと言われてしまうと、でもやらなければいけな いことも共通認識ですねということについては、私のほうから一言だけは言っておきた いと思います。 ○大沢委員 育児休業の点ですが、これは少子化対策の一貫として5割給付ということ になったわけですが、経営側にとって非常にメリットをもたらすと考えておりまして、 これから女性が経済の中核になって、日本経済の中で活躍していく。しかも、子どもを 育てたことによる経験というのは、生産性に反映されてプラスになるということは、多 くの経営者が最近おっしゃっていることであって、しかも優秀な人材を実際に企業が育 てて、かつその方たちが継続雇用することを国を挙げて、税金も負担された中で、国を 挙げて優秀な人材を育てていくと考えるわけなので、これに対して、経営側が反対、自 己都合の人になぜお金を注ぎ込むのかという議論は、少しおかしいのではないかと思う のです。  これからのサービス経済化の中で、いままで女性が日本経済の発展に果たしてきた役 割というのは非常に大きかったわけで、その女性たちが子どもを産まないという決断を して、独身の間にスキルを蓄積して、それでいろいろな商品開発をしたり、いろいろな アイディアを蓄積して、日本の経済を支えてきたことを考えると、その人たちが子ども を産んでも、さらに企業に対して貢献していくということに意味があると思うのです。 ですから、この育児休業に対して、労使プラス国がサポートしていくことは当然のこと だと私は思っています。  むしろ問題は、これだけやっても辞める女性が多いということで、それについては雇 用保険制度の中で議論すべきことなのか、もう少し広い視野で見る必要があると思って いますが、私の意見としては、この点に関しては特に経営側にメリットをもたらすもの であって、当然だと思っています。  もう1つ私がいちばん心配なのは、先ほど輪島委員もおっしゃいましたが、雇用保険 でカバーされる人に条件が付いていて、例えば週20時間未満働く人とか、期間雇用で1 年未満の雇用の人が漏れている。11月30日に配られた資料で、私は欠席していたのでど のような議論があったのかわからないのですが、平成17年度で、週の労働時間20時間未 満の者が405万人、労働力に占める割合は7.5%です。そして、15歳から24歳の割合が 1.1%、割合にしては少ないのですが57万人という数字があります。  つまり、雇用保険をどう考えるかということですが、セーフティネットと考えて、国 庫負担がここに入っていることを考えると、たとえ少数であっても、ここに含まれない 者たち、しかも若い人たちが57万人というのは、これは短時間だけですが、今後の課題 として考えていかなければいけない、最終的なセーフティネットを持たないままに、こ の人たちが生涯を送ることになるのか、あるいは何らかの対策を整えていくのか、こち らは今後の課題として考えていかなければいけないのではないかと思います。 ○古川委員 意見です。高年齢雇用継続給付ですが、私どもは中小の企業を結構抱えて いて、いま60歳から65歳の雇用について労使で大変な努力をして、苦労しております。 それで、「本来の趣旨が薄れた」という説明が先ほどあったのですが、60歳から65歳の 雇用が、なぜ努力義務が義務になってしまったのかもよく考えていただきたいし、現場 では、努力義務が義務になったからといって、簡単にそれで済まされる問題ではないと いうことをよくご理解いただきたいと思います。 ○中窪委員 別の件なのですが、私の感想を述べたいと思います。今回の改正は、特に 平成12年、平成15年のところで、給付をある意味で再編成というか、失業が予測できた か、できなかったかで給付を大きく変えましたが、それはある意味で雇用保険の制度を 21世紀の労働市場に合わせて再編成するということだったと思うのですが、その意味で、 今回被保険者資格も一本化して、短時間被保険者をなくしたという意味で、私はある一 定の方向にきちんと整理をするという、意味のある改正だと理解しているのです。  ですから、いろいろな形で、一方で子育て支援があり、他方で国の財政の苦しさがあ り、いまは失業率が下がっていいのですが、またこれがどうなるのか、いろいろな不確 定要素があって、さまざまな調整をしていかなければいけないというのは確かなのです が、その中で、今後労働市場の能力というか、機能というか、いろいろな方が失業する 経験が増えていくのは確かですので、そういう中で、ここだけはきちんとやるというこ とを、もう一度ここで確認するというか、セーフティネットとしての役割を、雇用保険 として機能し続けるのだということを是非確認しておきたいというのが、私の個人的な 感想です。 ○諏訪部会長 他にご意見がないようでしたら、いままで非常に長期にわたって皆様に ご議論をいただきました。現段階としては、公労使とも、それぞれの議論をおおむね尽 くしてきたかと思っています。そこで当部会としては、これら皆様が重ねてきた議論が、 一応の方向を打ち出すことができるようになったかと考えますので、次回の職業安定分 科会にその旨を報告したいと考えています。  報告書案ですが、本日皆様にご検討いただいた原案の基本線は、おおむねこれを踏ま えて、細部にわたる部分では、本日いろいろご意見をいただきましたので、その書き振 りについては、私、部会長にご一任いただけたらと考えています。そのような措置でよ ろしゅうございますでしょうか。          (異議なし) ○諏訪部会長 ありがとうございます。それでは文言を修正した報告書を雇用保険部会 の報告書として、職業安定分科会に報告させていただきます。  雇用保険制度の見直しについては、3月来精力的に皆様にご議論をいただきました。 その結果、本日の取りまとめに達することができましたこと大変嬉しく思っています。 委員の皆様には、誠にありがとうございました。事務局から一言お願いします。 ○高橋職業安定局局長 それでは一言御礼を申し上げたいと思います。委員の皆様方に は、去年3月以来、12回にわたりまして、大変ご熱心にご議論をいただいたものでござ いまして、また、ただいま部会長からもありましたように、本日報告として取りまとめ ていただいたわけでありまして、改めて御礼を申し上げる次第でございます。  今回の雇用保険制度の見直しに関しましては、行政改革推進法に規定をされました国 庫負担、並びに雇用保険三事業にかかわる見直し、この他に適用給付など、雇用保険制 度全般にわたりまして、幅広くご議論をいただいたわけでございます。  私どもといたしましても、この報告を踏まえまして、これから必要な関係法律の改正 作業に着手をさせていただきたいと思っておりまして、年明けには改正案要綱を職業安 定分科会に諮問をさせていただく予定としております。また、法律改正にかかわらない 部分につきましても、いただいた報告書を踏まえまして、その具体化を進めてまいりた いと考えておりますので、引き続き皆様方のご指導をよろしくお願い申し上げたいと思 います。それでは本日は誠にありがとうございました。 ○田中雇用保険課課長補佐 次回以降の日程ですが、ただいま局長からも申し上げたと おりですが、1月9日の年明けの職業安定分科会において、雇用保険部会の報告、同日 に雇用保険法等改正法案の要綱を諮問させていただこうと考えています。  部会は1月19日の午前10時から12時ということで、当該諮問案件について議論をする 予定にしています。よろしくお願いいたします。 ○諏訪部会長 以上をもちまして第34回雇用保険部会を終了します。本日の署名委員は、 雇用主代表は中島委員、労働者代表は栗田委員にお願いします。お忙しいところご厄介 をおかけしますが、よろしくお願いします。委員の皆様、お忙しい中ありがとうござい ました。よいお年をお迎えくださいませ。 照会先:厚生労働省職業安定局雇用保険課企画係     電話03−5253−1111     (内線 5763)