06/12/21 労働安全衛生法における定期健康診断に関する検討会 第4回議事録 第4回労働安全衛生法における定期健康診断に関する検討会 日時 平成18年12月21日(木)    14:00〜 場所 三田共用会議所講堂 ○和田座長 定刻になりましたので、ただいまから第4回の労働安全衛生における定期 健康診断等に関する検討会を開きたいと思います。本日はこれまでの検討会での議論を 踏まえて、報告のたたき台について議論したいと思っております。  議論の前に前回の検討会でヒアリングを行いましたが、それについて各団体から陳述 していただきました意見について、おさらいをしておきたいと思いますので、よろしく お願いします。事務局から資料が提出されておりますので、説明していただければと思 います。 ○衛生専門官(一戸) それでは事務局から説明いたします。資料1、「第3回検討会 (ヒアリング)での各団体の意見」と題する資料です。当日、ヒアリングでは日本経済 団体連合会、東京商工会議所、全国中央企業団体中央会、日本労働組合総連合会、全国 労働衛生団体連合会の5者からヒアリングを行っております。それでは、まず日本経済 団体連合会の意見から確認させていただきます。経団連のほうからは生活習慣病の予防 というのは、一義的には医療保険者と労働者が担うべきものであって、今回の検討の是 非も含めて、労働安全衛生法の定期健康診断そのものを、平成元年まで遡って、抜本的 に見直しを行うべきである。また、今回検討するにあたって、時間がなさすぎる。時間 をかけて慎重に検討するべきである。  もう1つは、こうした基礎疾患の予防というのは個人の責任であって、腹囲、喫煙歴 といったコレステロール、尿酸値などに基づいて予見されるリスクは、事業者の人事権 あるいは指揮命令権の範囲内で責任を回避することが極めて難しいものである。  特定健康診査と労働安全衛生法の定期健康診断はその趣旨や目的が異なっている。特 定健康診査というのは特定保健指導を行うため、その階層化を行うためにやるものであ るのに対し、定期健康診断は適正配置等を行うかどうかを判断するためのものであって、 目的が違う。  もう1つは、ここを強くおっしゃられていましたが、企業にとっての安全配慮義務違 反のリスクが拡大する懸念がある。そうした中で項目の拡大については反対であるとい う意見。ここからは少し趣が違うのですが、保健指導といった話で、そこは産業医が特 定保健指導のコミットできる仕組みを整備してほしい。個人情報の取扱いについて明ら かにしてほしい。これはご記憶が違いますが、労災保険の二次健康診断給付については 目的が重複するので見直しを行うべきである。  人材の活用は特定保健指導を担う人材として、必要とされる知能、技能を習得するこ とを前提に看護師、THPで要請された産業保健スタッフを活用すべきだというのが、 経団連の主な意見です。  東京商工会議所の意見ですが、メタボリックシンドロームを予防する目的は、安衛法 の主旨を大きく逸脱している。次に事業者と保険者はそれぞれの法律に基づいて健診を 行っているために、無理に安衛法の定期健康診断の項目にいま問題になっている項目を 追加するべきではない。費用負担も事業主負担ではなくて、当然労使折半の保険料で拠 出すべきだと。これは経団連と同じなのですが、事業所は安全配慮義務を負っている。 労働者の生活習慣を事業者が個人の生活にまで介入して改善させることはできない。こ れは経団連と一緒ですが、時間をかけて慎重に検討するべきである。  あと東商は中小企業が主に会員として入っていますが、保険者である社会保険庁など の保険者については、中小企業の労働者が健康診断を提供しやすい、受けやすい環境を 作るべきである。この中でおっしゃっていたのは、社会保険庁が健診をやるという提携 の医療機関を増やしてほしいという意見です。  次に全国中小企業団体中央会です。1つ目は事業者団体はどれも共通なのですが、事 業者の安全配慮義務の範疇を超えているのではないかという意見が1つ。あとは肥満の 人間、腹囲を測ることによって肥満であるとか、そういった方のある種の雇用差別につ ながるのではないかという懸念もある。ただ、項目の調整がつかない場合については、 労働者側は2度受診しなければいけないというような、負担増となるのは確かで、何ら かの配慮が必要である。  次頁です。健診機関で地域格差もあって、全国どこでも眼底検査など専門的な検査が できるわけではないので、そういったことも配慮するべきである。中小企業の経営の実 態も十分に踏まえて、慎重に考えていただきたいということです。以上が事業者側の意 見です。  次は労働者側の連合の意見です。定期健康診断そのものについては、今回の見直しに 限らず、労働安全衛生的ないろいろな観点、費用対効果等の観点から、定期的に制度の 内容を点検すべきであるという意見。特定健康診査と労働安全衛生法の定期健康診断は、 実施日を一本化して、1回で労働者が受けられるようにしてもらいたい。ここが事業者 団体と大きく違うのですが、労働者の生活習慣に最も大きな影響を与えるのが職場環境 であって、脳・心臓疾患対策のためにも健康診断項目を追加したのは、いままでそのよ うな改定を行ってきているので、今回の検討されている項目についても、一定の合理性 があるのではないかという意見です。  中小企業はさりとていろいろな負担が出てくることもあるので、新制度において国の 新たな支援策が必要ではないか。あとは個人情報の保護について、万全を期していただ きたいというのが労働者側の意見です。  次に健診機関を代表して、全国労働衛生団体連合会の意見です。労働者に2度受診を 求める不必要な負担を強いることなく、可能な限り負担が最小限になるように調整する べきだと。ただ、それぞれの健診の目的などが違うこともあるので、そういったことで どのように考えるかという意見です。  個別の項目についての意見として問診票は暫定版で示された質問票を参考にすべきと か、腹囲はプライバシーの問題もあるので定期健診に取り入れるのは不適当である。ヘ マトクリット値についてはあえて定期健診に入れる必要はない。総コレステロールおよ びLDLコレステロールは必須項目にすべきである。「血糖」検査を「空腹時血糖」と 明確に打ち出すべき。ヘモグロビンA1cは食事の影響も相殺できるので、必須項目と して導入すべきである。クレアチニンは腎障害のスクリーニング検査に有用であるので 導入するのが適当である。尿酸も動脈硬化の危険因子でもあるので導入するのが適当。 眼底検査は欧米のガイドラインでも不要とされているので、定期健診に導入する必要は ないという意見です。 ○和田座長 どうもありがとうございました。では、この各団体の意見について、何か 委員の皆さん方、ご意見はありますでしょうか。 ○堀江委員 私の記憶違いかもしれないのですが、前回たしか使用者側の方から、使用 者側が法律に基づいて健康診断をやって、その上、就業上の措置を講じながら、労働者 の健康管理をするという体系が日本の健康管理の特徴で、これがうまく成功してきたと 思うのですが、これを過度にやりすぎますと、逆に労働者側の、あるいは国民の自発的 な健康意識、あるいは保健行動というものを削ぐことになりかねないかという懸念が示 されたように思っています。その内容が入っていないようなのですが、これは医学的に も行動科学のような分野で、もう少し議論しなければならない重要なポイントだと思っ て拝聴したものですから、そういうことであったのではないかと私は記憶していますの で、敷衍させていただきました。 ○和田座長 議事録を見てそういう項目があったら追加してくださればと思います。 ○衛生専門官 はい、わかりました。 ○和田座長 ほかには何かございますか。よろしゅうございますか。それではヒアリン グでいただいた意見を踏まえまして、報告に向けて議論をしていただければと思います。 では、まず事務局より報告のたたき台が示されておりますので、ご説明願います。少し ずつ切って検討していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 ○衛生専門官 それではご説明いたします。資料2、「労働安全衛生法における定期健 康診断等に関する検討会」報告たたき台です。2頁は検討会の目的です。「はじめに」 と書いてありますが、これはかい摘まんで申し上げますと、昭和47年の労働安全衛生 法 の制定以来、労働安全衛生法の定期健康診断というのは、多くの労働者の健康管理に資 するものとなっている。第2パラグラフの真ん中辺りに、昭和47年に制定された労働 安 全衛生法の健診は、結核対策を中心として胸部X線検査とか、喀痰検査の項目があった のですが、感染症以外の健康管理を目的とする項目が追加されてきた。とりわけ、脳・ 心臓疾患に適切かつ効率的に対応するための項目として、平成元年には血中脂質検査と 心電図検査などを、平成11年にはHDLコレステロールと血糖検査などが追加されて、 現在の定期健康診断となっております。  定期健康診断においては高脂血症、あるいは高血圧、糖尿病など脳・心臓疾患につな がる所見を有する労働者が増加しており、平成17年の定期健康診断結果報告において は、 有所見率が48.4%と、およそ2人に1人が有所見であるという状況です。さらに、業務 によって生じた脳・心臓疾患により、労災認定される件数については、平成17年度は 330件と、近年高止まりをしておりまして、過重労働対策とともに脳・心臓疾患の発症 要因となる生活習慣病の対策といったものを進めていくことが必要である。  こういった安衛法の流れとは別に、中高年の男性を中心に肥満者の割合が増加傾向に あり、肥満者の多くが糖尿病、高血圧、高脂血症等の危険因子を複数併せ持ち、危険因 子が重なるほど、こういった脳・心臓疾患を発症する危険が増大することが医学的に判 明しています。  このため、健康局を中心にして、内臓脂肪肥満に着目した「内臓脂肪症候群(メタボ リックシンドローム)」の概念を導入し、国民の運動、栄養、喫煙面での健全な生活習 慣の形成に向けて、国民や関係者の「予防」の重要性に対する理解の促進を図るととも に、必要度に応じて効果的な保健指導の徹底を図ることを目的に、高齢者の医療の確保 に関する法律を制定して、同法によって医療保険者が40歳から74歳の被保険者を対象 に、 特定健康診査・特定保健指導を行うことが義務付けられたということです。  この特定健康診査・特定保健指導を行うにあたり、参考とするものが「標準的な健診・ 保健指導プログラム暫定版」ですが、これが厚生労働省健康局の検討会においてまとめ られました。この中で脳・心臓疾患及び生活習慣病を効果的に予防するための健康診断 の項目が、新たな医学的知見を含めて示されています。  健診の項目については別刷りで付いている参考資料1を見ていただければと思います。 こうした定期健康診断の項目については、これまでも労働者の脳・心臓疾患に適切に対 応するという観点から項目が追加されてきた。これは先ほど申し上げたとおりです。片 や健康局では標準的な健診・保健指導プログラムの中で、脳・心臓疾患の予防に資する という項目がいろいろ追加されて出てきています。これを労働安全衛生法上どのように 取り扱うべきか。労働者に対する保健指導を行うにあたって、特定保健指導との関係を どのように整理すべきかを念頭に、今回の検討会を開始したところです。これが目的で す。  もう1つだけ説明しますと、定期健康診断の健診項目についてです。検討会の目的に ありましたが、内臓脂肪症候群に着目して、生活習慣病の患者や脳・心臓疾患の患者等 減少のために行う標準的な健診・保健指導の内容について、最新の知見を踏まえて検討 が行われ、今回のプログラムが公表されている。その中で示されている項目の中で、労 働安全衛生規則で実施することとなっていない項目を中心に、今回は検討するというこ とです。  検討した項目を一つひとつ説明します。問診項目についてで、まず喫煙歴です。喫煙 者の虚血性心疾患、あるいは脳卒中による死亡の危険度は、非喫煙者に比べて約1.7倍 高くなるなど、喫煙は脳・心臓疾患の強いリスクファクターであることが明らかとなっ ている。こういった喫煙の状況に応じて、脳・心臓疾患のリスクが上昇することも明ら かになっているために、喫煙歴の有無を聴取することで、脳・心臓疾患のリスクの高い ものを適切に把握し、適切に対応することが可能となるのではないかという議論です。  もう1つは服薬歴です。服薬歴は今回は高脂血症薬や血圧の降圧薬、糖尿病の薬など の服薬を確認することは現在の労働安全衛生法で示されている健診項目から得られる健 診結果をより的確に評価して、労働者の健康状態を把握することができる。ひいては脳・ 心臓疾患の予防にも寄与すると考えられますが、服薬歴については、現在省令で規程し ている既往歴の中で、すでにチェックされている場合が多いと考えられているのが、い ままでの検討会での話であったと思います。  続いて今回の健診項目を一つひとつ、腹囲から話します。腹囲については内臓脂肪の 蓄積が高血圧、あるいは高脂血症、高血糖などの脳・心臓疾患のリスクファクターの増 加と密接に関係していることから、内臓脂肪の量と相関関係である腹囲を測定して、内 臓脂肪の量を測ることでリスクを的確に把握する。腹囲だけで判断するわけではなく、 ほかの健診項目から得られる情報と併せて脳・心臓疾患のリスクファクターをより適切 に把握することが可能となるのではないか。その測定方法の話はいろいろ議論があり、 測りたくない人がいるという話や、労働者の自己申告を可能にすべきなのではないかと いった意見もあり、腹囲の把握の仕方については、なお検討が必要なのではないかと考 えています。  先ほど申しましたように、腹囲についてはほかの項目でもそう言えるのだと思います が、単独の項目としてそのまま事業者の事後措置等の内容を決めるものとはならないの ではないか。ほかの定期健康診断の項目と併せて総合的に評価されるべき項目であると 考えています。  次は血清尿酸です。血清尿酸は内臓脂肪の蓄積に伴う代謝状況を反映して、内臓脂肪 の蓄積と相関する内臓脂肪症候群のリスクマーカーとしても重要である。最近の知見で は動脈硬化性疾患の独立したリスクファクターとしても指摘されている。尿酸とほかの 健診項目から得られる情報と併せて、脳・心臓疾患のリスクファクターの状況を適切に 把握することが可能となる。尿酸については腹囲を測ることで内臓脂肪の蓄積を把握で きるのであれば、尿酸値までを測定する必要はないのではないかという意見もあったか と思います。項目の必然性についてはさらに検討を必要とするとなっています。  LDLコレステロールです。LDLコレステロールは単独で動脈硬化の強いリスクフ ァクターであることから、脳・心臓疾患のリスクを評価する上で重要な項目と考えてい ます。ここには書いていませんが、総コレステロールとLDLコレステロールを入れ替 えて定期健診の項目とすることを考えてはどうか。  次はヘモグロビンA1cです。糖尿病は脳・心臓疾患を含めてさまざまな合併症を引 き起こすために、糖尿病の疑いがあるものを早期に把握することは重要なことです。糖 尿病の疑いのある者を把握するために、いままで空腹時血糖、これは食後10時間以上 経 過した際の血糖が用いられてきましたが、健診受診者の状況によって、必ずしも正確な 値が得られない。朝ご飯を食べてしまったとか、夜遅くにご飯を食べてしまったといっ た場合には、空腹時血糖だけでは糖尿病の疑いがある者を正確に把握することはできな いとされています。  一方、ヘモグロビンA1cは、項目として過去1カ月から3カ月程度の平均の血糖値 を反映している。採血前日や当日の食事の摂取の影響を受けないために、ヘモグロビン A1cを測定することは、糖尿病の疑いがある者を正確に把握することが可能とされて います。こうしたことから、本来空腹時血糖を測定できない場合については、食事の影 響を受けないヘモグロビンA1cの実施が望ましいとは思いますが、現在の労働安全衛 生規則においても、血糖検査とヘモグロビンA1cはどちらか一方でよい状況ですので、 ヘモグロビンA1cは現状を踏まえた上で、そのほかの尿糖などの検査を追加すること で、空腹時血糖だけで把握できない糖尿病の疑いのある者を把握するということで代替 可能かどうかというような議論をしていただきたいと思います。  もう1つが血清クレアチニンです。血清クレアチニンは腎機能に関する健診項目です が、現時点では腎機能に関する健診項目は尿蛋白となっています。これに加えて血清ク レアチニンが腎機能の低下に伴い上昇する検査項目である。糖尿病も増えてきて、糖尿 病による人工透析の導入患者も割合が多くなってきていることから、血清クレアチニン を腎機能異常の早期発見のためのスクリーニング検査として位置付けることが必要だと 思います。クレアチニンは腎機能が大きく低下した際に上昇するために、早期の腎機能 異常の発見には向かないのではないかという意見もあり、今後、新たな健診項目として すべての労働者に一律に実施するものとまでは言えないとするのが適当ではないかとい う意見です。  次は標準的な健診・保健指導プログラムの暫定版において、医師の判断により実施す る項目です。これは尿潜血、ヘマトクリット値、眼底検査です。医師の判断により実施 する項目についてはすべての労働者に忠実に実施するものとまでは言えず、定期健康診 断の結果からこうした検査項目の実施が必要かどうかも含めて、要精検、要医療という 形で医療機関において実施すべき項目とするのが適当ではないかということです。  そこに参考とありますが、定期健康診断の項目を準用している雇入時の健康診断とか、 粉じん、高温低温のところに特定業務の従事者の健康診断、海外派遣される労働者の健 康診断の項目についても定期健康診断の項目の見直しに合わせて、見直す必要があると いうことです。ここまでで、とりあえずよろしくお願いいたします。 ○和田座長 1番のはじめにと2番の健診項目について、一応たたき台を出していただ きました。1番のはじめにはイントロダクションのところですが、これに関して何かご 意見はございますか。ここはいままでの趣旨、歴史的なことをまとめて今回の目的を説 明しているわけですが、何かご質問はございますか。 ○堀江委員 いまさっとお読みいただいたのですが、十分に理解できていない点もある かもしれません。2頁の真ん中から少し上のところで、今回対象になっている脳・心臓 疾患に関する説明の始まるところです。「とりわけ脳・心臓疾患に適切かつ効率的に」 とあるのですが、細かく言うと2つになるかもしれません。1つは事業者が労働者の脳・ 心臓疾患をどこまでも予防するという責任は、私は負っていないと思っているわけで、 これはやはり就業上の措置を講ずることによって対応するという内容が、ここに入って いると読んでよろしいのでしょうか。それともこれはそう読むべきではないのでしょう か、というのが1つと、もう1つは、効率的にという言葉は、効果的にのほうが医学的 には納得がいきやすいのですが、何かここに効率の要素を考えるべき論点が含まれるべ きなのでしょうか。 ○和田座長 私の意見を先に述べさせていただきますと、いまのご質問は確かにそのと おりです。安衛法による定期健康診断というのは1つは非常に広く業務起因性の障害が あるかどうかを見ます。適正配置という点からの観点が2つ目で、3番目として脳・心 臓疾患を強く意識して、面接指導とか、かなり強くいろいろな制度に取り入れているわ けです。そういう意味でその3点がいま現在の定期健康診断の主な目的と私自身は考え ているわけです。  ですから脳・心臓疾患はきちんと事業者も関心を持って面接指導等を含めて対処して ほしい。そういう観点からいえば私は脳・心臓疾患というのはきちんと入れて対処して ほしいと言ったほうがいいと思います。効率的より効果的のほうがはるかに言葉として はいいと思います。ほかに何かありますか。 ○労働衛生課長 いまの点は、和田座長がおっしゃったとおりですが、脳・心臓疾患に 対応するために我々としてはここにも書いてありますとおり、元年11年の安衛則の改 定 によりまして、対応する項目が入っていまして、それは当然事業所のほうも脳・心臓疾 患について配慮いただきたいということから言っている。おっしゃるとおり、まさに脳・ 心臓疾患の基礎となるようなものについて、いわゆる生活習慣病的な要因もあるので、 労働者自ら気を付けていただかなければいけない面もあるわけです。逆に言うと、そう いう基礎疾患が労務上の問題として過重労働などによって脳・心臓疾患の障害が起こる こともあるので、当然そういうことを事業者も踏まえて、健診をやっていただくのが妥 当だと考えています。  効率的というのはいろいろな検査をやるよりは、この程度で納まるという意味で効率 的という表現を使っております。委員がおっしゃったとおり、確かに探すという意味、 要するに異常所見を発見するという意味では効果的ですので、効果的、効率的と両方書 いておけばよろしいのではないでしょうか。 ○和田座長 両方を書いておけばいいですね。 ○安全衛生課長 そういうことでよろしくお願いいたします。 ○堀江委員 いまの点ですが、面接指導という施策は健康診断とは別に1つの大きな体 系として、今回和田座長を中心に作られて、いまから発展していく使命だと私も感じて いるところです。焦点はどちらかというと過重労働に当たっていて、過重労働の人では ないという人に対しての脳・心臓疾患の予防というのは、私は本来は安衛法の埒外では ないかとすら感じているわけです。就業上の措置では対応できない。たしかこれは前回 使用者もおっしゃっていたと思いますが、使用者では予防することのできないものをこ こに書き込むのは、私も非常に法律の構成として難しいのではないかと思います。こう 書きますと、言葉になりませんので、文書だけ読んだ人は、事業者が脳・心臓疾患、労 働者の脳・心臓疾患をきちんと予防してくれる責任があるのだと読めるように思いまし たので、事業者の就業上での措置によって対応することが、私は目的としてはふさわし い表現かと思って、質問させていただいた次第です。 ○和田座長 もう1つ、作業関連疾患は国際的にも産業保健上非常に重要な問題になっ ております。その中のトップは脳・心臓疾患に対する高血圧が入ってきているわけです から。 ○堀江委員 ILO、WHOの委員会でも作業関連疾患が取り上げられていまして、筋、 骨格系疾患とストレス疾患と脳・心臓疾患の3つは作業関連疾患として、大きな課題と いうのは私も十分に認識しています。作業関連疾患であれば、私も納得いくのですが、 生活習慣病となると作業関連疾患の要素があまり多くない生活習慣病が入ってきますの で、一般の方が見られたら、生活習慣病は日本に非常に広まっている概念で、作業関連 疾患のほうが、どちらかというと日本では十分に理解されていない。しかし、労働衛生 というのは作業関連疾患をきちんと予防するのが重要だと、私も認識しております。そ のことがわかるようにしていただくのがありがたいと思います。 ○和田座長 今回の安全衛生法の改正においても、3本柱の1つで心臓疾患を目的とし て強く上げているわけです。ですから、必ずしも合わないということはないと思います。 ○堀江委員 生活習慣病と作業関連疾患の区別を先に述べられたほうがわかりやすいの ではないか。安衛法の目的は作業関連疾患であろうと思います。 ○労働衛生課長 具体的に堀江委員にお伺いしたいのですが、脳・心臓疾患は作業関連 疾患でよろしいのでしょうか。 ○堀江委員 その原因に作業がかかわる場合は、作業関連疾患になるということです。 ○労働衛生課長 ですからまさに根底にある状態を予防することによって、過重な労働 が加わってもそれを予防できるという考え方ではないのでしょうか。少なくとも平成元 年11月の考え方というのは、整理しますが基本的にはいわゆる脳・心臓疾患の中でも 当 時、特に平成元年のときにはまだそういう事後措置の項目が入っていなかったと思いま す。基本的には労働者の健康を守るということから平成元年は入っている。ひいては当 然脳・心臓疾患を防ぐことだと思っております。 ○堀江委員 作業関連疾患は対処の仕方は作業を改善するのが優先順位が高くて、どこ までも人間を健康にしていって、どんな作業にも耐えられる人を作るというのは、国際 的には認められていない考え方です。事後措置については実際には昭和38年に通達が あ り、当時は特殊健診を労働衛生は扱っていたわけですが、その中で事後措置の区分が出 ていますので、それからずっとつながっている概念と私は理解していました。 ○労働衛生課長 そうしますと、逆に昭和35年から事後措置、法律で位置付けたのは 平 成8年ぐらいだと思いますが、いずれにしても事後措置がずっと続いていることは、少 なくとも平成元年11月での改正についてはそういう事後措置も含めた項目として位置 付けられていると、我々としては理解しています。 ○堀江委員 その際は指針が出ておりまして、就業上の措置が作業の仕方として謳って あるということです。 ○和田座長 堀江委員がおっしゃっている趣旨と少し噛み合わないところもありますが、 全体的な考え方からすれば、私はこれでいいのではないかと思います。例えば生活習慣 と完全に切り離せるかというとなかなか難しいので、例えば深夜業などは生活習慣が非 常に問題になっているわけです。深夜業をやる人はどうしても肥満になるとか、出張す ると必ず飲んだり食べたりして、それはもう生活習慣とかなり関係してくるわけです。 その辺のところまで必要であれば配慮したほうがいいのではないかということがあるの ではないかと思います。ほかに何かございますか。 ○堀江委員 いまの議論をもう少し続けてもよろしいでしょうか。労働安全衛生法に入 れるということはいっぱいあるのですが、私は大きくは2つあると思っています。1つ は医療職が知る情報を提供する枠組みになっていなくて、事業者、会社がそれを知る枠 組みになっている点を、関係者は誤解してはいけないと思います。生活習慣を事業者、 会社が全部知るのかという点では、それは違うのではないか。作業を知るのだろうと思 いますので、その点が違う。もう1つは、労働者に強制的に受診義務があることです。 ですから、行きたい人が行けばいいという健診ではなくて、行かない人は法律違反だと 決め付ける規程を作るわけですから、生活習慣について事業者に報告する規程を作るべ きかどうかとなりますと、それも違うのではないかと思います。 ○安全衛生部長 議論をお聞きしていてあまりお互いに言っていることは違わないので はないかという感想を持っています。というのは、この1の検討会の目的のところは、 始まりがまさに労働者の安全と健康の確保の達成を目的として、昭和47年に安全衛生 法 が制定されというところから始まっていて、要するに労働衛生管理の文脈で書かれてい る。少なくとも労働安全衛生法という枠の中での記述なのです。昭和22年の労基法か ら ずっと遡って、各段階でこういう考え方でこういう健診項目が追加され、その中には従 来の感染症対策がさらに一歩進んで、労働者の健康対策として定期健康診断の項が追加 されてきたという文脈で、おそらく書かれているので、いまのご懸念の点は、すでに労 働安全法、あるいは労働安全行政の中での定期健康診断の枠の中で議論をしているので、 そこの誤解は基本的にはないのだろうと思います。  先ほど2点おっしゃった点の「効率的な」の部分は、確かに和田座長がおっしゃった ように「効果的」という言葉のほうがよりいい言葉だと思います。それはそのように直 したいと思います。ですから、あまり根本的に意見が違っている議論ではないと思いま すので、そういう整理でよろしいのではないかと私は思うのですが、もしほかの委員の 方で何かご意見があれば教えていただければと思います。 ○和田座長 いまの部長がおっしゃったような感じで、私自身も受け止めますし、読む 方も受け止めていただけるのではないかと思うのですが、よろしゅうございますか。そ のほかにはじめのところで何かございますか。それでは2番の健診項目について、ここ は非常に重要ですが、そちらについていろいろ議論していただければと思います。順番 で喫煙歴に関連して何かご意見はございますでしょうか。労働と喫煙はかなり関係があ って、相互作用を示すとか、いろいろ言われています。基本的な考え方としては問診と しては聞いておいたほうがいいのではないかと思います。もう1つは慢性非特異的な呼 吸器疾患COPDが作業関連疾患の中にも入っていますが、いままではあまり問題にな っていないけれども、これからはやはり問題になるのではないかと思います。そういう 意味で情報としてあったほうがいいような気もします。何かご意見はございますか。 ○堀江委員 よろしいでしょうか、私ばかり同じようなことを申し上げて恐縮ですが、 喫煙歴をここに入れる議論は定期健康診断の項目に入れることなので、結果通知を事業 者の手元に残る個人健康管理票、様式第5号にも書くことをイメージすべきなのでしょ うか。この点は第2回のときでしたか質問して、そのまま議論が途中になっていて、様 式に書かずにこれは医療関係者の情報として重要なのであって、事業者が逐一どの労働 者がたばこを吸っているかを知るという意味は薄いのではないかということからご質問 したのですが、この点はどのように整理されているのでしょうか。 ○衛生専門官 労働安全衛生規則の項目に載れば、この別紙様式の5号の個人票には当 然聴取したかどうかは記載されます。 ○堀江委員 聴取したかどうかではなくて、誰がたばこを何本吸っているかがわかると いうことですか。 ○衛生専門官 何本吸っているかまで聞くのか、たばこを吸っているかどうかという有 無を聞くのか、そこまでは。 ○堀江委員 これは保険局との整合性をとったほうがいいと思いますが、どのような聞 き方になるのでしょうか。 ○衛生専門官 整合性だけを別に図るのではなくて、ただいまの状況がどのようになっ ているかというと、先生方のお手元の第1回の資料4の標準的な健診保健指導プログラ ム暫定版の概要の8頁目です。階層化のところはステップ2の(5)です。質問票では喫煙 歴があるかないかというところです。 ○堀江委員 ちょっと不勉強で申し訳ないのですが、合計100本以上というのはどうい う意味なのでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 8頁の標準的な質問票の7番目で、現在たばこを習慣的に吸っ ているということで、ここのところは最近1カ月の間で合計の本数が達しているかどう か。もしくは6カ月以上吸っているかという考え方です。ある期間に吸っている日も吸 っていない日もあるけれども、それの合計が100本にいっているか、もしくは6カ月以 上吸っているかという考え方です。 ○堀江委員 均等に吸いますと1日4本吸っている人、あるいは4本未満であれば6カ 月以上の場合ということですか。 ○生活習慣病対策室長 毎日吸っていればという形です。これは一応国民健康栄養調査 のときに、どのようにやるかというと、たばこのいろいろな評価の仕方があるのですが、 一応これは標準的だということで、ずっと最近はこれを使わせていただいている調査方 法です。 ○堀江委員 どうもありがとうございました。喫煙歴を聞くことは当然医療関係者とし ては当たり前の話だと私は思います。したがって医療の場でこれを聞くことはむしろや らなければ問診が成り立たないようなものだと思うのですが、労働安全衛生法の定期健 診ですので、事業者にこれを全部報告する意義が薄いのではないかと思います。すなわ ちこれに対して事業者が何をするのか。就業上の措置としては例えば特定化学物質を取 り扱っている事業場で、その粉じんがたばことともに口から入ることを防止するという 論点はあるのですが、これをやめさせる責任までは事業者にはないと思います。また、 別の観点ですが、これを事業者に知らせることをよく思わない従業員は、国の法律によ ってそれをさせられることになるわけですので、その方のいわゆるプライバシーも尊重 しなければいけないのではないかと思います。  また、3点目はその方が、そういう事業者に伝わることを恐れて正しい申告をしない と、医学的な判断も間違える。あるいは集団の統計も間違うという結論になってしまっ てくる。これは医療関係者にとどめるデータにしていただくわけにはいかないでしょう か。 ○労働衛生課長 先ほど堀江委員からお話がありましたとおり、労働安全法は事業者に いろいろ責務をかけていて、健康診断の結果についても事業者にいくような仕組みにこ れではなっています。ただ、7頁の最後で、個人情報の保護についての運用上の話です が、「産業保健業務従事者以外の者に健康情報を取り扱わせる時は、これらの者が取り 扱う健康情報が利用目的の達成に必要な範囲に限定されるよう、必要に応じて健康情報 を適切に加工した上で提供するとの措置を講ずることになっている」ことを徹底するこ とによって、知られないのではないか。堀江委員がご指摘の点については対応できるの ではないかと思います。 ○堀江委員 生データについては事業者に伝えなくてもよいということになります。そ ういうことでよろしいですか。 ○労働衛生課長 基本的には法令上の運用ですから、絶対にこうしなければいけないと いうことはないのですが、基本的には確保した上で事業者にお示ししていただくことで それをお願いすることは可能だと思います。私どもはそうしたいと思っています。 ○堀江委員 様式の欄に喫煙歴が加わるわけですね。具体的に様式が事業者の手元にあ って、喫煙歴の項目があって、ここの運用をするのはどのような手段があるのでしょう か。 ○労働衛生課長 個人の情報については事業者に直接いかない。ただ、その企業におけ る健康診断を受けられた方の中で、喫煙者がどの程度いたかという情報は、事業者に伝 わることになる。事業者もしくは人事の担当者かわかりませんが、いく可能性はありま す。 ○堀江委員 個人の情報は伝わらないということでよろしいですね。 ○労働衛生課長 個人の情報はなるべく産業保健スタッフ、いわゆる医師、保健師とい った方に限定されるようにお願いをしています。 ○堀江委員 非常に重要なところだと思いますので、喫煙歴は安心して健診のときに医 療関係者が聞ける。本人も事業者には知られないことで、正直に申告ができる環境が作 られるという理解でよろしいですか。 ○労働衛生課長 するように、必要でしたら我々としても努力をしていくということで す。 ○堀江委員 ですから懸念としては様式の中に個人の健康管理票の様式5号に喫煙歴と いう項目があって、それを事業者に保存義務があって、なおかつそれが個人の結果とし ては事業者に知られないという手段が、具体的にイメージできなかったものですから、 お尋ねしただけです。 ○衛生専門官 委員のご懸念はプライバシーだけの問題ですか。 ○堀江委員 プライバシーがまずあり、次にそれがあるために正直なデータが出なくな るという健康管理では。 ○衛生専門官 それは喫煙歴だけではなくて。 ○堀江委員 違います。 ○衛生専門官 ほかの項目もすべてそうですよね。何で喫煙歴だけ取り立てて、プライ バシーの問題を大きく議論するのはどうなのかと思うのですが。 ○堀江委員 喫煙歴も大きくプライバシーにかかる項目だと思います。 ○衛生専門官 それはいいのです。それは否定していないのですが、ほかの項目もそう であれば。 ○堀江委員 では、後でまとめて議論させていただきます。 ○和田座長 全体としては喫煙歴に関してはここに書いてあるようなニュアンスでとら えるべきだと考えております。服薬歴についてはどうですか。これはそんなに喫煙歴ほ ど明記するのではなくて、これは当然既往歴の中でとっているべきものであるというニ ュアンスですね。とらなければいけない、必要だという。 ○今村委員 これ逆に確認で、いま委員長がおっしゃったように既往歴で必ず書くから、 理解としては服薬歴は設けない案でよろしいですか。 ○衛生専門官 症例として明記するのではなく、服薬歴。 ○和田座長 必要に応じて、広く既往歴に含めておいて、既往のニュアンスですね。 ○今村委員 この辺はなかなか難しく、先ほどから堀江委員のお話のような、どんな薬 を飲んでいるかを知られたくないこともあるのかもしれません。逆に糖尿病の薬を飲ん でいて、シックデイみたいなものを起こして、非常に作業に危険なことを伴うようなこ とがあるということであれば、安全配慮義務や適正配置にまでかかわってくるような要 素もあるかと思っているので、書いたり書かなかったりという判断を、その方によって 既往歴にきちんと書いていただける方もあれば、まあいいやと言って書かないという、 そういう違いが出ることが心配です。 ○生活習慣病対策室長 先ほどの喫煙歴と同じなのですが、服薬歴についても先ほどの 資料のたばこのところと同じ頁の上に、どういう聞き方をしているのかというのは、一 応血圧を下げる薬であるとか、インシュリン、血糖を下げる薬であるとか、コレステロ ールを下げる薬であるなど、そのような聞き方になるかと思っています。 ○今村委員 既往歴という言い方が誤解を招きやすくて、現在治療中というものと、過 去にこういう大きな病気にかかったことがあるというのと、ちょっとニュアンスが多少 違うような。 ○生活習慣病対策室長 すみません、そこのところは合わせてその下に、医師から例え ば脳卒中、脳出血、脳梗塞にかかったと言われたり、治療を受けたりしたことがありま すか。要するに過去にそのように言われたことがあるかということと、現在も治療を受 けていますか、薬を飲んでいますかということで、過去の治療といまの治療を比較する ことができるのではないかと考えています。 ○今村委員 わかりました。ありがとうございました。 ○堀江委員 これは本人の申告でよろしいのであって、処方を受けている薬をきちんと 飲んでいるかどうかの確認までは当然要らないわけですね。 ○和田座長 それは、健康指導のときに必要であればやることですね。 ○堀江委員 逆に言うと、いくら服薬していても、状態像が悪ければきちんと就業上の 措置をかけるべだということになってくると思いますので、そういう意味からすると、 あくまでも補助的な情報になるかと。すなわち血圧の薬を飲んでいると言いながら、き ちんと飲んでいなければ血圧は高いわけですから、いままでも測っている血圧というこ とで管理することが重要であって、服薬歴プラスマイナスで、そこだけで就業上の措置 につながることもあるのかもしれませんが、補助的な情報ではないかと思います。  脳・心臓疾患に注目した改正を議論しているのですが、単に服薬歴というと、実は私 の経験上、いちばん深刻に躊躇されるのがてんかんの薬を飲んでおられる方です。そう いったものも対象になるのでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 あくまでもこの頁に書いてある薬です。 ○堀江委員 当然保険局はそうなのだと思うのですが、安衛法としてはこの服薬歴は特 定健康診査の項目の服薬だけが対象になっているのであって、ほかの服薬歴は今回は議 論しないことでよろしいのでしょうか。 ○労働衛生課長 いままでも議事録に書いてあるとおり、すでに既往歴の中で聞かれて いる実態ですので、それを追認するだけの話だと思っております。その中で、いままで は場合によってはご本人の申告があって、向精神薬などを飲んでいる方もいらっしゃる でしょうし、都合上言えない方もいらっしゃるでしょうし、それ以上のことは我々とし ても求めないということです。 ○堀江委員 そうすると、具体的には既往歴で現在聞いているものの中で、メタボリッ クシンドロームにかかわるようなものについてはきちんと聞いてくださいという指導は されるのですね。 ○和田座長 聞くというか、情報として必要な場合にはとってくださいぐらいなニュア ンスでしょうね。正確に全部とれという意味ではありませんということですね。だから、 きちんと書くと全部とらなければいけなくなりますから、当然既往歴の中で聞くべきも のであるというぐらいのところがいちばんいいのではないかと思いますが、よろしゅう ございますか。  では次に腹囲のほうにいきます。腹囲に関して何かご意見はございますか。 ○堀江委員 難しいですね。 ○生活習慣病対策室長 よろしいでしょうか。前回いろいろな関係の方々からのヒアリ ングの中で、腹囲についてのご意見もあったものですから、誤解がないように一言申し 上げさせていただきます。腹囲を測ると、何かそれが病気の基準みたいな誤解をされて いたり、即病気みたいな、即治療をしなければいけないのだと誤解されているところが あったとしたら、そうではなくて、あくまでも内臓脂肪が溜まっているかどうかです。 それが脳血管疾患のいろいろな議論がリスクとしてありました。内臓脂肪が原因で血糖 が上がって糖尿病になって、その糖尿病が原因で心筋梗塞や大きな流れの川上というの でしょうか、内臓脂肪が原因で血圧が高くなって高血圧になって、脳卒中になってしま う。大きな流れがあるリスクとして内臓脂肪を減らしたほうがいいという保健指導をや っていくことについて、すごく重要であって、即それが安全配慮の義務につながる懸念 がかなりあったのです。あくまでもその大きな流れを脳血管疾患につながる流れに、な るべくならないためのリスクとして、すごく大事なのだと、もし私どもの説明が不十分 であれば、是非そこのところだけは強調させていただければと思います。体重を測るの と同じくらいのレベルなものですから、そのような認識でほかのところとの議論が少し 誤解されているので、そこのところは誤解のなきよう、よろしくお願いしたいと思いま す。 ○和田座長 昔は体重で肥満症というと病気だとすぐにみんなそう取ってしまうわけで す。ですから、そういうニュアンスでかなりとられて、肥満であることをみんな気にす るわけです。ただ、いまのようにメタボリックシンドロームの概念が腹囲を測ってチェ ックしてということは、いまはもう一般の国民はだんだん理解していると思うのです。 ですから、85以上あったら病気だとか、そのようには考えない。要するにちょっとリス クが高いから何とかしましょうぐらいに考えていると思うのです。ですから、メタボリ ックシンドロームそのものはみんな関心を持っていますし、その辺のところがいま国民 は理解していると思うのです。 ○今村委員 確認ですが、この文章は一応腹囲は測ると。それについては自己申告の可 能性についてはまだ検討の余地がある。後段の部分の事後措置については単独で考える ものではなくて、総合的に他の健診項目と、という意味合いで理解してよろしいですか。 やることはやるのだということの理解でよろしいでしょうか。 ○労働衛生課長 基本的に、各健診項目をこれからどのように取り扱うのかを決めてい ただくことになると思うのですが、まさにこれからどのようにするのか。 ○和田座長 確定して、ある程度方向づけをするのが今日の目的で、確定まではもちろ んいきません。 ○今村委員 もちろん、そうです。あくまでも案なのですが、その案の文章はそういう 理解でいいのかどうかを確認したかったのです。 ○和田座長 やったほうがいいのではないかということですね。 ○今村委員 そういう理解でよろしいのですね。後段の部分の書き方が、よく読めばわ かるのですが、要するに事後措置としては腹囲は単独の項目ではないという意味合いな のだと思うのですが、最初に「腹囲については」と主語が始まっているので、腹囲につ いて書いている段でこのように書かれると。 ○和田座長 いま室長がおっしゃったように、これは病気を判定しているのではなく、 基本的に考える糸口だというぐらいにしておけば、みんな理解してくださるのではない でしょうか。 ○堀江委員 ここについては、まさに先ほど課長がおっしゃった平成8年の事後措置の 指針が出たときの法改正で、有所見者についての就業上の措置は安衛法の枠組み上逃れ られないと思っています。保険局としても、おそらく就業上の措置をかけるためにこの 項目を入れているのではなく、保健指導のために腹囲を測るのだと思うのです。安衛法 の中に入ると、これは就業上の措置をかける項目になるのですが、1つの項目ごとにい ずれかの項目が有所見であれば有所見とカウントしなさいという通達も出ているので、 いままでの流れの中に入れると労働衛生の人たちは、どうしても腹囲が1つ有所見であ れば、いわゆる就業上の措置が必要なもの、安衛法で言うと第66条の4、第66条の5 が必要になってくる項目だと理解してしまうのですが、そうではないということを書い ているのでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 ですから、マルチプルリスクファクターという考え方で、単独 ではなく、それとほかのものが組み合わさることによってリスクが増えてくるという考 え方です。 ○堀江委員 組合せを検討して、有所見を判定する作業が労働安全衛生法で必要になる ということですね。 ○生活習慣病対策室長 それは、まさに従来からある考え方で、労働安全衛生法の中で 出たマルチプルリスクファクター症候群の考え方だと私は理解しております。 ○堀江委員 考え方ではなく、法律上1つの項目でも有所見なら、現在就業上の措置を かけることになっているのですね。 ○和田座長 有所見が書いてあれば、それでどうしようとか、そこまでは全然言ってい ないですね。大体どのぐらいあるかだけ見たいのでしているわけです。例えば、コレス テロールが高いから安全配慮義務をやらなければいけないとは全然言っていないわけで す。 ○堀江委員 第66条の4は、有所見の者に対して事業者に責任をかけていますね。 ○衛生専門官 堀江委員が産業医だったときは、コレステロールで1つ有所見があって、 何か配慮されていたのですか。 ○堀江委員 そうではなくて、事業者の責任として書かれていますね。 ○衛生専門官 なので、例えば1つの項目で所見に異状があったときに、産業医として 事業所に何かこういうことをすればいいと。 ○堀江委員 当然項目だけでは決まりませんので、その人の仕事との兼合いが適性がな ければ、措置をかけることになります。 ○衛生専門官 項目1つだけではなくて、全体を見て産業医としての勧告をされるわけ ですね。 ○堀江委員 1つの項目でも、その人の働いている職場や仕事との関係で問題があれば、 就業上の措置をかけます。 ○衛生専門官 私が言いたいのは、項目の所見だけで何かを決めることを、産業医もや っているわけではないのですね。 ○堀江委員 それは違います。就業上の措置は、あくまでも仕事との兼合いを見ます。 ○衛生専門官 健康診断の項目が1個増えたからといって、その所見だけで全部決める ことも、現場では行っているわけではないということですね。腹囲が入って、腹囲が異 状だからそれだけで何か措置をしなさいと産業医が勧告するわけではない。その人の作 業環境などを含めて、すべて見て勧告するということですね。 ○堀江委員 いま生活習慣病対策室長がおっしゃったのは、仕事とのマルチプルリスク ではなく、その人の健康診断の項目の組合せでリスクとおっしゃっていたのだと思いま す。少し発言が違っているような気がします。 ○生活習慣病対策室長 リスクの考え方ですが、当然どういう形で発症するかはリスク のデータをどう判定するかに関わってくるのだと思います。ですから、そこはリスクと して数えるかどうかと、委員がおっしゃるようにいろいろな環境があるので、それとど う関わってくるのかが非常に大事だと思っております。 ○堀江委員 しかし、「はじめに」に有所見率が上昇しているとありますが、この有所 見に関係ないという整理をしてよろしいのでしょうか。 ○相澤委員 有所見には入るけれど、事業者あるいは産業医が就業上の措置を勧告する とか事業主側に言う場合には、腹囲が大きいからといってやるほどではないと。産業医 として、労働者の全体の健康状態、リスクを評価するわけですから、腹囲があったから といって、有所見になるかもしれないけれども、それ自体は。 ○労働衛生課長 例えば、仮に腹囲が安衛規則に入って位置付けられたときに、この委 員会として男性だったら85cm、女性だったら90cm以上は有所見者としようという結論 を出していただければ、それは有所見として届けていただくことになると思いますが、 いまのところは委員がおっしゃるような細かいところまでは決まっていない状況です。 ○堀江委員 そうすると、有所見の判断が出れば、就業上の措置に関わる可能性はある ということですね。 ○衛生専門官 それは、いまのほかの定期健診の項目もすべてそうですね。腹囲だけの 話ではないはずです。 ○労働衛生課長 腹囲だけで何か就業上の措置が必要だと想定しているのですか。 ○堀江委員 ほとんどないと思っています。ですから、ここは腹囲の項目が労働安全衛 生法で必要かどうかの議論ですので、就業上の措置に関係ないのなら、労働安全衛生法 の健診としてはなじみにくいのではないかと思います。 ○和田座長 それを考える1つの資料としてとるということですから、それだけでどう こうするということではないわけです。コレステロールだってそうですし、みんなそう ですね。 ○堀江委員 腹囲の項目は非常に重要だと思っていて、もう少し論点があるのです。私 の周りには労働衛生サービス機関、いわゆる健康診断を実施する機関がたくさんありま すので、少しヒアリングをしたのですが、実施そのものが難しいという声を伺っていま す。もちろん、それは正確なデータを出したいとの意図からだと思うのですが、腹囲を 測りたくないという方々が結構いて、説得するのに時間がかかる。特に女性を中心に、 測りたくない方々は人に見られたくないというところがあって、別に部屋をつくる必要 がある。また、女性の場合は、男性に測られるよりは女性に測られたいということもあ るようで、必ず女性のスタッフが1人ついて測らなければいけない。実施そのものが難 しいとの声をたくさん聞くものですから、これを労働安全衛生法に入れると、相当数の 健診機関の労働力がそちらにいかないと、正確なデータが出てこないと思っております。 この辺りは、安衛法ではなく保険局の中でやられている事業の中ではどのような状況な のでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 準備事業の中でも、初めのときに腹囲の測り方等についてご指 摘のような懸念はあったと聞いています。私たちもヒアリングをした中で、始めるに当 たって現場でそのような声があったことも聞いております。私どもも、国立健康医療研 究所で測定の仕方の標準的なものを示していますので、そういうものを研修でしていた だいて、事前にトレーニングをすることによって、懸念もあったけれど、実際に始めて みたら思ったほどでもなかったとの報告も聞いております。ですから、いろいろと懸念 があることは我々も理解できますが、なるべくそういうことがないようにする努力をす ることはできるのではないかと思っています。 ○堀江委員 もう1つの懸念は、関連するかもしれませんが、前回の全国労働衛生団体 連合会のヒアリングについて今日のプリントに載っております。第3回検討会での各団 体の意見の2頁の全衛連の4つ目の項目で、腹囲は意義と精度が不十分であり、プライ バシーの問題も起こりやすいと、測定してみたらプラスマイナス7cmぐらいの誤差が生 じているとの全衛連の報告がありましたが、これは間違っているのでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 それについても標準的な測り方があって、それがなければご指 摘のとおりになることは大いにあり得ると思います。そういう意味では、事前によくト レーニングをしていただくこと、ちゃんとした測り方をマスターしていただくことが非 常に大事だと思っています。自己申告の場合と実際に測った場合との比較もしているの ですが、自己申告だと差がありますが、自己申告とそれの差は先ほどのご指摘の差より は短いとの報告を受けております。いまご指摘いただいた差よりは、まだ自己申告のほ うが少なかったけれど、もっとちゃんとやれば正確にできるとの報告は受けております。 ○堀江委員 精度管理は非常に重要だと、それができないなら自己申告のほうがいいと いうことですね。 ○和田座長 85cmを超したら病気だとか、そういう意味ではないわけで、おおよその目 安でこのぐらいの人はこれをやったほうがいいだろうと、その結果は、あとのコレステ ロールの問題も出てきますから、そこを法的に判断して出動していくのがお宅のほうの あれですから。そもそも、さらしで測れなどというのが大体無理であって、どんな方法 だって人によってはお腹を引っ込ませたりいろいろすると思うので、正確性をあまり期 待しなくても大体の目安だと考えればと思うのです。 ○堀江委員 逆に言うと、現在はBMIを測っているわけですから、BMIから腹囲を 推定することもできると聞いていますが、それはどうなのでしょうか。 ○和田座長 できることはできますが、かなり幅がありますね。確かに対角線で引くと きれいに乗るのですが、かなり幅があります。 ○堀江委員 その場合の腹囲は緊急的に測られているので、きちんと測った腹囲との相 関があるので、いい加減に測った腹囲よりはBMIから推定したほうがいいことになら ないでしょうか。 ○衛生専門官 腹囲だけに限らず、検査項目はすべて精度管理をちゃんとやらないとず れてくるのです。先ほどと同じ話ですが、腹囲だけに限って言える話ではなく、すべて の検査項目で精度管理をきちんとすることが重要で、ここだけを取り立てて議論するの でなく、健診全体で考えるべきだろうと思います。 ○堀江委員 前回、全衛連から非常に誤差が生じやすいとの指摘があったものですから、 懸念がありました。 ○今村委員 もう1点、健診を受ける方の立場を考えると、一方では保険者が必ずこれ をやるという仕組みの中で、こちらでやらないとなると、それのためだけにやらなけれ ばいけないという論点も前に出されていたと思うのです。受診者のことを考えると、そ こまでこだわらなくてもいいのではないかと私は思っているのです。精度の問題につい ても、この前このご報告をくださったヒアリングの方にも伺ったのですが、労働安全衛 生ではやらなくてもいいけれど、特定健診では測るとのお答えをいただいたので、それ なら1回の機会で実施者ができるだけ受けられるようにしたほうがいいと思っています。 ○和田座長 今日は、大体ニュアンスはこのようなことだと考えてくださればいいと思 います。  血清尿酸に関しては、ここに書いてあるように一義的、中心的な検査法でもない感じ もしますし、必要性に関してはさらに検討したほうがいいのではないかというニュアン スでいいのではないかと思います。一義的に出すほどのものではないのではないかとい うことですね。  LDLコレステロールも、いま医学的・化学的にLDLのほうがはるかにいいわけで、 総コレステロールと両方絡めてはいけないわけではない気もします。HDLとPEGを 測っているわけですから、それとLDLで見れば、コレステロールよりも正確な判断が できると思います。  ヘモグロビンA1cは、いま労働衛生でも血糖かどちらかをやりなさいと言っている わけですから、法的に加えてあれば、ある程度診断能力も上がるだろうと思います。両 方ともやるよりも、いままで労働衛生でやっている感じで、どちらかをやればいいので はないかと思います。血糖で引っかかれば、それから精密検査に入っていくわけですか ら、そのようなことでいいのではないかと思います。  クレアチニンは、ここに書いてあるように三次予防ですし、一義的に測るものでもな いというニュアンスでいいのではないかと思いますが、よろしいですか。  あとは、医師の判断による実施項目で、尿潜血・ヘマトクリット値・眼底値も、問題 があって精密検査や医療診断をするということでいいのではないかと思いますが、いか がでしょうか。最後のほうはわりと明確なところですので、何かご意見はありますか。 ○堀江委員 この委員会が始まって、項目の議論が重要だということがわかったので、 私の教室の研究で、労働安全衛生法に基づく一般健康診断項目の追加と結果の取扱いに ついて調査をしました。これは、最もこの分野の専門的知識があると思われる日本産業 衛生学会の専門医と指導医の方にお尋ねしました。ほかの方々を含めてもよかったので すが、まだ関心が薄いだろうということで、その方々に調査をした結果があるのですが、 ご説明をしてもいいでしょうか。 ○和田座長 簡潔にお願いします。 ○堀江委員 資料を用意しておりますので、配付します。  いま申し上げたようなことで、指導医・専門医は210名おります。今日ここに座って いる4人の中にも指導医がいるのですが、当事者なので省いて、残りの210人を対象に 11月下旬にアンケートを配って、43%の回収率でした。3分の2が常勤の産業医で、比 較的専門的に産業医をやっております。  主に聞いた点は、今回の特定健康診査の項目を追加することに対するメリット、デメ リットについて選択肢を設けて○をつけていただき、最終的にはどちらが大きいかを聞 いています。  2頁の表2ですが、これはいま特定健診として出ている項目を定健にすべて含めた場 合、労働安全衛生の健診として就業上の措置を述べる際の根拠になる検査かどうかを聞 くために、いままでにやったことがあるかどうか、各検査項目ごとに就業上の措置を述 べたことがあるかどうか、先ほどの議論にもあった点について項目ごとに○をつけてい ただきました。  最後に、プライバシーに関連してこれらの代表的な項目について、企業には安全配慮 義務があるので、事業者に直接生データを報告したほうがいいかどうかを尋ねておりま す。  結果はご覧のとおりです。表1、メリット・デメリットについては意見が分かれてい て、メリットが大きい、さまざまなメリットがあるという意見もある一方で、この委員 会でも議論したような安全配慮義務の問題や、労働者が受診をいやがる項目が増えるの ではないか、実施するマンパワーの確保が困難になるのではないか、といったことが指 摘されております。メリット・デメリットが非常にばらけていて、どちらかに偏るかと 思ったのですが、そのような結果にはなっておりません。  表2は、どのような項目が就業上の措置に利用されているかです。いちばん利用され ていた項目は血圧で、91名中80名が使ったことがあるということで、労働衛生の項目 として血圧は非常に利用されていることがわかります。そのほかに循環器系の項目もあ るのですが、次に空腹時血糖、ヘモグロビンA1cがよく利用されています。大きな企 業が多いので、すでにこういった項目をやっている所も多いと思います。  一方で、いま議論になった腹囲やBMIを出す根拠になる体重などは10%未満です。 当然腹囲はそんなにやられていないと思いますが、体重も10%未満で、あまり就業上の 措置に項目として使われるものではないようでした。  表3は、事業者に生データを報告すべきかどうかです。これは意見を聞いていますか ら、いま実施しているかどうかではないのですが、特に腹囲については事業者に報告す べき情報ではないのではないかということです。喫煙歴も、事業者に生データを報告す べきという方は91名中3名しかおられません。腹囲は0、体重は1名で、生データを 事 業者に報告するという枠組みそのものがなければいいのですが、現行の安衛法はこうな っているために、非常に懸念があるという結果でした。 ○今村委員 非常に参考になる面白いデータだと思いました。いま委員からご指摘があ ったように、糖尿病の指標として血圧の次にヘモグロビンA1cが80%と多い測定にな っています。調べられたのは大きな企業というお話だったのですが、私はこの間大企業 ではヘモグロビンA1cを入れることには大反対だと理解したのですが、実際にはこれ だけやっていて、なおかつこれが就業上の措置に利用されていることに多少矛盾を感じ るのです。その辺りはいかがですか。 ○堀江委員 現行の安衛則でも、ヘモグロビンA1cか血糖かはどちらでもいいことに なっていますので。 ○今村委員 この間は……に対してご意見があったということですね。背景はよく知ら ないのですが。 ○堀江委員 そちらの委員の方が、ヒアリングのときにA1cを義務付けられるのは困 る、というように理解したのです。私の勘違いかどうかわかりませんが、どうですか。 ○衛生専門官 A1cに限らず、今回提案している項目を義務づけるのはあまり好まし くないということです。 ○今村委員 個別ということではないのですね。 ○堀江委員 こういったデータはいままでなかったと思ったので、就業上の措置に利用 されるか、あるいはプライバシーに対してどうかという点については、全体の議論はよ くありますが、個別の項目ごとにどれぐらい違うかはやっていなかったので、調べてみ たら結構差があるという結論になったと考えております。 ○和田座長 血糖関係で、就業上の措置はどのようにするのですか。 ○堀江委員 例えば、オキュペーショナルリーズンのステート・オブ・ザ・アート・レ ビューを見ると、IDDMになれば固定勤務は避けるべきだと書いてあったりするので、 おそらくインスリンのサイクルと交代制勤務の問題で就業上の措置をかけたり、あるい は残業、休日出勤に対してかけているのではないかと推測していますが、そこまで個別 に聞いていないので、どういう措置をかけたかはわかりません。 ○和田座長 インスリンのリズムで深夜業をやめろと言っていることはあるのですか。 ○堀江委員 これは調査しておりません。いま勝手に申し上げただけです。 ○和田座長 少し現状とは違う気がしますね。たまたまこういうことがあったから就業 上の措置をしたという意味ですね。全体を見て、血圧についてすべて高いから、就労は きついからいいですよと言っているという意味ではないですね。 ○堀江委員 たぶん、それは違うと思います。おそらく、仕事との関係で。 ○和田座長 血圧などは高い人がいっぱいいますから、血圧を利用して勧告をするとか、 そういうニュアンスになるのではないでしょうか。血圧が高いからどうだとか、100人 いて88人を血圧で勧告したという意味ではないですね。 ○堀江委員 違います。 ○和田座長 その辺は、誤解を受けると変なデータになってしまうし、大変なことにな ると思うのです。 ○堀江委員 91名というのは、回答者の数ですかね。 ○和田座長 88%というのは、血圧で88%利用したという意味ですね。 ○堀江委員 そうです。88%の回答者が利用したということです。 ○和田座長 わかりました。一応参考にさせていただきます。時間の関係もあるので、 大体大雑把に見て、大体このぐらいのニュアンスと考えていただきたいと思います。  それでは、保健指導についてご説明をお願いします。 ○衛生専門官 保健指導については第2回でもご説明しましたが、労働安全衛生法に基 づく保健指導は事業主の努力義務として位置付けられているわけです。一方で、高齢者 医療法では医療保険者による特定保健指導の実施が義務付けられています。労働安全衛 生法に基づく保健指導は、例えば視力や聴力といった労働安全衛生法の定期健診独自の 項目に関わる保健指導も含めて行われているわけですが、特定保健指導はメタボリック シンドロームや生活習慣病に限ったところを中心に行うということです。いまのまま、 高齢者医療法に基づく特定保健指導と労働安全衛生法に基づく保健指導の実施方法が整 理されない場合、労働者は生活習慣病や糖尿病や高血圧といった部分で、一部重複した 保健指導を2回受けることが想定されます。  次の頁です。そもそも、いまの健康局で示している標準的な健診保健指導プログラム の暫定版には、特定保健指導を行う事業所の考え方、アウトソーシング先の考え方が述 べられているわけですが、いわゆる労働安全衛生法の事業者が行う保健指導について、 特定保健指導に該当するのかどうかは整理されていない状況にあります。  話は変わりますが、労働安全衛生法に基づく保健指導は産業医を中心に行われている わけですが、安衛法にはTHPの指針があって、いろいろな機関で保健指導や栄養指導 について専門的な人材でサービスが提供されています。こうしたことを踏まえて、安全 衛生的な観点から特定保健指導と労働安全衛生法上の保健指導のあり方の検討を行って きたということです。  1つ目は、両方の保健指導の関係についてです。労働安全衛生法に基づく保健指導は、 生活習慣だけでなく、労働者の作業管理なども含めて包括的に保健指導を行っていると 考えております。労働者が特定保健指導と労働安全衛生法の保健指導で同じ内容の指導 を2度受ける手間を考えると、可能な範囲で労働安全衛生法で保健指導を実施するほう が、作業環境も含めて労働者に対して保健指導ができるという観点から重要なのではな いか。また、こういう観点から、保健指導を実施する事業者に対して特定保健指導の委 託ができるようにするのが望ましいのではないかということです。  もう1つは、人材の活用です。産業医の選任義務のない中小事業者では、事業者と医 療保険者との連携は必要ですが、THPで要請した産業保健スタッフの人材活用の観点 からも、事業者がこういったスタッフを有している医療機関や健診機関に保健指導を依 頼することで、特定保健指導だけでなく、産業保健の視点も加味した保健指導を労働者 が受けられるのではないかということです。こういったことを円滑に進められるように、 THPで養成した産業保健スタッフの活用が推進できるような体制の整備に努める必要 があります。この際、THPで人材要請の段階で標準的な健診・保健指導プログラムの 観点を加えて研修していただくのが望ましいということです。  1つ問題があって、これは健康局で検討されていると思いますが、THPの保健指導 の担当者の受講資格には看護師、栄養指導の受講資格には栄養士も含まれており、現在 医師、保健師、管理栄養士が示されております。それ以外の方々が特定保健指導の実施 者となり得るかどうかは、今後検討して答えが出てくるだろうと思っております。  最後に、産業保健の中心的な役割を担っている産業医の講習も行われておりますが、 産業医も保健指導に絡んでいっていただきたいということで、こういったプログラムの 観点も含めて研修を行うことが望ましいのではないかということです。  その他として、健康診断結果の保存方法と提出方法の取扱いです。労働安全衛生法で は健康診断結果の保存を義務づけておりますが、その保存方法、例えば電子媒体で保存 しなさいということは特に定めておりません。一方、高齢者医療法では大量の健康診断 情報が行き来し、やり取りされることが考えられるので、標準的な電磁気様式での保存・ 提出が検討されています。高齢者医療法では、事業者に対して医療保険者が労働安全衛 生法に基づく定期健康診断の結果を求めることができることになっているため、労働者 の健康診断結果の情報は標準的な電磁気様式での提出が期待されています。  しかし、労働安全衛生法では、一義的に標準的な電磁気様式での保存・提出を規定す ることになると、事業者にとってかなりの負担になるので、一律に法令上規定するので はなく、事業者が自ら電磁気様式で健診結果を提出できる健診機関を選ぶといった、デ ータの提供が事業者にとって過度の負担にならない範囲で医療保険者に協力していただ くことが適当だと考えております。  最後に、個人情報の保護についてです。特定健康診査・特定保健指導では、健康診断 の結果などを継続的に管理して、経年的に有効活用することが重要な点とされており、 労働者の健康情報については事業者から保険者、労働者の保険が変わったとなると保険 者から保険者へ移動することが考えられております。労働者の継続的な健康管理の観点 からは望ましいけれど、健康に関する情報は労働者の個人情報であることを十分に留意 し、その保管や管理については情報の保護に十分配慮する必要があると考えております。 検討会では、産業医に特定保健指導の情報も含めて労働者の健康情報を集約することは できないかとの指摘もありましたが、医療保険者の委託を受けて事業者が特定保健指導 を行う場合以外は、労働者あるいは事業者の承諾を受けたあとに、医療保険者の了解を 受けて産業医に情報が集まることになるだろうと思います。  すでに通知を出しておりますが、雇用管理に関する個人情報のうち、健康情報を取り 扱うに当たっての留意事項として通知を出しています。それには、産業保健業務従事者 以外の者に健康情報を取り扱わせる時は、これらの者が取り扱う健康情報は利用目的の 達成に必要な範囲に限定されるように、必要に応じて健康情報を適切に加工した上で提 供する等の措置を講じることとなっており、こうした留意点についてより理解を得る努 力が必要であろうと思っております。 ○和田座長 どうもありがとうございました。今回の検討会は、どちらかというと健診 項目について十分議論していただき、いま説明のあった保健指導その他については要望 事項になるわけで、具体的なことはあまりないだろうと思います。こちらから、こうし ろと言うわけにはいかないわけですから、その辺りはきちんと考えてやっていただくと いうことで、とりあえずは要望事項的に書いていくことになるだろうと思っております。 もちろん、医療保険者との関係は医師……になるべくやっている……、THPスタッフ や産業医が活躍できる場を提供してほしいということです。個人情報については、当然 のことながら考えてほしい。データの提出に関しては、なるべくそういうことができる 所にお願いしたらどうかということで、要望事項が書いてある所です。具体的にこうし なさいとは言えないと思います。それは次の問題になると思いますが、何かご意見はあ りますか。 ○堀江委員 たしか、前回の検討会で最後に質問した点だと思うのですが、いままでは 産業医が事業場の健康管理の医学的な部分を担当し、事業者に助言・指導あるいは勧告 をしてきたと思います。残念ながら、現在も安衛法の保健指導は努力義務にとどまって いるので、実施していないケースも多く、平成17年の労働安全衛生基本調査では保健 指 導を実施している事業場は27%ですので、73%は実施していません。しかし、今回幸い 保険者が保健指導を徹底するわけですので、非常に期待しているのですが、主体が違う のでそれが問題だと思います。産業医としては、従業員の個別のさまざまな悩みや仕事 に対する思いをじっくり聞きたいのですが、忙しくてなかなかできない。それを保険者 のほうで保健師等を中心に聞いていただけるわけですから、就業上の措置が必要ではな いかと思った事例は産業医に情報を伝えていただき、産業医がなるべく作業関連疾患の 発生を予防できる体制があるほうが、健康管理としては望ましいのではないかと思って おります。  ところが、実施主体が違うので、現場の医療職が自由にできない状況にあるのではな いかと思うのです。これは、すべて本人同意がないと何も言えないという個人情報保護 法上の規制がかかっているので、そうならざるを得ないのでしょうか。そこは何か解釈 していただいて、産業医を中心に健康管理の情報が保険者からもちゃんと伝わる仕組み を作ったほうがいいのではないかと思います。これは個人的な意見ですが、いかがでし ょうか。 ○今村委員 これは産業医の問題で、もちろんこの検討会はそういう場なので、それは 大きな問題だと思います。治療中の方が保健指導を別の所で受けたときに、その情報が 治療している医師にきちんと伝わるかどうかという問題もあって、構図としては同じだ と思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。 ○生活習慣病対策室長 今回労働安全衛生部局と保険局、健康局と一緒にこのような形 でお話をさせていただいて、私はいろいろな意味で有意義なことだと思っております。 それぞれの持っているそれぞれの問題を、なるべく共通のテーブルで共通に問題を認識 しながら、目指すべきところは似たようなところだと思いますので、そこをどう連携し ていくかの話だと思います。このような形で連携ができることは非常に大事だと思って おりますので、是非これからもよろしくお願いします。 ○和田座長 是非十分考えていただいて、こちらの要望もお願いして入れていただけれ ばと考えております。 ○堀江委員 先ほどの議論で、私の個人的な考えですが、個人情報保護法第23条が同 意 のない第三者提供の禁止を定めており、主体が違う場合にはその間で個人の情報を移動 させてはいけないことになっています。その適用除外規定の中に、生命、健康、あるい は財産に危害があるときには、同意がなくても伝えることができるという条文がありま す。具体的にどういう場合がそれに該当するかは、医療介護事業者のガイドライン、そ の他の通達等で示していると思いますが、その中に書いていただければ、保険者が就業 上の措置が必要ではないかと感じた事例でかまわないと思うので、そういったものが産 業医あるいは主治医にきちんと伝わることで、初めて情報が一本化され、適切な健康管 理ができるようになる気がするので、是非お願いします。 ○衛生専門官 堀江委員に質問なのですが、いま特定保健指導の情報が産業医の所に入 ってくると、より適切な健康管理ができるとおっしゃいましたが、いままでの堀江委員 のご指摘では、喫煙歴は知らなくてよい、腹囲は知らなくてよい、でもそれに基づく特 定保健指導の情報はほしい。そうなると、産業医が知ってしまえば、結局何らかの責任 が発生するのではないですか。そこは自己矛盾が発生しているのではないですか。 ○堀江委員 私が申し上げているのは、一律に喫煙歴を知る必要はない。あくまでも、 就業上の措置に必要な場合は、産業医はきちんと発動しなければならないということで す。 ○衛生専門官 特定保健指導は、喫煙歴の有無も含めた情報を基に階層化しているわけ ですから。 ○堀江委員 保健指導はメタボリックだけをやることになっていますが、法律上はそこ までだと思いますが、現場では労働者はメタボリック以外のことを話してはいけない場 だとは思わないと思うのです。だから、実際にはいろいろなことが述べられるのではな いかと私は思っています。これはモデル事業が行われているので、その辺りがどうなっ ているか興味のあるところですが、例えば健診項目に入っていないメンタルヘルスの問 題や過重労働の問題が、保健指導をしていない事業者には伝わらないけれど、保健指導 をしている保険者に伝わった場合に、それを事業者にフィードバックしなかった保険者 の責任は大きいのではないかと思うのです。すなわち、医療職としては原因が事業者に あることに気づいた時点で、その情報を産業医に集める必要があるのではないかと思っ ているのですが、その点はいかがでしょうか。 ○衛生専門官 産業医に集めるのか、事業者に集めるのか、それがよくわからないので すが。 ○堀江委員 望ましいのは産業医だと思います。しかし、産業医がいない場合は、保険 者側で情報を加工した上で事業者に伝えることも必要だと思います。 ○労働衛生課長 委員のお考えは、どちらかというと必要ないものは定健診項目に入れ る必要はない、就業上の措置に関係ないものは入れなくていいということだと思うので すが。 ○堀江委員 途中で遮って申し訳ないのですが、何度も申し上げているように、一律に やることについては、就業上の措置につながる蓋然性が低いものは一律にやる必要はな いということです。しかし、たまたま事例として就業上の措置に関わる問題があった場 合には、情報をきちんと連携し、一元化して産業保健の中で処理すべきだと思っていま す。 ○労働衛生課長 ですから、例えば保険者が知った情報を事業者もしくは産業医に出さ なければいけないかという問題は、また別の問題で。 ○堀江委員 そういうことを申し上げているのではありません。特定保健指導の結果を 一律に事業者に渡すとか産業医に渡すということではなく、事例として就業上の措置が 必要な場合には、産業保健が発動すべきだと言っているのです。 ○労働衛生課長 就業上の措置というのは職域の話で、医療保険は関係ない世界ですの で、それを無理につなぎ合わせるのは。 ○堀江委員 単一健保の場合は、当然事業所の中のことをよく知った保健師がたくさん 活躍しているわけですから、彼女たちが知った情報で職場に問題があることに気づく場 面がないとは言えないのではないでしょうか。 ○労働衛生課長 本当に事業所や産業医として知らなければいけない項目、あるいはそ れを知るための手段として健康診断があるわけですから、委員がおっしゃったことだと、 健康診断の項目をどんどん増やさなければいけないという議論になると思うのです。 ○堀江委員 一律に増やすべき健診項目は、就業上の措置につながる蓋然性が高いもの に限るべきだと思います。 ○労働衛生課長 委員は就業上の措置に関係するからとおっしゃっているので、そうい う言い方をしているのですが。 ○堀江委員 いいえ、就業上の措置に関係する蓋然性が低いものは、増やす必要はない。 しかし、事例として就業上の措置が必要なものは、きちんと情報を一元化すべきだとい うことで、私は矛盾しているとは思っておりません。 ○労働衛生課長 いずれにしても、いろいろと個人情報の関係や法の関係などがあって、 7頁に書いてある仕組みしかない。逆に言うと、あくまでもメタボリックシンドローム 関係の情報については、できれば項目は一致する、その上で保健指導は産業医にお願い する、そこまでは全部うまく回ると言えると思います。 ○和田座長 健診そのものは、どちらかというと事業者でやる定期健康診断が中心にな って、その情報を渡す形ですね。 ○衛生専門官 そうです。 ○和田座長 そうすると、その結果は産業医が当然見なければいけないわけですし、産 業医は必ずしも1回だけ指導すればいいということでもないですね。普通、産業医は何 回にもわたって必要な人を呼び出して指導しているわけですから、その体制ですれば、 十分産業医として活躍できるだろうと思います。 ○堀江委員 仕組みの議論と個別の事例の議論は別にしたほうがいいと思います。私は 事例の議論をしていました。 ○和田座長 法律的には、事業者が健康診断の結果は医療保険者に渡さなければいけな いことになっているのですか。 ○医療費適正化推進室企画官 保険者がほしいと求めた場合には、事業者は提供しなけ ればならないことになっています。 ○和田座長 それは、本人の許可を取らなくても提供することになりますね。 ○医療費適正化推進室企画官 はい、法律上書いてありますから。 ○堀江委員 ただ、その場合仕事の情報は求めても渡す必要はないわけですね。 ○医療費適正化推進室企画官 もちろん、特定健診の項目だけです。 ○堀江委員 そうすると、その人がどんなばく露を受けているかとか、仕事に関わる情 報で必要だと思っても、それは保険者に渡してはいけないルールになっているというこ とですか。 ○医療費適正化推進室企画官 通常の個人情報保護法の適用になります。 ○和田座長 そういう情報がなければ、産業保健に関する保健指導はできないと思うの ですが。 ○堀江委員 そこは難しいと思いますね。 ○和田座長 そういうところを考えて、きちんとしてくださいと。ここは要望のところ ですから、要望をいくつか出して、いまおっしゃったことも要望として出すということ でいいのではないでしょうか。これはそんなに大きな問題ではないと思いますが、ほか に何かありますか。 ○堀江委員 1点だけ、ずっと前にご質問したと思いますが、そのまま解決していない ことが2つほどありました。1つは簡単なことで、いわゆる労災保険の要望給付で「特 定保健指導」という名前がついているものがあるのですが、これとの整理をどうするか ご質問したまま何も回答がない状態なのです。これはどうなっているのでしょうか。 ○衛生専門官 基本的には、「特定保健指導」という言葉自体は労災補償部が先なので すが、向こうとしてはあまり変えるつもりはないという状況です。そこは、うまく労災 保険法上の特定保健指導と高齢者医療法上の特定保健指導を分けていくと。 ○和田座長 きちんと区別できるようにするということですね。 ○堀江委員 特定保健指導が2つになるのですか。 ○和田座長 そうですね。必ず前置詞をつけないとこんがらがってしまいますね。 ○堀江委員 もう1点は、よく保険者間を移動する、事業者を移動する人がいたり、長 年にわたっていろいろな保険者を渡り歩く人がいるのですが、第1回のとき、初めて被 保険者になったときはずっとデータがたくわえられて移動していくのだというご説明が あったと思います。そういう理解でよろしいのでしょうか。 ○医療費適正化推進室企画官 そこは、私どもが1、2週間ほど前に保険者の健診のあ り方に関する検討会をして、その中で議論になりました。当初、法律上の枠組みとして は、移動したときに新しい保険者が古い保険者に請求すればデータを渡せることになっ ており、この取扱いを具体的にどうするかという観点から議論になりました。1つは、 データの保存時間を原則的に最低年期は5年間にしようという形になっております。  もう1つは、データの授受をする際には、ご本人の同意は法律上厳密には要らないの ですが、保険者間の移動をする場合には本人の同意を取り、かつ新しい保険者の費用負 担でデータの授受をする扱いになったので、データのやり取りが保険者間で頻繁に起こ らなくなるのではないかと思います。ご本人の確認を取り、かつ新しい保険者がそれに 伴う若干のデータの移送費用等を負担することになりますので、本当に保険者として新 しい被保険者の情報を長期にわたってどうしても管理したいという強い意思があれば、 そこまでされると思いますが、そうでなければデータは基本的にご本人に送った健診結 果をご本人の責任で保存してもらって、それを活用していく形で考えています。今後全 国あちこちでいろいろなネットワークができれば、その扱いを変えることは可能かもし れませんが、現時点ではネットワークの構築には莫大な費用がかかるので、そこまで保 険者間でやり取りするのは現実的ではないだろうということで、そういう扱いになって おります。 ○堀江委員 逆に、健康管理や保健指導をする立場に立って考えれば、データは長年あ ったほうが医療職としては使いやすいのですが、どこかにデータをプールしておいて、 移動した先の保険者が本人の同意があるということでそこにアクセスすると、必要な分 のデータが出てくる仕組みは考えられていないのでしょうか。 ○医療費適正化推進室企画官 それも、将来的には個人の同一の番号で結合する仕組み ができればいいのですが、技術的には可能だと思いますが、これに関してはプライバシ ー保護や個人の番号制度についていろいろな議論がありますので、現時点ではそれを想 定したシステム化はしておりません。今後の中長期の検討課題という位置づけかなと思 っております。 ○堀江委員 ずっとこの議論を続けていて思ったことは、安衛法は事業者が医療情報を 持って見てしまうところが、私も非常に気がかりでいろいろな質問をしている点です。 逆に言うと、きちんと個人情報や健康情報を守れるデータベースを、私は医療機関がい いのではないかと思っているのですが、健康診断を実施した医療機関では、おそらく今 日話題になった喫煙歴や服薬歴、家族歴といったことは、普通の医療では必ず聞く情報 なので、健診では聞いていると思うのです。ただ、それを事業者の記録としては送って いない。だから、事業者としては扱っていない。法律もそこまで就業上の措置に使えと は言っていないわけですので、医療機関が大きなデータベース、あるいはネットワーク を作って、事業者が必要な安衛法に定められた項目は、事業者が本人の同意を得てそこ からいただく、保険者がそこから一部をいただく、保険者が移動すれば新しい所からい ただくという流れができれば、医療関係者としてもすっきりする気がしたので、そうい う構想があれば伺いたいと思った次第です。 ○和田座長 話を聞いて、非常に莫大な費用がかかるという、実現性の関係になってし まうのではないかと思いますが、大体以上でよろしいですか。  では、今回いただいた意見を踏まえ、私と事務局で相談し、次回に報告書(案)を提 出することにします。よろしいですか。 (異議なし) ○和田座長 どうも、本日は非常に熱心な議論をいただきましてありがとうございまし た。次回に報告書を提出することとします。  次回の日程について、事務局からご報告をお願いします。 ○衛生専門官 第5回は年を越して実施する予定ですが、日程についてはいまのところ 未定です。日程が決まり次第お知らせします。 ○和田座長 それでは、本日の検討会はこれで終了いたします。どうもありがとうござ いました。 照会先:厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課 電話03−5253−1111(内線5495,5181)