06/12/26 労働政策審議会雇用均等分科会 第71回議事録 第71回労働政策審議会雇用均等分科会 議事録 日時:2006年12月26日(火) 14:00〜15:15 場所:厚生労働省専用第21会議室(17階) 出席者:  労側委員:稲垣委員、岡本委員、鴨委員、篠原委員、龍井委員  使側委員:吉川委員、前田委員、松井委員、山崎委員、渡邊委員  公益委員:横溝分科会長、樋口委員、林委員、佐藤委員、奥山委員、今田委員 ○横溝分科会長  ただ今から、第71回労働政策審議会雇用均等分科会を開催いたします。  それでは早速議事に入ります。本日の議題は「今後のパートタイム労働対策について」 です。本日は、最終の取りまとめに向けて議論していただきたいと考えていますので、 皆さまのご協力をよろしくお願いします。  まず、事務局から最終的な報告(案)について、説明をお願いします。 ○高崎短時間・在宅労働課長  お手元の資料No.1を説明したいと思います。まず1枚目、先例に習いまして表紙を付 けています。「本分科会は、標記について、平成18年7月20日以降、平成18年12月 26日までの間に10回にわたり検討を重ねてきたところであるが、今般、その結果を別 紙のとおり取りまとめたので報告する」という案文になっています。  別紙の「今後のパートタイム労働対策について(報告)(案)」については、前回配りま したものに1点だけ変更があります。2ページの「記」の上の「なお」のパラグラフの2 行目です。「適用の問題や、パートタイム労働者以外の非正規労働に関する問題」となっ ていましたが、労働側委員のご指摘があり、また、その場で公益側・使用者側委員から ご了解いただいて「者」を取るということで、「パートタイム労働以外の非正規労働に関 する問題」と改めさせていただいています。他の点について変更はありません。以上で す。 ○横溝分科会長  ただ今、説明がありました報告(案)について、ご意見をいただきたいと思います。  渡邊委員、どうぞ。 ○渡邊委員  報告(案)を私ども商工会議所にて再検討いたしました。さまざまな事由を考慮した結 果、報告(案)の内容で取りまとめをすることは、現段階では了承できません。我々中小 企業の代表として、報告(案)の内容について不明な点を、この場で幾度となく質問し、 公益委員や厚生労働省の事務局からも説明を受けましたけれども、それでも十分に理解 できない部分が数多くあります。審議会に出席してもそうなので、私どもの商工会議所 を通しての中小企業の経営者には、なおさら理解が難しいと思います。十分に理解され ないままにこの規制を強めても、ますます混乱を生ずるだけであると認識しています。 したがって、中小企業の経営者が十分に理解し、対応できるような状況にならない限り、 報告(案)の内容を実施することは、商工会としては反対です。 ○横溝分科会長  他に、何かご意見は。吉川委員、どうぞ。 ○吉川委員  前回も申し上げましたけれど、平成16年度の事業所統計調査によりますと、全国には 572万8,000の事業所がありますけれども、そのうち従業員が10人未満の事業所が 80.8%を占めており、5人未満は61.6%です。そして、現在景気が良いと言われていま すけれども、実態は実感がないというのが、特に中小企業の現実です。こうした大企業 を基準とした制度や仕組みをつくると、結果的に事業所の大部分を占める中小企業や零 細企業が、必ず混乱することは目に見えていますので、現在の段階では、この報告書に 対して反対いたします。  また、この報告書(案)の中で懸念される差別的取り扱いの禁止や、通常の労働者への 転換、職務関連の賃金、教育訓練、事業主の説明責任などがあります。特に、差別的取 り扱いの禁止については、中小企業の集まりである私ども商工会議所で話をしても、や はりどうしたらよいかわからないというような懸念の声が多く寄せられていますので、 そのこともこの席を借りて申し上げたいと思います。以上です。 ○横溝分科会長  山崎委員、どうぞ。 ○山崎委員  この指針の改定については、今までも段階的にいろいろ議論されています。これで、 特に普及・定着している企業は、こういうものを比較的スムースに受け入れていくこと ができるとは思うのですけれども、特に、この同じ土俵に上がれていない企業、言うな らばアンケートにも表れていないような企業が、吉川委員の話にもありましたように、 かなり多いと思うのです。ですから、そういうところはパート業態によっていろいろ対 応が違うのですけれども、かなりの混乱が予想されると思います。ですから、私どもの 団体としても、これらを普及していかなければならないわけですけれども、かなりこれ には時間もかかるし労力も要るということです。そのようなことから、やはり、それら の定着を見てから施行することも必要ではないかと思っています。 ○横溝分科会長  前田委員、どうぞ。 ○前田委員  中小企業ということだけではなく大きい会社でも、やはり前回の指針の改定からまだ 3年程度しか経っていないというところで、本当にこの指針の状況が検証されて新しい 法律になっているのか。それから、元々、賃金の決定や採用に関しては企業の裁量とい うものがあるので、これを一律に法制化するということについては、非常に現場の方で 不安もあるということではないかと思います。 ○横溝分科会長  松井委員、どうぞ。 ○松井委員  今まで使用者側全員が発言した通り、この今回の報告というのは、企業が現実に企業 労使の中でやるべきものについて、非常に強い法的規制があるという認識は変わりませ ん。そういう意味で、強い懸念を示しているということを、ぜひ、公益委員の先生方な らびに労働側委員の方にもご理解賜りたいと思います。  それから、私ども日本経済団体連合会として先週「経営労働政策委員会報告」という ものも公表しています。その中で、パートタイム労働者の処遇について触れています。 そこで申し上げたことは、企業の職場、実情に即して基本的に、将来にわたる活用の仕 方も考慮しながら、能力や期待される役割など企業への貢献度を個別に評価すべきであ るという観点から、法制化、法律規制になじむものではないということを申し上げてい ます。  さらに、今回の案の中には、いわゆる転換促進措置というものが入っています。企業 としては、雇用形態をどのような形で維持、利用していくのか。そして雇用形態の転換 という点については、まず企業がどのような人材をどのような形で活用し採用していく かということは、経営戦略としての一番重要な事項と認識しています。そういう観点か らしますと、これを法的規制で行うことについては、やはりなかなか納得し得るもので はないという理解をしています。  したがって、仮に今後、この報告にありますように、法的整備を行うのならば、先ほ どは中小企業の問題、あるいは大企業においても、という発言がありましたけれども、 すべての企業が無用の混乱を来たすことなく対応できるものであるという前提で、特に 中小企業に対して過度の負担が起きることのないよう十分な周知期間を設けるなど、施 行に当たって十分配慮したもの、そして法律の趣旨内容を十分周知して浸透を図ってい けるような仕組みを設けた形でないと、なかなか私どもとしては納得できないと。その ようにご理解賜りたいと思います。 ○横溝分科会長  では、龍井委員、どうぞ。 ○龍井委員  そういう自主性尊重という現行の法の枠組みというか指針というやり方の下で、残念 ながら雇用の2局化、働き方の格差がここまで広がり、しかもそれが随時指摘させてい ただいたように、格差の固定化の問題や、いわゆる急速な少子化の問題などに結びつい て、結局現状では放置できないという社会的責務がお互いにあるのだという前提で我々 は認識してきました。  その中で、特に前回の改正論議を振り返ると、やはり我々の求めていたような法制定 が見送られて、結果的に指針に落ち着いたということでは、我々の立場からすれば、3 年越しの宿題だったと思っています。そういう意味で今回、指針のすべてではありませ んが、幾つかがきちんと法的な整備として組み込まれた点については率直に評価をした いと思っています。  ただ、今回の措置が大多数のパートタイム労働者に本当に実行性をもって何か変わる のか。あるいはそうしたことが実質的に前進と言えるのかという点では、まだまだ多く の不十分な点があり課題が残っているということについては併せて指摘させていただき たいと思います。以上です。 ○横溝分科会長  他には、よろしいですか。使用者側は、いいですね。  ただ今、使用者側全員、それから労働者側からもご意見をいただきました。そして使 用者側委員において報告(案)は受け入れられないというご意見でした。しかしながら、 本日示した報告(案)は、前回も申し上げましたが、公益委員の方で十分に議論し、取り まとめさせていただいたギリギリの案となっています。また、最終の意見の取りまとめ を行うというのが本日の大きな課題ですので、ここで休憩時間を取り、公益委員の方で 報告(案)の最終的な調整をさせていただきたいと思います。ご了解いただきます。  では、休憩ということで、公益委員だけ別室へ。 (休憩) ○横溝分科会長  全員ご着席してございますので、再開いたします。  しばらく時間をちょうだいいたしまして、公益委員の方でいろいろ議論を重ね、調整 いたしました結果、先ほどの議論をちょうだいいたしまして、報告文の表紙に使用者側 の意見を記入するという形で案を作りましたので、再度提案をさせていただきたいと思 います。では今それをお配りいたします。  それでは事務局から読み上げていただけますか。 ○鈴木均等業務指導室長  それでは読み上げさせていただきます。  「今後のパートタイム労働対策について(報告)」  「本分科会は、標記について、平成18年7月20日以降、平成18年12月26日までの 間に10回にわたり検討を重ねてきたところであるが、今般、その結果を別紙のとおり取 りまとめたので報告する。  なお、使用者側委員からは、次のとおり意見が示された。まず、パートタイム労働者 の処遇については、企業・職場の実情に即し、将来にわたる活用の仕方も考慮しながら、 能力や期待される役割など企業への貢献度を個別に評価すべきものであり、次に、雇用 形態の転換については、人材をどのような雇用形態で採用し、活用するのかという経営 戦略の重要事項として扱うべきものであることから、いずれも法律で一律に規定するこ とは適当でない。したがって、法的整備に当たっては、すべての企業が対応できるもの であることを前提に、特に中小企業に対して過度の負担を強いることとならないよう、 十分な周知期間を設ける等その内容についての理解と浸透を図った上で、実態に即した 施行がなされるべきである」  以上でございます。 ○横溝分科会長  今、読み上げていただきましたが、使用者側委員にお伺いいたします。ただ今お配り し、読み上げていただいた報告文(案)のとおり、使用者側の意見を記載するという形 での報告についてご了解いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○松井委員  まず公益委員の先生方に、このような形で使用者側の気持ちを取りまとめてください ましたことに、まず感謝、御礼を申し上げます。ただ私ども本日の分科会において申し 上げましたように、これまで公益委員の先生方あるいは厚生労働省事務局に対しまして、 いろいろな形での説明を受けたにもかかわらず、まだ十分理解できない点が多々あるこ とについて思い起こしていただければと思います。使用者側としては報告の取りまとめ に際して、法律改正の必要については十分納得できないという多くの会員企業の声があ る中で、今般、公益委員の方々、あるいは事務局のご配慮等も踏まえますと、最終的に は苦渋の決断を下さざるをえなかった点についても最大限の配慮をお願いしたいと思い ます。  とりわけ、私からも度々ご質問をさせていただきましたけれども、法律を改正するの であるならば、特に職務・人材活用の仕組みや運用、並びに職業生活を通じた人材活用 の仕組みや運用と雇用契約期間等の就業実態が同じというものの、本当の意味での境界 線がどこにあるのかということで、このようにキーワードを使って四つにパートタイマ ーをグループ分けしていくときの基準がいかなるものなのかというのが、今後、明確化 されていかなければ、現実に法律改正が行われたとしても、それを守っていくことがで きないという強い気持ちは未だに変わっていません。従いまして、そういう点をできる 限り早く明確化されることのお願いをしたいと思います。  さらに、そういうことを中小企業も含めて、企業の現場に理解させ、浸透させ、そし て受け入れ体制が整っていくようにしていくためには、十分な周知期間、そして施行に 当たっての工夫をぜひお願いをしたいと思います。このような取りまとめをするとしま しても、私どもといたしましては、基本的に公正な処遇を実現するというためには、労 使での取り組みが欠かせないという理解は変わりません。基本的には法律の改正だけで はすまないという理解は変わっておりませんので、先生方並びに労働側委員の方々にも ぜひご理解を賜ればと思う次第です。使用者側としては以上です。 ○横溝分科会長  この報告案を受け入れていただけるということでよろしいですね。 ○松井委員  施行に当たっての工夫とか周知をきちんとやってくださること。そしてそれまでに四 つのグルーピングの違いというものが、企業の現場で理解できるような形での取り組み をぜひお願いしたい。そういうことが大前提です。 ○横溝分科会長  ありがとうございます。それでは労働者側委員のご意見はいかがでしょうか。  はい、岡本委員。 ○岡本委員  今日の使用者の皆さんのご発言を伺っていて、またこういう形で報告に文書として載 ったことに対しては、大変私どもとしては大変残念な思いです。3年前の指針の改正の ときにも、とどまったときも同じようなご意見であったかと思っておりますし、この3 年間の検証期間というものは私たち働く者にとっては決して短いものではなかったとい うことを申し上げたいと思います。その上では労働側もこれまで今回の法改正に当たっ て、十分ではないということを再三申し上げてきました。今日は最後の意見ということ になると思いますので、改めてここでまとめて意見を申し上げたいと思います。正確を 期すためにも、私どもの意見を配付させていただきたいと思うのですが、よろしいでし ょうか。 ○横溝分科会長  何か書面に記載したものを配布したいというご意見ですか。それでは参考資料として 配付していただくという形で配付をしていただきたいと思います。 ○岡本委員  私どもとしては、今後のパートタイム労働対策についての答申に当たっての意見書と いうものを建議に当たって提出をさせていただきたいと思います。委員名については省 かせていただいて、本文のみを読みたいと思います。  「1.報告は、現行法における努力義務規定の義務化、現行指針の法律による努力義務 化・義務化など、現状より法整備が進んだ項目があり、特に、職務や人材活用の仕組み・ 運用、就業実態が正社員と同じパート労働者について差別的取扱いの禁止が明記された ことは評価できる。」  「2.一方、職務や人材活用の仕組み・運用、就業実態等などが正社員と異なる大多 数のパート労働者の賃金については、均衡処遇の努力義務にとどまったほか、賃金につ いて職務関連のものに限定されたこと、福利厚生の項目から慶弔休暇・見舞金が除外さ れたこと、正社員への転換について実効性が不十分であることなど問題点も残されてい る。」  「3.パート労働者の処遇改善には、すべてのパート労働者を対象とした均等待遇の 法制化が不可欠であり、さらには、社会保険制度の適用拡大や有期契約労働者の均等待 遇などの課題についても引き続き具体化していくことを求める。以上」  私どもとしてはこの意見書を建議に当たって提出をしたいとお願いいたします。 ○横溝分科会長  はい。ありがとうございました。それでは雇用均等分科会から労働政策審議会に対す る報告文において、先ほど事務局が読み上げました使用者側の意見を、前紙に記載する。 それから今、岡本委員から述べられた意見も伺ったということで、配付資料は参考資料 としてちょうだいするということにして、そういうこととして報告文を取りまとめた上 で、労働政策審議会令第6条第9項には、本分科会の議決をもって審議会の議決とする ことができるとされておりますので、この報告により労働政策審議会から厚生労働大臣 に建議することとしたいと思いますので、ご承知いただきたいと思います。 ○松井委員  1点確認なのですけども、参考資料というものの位置付けというのはどういうふうに なるのでしょうか。 ○高崎短時間・在宅労働課長  労働側委員が意見を表明されましたので、その表明された意見を、正確を期すという 意味で、それを書面化したものを配り、発言がそういうものであったことを共有すると いう意味で参考資料と理解しております。 ○松井委員  報告書を取りまとめの文章として、添付されているものではないという事だけを確認 したいです。 ○高崎短時間・在宅労働課長  そうであります。 ○横溝分科会長  それでは異議なしということでよろしいですね。  それでは「今後のパートタイム労働対策について」ということで、お手元の報告文と 建議文のとおり、今配布していただいております。  配布していただきましたか。  こういう形で取りまとめることといたしましたので、非常にタイトなスケジュールで 皆さんには大変ご労苦をおかけいたしましたが、パートタイム労働対策について報告が まとまったということで、労働側・使用者側・公益委員の皆さまのご協力に深く感謝を 申し上げます。ありがとうございました。  それでは審議会長に代わって建議を提出したいと思います。厚生労働大臣の代理とし て、大谷雇用均等・児童家庭局長にお渡しいたします。それでは大谷雇用均等・児童家 庭局長より、ごあいさつをちょうだいしたいと思います。 ○大谷雇用均等・児童家庭局長  本分科会におきまして、パートタイム労働対策につきまして、7月より10回にわたり 熱心にご審議いただき、本日報告をとりまとめていただきましたことに、心より感謝を 申し上げます。今後は本日の建議をもとに、早急にパートタイム労働法の改正法案をと りまとめまして、新年早々にも再び本分科会におはかりした上で、次期通常国会に提出 したいと考えております。  また本分科会での各委員の皆さまからいただきましたご意見を十分踏まえまして、今 後のパートタイム労働対策にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。委員の 皆さま方にはこれまでのご協力に改めて御礼申し上げます。どうもありがとうございま した。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。それでは本日の審議はこれまでといたします。なお、この 建議に基づきまして、事務局において法案作成作業を速やかに進めていただきまして、 法案要綱を諮問していただくようよろしくお願いいたします。本日の議事録の署名委員 は、龍井委員と山崎委員にお願いいたします。  それでは今後のスケジュールについて事務局より説明をお願いいたします。 ○香取総務課長  本日はどうもありがとうございました。お話がありましたように、次回は各法案のご 諮問を申し上げるということで日程をいただきたいと思っております。年明けになりま すが現在調整中ですので、決まり次第、改めて日程・日時・場所をご連絡したいと思い ますので、よろしくお願いいたします。 ○横溝分科会長  それでは本日の分科会はこれにて終了いたします。どうもありがとうございました。 ○照会先 厚生労働省雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課(内線7876) 7