資料6
(第4回ボイラー等の自主検査制度の導入の可否に関する検討会)

平成18年12月19日

これまでの検討会でのご意見に対する見解

石油連盟

1 石油業界の検査技術力、管理能力について

(1)第三者検査機関の性能検査で補修等を求められた例があるというご意見
 石油業界の連続運転認定事業所における社内検査結果が、これまでの性能検査で不合格となった例はない(条件付合格1件あり※1)。従って、一概に検査技術力や管理能力が不足しているという見方は、誤解があるように思われる。
    ※1 ボイラーの必要板厚に関し、性能検査員が変わり前回の性能検査まで許容されていた付け代の取り扱いについて変更したため、最高使用圧力を低下する条件付合格

(2)想定外の腐食によって予定外の補修、主要構造部分の取替えを行っており、損傷の発生しやすい箇所を特定できていないため、保守点検を確実に行うことが不十分というご意見
(1) 想定外の腐食というご指摘であるが、比較的補修の多い腐食環境の例を挙げると、硫化水素を含むアミン系の機器がある。アミン系の腐食性については設計時から十分に承知し、腐食を予想しているからこそ、そのような目で社内検査を実施し、点検結果に基づき事前に補修を行っており、必ずしも想定外とは言えない。

(2) 予定外の補修、主要構造部分の取替えに関しては、主要部材の補修等は、30日前までに労働基準監督署長への変更届が必要であり、予定外の補修発生は、定期修理工事期間を1ヶ月以上延長する可能性があるため、製油所の運営にとっては、計画補修を行うことが原則である。しかし、次回の定期修理工事における工事量を減らし、工事期間を短縮させる努力も必要であり、今回の工事期間が許容される範囲で早め早めの追加補修、更新を行い、次回の定期修理工事を見据えた対応も行っている。従って、想定外の補修を予定外で行っているものではない。

(3) 保守点検では、チューブバンドルの交換を含めたチューブ関係の補修が多いが、各種非破壊検査やサンプリング結果などに基づき、各社の判定基準に従って評価を行っている。チューブ材質によっては短い周期で交換しているものもあるが、これらはライフサイクルコスト評価結果によるものである。胴板など本体関係の補修等も数%あると思われるが、これらも基本的には余寿命評価の結果、若しくは設備改造等に伴う更新による計画補修であり、保守点検を確実に行う検査技術力、管理能力を備えている。

(3)十分な水平展開ができていないというご意見
 我々は業界の中でトラブルの公開、技術知見のフィードバックとして石油学会設備維持規格を策定し、それを保全に活かすことで技術力の向上に努めている。
 水平展開についても、平成12年より業界として要領化※2して取り組んでおり、石連で保有するそのフォローアップ記録※3によれば各社とも有効に活用している。
  ※2 「石油連盟事故事例等水平展開要領」平成12年5月25日
  ※3 フォローアップ記録「事故事例水平展開対応報告書」

(4)自主検査とすると検査及び管理のレベルを維持できないのではないかというご意見
 連続運転認定制度と自主検査とは切り離して考えておらず、自主検査となって検査及び管理のレベルが落ちるということは、結果的に連続運転認定の資格を失うことであり、コストベネフィットを考えれば、そのような冒険はあり得ないと考えている。

(5)検査担当者を育成・確保していくことが困難ではないかというご意見
 検査担当部門の社員は、各種法規制による検査や自主的な検査など多岐に亘る検査経験を有している。また、非破壊試験技術者、溶接管理技術者、圧力設備診断技術者、設備維持管理士などの各種専門技術資格の取得に努めており、検査担当部門は多くの有資格者を擁している他、屋外タンク貯蔵所の開放点検などで日常的に目視検査や非破壊検査による腐食検査、溶接部検査を行っており、欠陥を発見する目は十分に養っている。また、グループ内の他製油所へ派遣して、機器開放検査の経験を積ませる場合もある。


2 検査の公正性・独立性について

(1)検査部門が経営から独立することの難しさ、自主検査として検査水準、安全性、信頼性を維持していくことへの担保がないというご意見
 経営トップによる意思表明や企業倫理委員会は、企業が自らを厳しく律するために広く取り入れられたものであり、これに反することは企業の存亡に関わる問題である。これらの要求に基づいた監査を十分に行うことで、検査水準の維持や安全性は担保されると考えている。また、提案している第三者が参加する監査制度によって、検査部門の経営からの独立性や不正事案の問題についても担保できると考えている。

(2)定められた検査手順・方法が守られない事案が発生しないことの実績を示す必要があるというご意見
 高圧ガス認定における検査手法・方法が守られず、認定を取り消された11例(石油精製2例、化学9例)については、現在のところ7例(石油精製2例、化学5例)が認定を再取得している(平成18年12月8日現在)。
 認定取り消しによる連続運転機会を失うデメリットの大きさは、十分に認識しているところであり、自主保安意識・体制の改善・再構築に努めて結果を出し、認定の再取得に至った例である。各社とも今後同様の事例が発生しないように、コンプライアンス面での意識・体制強化を図っている。

(3)自主検査を行っている諸外国にはある検査部門独立のためのシステムがないというご意見
 諸外国の自主検査制度は、法を含めた社会体制・背景の中で確立されたものであり、日本のように保安関連四法で細かく規制された状況とは大きく異なるものである。提案している自主検査制度は、あくまでも保安関連四法の枠内で、自主検査と第三者による監査を組み合わせた日本独自のものであり、単純に比較することはできないのではないかと考えている。


3 社会的環境について

(1)第三者機関による監査の必要性、有効性に関するご意見
 従来にも増して企業の社会的責任が厳しく問われることは強く認識している。
 企業の社会的責任において自主検査を充実し、なおかつ第三者機関の経験を活かすことのできる監査を実施することで、従来の性能検査と同等以上の公開性、透明性、緊張感の維持及び安全性の確保ができ、社会的にも受け入れられる制度になると考えている。

(2)弱者である現場社員を守るための社会的な制度が必要というご意見
 事故が発生した場合に敢えて強者、弱者という括りで経営者と労働者を区別するのであれば、このバランス化のために安全(衛生)委員会、労働組合などの機能があり、第三者検査がアンバランスを補うという種類の問題ではないと理解している。


4 安全を前提としたコスト削減策について

(1)検査機関側の柔軟性などで問題解決できるのではないかというご意見
 第三者検査機関側が柔軟性を増し、24時間体制の採用などで検査日時の変更に対する柔軟性、待ち時間の解消、検査期間の短縮に向けて大きく前進するとのご提案は理解できる。
 一方、石油連盟の要望の目的は検査の合理化である。現状行われている性能検査の実施方法でも、性能検査期間の短縮など効率化へ向け、更なる改善について見当の余地があるのではないかと考えられる。例えば、全ての対象機器を事務的に処理していく現行の方法では、移動時間も含めて1基当たり15分程度の総花的な検査になるため、性能検査員の経験を活かしてテーマを決め、装置・機器を絞り込んだ検査を行い、一部は運転時検査で行うなど、期間短縮と質の向上を両立できる方法もあるのではと考えられる。

(2)性能検査への立ち会いは2名程度で可、性能検査は性能検査員の判断から学び整備の向上に繋げる機会ととらえることが必要というご意見
 自主検査のメリットは、根本的に検査日程の設定が不要になることにある。この結果、事業所側の工事工程に応じて検査を組み入れていくことが可能になるため、工事工程の流れが途中で途切れることなく、停滞、迂回による人・もの・時間の無駄が排除される。また、現状の性能検査における性能検査員1名に対する製油所側2名程度の立ち会いも不要となる。
 ご提示の指摘・指導事項は一部の事業所におけるものであり、現状の性能検査で時間を割くことが多い代表例は、各種記録にある数値等の整合性を図るための、その確認のための質疑応答であって、性能検査の場での技術的情報交換の量は少ない。技術的情報は、各種専門資格の取得や外部講習会、メーカーや非破壊検査会社からの情報等、他の機会を捉えて得るものが多い。

(3)合格内示を原則現場で出すようにしているというご意見
 現場での合格内示を徹底していただければ問題点とはならないので、そのようにお願いする。

(4)自主検査化を経営者が意識を持って提案したものであるかの確認が必要とのご意見
 本要望は、昨年10月、経団連の環境安全委員会に諮って機関決定され、内閣府へ提出したものである。



最後に、
 連続運転事業所は全ての機器に対して検査基準、検査要領書を有しており、また前述した通り、検査に関する適切かつ十分な経験・技量・専門性は既に確保されており、これらの体制の下で検査を実施している。
 性能検査についてもヒアリングで言及したように、業界としての性能検査の実施要領・判断基準を策定し、統一的な方法を明示し、透明性の下で自主検査を行いたい。また、登録性能検査機関の性能検査の判定基準が公開されるのであれば、指摘・指導事項のないよう業界性能検査基準に取り入れ、両者の統一性を図りたい。

以上

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