06/12/08 労働政策審議会雇用均等分科会 第70回議事録 第70回労働政策審議会雇用均等分科会 議事録 日時:2006年12月8日(金) 14:00〜15:45 場所:厚生労働省専用第21会議室(17階) 出席者:  労側委員:稲垣委員、岡本委員、鴨委員、龍井委員  使側委員:吉川委員、前田委員、松井委員、山崎委員、渡邊委員  公益委員:横溝分科会長、樋口委員、林委員、佐藤委員、奥山委員 ○横溝分科会長 ただ今から、 第70回労働政策審議会均等分科会を開催いたします。本日は、今田委員、 篠原委員が欠席されております。それでは早速、議事に入ります。本日の議題は、「雇用 均等分科会報告(案)について」でございます。本日は、前回の労側、使側の意見を踏 まえまして、前回お示しいたしました報告の素案をその後、公益委員で修正いたしまし て、「報告(案)」を用意しました。それにつきまして、事務局からご説明をいただきた いと思います。では、よろしくお願い致します。 ○高崎短時間・在宅労働課長  それでは、お手元にお配りしています資料No.1に沿いまして、公益委員に代わりまし て事務局で説明をしたいと思います。前回の議論等を踏まえた部分について説明してい きたいと思います。  まず、報告(案)の1つ目のパラグラフでございますけれども、前回、労働側委員の 方より平成15年の「パートタイム労働指針」の改正の際に、考え方に通常の労働者とパ ートタイム労働者との間の働きに応じた公正な処遇という観点から、取り組みを進めた というようなことがあったけれども、それについて書き込むべきだという主張があった ところでございまして、「パートタイム労働指針」の改正の部分につきましては、1パラ グラフに書いてありますので、その趣旨を踏まえまして書き加えています。具体的には 3行目のところからですが、「パートタイム労働者が増加する中でパートタイム労働を労 働者の能力が有効に発揮できるような就業形態としていくことの重要性にかんがみ、通 常の労働者とパートタイム労働者との間の『働きに応じた公正な処遇』の実現に向けた 取組を進めるため」という形で、書き込ませていただいているところでございます。な お、併せて、「通常の労働者を含めた総合的な働き方の見直し」についても、書き込むべ きだという主張がございましたが、前回「パートタイム労働指針」を改正した際には、 そういう議論を重ねましてそういう報告になっているわけですけれども、今回の議論に おきましては、通常の労働者も含めた総合的見直しという位置付けの中では議論がきて おらないということで、そこのところについては今回の報告(案)の中には、入れ込ん ではいないという形になってございます。  続きまして、1枚めくっていただきまして、「記」の上の「なお」のパラグラフの関係 でございます。この点につきましては、前回の労働側委員の方より、「社会保険(厚生年 金保健、健康保険)の適用の問題」、あるいは「パートタイム労働者以外の非正規労働に 関する問題」について議論すべきだということについてきちんと書くべきではないかと いう主張があり、片や使用者側委員の方からは、具体的に例えば社会保険の適用でいえ ば、どういうもので拡大するということについての議論もなかったのではないのかとい うことで、それについて呈してもらわなければというような話でございましたので、そ ういう点を両側の意見を踏まえまして、ただ、そういう問題が存在していることについ ては、公益委員の方も含めて発言等もしてきたということもございまして、公益委員の 方としましては、そこにあるような表現を入れさせていただいているということでござ います。「なお、パートタイム労働者の社会保険(厚生年金、健康保険)の適用の問題や、 パートタイム労働者以外の非正規労働に関する問題等、必ずしもパートタイム労働法の 範囲内に収まらない問題があることに留意する必要がある。」と入れさせていただくとい うことでございます。  次に、「記」の1(1)の部分でございますが、4行目の文章の後に「等」という文字を 入れております。この点につきましては、前回、使用者側委員の方より、労働条件の明 示につきましては、何もその紙媒体だけにとらわれることなく、現在のパソコン等の普 及状況を考えれば、メールでの対応ということでもいいのではないかという主張があり、 それはごもっともということでありまして、公益委員の方としましては、それも含める という意味で「文書等」という形で、書き入れさせていただいているところでございま す。  続きまして、(2)の部分で、「説明責任」の部分でございますが、「説明責任の範囲」 につきましては、前回、公益委員の側で若干その解釈に違いがあったところでして、最 終的に公益委員の方で引き取らせていただいて、もう一度公益の中で意見・見解を統一 して次回お示しするという経緯がございます。それにつきまして公益委員会議で意見を 集約しまして、その範囲を明確にしたものでございます。この点につきまして、「労働条 件の明示の範囲」という考え方もあったわけですが、それでは福利厚生なり教育訓練と いうのが入らないということで、それまた、「狭すぎる」と。ただ、そうは言いましても、 法定の義務をかけるということであれば、事業主側に予見可能性というものがある程度 ないと義務付けしていくことについてのむずかしさがある訳でございまして、そういう 意味で当日も公益委員の方から発言もありました、この「説明責任」というものを、パ ートタイム労働法における各規定の担保手段として位置付けるという形で、パートタイ ム労働法に定められております事項に関しその適用に関しまして、こうした事項につい ての説明責任という形で整理をするということで、公益側としてまとまったものでござ います。具体的には3行目の最後のところでございますが、「1(1)、後述の2及び3に 列記するもの等パートタイム労働法において事業主が措置しなければならない事項、禁 止される事項及び措置に努めることとされている事項に関して考慮した事項について説 明すること」ということにさせていただいているものでございます。なお、「説明するこ と」ということにつきましては、前回もありましたが、納得させるということまで求め ている規定ではないということであることは、重ねて説明いたします。  次に1枚めくりいただきまして3ページでございます。2(1)の「差別的取扱いの禁 止」という部分です。この部分につきましては、特に「職業生活を通じた」という表現 も含めまして、わかりにくいという主張があったところです。この点につきましては、 その際も事務局からも申し上げましたが、重ねて説明をしますと、現行のパートタイム 労働指針におきましては所定労働時間がほとんど同じで、同様の就業の実態にあるとい う形で定義づけられている部分でございますが、今回パートタイム労働法という法律の 中に位置付けさせいただく場合に、(2)以下のパートタイム労働者につきまして、「職務 及び人材活用の仕組み、運用等」という基準で対象者を規定していくという構成をとっ ております以上、同じ法体系の中で2つの構成があるということは、ありえない訳でご ざいまして、そういう意味で従来の考え方を「職務及び人材活用の仕組み運用等」の方 に置き換えた場合に、そこで入っているもの、入っていないものというようなことにつ いて再整理した表現が、今の表現でございます。  具体的に申し上げますと、しばし所定労働時間の関係はその通りでございますが、従 来同様の就業の実態という場合についてどういうものを考慮するかということについて は行政解釈が出ておりまして、業務の内容・労働時間・配置転換の有無・契約期間・勤 続年数・職業能力について見ていくという考え方があったわけでございまして、それら の項目について「職務、人材活用の仕組み運用等」という形で読めるもの、読めないも のとを整理しますと、勤続年数という部分を、要するに長期で、人材活用の仕組み、運 用を見るという部分について、十分でないという意味で、そこが長いスパンですよとい うことを表すという意味で、「職業生活を通じた」という用語、実は労働法の他の法律で もそういう用例があったものですから、一応そういう表現を借りてきて表現させていた だきました。意味はそういう長いスパンで見ているということでございます。  足りない部分としまして、契約期間の問題が残るわけでございまして、その点につき ましては、別出しで書き加えるという意味でそこにありますように、「雇用契約期間等の 就業の実態」というように書かせていただいているものでございます。なお、この部分 は前回の報告(素案)につきましては、「就業の実態(労働契約の形態等)」というよう に表現していましたが、かっこの中が一つの項目で、そもそもなぜ、かっこがついてい るかということもありますし、「労働契約の形態等」というものが、いま一つ中身がわか りにくいという主張もありましたので、それを踏まえまして報告の案におきましては、 「雇用契約期間等の就業の実態」という形で括弧の外に出してわかりやすく書かせてい ただいているところでございます。なお、その雇用契約期間というのは、要は「有」「無」 ということになりますが、雇用期間が定められていましても、繰り返し更新されること により実質的に無期とみなされる状況についても、「含む」ということについては前回も 確認しておりますけれども、そういう考え方を基にこの「雇用契約期間等」という表現 が入っているというものでございます。  続きまして、「ロ」の部分でございます。この部分につきましては使用者側委員の方よ り、実施方法等まで合わせる必要がないのではないのか、何でもかんでも同じである必 要はないのではないのかというご指摘がありまして、実施方法まで揃える必要はないと いうことについては、あくまで「行わなければならない」という規定でございまして、 同様に「しなければならない」というところまでのものではありませんので、最終的に 「職業遂行に必要な能力を付与するための訓練」というものが行われているという形に なればよいということで、そこはその通りでございますが、ただすべてのパートタイム 労働者について一律やらなければならないものではないということは、その通りでござ いまして、その点考えまして、ロの部分の2行目のところに「一定の場合(既に職務能 力遂行に必要な能力を備えた者に対する場合等)を除き」という形で入れさせていただ いております。要するに既に他の事業所で同じような職務をしていた場合に、別のとこ ろに移ってきて改めてやり直す必要がないことは、これはあたりまえのことですので、 そういう趣旨を入れさせていただいているものでございます。  次に「ロ」の「また」以下の部分でございますが、この点につきましては、前回、労 働側委員の方より、職務遂行に必要な能力だけではなくて向上するための能力開発訓練 というようなものについても、再チャレンジというようなことも踏まえてやはり手当す べきでないかと主張があり、経営側からは、そうはいってもベタにすべてのパートタイ ム労働者にやるということでなくて、経営として判断なりがあってしかるべきという主 張もありまして、そういうことを両者言われていることに合意できる部分があるわけで ございまして、公益といたしましてはその見解を総合的に踏まえまして、そこにあるよ うな表現で加えさせていただいております。「また、 事業主は、通常の労働者との均衡 ある待遇の確保を図るため、パートタイム労働者の職務、意欲、能力、経験、成果等に 応じ、教育訓練を行うよう努めることとすることが適当である。」という形で入れさせて いただいているというものでございます。  続きまして、「ハ」でございます。施設の利用の関係の部分ですが、ここにつきまして は「利用の機会を与えなければならない」という形で素案を書いていましたが、前回、 使用者側委員の方より、そうは言っても施設の定員上の問題等があって、すべてのパー トタイム労働者に一律利用させるということができない、あるいはしなくてもいいよう な場合があるのではないか、例えば、期間が非常に短い形で働けるような方たちにまで という話がありました。そういうご指摘があることについて、その際も公益委員の方ら、 それは別にすべて同じということまでではないのではないかということで、回答されて いるところでございます。その点につきまして、この点は趣旨を明確にするという意味 でそういうことであれば「与えなければならない」となると、結果的にすべて与えなけ ればならないということにも捉えかねられませんので、それについては「配慮しなけれ ばならない」ということで「配慮義務」という形で書かせていただいているというもの でございます。  次に4ページでございます。 「通常の労働者への転換の促進」の部分につきまして は、例示が三つの場合ということで、どういうものが例示なのかということについては、 「例えば」というところに書いてあります、三つのものということになります。 まず、 一つは社外に公募する場合でありまして、「当該事業所の通常の労働者の募集に関する情 報を遅滞なく周知する」 というのが1つ目ございます。2つ目は社内公募の場合でご ざいまして、社内におきまして通常の労働者を募集する際にパートタイム労働者にも応 募する機会を与えるというのが2つ目でございます。3つ目は、通常の労働者への転換 制度を導入していただくということで、それらを例示として書かせていただいていると ころでございます。なお、こういう規定がありましても、一本釣り、あるいはヘッドハ ンティング等で行うことについて何ら支障をきたすようなものではないということは、 前回確認をしています。  次に、「4苦情処理・紛争解決援助」の部分でございます。この部分につきまして、繰 り返しになりますが、範囲については、「パートタイム労働法に基づき措置しなければな らない事項」、要するに配慮義務も含めまして義務規定となっている事項及び禁止してい る事項に関しての自主的解決の努力義務というものでございます。なお前回、使用者側 委員のより、どういう内容のものを求められるかということのご質問があって、それに ついて十分回答していなかったという経緯がございますので、ここで説明申し上げます と、それについては同種の規定がございます男女雇用機会均等法と同じという考えでご ざいまして、もちろん事業所の中に何らかの機関を設けて解決に努めていただくという ことは、それでもいいのでございますが、それに限る訳ではございませんので、男女雇 用機会均等法と同様、人事担当者等によりまして相談等で対応していくという形でもい いというように考えていただいているところでございます。  (2)の部分につきましては、これについても前回、使用者側委員の方より、必要性に ついての説明を、という話がございまして、それについて十分説明していなかった部分 でございますが、ここにおいて説明いたしますと、一つにはこの問題につきまして、個 別紛争解決法上のあっせん制度というのはあるわけでございますけれど、あっせんとい うものがいわゆるその互譲の精神といいますか、要するにお互い譲り合って、平たく言 いますと「足して2で割る」というような形での解決を勧めるという制度であるのに対 しまして、パートタイム労働者のこの問題というものが、そもそもそういう「足して2 で割る」というもので解決が進むような性格のものであるかどうかということについて は、必ずしもそうではないのではないかと、やはり同種の制度であります男女雇用機会 均等法上の均等調停類似の制度という方が、解決により資するのではないかというよう な考え方、あるいは労働審判制度等があるわけでございますけれども、現実問題、労働 審判制度が弁護士等によりましてサポートするという形で進められているということで、 そういう意味で費用がある程度かさむというようなこと、なかなかパートタイム労働者 という方々の資力等々考えますと、それで十分ということも言えないのではないかとい うことで、やはりここは男女雇用機会均等法の類似の制度という、まさにそこに書いて ありますような意味で調停制度あるいは紛争解決援助制度というものを置かせていただ くほうが、適当でないかという公益側委員のご判断でございます。  最後に「5その他」の部分につきまして、前回使用者側委員の方より基本方針につい ては、いったん作った後、改定もせず施行しているということで、そもそも審議会にお ける議論の手間等を考えると「必要ないのではないか」というご指摘があったところで ございますが、この点につきましては確かにそういうご指摘が当たっている部分がある わけですが、パートタイム労働法の中におきまして、基本方針というものが、作るとい うことが法制定時に必要性も含めて、国会も含めて合意されてできているものでござい まして、そこについては確かに怠慢等の問題もあるのかもしれませんが、今回、基本方 針削除ということについてはご勘弁いただければということで、そういう意味で、今回 パートタイム労働法を改正した際には、まずそこで対応を考えていくであろうというこ とでございました。以上、事務局の方からの説明といたします。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。ただ今、説明をいただきましたが、この報告(案)は、前 回労側及び使側から出されましたご意見を踏まえまして、公益委員の方で十分に議論を し、まとめさせていただいたぎりぎりのものと言わせていただきたいと思います。労側 使側双方をすべて満足させるというものではないかもしれませんが、委員の皆さまにお かれましては、年内に報告、取りまとめを行いたいという観点で、議論のご協力をお願 いしたいと思います。それではどうぞご意見をいただいて議論をしていただきたいと思 います。  はい、どうぞ。 ○龍井委員   順番に言いますが、先に前書きの方について2点です。2、3取り入れていただきま してありがとうございました。これから申し上げるのは、別に労側というよりは多分共 通の認識があるのではないかという前提で、1点目をご指摘させていただきたいのは、 今回こういう改正に踏み込むと、これは危機感のいろいろな意味合いは違うのかもしれ ないけれども、このまま放置すると、やばいというか危ない状況が起きる。しかもこれ は、労使だけではなくてやはり社会全体の問題ではないかということが、前段では議論 されていたように思います。その時に、今回の法改正の必要性の書きぶりが、当然2カ 所、前回もご指摘させていただいたかもしれませんけれども、不満が存在する、不満が 生じやすいと、これは当然私どももそういうふうに指摘してきましたし、重要なのです が、ただもう少し、不満があるからというだけではなくて、今申し上げたような社会全 体のこのまま放置できない状況になっているという、具体的にどうこう申し上げません ので、やはりそういうニュアンスがあることが、今回、我々がこうして踏み込もうとし ている背景にあるということは、分量としてそれなりの案を展開しろというふうにお願 いするわけでございませんので、ぜひ触れていただけないかなというのが1点目です。  ただもう1点目は、前回指摘をさせていただいて取り入れられているところなのです が、もしも発言内容に誤解があるとすれば、少し見直していただきたいと思います。2 ページ目の2つ目の○のなお書きです。この2行目に「パートタイム労働者以外の非正 規労働に関する問題」という記載があるのですけれども、私どもが、例えばフルタイム の問題や有期の問題を指摘させていただいてきたのは、結果的に多くのパートタイム労 働者が、前回申し上げたことと重なるのですが、短時間であるということから生ずる問 題と、それから有期契約であるということから生ずる問題が、二重にオーバーラップを しているわけです。ですから問題の質が二重にあると。別にお皿の例えで言うと、2枚、 別のお皿があるのではなくて重なりあっている。この表記では、「パートタイム労働者以 外の」というようになると対象労働者の範囲の問題として考えられているとすれば、そ れは前回申し上げた趣旨とは違いますので、もし、今申し上げた趣旨でおくみ取りただ けるのであれば、そういう問題として書き改めていただければ幸いだと。例えばですけ れども、短時間ということによって生じる問題以外の問題、つまり問題の質です。その 問題というのは、例えば有期契約問題等、この表記は別にどういう表記かとこだわるわ けではありませんけれども、そういう趣旨の文言に、改めていただければと思います。 もし私が申し上げた趣旨が違うというのであれば、そういうようなご検討いただければ と思います。まずは以上です。 ○松井委員  公益委員の方に、短期間に私どもの意見も一部取り入れてくださったことに、まず、 感謝御礼申し上げます。ただ、恐らく龍井委員が最初に言われた点については、危機感 の共有というのは、私どもとしてはまずあり得ないということだけは申し上げておきた いと思います。なぜなら、私ども経営側として何度も繰り返し、主張申し上げてきてお りますけれども、指針の改正があってから、まだわずか3年ということで、その改正さ れた指針の浸透状況について十分検証がなされているのかどうか、それについてはまだ 疑念が晴れない。これが率直な感想であります。そういう観点からすると、本当に今、 法制化が必要なのかどうか。このような前回の公益委員方の提示された、いわば素案の ようなものを見て、特にパートタイム労働者を多く雇用されている企業・産業の方から、 なぜ今これが本当に必要なのかという多くの現場からの反発の声が相当ございました。 労働側はまた違うことを言われるかもしれませんけれども、変える必要性は何なのかと いうことを、私は説明を何度も求められて、実は私もよく理解できないということを審 議会でも主張していると。そういうことから、後ほどで結構ですけれども「記」以下に ついて考慮した事項、なぜそのようにするのかということを簡単で結構ですので、でき たら奥山委員にご説明をお願いできるとありがたいと思います。 ○奥山委員  なぜ、私なのですか。 ○松井委員  前回、奥山委員のご発言では、「何でも求められたら企業側は答えるべきだ」というご 発言がありましたので、私どもとしては説明を求められたら組織の会員企業・会員団体 等に説明をしなくてはいけません。その意味ではやはりどうしてこうなっているのか、 どうしてこうしたのかということは、ぜひ公益委員の言葉からお聞きして、私どもとし てはまず伝えて納得してもらえるかどうかということの対応をしたいという気持ちで、 今、申し上げている次第です。  もう一つ申し上げたいことは、努力義務ということで、特に賃金のところはなってお りますけれども、こういう部分について確かに努力義務であったとしても、本当に法的 整備でもって行うことが必要なのか、企業側としては賃金を決める要素というのは様々 な問題を考慮して行っているというのが実態かと思います。今回の整理は基本的には職 務を中心に、職務が同じか否かというスクーリングをして、その次に人材活用や運用、 さらに契約期間等の就業の実態という三つに大きく分けているということは、とりあえ ずは理解しますけれども、それでは本当に現場を支える企業の立場といたしまして、後 者の二つ、人材活用や運用の仕組みが同じということと、もう一つ契約期間等の就業実 態が同じというところについて、もしかすると非常に言葉は違っているのですけれども、 現場の運用の実態を見たときに、同じ状態のことを違う言葉で表現しているのではない か。というのは最後のところは単なる契約期間が有期なのか無期なのか、あるいは有期 であるけれども無期とみなせる状況だけの違いなのかどうかということについて、非常 に難しい。現場でそこの違いをどのように考えたらいいのかというのは判断しにくいと ころがある。そこの部分は十分、審議会の中でも確認をして議論をしてきてほしいと、 私どもは言われているわけです。したがいまして、やはり企業の現場が運用できないも のを法律という形で義務付けられるということについては、やはり納得しかねるという ことを私どもとしては言わざるを得ない。これは私だけではなくて、こちら使用者側・ 事業主側の共通の意見と理解してもらえればと思います。総括的には以上とさせていた だきます。 ○横溝分科会長  どうぞ。 ○奥山委員  私の方に振られたものですから、私の方から私の考えている限り、ただし私が1人の 労働法学者として個人的にこういう問題について考えているところと、公益委員として こういう法の改正などそういうものの中で、労使のお互いの意見の違いの中で公益がど ういうところで今回の改正をしていけばいいかというところの考え方とはもちろん違う わけで、これは松井委員も同じだと思いますが、個人的に考えていらっしゃることと使 用者の利益をカバーしていこうという立場との違いはあるだろうと思います。ですから そこはお含みいただきたいと思います。あまり話しますと個人的なものになりかねない ので、そこはなかなか難しい問題があるかと思いますけれども、まず一つ、前回の松井 委員との話で出た中に少し誤解があるようです。私は使用者がパートタイム労働者の方 から聞かれた事柄についてすべて答えなければいけないなどということは思っていませ ん。前回の報告の中では待遇について説明を求められたらということですね。1(1)と(2) というのは基本的に違う事柄でして、(2)のところは待遇に関して、です。ですから、こ ういうもののかかわる事柄について質問をされたら、それについてそれなりの説明をし ていく。説明の場合も説明の対象、説明の範囲、説明の程度などいろいろ分けて考えて いけると思うのです。そのときに担当課長が説明されましたように、相手を納得させる ような意味での説明でもないし、いわば待遇に対してパートタイム労働者が疑問を持っ て、「私の賃金や職務はどうなっているのですか」と聞かれたときにそれなりの説明をす るという主旨なのです。ですから、何でもかんでもパートタイム労働者で働いていらっ しゃる方が言ったことについて、すべて答えていかなければいけないということを言お うとしたわけでは決してありません。その上で松井委員がおっしゃったようにいろいろ な問題も出てきます。そういう問題も強いて議論すれば、労働者の働く直接・間接的な 処遇にかかわるではないかという意見ももちろん出てきますから、そういう点ではおっ しゃるように対象が難しいということは重々認識しております。だからこそ、この前そ ういう問題提起をいただきまして、公益委員の方で持ち帰って、そこはもう一度考えて 今日のような修文になっているところであります。それはご理解いただけると思います。  全体として今回のパートタイム労働法の改正についての背景については、今、申しま したように公益の中でもかなり射程や意義というものは変わってくるだろうと思います。 私の場合は龍井委員がおっしゃった表現とは少し違うのです。危機、危ないというニュ アンスで出てくるような視点とは少し違うのです。私はこういう雇用の流動化の原因は いろいろあると思うのですが、これだけ多様な働き方がどんどん進んできていて、こう いう働き方はこれからも大きな枠というか形態として出ていくでしょう。そういうこと になると従来のように定年制の下で長期的な雇用というものだけがいわば働き方のセオ リーではなくて、短期的に自分の個人的な生活のかかわりの中でやれるような仕事を行 っていくことも一つの大きな働き方だろうと考えているのです。そのときに大事なこと は、これは個人の見解に入りすぎるかもしれませんけれども、良好な雇用の機会という ものがきちんと確保できるようなシステムづくり、環境づくりが大事ではないでしょう か。それから合わせてそういうことを確保していくためには、働き方の違いに応じた公 正な処遇というものがどうしても必要になってくるのではないか。何もこれは皆同じ処 遇にしなさいということではなくて、この報告案の中にも出ておりますように、労働者 の職務、意欲、能力、経験など、こういう働き方の違いに応じて、その違いに応じた公 正な処遇をしていくことが大事だと言っているわけであります。ですから、今回のパー トタイム労働法の指針改正Vからまだ3年ということでありますが、そういう指針の中 で盛り込まれたようなことをさらに法律の中に挙げて、皆が理解できかつ同調できるよ うな、パートタイム労働者・短時間雇用についての働き方の軸といいますか、土俵が作 られることが大事ではないかと思っています。そういう観点から、私はこういう公益委 員として、この案について皆さんといろいろ議論しながら今日の報告案ということで了 承しております。よろしいでしょうか。 ○佐藤委員  後半の方なのですけれども、企業の現場でいろいろ困るのではないかということがあ ったのですが、一つは前半の方の処遇の水準や処遇の決め方について、かなり法律で縛 られるのではないかという議論があったのですけれども、これは繰り返しお話していま すように、処遇の水準を合わせなさいということはどこにも書かれていません。もちろ ん対象となるパートタイム労働者によりますけれども、例えば処遇の決め方を同じにし なければいけない分野や決め方を変えてもいいけれども水準はある程度バランスをとっ ている、バランスのところの水準を変えているわけではありませんし、ですから賃金制 度の作り方について、例えば(1)の差別的取扱いというところについても、これは正社員 がどうであるかで決まるわけで、正社員についてこうしなさいというような波及効果が あるわけではありません。つまり処遇の制度の作り方については公正な処遇であればい いわけですので、法律になったとしても、別に正社員についてこうしなさい、パートタ イム労働者についてこうしなさいということを決める法律ではないということをご理解 いただきたい。  それともう一つは、人材活用の仕組みと運用、あるいは雇用契約期間等、かなりわか りにくい、あるいは同じなのではないかということなのですが、人材活用というのは今 どういう仕事をしているかということで、人材活用の仕組み・運用の実態というのはも う少し長い目で見てどういう仕事を経験していくのかということで、先ほど「職業生活 を通じて」とあったのは、そうするとかなり長く見るということだと思いますけれども、 ある職場なり事業所の中でどういう仕事を経験するようになっているかということです。 これが人材活用の仕組みです。雇用契約期間等は今ご説明ありましたように無期か有期 かで、無期についても形式的に有期であっても実態として無期のものはもちろん無期の 方に入ります。これについては何が有期だけど無期なのかということについては、例え ば育児・介護休業法の中でも2年前の改正で有期労働者については一定の範囲適用とい うのがありますけれども、それとは別に有期であっても事実上、無期とみなせるものは 通常の育児・介護休業法の育児休業は取れるということになっています。ですから、ほ かのルールの中で、私たちの言っているものは準用されるような形になっていくのでは ないかと、個人的には思います。ほかの雇用均等・児童家庭局関係の法律の中でもそう いう適用のものがあると思いますので、これができたから突然新しいことが加わるので はないだろう。育児休業についてもそういう運用の仕方になっていると私は理解してい ます。 ○松井委員  大変、丁寧なご説明をありがとうございました。まだ経営側でも疑念のところは各委 員持っておられますので、質問等させていただきたいと思います。よろしくお願いいた します。 ○龍井委員  先ほど私が申し上げた2点目について、何かコメントはございませんか。 ○樋口委員  2点目の必ずしもパートタイム労働法の範囲内に収まらない問題がある、これは労働 側としてもいいと考えていらっしゃるのだろうと思うのですが、問題は非正規労働とい うところで、あえて有期というのを明記するかというような問題だろうと思うのですが、 実はいわゆる非正規というのは呼称で「非正規」というような場合も多々あるわけです。 いろいろ個別に見てみると契約であったり、同じであってもいわゆる非正規であったり すると。龍井委員の言ったように、「有期」と限定してしまうと逆に範囲の幅が狭まって しまうのではないかというようなこともあるのではないかと思いまして、非正規に関す る問題とこの法律の中では片付かない問題があるのだというようにした方が、むしろ良 いのではないかと思い、このような扱いをしたということなのですが、それでは不十分 でしょうか。 ○横溝分科会長  事務局の方からそれについてお答えいたします。 ○高崎短時間・在宅労働課長  今の樋口委員のお話にもありましたように、ここでとても意見が対立しているという ことではないと思います。要は、パートタイム労働法以外の部分でもあるという話だと 思いますが、それは量の面で違うということもあるし、質の面で違うということもある し、それはどちらかで書けばいいという話ではあると思います。ただ、労働側委員の方 からそういうご主張がありましたので、ほかの委員の方がそういう整理の仕方でもいい ということであれば、例えば「パートタイム労働者以外の」と書いてある部分の「者」を抜 いて、「パートタイム労働以外の」と直せば、特に大きな修正もなく、言っていることが 大きく変わるというわけでもないと思います。 ○龍井委員  その主旨で結構です。 ○横溝分科会長  わかりました。 ○稲垣委員  今のところで少しだけ申し上げたいと思います。有期という問題に最初の方からずっ とこだわってきましたけれども、やはり働いている立場からすると1年後、2年後の自 分の仕事がどうなるかわからないというのは、生活の設計がたたないわけです。パート タイム労働者で働いている方々の多くが生計のため、あるいは生計維持の補てんのため と言っているのですけれども、補てんといったときでも家計の中の半分、あるいは半分 以上を担っているというケースが多いので、全く契約更新がストップしたときにそこが ゼロになるという不安というのは大きいのです。ここの場で議論はできないということ はわかっているのです。今、労働条件委員会の方で議論されているのですけれども、素 案として提示されているのは労働側としては大変不十分だということで、そういう意味 では、働いている多くのパートタイム労働者あるいは非正規といわれている方々のそう いう気持ちというものも、ぜひわかっていただきたいと思います。 ○吉川委員  最初に、私ども中小企業の立場からしましてもこのパートタイム労働法が必要かとい うことについては反対であるということを申し上げたいと思います。そして実態に合っ た法律でないと生かされないのではないかと思いますので、その点をぜひ考慮してほし いと思います。  私の方から2点ほど、お願いしたいと思いますが、まず「差別禁止について」という ところを、今までも何が差別に当たるのかということが、まだまだあいまいなままでは ないかと私は思っておりますし、ずっと均衡という議論で来たのに、前々回の報告素案 か何かから「差別禁止」という言葉に変わってきてしまっているように思いますので、 現状としてどういう人が差別という対象なのか、説明をいただいたのかもしれませんが なんとなく納得できていないので、その辺のところの納得できる説明をしていただけた らと思います。    このようにあいまいなままこの項目が入っていきますと、結局は無用なトラブルが発 生してしまう。ある意味ではパートタイム労働者の雇い止めなどということや、労働条 件の変更などということの方にもつながりかねないということもあると思いますので、 この辺りのことをもう一度ぜひ説明していただけたらと思います。  それから、次の通常の労働者への転換のことについてですけれども、現在は努力義務 ですので、それを義務化にするのは少し違うのではないかと思いますし、これについて も中小企業の実態に合っていないというのが実態であるし、この法律そのものについて 大手企業を対象にしたものなのか、中小企業を対象にしたものなのか、この労働条件と いうのは大手と中小では大幅に差があるような気がいたします。なぜここで義務化にこ だわらなければいけないのかというところがよくわかりませんし、実態問題として採用 の時点で正社員とパートタイム労働者というのは違った目的で採用しているわけですか ら、そしてこの転換については、そのパートタイム労働者の方の中で本当に一生懸命や って認められている方については、企業としては当然こういう人材が欲しいという方に ついては、何回も出ていますけれども、お声掛けをして一本釣りで正社員の登用という のはすでにもうされていますし、このお声掛けそのものがすでに転換の素地になってい るのではないかと思います。  それを、前回の説明では、これは違うという説明があったと思いますが、かえってそ こについてはこれを外してしまって全部正社員に転換できるような人材募集にしても、 その表現についてどのように書いたらいいのか、なかなかわからないというのが現状で すし、小さい企業ですと現状では就業規則がない企業もあるわけですし、職務規定もな いですから、そのときに職務が違う正社員の募集情報のようなものはどういうようにし たらいいのかというところもまだわかりきれていません。それと例えばの話、パートタ イム労働者のこの方を正社員登用という推薦を持っていくときに、大手の企業であれば その部の責任者の方が推薦をする・しないということになり、そこのところで責任者の その方が推薦に値しなければそれは法律違反にならなくて、ある意味では中小企業はそ の立場を社長がやっているわけですから、その中小企業は社長が推薦した人が認められ、 大手は部長なり工上長なりが推薦しなくても法律違反にならないというのは食い違いが あるのではないかと思います。  言っている説明がわかりませんか。要は、大手企業は本採用推薦に当たって、部長や 工場長あたりの方が推薦する・しないによってチャンスがある。中小企業においてはそ のチャンスを与えるのが社長と、同じ中小と大手で同じことが、名称が違うというとこ ろにあたるわけですから、それを法律で一律化していくというのは、社長の方は法律違 反で部長の方が推薦しないのは通過するというのは食い違いがあるのではないかと思っ ておりますので、実務に即してないように感じます。 ○樋口委員  これは推薦して採ってはいけないとは言っていないのです。もちろん、この人を推薦 して正社員にしたいという人がいればしてもいいわけです。だけどそれは、ここには該 当しませんと言っているわけです。 ○吉川委員  要するにお声掛けが違うということですよね。 ○樋口委員  チャンスを与えるというところをしてくださいというのが企業努力です。3の(1)を言 われているのですよね。 ○吉川委員  そうです。 ○樋口委員  そこは今言われたようなことはしてはいけませんと禁止しているわけではないのです。 社長がこの人がいいから正社員にするというのは、もちろん個々の企業では当然ありま すし、大手でもあると思います。それはやってはいけませんと言っているのではなくて、 それはやってもかまわないのだけれど、それはここでいう「努力をした」ということに はなりませんと言っているということです。 ○吉川委員  例えば社長の方が推薦をして採用の方に向かった、でも大手の場合は部長なり何なり が推薦しなかったというときの差のことを言っているのです。   ○佐藤委員  例に挙げてあるように「等」ですから三つ以上あるかもしれません。いずれか一つで す。一つは中小企業などでも社員を例えば職業安定所等なり求人を募集するときに、パ ートタイム労働者の方にその情報を出してください。そのときに応募をしてきてもその パートタイム労働者を採れと言っているわけではありません。一定の基準でセレクトし て採る。パートタイム労働者を優先して採れと言っているわけではありません。それと そういう中にもう一つ社内公募の場合ですから、あまりないと思います。  もう一つはいわゆる転換制度で、転換制度を作ってもその中にパートタイム労働者の 一定の等級以上の人を対象の転換とし、かつ上司の推薦がある場合もあります。この作 り方についてこういう制度にしなければいけないということまで言うわけではありませ ん。ですから、中小企業では社長推薦というのがあるかもしれません。それが合理的で あるかどうかはもちろん議論になります。苦情が出てくるということがあるかもしれま せんけれども、そこに推薦制度を入れるような正社員登用制度を作るということはあり 得る。その作り方について、どういうものでなくてはならないと出ているわけではなく、 合理的であればいいのです。 ○吉川委員  すみません。説明が不十分だったとは思いますが、中小企業の社長が推薦するという ことはある意味で一本釣りになるわけです。ですから、そこと大手の部長たちのところ での推薦しないというところの食い違いというのはおかしくないですかということです。 ○佐藤委員  中小で正社員登用制度を作り、例えばある等級以上のパートタイム労働者について社 長推薦というような作り方というのはあり得ると思います。そのときに社長がえこひい きしているかどうかという問題が出てきますが、そういうルールとして、その運用がき ちんとされていれば問題はありません。 ○吉川委員  そういう意味からして一本釣りも認めてほしいということを言いたいのです。    ○山崎委員  お聞きしたいのですが、大体中小企業というのは、周知の事実でこの人なら仕方がな いということで社長がなってほしいということが多いと思うのです。それが一本釣りか もしれませんけれども、その前に募集があるかということを一度言わなければならない ということですか。応募がありますかなど。それから決めなければならないということ ですか。   ○佐藤委員  ここは基本的に例示しているものの中の、あるいはこれ以外で同じような機能を果た すものがあればそれはあり得ると思いますが、今、例示されているのは三つの内いずれ か一つです。ですから例えば、うちの会社は社員を募集するときにその情報のチラシを パートタイム労働者が見るところに張っておく、パートタイム労働者に配る社内報に載 せるなどをすればいいわけです。 ○山崎委員  情報ですから口で言ってもいいわけですね。 ○佐藤委員  もちろん仕方についてはいろいろあると思います。特定の人だけに言わないでできる だけ広く言ってくださいということはあると思いますけれども。 ○山崎委員  それで、私は「Aさんを」と言ってもいいわけですね。 ○佐藤委員  これは募集ですからエントリーしてもらって選ぶわけです。普通の募集はそうですか ら、何人か来たら選ぶわけです。選ぶときに結果として採りたい人が採られるかも知れ ません。 ○山崎委員  一応わかりました。 ○樋口委員  例えば社内だけの話ではなくて、ヘッドハンティングの例を考えれば、ヘッドハンテ ィングをしてはいけないのかというとそれはとんでもない、問題ないわけです。ただそ れをやったからといって、パートタイム労働者の人に対してこういう努力義務をやった かというとそれはそうではないでしょうと言っているということです。 ○松井委員  確認なのですが、吉川委員が申し上げたかったことは、恐らく例示の3番目の転換制 度を導入するというときに、例えば大企業では、その上長あるいはその上のトップの推 薦があったときに初めて、次のところに行くことができる。吉川委員が指摘したかった ことは、中小企業の場合はそれを社長がやっているのではないかと。あなたは転換可能 だということで、大手でいう制度導入に当たるのか、当たらないのかという指摘で、そ れは制度を入れたことにしてもらえないと中小の実態としては難しいのではないでしょ うか。  大手の場合は、一次スクリーニングは人事部門がやるわけではなくて上長がやってい ますねという主旨で理解してもらえると可能なのかどうか。中小では現実に、例えば部 長等もいなくて一番の上長はもしかして社長になってしまっている。それもここの転換 の措置をしていないと、導入していないといわれるのは、やはり実態からすると非常に 困るということを申し上げているのです。そのように、理解してもらえるとありがたい のですが。 ○吉川委員  説明不足ですみません。以上のような理由です。 ○佐藤委員  そこまでは公益の中で議論していないので、私は通常の転換制度という理解、コンセ ンサスの中だと思います。ただ、制度ですから社長の頭の中にあるだけでは困る。うち はこういう社長が一定の基準の指定の中でやりますと公示したら、それは制度だと思い ます。けれども、それは全然パートタイム労働者の人は知らなくて、「あなたはいつのま にか社長が選んだのです。うちは制度ありますから」これは通らないのではないか、制 度ですから。社長が推薦する、それで採用するとしてもそういう仕組みがあるというこ とと、これは一応、説明責任のところにかかると思います。では、「何を基準に社長は選 んでいるのですか」と言われたときに、「こうこうです」と言えるということがないとや はりまずいだろうと。それがあれば、私はそういうものもありうるだろうと、とても小 さな会社であれば、ですね。さっき言われた差別的禁止はいいですか。 ○横溝分科会長  では、どうぞ。均衡と差別的禁止。 ○佐藤委員  基本的には、全体に公正な処遇をどうするかということで、パートタイム労働者の所 定労働時間が短いと。それ以外の違いで処遇や制度の違いがあるのは合理的であればい いのです。例えば仕事が違うからなど、仕事が同じだけれど人材活用が違うからです。 こういうふうに水準や処遇の仕方を違う者、つまり、この理由があるから違うようにし てという範囲は、違っても公正な処遇なのです。そして、詰めていったときにその差別 的禁止と言ったのは、ここは仕事も同じでかなり長期の人材活用も同じで、雇用契約の 事実も正社員と同じです。そうしたときに所定労働時間が短い以外に差がないのです。 そうしたときにこれまでの議論で言えば、これ以外、つまり逆に言えばこれが違うから 差をつけていいというのが他にあるのかといったときに、今まで詰めてきたのではない だろうと。ないとすれば差があるとすれば、これは差別ではないかという詰め方です。 それは、私は今まで指針から含めて議論してきたことだと思います。もし、わからない ということでしたら、これ以外の大きな理由があるから差をつけていいのだと出てくれ ば別ですけれども、これまでなかったのではないかということです。 ○稲垣委員  今のことに関連してなのですけれども、今、佐藤委員がご説明いただいたことのとこ ろに本当に当てはまるのが、例えば女性の場合、結婚や出産あるいは育児で辞めざるを 得なくなって、そのあともう一度再就職する場合にパートタイム労働者という働き方し かない。でも、本当に力は一杯あって、例えば自分が結婚する前に働いていたのと同じ なのだけれども、仕事の中身も同じなのだけれども、賃金はすごく安い。そういうこと に対する差別というところで捉えると、すごくわかっていただけるかと思うのですけれ ども。やはりこれは女性に対する差別ということにもつながるかと思うのですが、ここ は押さえていく必要があると思っています。 ○岡本委員  総論と各論について発言をさせていただきたいと思うのですが、今回改めて3年前の 建議を読み直してみたのですけれども、かなり研究会報告もあったということもあって、 状況分析など問題意識ということについては、多岐にわたって整理がされていたと思い ます。結果的には、社会的な合意が得られないということで指針の改正にとどまったわ けなのですが、ここで問題提起をされていたことはより一層、今の状況から照らしてみ ると、深刻化しているのではないかと非常に思っています。  先ほど冒頭に、例えば働き方の問題について書かれていないことに対して、議論がき ちんとされてなかったという説明が事務局からあったわけなのですが、今回の審議会の スケジュール的に、どうしても全体の部分できちんと労使共に合意できるところも含め て、合意できないところもたくさんありますけれども、議論を詰めるということがなか なかできなかったのではないかと思います。私たちとしてはやはり本来であればこのパ ートタイム労働法の議論については、雇用政策全体のものや社会制度や全体からのアプ ローチで議論をしていって、その上でパートタイム労働法がどういう形で改正されてい くのかということが本来的には求められていたのではないかと思っていますし、働き方 の問題等についての私たち側がこれまで意見を申し上げてきたことには何ら変わりはご ざいません。  それから全体ということでいえば、すべてのパートタイム労働者に対する均等待遇の 義務化ということをずっと私たちは言い続けてきたわけですけれども、そのことについ ての基本的なスタンスということについても、変わっていないということを改めて申し 上げておきたいです。そうはいっても私たちは、この今回の法改正について幾つか前進 をしているところもございますので、反対をするという立場にはないのですが、幾つか キーのところについてこれまで主張してきたことを改めて申し上げることになりますが、 再度ご検討をしていただけないかということを申し上げたいと思います。  まず、賃金のところについてなのですが、通勤手当について私ども再三発言をさせて いただきました。時給が何百円ということの中で、やはり交通費を自腹で出していくこ との状況というものがいかに大変であることは、今更言うまでもないと思うのですけれ ども、ぜひその通勤手当を実際に出している企業においては、正職員と同じように通勤 手当ということについてもきちんと支給をしていくということを追加していただきたい ということが、1点です。   それから、能力開発についても再チャレンジの関連で書き加えていただきましたけれ ども、やはり職務が同じというところに、すべてかかわって来ているように思います。 働く人の能力開発ということに対する機会を与えるということは、結果的に能力の向上 をして企業にとっても有効なはずですから、能力開発について職務が同じということに 限定しないで、ぜひ、もう少し幅広いものにしていただけないかということが、2点目 です。  それから、福利厚生について、ご説明の中では前回の素案と同じであるということだ ったわけですが、今回、配慮義務という形になりましたので、この効果というものがど のくらいあるのかということが一つ疑問にもありますし、それから施設の機会というこ とではなくて私どもは再三申し上げてきましたけれども、慶弔見舞い、休暇というとこ ろについて一番差別を感じているということは、これまでも再三データ等を含めて議論 されてきたところだと思いますので、慶弔についてはぜひ福利厚生のところで追加して いただきたいと申し上げたいと思います。  それから先ほどパートタイム労働法ついて反対だ、実態を考えてほしいということが ありました。私たちとしてはその実態そのものが、やはり今認められるものではないの ではないかということを思っています。実態を追求していくだけでは、これまで議論を してきたパートタイム労働の問題、それから経営者側としてはくみしないかもませんけ れども、今、再三社会的問題になっている格差の問題や2局化の問題というところにつ いて、何ら改善することにならないと思いますので、そこだけは少し反論ということも 含めて申し上げておきたいと思います。以上です。 ○横溝分科会長  はい、渡邊委員 ○渡邊委員  やはり、先ほど吉川委員が主張しているように、基本的には法律そのものが成文化さ れることには絶対に反対の立場です。  特に資料No.1の2-(2)-イ「職務関連の賃金」について指摘しておりますが、これは、 我々は何回も申し上げているのですが、この待遇の格差というのはパートタイム労働者 と正社員と格差があって当然ではないかと。これは非常に合理的に格差を付けているの は現状ではないかと思いますし、そもそも賃金の決定というのは、どの要素や項目を選 択するかは企業の裁量権の範囲であり、これを法律で幾ら努力義務といっても義務化す るような問題ではないのではないかと。従って、とにかく職務賃金についてこういう形 で法制化することには、私どもは絶対に反対の立場です。 ○佐藤委員  今の2のところなのですが、基本的に何度もご説明しているのですけれども、先ほど パートタイム労働者と通常の社員の方に差があるのは当たり前ではないかと。それは合 理的な格差であれば、全然問題ないのです。例えば、会社によって給与の作り方が違い ますが、仕事が違って給与が違う、同じ仕事でも例えば成果なり能力を見る給与制度が あって、その結果同じ給与制であるけれどパートタイム労働者と社員が違ってくる、こ れは合理的なわけです。ですから差をつけるのは一切いけないとは言っていないので、 違いが合理的に説明できないものは困ります、それはなくしてください。合理的な格差 はいいのです。そのときの考え方を今回示すのであって、違いがあるのは全部駄目だと は一言も言っていないのです。ですから今ご説明いただいたような多くの企業は、合理 的な処遇の違いというのがあるのは多いと思います。それを否定するわけではありませ ん。  ただ、説明できないようなあるいは非合理だといわれるような格差をできるだけなく して、パートタイム労働者の方も意欲的に働くようにしようと。幾つか共通認識できる ような、これで差を付けるのはおかしいのではないか、これとこれが同じであれば同じ、 例えば処遇の決め方にしましょうというのを切り出したのが、今回の法律に盛ろうとし ている内容ではないかと思います。 ○樋口委員  よろしいですか。労働側から通勤手当、慶弔見舞いという話が出たのですが、このベ ースに我々は、やはり時間比例といったものを考慮に入れているわけです。労働時間の 長さが違うと。そうした場合に均衡の処遇というのは一体何だろうか。そうすると時間 に比例して、例えば時間単価は同じような決定の仕方によって、労働時間が長かろうと 短かろうと、というのを考えていったわけですね。ところが通勤手当や慶弔手当をどう 時間比例させるのかというのが、とても難しいわけです。片方で週20時間のパートタイ ム労働者がいて、片方40時間。では慶弔手当は半分にしましょうなど、あるいは通勤手 当についても半分だけは出しますよというような形というのが、現実的にできないわけ です。  そういうことを考えるとこの二つは除いておいて、時間比例ができるところからまず 考えていくというのが、均衡の姿ではないだろうかと考えたということなのですが、労 働側は同じ額を出せという通勤手当などについて、労働時間が違っていてもということ をご主張なさっているのでしょうか。 ○岡本委員  交通費は、時間比例できるものではないですね。実際に実費なわけですから。ですか ら通勤の交通費については当然同じ額を出すべきだと思っています。  慶弔見舞い金の額の問題については、若干そこは違いがあるかもしれませんけれども、 例えば日数などについては、そこで違いを認めていくということは、私たちは非常に差 別的な違いではないかと思っていますので、そこは同じであるべきではないかと思って いるのです。時間比例で今回区切られているということは、それはそこの部分で理解で きますけれども、時間比例だけでなくいわゆるパートタイム労働者の方たちが一番問題 であったり、一番要求していたりすることに対して、今回のパートタイム労働法の中で どう答えられるのだろうか、答えるべきではないかということが、私たちの意見なわけ です。 ○樋口委員  例えば経済学で時間に応じてコストが変わってくるというのが変動費であって、片方、 時間の長さに関係なしに交通費であるなど固定的に決まっていますと、固定費だと分け るわけですね。そうすると逆に経営者として考えるときに、時間当たりのコストはどう なのかということを考えたときに、その分だけ時間が短いにもかかわらず同じ固定費が かかるということになると、パートタイム労働者方が割高になってくるのです。という ようなことまで考えていくと、果たしてそれによって保護したような形になっていなが ら、結果としてそれは避けようという問題が起こってくる可能性もあるということです。 固定費部分というのは、とりあえずここのところから除外して、特に福利厚生というと ころですから考えたらどうでしょうかということだろうと思うのですが。 ○鴨委員  今のところなのですけれども、理屈的に言えばそういう話になるのかと思うのですけ れども、働いている側からいえば、例えば退職金もパートタイム労働者の場合は、ほと んどないですよね。そういった長い目で見れば通勤手当や慶弔休暇を与えることが、そ んなにパートタイムという働き方に対しての人件費コスト高になるのでしょうかと私は 思います。そのコストのところでプラスマイナス幾らなのかというのが少しわからない のですけれども、例えば今岡本委員からも話をして、私たちも言い続けているように通 勤費や慶弔休暇などを企業がパートタイム労働者に対しても、ここでいえば配慮義務に なると思うのですけれど、配慮するということはある意味において働く側にとっての働 く意欲や自分がここで頑張っていきたいという思いに対しては、かなり大きな比重を占 めていると思いますので、そのことは時間の中でのコスト等々以上のものを私は結果的 に生み出していくのではないでしょうかと思うところです。 ○樋口委員  私はそれを雇用主として出してはいけないと言っているわけでないのです。法律でど うするかというところのぎりぎりの線を議論しているところでありまして、もちろんそ れでインセンティブが高まって企業にとっても労働者にとってもハッピーであれば、そ れは個別に判断してもらってやればいいのですが、「最低限、法律で今決めましょう」と いったときに「それは出さなくてはいけないよ」と言えるかどうかという問題だろうと 思うのです。 ○松井委員  樋口委員が明快に言ってくださったように、仮に労働側にお考えいただきたいのは、 同じように交通費を支給しなくてはいけないというならば、単位労働コストで考えた場 合にパートタイムにしないで、有期契約のフルタイムと同じ時間で働いてもらうように しないと時間単位ではイーブンにならない。そうすると結果的にパートタイム労働者と いう形でならば働くことができる方が、結果的に排除されはしないかということを樋口 委員は言ってくださったと思うのです。私としてはそのように理解するわけです。  重要なことは何でも法律でやるということではなくて、もう一つ重要なことはパート タイム労働者で同じといっても、例えば2時間くらい働いて、また次の会社で2時間と いうケースもあるわけですね。その場合では会社によってやはり時間帯等も考えたら、 交通費を全額支給というやり方もあるでしょうし、それは、そうでなくて、時給に込み の形での提示の仕方もあると思うのですよ。ですからそれをすべて同じということで求 められたら、反対に企業側としては時給そのものの提示も場合によっては低くなりかね ないと。そこまでもやはりぜひご理解を賜りたいと思います。  それから「慶弔休暇を私どもが要求し続けている」と言われますけれども、反対にそ の場合のいわゆる比率というか確率というのは本当にどのくらいのものなのでしょうか。 確率が低いから法律化していいという考え方と、確率が低いならばそれぞれのパートタ イム労働者と事業主との話し合いの中で、解決していかれるというケースもあるのでは ないかと思います。  反対にそこまで言われますと、企業側としては特にパートタイム労働者を多く雇用さ れているような会社では一番忙しいときにパートタイム労働者は休んでいるケースもあ って、パートタイム労働者の方が企業に対していろいろ貢献してくださっているとは言 っていますけれども、場合によって正社員がずっと本来の家庭生活上のニーズに合わせ たいのにそれを我慢して働いている中で、気楽に年次有給休暇も取っているというケー スもあります。ですから、こういう場合はどこが均衡するかということはある程度考え ていただかなくてはいけないということと。  もう一つ難しいのは同じように慶弔休暇が必要だということ言われますけれども、例 えば今の時期ですと配送のアルバイトというのは、非常に短期で行われているケースだ と思います。そうするとお歳暮の時期だけ働くという人もあると思います。そうすると、 「ではそういう人もすべて同じですか」と言われたら企業としては、もう少し考えても らえませんか、それを法律で義務付けられたら私どもとしてはもともと反対なわけです から、そこまで言ってほしくないということは申し上げておかなくていけないと思いま す。  それからもう一つ申し上げたいことは、今企業の中では、いわゆる慶弔休暇をなくし ていこうという動きもございます。ある企業ではパートタイム労働者が増えていわゆる 均衡を考慮したときに、それこそ正社員にあってパートタイム労働者にないので、正社 員の方をなくしていくという動きもあります。  結論的に申し上げますと、こういうことを法律で義務付けようとすると全体をもう少 し見直しをせざるを得ないと。企業がそういうことを考えざるを得ないということも、 ぜひ理解をしてもらいたいと思います。もし、何か付け加えるなら経営側からもお願い します。 ○龍井委員  今の議論は項目を入れるか、入れないかというものとは少し違う本質的な論議に入っ てしまっていると思うのです。というのは、せっかく入れていただいた公正処遇という 意味合いが、もしもそういう理解だとすると少し土俵が違うのかなと思うのは、これは 揚げ足取りで恐縮なのですが、例えば時間比例でできるあるいはすべきものとそうでな いものというのは、まず基本的なその法制手続きの仕分けは前提条件が私はあると思っ ていたのですが、すべてが時間比例ということになると、これは揚げ足取りと申し上げ たのは、例えば言わずもがなのことをあえて申し上げると、制服の着用や安全性配慮の 話や環境もそうですよね。もっと卑近な例でわざわざ出せば、文房具などやテーブルの 使用なども要するにその場所で働くということに必然的に伴う措置が、これは仕事の必 要性ということと多分、福利という幾つか言われていたような提案のご判断であるのと それは両方あるかもしれないけれど、少なくとも健康診断などということについて、時 間が短いからこの範囲でいいということは多分なくて、それはまず私はそのことでとや かく言いたいのではなくて、公正という場合にそういう範囲のものが、前提条件でまず あるのだということをきちんと押さえていただいた上で、そういうものに、通勤手当と いう一つの例が該当するかどうか。  それは今前段でわざわざ例を出したものも時間換算すれば皆不利になるでしょう。テ ーブル1個使うのに2時間の人と8時間の人と換算をしていったら、もちろんそんなこ とは違うことをわかっているわけなので、そういうふうに考えていったときに、当然、 そこの職場で働くことに最低伴うコストです。当然、それについて、義務化ではなくて 正社員についてそういう処遇をしているのであれば、その下駄を履いているところにつ いては、今度でも配慮義務としましょうというのが、時間比例とそこを読み取られてし まうと少し違う議論になってしまうので、そこはぜひきちんと整理しておいた上で議論 をしていただきたいと思いますので。 ○松井委員  要するに例えば制服や文房具など、必要なものは企業として、対応するということは 原則でありますし、法律事項であり得ないと思います。また机は、パートタイム労働者 には貸さないということではなくて、パートタイム労働者が何人かいればそれの複数で 机を有することもできますので、要するに私どもとしては、法律で決めてまでやるので すかということを繰り返し申し上げている次第です。ですから一切ここで決めないこと は、企業の現場において、全く取り上げられないものということで捉えていただくわけ ではなくて、それはそれぞれの企業が、特に福利厚生というものについてはいろいろな バリエーションがあります。福利厚生を提供していくのは労働コストの一部であります ので、それをどんな形で配分していくのかということについては、そこにいる従業員の 方にとってどれが一番よいものかということを考えてやるものでありまして、今この場 では慶弔休暇が必要だということを強く言われていますけれども、私がいろいろパート タイム労働者に聞いている範囲では、それは数が少ないかもしれません。でもそういう ことを強く言われている方というのは、少ない経験ですけれども今のところないと。  従って申し上げたいことは、それは企業によってあるいはそこに働く方によって、福 利厚生のニーズはいろいろあるということをまず理解していただいた上で、その中で一 番働きやすい仕組みを作り上げていただく。それしかないのだと、それは法律の中で全 部決められるものではないと私どもとしては思っております。 ○佐藤委員  今日の出発点は公正処遇ということなのですが、法律で公正処遇という一般論はそれ なのですが、法律でどこの範囲まで法律で規定するかということを議論してきたわけで す。ですから労使によって、もっと狭く、もっと広くというのは当然あると思います。 それで労働側が主張されている意見はあると私はよく知っています。今回は公益として 考えたのはやはり職務にかなりリンクしたところで整備しようと。福利厚生も「業務遂 行上必要な」ということで切っているわけです。確かにそれに越えた部分にまで例えば 生活関連のところをどうするかという議論はあります。ただし、これは合意ができてい るかというと我々が見る限りかなり議論の幅があるし、例えば家族手当はどうするのだ という議論はあります。つまり社員の方について仕事にリンクすればたくさんあるので す。  ですから、議論の余地があるのは、私はよくわかりますけれども、特に法律でやる範 囲である程度合意できる範囲というところはここまでと。他は全然議論されていないと いうつもりは全然なくて、課題だという意見があるのもわかります。ですから我々はぎ りぎりのところを今回、前回の指針を踏まえてかなり指針より広げました。私は広がっ ているのではないかと思います。けれども、ある程度仕事にリンクしたというところで 切ったときに福利厚生まで含めて、教育訓練、福利厚生までやったらここはかなり広げ たのではというふうに。それは使側からすると広げすぎだという議論があるのだろうと 思います。我々はぎりぎりの考えで整理したとご理解いただければと思います。 ○龍井委員  すみません。少し論点がずれたのは、結局、先ほどの発言は時間外換算をして不利、 割高になるから抑制効果だということについて、私は反論を申し上げたかったのです。 ただし、今佐藤委員からあったようにあえていうと通勤手当はご承知のように賃金の範 囲ですので、これがその職務に準拠するかどうかにかかわらず、もっとベースの賃金要 素ではないかと思っていますので、そう発言しました。 ○吉川委員  全体のことを考えまして、木を見て森を見ずではないですけれども、小さなことをど んどん詰めていって、全体が見えなくなっていないか。企業が成り立つためには、何度 も言うように全体の箱というのは、決まっているわけですよね。そこで例えばパートタ イム労働者についてはまた別な部門にも波及しますけれども、職務が同じ等々というこ とがありますけれども、パートタイム労働者の方はどちらかというとご自分の生活中心 でこの日を休みたいと言ったら、会社がどういうふうに忙しかろうとある程度休みとい うことを堂々ととられますし、会社もパートタイム労働者だからやむを得ないというと ころがあります。  正社員のときは、そこはどうしてもというところで、自分の生活の調整をつけるなど いろいろなことがあると思いますから、そこでどこまでいつも見える部分で公正だとい ってもそうでない部分まで含めてどうですかというところに、話がそれますがそこの部 分もありますけれども、結局、全体で考えたら、短い時間の方に交通費支給するといっ たら絶対数費用はかさむことは厳然たる事実だと思います。ここまでどんどん詰めてい ったら、企業そのものが難しくなっていったら、どんどん逆に日本の企業が海外に出て いってしまうということもありえないのかと。中小企業みんなそれぞれ必死でやってい ます。   ですからそこのところを私は一律大手企業と中小の労働問題が一律になるのかと いう疑問というかそういう思いもあるのですが、あまりぎりぎり詰めていったら中小企 業が成り立たないところが出てくるという現実を、ぜひわかっていただきたいと思いま す。 ○山崎委員  今に関連して大手と零細はかなり違うと思います。本当に小さい同族的な家族的なと ころは書いてもらってもいいと思うのです。ほとんどやっていると思うのです。多分、 データにもが出ていると思うのです。だから書いてあるからいいのではないか、かなり そういうことをやっているから書けばいいのではないかということだと思いますけれど も、企業はいろいろ規模がありますので、なかなか同じ状態の画一的にやるということ ができないと思うのです。その意味からいくと、零細のところは給食施設はいらないわ けです。そういうことからすると慶弔見舞い、福利厚生という視点からいくと、給食施 設の方が慶弔見舞いより全体に行きわたるというか、企業数でも多いでしょうし、受け るメリットがあるような気がするのです。そういうところから差が出てきているのでは ないかと思うのです。  ですから中小においては別に慶弔見舞いを入れてもらっても、零細の方はかまわない と思いますけれども、ただ全体のバランスからすると、そうではないということだろう と思います。 ○稲垣委員  今の話のところで少し申し上げたいのですけれども、パートタイムで働いている方に 対しての偏見といいますか、こうだという思い込みを経営側の方はお持ちなのではない かと思うのですが、私が知っている限りでは、先ほど言われているようなお気楽に休ん でいる方もいらっしゃいませんし、例えば忙しい時に休むかもしれませんけれども、そ れは家族的な事情があるなど何らかの事情があるのですね。むしろ先ほどから言ってい るように契約更新を繰り返さなければいけないわけですから、責任をもって働かなけれ ば次の年は契約雇い止めになるという可能性もあるわけです。だからその辺はぜひパー トタイム労働者に対しての考え方を改めていただきたいと思います。  それから慶弔制度のところですが、私は労働側のところにいくと最低限のところで例 えば制度として休暇を入れるということはお金もかかりませんし、有給にするかどうか は企業の中で決めていくことという形でせめてそれぐらいは入れるべきではないかと思 います。パートタイム労働者の方から言われたことで前に紹介したことがあるかもしれ ないのですけれども、「正社員でもパートタイム労働者でも親が死んだときは同じではな いですか」という発言がありました。そういうところをぜひ考えていただきたいと思い ます。 ○山崎委員  初歩的な質問なのですが、この「職務、意欲、能力、経験、成果等」とありますが、 「等」とはどのようなものが、事業者がいろいろ考えればいいと。貢献度はとっていい わけですか。労働者の貢献度というのも、入っているということでよろしいわけですか。 ○樋口委員  コーディネートによってかなり違いますので、考慮の対象になると思います。これ同 じ事情ということで書いています。だから、パートタイム労働者ですとこういういった 違いとは関係なしに一律いくらというのはまずいですよと言っているわけです。 ○吉川委員  発言できる今日は最後の場のようですので、職業訓練についてのところで一言申し上 げたいと思います。職業訓練についてはキャリアアップのための教育訓練というのがあ りますけれども、教育というのは自分のキャリアアップのためというのは本来、自分自 身が努力をするものであると思いますし、それと何度も申し上げておりますけれども、 企業にとって必要な教育訓練はやっていただかなければどうにもならないわけですから、 現実的にもやっているわけですよね。  ただ、ほかの職種に移るための教育訓練まで中小企業がやっている費用も余裕もない ということもこれも現実だと思います。だから自分がキャリアアップを図りたければ、 自分自身で努力するのは人間として当然だと思いますし、もしそれをもっと別な形でや るとするのでしたら、私は、これは職業訓練所や何か別な形でもっていくのが必要では ないかなと思っておりますので、これは今までの努力義務で十分であると思います。 ○鴨委員  今の吉川委員の発言なのですけれども、努力義務でなっているのではないですか。私 たちがこれでいいとは思わないのですけれども、この案そのものは努力義務になってお ります。それから、自分が努力という個別のキャリアアップをここで言っているわけで はないと思います。職務遂行に必要なキャリアアップということが前提として言われて いるものであるとここは解釈できると思うのですけれども。 ○横溝分科会長  何か吉川委員、補正されますか。 ○松井委員  恐らく今言われたことは、ここは職務遂行に必要な能力付与のためについては、その 職務が同じであるパートタイム労働について行わなければならないことで、ここは義務 化であって、吉川委員が指摘したところは、「また」以降は努力義務であると私は理解し ます。それで重要なことは反対に教えていただきたい。「また」以降の訓練は具体的にど んなものにあたるのでしょうか。仮に努力しようとしても、努力の中身が今一つよくわ からないのですが、もし佐藤委員が答えてくれそうな気がしますのでお願いできるとあ りがたいのですが。 ○佐藤委員  まず前半で仕事に必要なものですね。もう一つはパートタイム労働者でも例えば職務 等級が入っているところがあります。そうすると上がっていくわけです。そうすると当 然上の職務の仕事にパートタイム労働者を使おうとしている企業であれば当然そういう こともやってください。あるいは正社員登用制度があってかつ企業によって何のために 正社員登用制度を入れるかにもよりますが、パートタイム労働者のかなり正社員登用制 度が対象になるような等級に上がっているようなパートタイム労働者がいるとすれば、 ある程度、正社員に移ることを想定すればそういう訓練をして、もちろん全部上げろと いうことではないですよ。ある一定の訓練をし、そこからセレクションするというのも あります。  ですから、今やっている職務だけではなく、パートタイム労働者を活用していこうと いう企業であれば、当然そのスキルアップのための教育訓練をやっているわけです。そ ういうものをできるだけやってくださいというお願いです。特別なことではないと思い ます。 ○松井委員  どうもありがとうございました。恐らく大手の企業だと職務等級などを用いて、職務 が上がっているというような見なしをするのだと思うのです。中小企業団体の推薦の委 員からは中小企業で、例えばそういう制度がもしかしてないのではないかなと思うとき に、では仮に吉川委員は難しいという言い方を申し上げましたけれども、場合によって ずっと仕事をしていってもらう中で、経験を積んでもらってより難しいものを遂行して もらうためにやっていくということもあると思うのですけども、それは「また」以下の 方に入るのでしょうか。あるいはそれは日々の職務遂行に入っていくのでしょうか。境 界がいま一つわかるような、わからないようなところで、先ほど質問をさせてもらった 次第なのです。 ○佐藤委員  確かに実際上仕事も変わっていくわけです。販売の仕事でも取り扱う商品が変わるわ けです。ですから、そういう意味で今必要というときと例えば3カ月くらい新しい商品 があるということになればこれは下になるかもわかりません。かなり重なる部分が一応 法律上は今ということと、もう少し先を見たときに必要なと。そういう意味で販売とい う点では変わらないという場合で、うちが扱う商品をかえるということで、かなり奥地 へ手を含めてやらなければならないということは2の下の方に入るという整理になるか なと思います。 ○樋口委員  線引きは難しいのは言われるとおりで、上のほうは最低限必要なこと(minimum requirement)ですよ。この職務を遂行する上で最低限何が必要かと。それついてはやっ てくださいよ。これは義務ですということです。であればその方 がいいでしょうという 教育訓練もあるわけです。それについては下の方の努力義務という形だということだと 思います。 ○横溝分科会長  まだ少し時間的な余裕はありますが、いろいろご意見をいただきましたので、本日の 分科会はこの辺で終了とさせていただきたいと思います。本日も労使各側からさまざま なご意見をいただきましてありがとうございました。それで冒頭で申し上げましたとお り、本日お配りした報告案は公益としてくどいようですけれども取りまとめさせていた だきたいぎりぎりのものです。他方皆さん報道等でご存じのように、次期通常国会にパ ートタイム労働法改正案を提出するということが、政府の方針となっておりますので、 そのためには報告を年内にとりまとめとするという事が必要となっております。つきま しては今後どうしてもという点が労使ございましたら最終的な調整をさせていただきた いと思います。その上で次回の分科会で、報告のとりまとめをしたいと考えております ので、よろしくお願い申し上げます。 ○松井委員  今日、特に公益の委員を中心に回答くださったことに関しまして、まず感謝申し上げ ます。私どもでなくて他の中小企業団体もあります。今日ちょうだいしたご回答あるい は解釈等を含めて組織に持ち帰りまして、十分意見を聞いた上で、対応したいと思いま すので、途中での疑念や疑問点は事務局を通じていろいろ解明をさせていいただきたい と思いますので、ぜひそういう方向でご理解を賜ればと思います。  ぎりぎりといいましてもなかなかそのぎりぎりというところについて、私どもとして も理解しかねるところはいろいろ事務局には申し訳ないのですが、ご質問等をさせてい ただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○岡本委員  今の関連ですが、そうしますと私たちも例えば公益の委員方なり事務局が答えたこと が、実際私たちが思っていることと違っていたり食い違いが生まれたりすると私たちの 判断も困りますので、ぜひ、そこのところは使用者側からの意見、疑問に対して私たち にも同じ回答をしてくださいということです。 ○横溝分科会長  それは事務局を通じてそういう対応をさせていただきたいと思います。  本日の署名委員は、鴨委員と吉川委員にお願いしたいと思いますのでよろしくお願い いたします。今後のスケジュールについて事務局より説明をお願いいたします。 ○高崎短時間・在宅労働課長  次回につきましては日時場所とも調整中でございますので、決まり次第、ご連絡さし あげたいと思います。 ○照会先 厚生労働省雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課(7876) 25