06/12/15 労災医療専門家会議(平成18年度) 第2回議事録 第2回労災医療専門家会議 日時 平成18年12月15日(金)14:00〜 場所 中央合同庁舎第5号館専用第17会議室 ○笹川係長 これより、第2回労災医療専門家会議を開催いたします。  まず、前回欠席された先生をご紹介申し上げます。関東労災病院泌尿器科部長の石田 先生です。せんぽ東京高輪病院院長の戸田先生です。  なお、岡崎先生、小出先生、馬杉先生におかれましては、本日はご都合により欠席で す。  また、事務局として、本会議に今回から出席する者を紹介いたします。職業病認定対 策室長補佐の天野です。労災医療専門官の宮原です。中央職業病認定調査官の上村です。  次に、資料のご確認をお願いいたします。本日の資料は、資料1、資料2、参考資料 となっております。資料に不足のある方はいらっしゃいませんか。  それでは、柳澤座長、進行をお願いいたします。 ○柳澤座長 議事に入りたいと思います。本日はご案内のとおり、アフターケアの基本 的考え方に関する検討部会での検討結果を報告することと、それに基づいてアフターケ アの措置内容について、具体的に検討することになっております。  第1回の労災医療専門家会議において、皆様方にご承認いただいて、アフターケアの 基本的考え方に関する検討部会を立ち上げて、それによって検討を進めてまいりました。 その結果をご報告したいと思います。10月の初めから11月の中旬にかけて3回ほど検 討部会を開いて、いくつかの課題について検討しました。短期間であったために、すべ てについて詳細に検討することはできなかったわけですが、一応、従来からのアフター ケアについて、各過程においていろいろと提起された問題を事務局が整理して、それに ついて検討するという形で検討を進めてまいりました。検討部会としては、資料1とい う形でまとめたものです。それについて事務局から説明して、ご議論いただきたいと思 っています。事務局のほうから説明をしてください。 ○園田課長補佐 資料1ですが、構成として、第1は検討の背景、第2の検討結果は4 つの項目、対象傷病、対象者、措置範囲、実施期間という項目で取りまとめをしていた だきました。検討部会の先生方に代わりまして、読み上げる形で紹介をさせていただき ます。  アフターケアの基本的考え方に関する検討結果について。第1、検討の背景。  アフターケアは、労働者災害補償保険法第29条第1項第1号に規定する労働福祉事業 の「業務災害及び通勤災害を被った労働者の円滑な社会復帰を促進するために必要な事 業」の一つとして実施されているものであり、「労働福祉事業としてのアフターケア実 施要領」によって、業務災害又は通勤災害によりせき髄損傷等の傷病にり患した者で、 その症状が固定したものにあっては、症状固定後においても後遺症状に動揺をきたす場 合が見られること、後遺障害に付随する疾病を発症させるおそれがあることにかんがみ、 必要に応じ、予防その他の保健上の措置を講じ、当該労働者の労働能力を維持回復せし め、円滑な社会生活を営ませるものとされている。  アフターケアについては、従来から労災医療専門家会議において、実施要領の趣旨を 踏まえて、対象傷病ごとに順次措置内容等の検討・見直しが行われてきたところである。  一方、平成17年12月24日に閣議決定された「行政改革の重要方針」において、労働 保険特別会計については、原則として純粋な保険給付事業に限り本特別会計にて経理す るものとし、労働福祉事業については、廃止も含め、徹底的な見直しを行うものとされ た。  この重要方針を受けて、平成18年6月に成立した「簡素で効率的な政府を実現するた めの行政改革の推進に関する法律」において、労働保険特別会計において経理される事 業は、労災保険法の規定による保険給付に係る事業に限ることを基本とし、労災保険法 の規定による労働福祉事業については、廃止を含めた見直しを行うものとするとされた。  このことを踏まえて、厚生労働省では、労災保険の保険給付等の事業に資するという 観点から、真に必要な事業に限定するなど、事業の縮小・廃止を含め、徹底的な見直し が行われているところである。  このような労働福祉事業の見直しの中にあって、アフターケアは、治ゆ後における被 災労働者の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業であると評価されており、今後 も継続して行う必要性のある事業と認められている。  しかしながら、今後の労働福祉事業の見直しの方向性としては、廃止の対象とならな い事業であっても、引き続き事業の合目的性と効率性を確保するため、適宜、個別事業 の必要性についての徹底した精査を継続的に実施することとなっており、アフターケア についても、このような見直しの動きを踏まえて、引き続き労働福祉事業の趣旨・目的 に沿った運用を図っていくことが求められているところである。  よって、今回、専門家会議の中に「アフターケアの基本的考え方に関する検討部会」 を設け、今後とも適切にアフターケア制度を運用していくために、アフターケアの措置 内容等に関する検討・見直しを行うに先立ち、改めて労働福祉事業の趣旨・目的に適合 するアフターケアの基本的考え方を整理することとしたものである。  第2、検討結果。1、対象傷病。(1)、現状。  アフターケアの対象傷病は、昭和43年の炭鉱災害による一酸化炭素中毒[症]を始め として、せき髄損傷、頭頸部外傷症候群等などを順次追加・変更し、現在、下記の21 傷病となっている。  21傷病に係るアフターケアの創設については、地方労災医員等の意見を踏まえた労災 補償業務を担当する職員等からの要望、労災医療に携わる医師等からの意見、炭鉱災害 による一酸化炭素中毒[症]やサリン中毒という特定の労働災害に係る対策の必要性等 を踏まえ、専門家会議において、実施要領の趣旨に照らし、医療専門家により、個々の 傷病をアフターケアの対象とすることの適否を検討してきている。  対象傷病についての読上げは、省略いたします。  (2)、検討結果。ア、対象傷病の追加、変更及び削除について。  21傷病がアフターケアの対象とされてきたことには一つひとつ理由があるが、21とい う数に理論的な意味があるものではない。  労働福祉事業の見直しが行われているところであるが、対象傷病を21傷病に限定し、 今後一切の追加・変更を認めないとすることは、21傷病のみを特別扱いすることとなり、 不適当である。  必要に応じて対象傷病を追加・変更することは当然であるが、医学・医療の進歩によ って、アフターケアが不要と認められるものについては、対象傷病から除外しなければ ならない。  従来の制度の運用において、特に問題となることがなければ、制度の基本を変える必 要はない。  対象傷病については、専門家会議において、現行のアフターケアが適当か否かという 観点から、その必要性を検討し、追加、変更及び削除について判断することが適当であ る。  イ、アフターケアを必要とする傷病について。  アフターケアは、実施要領において、症状が固定した後においても、後遺症状に動揺 をきたしたり、後遺障害に付随する疾病を発症させるおそれがある場合に、予防その他 の保健上の措置を講じ、被災労働者の労働能力を維持回復し、円滑な社会復帰を促進す るために実施するものとされている。  この実施要領の規定から、対象傷病については、次の二つの要件を満たす傷病と解す ることができる。  (1)「後遺症状に動揺をきたすおそれがある傷病」又は「後遺障害に付随する疾病を発 症させるおそれがある傷病」。  (2)「予防その他の保健上の措置」を講じることによって、「後遺症状の動揺」又は「後 遺障害に付随する疾病の発症」を予防することができる傷病。  対象傷病について、さらに細かく限定的な要件を定めることは難しいことから、今後、 21傷病の他にアフターケアの趣旨に合致する傷病が認められる場合には、実施要領の趣 旨に沿って、アフターケアを必要とする傷病であるか否かを検討することが適当である。  一方、アフターケアは、労働福祉事業として行われるものであることから、円滑な社 会復帰を促進するために必要とされるものでなければならない。  そして、アフターケアにおける社会復帰については、少なくとも次の(1)から(3)を満た すことが必要である。  (1)療養を必要としないこと。  (2)社会生活を続けること。  (3)治ゆ時の生活機能が維持されていること。  現在のアフターケアは、上記のとおり、保健上の措置を講じることによって、後遺症 状の動揺又は後遺障害に付随する疾病の発症を予防するものであることから、(1)から(3) を満たすものである。  よって、アフターケアは、被災労働者が自立や職場復帰に至らない場合であっても、 円滑な社会復帰を促進するために必要なものということができる。  2、対象者。(1)、現状。  アフターケアの対象者は、傷病別アフターケア実施要綱によって定められるが、下記 のとおり、障害等級を要件とし、一定の障害等級に及ばないものを対象者から除外して いる対象傷病がある。  障害等級を対象者の要件としている傷病についての読上げは、省略します。  (2)、検討結果。  対象者については、次のア及びイにより、基本的には一定の障害等級を要件とするこ と、また、円滑な社会復帰も考慮して個別に判断することが適当である。  ア、障害等級を対象者の要件とすること。  医学的な観点からは、障害等級には相当な合理性があり、障害等級が高い程、アフタ ーケアを必要とする度合いが高くなるものと解されることから、障害等級を対象者の要 件とすることは常識的な方法である。  なお、具体的にどのような種類の後遺症状や後遺障害につきアフターケアの必要性が 高いかは、それらの後遺症状や後遺障害の種類によっておのずから異なるものと考えら れ、各後遺症状や後遺障害に対する現行の障害等級の基準は、第2の1の(2)のイで 示した対象傷病についての二つの要件を勘案しているものというべきである。  イ、円滑な社会復帰を考慮すること。  いたずらに治療を継続することなく、適当な時期に治ゆとなり、アフターケアに移行 することには、被災労働者の社会復帰を促し、援助する意味もある。  また、被災労働者は、通常、治療を終了することに対して不安を感じることから、治 ゆとなる場合に、アフターケアは、被災労働者が精神的安定を得る一つの大きな支えと なる。  アフターケアは、内容が周知され、制度の趣旨・目的に沿った運用がなされることに よって、被災労働者の社会復帰により大きく貢献するものと考えられることから、前述 の障害等級の原則を維持しながら、一定の障害等級に及ばないものであっても、例外的 に、より弾力的な運用を行うことが適当である。  3、措置範囲。(1)、現状。  アフターケアの措置は、保健上の措置として実施されている。この保健上の措置とは、 アフターケア独自の用語であり、アフターケアが治ゆ後の措置であることから、治療を 除くものとされている。  現在、保健上の措置の範囲については、実施要領によって、下記のように定められて おり、さらに具体的内容については、実施要綱において、対象傷病ごとに限定的に列挙 されている。  保健上の措置の範囲についての読上げは、省略します。  (2)、検討結果。ア、進歩する医学等への適応について。  医学等の進歩に適応するアフターケアの見直しが行われない場合、その期間について、 見直しの対象となるアフターケアの対象者にとって不利になるとも考えられる。  しかし、労災補償行政は、これまで医学等の進歩を取り入れてきており、医学等の進 歩に適応するため、アフターケアを必要とする対象傷病の措置範囲等を見直す必要があ る場合には、適時、専門家会議を開催し、検討・見直しすることが適当である。  イ、「治療」と「予防その他の保健上の措置」の区分について。  医学的な見地から、治療と保健上の措置を明確に区分することは困難であるが、アフ ターケアの制度上、それらを整理する場合に、本来、治療として把握されるべき理学療 法や注射等の措置がアフターケアの範囲として掲げられていることは不適当である。  アフターケアは治療を除くものとされていることから、実態として行われる医療行為 に重なる部分はあっても、それを制度における文言上明らかにするために、治療に含ま れると解される事項(理学療法、注射、精神療法・カウンセリング等、保健のための薬 剤の支給)については、実施要領上、整理することが適当である。  また、整理する事項のうち、これまで実施してきた措置については、診察、保健指導、 保健のための処置に含めて実施することが適当である。  なお、アフターケアの対象者に自立する心構えと具体的な生活態様を要請することは、 最近、様々な福祉分野において同様の議論がなされているところであり、労災保険にお いても、被災労働者自身の生活についての努力をできるだけ重視し、それを社会復帰に 結び付けることは重要である。  そのようなことから、保健指導には対象者に対する適正な生活習慣の指導を含めるこ とが望ましい。  4、実施期間。(1)、現状。  原則とするアフターケアの実施期間の限度は、実施要綱において、対象傷病の特性に 応じ、下記のとおり、2年、3年及び制限がないものとされている。  実施期間を2年としている対象傷病のうち、頭頸部外傷症候群、頸肩腕症候群及び腰 痛については、治ゆ後2年以内で後遺症状が安定するものと医学的に評価されることか ら、継続を認めていないが、その他の実施期間が定められている対象傷病については、 医学的に継続してアフターケアを行う必要があると認められる場合には、回数に制限な く健康管理手帳の更新が認められている。  実施期間による分類についての読上げは、省略します。  (2)、検討結果。ア、対象傷病ごとに実施期間を定めることについて。  実施期間の定めについては、従来、対象傷病ごとに、2年、3年及び制限がないもの とされてきており、対象傷病ごとに実施期間を定めることを改める特段の理由はない。  特定の傷病を除き、実施期間の定めがないことは不適当であり、一定の期間ごとにア フターケアの必要性を見直し、場合によってはアフターケアを終了するという観点から も対象傷病ごとに実施期間を定めることは適当である。  イ、実施期間の見直しについて。  実施期間は、原則として対象傷病ごとにアフターケアを必要とする期間(その期間の 終了をもってほとんどの事例がアフターケアを終了することができる期間)とすること が適当である。  実施期間の定めは、医学的検討によるべきものであり、実施期間に制限がない対象傷 病も含め、21傷病の全てについて、現在の医学等の進歩を踏まえて病態を検討し、実施 期間を見直すことは適当である。  ウ、実施期間の継続について。  実施期間を超えて、アフターケアを継続する必要のある対象者が存在する可能性はあ るが、手帳の更新が繰り返されることは、実施期間を定めることと矛盾し、アフターケ ア制度の趣旨にそぐわないものである。  一方、手帳の更新回数等によって、アフターケアを必要とする期間を対象傷病ごとに 一律に定めることは難しいことから、対象者ごとに実施期間の継続の必要性を検討しな ければならない。  そのために、手帳の更新時に診断書の提出を依頼し、その内容を確認することは必要 である。  実施期間を超えてアフターケアの継続を認めるにあたっては、その必要性を具体的に 確認できる診断書の書式を作成し、その記載内容を充実させることが適当である。  また、アフターケアの措置内容についても、審査を十分に行うことによって、アフタ ーケアの不要な更新がなされなくなるものと考える。  なお、診断書を書く医師については、アフターケアの継続を必要とする状態を正確に 判断できる専門医であることが望ましいが、現状においては、診断書の提出及びその記 載内容を適切なものとしていくことによって、徐々に良い診断書が提出されるようにす ることが適当と考える。  以上です。 ○柳澤座長 検討部会の基本的考え方に関する検討結果としては、事務局が読み上げた 内容としました。それに基づいて、従来から課題となっているいくつかの具体的な事項 については、この後の2の措置内容にかかわる検討で、ご検討いただくことになるわけ です。まず、この基本的考え方に関する検討結果、今、申し述べたところについて皆様 方のご意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。ご質問なり、ご意見なり、 ありましたらどうぞ。検討部会のメンバーとして法律的な立場からご検討いただいた山 口先生、何かコメントはありますか。 ○山口先生 事前に拝見して、特に問題ないと思います。 ○柳澤座長 保原先生はいかがですか。 ○保原先生 いまのところ特にありません。 ○柳澤座長 これでよろしいだろうということです。ざっと読み上げただけでは、なか なか理解がしにくいことがあるかもしれませんが。 ○伊地知先生 整形外科の伊地知です。整形外科関係では、まだ維持的な治療は行いな がら、症状がほとんど動揺しないというか、いわゆる症状固定と考えられる時期に今ま での治療を終了して症状固定として、後遺症診断書を書くというケースが多いかと思う のです。それはアフターケアが付いて、その後やはり維持されるというような、治療の 継続を求めてそのように移行していることも多いかと思うのですけれども。治療と保健 の違いで、治療は外すということになっていますが、その辺のもうちょっと厳密な検討 はどうでしょうか。 ○柳澤座長 その点については、検討部会でも随分議論しました。ある意味で矛盾とい いますか、一つは傷病者が社会復帰をするためには、症状が固定した段階で治ゆとする ことが社会復帰を促進するための要件である、ということが基本的な根拠としてあって、 その一方では、せき損などの場合のように、何らかの形で従来から行われているような 医療に含まれる措置を行うことが、機能を維持する上で必要であると。それについては どのように考えるべきだろうか、という議論は、制度の趣旨にのっとった形で、アフタ ーケアとして行う場合には保健上の措置ということでまとめようという考えでまとまり ました。  その中には、従来から行われていた医療行為に属するものが含まれるということもや むを得ない。現実の場面では、従来から行われていたものはそのまま認められるとしま す。それについて、もし削除する必要があるならば、それはこの労災医療専門家会議に おいて検討して削除していただきたいということです。当面の検討内容としては、文言 の整理という形で対応することでよろしいのではないかということが検討部会としての 考え方です。何となくあいまいな感じがするかもしれませんが、基本的には、保健上の 措置の内容については、従来から行われてきたものは含めていってよいのではないか、 というのが検討部会の結論です。 ○奥平先生 今の報告にちょっと追加しますと、アフターケアの措置に、治療や注射と いうものを挙げてあるのはちょっとおかしいのではないか。それらを全部保健上の措置 の中に入れて、それぞれの傷病について、専門の先生に検討していただいたらどうかと いう内容になったわけなのです。ですから、いま先生がおっしゃったように、治療が全 く否定されるなどという趣旨で保健上の措置の中に含めたわけではなく、その内容は、 それぞれの傷病について専門の先生に検討していただくということだったと思います。 ○柳澤座長 私からも簡単に追加すると、行政改革の趣旨に沿った形で、アフターケア についても見直しを行う必要があるだろうということで、それが専門家会議に付託され た課題であるわけですが、具体的に細かいところを検討するということで、医学専門家 の領域に法律専門家の方々にお加わりいただいて検討部会を立ち上げて、基本的な見直 しの動きに沿った形の作業を進めてきたということです。  対象傷病については、現在アフターケアの対象になっている傷病について、削除する とか追加するなどということは検討部会の役割ではありませんので、従来からの経過に 従って、全体を含めることは適切であろうという考え方です。それが資料1の3頁に書 いてあるところです。  ただ、その場合でも3頁のイにあるように、対象傷病の要件として(1)と(2)はこの内容 で理解しておくことが必要です。そして、社会復帰という観点が重要であるということ が指摘されて、その社会復帰ということは、就業する、職場に復帰をするというだけで はなくて、自立した家庭生活を行うことなども含めて、やはり社会復帰というカテゴリ ーに含めていいだろうということで、社会復帰の要件として、4頁の(1)から(3)にある「療 養を必要としないこと」、「社会生活を続けること」、「治ゆ時の生活機能が維持され ていること」、これらをアフターケアの要件として、保健上の措置を行う。具体的には、 医療の内容と理解されるものも含まれるということです。  対象者については、障害等級を要件とすることの検討をしましたが、障害等級は傷病 の重症度によって決められているということで、当然、重い等級の方のほうがアフター ケアを必要とするだろうということは、一般的な考え方として妥当である。ただし、個 別のケースでそういった障害等級のカテゴリーに属さない方であっても、アフターケア を必要とするという相当な理由がある場合には、それは対象とするということでよいの ではないか、ということです。  5頁には、措置範囲としてどういう内容であろうかということで、現在の実施要領に 書かれているものが下のほうにありますが、こういったものについては制度的な文言と いうことからいって、あまり具体的に注射うんぬんといった言葉を掲げることはしない で、保健上の措置という言葉で一括りにしたらいかがであろうか、ということです。  6頁においては、医学等の進歩によって、アフターケアの見直しは当然行われるべき であろう。それはそのような必要が生じたときに、適宜、専門家会議を開いて検討をし、 見直しを行うということでよいでしょう、ということです。  「治療」と「保健上の措置」については、6頁のイに書いてあるところです。これま で実施してきた措置については、診察、保健指導、保健のための処置に含めて実施する ことが適当であろう、という判断でした。  それから、障害者自立支援法、その他、国の保健政策にのっとって、保健指導の中に は対象者自身が適正な生活習慣を行うようにということの指導を含めることが適切であ るという文言が加えられております。  6頁の下の4の実施期間については、2年、3年及び制限なしということですが、こ れはそれぞれの傷病について検討されて決められた期間ですので、検討部会においては その期間について特段に問題にするということはしませんでした。もしもその期間が現 状の医学の進歩、あるいは医療の内容からいって不適当であるならば、それはまた専門 家会議で議論していただく。ただし、現在のアフターケアの更新という問題があって、 これについてはだいぶ議論しました。それは手続としては、手帳を交付することが繰り 返されるということで、実施期間が2年、3年という傷病については、アフターケアの 実施期間を更新する、延長する必要があるときには、最初のアフターケアを実施する期 間が2年の傷病については、さらに2年間アフターケアを認めるという形で手帳が更新 されてきた。3年の場合には3年と。  しかし、本来アフターケアというのは大体第1期、つまり最初に実施期間を認めたと ころで、ほとんどの患者はそれでアフターケアは必要となくなるであろうということが 期待されているような状態で、実施期間の更新をまた2年とか3年などというように繰 り返すことは、あまり適切ではないだろう。更新の時点においては、アフターケアをあ とどのぐらいの期間行ったらいいかということは、個々のアフターケアの実施期間の延 長を申請する医師が診断をして、その診断書に基づいて、その期間も医師が診断書に記 載することによって、それを必要な更新の期間としようと。例えば3年間というように 決められていた傷病の対象の被災者の方が延長するときは、それは1年でもいいし2年 でもいいと。それはまたその時点で更新を認めた医師の判断が1年であったとしても、 1年経ったところで、さらなる更新が必要であるならば、その時点でまた診断書を出し ていただいて、それを検討して判断すればよいということで、2回目以降、従来のよう に手帳を更新するということで、繰り返し2年あるいは3年と行われていたものが、診 断書の内容によって期間を決める。当然それに伴い、更新が果たして必要なのかどうか ということを具体的に診断できるだけの十分な情報を得た診断書を得るようにしようと いうことなのです。  ところが、その診断書を21傷病について全部細かくつくるかというと、それはそれで なかなか大変であるということで、検討部会での医学専門家の意見では、現状において は、更新が必要だという診断書が出てくると、中身についてはあまり記載がなくても、 ほとんどそのままフリーパスにしていたような状況があったとのことでした。しかし、 それはやはり本当に更新が必要かどうかを検討できるだけの十分な情報を得るようにし たい。そのためには、21傷病について共通の項目を列挙して、○を付ける形にするとい うことと、個別の対象者の特別な状況について、内容をつけて文章で記載してもらう。 それをもって判断するということで、とりあえずはいいのではないか。それが十分に機 能しないということが将来生じてきた場合には、診断書の内容についてはまた検討する ということを含んで、そういった診断書をきちんと書くことを期待したい。  診断書をきちんと書くには、書く人の診断書の作成能力、例えば身体障害者福祉法の 場合にはそれなりの要件があって、記載できる医師が認められているということがあり ますが、この場合にはそこまで厳しくはしない。しかし、きちんとした診断書を出して いただくということをいろいろな形でフィードバックするようなシステムというか、そ のようなことを繰り返しながら、だんだん診断医の診断書作成能力を向上させていくよ うにしたらいかがだろうかということです。おおよそいまのようなことが検討結果で、 資料1にまとめられているところです。  よろしいでしょうか。もしよろしかったら、次の措置内容にかかわる検討がかなり量 が多いので、そちらに移っていただいて、またこの検討結果のまとめにかかわるような 議論がありましたら、そこでご議論いただくということで進めたいと思います。措置内 容の見直しということで、これは15項目というかなりたくさんの項目がありますので、 事務局のほうから説明していただいて、それから検討を進めたいと思います。 ○長嶋医療監察官 アフターケアの措置内容に係る検討事項について、ご説明申し上げ ます。資料としては、資料2、参考資料をご覧ください。なお、検討事項については、 第1回の労災医療専門家会議において、お配りしている資料13に掲げたものに、「アフ ターケアの基本的考え方に関する検討部会」における検討結果等を踏まえて、一部を追 加・削除しております。今ほど座長からもお話がありましたが、「その他の見直し」ま で含めると、15項目になります。  まず、資料2の1頁の検討事項1、「実施期間の見直し」についてです。これについ ては、全ての対象傷病が該当します。なお、参考資料No.1に現行のアフターケアの対象 傷病ごとの「原則とする実施期間の限度」、「継続実施の可否」及び「健康管理手帳の 有効期間」について、取りまとめております。ちなみに、「原則とする実施期間の限度」 については、「治ゆ後2年」としているものは、(3)頭頸部外傷症候群等、(6)白内障等の 眼疾患、(7)振動障害です。限度を設けていないものについては、(2)せき髄損傷、(9)人工 関節・人工骨頭置換、(11)虚血性心疾患等のうち、ペースメーカ等を植え込んだ者、(19)循 環器障害のうち、人工弁又は人工血管に置換した者であり、その他の対象傷病について は「治ゆ後3年」としております。「継続実施の可否」については、継続実施を認めて いないものは、(3)頭頸部外傷症候群等のうち、頭頸部外傷症候群、頸肩腕症候群及び腰 痛、この3つのみとなっております。「健康管理手帳の有効期間」については、原則と する実施期間の限度が「治ゆ後2年」となっている対象傷病については2年間、その他 の対象傷病については一律3年間となっております。  資料2の1頁に戻って、「実施期間の見直し」についてご検討をお願いいたしたいこ とは2つあります。1つ目は、先程、報告されました「アフターケアの基本的考え方に 関する検討部会」における検討結果を踏まえ、全ての対象傷病について、原則とするア フターケアの実施期間の限度は適当か否か、見直しを行うということです。なお、当該 見直しを行うに当たって、実施期間の限度については、原則として当該期間におけるア フターケアの実施をもって、それ以降のアフターケアの継続を必要としない期間とする よう、ご検討をお願いいたします。  2つ目は、原則とするアフターケアの実施期間の限度を超えてアフターケアを継続す る期間についてです。現行、更新される健康管理手帳の有効期間は、アフターケア実施 要領によって、実施期間の限度と同じ期間、2年のものについては2年間、3年のもの については3年間とされておりますが、健康管理手帳の更新の期間を個々の事例ごとに 必要とする期間とすることは適当か否か。また、健康管理手帳の更新の期間を個々の事 例ごとに必要とする期間とすることを適当とした場合、その更新期間については、健康 管理手帳の有効期間の年数を上限として、年単位に決定することは適当か否か。手帳の 有効期間が3年間であるものについては1年、2年、3年、2年間であるものについて は1年、2年という形で、有効期間の年数を限度として、年単位に決定することが適当 か否かについて、ご検討をお願いいたします。  なお、検討に当たっての参考資料として、参考資料No.2に「健康管理手帳を更新しな かった者の数の推移」、参考資料No.3として「健康管理手帳の更新回数」、これは平成 11年と12年に交付した者の数を拾っております。こちらをお配りしております。  次に、資料2の2頁、検討事項2、「対象傷病の整理・統合」についてです。対象傷 病は、現行の「頭頸部外傷症候群等」、「脳血管疾患」、「有機溶剤中毒等」及び「せ き髄損傷」が該当します。「対象傷病の整理・統合」について、ご検討をお願いいたし たいことは2つあります。1つ目は、「頭頸部外傷症候群等」に係る現行の実施要綱は、 アフターケア制度初期のもので、昭和49年1月に創設されたものです。初期のものであ るために、複数の傷病が雑多にまとめられている状況にあることから、当該実施要綱を 整理・統合することについてご検討をお願いいたします。  2つ目は、1つ目の「頭頸部外傷症候群等」の見直しにも関連して、「有機溶剤中毒 等」、これは炭鉱災害によるものを含む一酸化炭素中毒症を除きます。及び「脳血管疾 患」に係るアフターケアを統合し、新たに「脳の器質性障害」に係るアフターケアを創 設する、ということです。具体的には、資料に図示しておりますが、「頭頸部外傷症候 群等」に係るアフターケアの実施要綱に含まれている(1)頭頸部外傷症候群、(2)頸肩腕症 候群、(3)腰痛、(4)炭鉱災害によるものを除く一酸化炭素中毒症、(5)外傷による脳の器質 的損傷、(6)減圧症のうち、(1)頭頸部外傷症候群、(2)頸肩腕症候群、(3)腰痛を「痛みによ るもの」としてまとめます。それから、(4)一酸化炭素中毒症、(5)外傷による脳の器質的 損傷、(6)減圧症のうち脳型のものを「脳の器質性障害によるもの」としてまとめます。 残りの(6)減圧症のうちせき髄型のものを「せき髄の障害によるもの」として、3つに分 類する。  これらの3つに分類したもののうち、(1)頭頸部外傷症候群、(2)頸肩腕症候群、(3)腰痛 を現行の「頭頸部外傷症候群等」として残します。それから、(4)一酸化炭素中毒症、(5) 外傷による脳の器質的損傷、(6)減圧症のうち脳型のものについては、「有機溶剤中毒等」 及び「脳血管疾患」とともに統合し、新たに「脳の器質性障害」として再編します。ま た、(6)減圧症のうちせき髄型のものについては、「せき髄損傷」の実施要綱に統合しま す。なお、これらの整理・統合については、参考資料No.4として、「頭頸部外傷症候群 等」と「有機溶剤中毒等」及び「脳血管疾患」の内容を見比べることができるように、 「各傷病要綱の措置内容の比較(現行)」というもの、参考資料No.5として、「有機溶 剤中毒等」と「脳血管疾患」を統合した「脳の器質性障害」と「頭頸部外傷症候群等」 の内容を見比べることができるよう、「措置内容の整理・統合(案)」をお配りしてお ります。  次に、資料2の3頁、検討事項の3は、現行の「頭頸部外傷症候群等」に含まれてい る「頸肩腕症候群の名称変更」についてです。参考資料No.6として、その抜粋をお配り しているところの昭和50年2月5日付け基発第59号「キーパンチャー等上肢作業にも とづく疾病の業務上外の認定基準について」という通達です。この2枚目の項目の3で すが、「頸肩腕症候群とは、種々の機序により後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕、手 及び指のいずれかあるいは全体にわたり「こり」、「しびれ」、「いたみ」などの不快 感をおぼえ、他覚的には当該部諸筋の病的な圧痛及び緊張若しくは硬結を認め、時には 神経、血管系を介して頭部、頸部、背部、上肢における異常感、脱力、血行不全などの 症状をも伴うこともある症状群に対して与えられた名称である。」とされておりました。  しかし、この参考資料No.6の通達については、参考資料No.7として、その抜粋をお配 りしているところの平成9年2月3日付け基発第65号「上肢作業に基づく疾病の業務上 外の認定基準について」の通達によって廃止されております。参考資料No.7の1枚目の 下から3行目ですが、「頸肩腕症候群は、出現する症状が様々で障害部位が特定できず、 それに対応した診断名を下すことができない不定愁訴等を特徴とする疾病として狭義の 意味で使用しているものである」とされ、定義が変わっております。このように、平成 9年2月に頸肩腕症候群の定義が変更されていることを踏まえて、現在においても「頸 肩腕症候群」の名称を用いることは適当か否か。また、「頸肩腕症候群」の名称を用い ることが適当でないとした場合、どのような名称とすることが適当か。例えば「上肢障 害」などと言い換えることはできるか否かについて、ご検討をお願いいたします。  資料2の4頁の検討事項の4、「精神療法、カウンセリング等」についてです。対象 傷病は、現行の「頭頸部外傷症候群等の脳の器質的損傷」、「脳血管疾患」、「有機溶 剤中毒等」、「サリン中毒」及び「精神障害」が該当します。「精神療法・カウンセリ ング等」について、ご検討をお願いいたしたいことは2つあります。1つ目は、「サリ ン中毒」及び「精神障害」と同様に、脳の器質的損傷に係るアフターケアについても、 「精神療法・カウンセリング等」を実施する必要があるか否か、ということについてで す。なお、脳の器質的損傷に対する精神療法等については、従来より医療機関からの要 望は多かったものですが、従前の労災医療専門家会議における検討によって、治療の範 ちゅうであるとの見解から、認めてこなかったという経緯があります。  2つ目は、現行の運用上の取扱いにおいては、「精神療法・カウンセリング等」に社 会生活機能の回復を目的とする「精神科作業療法」、「精神科デイ・ケア」が含まれて おりますが、「アフターケアの基本的考え方に関する検討結果」を踏まえ、これらをア フターケアの範囲とすることは適当か否か、ということについてです。なお、「精神療 法・カウンセリング等」については、参考資料No.8として「神経心理・精神に係る措置 の一覧」、参考資料No.9として「アフターケア実施要領の一部改正に伴う運用上の留意 事項について」の通達、参考資料No.10として医科点数表から抜粋しました「精神科作業 療法」、「精神科デイ・ケア」の内容をお配りしております。  次に、資料2の5頁の検討事項の5、「精神安定剤と向精神薬の整理」についてです。 対象傷病は、現行の「炭鉱災害による一酸化炭素中毒症」、「せき髄損傷」、「頭頸部 外傷症候群等の脳の器質的損傷」、「虚血性心疾患等」、「サリン中毒」、「循環器障 害の心臓弁を損傷した者及び人工弁に置換した者」、「脳血管疾患」、「有機溶剤中毒 等」及び「精神障害」が該当します。「検討内容」の欄の表に取りまとめておりますが、 「炭鉱災害による一酸化炭素中毒症」、「せき髄損傷」、「頭頸部外傷症候群等の脳の 器質的損傷」については「精神安定剤」。「虚血性心疾患等」、「サリン中毒」、「循 環器障害の心臓弁を損傷した者及び人工弁に置換した者」については「向精神薬」。「脳 血管疾患」、「有機溶剤中毒等」については「向精神薬(内服)」。「精神障害」につ いては「向精神薬(抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬)」及び「睡眠薬」というように、 精神薬(剤)の名称については、対象傷病ごとに実施要綱上の表記が異なるため、その 適用範囲も含めて、名称の整理について、ご検討をお願いいたします。  次に、資料2の6頁の検討事項の6、「熱傷の対象者の範囲」についてです。熱傷に ついては、障害等級第12級以上の者が対象者となっておりますが、所轄労働局長が医学 的に特に必要があると認めるときには、障害等級第14級の者についてもアフターケアを 行うことができるものとすることが適当か否かについて、ご検討をお願いいたします。 なお、「女性の外ぼうに醜状を残すもの」は障害等級第12級となり、アフターケアの対 象者となりますが、「男性の外ぼうに醜状を残すもの」は障害等級第14級となり、アフ ターケアの対象となっておりません。  ちなみに、外ぼうにおける単なる「醜状」とは、「頭部にあっては、鶏卵大面以上の 瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損」、「顔面部にあっては、10円銅貨大以上の瘢痕 又は長さ3センチメートル以上の線状痕」及び「頸部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕」 で、人目につく程度のものをいいます。  次に、資料2の7頁の検討事項の7、「眼疾患」についてです。「眼疾患」について、 ご検討をお願いしたいことは2つあります。1つ目は、外傷によりまぶたが変形し、眼 瞼内反となった場合、睫毛乱生(逆さまつげ)が生じ、痛みの発生や角膜上皮剥離、角 膜潰瘍をつくることがあることから、睫毛抜去の処置が必要となりますが、当該傷病の 実施要綱では、対象者について、「白内障、緑内障、網膜剥離、角膜疾患等の眼疾患の 傷病者」としており、その範囲が必ずしも明確になっておりません。よって、眼瞼内反 による睫毛乱生の処置は必要か否かについて、ご検討をお願いいたします。  2つ目は、視機能の維持等のため、外用薬、内服薬は必要か否かについて、ご検討を お願いいたします。なお、これらの薬剤については、医療機関からの請求が多い状況に あります。また、以前の検討内容を確認する意味合いから、参考資料No.11として「昭和 61年11月5日付け労災医療専門家会議の報告「白内障等の眼疾患に係るアフターケア の検討結果について」」をお配りしております。  次に、資料2の8頁、検討事項8「画像検査の範囲の明確化」についてです。対象傷 病は、現行の「頭頸部外傷症候群等の脳の器質的損傷」、「大腿骨頸部骨折及び股関節 脱臼・脱臼骨折」及び「慢性化膿性骨髄炎」が該当いたします。「検討内容」欄の表に 取りまとめておりますが、対象傷病の画像検査については、現行の実施要綱上、「頭頸 部外傷症候群等の脳の器質的損傷」については「頭部コンピュータ断層撮影」、「大腿 骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折」については「シンチグラム検査、コンピュータ 断層撮影等」、「慢性化膿性骨髄炎」については「シンチグラム検査、CT、MRI等」 と表記されております。これらの対象傷病の画像検査について、CT・MRI等検査機 器を明確にすることについて、ご検討をお願いいたします。なお、参考資料No.12として、 「各傷病の画像診断一覧」をお配りしております。  次に、資料2の9頁、検討事項9「尿路系障害に対する措置の見直し」についてです。 対象傷病は、現行の「せき髄損傷」、「頭頸部外傷症候群等の脳の器質的損傷」、「脳 血管疾患」、「有機溶剤中毒等」及び「尿路系腫瘍」が該当します。なお、「尿路系腫 瘍」については、検討内容の3のみに該当します。  「尿路系障害に対する措置の見直し」について、ご検討をお願いしたいことは4つあ ります。1つ目は、「腎機能検査の名称変更」についてです。前回の労災医療専門家会 議において、尿路系障害(旧「尿道狭さく」)について、腎機能検査に関しては、腎ク リアランスやPSPの検査より血中の尿素窒素量等の確認が重要であることから、「血 液一般・生化学検査」に包括することが適当であるとの見解が示されました。このこと を踏まえ、「腎機能検査」を「血液一般・生化学検査」に変更すべきか否かについて、 ご検討をお願いいたします。なお、参考資料No.13として平成17年12月12日付けの「労 災医療専門家会議報告書、胸腹部臓器の障害に係るアフターケアについての検討報告書 (抜粋)」をお配りしております。  2つ目は、「残尿測定検査の追加」についてです。残尿測定検査は、神経因性膀胱に 対し、超音波又はカテーテルを用いて残尿量を測定するための検査であるため、「超音 波検査」であるとも解されますが、膀胱機能検査に含まれるものと解してよいかについ て、ご検討をお願いいたします。  3つ目は、「尿培養検査の追加」についてです。せき髄損傷及び尿路系腫瘍等につい ては、神経因性膀胱があって、残尿があり、上部尿路感染を起こす危険があることから、 尿検査に「尿培養検査」を含めることは適当か否かについて、ご検討をお願いいたしま す。なお、参考資料No.14として、「検査一覧(総括表)」をお配りしております。  4つ目は、「排尿障害改善剤、頻尿治療剤の追加」についてです。尿路系障害に係る アフターケアとして、排尿障害改善剤及び頻尿治療剤は必要か否かについて、ご検討を お願いいたします。なお、参考資料No.15として、「薬剤一覧(総括表)」をお配りして おります。  次に、資料2の10頁、検討事項10「痛みに対する措置の見直し」についてです。対 象傷病は、「鎮痛剤を支給する傷病」が該当いたします。これについて、ご検討をお願 いしたいことは2つあります。1つ目は、「CRP(C反応性たんぱく)検査の追加」 についてです。CRP(C反応性たんぱく)検査については、従来から、炎症部位が確 定できないため、必要性は認め難いとしてきましたが、前回の労災医療専門家会議にお いて、「呼吸機能障害」に係るアフターケアで、気道感染や肺炎等の有無や程度を診断 するという理由で認められたことから、他の対象傷病についても必要か否かについて、 ご検討をお願いいたします。  2つ目は、「健胃消化剤としての潰瘍治療剤の支給」についてです。潰瘍治療剤は、 治療薬に該当するため、原則として認められないものと取り扱っておりますが、健胃消 化剤としての潰瘍治療剤を支給することは適当か否かについて、ご検討をお願いいたし ます。検討の結果、通常、併用剤として支給するものであれば、当該薬剤を健胃消化剤 に含む旨を実施要綱上、明記することといたします。なお、併用剤の支給については、 平成元年3月20日付け基発第127号通達により、「傷病別アフターケア実施要綱に定め る薬剤の投与に関して、鎮痛剤に対する健胃消化剤、抗てんかん剤に対する肝臓用剤等 医学的に併用することが必要と認められる薬剤の支給は、アフターケアの範囲と認めて 差し支えないこと。」とされております。  次に、資料2の11頁、検討事項11「鎮暈剤の追加」についてです。対象傷病は、現 行の「頭頸部外傷症候群等の脳の器質的損傷」、「脳血管疾患」及び「有機溶剤中毒等」 が該当いたします。鎮暈剤は、感覚器官用薬に分類されますが、内耳の血流量を改善し、 めまいを抑える薬であることから、「循環改善剤」又は「神経系機能賦活剤」に含まれ るものとして取り扱うことは適当か否かについて、ご検討をお願いいたします。  次に、資料2の12頁、検討事項12「末梢性神経障害治療剤及び微小循環系賦活剤の 追加」についてです。対象傷病は、現行の「せき髄損傷」及び「外傷による末梢神経損 傷」が該当いたします。末梢性神経障害治療剤及び微小循環系賦活剤について、アフタ ーケアの措置として認めることは適当か否かについて、ご検討をお願いいたします。な お、これらの薬剤については、医療機関からの請求が多い状況にあります。  次に、資料2の13頁、検討事項13「血液一般・生化学検査の名称変更」についてで す。「血液一般・生化学検査」という名称は、アフターケア独自のものであり、医科点 数表上では、「血液一般検査」は「末梢血液一般検査」、「生化学検査」は「生化学的 検査」であると解しております。「血液一般・生化学検査」の名称を医科点数表上の名 称に変更することは適当か否かについて、ご検討をお願いいたします。  次に、資料2の14頁、検討事項14「「バクロフェン髄注療法」に伴う薬剤再充填」 についてです。対象傷病は、現行の「せき髄損傷」、「頭頸部外傷症候群等の脳の器質 的損傷」、「脳血管疾患」及び「有機溶剤中毒等」が該当いたします。「バクロフェン 髄注療法(ITB療法)」とは、本年度の診療報酬改定により健康保険適応となったも のであり、中枢神経系の抑制性神経伝達物質「バクロフェン」を専用の植え込み型ポン プシステムを用いて作用部位であるせき髄へ直接投与することにより、脳・せき髄疾患 に由来する重度の痙性麻痺に対し、痙縮改善効果を示すものです。この「バクロフェン 髄注療法」に係る重症痙性麻痺治療薬髄腔内持続注入用埋込型ポンプ設置後の当該ポン プ薬剤再充填について、アフターケアの措置として認めることが適当か否か、ご検討を お願いいたします。  なお、現行の「せき髄損傷」に係るアフターケアにおいては、筋弛緩剤(鎮痙剤(バ クロフェン錠剤)を含む)の支給を認めており、また、「外傷による脳の器質的損傷」、 「せき髄型の減圧症」、「脳血管疾患」及び「有機溶剤中毒等」に係るアフターケアで は、四肢麻痺が出現した者で必要な場合には、「せき髄損傷」に準じて薬剤を支給でき るものとしております。また、アフターケアにおける薬剤の支給については、実施要綱 上、特記事項がない場合には、内用薬を対象とするものとしておりますので、同様の効 果があるものであっても支給できないことになっております。  最後に、資料2の15頁、検討事項15「その他の見直し」についてです。「アフター ケアの基本的考え方に関する検討結果」を踏まえ、検討事項1〜14以外に見直しが必要 なものがあれば、ご検討をお願いいたします。検討事項1「実施期間の見直し」等につ いては、本日初めてお示ししたものでありますし、また、検討事項が多数あることから、 本日中に全ての検討事項についてご検討いただくことはできませんので、可能であるも のからご検討いただければと考えております。よろしくお願いいたします。 ○柳澤座長 ご苦労さまでした。かなりたくさんの項目があるわけですが、ただいまの 説明からおわかりのように、全体としては21傷病について整理できるものを整理しよう ということと、個々の申請あるいは要望が蓄積されているわけですが、それに対してど のように対応するかを中心に、15はその他なので、具体的には14の課題について逐一 検討していただきます。  ご提案したいのは、この資料を基にして今日結論が出ないものは次回検討していただ くということで、この15の課題は本日と次回の2回にわたって検討し、結論を出してい ただくプロセスで進めます。1つは、今日ご欠席の先生がお三方いらっしゃいます。精 神科の岡崎先生、眼科の小出先生、脳外科の馬杉先生です。そういったことから考えて、 この方々の関わっているところは次回にするということと、もう1つは検討に時間がか かりそうなものを次回にするということです。例えば、検討事項1の「実施期間の見直 し」、検討事項2の「対象傷病の整理・統合」などは時間がかかると思います。私が事 前に拝見して本日結論が出せるのではないかと考えたものは、6番と8〜14番です。そ こからまず検討を進め、14番までが時間内に終わったら、ほかのものについてもご意見 をいただく形で進めたいと思います。よろしいでしょうか。 (異議なし) ○柳澤座長 では、そのようにさせていただきます。  6頁、検討事項6をご覧ください。熱傷の対象者の範囲ということで、男性と女性と で障害等級が異なっていて、障害等級12級以上の者が対象者となっているのですが、実 際には「男性の外ぼうに醜状を残すもの」として14級を含めることは適切かということ をご検討いただきたいと思います。これについては、先ほどかなり具体的に醜状の内容 がどのようなものかが説明されましたが、事務局から何か追加することはありますか。  障害によって醜状が表れるものでいちばん問題になるのは原爆の後遺症です。私も原 爆の後遺症の援護審査会で審査に関係しているのですが、どちらかというと皮膚の醜形 に対する診断で被災者の方から裁判を起こされ、地裁のレベル、先日高裁のレベルで判 断がありましたが、ある程度広く取る。つまり、機能障害だけではなく、見た目が非常 に悪くて、社会生活上マイナスになることも含めるというのが裁判所の基本的な見解で、 それは地裁から高裁まで行って同じ判断が出ています。14級の「男性の外ぼうに醜状を 残すもの」をアフターケアに含めるのかどうかが審議すべき課題として出されています が、もう一度男性の14級とはどういうものか、具体的に説明していただけますか。 ○長嶋医療監察官 男性も女性も外ぼうに醜状を残すものの障害の状態は同じです。 ○柳澤座長 同じものについて、男性は14級で女性が12級なのですか。 ○長嶋医療監察官 障害等級の認定において、外に見える醜状については、顔面部等の 外ぼうと上肢・下肢の露出面に分けております。外ぼうの醜状については男女に等級差 があるのですが、上肢・下肢の露出面の醜状については男女の差なく障害等級が定めら れております。障害等級表上に掲げられている障害のうちで、外ぼうの醜状についての み男女の区別をしているわけですが、女性の方が上位に格付けされているのは、社会生 活において醜状障害によって受ける精神的な苦痛を考慮し、社会通念に基づき、女性の 等級を男性の等級よりも高く位置づけているものです。障害等級はそのように決定して おりますので、同じ障害であっても男女の障害等級に差が出ています。ただし、症状は 同じなので、女性の障害の状態と男性の障害の状態が同じであれば、障害等級が違って もアフターケアの対象者と認めてよいのではないかということです。  資料1の4頁の対象者の(1)現状のところに、「障害等級を対象者の要件としてい る傷病」を掲げております。(3)に、障害等級第12級以上の者として熱傷があります。(1) (2)を見ると、対象者とする原則の障害等級があって、それよりも障害等級の低い者につ いては所轄労働局長が必要と認めるものとなっておりますが、熱傷についてはそのよう な認め方をしていないので、同様の認め方をしてもよいのではないかということから、 ご検討いただきたいということです。 ○柳澤座長 ただいまの事務局の説明で、基本的に14級の者がアフターケアの申請をし てきた場合に、それを含めて検討し得る条項にするのはいかがかということですが、そ れはよろしいでしょうか。 (異議なし) ○柳澤座長 では、そのようにします。文言をどのようにするか、つまり14級以上とす るのか、資料1の4頁の1、2に倣って、括弧して障害等級第14級以下のものにあって は云々とするのか、それは技術的な問題だろうと思うのですが、事務局ではどのような 表現にしたらよいとお考えですか。 ○長嶋医療監察官 原則は12級をそのまま置いておいて、必要のある者は14級でも認 められる形で提案したいと思います。 ○柳澤座長 文言は、制度上の言葉を使って整理していただくということでよろしいで すね。それでは、必要であれば14級が含まれる形にすることにします。  検討事項7は眼疾患なので、小出先生がご出席になる可能性のある次回にして、もし 次回に眼科の先生がご欠席なら、文書でご意見をいただく手続を取って検討したいと思 います。これは今日は検討せず、先へ進みます。  8頁の検討事項8「画像検査の範囲の明確化」ですが、これは対象傷病として慢性化 膿性骨髄炎で画像診断がCT、MRI等となっているので、それにそろえたらいかがか ということではないかと思います。参考資料No.12が添えられておりますが、おおまかな 考え方としては、コンピュータ断層撮影について、現在、頭頸部外傷症候群、整形外科 領域を下の慢性化膿性骨髄炎と同じように、コンピュータ断層撮影等の言葉を「CT・ MRI等」とすれば、明確になって整理がされると思います。脳外科、整形外科の先生 方、いかがでしょうか。  私もそれでよろしいと思いますが、コンピュータ断層撮影は、具体的には頭頸部外傷 症候群等は「頭部CT・MRI等」、大腿骨頸部骨折等は「シンチグラム検査、CT、 MRI等」として、下の慢性化膿性骨髄炎と同じ文言になるわけですが、よろしいでし ょうか。 ○三上先生 CT・MRIを統一するのはよろしいと思うのですが、CT・MRI等の 「等」というのは、具体的にはどういうことを指しているのか確認したいのです。 ○柳澤座長 おそらく、アフターケアの必要性の診断ですから、例えばCT・MRIに も特段の異常はないけれど、脳の場合はスペクトを撮ったら異常が確認されるから、ス ペクトのデータを添えて申請することもあり得るといった程度の意味合いかと思います が、整形外科にしても脳外科にしても、むしろ例外的な言葉を「等」という言葉で入れ ておかないと、できないことになって困るという意味ですね。 ○長嶋医療監察官 それぞれ整理されていなかったということもあるのですが、CT・ MRI以外のもので必要なものが出たときにも対応できるようにという意図でした。現 在、実際にそのようなものがなければ、新たに必要性が出てきたときに措置範囲に加え て対応することもできますので、「等」は取っていただいてもよろしいかと思います。 ○柳澤座長 今の私の説明でよろしければ、入れるということでよろしいですか。 ○三上先生 私は入れておいたほうがいいと思うのですが、入れていることによって、 逆にしばられるとまずいというだけの話です。 ○柳澤座長 では、「等」は入れることにします。  9頁の検討事項9「尿路系障害に対する措置の見直し」で、1〜4、腎機能検査の名 称変更、残尿測定検査の追加、尿培養検査の追加、排尿障害改善剤・頻尿治療剤の追加 とあります。血液一般・生化学検査は、最後のほうで診療報酬の表に沿った形で言葉を 変えようと言っておりますが、それは後のほうで一括してまとめることとして、腎機能 検査を血液一般・生化学検査に変更すべきか否かです。前回の専門家会議で、いろいろ な尿路系障害に関する腎機能検査の中で、クリアランスやPSPは今はやらないのです か。 ○長嶋医療監察官 はい。 ○柳澤座長 尿素、窒素などは血液一般・生化学検査に包括することが適当であろうと のご意見が出されていますが、1についてはいかがですか。 ○松島先生 これで大丈夫だと思います。いまはPSPなどはほとんどやっていません から。 ○柳澤座長 石田先生、よろしいでしょうか。 ○石田先生 これでいいと思います。 ○柳澤座長 では、1は血液一般・生化学検査に変更します。  2番目は、残尿測定検査は膀胱機能検査に含まれると解してよいかを検討します。な お書きで、当該検査は、神経因性膀胱に対して、超音波又はカテーテルを用いて残尿量 を測定するための検査であるため、超音波検査であるとも解される、とありますが、超 音波だけではないですね。これはいかがですか。 ○石田先生 これは、超音波検査という言葉を使うか使わないかということなのですか。 ○柳澤座長 そういう言葉もありますよということです。 ○石田先生 残尿測定検査は、簡単なので、最近は超音波を用いてやることが多いです ね。そのため、超音波検査を残尿検査とするかということで、これを出されているので しょうか。 ○柳澤座長 超音波検査としてしまうと、例えば残尿測定検査(超音波検査を含む)と いう表現でないと、カテーテルで調べてはいけないのかという議論があるので、いろい ろな可能性を考えると、超音波検査を含めて残尿測定検査と理解するのが適切ではない かと、私自身は専門ではありませんがそのように考えます。超音波という言葉をあえて 出す必要があるかどうか、事務局がここで超音波検査であると理解されるという表現を 使ったのはどういう意味ですか。 ○長嶋医療監察官 現行の実施要綱上、膀胱機能検査であれば措置できるのですが、超 音波検査であれば措置の対象に入っていないので、新たにそういうものを要綱に入れな ければいけないことになります。 ○柳澤座長 そういう意味だったら、別に超音波を使っても膀胱機能検査はできるとい う理解でよろしいのですか。 ○長嶋医療監察官 範ちゅうに含めてよろしければ、現行の要綱の中でそれを明記した いと思います。 ○柳澤座長 では、残尿測定検査は、膀胱機能検査の中に超音波も候補として含まれる という理解でよいということです。  3番目は、尿検査に尿培養検査を含めることが適当か否かです。これは、当然のこと ながら、せき髄損傷及び尿路系腫瘍では神経因性膀胱があった場合に尿培養検査も尿検 査に含めて取り扱ったほうがよろしいのではないかということです。この場合には、も し尿培養検査を含めるならば、尿検査(尿培養検査を含む)という表現になるわけです が、それでよろしいですか。 (異議なし) ○柳澤座長 では、そのようにします。いま議論して決めたことは、最終的には条文と して整理をされるのでしょうか。 ○長嶋医療監察官 ご検討いただいた内容は、最終的には報告書の形で全体を取りまと めますので、そちらで明記することになります。 ○柳澤座長 申すまでもないことですが、今は具体的な項目についての検討だけなので、 報告書として文言が適切に配置されているかどうかについては、先生方に目を通してい ただいて取りまとめてください。  4番目は、排尿障害改善剤及び頻尿治療剤は必要か否かです。これについては、参考 資料No.15に薬剤一覧が掲げてあるのですが、これらの薬剤が含まれていないので、それ を追加することはいかがかという意味ですね。 ○長嶋医療監察官 はい。 ○柳澤座長 尿路障害の所に排尿障害改善剤、頻尿治療剤を入れるということで、現在 認められているこの薬剤一覧表の内容から考えると、当然入れるのが適切であろうと考 えられますが、よろしいでしょうか。 (異議なし) ○柳澤座長 では、追加することにします。  検討事項10は「痛みに対する措置の見直し」で、CRP検査の追加、健胃消化剤とし ての潰瘍治療剤の支給を検討してほしいとのことです。前回の労災医療専門家会議で「呼 吸機能障害」で認められたCRP検査を、他の傷病についても必要か否かを検討したい ということです。これは、従来から炎症部位が確定できないため必要性は認め難いとし てきたのですが、呼吸機能障害の場合には、アフターケアで通常の検査としてCRPを 認めるのが従来の扱いですか。 ○長嶋医療監察官 「呼吸機能障害」に係るアフターケアは、前回新設されたもので、 その時に気道感染や肺炎等の有無や程度を診断するということで、年に2回程度の実施 が適当とされました。 ○柳澤座長 呼吸機能障害のことですね。それは、もう決まっているわけですね。 ○長嶋医療監察官 はい。 ○柳澤座長 それを広げる必要があるかないかということですね。いかがでしょうか。 ○戸田先生 バクテリアルインフェクション(細菌感染)によるのかどうかを判断する ときには、CRPが非常に役に立つのです。CRPが異常に高い場合は、どこかの炎症 によるものではないかということになるので、入れたほうがいいと思います。 ○柳澤座長 その場合、手続としてはアフターケアに入れるわけですか。病気の再発や ほかの傷病の併発によって、実際に炎症性の所見が出てくるわけですが、一般的にそれ を調べる検査もアフターケアの中に含めて従来は扱ってきましたか。 ○戸田先生 例えば、もし炎症があった場合、CRPが異常に高ければ尿路感染の疑い が出てくるわけです。そういった意味では、スクリーニングの検査としては非常に役に 立つのではないかと思います。 ○柳澤座長 そうですね。呼吸器系についてCRPを測ることが含まれたのならば、尿 路障害では、当然せき髄性膀胱障害等の場合には感染の危険性は呼吸機能障害と同じよ うに高いことになりますから、それは入れてもいいだろうという議論は成り立つと思い ます。そうすると、炎症部位が確定できないために必要性は認め難いという表現は、必 ずしも成り立たない。つまり、せき髄性膀胱障害の場合、神経因性膀胱の場合は、膀胱 の炎症が感染性のものであるかどうかを調べるためにCRPは意味を持つし、呼吸機能 障害の場合には呼吸器におけるものであって、別に胆道系の炎症があるかどうかを調べ る目的で使うわけではないので、個別に感染を繰り返しやすいリスクを持った状態では CRPを指標として使うことは適切であろうということでしょうか。  そうすると、もしこれをほかの傷病についても決めるのであれば、専門家の方がいら したら簡単に決められるだろうと思いますが、どうしますか。 ○戸田先生 文章として、炎症部位が確定できないために必要性が認め難いというのは 当然のことであって、ある障害が出た場合、それが細菌性感染によるものかどうか、細 菌性感染によるものだったら、抗生物質を使うとか対応できるわけです。そういった意 味では、何によって症状が出てきたかを知るためにやる検査ですから、これは間違って いるわけですね。CRPが陽性だからといって、炎症部位が特定できるはずはないわけ ですから。 ○柳澤座長 従来から炎症部位が確定できないために必要性は認め難いとしてきたの は、専門家会議の議論として何か残っていますか。そうではなくて、一般的な議論がさ れてきたのでしょうか。 ○長嶋医療監察官 専門家会議の議論ではなくて、個別事例ごとの判断で認めてこなか ったという実態です。 ○柳澤座長 そうすると、前回の専門家会議で、呼吸機能障害でCRPを測定すること が適切であると認められた経緯があると。川城先生は、その時はいらっしゃいましたか。 ○川城先生 前回というのは、9月中旬ですか。 ○柳澤座長 それよりも前、去年です。 ○川城先生 先ほどの「呼吸機能障害に係るアフターケア実施要綱」というのが、前回 の参考資料2にあるのですが、アフターケアで診察をした場合に、必要に応じて次の検 査を行う、と書いてあるのです。その中に、胸のレントゲン、スパイロ、血液ガス、喀 痰検査、CRPが入っています。ですから、咳や痰で治ゆして安定はしているけれど、 いらしたときにCRPの検査をして、感染が合併しているかどうかをそのときに診るつ もりで入れたのだろうと思います。 ○戸田先生 だから、そのほかはすべて適用できる、例えば尿路障害がある場合。 ○川城先生 尿路系のアフターケアでいらした方の血液のCRPを見て、ターゲットに なっているオルガンの感染があるかどうかを診ようという気持ちになるでしょう。 ○戸田先生 CRPをやって異常に高ければ、普通の診療過程としては培養をやるとか 沈渣を見ようとかするわけですね。 ○川城先生 必ずしも検討事項の痛みに対する措置の見直しには、痛みではないからフ ィットしないのではないかと。 ○戸田先生 ほかの傷病についてもと書いてありますが、呼吸機能障害以外にも認める べきではないかということですね。 ○柳澤座長 それを検討するのがいまの課題です。 ○戸田先生 だから、認めるべきではないかと私は思うのです。 ○柳澤座長 その場合に、CRPはかなり特殊な検査というか、全ての傷病についてC RPを認めることを入れるのが適切かどうか。例えば、精神障害やサリン中毒のアフタ ーケアでCRPを調べることは、全く理屈の上の根拠がありませんから、そういうもの は不適切だろうと思います。呼吸機能障害で認められた経緯を推測すると、神経因性膀 胱のようなものや、人工関節は整形外科的にどうですか。感染を起こすリスクはありま すか。 ○三上先生 遅発性の感染を起こす可能性はかなりありますから。 ○柳澤座長 そういった傷病をここからピックアップして、呼吸機能障害のときに入れ たのと同じような意味合いでCRPが必要であると考えられるものについては含めると いう取扱いでよろしいと思います。それでよければ、21傷病についてCRPが必要か、 いまのような形で検討していきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○奥平先生 胸腹部臓器の障害認定の会議に参加したのですが、胸腹部臓器は呼吸器と 循環器に分かれてそれぞれ検討されました。呼吸器のほうは、障害の程度は、疾病の種 類によらず全て呼吸機能の障害の程度によって判断できるという立場で、呼吸機能障害 にかなり強い影響を及ぼすものは炎症であろうと。その状態を把握するために、CRP が必要であるということで加えられたのです。 ○柳澤座長 そうすると、呼吸機能障害では感染が状態を増悪させるリスクになる確率 が高いから、CRPを測ってもいいという議論ではなかったのですか。 ○奥平先生 そうだから、測ったほうがいいということです。 ○柳澤座長 それならば、同じような意味合いでほかの病態についても検討する、つま りそれに合わせることが整合性を図るのに必要なのだろうと思います。上から見ていく と、せき髄損傷は神経因性膀胱を含める可能性があるからあってもいいかと思いますが、 少しその辺りを検討してください。慢性肝炎はCRPはあまり直接関係ないのではない でしょうか。白内障も関係ないし、振動障害も関係ない。大腿骨頸部骨折及び股関節脱 臼・脱臼骨折がアフターケアの状況になったときはどうですか。 ○三上先生 基本的には関係ないですね。 ○柳澤座長 人工関節のほうが問題ですね。そうすると、それは置いておいて、慢性化 膿性骨髄炎は当然入っていますね。 ○三上先生 これは必要ですね。 ○柳澤座長 従来から入っているのではないですか。 ○三上先生 骨髄炎でCRPを調べないとまずいですね。 ○柳澤座長 経過そのものを見ていく上で、CRPが本質的に重要ですから。振動障害 はなし、8番も不必要、9番の人工関節は必要、10番は必要。虚血性心疾患は必要ない ですね。尿路系腫瘍というのはどんなものでしょう。アフターケアのときには必要ない ですか。 ○松島先生 尿路系腫瘍は要らないです。 ○柳澤座長 脳血管疾患も要らないですね。有機溶剤中毒等も要らない、外傷による末 梢神経損傷も要らない、熱傷も治ゆしてしまったら要らないでしょう。サリン中毒も要 らない、精神障害も要らない。循環器障害は、人工弁を入れても感染を繰り返すことは 普通はないですね。循環器そのものの専門の委員はいらっしゃらないので、川城先生と 戸田先生のご意見を聞かなければいけないのですが。 ○戸田先生 CRPの検査は、日常診療で頻繁にやっていて、風邪を引いて病院に来ら れたといった場合でもCRP検査を行います。CRPが異常に高ければ、もしかしたら 肺炎ではないかと。どんどん入れてもいいのではないかという気がするのですが。 ○柳澤座長 しかし、従来の経過からいくと、奥平先生が先ほどおっしゃったように、 呼吸機能障害のときにかなり入れることを検討されて、やはり一定の要件がなければ。 一般的な検査として入れているわけではないということですから。やることが適切であ るうんぬんは、アフターケアをする上でCRPをやってはいけないということではない わけですね。保健上の措置の中には入るわけでしょう。 ○長嶋医療監察官 呼吸器で認められていますので、措置の対象から外れているわけで はないのですが、アフターケアの対象傷病として本当に必要なものなのかどうかご検討 をお願いしているものです。 ○柳澤座長 本当に必要なものかどうかは、事務的な考え方と医学的な考え方は全然違 うわけです。医学的に考えて、感染性の病態を引き起こすリスクの非常に高いものにつ いては、呼吸機能障害でそれが認められたことを基にして付け加えるのはどうかという 議論になるのではないかと思います。 ○木村先生 参考資料No.14に総括表としてまとめられていると思うのですが、2番のC RPだけが取り上げられていますが、血液一般・生化学検査の中に含めて考えれば、2 を取れば逆にすっきりするわけです。その中で、必要に応じてCRPがあるという解釈 で、ここだけあるからおかしな議論になっているのではないかと思います。 ○柳澤座長 戸田先生はそういう考え方ですね。 ○戸田先生 そういう考え方ですね。血沈とかと同じようなものですから。 ○柳澤座長 ただ、後から出てきますが、おそらく血液一般・生化学検査といったとき に、ただ我々が検査をしておいたほうがいいだろうということでは決めていないのです。 血液一般には血算しか入っていないのです。ですから、赤血球、ヘモグロビン、白血球 数、ヘマトクリット、血小板までは入っていて、それは健康保険の診療報酬の点数表に ある1つのカテゴリーにきちんと収まっているのです。我々が通常考える医学的処置と して、アフターケアの保健上の措置には、あまりそういった医学的なものを入れられな いのが現状のようです。そうすると、先ほど議論したように、呼吸機能障害で改めてそ れが入れられたわけですから、易感染性ということで、十分に検査としてピックアップ してもいいと、先ほど挙げた傷病が問題になるのではないかと思うのです。 ○谷島先生 質問なのですが、例えばCRPを検査する場合に、いまは大体一覧になっ ていて、CRPだけチェックすることはほとんどないのです。それで全部上がってきて しまうので、CRPが問題になっているのだと思うのです。一方で、CRPをやること による負担は、最終的には税金などで支払われるわけですね。そういう負担はどうなる かの検討は、どのぐらいの人にどのぐらいのCRP検査をしたら、どのぐらい負担をし ていかなくてはいけないのかということではないでしょうか。できるだけ行政改革の方 針に沿って、大きな方針から逸脱しなければ、大した負担でなければ大いにやったほう が被災労働者に対してはいいと思うのですが、大変な負担になれば、アフターケアの場 でどんどん広げていくのはあまり好しくないことだと私は思うのです。 ○長嶋医療監察官 予算の観点は横に置いていただいて、純粋に、アフターケアについ ては、治ゆ後一定の療養が終わった後にさらに必要とするものの範囲ということで、ご 検討いただければ。実際にどれだけの数字が挙がるかについては、わからないところも ありますし、予算については適応するよう、行政の方で検討することになります。先生 方は、傷病の状態からアフターケアが必要か否かの観点からご検討ください。 ○柳澤座長 その問題を議論するときには、いちばん最初のこの検討の報告・本来の趣 旨から外れたものまで含めて見てはいけないだろうというのが、見直しの本来の趣旨だ と思うのです。医療の中の一部が入っている以上、保健上の措置ということで、日常の 診療の場面で、いったんアフターケアになると、CRPどころではなくほかのものまで 際限なく診療していかなければいけなくなる実態があると思うのです。それはまずいだ ろうと思うのです。アフターケアは、本来の趣旨に従ってこういう範囲の対象者に対し てこういう範囲の措置を行うということを明確にしておく必要があるという立場から議 論されるべきで、先ほどの話のようにプラクティカルには一緒に測るのだからいいだろ うという議論は、こういう制度的なことを議論すべきときには入れないでいただきたい と思います。実際に検査を実施をする場合には、この人はおかしいからCRPも測って おいたほうがいいといったときに、それが削られることはないだろうと思うのです。ア フターケアの措置が適切かどうかは、我々がレセプトを出して社会保険事務所で毎月査 定されているように、審査はされるのです。そういうことを念頭に置いて、制度的には 本来含まれるべきものかどうかの観点で検討して、入れるか入れないかだろうと思いま す。 ○奥平先生 呼吸機能障害の検討の際には、血液一般・生化学検査の中には通常含まれ ないので、CRPを調べた場合には削られてしまうので、明記しておいたほうがいいと いうことで上がったのだと思います。 ○柳澤座長 ですから、おそらく呼吸機能障害の場合には感染のリスクがより高い状態 であるから、アフターケアのプロセスでもCRPを測るべきだという理解だろうと思い ます。そうすると、先ほどのように、易感染を持つ傷病について呼吸機能障害と同じレ ベルでピックアップできるものがあれば、それはピックアップする形ではないかと思う のです。 ○重松先生 循環器障害のところで、人工弁と人工血管感染はいちばん大きな問題です ので、入れたほうがいいですね。 ○柳澤座長 そうですね。なぜ、これはCRPを入れてこれは入れないのかが説明され たときに、ちゃんと説明するだけの根拠を持っていなければいけない。いまの形でよろ しければ、CRPを入れるとすれば、せき髄損傷は神経因性膀胱を生ずる確率が非常に 高く、尿路系感染の率が高い。尿路系障害の場合も、もちろん尿路感染の確率が高い。 人工関節、人工骨頭置換も人工関節の感染のリスクが非常に高い。慢性化膿性骨髄炎も、 当然化膿性骨髄炎そのものですから、炎症の消長を調べるということで必要です。循環 器障害、特に人工弁又は人工血管に置換した者と書いてありますが、こういう方は感染 のリスクがある。呼吸機能障害もすでに含まれている。消化器障害はどうでしょうか。 ○戸田先生 要らないと思います。一般の見方からいけば、あまり必要ないと思います。 ○柳澤座長 消化器障害は入れない。このようなことでそろえるのはいかがかというこ とです。 ○木村先生 神経因性膀胱は、リハビリテーションではせき損と脳疾患がどうしても入 ってくるので。 ○柳澤座長 ただ、脳疾患で神経因性膀胱にはなりますが、脊髄障害のときの神経因性 膀胱に比べるとはるかに頻度が少ないですね。そこまで広げてしまうと、ほかのものが たくさん入ってくるので。 ○木村先生 確認の意味です。 ○柳澤座長 私の意見ですが、外傷による脳の器質的損傷なども入ってくるので、それ は入れすぎではないかと思います。繰り返しますが、2番、4番、9番、10番、19番、 20番は入っているということで、5つ追加になります。これで表14のマルが増えると いうことでよろしいですか。  時間になりましたが、健胃消化剤としての潰瘍治療剤を支給するのは適当かどうかは いかがでしょうか。 ○戸田先生 潰瘍治療剤というのは、H2ブロッカーやプロトンポンプインヒビターと いう意味ですか。 ○柳澤座長 そうだと思います。 ○戸田先生 H2ブロッカーは、慢性胃炎の急性増悪のときは適用になっていますね。 ○柳澤座長 併用薬としてはどうですか。例えば、鎮痛薬を使うとき。 ○戸田先生 抗潰瘍薬を使いますね。使っていいと思います。NSAIDを使ったりす るときには、使ったほうがいいと思います。 ○柳澤座長 ここでは、併用薬として支給するものであれば、抗潰瘍薬を健胃消化剤に 含めていいだろうということですが、鎮痛薬を使ったときは誰でもみんな抗潰瘍薬を飲 みますから、むしろ健胃薬を使わず抗潰瘍薬を主に使いますね。そうすると、原則認め られないのですが、併用剤として支給するのであれば、当該薬剤を健胃消化剤に含む旨 を明記するということでよろしいですね。 (異議なし) ○柳澤座長 それでは、そのようにします。 ○戸田先生 抗てんかん剤に対する肝臓用剤というのは、どういう意味なのですか。 ○柳澤座長 これはまた次の話ですが。 ○戸田先生 普通は使わないですね。昔、現在肝庇護薬といわれる薬物を使ったと思い ますが、いまはその大部分が肝障害を予防する効果はないことがわかっていますから。 ○長嶋医療監察官 平成元年の通達になっていますので、言われるように古いのかもし れません。 ○柳澤座長 もし、削除が必要なら、削除してもいいと思います。この次に具体的な材 料を出して、戸田先生に見ていただきたいと思います。 ○戸田先生 肝臓用剤になると、インターフェロンということもありますから、かなり 厳しいと思います。 ○柳澤座長 見直しのときに、付け加えることだけでなく不必要なものを削るのも大事 なことですから、それは是非検討しましょう。いまのCRPについては検討したところ を確認して、健胃消化剤は併用剤として使う場合には抗潰瘍薬を入れる、抗てんかん薬 の肝臓用剤の併用は見直すということで、10まで終わりました。  それでは、今日の審議は以上で終わりにします。事務局から何かありますか。 ○園田課長補佐 本日は、原則の話から細かな検討まで入っていただきまして、ありが とうございました。お願いした検討事項で残っているものについて、次回引き続きご検 討をいただきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。また、次回開催まで の間に、必要に応じて、私どもから先生方にご意見を伺うこともあろうかと思いますの で、その際にもご協力をお願いいたします。 ○笹川係長 次回は、1月19日(金)に予定しておりますので、よろしくお願いいたし ます。本日は誠にありがとうございました。 ○柳澤座長 それでは、以上で終わります。どうもありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省労働基準局労災補償部補償課福祉係 TEL 03(5253)1111(代) 内線5566     03(3502)6796(夜間直通) FAX 03(3502)6488